しかしながら、前記従来の内視鏡装置は、挿入補助具が基端部から先端部まで均一の硬さで構成されているため、屈曲した腸管(生体)に挿入補助具を挿入する場合、挿入補助具の先端に押し込み力が伝わり難く、挿入補助具の挿入性が悪いという問題があった。また、挿入補助具は、内視鏡挿入部の挿抜動作によって先端内周面が内視鏡挿入部から大きな摩擦抵抗を受けるため、先端内周面の親水性コート材が早期に全磨耗するという欠点があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、生体に対する挿入補助具の挿入性を向上させることができ、挿入補助具、内視鏡挿入部に塗布された潤滑性コート材を長持ちさせて長期間使用することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、内視鏡の挿入部がその基端部から挿通されるとともに先端部にバルーンが装着された挿入補助具を備え、前記バルーンは膨張されることにより体腔に密着される内視鏡装置において、前記挿入補助具の外周面には潤滑性コート材がコーティングされ、該コーティングされた挿入補助具の外周面の摩擦係数は、前記バルーンの摩擦係数に対して5〜30%に設定されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、挿入補助具の外周面に潤滑性コート材をコーティングすることにより、体腔壁面に対する摩擦抵抗を下げるとともに、比較的大きな摩擦抵抗が確保されているバルーンに対して好適な摩擦抵抗を規定する。すなわち、バルーンの摩擦抵抗に対して、潤滑性コート材がコーティングされた挿入補助具の外周面の摩擦抵抗を5〜30%に規定する。その摩擦抵抗が5%以下であると、挿入補助具を操作する術者の手に対して滑り過ぎてしまうため、誤操作の原因になる。また、摩擦抵抗が30%以上であると、体腔壁面に対する挿抜性が悪くなるからである。よって、前記摩擦抵抗を5〜30%に規定する本願発明は、体腔に対する挿入補助具の挿抜を良好に行うことができる。
請求項2に記載の発明は、挿入部の先端部にバルーンが装着された内視鏡を備え、前記バルーンは膨張されることにより体腔に密着される内視鏡装置において、前記内視鏡の挿入部の外周面には潤滑性コート材がコーティングされ、該コーティングされた挿入部の外周面の摩擦係数は、前記バルーンの摩擦係数に対して5〜30%に設定されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、内視鏡挿入部の外周面に潤滑性コート材をコーティングすることにより、体腔壁面に対する摩擦抵抗を下げるとともに、比較的大きな摩擦抵抗が確保されているバルーンに対して好適な摩擦抵抗を規定する。すなわち、バルーンの摩擦抵抗に対して、潤滑性コート材がコーティングされた内視鏡挿入部の外周面の摩擦抵抗を5〜30%に規定する。その摩擦抵抗が5%以下であると、挿入補助具を操作する術者の手に対して滑り過ぎてしまうため、誤操作の原因になる。また、摩擦抵抗が30%以上であると、体腔壁面に対する挿抜性が悪くなるからである。よって、前記摩擦抵抗を5〜30%に規定する本願発明は、体腔に対する内視鏡挿入部の挿抜を良好に行うことができる。
請求項3に記載の発明は、前記目的を達成するために、挿入部の先端部に第1バルーンが装着された内視鏡と、前記挿入部に被せられ、前記挿入部の挿入をガイドするとともに、先端部に第2バルーンが装着された挿入補助具とを備え、第1バルーン及び第2バルーンは膨張されることにより体腔に密着される内視鏡装置において、前記挿入補助具の外周面には潤滑性コート材がコーティングされ、該コーティングされた挿入補助具の外周面の摩擦係数は、前記第2バルーンの摩擦係数に対して5〜30%に設定されていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、先端部に第1バルーンが装着された内視鏡と、先端部に第2バルーンが装着された挿入補助具とを備えた内視鏡装置を対象としている。この内視鏡装置において、挿入補助具の外周面に潤滑性コート材がコーティングされた挿入補助具の外周面の摩擦係数は、潤滑性コート材がコーティングされていない第2バルーンの摩擦係数に対して5〜30%に設定されている。
第1バルーンと第2バルーンとを有する内視鏡装置は、体腔内への押し込み回数が多いため、体腔の壁面に接する挿入補助具の外周面の摩擦抵抗を下げることが重要となる。一方で、第2バルーンが膨張して体腔の壁面に密着された際には、体腔の壁面との摩擦を確保し、十分な保持力を得ることが重要となる。
このような背景のもと、挿入補助具の外周面に潤滑性コート材をコーティングすることにより、体腔壁面に対する摩擦抵抗を下げるとともに、比較的大きな摩擦抵抗が確保されている第2バルーンに対して好適な摩擦抵抗を規定する。すなわち、第2バルーンの摩擦抵抗に対して、潤滑性コート材がコーティングされた挿入補助具の外周面の摩擦抵抗を5〜30%に規定する。その摩擦抵抗が5%以下であると、挿入補助具を操作する術者の手に対して滑り過ぎてしまうため、誤操作の原因になる。また、摩擦抵抗が30%以上であると、体腔壁面に対する挿抜性が悪くなるからである。よって、前記摩擦抵抗を5〜30%に規定する本願発明は、体腔に対する挿入補助具の挿抜を良好に行うことができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記内視鏡の挿入部の外周面には潤滑性コート材がコーティングされ、該コーティングされた挿入部の外周面の摩擦係数は、前記第1バルーンの摩擦係数に対して5〜30%に設定されていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、内視鏡挿入部の外周面に潤滑性コート材をコーティングすることにより、体腔壁面に対する摩擦抵抗を下げるとともに、比較的大きな摩擦抵抗が確保されているバルーンに対して好適な摩擦抵抗を規定する。すなわち、バルーンの摩擦抵抗に対して、潤滑性コート材がコーティングされた内視鏡挿入部の外周面の摩擦抵抗を5〜30%に規定する。その摩擦抵抗が5%以下であると、挿入補助具を操作する術者の手に対して滑り過ぎてしまうため、誤操作の原因になる。また、摩擦抵抗が30%以上であると、体腔壁面に対する挿抜性が悪くなるからである。よって、前記摩擦抵抗を5〜30%に規定する本願発明は、体腔に対する内視鏡挿入部の挿抜を良好に行うことができる。
また、内視鏡と、前記内視鏡挿入部がその基端部から挿通される挿入補助具とを備えた内視鏡装置において、前記内視鏡挿入部の外周面及び/又は前記挿入補助具の内周面には、潤滑性コート材がコーティングされ、前記潤滑性コート材は、前記内視鏡挿入部の外周面及び/又は前記挿入補助具の先端部側の厚みが基端部側の厚みよりも厚く形成されていることを特徴としている。内視鏡挿入部の外周面及び/又は挿入補助具の内周面にコーティングされる潤滑性コート材について、内視鏡挿入部の外周面及び/又は挿入補助具の先端部側の厚みを、基端部側の厚みよりも厚くしたので、潤滑性コート材が長持ちし、長期間の使用に耐えることができる。
前記潤滑性コート材のコーティングの厚みの厚い部分は、前記挿入補助具の先端部から基端部に向けて前記挿入補助具の全長の約3分の1から略半分の範囲であることを特徴としている。挿入補助具は、基端部に比べて先端部の方が、挿入される内視鏡挿入部の先端部に擦られて磨耗が激しい。このため、先端部及びその近傍部を他の部分よりも多く潤滑性コート材を重ね塗りする。全体にわたって潤滑性コート材を重ね塗りすると、不要な部分まで潤滑性コート材が厚くなるため、挿入時に特に曲げられやすい先端部から3分の1乃至略半分を厚くする。曲げられる部分が内視鏡挿入部の先端部に特に擦られるからである。
前記潤滑性コート材のコーティングの厚みは、前記挿入補助具の先端部から基端部に向けて徐々に薄くなっていることを特徴としている。このように潤滑性コート材をコーティングしても先と同様の効果を得ることができる。
前記潤滑性コート材のコーティングの厚みの厚い部分は、前記内視鏡挿入部の先端部分であって、内視鏡挿入部の挿入操作時又は引き抜き操作時に前記挿入補助具の先端部に対して挿抜される長さの部分であることを特徴としている。この長さの部分の挿入部は、挿入補助具の先端部に形成された開口部の内周角部に摺接される部分であり、潤滑性コート材にしてみれば剥離する方向に力を受ける部分である。したがって、少なくとも前記長さ部分にコーティングされる潤滑性コート材の厚みを、他の部分よりも厚くすることにより、潤滑性コート材が長持ちし、長期間の使用に耐ええるという本願の目的を達成できる。
請求項5に記載の発明によれば、内視鏡と、前記内視鏡挿入部がその基端部から挿通される挿入補助具とを備えた内視鏡装置において、前記挿入補助具は、内側は硬質部材、外側は軟質部材から構成され、内側の硬質部材は、先端部側の厚みが基端部側の厚みよりも薄く形成され、外側の軟質部材は、先端部側の厚みが基端部側の厚みよりも厚く形成され、内側の硬質部材と外側の軟質部材とが合わされることにより挿入補助具の肉厚は全長において一定とされ、内側の硬質部材に潤滑性コート材がコーティングされ、前記潤滑性コート材は、挿入補助具の先端部側の厚みが基端部側の厚みよりも厚く形成されていることを特徴としている。
内側は硬質部材、外側は軟質部材の2種類の部材から構成している。また、内側の硬質部材の先端部側の厚みを、基端部側の厚みよりも薄く形成するとともに、外側の軟質部材はその逆にして合わされることにより挿入補助具の肉厚を全長において一定とすることにより、先端部の柔軟性を上げている。これにより、先端部の湾曲時の反力が低減するので、湾曲した生体との摩擦抵抗が低減し、挿入補助具の生体に対する挿入性が向上する。また、内側の硬質部材にコーティングされる潤滑性コート材については、先端部側の厚みを基端部側の厚みよりも厚くしたので、潤滑性コート材が長持ちし、長期間の使用に耐えることができる。更に、硬質部材を内側に配置することにより、内視鏡挿入部の先端部が挿入補助具の内面に食い込むことが、内面が軟質部材である場合よりも少なくなるので、より挿通性が向上する。
第1バルーン及び第2バルーンを備えた本願発明の内視鏡装置によれば、第2バルーンの摩擦抵抗に対して、潤滑性コート材がコーティングされた挿入補助具の外周面の摩擦抵抗を5〜30%に規定したので、体腔に対する挿入補助具の挿脱を良好に行うことができる。
以下添付図面に従って本発明に係る内視鏡装置の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、ダブルバルーン式内視鏡装置のシステム構成図が示されている。同図に示すダブルバルーン式内視鏡装置は内視鏡10、オーバーチューブ(挿入補助具)50、及びバルーン制御装置100によって構成される。
内視鏡10は、手元操作部14と、この手元操作部14に連設された挿入部12とを備える。手元操作部14には、ユニバーサルケーブル15が接続され、ユニバーサルケーブル15の先端には、不図示のプロセッサや光源装置に接続されるコネクタ(不図示)が設けられる。
手元操作部14には、術者によって操作される送気・送水ボタン16、吸引ボタン18、シャッターボタン20が並設されるとともに、一対のアングルノブ22、22、及び鉗子挿入部24がそれぞれ所定の位置に設けられている。さらに、手元操作部14には、第1バルーン30にエアを送気したり、バルーン30からエアを吸引したりするためのバルーン送気口26が設けられている。
挿入部12は軟性部32、湾曲部34、及び先端部36によって構成される。湾曲部34は複数の節輪を湾曲可能に連結して構成され、手元操作部14に設けられた一対のアングルノブ22、22の回動操作によって遠隔的に湾曲操作される。これにより、先端部36の先端面37を所望の方向に向けることができる。
図2に示すように、先端部36の先端面37には対物光学系38、一対の照明レンズ40、40、送気・送水ノズル42、鉗子口44等が所定の位置に設けられる。また、先端部36の外周面には、図2、図3の如く空気供給吸引口28が設けられ、この空気供給吸引口28は、挿入部12内に挿通された不図示のエア供給チューブを介して図1のバルーン送気口26に連通される。したがって、バルーン送気口26にエアを送気することによって先端部36の空気供給吸引口28からエアが吹き出され、一方でバルーン送気口26からエアを吸引することによって空気供給吸引口28からエアが吸引される。
図1の如く挿入部12の先端部36には、ゴム等の弾性体からなる第1バルーン30が着脱自在に装着される。第1バルーン30は図3の如く、中央の膨出部30cと、その両端の嵌着部30a、30bとから形成され、膨出部30cの内側に空気供給吸引口28が位置されるようにして先端部36側に取り付けられる。嵌着部30a、30bは、先端部36の径よりも小径に形成され、その弾性力をもって先端部36に密着された後、不図示の糸が巻回されて固定される。なお、糸の巻回固定に限定されるものではなく、固定リングを嵌着部30a、30bに嵌装することによって嵌着部30a、30bを先端部36に固定してもよい。
先端部36に装着された第1バルーン30は、図2に示した空気供給吸引口28からエアを吹き出すことによって膨出部30cが略球状に膨張される。一方で空気供給吸引口28からエアを吸引することによって、膨出部30cが収縮し先端部36の外周面に密着される。
図1に示したオーバーチューブ50は、チューブ本体51と把持部52とから形成される。チューブ本体51は図4に示すように筒状に形成され、挿入部12の外径よりも僅かに大きい内径を有している。内視鏡10の挿入部12は、図1に示した把持部52の基端開口部52Aからチューブ本体51に向けて挿入される。
一方、チューブ本体51は、ウレタン等からなる可撓性の樹脂チューブを基材とし、この基材の外周面が親水性コート材(潤滑性コート材)によって均一の厚みコーティングされるとともに内周面が親水性コート材によって所定の厚みにコーティングされている。なお、内周面にコーティングされる親水性コート材については後述する。親水性コート材としては、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂を例示できる。
チューブ本体51の基端側には、バルーン送気口54が設けられる。バルーン送気口54には、内径1mm程度のエア供給チューブ56が接続され、このチューブ56は、チューブ本体51の外周面に接着されて、チューブ本体51の先端部まで延設されている。
チューブ本体51の先端58は、図4の如く先細形状に形成される。また、チューブ本体51の先端58の基端側には、ゴム等の弾性体から成る第2バルーン60が装着されている。第2バルーン60は、チューブ本体51が貫通した状態に装着されており、中央の膨出部60cと、その両端の嵌着部60a、60bとから構成されている。先端側の嵌着部60aは、膨出部60cの内部に折り返され、その折り返された嵌着部60aはX線造影糸62が巻回されてチューブ本体51に固定されている。基端側の嵌着部60bは、第2バルーン60の外側に配置され、糸64が巻回されてチューブ本体51に固定されている。
膨出部60cは、自然状態(膨張も収縮もしていない状態)で略球状に形成され、その大きさは、第1バルーン30の自然状態(膨張も収縮もしていない状態)での大きさよりも大きく形成されている。したがって、第1バルーン30と第2バルーン60に同圧でエアを送気すると、第2バルーンの膨出部60cの外径は、第1バルーン30の膨出部30cの外径よりも大きくなる。例えば、第1バルーン30の外径がφ25mmであった際に第2バルーン60の外径は、φ50mmになるように構成されている。
前述したチューブ56は、膨出部60cの内部において開口され、空気供給吸引口57が形成されている。したがって、バルーン送気口54からエアを送気すると、空気供給吸引口57からエアが吹き出されて膨出部60cが膨張される。また、バルーン送気口54からエアを吸引すると、空気供給吸引口57からエアが吸引され、第2バルーン60が収縮される。なお、図1の符号66は、チューブ本体51内に水等の潤滑液を注入するための注入口である。
一方、バルーン制御装置100は、第1バルーン30にエア等の流体を供給・吸引するとともに、第2バルーン60にエア等の流体を供給・吸引する装置である。バルーン制御装置100は、不図示のポンプやシーケンサ等を備えた装置本体102と、リモートコントロール用のハンドスイッチ104とから構成される。
装置本体102の前面パネルには、電源スイッチSW1、停止スイッチSW2、第1バルーン30用の圧力計106、第2バルーン60用の圧力計108が設けられる。また、装置本体102の前面パネルには、第1バルーン30へのエア供給・吸引を行うチューブ110、及び第2バルーン60へのエア供給・吸引を行うチューブ120が取り付けられる。各チューブ110、120の途中にはそれぞれ、第1バルーン30、第2バルーン60が破損した時に、第1バルーン30、第2バルーン60から逆流してきた体液を溜めるための液溜めタンク130、140が設けられる。
一方、ハンドスイッチ104には、装置本体102側の停止スイッチSW2と同様の停止スイッチSW3、第1バルーン30の加圧/減圧を支持するON/OFFスイッチSW4、第1バルーン30の圧力を保持するためのポーズスイッチSW5、第2バルーン60の加圧/減圧を支持するON/OFFスイッチSW6、及び第2バルーン60の圧力を保持するためのポーズスイッチSW7が設けられている。このハンドスイッチ104は、ケーブル150を介して装置本体102に電気的に接続されている。
このように構成されたバルーン制御装置100は、第1バルーン30及び第2バルーン60にエアを供給して膨張させるとともに、そのエア圧を制御して第1バルーン30及び第2バルーン60を膨張した状態に保持する。また、第1バルーン30及び第2バルーン60からエアを吸引して収縮させるとともに、そのエア圧を制御して第1バルーン30及び第2バルーン60を収縮した状態に保持する。
次に、ダブルバルーン式内視鏡装置の操作方法について図5(a)〜(h)に従って説明する。
まず、図5(a)に示すように、オーバーチューブ50を挿入部12に被せた状態で、挿入部12を腸管(例えば十二指腸下行脚)70内に挿入する。このとき、第1バルーン30及び第2バルーン60を収縮させておく。
次に、図5(b)に示すように、オーバーチューブ50の先端58が腸管70の屈曲部まで挿入された状態で、第2バルーン60にエアを供給して膨張させる。これにより、第2バルーン60が腸管70に係止され、オーバーチューブ50の先端58が腸管70に固定される。
次に、図5(c)に示すように、内視鏡10の挿入部12のみを腸管70の深部に挿入する。そして、図5(d)に示すように、第1バルーン30にエアを供給して膨張させる。これにより、第1バルーン30が腸管70に固定される。その際、第1バルーン30は、膨張時の大きさが第2バルーン60よりも小さいので、腸管70にかかる負担が小さく、腸管70の損傷を防止できる。
次いで、第2バルーン60からエアを吸引して第2バルーン60を収縮させた後、図5(e)に示すように、オーバーチューブ50を押し込み、挿入部12に沿わせて挿入する。そして、オーバーチューブ50の先端58を第1バルーン30の近傍まで押し込んだ後、図5(f)に示すように、第2バルーン60にエアを供給して膨張させる。これにより、第2バルーン60が腸管70に固定される。すなわち、腸管70が第2バルーン60によって把持される。
次に、図5(g)に示すように、オーバーチューブ50を手繰り寄せる。これにより、腸管70が略真っ直ぐに収縮していき、オーバーチューブ50の余分な撓みや屈曲は無くなる。なお、オーバーチューブ50を手繰り寄せる際、腸管70には第1バルーン30と第2バルーン60の両方が係止しているが、第1バルーン30の摩擦抵抗は第2バルーン60の摩擦抵抗よりも小さい。したがって、第1バルーン30と第2バルーン60が相対的に離れるように動いても、摩擦抵抗の小さい第1バルーン30が腸管70に対して摺動するので、腸管70が両方のバルーン30、60によって引っ張られて損傷することはない。
次いで、図5(h)に示すように、第1バルーン30からエアを吸引して第1バルーン30を収縮させる。そして、挿入部12の先端部36を可能な限り腸管70の深部に挿入する。すなわち、図5(c)に示した挿入操作を再度行う。これにより、挿入部12の先端部36を腸管70の深部に挿入することができる。挿入部12をさらに深部に挿入する場合には、図5(d)に示したような固定操作を行った後、図5(e)に示したような押し込み操作を行い、さらに図5(f)に示したような把持操作、図5(g)に示したような手繰り寄せ操作、図5(h)に示したような挿入操作を順に繰り返し行えばよい。これにより、挿入部12を腸管70の深部にさらに挿入することができる。
このようなオーバーチューブ50を備えたダブルバルーン式内視鏡装置において、実施の形態のオーバーチューブ50は、湾曲した腸管(生体)70への挿通性が向上され、親水性コート材を長持ちさせることにより長寿命化が図られている。
すなわち、図6に示すように、オーバーチューブ50の基材である樹脂チューブ(ここでは便宜上、チューブ本体と同一の符号51で示す)51において、その内周面にコーティングされる親水性コート材80については、厚みが基端側から先端58に向かうに従って徐々に厚くなるようにコーティングされている。これにより、先端58を含むその近傍の親水性コート80が長持ちし、長期間の使用に耐えることができる。
図6の如く親水性コート材80の厚みを変える部分の、樹脂チューブ51全長に対する長さは、先端58から基端に向けて約3分の1から略2分の1である。オーバーチューブ50は、基端部に比べて先端部の方が、挿入される内視鏡挿入部12の先端部36に擦られて磨耗が激しい。このため、先端部及びその近傍部を他の部分よりも多く親水性コート材80を重ね塗りする。オーバーチューブ50の全体にわたって親水性コート材80を重ね塗りすると、不要な部分まで親水性コート材80が厚くなるため、体腔内への挿入時に特に曲げられやすい先端部から3分の1乃至略半分を厚くする。曲げられる部分が内視鏡挿入部12の先端部36に特に擦られるからである。親水性コート材80の厚みを変えるその手法は、樹脂チューブ51に親水性コート材80を塗布後、樹脂チューブ51の先端58を下にして乾燥させるだけで実現できる。すなわち、親水性コート材80の乾燥中に親水性コート材80が自重により垂れ下がりながら乾燥されることにより、先端58に向かうに従って親水性コート材80の厚みが厚くなるからである。また、親水性コート材の厚みは、基端から先端58に向けて徐々に厚くなるようにしても同様の効果を得ることができる。
図7は、図6のオーバーチューブ50の別実施例を示す断面図である。図7のオーバーチューブ50の樹脂チューブ51は、内側は硬質部材51A、外側は軟質部材51Bの2種類の部材から構成されている。また、硬質部材51Aの先端58側の厚みが基端側の厚みよりも薄く形成されるとともに、軟質部材51Bはその逆にして、硬質部材51Aの外周面に合わされることによりオーバーチューブ50の肉厚が全長において一定とされ、オーバーチューブ50の先端58側の柔軟性を上げられている。
これにより、先端部58及びその近傍の反力が低減するので、湾曲した生体との摩擦抵抗が低減し、オーバーチューブ50の生体に対する挿入性が向上する。また、硬質部材51Aの内周面にコーティングされる親水性コート材80については、図6と同様に先端58側の厚みを基端側の厚みよりも厚くしたので、親水性コート材80が長持ちし、長期間の使用に耐えることができる。更に、硬質部材51Aを内側に配置することにより、内視鏡挿入部12の先端部36がオーバーチューブ50の内面に食い込むことが、内面が軟質部材である場合よりも少なくなるので、内視鏡挿入部12の挿通性がより向上する。
なお、実施の形態では、挿入補助具としてオーバーチューブ50を例示したが、これに限定するものではなく、経肛門的に挿入されるスライディングチューブを用いることもできる。
図8は、内視鏡挿入部12の外周面に親水性コート材80がコーティングされ、その親水性コート材80の厚みが挿入部12の基端部(図1の手元操作部14と連結される端部)から先端部(第1バルーン30が装着される端部)13に向けて徐々に厚くされた例を示す一部断面図である。
このように、内視鏡挿入部12の外周面にコーティングされる親水性コート材80について、内視鏡挿入部12の挿入方向先端部13側の厚みを、挿入方向基端部側の厚みよりも厚くすることにより、親水性コート材80が長持ちし、長期間の使用に耐えることができる。親水性コート材80がコーティングされた内視鏡挿入部12と図6、図7に示した、親水性コート材80がコーティングされたオーバーチューブ50とを組み合わせて使用することにより、双方の潤滑性コート材80の使用寿命を更に延ばすことができる。
図9は、内視鏡挿入部12の親水性コート材80の厚みを先端部分のみ厚くした例の一部断面図である。同図において、親水性コート材80のコーティングの厚みの厚い部分は、内視鏡挿入部12の挿入方向先端部分であって、オーバーチューブ50の先端58に対して挿抜される長さLの部分12Aである。挿入部12において、この長さLの部分12Aは、オーバーチューブ50の先端58に形成された開口部59の内周角部59Aに摺接される部分であり、親水性コート材80にしてみれば剥離する方向に力を受ける部分である。したがって、少なくとも長さLの部分12Aにコーティングされる親水性コート材80の厚みを、他の部分よりも厚くすることにより、親水性コート材80が長持ちし、長期間の使用に耐ええるという本願の目的を達成できる。
一方、図6に示したようにオーバーチューブ50の外周面にも潤滑性コート材80がコーティングされているが、このコーティングされたオーバーチューブ50の外周面の摩擦係数は、潤滑性コート材がコーティングされていない第2バルーン60の表面の摩擦係数に対して5〜30%に設定されている。実施の形態では、オーバーチューブ50の潤滑性コート材80はポリビニルピロリドン(摩擦抵抗μ:0.08)であり、第2バルーン60は天然ゴム(摩擦抵抗μ:0.5)であるので、16%に設定されている。
ところで、第1バルーン30と第2バルーン60とを有するダブルバルーン式内視鏡装置は、体腔内への押し込み回数が多いため、体腔の壁面に接するオーバーチューブ50の外周面の摩擦抵抗を下げることが重要となる。一方で、第2バルーン60が膨張して体腔の壁面に密着された際には、体腔の壁面との摩擦を確保し、十分な保持力を得ることが重要となる。
このような背景のもと、オーバーチューブ50の外周面に潤滑性コート材をコーティングすることにより、体腔壁面に対する摩擦抵抗を下げるとともに、比較的大きな摩擦抵抗が確保されている第2バルーン60に対して好適な摩擦抵抗を規定する。すなわち、第2バルーン60の摩擦抵抗に対して、潤滑性コート材がコーティングされたオーバーチューブ50の外周面の摩擦抵抗を5〜30%に規定する。その摩擦抵抗が5%以下であると、オーバーチューブ50を操作する術者の手に対してオーバーチューブ50が滑り過ぎてしまい、誤操作の原因になる。また、摩擦抵抗が30%以上であると、体腔壁面に対する挿抜性が悪くなるからである。よって、前記摩擦抵抗を5〜30%に規定することにより、体腔に対するオーバーチューブ50の挿抜を良好に行うことができる。更に、12〜16%に規定することにより、体腔に対するオーバーチューブ50の挿抜をより一層良好に行うことができる。
繰り返し説明するが、図5に示したように腸管(体腔)70に対して繰り返し往復移動されるダブルバルーン式内視鏡装置のオーバーチューブ50は、内視鏡挿入部12に対する滑り性の他、(1)体腔内壁に対する滑り性が高いこと、(2)適度な柔軟性を有して
いること、(3)適度な腰の強さを有していることが求められる。
オーバーチューブ50の基材としてポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、塩化ビニル、合成ゴムを例示できるが、ポリテトラフルオロエチレンは、(1)、(3)の要件は有しているものの(2)の要件は満たしていない。また、ポリウレタン及び塩化ビニルは、(2)、(3)の要件は満たしているものの(1)の要件は満たしておらず、合成ゴムは(2)の要件は満たしているものの(1)、(3)の要件は満たしていない。そこで、(1)の要件については、その外周面に潤滑性コート材をコーティングすることにより解消可能と判断し、(2)、(3)の要件を満たしたポリウレタン及び塩化ビニルをオーバーチューブ50の基材として選択する。
一方、潤滑性コート材に求められる要件は、(A)充分な滑り性が得られること、(B)基材との相性がよいことが上げられる。
潤滑性コート材としてポリビニルピロリドン、キシロカインゼリー、オリーブオイルを例示できる。ポリビニルピロリドンは、(A)の要件に関して特に効果を発揮し、(B)の要件に関してはポリウレタンとは相性がよく、塩化ビニルについてはポリウレタンほどの相性はない。また、キシロカインゼリーは、(A)の要件を満足することができず、(B)の要件に関してはポリウレタン及び塩化ビニルともに相性がよい。オリーブオイルも同様に、(A)の要件を満足することができず、(B)の要件に関してはポリウレタン及び塩化ビニルともに相性がよい。
上記の結果に基づき、実施の形態のオーバーチューブ50は、ポリウレタンにポリビニルピロリドンをコーティングしたものが使用されている。
また、内視鏡挿入部12の外周面に親水性コート材80がコーティングされ、この外周面の摩擦係数は、比較的大きな摩擦抵抗が確保されている第1バルーン30の摩擦係数に対して5〜30%に設定されている。摩擦抵抗が5%以下であると、オーバーチューブ50を操作する術者の手に対してオーバーチューブ50が滑り過ぎてしまい、誤操作の原因になる。また、摩擦抵抗が30%以上であると、体腔壁面に対する内視鏡挿入部12の挿抜性が悪くなるからである。よって、前記摩擦抵抗を5〜30%に規定することにより、体腔に対する内視鏡挿入部12の挿抜を良好に行うことができる。更に、12〜16%に規定することにより、体腔に対する内視鏡挿入部12の挿抜をより一層良好に行うことができる。
なお、実施の形態の内視鏡装置は、ダブルバルーン式内視鏡装置について説明したが、バルーンを有するオーバーチューブ50の単体において、また、バルーンを有する内視鏡挿入部12の単体において、その外周面の摩擦抵抗をバルーンの5〜30%に規定することが上記理由により好ましい。
10…内視鏡、12…挿入部、14…手元操作部、26…バルーン送気口、28…空気供給吸引口、30…第1バルーン、36…先端部、50…オーバーチューブ、51…チューブ本体(樹脂チューブ)、52…把持部、54…バルーン送気口、60…第2バルーン、80…親水性コート材、100…バルーン制御装置、102…装置本体、104…ハンドスイッチ、110、120…チューブ