JP2006203930A - 線形電力増幅器及びそのディジタルプリディストータ設定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ディジタル送信信号とディジタルパイロット信号とを合成する加算器の出力信号に、べき級数モデルによる前置歪を付加するディジタルプリディストータ、その出力信号をアナログ前置歪付加信号に変換し、その信号を送信周波数帯にアップコンバートし、アップコンバート後の信号を電力増幅し、電力増幅器の出力信号の一部をダウンコンバートし、ダウンコンバート信号からべき級数モデルと同じ奇数次の歪を抽出し、その奇数次歪成分のレベルが小さくなるようにディジタルプリディストータ係数を制御するディジタルプリディストータ制御部を備え、ディジタルパイロット信号が狭帯域の変調信号である。
【選択図】図8
Description
しかしながらこれのアナログ回路による線形化回路技術は、一般に高度な調整技術などを必要としている。さらに変調回路を含めて送信機の小型化及び経済化を可能にするにはアナログ回路を簡素かつ簡易に構成する必要がある。この点において、線形化処理をディジタル信号処理にて行うディジタルプリディストータは、従来のアナログ回路によるプリディストータと比較して有利な特徴をもつ。また、フィードフォワード増幅器のように補助増幅器などの線形化するためのアナログ回路を持たないため、プリディストータを用いた増幅器は高効率増幅を達成できる可能性がある。
電力増幅器でなるべく高効率増幅を行うには、歪補償量を大きくして増幅器の出力バックオフを圧縮する必要がある。図1に1dB利得圧縮点からの出力バックオフと効率の
関係を示す。検討条件は理想的なB級バイアスとした。図1から効率を高めるには出力バックオフの圧縮を可能とする歪補償量を大きくする必要がある。
図2に歪補償量と3次歪成分の振幅及び位相偏差の関係を示す。少なくとも歪補償量を30dB以上達成するには、振幅偏差±0.2dB以内、位相偏差±2deg以内を達成するディジタルプリディストータが必要となる。図2からディジタルプリディストータには、経年変化、温度変化などに対しても所定の振幅偏差及び位相偏差を達成することが求められる。
しかしながら、ルックアップテーブルによるディジタルプリディストータでは、歪成分と設定されるルックアップテーブル値の関係が不明瞭なこと、さらに経年変化、温度変化などによる増幅器の非線形特性のわずかな変化を補正する具体的方法は示されていなかった。
歪成分を高精度に補償できる方法として、べき級数モデルに基づくプリディストータがある。これまでにアナログ回路にて実現されており、歪改善量は30dB以上を達成している(例えば非特許文献5)。べき級数モデルは増幅器の非線形特性を精度よくモデル化していることが知られている(例えば非特許文献6)。べき級数モデルを用いるディジタルプリディストータにおける歪補償方法では、増幅器出力信号から各次の係数を補正する信号を抽出する必要がある。これまで特許文献1では、送信信号から基本波と各次の歪成分を除去して補正用信号を抽出していた。より簡易にべき級数モデルの補正用信号を抽出する方法として、2波等レベルの搬送波をパイロット信号として用いる方法がある(前記非特許文献5参照)。
しかしながら、増幅する周波数帯域が広くなるにつれて、例えば図3に示すように電力増幅器の利得特性および位相特性は周波数偏差が大きくなり、信号を増幅する際にこの影響を無視できなくなる。そのため、プリディストータで発生させた歪の振幅および位相を全周波数帯域にわたって一定に変化させただけでは、全周波数帯域にわたってその歪を電力増幅器で発生する歪を打ち消すレベルかつ逆位相とすることができない。よって、高精度な歪補償を行うためには、電力増幅器における利得特性および位相特性の周波数偏差を打ち消すように、プリディストータで発生させる歪の周波数対振幅特性と周波数対位相特性を変化させなければならない。プリディストータで発生させる歪の周波数対振幅特性と周波数対位相特性を変化させる方法として、特許文献4ではイコライザを用いている。
増幅器出力の相互変調歪成分を狭帯域フィルタで抽出し、アナログプリディストータの各次係数を補正する場合、アナログプリディストータにおけるパイロット信号の帰還系統では、送信信号に対して十分に短時間にアナログプリディストータの係数の補正が容易に可能であった。これに対して、ルックアップテーブル型のディジタルプリディストータでは増幅器出力からモニタされたパイロット信号をディジタル化する必要があり、アナログプリディストータと比べて帰還系統による遅延の問題があった。
このようにパイロット信号を用いたディジタルプリディストータにおける装置構成方法が不明瞭であった。ディジタルプリディストータにおいて、高い歪補償量を達成しつつ、経年変化及び温度変化などに対して常に高い歪補償量を達成する簡易な構成法が求められていた。
また、特許文献7に示されているイコライザでプリディストータの歪の周波数特性を変化させる方法は、プリディストータを制御する帰還系統の周波数特性を均一化するものであり、電力増幅器における周波数対利得特性および周波数対位相特性の周波数偏差を考慮したものではない。そこで、電力増幅器における利得特性および位相特性の周波数偏差を打ち消すように、プリディストータで発生させた歪の周波数対振幅特性と周波数対位相特性を調整することができるプリディストータが必要となる。
ディジタル送信信号と異なる周波数のディジタルパイロット信号を生成するパイロット信号発生器と、
上記ディジタル送信信号と、上記ディジタルパイロット信号を合成する加算器と、
上記加算器の出力信号を入力とし、べき級数モデルにより前置歪処理を行い前置歪付加信号を生成するディジタルプリディストータと、
上記ディジタルプリディストータにより出力された上記前置歪付加信号をアナログ前置歪付加信号に変換するディジタルアナログ変換器と、
上記アナログ前置歪付加信号を送信周波数帯にアップコンバートする周波数アップコンバート部と、
上記アップコンバートされた信号を電力増幅する電力増幅器と、
上記電力増幅器の出力の一部をダウンコンバートし、ダウンコンバート信号を出力する周波数ダウンコンバート部と、
上記ダウンコンバート信号から上記べき級数モデルと同じ奇数次の歪成分を抽出し、その奇数次歪成分のレベルが小さくなるように上記プリディストータの係数を制御するディジタルプリディストータ制御部、
とを含むように構成され、上記ディジタルパイロット信号は上記送信信号よりも狭帯域の変調信号である。
(a) ディジタルパイロット信号を発生するステップと、
(b) 上記ディジタルパイロット信号と上記ディジタル送信信号を合成し、その合成信号に対しべき級数モデルによる予め決めた数の奇数次の歪成分を生成して上記合成信号に付加して前置歪付加信号を生成するステップと、
(c) 上記前置歪付加信号をアナログ前置歪付加信号に変換するステップと、
(d) 上記アナログ前置歪付加信号を予め決めたキャリア周波数で送信周波数帯にアップコンバートするステップと、
(e) 上記アップコンバートされた信号を電力増幅するステップと、
(f) 上記電力増幅された出力信号の一部をダウンコンバートとし、パイロット信号成分を出力するステップと、
(g) 上記パイロット信号成分からべき級数モデルによる奇数次歪成分のレベルが小さくなるように上記ディジタルプリディストータの係数を制御するステップ、
とを含む。
また、奇数次歪発生器により発生された奇数次歪に対し、電力増幅器の周波数特性と逆特性の周波数特性で補償することにより、広い帯域に渡って電力増幅器の歪を除去可能となる。特にパイロット信号として1つの変調波信号を用いているので、受信機において誤り訂正処理などの復号回路によって検出感度を高められる。
この発明による線形電力増幅器の原理的構成を図4に示す。送信信号Sとパイロット信号PLは、送信信号発生器11とパイロット信号発生器12によりそれぞれ別々のディジタル信号処理にて生成され、加算器15で加算されてディジタルプリディストータ20に与えられる。送信信号Sはベースバンド信号であっても、中間周波信号であってもよいが、以下特にことわらない場合はベースバンド信号とする。べき級数モデルによるディジタルプリディストータ20はパイロット信号PLと送信信号Sを一体とした入力信号として前置歪のディジタル信号処理を行う。
ディジタルプリディストータ20の出力は、パイロット信号PLと送信信号Sを一体化した信号の帯域より少なくとも2倍以上の帯域の動作速度を持つディジタルアナログ変換器31によりアナログ信号に変換され、周波数アップコンバート部33で送信周波数帯の高周波送信信号に周波数変換され、電力増幅器37に与えられる。電力増幅器37の出力は分配部38により電力分配され一部を周波数ダウンコンバート部40に与えるとともに、残りを線形電力増幅器の出力として例えばアンテナに送出する。分配された電力の一部は周波数ダウンコンバート部40でダウンコンバートされ、ディジタルプリディストータ制御部50に与えられる。制御部50はダウンコンバートされた信号からパイロット信号の奇数次歪成分を抽出し、それを用いてディジタルプリディストータ20の係数を補正する。
このように、パイロット信号を用いたディジタルプリディストータ20は、メモリから読み出した補正データにより係数を補正するのではなく、検出された歪成分により歪成分が小さくなるように直接的に係数補正を行うので、経年変化や温度変化の影響を受けることはない。また、パイロット信号の帰還時間については、パイロット信号の帯域は送信信号よりも狭帯域であることから、従来のディジタルプリディストータでの遅延時間よりも本発明のディジタルプリディストータの遅延時間を長くできる。このため、図4のようにパイロット信号をダウンコンバートする帰還系統であっても帰還時間については問題にならない。
図5に本発明によるディジタルプリディストーション方法を用いた線形電力増幅器の第1関連例を示す。パイロット信号として等レベル2波のトーン信号PL1, PL2を用いている。この第1関連例は、ディジタル信号処理によるトーン信号発生器12A, 12Bとディジタル加算器14から構成されたパイロット信号発生器12と、ディジタルプリディストータ20と、ディジタルアナログ変換器31と、局部発振器33Aとミキサ33Bと帯域通過フィルタ33Cとから構成された周波数アップコンバート部33と、電力増幅器37と、分配部38を構成する方向性結合器38Aとパイロット信号抽出用の帯域通過フィルタ38Bと、ミキサ41と帯域通過フィルタ42と増幅器43とアナログ・ディジタル変換器44からなる周波数ダウンコンバート部40と、ディジタルプリディストータ制御部50とからなる。ディジタルプリディストータ20は7次までの構成例であるが、次数は構成により異なっても良い。実用的にはディジタルアナログ変換器31の出力側にはエリアジングカット用低域通過フィルタが挿入されるが、この発明の本質とは関係しないので図示してない。
方向性結合器38Aで高周波送信信号の送信出力の一部が取り出され、パイロット信号抽出用の帯域通過フィルタ38Bでパイロット信号成分(パイロット信号とその高次歪成分)が抽出される。抽出されたパイロット信号成分はミキサ41に与えられ、局部発振器33Aからのキャリア信号と混合され、混合出力から帯域通過フィルタ42によりダウンコンバートされたパイロット信号成分を検出する。得られたパイロット信号成分は増幅器43で増幅される。アナログ・ディジタル変換器44でディジタル信号に変換されてディジタルプリディストータ制御部50に与えられる。
パイロット信号PL1, PL2として等レベル2波トーン信号(CW信号)が用いられているため、電力増幅器37の出力にてトーン信号近傍に現れる奇数次の歪成分を各奇数次歪成分抽出器51A,51B,51Cにて抽出する。第1関連例のディジタルプリディスト一夕制御部50はディジタル信号処理にて構成しているが、同様の構成をアナログ回路で構成してもよい。
Yは、行Bに示すように送信信号Sとパイロット信号PL1, PL2に前置歪処理をした前置歪成分SD, PD3L, PD3Hが生じている。ここでは、3次の歪成分の例を示しているが、例えばパイロット信号PL1, PL2の5次の歪成分としてはPD3HよりΔf高い成分とPD3LよりΔf低い成分が生成されるが、図示してない。7次の歪成は5次の歪成分の更にΔf外側に生成されるがここでは示していない。
ステップS1:ディジタルパイロット信号PL1, PL2を生成し、ディジタル送信信号Sと加算して合成信号を得る。
ステップS2:ディジタル合成信号に対する奇数次歪成分を生成する。
ステップS3:奇数次歪成分の位相と振幅を設定する。
ステップS4:歪成分と遅延基本波成分を加算して前置歪付加信号を生成する。
ステップS5:前置歪付加信号をアナログ信号に変換する。
ステップS6:アナログ前置歪付加信号を高周波信号にアップコンバートする。
ステップS7:高周波前置歪付加信号を電力増幅器で電力増幅する。
ステップS8:増幅された高周波信号からパイロット信号成分を抽出し、ダウンコンバートする。
ステップS9:ダウンコンバートされたパイロット信号成分をディジタル信号に変換する。
ステップS10:ディジタルパイロット信号成分から歪成分を抽出する。
ステップS11:歪成分レベルの送信信号レベルに対する比が所定値以下か判定し、所定値以下であれば終了し、そうでなければステップS3に戻り、ステップS3〜S11の処理を繰り返す。
図8にこの発明の第1実施例を示す。この実施例は図5の第1実施例において、パイロット信号として2つのトーン信号を使用する代わりに1つの変調波信号を用いたものであり、第1実施例のパイロット信号発生器12以外の構成は第1関連例と同一である。動作についても第1関連例と同一である。
図9に第1実施例に関するパイロット信号PLの注入と抽出方法についてスペクトルを用いて示す。行AとBはディジタルプリディストータ20への入力信号Xと出力信号Yのスペクトル、行CとDは電力増幅器37の入力信号と出力信号のスペクトル、行Eは制御部50への入力信号のスペクトルをそれぞれ模式的に示す。第1実施例のパイロット信号PLが変調信号であることを除けば、第1関連例で説明した図6のスペクトルと同一である。パイロット信号PLは帯域幅を有する変調信号であり、ディジタルプリディストータ20により歪を受けてPDで示すように両側にスペクトルが広がっている。トーン信号のパイロット信号PL1, PL2と比べて第1実施例のパイロット信号PLは、受信機において誤り訂正処理などの復号回路によって検出感度を高められる。パイロット信号に拡散符号を適用すれば、受信機の最低受信感度以下のパイロット信号を抽出できる利点がある。
図10に第2関連例を示す。第2関連例は、パイロット信号と送信信号に対しそれぞれ別々にプリディストータ201, 202、及びディジタルアナログ変換器311, 312を用いる点で第1及び第1実施例と異なる。各ディジタルプリディストータ201, 202とそれらに対するディジタルプリディストータ制御部50の構成は、第1及び第1実施例と同様である。
この第2関連例では、第2ディジタルプリディストータ202の出力を送信信号Sと異なる帯域に周波数変換するために、局部発振器34Aとミキサ34Bと帯域通過フィルタ34Cからなる周波数アップコンバート部34を新たに備えている。第2関連例は、送信信号の広帯域化を企図している。第1及び第1実施例は、前置歪処理とパイロット信号の生成及び注入処理とディジタル信号処理の演算量を少なく構成できる特徴があるが、送信信号の広帯域化によりディジタルアナログ変換器31の能力が不足する可能性がある。また、パイロット信号は送信信号Sと異なる帯域に注入されるため、送信信号の帯域幅以上の信号帯域幅をディジタルアナログ変換できる能力がディジタルアナログ変換器31に要求される。この点に関して、第2関連例は送信信号とパイロット信号をそれぞれ異なるディジタルプリディストータ201, 202とディジタルアナログ変換器311, 312を用いる。このように独立したディジタルアナログ変換系統により、送信信号の広帯域化またはオーバーサンプリング数の増加などの信号変換をより柔軟に行うことができる。第1及び第2ディジタルプリディストータ201, 202はディジタルプリディストータ制御部50にて同期して各奇数次の係数を補正する。
図11に第3関連例を示す。第3関連例は図10に示した第2関連例におるけパイロット信号発生器12を図8の実施例におけると同様の変調信号を発生するパイロット信号発生器12と同様に構成したものである。動作についても第2関連例と同一である。トーン信号のパイロット信号と比べて第3関連例のパイロット信号は、受信機において誤り訂正処理などの復号回路によって検出感度を高められる。パイロット信号に拡散符号を適用すれば、受信機の最低受信感度以下のパイロット信号を抽出できる。
図10及び11に示した第3及び第3関連例では第1及び第2ディジタルプリディストータ201, 202を1つにしてもよい。その場合には、送信信号とパイロット信号の帯域が異なることを利用して図12に示すようにディジタルプリディストータ20の出力にて送信信号とパイロット信号を分離する信号処理を行う帯域セパレータ30が設けられ、それによって分離された送信信号Sとパイロット信号PLをそれぞれの系統で図10及び11と同様に処理する。
ト信号成分を検出する。その他の構成と動作は図10の場合と同様である。
図11及び図12の各実施例についても図13と同様の変形を適用できることは明らかである。例えば図11の実施例に適用する場合は、図13における2波トーン信号を発生するパイロット信号発生器12の代わりに、送信信号より狭帯域の変調信号を発生するパイロット信号発生器で置き換えればよい。図12の実施例に適用する場合は、図14に示すように帯域セパレータ以降の構成を図13と同様に構成すればよく、説明を省略する。
このディジタルプリディストータ制御部50は、3次歪成分抽出器50Aと3次歪制御器52Aとから構成されている。3次歪成分抽出器50Aは基本波生成経路を形成する遅延用メモリ1A11、位相調整器1A12、可変利得調整器1A13と、5次歪発生経路を形成する5次歪発生器1A21、位相調整器1A22、可変利得調整器1A23と、7次歪発生経路を形成する7次歪発生器1A31、位相調整器1A32、可変利得調整器1A33と、減算器1A14, 1A24, 1A34とから構成されている。
減算処理後に遅延基本波成分、5次歪成分、7次歪成分の各残留成分を少なくするために、図15の制御部50では位相調整器1A12, 1A22, 1A32と可変利得調整器1A13, 1A23, 1A33により各成分の位相と振幅の調整を行う。これらの調整は、図15のディジタルプリディストータ制御部50の構成をディジタル信号処理にて実現することで経年変化または温度変化などによる電気的特性の変化がないことから、装置の初期設定時に行うだけでよい。図8のディジタルプリディストータ制御部50と同様の構成により、5次または7などの各奇数次成分を抽出することが可能である。パイロット信号が変調信号の場合でも同様である。
電力増幅器に使用される一般的なFET(電界効果トランジスタ)の真性領域の等価回路
は例えば図16Aに示すように表すことができる。ゲート・ソース間容量はCgs、ゲート
抵抗はRg、相互コンダンタクスはGm、ドレインコンダクタンスはGdと表している。FETにおける相互変調歪は図16Aの真性領域の等価回路から、Cgs、Gm、Gdのべき級数形式で
モデル化されている(例えば非特許文献7参照)。以下に瞬時ゲート電圧Vg、瞬時ドレイン電圧Vdとすれば、
Gm(Vg)=Gm1+Gm2Vg+Gm3Vg 2+Gm4Vg 3+Gm5Vg 4+… (1)
Gd(Vd)=Gd1+Gd2Vd+Gd3Vd 2+Gd4Vd 3+Gd5Vd 4+… (2)
Cgs(Vg)=Cg1+Cg2Vg+Cg3Vg 2+Cg4Vg 3+Cg5Vg 4+… (3)
となる。このように、FETの相互変調歪はゲートとドレインにてそれぞれ発生することが
わかる。
増幅器は図16AのFETの等価回路を用いて図16Bに示すような回路網として表すこ
とができる。ゲート側整合回路37Aと、FETと、ドレイン側整合回路37Bの構成とな
る。ここで、整合回路37A、37Bはそれぞれ別々の周波数特性を有している。このことから、増幅器の相互変調歪はゲート側整合回路37Aとドレイン側整合回路37Bの周波数特性の両方の影響を受ける。ただし、ここでの周波数特性とは、FETの動作周波数を
議論するほどの広帯域ではなく、増幅器の増幅する帯域幅に限定される。
調歪の周波数特性までは考慮されていなかった(例えば先にあげた特許文献1参照)。
この第4関連例では、より広帯域かつ高い歪抑圧量を達成するために、ゲート側整合回路37Aの周波数特性とドレイン側整合回路の周波数特性を別々に考慮し、相互変調歪に対する補償を行う。図16Bにおいて着目することは、増幅器の入力側に与えられた信号は、ゲート側整合回路37Aの周波数特性の影響を受けてからFETの等価回路に与えられ、ここで相互変調歪が生成されることである。即ち、相互変調歪生成の原因となる入力信号がゲート側整合回路37Aの周波数特性の影響を受けていることである。同様に、図16Bのドレイン側整合回路37Bの周波数特性はFETで生成された歪に対して影響を与えることになる。
従って、このようにしてFETで生成された歪の周波数特性を補償するために、べき級数
型プリディストータにおいて各奇数次歪発生器の入力側に周波数特性補償器を設けることにより、増幅器のゲート側周波数特性に適合した周波数特性の補償が可能となる。即ち、各奇数次歪発生器の入力側に周波数特性補償器を設けることにより、ゲート側整合回路の周波数特性を電力増幅器出力にて補償する周波数特性を実現する。
同様に、ディジタルプリディストータにおける各奇数次歪発生器の出力側に周波数特性補償器を設けることにより増幅器のドレイン側周波数特性に適合した周波数特性の補償が可能となる。即ち、各奇数次歪発生器の出力側に周波数特性補償器を設けることにより、ドレイン側整合回路の周波数特性を電力増幅器出力にて補償する周波数特性を実現する。
ように示す。
T(f)Cg(Vg)=T1(f)Cg1+T2(f)Cg2Vg+T3(f)Cg3Vg 2+T4(f)Cg4Vg 3+T5(f)Cg5Vg 4… (4)
ディジタル信号処理型プリディストータでは、各奇数次歪発生器ごとに周波数特性を補償する必要があることが式(4) よりわかる。ドレイン側についても同様である。また、FET
の相互変調歪はゲート及びドレイン側にて同時に発生しており、式(1)〜(3)のそれぞれの相互変調歪の大小によって実現しうるべき級数型プリディストータの構成が異なる。図3で説明した増幅器による相互変調歪の周波数特性は、ゲート側周波数特性とドレイン側周波数特性の合成された特性と考えることができる。この合成された周波数特性と逆特性となる周波数特性を各奇数次歪発生器の出力に与えるように周波数特性補償器を設ける。その設置個所はFETに対しその相互変調歪の支配的な方の端子側又は両端子側である。また、この相互変調歪の合成された周波数特性を補償するための周波数特性補償器は、奇数次歪発生器の出力側のみに設けた場合、又は出力側のみに設けた場合、必ずしも満足できる補償が達成できるとは限らず、出力側及び入力側の両方に設けることにより改善できる場合もある。
図17はこの発明による第4関連例の原理的構成を示す。この構成は、送信信号発生器11からの送信信号Sに前置歪処理を与えるディジタルプリディストータ20と、その出力をアナログ送信信号に変換するディジタル・アナログ変換器31と、そのアナログ送信信号を高周波送信信号にアップコンバートする周波数アップコンバート部33と、アップコンバートされた送信信号を増幅する電力増幅器37と、その増幅出力を2つに分配する分配部38と、分配された一方をダウンコンバートする周波数ダウンコンバート部40と、ダウンコンバートされた信号から奇数次歪成分を検出する歪成分検出部51と、検出された奇数次歪成分に基づいて位相調整器23と可変利得調整器24を制御する制御器5を有する。歪成分検出部51と制御器5はディジタルプリディストータ制御部50を構成している。
送信信号発生器11からの入力信号Sはプリディストータ20の線形伝達経路2Lと歪発生経路2Dに分配される。歪発生経路2Dに分配された入力信号を用いてべき級数モデル歪発生器22では奇数次の歪信号Dを発生する。周波数特性補償器28はこの歪信号Dの周波数対振幅特性と周波数対位相特性を、増幅器37の周波数特性の逆特性となるように調整する。周波数特性補償器28の出力は位相調整器23と可変利得調整器24により位相と利得が調整されて調整歪信号D'とされ、合成器25に与えられる。線形伝達経路2Lに分配された信号は、遅延用メモリ21によって歪発生経路2Dに対する信号の遅延量が補正される。合成器25は線形伝達経路2Lと歪発生経路2Dを経た信号SとD'を合成する。
ディジタルプリディストータ20の各周波数特性補償器28A,28B,28CにFFTを用いた線形電力増幅器の実施例を図20に示す。この実施例は図19の実施例において、各周波数特性補償器28A,28B,28C(代表して28Aの場合で説明する)としてFIRフィルタの代わりにFFT部(ファーストフーリエ変換部)28A1と、係数乗算器28A2と、IFFT部(逆ファーストフーリエ変換部)28A3の組を使用するように構成したものであり、周波数特性補償器28B,28Cについても同様である。それ以外の部分は、図19の実施例と同じである。従って、周波数特性制御部53は図19における周波数特性制御部53と同様に3次歪、5次歪、7次歪に対応した係数制御器53A,53B,53Cを有しているが図示してない。後述の図21、30、31の各実施例においても同様である。
図21にこの発明の第6関連例を示す。この実施例は、図19の実施例に対し図5で示した2つのパイロット信号を使用してディジタルプリディストータ20の調整を行うように構成したものである。
べき級数モデルを用いたディジタルプリディストータ20の各奇数次歪発生器22A,22B,22Cは、入力される送信信号及びパイロット信号を各奇数次乗の演算処理を行う。
ディジタルプリディストータ制御器50の構成は、図19及び20の実施例におけるディジタルプリディストータ制御器50の構成と同様である。各奇数次歪制御器52A,52B,52Cはディジタルプリディストータ20のそれぞれに対応する歪成分発生器22A,22B,22Cの可変利得調整器24A,24B,24C及び位相調整器23A,23B,23Cを制御し、周波数特性制御部53の図示してない係数制御器53A,53B,53Cは周波数特性補償器28A,28B,28Cの係数を制御する。パイロット信号に等レベル2波トーン信号が用いられているため、電力増幅器37の出力にてトーン信号近傍に現れる奇数次の歪成分を各奇数次の歪成分抽出器51A,51B,51Cとしての奇数次歪成分抽出用帯域通過フィルタにて抽出する。この第6関連例のディジタルプリディストータ制御器50はディジタル信号処理にて構成しているが、同様の構成をアナログ回路で構成してもよい。周波数特性補償は、図6で説明したパイロット信号の下側及び上側帯域に現れる歪成分PD3L, PD3Hを使用する。
構成してもよいし、または図20の実施例のようにFFT部と係数乗算器とIFFT部により構成してもよい。周波数特性補償は、図6において上側及び下側の歪信号PD3H, PD3Lを用いて周波数特性を補正する。例えば、係数制御器53A,53B,53Cは各奇数次の歪成分抽出器51A,51B,51Cからの上側と下側の歪成分PD3H, PD3Lの検出値を補間することで周波数特性をモニタ値から推定する。周波数特性補償器28A,28B,28Cを構成するFIRフィルタまたはFFTは、補間された数値を各乗算係数に設定する。以後、所定の歪抑圧量対周波数特性を達成するまで、フィルタ又はFFTで乗算する係数を調整する。これら制御方法には、各種最適化手法のアルゴリズムを適用できる。
図22は図21の実施例において、パイロット信号発生器12として図8の実施例と同様に変調信号を発生する場合の変形例を示す。その他の部分は図21の構成と同様なので説明を省略する。更に、前述の図12の実施例におけるディジタルプリディストータ及び図13及び14の実施例にけるディジタルプリディストータ201、202のそれぞれを例えば図21で示したディジタルプリディストータ20と同様の構成とし、図12、13、14の各ディジタルプリディストータ制御部50も図21で示したものと同様の構成としてもよい。
図23は図17の実施例を図5に示した2つのパイロット信号を使用してディジタルプリディストータ20の調整を行うようにした実施例の基本的構成を示す。図17の構成に対し、更に2つのパイロット信号PL1, PL2を発生するパイロット信号発生器12と、それらパイロット信号PL1, PL2と送信信号Sを加算する加算器15とが追加されており、制御器5によりパイロット信号発生器12を制御して等振幅のパイロット信号PL1, PL2の周波数間隔を変更可能に構成されている。ディジタルプリディストータ制御部50には検出した歪成分の周波数特性から求めた利得及び位相を記憶する記憶部55が設けられている。
前述のように送信信号Sはベースバンド信号であっても中間周波信号であってもよい。後者の場合、パイロット信号PL1, PL2の周波数は予め決めた中間周波数fIFに対しfIF-fi/2, fIF+fi/2となるように選べばよい。送信信号Sがベースバンド信号の場合は、振幅A、周波数fi/2の信号Acosπfitに対し、周波数アップコンバート部33において周波数fcのキャリア信号で直交変調を行う、即ちcosπfitに(cos2πfct+jsin2πfct)を乗算して乗算結果の実数部を得ることにより送信周波数帯に周波数fc-fi/2とfc+fi/2の2つのパイロット信号PL1, PL2が生成される。従って、パイロット信号発生器12においては、実際には周波数fi/2のトーン信号を発生すればよい。cosπfitで表される信号は次式
cosπfit=(expjπfit+exp-jπfit)/2 (5)
と表されるように、正と負の周波数成分を有していると見ることができるので、以下の説明ではベースバンドの2つパイロット信号PL1, PL2の周波数を-fi/2, +fi/2として説明す
る。
制御器5により2つのパイロット信号の周波数-fi/2, +fi/2を変化させることにより、送信周波数帯における対応するアップコンバートされた2つのパイロット信号の周波数間隔fiが変化し、周波数軸上で相互変調歪の発生周波数が変化する。パイロット信号の周波数-fi/2, +fi/2を一定間隔で変化させ、得られる相互変調歪の各発生周波数に対して所定の隣接チャンネル漏洩電力比を達成する補償歪の利得と位相を決めることができる。
この方法により周波数軸上で離散的に得られた利得及び位相を補間することで、補償歪に与える連続的な周波数特性を得ることができる。得られた周波数特性を周波数特性補償器28で実現し、補償歪に周波数特性を与える。
ステップS1:まず、変数iの値を1に初期設定する。
ステップS2:ベースバンドで周波数-fi/2, +fi/2(従って周波数間隔fi)、かつ等振幅の2つのディジタルトーン信号をパイロット信号PL1, PL2として発生する(図25の行A)。これらの信号を合成し、周波数アップコンバート部33で中心周波数fcにアップコンバートして電力増幅器37に入力すると、電力増幅器37の出力に例えば次式
B3Hcos2π(fc+fi/2+fi)t=B3Hcos2π(fc+3fi/2)t (6)
B3Lcos2π(fc-fi/2-fi)t=B3Lcos2π(fc-3fi/2)t (7)
で表される周波数fc+3fi/2とfc-3fi/2の相互変調歪PD3H, PD3Lが発生する(行B)。B3H
及びB3Lはそれぞれキャリア周波数fcの上側と下側の歪の振幅を表すものとする。
ステップS3:利得調整器24を利得Gに、位相調整器23を位相Pに設定する。これらの値は任意に設定してよいが、隣接チャネル漏洩電力比が比較的小さくなるように設定することが望ましい。
ステップS4:歪成分検出部51によって電力増幅器37の出力中の3次の相互変調歪を抽出し、上下の相互変調歪PD3H, PD3Lが所定の隣接チャネル漏洩電力比以下を満たしているかどうかを調べ、上側のみ、又は上下両側の歪が所定隣接チャネル漏洩電力比以下を満たしてない場合はステップS5に移り、下側の歪のみが満足してない場合はステップS7に移り、両側の歪とも満足している場合はステップS9に移る。
ステップS6:上側の歪PD3Hが所定の隣接チャネル漏洩電力比以下を満たすか判定し、満たさない場合はステップS5に戻って同様の処理を繰り返す。所定の隣接チャネル漏洩電力比以下を満足した場合、ステップS4に戻り、判定を再度繰り返す。
ステップS7:下側歪のみが所定の隣接チャネル漏洩電力比以下を満足していない場合は、周波数特性補償器28の周波数fc-3fi/2に対応する利得Gi'、位相Pi'を所定量だけ変化させる。
ここで、周波数特性補償器28の利得G1, G1'は利得調整器24の利得Gから差分、位
相P1, P1'は位相調整器23の位相変化Pからの差分を表しているものとする。
ステップS8:下側歪PD3Lが所定の隣接チャネル漏洩電力比以下を満たすか判定し、満たさなければステップS7に戻り同様の処理を行う。満たせばステップS4で上下両歪が所定隣接チャネル漏洩電力比以下を満足することを確認してステップS9に移る。あるいはその確認を省略して直接ステップS9に移ってもよい。
ステップS9:上側、下側歪PD3H, PD3Lの隣接チャネル漏洩電力比が所定値以下を満たした場合は、その時の利得G1, G1'と位相P1, P1'を記憶部55に保存し、i=Nとなったか判
定する。
このようにしてi=1からi=Nまで2つのパイロット信号PL1, PL2の周波数間隔を変えてN回繰り返し処理を行うことによりG1〜GN, G1'〜GN', P1〜PN, P1'〜PN'が記憶部55に得られる。
このようにして離散的に得られた利得および位相を補間することで、歪成分の周波数特性を周波数特性補償器28で実現する。最終的に補償歪に与える周波数特性は図28A,28Bまたは図29A,29Bに示すように、利得調整器24と位相調整器23と周波数特性補償器28の周波数特性を合成した特性である。より高精度な歪補償を行う場合は、パイロット信号の周波数間隔を更に細かく設定する。上記の説明では3次歪についてのみであったが、5次歪以降の補償が必要な場合も同様の方法を適用できる。
図30は図23の実施例をより具体的に構成した例を示し、図19の実施例と同様に各周波数特性補償器28A,28B,28CをFIRフィルタで構成したディジタルプリディ
ストータ20を使用している。パイロット信号発生部12はこの例では-fi/2及び+fi/2で表される可変周波数のディジタルトーン信号PL1, PL2を生成するものとする。また、ディジタルプリディストータ制御部50には、更に周波数特性制御部53による制御と対応してパイロット信号発生器12の発振周波数fiを制御する周波数制御器54が設けられている。その他の構成は図19の構成と同様である。
周波数間隔fiで等振幅の2つのトーン信号がパイロット信号PL1, PL2としてディジタルプリディストータ20に入力され、その出力信号は、パイロット信号に補償歪を付加した信号となる。この信号はDA変換器31でアナログ信号に変換され、周波数アップコンバート部33に与えられ、中心周波数fcの高周波送信信号にアップコンバートされる。高周波送信信号は電力増幅器37で電力増幅される。このとき、ディジタルプリディストータ20で生成した補償歪は送信系統全体で歪補償を行うように設定される。従って、電力増幅器37の入力信号の補償歪とディジタルプリディストータ20の出力信号中の補償歪に相違があってもよい。つまり、ディジタルプリディストータ20の出力と電力増幅器37の入力との間に信号の位相、振幅に変化を与える任意のデバイスが挿入されていてもよい。
これらの補償パラメータを求める方法は、図23で説明したようにまず、利得調整器24Aの利得Gと位相調整器23Aの位相Pを設定する。これらの値は任意に設定してよいが、隣接チャネル漏洩電力比が比較的に小さくなるように設定することが望ましい。
を制御器により設定する。
入力側に配置してもよい。
電力増幅器37の歪成分の振幅及び位相は温度変化または経年変化により変化する。このため、常に高い歪補償量を維持するには利得調整器24A,24B,24C、位相調整器23A,23B,23C、及び周波数特性補償器28A,28B,28Cの設定を適応的に制御する必要がある。上記第8関連例では、2つのパイロット信号を用いることでそれらの適応制御を可能にする。
図31は図30の実施例における各周波数特性補償器28A,28B,28CをFIRフ
ィルタで構成する代わりに、図20の実施例と同様にFFT部と係数乗算器とIFFT部の3つの組28A1, 28A2, 28A3;28B1, 28B2, 28B3;28C1, 28C2, 28C3を用いて実現した実施例を示す。図20で説明したように、各歪発生器22A,22B,22Cの出力信号にFFT部28A1, 28B1, 28C1でフーリエ変換処理により周波数領域に変換し、その周波数領域信号に係数乗算器28A2, 28B2, 28C2で周波数補償特性を乗算した後に、IFFT部28A3, 28B3, 28C3で時間領域信号に逆変換する。ディジタルプリディストータ制御部50は、電力増幅器37の出力中の歪成分を所定の隣接チャネル漏洩電力比を達成するように、各歪次数の利得調整器24A,24B,24Cと位相調整器23A,23B,23Cと周波数特性補償器28A,28B,28Cの乗算係数を制御する。パイロット信号を用いた周波数特性補償器28A,28B,28Cの係数の設定方法は図30の実施例で説明した設定方法と同一である。
前述の実施例において、周波数特性補償器としてFIRフィルタを使用する例を示したが
、IIR(infinite impulse response)フィルタを使用してもよい。
前述の図23の実施例及び図30、31の各実施例では、発生する等振幅2波のパイロット信号PL1, PL2間の周波数間隔Δfを順次変更して周波数特性補償器28(29A,2
8B,28C)の周波数特性を図26A,26B(あるいは図27A,27B)に示すように決定するように構成したが、以下の実施例ではパイロット信号の周波数は固定し、アップコンバート周波数を順次変更することにより電力増幅器の動作帯域内で高周波パイロット信号の周波数をΔfずつ順次変更し、それぞれの周波数での相互変調歪を検出して周
波数特性補償器28の特性を決定する。
図32を参照してこの発明の第10関連例を説明する。
第10関連例は、図30の実施例と同様にパイロット信号発生器12と、加算器15と、ディジタルプリディストータ20と、ディジタル/アナログ変換器(DAC)31と、周波数アップコンバート部33と、電力増幅器37と、分配器38と、周波数ダウンコンバート部40と、ディジタルプリディストータ制御部50と、から構成される。
中間周波信号に変換するための局部発振周波数fIFは図30の場合のアップコンバート
用の局部発振周波数(キャリア周波数)fcより十分低いので、このように2段階でアップコンバートを行うほうが、ディジタルアナログ変換器31の出力であるベースバンド信号に対し、アップコンバートの周波数をより高い精度で設定できる。しかしながら、原理的にはアップコンバート部33は図30と同様に1段構成でもよい。
図32の実施例においても、周波数特性補償器28A,28B,28Cは破線で示すように各3次、5次、7次歪発生器22A,22B,22Cの入力側に設けてもよく、あるいは入力側と出力側の両方に設けてもよい。
図33に図32の実施例における周波数特性補償器28A,28B,28Cの特性を設定するための制御フローチャートを示す。この設定は、信号の送信を行わない期間に行う。
ステップS2:パイロット信号PL1, PL2をディジタルプリディストータ20に入力する。パイロット信号は、ディジタルプリディストータ20を介してディジタルアナログ変換器31でアナログ信号に変換された後、アップコンバート部33で2段階の周波数アップコンバートを受け、RF信号として電力増幅器37に入力される。
ステップS3:電力増幅器37の出力RF信号を分配し、周波数ダウンコンバート部40にてベースバンド帯域の歪成分を含むパイロット信号成分を生成する。
ステップS4:パイロット信号成分は各歪成分抽出器52A,52B,52Cにて各奇数次歪成分を抽出する。このとき、各奇数次歪成分は基本波の上側及び下側に検出される。ステップS5:各奇数次歪制御器52A,52B,52Cは検出された各奇数次歪成分を最小とするようにディジタルプリディストータ20のベクトル調整器234A, 234B, 234Cにより各奇数次歪の位相と利得を制御する。また、各奇数次歪成分を最小にする周波数特性補償器28A,28B,28Cの設定値をそれぞれの奇数次歪成分に対応して記憶部55に記憶する。ここで各奇数次歪成分は、ある設定値以下になるように調整してもよい。また、その設定値は外部の設定手段、例えばキーボードなどにより設定してもよい。
ステップS6:次に周波数特性制御部53は、ステップS1〜S5による一連の処理の繰り返し回数が所定回数になったか、即ち、周波数掃引が終了したか判定し、周波数掃引が終了していれば周波数特性の設定を終了する。
ステップS7:ステップS6で周波数掃引が終了してないと判定された場合は設定周波数fIFをfIF+Δfに増加させ、ステップS1に戻り、一連の処理ステップS1〜S5を繰り返す。
図16A,16Bを参照して説明したように、電力増幅器の非線形性は、入力側及び出力側の非線形性の依存関係により決まる。電力増幅器による相互変調歪の周波数特性に対するゲート側(入力側)とドレイン側(出力側)の影響に相違があると、奇数次歪発生器の入力側のみ、又は出力側のみに周波数特性補償器を設けただけでは、図33の処理により得られる周波数特性補償器の周波数特性を、電力増幅器による相互変調歪の周波数特性に対し十分な逆特性とすることが困難となる場合がある。しかし、奇数次歪発生器の入力側と出力側の両方に周波数特性補償器を設け、それぞれ独立に制御することにより、電力増幅器の入力側及び出力側の周波数特性に対し平坦化する特性、即ち逆特性となる周波数特性を得ることが可能になる。
このようにして、電力増幅器の周波数特性を考慮してディジタルプリディストータを構成できる。
Claims (3)
- ディジタル送信信号と異なる周波数のディジタルパイロット信号を生成するパイロット信号発生器と、
上記ディジタル送信信号と、上記ディジタルパイロット信号を合成する加算器と、
上記加算器の出力信号を入力とし、べき級数モデルにより前置歪処理を行い前置歪付加信号を生成するディジタルプリディストータと、
上記ディジタルプリディストータにより出力された上記前置歪付加信号をアナログ前置歪付加信号に変換するディジタルアナログ変換器と、
上記アナログ前置歪付加信号を送信周波数帯にアップコンバートする周波数アップコンバート部と、
上記アップコンバートされた信号を電力増幅する電力増幅器と、
上記電力増幅器の出力の一部をダウンコンバートし、ダウンコンバート信号を出力する周波数ダウンコンバート部と、
上記ダウンコンバート信号から上記べき級数モデルと同じ奇数次の歪成分を抽出し、その奇数次歪成分のレベルが小さくなるように上記プリディストータの係数を制御するディジタルプリディストータ制御部、
とを含み、上記ディジタルパイロット信号は上記送信信号よりも狭帯域の変調信号であることを特徴とする線形電力増幅器。 - 請求項1に記載の線形電力増幅器におけるディジタルプリディストータの設定方法であり、
(a) ディジタルパイロット信号を発生するステップと、
(b) 上記ディジタルパイロット信号と上記ディジタル送信信号を合成し、その合成信号に対しべき級数モデルによる予め決めた数の奇数次の歪成分を生成して上記合成信号に付加して前置歪付加信号を生成するステップと、
(c) 上記前置歪付加信号をアナログ前置歪付加信号に変換するステップと、
(d) 上記アナログ前置歪付加信号を予め決めたキャリア周波数で送信周波数帯にアップコンバートするステップと、
(e) 上記アップコンバートされた信号を電力増幅するステップと、
(f) 上記電力増幅された出力信号の一部をダウンコンバートとし、パイロット信号成分を出力するステップと、
(g) 上記パイロット信号成分からべき級数モデルによる奇数次歪成分のレベルが小さくなるように上記ディジタルプリディストータの係数を制御するステップ、
とを含むことを特徴とするディジタルプリディストータ設定方法。 - 請求項2に記載のディジタルプリディストータ設定方法において、上記ステップ(g) は、上記奇数次成分の上記送信信号に対するレベル比が予め決めた値以下となるように上記ディジタルプリディストータの係数を繰り返し調整するステップを含むことを特徴とするディジタルプリディストータ設定方法。
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