JP2006249994A - 軽合金複合材料からなるシリンダ - Google Patents

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Abstract

【課題】 シリンダの熱伝導性を向上させ、燃焼室温度の過熱を抑えることのできるシリンダを提供する。
【解決手段】 少なくとも、ピストンが摺動するシリンダライナまたはシリンダボアの上死点及びその近傍の内周面が、カーボンナノチューブを強化材とする軽合金複合材料からなることを特徴とするシリンダ。
【選択図】 図1

Description

本発明は、軽金属複合材料を用いてなるシリンダに関する。より詳しくは、少なくとも、カーボンナノチューブ(以下、単にCNTともいう)を強化材とする軽合金複合材料を用いてなるシリンダに関するものである。
自動車用の内燃機関のうち、軽量化を目的としたシリンダブロックではアルミニウム合金(以下、単にアルミ合金ともいう)製のものが多い。ピストンと摺動するシリンダボアの内周面は、耐摩耗性、耐焼きつき性、低摩擦性といった摩擦磨耗特性が要求されることから一般的には鋳鉄製のライナが使用されることが多い。しかし、更なる軽量化、ボア間隔を詰めること、を狙ってライナレスのシリンダブロックを使用するものが現れている(例えば、非特許文献1、2参照。)。その場合にはシリンダボアの内周面は、炭素繊維やセラミック短繊維を強化材とした複合材として前記特性を付与している。このライナレスのエンジンはライナ入りのエンジンに比べて軽量化、コンパクト化が進むだけでなく冷却性能が向上し高出力化が可能となる。
SAEpaper890557 SAEpaper910835
しかしながら、エンジンの高出力化に伴い上記非特許文献1、2に記載のライナレスのエンジンをもってしても燃焼室周辺は熱的にさらに厳しい環境になりつつあり、シリンダもさらなる性能向上が望まれている。
燃焼室の熱の流れの1つにピストン頂部からピストンリングへそしてシリンダへと伝わる経路がある。ここでシリンダの熱伝導性をより高めることができればこの熱の流れはよりスムーズになり、エンジンの冷却性も高まり耐ノッキング性、出力、燃費の向上が図れる。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、シリンダの熱伝導性を向上させ、燃焼室温度の過熱を抑えることのできるシリンダを提供することを目的とするものである。
本発明は、少なくとも、ピストンが摺動するシリンダライナまたはシリンダボアの上死点及びその近傍(以下、単にシリンダ近傍とも略記する)の内周面が、カーボンナノチューブを強化材とする軽合金複合材料からなることを特徴とするシリンダである。
本発明によれば、シリンダライナまたはシリンダボア(以下、単にライナ/ボアともいう)の上死点及びその近傍の内周面をCNTを強化材とする軽合金複合材料とすることにより、上死点及びその近傍の摩耗と共に温度上昇を抑えることができる。即ち、シリンダの軽量化、耐摩耗性等の特性だけでなく、シリンダの熱伝導性を高めることができる。これにより、エンジンの高出力化に伴い上記非特許文献1、2に記載のライナレスのエンジンをもってしても燃焼室周辺は熱的にさらに厳しい環境であったものを、燃焼室の熱の流れの1つであるピストン頂部からピストンリングへそしてシリンダへと伝わる経路での熱の流れをよりスムーズに改善し得ることができる。よって、エンジンの高出力化に伴い熱的にさらに厳しい環境下にあっても燃焼室温度の過熱を効果的に抑えることができる。その結果、エンジンの冷却性も高まり、耐ノッキング性、出力、燃費の向上が図れ、内燃機関の圧縮比も向上させることができる。
本発明のシリンダは、少なくとも、ピストンが摺動するシリンダの上死点近傍の内周面が、CNTを強化材とする軽合金複合材料(以下、単に軽合金複合材料、あるいは複合材料と略記する)からなることを特徴とするものである。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
エンジンの中でシリンダブロックの重量の占める割合は高く、エンジンを軽量化するためシリンダブロックを軽量アルミ合金製とし、シリンダボアの内周面にはピストンとの摺動による摩擦摩耗特性が必要なため鋳鉄ライナをインサートするものが一般的である。更なる軽量化、ボア間隔をつめてエンジンを小型化する、シリンダライナとシリンダブロックとの熱の流れを高めるという目的でライナレスのシリンダブロックを用いたエンジンも現れている。耐摩耗性を確保するためにアルミ−過共晶シリコン合金モノブロックであるとか、通常のアルミ合金モノブロックのシリンダにめっきや溶射を施して耐摩耗性を付与したものなどがある(「まてりあ」第39巻第1号18〜19頁)。
しかし、アルミ−過共晶シリコン合金は鋳造性、機械加工性が悪いという問題がある。まためっきや溶射は処理工程が増すとか作業時の廃液や粉塵といった環境上の問題がある。
またこの他に、シリンダライナに代わりセラミック繊維や炭素繊維からなるプリフォームを金型にセットした状態でアルミ合金を注湯してシリンダ部を複合材としたシリンダブロックが得られている。この場合はプリフォーム作製にコストが必要であり、鋳造方法や条件に工夫が必要ではあるが、耐摩耗性と熱伝導性を同時に成立させられる。ただ、それでもプリフォームとして使用されるセラミック繊維や炭素繊維の熱伝導性は、マトリックスのアルミ合金より劣るため、その分だけ冷却性能も低いものになる。
CNTはその構造に起因して特異な性質を有している。熱伝導率と機械的特性は他の物質とは桁違いの値を示し、他の材料中に添加して複合材とすることで優れた性能を有する材料が得られる。アルミ合金のような軽金属をマトリックスとし、CNTを添加した軽合金複合材料は、軽量、高強度で熱伝導性が優れている。さらに、耐摩耗性、フリクション性能も優れ熱膨張も抑えられる。そのため、このような軽合金複合材料は、シリンダ材料に適しており、従来のセラミック繊維や炭素繊維を用いた複合材シリンダより特に熱伝導性が優れているので冷却性能も向上し、エンジンの高出力化に対応できることを本発明者らは明らかにしたものである。
本発明のシリンダとしては、ピストンが摺動するシリンダライナまたはシリンダボアの上死点及びその近傍の内周面を含むものであればよく、上述するようなライナレスのシリンダブロック、シリンダライナを用いたシリンダブロックのいずれであってもよい。またシリンダライナ単独の場合も本発明に含まれるものとする。さらに、これらシリンダブロックないしシリンダライナ以外にも当該シリンダブロック側に用いられる他の各種構成部品を含むものであっても良い。また、シリンダブロック側の構成部品のほかに、シリンダヘッドカバー側の各種構成部品を含むものであっても良いなど、特に制限されるものではなく、より広義に解されるべきものである。
本発明に用いられる軽合金複合材料は、CNTを強化材として含むものであればよい。
かかるCNTは、本発明の狙いである伝熱性の向上、強化及びそれに伴う耐摩耗性向上を達成することができる炭素材(強化材)であり、その種類、寸法、製法などは特に限定されるものではない。よって、CNTの種類としては、単層CNT、多層CNTなど、あらゆる種類のものが利用可能であり、これらを併用することもできる。また、シリンダの製造工程でCNTも高温に曝されるので700℃程度までは安定なCNTが望ましい。CNTの寸法(長さ、太さ、アスペクト比等)についても、普通に入手できる範囲のものを利用することもできるし、以下に示すような方法で所望の種類、寸法、熱的特性などを有するCNTを製造してもよい。該CNTの製法としては、例えば、アーク放電法、CVD(化学気相成長法ないし化学蒸着法)などが挙げられるが、これらの製法に何ら限定されるものではない。
また、本発明に用いられる軽合金複合材料では、他のセラミックス繊維や金属繊維あるいはセラミックス繊維やウィスカを伝熱性が損なわれない範囲で強化材として含んでいても良い。例えば、炭化珪素やホウ酸アルミニウムなどの短繊維やウィスカまたはアルミナ−シリカ系の短繊維なども全体として熱伝導性が上がる範囲で、更に生産性やコストに支障ない範囲で含有していてもよい。これらの強化材の含有率に関しては、上記要件を満足する範囲であれば特に制限されるものではなく、例えば、CNTと同量以下であれば、少なくとも伝熱性の点からは適用可能であるといえる。
また、軽合金複合材料のマトリックス材料である軽金属材料としては、特に制限されるものではなく、シリンダに適用可能な各種軽金属材料を用いることができる。例えば、既にエンジンのシリンダブロック等の用いられている既存の軽金属材料である、軽量アルミ合金、アルミ−過共晶シリコン合金、通常のアルミ合金などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
本発明では、シリンダすべての領域を複合材料により高性能化する必要はない。シリンダの上死点近傍が熱的にも厳しく、また境界潤滑となり摩擦摩耗の点でも最も厳しい負荷を受ける。従って、特にシリンダの上死点近傍の性能を重点的に向上させる必要がある。
そのために、シリンダの上死点近傍、より詳しくは上死点から下死点に向かって20mmの範囲、特に好ましくは上死点から下死点に向かって10mmの範囲を複合材料によって、より強化するのが望ましい。これは、熱的負荷及び摩擦摩耗が厳しいのはシリンダの上死点のごく近傍だけであるので、上死点から下死点に向かって10mmの範囲で、耐摩耗性、熱伝導性等の特性が強化されていれば十分なためである。即ち、かかる範囲を複合材料で強化することで、シリンダの耐摩耗性を向上することができる。更にライナ/ボアの上死点近傍の内周面の熱伝導性を高めることで、燃焼室の熱の流れの1つであるピストン頂部からピストンリングへそしてシリンダへと伝わる経路での熱の流れをよりスムーズに形成することができ、燃焼室温度の過熱を抑えることにもつながるものである(表1の実施例1〜3の上死点温度降下の欄参照)。よって、上死点から下死点に向かって20mmを越えて、耐摩耗性、熱伝導性等の特性を特に強化する必要はない。すなわち、上死点から下死点に向かって20mmを越えて強化しても性能上何ら問題はないが、経済性等の観点から、上記範囲が望ましいといえる。したがって、シリンダの上死点近傍の範囲のほかに、他の部分の一部ないし全部を複合材料で強化したような場合でも、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、本発明の技術範囲に含まれるものである。例えば、上死点から下死点に向かって25mmまでの範囲を、上死点から下死点に向かって25mmよりも下死点側の部分よりもCNTの含有率を高めにしてその特性を強化したような場合などは、実施例1〜3の結果から明らかなように、本発明に含まれ得るものといえる。
また、ライナ/ボアの軸方向に垂直な方向(深さないし厚さ)への複合材料の適用範囲としては、少なくとも、ピストンが摺動するライナ/ボアの上死点近傍の内周面部分が、CNTを強化材とする複合材料で形成されていればよい。好ましくはライナ/ボアの内周面から1mm以上、好ましくは1〜2mmの深さまで該複合材料で形成されていればよい。該複合材料が形成されている厚さ(深さ)が、ライナ/ボアの内周面から1mm未満では、境界潤滑となる上死点(及びその近傍)の耐摩耗性が不十分となる虞れがある。一方、厚い分には性能上の不具合はなく、特に制限されるものではない。即ち、ある程度以上の厚さがあれば効果はほとんど変わらなくなることから、上記したように、ライナ/ボアの内周面から2mmの厚さがあれば十分であり、経済的にも有利である。
本発明において、CNTを強化材とする複合材料を適用する部分を、少なくとも、シリンダの上死点近傍の内周面としたのは、最低限、シリンダの上死点のごく近傍の内周面を該複合材料で強化すれば、所望の作用効果を有効且つ効果的に発揮し得る為である。言い換えれば、本発明では、上記したシリンダの上死点近傍の内周面以外の他の部分には必ずしも複合材料を用いる必要はないが、そうかといって複合材料を用いることを何ら制限するものでない。なお、シリンダの上死点近傍の内周面以外の他の部分には、(1)ライナ/ボアの軸方向で外れる部分と、(2)ライナ/ボアの軸方向に対し垂直な方向(面内)に外れる部分との両方が含まれるものとする。ただし、本発明では、軽量化及び耐摩耗性等の特性を損なうことなく有効かつ効果的にシリンダの熱伝導性向上効果を発揮させ得るものが望ましい。かかる観点から、シリンダの軽量化、耐摩耗性及び熱伝導性の諸特性を比較考量して、シリンダの上死点近傍の内周面以外の他の部分の材料を選択するのが望ましいといえる。
また、本発明では、シリンダの耐摩耗性及び熱伝導性の特性をより強化するために、シリンダの上死点近傍の複合材料中のCNTの含有率は、2〜20体積%がよい。CNTの含有率が小さいと添加効果は小さく、CNTの含有率が大きすぎても性能向上の効果は変わらず、むしろコスト増や均一分散が難しいなどの難点も生じる。したがって、特にシリンダの上死点近傍の複合材料中のCNTの含有率としては2〜20体積%がよい。
さらに、シリンダの上死点近傍の内周面部分の複合材料のCNTの含有率を他の部分(領域)より高めておくのがより望ましい(実施例1〜3参照のこと)。シリンダの上死点近傍の内周面以外のCNTの含有率については、本発明の作用効果を有効に奏し得る範囲であれば、特に制限されるものではない。これは、他の部分よりシリンダの上死点近傍の内周面部分を複合材料とするのが他の部分を複合材料とするよりも、耐摩耗性、熱伝導性等の特性向上効果が大きいためである。よって、シリンダの上死点近傍の内周面部分以外の他の部分では、CNTを含有しなくてもよい(即ち、複合材料を用いなくてもよいといえる)。従って、他の部分を複合材料とするならシリンダの上死点近傍の内周面部分にはもっとCNTを多く含んだ複合材料を用いることが、耐摩耗性、熱伝導性等の特性向上効果を効率よく発現する上で有効といえる。
上記複合材料中のCNTの含有率の測定方法は、特に制限されるものではない。例えば、強化材がCNTだけの場合は、試料を切り出して密度を測定すれば、次式からCNTの含有率を計算することができる。
Figure 2006249994
ρ:試料の密度、ρ:マトリックス金属の密度、V:マトリックス金属の体積率(=1−V)、ρ:CNTの密度、V:CNTの体積率
ρ、ρは既知であるので、ρを求めれば、Vが分かる。
あるいは、切り出した試料を高倍率の電子顕微鏡で観察して、視野中のCNTの面積率を求めても良い。この方法では他にCNT以外の強化繊維が混在していてもCNTだけを特定できる。また、視野によるバラツキを考慮して複数視野測定することで精度を高めることができる。
また、CNTは当然その長手方向に熱伝導性がよいので、冷却性能を向上させるためには、シリンダの上死点近傍の内周面の複合材料中のCNTが特定方向に配向しているのが望ましい。詳しくは、シリンダの上死点近傍の複合材料中のCNTの配向性として、ライナ/ボアから外(ライナ/ボアの軸方向に対し垂直方向)に向かって、少なくともライナ/ボアの軸方向に対し垂直方向に向いたものを含んでいることが好ましい。具体的には、シリンダの上死点近傍の内周面の複合材料中のCNTの配向性(配向率)として、より好ましくは3次元ランダムよりはライナ/ボアの軸方向に対し垂直方向に配向していればよく、33%超である。上記CNTの配向率の上限は、特に制限されるものではなく100%であってもよいことになるが、こうしたものは製造し難いことから、50%程度あれば、性能上有効であり、製造上も以下に説明するような従来公知の方法により容易に得ることができる点でコスト的にも有利である。ただし、上記範囲に特に制限されるものではない。この場合、シリンダの上死点近傍の内周面の複合材料中のCNTが特定方向に配向していればよい。好ましくはシリンダの上死点近傍での、内周面以外のライナ/ボアの軸方向に対し垂直な方向(面内)に外れる部分についても、複合材料を用いている形成して部分については、CNTが同様の方向に配向しているのが望ましい。
こうした複合材料中のCNTの特定方向の配向性(配向率)の測定方法は、特に制限されるものではない。例えば、切り出した試料を高倍率の電子顕微鏡で観察して、視野中のCNTの向きを観察することにより求めることができる。この方法では他にCNT以外の強化繊維が混在していてもCNTだけを特定できる。また、視野によるバラツキを考慮して複数視野測定することで精度を高めることが望ましいのは言うまでもない。
逆に、シリンダの上死点近傍の内周面以外の他の部分、特に、ライナ/ボアの軸方向で外れる部分では、熱や摩擦摩耗の負荷は小さいのでCNTの含有量は低くても良い。よって、本発明では、他の部分ではCNTの含有量がゼロ、即ち、CNTを含まない場合も含まれる。ただし、他の部分の構成(組成)に関しては特に制限されるものではない。例えば、CNTの含有率をシリンダの上死点近傍と他の部分を含めたピストンが摺動するライナ/ボアの内周面全体を均一にした場合や他の部分のCNTの含有率を高くした場合でも、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、本発明に含まれるものとする。更に、シリンダの上死点近傍のほかに、他の部分の一部を含む範囲、例えば、上死点から下死点に向かって25mmの範囲を、25mmよりも下死点側の部分よりもCNTの含有率を高めにしたような場合にも、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、本発明の技術範囲に含まれるものである。
また、シリンダの上死点近傍からライナ/ボアの軸方向に外れる他の部分において、ピストンとの摺動抵抗を小さくするためには、CNTはピストンの摺動方向、即ちライナ/ボアの軸方向に配向するものが含まれていることが望ましい。具体的には、シリンダの上死点近傍からライナ/ボアの軸方向に外れる他の部分の複合材料中のCNTの配向性(配向率)として、より好ましくは3次元ランダムよりはライナ/ボアの軸方向に配向していればよく、33%超である。上記CNTの配向率の上限は、特に制限されるものではなく100%であってもよいことになるが、こうしたものは製造し難いことから、50%程度あれば、性能上有効であり、製造上も以下に説明するような従来公知の方法により容易に得ることができる点でコスト的にも有利である。ただし、上記範囲に特に制限されるものではない。この場合にも、シリンダの上死点近傍からライナ/ボアの軸方向に外れる他の部分の内周面の複合材料中のCNTが特定方向に配向していればよいが、好ましくはシリンダの上死点近傍からライナ/ボアの軸方向に外れる部分での、内周面以外のライナ/ボアの軸方向に対し垂直な方向(面内)の部分についても、CNTが同様の方向に配向していてもよい。
こうした複合材料の製造方法は、従来の複合材シリンダと同様の製法で可能である。即ち、所定量のCNTをバインダで固定したプリフォームを金型において、例えば、溶融アルミ合金を注湯してその間隙に含浸させることで一体シリンダブロックができる。この方法では、ほぼ軸方向に対し垂直面に2次元ランダムに配向する。この点を、図面を用いて詳しくする。図1は、本発明のシリンダ(例えば、シリンダブロックやシリンダライナ)を製造する方法の一実施形態であって、所定量のCNTをほぼ軸方向に対し垂直面に2次元ランダムに配向させ、バインダで固定した筒状のプリフォームを得るまでの工程概略図である。図1に示すように、プリフォームは、まずスラリー作製工程として、通常は容器10内の溶媒11中にCNT12とバインダ13を添加、混合、攪拌してスラリー14を作製する(図1(a)参照)。次に、脱水(脱溶媒)工程として、得られたスラリー14を型(例えば、ライナ形状にするなら、中抜きの円筒型)15にいれ、型15の下端からフィルタ16を通して溶媒11を抜き、CNT12とバインダ13からなるグリーン体17を得る。この際にCNT12は、フィルタ16に沿って積層(配向)するので、ほぼ2次元ランダムに配向したグリーン体17ができる(図1(b)(c)参照)。次に、焼成工程として、得られたグリーン体17を乾燥、焼成してプリフォーム18とする(図1(d)参照)。このプリフォームを金型において、例えば、溶融アルミ合金を注湯してその間隙に含浸させることで、一体シリンダブロック(例えば、中抜きの円筒状の金型を用いることで、その内周面の表面がCNTを強化材とする軽合金複合材料からなるシリンダブロックまたはシリンダライナ)ができる。CNTの含有率の異なるプリフォームを重ねてセットすれば上死点近傍をCNTの含有率の高い複合材料とすることができる。また、同様にライナ形状の複合材料を作っておいて、そのライナをシリンダブロックにインサートすることでもできる。
また別の製造方法として、例えば、アルミ合金粉末とCNTとを分散、混合させたものを焼結させ複合体とし、それから押し出し加工などでライナとしたものをシリンダブロックにインサートしても良い。この方法では、ほぼ軸方向に配向した複合材が得られる。この点を、図面を用いて詳しくする。図2は、本発明のシリンダを製造する方法の他の実施形態であって、所定量のCNTをほぼ軸方向に配向させた筒状のシリンダライナを得るまでの製造工程図である。図2に示すように、分散・混合工程として、金属粉末(例えば、アルミ合金粉末)20とCNT21をメカニカルに分散、混合する(図2(a)参照)。次に、焼結工程として、分散、混合した材料22を焼結することで、CNT21が3次元ランダムに配向した複合材23ができる(図2(b)参照)。次に、塑性加工(圧延・押し出し)工程として、この複合材23を圧延や押し出しのような塑性加工を加えることによって、マトリックス(金属)24の塑性流動に伴ってCNT21も向きが揃い1方向に配向した軽合金複合材料からなる筒状のシリンダライナ(ないし棒状の素材)25を得ることができる(図2(c)参照)。
さらに、後述する実施例で示す製造方法のように、図2で説明した分散・混合工程、焼結工程(更には塑性加工工程)を行って作製した棒状の素材を熱間で静水圧成形して緻密化したものを切り出し、筒状のシリンダライナとしてもよい。この方法では、実施例と同様に、CNTの配向が、ほぼ3次元ランダムな軽合金複合材料からなるシリンダライナを得ることができる。
なお、本発明では、少なくとも、ピストンが摺動するシリンダライナまたはシリンダボアの上死点及びその近傍の内周面が軽合金複合材料からなるものであればよく、該シリンダライナまたはシリンダボアの上死点及びその近傍の内周面の表面層(表面から1〜2mm程度の深さ)以外の部分や上死点及びその近傍よりも下死点側の部分の材質に関しては、本発明の作用効果を有効に発揮することができるものであれば特に限定されるものではない。よって、従来公知の各種シリンダ材料を適宜利用することができるものであり、アルミニウム合金などの軽金属や鋳鉄などを用いることができる。好ましくは、エンジンを軽量化するため、軽量アルミ合金やアルミ−過共晶シリコン合金を用いるのが望ましい。
また、本発明のシリンダの摺動相手材であるピストン或いはピストンリングの材質は限定されるものではない。例としてピストン本体としては、アルミ合金鋳物、例えば、JIS−H5202 AC8Aなどでスカート部にめっき処理を施してあるものが挙げられる。ピストンリングとしては、ステンレス鋼や鋳鉄に硬質クロムめっき処理或いは窒化処理、溶射によるモリブデンコーティング、ダイヤモンドライクカーボンをPVDまたはCVDでコーティングしたものなどが挙げられる。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例及び比較例を示す。
実施例1〜3及び比較例1〜2
下記表1に示す含有率となるように所定量のCNT(直径が20〜50nm、長さが数μmの多層CNTを使用)を、アルミ−12%シリコン合金粉と混合(比較例1ではCNTを混合することなく)・撹拌し、冷間プレスで丸棒状に成形した後、不活性雰囲気中で加熱して素材を作製した。この素材を熱間で静水圧成形して緻密化したものを切り出し、筒状の複合材からなるライナ部材(上部ライナ及び下部ライナ)をそれぞれ得た(比較例1及び実施例1〜3で用いるサンプルNo.1〜4のライナ部材)。このようにしてできたCNTの含有率の同じ(比較例1)または異なる(実施例1〜3)ライナ部材(上部ライナと下部ライナ)を接合して一体化したシリンダライナを4気筒2000ccエンジンシリンダブロックにインサートし、運転し加速試験を行なった。また、比較例2で用いるサンプルNo.5のシリンダライナには、鋳鉄ライナを用い、他の実施例、比較例と同様にして、このシリンダライナを4気筒2000ccエンジンシリンダブロックにインサートし、運転し加速試験を行なった。
なお、CNTの配向は、実施例1〜3のいずれのサンプルのライナ部材(上部ライナ及び下部ライナ)も、ほぼ3次元ランダムであった。
また、CNTの含有率の異なるライナ部材は、シリンダ上死点及びその近傍のライナ部材として上死点から下死点に向かって25mmの範囲となる上部ライナを作製し、他の部分のライナ部材として上死点から下死点に向かって25mmより下死点側の部分となる下部ライナを作製し、これら2つのライナ部材を接合して一体化して、シリンダライナとした。
表1に、シリンダライナの仕様と上死点での温度低下の計測結果を比較例2の鋳鉄ライナの場合と比較して示す。
表1の「摩擦状況」の判定方法は、目視以外に断面のプロファイルを計測し最大磨耗量(μm)がある基準(ここでは15μm)を超えると×(NG)とし、該基準以内を○(良好)とした。
上記表1のシリンダの上死点近傍のCNT含有率(体積%)は上部ライナ中のCNT含有率(体積%)を示し、他の部分のCNT含有率(体積%)は下部ライナ中のCNT含有率(体積%)を示す。
Figure 2006249994
表1の結果から明らかなように、シリンダライナの上死点近傍を、CNTを強化材とする軽合金複合材料とし、他の部分よりもCNTの含有率を高くすることにより、熱的にも摩擦磨耗の点でも負荷が最も厳しい上死点及びその近傍の摩耗とともに温度上昇を抑えることができることが確認できた。
このことから、シリンダの上死点近傍の重点的な性能向上により、燃焼室の熱の流れの1つであるピストン頂部からピストンリングへそしてシリンダへと伝わる経路での熱の流れがよりスムーズにでき、摩耗と共に温度上昇を抑えることが可能となり、エンジンの冷却性を高め、耐ノッキング性、出力、燃費の向上を図れ、内燃機関の圧縮比を向上に大いに貢献し得るものといえる。
本発明のシリンダ(例えば、シリンダブロックやシリンダライナ)を製造する方法の一実施形態であって、所定量のCNTをほぼ軸方向に対し垂直面に2次元ランダムに配向させ、バインダで固定した筒状のプリフォームを得るまでの工程概略図である。図1(a)は、スラリー作製工程を模式的に表した概略断面図である。図1(b)は、脱水(脱溶媒)工程を模式的に表した概略断面図である。図1(c)は、脱水(脱溶媒)工程で得られた、CNTをほぼ軸方向に対し垂直面に2次元ランダムに配向させてなる筒状のグリーン体の概略断面図である。図1(d)は、焼成工程で得られた、CNTをほぼ軸方向に対し垂直面に2次元ランダムに配向させてなる筒状のプリフォームの概略断面図である。 本発明のシリンダ(例えば、シリンダライナ)を製造する方法の他の実施形態であって、所定量のCNTをほぼ軸方向に配向させた筒状のシリンダライナを得るまでの工程概略図である。図2(a)は、分散、混合工程を模式的に表した概略図である。図2(b)は、焼結工程で得られた、CNTが3次元ランダムに配向した複合材の概略図である。図2(c)は、塑性加工(圧延・押し出し)工程で得られた、CNT22の向きが揃いほぼ1方向(軸方向)に配向した筒状のシリンダライナの概略図である。
符号の説明
10 容器、
11 溶媒、
12 CNT、
13 バインダ、
14 スラリー、
15 型、
16 フィルタ、
17 グリーン体、
18 プリフォーム、
20 金属粉末、
21 CNT、
22 分散、混合した材料、
23 複合材、
24 マトリックス(金属)、
25 シリンダライナ。

Claims (6)

  1. 少なくとも、ピストンが摺動するシリンダライナまたはシリンダボアの上死点及びその近傍の内周面が、カーボンナノチューブを強化材とする軽合金複合材料からなることを特徴とするシリンダ。
  2. 前記上死点及びその近傍の前記軽合金複合材料中のカーボンナノチューブの含有率が、2〜20体積%であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ。
  3. 前記上死点及びその近傍の前記軽合金複合材料中のカーボンナノチューブの含有率が、他の部分より高いことを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ。
  4. 前記上死点及びその近傍が、上死点から下死点に向かって20mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリンダ。
  5. 前記上死点及びその近傍の前記軽合金複合材料中のカーボンナノチューブは、少なくとも、ピストンが摺動するシリンダライナまたはシリンダボアの軸方向に対し垂直方向の面内に配向しているものを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンダ。
  6. 上死点及びその近傍以外の領域の前記軽合金複合材料中のカーボンナノチューブは、少なくともシリンダの軸方向に配向しているものを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンダ。
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