JP2006233320A - 高強度マグネシウム合金材およびその製造方法 - Google Patents

高強度マグネシウム合金材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウム含有マグネシウム合金を静水圧押出しの方法によって成形することにより、高強度の合金材を実用的に製造することを目的として、結晶粒の微細な高い引張り強度を有する材料を容易に提供することを課題とする。
【解決手段】7重量%以上・15重量%以下のアルミニウムを含有し、残部が実質的にマグネシウムであって、平均結晶粒径が10μm以下の組識を有し、かつ300MPa以上の引張強度を有する高強度マグネシウム合金押出材および合金材のビレット1を200〜450℃の温度に加熱し、押出比10以上で静水圧押出しすることにより高強度マグネシウム合金押出材を製造する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、静水圧押出しによって製造されたアルミニウムを含有する引張強度の大きい高強度マグネシウム合金材およびその効果的な製造方法に関する。
従来から展伸材やダイキャスト等の材料として広く使用されているASTM規格AZ91、AM60あるいはAZ31等のアルミニウム含有マグネシウム合金は、溶解し鋳造して製造されたものが主流となっている。しかし、この製法は、材料の溶解に多大のエネルギーを消費する製造上の難点があるばかりか、近時要求がますます増しつつあるより高強度の合金材を得難い品種上の制約がある。すなわち、鋳造時に結晶粒が粗大化するのを避けるのが難しいために、どうしても材料強度の向上が阻害されることとなり、敢えて高価な合金元素を選択して添加しなければ高強度のマグネシウム合金材料が製造できないという問題がある。その結果、この種合金材の用途が蓋ものと呼ばれるケース類向けが主となって、より高度の信頼性が要求される広範な機能性部品に適用される例はきわめて限定されたものとなっているのが実状である。
アルミニウム含有マグネシウム合金の結晶粒を微細化して強度を上げる一方法として、鋳造とは別に押出加工があるが、通常の押出装置を使用する方法にはつぎのような問題をともなう。すなわち、目的とするマグネシウム合金中のアルミニウム含有量が増すほど、所要の押出圧を大きくしなければならないので、通常の押出装置では、極端な低押出比にしない限り、量産レベルで大型ビレットを押出すことが非常に困難である。
下記特許文献1は、以上の方法とは異なり、アルミニウム含有マグネシウム合金を液状から急冷凝固を経て圧縮する技術を開示する。この圧縮は微細結晶粒の組織を得ることを目的としており、プレス押出しおよび熱間静水圧押出しによる圧密化を例示しているが、静水圧押出しについては示唆があるものの、具体的な実施方法について何等の検討もされていないし、具体的な条件の開示もない。
また、別の特許文献2もミクロ組織の改良効果を期待して急冷凝固により、アルミニウム含有マグネシウム合金材を製造する方法を開示するが、このような急冷凝固では、25〜100μm程度の薄肉リボン状のものしか得られていないようで、大径の押出材をつくることは無理と思われる。
特開平4−231435号公報 特開平3−236442号公報
本発明は、アルミニウム含有マグネシウム合金を静水圧押出しの方法によって強力に圧密成形することにより、高強度の合金材を実用的に製造することを目的とする。そして、合金結晶粒の微細化のみでなく製品表面の美麗化をも図って、この種アルミニウム含有合金として高い引張り強度を有する材料を容易に提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の特徴とする手段は次のとおりである。すなわち、
(1)7重量%以上・15重量%以下のアルミニウムを含有し、残部が実質的にマグネシウムであって、平均結晶粒径が10μm以下の組識および300MPa以上の引張強度を有し、かつ静水圧押出しの方法により製造された高強度マグネシウム合金材、
(2)8重量%以上・10重量%以下のアルミニウムを含有する上記(1)に記載の高強度マグネシウム合金材、
(3)7重量%以上・15重量%以下のアルミニウムを含有し、残部が実質的にマグネシウムの合金のビレットを200〜450℃の温度に加熱し、押出比10以上で静水圧押出しする高強度マグネシウム合金材の製造方法、
(4)7重量%以上・15重量%以下のアルミニウムを含有し、残部が実質的にマグネシウムの合金の粉体を押し固めて製作したビレットを金属容器に装入して脱気および密封したのち、この金属容器およびビレットを200〜450℃に加熱し、押出比10以上で静水圧押出しする高強度マグネシウム合金材の製造方法、
(5)マグネシウム合金のビレットを押出比20以上で静水圧押出しする上記(3)または(4)に記載の高強度マグネシウム合金材の製造方法、
(6)平均結晶粒径が0.5mm以上のマグネシウム合金粉体を使用する上記(3)、(4)または(5)に記載の高強度マグネシウム合金材の製造方法、
(7)銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金から成る金属容器を使用する上記(3)〜(6)のいずれかに記載の高強度マグネシウム合金材の製造方法。
本発明のアルミニウム含有高強度マグネシウム合金材は、静水圧押出しにより製造されたもので、合金の平均結晶粒径が10μm以下の微細な組識を有し、かつ300MPa以上もの高い引張強度を有する。しかも、押出材の表面性状も良好美麗であり、比較的大きな押出し成形体であるため、機械加工により容易に各種の二次製品に加工することができ、従来の鋳造品よりその適用範囲が広がる。
つぎに、本発明の高強度マグネシウム合金材の製造方法は、静水圧押出しによるのを特徴とするもので、従来の溶解鋳造法に比し、少ないエネルギーで製造できる利点がある。そして、合金素材から成るビレットの予熱温度を200〜450℃の範囲とし、かつ押出比を10以上に制御して静水圧押出しする方法であるから、押出材の結晶組識が容易に10μm以下の微細な平均粒径となり、300MPa以上の高強度マグネシウム合金材が製造できる。しかも、製品の表面性状も良好美麗で、必要に応じて、クラッド材の製造に転用することもきわめて容易である。
本発明の高強度マグネシウム合金材は、7重量%以上・15重量%のアルミニウムを含有し、静水圧押出しにより製造される点に特徴がある。この合金中のアルミニウムは、β相(Mg17Al12)として分散強化され、合金の引張り強度を300MPa以上に上げるのに必要であって、好ましくは、8%以上・10%以下の範囲で添加する。7%以下では、その効果が期待できず、15%以上の添加は極端に引張り強度、伸びが下がるので好ましくない。
一方、本発明の高強度マグネシウム合金材は、平均結晶粒径を10μm以下に調整することが必要である。材料組識が粗大であれば、そもそも上記β相の均一分散は起こり得ないが、製品合金材の強度を十分に確保するためには、結晶粒は微細である必要があり、平均結晶粒径を10μm以下とすることにより、上記アルミニウムの添加と相俟って、300MPa以上の引張り強度が確保できる。
なお、本発明のマグネシウム合金は、アルミニウムに加えて、1重量%以下の量で他の金属元素を配合してもよい。たとえば、展伸用材料としては、ASTMのAZ80あるいは鋳造用のAZ81、AZ91のように、Zn、Mn等を加えることができる。
本発明による高強度マグネシウム合金押出材の製造方法は、所定成分の合金粉体を押し固めて製作したビレットを静水圧押出しによって製造することが特徴である。静水圧押出加工することによって、前述のβ相は粒界だけでなく粒内にも均一かつ微細に分散して、その強化機構により製品合金材の強度を確実に向上させる。
上記ビレットを押出す前に200〜450℃の温度に予熱し、かつ押出比は少なくとも10以上、好ましくは20以上の条件で静水圧押出しすることが特徴である。これらの押出温度および押出比は、上記した合金の結晶粒径に大きく影響するからである。ビレットの予熱温度は上記の範囲でより低い方が結晶粒の微細化に効果的であり、450℃を超えると、再結晶により平均粒径が10μm以上に粗大化して製品の強度が低下する。しかし、余熱温度が200℃より低くすると、ビレットが押し詰まりを起こしたり、押出材の外観が美麗度を損ない、製品の価値を低下するようになる。
ビレットの原料にするための合金粉は、リサイクル品の活用から切削粉等の使用が実用的であるし、溶解しないため生産上のエネルギー効率がよい。しかも、粉体の製造過程で粉体に適度の加工歪みが導入され、静水圧押出時の粒成長を抑制する効果が期待できて好都合である。なお、使用すべき粉体の大きさはとくに限定されないが、微細過ぎて爆発や発火の危険を避けるために、0.5mm以上のサイズにするのが適当である。粉体の流径分布はとくに限定しない。
このように調製された合金の粉体は、まず通常の機械プレスの型にはめ、3〜5トン/cm2程度の押出圧で押し固めてビレットに成形する。ビレットは、図1に模式的に例示した静水圧押出しプレスを用いて押出すことにより、ビレット(1)の周囲から均等に圧力がかかって、力の伝達ロスが少ない状況のもとで効率的に押出しができる。なお、同図において(4)は圧力媒体、(5)はコンテナ、(6)はステム、(7)はダイス及び(8)は押出材をそれぞれ示している。
また、ビレット(1)は、図2に示すように、金属容器(2)に封入して管(3)から脱気してから静水圧押出しをすると、均等な押出し圧が効果的に作用し、押出し材の組識が容易に微細化すると同時に、押出し材表面の性状外観も良好美麗となり、次工程での機械が容易となる。
上記金属容器(2)の構成材料として、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムあるいはマグネシウム合金等の金属を適宜選択することができる。これらの金属材料は、内部に包み込まれるマグネシウム合金ビレットの材質面の変形抵抗との関係から、静水圧押出しを円滑にし、また必要に応じて、マグネシウム合金とその金属とのクラッド材を容易に製造することもできる。銅、銅合金、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を使用するときは、ビレットのマグネシウム合金材に対し、熱の変形態が異なるために、押出し後の剥離除去がしやすい利点がある。
なお、静水圧押出しは、金属容器(2)に装填したビレット(1)を適当な圧力媒体(4)、たとえばひまし油で包囲された状態下でコンテナ(5)に装入し、ステム(6)でダイス(7)から押出して押出し材(8)を得る。押出し速度は、押出し材の外観状況に応じて適宜設定してよく、実用上の範囲であれば、押出し材料の強度特性に影響を及ぼすことは考えられない。
また、ビレット(1)を装填した金属容器(2)内を真空脱気することにより、押出し時に内部のマグネシウム合金材が酸化するのを防止できる。金属容器(2)の使用は、高アルミニウム含有マグネシウム合金のように、難加工性の材料でも特に押出し初期の流動性をよくし、押出し材の押出し形状を安定させる効果がある。逆に、低〜中アルミニウム含有のマグネシウム合金の場合は、押出し後に変形する傾向があるが、金属容器とともに押出すことにより、押出し形状を忠実に保持することができる。
なお、本発明は、上述したように、ビレットの加熱温度条件とともに押出し比を10以上、好ましくは20以上とするが、10以下の低押出し比では、結晶粒度を10μm以下に制御できない。
このようにして押出されたマグネシウム合金の押出材は、グラインダー等を用いて表面部分の金属容器部分を研磨して除去し所望の製品を得る。
(実施例)本発明の高強度マグネシウム合金およびその製造方法に共通の実施例として、ASTM規格材のAZ91(Al:9%)およびAZ80(Al:8%)ならびに同規格外のMg−Al(Al:15%)を採用した。また、比較材にも同じくAZ91およびAZ80を採用すると同時に、別にASTM規格のAM60(Al:6%)およびAZ31(AL:3%)ならびに規格外のMg−Al(Al:18%)を採用した。なお、各供試材は不可避の不純物を含有する。
各供試材は0.5〜1mmの範囲で、表に示す各粒度に調製し、これらをプレス機を用いて4ton/cm2の圧力で押し固め、φ150mm〜2700mmのビレットに加工した。各ビレットを表に示す銅その他6種の金属製容器(厚さ:10mm)に装填し、いずれも真空脱気して封入した。
つぎに、各ビレットを、表1に示すように、100〜500℃の範囲の各温度に分けて加熱処理したのち、5、10、30の各押出し比のもとでそれぞれ静水圧押出しをおこなった。このときの押出し速度は毎分500〜1500mmであった。
得た各押出し材は、グラインダー研磨により金属容器であった部分を削りとってから、断面観察および引張り試験用の試験片に切り出して試験に供した。
試験は、断面の平均結晶粒径およびJIS14号試験片による引張強度の2種について実施し、引張試験はつぎの条件のもとで実施した。
・使用機器:(株)島津製作所製AG−100kNE
・引張り試験片:JIS14−A号
・試験片の形状:丸棒
・標点間の距離:35mm
・引張速度:2%変位までは0.5mm/min.それ以降0.7mm/min.
・試験温度:室温
一方、結晶粒径の測定は、JIS H 0501の結晶粒度測定法(クロスカット法)によることとし、図3のようにしておこなった。同図は線描であるが、光学顕微鏡により所定の倍率で供試片断面の結晶組識を観察撮影し、その画面を縦横それぞれ3〜5本の線で区切り、各線上の結晶数を計測した。さらに、これら縦横各線の長さL1〜L6の合計値(L1+L2・・・L6)を、各線上の結晶粒の個数の合計値(n1+n2・・・n6)で割り、倍率で換算した値が表に示した平均結晶粒径である(下式参照)。
(L1+L2+・・・/n1+n2+・・・)×(倍率で換算)
=平均結晶粒径(μm)
表1から明らかなように、本発明の実施例(No.1〜5、8〜10、20〜22)に相当する各供試片の引張り強度は、一様に300MPaを超えて高強度の特性が得られていることがわかる。具体的に考察すると、本発明の実施例では、ビレットの予熱温度が200〜450℃の範囲で低いほど結晶粒が微細化し、強度が比例的に向上している。また、静水圧押出しの押出し比が大きくなるほど同様の傾向を示している。
これに対し、比較例の場合は、同種の合金材であっても、押出し比が10以下であったり、あるいはビレットの予熱温度が高くなるにともなって、結晶粒径が粗大化して強度が著しく低下しており、あるいは、静水圧押出しが困難になることさえある。
Figure 2006233320
静水圧押出しの概略図 ビレットを金属容器に封入した概略図 平均結晶粒径測定のパターン図
符号の説明
1:ビレット 4:圧力媒体 5:コンテナ 6:ステム 7:ダイス
8:押出材(以上、図1)
2:金属容器 3:管(以上、図2)
L1〜L3:縦横ラインの長さ n1〜n3:ライン上の結晶個数(以上、図3)
























Claims (7)

  1. 7重量%以上・15重量%以下のアルミニウムを含有し、残部が実質的にマグネシウムの合金であって、平均結晶粒径が10μm以下の組識および300MPa以上の引張強度を有し、かつ静水圧押出しされたことを特徴とする高強度マグネシウム合金材。
  2. 8重量%以上・10重量%以下のアルミニウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度マグネシウム合金材。
  3. 7重量%以上・15重量%以下のアルミニウムを含有し、残部が実質的にマグネシウムの合金のビレットを200〜450℃の温度に加熱し、押出比10以上で静水圧押出しすることを特徴とする高強度マグネシウム合金材の製造方法。
  4. 7重量%以上・15重量%以下のアルミニウムを含有し、残部が実質的にマグネシウムの合金の粉体を押し固めて製作したビレットを金属容器に装入して脱気および密封したのち、この金属容器およびビレットを200〜450℃に加熱し、押出比10以上で静水圧押出しすることを特徴とする高強度マグネシウム合金材の製造方法。
  5. マグネシウム合金のビレットを押出比20以上で静水圧押出しすることを特徴とする請求項3または4に記載の高強度マグネシウム合金材の製造方法。
  6. 平均結晶粒径が0.5mm以上のマグネシウム合金粉体を使用することを特徴とする請求項4または5に記載の高強度マグネシウム合金材の製造方法。
  7. 銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金から成る金属容器を使用することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の高強度マグネシウム合金材の製造方法。



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