ところが、上記のような従来技術では、凹凸の大きな、あるいは凹凸の激しい試料の表面構造や、内部構造を高解像度または非破壊で観察することが困難である、という問題がある。
本発明の目的は、非破壊で、試料内部の構造、欠陥、異物などの特定構造を観察することが可能な走査試料像表示技術を提供することにある。
本発明の他の目的は、凹凸の大きな、あるいは凹凸の激しい試料の表面構造や、内部構造を高解像度で観察することが可能な走査試料像表示技術を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、試料の表面および内部構造の三次元情報や断層情報を得ることが可能な走査試料像表示技術を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、非導電性の試料を高解像度で観察することが可能な走査試料像表示技術を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高エネルギーの粒子線の照射による表面構造や、内部構造の観察をより効果的に行うことが可能な試料を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
本発明は、試料内部に埋設された特定構造物に到達し、当該特定構造物で反射して試料表面から脱出するに足る入射エネルギーで、前記特定構造物を含む領域を、荷電粒子線走査し、当該特定構造物で反射した反射荷電粒子、および/または前記荷電粒子が試料表面から脱出する際に試料表面で放出させる二次荷電粒子を検出し、当該検出された荷電粒子に基づいて、前記特定構造物と、前記領域表面に配置された構造物、或いは前記特定構造物の埋設深さとは異なる深さに埋設された構造物との距離を測長することを特徴とする試料の測長方法である。
本発明は、前記荷電粒子線が、50keV以上のエネルギーを持った電子ビームであることを特徴とする測長方法である。
本発明は、粒子線として50keV以上の高エネルギー走査電子ビームを用いた半導体デバイスなどの試料の観察において次のような現象のあることを発見してなされたものであり、非破壊で試料の内部構造を観察できる。たとえば、試料の内部構造の観察には、一般的に透過形電子顕微鏡が用いられる。透過形電子顕微鏡観察においては、試料を薄膜化しなければならず、試料の破壊観察となる。
本発明は、非導電性試料を生のまま高解像度で観察できる。たとえば、高解像での試料形状の観察には、走査形電子顕微鏡を用いる。走査形電子顕微鏡による非導電性試料の観察では、チャージアップによる像質劣化を防止するために、金やカーボンなどを試料表面に蒸着して蓄積電荷を表面リークさせるようにするか、1keV程度の低エネルギー電子ビームを用い、二次電子放出量を多くしてチャージアップ量を低減させる方法が採られる。
導電膜蒸着は、試料の本来の物性を損なう破壊観察となり、低エネルギー電子ビーム観察では低解像度となる。これらの現象を解析した結果、内部構造を観察できる理由は、次のようなメカニズムによることが判った。以下、図1を用いて説明する。
一般に、走査形電子顕微鏡は、数百eVから30keV程度のエネルギー範囲の走査電子ビーム1aを試料2に照射し、電子ビーム1aと、試料2との相互作用の結果生じる一次情報(反射電子3a,X線・光などからなる電磁波4aなど)のうち、主として二次電子5aを像信号として用い、試料像を表示する。勿論、X線や光、吸収電子、透過電子などを像信号として利用してもよい。
一方、本発明の高エネルギー走査電子ビーム1bでは、エネルギーが高いため、電子ビームが試料2の深奥まで侵入するとともに、内部構造6で散乱された散乱電子3bが試料2から脱出する。この散乱電子3bも、試料2から抜け出る際に試料2と作用し合って電磁波4bや二次電子5bなどの二次情報を生じる。像信号としての二次電子を見ると、一次情報としての二次電子5aに比べて、二次情報としての二次電子5bの方が多い。従って、二次電子信号の試料像では、二次電子5bに反映された散乱電子3bの量、すなわち内部構造6が観察できることになる。
図2に走査電子ビームエネルギーと二次電子放出量との関係をモデル的に示す。一般に、一次情報の二次電子5aは数百eV前後のエネルギーで放出量のピークを持ち、それ以上のエネルギーではエネルギーの増大とともに放出量が少なくなってゆく。一方、二次情報の二次電子5bは、ビームエネルギーがしきい値Eb を超えるまでは放出されない。エネルギーがEb を超えた所で二次電子5bの放出が始まり、エネルギーの増大とともに次第に放出量も増加してゆく。
これは、電子ビーム1bのエネルギーが低い場合、内部構造6bで散乱された電子3bが試料表面まで到達するに充分なエネルギーを与えられず、散乱電子3bにより生成された二次電子も深くからでは試料表面を脱出できないためである。すなわち、試料表面から内部構造6までの深さをdとすると、エネルギーEbの電子ビーム1bの飛程はほぼ2dに相当すると考えられる。なお、二次電子の脱出深さは、100Å程度であり、10eV程度のエネルギーの二次電子が最も多い。一方、散乱電子の量は、散乱方向に対して余弦法則といわれる方向依存性をもつ。すなわち、図3の電子ビーム1bが試料2に垂直に入射する場合を例に採ると、散乱電子量は散乱角θが0°の方向に最大となり、θが大きくなるに従って減少してゆき、θが90°では0となる。量的には、θが0°から60°までの散乱電子で全散乱電子量の90%近くを占めることになり、像信号としてはこの範囲の散乱電子を考慮すればよい。
これらのことから、半導体デバイス観察における走査電子ビームのエネルギーを見てみる。半導体デバイスは一般的に、トランジスタや容量などの素子部分と、その上に形成される配線層とからなる。これらデバイス構造部分の深さは、配線層の数などに依存するが平均的には5μm程度である。一方、像信号源として寄与させる散乱電子を、上述の検討から散乱角が0°から60°までの範囲とすると、散乱電子が試料表面から脱出するための走査電子ビームの飛程は、図4から、15μm以上必要であることが判る。
飛程15μmを走査電子ビームのエネルギーに換算するためにKatzとPenfoldの次式(Revs.Modern.Phys.,Vol24:28('52)) を用いる。
ここで、R(mg/cm2)は飛程、E(keV)は電子ビームのエネルギーである。飛程RとエネルギーEの関係を図5に示す。RはほぼE2 に比例している。これに代表的な半導体材料としてのSiの密度2.34g/cm3 、配線材料としてのAlの密度2.69g/cm3 を用いて換算してみると、電子ビームのエネルギーが50keVの時に、Si中の飛程が約17μm、Al中の飛程が約15μmとなる。
このことから、半導体デバイスの観察では、50keV以上の電子ビームエネルギーの必要なことが判る。また、50keVという数値は実際の観察経験とも良く一致している。また、非導電性試料を生のまま観察できる理由は、電子ビームの大部分が試料奥深くに侵入・突き抜け、試料表面近傍でのチャージアップ量が極めて少なくなるためである。なお、観察される試料像のコントラストは、上述のような試料の内部構造に起因するだけでなく、試料の表面構造や部分的な材質の違いなどにも依存した複合的なものとなる。
たとえば、図6に例を示すような表面の凹凸がある場合、走査電子ビーム1bが試料の平坦部分を照射する時、段差部を照射する時、または近くに段差がある部分などを照射する時とでは、試料表面から反射される反射電子3aの全反射電子量および方向依存性が変わる。すなわち、試料中に侵入し散乱電子3bとなりうる電子の数も、発生し像信号となりうる二次電子の量や一次情報の二次電子5a,二次情報の二次電子5bの構成比も異なってくる。
また、図7に例を示すような、試料材質が2a,2bと異なる場合や、試料表面に異種物質2cが付着している場合などにも、同様に、試料中に侵入し散乱電子となる電子の数、ひいては検出される全二次電子量と、二次電子5a,5bの内訳が変わる。これらが試料像のコントラストの一因となる。さらに、図8に例を示すように、電子ビーム1bを遮蔽するような構造2d,2eが在る場合でも、電子ビーム1bが突き抜けることのできる厚さ・深さの遮蔽構造に対しては、これらを透かして影となる部分D,Eにコントラストが生じ、試料像として観察することが可能となる。これは、換言すれば、試料表面に極めて大きい凹凸、激しい凹凸が在る場合でも凹部の内部・底部、凸部の側面・影となる表面の観察ができることを示している。
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
本発明によれば、上述の新しく発見された現象を応用することにより、従来困難または不可能とされていたことが容易に行える。効果のある用途の例を下記する。観察という面では、非破壊で、1.試料内部の構造・欠陥・異物などを観察でき、2.従来に比べて、凹凸のより大きく・激しい表面構造の観察ができ、3.表面および内部構造の三次元形状を求められ、4.断層観察ができ、5.従来に比べて、非導電性材料をより高解像で観察できるなどの効果が得られる。
検査・計測という面では、非破壊で、1.試料内部および表面に形成されたパターンや構造の測長・測高ができ、2.試料内部および表面に存在する粒子やドメイン・気泡・異種物質などを計数・計測でき、3.試料内部および表面に存在するパターン欠陥や異物などを検査でき、4.試料内部および表面の構造の変化の推移をその場監視でき、5.従来に比べて、より高精度の測長・計測、より高感度の欠陥・異物検査が可能となるなどの効果が得られる。
また、欠陥検査などにおいては、成分分析機能や欠陥修正機能などを併用することにより、より効率的な作業ができる。なお、他の処理装置と組み合わせることにより、インラインプロセスモニターとしても応用できる。また、本手法を適用することにより、上述のように従来不可能または困難であったことが実現できるため、より高品質で信頼性の高いデバイスや部品を、経済的に製作できるようになる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて具体的に説明する。最初に、粒子線として高エネルギー電子ビームを用いた例、すなわち、本発明の走査試料像表示方法および装置を走査形電子顕微鏡に適用した場合の装置構成例を図9に示す。
まず、試料2が、ロード/アンロード機構を介して、ローダ/アンローダ室20から、試料室22内の試料ステージ21上に移動し、装填される。ローダ/アンローダ室20は真空バルブ23によって、試料室22と隔離されており、試料室22の真空を破ることなく、試料2が試料ステージ21に装填できるロードロック機構となっている。次いで、電子銃15から放出された電子ビーム1bは、加速管16により数十keV以上のエネルギーに加速された後、収束レンズ17および対物レンズ18によって細く絞られ、試料2を照射するとともに、偏向器19によるXY偏向を受け、試料2上を走査する。走査電子ビーム1bに照射された試料部分からは二次電子5bや、X線・光などの電磁波4bが放出される。
二次電子5bは、対物レンズ18の磁場に巻きつけられながら対物レンズ18の軸方向に上方に引き出され、シンチレータ/光電子増倍管などからなる二次電子検出器24によって検知され、電気信号に変換される。この電気信号は、信号増幅処理装置25によって増幅されたあと、ディスプレイ26を輝度変調し、試料像がディスプレイ26に表示される。試料2から放出されるX線や光などの電磁波4bなども同様に、検出器27によって検知され、分析あるいは像表示に用いられる。試料ステージ21は、観察場所および観察方向を任意に選ぶことができるように、X・Y移動機構21aと回転・傾斜機構21bとから構成されている。
半導体ウェハを試料2とし、ロット単位で処理する場合について、走査・処理のフロー例を図10に示す。
試料2としてのウェハは、ロット単位でウェハキャリアに保管されている。このウェハキャリアをローダ/アンローダ室20にセットすると、光学式あるいは磁気式読み取り装置によってウェハキャリアに記されたロット番号が読み取られ、装置に起動がかかる。次いで、このロット番号に対応した作業指示、作業条件、作業データが読み取られる。この作業指示・作業条件・作業データに基づいて、以降の処理が自動的に行われることになる。
なお、作業指示とは、どのウェハの、どの場所で、どのような作業をするかなどの作業内容を規定するものである。作業条件とは、作業を実施する際の電子ビーム照射、像形成処理、計測処理などに係わるもので作業遂行に必要な装置パラメータ規定する。また、作業データとは、作業遂行に必要な装置パラメータ以外のデータ、たとえば、外部のテスタや欠陥検査装置から転送されてくる欠陥の位置座標データなどが該当する。
処理としては、まず指定された一枚のウェハが試料ステージ21に装填される。次いで、電子線露光装置におけるアライメント方法に準じてウェハ合わせ作業が行われる。ウェハ位置の粗合わせは、試料ステージ21に装填する前に行ってもよい。たとえば、ウェハの外形を光学的に検出してウェハ中心を求める方法である。ウェハの精密位置合わせは、ウェハ上に形成されたアライメントマークの上を電子ビーム1bで走査し、得られる反射電子の信号波形からアライメントマーク位置を求める方法や、アライメントマークの走査像を予め記憶されている基準像と一致させることによりアライメントマーク位置を求める方法などがある。
合わせ作業終了後、本作業としての観察・検査・計測或いは分析などの作業が行われる。これらの作業は単独で行われてもよいし、たとえば、観察−分析というように複数の作業を組み合わせて行ってもよい。作業結果としての試料の像データ・検査データ・計測データ・分析データなどは、所定のデータ処理後、所定の手順に従って、保管・表示、あるいは外部のホストコンピュータや分析装置、ウェハ処理装置などに転送するために用いられる。
作業の実施方法として、ウェハ内の任意の複数箇所作業、ウェハ内同一箇所の任意時間をおいての繰り返し作業などが可能である。また、ウェハ毎に、或いはウェハ内の作業箇所毎に作業内容を変えることも可能である。これらの作業内容は、本装置の制御コンピュータ経由で入力してもよいし、上位のホストコンピュータからオンライン入力することも可能である。
上記のような作業が、指定されたウェハ全てに対して行われる。以下、本作業の具体例を述べる。
検査作業の一つとして測長作業が挙げられる。図11にその説明例を示す。試料2の表面上に形成されたパターン7a、および内部に形成されたパターン7bを電子ビーム1bで走査し、得られる二次電子信号波形から、パターン寸法W,W′や、パターン間距離D,パターン位置座標P,P′などを求める。測長の具体的な方法は、一般に測長SEMなどで用いられる方法に準じる。なお、この場合、図12に示すように、測定すべきパターン7bの近くに、電子ビームの走査線1Sにパターン7aがかかるAのような状態にパターン7aが配置されていると誤測長の恐れがある。測長箇所では、走査線2Sとして示すように、パターン7aと7bとを走査線の幅以上に離して配置することが望ましい。
また、図13および図14に例示したように、観察角度または観察方向の異なる二つ以上の同一視野像から三次元形状を求め、これを基に三次元形状を表示したり、三次元的な寸法を測長することも可能である。たとえば、電子ビーム1bと試料2とのなす照射角度が0°(真上からの観察)と、α(斜め上方からの観察)と、異なる二つの同一視野像を取り込み、二つの像の間での測長すべき二点間の距離差から三次元形状を算出する。すなわち、照射角度0°の試料像では、水平方向の二点間距離が実寸で見えるのに対して、縦方向の距離は0に見える。
一方、照射角度αの試料像では、水平方向が×cos α、縦方向が×sin αだけ実寸よりも縮んで見える、ことを利用するものである。なお、照射角度の変更は、偏向器を用いて電子ビーム1bの試料2に対する入射角度を変えるか、または試料ステージ21の傾斜角度を変化させることによって実現してもよい。また、照射方向・角度の変更は、2ステップに限らない。形状を観察・測長したい方向に傾けた数多くの試料像を取り込むことにより、算出する立体形状の忠実度や精度が向上する。
表示については、試料像と立体形状像の組み合わせなど、複数の画像を同時に表示することも可能である。同時表示は、同一ディスプレイ上に表示する方式でも、異なるディスプレイに表示する方式でもよい。なお、本機能の具体的な用途としては、パターン寸法測定機や、パターン位置座標測定機、パターン間重ね合わせ精度測定機、パターン描画歪または転写歪測定機などが挙げられる。特に、パターン間重ね合わせ精度の測定は、従来の電子ビーム応用装置ではできなかったことを可能とするものである。
2番目の例として、粒子やドメイン・気泡・異物などの計測が挙げられる。図15(a)に粒子計測の例を示す。走査電子ビーム1bで試料2の指定領域上を走査し、試料像を取り込む。この試料像を解析し、粒子数を計数するとともに、サイズ分布やウェハ内分布などのデータを求める。この場合、粒子計数などの解析方法は、一般的な画像解析装置の手法に準じるものである。
なお、計測作業に併せて粒子の成分分析作業を行うことも可能である。成分分析は、試料像から成分分析を行いたい粒子8cの位置座標データを求め、これを基に電子ビームと被分析粒子の位置出しをした後、電子ビーム1bを目的の粒子8cの上に照射し、粒子8cから放出される特性X線9を検知し、成分を同定する方法などを用いる。X線検出には、半導体検出器を用い、X線の入射によって生じる電流パルスの波高値・数などから、元素の種類や量を同定する手法などを適用する。
この際、成分同定の感度や精度を上げるために、粒子8cの上の被覆物を除去することも可能である。粒子上の選択的な被覆物の除去は、たとえば図15(b)に示すようなレーザアシストエッチングによって行う。これは、ガスノズル11からエッチングガス12を吹きつけながら、細く絞ったレーザ光線10をエッチングしたい部分に照射するものである。エッチングガスは被覆物のみをエッチングし、粒子を損なわないような選択性を有するガスを選ぶ。対象とする試料が多種にわたる場合は、複数のガスノズルを有し、適当なガス種を選択して使用できるようにする。また、エッチング条件を最適化できるようにするため、ガスノズルの水平位置および上下位置と、ガスを吹きつける向きは可動・調整できるようにしておく。
勿論、成分分析の手法は、X線に代えて、オージェ電子やカソードルミネセンスのような情報を検知することも可能である。また、分析に用いる刺激ビームは、電子ビームに限らず、レーザビームやイオンビームなどを用いてもよい。また、エッチング方法も、レーザアシストエッチング以外の、イオンビームアシストエッチングなど他の化学的エッチング法や、イオビームスパッタリングなどの物理的エッチング法を適用することも可能である。しかし、一般的には、被覆物と粒子とのエッチング選択性を高く持たせる必要から、化学的エッチング法が適している。なお、粒子計測においても、図16に処理フローの例を示すように、照射方向・角度の異なる複数の試料像を取り込み、三次元形状処理を行うことにより、粒子の立体形状や、どの深さ位置にどのような粒子が分布しているか、といった深さ方向の情報を得ることができる。
また、照射方向・角度を変えて試料の観察を行うということからは、結晶の方向性に関する知見を得ることもできる。図17にその例を示す。試料2が多結晶構造6(内部構造)を有しており、その結晶方向が、結晶粒6aは斜め方向、結晶粒6bは垂直方向、結晶粒6cが水平方向を有する場合である。この試料を真上からの走査電子ビーム1bで観察した場合、試料表面に向かう散乱電子3bの量、すなわち、像信号量は6cが最も大きく、6a,6bの順で小さくなる。一方、斜め方向から照射する走査電子ビーム1b′で観察した場合には、像信号量の大きさは、6c,6b,6aの順で小さくなる。このように、結晶方向と観察方向との関係により、像信号量すなわち像コントラストが変化する。この変化状況を解析することにより、各結晶粒の結晶方向を判別することができる。また、粒子数計測と同様の画像解析を行うことにより、結晶粒の大きさ分布や、結晶方向分布などのデータが得られる。
3番目の例として、パターン欠陥や異物の検査がある。たとえば、欠陥としては図18に示すような種類がある。欠陥検査は、これらの欠陥を検知するために、一般的な欠陥検査装置で用いられている手法に準じて、図19
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および図20に示すような手順を採る。まず、指定領域の試料像を取り込み、平滑化などの画像処理をしたあと、予め記憶されている基準像と位置合わせおよび比較を行い、試料像と基準像との差異から欠陥・異物を検出する。図19では。B部が凸欠陥として検知される。
基準像は、同一試料または同種試料内の指定領域に相当する領域で撮られた標準試料像でもよいし、パターンデータを基に作られた該当領域のパターンデータ像であってもよい。また、検査作業の中で部分的には標準試料像を基準像として用い、部分的にはパターンデータ像を基準像として、組み合わせて使用することも可能である。
検査領域はウェハ全面であってもよいし、部分的に検査することも可能である。たとえば、テスタや欠陥検査装置による検査の結果、不良或いは欠陥が在ると判定されたチップや回路ブロックの位置座標データをテスタや欠陥検査装置からオンライン入力し、入力された座標データから検査すべき不良チップや不良回路ブロックを位置出しし、その部分だけを選択的に欠陥検査する。一方、欠陥検査においても、粒子計測の例と同様に、欠陥部分の成分分析を行うことができる。また、エッチングガスによる被覆膜除去と同様の手法を用いることにより、パターン欠陥の修正ができる。但し、凸欠陥や孤立欠陥の除去には、エッチングガスを用いるが、凹欠陥の修復には堆積性のガスを用いる点が異なる。これら欠陥の修復技術は、ホトマスクの欠陥修復装置や、LSIの配線修復装置に使われている技術と基本的には同じである。
なお、従来の欠陥検査装置としては光学式が一般的であるが、高エネルギー電子ビームを用いることの特徴として、欠陥検出感度が高いということの他に、不透明な材質の下にある欠陥を検出できることが挙げられる。特に、図18に示した欠陥のうち、パターン位置ずれの検出は、従来の方法では検出できなかったことを可能とするものである。
4番目に、試料の状態変化を監視する例がある。図21は一例として、半導体デバイスの加速試験への適用を示すものである。監視したい配線パターン7の両端にプローブ13を当て、プローブ13を通じて電流源14から供給されるストレス電流を印加する。配線パターン7の試料像が指定時間毎に取り込まれ、配線パターン7が断線に至るまでの状態が記録・表示される。表示は、例えば、以前の状態との差異像をとり、変化分のみを強調することで行われる。また、試料像と同時に、電流値や抵抗値などの電気パラメータの推移も収集・記録・表示される。勿論、監視したい配線の数に応じて、使用するプローブや電源の数は追加できる。
なお、印加ストレスは、直流電流に限らず、交流電流やパルス的電流であってもよい。また、電流の他に、電圧や動作用電気信号を印加したり、試料を加熱、或いは冷却し、温度による変化を観察・監視することも可能である。なお、加熱する場合は、熱電子や加熱部からの発光が像信号のノイズとして働くため注意が要る。さらに、これら複数のストレスを組み合わせて同時に加えてもよい。なお、これらストレスを試料に加えるための機構は、従来の走査形電子顕微鏡観察などで用いられている方式に準ずるものである。
5番目の観察手法として、断層観察がある。電子ビームのエネルギーに依存して得られる試料深さ方向の情報が変化することを利用するものである。図22に処理フローの例を示す。電子ビームの加速電圧を変化させながら、逐次試料像を取り込んでゆく。
まず、或る加速電圧に設定したあと、電子ビームの調整と同一視野の確保を行う。電子ビームの調整とは、高解像条件を維持するために、軸合わせや焦点合わせ、非点収差補正などを行うことである。同一視野の確保は、加速電圧を変更しても、常に同一視野領域を観察できるようにすることである。たとえば、先に取り込んだ試料像を基準として、基準像に観察中の試料像が一致するように電子ビームの走査領域を調整する方法を採る。または、電子線露光装置で用いられるアライメント方式に準じて、指定した像中の対象物をアライメントマーク代わりに用い、位置合わせすることも可能である。
次に、指定領域の試料像を取り込む。取り込まれる試料像は、設定された加速電圧が高い時ほど、より深い部分までの情報を持ったものとなる。たとえば、図23に示すような、試料2の内部に配線パターン7bと7b′,7b′′が在る場合を考える。設定された加速電圧が比較的低く、走査電子ビーム1bの侵入深さが、深さdに位置する配線パターン7b付近であるとすれば、得られる試料像Aには配線パターン7bが見え、より深くに在る配線パターン7b′,7b′′は観察されない。一方、比較的高い加速電圧を印加し、電子ビーム1b′の侵入深さがd′に位置する配線パターン7b′,7b′′まで達する時には、得られる試料像A′中に、配線パターン7b′,7b′′が観察される。
従って、試料像A′とAの差画像を作れば、深さd′近傍の断層画像A′、すなわち、配線パターン7b′,7b′′のみの画像が得られる。このようにして求めた複数の断層像を組み合わせることによって、試料内部の立体形状を得ることも可能である。なお、通常、試料像AとA′とでは、信号レベルやコントラストの大きさが異なる。従って、精度の高い差画像を求めるための前処理として、試料像A,A′間で信号レベルやコントラストの大きさを合わせることが必要である。
差信号を求めるための前処理の一例を図24R>4に示す。試料像AとA′の像信号は、まずAND処理を受ける。このAND処理では、画素毎に像信号の有無が比較され、A′像のみに像信号のある部分Cと、A・A′像共に信号のある部分Dとに分けられる。この場合、Cの部分は配線パターン7b′に相当し、そのまま断層像の信号として用いられる。
一方、Dの部分については、さらに信号レベル合わせや、コントラスト合わせ処理が施され、その結果を減算する。減算処理後の差分信号Eは、配線パターン7b′′に相当し、C部分の信号と組み合わされて断層像A′の信号となる。
半導体デバイスに電子ビームを照射する時の問題として、デバイスの照射損傷がある。照射損傷は、デバイス特性を劣化させるため、損傷を低減、或いは回復させることが必須となる。照射損傷の原因を検討した結果、図25に示すように、高エネルギーの反射電子3が、試料2と試料上部にある対物レンズ18の下面との間で多重散乱しており、この多重散乱が大きな損傷を与える主要因であることが判った。反射電子の多重散乱対策を検討するため、試料・対物レンズ部分を拡大した断面図が図26である。
図26(a)に示すように、従来は、対物レンズの上部磁極18aと下部磁極18bがつくる電子ビーム通路に、リン青銅製の真空シールドパイプ28を通していた。しかし、リン青銅は電子の反射係数が大きく多重散乱し易い。図26(b)は、反射電子多重散乱抑制の一手法を示すものである。真空シールドパイプ28の試料2に面した試料対向部28aを、軽元素で電子の反射係数が小さいカーボンを用いて製作するとともに、断面形状を反射電子の散乱が拡がりにくい鋸歯状としたものである。なお、試料対向部28aの材料はアルミニウムなどの軽金属材料でもよい。形状も鋸歯状に限らず、櫛状を呈する形状としてもよい。
一方、照射損傷の回復については、たとえば、観察時の電子ビーム照射によりシフトしたMOSデバイスのしきい値が、450℃の水素アニールで回復することを確認している。観察後、用途に応じて試料をアニールすることが必要である。観察後、連続して試料のアニール処理ができるようにすることが最良である。アニール機能は試料ステージ21に設けた加熱機構を用いてもよいし、ローダ/アンローダ室20に加熱機構を付加してもよいし、別ユニットにすることも可能である。加熱は抵抗加熱方式を用いてもよいし、ランプ加熱方式を用いてもよい。また、アニール処理部には、水素や窒素などのガス導入ができる。
上記実施の形態では、二次電子検出器24を対物レンズ18の上部に設け、対物レンズの磁場を利用して二次電子を収集する方式を用いているが、代わりに、対物レンズ下部に二次電子検出器を装着し、印加した電界により二次電子を検出する方式を用いてもよい。また、二次電子検出器は、シンチレータ・光電子増倍管の代わりに、二次電子増倍管を用いてもよい。また、信号として用いる二次情報は、二次電子以外のX線や光、吸収電子などを検出してもよい。また、二次情報の信号量を大きくするために、観察すべき試料上に二次電子や蛍光などを発生し易い物質を薄く堆積または塗布してもよい。図27は、その一例を示すものである。試料2の上に、二次電子放出率の高い酸化物質を薄く堆積し、散乱電子3bによって生成される二次電子数を多くするものである。なお、別の例として、酸化物の代わりに蛍光材を薄く塗布し、散乱電子による蛍光材の発光を検出してもよい。また、試料はウェハに限らず、パッケージに組み込まれたデバイスでも構わない。また、試料の処理はロット処理に限らず、枚葉処理でも対応できる。また試料の着脱はオペレータが人手で行う代わりに、他の処理装置と自動搬送できるようにしてもよい。また、試料の観察場所の移動・回転・傾斜は、試料ステージを移動、回転、傾斜させる代わりに、電子ビームの照射位置を移動、照射領域を回転、照射方向を傾斜させるようにしてもよい。
また、用いる粒子線は電子ビームに限らず、イオンビームやレーザビームなど他の刺激ビームを用いてもよい。また、二次情報を得るための一次情報は、散乱電子に限らず、電磁波などを用いてもよい。なお、対象とする試料は、半導体デバイスに限らず、ホトマスク基板や表示デバイス、配線基板、光ディスク、或いは金属材料、高分子材料、生体などであっても構わない。生体など軽元素の対象については、コントラストを大きくするため、重金属で染色することも可能である。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。