JP2006187718A - エマルジョン生成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 粒径分布が十分に狭いエマルジョンを生成し得る装置、ならびに、そのような装置を実現し得るフィルターを提供すること。
【解決手段】 本発明のエマルジョン生成装置は、第1の液体が流れる流路を規定する筒状のフィルター部を有し、この第1の液体とは異なる第2の液体を加圧してフィルター部を通過させ、流路に押し出された第2の液体を該第1の液体に分散させてエマルジョンを生成する。フィルター部は、シリコンウェハーにエッチングを施して貫通孔を形成してなる乳化フィルターを含む。
【選択図】 図6
【解決手段】 本発明のエマルジョン生成装置は、第1の液体が流れる流路を規定する筒状のフィルター部を有し、この第1の液体とは異なる第2の液体を加圧してフィルター部を通過させ、流路に押し出された第2の液体を該第1の液体に分散させてエマルジョンを生成する。フィルター部は、シリコンウェハーにエッチングを施して貫通孔を形成してなる乳化フィルターを含む。
【選択図】 図6
Description
本発明は、エマルジョン生成装置に関する。より詳細には、本発明は、粒径分布のきわめて狭いエマルジョンを生成し得る装置に関する。
近年、機能性材料として微粒子が注目されている。微粒子の代表的な調製方法として、噴霧法、相分離法およびエマルジョン法(乳化法)が挙げられる。中でも、エマルジョン法は、各種産業分野において実験室レベルおよび/または工業レベルで広く用いられている。
代表的なエマルジョン法としては、膜乳化法が挙げられる。図11は、従来の膜乳化法を採用したエマルジョン生成装置の概略図である(例えば、特許文献1参照)。この装置500は、連続相液(例えば、水)L1を通す流路54を有する多孔質シリカガラスからなる筒状の仕切膜(フィルター)52を有し、分散相液(例えば、油)L2を加圧して当該仕切膜52を通過させ、流路54に滲み出た分散相液L2を仕切膜52から剥離してエマルジョンを生成する。この装置においては、連続相液(例えば、水)L1親和帯53が仕切膜52に被着されることにより、仕切膜の孔に連続相液の液膜を形成し、得られる分散粒子の均一性を高める試みがなされている。
しかし、上記装置の多孔質シリカガラスからなる仕切膜は、いわゆる軽石状の多孔構造を有しており、孔の形状および大きさがバラバラである。そのため、仕切膜から滲み出る分散相液の形状やサイズがきわめて不均一である。したがって、上記装置によれば、いくら連続相液親和帯を用いて効果的にエマルジョンを生成しようとしても、根本的な解決には至らない。すなわち、上記の技術では、粒径分布が十分に狭いエマルジョンを得ることは実質的に不可能である。
さらに、汎用のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを乳化法に用いられ得ることが提案されている(非特許文献1)。このような汎用PTFEフィルムを用いれば、多孔質セラミックを用いる場合に比べて、得られるエマルジョンの均一性は若干改善される。しかし、当該PTFEフィルムもまた、セラミックと同様軽石状の多孔構造を有しているので、粒径分布が十分に狭いエマルジョンを得ることは困難である。
以上のように、粒径分布が十分に狭いエマルジョンを生成し得る装置およびそのような装置を実現し得るフィルターが強く望まれている。
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、粒径分布が十分に狭いエマルジョンを生成し得る装置を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シリコンウェハーに結晶異方性エッチングを施すことにより、きわめて均一な口径を有する貫通孔が形成されること、ならびに、このような貫通孔を乳化膜に利用することにより、粒径分布がきわめて狭いエマルジョンを生成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の乳化フィルターは、シリコンウェハーにエッチングを施して貫通孔を形成してなる。
好ましい実施形態においては、上記貫通孔は、結晶異方性エッチングにより形成されている。
好ましい実施形態においては、上記貫通孔の露出面は、実質的にシリコン結晶の(111)面である。
好ましい実施形態においては、上記シリコンウェハーはn型シリコンウェハーであり、上記貫通孔は陽極化成により形成されている。
好ましい実施形態においては、上記貫通孔の出口側の開口サイズは1〜15μmである。
好ましい実施形態においては、上記貫通孔は、出口側に向かってテーパー状の断面形状を有する部分を有する。
本発明の別の局面によれば、エマルジョン生成装置が提供される。このエマルジョン生成装置は、第1の液体が流れる流路を規定する筒状のフィルター部を有し、該第1の液体とは異なる第2の液体を加圧して該フィルター部を通過させ、該流路に押し出された該第2の液体を該第1の液体に分散させてエマルジョンを生成する。このフィルター部は、上記の乳化フィルターを含む。
好ましい実施形態においては、上記フィルター部を20重量%シリカ水溶液が通過する際の初期透過圧力は2〜20kPaである。
好ましい実施形態においては、本発明のエマルジョン生成装置は、上記フィルター部と上記第1の液体とを前記流路方向に相対的に移動させる手段をさらに有する。
本発明によれば、シリコンウェハーのエッチングにより形成した貫通孔を有する乳化フィルターおよび当該フィルターを用いたエマルジョン生成装置が提供される。シリコン単結晶のエッチング速度は、その結晶方位によって100倍以上も異なる。具体的には、(111)面が他の方位に比べて著しくエッチングされにくい。その結果、例えばシリコンウェハーの平面を(100)面とし、オリエンテーションフラット面を(100)面としてウェットエッチングを行うと、(111)面がエッチングされずに残り、その結果、(111)面が露出するようにして貫通孔が形成される。当該貫通孔の形状は、シリコン単結晶の結晶方位のみによって制御されるので、きわめて均一である。したがって、このような乳化フィルターを用いることにより、従来に比べて格段にシャープな粒径分布を有するエマルジョンが形成され得る。
さらに、露出した(111)面はきわめて平滑(実質的に鏡面状態)であり、かつ、形成された貫通孔はシリコン単結晶の結晶方位に起因して出口に向かってテーパー形状の断面を有するので、分散相液が貫通孔を通過する際の流路抵抗がきわめて小さい。したがって、乳化の際の圧力が非常に小さくなり、かつ、分散相液がきわめてスムーズに連続相液に導入されるので、粒径分布が十分に狭いエマルジョンが形成され得る。また、非常に粘度の高い分散相液や固形分を含む分散相液が使用可能となるので、多様な種類のエマルジョンを形成することが可能となる。
本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.乳化フィルターおよびその製造方法
本発明の乳化フィルターは、シリコンウェハーにエッチングを施して貫通孔を形成してなる。その結果、当該貫通孔は、実質的に一直線状である。本明細書において、「実質的に一直線状の貫通孔」とは、フィルターの表面から裏面の方向(またはその逆方向)に1つの孔を見たときに、その孔の途中に視界を遮るような障害物がなくフィルターの向こう側が見えるような形状を意味する。したがって、「実質的に一直線状の貫通孔」は、例えばテーパー形状やホーン形状をも包含する。このような貫通孔は、従来の多孔質材料の孔構造(いわゆる軽石状の孔構造)と全く異なるものであり、このような孔構造を形成したことが本発明の大きな成果の1つである。このような貫通孔は、従来の多孔質材料の孔構造に比べて流路抵抗が格段に小さいので、乳化に必要な圧力が格段に小さくなり、得られるエマルジョンの粒径をきわめて均一に制御することが可能となる。
本発明の乳化フィルターは、シリコンウェハーにエッチングを施して貫通孔を形成してなる。その結果、当該貫通孔は、実質的に一直線状である。本明細書において、「実質的に一直線状の貫通孔」とは、フィルターの表面から裏面の方向(またはその逆方向)に1つの孔を見たときに、その孔の途中に視界を遮るような障害物がなくフィルターの向こう側が見えるような形状を意味する。したがって、「実質的に一直線状の貫通孔」は、例えばテーパー形状やホーン形状をも包含する。このような貫通孔は、従来の多孔質材料の孔構造(いわゆる軽石状の孔構造)と全く異なるものであり、このような孔構造を形成したことが本発明の大きな成果の1つである。このような貫通孔は、従来の多孔質材料の孔構造に比べて流路抵抗が格段に小さいので、乳化に必要な圧力が格段に小さくなり、得られるエマルジョンの粒径をきわめて均一に制御することが可能となる。
また、本明細書において「シリコンウェハー」とは、シリコン単結晶からなるものだけでなく、エッチストップ層を有するシリコンウェハーやSOIウェハーを包含する。エッチストップ層(例えば、SiO2層)を有するウェハーが好ましい。エッチストップ層を形成することにより、貫通孔の出口側開口部の周縁部がエッチングされて開口サイズが変動することを防止することができる。エッチストップ層は、必要に応じてフッ酸等でエッチングすることにより除去することができる。
1つの実施形態においては、上記貫通孔は、シリコンウェハーの結晶異方性エッチングにより形成されている。シリコンウェハーはn型であってもよくp型であってもよい。例えば、図1に示すように、シリコンウェハーの平面を(100)面、オリエンテーションフラット面を(100)面としてウェットエッチングすることにより、貫通孔が形成される。図2(a)は、このようにして形成された貫通孔の形状を説明する概略斜視図であり、(b)は概略断面図である。図1および図2に示すように、貫通孔1は、分散相液の入口から出口に向かって狭くなる四角錐台形状(断面テーパー形状)を有する。この貫通孔は、実質的にシリコン単結晶の(111)面が露出している。すなわち、(111)面がエッチングされずに残り、貫通孔の形状を規定する。貫通孔の形状は、シリコン単結晶の結晶方位のみによって規定されるので、きわめて均一である。具体的には、(111)面は、シリコンウェハーの平面方向に対して実質的に54.7°の角度の断面テーパー形状を形成する。したがって、シリコンウェハーの厚みを調整することにより、出口の孔サイズを精密に制御することができる。また、露出した(111)面はきわめて平滑な表面(実質的に鏡面状態)を有するので、流路抵抗が非常に小さく、粘度の高い分散相液を用いることができる。なお、本明細書において「実質的にシリコン単結晶の(111)面が露出している」とは、(111)面の極近傍面が露出している場合をも包含する。すなわち、エッチング状態によっては、(111)面の極近傍面がある程度露出する場合があり、その場合には、貫通孔は、シリコンウェハーの平面方向に対して約54.6°〜54.8°の角度の断面テーパー形状を形成する。
上記貫通孔の出口側における開口サイズは、好ましくは1〜15μmであり、さらに好ましくは1〜6μmである。このような開口サイズを有することにより、非常に微細なエマルジョン粒子を形成することが可能となる。例えば、シリコンウェハーの厚みを100μm、平面を(100)面、オリエンテーションフラット面を(100)面とするウェットエッチングにより形成される貫通孔は、入口側の開口部を1辺が147μm程度の正方形に設定すると、出口側において1辺が5μm程度の正方形の開口を有する。なお、本明細書において「開口サイズ」とは、開口部の形状を表す特徴的な長さを意味する。例えば、開口部が円形の場合には、開口サイズは直径で表され、開口部が正方形の場合には、開口サイズは1辺の長さで表され、開口部が長方形の場合には、開口サイズは短辺長さで表される。
上記のような好ましい出口側の開口サイズが得られるシリコンウェハーの厚みまたはシリコン活性層の厚みは、10〜400μmであり、さらに好ましくは20〜200μmである。
結晶異方性エッチングは、代表的にはウェットエッチングにより行われる。好ましいエッチング液(すなわち、結晶方位による強い異方性を示すエッチング液)の代表例としては、KOH溶液、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド)水溶液、EDP(エチレンジアミンピロカテコール)水溶液、ヒドラジン水溶液などのアルカリ水溶液が挙げられる。エッチング液の濃度や温度は、用いられる溶液の種類や目的に応じて変更され得る。例えば、KOH溶液の実用的な濃度は、15〜30重量%である。エッチングレートも、所望とされる貫通孔の形状等に応じて変更され得る。代表的なエッチングレートは、1.0〜1.4μm/分である。
別の実施形態においては、図3に示すように、シリコンウェハーの平面を(110)面、オリエンテーションフラット面を(110)面としてウェットエッチングすることにより、貫通孔が形成される。図4(a)は、このようにして形成された貫通孔の概略斜視図であり、(b)は図3のA−A部分の概略断面図である。図3および図4に示すように、貫通孔3は、分散相液の入口部分で平面視平行四辺形状の大きな開口を有し、当該平行四辺形の各辺に対応する部分がシリコンウェハー平面に対して実質的に90°の方向に延びるようにして(111)面が露出する。さらに、当該平行四辺形の2つの頂点部分からシリコンウェハー平面に対して実質的に36.3°を形成するようにして貫通孔の断面が形成され、当該断面もまた露出した(111)面から構成される。結果として、出口部分では、平面視した場合に入り口部分の開口部と交差し、かつ、入り口部分よりも小さい開口部が形成される。すなわち、貫通孔3は、シリコンウェハー平面に対して実質的に90°の方向に露出した4つの(111)面、ならびにシリコンウェハー平面に対して実質的に36.3°の方向に露出した2つの(111)面の合計6面で形状が規定されている。
さらに別の実施形態においては、上記貫通孔は陽極化成により形成されている。この場合には、シリコンウェハーはn型に限定される。p型では、形成される孔が網目状となり、貫通孔が形成されないからである。図5は、陽極化成により形成された貫通孔5の概略断面図である。この貫通孔の平面形状は円形である。この貫通孔の開口サイズもまた数μm程度である。
上記陽極化成は、例えば次のような手順で行われる:表面に0.5μmのシリコン酸化膜を有する厚さ100μmのn型シリコン基板を用いる。このシリコン基板に異方性エッチングを例えば3分間行い、数μmの開口を形成する。次いで、47%フッ酸とエタノールの1:1溶液を用い、基板表面から光を照射し、電流密度が20mA/cm2、化成時間が100分の条件で行う。その結果、孔径が1μm程度の貫通孔5が形成される。
B.エマルジョン生成装置
図6は、本発明の好ましい実施形態によるエマルジョン生成装置の要部断面図である。このエマルジョン生成装置200は、第1の液体L1を収容する貯留槽21と、この貯留槽21内に配置された混合容器22と、この混合容器22内に挿入された筒状のフィルター部23とを備える。筒状のフィルター部23は、その内部に、第1の液体L1が流れる流路24を規定し、その外側と混合容器22の内壁との間に、第2の液体L2を導入する導入部25を規定する。
図6は、本発明の好ましい実施形態によるエマルジョン生成装置の要部断面図である。このエマルジョン生成装置200は、第1の液体L1を収容する貯留槽21と、この貯留槽21内に配置された混合容器22と、この混合容器22内に挿入された筒状のフィルター部23とを備える。筒状のフィルター部23は、その内部に、第1の液体L1が流れる流路24を規定し、その外側と混合容器22の内壁との間に、第2の液体L2を導入する導入部25を規定する。
混合容器22の下端開口から第1の液体(連続相液)L1が流路24に導入される。一方、導入部25には、加圧された第2の液体(分散相液)L2が混合容器22の外部から導入口26を介して導入される。流路24内に導入された連続相液L1は、流路24内で分散相液L2と混合されて、再度貯留槽21内に排出される。好ましくは、混合および排出は、混合容器22と第1の液体L1とを相対的に上下に往復運動させることにより行われる。例えば、超音波発生装置(図示せず)を用いて第1の液体L1を上下方向に移動させてもよく、任意の適切な振動手段(例えば、機械的振動手段:図示せず)を用いて混合容器22を上下方向に移動させてもよい。上下移動の周波数は目的に応じて変化し得るが、代表的には約8.3Hz(1分間に500回上下移動)である。
フィルター部23は、上記A項で説明したようなシリコンウェハーをエッチングして得られる乳化フィルターを含む。このような乳化フィルターを用いたことが、本発明の特徴の1つである。フィルター部23は、図7に示すように、断面四角形の筒状である。フィルター部23は、少なくとも対向する2面(23aおよび23b、あるいは、23cおよび23d)が本発明の乳化フィルターからなる。図示例では、フィルター部の外周4面23a、23b、23cおよび23dが、本発明の乳化フィルターからなる。
図8は、上記フィルター23による乳化プロセスの概念図である。加圧された分散相液L2は、その圧力によってフィルター23の貫通孔29に導入され、流路24に押し出される。貫通孔29から押し出された分散相液L2は、その粒子径が大きくなる前に、上記混合容器22と連続相液L1との相対的な上下移動によるせん断力によってフィルター部23から解放され、連続相液L1中に分散される。このようにして、エマルジョンが生成される。ここで、フィルター23の貫通孔29は実質的に一直線状であり、かつ、その表面はシリコン単結晶の(111)面できわめて平滑(実質的に鏡面状態)であるので、分散相液L2が通過する際の流路抵抗がきわめて小さい(例えば、分散相液として20重量%シリカ水溶液を用いた場合に、分散相液がフィルターを通過する際の初期透過圧力が2〜20kPaである)。したがって、乳化の際の圧力が非常に小さくなり、かつ、分散相液がきわめてスムーズに連続相液L1に導入される。その結果、粒径分布が十分に狭いエマルジョンが形成され得る。さらに、上記A項で説明したとおり、フィルターの貫通孔の開口サイズを容易に制御できるので、所望の粒径を有するエマルジョンを得ることが可能となる。
好ましくは、上記フィルター部23は、その表面が修飾されている。表面を修飾することにより、乳化の精度が改善され得る。表面の修飾は、代表的には疎水化処理である。疎水化処理は、代表的には、疎水性フィルムの貼り付けやコーティングにより行われる。疎水性フィルムまたはコーティングは、化学的に安定であることが好ましい。乳化に悪影響を与えないからである。疎水性フィルムやコーティングの代表的な材料は、フッ素系高分子である。フッ素系高分子は、きわめて優れた耐薬品性、耐熱性および撥水性を有するので、非常に精密な乳化が可能となる。フッ素系高分子の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、およびパーフルオロエチレン−プロペンコポリマー(FEP)が挙げられる。特に好ましいフッ素系高分子は、PTFEである。入手が容易で、かつ、化学的安定性に優れているからである。また、本発明においてはシリコンウェハーを用いて穴あけ加工を行うので、薄膜プロセスにより撥水性薄膜を形成する方法が好ましく適用され得る。例えば、PTFEペレットを真空装置で加熱溶融し、シリコンウェハーに蒸着させる方法が採用され得る。この場合、薄膜の厚みを0.1μm以上とすることにより、所望の撥水機能が実現され得る。
上記連続相液L1および分散相液L2は、それぞれ、目的に応じて適宜選択され得る。多くの場合、連続相液L1および分散相液L2の両方に任意の適切な界面活性剤が添加され得る。連続相液L1および分散相液L2の具体的な応用例としては、以下が挙げられる:例えば、分散相液に過酸化ベンゾイル(重合開始剤)を添加したジビニルベンゼン、連続相液にラウリル硫酸ナトリウム水溶液を用いてエマルジョンを生成し、当該エマルジョンから乳化重合を行うと、非常に微細な高分子微粒子を形成することが可能となる。例えば、分散相液としてソルビタンエステルおよびトリパルミチンを溶解した油性液、連続相液に水を用いると、単分散のリポソームの生成が可能となる。例えば、分散相液としてゼラチン水溶液、連続相液としてイソオクタンを用いると、ゼラチンマイクロカプセルの生成が可能となる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。
(乳化フィルターの作製)
厚み60μmのシリコンウェハーの平面を(100)面、オリエンテーションフラット面を(100)面として、17重量%KOH溶液を用いて、温度90℃、エッチングレート1.2μm/分でウェットエッチングを行った。その結果、図1および図2に示すような、断面テーパー形状を有し、入口側の開口部が90μm×90μmの正方形で、出口側の開口部が5μm×5μmの正方形である貫通孔を有する乳化フィルターを作製した。このフィルターを4つ用いて、図7に示すような断面四角形の筒状の乳化フィルター部を作製した。
厚み60μmのシリコンウェハーの平面を(100)面、オリエンテーションフラット面を(100)面として、17重量%KOH溶液を用いて、温度90℃、エッチングレート1.2μm/分でウェットエッチングを行った。その結果、図1および図2に示すような、断面テーパー形状を有し、入口側の開口部が90μm×90μmの正方形で、出口側の開口部が5μm×5μmの正方形である貫通孔を有する乳化フィルターを作製した。このフィルターを4つ用いて、図7に示すような断面四角形の筒状の乳化フィルター部を作製した。
(エマルジョンの調製)
上記で得られた乳化フィルターを用いて、図6に示すような装置を作製した。連続相液として界面活性剤を含むトルエンを用い、分散相液として20重量%シリカ水溶液を用いた。分散相液を加圧して混合容器に供給し、混合容器の振動周波数を500rpmとして、90分間乳化を行った。乳化直後の微粒子を顕微鏡で観察したところ、約10μmの微粒子が生成されていた。乳化時の分散相液の透過圧力は4〜5kPaであった。
上記で得られた乳化フィルターを用いて、図6に示すような装置を作製した。連続相液として界面活性剤を含むトルエンを用い、分散相液として20重量%シリカ水溶液を用いた。分散相液を加圧して混合容器に供給し、混合容器の振動周波数を500rpmとして、90分間乳化を行った。乳化直後の微粒子を顕微鏡で観察したところ、約10μmの微粒子が生成されていた。乳化時の分散相液の透過圧力は4〜5kPaであった。
(比較例1)
乳化フィルターとして孔径5μmのSPG(シラスポーラスガラス)膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図6に示すような装置を作製し乳化を行った。乳化時の分散相液の透過圧力は10〜15kPaであった。
乳化フィルターとして孔径5μmのSPG(シラスポーラスガラス)膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図6に示すような装置を作製し乳化を行った。乳化時の分散相液の透過圧力は10〜15kPaであった。
(乳化フィルターの作製)
図9に示す手順で、陽極化成により乳化フィルターを作製した。まず、図9(a)に示すように、表面に0.5μmのシリコン酸化膜92を有する(100)面のn型シリコン基板90を用いた。次に、図9(b)に示すように、シリコン酸化膜を部分的に除去し、開口部92aを形成した。次に、残ったシリコン酸化膜92をマスクとして、30重量%KOH溶液でシリコン基板90の異方性エッチングを行い、当該シリコン基板に(111)面を露出させ、凹部90aを形成した(図9(c))。凹部90aは、基板平面に対して54.7°の角度を有する4つの(111)面が交差して規定されていた。また、異方性エッチングの加工時間は3分間であった。
図9に示す手順で、陽極化成により乳化フィルターを作製した。まず、図9(a)に示すように、表面に0.5μmのシリコン酸化膜92を有する(100)面のn型シリコン基板90を用いた。次に、図9(b)に示すように、シリコン酸化膜を部分的に除去し、開口部92aを形成した。次に、残ったシリコン酸化膜92をマスクとして、30重量%KOH溶液でシリコン基板90の異方性エッチングを行い、当該シリコン基板に(111)面を露出させ、凹部90aを形成した(図9(c))。凹部90aは、基板平面に対して54.7°の角度を有する4つの(111)面が交差して規定されていた。また、異方性エッチングの加工時間は3分間であった。
凹部90aが形成されたシリコン基板に対して陽極化成を行った。これにより、凹部90aの頂点に電界が集中し、図9(d)に示すように、直線状の孔90bが形成された。さらに、図9(e)に示すように、エッチングは直線状に進み、孔90bが貫通した。最後に、マスクとして使用したシリコン酸化膜92を除去することにより、図9(f)に示すように、貫通孔90bを有する乳化フィルター90を得た。なお、陽極化成は、図10に示す陽極化成用冶具100を用いて以下の手順で行った:一対のPTFE製ホルダー93および94の間にOリング95を介して基板90を挟持し、ボルトで固定した。ホルダー93および94内の空間にフッ酸の溶液96(具体的には、47%フッ酸とエタノールの1:1溶液)を満たし、基板90の両側に配置された電極97および98の間に電流(電流密度:20mA/cm2)を流した。
実施例1と比較例1とを比較すると明らかなように、本発明の乳化フィルターは、乳化時の分散相液の透過圧力が非常に小さく、粘度の高い分散相液の使用が可能となる。さらに、得られるエマルジョン粒子の粒径が非常に小さく、かつ、粒径分布が非常にシャープになる。
本発明のフィルターおよびエマルジョン生成装置は、各種エマルジョンを生成するための乳化プロセスに好適に用いられ得る。このようにして得られるエマルジョンは、食品、医薬品、化成品等の分野で幅広く利用され得る。
200 エマルジョン生成装置
21 貯留槽
22 混合容器
23 フィルター部
24 流路
25 導入部
26 導入口
21 貯留槽
22 混合容器
23 フィルター部
24 流路
25 導入部
26 導入口
Claims (9)
- シリコンウェハーにエッチングを施して貫通孔を形成してなる、乳化フィルター。
- 前記貫通孔が、結晶異方性エッチングにより形成されている、請求項1に記載の乳化フィルター。
- 前記貫通孔の露出面が、実質的にシリコン結晶の(111)面である、請求項2に記載の乳化フィルター。
- 前記シリコンウェハーがn型シリコンウェハーであり、前記貫通孔が陽極化成により形成されている、請求項1に記載の乳化フィルター。
- 前記貫通孔の出口側の開口サイズが1〜15μmである、請求項1から4のいずれかに記載の乳化フィルター。
- 前記貫通孔が、出口側に向かってテーパー状の断面形状を有する部分を有する、請求項1から5のいずれかに記載の乳化フィルター。
- 第1の液体が流れる流路を規定する筒状のフィルター部を有し、該第1の液体とは異なる第2の液体を加圧して該フィルター部を通過させ、該流路に押し出された該第2の液体を該第1の液体に分散させてエマルジョンを生成するエマルジョン生成装置であって、
該フィルター部が、請求項1から6のいずれかに記載の乳化フィルターを含む。 - 前記フィルター部を20重量%シリカ水溶液が通過する際の初期透過圧力が2〜20kPaである、請求項7に記載のエマルジョン生成装置。
- 前記フィルター部と前記第1の液体とを前記流路方向に相対的に移動させる手段をさらに有する、請求項7または8に記載のエマルジョン生成装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005001143A JP2006187718A (ja) | 2005-01-06 | 2005-01-06 | エマルジョン生成装置 |
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JP2005001143A JP2006187718A (ja) | 2005-01-06 | 2005-01-06 | エマルジョン生成装置 |
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JP2006187718A true JP2006187718A (ja) | 2006-07-20 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008289975A (ja) * | 2007-05-23 | 2008-12-04 | Japan Atomic Energy Agency | エマルションフローを利用した連続液−液抽出装置 |
JP2009297612A (ja) * | 2008-06-11 | 2009-12-24 | Spg Techno Kk | 多孔質膜乳化装置 |
-
2005
- 2005-01-06 JP JP2005001143A patent/JP2006187718A/ja active Pending
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