JP2006180712A - 血管細胞特異的発現プロモーターおよびその利用 - Google Patents

血管細胞特異的発現プロモーターおよびその利用 Download PDF

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憲一郎 諸橋
Yuko Sato
優子 佐藤
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Isao Fujimori
功 藤森
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Abstract

【課題】
本発明の目的は、細胞特異発現プロモーターを提供することにある。より具体的に言えば、本発明の目的は、血管細胞において特異的にポリペプチドを発現させることができるプロモーターを提供することにある。さらに本発明の他の目的は、当該プロモーターを用いて、血管細胞内でのみ特異的に目的のポリペプチドを発現させる技術に係る発現制御技術等を提供することにある。
【解決手段】
マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3の3’領域に位置する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有することを特徴とするポリヌクレオチド、並びに、当該ポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクター又はプラスミド、並びに、当該ポリヌクレオチド、又は、当該ベクター若しくはプラスミドが導入されてなる形質転換細胞等。
【選択図】 なし

Description

本発明は、血管細胞特異的発現プロモーターおよびその利用に関する。
DNAを鋳型にしてmRNAの転写開始を制御する塩基配列はプロモーターと呼ばれており、RNAポリメラーゼはこのようなプロモーター配列を認識してmRNAの合成を開始することが知られている。プロモーターはmRNAの転写効率を決定しており、転写効率の高いプロモーターの下流に存在する遺伝子のmRNAは大量に合成される。このような理由から、遺伝子工学的手法によって有用なタンパク質を大量かつ経済的に製造するためには、通常、転写効率の高いプロモーターが利用されている。このようなプロモーターとしては、例えば、ラクトースオペロンのプロモーター(lac) 、トリプトファンオペロンのプロモーター(trp)、ラムダファージのPLプロモーターなどが知られている。
プロモーターは、発生や分化の特定時期に特定のタンパク質の発現を誘導するための転写誘導系に関与していることも知られている。このような発現時期特異性を示すプロモーターとして、例えば、筋細胞の分化に関与するMyoDプロモーター等が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、プロモーターは特定の細胞内でのみ特異的に発現する遺伝子の制御に関与している可能性が示唆されている。このような細胞特異的発現プロモーターとしては、例えば、ミエリンの形成に必要であるミエリン塩基性タンパク質を中枢神経系の神経細胞において特異的に発現させた例等が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
ショウジョウバエにおいて、発生・分化を制御する転写因子であるFox(winged helix/forkhead)転写因子ファミリーが知られている。これらの哺乳動物ホモログとして、FkhやFOXOなどが知られている。マウスのFkh3遺伝子については、Foxドメインが報告されている(例えば、非特許文献3参照)が、当該遺伝子の全体構造及びその機能については、残念ながら未だ解明されるに至っていない。
Buskin,J.N.,and Hauschka,S.D.,Mol.Cell.Biol.,9,pp.2627−2640,1989 Kimura,M.,et al.,Brain Res.,785,pp.245−252,1998 Kaestner,K.H.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,90,pp.7628−7631,1993
本発明の目的は、細胞特異発現プロモーターを提供することにある。より具体的に言えば、本発明の目的は、血管細胞において特異的にポリペプチドを発現させることができるプロモーターを提供することにある。さらに本発明の他の目的は、当該プロモーターを用いて、血管細胞内でのみ特異的に目的のポリペプチドを発現させる技術に係る発現制御技術等を提供することにある。
本発明者らは、このような状況下鋭意検討した結果、上記のFkh3の発現を研究するうち、当該Fkh3遺伝子の3’領域に位置する塩基配列(具体的には、約4.6kb)が血管細胞内における特異的なポリペプチド発現を制御していること、及び、その塩基配列がプロモーター領域としての特徴(即ち、当該塩基配列の下流(3’側)に位置するポリヌクレオチドの転写を制御する機能)を具備していることを見出した。さらに本発明者らは、Fkh3遺伝子の3’領域の約4.6kbの塩基配列(具体的には、配列番号1)を細胞で機能可能な最小プロモーター領域(具体的には、熱ショックタンパク質68(hsp68)のプロモーター)の上流につなぎ、さらに当該最小プロモーター領域(具体的には、熱ショックタンパク質68(hsp68)のプロモーター)の下流にレポーター遺伝子(具体的には、β−ガラクトシダーゼ遺伝子)を組込んだベクターDNAを導入したトランスジェニックマウスを作製したところ、当該レポーター遺伝子によりコードされたポリペプチド(具体的には、β−ガラクトシダーゼ)が血管細胞内において特異的に発現されることを見出した。即ち、Fkh3遺伝子の3’領域に位置する塩基配列が、当該塩基配列によって転写が制御されるポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを血管細胞内において特異的に発現させることを見出し、本発明を至った。
本発明は、
1.マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3の3’領域に位置する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有することを特徴とするポリヌクレオチド(以下、本発明ポリヌクレオチドと記すこともある。);
2.塩基配列が、以下の(1)〜(4)のいずれかに記載される塩基配列であることを特徴とする前項1記載のポリヌクレオチド
(1)配列番号1で示される塩基配列
(2)上記(1)の塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
(3)上記(1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下にハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列に相補であり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
(4)上記(1)の塩基配列に対して75%以上のDNA相同性を有する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列;
3.前項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクター又はプラスミド(以下、本発明ベクター又は本発明プラスミドと記すこともある。);
4.前項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクター又はプラスミド;
5.前項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの上流又は下流(5’又は3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とする前項4記載のベクター又はプラスミド;
6.前項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とする前項4記載のベクター又はプラスミド;
7.細胞で機能可能な最小プロモーター領域が、TATAボックスから実質的になるプロモーターであることを特徴とする前項5又は6記載のベクター又はプラスミド;
8.当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドが、レポーター遺伝子であることを特徴とする前項4乃至7記載のベクター又はプラスミド(以下、本発明形質転換細胞と記すこともある。);
9.前項1若しくは2記載のポリヌクレオチド、又は、前項3乃至8記載のベクター若しくはプラスミドが導入されてなる形質転換細胞;
10.形質転換細胞が、哺乳動物由来の血管細胞であることを特徴とする前項9記載の形質転換細胞;
11.マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3の3’領域に位置する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質の探索方法であって、
(1)前項8記載のベクター又はプラスミドが導入されてなる形質転換細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び、
(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値をモニターする第二工程、
(3)前記第二工程によりモニターされた発現量又はそれと相関する指標値の変化に基づき前記物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する第三工程、及び
(4)前記第三工程で評価された血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質を選抜する第四工程、
を有することを特徴とする探索方法;
12.物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する方法であって、
(1)前項8記載のベクター又はプラスミドが導入されてなる形質転換細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び、
(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値をモニターする第二工程、
(3)前記第二工程によりモニターされた発現量又はそれと相関する指標値の変化に基づき前記物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する第三工程
を有することを特徴とする評価方法;
13.前項1又は2記載のポリヌクレオチドと結合する物質の探索方法であって、
(1)前項1又は2記載のポリヌクレオチドと被験物質とを接触させる第一工程、及び
(2)前記第一工程後に、当該ポリヌクレオチドと被験物質との複合体生成の有無を調べる第二工程、及び
(3)前記第二工程で得られた複合体生成の有無結果に基づき当該ポリヌクレオチドと結合する物質を選抜する第三工程、
を有することを特徴とする探索方法(以下、本発明精製方法と記すこともある。);
14.前項1又は2記載のポリヌクレオチドと結合する物質の精製方法であって、
(1)前項1又は2記載のポリヌクレオチドと試料とを接触させて、当該ポリヌクレオチドと当該試料中に含有される当該ポリヌクレオチドと結合する物質との複合体を生成させる第一工程、及び、
(2)前記第一工程後、生成させた複合体から当該結合物質を単離する第二工程、
を有することを特徴とする精製方法(以下、本発明キットと記すこともある。);
15.前項9又は10記載の形質転換細胞と、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値の測定試薬とを含む、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質のスクリーニングキット;
16.前項11記載の探索方法により得られる、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質若しくはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする医薬;
17.前項9又は10記載の形質転換細胞を培養した培養物から、前項1若しくは2記載のポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを分離・採取するポリペプチドの製造方法;
18.前項1若しくは2記載のポリヌクレオチド、又は、前項3乃至8記載のベクター又はプラスミドにより形質転換された哺乳動物;
19.哺乳動物が、病態モデル哺乳動物であることを特徴とする前項18記載の哺乳動物;
20.哺乳動物が、全身の血管異常をモニター可能とする哺乳動物であることを特徴とする前項18又は19記載の哺乳動物;
21.前項5又は6記載のベクター又はプラスミドを有効成分として含有することを特徴とする遺伝子欠損に基づく疾患の治療剤;
等を提供するものである。
本発明により、目的の遺伝子によりコードされたポリペプチドを血管細胞において特異的に発現させることが可能となった。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる遺伝子工学的技術は、たとえば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press及び D.M.,Glover著、DNA クローニング(DNA Cloning)、IRL発行、1985年などに記載されている通常の方法に準じて行うことができる。
本発明は、マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3の3’領域に位置する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有することを特徴とするポリヌクレオチド(即ち、本発明ポリヌクレオチド)を提供するものである。ここで、「マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3」とは、Kaestnerら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,pp.7628−7631,1993)により報告されているタンパク質の遺伝子をいう。尚、当該タンパク質のアミノ酸配列及び当該遺伝子の部分塩基配列は、上記の文献に記載されている。
本発明ポリヌクレオチドとしては、具体的には例えば、塩基配列が、以下の(1)〜(4)のいずれかに記載される塩基配列であることを特徴とする前記のポリヌクレオチド
(1)配列番号1で示される塩基配列
(2)上記(1)の塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
(3)上記(1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下にハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列に相補であり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
(4)上記(1)の塩基配列に対して75%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上)のDNA相同性を有する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
等を挙げることができる。ここで「複数個の塩基が欠失」とは、配列番号1で示される塩基配列の一部からなる塩基配列であってもよいことを意味している。
本発明ポリヌクレオチドは、上記の如く、所謂プロモーターと呼ばれる調節遺伝子の一種である。当該ポリヌクレオチドは、例えば、σ因子を持つRNAポリメラーゼが結合し、オペロンの転写を開始する部位であり、転写を促すために必要な配列を含むDNAを意味し、さらに、例えば、細胞型特異的もしくは組織特異的な制御を受けるプロモーター要素、又は外来性のシグナルもしくは因子(例えば、転写活性化蛋白質)によって誘導されるプロモーター依存的遺伝子発現を引き起こすために十分なプロモーター要素を含んでいてもよい。
本発明ポリヌクレオチドは、通常の方法、例えば、「田村隆明著(羊土社刊)、新転写制御のメカニズム(2000年)」33〜40頁、「野村慎太郎、渡辺俊樹監修著(秀潤社刊)、脱アイソトープ実験プロトコール(1998年)」等に記載された方法に準じて作製すればよい。作製されたポリヌクレオチドが有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力は後述する方法により確認することができる。
本発明において「ポリヌクレオチド」(オリゴヌクレオチドを含む)には、本発明ポリヌクレオチドが有する塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドも含まれる。また「ポリヌクレオチド」には、特に言及しない限り、DNA及びRNAの双方が含まれる。また「DNA」には、その塩基配列を有する1本鎖DNAの他に、それに相補的な1本鎖DNA、及び2本鎖DNAが含まれる。さらにまた、「DNA」には、特に言及しない限り、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAが含まれる。また一方、「RNA」には、特に言及しない限り、totalRNA、mRNA、rRNA及び合成RNAが含まれる。
本発明において「転写活性を喪失しない改変」とは、例えば、既に同定されている各種の転写調節配列(即ち、転写を制御する能力を有する塩基配列)と相同性が低い部分について行うことができる改変等を意味するものである。このような改変の一つでもある「1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列」において、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を損なうことなく、どの塩基を何個欠失、置換もしくは付加できるかの指標は、後述する方法により評価及び確認することができる。因みに、前述の如く、「複数個の塩基が欠失」とは、広義の意味では、配列番号1で示される塩基配列の一部からなる塩基配列であってもよく、通常のdeletion法により特定されるような、その能力を維持するコア領域でもよいが、狭義の意味では、このような塩基配列を含まず、所謂、変異型の塩基配列である。
上記のような改変は人為的に変異導入することによって作製してもよい。具体的には、例えば、A.Greener,M.Callahan、Strategies(1994)7,32−34等に記載される方法を用いてランダムに変異を導入することによって取得することができ、、W.Kramer,et al.、Nucleic Acids Research(1984)12,9441もしくはW.Kramer,H.J.Frits、Methods in Enzymology(1987)154,350等に記載のギャップド・デュープレックス(gapped duplex)法、またはT.A.Kunkel、Proc. of Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1985)82,488もしくはT.A.Kunkel,et al.、Methods in Enzymology(1987)154,367等に記載のクンケル(Kunkel)法を用いて部位特異的に変異を導入することによって取得することができる。あるいは、配列番号1で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド等のうち1ヶ所ないし数カ所の部分塩基配列を、他のプロモーターのポリヌクレオチドの一部と入れ換えたキメラDNAを作製することによって取得することができ、例えば、S.Henikoff,et al.、Gene(1984)28,351、C.Yanisch−Perron, et al.、Gene(1985)33,103等に記載された方法を用いることができる。
本願において「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、以下に示すポリヌクレオチドをいう。即ち、(1)高イオン濃度下[例えば、6X SSC(900mMの塩化ナトリウムおよび90mMのクエン酸ナトリウムを含有する)等が挙げられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりポリヌクレオチド−ポリヌクレオチドハイブリッドを形成し、(2)低イオン濃度下[例えば、0.1X SSC(15mMの塩化ナトリウムおよび1.5mMのクエン酸ナトリウムを含有する)等が用いられる。]に、65℃の温度条件で30分間洗浄した後でも当該ハイブリッドが維持されうるポリヌクレオチドをいう。
このような塩基配列には、マウス由来の塩基配列に対応する他の生物種(ヒト及びラット)由来の塩基配列等が含まれる。このような塩基配列は、例えば、NCBIのblastサーチ(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)等により選抜することができる。具体的には例えば、配列番号1で示される塩基配列を有するFkh3遺伝子の3’領域に位置する塩基配列を対象配列としたNCBIのblastサーチにより、他の生物種のゲノム配列データベースから相同性の高い塩基配列を検索することができる。当該検索により選択された塩基配列の翻訳開始点より上流の塩基配列からなるポリヌクレオチドを選抜することにより、対応する他の生物種のプロモーター領域を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドを選抜することができる。選抜されたポリヌクレオチドが有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力は後述する方法により確認することができる。
本発明ポリヌクレオチドの調製方法としては、例えば、化学合成法、PCR、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。
化学合成法を用いて調製する場合、DNA自動合成機、例えばDNA合成機モデル380A (ABI社製)等を用いることができる。
次に、PCRを用いて本発明ポリヌクレオチドを調製する方法について説明する。鋳型とするゲノムライブラリーは、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載されている方法に準じてヒト、マウス、ラット等の哺乳動物の組織から調製することができる。また、ヒトゲノムDNA(クローンテック製)等の市販のゲノムDNAや、ヒトゲノムウォーカーキット(クローンテック製)等の市販ゲノムライブラリーを用いることができる。次いで、増幅させるプロモーターに対応したプライマー、例えば配列番号1で示される塩基配列を有する本発明ポリヌクレオチドを調製する場合であれば、例えば配列番号1で示される塩基配列における塩基番号1番から20番までの領域で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるプライマーと、配列番号1における塩基番号4588番から4608番までの領域で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるプライマーとを用いてPCRを行う。尚、前記プライマーは、配列番号1で示される塩基配列に基づいて適宜設計することができ、また、その5’末端側に、制限酵素認識配列等を付加してもよい。前記のようにして増幅されたDNAは、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols In Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons,Inc.ISBN0−471−50338−X等に記載される通常の方法に準じてベクターにクローニングすることができる。具体的には例えばInvitrogen製のTAクローニングキットに含まれるプラスミドベクターやStratagene製のpBluescriptIIなどのプラスミドベクターを用いてクローニングすることができる。クローニングされたポリヌクレオチドの塩基配列は、F.Sanger,S.Nicklen,A.R.Coulson著、Proceedings of National Academy of Science U.S.A.(1977),74,5463−5467等に記載されるダイデオキシターミネーティング法などにより分析することができる。
次に、ハイブリダイゼーション法を用いて本発明ポリヌクレオチドを調製する方法について説明する。
まず、プローブに用いるDNAを標識する。プローブに用いるDNAとしては、調製しようとする本発明ポリヌクレオチドの塩基配列の少なくとも一部を有するポリヌクレオチド、例えば、配列番号1で示される塩基配列における塩基番号1番から4608番までの領域で示される塩基配列もしくはその連続した一部の塩基配列からなるポリヌクレオチドであってその鎖長が20塩基以上1000塩基以下であるポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドの塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下にハイブリダイズするポリヌクレオチド等を挙げることができる。
プローブに用いる前記DNAは、例えば、化学合成法、PCR、ハイブリダイゼーション法等、「本発明ポリヌクレオチドの調製方法」として前述した通常のポリヌクレオチドの調製方法によって得ることができる。
プローブに用いる前記DNAを放射性同位元素により標識するには、例えば、ベーリンガー製、宝酒造製のRandom Labelling Kit等を用いることができ、通常のPCR反応組成中のdCTPを[α−32P]dCTPに替えて、プローブに用いる前記DNAを鋳型にしてPCR反応を行うことにより、標識を行うこともできる。また、プローブに用いるDNAを蛍光色素又は酵素で標識する場合には、例えば、ECF Direct Nucleic Acid Labelling and Ditection System(Amersham Pharmacia Biotech製)又はAlkphos Direct DNA laleling and detection kit(Amersham Pharmacia Biotech製)等を用いることができる。プローブをハイブリダイズさせるDNAライブラリーとしては、例えば、ラットなどのげっ歯類等の動物由来のゲノムDNAライブラリー等を使用することができる。当該DNAライブラリーには、市販のゲノムDNAライブラリーを用いることもできるし、また「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Pressや「Current Protocols In Molecular Biology」(1987),John Wiley & Sons,Inc.ISBN0−471−50338−X等に記載される通常のライブラリー作製法に従い、例えば、Stratagene製のλ FIX II、λ EMBL3、λ EMBL4、λ DASH II等のλベクターを用い、Gigapack packaging Extracts(Stratagene製)等をin vitroパッケージングに用いてゲノムDNAライブラリーを作製し、これを用いることもできる。
ハイブリダイゼーション方法としては、コロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーションをあげることができ、ライブラリーの作製に用いられたベクターの種類に応じて方法を選択するとよい。例えば、使用されるライブラリーがプラスミドベクターで構築されたライブラリーである場合には、コロニーハイブリダイゼーションを行うことができる。具体的にはまず、ライブラリーのDNAを宿主微生物に導入して形質転換細胞を取得し、得られた形質転換細胞を希釈して寒天培地にまき、コロニーが現れるまで37℃で培養を行う。また、使用されるライブラリーがファージベクターで構築されたライブラリーである場合には、プラークハイブリダイゼーションを行うことができる。具体的にはまず、宿主微生物とライブラリーのファージを感染可能な条件下で混合した後さらに軟寒天培地と混合し、これを寒天培地上にまく。その後プラークが現れるまで37℃で培養を行う。より具体的には、例えば、Molecular Cloning 2nd edition(J.Sambrook, E.F.Frisch, T.Maniatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989年)2.60から2.65等に記載されている方法に準じて、NZY寒天培地に寒天培地1mm2当り0.1〜1.0pfuの密度で、約9.0×105pfuのファージライブラリーを広げ、37℃で6〜10時間培養する。
次いで、前記のいずれのハイブリダイゼーション法を用いた場合も、前述の培養を行った寒天培地の表面にメンブレンフィルターをのせ、プラスミドを保有する形質転換細胞やファージを当該メンブレンフィルターに転写する。このメンブレンフィルターをアルカリ処理した後、中和処理し、次いで、DNAを当該フィルターに固定する処理を行う。より具体的には例えば、プラークハイブリダイゼーションの場合には、クローニングとシークエンス:植物バイオテクノロジー実験マニュアル(渡辺、杉浦編集、農村文化社1989年)等に記載の通常の方法に準じて、前記寒天培地の上にニトロセルロースフィルター又はナイロンフィルター等、例えば、Hybond−N(Amersham Pharmacia Biotech製)を置き、約1分間静置してファージ粒子をメンブレンフィルターに吸着させる。次に、当該フィルターをアルカリ溶液(1.5M塩化ナトリウム、0.5N水酸化ナトリウム)に約3分間浸してファージ粒子を溶解させてファージDNAをフィルター上に溶出させた後、中和溶液(1.5M塩化ナトリウム、0.5Mトリス塩酸、pH7.5)に約5分間浸す処理を行う。当該フィルターを洗浄溶液(300mM塩化ナトリウム、30mMクエン酸ナトリウム、200mMトリス塩酸)で約5分間洗った後、例えば、約80℃で約90分間ベーキングすることによりファージDNAをフィルターに固定する。このように調製されたフィルターと、前記プローブとを用いてハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションを行う際の試薬及び温度条件は、例えば、D.M.Glover編「DNA cloning, a practical approach」 IRL PRESS(1985) ISBN 0−947946−18−7、クローニングとシークエンス:植物バイオテクノロジー実験マニュアル(渡辺、杉浦編集、農村文化社1989年)、または、Molecular Cloning 2nd edition(J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)等の記載の方法に準じて行うことができる。例えば、450〜900mMの塩化ナトリウム、45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含み、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.1〜1.0%(W/V)の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μg/mLの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポリビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2%(W/V)の濃度で含んでいてもよいプレハイブリダイゼーション溶液、好ましくは、900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1%(W/V)のSDSおよび100μg/mLの変性Calf−thymus DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液を、前記のようにして作製したフィルター1cm2当り50〜200μLの割合で準備し、当該溶液に前記フィルターを浸して42〜68℃で1〜4時間、好ましくは、45℃で2時間保温する。次いで、例えば、450〜900mMの塩化ナトリウム、45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含み、SDSを0.1〜1.0%(W/V)の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μg/mLの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポリビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2%(W/V)の濃度で含んでいてもよいハイブリダイゼーション溶液、好ましくは、900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1%(W/V)のSDSおよび100μg/mLの変性Calf−thymus DNAを含むハイブリダイゼーション溶液と、前述の方法で調製して得られたプローブ(フィルター1cm2当り1.0×104〜2.0×106cpm相当量)とを混合した溶液をフィルター1cm2当り50〜200μLの割合で準備し、当該溶液にフィルターを浸し42〜68℃で4〜20時間、好ましくは、45℃で16時間保温しハイブリダイゼーション反応を行う。当該ハイブリダイゼーション反応後、フィルターを取り出し、15〜300mMの塩化ナトリウム、1.5〜30mMのクエン酸ナトリウム、および0.1〜1.0%(W/V)のSDS等を含む42〜68℃の洗浄溶液等、好ましくは、300mMの塩化ナトリウム、30mMのクエン酸ナトリウム、および1%(W/V)のSDSを含む55℃の洗浄溶液で、10〜60分間のフィルター洗浄を1〜4回、好ましくは15分間の洗浄を2回行う。さらに、フィルターを2×SSC溶液(300mM塩化ナトリウム、および30mMクエン酸ナトリウムを含む。)で軽くすすいだのち乾燥させる。このフィルターを、例えば、オートラジオグラフィーなどに供してフィルター上のプローブの位置を検出することにより、用いたプローブとハイブリダイズするDNAのフィルター上の位置を検出する。検出されたDNAのフィルター上の位置に相当するクローンをもとの寒天培地上で特定しこれを釣菌することにより、当該DNAを有するクローンを単離することができる。具体的には例えば、フィルターをイメージングプレート(富士フィルム)に4時間露光させ、次いで当該プレートをBAS2000(富士フィルム)を用いて解析し、シグナルを検出する。フィルターの作製に用いた寒天培地のうち、シグナルが検出された位置に相当する部分を約5mm角にくり抜き、これを約500μLのSMバッファー(50mMトリス−塩酸pH7.5、0.1M塩化ナトリウム、7mM硫酸マグネシウム、および0.01%(W/V)ゼラチンを含む。)に2〜16時間、好ましくは3時間浸してファージ粒子を溶出させる。得られたファージ粒子溶出液をMolecular Cloning 2nd edition(J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)2.60から2.65に記載の方法に準じて寒天培地に広げ、37℃で6〜10時間培養する。この寒天培地を用いて前述の方法と同様の方法でファージDNAをフィルターに固定し、このフィルターと前述のプローブを用いてハイブリダイゼーションを行う。フィルターの作製に用いた寒天培地のうちの、シグナルが検出された位置に相当する部分からファージ粒子を溶出し、これを寒天培地に広げ、前述の方法と同様にフィルターを作製し、ハイブリダイゼーションを行う。このようなファージクローンの特定と純化を繰り返すことにより、用いたプローブとハイブリダイズする塩基配列からなるDNAを含むファージクローンが得られる。前述のようなハイブリダイゼーション(上述ではアイソトープ法でのファージスクリーニング方法を記載しているが、勿論、後述の実施例のようなAlkphos Direct DNA labeling and Detection kitを用いる法でのスクリーニング方法であってもよい。)によるスクリーニングを行うことにより得られたクローンの保有するDNAは、DNA調製や解析が容易なプラスミドベクター、例えば市販のpUC18、pUC19、pBLUESCRIPT KS+、pBLUESCRIPT KS− 等にサブクローニングして、プラスミドDNAを調製し、F.Sanger,S.Nicklen,A.R.Coulson著、Proceedings of National Academy of Science U.S.A.(1977),74,5463−5467等に記載されるダイデオキシターミネーティング法を用いてその塩基配列を決定することができる。塩基配列分析に用いる試料の調製は、例えば、Molecular Cloning 2nd edition(J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)13.15等に記載されているプライマーエクステンション法に準じて行うことができる。また、ファージクローンをMolecular Cloning 2nd edition(J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)2.60から2.65等に記載の方法に準じてNZYM液体培地で増幅し、ファージ液を調製して、これから例えば、Lambda−TRAPPLUS DNA Isolation Kit(Clontech製)等を用いてファージクローンDNAを抽出し、当該DNAを鋳型として、例えば、前述のプライマーエクステンション法により塩基配列分析用の試料を調製し、塩基配列を分析することもできる。このようにして作製されたポリヌクレオチドが有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力は後述する方法により確認することができる。
また、本発明により、上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)を含有することを特徴とするベクター又はプラスミドが提供される。
具体的には例えば、(a)上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)を含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクター又はプラスミドや、(b)上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)を含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの上流又は下流(5’又は3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とする前項4記載のベクター又はプラスミドや、(c)上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)を含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とする上記(a)のベクター又はプラスミドや、(d)細胞で機能可能な最小プロモーター領域が、TATAボックスから実質的になるプロモーターであることを特徴とする上記(b)又は(c)のベクター又はプラスミドや、(e)当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドが、レポーター遺伝子であることを特徴とする上記(a)乃至(d)記載のベクター又はプラスミド等を提供するものである。
ここで「最小プロモーター」とは、RNAポリメラーゼIIによる転写開始部位を決定し最低限の転写水準維持に関与するDNA領域であって、コアプロモーターともいわれ、通常、遺伝子の転写開始部位付近の比較的狭い部分にみられる領域である。「動物細胞で機能可能な最小プロモーター」の塩基配列としては、例えば、TATAボックスおよび転写開始点近傍の約50塩基程度からなる塩基配列、好ましくは約50bp程度の短い塩基配列があげられ、具体的には例えば、熱ショックタンパク質68(hsp68)の5’上流領域の塩基配列、マウスのメタロチオネインI遺伝子の5’上流領域の−33番目(転写開始点を+1番目とする。以下、同様。)の塩基から+15番目の塩基までの塩基配列(Nature.,292,267-269(1981))や、チキンオボアルブミン遺伝子の5’上流領域の−40番目の塩基から+10番目の塩基までの塩基配列(Genbank accession No.V00835)等があげられる。本発明において用いられる「細胞で機能可能な最小プロモーター」の転写活性としては、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子の5’上流領域の−130番目の塩基から+53番目の塩基までの塩基配列(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,78,1441-1445(1981))からなるDNA領域の転写活性よりも弱い活性であると、転写活性を測定する際の構成的なバックグランド転写活性が低くなり転写活性の検出が感度よく行える点から好ましい。上記のような塩基配列からなるDNAは、例えば、その塩基配列に基づいて化学合成することなどにより調製することができる。また、例えば、前記のような領域をコードするDNAを増幅するためのオリゴヌクレオチドを、既知の塩基配列に基づいて設計して作製し、作製されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるPCRを行うことなどにより調製することもできる。
尚、(a)上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)を含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドとからなるポリヌクレオチドや、(b)上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)を含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの上流又は下流(5’又は3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドとからなるポリヌクレオチドや、(c)上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)を含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドとからなるポリヌクレオチドや、(d)細胞で機能可能な最小プロモーター領域が、TATAボックスから実質的になるプロモーターであることを特徴とする上記(b)又は(c)のポリヌクレオチド等のポリヌクレオチドは、所謂プロモーターを構成するポリヌクレオチドであり、当該プロモーターの下流にポリペプチドをコードする構造遺伝子を連結してなる組換えDNAを用いることにより、血管細胞内において特異的に上記のポリペプチドを発現させることができる。このようにして発現されることができるポリペプチドとしては、例えば、低分子量のポリペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質等の所謂ポリペプチドを挙げることができる。さらに、当該プロモーターの上流にエンハンサー領域等の転写調節領域を導入してなるプロモーターを作製してもよい。
本発明における応用では、当該プロモーターの下流に連結されるポリペプチドをコードする構造遺伝子として、例えば、炎症、免疫等に関与するICAM−1、ICAM−2、セクレチン等のポリペプチドをコードする遺伝子又はVEGF若しくはその関連遺伝子、 TGFβ、TNFα等の細胞障害・細胞増殖等の抑制物質に係る遺伝子、β−グルコシダーゼ等の非哺乳動物由来の酵素をコードする遺伝子若しくはそれらの変異体等を用いることができる。また、下記で説明されるようなレポーター遺伝子等の遺伝子転写の機能解析等に広く用いられる構造遺伝子を用いることも可能である。もっとも、当該構造遺伝子は上記のものに限定されることはなく、いかなるものを用いてもよい。
また「レポーター遺伝子」とは、導入される細胞において本発明ポリヌクレオチドの制御下に発現するように、本発明ポリヌクレオチドと接続された状態にあるポリヌクレオチドを意味し、かかるレポーター遺伝子のDNAは、例えば、本発明ポリヌクレオチドの上流(5’側)に含有される、細胞で機能可能な最小プロモーター領域と本発明ポリヌクレオチドとから実質的に構成される転写調節領域をコードするDNAの下流に、レポーター遺伝子のDNAが機能的に連結されるように、これらのDNAを接続することにより調製することができる。
レポーター遺伝子としては、その転写産物(レポーター蛋白質)の有する酵素活性等に基づいて発現量が測定できる遺伝子が、発現量の測定が容易である点で好ましく、例えば、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素蛋白質をコードする遺伝子があげられる。このようなレポーター遺伝子のDNAは、例えば、これらのレポーター遺伝子を含む市販のプラスミドのDNAを制限酵素消化して目的とするDNAを単離すること等により得ることができる。
本発明ベクター又は本発明プラスミドの調製において、本発明ポリヌクレオチド(因みに、ここでの本発明ポリヌクレオチドはDNAを意味するものである。)を挿入するためのベクター又はプラスミドとしては、所望の細胞内で機能可能なベクター又はプラスミドであれば良く、当該ベクター又はプラスミドが導入された細胞を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等)を含んでいてもよい。また、前記ベクター又はプラスミドにおいて、本発明ポリヌクレオチドおよび所望の遺伝子がベクター又はプラスミド上で機能可能な形で連結されるような位置、例えば当該ポリヌクレオチドを挿入する部位の下流に遺伝子挿入部位がさらに有ると、所望の遺伝子を細胞内で発現させるためのベクター又はプラスミドの構築等に好ましく利用できる。ここで遺伝子挿入部位とは、例えば、遺伝子工学的手法で通常用いられる制限酵素が特異的に認識切断可能な塩基配列であり、本発明ポリヌクレオチドを有するベクター又はプラスミド上に唯一存在する種類の制限酵素認識配列が好ましい。当該ベクター又はプラスミドとして具体的には、例えば、大腸菌を宿主とする場合にはpBR322(Boehringer Mannheim製)、pUC18、pUC118、pUC119(宝酒造製)等のpUC系ベクター又はプラスミド(例えば、Vieira,J.and Messing,J.,Method in Enzymol.,153,pp.3−11,1987記載)、pBluescript等、バチルス属細菌を宿主とする場合にはpUB110、pC194等が挙げられる。酵母を宿主とする場合にはYip5、Yep24等が挙げられる。昆虫細胞を宿主とする場合にはAcNPV等が挙げられる。動物細胞を宿主とする場合にはpUC18、pUC19、pCDベクター、cDM8ベクター(Aroffo,A.and Sed,B.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,pp.8573−8577,1987)、レトロウイルスベクター(Cone,R.D.and Mulligan,R.C., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81, pp.6349−6353,1984)、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等が挙げられる。
本発明ポリヌクレオチドの前記ベクター又はプラスミドへの挿入は、通常の方法、例えば「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols In Molecular Biology」(1987),John Wiley & Sons,Inc.ISBN0−471−50338−X等に記載される方法に準じて行うことができる。
本発明ベクター又は本発明プラスミドのうち、本発明探索方法において用いられる形質転換細胞に導入されるベクター又はプラスミドとしては、例えば、本発明ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドがレポーター遺伝子であるベクター又はプラスミド(請求項8に相当)等をあげることができる。ここで、レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である場合には、本発明ベクター又は本発明プラスミドのうち本発明ポリヌクレオチドの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を含むベクター又はプラスミドは、当該ベクター又はプラスミド中の本発明ポリヌクレオチドの本転写制御能力を測定する場合に好ましく利用することができ、ルシフェラーゼ遺伝子を含む市販のベクター又はプラスミド、例えば、pGL3−basic(Promega製)、PicaGene Basic Vector(東洋インキ製)等のベクター又はプラスミドを使って作製することができる。具体的には、pGL3−basicの遺伝子挿入部位に通常の方法により本発明ポリヌクレオチドを機能可能な形で挿入することにより、本発明ポリヌクレオチドの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を含むベクター又はプラスミドを作製することができる。
さらに本発明によれば、上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)、又は、上記のベクター又はプラスミド(請求項3乃至8に相当)が導入されてなる形質転換細胞が提供される。
具体的には例えば、形質転換細胞が、哺乳動物由来の血管細胞であることを特徴とする上記の形質転換細胞等を提供するものである。
例えば、前記の構造遺伝子が血管内に分泌されるポリペプチドをコードする遺伝子である場合には、本発明ベクター又はプラスミドを、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ヒト等の哺乳動物に導入することにより、血管細胞内において特異的に目的とするポリペプチドを発現させ、当該ポリペプチドを血中に効率よく分泌させることができる。従って、当該方法によれば、例えば、特定の生理活性ポリペプチドが遺伝的に全く産生されないか、又ははその産生が異常に低いこと等を原因とする各種の疾患の治療を行うことができる。また、各種疾患の治療を目的として、治療に有用な生理活性ポリペプチドを血管細胞内において発現させ、当該ポリペプチドの血中濃度を持続的に高めることもできる。またさらに、本発明ベクター又はプラスミドは、これに連結された前記の構造遺伝子の生体内での役割の解明や、ヒト以外の哺乳動物を用いた病態モデル動物の作製にも利用することができる。また、例えば、前記の構造遺伝子としてβ‐ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を用いることにより、血管細胞内において特異的に発現させることにより、全身の血管の異常をモニター可能とする哺乳動物を作製することもできる。
本発明形質転換細胞(即ち、本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドが導入されてなる形質転換細胞)の調製方法について以下に説明する。
本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドを導入する宿主細胞としては、大腸菌(例えばK12)、バチルス属細菌(例えばMI114)等の細菌、酵母(例えばAH22)、植物細胞、動物細胞等の細胞をあげることができ、本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドが細胞内で増幅可能な形態を保てる細胞であればよい。好ましくは動物細胞(例えばPC-12細胞、Neuro-2a細胞、IMR-32細胞、COS-7細胞、Vero細胞、CHO細胞、ES細胞等)、特に好ましくは哺乳動物由来の血管細胞を挙げることができる。尚、ES細胞の場合には、本発明形質転換細胞として、本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドが導入されたES細胞を分化させた転換細胞や、ES細胞を分化した後、当該細胞に本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドが導入された転換細胞を含む。また本発明形質転換細胞は、これら転換細胞から発生・作製された動物個体(即ち、形質転換動物)内に存在する状態での細胞をも含むものである。尚、本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドを用いて受精卵を形質転換することにより、トランスジェニック動物を容易に作製することもできる。
本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドの宿主細胞への導入法としては、細胞に応じた導入方法を適用することができ、例えば動物細胞にはリン酸カルシウム法、電気導入法、DEAEデキストラン法、ミセル形成法などを適用することができる。具体的には例えば、リン酸カルシウム法としては、Grimm,S. et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,10923−10927等に記載の方法を挙げることができ、電気導入法およびDEAEデキストラン法としては、Ting,A.T. et al.,EMBO J.,15,6189−6196等に記載の方法を挙げることができ、ミセル形成法としては、Hawkins,C.J. et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,13786−13790等に記載の方法を挙げることができる。ミセル形成法としては例えば、リポフェクトアミン(GibcoBRL製)やフュージーン(Boehringer Mannheim製)等の市販の試薬を使用することが可能である。
本発明ポリヌクレオチド又は本発明ベクター若しくは本発明プラスミドの導入処理を施した細胞を、例えば、当該ベクターに予め含まれる選抜マーカー遺伝子を利用し、当該選択マーカー遺伝子に応じた選抜条件の培地で培養することにより、形質転換細胞を選抜することができる。
また、本発明により、マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3の3’領域に位置する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質の探索方法であって、(1)レポーター遺伝子を有する上記のベクター又はプラスミド(請求項8に相当)が導入されてなる形質転換細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値をモニターする第二工程、(3)前記第二工程によりモニターされた発現量又はそれと相関する指標値の変化に基づき前記物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する第三工程、及び(4)前記第三工程で評価された血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質を選抜する第四工程、を有することを特徴とする探索方法や、物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する方法であって、(1)レポーター遺伝子を有する上記のベクター又はプラスミド(請求項8に相当)が導入されてなる形質転換細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値をモニターする第二工程、(3)前記第二工程によりモニターされた発現量又はそれと相関する指標値の変化に基づき前記物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する第三工程を有することを特徴とする評価方法等が提供される。
当該探索方法は、いわゆるレポータージーンアッセイに基づいた、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質の探索方法である。
使用される細胞としては、哺乳動物細胞を宿主とする本発明形質転換細胞が好ましく、例えば、PC-12細胞、Neuro-2a細胞、IMR-32細胞、Vero細胞、Hela細胞、CV1細胞、COS1細胞、CHO細胞、ES細胞等の公知の哺乳動物細胞を宿主とする本発明形質転換細胞が特に好ましい。当該形質転換細胞は、上述のようにして調製すればよい。
上記の第一工程において、本発明ポリヌクレオチドを含有しかつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)にレポーター遺伝子を含有するベクター又はプラスミドが導入されてなる形質転換細胞と接触させる被験物質の濃度は、通常約0.001μM〜約100μMであればよく、約0.01μM〜約10μMが好ましく、約0.1μM〜約10μMがより好ましい。当該細胞と被験物質とを接触させる時間は、通常、約1時間以上5日程度であり、数時間から4日程度が好ましい。好ましくは、18時間以上60時間程度であり、より好ましくは24時間から40時間程度が挙げられる。
当該細胞と被験物質との接触は、当該細胞が成育可能な条件で培養しながら行えばよい。例えば、哺乳動物細胞を宿主とする本発明形質転換細胞の場合には、適宜ウシ胎児血清等の哺乳動物由来の血清を添加したD−MEM、OPTI−MEM、RPMI1640培地(Gibco−BRL製)等の市販の培地中で培養できる。培養は、通常約30℃〜約40℃、約2%(V/V)〜10%(V/V)二酸化炭素存在下で実施すればよく、約35℃〜約37℃、約4%(V/V)〜約6%(V/V)二酸化炭素存在下で実施するのがより好ましい。
被験物質と接触させる際の当該細胞の細胞数は、例えば96ウェルプレートを用いる場合、通常約1×104個/ウェル〜約1×105個/ウェルであればよく、約5×10個/ウェル〜約8×10個/ウェルが好ましい。
上記の探索方法において、「レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値をモニターする」方法としては、前記形質転換細胞中におけるレポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値を時間経過に沿って連続的に又は不連続に測定できる方法であればどのような方法であってもよい。例えば、レポーター遺伝子として酵素遺伝子を用いる場合には当該酵素の活性測定を利用し、またレポーター遺伝子の発現産物、即ち当該遺伝子に対応するmRNAもしくは当該遺伝子に対応する蛋白質を検出する方法(具体的にはノザンブロッティング、ウェスタンブロッティング等)等を利用すればよい。
レポーター遺伝子として酵素遺伝子を用いる場合における当該酵素の活性測定を利用する方法において、使用され得るレポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子、GFP(Green Fluorescent Protein)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、βガラクトシダーゼ等、発現生成した蛋白質の活性の測定が容易であるものを好ましくあげることができる。
レポーター遺伝子としてはルシフェラーゼ遺伝子を用いる場合には次のようにすればよい。ルシフェラーゼ遺伝子の発現量は、細胞溶解液に発光基質であるルシフェリン(例えば東洋インキ社製)を添加し基質の分解による発光をルミノメーター、液体シンチレーションカウンター又はトップカウンター等を用いて測定すればよい。アルカリフォスファターゼ遺伝子の発現量は、例えばLumi-Phos530(和光純薬社製)を用いて測定できる。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現量は、FAST CAT Chrolamphenicol Acetyltransferase Assay Kit(和光純薬社製)を用いて測定できる。β-ガラクトシダーゼ遺伝子の発現量はAurora Gal-XE(和光純薬社製)を用いて測定できる。
また、レポーター活性と相関する指標値も測定対象にすることができる。例えば、レポーター活性と相関する指標値としては、レポーター遺伝子の一部を含むポリヌクレオチドを用いたノーザンブロット、RT−PCRなどによって測定できる。またレポーター遺伝子より産生されたタンパク質に対する抗体を用いて測定することもできる。
前記のようにして、前記細胞と被験物質との接触および前記細胞における本発明ポリヌクレオチドの本転写制御能力の測定を行い、当該転写制御能力の上昇が検出された場合(例えば、30%程度、好ましくは50%程度、さらに好ましくは100%程度増加するような変化が認められた場合)または低下が検出された場合(例えば、30%程度、好ましくは50%程度、さらに好ましくは100%程度減少するような変化が認められた場合)には、当該被験物質を当該プロモーターに作用し当該転写制御能力を制御する物質、即ち、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質として選抜することができる。
当該物質は、本発明ポリヌクレオチドの活性を制御し得ることから、本発明ポリヌクレオチドの制御下にある遺伝子の細胞内での発現を制御することができる。よって、当該物質は、例えば当該遺伝子の翻訳産物の発現過多もしくは発現過少に起因する疾患のための医薬として有用である。また、本発明ポリヌクレオチドの制御下に連結した所望のDNA、例えば各種疾患(例えば、血管疾患)との関連が推定されるDNA等の血管細胞における作用や、遺伝子欠損に基づく疾患への影響を検討する際の転写調節剤や、当該転写調節剤等を含む当該疾患の治療剤として利用することもできる。
被験物質の種類は特に限定されない。例えば、タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物(糖質、脂質等)、有機低分子化合物、無機低分子化合物、醗酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液等が挙げられる。
勿論、本発明ポリヌクレオチドと被験物質との両者を接触させた後の細胞における、本発明ポリヌクレオチドを機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子の発現量(以下、測定値1と記す。)を、当該ポリヌクレオチドを接触させ、かつ被験物質を接触させなかった後の細胞における前記発現量(以下、測定値2と記す。)と比較することによって、当該被験物質の本転写制御能力を評価してもよい。この場合、本転写制御能力を、前記測定値を用いて、下記の式に従って転写制御率として求めるとよい。
転写制御率(%)={(測定値1−測定値2)/測定値2}×100
被験物質の本転写制御能力を表わす転写制御率が、統計学的に有意な値を示す物質、具体的に好ましくは、例えば、30%以上を示す物質、より好ましくは50%以上を示す物質を、本転写制御能力を有する物質として選抜する。
さらに上記の探索方法では、被験物質として異なる2種以上の物質を各々独立して用いた区におけるレポーター遺伝子の発現量の変化を比較することにより得られる差異に基づき前記物質の本転写制御能力を評価してもよい。このようにして評価された本転写制御能力に基づき本転写制御能力を有する物質を選抜することもできる。
さらにまた、前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が本転写制御能力を有さない物質(例えば、溶媒、バックグランドとなる試験系溶液等であってもよい。)とすることで、他方の被験物質が有する本転写制御能力を評価してもよいし、また前記異なる2種以上の物質のうち、少なくとも一つの物質が有する本転写制御能力を基準としながら他方の被験物質が有する本転写制御能力を評価してもよい。
このような探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩は、それらを有効成分として含み、当該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする転写制御剤として利用してもよい。
次に、本発明ポリヌクレオチドと結合する物質の探索方法について以下の説明する。
本発明ポリヌクレオチドと結合する物質の選抜方法は、本発明ポリヌクレオチドと被験物質とを接触させる第一工程、前記第一工程後に当該プロモーターと被験物質との複合体生成の有無を調べる第二工程及び前記第二工程で得られた複合体生成の有無結果に基づき当該ポリヌクレオチドと結合する物質を選抜する第三工程を含む。
本発明ポリヌクレオチドと被験物質とを接触させる第一工程に使用されるポリヌクレオチドは、本発明ポリヌクレオチドを、例えば市販のDNA標識キットを用い、ラジオアイソトープ若しくは蛍光色素化合物で標識して用いると、当該ポリヌクレオチドと被験物質との複合体の検出が容易になる点で好ましい。当該ポリヌクレオチドを放射性同位元素により標識するには、例えば、市販のRandom Labelling Kit等を用いることができ、通常のPCR反応組成中のdCTPを[α−32P]dCTPに替えて、当該DNAを鋳型にしてPCR反応を行うことにより、標識を行うこともできる。また、当該DNAを蛍光色素で標識する場合には例えば、ECF Direct Nucleic Acid Labelling and Detection System等を用いることができる。
当該ポリヌクレオチドと被験物質とを、約4℃〜約37℃、好ましくは約20℃〜約30℃で、約5分間〜約60分間、好ましくは約10分間〜約30分間適当なバッファー中、例えばトリス、Hepes、MES等のバッファー中、好ましくはHepesバッファー中で接触させる。被験物質の濃度は通常約0.1μM〜約1,000μMであればよく、1μM〜100μMが好ましい。当該DNAの量は通常約1fmol〜約10fmolであればよく、2fmol〜7fmolが好ましい。
当該ポリヌクレオチドと被験物質との複合体生成の有無を調べる方法としては、ゲルシフト法、フットプリント法、BIACORE法等を挙げることができる。被験物質が比較的高分子量の化合物(例えばタンパク質、DNA等)の場合、ゲルシフト法、フットプリント法等を用いるとよい。被験物質が比較的低分子量の化合物の場合、BIACORE法、例えば「永田和宏・半田宏共著 生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法−BIACOREを中心に− シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社」記載の方法を用いるとよい。例えば、ゲルシフト法の場合、先ず当該DNAと被験物質混合液を、通常の方法でポリアクリルアミドゲル電気泳動に供する。電気泳動後のポリアクリルアミドゲルを乾燥した後、例えば、オートラジオグラフィーなどに供してゲル上の当該DNAの位置を検出することにより、当該DNAと被験物質が結合しているかどうか調べることが出来る。具体的には例えば、乾燥したゲルをイメージングプレートに約1時間〜約1晩、より好ましくは6〜8時間感光し、BAS2000で画像イメージを取得する。被験物質が当該ポリヌクレオチドと結合した場合、ポリヌクレオチド−被験物質複合体の移動度が遊離のポリヌクレオチドより小さくなり、画像イメージ上のバンドのシフトが起こる。バンドのシフトが検出された場合の被験物質を、本発明ポリヌクレオチドと結合する物質として選抜することが出来る。当該結合物質は、本発明ポリヌクレオチドの活性を制御し得ることから、本発明ポリヌクレオチドの制御下にある遺伝子の細胞内での発現を制御することができる。よって、当該物質は、例えば当該遺伝子の翻訳産物の発現過多もしくは発現過少に起因する疾患のための医薬として有用である。また、本発明ポリヌクレオチドの制御下に連結した所望のDNA、例えば各種疾患(例えば、血管疾患)との関連が推定されるDNA等の血管細胞における作用や、遺伝子欠損に基づく疾患への影響を検討する際の転写調節剤や、当該転写調節剤等を含む当該疾患の治療剤として利用することもできる。
また、上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)と結合する物質の探索方法であって、(1)上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)と被験物質とを接触させる第一工程、及び(2)前記第一工程後に、当該ポリヌクレオチドと被験物質との複合体生成の有無を調べる第二工程、及び(3)前記第二工程で得られた複合体生成の有無結果に基づき当該ポリヌクレオチドと結合する物質を選抜する第三工程、を有することを特徴とする探索方法や、上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)と結合する物質の精製方法であって、(1)請求項1又は2記載のポリヌクレオチドと試料とを接触させて、当該ポリヌクレオチドと当該試料中に含有される当該ポリヌクレオチドと結合する物質との複合体を生成させる第一工程、及び、(2)前記第一工程後、生成させた複合体から当該結合物質を単離する第二工程、を有することを特徴とする精製方法等が提供される。
本発明精製方法について以下の説明する。
本発明精製方法は、本発明ポリヌクレオチドと試料とを接触させて、当該ポリヌクレオチドと当該試料中に含有される当該ポリヌクレオチドと結合する物質との複合体を生成させる第一工程、及び、前記第一工程後、生成させた複合体から当該結合物質を単離する第二工程を含む。
本発明ポリヌクレオチドと被験物質とを接触させる際には、通常、当該ポリヌクレオチドを担体に結合させた形態で被験物質との接触を行うと、当該ポリヌクレオチドもしくは当該ポリヌクレオチドと結合物質との複合体を容易に回収できる点で好ましい。当該ポリヌクレオチドを結合させる担体の種類は特に限定されないが、例えば、市販のアフィニティークロマトグラフィー用担体、好ましくは臭化シアン活性化セファロース4B(Amersham Pharmacia Biotech製)等を使用することができる。当該ポリヌクレオチドを担体に結合させる場合には、当該ポリヌクレオチドを直接担体に結合させる方法と、スペーサーを介して結合させる方法がある。結合させる際の条件は、例えば、当該ポリヌクレオチドと臭化シアン活性化セファロース4Bを混合し、約4℃〜約10℃で1晩1000rpmで撹拌し、当該ポリヌクレオチドをセファロース上に固定する。ついで、未反応の臭化シアンの活性基を無くすために、アミノ基を持つ化合物を含んだバッファー、例えば、1Mグリシンを含む炭酸水素ナトリウム溶液中で、例えば約4℃〜約10℃で1晩放置する。得られたゲルは、通常のバッチ法により被験物質と接触させてもよく、また、そのゲルを市販のクロマトグラフ管に充填することで、本発明ポリヌクレオチドと結合する物質用アフィニティーカラムを作製し、通常のカラムクロマトグラフィー法により被験物質と接触させてもよい。
例えば、カラムクロマトグラフィー法で接触・単離を行う場合、前記した試料をアフィニティーカラムに供し当該ポリヌクレオチドとポリヌクレオチド結合物質の複合体を形成せしめた後、担体の洗浄、結合物質の溶出を通常の方法で行うことで、結合物質を単離することができる。具体的には、まず試料をロードし、次いで、ロードするときと同組成のバッファーで洗浄し、複合体形成しなかった試料中成分を除去する。その後、バッファーに含まれる塩濃度を上昇させるグラジエントを行い本発明ポリヌクレオチドと結合する物質を溶出することによって、本発明ポリヌクレオチドと結合する物質を単離することができる。溶出に使われる前記の塩は、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫安等を挙げることができる。
本発明精製方法によって、本発明ポリヌクレオチドの本転写制御能力を制御する物質の選抜方法によって選抜される物質又は本発明ポリヌクレオチドと結合する物質の選抜方法によって選抜される物質を精製することができる。
さらに、上記の形質転換細胞(請求項9又は10に相当)と、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値の測定試薬とを含む、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質のスクリーニングキットが提供される。
本発明キットは、本発明のポリヌクレオチド(ここではDNA)を有する組み換えレポーターベクターを保持する試験細胞と;レポーター活性の測定用試薬とを含むキットである。
当該キットは、前述した本発明探索方法に使用できる。
本発明キットは、さらに、本発明ポリヌクレオチド(ここではDNA)を有しないプラスミドが導入されてなる対照細胞を含んでいてもよい。このような対照細胞はネガティブコントロールとして利用することができる。
このような探索方法により選抜された物質またはその薬学的に許容される塩は、それらを有効成分として含み、当該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする転写制御剤として利用してもよい。
従って、本発明転写制御剤の有効成分としての物質は、本発明ポリヌクレオチドの制御下にある遺伝子の細胞内での発現を制御することによって、当該遺伝子の翻訳産物の発現過多もしくは発現過少に起因する疾患のための医薬として有用である。また、本発明ポリヌクレオチドの制御下に連結した所望のDNA、例えば各種疾患(例えば、血管疾患)との関連が推定されるDNA等の血管細胞における作用や、遺伝子欠損に基づく疾患への影響を検討する際の転写調節剤や、当該転写調節剤等を含む当該疾患の治療剤として利用することもできる。
またさらに、上記の探索方法により得られる、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質若しくはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする医薬や、上記の形質転換細胞を培養した培養物から、上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)によって転写が制御されるポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを分離・採取するポリペプチドの製造方法や、上記のポリヌクレオチド(請求項1又は2に相当)、又は、上記のベクター又はプラスミド(請求項3乃至8に相当)により形質転換された哺乳動物や、哺乳動物が、病態モデル哺乳動物であることを特徴とする上記の哺乳動物や、哺乳動物が、全身の血管異常をモニター可能とする哺乳動物であることを特徴とする上記の哺乳動物や、上記(c)記載のベクター又はプラスミドを有効成分として含有することを特徴とする遺伝子欠損に基づく疾患の治療剤等が提供される。
本発明探索方法及び本発明結合物質探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする転写制御剤は、その有効量を経口的または非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本転写制御剤は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の通常の形態で使用することができる。また、非経口的に投与する場合には、本転写制御剤を溶液、乳剤、懸濁液等の通常の液剤の形態で使用することができる。前記形態の本転写制御剤を非経口的に投与する方法としては、例えば注射する方法、坐剤の形で直腸に投与する方法等を挙げることができる。
前記の適当な投与剤型は許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤等に本探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を配合することにより製造することができる。また注射剤型で用いる場合には、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本転写制御剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は経口の場合には成人で1日あたり有効成分量として約1mg〜約2g、好ましくは有効成分量として約5mg〜約1gを投与すればよく、注射の場合には成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
本転写制御剤の適用可能な疾患としては、遺伝子欠損に基づく疾患等をあげることができ、これらの疾患を治療・改善・予防するために本転写制御剤を用いればよい。
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
具体的にまず、1.Fkh3遺伝子をクローニングする方法、2.血管細胞で発現させるためのベクター構築法、3.トランスジェニックマウスの作製法の概要を説明する。尚、以下に記載する操作は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(2001)等に記載される方法等に従って行う。
1.転写制御配列のクローニング:GenBankに登録されたAccession No.NM_012022のfkhl18(=Fkh3)cDNAをPstIで切断したときに切り出されるDNA断片をプローブとして、マウスのコスミドライブラリーをスクリーニングし、 塩基配列を調べてFkh3の遺伝子領域を含むクローンを選択する。必要に応じて、得られたクローンをプローブとして、更に上流あるいは下流配列を含むクローンを拾い上げる。
2.ベクターの構築:1で単離されたDNAに適当な制限酵素切断部位がある場合には、制限酵素で切断し、無い場合には、PCRプライマーに適当な制限酵素サイトを付加してPCRを行って制限酵素サイトを組み込んだ後に制限酵素で切断して、転写制御領域を含むと思われるDNAを得る。得られた、転写制御配列を含むと思われるDNAを、適当なレポーター遺伝子(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)の上流に挿入する。哺乳動物細胞で発現し、5−ブロモー4−クロロー3−インドリルーβ―D−ガラクトピラノシド(X−gal;タカラバイオ社製)を基質した染色により検出可能なβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を哺乳動物細胞で発現させ、これを検出する。
3.トランスジェニックマウスの作製:トランスジェニックマウスは、遺伝子導入に用いるマウス受精卵の採取、2で構築された転写制御配列及びレポーター遺伝子を含むベクターからの直鎖状DNAの精製、精製したDNAのマウス受精卵雄生前核への注入(マイクロインジェクション)、DNAを導入したマウス卵(以下、操作卵)の培養、精管結紮雄マウスと正常雌マウスとの交配による偽妊娠マウスへの操作卵の移植、偽妊娠マウスの出産と産仔の育成、PCR法による遺伝子導入マウスの選抜、導入遺伝子をもつマウスの系統樹立、のステップを経て作製する(Hong,B.L.M.,A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York,1986)。遺伝子導入コンストラクトを制限酵素で切断して直鎖化し、マウスの受精卵の雄生前核に注入し、擬妊娠させた雌マウスに移植して、妊娠・出産させる。産仔が導入した遺伝子を持っているかどうかは、産仔の尾より抽出したDNAより導入遺伝子の存在をPCRで増幅することにより確認することができる。さらに、各組織で発現したβ−ガラクトシダーゼ活性をX−gal染色による組織染色法により検出する。
実施例1 (Fkh3遺伝子を含むコスミドクローンの単離)
これまで同定されていなかったマウスFkh3遺伝子を単離し、DNA配列を決定した。Fkh3については、Fox転写因子ファミリーで保存性の高い一部断片が報告されている(Kaestner,K.H.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,pp.7628−7631,1993)。マウスのコスミドライブラリーをマウスforkhead−like 18(fkhl18:GenBank Accession No.NM_010226)のうちのPstIで切り出されるフラグメント957bpをプローブとしてスクリーニングし、1個の陽性クローンを同定した。コスミドDNAをManiatisらの標準的方法により精製し、インサートの制限酵素地図を各種制限酵素(タカラバイオ社製)を用いて作製した。単離されたコスミドクローンのうちのHindIIIにより切り出される約4.6 kbフラグメントの塩基配列を決定し、配列番号1に載せた。
実施例2 (トランスジェニックマウス作製用導入コンストラクトの作製)
得られたFkh3遺伝子の3’領域を含むHindIIIフラグメントをpHsp68−LacZ new Ver1(Rossant,J.et al.,Genes Dev.5, pp.1333−1344,1991)のHindIIIサイトにライゲーションにより挿入し、p#43を作製した(図1)。作製したレポーターコンストラクトp#43を制限酵素NotIおよびSalIにより切断(37℃、1時間)し、1%アガロースゲルにより分画した。目的のバンドをゲルから切り出した後、フェノール抽出により精製した。さらに得られた上清画分を用いてエタノール沈殿を行い、目的のDNAサンプルを回収した。
実施例3 (トランスジェニックマウスの作製)
受精卵は、B6C3F1マウスの雌マウスに過剰排卵を誘発させるため、例えば妊馬血清性生殖腺刺激ホルモン(pregnant mare’s serum gonadotropin;セロトピン:帝国臓器製薬社製)5国際単位とヒト絨毛性生殖腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin;ゴナトロピン:帝国臓器製薬社製)2.5国際単位をそれぞれ腹腔内投与した個体から卵巣から子宮までの生殖器官をとりだし、実体顕微鏡下で卵管を引き裂いて採取した。ここで、マウス卵培養用培地は、例えばM2培地を用いることが望ましい。制限酵素により直鎖化されたp#43を用いたマイクロインジェクションは、例えばノマルスキー微分干渉装置を取り付けた倒立顕微鏡(倒立型システム顕微鏡:オリンパス社製)下で、マイクロマニピュレータ(粗動電動マニピュレータに懸架式ジョイスティック3次元油圧マイクロマニピュレータを装着:ナリシゲ社製)、マイクロインジェクター(ナリシゲ社製)、インジェクションピペットおよびホールディングピペットを用いて行った。インジェクション用ディッシュには、例えば10cmディッシュ(ファルコン3002:ベクトンディッキンソン社製)に培地50μlの液滴を作り、流動パラフィンを重層したものを用いた。偽妊娠させたICRマウスへの操作卵移植は、ます、マウスを50mg/kgのペントバルビタールナトリウム(ネンブタール:Abbott Laboratories)にて全身麻酔を行い、両けん部を約1cm切開して卵巣および卵管を露出し、実体顕微鏡下で卵巣嚢をピンセットで切開し卵管采を露出させた。次に卵管あたり10ないし15個の操作卵を卵管采に送り込んだ。この後、卵管および卵巣を腹腔に戻し両切開部を縫合し、マウスを麻酔から覚醒させた。
実施例4 (導入遺伝子の検出)
仔マウスにおける導入遺伝子の存在は、以下の述べる方法により仔マウスの尾から抽出したDNAを鋳型として導入遺伝子をPCRで増幅し、確認した。
マウスの尾からのDNA抽出は、切断した尾を溶解バッファー(100mM Tris−HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、200mM NaCl、0.2% SDS、0.1mg/ml Proteinase K)に浸し、55℃で6時間加温した。遠心により、残渣を除いた後、フェノール、クロロホルム抽出によりタンパク質を除去した。上清画分を用いてエタノール沈殿によりDNAを調製した。
遺伝子導入用コンストラクトが導入されたか否かはPCR法を用いた。PCR法はプログラム可能なサーマルサイクラーを用いて行った。50μl反応液には、1.25unitのExTaq DNA polymerase(タカラバイオ社製)および、センスプライマーとして配列番号2およびアンチセンスプライマーとして配列番号3をそれぞれ200 nmolとマウスの尾から調製したDNAを含む。PCR法の反応条件は、95℃で3分間熱変性した後、94℃で30秒、55℃で30秒、74℃で60秒を1サイクルとして35サイクルの反応を行った。PCR産物は、1%アガロースゲルにて電気泳動し、増幅を確認した。
実施例5 (胚のX−gal染色)
受精後13.5日胚について、X−gal染色を行った。胚は、F0のトランスジェニックマウス雌または雄をB6C3F1の雄または雌マウスと交配させることにより得た。導入遺伝子の存在の有無は、胚の卵黄嚢よりゲノムDNAを抽出し、PCRによって確認した。X−gal染色は、固定液(1%ホルムアルデヒド、0.2%グルタルアルデヒド、0.02% NP−40、1mM MgCl2、PBS)に浸して氷上で20分固定を行い、PBSバッファーで3回洗浄した後に、染色液(5mM フェリシアン化カリウム、5mM フェロシアン化カリウム、1mM MgCl2、PBS)に浸して37℃で一晩行った。
13.5日胚のX−gal染色を行った結果を図2に示した。導入遺伝子の伝達が確認されたトランスジェニックマウスの胚の血管細胞において、特異的なレポーター遺伝子の発現が認められた。
実施例6 (X−gal染色組織切片の作製)
X−gal染色後の胚を薄切し染色細胞の観察を行った。実施例5に示したように染色した胚をOCTcompoundに包埋、凍結した。切片は、Cryostat (Leica社製)を用いて、厚さが10ないし15μmになるように作製した。作製した切片をドライヤーで風乾後、4%パラホルムアルデヒドに浸して室温で10分インキュベートした。その後、切片をPBSで2回洗浄して、水性封入剤で封入した。組織切片のX−gal染色を行った結果、精巣の血管内皮細胞等において、染色が認められた(図2)。
本発明により、目的の遺伝子によりコードされたポリペプチドを血管細胞において特異的に発現させることが可能となった。
図1は、p#43の制限酵素切断マップである。 トランスジェニックマウスの胚及び生殖器におけるX−gal染色結果を示す図(写真)である。図中の図A〜図Cは、トランスジェニックマウスの胚におけるX−gal染色結果を示す図であり、また図中の図Dは、トランスジェニックマウスの生殖器官の切片におけるX−gal染色結果を示す図である。
配列番号2
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号3
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

Claims (21)

  1. マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3の3’領域に位置する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
  2. 塩基配列が、以下の(1)〜(4)のいずれかに記載される塩基配列であることを特徴とする請求項1記載のポリヌクレオチド。
    (1)配列番号1で示される塩基配列
    (2)上記(1)の塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
    (3)上記(1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下にハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列に相補であり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
    (4)上記(1)の塩基配列に対して75%以上のDNA相同性を有する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有する塩基配列
  3. 請求項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクター又はプラスミド。
  4. 請求項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクター又はプラスミド。
  5. 請求項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの上流又は下流(5’又は3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とする請求項4記載のベクター又はプラスミド。
  6. 請求項1又は2記載のポリヌクレオチドを含有し、かつ当該ポリヌクレオチドの下流(3’側)に細胞で機能可能な最小プロモーター領域を含有し、かつ当該ポリヌクレオチド及び当該最小プロモーター領域の下流(3’側)に当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドを含有することを特徴とする請求項4記載のベクター又はプラスミド。
  7. 細胞で機能可能な最小プロモーター領域が、TATAボックスから実質的になるプロモーターであることを特徴とする請求項5又は6記載のベクター又はプラスミド。
  8. 当該ポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドが、レポーター遺伝子であることを特徴とする請求項4乃至7記載のベクター又はプラスミド。
  9. 請求項1若しくは2記載のポリヌクレオチド、又は、請求項3乃至8記載のベクター若しくはプラスミドが導入されてなる形質転換細胞。
  10. 形質転換細胞が、哺乳動物由来の血管細胞であることを特徴とする請求項9記載の形質転換細胞。
  11. マウスフォークヘッドホモログをコードする遺伝子Fkh3の3’領域に位置する塩基配列からなり、かつ血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質の探索方法であって、
    (1)請求項8記載のベクター又はプラスミドが導入されてなる形質転換細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び、
    (2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値をモニターする第二工程、
    (3)前記第二工程によりモニターされた発現量又はそれと相関する指標値の変化に基づき前記物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する第三工程、及び
    (4)前記第三工程で評価された血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質を選抜する第四工程、
    を有することを特徴とする探索方法。
  12. 物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する方法であって、
    (1)請求項8記載のベクター又はプラスミドが導入されてなる形質転換細胞に被験物質を接触させる第一工程、及び、
    (2)前記第一工程後に、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値をモニターする第二工程、
    (3)前記第二工程によりモニターされた発現量又はそれと相関する指標値の変化に基づき前記物質が有する血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を評価する第三工程
    を有することを特徴とする評価方法。
  13. 請求項1又は2記載のポリヌクレオチドと結合する物質の探索方法であって、
    (1)請求項1又は2記載のポリヌクレオチドと被験物質とを接触させる第一工程、及び
    (2)前記第一工程後に、当該ポリヌクレオチドと被験物質との複合体生成の有無を調べる第二工程、及び
    (3)前記第二工程で得られた複合体生成の有無結果に基づき当該ポリヌクレオチドと結合する物質を選抜する第三工程、
    を有することを特徴とする探索方法。
  14. 請求項1又は2記載のポリヌクレオチドと結合する物質の精製方法であって、
    (1)請求項1又は2記載のポリヌクレオチドと試料とを接触させて、当該ポリヌクレオチドと当該試料中に含有される当該ポリヌクレオチドと結合する物質との複合体を生成させる第一工程、及び、
    (2)前記第一工程後、生成させた複合体から当該結合物質を単離する第二工程、
    を有することを特徴とする精製方法。
  15. 請求項9又は10記載の形質転換細胞と、レポーター遺伝子の発現量又はそれと相関する指標値の測定試薬とを含む、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質のスクリーニングキット。
  16. 請求項11記載の探索方法により得られる、血管細胞における特異的なポリペプチド発現を制御する能力を有するポリヌクレオチドを介した、ポリペプチド発現制御能力を有する物質若しくはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分が薬学的に許容される担体中に製剤化されてなることを特徴とする医薬。
  17. 請求項9又は10記載の形質転換細胞を培養した培養物から、請求項1若しくは2記載のポリヌクレオチドによって転写が制御されるポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを分離・採取するポリペプチドの製造方法。
  18. 請求項1若しくは2記載のポリヌクレオチド、又は、請求項3乃至8記載のベクター又はプラスミドにより形質転換された哺乳動物。
  19. 哺乳動物が、病態モデル哺乳動物であることを特徴とする請求項18記載の哺乳動物。
  20. 哺乳動物が、全身の血管異常をモニター可能とする哺乳動物であることを特徴とする請求項18又は19記載の哺乳動物。
  21. 請求項5又は6記載のベクター又はプラスミドを有効成分として含有することを特徴とする遺伝子欠損に基づく疾患の治療剤。
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