JP2006147155A - 光電変換素子及びその製法、並びに色素増感型太陽電池 - Google Patents

光電変換素子及びその製法、並びに色素増感型太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、電解質と酸化物半導体との接触の抑制することに効果的な色素増感型太陽電池の適する光電変換素子を提供することを課題とする。
【解決手段】色素増感型太陽電池に供せられる光電変換素子であり、該光電変換素子は、多孔質性の酸化物半導体電極膜、ヨウ素、及び色素からなり、前記ヨウ素は、酸化物半導体の表面にヨウ素イオン、低級アルコール溶媒を有する溶液より吸着され、そして、前記色素は、ヨウ素が吸着された酸化物半導体に吸着されたものとすること。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池、及びそれに使用される光電変換素子に関する。
現在、色素増感型太陽電池は、低コスト化の可能性、大面積化の容易さから次世代型の太陽電池として、様々な機関で活発に研究されている。色素増感型太陽電池は、アノード電極上に形成される多孔質性の酸化物半導体電極膜と酸化物半導体表面に吸着された色素とからなる光電変換素子、カソード電極、及びレドックス電解質(I/I 系)とを有する。
しかしながら、上記光電変換素子において、色素が酸化物半導体表面の全てを覆っているわけでなく、色素の未吸着部分が生じている。このような状態で光電変換した場合、色素増感型太陽電池では、色素で生じた電子が酸化物半導体に送り込まれても、電子が電極に到達するまでに、色素が未吸着部分の半導体表面と電解質間での酸化還元反応に消費される電子が生じるので、太陽電池の開放電圧が高いものとすることが難しいという問題が生じている。
上記ような酸化還元反応を抑制するために、非特許文献1では、色素が未吸着の酸化物半導体表面上にt−ブチルピリジンが吸着された光電変換素子が開示され、電解質と酸化物半導体との接触の抑制を図っている。
M.K.Nazeeruddin,A.Kay,I.Rodicio,r.Humphry-Baker, E.Muller, P.Liska,N.Vlachopoulos,and M.Gratzel "Conversion of Light to Electricity by cis-X2bis(2,2’-bipyridyl-4,4’-dicarboxylate)ruthenium(II) Charge-Transfer Sensitizers(X=Cl−,Br−,I−,CN−,and SCN−) on Nanocrystalline TiO2 Electrodes "J.AM.Chem.Soc.、 第115巻、6382頁〜6390頁、1993年
しかしながら、非特許文献1による光電変換素子であっても、開放電圧が十分なものではなく、さらなる性能の向上が要求されている。本発明は、電解質と酸化物半導体との接触を抑制することに効果的な色素増感型太陽電池に適する光電変換素子を提供することを課題とする。
本発明者は、酸化物半導体表面にヨウ素を吸着させ、その後、色素を吸着させれば、色素と酸化物半導体との電子の授受に弊害がなく、電解質に対する酸化物半導体の露出部を少なくし、電解質と酸化物半導体との接触を抑制することに効果的との技術思想にたち、本発明の検討を始めるに至った。
通常の色素増感型太陽電池では、電解質にヨウ素イオンを有する溶液が使用されているので、電解質に曝された酸化物半導体の表面にヨウ素が吸着する可能性がある。しかしながら、通常使用されるアセトニトリル溶液では、ヨウ素が酸化物半導体の表面には吸着されないので、通常の色素増感型太陽電池では電解質と酸化物半導体との接触が抑制されることはない。
本発明では、酸化物半導体表面にヨウ素を吸着させるために効果的なヨウ素イオンを有する溶液を検討したところ、該溶液の溶媒に低級アルコールを使用すれば、酸化物半導体表面にヨウ素を効果的に吸着させることが可能との知見を得、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の光電変換素子は、色素増感型太陽電池に供せられる光電変換素子であり、該光電変換素子は、多孔質性の酸化物半導体電極膜、ヨウ素、及び色素からなり、前記ヨウ素は、酸化物半導体の表面にヨウ素イオン、低級アルコール溶媒を有する溶液より吸着され、そして、前記色素は、ヨウ素が吸着された酸化物半導体に吸着されたものであることを特徴とする。
該構造とすることにより、本発明の光電変換素子は、色素増感型太陽電池に組み込まれた際に、色素と酸化物半導体との電子の授受に弊害がなく、電解質に対する酸化物半導体の露出部を少なくし、電解質と酸化物半導体との接触を抑制することに効果的となる。色素増感型太陽電池の電解質に低級アルコールを溶媒とするヨウ素溶液を使用すれば、酸化物半導体の電解質に対する露出部にヨウ素が吸着しうるが、該溶液では、電解質としての効率が低いので、結果として、色素増感型太陽電池の変換効率が低いものとなる。又、ヨウ素が吸着する際に、吸着される色素が立体的に障害となるので、ヨウ素の吸着は低いものとなり、前記露出部を塞ぐ効果が小さい。
それに対し、本発明の光電変換素子のように酸化物半導体電極膜に、ヨウ素を吸着させれば、効率的にヨウ素を酸化物半導体表面に吸着させることが可能であり、その後、色素を吸着させれば、酸化物半導体表面の露出部が少ない光電変化素子を得ることが可能である。かくして、本発明の光電変換素子が組み込まれた色素増感型太陽電池は、開放電圧の向上に効果を奏する。
そして、上記構造の光電変換素子の製法は、多孔質性の酸化物半導体電極膜をヨウ素、低級アルコール溶媒を有する溶液に浸漬し、酸化物半導体の表面にヨウ素を吸着させる工程、ヨウ素を含有する半導体電極膜を色素が含有された溶液に浸漬し、半導体電極膜中に色素を吸着させる工程を有することを特徴とするものである。
本発明の光電変換素子を、導電体上、好ましくは、ガラス基材上に透明導電膜を形成させてなる電極、対向電極、及び電解質とを有してなる色素増感型太陽電池は、従来の色素増感型太陽電池と比べ開放電圧を向上させることができ、該太陽電池の発電効率の向上に寄与する。
本発明の光電変換素子は、色素増感型太陽電池に供せられる光電変換素子であり、該光電変換素子は、多孔質性の酸化物半導体電極膜、ヨウ素、及び色素からなり、前記ヨウ素は、酸化物半導体の表面にヨウ素イオン、低級アルコール溶媒を有する溶液より吸着され、そして、前記色素は、ヨウ素が吸着された酸化物半導体に吸着されたものであることを特徴とする。
酸化物半導体電極膜にヨウ素を吸着させるための溶液は、ヨウ素イオン及び低級アルコール溶媒を有する溶液が使用される。そして、該ヨウ素イオン源として、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ素等のヨウ素化合物が使用される。又、低級アルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシメタノール、2−エトキシエタノール等が使用される。そして、ヨウ素イオンの濃度は、0.1mM〜1Mとすることが好ましい。
そして、酸化物半導体表面にヨウ素を吸着させる方法は、ヨウ素イオン、低級アルコール溶媒を有する溶液に多孔質性の酸化物半導体電極膜を浸漬させる方法、半導体電極膜にスプレー等で前記溶液を噴霧する方法等を使用することができる。そして、ヨウ素吸着時のヨウ素溶液の温度は、室温でも加熱、冷却してもかまわない
酸化物半導体電極膜は、平均粒径が5nm乃至500nmの範囲にある酸化チタン微粒子が凝集してなる、膜厚が、1μm乃至50μmのものとすることが好ましい。平均粒径を当該範囲内とすることで、酸化物半導体表面にヨウ素を吸着させ、その後色素を吸着させるために、これら化学種が導入されるための空孔(空隙)を確保しつつ、酸化チタン微粒子同士の結合を向上させることができる。尚、ここでの平均粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって得られるもので、30万倍の倍率で酸化チタン膜表面を見て、1画面からランダムに20個の微粒子を選択する。その操作を20回行って抽出された微粒子の粒径サイズの平均として計算されたものである。前記酸化チタンは、アナタース型、ルチル型等を使用でき、特にアナタース型の酸化チタンが可視光の光電変換効率が高いので、より好ましい。
酸化物半導体表面にヨウ素を吸着後、色素を吸着させる。該色素には、ルテニウム錯体、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、9−フェニルキサテン系やメロシアニン系等の色素を使用することができる。色素が溶液で1mM〜0.1mM程度の濃度となるようにエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール等の溶媒に溶解させ、該溶液にヨウ素を吸着した酸化物半導体電極膜を浸漬させる。浸漬時の状態は、室温でも60℃程度までの加温状態でも行うことができ、さらには色素溶液を還流させても良い。浸漬を、室温で12時間程行えば、ほぼ飽和状態で色素を半導体電極膜中に導入させることができる。
上記ようにして得られる光電変換素子は、導電体上、好ましくは、ガラス基材上に透明導電膜を形成させてなる電極上に形成されるもので、これと、対向電極、及び電解質、電力を取り出すためのリード線等を有することで色素増感型太陽電池が構成される。
前記導電体には、色素増感型太陽電池の構造によっては、チタン等の金属片もありえるが、ガラス基材及び透明導電膜とからなる電極とすることが好ましい。そして、該透明導電膜には、可視光の透過性を有し、抵抗値が20Ω/□以下、好ましくは、10Ω/□のものであればよく、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、弗素ドープされた酸化錫等が使用される。
又、前記ガラス基材は、可視光の透過性を有していれば、特に限定されるものではなく、フロート法で作製されたソーダ石灰ガラス、石英ガラス、硼珪酸塩ガラス等のガラス板を使用することができ、酸化物半導体電極膜の形成時に変形しないものであれば、プラスチック製の透明板も使用することができる。そして、太陽光の光エネルギーを効率良く利用するために、透明導電膜が形成されたガラス基材において、その可視光透過率が、"JIS R 3106"(板ガラスの透過率・反射率・日射熱取得率試験方法)に基づいて測定される可視光透過率が60%以上であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本実施例で作製した色素増感型太陽電池については、図1を用いて説明する。図1は色素増感型太陽電池1の断面構造を表している。図3に描かれたような断面構造を有するPt電極9が設けられた100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材11からなる対向電極3、及び図2に描かれたような断面構造を有する光電変換素子、すなわち、色素が導入された多孔質性の半導体電極膜8が形成された基材(透明導電膜7が形成された100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材10)からなる電極2とが半導体電極膜8とPt電極9との間が30μmの空隙を有するように並列させられている。
又、電極周辺が封着材5のポリエチレンシートで封着され、電極間を電解質4として、ヨウ化リチウム(0.3M)とヨウ素(0.003M)を含むアセトニトリル溶液が充填されている。又、透明電極7及びPt電極9にはリード線6が設置されている。
図示していない疑似太陽光(100mW/cm2 の強度の光)をアノード電極2側から照射し、擬似太陽光により励起された色素から電子が発生し、電子がアノード電極2中の半導体電極膜8内に移動し、半導体電極膜8内に移動した電子を透明導電膜7、Pt電極9、リード線6、6を介して外部回路に取り出すことによって発電される。本実施例ではリード線6に図示していない電流電圧測定装置(北斗電工製ポテンショ・ガルバノスタットHA−501)に接続して、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)を測定し、色素増感型太陽電池の光電変換効率を評価した。
この場合、Vocとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表している。Jscとは、色素増感型太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm2当たり)を表している。又、FFとは、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc/Jsc)をいい、色素増感型太陽電池としての電流電圧特性曲線の良さを表す。ηは、最大出力Pmaxを光強度(1cm2当たりの値)で除した値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
次に多孔質性の酸化物半導体電極膜、及び該半導体電極膜を構成要素とする光電変換素子の作製手順について説明する。平均粒径20nmのアナタース型の酸化チタン微粒子(日本アエロジル社製)を硝酸(60%)水溶液とイオン交換水とが、重量比で2:98で混合された溶媒に混合した。半導体微粒子と溶媒との混合比は重量比で10:90で、この混合物をボールミルで72時間分散させ酸化チタン微粒子分散溶液を得た。この溶液に酸化チタン微粒子に対して重量比で10倍量の分子量20万のポリエチレングリコールを添加し半導体電極膜形成用塗布剤を得た。
この塗布剤を酸化錫からなる透明導電膜7が被覆された100mm×100mm×1mm(厚)サイズのガラス基材10の透明導膜上にバーコータで塗布、450℃、30分焼成し8μmの膜厚の酸化チタン微粒子が分散してなる多孔質性の酸化物半導体電極膜が形成された基材を作製し、その後、エタノールを溶媒にした1mMのヨウ化カリウム溶液に半導体電極膜を25℃、1分間浸漬させることで、酸化物半導体の表面にヨウ素を吸着させた。
そして、ヨウ素を吸着後に色素のRu錯体[シス−ディ(チオシアネート)−ビス(2,2’−ビピリジン−4,4’−ディカルボキシ)ルテニウム(II)(cis-di(thiocyanato)-bis(2,2'-bipyridine-4,4'-dicarboxy) ruthenium (II))]が、5×10-4mol/lのエタノール溶液中に半導体電極膜を25℃の常温で12時間浸漬することで色素の吸着を行い、光電変換素子を得た。
上記工程後、上記で説明した色素増感型太陽電池を作製し、光電変換効率を評価した。本実施例から得られる光電変換素子を有する色素増感型太陽電池1は、Vocが0.75V、Jscが13.5mA/cm2、FFが0.76、ηが7.7%と優れた光電変換効率を示した。
ヨウ化カリウムエタノール溶液の濃度を1Mにした以外は、実施例1と同様の手順とした。本実施例から得られる色素増感型太陽電池1は、Vocが0.745V、Jscが14.0mA/cm2、FFが0.75、ηが7.8%と優れた光電変換効率を示した。
ヨウ化カリウム溶液の浸漬時間を3分とした以外は、実施例1と同様の手順とした。本実施例から得られる光電変換素子を有する色素増感型太陽電池1は、Vocが0.75V、Jscが15.0mA/cm2、FFが0.72、ηが8.1%と優れたものであった。
ヨウ素吸着溶液を1mMのヨウ化リチウムエタノール溶液にした以外は、実施例1と同様の手順とした。本実施例から得られる光電変換素子を有する色素増感型太陽電池1は、Vocが0.76V、Jscが13.8mA/cm2、FFが0.74、ηが7.8%と優れた光電変換効率を示した。
比較例1
半導体電極膜8にヨウ素吸着の改質を行わなかった以外は実施例1と同様の手順とした。本比較例から得られる光電変換素子を有する色素増感型太陽電池1は、Vocが0.68V、Jscが10.2mA/cm2、FFが0.70、ηが4.9%となった。
比較例2
ヨウ素吸着の代わりに非特許文献1で用いられたtブチルピリジンを吸着させた以外は実施例1と同様の手順とした。本比較例から得られる光電変換素子を有する色素増感型太陽電池1は、Vocが0.70V、Jscが13.7mA/cm2、FFが0.74、ηが7.1%を示したが、Vocは、ヨウ素吸着させた場合よりも低かった。
比較例3
半導体電極膜8へのヨウ素を吸着と色素の吸着の順番を逆とした以外は、実施例1と同様の手順にて、光電変換素子を得た。本比較例から得られる光電変換素子を有する色素増感型太陽電池1は、Vocが0.68V、Jscが11.0mA/cm2、FFが0.72、ηが5.3%を示したが、Vocは、ヨウ素吸着後に色素を吸着させた場合よりも低かった。
比較例4
ヨウ素を吸着させるための溶液の溶媒をアセトニトリルとした以外は、実施例1と同様の手順にて、光電変換素子を得た。本比較例から得られる光電変換素子を有する色素増感型太陽電池1は、Vocが0.69V、Jscが11.2mA/cm2、FFが0.70、ηが5.4%を示したが、Vocは、エタノール溶媒を用いてヨウ素を吸着させた場合よりも低かった。
実施例の色素増感型太陽電池の断面である。
符号の説明
1 色素増感型太陽電池
2 アノード電極
3 カソード電極
4 電解質
5 封着材
6 リード線
7 透明導電膜
8 半導体電極膜
9 対向電極
10 ガラス基材
11 ガラス基材

Claims (3)

  1. 色素増感型太陽電池に供せられる光電変換素子であり、該光電変換素子は、多孔質性の酸化物半導体電極膜、ヨウ素、及び色素からなり、前記ヨウ素は、酸化物半導体の表面にヨウ素イオン、低級アルコール溶媒を有する溶液より吸着され、そして、前記色素は、ヨウ素が吸着された酸化物半導体に吸着されたものであることを特徴とする光電変換素子。
  2. ガラス基材上の透明導電膜上に請求項1に記載の光電変換素子が形成されてなる電極、対向電極、及び電解質とを有してなる色素増感型太陽電池。
  3. 多孔質性の酸化物半導体電極膜をヨウ素、低級アルコール溶媒を有する溶液に浸漬し、酸化物半導体の表面にヨウ素を吸着させる工程、ヨウ素を含有する半導体電極膜を色素が含有された溶液に浸漬し、半導体電極膜中に色素を吸着させる工程を有することを特徴とする光電変換素子の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008301277A (ja) * 2007-05-31 2008-12-11 Oki Electric Ind Co Ltd 通信フレーム配送システム

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