JP2006166702A - 血管新生制御遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【課題】血管新生が関与する疾患の診断、治療または予防等に使用される血管新生促進作用を有するタンパク質の提供。
【解決手段】ヒト臍帯静脈内皮細胞から作製したcDNAライブラリーから、プラスミドpGL3HRE-Luc、pGL3KDR-Lucを用いて、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするcDNAをクローニングして、そのDNA配列およびそれより推定されるアミノ酸配列を決定した。同タンパク質、これをコードするDNA,同DNAを含有する組換えベクターおよび同組換えベクターを含有する形質転換体は、血管新生を阻害または促進する物質のスクリーニングに使用される。
【選択図】 なし
【解決手段】ヒト臍帯静脈内皮細胞から作製したcDNAライブラリーから、プラスミドpGL3HRE-Luc、pGL3KDR-Lucを用いて、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするcDNAをクローニングして、そのDNA配列およびそれより推定されるアミノ酸配列を決定した。同タンパク質、これをコードするDNA,同DNAを含有する組換えベクターおよび同組換えベクターを含有する形質転換体は、血管新生を阻害または促進する物質のスクリーニングに使用される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAの取得方法、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体ならびに該蛋白質と反応する抗体に関する。また、本発明は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の過剰な発現またはその発現の阻害が関与する疾患の診断、治療または予防を行う際の本発明のタンパク質、DNAまたは抗体の使用に関する。また本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血管新生とは、一般に、既存の血管におけるプロテアーゼによる血管の基底膜の消化、破壊、血管内皮細胞の遊走、増殖、細胞外マトリックスへの接着および血管内皮細胞の分化による管腔形成などの過程を経て、新しい血管網が形成されることである。正常な状態では子宮や卵巣などの女性生殖器や、創傷治癒などの特殊な場合でしか認められない現象であるが、ある種の病態においては顕著な血管新生が認められる。
【0003】
血管系が新たに構築される現象である血管新生が、発症や進展にかかわっている疾患は多く、例えば固形腫瘍が増大するためには、血管新生によって酸素や栄養の供給が行われ、老廃物が除去されることが必須である。さらに、癌細胞の転移においても血管新生が重要な役割を担っている。また、糖尿病性網膜症においては、新生血管が網膜組織を破壊し、後天的な失明の主要な原因となっている。したがって、病的な血管新生を抑制することが上記疾患の治療や予防に結びつくと考えられ、現在ではいくつかの血管新生阻害剤が、臨床上での有効性について検討されている。
【0004】
一方、動脈硬化や血栓などにより虚血状態に陥った心臓、脳および末梢の組織では、生理的な血管新生により側副血行路が発達し、虚血状態の改善が図られる。しかしながら、この生理的な血管新生は一般に不十分であることが多く、積極的な血管新生の促進が、虚血に起因する疾患の治療となりうる
【0005】
実際に生体内で血管新生を促進する代表的な増殖因子としてVEGF(Vascular endotherial growth factor)が挙げられる。VEGFはほとんど血管内皮細胞のみを標的とする特異的血管成長形成因子である(Ferraraら、Endocr.Rev., 13:18-32(1992), Dovorakら、Am.J.Pathol., 146:1029-1039(1995), Thomasら、J.Biol.Chem., 271:603-606(1996))。VEGFは、胎児の成長(Peterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:8915-8519(1991))、組織の修復(Brownら、J.Exp.Med., 176:1375-1379(1992))、月経周期および妊娠(Jacksonら、Placenta, 15:341-353(1994), Cullinan & Koos, Endocrinilogy, 133:829-837(1993)などの成長する組織中での正常な血管新生に関与する。VEGF遺伝子を破壊されたマウスでは、胚における異常な血管の発達により死に至り(Carmeliet1ら、Nature, 380:435-438(1996))、VEGFが血管新生において必須の役割を演じていることが示されている。また、VEGFは血管内皮細胞膜上に存在するチロシンキナーゼ型受容体KDRと結合することにより活性を付与し、細胞内のシグナル伝達を経て血管新生を促進する。
【0006】
したがって、VEGFおよびKDRの発現が血管新生に必須であり、これらのタンパク分子の発現制御の仕組みを解明することは、病的血管新生や虚血性疾患に対する新たな医薬の開発あるいは治療法の開発に非常に重要な手段を提供することとなり、極めて重要な意義を有している。
【0007】
VEGFはその遺伝子の上流にHypoxia responsible element(HRE)と呼ばれる、低酸素に反応してプロモーター活性を発現する配列を持ち、このプロモーターがVEGFの発現において重要な役割を担っていることが知られている(Forsytheら、Mol.Cell.Biol.16:4604-4613(1996))。しかしながら、細胞が一定の刺激を受けてからVEGFまたはVEGF受容体の発現に至るまでのシグナル伝達経路には様々な伝達分子が関わる多くのステップの存在が考えられ、したがって、より効率的な創薬研究のためには、主要な役割を果たす伝達分子を明らかにした上でそれらに焦点を絞った新しい薬物のスクリーニング方法を確立することが望まれる。しかし、VEGFまたはVEGF受容体の発現を制御するシグナル伝達分子については、酸素感受性のプロリンヒドロキシラーゼなどの分子が同定され、少しずつ解明されつつあるものの、いまだ不明な点が多く、新たなシグナル伝達分子の同定と、より進んだVEGFまたはVEGF受容体の発現制御メカニズムの解明が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、血管新生を促進する作用を有する上記のように有用な新規な遺伝子およびタンパク質を見出し、これを医薬、診断薬、医療の分野で利用する方法を提供することにある。即ち、本発明の課題は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の製造方法、該タンパク質またはその部分ペプチドに対する抗体、該抗体の製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の別の課題は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法、該スクリーニング用キット、該スクリーニング方法もしくはスクリーニング用キットを用いて得られるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質、該物質の製造方法、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質を含有している医薬などを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
近年、生体内で発現している遺伝子を解析する手段として、cDNAの配列をランダムに解析する研究が活発に行われており、このようにして得られたcDNAの断片配列がEST(Expressed Sequence Tag、例えばhttp//www.ncbi.nlm.nih.gov/dbEST)として、データベースに登録され公開されている。しかし、ESTは配列情報のみであり、その機能を推定することは困難である。また、ESTはUniGene(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)により整備され、これまでに約9万5千種のESTが登録されている。しかし、その多くは5’末端ヌクレオチド配列を欠損しており、タンパク質翻訳開始部位を含まない。そのため、mRNAのコード領域の決定を前提とするタンパク質の機能解析、プロモーターの解析による遺伝子発現制御の理解といった遺伝子機能の解析に直結しているとは言いがたい。
【0011】
一方、遺伝子の産物、すなわちタンパク質の機能を解明する方法の一つに、動物細胞を用いた一過性発現クローニング法がある(例えば、実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック)。この方法は、動物細胞発現ベクターを用いて作製したcDNAライブラリーを、動物細胞にトランスフェクションすることで機能的なタンパク質を直接発現させ、このタンパク質が細胞に及ぼす生物活性を指標としてcDNAを同定、クローニングする方法である。この方法では、目的とするタンパク質産物に関する化学的情報(アミノ酸配列や分子量)をあらかじめ必要とせず、細胞内や培養液中に発現しているタンパク質の特異的生物活性を検出してcDNAクローンの同定を行うことができる。
【0012】
この発現クローニングを効率よく行なうためには、cDNAライブラリーの作製方法を工夫する必要がある。なぜなら、従来より汎用されているcDNAライブラリー作製方法には幾つかの方法があるが(例えばGubbler-Hoffmanの方法:Gene 25(1983)オカヤマ−バーグの方法:Mol.Cell.Biol.2(1982))、これらの方法によって作製されたcDNAは、そのほとんどが5’末端ヌクレオチド配列を欠損したものであり、完全長(mRNAの全ヌクレオチド配列を含む)であることは稀であるからである。その理由は、mRNAからcDNAを作るのに使用する逆転写酵素が、必ずしも完全長のcDNAを作りあげうるほど効率が高くないからである。
【0013】
さらに、遺伝子の機能解析を試みるに際しては、完全長cDNAをクローニングし、そこから完全な長さを持ったタンパク質を発現させることが必須の要件である。従って、全体のクローンの中で、完全長のものの割合が高いライブラリーを作製することが、発現クローニングを効率よく行なうために必要であった。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製し、ECV304細胞を用いた発現クローニング法による遺伝子機能アッセイ系を完成し、該アッセイ系によりVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードする新規DNA(cDNA)を単離することに成功した。この新規DNAは、ECV304細胞内で発現させることによりVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を誘発した。この結果は、この新規DNAがVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用に関与するシグナル伝達分子であることを示している。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0015】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつVEGF(Vascular endotherial growth factor)またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質。
(2) (1)記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する精製されたタンパク質。
【0016】
(3) 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつVEGF(Vascular endotherial growth factor)またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質。
【0017】
(4) 以下の(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のいずれかで表されるポリヌクレオチド配列。
(b)(a)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
(c)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のいずれかにおいて、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列からなり、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
【0018】
(5) (3)記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(6) (4)記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(7) (3)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
【0019】
(8) (3)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
(9) (8)記載の組換えベクターを有効成分として含有する遺伝子治療剤。
(10) (8)記載の組換えベクターを含む形質転換細胞。
(11) 膜タンパク質である(1)又は(2)に記載のタンパク質を有する、(10)記載の細胞の膜。
(12) (a)(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質を発現する条件下で(10)に記載の形質転換細胞を培養する工程;および
(b)培養物からタンパク質を回収する工程:
を含む、(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質の製造方法。
【0020】
(13) (a)個体のゲノムにおける(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定する工程;および/または(b)個体に由来するサンプル中での該遺伝子の発現量を分析する工程を含む、該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した疾病または該疾病への感受性の診断方法。
【0021】
(14) 以下の工程を含むVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、シグナル量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。
【0022】
(15) 以下の工程を含むVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。
【0023】
(16) (14)または(15)に記載のスクリーニング方法により選択される、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物。
(17) 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入することにより形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、導入遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較してシグナルの量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。
【0024】
(18) 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。
【0025】
(19) VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングするためのキットであって、(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を導入した形質転換細胞、および(b)上記シグナルを測定するための試薬、を含む上記のキット。
【0026】
(20) (1)、(2)または(7)に記載のタンパク質を認識するモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片。
(21) (1)、(2)または(7)に記載のタンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害する、(20)に記載のモノクローナルあるいはポリクローナル抗体またはその断片。
(22) (1)、(2)または(7)に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することを含む、(20)または(21)に記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
【0027】
(23) VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質の発現を阻害する、(3)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドの一部に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド。
(24) (1)、(2)または(7)記載のタンパク質をコードするRNAを開裂する作用を有し、それにより該タンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害するリボザイム又はデオキシリボサイム。
【0028】
(25) 治療又は予防上有効な量の、(14)または(15)記載のスクリーニング方法で選択された化合物、および/または(17)または(18)記載の方法により製造された医薬組成物、および/または(21)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片、および/または(23)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または(24)記載のリボザイム又はデオキシリボザイムを個体に投与することを含む、VEGFおよび/またはVEGF受容体の異常な発現に関連した疾患の治療及び/又は予防方法。
(26) VEGFおよび/またはVEGF受容体の異常な発現に関連した疾患が、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患である、(25)に記載の方法。
【0029】
(27) VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または活性化するための、(17)または(18)記載の方法により製造された医薬組成物。
(28) 固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患の治療および/または予防のための、(27)記載の医薬組成物。
【0030】
(29) (21)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片を有効成分として含有する医薬組成物。
(30) (23)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬組成物。
(31) (24)記載のリボザイムまたはデオキシリボザイムを有効成分として含有する医薬組成物。
(32) 固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患の治療および/または予防のための、(29)から(31)の何れかに記載の医薬組成物。
【0031】
(33) 配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体。
(34) (33)に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列および/または他のアミノ酸配列のデータを比較して他のポリヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列との同一性の算出を行う方法。
【0032】
(35) 配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
(36) 配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。
【0033】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の基本的特徴を更に明らかにするために、本発明の完成に至る経緯を追いながら、本発明について説明する。本発明者は、血管新生を促進する作用を有する新規遺伝子を取得する目的で、実施例に示すように、以下の実験を実行した。
まずヒト正常臍帯静脈血管内皮細胞(三光純薬株式会社より購入)より調製したmRNAより、オリゴキャッピング法によって完全長cDNAを作製し、該cDNAをベクターpME18S-FL3(GenBank Accession AB009864)に組み込んだ完全長cDNAライブラリーを作製した。次に、該cDNAライブラリーを大腸菌に導入し、1クローンずつプラスミドを調製した。次に、ECV304細胞(INVITROGEN社)に、VEGFの主要なプロモーターであるHRE(Hypoxia responsible element)配列をルシフェラーゼをコードする遺伝子の上流に持つレポータープラスミドpGL3HRE-Luc、およびVEGF受容体であるKDR遺伝子の5’領域をルシフェラーゼをコードする遺伝子の上流に持つレポータープラスミドpGL3KDR-Lucと上記の完全長cDNAプラスミドとを共導入した。そして、48時間培養後、ルシフェラーゼ活性を測定し、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAの代わりに、ベクターpME18S−FL3を入れた細胞)と比べて有意に上昇している(対照実験と比べてルシフェラーゼ活性が2倍以上の値を示した)プラスミドを選抜し、該プラスミドにクローニングされているcDNAの全ヌクレオチド配列を決定した。このようにして得られたcDNAによりコードされるタンパク質は、該タンパク質が血管新生を促進する作用に関与するシグナル伝達分子である可能性が高いことが期待できる。
【0034】
次に、以下に本発明について詳細に説明する。
配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74または76のアミノ酸配列に関連して、本発明は、以下のタンパク質を提供する。
【0035】
(a)上記アミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)上記アミノ酸配列の1つを有するペプチド。
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進し、かつ上記アミノ酸配列において、1または複数個、好ましくは数個のアミノ酸の欠失、置換または付加を有するタンパク質。
(d)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進し、かつその全長にわたり上記アミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
【0036】
本明細書で言う“VEGF”とは、ヒトなどの哺乳動物に存在するVEGFを意味するが、好ましくはヒトのVEGFを意味する。
本明細書で言う“VEGF受容体”とは、VEGFが結合することによりVEGFのシグナルを細胞内に伝達し、その結果として血管新生が促進されることになる受容体を意味する。VEGF受容体は通常細胞膜上に存在するものであり、例えば、血管内皮細胞膜上に存在するチロシンキナーゼ型受容体KDRなどが挙げられる。
本明細書で言う“VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進”とは、細胞内におけるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量が遺伝子レベルおよび/またはタンパク質レベルで促進されることを広く意味する。
【0037】
本明細書で言う“同一性”とは、当該技術で知られている通り、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の適合によって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間の適合によって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味する。“同一性”および“類似性”は、既知の方法により容易に決定できる。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最も長く適合するように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。相同性決定には、例えば、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(例えば、Altschul SF, GishW, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990),Altschul SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができるが、これに限定されない。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。
【0038】
BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りであるが、これに限定されない。アミノ酸置換行列とは20種類のアミノ酸の各々のペアの類縁性を数値化した行列であり、通常BLOSUM62のデフォルトマトリックスが用いられる。このアミノ酸置換行列の理論については、Altschul S.F., J. Mol. Biol.,219:555-565(1991)に、DNA配列の比較への適用については、States D.J., GishW., Altschul S.F., Methods, 3:66-70(1991)に示されている。その際の最適なギャップコストは経験的に決定されており、BLOSUM62の場合は好ましくは、Existence11、Extension 1のパラメーターが用いられる。
【0039】
期待値(EXPECT)とは、データベース配列に対してマッチする際の統計的有意性に関する閾値であり、デフォルト値は10である。
上記した配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76に記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質がVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進作用を有することは、本願明細書の実施例に記載の通りである。
【0040】
配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のポリヌクレオチドに関連して、本発明は、また以下の単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0041】
(a)上記配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド。
【0042】
上記ヌクレオチド配列に含まれるヌクレオチド配列に同一またはほとんど同一なポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする全長cDNAおよびゲノムクローンまたは上記配列に対応する相同性の高い他の遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして、または核酸増幅反応のためのプライマーとして使用してもよい。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記配列に70%同一であり、好ましくは、80%同一であり、より好ましくは90%同一であり、最も好ましくは、95%以上同一である。プローブまたはプライマーは、一般的には少なくとも15ヌクレオチドを含有し、好ましくは30ヌクレオチドを含有し、50ヌクレオチドを含有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50ヌクレオチドを有する。特に好ましいプライマーは、20〜25ヌクレオチドを有する。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAおよびクローニングによって得られるか、あるいは合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であってもよく、RNA(例えばmRNA)の形態であってもよい。該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであってもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖としても知られる)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖としても知られる)であってもよい。
【0044】
当業者であれば、公知の方法を用いてこのタンパク質中のアミノ酸の置換などを適宜行い、配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同様にVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質を作製することが可能である。一つの方法としては、該タンパク質をコードするDNAに対して、慣用の突然変異誘発剤を使用する方法がある。別の方法としては例えば部位特異的変異法(例えば宝酒造株式会社のMutan-Super Express Km キット)が挙げられる。また、タンパク質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、付加により配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のタンパク質に対してアミノ酸配列が変異した変異体であって、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質、及び該タンパク質をコードするDNAも本発明に含まれる。アミノ酸の変異の数は特に限定されるものではないが、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜3個である。
【0045】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術などを用いて配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(例えば配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75)またはその一部を基に、これと類似性の高いDNAを単離して、該DNAから配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様にVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質を得ることも通常行い得ることである。このように上記した配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列のタンパク質と高い同一性を有するタンパク質であって、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質も、本発明のタンパク質に含まれる。高い同一性とは、上記配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表わされるアミノ酸配列の全長にわたり少なくとも95%、好ましくは、少なくとも97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を示す。
【0046】
本発明のタンパク質としては、ヒトや哺乳動物のあらゆる細胞や組織に由来する天然のタンパク質でもよく、化学合成タンパク質であってもよく、また遺伝子組換え技術によって得られたタンパク質でもよい。タンパク質は糖鎖やリン酸化などの翻訳後修飾は受けていても受けていなくてもよい。
【0047】
本発明はまた、上記で示される本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。上記の配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列としてより具体的には、例えば、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。DNAはcDNAのほか、ゲノムDNA、化学合成DNAも含まれる。遺伝暗号の縮重に従い、遺伝子から生産されるタンパク質のアミノ酸配列を変えることなく配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチドを他の種類のヌクレオチドに置換することができる。従って、本発明のDNAはまた、遺伝暗号の縮重に基づく置換によってアミノ酸配列に変更がないように変換されたヌクレオチド配列も含有する。このようなDNAは、公知の方法により合成することができる。
【0048】
本発明のDNAは、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列からなるDNA、あるいはこれらと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。ストリンジェントな条件とは、当業者には十分理解できることであり、例えば、T.Maniatisらの実験操作書(Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1982、1989)に従えば容易に実施できる。
【0049】
すなわち、ストリンジェントな条件とは、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中(5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、100μg/mlの変性せん断サケ精子DNA)で37℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで1×SSC、0.1%SDS中、37℃で10分の洗浄を2回行う条件である(低ストリンジェンシー)。より好ましい条件は、40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、1%SDS中、42℃で10分の洗浄を2回行う条件である(中ストリンジエンシー)。最も好ましい条件は、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で10分の洗浄を2回行う条件である(高ストリンジェンシー)。この際、得られたDNAは、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードすることが必須である。
【0050】
本発明は、上記(3)あるいは(4)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と高い類似性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記(3)または(4)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の全長にわたり95%同一であり、より好ましくは97%同一であり、最も好ましくは少なくとも99%同一である。上記の本発明のDNAは、前述のタンパク質を、組換えDNA技術を用いて製造するのに用いることができる。本発明のDNA及びタンパク質は、以下のようにして得ることができる。
【0051】
(A)本発明のタンパク質をコードするDNAをクローニングする。
(B)タンパク質の全コード領域あるいはその一部をコードするDNAを発現用ベクターに組み込んで、組換えベクターを構築する。
(C)構築した組換えベクターにより、宿主細胞を形質転換する。
(D)得られた細胞を培養し、該タンパク質、またはその類縁体を発現させ、カラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0052】
上記の工程中でDNA、組換え体宿主としての大腸菌等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、例えば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれらの目的を達成することができる。以下に上記(A)〜(D)の工程について更に詳しく説明する。
【0053】
上記(A)における本発明のタンパク質をコードするDNAのクローニングの手段としては、本願明細書実施例に記載した方法の他に、本発明のヌクレオチド配列(例えば配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73,75)の一部を有する合成DNAをプライマーとしたPCR法によって増幅する方法、あるいは、適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別すること、などが挙げられる。細胞、組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(RT-PCR法)によって増幅することもできる。適当なベクターに組み込んだDNAとしては、例えば市販されている(CLONTECH社、STRATAGENE社)ライブラリーを使用することができる。
【0054】
ハイブリダイゼーションの方法は、当業者間で通常行われているものであり、例えば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。クローン化された本発明のタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。上記のようにして得られるDNAは、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75に記載のヌクレオチド配列を有する遺伝子であるか、あるいは前述の(3)〜(6)のポリヌクレオチドであればよい。上記(B)において発現ベクターに組み込むDNAは、上述のタンパク質の全長をコードする全長cDNAでも、DNA断片でも、その一部分を発現するように構築されたDNA断片でもよい。
【0055】
すなわち、本発明によれば、上記のDNAを含有する組換えベクターを提供される。本発明のタンパク質を発現することができる発現ベクターは、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0056】
用いる発現ベクターとしては、宿主において複製可能であれば、大腸菌をはじめとする原核生物由来、酵母由来、真菌由来、昆虫ウイルス由来、脊椎動物ウイルス由来いずれのベクターでもよいが、宿主として使用する微生物または細胞に適したものを選択する必要がある。また、発現物に応じて、適切な組み合わせから構成される宿主細胞−発現ベクター系が選択される。
【0057】
微生物を宿主として使用する場合、これら微生物に適したプラスミドベクターが、組み換え体DNAの複製可能な発現ベクターとして一般に用いられる。例えば、大腸菌を形質転換するためのプラスミドベクターとしては、プラスミドpBR322やpBR327などを用いることができる。プラスミドベクターは通常、複製起源、プロモーター、及び組換え体DNAで形質転換した細胞を選別するのに有用な表現型を与えるマーカー遺伝子等を含んでいる。プロモーターの例としては、β−ラクタマーゼプロモーター、ラクトースプロモーター、トリプトファンプロモーター等が挙げられる。マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子やテトラサイクリン耐性遺伝子などが挙げられる。好適な発現ベクターの例としては、プラスミドpBR322、pBR327の他に、pUC18、pUC19等が挙げられる。
【0058】
酵母で本発明のDNAを発現するためには、複製可能なベクターとして、例えばYEp24を用いることができる。プラスミドYEp24はURA3遺伝子を含有しており、このURA3遺伝子をマーカー遺伝子として利用することができる。酵母細胞用の発現ベクターのプロモーターの例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ等の遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0059】
真菌で本発明のDNAを発現するための発現ベクターに用いられるプロモーター及びターミナーターの例としては、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPD)、アクチン等の遺伝子プロモーター及びターミネーターが挙げられる。好適な発現ベクターの例としては、プラスミドpPGACY2、pBSFAHY83等が挙げられる。
【0060】
昆虫細胞で本発明のDNAを発現させるための発現ベクターに用いられるプロモーターの例としては、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。
【0061】
動物細胞で本発明のDNAを発現させるための組換えベクターは、一般に遺伝子を制御するための機能配列、例えば、複製起源、本発明のDNAの上流に位置すべきプロモーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位や転写終止配列を含有している。本発明のDNAを真核細胞内で発現させるのに用いることができるそのような機能配列はウイルスから得ることができる。
【0062】
例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の上流位置に本来存在するプロモーターも、上述の宿主−ベクター系で使用するのに適しているならば使用することができる。複製起源については、外来性の起源、例えば、アデノウイルス、ポリオーマ、SV40等のウイルス由来の複製起点を用いることができる。また、発現ベクターとして宿主染色体に組み込まれるような性質を有するベクターを用いる場合、宿主染色体の複製起源を利用することができる。
適した発現ベクターの例としては、プラスミドpSV−dhfr(ATCC 37146)、pBPV−1(9−1)(ATCC 37111)、pcDNA3.1(INVITROGEN社)、pME18S−FL3等が挙げられる。
【0063】
本発明によれば、上記の組換えベクターを有する形質転換細胞も提供される。本発明の複製可能な組換えベクターで形質転換された微生物または細胞は、前述の通り、組換えベクターに与えられた少なくとも1種の表現型によって形質転換されずに残った親細胞から選別することができる。表現型は少なくとも1種のマーカー遺伝子を組換えベクターに挿入することによって与えることができる。また複製可能なベクターが本来有しているマーカー遺伝子を利用することもできる。マーカー遺伝子の例としては、例えば、ネオマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子やジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子などが挙げられる。
【0064】
上記(C)において用いる宿主としては、大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでもよいが、用いる発現ベクターに適したものを選択する必要がある。微生物の例としては、エシュリヒア・コリ(Escherichia coli)の菌株、例えば、E.coliK12株294(ATCC 31446)、E.coli X1776(ATCC 31537)、E.coli C600、E.coli JM109、E.coli B株、あるいはバチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の如きBacillus属の菌株、あるいはサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マーゼサンス(Serratia marcesans)等の大腸菌以外の腸内菌、あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属の種々の菌株が挙げられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。真菌としては、例えば、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)(ATCC 11550)等が挙げられる。
【0065】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda:Sf細胞)、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞などが用いられる。動物細胞の例としては、HEK293細胞、COS−1細胞、COS−7細胞、Hela細胞、チャイニーズハムスター(CHO)細胞等が挙げられる。これらの中でも、CHO細胞およびHEK293細胞が好ましい。細胞を宿主とする場合、用いられる発現ベクターと宿主細胞の組合せは実験の目的により異なるが、その組合せにより、一過的発現、構成的発現の2種類の発現方式が考えられる。
【0066】
上記(C)における微生物及び細胞の形質転換とは、DNAを強制的方法や、細胞の貪食能により微生物や細胞に取り込ませ、プラスミド状態あるいは染色体に組み込まれた状態でDNAの形質を一過的あるいは構成的に発現させることである。当業者であれば公知の方法によって形質転換できる(例えば、実験医学別冊遺伝子工学ハンドブック)。例えば、動物細胞の場合、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、リポフェクション法などの方法でDNAを細胞に導入することができる。動物細胞を用いて、本発明のタンパク質を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のタンパク質の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、Dihydroforate reductase(DHFR)遺伝子を選択マーカーとして用いた場合、Methotrexate(MTX)濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、DHFR遺伝子とともに、本発明のタンパク質をコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
【0067】
上記の形質転換細胞を本発明のタンパク質をコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質を生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質を製造することができる。すなわち、本発明によれば、上記(3)〜(6)に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む形質転換細胞を、該ポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を発現させる条件下で培養し、次いで培養物(即ち、細胞自体または培地)から該タンパク質を回収することを含む該タンパク質の製造方法も提供される。
【0068】
上記の形質転換細胞の培養は、当業者に公知の方法で行なうことができる(例えば、バイオマニュアルシリーズ4、羊土社)。例えば、動物細胞の場合、各種の動物細胞培養法、例えば、シャーレ培養、マルチトレー式培養、モジュール培養などの付着培養、または細胞培養用担体(マイクロキャリアー)に付着させるか生産細胞自体を浮遊化させ浮遊培養等の公知の方法により培養を行なえばよい。培地は通常よく用いられる動物細胞用の培地、例えば、D−MEMやRPMI1640等を用いればよい。
【0069】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。例えば、本発明のタンパク質は、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスフォセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。ポリペプチドが細胞内合成、単離または精製の間に変性するときには、活性なコンフォーメションを再生するためにタンパク質をリフォールディングするための公知技術を使用できる。
【0070】
本発明のタンパク質は、他のタンパク質との融合タンパク質として製造することができる。これら融合タンパク質も、本発明の範囲内である。この融合タンパク質を発現する際に用いられるベクターとしては、該タンパク質をコードするDNAを組み込むことができ、かつ該融合タンパク質を発現することができるベクターであれば、いかなるベクターでも用いることができる。本発明のペプチドに融合できるタンパク質としては、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン残基の6個の連続配列(6×His)等が挙げられる。本発明のタンパク質を他の蛋白質と融合した蛋白質として発現させた場合には、融合した蛋白質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、有利である。例えば、GSTとの融合蛋白質として生産した場合は、グルタチオンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0071】
本発明のタンパク質が膜タンパク質である場合には、上記した本発明のタンパク質をコードするDNAを導入した形質転換細胞は、その膜上にタンパク質を発現することができる。このような形質転換細胞から調製される膜であって本発明のタンパク質を有する膜も本発明の範囲内である。なお、本明細書で言う細胞の膜とは、細胞膜、並びに細胞内小器官の膜の全てを包含する。細胞の膜の調製は当業者に公知の方法により行うことができる。例えば、形質転換細胞を培養した培養物から細胞の菌体を回収し、好適な緩衝液に懸濁後、ガラスビーズを加えVortexにて菌体を破砕する。破砕溶液を遠心し未破砕の菌体を除去し、得られた上清を適切な条件で超遠心し、得られた沈澱を緩衝液に懸濁することにより膜画分を調製することができる。超遠心の条件は膜の種類などに応じて適宜設定することができる。
【0072】
本発明によれば、本発明のタンパク質の活性を阻害するタンパクも提供される。このようなタンパク質の具体例としては、例えば、抗体が挙げられる。
本発明は、本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドを認識する抗体ならびに該抗体の製造方法にも関する。さらに好ましくは、本発明は、本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドを特異的に認識する抗体、並びに該抗体の製造方法に関する。ここでいう「特異的」とは、交差反応性が少ないもの、より好ましくは交差反応性がないものを意味する。
【0073】
本発明の抗体は、本発明のタンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体のフラグメント、一本鎖抗体、ヒト化抗体の何れであってもよい。抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。例えば、該抗体フラグメントには、限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント及びFvフラグメントが含まれる。例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、上記(1)または(2)に記載のタンパク質またはエピトープ含有フラグメントを抗原として非ヒト動物に投与することにより得られる。本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質あるいはそのペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。例えば実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版に記載の方法が挙げられる。
【0074】
ポリクローナル抗体の場合であれば、例えば、動物に本発明のタンパク質あるいはペプチドを注射することにより該タンパク質あるいはペプチドに対する抗体を産生させ、次いで血液を採取し、これを、例えば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0075】
モノクローナル抗体の場合は、例えば、本発明のタンパク質をマウスなどの動物に免疫し、同マウスから脾臓を抽出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウス内より腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0076】
得られた抗体をヒトに投与する目的で使用する場合は、免疫原性を低下させるために、ヒト型化抗体あるいはヒト抗体を用いることが好ましい。ヒト抗体は、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物を用いて作製することができる。これらのヒト型化抗体やヒト抗体の一般的概説は、例えば、Morrison,S.L.etal.〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)〕、Jones,P.T.et al〔Nature 321:522-525(1986)〕、野口浩〔医学のあゆみ 167:457−462(1993)〕、松本隆志〔化学と生物 36:448−456(1998)〕によって供されている。ヒト化キメラ抗体は、マウス抗体のV領域とヒト抗体のC領域を遺伝子組換えにより結合し、作製することができる。ヒト化抗体は、マウスのモノクローナル抗体から相補性決定部位(CDR)以外の領域をヒト抗体由来の配列に置換することによって作製できる。また、免疫系をヒトのものと入れ換えたマウス用いて、該マウスを免疫して、通常のモノクローナル抗体と同様に直接ヒト抗体を作製することもできる。これらの抗体は、タンパク質を発現するクローンを単離したり同定するのに使用できる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質を細胞抽出液、または本発明のタンパク質を産生する形質転換細胞から精製するのに使用できる。更にこれらの抗体は、細胞や組織中の本発明のタンパク質を検出するELISAやRIA(ラジオイムノアッセイ)、またはウエスタンブロット系の構築に使用できる。このような検出系は、動物、好ましくは、ヒトの組織または血管内流体などの身体サンプル中に存在する本発明のタンパク質の存在量を検出する診断目的に使用することができる。例えば、これらの抗体は、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの、本発明のタンパク質の(発現)異常に起因する望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の診断に使用できる。疾患の診断の基礎を提供するために、本発明のタンパク質の発現についての通常の値、すなわち標準値が確立されなければならないが、これは当業者においては周知の技術である。すなわち、複合体形成のための適切な条件下で、ヒトあるいは動物のどちらでもよいが、正常の被験者から得られた体液あるいは細胞抽出物と、本発明のタンパク質に対する抗体とを結合させ、この抗体−タンパク複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原(本発明のタンパク質)を含む標準液を用いて作成した標準曲線を用いて、正常サンプルから得られた標準値を算出する。標準値と本発明のタンパク質が関係する疾患を潜在的に患う被験者からのサンプルから得られた値と比較し、標準値との偏差によって疾病の存在を確認することができる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質の機能を研る試薬としても用いることができる。
【0077】
本発明の抗体は、以下の通り医薬として用いることができる。本発明の抗体を医薬として用いる場合には、本発明のタンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害することができる抗体(即ち、中和抗体)を用いることが必要である。
【0078】
本発明の抗体は、例えば、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症などの、本発明のタンパク質の発現異常に起因する望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の患者に投与することができる。すなわち本発明によれば、上記の抗体を有効成分として含有する医薬組成物、および該抗体を用いた疾患の治療および/または予防方法が提供される。本発明の医薬組成物は、上記抗体を有効成分として用いて、さらに治療的又は予防的使用のための他の有効成分、および/または不活性成分(例えば、従来の薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、免疫原性アジュバントなど))、生理学的に無毒の安定化剤または賦形剤などを用いて調製することができる。本発明の抗体を含む医薬組成物は、濾過滅菌および凍結乾燥し、投薬バイアル中に、または安定化水性調製物中の貯蔵物として、投薬形態に製剤化することができる。
【0079】
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などの当業者に公知の方法により行うことができる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。本発明の抗体は、本発明のタンパク質により仲介される望ましくない血管新生を阻害することにより治療効果を示す。
【0080】
本発明のDNAは、細胞内シグナリングプロセスに関与する他のタンパク質を単離、同定、クローン化することにも使用できる。例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、コードされたタンパク質を「ベイト(bait)」として用いて、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから、本発明のタンパク質に結合できるタンパク質をコードする他の配列「プレイ(prey)」を単離し、クローン化する酵母ツーハイブリッドシステム(例えばNature、340:245−246(1989))に用いることができる。同様の方式で、本発明のタンパク質が、他の細胞タンパク質に結合できるかどうかも決定することができる。あるいは別の方法として、本発明のタンパク質の抗体を用いた免疫沈降法(例えば、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によって、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を細胞抽出物から単離する方法が挙げられる。さらに別の方法として、上記に記載のように、本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として発現させ、融合タンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降法を行ない、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を単離する方法が挙げられる。
【0081】
本発明によれば、(a)個体のゲノムにおける本発明のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定する工程;および/または(b)個体に由来するサンプル中での該遺伝子の発現量を分析する工程を含む、該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した疾病または該疾病への感受性の診断方法が提供される。
【0082】
本発明の診断方法では、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する機能を持つ本発明のタンパク質の遺伝子中の変異を検出することにより、疾病または該疾病への感受性を診断することができる。さらに、このような疾患は、個体に由来するサンプル中の該遺伝子の発現量をタンパク質レベルまたはmRNAレベルで分析し、発現量の異常な減少または増加を検出することによって診断してもよい。
【0083】
ここで、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する機能を持つ本発明のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定する方法としては、それらの遺伝子のヌクレオチド配列の一部をプライマーとして、RT−PCRを行い、その後通常のヌクレオチド配列決定方法によって配列を決定し、変異の有無を検出できる。あるいは、PCR−SSCP法(Genomics、5:874-879、1989年、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によっても変異の有無を調べることができる。
【0084】
サンプル中の遺伝子の発現の減少または増加は、RNAレベルでのポリヌクレオチドの定量方法として当業者に公知の方法、例えば、RT−PCRなどの核酸増幅法、およびRNase保護法、ノーザンブロット法その他のハイブリダイゼーション法などの方法を用いて測定することができる。宿主に由来するサンプル中のタンパク質レベルの測定に使用することができるアッセイ技術も当業者によく知られており、例えば、ラジオイムノアッセイ、競合的結合測定法、ウェスタンブロット分析およびELISAアッセイなどが挙げられる。タンパク質レベルでの発現量を調べる場合には、前記した本発明の抗体を利用して測定することができる。
【0085】
サンプル中の遺伝子の発現量の異常の程度は特に限定されないが、本発明の一実施態様によれば、発現するタンパク質の量が正常の2倍以上、あるいは1/2以下の場合に病気であると診断することができる。本発明の別の実施態様によれば、発現するタンパク質の量が正常の3倍以上あるいは1/3以下の場合に病気であると診断することができる。
【0086】
本発明のDNAは、本発明のDNAを用いることによって、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、増加あるいは発現過多などの遺伝子診断に有用である。
【0087】
個体のゲノムにおける本発明のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定した結果、当該遺伝子中に変異がある場合には、該変異がVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の制御に関連した疾病を引き起こす可能性がある。
【0088】
また、個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析した結果、当該発現量が正常値と異なる値を示す場合は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を持つ本発明の新規タンパク質の発現量の異常がVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現に関連した疾病の原因となる可能性がある。
【0089】
また、本発明は、本発明のタンパク質によるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物のスクリーニング方法も含む。
【0090】
このスクリーニング方法は、
(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、シグナル量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、
を含む。
シグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化化合物として選択し、2分の1以下に減少させる化合物を阻害化合物として選択することが好ましい。さらに、シグナルを正常より3倍以上増加させる化合物を活性化化合物として選択し、3分の1以下に減少させる化合物を阻害化合物として選択してもよい。
【0091】
VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子としては、例えばレポーター遺伝子が挙げられる。レポーター遺伝子は、テストを行なう転写因子の活性化を直接検出する代わりに用いられるもので、調べたい遺伝子のプロモーターをレポーター遺伝子につなぎ、レポーター遺伝子の産物の活性を測定することによってプロモーターの転写活性の解析を行なうものである(バイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))。
【0092】
レポーター遺伝子としては、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド又はタンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等の酵素活性を測定することで利用できる。VEGFおよび/またはVEGF受容体発現の促進を評価するのに用いるレポータープラスミドとしては、VEGFの主要なプロモーターであるHREをレポーター遺伝子の上流に組み込んだもの、あるいはKDRの上流配列をレポーター遺伝子の上流に組み込んだものを細胞内に導入することにより利用できる。
【0093】
宿主細胞としては、VEGFおよび/またはVEGF受容体発現の促進を検出することができる細胞であればよく、好ましくは、哺乳動物細胞であり、例えばECV304細胞が好適に用いられる。形質転換及び培養に関しては、上記に記載の通りである。
VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物のスクリーニングは、具体的には、例えば、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することにより、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングすることができる。レポーター活性の測定は、当業者に公知の方法(例えばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))で行なうことができる。
【0094】
スクリーニングの被検物質には特に制限はなく、低分子化合物、ペプチドなどが挙げられる。被検化合物は、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであってもよい。また単一物質でも、混合物でもい。例えば、低分子化合物のライブラリー、コンビナトリアルケミストリーにより合成され化合物ライブラリー、細胞、植物、動物またはその一部を含む天然物、又は当該天然物由来の抽出物などを用いることもできる。複数の化合物を含む混合物をスクリーニングの被験物質として用いた場合には、本発明のタンパク質によるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性が認められた被験物質についてさらにスクリニーングを行うことにより、該活性を有する単一物質を単離することができる。また、混合物から目的化合物を単離、精製するには、自体公知の方法、例えぱ濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行なうことができる。
【0095】
また、本発明のスクリーニング法は以下の工程で行うこともできる。
(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。
【0096】
上記方法の場合には、検出可能なシグナルの検出方法としてレポーター遺伝子アッセイを用いる代わりに、VEGFあるいはVEGF受容体を検出する抗体を用いたELISAアッセイやウエスタンブロットアッセイを行うことによりVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定することができる。
【0097】
さらに本発明によれば、
(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入することにより形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、導入遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較してシグナルの量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。
を含む、医薬組成物を製造する方法が提供される。
【0098】
また本発明においては、シグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物として選択し、2分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として選択することが好ましい。あるいは、シグナルを正常より3倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物として選択し、3分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として選択してもよい。
【0099】
mRNA量の測定は、例えばノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法などが挙げられる。タンパク量の測定は例えば抗体を用いる方法が挙げられる。抗体は公知の方法によって作製してもよいし、市販のもの(例えば和光純薬工業株式会社)を使用することもできる。
【0100】
本発明のタンパク質は、以下の工程により、該タンパク質のアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤を、構造を基礎にして設計する方法に使用してもよい。
(a)まず、タンパク質の三次元構造を決定する工程、
(b)アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の反応性部位または結合部位と思われる部位の三次元構造を推論する工程、
(c)推論した結合部位または反応性部位に結合するかあるいは結合すると予測される候補化合物を合成する工程、および
(d)該候補化合物が本当にアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤であるか否かを試験する工程。
【0101】
また本発明によれば、上記スクリーニングによって選択された化合物が提供される。該化合物は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する。さらに詳細には、該化合物は、本発明のタンパク質により促進されたVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する。
【0102】
上記スクリーニングによって得られた化合物は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する作用を有しているので、VEGFおよび/またはVEGF受容体の望ましくない発現に起因する疾患を治療または予防するための医薬として有用である。
【0103】
化合物の塩を取得したい時は、化合物が塩の形で得られる場合にはそのまま精製すれば良く、また遊離の形で得られる場合には、通常の方法により適当な溶媒に溶解または懸濁し、所望の酸または塩基を添加し、塩を形成させて単離精製すればよい。本発明の方法を用いて得られる化合物またはその塩を、医薬組成物として調製する工程としては、例えば以下のように常法により製剤化することが挙げられる。すなわち活性成分として有効な量の上記化合物またはその薬理的に許容される塩と、薬理的に許容される担体とを混合すればよい。また製剤化は選択された投与様式に適した形態が選ばれる。経口投与に適した組成物としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、および散剤などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、乳剤、および懸濁液剤が挙げられる。上記の担体としては、例えばゼラチン、乳糖、グルコース等の糖類、コーン・小麦・米・とうもろこし澱粉等の澱粉類、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、タルク、植物油、ステアリンアルコール・ベンジルアルコール等のアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらのうち液状担体の例としては、一般に水、生理食塩水、デキストロースまたは類似の糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。
【0104】
本発明によれば、VEGFまたはVEGF受容体の発現を促進あるいは阻害する活性を有する化合物をスクリーニングするためのキットも提供される。該キットは、(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を導入した形質転換細胞、および(b)上記シグナルを測定するための試薬、から成るものであり、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングするために必要な試薬類を含む。
【0105】
別の側面において、本発明は、
(a)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73,75で表わされるヌクレオチド配列を有する本発明のポリヌクレオチド;
(b)(a)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74,76で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質またはそれらの断片;または
(d)(c)の本発明のタンパク質に対する抗体;
を含む診断キットに関する。
【0106】
少なくとも(a)〜(d)のいずれかを含むキットは、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性または該疾患への感受性を診断するのに有用である。血管新生は、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの多種の病理学的状態におけるその関与のため、薬物デザイン及び治療介在のための魅力的な標的である。多数の実験が、血管新生が深い生理学的作用を有し得ることを示している(例えば、Ferraraら、Endocr.Rev., 13:18-32(1992), Dovorakら、Am.J.Pathol., 146:1029-1039(1995), Thomasら、J.Biol.Chem., 271:603-606(1996))。
【0107】
本明細書中に報告するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する新規タンパク質の発見により、異常な血管新生を阻害する新しい方法が提供された。さらなる具体例において、本発明は、異常な血管新生を阻害するための前記のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質の機能を阻害する化合物を用いる方法に関する。上記スクリーニング方法によって得られた、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害する化合物は、例えば固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの、望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患を治療または予防する医薬として有用である。
【0108】
血管新生は虚血状態によるある種の病態を改善する場合があることが知られており、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する化合物は、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症などを治療する効果が期待される。
【0109】
更に、本発明のタンパク質をコードする遺伝子は、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病を初めとする様々な疾患の治療を目的とした遺伝子治療にも有用である。遺伝子治療とは、疾病の治療を目的として、遺伝子または遺伝子を導入した細胞をヒトの体内に投与することを意味する。本発明のタンパク質や該タンパク質をコードするDNAは、診断目的にも使用できる。即ち、本発明によれば、本発明のタンパク質をコードする遺伝子を含む遺伝子治療剤が提供される。
【0110】
遺伝子治療剤の形態は特に限定されないが、例えば、生理緩衝液から成る薬剤キャリア中に本発明の遺伝子を含む発現ベクターを含む医薬組成物などが挙げられる。薬剤キャリアとしては、その他に適当な安定剤(例えば、ヌクレアーゼ阻害剤など)、キレート剤(例えば、EDTAなど)、及び/又はその他の助剤も含むことができる。あるいはまた、本発明の遺伝子治療剤は、本発明の遺伝子を含む発現ベクターとリポソームとの複合体として供給してもよい。上記した遺伝子治療剤は、例えば、カテーテルを利用して適用することもできる。例えば、本発明の遺伝子治療剤を患者の血管などに直接に注入することも可能である。
【0111】
本発明の遺伝子治療剤の投与量は患者の年齢、性別、体重、症状、及び投与経路などの条件に応じて適宜増減されるべきであるが、一般的には、成人1回当たりは有効成分のDNA量として1μg/kgから1000mg/kg程度の範囲であり、好ましくは10μg/kgから100mg/kg程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
【0112】
本発明のスクリーニング方法で選択された化合物またはその塩を上述の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。たとえば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。すなわち本発明は、上記化合物を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0113】
さらに、上記化合物は、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの、望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の治療および/または予防のための医薬として有用である。すなわち本発明は、上記化合物を含む腫瘍、炎症、虚血性疾患などの医薬に関する。具体的には、例えば固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病などに対する治療及び/または予防薬として有用である。
【0114】
さらにまた、本発明によれば、例えば固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病などの望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の治療または予防する医薬の製造における、上記化合物の使用も提供されれ。
【0115】
また本発明によれば、上記(3)〜(6)に記載のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用は標的としたヌクレオチド配列に対して相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドであり、これを用いることにより、タンパク質への翻訳、細胞質への輸送、あるいは全体的な生物活性機能に必要な他の活性等のRNAの機能を阻害することによって、標的遺伝子の発現を抑制することができる。この際、アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、RNAを用いてもよいし、DNAを用いてもよい。本発明のDNA配列は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNAとハイブリダイズし得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために使用できる。一般にアンチセンスオリゴヌクレオチドが、その遺伝子の発現に対して抑制的に作用することは公知での事実である(例えば、細胞工学 Vol.13 No.4(1994))。本発明のタンパク質をコードする遺伝子に対するアンチセンスコード配列を有するオリゴヌクレオチドは、標準の方法で細胞内に導入することができ、該オリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子のmRNAの翻訳を効果的に遮断して、その発現を遮断して、望ましくない作用が阻害される。
【0116】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然に見出されるオリゴヌクレオチドの他に、修飾されたものであっても良い〔例えば、村上&牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996))。従って、オリゴヌクレオチドは変化した糖部分あるいは糖間部分を有していてもよい。これらの例は、当該技術分野において使用が知られているホスホチオエート及び他のイオウ含有種である。幾つかの好ましい態様に従えば、オリゴヌクレオチドの少なくとも一つのホスホジエステル結合が、その活性が調節されるべきRNAが位置する細胞の領域に浸透する組成物の能力を高める機能を有する構造により置換される。
【0117】
このような置換は、ホスホロチオエート結合、ホスホロアミデート結合、メチルホスホネート結合または短鎖アルキルもしくはシクロアルキル構造を含むことが好ましい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、少なくとも幾つかの修飾されたヌクレオチド型を含んでいても良い。従って、天然に通常見いだされるもの以外のプリン及びピリミジンを使用していても良い。同様に本発明の本質的な意図が実行される限り、ヌクレオチドサブユニットのフラノシル部分を修飾することもできる。このような修飾の例は、2’−O−アルキル−、及び2’−ハロゲン置換ヌクレオチドである。本発明において有用な幾つかの糖部分の2’位の修飾の例は、OH、SH、SCH3、OCH3、OCN、またはO(CH2)nCH3(ここでnは1から約10である)、及び同様の特性を有する他の置換基である。全てのこのような類似体は、本発明の遺伝子のmRNAとハイブリダイズしてそのRNAの機能を阻害する機能を果たす限り、本発明に包含される。
【0118】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約3から約50ヌクレオチドを含み、約8から約25ヌクレオチドを含むことが好ましく、約12から約20ヌクレオチドを含むことがさらに好ましい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、周知の方法である固相合成法により作製することができる。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含む幾つかの業者により販売されている。ホスホチオエート等の他のオリゴヌクレオチドの製造も当業者に公知の方法で作製できる。
【0119】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の遺伝子から転写されるmRNAとハイブリダイズできるように設計される。与えられた遺伝子の配列に基づいてアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する方法は、当業者であれば容易である〔例えば、村上および牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996)〕。最近の研究は、mRNAの5’領域、好ましくは翻訳開始部位を含む領域に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが、遺伝子の発現の阻害に最も効果的であることを示唆している。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、15から30ヌクレオチドが好ましく、20から25ヌクレオチドがより好ましい。ホモロジー検索で他のmRNAとの相互作用がないこと、オリゴヌクレオチド配列内で二次構造を取らないことを確認しておくことは重要である。設計したアンチセンス分子が機能したかどうかの評価は、適当な細胞を用いて、該細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、当業者には公知の方法で、対象mRNAの量(例えば、ノーザンブロットまたはRT−PCR法)、あるいは対象タンパク質の量(例えば、ウエスタンブロットまたは蛍光抗体法)を測定することにより、発現抑制の効果を確認できる。
【0120】
一方、三重らせん形成(トリプル・ヘリックス技術)は、核内のDNAを標的とした、主に転写の段階での遺伝子発現制御方法である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、主に転写に関与する遺伝子領域に設計され、それにより、転写及び本発明のタンパク質の産生を抑える。これらのRNA、DNA、オリゴヌクレオチドは、公知の合成装置などを用いて製造することができる。
【0121】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列を含む細胞に、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法などのDNAトランスフェクション法、またはウイルスなどの遺伝子導入ベクターの使用を含む遺伝子導入法のいずれを用いて導入してもよい。適切なレトロウイルスベクターを用いてアンチセンスオリゴヌクレオチド発現ベクターを作製し、その後、該発現ベクターを細胞とin vivoまたはex vivoで接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入できる。
【0122】
本発明のDNAは、アンチセンスRNA/DNA技術またはトリプル・へリックス技術を用いて、本発明のタンパク質を介する血管新生を阻害する目的で使用できる。
本発明のタンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病などの、望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち、本発明によれば、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬が提供される。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法を用いてそれらの疾病の検出に利用することもできる。
【0123】
本発明によれば、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害するリボザイムまたはデオキシリボザイムが提供される。リボザイムおよびデオキシリボザイムは、核酸のヌクレオチド配列を認識して、核酸を切断する活性を持つRNAまたはDNAである(例えば、柳川弘志、実験医学バイオサイエンス12、RNAのニューエイジ)。リボザイムまたはデオキシリボザイムは、選択された標的RNA、例えば本発明のタンパク質をコードするmRNAを開裂するように製造することができる。本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列を基に、本発明のタンパク質のmRNAを特異的に切断するリボザイムまたはデオキシリボザイムを設計することができ、当該リボザイムまたはデオキシリボザイムは本発明のタンパク質のmRNAに対して相補的な配列を有し、該mRNAと相補的結合し、ついで該mRNAが開裂され本発明のタンパク質の発現が減少し(または完全に発現せず)、発現減少のレベルは標的細胞内でのリボザイムまたはデオキシリボザイムの発現のレベルに依存している。
【0124】
よく用いられるリボザイムまたはデオキシリボザイムには、ハンマーヘッド型とヘアピン型の2種類があり、特にハンマーヘット型リボザイムまたはデオキシリボザイムは切断活性に必要な一次構造や二次構造がよく調べられており、当業者であれば、本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列情報のみで容易にリボザイムまたはデオキシリボザイムの設計が可能である〔例えば、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)〕。ハンマーヘッドリボザイムまたはデオキシリボザイムは、標的RNAと相補鎖を形成する2ヶ所の認識部位(認識部位Iと認識部位II)と活性部位からなる構造をなし、標的RNAと認識部位で相補対を形成した後、標的RNAのNUXの配列(N:AまたはGまたはCまたはU、X:AまたはCまたはU)の3’末端側で切断することが知られており、特にGUC(あるいはGUA)が一番高い活性を持つことが知られている〔例えばKoizumi,Mら:Nucl. Acids Res.17,7059-7071(1989)、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)、川崎&多比良:実験医学 Vol.18 No.3p381-386 (2000)〕。
【0125】
そこでまず、本発明のDNA配列の中からGTC(またはGTA)の配列を探し出し、その前後で数ヌクレオチドから十数ヌクレオチドの相補対をつくることができるようにリボザイムまたはデオキシリボザイムを設計する。設計したリボザイムまたはデオキシリボザイムの適切性の評価は、例えば、大川&平比良の文献〔実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994) 〕に記載の方法によって、作製したリボザイムまたはデオキシリボザイムが、in vitroで標的mRNAを切断できるかどうかを調べることで評価できる。リボザイムまたはデオキシリボザイムの調製は、RNA分子を合成するための当分野で周知の方法により調製する。
【0126】
別法としては、リボザイムまたはデオキシリボザイムの配列をDNA合成機で合成し、例えばT7或いはSP6のような適切なRNAポリメラーゼプロモータを有する多種のベクターに組み込み、in vitroで酵素的にRNAを合成させる方法が挙げられる。これらのリボザイムまたはデオキシリボザイムは、例えばマイクロインジェクション法などの遺伝子導入方法によって細胞内に導入できる。あるいは別の方法として、リボザイムまたはまたはデオキシリボザイムをコードするDNAを適当な発現ベクターに組み込んで、株細胞、細胞或いは組織内に導入する。選択された細胞中にリボザイムまたはデオキシリボザイムを導入するのに、適切なベクターを使用することができ、例えばプラスミドベクター、動物ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスあるいはワクシニアウイルス)ベクターがこれらの目的に通常用いられる。これらのリボザイムまたはデオキシリボザイムは、本発明のタンパク質で仲介されるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害する作用を有する。すなわち、本発明によれば、上記リボザイムまたはデオキシリボザイムを有効成分として含有する医薬が提供される。
【0127】
本発明のcDNAは、完全長cDNAであるため、その5’末端の配列がmRNAの転写開始点であり、該cDNA配列をゲノムのヌクレオチド配列と比較することにより、該遺伝子のプロモーター領域を同定することに利用できる。ゲノムのヌクレオチド配列は、データベースに公知の配列として登録されている場合はその配列を利用できる。あるいは、該cDNAを用いて例えばハイブリダイゼーションによってゲノムライブラリーからクローニングし、ヌクレオチド配列を決めることもできる。このようにして、本発明のcDNAのヌクレオチド配列をゲノムの配列と比較することによって、その上流に存在する該遺伝子のプロモーター領域を同定することが可能である。さらに、このようにして同定した該遺伝子のプロモーター断片を用いて該遺伝子の発現を調べるレポータープラスミドを作製することができる。レポータープラスミドは、大方の場合、転写開始点からその上流2kb、好ましくは転写開始点からその上流1kbのDNA断片をレポーター遺伝子の上流に組み込むことによって作製できる。さらに該レポータープラスミドは、該遺伝子の発現を増強あるいは減弱させる化合物のスクリーニングに利用できる。具体的には例えば、該レポータープラスミドで適当な細胞を形質転換し、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することによりスクリーニングすることができる。これらの方法も本発明に含まれる。
【0128】
さらに本発明は、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体に関する。
【0129】
さらに本発明は、上記に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列のデータを比較して相同性の算出を行う方法に関する。すなわち、本発明の遺伝子およびアミノ酸配列は、その2次元および3次元構造を決定し、例えば同様の機能を有する相同性の高いさらなる配列を同定するための貴重な情報源となる。これらの配列をコンピュータ読み込み可能媒体に保存し、ついで既知の高分子構造プログラムにおいて保存したデータを用いて、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))のような既知検索ツールを用いてデータべースを検索すれば、データベース中の、ある相同性を有する配列を見出すことは容易である。
【0130】
コンピュータ読み取り可能媒体は情報またはデータを保存するのに用いる物体のいずれの組成物であってもよく、例えば、市販フレキシブルディスク、テープ、チップ、ハードディスク、コンパクトディスク、およびビデオディスク等がある。また、本媒体上のデータは、他のヌクレオチド配列のデータと比較して相同性の算出を行なう方法を可能にする。この方法には、本発明ポリヌクレオチド配列を含む第一のポリヌクレオチド配列をコンピュータ読み込み可能媒体中に提供し、次いで、該第一のポリヌクレオチド配列を少なくとも一つの第二のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を同定する工程を含む。
【0131】
本発明はまた、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質に関する。DNAプローブである複数の各種ポリヌクレオチドがスライドガラス等の特別に加工された基質上に固定され、次いで標識された標的ポリヌクレオチドを、固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせ、それぞれのプローブからのシグナルを検出する。得られるデータは、解析され、遺伝子発現が測定される。
【0132】
本発明はさらにまた、配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質に関する。このタンパク質を固定した不溶性基質と、生物由来の細胞抽出液とを混合し、不溶性基質上に捕獲された、診断あるいは新薬開発のために有効であることが期待されるタンパク質を、単離あるいは同定することができる。
【0133】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)オリゴキャッピング法を用いた完全長cDNAライブラリーの作製
(1)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からのRNA調製
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC:三光純薬株式会社より購入)を、添付のプロトコールに従って培養した。10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、セルスクレーパーで細胞を回収した。次いで、回収した細胞からRNA抽出用試薬ISOGEN(ニッポンジーンより購入)を用いて全RNAを取得した。取得の具体的方法は、試薬のプロトコールに従った。次いで、オリゴ−dTセルロース カラムを用いて、全RNAからポリA+RNAを取得した。ポリA+RNA取得の具体的方法は、上記Maniatisの実験書に従った。
【0134】
(2)オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製
上記ポリA+RNAから、オリゴキャッピング法により完全長cDNAライブラリーを作製した。オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製の具体的方法は、菅野らの方法〔例えば、Maruyama,K.& Sugano,S.Gene,138:171-174(1994)、Suzuki、Y.et al.Gene、200:149-156(1997)、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版〕に従って作製した。
【0135】
(3)プラスミドDNAの調製
上記(2)で作製した完全長cDNAライブラリーを、エレクトロポレーション法によって大腸菌TOP10株に形質転換した後、100μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。続いて、アンピシリン含有LB寒天培地上で生育した大腸菌のコロニーから、QIAGEN社のQIAwell 96 Ultra Plasmid Kitを用いてプラスミドを回収した。具体的方法は、QIAwell 96 Ultra Plasmid Kitに添付のプロトコールに従った。
【0136】
(実施例2)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するDNAのクローニング
(1)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするcDNAのスクリーニング
ECV304細胞(INVITROGEN社より購入)を細胞培養用96穴プレートに1×104Cells/wellとなるように、10%FBS存在下のDMEM培地を用い、24時間37℃で培養した(5%CO2存在下)。次いで、FuGENE6(Roche社より購入)を用いて、pGL3HRE-Luc(Promega社より購入)75ng、pGL3KDR-Luc(Promega社より購入)5ng、及び上記実施例1.(2)で調製した完全長cDNA2μlを1ウエルに共導入した。導入の方法は添付のプロトコールに従った。48時間37℃で培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステム、ピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて添付されている説明書に従い、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を反映するレポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を測定した。なおルシフェラーゼ活性は、Perkin Elmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて行った。
【0137】
(2)ヌクレオチド配列の決定
上記スクリーニングを115、000クローン行い、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAの代わりに、空ベクターpME18S−FL3を導入した細胞のルシフェラーゼ活性)と比べて2倍以上上昇しているプラスミドを選抜し、まず、クローニングされているcDNAの5’側(シークエンスプライマ−:5’-CTTCTGCTCTAAAAGCTGCG-3’(配列番号77))と3’側(シークエンスプライマ−:5’-CGACCTGCAGCTCGAGCACA-3’(配列番号78))からそれぞれone−passシークエンスを行ない、できる限り長く決定した。なお、ヌクレオチド配列決定のための試薬や方法は、Thermo Sequenase II Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(アマシャム ファルマシア社)、あるいはBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(アプライドバイオシステムズ社)を用い、ABI PRISM 377シークエンサー、あるいは、ABI PRISM 3100シークエンサーを用い、各々キットに添付されている説明書に従って行なった。
【0138】
(3)得られたクローンのデータベース解析
得られたヌクレオチド配列について、GenBankに対するBLAST(Basic local alignment search tool)〔S. F. Altschul et al., J. Mol. Biol., 215: 403-410 (1990) 〕検索を行なった。その結果、クローンがVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する新規のタンパク質をコードする種類の遺伝子であった。
【0139】
(4)全長シークエンス
37種類の新規のクローンについて全長ヌクレオチド配列(配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73,75)を決定し、タンパク質をコードする部分(オープンリーディングフレーム)のアミノ酸配列(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74,76)を予想した。
【0140】
(実施例3)VEGFの発現を阻害する化合物のスクリーニング
ECV304細胞を細胞培養用96wellプレートに1x10E4cells/100μl/wellの細胞数になるように、10%FBS存在下のM199培地にまき、5%CO2存在下、37℃で24時間培養した。次いで、FuGENE6を用いて、上記実施例2のスクリーニングで得たVEGF発現を促進する作用を有することが明らかとなったタンパク質Serum/glucocorticoid regurated kinaseをコードする遺伝子を含有するプラスミド100ngと、pGL3HRE-LucPromega75ngを1wellに共導入した。1時間以内にスクリーニング対象化合物1000個を終濃度10μMになるようそれぞれのWellに加え、37℃で48時間培養後、ピッカジーンLT2.0を用いてレポーター活性を測定した。その結果、1個の化合物がレポーター活性を50%以上阻害し、その構造を調べたところ、各種プロテインキナーゼを強力に阻害するスタウロスポリンであることが判った。
【0141】
【発明の効果】
本発明により、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質やそれらの遺伝子が提供された。これらのタンパク質、遺伝子は、産業上有用性の高い血管新生を促進する作用を有する可能性が高い。本発明のタンパク質やそれらの遺伝子により、望ましくない血管新生が関与する疾患の治療や予防に有用な化合物のスクリーニング、さらにそのような疾患の診断薬を作製することが可能である。更に本発明の遺伝子は、遺伝子治療に用いられる遺伝子ソースとしても有用である。
【0142】
【配列表フリーテキスト】
配列番号77:プライマー
配列番号78:プライマー
【0143】
【配列表】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
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【0161】
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【0170】
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【0174】
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【0179】
【0180】
【0181】
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【0183】
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【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【発明の属する技術分野】
本発明は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAの取得方法、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体ならびに該蛋白質と反応する抗体に関する。また、本発明は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の過剰な発現またはその発現の阻害が関与する疾患の診断、治療または予防を行う際の本発明のタンパク質、DNAまたは抗体の使用に関する。また本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血管新生とは、一般に、既存の血管におけるプロテアーゼによる血管の基底膜の消化、破壊、血管内皮細胞の遊走、増殖、細胞外マトリックスへの接着および血管内皮細胞の分化による管腔形成などの過程を経て、新しい血管網が形成されることである。正常な状態では子宮や卵巣などの女性生殖器や、創傷治癒などの特殊な場合でしか認められない現象であるが、ある種の病態においては顕著な血管新生が認められる。
【0003】
血管系が新たに構築される現象である血管新生が、発症や進展にかかわっている疾患は多く、例えば固形腫瘍が増大するためには、血管新生によって酸素や栄養の供給が行われ、老廃物が除去されることが必須である。さらに、癌細胞の転移においても血管新生が重要な役割を担っている。また、糖尿病性網膜症においては、新生血管が網膜組織を破壊し、後天的な失明の主要な原因となっている。したがって、病的な血管新生を抑制することが上記疾患の治療や予防に結びつくと考えられ、現在ではいくつかの血管新生阻害剤が、臨床上での有効性について検討されている。
【0004】
一方、動脈硬化や血栓などにより虚血状態に陥った心臓、脳および末梢の組織では、生理的な血管新生により側副血行路が発達し、虚血状態の改善が図られる。しかしながら、この生理的な血管新生は一般に不十分であることが多く、積極的な血管新生の促進が、虚血に起因する疾患の治療となりうる
【0005】
実際に生体内で血管新生を促進する代表的な増殖因子としてVEGF(Vascular endotherial growth factor)が挙げられる。VEGFはほとんど血管内皮細胞のみを標的とする特異的血管成長形成因子である(Ferraraら、Endocr.Rev., 13:18-32(1992), Dovorakら、Am.J.Pathol., 146:1029-1039(1995), Thomasら、J.Biol.Chem., 271:603-606(1996))。VEGFは、胎児の成長(Peterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:8915-8519(1991))、組織の修復(Brownら、J.Exp.Med., 176:1375-1379(1992))、月経周期および妊娠(Jacksonら、Placenta, 15:341-353(1994), Cullinan & Koos, Endocrinilogy, 133:829-837(1993)などの成長する組織中での正常な血管新生に関与する。VEGF遺伝子を破壊されたマウスでは、胚における異常な血管の発達により死に至り(Carmeliet1ら、Nature, 380:435-438(1996))、VEGFが血管新生において必須の役割を演じていることが示されている。また、VEGFは血管内皮細胞膜上に存在するチロシンキナーゼ型受容体KDRと結合することにより活性を付与し、細胞内のシグナル伝達を経て血管新生を促進する。
【0006】
したがって、VEGFおよびKDRの発現が血管新生に必須であり、これらのタンパク分子の発現制御の仕組みを解明することは、病的血管新生や虚血性疾患に対する新たな医薬の開発あるいは治療法の開発に非常に重要な手段を提供することとなり、極めて重要な意義を有している。
【0007】
VEGFはその遺伝子の上流にHypoxia responsible element(HRE)と呼ばれる、低酸素に反応してプロモーター活性を発現する配列を持ち、このプロモーターがVEGFの発現において重要な役割を担っていることが知られている(Forsytheら、Mol.Cell.Biol.16:4604-4613(1996))。しかしながら、細胞が一定の刺激を受けてからVEGFまたはVEGF受容体の発現に至るまでのシグナル伝達経路には様々な伝達分子が関わる多くのステップの存在が考えられ、したがって、より効率的な創薬研究のためには、主要な役割を果たす伝達分子を明らかにした上でそれらに焦点を絞った新しい薬物のスクリーニング方法を確立することが望まれる。しかし、VEGFまたはVEGF受容体の発現を制御するシグナル伝達分子については、酸素感受性のプロリンヒドロキシラーゼなどの分子が同定され、少しずつ解明されつつあるものの、いまだ不明な点が多く、新たなシグナル伝達分子の同定と、より進んだVEGFまたはVEGF受容体の発現制御メカニズムの解明が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、血管新生を促進する作用を有する上記のように有用な新規な遺伝子およびタンパク質を見出し、これを医薬、診断薬、医療の分野で利用する方法を提供することにある。即ち、本発明の課題は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の製造方法、該タンパク質またはその部分ペプチドに対する抗体、該抗体の製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の別の課題は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法、該スクリーニング用キット、該スクリーニング方法もしくはスクリーニング用キットを用いて得られるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質、該物質の製造方法、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する物質を含有している医薬などを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
近年、生体内で発現している遺伝子を解析する手段として、cDNAの配列をランダムに解析する研究が活発に行われており、このようにして得られたcDNAの断片配列がEST(Expressed Sequence Tag、例えばhttp//www.ncbi.nlm.nih.gov/dbEST)として、データベースに登録され公開されている。しかし、ESTは配列情報のみであり、その機能を推定することは困難である。また、ESTはUniGene(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)により整備され、これまでに約9万5千種のESTが登録されている。しかし、その多くは5’末端ヌクレオチド配列を欠損しており、タンパク質翻訳開始部位を含まない。そのため、mRNAのコード領域の決定を前提とするタンパク質の機能解析、プロモーターの解析による遺伝子発現制御の理解といった遺伝子機能の解析に直結しているとは言いがたい。
【0011】
一方、遺伝子の産物、すなわちタンパク質の機能を解明する方法の一つに、動物細胞を用いた一過性発現クローニング法がある(例えば、実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック)。この方法は、動物細胞発現ベクターを用いて作製したcDNAライブラリーを、動物細胞にトランスフェクションすることで機能的なタンパク質を直接発現させ、このタンパク質が細胞に及ぼす生物活性を指標としてcDNAを同定、クローニングする方法である。この方法では、目的とするタンパク質産物に関する化学的情報(アミノ酸配列や分子量)をあらかじめ必要とせず、細胞内や培養液中に発現しているタンパク質の特異的生物活性を検出してcDNAクローンの同定を行うことができる。
【0012】
この発現クローニングを効率よく行なうためには、cDNAライブラリーの作製方法を工夫する必要がある。なぜなら、従来より汎用されているcDNAライブラリー作製方法には幾つかの方法があるが(例えばGubbler-Hoffmanの方法:Gene 25(1983)オカヤマ−バーグの方法:Mol.Cell.Biol.2(1982))、これらの方法によって作製されたcDNAは、そのほとんどが5’末端ヌクレオチド配列を欠損したものであり、完全長(mRNAの全ヌクレオチド配列を含む)であることは稀であるからである。その理由は、mRNAからcDNAを作るのに使用する逆転写酵素が、必ずしも完全長のcDNAを作りあげうるほど効率が高くないからである。
【0013】
さらに、遺伝子の機能解析を試みるに際しては、完全長cDNAをクローニングし、そこから完全な長さを持ったタンパク質を発現させることが必須の要件である。従って、全体のクローンの中で、完全長のものの割合が高いライブラリーを作製することが、発現クローニングを効率よく行なうために必要であった。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製し、ECV304細胞を用いた発現クローニング法による遺伝子機能アッセイ系を完成し、該アッセイ系によりVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードする新規DNA(cDNA)を単離することに成功した。この新規DNAは、ECV304細胞内で発現させることによりVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を誘発した。この結果は、この新規DNAがVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用に関与するシグナル伝達分子であることを示している。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0015】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつVEGF(Vascular endotherial growth factor)またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質。
(2) (1)記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する精製されたタンパク質。
【0016】
(3) 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつVEGF(Vascular endotherial growth factor)またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質。
【0017】
(4) 以下の(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のいずれかで表されるポリヌクレオチド配列。
(b)(a)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
(c)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のいずれかにおいて、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列からなり、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
【0018】
(5) (3)記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(6) (4)記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(7) (3)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
【0019】
(8) (3)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
(9) (8)記載の組換えベクターを有効成分として含有する遺伝子治療剤。
(10) (8)記載の組換えベクターを含む形質転換細胞。
(11) 膜タンパク質である(1)又は(2)に記載のタンパク質を有する、(10)記載の細胞の膜。
(12) (a)(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質を発現する条件下で(10)に記載の形質転換細胞を培養する工程;および
(b)培養物からタンパク質を回収する工程:
を含む、(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質の製造方法。
【0020】
(13) (a)個体のゲノムにおける(1)、(2)または(7)に記載のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定する工程;および/または(b)個体に由来するサンプル中での該遺伝子の発現量を分析する工程を含む、該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した疾病または該疾病への感受性の診断方法。
【0021】
(14) 以下の工程を含むVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、シグナル量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。
【0022】
(15) 以下の工程を含むVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。
【0023】
(16) (14)または(15)に記載のスクリーニング方法により選択される、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物。
(17) 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入することにより形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、導入遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較してシグナルの量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。
【0024】
(18) 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。
【0025】
(19) VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングするためのキットであって、(a)(1)、(2)又は(7)に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を導入した形質転換細胞、および(b)上記シグナルを測定するための試薬、を含む上記のキット。
【0026】
(20) (1)、(2)または(7)に記載のタンパク質を認識するモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片。
(21) (1)、(2)または(7)に記載のタンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害する、(20)に記載のモノクローナルあるいはポリクローナル抗体またはその断片。
(22) (1)、(2)または(7)に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することを含む、(20)または(21)に記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
【0027】
(23) VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質の発現を阻害する、(3)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドの一部に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド。
(24) (1)、(2)または(7)記載のタンパク質をコードするRNAを開裂する作用を有し、それにより該タンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害するリボザイム又はデオキシリボサイム。
【0028】
(25) 治療又は予防上有効な量の、(14)または(15)記載のスクリーニング方法で選択された化合物、および/または(17)または(18)記載の方法により製造された医薬組成物、および/または(21)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片、および/または(23)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または(24)記載のリボザイム又はデオキシリボザイムを個体に投与することを含む、VEGFおよび/またはVEGF受容体の異常な発現に関連した疾患の治療及び/又は予防方法。
(26) VEGFおよび/またはVEGF受容体の異常な発現に関連した疾患が、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患である、(25)に記載の方法。
【0029】
(27) VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または活性化するための、(17)または(18)記載の方法により製造された医薬組成物。
(28) 固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患の治療および/または予防のための、(27)記載の医薬組成物。
【0030】
(29) (21)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片を有効成分として含有する医薬組成物。
(30) (23)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬組成物。
(31) (24)記載のリボザイムまたはデオキシリボザイムを有効成分として含有する医薬組成物。
(32) 固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患の治療および/または予防のための、(29)から(31)の何れかに記載の医薬組成物。
【0031】
(33) 配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体。
(34) (33)に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列および/または他のアミノ酸配列のデータを比較して他のポリヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列との同一性の算出を行う方法。
【0032】
(35) 配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
(36) 配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。
【0033】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の基本的特徴を更に明らかにするために、本発明の完成に至る経緯を追いながら、本発明について説明する。本発明者は、血管新生を促進する作用を有する新規遺伝子を取得する目的で、実施例に示すように、以下の実験を実行した。
まずヒト正常臍帯静脈血管内皮細胞(三光純薬株式会社より購入)より調製したmRNAより、オリゴキャッピング法によって完全長cDNAを作製し、該cDNAをベクターpME18S-FL3(GenBank Accession AB009864)に組み込んだ完全長cDNAライブラリーを作製した。次に、該cDNAライブラリーを大腸菌に導入し、1クローンずつプラスミドを調製した。次に、ECV304細胞(INVITROGEN社)に、VEGFの主要なプロモーターであるHRE(Hypoxia responsible element)配列をルシフェラーゼをコードする遺伝子の上流に持つレポータープラスミドpGL3HRE-Luc、およびVEGF受容体であるKDR遺伝子の5’領域をルシフェラーゼをコードする遺伝子の上流に持つレポータープラスミドpGL3KDR-Lucと上記の完全長cDNAプラスミドとを共導入した。そして、48時間培養後、ルシフェラーゼ活性を測定し、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAの代わりに、ベクターpME18S−FL3を入れた細胞)と比べて有意に上昇している(対照実験と比べてルシフェラーゼ活性が2倍以上の値を示した)プラスミドを選抜し、該プラスミドにクローニングされているcDNAの全ヌクレオチド配列を決定した。このようにして得られたcDNAによりコードされるタンパク質は、該タンパク質が血管新生を促進する作用に関与するシグナル伝達分子である可能性が高いことが期待できる。
【0034】
次に、以下に本発明について詳細に説明する。
配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74または76のアミノ酸配列に関連して、本発明は、以下のタンパク質を提供する。
【0035】
(a)上記アミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)上記アミノ酸配列の1つを有するペプチド。
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進し、かつ上記アミノ酸配列において、1または複数個、好ましくは数個のアミノ酸の欠失、置換または付加を有するタンパク質。
(d)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進し、かつその全長にわたり上記アミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
【0036】
本明細書で言う“VEGF”とは、ヒトなどの哺乳動物に存在するVEGFを意味するが、好ましくはヒトのVEGFを意味する。
本明細書で言う“VEGF受容体”とは、VEGFが結合することによりVEGFのシグナルを細胞内に伝達し、その結果として血管新生が促進されることになる受容体を意味する。VEGF受容体は通常細胞膜上に存在するものであり、例えば、血管内皮細胞膜上に存在するチロシンキナーゼ型受容体KDRなどが挙げられる。
本明細書で言う“VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進”とは、細胞内におけるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量が遺伝子レベルおよび/またはタンパク質レベルで促進されることを広く意味する。
【0037】
本明細書で言う“同一性”とは、当該技術で知られている通り、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の適合によって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間の適合によって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味する。“同一性”および“類似性”は、既知の方法により容易に決定できる。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最も長く適合するように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。相同性決定には、例えば、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(例えば、Altschul SF, GishW, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990),Altschul SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができるが、これに限定されない。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。
【0038】
BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りであるが、これに限定されない。アミノ酸置換行列とは20種類のアミノ酸の各々のペアの類縁性を数値化した行列であり、通常BLOSUM62のデフォルトマトリックスが用いられる。このアミノ酸置換行列の理論については、Altschul S.F., J. Mol. Biol.,219:555-565(1991)に、DNA配列の比較への適用については、States D.J., GishW., Altschul S.F., Methods, 3:66-70(1991)に示されている。その際の最適なギャップコストは経験的に決定されており、BLOSUM62の場合は好ましくは、Existence11、Extension 1のパラメーターが用いられる。
【0039】
期待値(EXPECT)とは、データベース配列に対してマッチする際の統計的有意性に関する閾値であり、デフォルト値は10である。
上記した配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76に記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質がVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進作用を有することは、本願明細書の実施例に記載の通りである。
【0040】
配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のポリヌクレオチドに関連して、本発明は、また以下の単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0041】
(a)上記配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド。
【0042】
上記ヌクレオチド配列に含まれるヌクレオチド配列に同一またはほとんど同一なポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする全長cDNAおよびゲノムクローンまたは上記配列に対応する相同性の高い他の遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして、または核酸増幅反応のためのプライマーとして使用してもよい。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記配列に70%同一であり、好ましくは、80%同一であり、より好ましくは90%同一であり、最も好ましくは、95%以上同一である。プローブまたはプライマーは、一般的には少なくとも15ヌクレオチドを含有し、好ましくは30ヌクレオチドを含有し、50ヌクレオチドを含有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50ヌクレオチドを有する。特に好ましいプライマーは、20〜25ヌクレオチドを有する。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAおよびクローニングによって得られるか、あるいは合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であってもよく、RNA(例えばmRNA)の形態であってもよい。該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであってもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖としても知られる)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖としても知られる)であってもよい。
【0044】
当業者であれば、公知の方法を用いてこのタンパク質中のアミノ酸の置換などを適宜行い、配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同様にVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質を作製することが可能である。一つの方法としては、該タンパク質をコードするDNAに対して、慣用の突然変異誘発剤を使用する方法がある。別の方法としては例えば部位特異的変異法(例えば宝酒造株式会社のMutan-Super Express Km キット)が挙げられる。また、タンパク質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように1または複数個のアミノ酸の欠失、置換、付加により配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のタンパク質に対してアミノ酸配列が変異した変異体であって、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質、及び該タンパク質をコードするDNAも本発明に含まれる。アミノ酸の変異の数は特に限定されるものではないが、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜3個である。
【0045】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術などを用いて配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(例えば配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75)またはその一部を基に、これと類似性の高いDNAを単離して、該DNAから配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様にVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質を得ることも通常行い得ることである。このように上記した配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列のタンパク質と高い同一性を有するタンパク質であって、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質も、本発明のタンパク質に含まれる。高い同一性とは、上記配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表わされるアミノ酸配列の全長にわたり少なくとも95%、好ましくは、少なくとも97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を示す。
【0046】
本発明のタンパク質としては、ヒトや哺乳動物のあらゆる細胞や組織に由来する天然のタンパク質でもよく、化学合成タンパク質であってもよく、また遺伝子組換え技術によって得られたタンパク質でもよい。タンパク質は糖鎖やリン酸化などの翻訳後修飾は受けていても受けていなくてもよい。
【0047】
本発明はまた、上記で示される本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。上記の配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列としてより具体的には、例えば、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。DNAはcDNAのほか、ゲノムDNA、化学合成DNAも含まれる。遺伝暗号の縮重に従い、遺伝子から生産されるタンパク質のアミノ酸配列を変えることなく配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチドを他の種類のヌクレオチドに置換することができる。従って、本発明のDNAはまた、遺伝暗号の縮重に基づく置換によってアミノ酸配列に変更がないように変換されたヌクレオチド配列も含有する。このようなDNAは、公知の方法により合成することができる。
【0048】
本発明のDNAは、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列からなるDNA、あるいはこれらと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。ストリンジェントな条件とは、当業者には十分理解できることであり、例えば、T.Maniatisらの実験操作書(Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1982、1989)に従えば容易に実施できる。
【0049】
すなわち、ストリンジェントな条件とは、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中(5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、100μg/mlの変性せん断サケ精子DNA)で37℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで1×SSC、0.1%SDS中、37℃で10分の洗浄を2回行う条件である(低ストリンジェンシー)。より好ましい条件は、40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、1%SDS中、42℃で10分の洗浄を2回行う条件である(中ストリンジエンシー)。最も好ましい条件は、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で10分の洗浄を2回行う条件である(高ストリンジェンシー)。この際、得られたDNAは、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードすることが必須である。
【0050】
本発明は、上記(3)あるいは(4)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と高い類似性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記(3)または(4)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の全長にわたり95%同一であり、より好ましくは97%同一であり、最も好ましくは少なくとも99%同一である。上記の本発明のDNAは、前述のタンパク質を、組換えDNA技術を用いて製造するのに用いることができる。本発明のDNA及びタンパク質は、以下のようにして得ることができる。
【0051】
(A)本発明のタンパク質をコードするDNAをクローニングする。
(B)タンパク質の全コード領域あるいはその一部をコードするDNAを発現用ベクターに組み込んで、組換えベクターを構築する。
(C)構築した組換えベクターにより、宿主細胞を形質転換する。
(D)得られた細胞を培養し、該タンパク質、またはその類縁体を発現させ、カラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0052】
上記の工程中でDNA、組換え体宿主としての大腸菌等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、例えば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれらの目的を達成することができる。以下に上記(A)〜(D)の工程について更に詳しく説明する。
【0053】
上記(A)における本発明のタンパク質をコードするDNAのクローニングの手段としては、本願明細書実施例に記載した方法の他に、本発明のヌクレオチド配列(例えば配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73,75)の一部を有する合成DNAをプライマーとしたPCR法によって増幅する方法、あるいは、適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別すること、などが挙げられる。細胞、組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(RT-PCR法)によって増幅することもできる。適当なベクターに組み込んだDNAとしては、例えば市販されている(CLONTECH社、STRATAGENE社)ライブラリーを使用することができる。
【0054】
ハイブリダイゼーションの方法は、当業者間で通常行われているものであり、例えば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。クローン化された本発明のタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。上記のようにして得られるDNAは、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75に記載のヌクレオチド配列を有する遺伝子であるか、あるいは前述の(3)〜(6)のポリヌクレオチドであればよい。上記(B)において発現ベクターに組み込むDNAは、上述のタンパク質の全長をコードする全長cDNAでも、DNA断片でも、その一部分を発現するように構築されたDNA断片でもよい。
【0055】
すなわち、本発明によれば、上記のDNAを含有する組換えベクターを提供される。本発明のタンパク質を発現することができる発現ベクターは、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0056】
用いる発現ベクターとしては、宿主において複製可能であれば、大腸菌をはじめとする原核生物由来、酵母由来、真菌由来、昆虫ウイルス由来、脊椎動物ウイルス由来いずれのベクターでもよいが、宿主として使用する微生物または細胞に適したものを選択する必要がある。また、発現物に応じて、適切な組み合わせから構成される宿主細胞−発現ベクター系が選択される。
【0057】
微生物を宿主として使用する場合、これら微生物に適したプラスミドベクターが、組み換え体DNAの複製可能な発現ベクターとして一般に用いられる。例えば、大腸菌を形質転換するためのプラスミドベクターとしては、プラスミドpBR322やpBR327などを用いることができる。プラスミドベクターは通常、複製起源、プロモーター、及び組換え体DNAで形質転換した細胞を選別するのに有用な表現型を与えるマーカー遺伝子等を含んでいる。プロモーターの例としては、β−ラクタマーゼプロモーター、ラクトースプロモーター、トリプトファンプロモーター等が挙げられる。マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子やテトラサイクリン耐性遺伝子などが挙げられる。好適な発現ベクターの例としては、プラスミドpBR322、pBR327の他に、pUC18、pUC19等が挙げられる。
【0058】
酵母で本発明のDNAを発現するためには、複製可能なベクターとして、例えばYEp24を用いることができる。プラスミドYEp24はURA3遺伝子を含有しており、このURA3遺伝子をマーカー遺伝子として利用することができる。酵母細胞用の発現ベクターのプロモーターの例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ等の遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0059】
真菌で本発明のDNAを発現するための発現ベクターに用いられるプロモーター及びターミナーターの例としては、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPD)、アクチン等の遺伝子プロモーター及びターミネーターが挙げられる。好適な発現ベクターの例としては、プラスミドpPGACY2、pBSFAHY83等が挙げられる。
【0060】
昆虫細胞で本発明のDNAを発現させるための発現ベクターに用いられるプロモーターの例としては、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。
【0061】
動物細胞で本発明のDNAを発現させるための組換えベクターは、一般に遺伝子を制御するための機能配列、例えば、複製起源、本発明のDNAの上流に位置すべきプロモーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位や転写終止配列を含有している。本発明のDNAを真核細胞内で発現させるのに用いることができるそのような機能配列はウイルスから得ることができる。
【0062】
例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の上流位置に本来存在するプロモーターも、上述の宿主−ベクター系で使用するのに適しているならば使用することができる。複製起源については、外来性の起源、例えば、アデノウイルス、ポリオーマ、SV40等のウイルス由来の複製起点を用いることができる。また、発現ベクターとして宿主染色体に組み込まれるような性質を有するベクターを用いる場合、宿主染色体の複製起源を利用することができる。
適した発現ベクターの例としては、プラスミドpSV−dhfr(ATCC 37146)、pBPV−1(9−1)(ATCC 37111)、pcDNA3.1(INVITROGEN社)、pME18S−FL3等が挙げられる。
【0063】
本発明によれば、上記の組換えベクターを有する形質転換細胞も提供される。本発明の複製可能な組換えベクターで形質転換された微生物または細胞は、前述の通り、組換えベクターに与えられた少なくとも1種の表現型によって形質転換されずに残った親細胞から選別することができる。表現型は少なくとも1種のマーカー遺伝子を組換えベクターに挿入することによって与えることができる。また複製可能なベクターが本来有しているマーカー遺伝子を利用することもできる。マーカー遺伝子の例としては、例えば、ネオマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子やジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子などが挙げられる。
【0064】
上記(C)において用いる宿主としては、大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでもよいが、用いる発現ベクターに適したものを選択する必要がある。微生物の例としては、エシュリヒア・コリ(Escherichia coli)の菌株、例えば、E.coliK12株294(ATCC 31446)、E.coli X1776(ATCC 31537)、E.coli C600、E.coli JM109、E.coli B株、あるいはバチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の如きBacillus属の菌株、あるいはサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マーゼサンス(Serratia marcesans)等の大腸菌以外の腸内菌、あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属の種々の菌株が挙げられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。真菌としては、例えば、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)(ATCC 11550)等が挙げられる。
【0065】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda:Sf細胞)、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞などが用いられる。動物細胞の例としては、HEK293細胞、COS−1細胞、COS−7細胞、Hela細胞、チャイニーズハムスター(CHO)細胞等が挙げられる。これらの中でも、CHO細胞およびHEK293細胞が好ましい。細胞を宿主とする場合、用いられる発現ベクターと宿主細胞の組合せは実験の目的により異なるが、その組合せにより、一過的発現、構成的発現の2種類の発現方式が考えられる。
【0066】
上記(C)における微生物及び細胞の形質転換とは、DNAを強制的方法や、細胞の貪食能により微生物や細胞に取り込ませ、プラスミド状態あるいは染色体に組み込まれた状態でDNAの形質を一過的あるいは構成的に発現させることである。当業者であれば公知の方法によって形質転換できる(例えば、実験医学別冊遺伝子工学ハンドブック)。例えば、動物細胞の場合、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、リポフェクション法などの方法でDNAを細胞に導入することができる。動物細胞を用いて、本発明のタンパク質を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のタンパク質の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、Dihydroforate reductase(DHFR)遺伝子を選択マーカーとして用いた場合、Methotrexate(MTX)濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、DHFR遺伝子とともに、本発明のタンパク質をコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
【0067】
上記の形質転換細胞を本発明のタンパク質をコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質を生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質を製造することができる。すなわち、本発明によれば、上記(3)〜(6)に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む形質転換細胞を、該ポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を発現させる条件下で培養し、次いで培養物(即ち、細胞自体または培地)から該タンパク質を回収することを含む該タンパク質の製造方法も提供される。
【0068】
上記の形質転換細胞の培養は、当業者に公知の方法で行なうことができる(例えば、バイオマニュアルシリーズ4、羊土社)。例えば、動物細胞の場合、各種の動物細胞培養法、例えば、シャーレ培養、マルチトレー式培養、モジュール培養などの付着培養、または細胞培養用担体(マイクロキャリアー)に付着させるか生産細胞自体を浮遊化させ浮遊培養等の公知の方法により培養を行なえばよい。培地は通常よく用いられる動物細胞用の培地、例えば、D−MEMやRPMI1640等を用いればよい。
【0069】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。例えば、本発明のタンパク質は、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスフォセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。ポリペプチドが細胞内合成、単離または精製の間に変性するときには、活性なコンフォーメションを再生するためにタンパク質をリフォールディングするための公知技術を使用できる。
【0070】
本発明のタンパク質は、他のタンパク質との融合タンパク質として製造することができる。これら融合タンパク質も、本発明の範囲内である。この融合タンパク質を発現する際に用いられるベクターとしては、該タンパク質をコードするDNAを組み込むことができ、かつ該融合タンパク質を発現することができるベクターであれば、いかなるベクターでも用いることができる。本発明のペプチドに融合できるタンパク質としては、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン残基の6個の連続配列(6×His)等が挙げられる。本発明のタンパク質を他の蛋白質と融合した蛋白質として発現させた場合には、融合した蛋白質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、有利である。例えば、GSTとの融合蛋白質として生産した場合は、グルタチオンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0071】
本発明のタンパク質が膜タンパク質である場合には、上記した本発明のタンパク質をコードするDNAを導入した形質転換細胞は、その膜上にタンパク質を発現することができる。このような形質転換細胞から調製される膜であって本発明のタンパク質を有する膜も本発明の範囲内である。なお、本明細書で言う細胞の膜とは、細胞膜、並びに細胞内小器官の膜の全てを包含する。細胞の膜の調製は当業者に公知の方法により行うことができる。例えば、形質転換細胞を培養した培養物から細胞の菌体を回収し、好適な緩衝液に懸濁後、ガラスビーズを加えVortexにて菌体を破砕する。破砕溶液を遠心し未破砕の菌体を除去し、得られた上清を適切な条件で超遠心し、得られた沈澱を緩衝液に懸濁することにより膜画分を調製することができる。超遠心の条件は膜の種類などに応じて適宜設定することができる。
【0072】
本発明によれば、本発明のタンパク質の活性を阻害するタンパクも提供される。このようなタンパク質の具体例としては、例えば、抗体が挙げられる。
本発明は、本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドを認識する抗体ならびに該抗体の製造方法にも関する。さらに好ましくは、本発明は、本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドを特異的に認識する抗体、並びに該抗体の製造方法に関する。ここでいう「特異的」とは、交差反応性が少ないもの、より好ましくは交差反応性がないものを意味する。
【0073】
本発明の抗体は、本発明のタンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体のフラグメント、一本鎖抗体、ヒト化抗体の何れであってもよい。抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。例えば、該抗体フラグメントには、限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント及びFvフラグメントが含まれる。例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、上記(1)または(2)に記載のタンパク質またはエピトープ含有フラグメントを抗原として非ヒト動物に投与することにより得られる。本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質あるいはそのペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。例えば実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版に記載の方法が挙げられる。
【0074】
ポリクローナル抗体の場合であれば、例えば、動物に本発明のタンパク質あるいはペプチドを注射することにより該タンパク質あるいはペプチドに対する抗体を産生させ、次いで血液を採取し、これを、例えば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0075】
モノクローナル抗体の場合は、例えば、本発明のタンパク質をマウスなどの動物に免疫し、同マウスから脾臓を抽出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウス内より腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0076】
得られた抗体をヒトに投与する目的で使用する場合は、免疫原性を低下させるために、ヒト型化抗体あるいはヒト抗体を用いることが好ましい。ヒト抗体は、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物を用いて作製することができる。これらのヒト型化抗体やヒト抗体の一般的概説は、例えば、Morrison,S.L.etal.〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)〕、Jones,P.T.et al〔Nature 321:522-525(1986)〕、野口浩〔医学のあゆみ 167:457−462(1993)〕、松本隆志〔化学と生物 36:448−456(1998)〕によって供されている。ヒト化キメラ抗体は、マウス抗体のV領域とヒト抗体のC領域を遺伝子組換えにより結合し、作製することができる。ヒト化抗体は、マウスのモノクローナル抗体から相補性決定部位(CDR)以外の領域をヒト抗体由来の配列に置換することによって作製できる。また、免疫系をヒトのものと入れ換えたマウス用いて、該マウスを免疫して、通常のモノクローナル抗体と同様に直接ヒト抗体を作製することもできる。これらの抗体は、タンパク質を発現するクローンを単離したり同定するのに使用できる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質を細胞抽出液、または本発明のタンパク質を産生する形質転換細胞から精製するのに使用できる。更にこれらの抗体は、細胞や組織中の本発明のタンパク質を検出するELISAやRIA(ラジオイムノアッセイ)、またはウエスタンブロット系の構築に使用できる。このような検出系は、動物、好ましくは、ヒトの組織または血管内流体などの身体サンプル中に存在する本発明のタンパク質の存在量を検出する診断目的に使用することができる。例えば、これらの抗体は、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの、本発明のタンパク質の(発現)異常に起因する望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の診断に使用できる。疾患の診断の基礎を提供するために、本発明のタンパク質の発現についての通常の値、すなわち標準値が確立されなければならないが、これは当業者においては周知の技術である。すなわち、複合体形成のための適切な条件下で、ヒトあるいは動物のどちらでもよいが、正常の被験者から得られた体液あるいは細胞抽出物と、本発明のタンパク質に対する抗体とを結合させ、この抗体−タンパク複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原(本発明のタンパク質)を含む標準液を用いて作成した標準曲線を用いて、正常サンプルから得られた標準値を算出する。標準値と本発明のタンパク質が関係する疾患を潜在的に患う被験者からのサンプルから得られた値と比較し、標準値との偏差によって疾病の存在を確認することができる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質の機能を研る試薬としても用いることができる。
【0077】
本発明の抗体は、以下の通り医薬として用いることができる。本発明の抗体を医薬として用いる場合には、本発明のタンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害することができる抗体(即ち、中和抗体)を用いることが必要である。
【0078】
本発明の抗体は、例えば、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症などの、本発明のタンパク質の発現異常に起因する望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の患者に投与することができる。すなわち本発明によれば、上記の抗体を有効成分として含有する医薬組成物、および該抗体を用いた疾患の治療および/または予防方法が提供される。本発明の医薬組成物は、上記抗体を有効成分として用いて、さらに治療的又は予防的使用のための他の有効成分、および/または不活性成分(例えば、従来の薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、免疫原性アジュバントなど))、生理学的に無毒の安定化剤または賦形剤などを用いて調製することができる。本発明の抗体を含む医薬組成物は、濾過滅菌および凍結乾燥し、投薬バイアル中に、または安定化水性調製物中の貯蔵物として、投薬形態に製剤化することができる。
【0079】
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などの当業者に公知の方法により行うことができる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。本発明の抗体は、本発明のタンパク質により仲介される望ましくない血管新生を阻害することにより治療効果を示す。
【0080】
本発明のDNAは、細胞内シグナリングプロセスに関与する他のタンパク質を単離、同定、クローン化することにも使用できる。例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、コードされたタンパク質を「ベイト(bait)」として用いて、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから、本発明のタンパク質に結合できるタンパク質をコードする他の配列「プレイ(prey)」を単離し、クローン化する酵母ツーハイブリッドシステム(例えばNature、340:245−246(1989))に用いることができる。同様の方式で、本発明のタンパク質が、他の細胞タンパク質に結合できるかどうかも決定することができる。あるいは別の方法として、本発明のタンパク質の抗体を用いた免疫沈降法(例えば、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によって、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を細胞抽出物から単離する方法が挙げられる。さらに別の方法として、上記に記載のように、本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として発現させ、融合タンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降法を行ない、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を単離する方法が挙げられる。
【0081】
本発明によれば、(a)個体のゲノムにおける本発明のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定する工程;および/または(b)個体に由来するサンプル中での該遺伝子の発現量を分析する工程を含む、該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した疾病または該疾病への感受性の診断方法が提供される。
【0082】
本発明の診断方法では、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する機能を持つ本発明のタンパク質の遺伝子中の変異を検出することにより、疾病または該疾病への感受性を診断することができる。さらに、このような疾患は、個体に由来するサンプル中の該遺伝子の発現量をタンパク質レベルまたはmRNAレベルで分析し、発現量の異常な減少または増加を検出することによって診断してもよい。
【0083】
ここで、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する機能を持つ本発明のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定する方法としては、それらの遺伝子のヌクレオチド配列の一部をプライマーとして、RT−PCRを行い、その後通常のヌクレオチド配列決定方法によって配列を決定し、変異の有無を検出できる。あるいは、PCR−SSCP法(Genomics、5:874-879、1989年、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によっても変異の有無を調べることができる。
【0084】
サンプル中の遺伝子の発現の減少または増加は、RNAレベルでのポリヌクレオチドの定量方法として当業者に公知の方法、例えば、RT−PCRなどの核酸増幅法、およびRNase保護法、ノーザンブロット法その他のハイブリダイゼーション法などの方法を用いて測定することができる。宿主に由来するサンプル中のタンパク質レベルの測定に使用することができるアッセイ技術も当業者によく知られており、例えば、ラジオイムノアッセイ、競合的結合測定法、ウェスタンブロット分析およびELISAアッセイなどが挙げられる。タンパク質レベルでの発現量を調べる場合には、前記した本発明の抗体を利用して測定することができる。
【0085】
サンプル中の遺伝子の発現量の異常の程度は特に限定されないが、本発明の一実施態様によれば、発現するタンパク質の量が正常の2倍以上、あるいは1/2以下の場合に病気であると診断することができる。本発明の別の実施態様によれば、発現するタンパク質の量が正常の3倍以上あるいは1/3以下の場合に病気であると診断することができる。
【0086】
本発明のDNAは、本発明のDNAを用いることによって、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、増加あるいは発現過多などの遺伝子診断に有用である。
【0087】
個体のゲノムにおける本発明のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定した結果、当該遺伝子中に変異がある場合には、該変異がVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の制御に関連した疾病を引き起こす可能性がある。
【0088】
また、個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析した結果、当該発現量が正常値と異なる値を示す場合は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を持つ本発明の新規タンパク質の発現量の異常がVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現に関連した疾病の原因となる可能性がある。
【0089】
また、本発明は、本発明のタンパク質によるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物のスクリーニング方法も含む。
【0090】
このスクリーニング方法は、
(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、シグナル量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、
を含む。
シグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化化合物として選択し、2分の1以下に減少させる化合物を阻害化合物として選択することが好ましい。さらに、シグナルを正常より3倍以上増加させる化合物を活性化化合物として選択し、3分の1以下に減少させる化合物を阻害化合物として選択してもよい。
【0091】
VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子としては、例えばレポーター遺伝子が挙げられる。レポーター遺伝子は、テストを行なう転写因子の活性化を直接検出する代わりに用いられるもので、調べたい遺伝子のプロモーターをレポーター遺伝子につなぎ、レポーター遺伝子の産物の活性を測定することによってプロモーターの転写活性の解析を行なうものである(バイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))。
【0092】
レポーター遺伝子としては、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド又はタンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等の酵素活性を測定することで利用できる。VEGFおよび/またはVEGF受容体発現の促進を評価するのに用いるレポータープラスミドとしては、VEGFの主要なプロモーターであるHREをレポーター遺伝子の上流に組み込んだもの、あるいはKDRの上流配列をレポーター遺伝子の上流に組み込んだものを細胞内に導入することにより利用できる。
【0093】
宿主細胞としては、VEGFおよび/またはVEGF受容体発現の促進を検出することができる細胞であればよく、好ましくは、哺乳動物細胞であり、例えばECV304細胞が好適に用いられる。形質転換及び培養に関しては、上記に記載の通りである。
VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物のスクリーニングは、具体的には、例えば、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することにより、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングすることができる。レポーター活性の測定は、当業者に公知の方法(例えばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))で行なうことができる。
【0094】
スクリーニングの被検物質には特に制限はなく、低分子化合物、ペプチドなどが挙げられる。被検化合物は、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであってもよい。また単一物質でも、混合物でもい。例えば、低分子化合物のライブラリー、コンビナトリアルケミストリーにより合成され化合物ライブラリー、細胞、植物、動物またはその一部を含む天然物、又は当該天然物由来の抽出物などを用いることもできる。複数の化合物を含む混合物をスクリーニングの被験物質として用いた場合には、本発明のタンパク質によるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性が認められた被験物質についてさらにスクリニーングを行うことにより、該活性を有する単一物質を単離することができる。また、混合物から目的化合物を単離、精製するには、自体公知の方法、例えぱ濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行なうことができる。
【0095】
また、本発明のスクリーニング法は以下の工程で行うこともできる。
(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。
【0096】
上記方法の場合には、検出可能なシグナルの検出方法としてレポーター遺伝子アッセイを用いる代わりに、VEGFあるいはVEGF受容体を検出する抗体を用いたELISAアッセイやウエスタンブロットアッセイを行うことによりVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定することができる。
【0097】
さらに本発明によれば、
(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入することにより形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、導入遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較してシグナルの量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。
を含む、医薬組成物を製造する方法が提供される。
【0098】
また本発明においては、シグナルを正常より2倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物として選択し、2分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として選択することが好ましい。あるいは、シグナルを正常より3倍以上増加させる化合物を活性化剤化合物として選択し、3分の1以下に減少させる化合物を阻害剤化合物として選択してもよい。
【0099】
mRNA量の測定は、例えばノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法などが挙げられる。タンパク量の測定は例えば抗体を用いる方法が挙げられる。抗体は公知の方法によって作製してもよいし、市販のもの(例えば和光純薬工業株式会社)を使用することもできる。
【0100】
本発明のタンパク質は、以下の工程により、該タンパク質のアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤を、構造を基礎にして設計する方法に使用してもよい。
(a)まず、タンパク質の三次元構造を決定する工程、
(b)アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の反応性部位または結合部位と思われる部位の三次元構造を推論する工程、
(c)推論した結合部位または反応性部位に結合するかあるいは結合すると予測される候補化合物を合成する工程、および
(d)該候補化合物が本当にアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤であるか否かを試験する工程。
【0101】
また本発明によれば、上記スクリーニングによって選択された化合物が提供される。該化合物は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する。さらに詳細には、該化合物は、本発明のタンパク質により促進されたVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する。
【0102】
上記スクリーニングによって得られた化合物は、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する作用を有しているので、VEGFおよび/またはVEGF受容体の望ましくない発現に起因する疾患を治療または予防するための医薬として有用である。
【0103】
化合物の塩を取得したい時は、化合物が塩の形で得られる場合にはそのまま精製すれば良く、また遊離の形で得られる場合には、通常の方法により適当な溶媒に溶解または懸濁し、所望の酸または塩基を添加し、塩を形成させて単離精製すればよい。本発明の方法を用いて得られる化合物またはその塩を、医薬組成物として調製する工程としては、例えば以下のように常法により製剤化することが挙げられる。すなわち活性成分として有効な量の上記化合物またはその薬理的に許容される塩と、薬理的に許容される担体とを混合すればよい。また製剤化は選択された投与様式に適した形態が選ばれる。経口投与に適した組成物としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、および散剤などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、乳剤、および懸濁液剤が挙げられる。上記の担体としては、例えばゼラチン、乳糖、グルコース等の糖類、コーン・小麦・米・とうもろこし澱粉等の澱粉類、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、タルク、植物油、ステアリンアルコール・ベンジルアルコール等のアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらのうち液状担体の例としては、一般に水、生理食塩水、デキストロースまたは類似の糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。
【0104】
本発明によれば、VEGFまたはVEGF受容体の発現を促進あるいは阻害する活性を有する化合物をスクリーニングするためのキットも提供される。該キットは、(a)本発明のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を導入した形質転換細胞、および(b)上記シグナルを測定するための試薬、から成るものであり、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングするために必要な試薬類を含む。
【0105】
別の側面において、本発明は、
(a)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73,75で表わされるヌクレオチド配列を有する本発明のポリヌクレオチド;
(b)(a)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74,76で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質またはそれらの断片;または
(d)(c)の本発明のタンパク質に対する抗体;
を含む診断キットに関する。
【0106】
少なくとも(a)〜(d)のいずれかを含むキットは、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性または該疾患への感受性を診断するのに有用である。血管新生は、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの多種の病理学的状態におけるその関与のため、薬物デザイン及び治療介在のための魅力的な標的である。多数の実験が、血管新生が深い生理学的作用を有し得ることを示している(例えば、Ferraraら、Endocr.Rev., 13:18-32(1992), Dovorakら、Am.J.Pathol., 146:1029-1039(1995), Thomasら、J.Biol.Chem., 271:603-606(1996))。
【0107】
本明細書中に報告するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する新規タンパク質の発見により、異常な血管新生を阻害する新しい方法が提供された。さらなる具体例において、本発明は、異常な血管新生を阻害するための前記のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質の機能を阻害する化合物を用いる方法に関する。上記スクリーニング方法によって得られた、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害する化合物は、例えば固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの、望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患を治療または予防する医薬として有用である。
【0108】
血管新生は虚血状態によるある種の病態を改善する場合があることが知られており、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する化合物は、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症などを治療する効果が期待される。
【0109】
更に、本発明のタンパク質をコードする遺伝子は、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病を初めとする様々な疾患の治療を目的とした遺伝子治療にも有用である。遺伝子治療とは、疾病の治療を目的として、遺伝子または遺伝子を導入した細胞をヒトの体内に投与することを意味する。本発明のタンパク質や該タンパク質をコードするDNAは、診断目的にも使用できる。即ち、本発明によれば、本発明のタンパク質をコードする遺伝子を含む遺伝子治療剤が提供される。
【0110】
遺伝子治療剤の形態は特に限定されないが、例えば、生理緩衝液から成る薬剤キャリア中に本発明の遺伝子を含む発現ベクターを含む医薬組成物などが挙げられる。薬剤キャリアとしては、その他に適当な安定剤(例えば、ヌクレアーゼ阻害剤など)、キレート剤(例えば、EDTAなど)、及び/又はその他の助剤も含むことができる。あるいはまた、本発明の遺伝子治療剤は、本発明の遺伝子を含む発現ベクターとリポソームとの複合体として供給してもよい。上記した遺伝子治療剤は、例えば、カテーテルを利用して適用することもできる。例えば、本発明の遺伝子治療剤を患者の血管などに直接に注入することも可能である。
【0111】
本発明の遺伝子治療剤の投与量は患者の年齢、性別、体重、症状、及び投与経路などの条件に応じて適宜増減されるべきであるが、一般的には、成人1回当たりは有効成分のDNA量として1μg/kgから1000mg/kg程度の範囲であり、好ましくは10μg/kgから100mg/kg程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
【0112】
本発明のスクリーニング方法で選択された化合物またはその塩を上述の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。たとえば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。すなわち本発明は、上記化合物を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0113】
さらに、上記化合物は、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性などの、望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の治療および/または予防のための医薬として有用である。すなわち本発明は、上記化合物を含む腫瘍、炎症、虚血性疾患などの医薬に関する。具体的には、例えば固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病などに対する治療及び/または予防薬として有用である。
【0114】
さらにまた、本発明によれば、例えば固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病などの望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患の治療または予防する医薬の製造における、上記化合物の使用も提供されれ。
【0115】
また本発明によれば、上記(3)〜(6)に記載のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用は標的としたヌクレオチド配列に対して相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドであり、これを用いることにより、タンパク質への翻訳、細胞質への輸送、あるいは全体的な生物活性機能に必要な他の活性等のRNAの機能を阻害することによって、標的遺伝子の発現を抑制することができる。この際、アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、RNAを用いてもよいし、DNAを用いてもよい。本発明のDNA配列は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNAとハイブリダイズし得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために使用できる。一般にアンチセンスオリゴヌクレオチドが、その遺伝子の発現に対して抑制的に作用することは公知での事実である(例えば、細胞工学 Vol.13 No.4(1994))。本発明のタンパク質をコードする遺伝子に対するアンチセンスコード配列を有するオリゴヌクレオチドは、標準の方法で細胞内に導入することができ、該オリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子のmRNAの翻訳を効果的に遮断して、その発現を遮断して、望ましくない作用が阻害される。
【0116】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然に見出されるオリゴヌクレオチドの他に、修飾されたものであっても良い〔例えば、村上&牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996))。従って、オリゴヌクレオチドは変化した糖部分あるいは糖間部分を有していてもよい。これらの例は、当該技術分野において使用が知られているホスホチオエート及び他のイオウ含有種である。幾つかの好ましい態様に従えば、オリゴヌクレオチドの少なくとも一つのホスホジエステル結合が、その活性が調節されるべきRNAが位置する細胞の領域に浸透する組成物の能力を高める機能を有する構造により置換される。
【0117】
このような置換は、ホスホロチオエート結合、ホスホロアミデート結合、メチルホスホネート結合または短鎖アルキルもしくはシクロアルキル構造を含むことが好ましい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、少なくとも幾つかの修飾されたヌクレオチド型を含んでいても良い。従って、天然に通常見いだされるもの以外のプリン及びピリミジンを使用していても良い。同様に本発明の本質的な意図が実行される限り、ヌクレオチドサブユニットのフラノシル部分を修飾することもできる。このような修飾の例は、2’−O−アルキル−、及び2’−ハロゲン置換ヌクレオチドである。本発明において有用な幾つかの糖部分の2’位の修飾の例は、OH、SH、SCH3、OCH3、OCN、またはO(CH2)nCH3(ここでnは1から約10である)、及び同様の特性を有する他の置換基である。全てのこのような類似体は、本発明の遺伝子のmRNAとハイブリダイズしてそのRNAの機能を阻害する機能を果たす限り、本発明に包含される。
【0118】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約3から約50ヌクレオチドを含み、約8から約25ヌクレオチドを含むことが好ましく、約12から約20ヌクレオチドを含むことがさらに好ましい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、周知の方法である固相合成法により作製することができる。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含む幾つかの業者により販売されている。ホスホチオエート等の他のオリゴヌクレオチドの製造も当業者に公知の方法で作製できる。
【0119】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の遺伝子から転写されるmRNAとハイブリダイズできるように設計される。与えられた遺伝子の配列に基づいてアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する方法は、当業者であれば容易である〔例えば、村上および牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996)〕。最近の研究は、mRNAの5’領域、好ましくは翻訳開始部位を含む領域に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが、遺伝子の発現の阻害に最も効果的であることを示唆している。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、15から30ヌクレオチドが好ましく、20から25ヌクレオチドがより好ましい。ホモロジー検索で他のmRNAとの相互作用がないこと、オリゴヌクレオチド配列内で二次構造を取らないことを確認しておくことは重要である。設計したアンチセンス分子が機能したかどうかの評価は、適当な細胞を用いて、該細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、当業者には公知の方法で、対象mRNAの量(例えば、ノーザンブロットまたはRT−PCR法)、あるいは対象タンパク質の量(例えば、ウエスタンブロットまたは蛍光抗体法)を測定することにより、発現抑制の効果を確認できる。
【0120】
一方、三重らせん形成(トリプル・ヘリックス技術)は、核内のDNAを標的とした、主に転写の段階での遺伝子発現制御方法である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、主に転写に関与する遺伝子領域に設計され、それにより、転写及び本発明のタンパク質の産生を抑える。これらのRNA、DNA、オリゴヌクレオチドは、公知の合成装置などを用いて製造することができる。
【0121】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列を含む細胞に、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法などのDNAトランスフェクション法、またはウイルスなどの遺伝子導入ベクターの使用を含む遺伝子導入法のいずれを用いて導入してもよい。適切なレトロウイルスベクターを用いてアンチセンスオリゴヌクレオチド発現ベクターを作製し、その後、該発現ベクターを細胞とin vivoまたはex vivoで接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入できる。
【0122】
本発明のDNAは、アンチセンスRNA/DNA技術またはトリプル・へリックス技術を用いて、本発明のタンパク質を介する血管新生を阻害する目的で使用できる。
本発明のタンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病などの、望ましくない血管新生によって特徴付けられる疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち、本発明によれば、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬が提供される。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法を用いてそれらの疾病の検出に利用することもできる。
【0123】
本発明によれば、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害するリボザイムまたはデオキシリボザイムが提供される。リボザイムおよびデオキシリボザイムは、核酸のヌクレオチド配列を認識して、核酸を切断する活性を持つRNAまたはDNAである(例えば、柳川弘志、実験医学バイオサイエンス12、RNAのニューエイジ)。リボザイムまたはデオキシリボザイムは、選択された標的RNA、例えば本発明のタンパク質をコードするmRNAを開裂するように製造することができる。本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列を基に、本発明のタンパク質のmRNAを特異的に切断するリボザイムまたはデオキシリボザイムを設計することができ、当該リボザイムまたはデオキシリボザイムは本発明のタンパク質のmRNAに対して相補的な配列を有し、該mRNAと相補的結合し、ついで該mRNAが開裂され本発明のタンパク質の発現が減少し(または完全に発現せず)、発現減少のレベルは標的細胞内でのリボザイムまたはデオキシリボザイムの発現のレベルに依存している。
【0124】
よく用いられるリボザイムまたはデオキシリボザイムには、ハンマーヘッド型とヘアピン型の2種類があり、特にハンマーヘット型リボザイムまたはデオキシリボザイムは切断活性に必要な一次構造や二次構造がよく調べられており、当業者であれば、本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列情報のみで容易にリボザイムまたはデオキシリボザイムの設計が可能である〔例えば、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)〕。ハンマーヘッドリボザイムまたはデオキシリボザイムは、標的RNAと相補鎖を形成する2ヶ所の認識部位(認識部位Iと認識部位II)と活性部位からなる構造をなし、標的RNAと認識部位で相補対を形成した後、標的RNAのNUXの配列(N:AまたはGまたはCまたはU、X:AまたはCまたはU)の3’末端側で切断することが知られており、特にGUC(あるいはGUA)が一番高い活性を持つことが知られている〔例えばKoizumi,Mら:Nucl. Acids Res.17,7059-7071(1989)、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)、川崎&多比良:実験医学 Vol.18 No.3p381-386 (2000)〕。
【0125】
そこでまず、本発明のDNA配列の中からGTC(またはGTA)の配列を探し出し、その前後で数ヌクレオチドから十数ヌクレオチドの相補対をつくることができるようにリボザイムまたはデオキシリボザイムを設計する。設計したリボザイムまたはデオキシリボザイムの適切性の評価は、例えば、大川&平比良の文献〔実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994) 〕に記載の方法によって、作製したリボザイムまたはデオキシリボザイムが、in vitroで標的mRNAを切断できるかどうかを調べることで評価できる。リボザイムまたはデオキシリボザイムの調製は、RNA分子を合成するための当分野で周知の方法により調製する。
【0126】
別法としては、リボザイムまたはデオキシリボザイムの配列をDNA合成機で合成し、例えばT7或いはSP6のような適切なRNAポリメラーゼプロモータを有する多種のベクターに組み込み、in vitroで酵素的にRNAを合成させる方法が挙げられる。これらのリボザイムまたはデオキシリボザイムは、例えばマイクロインジェクション法などの遺伝子導入方法によって細胞内に導入できる。あるいは別の方法として、リボザイムまたはまたはデオキシリボザイムをコードするDNAを適当な発現ベクターに組み込んで、株細胞、細胞或いは組織内に導入する。選択された細胞中にリボザイムまたはデオキシリボザイムを導入するのに、適切なベクターを使用することができ、例えばプラスミドベクター、動物ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスあるいはワクシニアウイルス)ベクターがこれらの目的に通常用いられる。これらのリボザイムまたはデオキシリボザイムは、本発明のタンパク質で仲介されるVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害する作用を有する。すなわち、本発明によれば、上記リボザイムまたはデオキシリボザイムを有効成分として含有する医薬が提供される。
【0127】
本発明のcDNAは、完全長cDNAであるため、その5’末端の配列がmRNAの転写開始点であり、該cDNA配列をゲノムのヌクレオチド配列と比較することにより、該遺伝子のプロモーター領域を同定することに利用できる。ゲノムのヌクレオチド配列は、データベースに公知の配列として登録されている場合はその配列を利用できる。あるいは、該cDNAを用いて例えばハイブリダイゼーションによってゲノムライブラリーからクローニングし、ヌクレオチド配列を決めることもできる。このようにして、本発明のcDNAのヌクレオチド配列をゲノムの配列と比較することによって、その上流に存在する該遺伝子のプロモーター領域を同定することが可能である。さらに、このようにして同定した該遺伝子のプロモーター断片を用いて該遺伝子の発現を調べるレポータープラスミドを作製することができる。レポータープラスミドは、大方の場合、転写開始点からその上流2kb、好ましくは転写開始点からその上流1kbのDNA断片をレポーター遺伝子の上流に組み込むことによって作製できる。さらに該レポータープラスミドは、該遺伝子の発現を増強あるいは減弱させる化合物のスクリーニングに利用できる。具体的には例えば、該レポータープラスミドで適当な細胞を形質転換し、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することによりスクリーニングすることができる。これらの方法も本発明に含まれる。
【0128】
さらに本発明は、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体に関する。
【0129】
さらに本発明は、上記に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列のデータを比較して相同性の算出を行う方法に関する。すなわち、本発明の遺伝子およびアミノ酸配列は、その2次元および3次元構造を決定し、例えば同様の機能を有する相同性の高いさらなる配列を同定するための貴重な情報源となる。これらの配列をコンピュータ読み込み可能媒体に保存し、ついで既知の高分子構造プログラムにおいて保存したデータを用いて、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))のような既知検索ツールを用いてデータべースを検索すれば、データベース中の、ある相同性を有する配列を見出すことは容易である。
【0130】
コンピュータ読み取り可能媒体は情報またはデータを保存するのに用いる物体のいずれの組成物であってもよく、例えば、市販フレキシブルディスク、テープ、チップ、ハードディスク、コンパクトディスク、およびビデオディスク等がある。また、本媒体上のデータは、他のヌクレオチド配列のデータと比較して相同性の算出を行なう方法を可能にする。この方法には、本発明ポリヌクレオチド配列を含む第一のポリヌクレオチド配列をコンピュータ読み込み可能媒体中に提供し、次いで、該第一のポリヌクレオチド配列を少なくとも一つの第二のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を同定する工程を含む。
【0131】
本発明はまた、配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質に関する。DNAプローブである複数の各種ポリヌクレオチドがスライドガラス等の特別に加工された基質上に固定され、次いで標識された標的ポリヌクレオチドを、固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせ、それぞれのプローブからのシグナルを検出する。得られるデータは、解析され、遺伝子発現が測定される。
【0132】
本発明はさらにまた、配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質に関する。このタンパク質を固定した不溶性基質と、生物由来の細胞抽出液とを混合し、不溶性基質上に捕獲された、診断あるいは新薬開発のために有効であることが期待されるタンパク質を、単離あるいは同定することができる。
【0133】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)オリゴキャッピング法を用いた完全長cDNAライブラリーの作製
(1)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からのRNA調製
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC:三光純薬株式会社より購入)を、添付のプロトコールに従って培養した。10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、セルスクレーパーで細胞を回収した。次いで、回収した細胞からRNA抽出用試薬ISOGEN(ニッポンジーンより購入)を用いて全RNAを取得した。取得の具体的方法は、試薬のプロトコールに従った。次いで、オリゴ−dTセルロース カラムを用いて、全RNAからポリA+RNAを取得した。ポリA+RNA取得の具体的方法は、上記Maniatisの実験書に従った。
【0134】
(2)オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製
上記ポリA+RNAから、オリゴキャッピング法により完全長cDNAライブラリーを作製した。オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製の具体的方法は、菅野らの方法〔例えば、Maruyama,K.& Sugano,S.Gene,138:171-174(1994)、Suzuki、Y.et al.Gene、200:149-156(1997)、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版〕に従って作製した。
【0135】
(3)プラスミドDNAの調製
上記(2)で作製した完全長cDNAライブラリーを、エレクトロポレーション法によって大腸菌TOP10株に形質転換した後、100μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。続いて、アンピシリン含有LB寒天培地上で生育した大腸菌のコロニーから、QIAGEN社のQIAwell 96 Ultra Plasmid Kitを用いてプラスミドを回収した。具体的方法は、QIAwell 96 Ultra Plasmid Kitに添付のプロトコールに従った。
【0136】
(実施例2)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するDNAのクローニング
(1)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするcDNAのスクリーニング
ECV304細胞(INVITROGEN社より購入)を細胞培養用96穴プレートに1×104Cells/wellとなるように、10%FBS存在下のDMEM培地を用い、24時間37℃で培養した(5%CO2存在下)。次いで、FuGENE6(Roche社より購入)を用いて、pGL3HRE-Luc(Promega社より購入)75ng、pGL3KDR-Luc(Promega社より購入)5ng、及び上記実施例1.(2)で調製した完全長cDNA2μlを1ウエルに共導入した。導入の方法は添付のプロトコールに従った。48時間37℃で培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステム、ピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて添付されている説明書に従い、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を反映するレポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を測定した。なおルシフェラーゼ活性は、Perkin Elmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて行った。
【0137】
(2)ヌクレオチド配列の決定
上記スクリーニングを115、000クローン行い、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAの代わりに、空ベクターpME18S−FL3を導入した細胞のルシフェラーゼ活性)と比べて2倍以上上昇しているプラスミドを選抜し、まず、クローニングされているcDNAの5’側(シークエンスプライマ−:5’-CTTCTGCTCTAAAAGCTGCG-3’(配列番号77))と3’側(シークエンスプライマ−:5’-CGACCTGCAGCTCGAGCACA-3’(配列番号78))からそれぞれone−passシークエンスを行ない、できる限り長く決定した。なお、ヌクレオチド配列決定のための試薬や方法は、Thermo Sequenase II Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(アマシャム ファルマシア社)、あるいはBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(アプライドバイオシステムズ社)を用い、ABI PRISM 377シークエンサー、あるいは、ABI PRISM 3100シークエンサーを用い、各々キットに添付されている説明書に従って行なった。
【0138】
(3)得られたクローンのデータベース解析
得られたヌクレオチド配列について、GenBankに対するBLAST(Basic local alignment search tool)〔S. F. Altschul et al., J. Mol. Biol., 215: 403-410 (1990) 〕検索を行なった。その結果、クローンがVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する新規のタンパク質をコードする種類の遺伝子であった。
【0139】
(4)全長シークエンス
37種類の新規のクローンについて全長ヌクレオチド配列(配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73,75)を決定し、タンパク質をコードする部分(オープンリーディングフレーム)のアミノ酸配列(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74,76)を予想した。
【0140】
(実施例3)VEGFの発現を阻害する化合物のスクリーニング
ECV304細胞を細胞培養用96wellプレートに1x10E4cells/100μl/wellの細胞数になるように、10%FBS存在下のM199培地にまき、5%CO2存在下、37℃で24時間培養した。次いで、FuGENE6を用いて、上記実施例2のスクリーニングで得たVEGF発現を促進する作用を有することが明らかとなったタンパク質Serum/glucocorticoid regurated kinaseをコードする遺伝子を含有するプラスミド100ngと、pGL3HRE-LucPromega75ngを1wellに共導入した。1時間以内にスクリーニング対象化合物1000個を終濃度10μMになるようそれぞれのWellに加え、37℃で48時間培養後、ピッカジーンLT2.0を用いてレポーター活性を測定した。その結果、1個の化合物がレポーター活性を50%以上阻害し、その構造を調べたところ、各種プロテインキナーゼを強力に阻害するスタウロスポリンであることが判った。
【0141】
【発明の効果】
本発明により、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質やそれらの遺伝子が提供された。これらのタンパク質、遺伝子は、産業上有用性の高い血管新生を促進する作用を有する可能性が高い。本発明のタンパク質やそれらの遺伝子により、望ましくない血管新生が関与する疾患の治療や予防に有用な化合物のスクリーニング、さらにそのような疾患の診断薬を作製することが可能である。更に本発明の遺伝子は、遺伝子治療に用いられる遺伝子ソースとしても有用である。
【0142】
【配列表フリーテキスト】
配列番号77:プライマー
配列番号78:プライマー
【0143】
【配列表】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
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【0165】
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【0175】
【0176】
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【0183】
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【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
Claims (36)
- 以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつVEGF(Vascular endotherial growth factor)またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質。 - 請求項1記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有する精製されたタンパク質。
- 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつVEGF(Vascular endotherial growth factor)またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のいずれかで表されるポリヌクレオチド配列。
(b)(a)のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
(c)配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75のいずれかにおいて、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列からなり、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。 - 請求項3記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項4記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
- 請求項8記載の組換えベクターを有効成分として含有する遺伝子治療剤。
- 請求項8記載の組換えベクターを含む形質転換細胞。
- 膜タンパク質である請求項1又は2に記載のタンパク質を有する、請求項10記載の細胞の膜。
- (a)請求項1、2または7に記載のタンパク質を発現する条件下で請求項10に記載の形質転換細胞を培養する工程;および
(b)培養物からタンパク質を回収する工程:
を含む、請求項1、2または7に記載のタンパク質の製造方法。 - (a)個体のゲノムにおける請求項1、2または7に記載のタンパク質をコードする遺伝子中の変異の存在または不存在を決定する工程;
および/または(b)個体に由来するサンプル中での該遺伝子の発現量を分析する工程を含む、該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した疾病または該疾病への感受性の診断方法。 - 以下の工程を含むVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
(a)請求項1、2又は7に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、シグナル量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。 - 以下の工程を含むVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
(a)請求項1、2又は7に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、および
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程。 - 請求項14または15に記載のスクリーニング方法により選択される、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物。
- 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)請求項1、2又は7に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を細胞に導入することにより形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、導入遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルを測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較してシグナルの量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。 - 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)請求項1、2又は7に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入して、形質転換細胞を作製する工程、
(b)1あるいは複数の候補化合物の存在下または非存在下で、該遺伝子が発現可能となる条件下で該形質転換細胞を培養する工程、
(c)VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を測定する工程、
(d)候補化合物の非存在下の場合と比較して、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現量を変化させることができる候補化合物を、VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物として選択する工程、および
(e)工程(d)で選択された化合物を含む医薬組成物を調製する工程。 - VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または促進する活性を有する化合物をスクリーニングするためのキットであって、(a)請求項1、2又は7に記載のVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質をコードする遺伝子、並びにVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現の促進を検出できるシグナルをコードする遺伝子を導入した形質転換細胞、および(b)上記シグナルを測定するための試薬、を含む上記のキット。
- 請求項1、2または7に記載のタンパク質を認識するモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片。
- 請求項1、2または7に記載のタンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害する、請求項20に記載のモノクローナルあるいはポリクローナル抗体またはその断片。
- 請求項1、2または7に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することを含む、請求項20または21に記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
- VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進するタンパク質の発現を阻害する、請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの一部に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド。
- 請求項1、2または7記載のタンパク質をコードするRNAを開裂する作用を有し、それにより該タンパク質が有するVEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を促進する作用を阻害するリボザイム又はデオキシリボサイム。
- 治療又は予防上有効な量の、請求項14または15記載のスクリーニング方法で選択された化合物、および/または請求項17または18記載の方法により製造された医薬組成物、および/または請求項21記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片、および/または請求項23記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または請求項24記載のリボザイム又はデオキシリボザイムを個体に投与することを含む、VEGFおよび/またはVEGF受容体の異常な発現に関連した疾患の治療及び/又は予防方法。
- VEGFおよび/またはVEGF受容体の異常な発現に関連した疾患が、固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患である、請求項25に記載の方法。
- VEGFおよび/またはVEGF受容体の発現を阻害または活性化するための、請求項17または18記載の方法により製造された医薬組成物。
- 固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患の治療および/または予防のための、請求項27記載の医薬組成物。
- 請求項21記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体またはその断片を有効成分として含有する医薬組成物。
- 請求項23記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬組成物。
- 請求項24記載のリボザイムまたはデオキシリボザイムを有効成分として含有する医薬組成物。
- 固形腫瘍、腫瘍転移、炎症、乾癬、慢性関節リュウマチ、血管腫、糖尿病性網膜症、血管線維腫、黄班変性、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、血管性痴呆、閉塞性動脈硬化症およびバージャー病からなる群から選択される疾患の治療および/または予防のための、請求項29から31の何れかに記載の医薬組成物。
- 配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体。
- 請求項33に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列および/または他のアミノ酸配列のデータを比較して他のポリヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列との同一性の算出を行う方法。
- 配列番号1,3,5,7,9,11,13、15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71,73又は75から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
- 配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74又は76で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。
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