JP2006207682A - 動圧軸受装置およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い耐久性を備える動圧軸受装置を低コストに提供する。
【解決手段】 動圧軸受装置1は、軸部材2と、軸受部材とを主要な構成要素とする。軸部材2を構成する素材2a’の外周面2a1に、軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部を形成する。動圧発生部は、主に熱硬化性を有するインク12の微小液滴を、着弾または滴下させた後これを硬化させ形成されたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、動圧軸受装置、およびその製造方法に関するものである。
動圧軸受装置は、軸受部材と、軸受部材の内周に挿入した軸部材との相対回転により軸受隙間に生じた流体の動圧作用で圧力を発生させ、この圧力で軸部材を非接触支持する軸受装置である。この動圧軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を備えるものであり、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用の軸受装置として好適である。
この種の動圧軸受装置では、動圧発生部として、例えば軸部材の外周面や軸受部材の内周面に、動圧を発生するための溝(動圧溝)がヘリングボーン形状やスパイラル形状等に配列した状態で形成される。この特殊かつ複雑な形状の動圧発生部を精度良く形成するための方法として、以下に述べる方法が知られている。
動圧溝形状に対応する印刷型を、軸部材の素材外周面と接触させながら軸部材の回転に応じて移動させることにより、軸部材の素材外周に動圧溝以外の部分を耐食インク(紫外線硬化インク)で印刷すると共に、軸部材の印刷型との接触部以外の位置に光線(紫外線)を照射してインクを硬化させる。その後、非印刷部のエッチング処理、印刷部の除去作業を行い、動圧溝を形成する(例えば、特許文献1参照)。
特公昭62−49351号公報
上記の方法によれば、印刷後の非印刷部のエッチング処理、および印刷部の除去作業が必要となるため、形成工程が複雑かつ多工程となり高コスト化を招く。ところで、印刷時には印刷型が軸部材の外周面と接触して移動するため、接触部での摩耗が生じやすく、量産時には印刷型の摩耗や変形等による印刷精度の低下が懸念される。また、動圧溝形状や、軸部材をはじめとする素材形状に対応した印刷型が必要となるため、近年の多種多様な要求に対応しづらい。さらに、インク供給装置から供給されたインクは、スキージにより圧迫されながら印刷型を経て軸部材外周面に定着するから、溝形成に関与しない余分なインクが必要であり、使用量が増して不経済である。
上記のようにインクの硬化を紫外線照射のみで行う場合、インクは最初に紫外線が照射される部分、すなわちインクの外側から硬化を始め、接着界面から硬化は始まらない。特に上記のように軸部材の回転に応じて印刷を行う場合、紫外線による硬化作用が界面付近で起こるまでの間、インクと軸部材との界面での接着状態は非常に不安定であるため、インクの脱落や剥離を招く恐れがある。このとき高精度な動圧発生部を形成することが困難で、動圧軸受装置は所望の回転精度を満足しない恐れがある。従って、インクは印刷と同時に硬化させるのが望ましいが、紫外線照射装置の形状や配置を設定するのが困難である。
そこで本発明では、高精度かつ低コストに動圧発生部を形成可能にすると共に、高い耐久性を備える動圧軸受装置を低コストに提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明では、軸受部材と、軸受部材の内周に挿入した軸部材と、軸受隙間と、軸受部材と軸部材との相対回転時に軸受隙間に流体の動圧作用を生じさせるための動圧発生部とを有する動圧軸受装置において、動圧発生部が、微量インクの集合体を硬化させて形成され、かつ熱硬化性を有するインクで形成されていることを特徴とする動圧軸受装置を提供する。
ここで、本発明でいう「動圧発生部」とは、軸受隙間に流体の動圧作用で圧力を発生させることができるものであれば特にその形態は問わず、例えば複数の溝(ヘリングボーン溝、スパイラル状溝の何れでもよい。)と、各溝の間にあってこれを区画形成する凸状の区画部とからなるもの、あるいは、軸受隙間を円周方向の一方または双方にくさび状に縮小させる複数の円弧面を有するもの等が含まれる。また、「動圧発生部」は、例えば軸部材の外周面や端面、あるいは軸受部材の内周面や端面等、曲面あるいは平面であるか否かは問わず形成することができる。
本発明において、動圧発生部は熱硬化性を有する樹脂、例えば熱硬化性樹脂を含有したインクで形成される。インクは、直接熱照射を行い硬化させる他、素材を加熱し熱伝導を利用して硬化させることができるが、接着界面から硬化が進行し、良好な接着性を早期に確保できる観点から、素材を加熱し硬化させることが望ましい。この構成であれば、従来必要であった紫外線照射装置等の硬化装置を工程内に設ける必要がなくなり形成装置の簡略化を図ることができる。素材は、印刷しながら加熱する他、印刷工程に投入する前に予め加熱しておくこともできる。硬化を印刷と同時に開始させることができ、インクの剥がれや脱落を防止して高精度な動圧発生部を形成できる利点が得られる観点から、予め加熱しておくことが望ましい。素材の加熱方法は、いわゆる内部加熱、外部加熱の何れでもよい。なお、熱硬化性を有するインクで形成された動圧発生部は耐摩耗性に優れるため、耐久性に優れた動圧軸受装置を提供することができる。
インクには、上記熱硬化性を有するものの他、熱硬化性と光硬化性を併せ持つものを使用することもできる。この構成では、熱と光双方の硬化作用で、インクの表面と接着界面の双方から硬化が進行するため、硬化速度を飛躍的に速めることができ、サイクルタイムを減じて製造コストの低減を図ることができる。このとき、硬化させる為には別途光線照射装置を設ける必要がある。従来のようにインクの硬化を光線(ライト)の照射のみで行う場合、全てのインク液滴を均一に硬化させようとすると、ライトガイドの形状や光線照射装置の配置が困難である。一方、本発明では、上記のとおり硬化を促進させる目的で光線の照射を使用することから、従来のように厳密な照射精度は必要とされないため、容易に装置類の設定を行うことができる。ところで、インクに熱硬化性と光硬化性とを併せ持たせるためには、例えば熱硬化性樹脂をベース樹脂とし、これに熱硬化開始剤と光硬化(重合)開始剤とを混合して添加、あるいは熱・光硬化(重合)開始剤を添加すればよい。なお、光硬化開始剤としては、紫外線硬化タイプや赤外線硬化タイプの他、可視光硬化タイプも使用することができるが、低コストかつ短時間で硬化させることができる紫外線硬化タイプが特に望ましい。
動圧発生部を形成するに際し、微量インクを供給する具体的な方法として、例えば素材表面にインクを細孔ノズルから着弾または滴下する、いわゆるインクジェット法の他、ノズルではなく、インク液面からインク液滴を飛ばすノズルレスタイプのインクジェット法(ノズルレスインクジェット法)、電気泳動を利用してインクを誘導する方法、マイクロピペットを介してインクを液滴の状態ではなく連続的に吐出する方法、あるいは定着面までの距離を短縮しインクを吐出と同時に定着面に着弾させる方法も使用することができる。
以上に例示した微量インクを供給することによる動圧発生部の形成方法では、微量インクの供給量が精密に制御可能であるから、動圧発生部の形状パターンを予めプログラミングし、そのプログラムに沿ってインクの供給部(例えば、ノズル)の位置およびインクの供給・停止を制御することにより、任意かつ高精度の形状パターンを印刷することができ、しかも、形状パターンの各部を任意の厚さに形成することができる。従って、硬化したインク自体で必要な動圧発生部形状を確保することができる。
また、微量インクは、素材に対して非接触の状態で供給されるため、高精度の印刷が可能となる一方、従来方法で問題となる接触部での摩耗による精度低下を回避することができる。また、印刷型にインクを余分に供給してから、スキージにより余分なインクを除去する必要がなく、必要箇所のみにインクが使用されるので、インクは動圧発生部の形成に関与するだけの使用量で足り、インクの使用量を削減することができる。さらに印刷型は不要で、かつ軸部材の回転に応じて印刷型を移動させる機構も不要となるので、成形装置を簡略化できる。
以上の特徴を有する動圧軸受装置は、高い回転精度と耐久性を要求される情報機器用のモータ、例えばロータマグネットとステータコイルとを有するHDD用のスピンドルモータ等に好ましく用いることができる。
以上より、本発明によれば、高精度かつ低コストに動圧発生部を形成可能にすると共に、高い耐久性を備える動圧軸受装置を低コストに提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、その一例として軸部材2を構成する軸部2aの外周面2a1に動圧発生部を形成する形態について詳述する。
図1は、本発明にかかる動圧発生部の形成方法の一例として、インクジェット法を用いた動圧発生部の印刷装置の概要を示すものである。図示のように、この印刷装置は、回転駆動される軸部2aの素材2a’の外周面2a1と対向させた一又は複数のノズルヘッド10と、素材2a’を両端支持する支持部13とを主要な構成要素とする。素材2a’は、例えばステンレス鋼等の金属材料で円柱状に形成される。ノズルヘッド10には、インク12の微小液滴を吐出する複数のノズル14が軸方向に配設されている。インク12は、例えば熱硬化性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物である。
インク12を構成する熱硬化性樹脂は、耐熱性を有するものであれば特に限定はなく、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができ、これらを適宜溶剤に溶解して使用することもできる。なお、必要に応じてこれらに熱硬化開始剤等の各種添加剤を加えてもよい。
溶剤を用いる場合、熱硬化性樹脂を溶解することができるものであれば特に限定はなく、例えば熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合にはエタノール等のアルコール系溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、あるいは酢酸ブチル等のエステル系溶剤を使用することができ、エポキシ樹脂を用いる場合にはトルエンやキシレン等の芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、あるいはエステル系溶剤を使用することができ、またアルキド樹脂を用いる場合には芳香族系溶剤やエステル系溶剤などを好ましく使用することができる。
以上の構成において、素材2a’を支持部13で両端支持しつつ回転させながら、ノズル14からインク12を吐出することにより、インク12の微小液滴が素材2a’の外周面2a1の所定位置に着弾する。素材2a’の外周面2a1には、この微小液滴の集合体で、動圧発生部としての、例えば凸状の区画部Aaとインクで被覆されていない領域、すなわち動圧溝Abとがヘリングボーン形状に配列された動圧溝パターンが形成される。この際、各ノズル14では、予め定められたタイミングでインク12の供給・停止が適宜切り換えられる。この動圧溝パターンの形成は、素材2a’の回転に伴い、素材2a’の外周面2a1の円周方向に徐々に進行する形で行われる。
高精度な動圧発生部を形成する観点から、素材2a’は予め加熱した状態で印刷装置に投入し、着弾と同時に、接着界面からインク12の硬化が始まるようにすることが望ましい。例えば従来のように紫外線のみでインク12の硬化を行う場合、硬化はインク12の表面から進行するため、界面の接着状態は不安定のままで素材2a’の回転、すなわち印刷が進行される。また、表面が最初に硬化することで、インク12中に含まれるガス等の逃げ道が失われ、ガス等が混入したままで硬化してしまう場合がある。この状態で動圧軸受装置に組み込まれて使用されると、運転中には高温下に曝されるため、インク中に混入したガス等が膨張し、インク液滴の破裂等に起因したパターン破壊が発生する恐れがある。一方、本発明の構成を採用し、界面から硬化が始まれば、インク12中に含有されたガス等がインク中から外部へ抜け出て行き、インク液滴の破裂等を回避することができることに加え、界面の接着力が確保された状態で印刷を進行させることができるため、高精度なパターン形成が可能となる。
ここで、素材2a’を加熱する方法としては、いわゆる外部加熱と内部加熱の何れも採用可能である。外部加熱とは、物質(ここでは素材2a’)の外部に配置した熱源から、熱伝導・輻射・対流などを利用して表面から内部に徐々に加熱が進むようにする加熱方法を言い、例えば直火・熱風・スチーム・電熱等の付加を挙げることができる。一方、内部加熱とは、物質そのものが発熱することにより、内部と外部とが同時並行的に加熱されるようにする加熱方法を言い、例えば高周波やマイクロ波を利用した電磁波加熱を挙げることができる。
なお、本実施形態においては、予め加熱した素材2a’を用いて動圧発生部を形成する形態を例示したが、印刷装置内に熱源を配置し、加熱しながら印刷を行うことで動圧発生部を形成することもできる。さらには、両加熱方法を併用することもでき、この場合、硬化を着弾したインク液滴の表面と界面の双方から進行させることができるため、サイクルタイムを減じて製造コストの低減を図ることができる。
最初に印刷された部分が1回転してノズルヘッド10の対向領域に達したところで、ノズルヘッド10からのインク12の吐出を止める。印刷と硬化は素材2a’の回転に伴い、素材2a’の円周方向に徐々に進行する。このようにしてインク12を全て硬化させた後、回転を停止させて素材2a’を支持部13から取り外す。
この印刷の際には、ノズルヘッド10を固定位置に配置する他、軸方向にスライドさせてもよい。また、図示例では、一つのノズルヘッド10を使用する場合を例示しているが、これを軸方向あるいは円周方向の複数箇所に配置することもできる。さらには素材を1回転させる間に全周の動圧溝パターンを印刷する他、素材2a’をこれ以上の回転数、例えば2〜数十回転させて、素材2a’の全周に動圧溝パターンを形成することもできる。また、例えば図2に示すように、複数の素材2a’を直列に結合し、これらを同時回転させながら一または複数のノズルヘッド10を軸方向にスライドさせて各素材2a’に動圧溝パターンを印刷することもできる。この場合、素材2a’同士の同軸度の確保は、例えば一方の軸端に設けた凸部2a2を他方に設けた凹部に嵌合させることにより行うことができる。
インクジェット法では、予めプログラミングした形状パターンにならってインク12の微小液滴を精密に吐出する。従って、高精度に動圧発生部としての動圧溝パターンを印刷することができる。加えて、硬化したインク12自体で必要な動圧溝深さ(数μm〜数十μm)を確保することができるので、その後エッチング等の溝形成工程を経ることなく、そのまま動圧溝付きの軸部材2として使用することが可能となる。
また、インクジェット法による印刷では、従来のスクリーン印刷機のように印刷型と素材2a’との接触部分を持たないから、接触部分での摩耗による印刷精度の低下を回避することができ、量産時にも安定して動圧溝精度を確保することができる。さらに印刷型や印刷型を保持するための印刷用スクリーン等が不要であり、かつ素材2a’の回転に応じて印刷型を移動させる機構も不要となるので、成形装置の構造を簡素化することができる。また、インクは動圧溝パターンの形成に関与するだけの使用量で足りるので、スキージを必要とする従来装置に比べ、インクの使用量を削減して低コスト化を図ることもできる。
また、インク12は加熱された素材2a’に着弾し、インク12の硬化は着弾と同時に開始されるため、回転に伴うインク12の剥離や脱落を防止して高精度な動圧溝パターンを効率良く形成できる。なお、最初の印刷部分は硬化された上でノズルヘッド10の対向位置に戻るので、硬化不十分なインクが重なって動圧溝パターンをくずすような事態も回避することができる。
以上の説明では、インク12を熱硬化させる形態を例示しているが、光硬化、好ましくは紫外線硬化を併用することもでき、硬化速度を飛躍的に速めることができる。従来のように、紫外線硬化のみを利用していた場合に必要であった紫外線照射装置(例えば、光源11。図3参照。)は、インクを均一に硬化する必要があったため、ライトガイドの形状設定や印刷装置への配置等が困難であった。しかし本構成においては、光源11は硬化速度の向上を目的として配置されるものであるから、厳密な精度は必要とされないため、容易に配置位置等を設定することができる。
図3に熱硬化と紫外線硬化を併用するときの印刷装置の一例を示す。この形態では、図1に示すものに追加して、光源11がノズルヘッド10と素材2a’を挟んだ対向位置に配置される点で図1に示す形態と異なる。なお、図1に示す形態と同一の構成部材や効果については、同一記号を付与し重複説明は省略する。
図3に示す印刷装置で使用されるインク22は、ベース樹脂に硬化剤(重合開始剤、重合開始触媒等)を添加したものが使用される。ベース樹脂としては、ラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマー、カチオン重合系モノマーを好ましく使用することができる。なお、本実施形態では、ベース樹脂としてカチオン重合系モノマー、例えば、セロキサイド2021Pに例示される脂環式エポキシ樹脂にセロキサイド3000(共に、ダイセル化学工業株式会社製)に例示される脂環式エポキシ希釈剤を混合したものを使用した。そして、インク22としては、上記ベース樹脂100部に対し、熱・光硬化開始剤としてのサンエイドSI−110、SI−180、SI−100L、SI−80L、あるいはSI−60L(何れも、三新化学工業株式会社製)等に例示される芳香族スルフォニウム塩を3〜5部添加したものを使用した。なお、ベース樹脂に添加される硬化剤としては、上記の熱・光硬化開始剤の他、例えば、サンエイドSI―H40やサンエイドSI−L150(共に三新化学工業株式会社製)等に例示される熱硬化開始剤と、Uvacure1590やUvacure1591(共にダイセル・ユーシービー社製)等に例示されるトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート塩の混合物である光硬化(重合)開始剤とを混合したものを使用することもできる。
以上の構成において、素材2a’を支持部13で両端支持しつつ回転させながら、ノズル14からインク22を吐出することにより、インク22の微小液滴の集合体で素材2a’の外周面2a1に動圧溝パターンが形成される。インク22の硬化は、まず着弾と同時に熱硬化反応により、界面から表面に向かう形で徐々に進行する。そして印刷が円周方向に徐々に進行すると(図示例の場合は半周すると)、印刷された部分が光源11の対向領域に達し、紫外線の照射を受けたインク22が光硬化(重合)反応を起こして順次硬化する。この硬化は、上記とは逆にインク22の表面から界面に向かう形で徐々に進行する。従って、インク22は両方向からの硬化作用を受けるため、硬化速度を飛躍的に速めることができ、サイクルタイムを低減して製造コストの低減を図ることができる。なお、光源11の配置に関しては、紫外線の硬化作用をノズル14に及ぼさず、照射紫外線によるノズル14の目詰まり等を防止することができれば、その他は特に厳密な精度を要求されない。本実施形態では、照射される紫外線が素材2a’に遮蔽される位置に配されるため、容易に光源11の配置を行うことができる。
以上の説明では素材2a’を回転駆動しているが、素材2a’を固定し、ノズルヘッド10や光源11を素材2a’周りで回転駆動してもよい。
なお、以上と同様の方法で、内周面に動圧発生部を有する軸受スリーブ8(以下、各部材は図4参照。)、すなわち動圧発生部がスリーブ状の素材内周面に供給した微量インクの集合体を硬化させて形成された軸受スリーブも製造可能である。この他、同様の方法で、例えば軸部材2のフランジ部2b、ハウジング7の底部7c等の端面にスラスト方向の動圧を発生させるための動圧発生部を形成することもできる。
図4は、上記工程を経て製作された軸部材2を組込んだ動圧軸受装置の第1構成例を示している。この実施形態において軸受部材は、軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8とは別体のハウジング7とで構成されている。この動圧軸受装置1は、回転中心に軸部2aを有する軸部材2と、軸部2aをその内周に挿入可能な軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8を内周に固定したハウジング7と、ハウジング7の一端開口を封口するシール部材9とを備えている。なお、以下説明の便宜上、シール部材9の側を上側、シール部材9の軸方向反対側を下側として説明を行う。
軸部材2は、軸部2aとその一端に一体または別体に設けられたフランジ部2bとで構成される。軸部2aの外周面2a1には、動圧発生部として、例えば、ヘリングボーン形状に配列された動圧溝Abと、動圧溝Abを区画形成する区画部Aaとを含むラジアル軸受面Aが軸方向に離隔して形成される。上側のラジアル軸受面Aでは、動圧溝Abが軸方向中心mに対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。そのため、軸部材2の回転時、動圧溝Abによる潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は下側の対称形のラジアル軸受面Aに比べ上側のラジアル軸受面で相対的に大きくなる。
軸受スリーブ8は、例えば、黄銅やアルミ(アルミ合金)等の軟質金属材料、あるいは、焼結金属材料で円筒状に形成される。軸受スリーブ8の内周面8aは、平滑な円筒面として形成されている。軸受スリーブ8の下側端面8bの一部環状領域には、図示は省略するが、例えばスパイラル形状に配列した複数の動圧溝と、動圧溝を区画形成する区画部とを含む第1スラスト軸受面Bが形成されている。なお、動圧溝の形状としては、上記の他ヘリングボーン形状等を採用しても良い。
ハウジング7は、略円筒状の側部7bと、側部7bの一端開口を封口する略円盤状の底部7cとで構成されている。側部7bと底部7cは、例えば、ステンレス鋼や黄銅等の金属材料、あるいは樹脂材料で一体又は別体に形成される。この実施形態で側部7bと底部7cとは金属材料で別体として形成され、底部7cは側部7bの下端部に接着、圧入、レーザ溶接等の適宜の手段で固定されている。底部7cの上側端面7c1の一部環状領域には、図示は省略するが、例えばスパイラル形状に配列した複数の動圧溝と、動圧溝を区画形成する区画部とを含む第2スラスト軸受面Cが形成されている。なお、側部7bと底部7cとを金属材料や樹脂材料で一体に型成形することもできる。その際、上側端面7c1に設けられる動圧溝は、側部7bおよび底部7cからなるハウジング7の成形と同時に型成形することができ、これにより別途底部7cに動圧溝を成形する手間を省くことができる。なお、動圧溝の形状としては、上記の他ヘリングボーン形状等を採用しても良い。
ハウジング7の開口部7aの内周には、金属材料あるいは樹脂材料で形成された環状のシール部材9が圧入、接着等の手段で固定されている。シール部材9の内周面9aは、軸方向上方に向かって漸次拡径するテーパ状をなし、軸部2aの外周面と所定容積のシール空間Sを介して対向する。また、シール部材9の下側端面9bは軸受スリーブ8の上側端面8cと当接している。動圧軸受装置の組立後、シール部材9で密封された動圧軸受装置1の内部空間には、流体として例えば潤滑油が充満され、この状態では、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。なお、部品点数の削減および組立工数の削減のため、シール部材9をハウジング7と一体形成することもできる。あるいは、シール部材9を削除して、軸受スリーブ8の内周面8aの上端部側領域をラジアル軸受面となる領域よりもわずかに大径に形成し、この大径に形成した領域の内径側に所定容積のシール空間が形成されるようにしても良い。
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸部2aの外周面2a1に離隔形成されたラジアル軸受面Aは、それぞれ軸受スリーブ8の内周面8aとラジアル軸受隙間を介して対向する。軸部材2の回転に伴い、各ラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油が動圧作用を発生し、その圧力によって軸部材2がラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1のラジアル軸受部R1と第2のラジアル軸受部R2とが形成される。
また、軸受スリーブ8の下側端面8bに形成された第1スラスト軸受面Bは、第1スラスト軸受隙間を介してフランジ部2bの上側端面2b1と対向し、底部7cの上側端面7c1に形成された第2スラスト軸受面Cは、第2スラスト軸受隙間を介してフランジ部2bの下側端面2b2と対向する。軸部材2の回転に伴い、両スラスト軸受隙間に満たされた潤滑油が動圧作用を発生し、その圧力によって軸部材2がスラスト方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト両方向に回転自在に非接触支持する第1のスラスト軸受部T1および第2のスラスト軸受部T2が形成される。
なお、この動圧軸受装置1では、軸部材2の回転中は潤滑油がハウジング7の底側に押し込まれるため、このままではスラスト軸受部T1、T2のスラスト隙間隙間での圧力が極端に高まり、これに起因して潤滑油中での気泡の発生や潤滑油の漏れ、あるいは振動の発生が懸念される。この場合、軸受スリーブ8の外周面8d及びシール部材9の下側端面9bにスラスト軸受隙間(特に第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間)とシール空間Sを連通する循環路10a、10bを設ければ、この循環路10a、10bを通って潤滑油がスラスト軸受隙間とシール空間Sとの間で流動するため、かかる圧力差が早期に解消され、上記の弊害を防止することができる。図4では一例として、循環路10aを軸受スリーブ8の外周面8dに形成する場合、および循環路10bをシール部材9の下側端面9bに形成する場合を例示しているが、循環路10aをハウジング7の内周面に、循環路10bを軸受部材8の上側端面8cに形成することもできる。
ところで、本実施形態においては、第1スラスト軸受面を軸受スリーブ8の下側端面8bに、第2スラスト軸受面を、ハウジング7を構成する底部7cの上側端面7c1に形成したが、第1スラスト軸受面Bをフランジ部2bの上側端面2b1に、第2スラスト軸受面Cをフランジ部2bの下側端面2b2に形成することもできる。なお、各スラスト軸受面B、Cは、型成形の他、ラジアル軸受面Aと同様に印刷形成することもできる。
本発明の実施形態は上記のものに限らず、他の形態の動圧軸受装置にも好ましく用いることができる。以下図5〜図7に基づき説明を行うが、図4に示す実施形態と同一の構成部材および要素には、同一記号を付与し、重複説明を省略する。なお、以下説明する何れの実施形態においても、軸部材2の軸部2aの外周面2a1に上記インクジェット法によって動圧発生部を有するラジアル軸受面Aが形成されている。
図5は、動圧軸受装置1の他の実施形態を示すものである。動圧軸受装置1とは、主に、シール空間Sがハウジング7の外径側に形成されている点、および第2のスラスト軸受部T2がハウジング7の上側端面7b1とディスクハブ3を構成するプレート部3aの下側端面3a1との間に形成されている点が図4に示す実施形態と異なる。
図6は、動圧軸受装置1の他の実施形態を示すものである。この動圧軸受装置1では、主に軸受スリーブ8とハウジング7とを一体化して軸受部材27を構成した点、および蓋部材28の外周に上方に突出する円筒部28aを設け、この円筒部28aを、軸受部材27のうち、軸受スリーブ8に相当するスリーブ部27aの端面27a1に当接させた点で図4に示す動圧軸受装置1と異なる。この実施形態では、部品点数の削減および組立工数の削減を図ることができるため、より一層の低コスト化を図ることができる。
図7は、動圧軸受装置1の他の実施形態を示すものである。この動圧軸受装置1のスラスト軸受部Tは、ハウジング7の開口部側に位置し、一方のスラスト方向で軸部材2を軸受スリーブ8に対して非接触支持する。軸部材2の下端よりも上方にフランジ部2bが設けられ、このフランジ部2bの下側端面2b2と軸受スリーブ8の上側端面8cとの間にスラスト軸受部Tが形成される。ハウジング7の開口部内周にはシール部材9が装着され、シール部材9の内周面9aと軸部材2の軸部2aの外周面2a1との間にシール空間Sが形成される。シール部材9の下側端面9bはフランジ部2bの上側端面2b1と軸方向隙間を介して対向しており、軸部材2が上方へ変位した際には、フランジ部2bの上側端面2b1がシール部材9の下側端面9bと係合し、軸部材2の抜け止めがなされる。
ところで、以上に示したラジアル軸受面Aに形成される動圧発生部の形状は一例にすぎず、インクジェット法により印刷可能な形状であれば、これ以外の動圧溝形状(例えばスパイラル形)に対応した動圧溝パターンを動圧発生部として形成することもできる。ラジアル軸受面Aにはこの他にも、軸方向の動圧溝を円周方向の複数箇所に形成したいわゆるステップ状の動圧発生部、さらには、円周方向に複数の円弧面を形成したいわゆる多円弧状の動圧発生部についても、同様の方法により形成することができる。
また、以上の説明では、ラジアル軸受面Aを軸方向二箇所に離隔して形成する場合を例示しているが、ラジアル軸受面Aの数は任意であり、軸方向の一箇所あるいは三箇所以上にラジアル軸受面Aを形成することもできる。
また、スラスト軸受面には、動圧発生部として、上記のスパイラル形状等に配列された動圧溝を有する動圧発生部の他、例えばステップ状の動圧発生部、いわゆる波型状(ステップ型が波型になったもの)の動圧発生部を形成することもできる。
図8は、以上で説明を行った動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。この情報機器用スピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、動圧軸受装置1と、動圧軸受装置1の軸部材2に取り付けられたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、ブラケット6を備えている。ステータコイル4はブラケット6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取り付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスクDを一枚または複数枚保持する。ブラケット6の内周にハウジング7が装着されている。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する電磁力でロータマグネット5が回転し、それに伴ってディスクハブ3、軸部材2が回転する。このモータは高い耐久性と回転精度とを兼ね備えたものである。
インクジェット方式の印刷装置の一例を示す概要図である。 インクジェット方式の印刷装置の他形態を示す概要図である。 インクジェット方式の印刷装置の他形態を示す概要図である。 動圧軸受装置の一例を示す断面図である。 動圧軸受装置の他の形態を示す断面図である。 動圧軸受装置の他の形態を示す断面図である。 動圧軸受装置の他の形態を示す断面図である。 動圧軸受装置を組み込んだモータの一例を示す概要図である。
符号の説明
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2a’ 素材
2b フランジ部
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
9 シール部材
10 ノズルヘッド
11 光源
12、22 インク
14 ノズル
27 軸受部材
A ラジアル軸受面
B 第1スラスト軸受面
C 第2スラスト軸受面
Aa 区画部
Ab 動圧溝
R1、R2 ラジアル軸受部
T、T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間

Claims (6)

  1. 軸受部材と、軸受部材の内周に挿入した軸部材と、軸受隙間と、軸受部材と軸部材との相対回転時に軸受隙間に流体の動圧作用を生じさせるための動圧発生部とを有する動圧軸受装置において、
    動圧発生部が、微量インクの集合体を硬化させて形成され、かつ熱硬化性を有するインクで形成されていることを特徴とする動圧軸受装置。
  2. インクが、さらに光硬化性を有することを特徴とする請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 動圧発生部が、インクをノズルから着弾あるいは滴下させて形成されていることを特徴とする請求項1又は2何れか記載の動圧軸受装置。
  4. 請求項1〜3何れか記載の動圧軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを有するモータ。
  5. 素材表面に、微量インクの集合体で軸受隙間に流体の動圧作用を生じさせるための動圧発生部を形成するに際し、インクを熱硬化させることを特徴とする動圧発生部の形成方法。
  6. さらに、光線の照射を付加し、インクの硬化を行う請求項5記載の動圧発生部の形成方法。
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