JP2006240897A - 炭素繊維含有セラミックス体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
マトリックス中に均一に炭素繊維を分散させた炭素繊維含有セラミックス体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
シリコンオキシカーバイド系マトリックスに、炭素繊維が分散した構造を有する炭素繊維含有セラミックス体とする。
マトリックス中に均一に炭素繊維を分散させた炭素繊維含有セラミックス体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
シリコンオキシカーバイド系マトリックスに、炭素繊維が分散した構造を有する炭素繊維含有セラミックス体とする。
Description
本発明は、導電性の高いセラミックス体およびその製造方法に関する。
従来から、本来絶縁性であるセラミックス体に導電性を付与するために、炭素繊維をセラミックス体に分散させる方法が用いられている。かかるセラミックス体を得るためには、通常、セラミックスの原料粉末と炭素繊維とを混合した後、成形および焼結という工程が行われる。このような工程で得られた導電性の高いセラミックス体については、例えば、特許文献1に開示されている。
特願2004−244273(段落番号0028〜0036)
しかし、上述のような従来技術には、次のような問題がある。混合されるセラミックスの原料粉末と炭素繊維は、共に固体である。このため、たとえ長時間かけて混合しても均一に両固体を混合することは難しい。その結果、セラミックス体中における炭素繊維の分散にムラが生じ、場所によって導電性のばらつきが生じやすくなる。
上記ばらつきを解消する方法の一つは、セラミックスの原料粉末に混合する炭素繊維の添加量を多くすることである。しかし、炭素繊維の添加量が多すぎると、マトリックスが本来持っている優れた性質、例えば、高硬度、高耐酸化性等の性質が損なわれるという新たな問題が生じる。加えて、大量の炭素繊維が凝集粒子となってセラミックス体中に存在する可能性が高くなり、強度低下の要因になるという問題も生じる。
このような問題に鑑みて、本発明は、マトリックスとなるセラミックス体中に均一に炭素繊維を分散させた炭素繊維含有セラミックス体およびその製造方法を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明は、シリコンオキシカーバイド系マトリックスに、炭素繊維が分散した構造を有する炭素繊維含有セラミックス体とするようにしている。
シリコンオキシカーバイド系マトリックスを有するセラミックス体は、ケイ素樹脂を加熱することによって得ることが出来る。ケイ素樹脂は、室温において固体であるが、40度前後の加熱で溶ける。このように液化した状態のケイ素樹脂に、炭素繊維を混合することにより、均一な混合が可能となり、炭素繊維が均一分散したシリコンオキシカーバイド系セラミックス体が得られる。このような組織を形成すると、セラミックス体における導電性のバラツキが少なくなる。また、炭素繊維を添加率を少なくすることもできるので、マトリックスが本来有する特性を損なうことがなくなる。また、炭素繊維は、直径が1ナノメール以下の極細のカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube: CNT)の他、数ナノメートルから数十ナノメートルの中細のCNT、さらにはもっと径の大きな繊維も含むものとして広義に解釈されるものとする。また、炭素繊維は、筒状のカーボンおよび非筒状のカーボンの両方を含む。
また、別の本発明は、先の発明における炭素繊維を繊維の平均径が1ミクロン未満のカーボンナノチューブとする炭素繊維含有セラミックス体としている。
マトリックスに分散させる炭素繊維として、繊維の平均径が1ミクロン以下のカーボンナノチューブ(CNT)を用いることにより、より微細な分散組織を形成することができ、導電性のさらなる均一化を実現できる。ここで、CNTは、グラフェンという炭素六角網面がナノレベルの直径を持つ円筒に丸めた中空状のチューブであり、一枚のグラフェンからなる単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nano Tube: SWCNT)と、複数枚のグラフェンを丸めた径の異なる筒を入れ子状の構造とした多層カーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon Nano Tube: MWCNT)に大別される。本発明では、SWCNTおよびMWCNTのいずれを使用しても良い。さらには、両方の混合物を使用しても良い。また、CNTは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ合成法、化学気相析出(Chemical Vapor Deposition: CVD)法等のいずれの製法により製造されたものでも採用可能である。ただし、量産に有利なCVD法により製造されたCNTの方が好ましい。
また、別の本発明は、先の発明における炭素繊維を、投入原料に対して0.1〜20重量部の範囲で添加して得られる炭素繊維含有セラミックス体としている。
炭素繊維を、上記範囲の添加率で添加しても、シリコンオキシカーバイド系セラミックス体の導電性を著しく向上させることができる。導電性を著しく向上させるに十分な炭素繊維の添加率は、炭素繊維の形態(繊維径、繊維長、結晶性等)によって変化するが、シリコンオキシカーバイド系セラミックス体の場合には、0.1〜20重量部の範囲の添加率で導電性の著しい向上を図ることができる。特に、5〜15重量部の添加率では、導電性の著しい向上を図ることができる。ここで、「投入原料に対して」とは、シリコンオキシカーバイド系セラミックス体を製造する上で必要な原料の全てに対してお意味である。したがって、ケイ素樹脂、助剤、触媒、炭素繊維および熱可塑性樹脂からシリコンオキシカーバイド系セラミックス体を製造する場合には、ケイ素樹脂、助剤、触媒、炭素繊維および熱可塑性樹脂の全てが投入原料となる。また、ケイ素樹脂、助剤、触媒および炭素繊維からシリコンオキシカーバイド系セラミックス体を製造する場合には、ケイ素樹脂、助剤、触媒および炭素繊維の全てが投入原料となる。
また、別の本発明は、先の発明において、セラミックス体中に、実質的に球形の孔が分散している炭素繊維含有セラミックス体とするようにしている。
ケイ素樹脂が収縮して硬化する際に、マトリックス中に微小クラックが発生することがある。微小クラックは、セラミックス体の破壊基点となるため、強度の低下を招く。しかし、マトリックス中に実質的に球形の孔を形成すると、マトリックスが体積収縮を起こす際に、分散している孔が体積変化を吸収してくれるため、マトリックスにクラックを生じさせにくくなる。また、通常、マトリックスに孔を形成すると、そこが破壊基点となりやすく強度低下を招くが、孔の形状が実質的に球形であるため、孔自体は破壊基点になりにくい。このため、逆に、孔の存在がセラミックス体の強度を向上させることになる。さらに、多孔質の組織であるため、セラミックス体の軽量化を図ることができる。ここで、実質的に球形とは、真球形状のみならず、楕円球形状のような曲面で囲まれた形状をも含む意味に広義に解釈されるものとする。
また、別の本発明は、先の発明における炭素繊維が実質的に球形の孔以外の部分に分散する炭素繊維含有セラミックス体としている。
炭素繊維が孔を貫通しないように分散させた組織を形成することにより、セラミックス体の強度の向上を図ることができる。また、孔の周囲の領域に炭素繊維が沿うように分散させることになるので、少量の炭素繊維の添加であっても、高い導電性を付与することができる。
また、別の本発明は、先の発明における孔の平均径が0.5〜6ミクロンである炭素繊維含有セラミックス体としている。
マトリックス中に分散する孔の大きさを平均径0.5〜6ミクロンの範囲に制御することにより、孔および炭素繊維が共に均一分散した組織を形成することができる。また、孔径の分布が狭いので、セラミックス体の強度を低下させることがなく、むしろ強度向上につながる。孔の平均径が0.5ミクロン未満となると、孔同士が独立して分散する確率が高くなり、焼成中に孔の内部圧力の上昇によって、マトリックスの破壊若しくはクラックの形成が生じやすい。また、孔の平均径が6ミクロンより大きくなると、孔同士がつながる確率が高すぎて、連続孔が破壊基点になりやすく、強度低下を招きやすくなる。したがって、適度な閉孔と開孔の割合が存在するように、孔の大きさが平均径0.5〜6ミクロンの範囲内となる組織が好ましい。
また、本発明は、ケイ素樹脂を溶融する溶融工程と、溶融したケイ素樹脂中に炭素繊維を混合する炭素繊維混合工程と、炭素繊維を混合したケイ素樹脂を加熱して硬化させる硬化工程とを有する炭素繊維含有セラミックス体の製造方法としている。
このように、溶融状態のケイ素樹脂に炭素繊維を混合してから、さらに高い温度まで加熱温度を上げてケイ素樹脂を硬化させているので、マトリックスに炭素繊維を均一に分散させることができる。ケイ素樹脂は、溶融状態において比較的粘度が低いので、炭素繊維のような別の固体を混ぜることが容易である。例えば、メチルシリコン樹脂を用いた場合、40℃で溶融し、150℃以上になると、架橋が始まり硬化する。したがって、炭素繊維は、40〜150℃の間(例えば、100℃)に混合するのが好ましい。
また、別の本発明は、先の発明における炭素繊維を、繊維の平均径が1ミクロン未満のカーボンナノチューブとする炭素繊維含有セラミックス体の製造方法としている。
マトリックスに分散させる炭素繊維として、繊維の平均径が1ミクロン以下のカーボンナノチューブ(CNT)を用いることにより、より微細な分散組織を形成することができ、導電性のさらなる均一化を実現できる。
また、別の本発明は、先の発明における硬化工程の前に、溶融したケイ素樹脂中に、熱可塑性樹脂の粒子を混合する粒子混合工程を設け、硬化工程を、熱可塑性樹脂の粒子が消失して孔に変わる温度以上に加熱する工程とする炭素繊維含有セラミックス体の製造方法としている。
熱可塑性樹脂の粒子を、溶融したケイ素樹脂中に混ぜて温度を上げていくと、セラミックス体が得られるまでの温度(約800℃以上)までに熱可塑性樹脂の成分が分解して消失する。その消失した箇所が孔となって、セラミックス体中に残ることになる。ケイ素樹脂の硬化は、約150℃から開始するので、ある程度硬化した段階から、熱可塑性樹脂の成分の分解が始まる。このため、熱可塑性樹脂の粒子の形態が、そのまま孔の形態となりやすい。したがって、熱可塑性樹脂の粒子形態および粒度分布を制御することにより、孔径の分布も制御できる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレンが挙げられる。これらは、加熱するとほぼ完全に気化して消失するので、加熱すると炭素を残留させるような熱硬化性樹脂よりも好ましい。
また、別の本発明は、先の発明における熱可塑性樹脂の粒子を、ポリメタクリル酸メチルの粒子とする炭素繊維含有セラミックス体の製造方法としている。
ポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate: PMMA)は、200〜390℃で分解が始まる。このため、約150℃から架橋しはじめたケイ素樹脂がある程度硬化した段階で、PMMAが分解して消失することになる。このため、PMMAの粒子の形態が、そのまま孔として残りやすい。
また、別の本発明は、先の発明における熱可塑性樹脂の粒子の平均径が0.5〜6ミクロンである炭素繊維含有セラミックス体の製造方法としている。
熱可塑性樹脂の粒子の平均径を0.5〜6ミクロンの範囲に制御することにより、マトリックス中に孔および炭素繊維が共に均一分散した組織を形成することができる。また、熱可塑性樹脂の粒子の添加によって形成される孔の径の分布も狭くなるので、セラミックス体の強度を低下させることがなく、むしろ強度向上につながる。熱可塑性樹脂の粒子の平均径が0.5ミクロン未満となると、形成される孔同士が独立して分散する確率が高くなり、焼成中に孔の内部圧力の上昇によって、セラミックス体の破壊若しくはクラックの形成が生じやすい。また、熱可塑性樹脂の粒子の平均径が6ミクロンより大きくなると、形成される孔同士がつながる確率が高すぎて、連続孔が破壊基点になりやすく、強度低下を招きやすくなる。したがって、適度な閉孔と開孔の割合が存在するように、熱可塑性樹脂の粒子が平均径0.5〜6ミクロンの範囲内のものである方が好ましい。
また、別の本発明は、先の発明における熱可塑性樹脂の粒子の添加率を、投入原料に対して25〜50重量部とした炭素繊維含有セラミックス体の製造方法としている。
熱可塑性樹脂の粒子の添加率を25〜50重量部の範囲とすることにより、シリコンオキシカーバイド系マトリックス中の孔の大きさ、閉孔と開孔の比率を、セラミックス体の強度を低下させないように調整できる。熱可塑性樹脂の粒子の添加率が25重量部未満の場合には、閉孔が多く、焼成中に閉孔内の圧力上昇によって、セラミックス体の破壊若しくはクラック形成が生じやすくなる。また、熱可塑性樹脂の粒子の添加率が50重量部より多くなると、開口が多くなり過ぎてセラミックス体の強度が低くなる。
マトリックス中に均一に炭素繊維を分散させた炭素繊維含有セラミックス体を得ることができる。
以下、本発明に係る炭素繊維含有セラミックス体およびその製造方法の好適な実施の形態ついて、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る炭素繊維含有セラミックス体の製造工程の一例である。
炭素繊維含有セラミックス体は、次の各工程を経て作製される。まず、室温(20℃前後)で固体であるケイ素樹脂を加熱して溶融する(ステップS1)。ケイ素樹脂の種類により溶融開始温度に違いはあるが、約40℃以上で溶融する。次に、溶融したケイ素樹脂中に、炭素繊維を混ぜる(ステップS2)。炭素繊維を混合する際の温度は、ケイ素樹脂の架橋が始まる温度(約150℃)より低い温度とする。また、炭素繊維の混合後に、熱可塑性樹脂の粒子を混ぜる(ステップS3)。熱可塑性樹脂を混合する際の温度も、炭素繊維の混合と同様、ケイ素樹脂の架橋が始まる温度(約150℃)より低い温度とする。なお、図1におけるステップS3を、ステップ2と逆順にしたり、あるいはステップS2とステップS3を同時に行っても良い。
ステップS2およびステップS3は、攪拌機、マグネチックスターラー、超音波振動機等を用いて行うことができる。粘度が比較的高い場合には、攪拌機を用いるのが好ましい。また、ステップS2およびステップS3の工程中、ケイ素樹脂の昇温を継続して行っていても、あるいは40〜150℃の範囲の所定温度で一定に保持していても良い。
ステップS3に続いて、さらに昇温すると、約150℃でケイ素樹脂の架橋が始まり、その後、架橋の進行に伴い硬化が起きる。そして、800℃以上の温度で完全に硬化してセラミックス体が得られる(ステップS4)。ステップS3とステップS4の間の過程では、熱可塑性樹脂の粒子の分解が起き、その粒子の部分に孔が生じる。
図2は、図1に示すステップS3とステップS3との間で起きる現象を模式的に表した図である。
ステップS3直後のセラミックス前駆体の状態は、図2の上に示すような状態、すなわち、液状のケイ素樹脂1に炭素繊維2と熱可塑性樹脂の粒子3(図2中、黒丸で示す部分)が分散した状態である。かかる状態から昇温していくと、熱可塑性樹脂の粒子3が溶けて、さらには分解し始める。例えば、熱可塑性樹脂の粒子3としてPMMAの粒子3を用いると、PMMAの分解開始温度が200〜390℃の範囲にあるので、400℃以上では図2の下に示すようになる。すなわち、PMMAの粒子3が消失し、その部分が孔4となってマトリックス中に分散した組織が得られる。
PMMA以外の熱可塑性樹脂の粒子3を採用すると、当該粒子3の消失温度は上述の温度と変わるが、セラミックス体を得る800℃以上の温度に至るまでには、確実に消失する。熱可塑性樹脂の粒子3の消失の前の状態において、炭素繊維2は当該粒子3の外に存在している。したがって、炭素繊維2は、孔に飛び出すことなく、孔以外の領域にのみ分散した組織が形成される。この結果、孔を基点とする破壊は生じにくく、高強度のセラミックス体が得られる。また、炭素繊維2が孔の周囲に沿って互いにつながりやすくなるため、少量の炭素繊維2の添加であっても、セラミックス体に高い導電性を付与することができる。
シリコンオキシカーバイド系マトリックスに炭素繊維2のみを分散させ、孔を分散させない組織を形成すれば、シリコンオキシカーバイド系セラミックス体の導電性を著しく向上させることができる。また、炭素繊維2を繊維の平均径が1ミクロン未満のカーボンナノチューブとすることにより、より微細な炭素繊維2を分散させた組織を形成できる。このことは、炭素繊維2の添加率をより低くしても、導電性を向上させることができることにつながる。このため、セラミックス体の耐酸化性をより向上させることができる。また、炭素繊維2を、投入原料に対して0.1〜20重量部の範囲で添加することにより、十分な導電性と耐酸化性を持つセラミックス体を得ることができる。
また、ケイ素樹脂1に炭素繊維2と熱可塑性樹脂の粒子3の両方を混合して硬化温度まで昇温させることにより、シリコンオキシカーバイド系マトリックス中に、炭素繊維2と孔が均一分散した組織を持つセラミックス体を得ることができる。熱可塑性樹脂の粒子3は、実質的に球形である。このため、熱可塑性樹脂の粒子3が消失した孔も、これと同一若しくはこれと類似した形状となる。この結果、導電性の著しい向上の他、強度向上および軽量化を図ることができる。また、熱可塑性樹脂の種類を選び、ケイ素樹脂1がある程度架橋してマトリックスとしての骨格を形成してから分解を始めるような分解温度を持つ熱可塑性樹脂の粒子3を混合することにより、炭素繊維2が孔以外の部分のマトリックスに分散した組織を形成できる。熱可塑性樹脂の粒子3が分解を始める際には、炭素繊維2はマトリックス中において自由に動けなくなっているからである。この結果、炭素繊維2が孔の周囲に偏在し、互いに繋がりやすくなる。したがって、炭素繊維2の添加率が低くても、十分な導電性を達成できるようになる。
また、熱可塑性樹脂の粒子3の平均粒径を制御することにより、セラミックス体中の孔の平均径を制御できる。平均径0.5〜6ミクロンの熱可塑性樹脂の粒子3を用いると、孔の大きさも平均径0.5〜6ミクロンの範囲で制御可能である。この結果、セラミックス体の強度向上を図ることができる。また、熱可塑性樹脂の粒子3の添加率は、投入原料に対して25〜50重量部とすることにより、シリコンオキシカーバイド系マトリックス中の孔の大きさ、閉孔と開孔の比率を、セラミックス体の強度を低下させないように調整できる。より好ましい添加率は、30〜45重量部である。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
(1)製造方法
a.原料
セラミックス体のマトリックスを構成する原料には、メチルシリコン樹脂(Methylsilicone resin)を用いた。用いたメチルシリコン樹脂は、市販品(SILRES 610, Wacker-Chemie GmbH, Burghausen, Germany)である。また、メチルシリコン樹脂の架橋反応を促進させる触媒として、メチルシリコン樹脂に対して0.1重量部のビス(2,4−ペンタンジオネート)亜鉛(II)一水和物(Zinc acetylacetonate)(関東化学株式会社製)を用いた。メチルシリコン樹脂に混ぜる炭素繊維としては、 昭和電工株式会社製のカーボンファイバ(Vapor Growth Carbon Fiber: VGCF)を用いた。VGCFは、繊維径150nm、繊維長10〜20ミクロンの炭素繊維である。また、熱可塑性樹脂の粒子としては、粒径5〜20ミクロンのPMMA粒子(M-100, 松本油脂製薬株式会社製)を用いた。
a.原料
セラミックス体のマトリックスを構成する原料には、メチルシリコン樹脂(Methylsilicone resin)を用いた。用いたメチルシリコン樹脂は、市販品(SILRES 610, Wacker-Chemie GmbH, Burghausen, Germany)である。また、メチルシリコン樹脂の架橋反応を促進させる触媒として、メチルシリコン樹脂に対して0.1重量部のビス(2,4−ペンタンジオネート)亜鉛(II)一水和物(Zinc acetylacetonate)(関東化学株式会社製)を用いた。メチルシリコン樹脂に混ぜる炭素繊維としては、 昭和電工株式会社製のカーボンファイバ(Vapor Growth Carbon Fiber: VGCF)を用いた。VGCFは、繊維径150nm、繊維長10〜20ミクロンの炭素繊維である。また、熱可塑性樹脂の粒子としては、粒径5〜20ミクロンのPMMA粒子(M-100, 松本油脂製薬株式会社製)を用いた。
VGCFの添加率は、セラミックス前駆体の重量に対して0〜15重量部の範囲で変化させた。また、PMMA粒子の添加率は、セラミックス前駆体の重量に対して0〜50重量部の範囲で変化させた。ここで、「セラミックス前駆体の重量に対して」とは、メチルシリコン樹脂(触媒も含む)、VGCFおよびPMMAの3種類の複合系の場合、当該3種類から構成される前駆体の重量を100とした場合を意味する。また、メチルシリコン樹脂(触媒も含む)と、VGCF若しくはPMMAのいずれか1つの2種類の複合系の場合、当該2種類から構成される前駆体の重量を100とした場合を意味する。
b.セラミックス体製造用機器
b−1 攪拌機
溶融したメチルシリコン樹脂の攪拌には、ツインスクリュー式のラボ・プラストミル(東洋精機株式会社製)を用いた。スクリューの回転スピードは、210rpmとした。
b−2 オーブン
5cm×5cm×5cmの容器に下記のプレス体を入れて、オーブンで加熱した。オーブンには、株式会社光洋サーモシステム製のKB8610−VPS(1600℃まで加熱可能)を用いた。焼成雰囲気は、真空とした。
b−1 攪拌機
溶融したメチルシリコン樹脂の攪拌には、ツインスクリュー式のラボ・プラストミル(東洋精機株式会社製)を用いた。スクリューの回転スピードは、210rpmとした。
b−2 オーブン
5cm×5cm×5cmの容器に下記のプレス体を入れて、オーブンで加熱した。オーブンには、株式会社光洋サーモシステム製のKB8610−VPS(1600℃まで加熱可能)を用いた。焼成雰囲気は、真空とした。
c.製造工程
メチルシリコン樹脂とPMMA粒子との混合は、90℃で5分間攪拌して行った。VGCFも、PMMA粒子と同時にメチルシリコン樹脂中に混合した。その後、VGCFとPMMA粒子を含むメチルシリコン樹脂を、200℃にて1〜2時間、20MPaの圧力を加えて一軸方向にプレスした。その後、プレス体を、1℃/minの速度で400℃まで昇温して、400℃で1時間保持した。その後、プレス体を、2℃/minの速度で硬化温度まで昇温し、硬化温度で2時間保持した。硬化温度は、800、1000及び1200℃の3種類とした。オーブン内は、VGCFの酸化を防止すべく、非酸化雰囲気とした。非酸化雰囲気とするには、アルゴンガス、窒素ガス、真空等の雰囲気下とする選択肢があるが、この実施例では真空を選択した。脱ガスを促進するためである。降温は、室温まで2℃/minの速度で行った。
メチルシリコン樹脂とPMMA粒子との混合は、90℃で5分間攪拌して行った。VGCFも、PMMA粒子と同時にメチルシリコン樹脂中に混合した。その後、VGCFとPMMA粒子を含むメチルシリコン樹脂を、200℃にて1〜2時間、20MPaの圧力を加えて一軸方向にプレスした。その後、プレス体を、1℃/minの速度で400℃まで昇温して、400℃で1時間保持した。その後、プレス体を、2℃/minの速度で硬化温度まで昇温し、硬化温度で2時間保持した。硬化温度は、800、1000及び1200℃の3種類とした。オーブン内は、VGCFの酸化を防止すべく、非酸化雰囲気とした。非酸化雰囲気とするには、アルゴンガス、窒素ガス、真空等の雰囲気下とする選択肢があるが、この実施例では真空を選択した。脱ガスを促進するためである。降温は、室温まで2℃/minの速度で行った。
(2)評価方法
原料およびセラミックス体の破断面の観察には、SEM(JSM-5310, JEOL Inc.製)を用いた。粒度分布の測定には、レーザー式粒度分布測定機器を用いた。PMMA粒子の熱重量分析には、最高温度1000℃まで昇温可能な熱重量分析装置(TGA2950, TA Instruments, New Castle, USA)を用いた。昇温速度は、5℃/minとし、室温から400℃まで、純度99.999%の窒素を15ml/minでフローしながら重量の変化を測定した。曲げ強度は、室温下、5mm×5mm×55mmの試験片を用い、スパン長30mmの3点曲げにて測定した。3点曲げ試験には、0.5mm/minのヘッドスピードにて荷重をかけられる装置(AG-5kNE, 株式会社島津製作所製)を用いた。
原料およびセラミックス体の破断面の観察には、SEM(JSM-5310, JEOL Inc.製)を用いた。粒度分布の測定には、レーザー式粒度分布測定機器を用いた。PMMA粒子の熱重量分析には、最高温度1000℃まで昇温可能な熱重量分析装置(TGA2950, TA Instruments, New Castle, USA)を用いた。昇温速度は、5℃/minとし、室温から400℃まで、純度99.999%の窒素を15ml/minでフローしながら重量の変化を測定した。曲げ強度は、室温下、5mm×5mm×55mmの試験片を用い、スパン長30mmの3点曲げにて測定した。3点曲げ試験には、0.5mm/minのヘッドスピードにて荷重をかけられる装置(AG-5kNE, 株式会社島津製作所製)を用いた。
(3)評価結果および考察
(3.1)PMMA粒子添加メチルシリコン樹脂の評価
図3は、この実施例で用いたPMMA粒子のSEM写真と粒度分布データである。
(3.1)PMMA粒子添加メチルシリコン樹脂の評価
図3は、この実施例で用いたPMMA粒子のSEM写真と粒度分布データである。
このSEM写真から、PMMA粒子は、粒径15ミクロン以下のほぼ球形状の粒子からなり、その粒度分布が比較的広いことがわかる。また、PMMA粒子の平均粒径は、4.7ミクロンであった。
図4は、PMMA粒子の熱重量分析の結果を示すグラフである。横軸は温度(℃)で、縦軸は残留率(%)である。
熱重量分析の結果、PMMA粒子の分解は、約210℃から開始して400℃で完了することがわかった。上述のようにプレス体を400℃で保持するのは、この結果を考慮したものである。
図5は、800、1000および1200℃までそれぞれ昇温して得られたセラミックス体における、PMMA粒子の添加率と重量変化との関係を示すグラフである。横軸はPMMA粒子の添加率(重量%)、縦軸は各温度までの昇温後の重量減少率(%)である。
PMMA粒子を添加しなかったサンプルは、硬化温度により幅はあるものの、6〜12%の重量減少率を示した。PMMA粒子の添加率が50重量%まで増加するに伴い、各硬化温度で得られたサンプルとも、重量減少率が増加する傾向が確認された。また、800℃で硬化させたサンプルよりも、1000℃および1200℃で硬化したサンプルの方が重量減少率が大きいものの、1000℃と1200℃との間では重量減少率に差は認められなかった。このことから、重量減少率は1000℃で飽和していると考えられる。また、1000℃および1200℃で得られたサンプルの内,PMMA粒子を添加しなかったサンプルの重量減少率が約12%であることから、メチルシリコン樹脂自体の重量減少率は、12%であると考えられる。
メチルシリコン樹脂が樹脂の状態からセラミックスへと変化するプロセスは、大きく分けて2つの段階から構成される。第1段階は300〜400℃で生じ、第2段階は600〜800℃で生じる。第1段階では、シリコンオリゴマーの揮発が起きる。一方、第2段階では、シリコン樹脂中の有機結合が切れてメタンが分離する。
図6は、1000℃で硬化させたサンプルの破断面のSEM写真である。これらのサンプルは、VGCFを添加せず、PMMAの粒子のみを添加したものである。写真中、(a)はPMMA粒子無添加、(b)は5重量%PMMA粒子添加、(c)は10重量%PMMA粒子添加、(d)は20重量%PMMA粒子添加、(e)は30重量%PMMA粒子添加、(f)は40重量%PMMA粒子添加の条件で作製されたサンプルである。
図6の各SEM写真から明らかなように、サンプル(b)、サンプル(c)、サンプル(d)、サンプル(e)およびサンプル(f)は、ともにPMMA粒子が均一分散した組織を有している。また、サンプル(b)、サンプル(c)およびサンプル(d)には、クラックが観察された。クラックが観察されたこれら3種類のサンプルは、容易に破壊することができた。なお、サンプル(c)およびサンプル(d)の両SEM写真では、クラックが見えにくいため、白抜きの矢印でクラックを示している。この結果から、サンプル(b)、サンプル(c)、サンプル(d)の場合、PMMA粒子が抜けた閉孔内部の応力の増加により残留応力が生成し、クラックの発生につながったものと考えられる。
図7は、図6に示すサンプル(e)の破断面を拡大して示すSEM写真である。写真(a)および写真(b)は、ともに同じサンプル(e)の別の箇所を撮影したものである。
図7のSEM写真および図6の各SEM写真同士の比較から明らかなように、PMMA粒子の添加率が30重量%以上のサンプル(e)およびサンプル(f)は、PMMA粒子を5〜20重量%添加したサンプル(b),(c),(d)に比べて、より小さな孔が分散した組織を有していることがわかる。これは、PMMA粒子の添加率が30重量%以上になると開孔も多くなり、PMMA粒子の揮発ガスが開孔を通じて容易に放出されるためであると考えられる。なお、SEM写真では示していないが、PMMA粒子の添加率が25重量%でも、小さな孔が分散し、かつクラックのない組織が得られた。
図8は、PMMA粒子の添加率と孔のサイズとの関係を示すグラフである。横軸はPMMA粒子の添加率(重量%)、縦軸は孔のサイズ(ミクロン)である。
このグラフからも明らかなように、PMMA粒子が10重量%および20重量%のサンプルにおける孔径は、他のサンプルのそれよりも大きい。この理由として、PMMA粒子の分解および揮発後にさらに温度を上げているために、閉孔内部の圧力が増加することによって、孔が拡大したのではないかと考えられる。
しかし、PMMA粒子の添加率が5重量%の場合には、孔が閉孔であるにもかかわらず、孔のサイズが小さい。これは、架橋中に孔が拡大する前に、サンプルの著しい収縮によりクラックが発生してサンプルが破壊したためである。また、30重量%までは、孔径は、PMMA粒子の添加に伴い小さくなる。50重量%の添加の場合、孔径は、1から10ミクロンまでの比較的広範囲に分布しており、その平均粒径は約3.0ミクロンである。PMMA粒子(平均粒径4.7ミクロン)よりも小さい孔は、メチルシリコン樹脂の架橋中に、サンプルの収縮と発生したガスの放出によって形成されたと考えられる。これは、異なるサイズのPMMA粒子の添加によって孔径を制御し得ることを示す。一方、PMMA粒子を添加したサンプルにおける開孔の平均径は、30重量%の添加になるとPMMA粒子の添加率の増加に伴い減少する。50重量%のPMMA粒子を添加したサンプルにおける孔径は約0.5ミクロンであった。
図9は、800、1000および1200℃までそれぞれ昇温して得られたセラミックス体における、PMMA粒子の添加率と収縮率との関係を示すグラフである。横軸はPMMA粒子の添加率(重量%)、縦軸は各温度までの昇温後の体積収縮率(%)である。
図9から明らかなように、サンプルの体積収縮率は、PMMA粒子の添加率の増大に伴い増加する傾向が見られた。50重量%のPMMA粒子を添加し1200℃で硬化させたサンプルの場合には、体積収縮率は約60%にも達した。PMMA粒子の添加率が10および20重量%で体積収縮率が低いのは、サンプル中の閉孔の存在により説明できる。開孔を形成するほど大量のPMMA粒子を添加していないサンプルの体積収縮が低いのは、孔内部の圧力がPMMAの分解ガスにより上昇し、外圧に比べて比較的高圧になるためである。すなわち、サンプル全体の体積収縮が、孔内部の圧力により妨げられたと考えられる。
また、図9に示すように、体積収縮率は、硬化温度が約1000℃でほぼ飽和した。また、サンプルからのメタンガスの揮発は600〜800℃で生じ、800℃−2時間でも飽和しなかった。
図10は、PMMA粒子の添加率を変化させた硬化前の各サンプルを用意し、各サンプルの成形密度(硬化前の密度)と、800、1000および1200℃にて硬化した後の各サンプルのバルク密度(硬化後の密度)との、PMMA粒子の添加率依存性を示すグラフである。グラフ中、横軸はPMMA添加率(重量%)を、左側の縦軸は成形密度を、右側の縦軸はバルク密度を、それぞれ示す。
50重量%の添加を除き、バルク密度の方が、成形密度(1.2g/cm3)より高かった。また、PMMA粒子の添加率が増加すると、形成される孔の数も増加するため、バルク密度は低くなった。
図11は、PMMA粒子の添加率を変えた各種サンプルの引張応力曲線を示す図である。横軸は引張り力を、縦軸は引っ張られたサンプルにかかる応力を示す。
PMMAを添加していないサンプル(0重量%PMMA)は、極めて壊れやすかった。当該サンプルの曲げ強度および弾性率は、それぞれ7.7MPaおよび5.9GPaであった。サンプルの機械的強度は、PMMA粒子の添加率に伴い増加する傾向がみられた。50重量%のPMMA粒子を添加したサンプルの曲げ強度および弾性率は、それぞれ38.6MPaおよび16.0GPaであった。PMMA粒子の添加に伴い曲げ強度および弾性率が増大するのは、図6のサンプル(c)およびサンプル(d)のSEM写真から明らかなように、収縮によるクラックの形成が孔によって妨げられたからと考えられる。
サンプルの機械的特性は、孔の数の増加と孔のサイズの減少に伴い増大すると考えられる。例えば、100〜700ミクロンの孔径を有するセラミックス体の最大曲げ強度、ヤング率および圧縮強度は、それぞれ12MPa、7GPaおよび11MPaであった。約1〜80ミクロンの孔径を持つセラミックス体がPMMA粒子を用いて作製された。圧縮強度は、孔径の減小に伴い増大した(80ミクロンでは圧縮強度2MPa、1ミクロンでは圧縮強度8MPa)。
メチルシリコン樹脂から作製したシリコンオキシカーバイド系セラミックス体は、1000℃まで優れた耐酸化特性を有する。これは、セラミックス体の表面にSiO2層があるからである。この実施例で作製したサンプルでも、約1000℃まで耐熱安定性が確認された。
(3.2)VGCFおよびPMMA粒子添加メチルシリコン樹脂の評価
図12は、架橋前後の各サンプルの体積抵抗率とVGCFの添加率との関係を示すグラフである。横軸はVGCF添加率(重量%)を、縦軸は体積抵抗率(Ω・cm)を、それぞれ示す。
図12は、架橋前後の各サンプルの体積抵抗率とVGCFの添加率との関係を示すグラフである。横軸はVGCF添加率(重量%)を、縦軸は体積抵抗率(Ω・cm)を、それぞれ示す。
架橋前および架橋後の両サンプルとも、VGCFが5〜7重量%の範囲で、大きく体積抵抗率が低下した。なお、架橋後のサンプルの体積抵抗率の方が、架橋前のサンプルのそれよりも低い結果が得られた。これは、架橋後に得られるシリコンオキシカーバイド系セラミックス体の体積抵抗率がメチルシリコン樹脂のそれよりも低く、架橋によりサンプルの収縮が生じたためである。VGCFを7.5〜15重量%添加したセラミックス体の体積抵抗率は、5.0〜2.0Ω・cmへと徐々に減少しているが、ほぼ飽和状態となっている。
実質的に絶縁物であるセラミックス体の体積抵抗率低下に対する炭素繊維添加の効果は、その添加率が20重量%より高くないと、101あるいは100オーダの電気抵抗まで低下しない。しかし、本実施例では、VGCFを7重量%添加しただけで、電気抵抗を101オーダまで大きく低下させることができた。これは、液状のメチルシリコン樹脂にVGCFを混合したために、VGCFを均一に分散できたからであると考えられる。
図13は、VGCFの添加率を10重量%とし、PMMA粒子を添加しないサンプル(サンプル(a)とする)とPMMA粒子を50重量%添加したサンプル(サンプル(b)とする)の各破断面のSEM写真である。
両サンプルとも、VGCFはマトリックス(サンプル(b)の場合には、孔の周囲のマトリックス)に分散していた。
図14は、架橋前後の各サンプルの体積抵抗率とPMMA粒子の添加率との関係を示すグラフである。横軸はPMMA添加率(重量%)を、縦軸は体積抵抗率(Ω・cm)を、それぞれ示す。VGCFの添加率は、両種サンプルともに10重量%としている。なお、先に述べたように、メチルシリコン樹脂、PMMA粒子、VGCFの3元系から成るサンプルの場合には、各重量%は全体に対する重量比率をいう。
図14のグラフから明らかなように、架橋前のサンプルの体積抵抗率は、PMMA粒子の添加率が増えるほど高くなった。これは、PMMAの体積抵抗率がマトリックスであるメチルシリコン樹脂の体積抵抗率よりも高いからである。一方、架橋後のサンプルの体積抵抗率は、PMMA粒子の添加率によらずほぼ一定であった。一般的に、電気抵抗は、孔が多くなる程大きくなる。これは、空気を保持している孔の電気抵抗が高いからである。しかし、実際には、図14に示すように、孔が増えても、ほぼ一定の体積抵抗率が得られる結果となった。
この原因は、次のように、架橋による体積収縮とメチルシリコン樹脂よりもシリコンオキシカーバイド系セラミックス体の電気抵抗が低いことに関係があると思われる。しかし、50重量%のPMMA粒子添加率のセラミックス体の体積抵抗率は、他の添加率のものに比べて高くなっている。電気抵抗を高める孔の増加効果は、電気抵抗を下げる収縮率増大の効果よりも大きいと考えられる。
また、PMMA粒子の添加率を増やしてもほぼ一定の体積抵抗率を示す理由には、別の要因も関係している可能性がある。PMMAを増やすと孔が増え、その結果、通常であれば体積抵抗率が高くなる。しかし、ほぼ一定の体積抵抗率が得られるのは、孔の数が多くなると、VGCFが孔の周囲に追いやられ、孔の周囲のマトリックス内でVGCF同士のネットワークを構築しやすくなることが関係している可能性がある。先に示した図13のサンプル(b)のSEM写真から明らかなように、サンプル(b)の破断面では、孔の周囲にのみ偏在しているVGCFが観察されている。このようなVGCFの存在形態は、体積抵抗率の上昇に寄与するものと考えられる。
本発明の炭素繊維含有セラミックス体は、導電性の高いセラミックス材料として、薄膜、フィルタ、耐火材、構造材、触媒担体等に利用可能である。
1 ケイ素樹脂
2 炭素繊維
3 熱可塑性樹脂の粒子
4 孔
2 炭素繊維
3 熱可塑性樹脂の粒子
4 孔
Claims (12)
- シリコンオキシカーバイド系マトリックスに炭素繊維が分散した構造を有することを特徴とする炭素繊維含有セラミックス体。
- 前記炭素繊維は、繊維の平均径が1ミクロン未満のカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維含有セラミックス体。
- 前記炭素繊維は、投入原料に対して0.1〜20重量部の範囲で添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素繊維含有セラミックス体。
- セラミックス体中に、実質的に球形の孔が分散していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の炭素繊維含有セラミックス体。
- 前記炭素繊維は、前記実質的に球形の孔以外の部分に分散していることを特徴とする請求項4に記載の炭素繊維含有セラミックス体。
- 前記孔の平均径が0.5〜6ミクロンであることを特徴とする請求項4または5に記載の炭素繊維含有セラミックス体。
- ケイ素樹脂を溶融する溶融工程と、
溶融したケイ素樹脂中に炭素繊維を混合する炭素繊維混合工程と、
上記炭素繊維を混合したケイ素樹脂を加熱して硬化させる硬化工程と、
を有する炭素繊維含有セラミックス体の製造方法。 - 前記炭素繊維は、繊維の平均径が1ミクロン未満のカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項7に記載の炭素繊維含有セラミックス体の製造方法。
- 前記硬化工程の前に、溶融したケイ素樹脂中に、熱可塑性樹脂の粒子を混合する粒子混合工程を設け、前記硬化工程は、上記熱可塑性樹脂の粒子が消失して孔に変わる温度以上に加熱する工程であることを特徴とする請求項7または8に記載の炭素繊維含有セラミックス体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂の粒子は、ポリメタクリル酸メチルの粒子であることを特徴とする請求項9に記載の炭素繊維含有セラミックス体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂の粒子の平均径が0.5〜6ミクロンであることを特徴とする請求項9または10に記載の炭素繊維含有セラミックス体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂の粒子の添加率は、投入原料に対して25〜50重量部であることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の炭素繊維含有セラミックス体の製造方法。
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