JP2006182656A - 疎水性防腐剤を内包する物質内包性無機粒子複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は疎水性防腐剤を担持した物質内包性無機粒子複合体に関する。
シリカやクレイなどの物質内包性無機粒子は様々な化合物を担持することが可能であり、吸着剤などに応用されてきている。さらに最近では、生理活性物質を物質内包性無機粒子に担持させ薬物徐放システムとしての利用も検討されている(特許文献1〜2及び非特許文献1〜10)。しかしながら、担持させた機能性物質を水などの液体中で利用する場合、多孔体微粒子の分散安定性が悪いという問題があった。一方、防腐剤には長期に亘って抗菌性を維持することが求められており、また、塗料や紙パルプのコーティング剤等に使用する場合は透明性も必要である。
本発明はこのような事情に鑑み、分散安定性及び透明性を有し且つ抗菌持続性に優れた物質内包性無機粒子を提供することを課題とする。
本発明者らは、重合体を多孔質粒子に結合等させることにより、高い分散安定性及び透明性を付与した多孔体微粒子を出願したが(特願2003−293942号)、さらに詳細に検討したところ、(1)式で表される重合体と疎水性高分子と疎水性防腐剤とを物質内包性無機粒子に担持させることにより、様々な媒体中で優れた分散安定性及び透明性を有し、さらに疎水性防腐剤を徐放することができるため抗菌持続性を有することを知見して、本発明を完成させた。
かかる本発明の第1の態様は、物質内包性無機粒子と下記(1)式で表される重合体とからなる複合体であって、前記物質内包性無機粒子に疎水性高分子と共に疎水性防腐剤を担持してなることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体にある。
(式中、mは1〜2000までの整数、nは2〜20000までの整数を表す。)
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記疎水性防腐剤が1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン(BBAE)であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体にある。
本発明の第3の態様は、第1または2の態様において、前記物質内包性無機粒子が無機層状物質であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体にある。
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記無機層状物質がクレイであることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体にある。
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記疎水性高分子が、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート及びポリ(α−メチルスチレン)から選択される少なくとも一種であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体にある。
本発明の第6の態様は、物質内包性無機粒子と下記(1)式で表される重合体と疎水性防腐剤と疎水性高分子とを溶媒中で混合した後、粉末状の物質内包性無機粒子複合体を得ることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法にある。
(式中、mは1〜2000までの整数、nは2〜20000までの整数を表す。)
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記物質内包性無機粒子と前記疎水性防腐剤と前記疎水性高分子とを溶媒中で混合して物質内包性無機粒子に疎水性防腐剤と疎水性高分子を担持させた後に、前記(1)式で表される重合体を混合することを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法にある。
本発明の第8の態様は、第6又は7の態様において、前記疎水性防腐剤が1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン(BBAE)であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法にある。
本発明の第9の態様は、第6〜8の何れかの態様において、前記物質内包性無機粒子が無機層状物質であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法にある。
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記無機層状物質がクレイであることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法にある。
本発明の第11の態様は、第6〜10の何れかの態様において、前記疎水性高分子が、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート及びポリ(α−メチルスチレン)から選択される少なくとも一種であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法にある。
物質内包性無機粒子と上記(1)式で表される重合体からなり、物質内包性無機粒子に疎水性高分子と疎水性防腐剤とを担持した物質内包性無機粒子複合体とすると、分散安定性及び透明性を有し且つ抗菌持続性に優れる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の物質内包性無機粒子複合体は、物質内包性無機粒子と上記(1)式で表される重合体とからなる複合体であって、物質内包性無機粒子に疎水性高分子と共に疎水性防腐剤が担持されている。
物質内包性無機粒子とは、物質を粒子内に担持することができる無機粒子であり、無機層状物質や多孔質粒子等が挙げられる。
無機層状物質とは、層状構造を有する無機粒子である。この層間距離を変化させながら層間に疎水性物質を担持する。ここで、層状構造とは、原子が共有結合などによって強く結合して密に配列した面がファン・デル・ワールス力など弱い結合力によって平行に積み重なった構造である。無機層状物質としては、層状ケイ酸塩であるクレイ(粘土鉱物)、層状水酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属ジカルコゲナイド、グラファイト、リン酸塩、金属リン化合物等が挙げられる。クレイは、天然物でも合成物でもよく、例えば、モンモリロナイト、カオリナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等が使用できる。無機層状物質を溶媒に分散させると膨潤して層間距離が広がるため、疎水性防腐剤をこの層間に取り込むことができる。
多孔質粒子とは、細孔構造を有する無機粒子である。多孔質粒子は、無機層状物質とは異なり非膨潤型の物質内包性無機粒子であり、細孔内に疎水性防腐剤を担持する。多孔質粒子としては、シリカ、ゼオライト等を挙げることができる。
物質内包性無機粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは0.1nm〜10μm、さらに好ましくは0.5nm〜10μm、最も好ましくは1nm〜3μmである。
この物質内包性無機粒子の層間又は細孔内に疎水性防腐剤が担持されている。疎水性防腐剤は特に限定されないが、例えば、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン(BBAE)、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(TBZ)等が挙げられる。疎水性防腐剤の量は、無機層状物質に対して1/10〜10倍量が好ましい。
さらに、物質内包性無機粒子には、疎水性高分子も担持されている。疎水性高分子を担持させることにより、形成された物質内包性無機粒子複合体を水、アルコール等の溶媒に分散させたときに、物質内包性無機粒子の層間又は細孔内に担持させた疎水性防腐剤を徐放する性質を示すようになる。このように疎水性防腐剤を徐々に放出するため、本発明の物質内包性無機粒子複合体は、抗菌性が長期間持続する。また、疎水性高分子を担持させることにより、疎水性防腐剤の導入率を向上させることができる。この疎水性高分子の種類も特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート、ポリ(α―メチルスチレン)、ポリスチレン、ポリイオンコンプレックス等を挙げることができる。これらの疎水性高分子は単独で用いても、数種を併用して用いてもよい。疎水性高分子の量は、疎水性防腐剤の1/10〜2倍量が好ましい。
また、上記(1)式で表される重合体も物質内包性無機粒子に担持されている。(1)式で表される重合体の側鎖末端のジメチルアミノ基を、物質内包性無機粒子表面に共有結合、イオン結合又は水素結合などの相互作用によって吸着させることにより、(1)式のポリエチレングリコール(以下「PEG」ともいう)セグメントが物質内包性無機粒子表層にブラシ状に担持されているものと推測される。これにより、PEGセグメントが物質内包性無機粒子表面上に十分な親媒性を付与し、物質内包性無機粒子表面への非特異吸着や凝集沈殿を回避できるように作用するため、形成された物質内包性無機粒子複合体に高分散性を付与することができる。したがって、例えば、高イオン強度(強酸性)など通常分散し難い条件下でも、高い分散安定性を維持することができる。(1)式で表される重合体の量は特に限定されないが、物質内包性無機粒子に対して5〜30倍量が好ましい。
本発明の物質内包性無機粒子複合体を水、アルコール等の溶媒に分散させた場合、透明性が高いため、透明性が求められる防腐剤、例えば塗料、紙パルプのコーティング剤等の防腐剤として、好適に使用することができる。
本発明の物質内包性無機粒子複合体の製造方法は特に限定されないが、例えば、物質内包性無機粒子と(1)式で表される重合体と疎水性防腐剤と疎水性高分子とを溶媒中で混合した後、粉末状とすることにより製造できる。
物質内包性無機粒子、(1)式で表される重合体、疎水性防腐剤、疎水性高分子の各成分を混合する際に用いる溶媒としては、例えば、水、テトラヒドロフラン、アセトン、エチレングリコール、低級アルコール、超臨界二酸化炭素、芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いても混合して用いてもよい。各成分をそれぞれ溶媒に溶解又は分散したものを混合してもよい。また、成分の一部、例えば、物質内包性無機粒子、疎水性防腐剤及び疎水性高分子を溶媒中で混合した後乾燥して溶媒を留去して乾燥物とし、これを溶媒に溶解又は分散したものと、他の成分、すなわち(1)式で表される重合体を溶媒に溶解したものとを混合してもよい。
各成分を混合する順序に特に制限は無いが、物質内包性無機粒子、疎水性防腐剤及び疎水性高分子を溶媒中で混合して物質内包性無機粒子に疎水性防腐剤と疎水性高分子を担持させた後に、(1)式で表される重合体を混合することが好ましい。形成された物質内包性無機粒子複合体の分散安定性が向上するからである。また、物質内包性無機粒子、疎水性防腐剤及び疎水性高分子を混合する際には、物質内包性無機粒子に疎水性防腐剤と疎水性高分子とを同時に混合することが好ましいが、疎水性防腐剤を物質内包性無機粒子に担持させた後に疎水性高分子を混合する方法でもよい。
各成分を溶媒中で混合した後、粉末状にすることにより本発明の物質内包性無機粒子複合体となる。粉末状にする方法としては、凍結乾燥や減圧乾燥等で溶媒を除去する方法が挙げられる。
(実施例1)
クレイ0.022gをジクロロメタン8mL中に混合した分散液に、防腐剤BBAE0.024gと分子量20000のポリ乳酸0.020gとをジクロロメタン2mL中に溶解させた溶液を加えて室温下で2時間撹拌後、エバポレートにより溶媒を除去した。乾燥物にpH7.0緩衝液25mLを加えて分散させた後、この分散液にポリエチレングリコール/ポリメタクリル酸(2−N,N−ジメチルアミノエチル)ブロック共重合体(n=63、m=48の(1)式で表される重合体;(株)トランスパレント製、以下「PEG−b−PAMA」と記載)0.250gをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した。この後、遠心分離、凍結乾燥を経て白色粉体(物質内包性無機粒子複合体)0.034gを回収した。防腐剤導入量については、洗浄後の上澄みについて液体クロマトグラフィー測定(検出波長220nm)を行い、上澄みに含有される防腐剤全量をクレイに吸着していない防腐剤として防腐剤導入率(%)を算出した。結果を表1に示す。
クレイ0.022gをジクロロメタン8mL中に混合した分散液に、防腐剤BBAE0.024gと分子量20000のポリ乳酸0.020gとをジクロロメタン2mL中に溶解させた溶液を加えて室温下で2時間撹拌後、エバポレートにより溶媒を除去した。乾燥物にpH7.0緩衝液25mLを加えて分散させた後、この分散液にポリエチレングリコール/ポリメタクリル酸(2−N,N−ジメチルアミノエチル)ブロック共重合体(n=63、m=48の(1)式で表される重合体;(株)トランスパレント製、以下「PEG−b−PAMA」と記載)0.250gをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した。この後、遠心分離、凍結乾燥を経て白色粉体(物質内包性無機粒子複合体)0.034gを回収した。防腐剤導入量については、洗浄後の上澄みについて液体クロマトグラフィー測定(検出波長220nm)を行い、上澄みに含有される防腐剤全量をクレイに吸着していない防腐剤として防腐剤導入率(%)を算出した。結果を表1に示す。
(実施例2)
クレイ0.021gをジクロロメタン8mL中に混合した分散液に、防腐剤BBAE0.02gをジクロロメタン1mL中に溶解させた溶液を加えて室温下で2時間撹拌後、分子量20000ポリ乳酸0.02gをジクロロメタン1mL中に溶解させた溶液を加えてさらに室温下で1時間撹拌後、エバポレートにより溶媒を除去した。乾燥物にpH7.0緩衝液25mLを加えて分散させた後、この分散液に実施例1と同じPEG−b−PAMAをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した。この後、遠心分離、凍結乾燥を経て白色粉体0.044gを回収した。また、実施例1と同様に防腐剤導入率(%)を算出した。
クレイ0.021gをジクロロメタン8mL中に混合した分散液に、防腐剤BBAE0.02gをジクロロメタン1mL中に溶解させた溶液を加えて室温下で2時間撹拌後、分子量20000ポリ乳酸0.02gをジクロロメタン1mL中に溶解させた溶液を加えてさらに室温下で1時間撹拌後、エバポレートにより溶媒を除去した。乾燥物にpH7.0緩衝液25mLを加えて分散させた後、この分散液に実施例1と同じPEG−b−PAMAをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した。この後、遠心分離、凍結乾燥を経て白色粉体0.044gを回収した。また、実施例1と同様に防腐剤導入率(%)を算出した。
(実施例3)
分子量20000のポリ乳酸のかわりに、分子量15000のポリメチルメタクリレート(PMMA)0.023gを用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体0.047gを得、防腐剤導入率も測定した。
分子量20000のポリ乳酸のかわりに、分子量15000のポリメチルメタクリレート(PMMA)0.023gを用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体0.047gを得、防腐剤導入率も測定した。
(実施例4)
分子量20000のポリ乳酸のかわりに、分子量10000のポリ(α−メチルスチレン)(PαMSt)0.022gを用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体0.052gを得、防腐剤導入率も測定した。
分子量20000のポリ乳酸のかわりに、分子量10000のポリ(α−メチルスチレン)(PαMSt)0.022gを用いた以外は実施例1と同様にして、白色粉体0.052gを得、防腐剤導入率も測定した。
(比較例1)
クレイ0.023gをジクロロメタン8mL中に混合した分散液に、防腐剤BBAE0.025gをジクロロメタン2mL中に溶解させた溶液を加えて室温下で2時間撹拌後、エバポレートにより溶媒を除去した。乾燥物にpH7.0緩衝液25mLを加えて分散させた後、この分散液に実施例1と同じPEG−b−PAMAをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した。この後、遠心分離、凍結乾燥を経て白色粉体0.031gを回収した。実施例1と同様に防腐剤導入率(%)を算出した。
クレイ0.023gをジクロロメタン8mL中に混合した分散液に、防腐剤BBAE0.025gをジクロロメタン2mL中に溶解させた溶液を加えて室温下で2時間撹拌後、エバポレートにより溶媒を除去した。乾燥物にpH7.0緩衝液25mLを加えて分散させた後、この分散液に実施例1と同じPEG−b−PAMAをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した。この後、遠心分離、凍結乾燥を経て白色粉体0.031gを回収した。実施例1と同様に防腐剤導入率(%)を算出した。
疎水性高分子を担持させた実施例1〜4で得られた物質内包性無機粒子複合体は、防腐剤導入率が50%程度以上であった。疎水性高分子の存在によりクレイ層表面の吸着状態に変化が生じたものと推測される。BBAEとの疎水性相互作用も考えられる。また、クレイにBBAEとポリ乳酸とを同時混合した実施例1のほうが、クレイにBBAEを担持させた後にポリ乳酸を混合した実施例2よりも防腐剤導入率は高かった。一方、疎水性高分子を添加しない比較例1では、防腐剤導入率は30%程度であり、疎水性高分子の添加により、疎水性防腐剤の導入率が大幅に向上することが分かった。
(試験例1) 防腐剤のリリース試験
実施例1〜4及び比較例1の各物質内包性無機粒子複合体をpH7.0緩衝液(組成:0.1M NaH2PO4/Na2HPO4)中で分散させ、室温下で撹拌した。各時間経過後、分散液全量を遠心分離(10.2×104G(45000r.p.m.)×30min.,25℃)した後、上澄みを回収し、沈殿物には、新たに緩衝液を加えて再分散させ、引き続き撹拌を継続した。各時間経過後に回収した上澄みについて液体クロマトグラフィー測定(検出波長220nm)でBBAE量を定量し、BBAEの積算溶出量(%)を求めた。また、実験開始約500時間以降は、分散媒をメタノールやアセトン等の有機溶媒に変更してリリース実験を継続した。結果を表2及び図1に示す。
実施例1〜4及び比較例1の各物質内包性無機粒子複合体をpH7.0緩衝液(組成:0.1M NaH2PO4/Na2HPO4)中で分散させ、室温下で撹拌した。各時間経過後、分散液全量を遠心分離(10.2×104G(45000r.p.m.)×30min.,25℃)した後、上澄みを回収し、沈殿物には、新たに緩衝液を加えて再分散させ、引き続き撹拌を継続した。各時間経過後に回収した上澄みについて液体クロマトグラフィー測定(検出波長220nm)でBBAE量を定量し、BBAEの積算溶出量(%)を求めた。また、実験開始約500時間以降は、分散媒をメタノールやアセトン等の有機溶媒に変更してリリース実験を継続した。結果を表2及び図1に示す。
表2及び図1に示すように、疎水性高分子を添加しない比較例1の物質内包性無機粒子複合体を用いた場合に比べて、疎水性高分子を添加した実施例1〜4の物質内包性無機粒子複合体は微量ずつBBAEを放出しており、BBAEの徐放性を示した。BBAEを単独でクレイに担持させると、クレイとBBAE間で疎水性相互作用が強く働くのに対して、ポリ乳酸等の疎水性物質を混合することにより、この疎水性相互作用が弱まり、その結果、クレイ層間から溶出しやすくなるものと思われる。さらに、特にポリ乳酸を混合した実施例1及び2の物質内包性無機粒子複合体は、PMMAを添加した実施例3の物質内包性無機粒子複合体やPαMStを添加した実施例4の物質内包性無機粒子複合体と比較して、溶出量が若干多かった。また、実施例1〜4の物質内包性無機粒子複合体はBBAEを徐放する性質を有しているため、本発明の物質内包性無機粒子複合体は抗菌持続性を示すものと推測される。なお、実施例1〜4及び比較例1は、共に816時間の試験中沈殿物や凝集物はみられず、分散安定性は良好だった。
(試験例2)透過率の測定
実施例1〜4及び比較例1の各物質内包性無機粒子複合体を、濃度200ppm(0.2mg/mL)、400ppm(0.4mg/mL)、800ppm(0.8mg/mL)となるように、pH7.0緩衝液(組成:0.1M NaH2PO4/Na2HPO4)中で分散させ、紫外可視分光光度計を用いて波長550nmにおける透過率(%)を測定した。また、クレイのみを各濃度に調整したものを比較例2として、同様の測定をした。結果を表3に示す。
実施例1〜4及び比較例1の各物質内包性無機粒子複合体を、濃度200ppm(0.2mg/mL)、400ppm(0.4mg/mL)、800ppm(0.8mg/mL)となるように、pH7.0緩衝液(組成:0.1M NaH2PO4/Na2HPO4)中で分散させ、紫外可視分光光度計を用いて波長550nmにおける透過率(%)を測定した。また、クレイのみを各濃度に調整したものを比較例2として、同様の測定をした。結果を表3に示す。
表3に示すように、疎水性高分子を添加した実施例1〜4は、疎水性高分子を添加しない比較例1に比べて透過率は低下するものの、粒子濃度200ppm程度では70%以上の高い透過率を示した。また、クレイ単独の比較例2と比較して、BBAEを添加した比較例1は透過率は低下するものの、粒子濃度200ppm程度では80%以上の透過率を示すことも確認された。
(参考例1)
防腐剤1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)0.406gをpH7.0緩衝液(組成:0.1M NaH2PO4/Na2HPO4)25mL中に混合した分散液に、クレイ0.043gを加えて室温下で2時間撹拌した。このクレイ分散液に、PEG−b−PAMA 0.484gをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した後、遠心分離、洗浄、凍結乾燥を経て白色粉体(物質内包性無機粒子複合体)0.224gを回収した。
防腐剤1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)0.406gをpH7.0緩衝液(組成:0.1M NaH2PO4/Na2HPO4)25mL中に混合した分散液に、クレイ0.043gを加えて室温下で2時間撹拌した。このクレイ分散液に、PEG−b−PAMA 0.484gをpH7.0緩衝液5mLに溶解させた溶液を混合し、室温下で30分間撹拌した後、遠心分離、洗浄、凍結乾燥を経て白色粉体(物質内包性無機粒子複合体)0.224gを回収した。
この白色粉体0.02gに、パラフィン(融点68〜70℃)のヘキサン溶液(パラフィン/防腐剤内包クレイ粒子=0.5(重量比)となるように調製)5mLを加えて室温下で1時間撹拌後減圧乾燥を経て、BIT及びPEG−b−PAMAを担持し且つパラフィンでコーティングされた物質内包性無機粒子複合体を調製した。
(参考比較例1)
パラフィンでコーティングしない以外は、参考例1と同様にして、多孔質粒子複合体を得た。
パラフィンでコーティングしない以外は、参考例1と同様にして、多孔質粒子複合体を得た。
(参考試験例1) 防腐剤のリリース試験
参考例1及び参考比較例1の物質内包性無機粒子複合体をpH11.8緩衝液(組成:0.2M KCl/0.2M NaOH)中で分散させ、室温下で撹拌した。各時間経過後、分散液全量を遠心分離(10.2×104G(45000r.p.m.)×30min.,25℃)した後、上澄みを回収し、沈殿物には、新たに緩衝液を加えて再分散させ、引き続き撹拌を継続した。各時間経過後に回収した上澄みについて、紫外・可視吸収スペクトルを測定(測定波長318nm)してBIT量を定量し、BITの積算溶出量を求めた。結果を表4及び図2に示す。
参考例1及び参考比較例1の物質内包性無機粒子複合体をpH11.8緩衝液(組成:0.2M KCl/0.2M NaOH)中で分散させ、室温下で撹拌した。各時間経過後、分散液全量を遠心分離(10.2×104G(45000r.p.m.)×30min.,25℃)した後、上澄みを回収し、沈殿物には、新たに緩衝液を加えて再分散させ、引き続き撹拌を継続した。各時間経過後に回収した上澄みについて、紫外・可視吸収スペクトルを測定(測定波長318nm)してBIT量を定量し、BITの積算溶出量を求めた。結果を表4及び図2に示す。
表4及び図2に示すように、パラフィンコーティングした参考例1では、パラフィンコーティングしなかった参考比較例1と比べてBITの初期溶出量が低下し、また、参考例1及び参考比較例1とも、BITは初期(経過時間1日程度)に溶出された後は、溶液中のBIT濃度は変化せず、積算溶出量はほぼ一定となった。また、参考例1及び参考比較例1では、本発明の物質内包性無機粒子複合体である実施例1〜4が示したような内包物(BIT)の徐放性は示さなかった。
(参考試験例2) 抗菌性試験
(1) 物質内包性無機粒子複合体に含有される防腐剤BIT濃度が試験溶液中で5ppmになるように秤量した参考例1の物質内包性無機粒子複合体、0.02M KH2PO4+0.01M KCl/0.1M Na2HPO4緩衝液(pH7.03)20mL、2.5wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液20mL、腐敗溶液(1wt%ゼラチン/pH6.97緩衝溶液を35℃の恒温器に10日間静置したもの、生菌数5.8×104個/mL)5mLを混合して試験溶液を調製した。
(2) 試験溶液を1.5mL採取(これを試験開始時(0day)とした)後、25℃の恒温振とう槽中で振とうした。所定時間ごとに試験溶液を1.5mL採取し、KH2PO4/NaOH緩衝液(pH7.02)を用いて希釈溶液を調製した。希釈した溶液1mLをペトリフィルム培地に滴下して35℃の恒温器中で48時間培養した後、ペトリフィルム培地上にできた赤い斑点を生菌としてカウントし、希釈倍率を乗じて試験溶液1mL中の生菌数を計測した。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
(3) 参考例1の物質内包性無機粒子複合体を参考比較例1の物質内包性無機粒子複合体にかえた以外は、同様の操作を行った。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
(4) 比較として、BIT濃度が試験溶液中で5ppmになるように秤量したBIT粉末、0.02M KH2PO4+0.01M KCl/0.1M Na2HPO4緩衝液(pH7.03)25mL、2.5wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液20mL、腐敗溶液(1wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液を35℃の恒温器に10日間静置したもの)5mLを混合したものを試験溶液とし、参考試験例2の(2)と同様の操作を行った。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
(5) リファレンスとして、0.02M KH2PO4+0.01M KCl/0.1M Na2HPO4緩衝液(pH7.03)25mL、2.5wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液20mL、腐敗溶液(1wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液を35℃の恒温器に10日間静置したもの)5mLを混合したものを試験溶液とし、参考試験例2の(2)と同様の操作を行った。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
(1) 物質内包性無機粒子複合体に含有される防腐剤BIT濃度が試験溶液中で5ppmになるように秤量した参考例1の物質内包性無機粒子複合体、0.02M KH2PO4+0.01M KCl/0.1M Na2HPO4緩衝液(pH7.03)20mL、2.5wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液20mL、腐敗溶液(1wt%ゼラチン/pH6.97緩衝溶液を35℃の恒温器に10日間静置したもの、生菌数5.8×104個/mL)5mLを混合して試験溶液を調製した。
(2) 試験溶液を1.5mL採取(これを試験開始時(0day)とした)後、25℃の恒温振とう槽中で振とうした。所定時間ごとに試験溶液を1.5mL採取し、KH2PO4/NaOH緩衝液(pH7.02)を用いて希釈溶液を調製した。希釈した溶液1mLをペトリフィルム培地に滴下して35℃の恒温器中で48時間培養した後、ペトリフィルム培地上にできた赤い斑点を生菌としてカウントし、希釈倍率を乗じて試験溶液1mL中の生菌数を計測した。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
(3) 参考例1の物質内包性無機粒子複合体を参考比較例1の物質内包性無機粒子複合体にかえた以外は、同様の操作を行った。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
(4) 比較として、BIT濃度が試験溶液中で5ppmになるように秤量したBIT粉末、0.02M KH2PO4+0.01M KCl/0.1M Na2HPO4緩衝液(pH7.03)25mL、2.5wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液20mL、腐敗溶液(1wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液を35℃の恒温器に10日間静置したもの)5mLを混合したものを試験溶液とし、参考試験例2の(2)と同様の操作を行った。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
(5) リファレンスとして、0.02M KH2PO4+0.01M KCl/0.1M Na2HPO4緩衝液(pH7.03)25mL、2.5wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液20mL、腐敗溶液(1wt%ゼラチン/pH7.03緩衝溶液を35℃の恒温器に10日間静置したもの)5mLを混合したものを試験溶液とし、参考試験例2の(2)と同様の操作を行った。測定結果を表5及び図3の対数グラフに示す。
表5及び図3に示すように、BIT単独で使用するよりも、BITを物質内包性無機粒子に含有させた参考例1及び参考比較例1のほうが、抗菌持続性は高かった。また、参考例1は、生菌数の増加は試験開始35日後以降となり、試験開始7日後から生菌数の増加が見られた参考比較例1よりも抗菌持続性が高かった。
このように、徐放性を示さない上記参考例1の物質内包性無機粒子でも抗菌持続性を示したことから、疎水性防腐剤の徐放性を示す本発明の物質内包性無機粒子では、さらに抗菌持続性を示すことが推測できる。
Claims (11)
- 請求項1において、前記疎水性防腐剤が1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン(BBAE)であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体。
- 請求項1または2において、前記物質内包性無機粒子が無機層状物質であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体。
- 請求項3において、前記無機層状物質がクレイであることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体。
- 請求項1〜4の何れかにおいて、前記疎水性高分子が、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート及びポリ(α−メチルスチレン)から選択される少なくとも一種であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体。
- 請求項6において、前記物質内包性無機粒子と前記疎水性防腐剤と前記疎水性高分子とを溶媒中で混合して物質内包性無機粒子に疎水性防腐剤と疎水性高分子を担持させた後に、前記(1)式で表される重合体を混合することを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法。
- 請求項6又は7において、前記疎水性防腐剤が1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン(BBAE)であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法。
- 請求項6〜8の何れかにおいて、前記物質内包性無機粒子が無機層状物質であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法。
- 請求項9において、前記無機層状物質がクレイであることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法。
- 請求項6〜10の何れかにおいて、前記疎水性高分子が、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート及びポリ(α−メチルスチレン)から選択される少なくとも一種であることを特徴とする物質内包性無機粒子複合体の製造方法。
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JP2004374755A JP2006182656A (ja) | 2004-12-24 | 2004-12-24 | 疎水性防腐剤を内包する物質内包性無機粒子複合体及びその製造方法 |
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JP2016183117A (ja) * | 2015-03-25 | 2016-10-20 | 株式会社日本触媒 | 抗菌剤 |
-
2004
- 2004-12-24 JP JP2004374755A patent/JP2006182656A/ja active Pending
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