JP2006197832A - 環境感受性蛍光プローブを用いたシステイン残基が変異導入されたabcトランスポーターの汎用的な基質親和性検出方法 - Google Patents

環境感受性蛍光プローブを用いたシステイン残基が変異導入されたabcトランスポーターの汎用的な基質親和性検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ABCB1にのみ適応可能であった環境感受性蛍光プローブをもちいた基質親和性の測定を、ABCトランスポーターのすべてのサブタイプに適応できる測定系として提供すること。
【解決手段】 ATP binding cassetteトランスポーターが有する核酸結合部位(例えば、(L/F/I/V)XGXXGXaaGK(S/T)(S/T)(「Xaa」は変異によってシステイン残基と置換されるアミノ酸残基、(L/F/I/V)及び(S/T)はいずれか一つのアミノ酸(一文字表記)、「X」は同一又は互いに異なる不特定のアミノ酸を示す))の少なくとも一つに変異によって導入されたシステイン残基に共有結合した環境感受性蛍光プローブの蛍光強度の変化を測定することによって、基質と該トランスポーターの親和性を検出する方法、及び、該方法により基質である化合物と該トランスポーターの親和性を検出することを含む、ABCトランスポーターに認識される化合物のスクリーニング方法。
【選択図】 図4

Description

本発明は、ATP binding cassetteトランスポーター(以下、「ABCトランスポーター」と略す)にシステイン残基変異を導入することで、環境感受性蛍光プローブとの結合を可能にし、該トランスポーターと化合物との基質親和性を測定する方法等に関する。
トランスポーターは細胞膜を境にして、細胞の外から内、内から外の物質の輸送を行っている。生体においては、薬物の吸収、分布、排泄に大きく関わっている。特に、ABCトランスポーターは、ATPのエネルギーを利用し細胞内から細胞外へ基質となる化合物を輸送する活性を有している。生体内においては、小腸での吸収を制限、肝臓での胆汁排泄の促進、脳への分布の制限など、新薬の開発において非常に問題となる過程に関与している。従って、新薬候補となる化合物がABCトランスポーターの基質として認識されるかは、新薬開発の初期段階において検討すべき重要な項目となっている。
ABCトランスポーターは、そのサブタイプ間で「核酸結合部位(nucleotide binding domain)」と呼ばれるATP加水分解に関与する領域が比較的よく保存されている。この領域はATPと結合し加水分解する活性を有しており、得えられた加水分解エネルギーを利用して基質を濃度勾配に逆らって細胞内から細胞外へ輸送することを可能としている。ABCトランスポーターはヒトにおいてAからGまのファミリーに大きく区分され現在までに49種類のサブタイプが同定されている。いまだ、その活性が不明なサブタイプが存在するが、薬物輸送に関わる重要なトランスポーターとして知られているABCB、ABCC及びABCGトランスポーターは一部の基質特性は重複するものの互いに異なる基質特異性を有している。
ABCトランスポーターの基質を探索する系は大きく分けて2つ存在する。一つは、ABCトランスポーターの輸送活性を検出する系。もう一つは、ABCトランスポーターに基質が結合した際のATPの加水分解活性を測定する系である。輸送活性を検出する系には、細胞内への基質の蓄積量の減少、及び阻害効果による蓄積量の増加により測定する方法と、細胞内外が反転した膜小胞を用い基質の膜小胞内への取込量を測定する方法がある。或いは、この反転した膜小胞に輸送阻害剤と基質を適用し、阻害剤の小胞内への蓄積の減少から基質の親和性を測定することも可能である。
基質探索系として利用する場合、上記の測定系はいくつかの問題がある。輸送活性を検出する場合には、基質が定量できる物質であることが必要条件である。その為に、現在は放射標識化合物や蛍光物質が使用されているが、検出対象となる数多くの基質に対して放射又は蛍光標識するには膨大な作業量が必要となるために事実上不可能である。また、輸送活性に対する阻害効果や、ATP加水分解活性の促進による検出は適応化合物の制限がないために汎用されているが、阻害効果やATP加水分解活性促進効果がある化合物が必ずしも基質とはならないことが問題となっている。更に、共通の問題点として、多検体を処理するには多くの時間を要し、又、このような従来の測定方法は一種の破壊検査(反転膜小胞の破壊)にあたるために、基質親和性を検討するには複数の異なる基質濃度を個別に測定する必要があり、検体数を倍増させる問題点がある。
Li及びSharomは、新たな基質とトランスポーターの親和性測定方法として環境感受性蛍光プローブである2-(4'-maleimidylanilino)naphthalene-6-sulfonic acid(以下、「MIANS」と略す)を用いて、ABCトランスポーターサブタイプB1 (以下「ABCB1/MDR1」と略す)の基質親和性の測定に成功している。即ち、この方法はMDR1が本来持つシステイン残基に共有結合させたMIANSの蛍光強度が周囲の環境によって変化することを利用するもので、トランスポーターが基質と結合することによってトランスポーターの構造が親水性から疎水性へ変化し、その結果、MIANSの蛍光強度が低下し、その低下度から親和性が計測できることを報告している(非特許文献1参照)。この方法は、MIANSと反応したABCB1を含む溶液に基質を追加添加するのみで基質親和性を迅速に測定できる系である。
Li, R. and Sharom, FJ. Biochemistry 35:11865-11873 (1996) 特開2002−112775号公報
上記のLi及びSharomによる基質親和性測定法は、蛋白質が、その特定部位にMIANSを導入することができるSH基(システイン残基)を持つ必要がある。従って、ABCB1においてMIANSが導入されたシステイン残基に対応するような位置にシステイン残基を有していないABCトランスポーターに対しては、Li及びSharomによる基質親和性測定法は適用することが出来ない。このような従来の基質親和性測定法が適用できないABCトランスポーターの種類は数多くあり、この為にかかる測定法の適用範囲が極めて限定されてしまっている。また、この基質親和性測定法は、まず発現細胞から細胞膜画分を調製し、弱い界面活性剤で膜蛋白を可溶化し(膜蛋白に一部脂質が付着している状態だと考えられる)、更に、数段階のカラム操作(精製段階)をへて精製したABCB1用いて測定を行っている。そのために、精製の過程において試料が喪失又は変性してしまう危険性、及び、可溶化に伴うプロテアーゼにより分解される可能性があり、更に調製には時間を要するという問題点がある。従って、本発明の目的はかかる従来技術における課題を解決することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ABCトランスポーターが有する核酸結合部位(ATP結合部位)に変異によってシステイン残基を導入した場合には、ABCトランスポーターの特異性(輸送活性、基質認識性、基質親和性等)に実質的に影響を与えないことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の各態様に係るものである。
1. ABCトランスポーターが有する核酸結合部位(nucleotide binding domain)の少なくとも一つに変異によって導入されたシステイン残基に共有結合した環境感受性蛍光プローブの蛍光強度の変化を測定することによって、基質と該トランスポーターの親和性を検出する方法。
2. 核酸結合部位がアミノ酸配列:(L/F/I/V)XGXXGXaaGK(S/T)(S/T)(「Xaa」は変異によってシステイン残基と置換されるアミノ酸残基、(L/F/I/V)及び(S/T)はいずれか一つのアミノ酸(一文字表記)、「X」は同一又は互いに異なる不特定のアミノ酸を示す)、又は、上記配列中の「X」及び「Xaa」を除いた7残基中5残基以上が同一であるアミノ酸配列を有することを特徴とする、上記1記載の方法。
3. アミノ酸残基「Xaa」が、アラニン、トレオニン、セリン、イソロイシン、リジン、バリン、及びロイシンから成る群から選択される、上記1又は2記載の方法。
4. 環境感受性蛍光プローブが2-(4'-maleimidylanilino)naphthalene-6-sulfonic acidである、上記1〜3のいずれか一項に記載の方法。
5. ATP binding cassetteトランスポーターがヒトABCC4である、上記1〜4のいずれか一項に記載の方法。
6. ATP binding cassetteトランスポーターが膜小胞に結合されたままの状態であることを特徴とする、上記1〜5のいずれか一項に記載の方法。
7. 上記1〜6のいずれか一項に記載の方法により基質である化合物と該トランスポーターの親和性を検出することを含む、ABCトランスポーターに認識される化合物のスクリーニング方法。
本発明によれば、環境感受性蛍光プローブを用いたABCトランスポーターの基質親和性の測定が、ABCB1以外のABCトランスポーターのサブタイプに適応が可能となり、該蛍光プローブの汎用性を著しく広げることができる。又、変異型ABCトランスポーターの発現ベクターにより形質転換した細胞には該トランスポーターが大量に発現されており、且つ、蛋白質においては通常、システイン残基は内部に存在し、外部に露出しているシステイン残基は少ないことから、MIANSのような環境感受性蛍光プローブと反応するシステイン残基は、大量発現している変異型ABCC4が導入されたシステイン残基と考えられる。従って、かかる形質得転換細胞から膜小胞を単離し、その膜小胞に結合したままの状態にある変異型ABCトランスポーターにMIANSを反応させることによって、従来の方法では必要とされていた精製段階を省略することが可能となる。このように本発明によって従来技術の課題をすべて解決することが可能となり、化合物のABCトランスポーター基質(ABCトランスポーターにより認識される化合物)スクリーニングの効率を著しく改善することができる。
本発明において、システイン残基はABCトランスポーターの基質親和性が実質的に変化しない部位に導入されることが必要である。従って、基質認識に関与せずABCトランスポーターのサブタイプ間で保存されている核酸結合部位に変異を導入することが好ましい。このような核酸結合部位の好適な具体的としては、核酸結合部位内において保存されているアミノ酸配列:(L/F/I/V)XGXXGXaaGK(S/T)(S/T)(「Xaa」は変異によってシステイン残基と置換されるアミノ酸残基、(L/F/I/V)及び(S/T)はいずれかのアミノ酸(一文字表記)、「X」は同一又は互いに異なる不特定のアミノ酸を示す)、又は、上記配列中の「X」及び「Xaa」を除いた7残基中5残基以上が同一であるアミノ酸配列を挙げることが出来る。
ここで、変異によってシステイン残基と置換されるアミノ酸残基「Xaa」は、ABCトランスポーターの核酸結合部位に見られる任意のアミノ酸残基であるが、特に、アラニン、トレオニン、セリン、イソロイシン、リジン、バリン、及びロイシンから成る群から選択されることが好ましい。
このようなABCトランスポーターの核酸結合部位は当業者に公知であり、例えば、その幾つかの例を図1に示す。
ABCトランスポーターには、1分子中に1つ又は2つの核酸結合部位を有するものがあり、2つの核酸結合部位を有するABCトランスポーターについては、少なくともその内の一つにシステイン残基が導入されている必要がある。尚、ABCトランスポーターは、細菌からヒト等の高等動物に至る各種生物において存在しており、本発明におけるABCトランスポーターの由来に特に制限はない。しかしながら、薬剤の開発等における本発明の利用においては、実施例に具体的に記載されているようなヒト由来のABCトランスポーターを使用することが好ましい。
核酸結合部位の少なくとも一つに変異によってシステイン残基が導入されたABCトランスポーターは、当業者に公知の任意の方法で調製することが出来る。例えば、クロンテック社等から入手できる市販のヒトcDNAから、常法に従い、容易にABCトランスポーター遺伝子を調製することが出来る。こうして得られたABCトランスポーターの遺伝子において核酸結合部位をコードする塩基配列に、環境感受性蛍光プローブの導入に必要なシステイン残基に翻訳される適当な塩基配列となるように、例えば、部位特異的突然変異法(site directed mutagenesis)(Morimoto S, Yanaga F, Minakami R, Ohtsuki I. Am J Physiol. 275: C200-2007 (1998))等の適当な手段を用いて新たな塩基(元の塩基配列に応じて数塩基を変異させる)を組込み、上記のABCトランスポーターをコードする変異導入遺伝子を作成することが出来る。こうして作成した変異導入遺伝子を当業者に公知の適当な発現ベクターに組込み、適切な発現系を用いて得られた発現ベクターから変異型ABCトランスポータータンパク質を細胞膜上に発現させる。
更に、変異型ABCトランスポーターが発現した細胞から高圧キャビテーション法等を用いて細胞膜を単離し、一部が細胞内外の方向性が逆転した細胞膜小胞を作成する。作成した細胞膜小胞を蛍光プローブと反応させることによって、ABCトランスポーターの目的部位に蛍光プローブが結合した膜小胞を作成することが出来る。未反応の蛍光プローブはゲルろ過カラムを用いて膜小胞と分離する。
こうして得られた膜小胞を一定温度、撹拌条件下で蛍光プローブの指定波長により励起し、蛍光を測定する。この基質未添加時の蛍光強度を(F0)とする。一定温度、撹拌条件下の膜小胞溶液に、適切な濃度の基質を添加し、蛍光強度を(F)を測定する。基質未添加時からの変化率([F0-F]/F0)を基質の認識強度(V)として計算する。さらに、基質を順次添加することにより添加後の基質濃度における、認識強度を測定する。測定した基質濃度(C)と基質認識強度(V)とミカエリス・メンテンの式(V=[Vmax x C]/[Km + C])から、基質親和性(Km)を求める。
又、本発明の方法は、従来の環境感受性蛍光プローブを用いるABCトランスポーターの基質親和性の測定方法に準じて実施することが出来る。本発明の検出方法を利用して、基質である化合物(例えば、薬剤)と該トランスポーターの親和性を検出することによって、ABCトランスポーターに認識される化合物を迅速、且つ大量にスクリーニングすることができる。
以下、実施例に則して本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術的範囲はかかる実施例によって何等限定されるものでなはい。
ABCトランスポーターとしてヒトABCC4を選択し、環境感受性蛍光プローブであるMIANSを導入するための変異導入部位の調査を行った。尚、ABCC4は血液脳関門にも発現しており、主に、核酸誘導体の輸送に関与していることが知られている。その結果、図2の配列情報に示す部位のアラニンをシステインに変異する遺伝子変異をおこなう必要があることを見いだした。そこで、まず、ヒトABCC4遺伝子は、以下のように調製した。即ち、ヒト腎臓total RNAから逆転写酵素を用い、cDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型とし、公知であるヒトABCC4遺伝子の翻訳部位を挟む適当なプライマーをもちい、PCRによってヒトABCC4遺伝子を単離した。得られたヒトABCC4遺伝子の遺伝子配列は自動シークエンサーを用いて決定し、GenBank DNAデータベースに登録されている配列と同一であることを確認した。次に、常法である上記の部位特異的突然変異法を用いて図2に示すようにヒトABCC4の目的位置に変異を導入した。DNAシークエンスの結果、目的通りに変異が導入されていることを確認した。
(試験1)変異を導入した変異型ヒトABCC4を宿主細胞に発現するために、発現ベクターpIRES(クロンテック社より入手)に上記で得られた変異遺伝子を組み込んだ。同様に、野生型ヒトABCC4を宿主細胞に発現させるべく発現ベクターに野生型遺伝子を組み込んだ。それぞれの遺伝子をベクターに組み込む際に、PCRによってヒトABCC4のN末端側にHisタグ(6個のヒスチジンの繰り返しアミノ酸配列)を付加する塩基配列を追加した。作成したベクターを公知のリポフェクション法によってヒト胎児腎臓由来培養細胞HEK293細胞(この細胞は野生型ABCC4トランスポーターを発現していない)に導入に、薬剤(G418)処理によって、安定的に野生型及び変異型ヒトABCC4を細胞膜上に発現する培養細胞を作成した。尚、常法であるRT-PCRによってこれら遺伝子由来のmRNAが発現していること、また、該Hisタグに対する抗体を用いて常法であるwestern blotによってこれらの各蛋白が膜上に発現していることを確認することにより、形質転換された各細胞で野生型及び変異型ヒトABCC4が高発現されていることを確認した。
(試験2)次に、変異型ヒトABCC4が野生型の輸送活性と認識性を有しているかを細胞への基質蓄積度とATP加水分解活性によって検討した。基質蓄積度は、ヒトABCC4の基質となる蛍光物質ルシファーイエロウ(最終濃度 1mg/mL)を細胞培養上清に添加し、一定時間後の細胞内の蛍光強度をセルソーターによって解析することによって測定した。変異型ヒトABCC4発現細胞および野生型ヒトABCC4発現細胞内のルシファーイエロウの蓄積量は、親株であるHEK293細胞と比較して、夫々、図3の相対蛍光強度にして40-100程度低下した。このような細胞内の蓄積量の低下はルシファーイエロウが変異型および野生型ABCC4によって細胞外に排出されていることを示している。さらに、変異型ヒトABCC4発現細胞および野生型ヒトABCC4発現細胞内のルシファーイエロウの細胞内蓄積はヒトABCC4の基質であるインドメサシン、プロベネシド、アジドチミジンの添加(すべて最終濃度1mM)によって上昇することが確認された。この中で、インドメサシンを添加した場合の結果を図3に示す。図3において親株であるHEK293細胞のルシファーイエロウの細胞内蓄積量を示すピークはインドメサシン添加によって移動していない(図3、黒矢印)。一方、変異型ヒトABCC4発現細胞および野生型ヒトABCC4発現細胞内のルシファーイエロウの細胞内蓄積を示すピークは、インドメサシン添加によってより高い蛍光強度へと移動した(図3、白矢尻から白矢印への変化)。このインドメサシン添加による移動分が、発現細胞のみに発現しているインドメサシン感受性蛋白(すなわちABCC4)によるルシファーイエロウの排出輸送への関与を示している。
(試験3)更に、試験1で得られた変異型ヒトABCC4を細胞膜上に発現する培養細胞をCavitation Buffer (10 mM Tris (pH 7), 250 mM sucrose, 1mM EGTA)に懸濁した。キャビテーションを40 atm, 5minで行い、溶液を2,200 rpm, 10 min遠心した。上清を更に12,000 rpm、30 minで遠心し、沈殿を50-100μLの2 mM CHAPS bufferに懸濁した。これを27Gの針に10回通し、膜小胞を作成した。この膜小胞を用いてATP加水分解活性を、ATP加水分解によって生じるリン酸の量を常法である発色法で測定した。その結果、変異型ヒトABCC4及び野生型ヒトABCC4のATP加水分解活性は基質であるdehydroepiandrosteron sulfate (100μM)によって誘導された(それぞれ4.28と4.76 nmol Pi/mg protein/min)。これに対して、親株であるHEK293細胞から作成した小胞のdehydroepiandrosteron sulfate存在下のATP加水分解活性は1.03 nmol Pi/mg protein/minであった。
試験2及び3で得られた結果から、変異を導入したヒトABCC4は野生型と同様の輸送活性、基質認識性、基質依存的ATP水解活性を有していることが示唆された。
(試験4)250 μgタンパク量の上記膜小胞に対して最終濃度40 μMとなるようにMIANSを添加し、室温1時間反応させた。反応液をゲルろ過カラムPD-10 (Bio-Rad)に通し、未反応MIANSを除去した。
こうして得られたMIANSと反応させた変異型ヒトABCC4を含む膜小胞溶液(50μg, 500μL)を蛍光分光光度計によって蛍光を測定した(励起波長:322nm、蛍光波長:420nm)。ヒトABCC4の基質であるdehydroepiandrosteron sulfateを順次濃度を上昇し添加し、各添加時の蛍光強度を測定した。測定後、上記の計算式を用いて認識強度(V)を算出した。濃度に対してグラフを作成し、基質認識に飽和性が認められることを確認した(図4)。さらに、基質親和性を示すKm値は、1.4μMと算出され、この値は、野生型から調製された膜小胞を用いた輸送実験から求められたKm値である2μM(Zelcer N, Reid G, Wielinga P, Kuil A, van der Heijden I, Schuetz JD, Borst P. Biochem J. 371:361-367 (2003))と非常に近い値となった。この結果は、MIANSを反応させた変異型ヒトABCC4を含む膜小胞溶液を用いることによって、ヒトABCC4の基質親和性を測定することが可能であることを示している。
各ABCトランスポーターにおける核酸結合部位を含む塩基配列を示す。変異導入の対照となるアミノ酸残基は矢印で示されている。尚、1分子中に2カ所の核酸結合部位を持つABCトランスポーターには2カ所の変異導入部位が示されている。 ABCC4への変異の導入するための具体的な塩基配列を示す。 変異型および野生型ABCC4発現細胞におけるルシファーイエロウの細胞内蓄積に対するインドメサシンの影響。横軸は、細胞内に蓄積したルシファーイエロウの蛍光強度の相対値、縦軸は、対応する蛍光強度のルシファーイエロウの細胞内蓄積を持つ細胞の個数を示す。それぞれのピーク強度を矢印(インドメサシン添加)と矢尻(インドメサシン未添加)で示す。 ABCC4基質であるdehydroepiandrosteron sulfate (DHEAS)添加時の蛍光変動率(認識強度)を示す。

Claims (7)

  1. ATP binding cassetteトランスポーターが有する核酸結合部位(nucleotide binding domain)の少なくとも一つに変異によって導入されたシステイン残基に共有結合した環境感受性蛍光プローブの蛍光強度の変化を測定することによって、基質と該トランスポーターの親和性を検出する方法。
  2. 核酸結合部位がアミノ酸配列:(L/F/I/V)XGXXGXaaGK(S/T)(S/T)(「Xaa」は変異によってシステイン残基と置換されるアミノ酸残基、(L/F/I/V)及び(S/T)はいずれか一つのアミノ酸(一文字表記)、「X」は同一又は互いに異なる不特定のアミノ酸を示す)、又は、上記配列中の「X」及び「Xaa」を除いた7残基中5残基以上が同一であるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. アミノ酸残基「Xaa」が、アラニン、トレオニン、セリン、イソロイシン、リジン、バリン、及びロイシンから成る群から選択される、請求項1又は2記載の方法。
  4. 環境感受性蛍光プローブが2-(4'-maleimidylanilino)naphthalene-6-sulfonic acidである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ATP binding cassetteトランスポーターがヒトABCC4である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ATP binding cassetteトランスポーターが膜小胞に結合されたままの状態であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法により基質である化合物と該トランスポーターの親和性を検出することを含む、ABCトランスポーターに認識される化合物のスクリーニング方法。
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