JP2001099833A - コンクリート構造物のアルカリシリカ反応による劣化進行の予測方法 - Google Patents
コンクリート構造物のアルカリシリカ反応による劣化進行の予測方法Info
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Abstract
ート構造物の劣化進行の予測方法を提供する。 【解決手段】 コンクリート構造物から採取して測定し
たコンクリートの膨張率と、コンクリート構造物から採
取したコンクリートの細孔溶液中の水酸化アルカリ濃度
との相関関係に従って、アルカリシリカ反応により劣化
したコンクリート構造物における劣化進行を予測するこ
とを特徴とするコンクリート構造物のアルカリシリカ反
応による劣化進行の予測方法。
Description
応(以下、単に「ASR」という場合がある)により劣
化したコンクリート構造物の劣化進行の予測方法に関す
る。
ASRについては、これまでに多くの研究が積み重ねら
れ、それらの研究成果によりASRのメカニズムや反応
を促進する要因が明らかになってきている。中でも、A
SRは、コンクリート中の細孔溶液と骨材中の反応性物
質との間の化学反応であることや、セメント、細骨材、
混和剤および外部環境から供給されるアルカリ、また温
度、湿度、あるいはこれらの要因の複合によってASR
が促進されることはよく知られている。
況およびその程度は、環境条件によって異なることが指
摘されている。さらに、海水や融雪剤の影響を受けるコ
ンクリート構造物においては、外部より供給されるNa
ClによりASR劣化が促進されることを室内実験や屋
外曝露試験によって示した研究が知られているが、実際
のコンクリート構造物において自然条件下におけるAS
R劣化の進行状況を詳細に検討した研究等は極めて少な
いのが現状である。
物の将来における劣化進行度の予測は、コンクリート構
造物の維持管理においてきわめて重要であるが、今まで
の方法としては、コンクリート構造物から採取した試料
を40℃、湿度95%以上の環境下で6カ月経過後の残
存膨張率から劣化度をある程度判定することが知られて
いる。しかしながら、この方法では、時間がかかり、し
かも、その劣化度の予測は不十分なものであり、従来に
おいては合理的な予測方法等がないというのが現状であ
る。
自然電位分布図と比抵抗分布図とを重ね合わせることに
より鉄筋の腐食領域を判定するようにして、鉄筋コンク
リート構造物の劣化判定方法が開示されており、特開平
9−61421号公報には、コンクリート構造物から採
取したコンクリートの硫酸成分(硫酸イオンの有無)を
判定することにより、コンクリートの健全度評価方法及
び劣化コンクリートの補修方法が開示されており、特開
平10−90235号公報には、コンクリート構造物に
漸増履歴荷重を加えた際に生じるアコーステイック・エ
ミツション(AE)の発生状況を計測することにより、
コンクリート構造物の劣化を任意の時期等に判定するコ
ンクリート構造物の劣化判定方法が開示されている。し
かしながら、これらの公報に開示されるコンクリート構
造物の劣化判定方法等は、アルカリシリカ反応により劣
化したコンクリート構造物の劣化進行を正確に予測する
ものではなく、また、本願発明とはその技術思想が異な
るものである。
は、室内における実験的研究等が主体であり、実際のコ
ンクリート構造物を対象とした研究等は極めて少ないの
が現状であり、自然環境下に置かれたASR劣化コンク
リート構造物を対象とするコンクリート構造物の劣化進
行の正確な予測が切望されているのが現状である。
術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであ
り、簡便な方法により、短期間で自然環境下に置かれた
ASR劣化コンクリート構造物の劣化進行の予測方法を
提供することを目的とする。
技術の課題等について、鋭意研究を重ねた結果、コンク
リート構造物から採取した特定の試験下におけるコンク
リートの膨張率と、また、採取したコンクリートから抽
出した細孔溶液中の水酸化アルカリ濃度とを組み合わせ
ることにより、上記目的のコンクリート構造物のアルカ
リシリカ反応による劣化進行の予測方法が得られること
を見い出し、本発明を完成するに至ったのである。すな
わち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。 (1) コンクリート構造物から採取したコンクリートの促
進膨張試験におけるコンクリートの膨張率と、コンクリ
ート構造物から採取したコンクリートの水酸化アルカリ
濃度との相関関係に従って、アルカリシリカ反応により
劣化したコンクリート構造物の劣化進行を予測すること
を特徴とするコンクリート構造物のアルカリシリカ反応
による劣化進行の予測方法。 (2) 前記コンクリートの膨張率が、NBRI試験により
測定されるコンクリートの膨張率であり、前記水酸化ア
ルカリ濃度が細孔溶液中のOH-イオン濃度である上記
(1)記載のコンクリート構造物のアルカリシリカ反応に
よる劣化進行の予測方法。 (3) コンクリート構造物の劣化進行度を4段階で予測す
る上記(1)又は(2)記載のコンクリート構造物のアルカリ
シリカ反応による劣化進行の予測方法。
面を参照しながら詳しく説明する。本発明のコンクリー
ト構造物のアルカリシリカ反応による劣化進行の予測方
法は、コンクリート構造物から採取したコンクリートの
促進膨張試験におけるコンクリートの膨張率と、コンク
リート構造物から採取したコンクリートの水酸化アルカ
リ濃度との相関関係に従って、アルカリシリカ反応によ
り劣化したコンクリート構造物の劣化進行を予測するこ
とを特徴とするものである。
コンクリート構造物から採取したコンクリート(コア)
の促進膨張試験におけるコンクリートの膨張率をいう。
促進膨張試験としては、例えば、50℃ 飽和塩化ナト
リウム溶液浸漬法や、80℃ 1規定水酸化ナトリウム
溶液における促進試験〔NBRI試験〕が挙げられ、好
ましくはNBRI試験である。また、これらの促進膨張
試験における促進材齢(経過日数)は、コンクリート構
造物の環境条件、例えば、日射の程度、温度及び湿度の
変化、水分及び塩分等の供給等の環境条件によって適宜
設定されるものであるが、正確性及び短期間での予測の
点を考慮すれば、120日以内、好ましくは30日以
内、更に好ましくは、10日〜21日である。
膨張率を測定することにより、コンクリート中の反応性
物質の存在が確認、すなわち、当該促進膨張試験におけ
るコンクリートが膨張する場合は、コンクリート中の反
応性物質(成分)が未だ残留していることが判ることと
なる。本発明において、上記促進膨張試験におけるコン
クリートの膨張率がコンクリート構造物のARSによる
劣化進行を及ぼす基準値(閾値)は、促進膨張試験の種
類及び経過日数、並びに、コンクリート構造物の環境条
件等によって異なり適宜設定されるものであり、例え
ば、NBRI試験においては、14日における膨張率
0.1%が閾値として挙げられ、0.1%(14日)を
境にして、このコンクリート中の反応性物質量の相違に
よりARSの劣化進行度合いが相違するものとなる。
物から採取したコンクリートの水酸化アルカリ濃度は、
ASR劣化の場合、採取したコンクリートの細孔溶液の
組成〔水酸化ナトリウム(NaOH)と水酸化カリウム
(KOH)が主成分〕を評価することにより行うことが
できる。この細孔溶液中の水酸化アルカリ濃度の測定
は、例えば、高圧抽出装置を用いて採取し、細孔溶液分
析によるOH-イオン濃度を測定することにより行うこ
とができる。本発明において、上記水酸化アルカリ濃度
がコンクリート構造物のARSによる劣化進行を及ぼす
基準値(閾値)は、コンクリート構造物の環境条件等に
よって異なり適宜設定されるものであり、例えば、細孔
溶液分析によるOH-イオン濃度の閾値としては250
mmol/lが挙げられ、このOH-イオン濃度250
mmol/lを境にして、このコンクリート中のアルカ
リ成分量の相違によりARSの劣化進行度合いが相違す
るものとなる。
とコンクリート中の細孔溶液との間の化学反応であるこ
とに着目し、促進膨張試験におけるコンクリートの膨張
率により、骨材中の残留反応性成分の有無の判定と、コ
ンクリートの細孔溶液中の水酸化アルカリ濃度、例え
ば、OH-イオン濃度とを組合わせにより、比較的短期
間に将来のコンクリートの劣化進行を予測することがで
きるものとなる。すなわち、本発明では、コンクリート
構造物から採取したコンクリートの促進膨張試験におけ
るコンクリートの膨張率〔例えば、NBRI試験による
膨張率〔(14日)(閾値)0.1%〕と、コンクリー
ト構造物から採取したコンクリートの細孔溶液中の水酸
化アルカリ濃度〔例えば、OH-イオン濃度(閾値)2
50mmol/l〕との相関関係に従って、アルカリシ
リカ反応により劣化したコンクリート構造物の劣化進行
を、例えば、図1に示す内容(劣化度合いを4段階)で
予測することできることとなる(この点については更に
後述する試験実施例で詳しく説明する)。ここで、判定
基準となるA〜Dは、次のとおりとなる。判定Aは、O
H-イオン濃度(閾値)250mmol/l以上、NB
RI試験による膨張率(14日)0.1%以上の範囲で
あり、この範囲では骨材中の残留反応性成分、細孔溶液
中の水酸化アルカリとも多く、将来劣化が進行する可能
性が大きい。判定Bは、OH-イオン濃度の基準値(閾
値)250mmol/l未満、NBRI試験による膨張
率(14日)0.1%以上の範囲であり、この範囲で
は、骨材中の残留反応性成分は多いが、水酸化アルカリ
濃度は低いため、現状では将来の劣化進行の可能性は小
さい。ただし、将来的に外部よりのアルカリ供給の可能
性が考えられる場合は、将来の劣化進行の可能性が大き
くなる。判定Cは、OH-イオン濃度の基準値(閾値)
250mmol/l以上、NBRI試験による膨張率
(14日)0.1%未満の範囲であり、この範囲では、
水酸化アルカリ濃度は高いが、骨材中の残留反応性成分
は少ないため、将来の劣化進行の可能性は小さい。判定
Dは、OH-イオン濃度の基準値(閾値)250mmo
l/l未満、NBRI試験による膨張率(14日)0.
1%未満の範囲であり、この範囲では、骨材中の残留反
応性成分も少なく、細孔溶液中の水酸化アルカリ濃度も
低いので、将来の劣化進行は殆ど無い。
リート構造物から採取したコンクリートの促進膨張試験
におけるコンクリートの膨張率と、コンクリート構造物
から採取したコンクリートの水酸化アルカリ濃度との相
関関係に従って、アルカリシリカ反応により劣化したコ
ンクリート構造物の劣化進行を予測することができるの
で、アルカリシリカ反応により劣化したコンクリート構
造物の劣化評価及び補修時期・その程度の判定に利用で
き、効果的なコンクリート構造物の補修の実施ができる
と共に、劣化予測が比較的に短時間で、かつ容易に行う
ことができるものとなる。本発明において、予測対象と
なるコンクリート構造物は特に限定されるものではな
く、例えば、コンクリート構造物からなる建物、ダム、
煙突、トンネル、鉄道及び道路等の高架橋、橋、防波堤
などが挙げられ、特に安全性が要求される建物、トンネ
ル、鉄道及び道路等の高架橋などのコンクリート構造物
の劣化予測に好適に利用することができる。
るが、上記実施形態に限定されるものではなく、コンク
リート構造物の環境条件等によって適宜変更できるもの
である。例えば、上記実施形態では、OH-イオン濃度
の閾値を250mmol/l、並びに、膨張率の閾値を
0.1%(14日)としたが、コンクリート構造物の環
境条件等によって当該値、例えば、OH-イオン濃度の
閾値250mmol/l、膨張率の閾値0.1%、並び
に経過日数14日を変動してもよいものである。
に説明するが、本発明は下記試験実施例に限定されるも
のでない。
造物、促進条件下におけるコア(コンクリート)の膨張
率の測定、細孔溶液抽出試験などを下記に詳述する。 〔試験対象としたコンクリート構造物〕本試験において
対象としたコンクリート構造物(所在地:岐阜県大野郡
白川村大シウド谷)は、実証試験設備として建設された
ゴム引布製起伏堰(以下、「ゴム堰」)に付帯する図2
に示すコンクリート擁壁から得た試料を使用した。この
ゴム堰は、1982年に建設されたものであり、左右岸
に設けられた高さ10m、幅14m、法勾配1:0.5
のコンクリート擁壁に耐摩耗性ゴム堰を固定したもので
あり、水位を自動的に感知し、空気膨張形式により水深
5.3mになるとゴム堰が倒伏し、0.2mになると起
立するよう設計されている。また、右岸コンクリート擁
壁背面には控えコンクリート壁が配置され、左岸側コン
クリート擁壁背面の大部分は土砂による埋戻しがなされ
ていた。1996年時点での構造物は建設後14年を経
過し、既にASRを主因とする著しい劣化が生じてい
た。
下記表1に示す擁壁の各箇所により採取したコア(直径
96mm)を用いて残存膨張率を測定した。コア供試体
は、130〜250mm程度の長さに切断した後、温度
40℃、湿度95%以上の密閉容器中に保存し6ヶ月間
長さを測定した。この試験結果を図3及び下記表1に示
す。
なように、いずれの部位から採取したコアの膨張率も
0.02%程度以下であり、ASR膨張はほぼ収束して
いると判断された。また、ゴム堰固定部は、日射および
湿度の変化の影響が緩和されていたと考えられるが、こ
の部分より採取したコアの平均膨張率は0.015%で
あり、その他の部位のコンクリートと同様にASRはほ
ぼ収束していると考えられる。
堰擁壁のコンクリートから粗骨材および細骨材を取出
し、目視による分類の後薄片を作成し、岩種の同定を行
った。粗骨材(約13kg)の岩種構成を下記表2に示
す。
環が確認されたものは安山岩、流紋岩、ホルンフェルス
であった。また、これらの骨材のアルカリ反応性を知る
ために化学法〔JIS A 5308−1993(レデ
ィーミクストコンクリート)〕を実施した結果、細骨材
が無害でないと判定された他は全て無害となった。ま
た、モルタルバー法〔JIS A 5308−1993
(レディーミクストコンクリート)〕では、いずれの試
料とも膨張率が0.03%前後(6ヶ月)となり、細・
粗骨材とも無害と判定された。しかし、すでにASRが
かなりの程度進行しているコンクリートから取出された
骨材においては、反応成分の量がかなり減少している可
能性がある。また、モルタルバー法においては、供試体
から水酸化アルカリが漏出するために危険側の判定とな
ることがある。そこで、擁壁から採取したコア(直径4
8×100mm)を用いて50℃ 飽和塩化ナトリウム
溶液浸漬法(デンマーク法)、80℃ 1規定水酸化ナ
トリウム溶液における促進試験(NBRI法)を実施し
た。図4に示すように、いずれの促進試験においても、
コアは急速に膨張し、建設後14年を経過したもので
も、ゴム堰擁壁コンクリートの骨材には反応性成分は未
だ残留していることが確認された。
溶液の分析)細孔溶液の分析において、種々の水セメン
ト比のセメントペーストやモルタル中における細孔溶液
の組成についてのデータが報告された例がないので、本
試験では、まずセメントペーストやモルタルの細孔溶液
分析を実施し、水セメント比の細孔溶液の組成におよぼ
す影響を明らかした。その後、上記コンクリート構造物
から採取したコンクリートコアからの細孔溶液の抽出お
よびそれらの分析を行った。細孔溶液は、細孔溶液抽出
高圧装置を200t万能試験機にセットし、最大荷重約
600kN/mm2まで段階的に載荷除荷を繰り返すこ
とにより得られたものである。採取した細孔溶液を直ち
に純水にて100〜200倍に希釈し、Na+,K+,C
a2+イオン濃度をICP溶液分析法により、OH-イオ
ン濃度はフェノールフタレインを試薬とした塩酸滴定法
により測定した。
成変化を調べるため、水セメント比30,40,50,
60,70%の5種類のセメントペーストおよびモルタ
ル(セメント:砂=1:2)試料を用いて、細孔溶液の
抽出およびそれらの分析(Na+,K+,Ca2+,OH-
イオン濃度)を行った。用いた材料は太平洋セメント社
製普通ポルトランドセメント(全アルカリ量0.61
%)、ISO砂である。試料は,直径50mm、高さ1
00mmの円柱型枠に打込み後、翌日に脱型し、材齢7
日まで20℃の密閉容器内で養生を行い、上記高圧装置
に挿入し細孔溶液を抽出した。分析結果を図5、下記表
3に示す。
ント比においては、モルタルのNa +,K+,Ca2+,O
H-イオン濃度はセメントペーストの値と比較し若干小
さい。また、水セメント比の増加とほぼ比例してN
a+,K+,OH-の各イオン濃度は減少するが、Ca2+
イオン濃度は逆に増加する。更に、水セメント比70%
においてもOH-イオン濃度は300mmol/l程度
であり、ASRを発生させるOH-イオン濃度の閾値と
なる250mmol/lを越えているので、過去の研究
成果から判断して、この濃度はASRを引起こすのに十
分な濃度であるといえる。
価)ASRで劣化した構造物の将来の劣化進行予測を行
うため、コンクリート構造物より採取したコンクリート
の細孔溶液分析を行った。用いたコア試料は、前述のゴ
ム堰擁壁より採取したコア(表1参照)のほか、同一地
域内の変電所擁壁コンクリート(B)、および雪崩防護
柵コンクリート(C)、水槽擁壁コンクリート(D)か
ら採取したものも含まれている。このうち変電所擁壁
は、建設後38〜40年を経過した高さ12m、壁厚
0.5〜1.2mのコンクリート擁壁であり、雪崩防護
柵コンクリート(縦1.3m×横12.4m×高さ1.
8m)とともに、東側斜面に位置していることから、ゴ
ム堰擁壁右岸側と同様日照条件は良くない。また、水槽
擁壁は建設後23年を経過した高さ3.5m、壁厚0.
5〜1.4mのコンクリート擁壁であり、西側斜面に位
置していることから日照条件は非常に良いが、山側部は
陰となることから谷側部と比較して日照時間は短くな
る。これらの構造物の環境条件を下記表4に、コンクリ
ート配合を下記表5に示す。
(B)、雪崩防護柵コンクリート(C)の配合は不明で
あるが、ゴム堰擁壁(A)、水槽擁壁(D)の配合から
推定して水セメント比は50〜60%程度であったもの
と推察される。建設当時のセメントのアルカリ量は、不
明であるが、もし使用したセメントの等価Na2O量が
0.6%程度であったとすれば、上述の表3の結果から
推定すると建設当初のコンクリートの細孔溶液のOH-
イオン濃度は350〜450mmol/l程度の値を有
していたものと推定される。また、現地で採取したコア
試料(直径96mm)は、アルカリの溶出を防止するた
めに、細孔溶液抽出時点まで水分の出入りを許さないよ
うにただちにビニール袋に密閉した。その後、試験室に
てコアの中心部より直径46mm、長さで60〜100
mmのコア試料を切り出し、30分〜1時間後にそれぞ
れのコア試料から2〜3mlの細孔溶液を抽出した。こ
の試験結果を下記表6〜表8に示す。
ら、以下のことが判明した。細孔溶液中の陽イオン濃度
と陰イオン濃度のバランスは良好であることが判る。コ
ア採取位置と細孔溶液中の(Na++K+)イオン濃度と
の関係を示す図6から明らかなように、イオン濃度の標
準偏差は表面部が44.3mmol/lであるのに対し
内部では28.1mmol/lであり、表面部ではコア
の採取位置によるアルカリイオン濃度の変動幅が大き
い。この結果は、コンクリート体表面においては内部よ
りもより多数のひび割れが存在することに起因すると考
えられる。すなわち、表面近傍に存在する多数のひび割
れを通しての炭酸ガスの侵入による炭酸化、及び乾燥に
よるアルカリの固定がひびわれの周辺で特に活発に進行
するので、コアの採取位置によるアルカリイオン濃度の
変動が大きくなったものと思われる。
イオン濃度が他と比較して低いが、この部位のコンクリ
ートコア近傍にはひび割れが存在し、局部的にコアが破
断していた。コア採取時の観察から、これらのひび割れ
及び破断はコア採取時に発生したものではないと推定さ
れるので、濃度低下の原因としては、これらのひび割れ
を通しての雨水の侵入によるコンクリート中のアルカリ
の溶出、及びひび割れを通しての炭酸ガスの流入による
炭酸化や、ひび割れ部分近傍における乾燥によるアルカ
リの固定が考えられる。
一コア採取位置で表面部分とより深い部分のOH-イオ
ン濃度を比較すると、表面付近のOH-イオン濃度は深
部と比較し低くなっている。表面部のコンクリートは、
乾燥湿潤のくり返しを受けているので、この事実はコン
クリート表面近傍の細孔溶液中のアルカリイオンは乾燥
時に固定されるという結果を裏付けるものである。更
に、本コンクリートの製造において使用されたセメント
のアルカリ量は不明であるが、セメントペーストおよび
モルタルの細孔溶液分析(表3参照)の結果と比較する
と、コアからの細孔溶液のNa+,K+,OH-イオン濃
度はセメントペーストやモルタルの初期材齢時における
各イオン濃度より1オーダー低い値となっている。この
ようにコンクリート中のアルカリイオン濃度が低いの
は、14年という長年月にわたって進行したASRによ
ってアルカリイオンが消費されたためと推定される。従
って、上述のように、骨材中にはまだ反応性成分が残留
しているにも係わらずコアの残存膨張率が小さいのは、
細孔溶液のOH-イオン濃度の閾値(250mmol/
l)以下に低下したためと推察される。
OH-イオン濃度は、51〜63mmol/l程度であ
り、ゴム堰擁壁コンクリートと比較して低い。これは、
調査対象のコンクリートが、建設後38〜40年を経過
しており、ASRの進行と雨水などによるアルカリの溶
出の程度がより進んでいるためと推察される。また、表
8より、水槽擁壁では、日射の影響を強く受けASRが
促進されていたと推定される谷側部(38mmol/
l)が山側部(92mmol/l)と比較して細孔溶液
中のOH−イオン濃度が小さいことがわかる。更に、2
0℃での水酸化カルシウム飽和溶液中のOH-イオン濃
度は42mmol/lであり、本試験において得られた
ほとんどのコアのOH-イオン濃度はこれを上回ってい
ることが判明した。
は、骨材の反応性成分が未だ残存しているにもかかわら
ず、ASRの進行によってコンクリート中のOH-イオ
ン濃度が低下したために、40℃、相対湿度100%で
の促進条件下においてもコンクリートコアの残存膨張が
ほとんど生じなかったことが判明した。また、ASRを
引き起こすOH-イオン濃度の閾値を250mmol/
lとしたが、本試験の結果は上記閾値とも矛盾しないも
のである。これらの試験結果により、NBRI試験(高
温で、高濃度のNaOH溶液中における膨張試験)によ
って骨材中の残留反応性成分の有無の判定を行い、その
結果と、細孔溶液の分析結果(水酸化アルカリ濃度)と
を組み合わせることにより、ASRにより劣化した構造
物の将来の劣化進行の予測が可能となることを示すもの
であり、本試験で得られた範囲内で、ASR劣化構造物
を対象とした劣化進行予測を図1(A〜Dの判断基準は
上述)のような基準で行うことができることとなる。例
えば、今回のコンクリート構造物における劣化進行の判
定はBとなるが、ここでの解釈は以下のとおりとなる。
すなわち、本コンクリート中の骨材には反応成分が未だ
残留しているものの、アルカリ濃度の低下により、現状
においては将来の劣化の可能性はないものといえる。た
だし、将来的に外部よりアルカリの供給が考えられる場
合には、ASRによる劣化の可能性が大きくなる。
より劣化したコンクリート構造物の劣化評価及び補修時
期・程度の判定に利用でき、効果的な補修の実施ができ
ると共に、比較的に短時間で、かつ容易に行うことがで
きるコンクリート構造物のアルカリシリカ反応による劣
化進行の予測方法が提供される。
したコンクリート構造物の劣化進行の予測基準の一例を
示す特性図である。
(試料)の採取現場となる岐阜県大野郡白川村大シウド
谷の概略平面図であり、(b)は、コンクリート構造物
(ゴム引布製起伏堰)を示す断面態様の概略正面図であ
る。
張率の関係を示す特性図である。
結果を示す特性図である。
ント比が細孔溶液組成に及ぼす影響を示す特性図であ
る。
液のイオン濃度(ゴム堰擁壁)と関係を示す特性図であ
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 コンクリート構造物から採取したコンク
リートの促進膨張試験におけるコンクリートの膨張率
と、コンクリート構造物から採取したコンクリートの水
酸化アルカリ濃度との相関関係に従って、アルカリシリ
カ反応により劣化したコンクリート構造物の劣化進行を
予測することを特徴とするコンクリート構造物のアルカ
リシリカ反応による劣化進行の予測方法。 - 【請求項2】 前記コンクリートの膨張率が、NBRI
試験により測定されるコンクリートの膨張率であり、前
記水酸化アルカリ濃度が細孔溶液中のOH-イオン濃度
である請求項1記載のコンクリート構造物のアルカリシ
リカ反応による劣化進行の予測方法。 - 【請求項3】 コンクリート構造物の劣化進行度を4段
階で予測する請求項1又は2記載のコンクリート構造物
のアルカリシリカ反応による劣化進行の予測方法。
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---|---|---|---|
JP27429199A JP3527441B2 (ja) | 1999-09-28 | 1999-09-28 | コンクリート構造物のアルカリシリカ反応による劣化進行の予測方法 |
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Cited By (6)
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