JP2006237952A - マイクロフォン装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 指向性が先鋭で、しかも、その指向方向が可変なマイクロフォン装置を提供する。
【解決手段】 9個のマイクロフォンM0〜M8を、同一平面内に3行3列に配置してアレイマイクロフォン10を構成する。このアレイマイクロフォン10の出力信号を処理して単一指向性の信号に変換して出力する指向性関数処理回路13を設ける。指向性関数処理回路13は、音波の入射角を変数とする指向性関数をフーリエ級数に展開するとともに、少なくともその3次の項まで展開する。この展開式における変数を、アレイマイクロフォン10を構成するマイクロフォンM0〜M8の出力信から構成する。
【選択図】 図15

Description

この発明はマイクロフォン装置に関する。
例えばビデオ会議においては、一般に発言者の音声は机上に配置したマイクロフォンにより集音していので、周囲の雑音も一緒に集音されてしまい、マイクロフォンから出力される音声信号が不明瞭になることがある。そこで、発言者の音声をマイクロフォンにより集音するとき、以下のような方法で明瞭な音声信号が得られるようにしている。
すなわち、その第1の方法は、マイクロフォンに指向性を持たせ、マイクロフォンに音声が入力される段階で音声を強調するとともに、雑音を抑圧する方法であり、第2の方法は、マイクロフォンから出力される音声信号を適応処理することにより雑音成分を低減する方法である。これらの方法によれば、音声信号に含まれる雑音成分のレベルが相対的に小さくなるので、明瞭な音声信号を得ることができる。
そして、上記の第1の方法を採用したマイクロフォン装置として、基準となるマイクロフォン(マイクロフォンユニット)の周囲に6つのマイクロフォンを配置し、各マイクロフォンの出力をフーリエ変換を用いて合成することにより、マイクロフォン装置全体として単一指向性を得るものがある。
なお、このようなマイクロフォン装置を示す先行技術文献として以下のものがある。
特開2002−271885号公報
ところが、上記のマイクロフォン装置においては、各マイクロフォンの出力を合成するとき、音源が一つであるとみなしてフーリエ変換における1次の近似項の値を求め、さらに、この1次の近似項の値から3次の近似項の値を求めているので、単一指向性が得られるものの指向幅(利得の得られる角範囲)が主軸に対して±60°程度と広くなっている。
しかし、このように指向幅が広い場合には、複数の音源や雑音源などのある環境では、指向性マイクロフォンとして十分な効果を得ることができない。
この発明は、このような点にかんがみ、単一指向性のマイクロフォン装置において、指向幅が狭く、しかも、その指向性の方向を電気的に変更できるようにしようとするものである。
この発明においては、
少なくとも9個のマイクロフォンにより構成されたアレイマイクロフォンの出力信号を処理して出力するマイクロフォン装置であって、
上記アレイマイクロフォンの出力信号を単一指向性の信号に変換して出力する指向性関数処理回路を有し、
上記指向性関数処理回路は、
音波の入射角を変数とする指向性関数をフーリエ級数に展開するとともに、少なくともその3次の項まで展開し、
この展開式における上記変数を、上記アレイマイクロフォンを構成するマイクロフォンの出力信号から構成する
ようにしたマイクロフォン装置
とするものである。
この発明によれば、先鋭な単一指向性を得ることができるとともに、その指向方向を変更することができる。
〔1〕 指向性関数
マイクロフォンは、音源から出力された音波を音声信号(オーディオ信号)に変換する変換器であり、その変換特性が、入力される音波の方向や周波数などに対して所定の特性を示していると考えられる。
したがって、マイクロフォンの特性は図1の(1)式で表すことができる。ここで、変換特性D(θ,ω)は、入力される音波の方向θおよび角周波数ωにより変化する関数であり、マイクロフォンの指向性を示している。このため、変換特性D(θ,ω)は一般に「指向性関数」と呼ばれている。つまり、指向性関数はマイクロフォンの指向性を示している。
例えば、無指向性(全指向性)マイクロフォンの場合には、その指向性パターンは図2Aに示すとおりであり、その指向性関数は、
D(θ,ω)=1
で示される。また、双指向性(両指向性)マイクロフォンの場合には、その指向性パターンは図2Bに示すとおりであり、その指向性関数は、
D(θ,ω)=cosθ
で示される。
そして、(1)式は音源が1つの場合であるが、音源が複数N個の場合には、それぞれの音源について(1)式が成立するので、図1の(2)式で表すことができる。
〔2〕 単一指向性の分析
図3は、単一指向性マイクロフォンが理想とする指向性関数(指向性)を示す。ただし、
θ :マイクロフォンからみた音源の方向(角度)
θc:指向方向(指向性の方向)
θw:指向幅(所定の利得が得られる角範囲)
とする。
この特性は変数θに対する指向性関数と考えられるので、フーリエ級数により示すと、図4の(3)式のようになり、さらに、この(3)式を展開してn=3までの近似式で表すと、図4の(4)式となる。
この(4)式において、例えばθw=60°とし、指向方向θcを変化させると、図5A〜Cのような指向特性となる。つまり、指向性関数が(4)式を満足するマイクロフォンであれば、図5A〜Cに示すように、比較的先鋭な指向性が得られるとともに、その指向方向θcを任意に変更できることになる。
〔3〕 指向性関数の作成
いま、図6に示すように、9個のマイクロフォン(マイクロフォンユニット)M0〜M8を、同一平面内に3行3列に配置してアレイマイクロフォン10を構成する。ただし、マイクロフォンM0〜M8は無指向性であるとする。また、各マイクロフォンM0〜M8の行方向の間隔および列方向の間隔は、すべて値dで等しいものとする。さらに、中心のマイクロフォンM4を基準のマイクロフォンとする。なお、一例として、マイクロフォンM0〜M8は圧力型のエレクトレットコンデンサマイクロフォンとされ、d=21mmである。
そして、このアレイマイクロフォン10を含む面内に音源(図示せず)があり、
R:音源と基準マイクロフォンM4との間隔
θ:マイクロフォンM0〜M8に対する音波の入射角、あるいは指向方向
であるとする。なお、間隔Rは、マイクロフォンの間隔dに比べて十分大きいものとする。また、入射角θは任意であるが、図6においては、マイクロフォンM0〜M8の配置の行方向をθ=0としている。
さらに、音源から出力される音波が図7の(5)式で示されるとともに、
xMi(t):マイクロフォンMi(i=0〜8)の出力信号
とする。
このようなアレイマイクロフォン10において、基準マイクロフォンM4に(1)式を適用し、さらに、(3)式を代入して変形すると、図7の(6)式が得られる。ただし、(6)式においては、(4)式と同様、n=3までの近似である。
この(6)式によれば、アレイマイクロフォン10の場合、cosθ〜cos3θ、sinθ〜sin3θを求めることができれば、例えば図5A〜Cに示すような指向性を得ることができ、そのとき、値θc、θwに対応してフーリエ係数a0〜a3、b1〜b3を変化させれば、図5A〜Cに示すように指向方向を変更できることになる。
〔4〕 cosθ〜cos3θ、sinθ〜sin3θの求め方
(6)式においては、cosθ〜cos3θ、sinθ〜sin3θの値を必要としているが、これらは、以下に詳述するようにマイクロフォンM0〜M3、M5〜M8の出力信号から求める。
〔4−1−1〕 cosθのとき
図8に示すように、音源から出力された音波が、アレイマイクロフォン10の中央の行のマイクロフォンM3、M4、M5に入力されるとき、音源から出力される音波が図7の(5)式で示されるとすれば、音源とマイクロフォンM3〜M5との間には、図8に示すような行路長の差を生じているので、マイクロフォンM3〜M5の出力信号は図8の(7)式により示すことができる。なお、(7)式においては、行路長差は、音源と基準マイクロフォンM4との間隔を基準としている。
そこで、マイクロフォンM3の出力信号とマイクロフォンM5の出力信号との差を求めると、図8の(8)式を得ることができる。そして、この(8)式に近似式
sinα=α
の関係を適用すると、(8)式は図8の(9)式のようになり、この(9)式を変形して(10)式を得ることができる。この(10)式によれば、マイクロフォンM3、M5の出力信号を演算処理することによりcosθを得ることができる。
また、マイクロフォンM3、M5の間の中央の位置にマイクロフォンM4を想定するとき、(10)式によれば、マイクロフォンM3、M5の出力信号から、そのマイクロフォンM4の出力信号を生成できることがわかる。さらに、(10)式は、マイクロフォンM3、M5の出力信号を演算処理することにより、図2Bに示す双指向性が得られることも示している。
〔4−1−2〕 sinθのとき
図9に示すように、音源から出力された音波がアレイマイクロフォン10の中央の列のマイクロフォンM1、M4、M7に入力されるとき、音源とマイクロフォンM1、M4、M7との間には、図9に示すような行路長の差を生じているので、マイクロフォンM1、M4、M7の出力信号は図9の(11)式により示すことができる。なお、(11)式においては、行路長差は、音源と基準マイクロフォンM4との間隔を基準としている。
そこで、マイクロフォンM1の出力信号とマイクロフォンM7の出力信号との差を求めると、図9の(12)式を得ることができる。そして、この(12)式に近似式
sinα=α
の関係を適用すると、(12)式は図9の(13)式のようになり、この(13)式を変形して(14)式を得ることができる。
そして、(14)式によれば、マイクロフォンM1、M7の出力信号を演算処理することによりsinθを得ることができる。また、この(14)式は、マイクロフォンM1、M7の出力信号を演算処理することにより、図2Bに示す双指向性を90°回転させた双指向性が得られることを示している。
〔4−2−1〕 cos2θのとき
(10)式は、マイクロフォンM3の出力信号と、マイクロフォンM5の出力信号とから、それらの中央のマイクロフォンM4の出力信号が得られることも示している。
そこで、図10に示すように、マイクロフォンM3とマイクロフォンM4との中央に仮想マイクロフォンV3を想定し、マイクロフォンM4とマイクロフォンM5との中央に仮想マイクロフォンV5を想定する。
すると、これら仮想マイクロフォンV3、V5の出力信号は、(10)式を導いたときと同様に処理して、図10の(15)、(16)式で表すことができる。そして、この(15)式と(16)式との差を求めると、図10の(17)式を得ることができ、(8)式から(10)式を導いたときと同様にして、(17)式から図10の(18)式を得ることができる。
そして、(17)式に(18)式を代入して整理すると、(19)式となり、この(19)式に図10に(20)式として示す2倍角の公式を適用すると、図10の(21)式を得ることができ、この(21)式を変形して図10の(22)式を得ることができる。
この(22)式によれば、マイクロフォンM3〜M5の出力信号を演算処理することによりcos2θを得ることができる。
〔4−2−2〕 sin2θのとき
この場合も、cos2θを求めた場合と同様にしてsin2θを求めることができる。すなわち、図11に示すように、マイクロフォンM0とマイクロフォンM6との中央に仮想マイクロフォンV3を想定し、マイクロフォンM2とマイクロフォンM8との中央に仮想マイクロフォンV5を想定する。
すると、これら仮想マイクロフォンV3、V5の出力信号は、(14)式を導いたときと同様にして、図11の(23)、(24)式で表すことができる。そして、この(23)式と(24)式との差を求めると、図11の(25)式を得ることができ、(8)式から(10)式を導いたときと同様にして、(25)式から図11の(26)式を得ることができる。
そして、(25)式に(26)式を代入して整理すると、(27)式となり、この(27)式に図11に(28)式として示す2倍角の公式を適用すると、図11の(29)式を得ることができる。
この(29)式によれば、マイクロフォンM0、M2、M6、M8の出力信号を演算処理することによりcos2θを得ることができる。
〔5−2−1〕 cos3θのとき
図12に示すように、マイクロフォンM0とマイクロフォンM3との中央に仮想マイクロフォンV0を想定し、マイクロフォンM3とマイクロフォンM6との中央に仮想マイクロフォンV6を想定するとともに、マイクロフォンM3の位置に仮想マイクロフォンV3を想定する。また、マイクロフォンM2とマイクロフォンM5との中央に仮想マイクロフォンV5を想定し、マイクロフォンM5とマイクロフォンM8との中央に仮想マイクロフォンV8を想定するとともに、マイクロフォンM5の位置に仮想マイクロフォンV5を想定する。
すると、これら仮想マイクロフォンV0、V6の出力信号は、(14)式を導いたときと同様に処理して、図12の(30)、(31)式で表すことができる。そして、この(30)式と(31)式との差を求めると、図12の(32)式を得ることができ、(8)式から(10)式を導いたときと同様にして、(32)式から図12の(33)式を得ることができる。そして、(32)式に(33)式を代入して整理すると、(34)式となる。同様に仮想マイクロフォンV2、V8、V5について、(35)式が得られる。
そこで、マイクロフォンM4の位置に仮想マイクロフォンV4を想定し、(34)式および(35)式から仮想マイクロフォンV4の出力信号を求めると、図12の(36)式が得られる。そして、図12に(37)式として示す3倍角の公式に、(36)式および(10)式を代入すると、図12の(38)式を得ることができる。
この(38)式によれば、マイクロフォンM0、M2、M3、M5、M6、M8の出力信号を演算処理することによりcos3θを得ることができる。
〔5−2−2〕 sin3θのとき
図13に示すように、マイクロフォンM3の位置に仮想マイクロフォンV3を想定し、マイクロフォンM4の位置に仮想マイクロフォンV4を想定するとともに、マイクロフォンM5の位置に仮想マイクロフォンV5を想定する。
すると、これら仮想マイクロフォンV3、V4、V5の出力信号は、(10)式を導いたときと同様に処理して、図13の(39)、(40)、(41)式で表すことができる。
そして、仮想マイクロフォンV3と仮想マイクロフォンV4との中央に仮想マイクロフォンVaを想定し、仮想マイクロフォンV4と仮想マイクロフォンV5との中央に仮想マイクロフォンVbを想定すると、これら仮想マイクロフォンVa、Vbの出力信号は、同様の処理により図13の(42)、(43)式を得ることができる。そして、この式(42)、(43)で示される信号から仮想マイクロフォンV4の出力信号を求めると、図13の(44)式が得られる。
そこで、図13に(45)式として示す3倍角の公式に、(44)式および(14)式を代入すると、図13の(46)式を得ることができる。
この(46)式によれば、マイクロフォンM0〜M3、M5〜M8の出力信号を演算処理することによりsin3θを得ることができる。
〔5〕 マイクロフォン出力の合成
(6)式のcosθ〜cos3θ、sinθ〜sin3θに(10)、(14)、(22)、(29)、(38)、(46)式を代入すると、図14の(47)式を得ることができる。この(47)式によれば、基準マイクロフォンM4の出力信号に、他のマイクロフォンM0〜M3、M5〜M8の出力信号を合成することにより、図5に示すように、比較的先鋭な指向性(指向性関数)が得られるとともに、その指向方向θcを任意に変更できることが分かる。
なお、(47)式においては、一部の項に1/(jω)が乗算されているが、この演算は、該当する信号をフーリエ変換し、周波数領域で処理すればよい。すなわち、1/jの乗算は、各周波数の音声信号成分の位相を90°進めることを意味し、実際の演算処理ではフーリエ変換後の各帯域の音声信号成分について、虚数部の値を実数部の値に置換するとともに、実数部の値を符号反転して虚数部の値に置換すればよい。
また、1/ωが乗算されることにより、周波数(ω/2π)に対応して信号成分の振幅(レベル)が変化するので、この振幅も補正することになる。
〔6〕 実施例
図15は、この発明によるマイクロフォン装置の一例を示す。このマイクロフォン装置は、上述した考えにしたがって、指向幅θwが狭く、かつ、その指向方向θcを変更できるようにしたものである。
すなわち、アレイマイクロフォン10が図6により説明したように構成されるとともに、マイクロフォンM0〜M8の出力信号が、9チャンネルのマイクアンプ11を通じて9チャンネルのA/Dコンバータ回路12に供給されてデジタル信号にA/D変換され、そのデジタル信号が指向性関数処理回路13に供給され、(47)式に示す処理が実行されて(具体的な処理方法は後述する)信号y(t)が取り出される。
そして、この出力信号y(t)がD/Aコンバータ回路14に供給されてアナログ信号にD/A変換され、そのアナログ信号がマイクロフォン出力として出力端子15に取り出される。
そして、このとき、指向性関数処理回路13は、例えばマイクロコンピュータにより構成されるとともに、操作キー13Cが接続される。そして、操作キー13Cにより指向方向θcおよび指向幅θwを指定すると、その指向方向θcおよび指向幅θwに対応するフーリエ係数a0〜a3、b1〜b3が生成されて(47)式に設定される。こうして、処理回路13において、マイクロフォンM0〜M8の出力信号はその指向方向θcおよび指向幅θwに対応する特性とされるとともに、(47)式で示される信号に合成される。
したがって、図15の装置によれば、指向幅θwが狭く、かつ、その指向方向θcが可変なマイクロフォン装置とすることができる。しかも、その場合、(47)式によれば、計算に必要なパラメータは、マイクロフォンM0〜M8の出力信号と、指向特性を規定するための値(指向方向θcおよび指向幅θwを示す値)のみであり、音波がどの方向から到来しているかは未知のままでも、指向性を設定することができる。
図16Aおよび図17Aは、この発明によるマイクロフォン装置の指向性のシミュレーション結果を示し、図16Bおよび図17Bは、先行技術文献に記載されているマイクロフォン装置の指向性のシミュレーション結果を示す。なお、図16からも明らかなように、主要な周波数帯域では、周波数特性はほぼフラットなので、図17においては、音波の周波数が1.5kHzの場合で代表している。
そして、これらの図によれば、この発明によるマイクロフォン装置(図16Aおよび図17Aの特性)は、先行技術文献に記載されているマイクロフォン装置(図16Bおよび図17Bの特性)に比べ、単一指向性マイクロフォンとしての指向性が改善されていることが分かる。特に、θ<−60°あるいはθ>60°の範囲では、それらの方向からの音波をかなり抑制している。
〔7〕 指向性関数処理回路13の処理内容および処理手順
指向性関数処理回路13は、例えば図18に示すルーチン100を実行することにより(47)式の処理を実現することができる。なお、この例においては、音声信号の2048サンプル期間を1フレーム期間としている。
ルーチン100の処理は、ステップ101からスタートし、次にステップ102において、マイクロフォンM0〜M8の出力信号、すなわち、A/Dコンバータ回路12から出力される音声データが、1サンプル×9チャンネル分だけ取り込まれる。続いて、ステップ103において、(47)式のうち、{ }内の和および差が計算される。例えば、(47)式のうちの第3行目の項((10)式に対応する項)であれば、{xM3(t)−xM5(t)}が計算される。
そして、ステップ104において、ステップ102および103の処理が1フレーム期間分だけ実行されたかどうかがチェックされ、実行されていないときには、処理はステップ102に戻る。
こうして、ステップ102および103の処理が1フレーム期間分だけ実行されると、処理はステップ104からステップ111に進み、このステップ111において、ステップ103の計算結果がFFT処理により周波数領域のデータに変換され、続くステップ112において、(47)式のうち、{ }に対して係数となっている部分が位相変換される。例えば、(47)式のうちの第3行目の項((10)式に対応する項)であれば、{xM3(t)−xM5(t)}に対して、c/(2jωd)が係数となっているので、その値c/(2ωd)が計算されるとともに、実数部の値に変換される。
続いて、ステップ114において、目的とする指向性に対応したフーリエ係数a0〜a3、b1〜b3が、ステップ103、113により算出された値に乗算されるとともに、フーリエ級数の和が算出されて(47)式の値が算出され、この算出結果がステップ114においてIFFT処理されて時間領域のデータに変換される。
そして、ステップ121において、ステップ115の変換結果のデータが、1サンプル分ずつ1サンプル期間ごとにD/Aコンバータ回路14に供給され、ステップ122において、ステップ121の処理が1フレーム期間分だけ実行されたかどうかがチェックされ、実行されていないときには、処理はステップ121に戻る。
こうして、ステップ121の処理が1フレーム期間分だけ実行されると、処理はステップ122からステップ123に進み、このステップ123において、1フレーム期間の処理を終了する。
こうして、ルーチン100によれば、(47)式にしたがった処理を実現することができる。そして、このルーチン100においては、ステップ111によりFFT処理を行う前に、ステップ103により各サンプルごとに{ }内の値を計算しているので、処理を適切に、かつ、円滑に行うことができる。
〔8〕 cos2θの他の算出方法
図19および図20は、cos2θの他の算出方法を示す。すなわち、cos2θは図19に(48)式として示すように変形することができるが、このとき、角度θ、φが図19の(49)式の関係にあるとすれば、(48)式は図19の(50)式となる。
そして、図20AおよびBに示すように、基準マイクロフォンM4を中心にして、マイクロフォンM0、M2、M6、M8を入射角θが小さくなる方向に45°(=φ−θ)だけ回転させた位置に、仮想マイクロフォンV0、V2、V6、V8を想定すると、(49)式の関係から仮想マイクロフォンV0、V2、V6、V8に対する音波の入射角は角度φとなる。
したがって、入射角φの音波と仮想マイクロフォンV0、V2、V6、V8の出力信号との関係は、入射角θの音波とマイクロフォンM0、M2、M6、M8の出力信号との関係と等しいので、仮想マイクロフォンV0、V2、V6、V8の出力信号を、(29)式(図19に再掲)と同様に処理することにより、図19の(51)式で示される信号を得ることができる。
そして、図20Cに示すように、仮想マイクロフォンV0、V2、V6、V8の位置を、基準マイクロフォンM4の方向に変更し、マイクロフォンM3、M1、M7、M5の位置に想定する。すると、仮想マイクロフォンV0、V2、V6、V8の出力信号はマイクロフォンM3、M1、M7、M5の出力信号に等しい。また、仮想マイクロフォンV0、V2、V6、V8の間隔は、図20Bでは値2dであったのに対し、図20Cでは値√2・dになっている。したがって、図20Cの場合、(51)式は図19の(52)式となる。
そして、この(52)式に(50)式を代入すると、図19の(53)式が得られる。したがって、この(53)式を使用して(47)式を演算することもできる。
〔9〕 その他
例えば(10)式において、{ }内は、マイクロフォンM3の出力信号とマイクロフォンM5の出力信号との差信号を得ることを示しているが、マイクロフォンM0〜M8の間隔dが狭い場合には、入力される音波の周波数が低いとき、マイクロフォンM3に入力される音波とマイクロフォンM5に入力される音波との差が小さくなり、上記の差信号のレベルが小さくなってしまう。
一方、間隔dが広い場合には、入力される音波の周波数が高いとき、マイクロフォンM3に入力される音波とマイクロフォンM5に入力される音波との行路差が1波長以上となり、(10)式の処理が不適切となってしまう。
そして、以上のことはすべてのマイクロフォンM0〜M8の出力信号の差信号あるいは和信号についても同様であるから、その結果、(47)式における演算処理の精度が低下し、目的とする指向性を得にくくなることがある。
したがって、そのような場合には、アレイマイクロフォン10を2組用意し、一方のアレイマイクロフォンと他方のアレイマイクロフォンとで、マイクロフォンの間隔dを異ならせるとともに、基準となる中央のマイクロフォンを共通とすればよい。そして、マイクロフォンの間隔の広いアレイマイクロフォンからは音声信号の低域成分を取り出すとともに、間隔の狭いマイクロフォンからは音声信号の高域成分を取り出し、両成分を加算した信号に(47)式の処理を実行すれば、広い帯域にわたって良好な指向性を得ることができる。
また、上述のマイクロフォン装置においては、雑音が目的とする音波と同一方向から到来する場合、その雑音を抑えることができないが、そのような場合には、例えば指向性関数処理回路13の出力信号を適応処理して雑音信号を抑えることができる。そのようにすれば、ビデオ会議などにおいて、発言者の音声に雑音が混入しているような場合でも、その雑音を抑えて明瞭な音声信号を得ることができる。
さらに、まず、音源の方向を検出し、次にその検出結果にしたがって改めて指向方向θcおよび指向幅θwを設定し、目的とする信号を強調したり、不要な信号を抑制することもできる。すなわち、特定の方向の音を取り込むように、あるいは特定の方向の音を取り込まないように指向性関数を設定することもできる。また、アレイマイクロフォン10の複数組を同一平面内に並べ、それぞれの指向方向を特定の一点に向けることで、その点にある音源の音を強調することもできる。
また、目的音の方向と、ノイズ音の方向とに指向方向を設定し、目的音の方向の信号からノイズ音の方向の信号を減算することにより、目的音をより明瞭に集音することもできる。また、上下方向からの雑音などのように、指向方向にかかわらず入力される音波を推定し、除去することもできる。
さらに、エコーキャンセラーなどの機能を持たせる場合、例えば5°おきの指向方向にそれぞれ指向性を持たせた、アレイの出力に対し、エコーキャンセラーのインパルス応答の情報を別々に学習しておくことで、指向を向けた方向の音声のエコーを瞬時に取り除くことができる。あるいは、例えば8方向についてエコーキャンセラーのインパルス応答の情報を別々に学習しておき、指向を向けたい方向のインパルス応答は8方向の中から、近い方向のインパルス応答を初期値として使うことにより、全体の演算量を減らすことと、全くの初期値から計算する時よりもエコーの残りを少なくすることが出来る。
〔略語の一覧〕
A/D :Analog to Digital
D/A :Digital to Analog
FFT :Fast Fourier Transform
IFFT:Inverse Fast Fourier Transform
マイクロフォンの指向性関数を示す図である。 マイクロフォンの指向性を示す特性図である。 単一指向性マイクロフォンの指向性を解析するための特性図である。 単一指向性マイクロフォンの指向性の解析結果を示す図である。 単一指向性マイクロフォンの指向性を示す特性図である。 この発明におけるアレイマイクロフォンを説明するための配置図である。 単一指向性マイクロフォンの指向性関数を近似式により示す図である。 指向性関数の一部を説明するための図である。 指向性関数の一部を説明するための図である。 指向性関数の一部を説明するための図である。 指向性関数の一部を説明するための図である。 指向性関数の一部を説明するための図である。 指向性関数の一部を説明するための図である。 この発明を適用した指向性関数を示す図である。 この発明の一例を示す系統図である。 この発明の適用例の特性を示す図である。 この発明の適用例の特性を示す図である。 図14の指向性関数を実現するルーチンの一例を示すフローチャートである。 指向性関数の一部を説明するための図である。 指向性関数の一部を説明するための図である。
符号の説明
10…アレイマイクロフォン、12…A/Dコンバータ回路、13…指向性関数処理回路、14…D/Aコンバータ回路、M0〜M8…マイクロフォン(マイクロフォンユニット)

Claims (5)

  1. 少なくとも9個のマイクロフォンにより構成されたアレイマイクロフォンの出力信号を処理して出力するマイクロフォン装置であって、
    上記アレイマイクロフォンの出力信号を単一指向性の信号に変換して出力する指向性関数処理回路を有し、
    上記指向性関数処理回路は、
    音波の入射角を変数とする指向性関数をフーリエ級数に展開するとともに、少なくともその3次の項まで展開し、
    この展開式における上記変数を、上記アレイマイクロフォンを構成するマイクロフォンの出力信号から構成する
    ようにしたマイクロフォン装置。
  2. 請求項1に記載のマイクロフォン装置において、
    上記アレイマイクロフォンを構成するマイクロフォンは無指向性である
    ようにしたマイクロフォン装置。
  3. 請求項1に記載のマイクロフォン装置において、
    上記アレイマイクロフォンは、同一平面内に3行3列に配置されて構成される
    ようにしたマイクロフォン装置。
  4. 請求項3に記載のマイクロフォン装置において、
    上記アレイマイクロフォンを構成するマイクロフォンのうち、中央に位置するマイクロフォンを基準とし、
    この基準となるマイクロフォンの出力信号に、残るマイクロフォンの出力信号を合成して上記単一指向性の信号を得る
    ようにしたマイクロフォン装置。
  5. 請求項1に記載のマイクロフォン装置において、
    上記指向性関数処理回路は、
    上記アレイマイクロフォンを構成するマイクロフォンの出力信号を1サンプルごとに演算する処理と、
    この演算処理の結果を1フレーム期間分ごとにFFTを実行する処理と、
    このFFT処理の処理結果に対して位相処理を行うとともに、フーリエ級数の和を算出する処理と、
    この算出処理により算出された和をIFFT処理して1サンプル分ずつ出力信号として出力する処理と
    を実行するようにしたマイクロフォン装置。
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