次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。先ず、データ通信手段としての接触タグ1の構成を、
図1(A)の側面図、図1(B)の下面図、及び図2のブロック図を用いて説明する。
図1(A),(B)に示すように、接触タグ1は略直方体状に構成され、その長手方向一端の下面に基準電極2が、他端の下面に受信電極3及び送信電極4が、それぞれ露出して設けられている。なお、接触タグ1の外形や各電極2〜4の露出位置は、用途に応じて適宜設計変更可能である。
図2は、接触タグ1の内部構造を概略的に表すブロック図である。接触タグ1は、制御部及び演算部を内蔵したCPU7を備え、更に、CPU7による演算結果等を記憶するメモリ8や、乱数を発生してCPU7に入力する乱数発生部9を備えている。
また、前述の基準電極2及び受信電極3は、電圧検出部11に接続され、基準電極2及び送信電極4は電圧印加部12に接続されている。電圧検出部11は、基準電極2と受信電極3との間に印加される電圧を検出電圧値としてCPU7に入力する。すると、CPU7は、この検出電圧値に応じた増幅命令を増幅部13及び電圧印加部12に入力する。
すなわち、人体等の接触回路のインピーダンスが高い(若しくは低い)と、電圧検出部11によって検出した電圧値からデータが復調できない場合がある。そこで、電圧検出部11が検出した電圧信号を、過去数秒間に検出された電圧値に応じた増幅命令に基づいて増幅するために、電圧検出部11には増幅部13が接続されている。増幅後の電圧信号は、復調部14によって復調され、デジタルデータとしてCPU7に入力される。
また、接触通信で送信するデータがCPU7から出力され、変調部16において、その送信するデータを発信部15が発生する発信信号に載せて変調し、電圧印加部12によって、前述のように接触回路のインピーダンス等に合わせて、適正値に増幅した上で基準電極2と送信電極4との間に印加する。
更に、CPU7は、電圧検出部11及び電圧印加部12にモード切替命令を入力している。モード切替命令とは、接触タグ1の動作モードを、電圧検出部11での電圧検出を休止する送信モード、電圧印加部12での電圧印加を休止する受信モード、または、電圧検出部11での電圧検出と電圧印加部12での電圧印加とを休止する休止モードに切り換える命令である。CPU7は、乱数発生部9から入力される乱数に基づき、例えば次のようにモード切替命令を出力する。すなわち、乱数発生部9から入力された乱数を例えば3で割った余りが0の場合は休止モードを選択し、余りが1であれば送信モードを選択し、余りが2であれば受信モードを選択するといったようにモードを切り換えるのである。
これは、接触通信を行う1つの接触回路上に沢山の接触タグ1が存在し、それらの間で接触通信される場合、複数の接触タグが同時に送信モードとなると、送信するデータが混合されてしまう虞があるが、本実施の形態では、このようにモードを切り換えているため、データの混合を良好に回避することができる。更に、3で割った時の余りが0の時も休止モードではなく受信モードを選択するようにして、2/3の確率で受信モードが選択され、1/3の確率で送信モードが選択されるようにして、接触通信を向上させる事も可能である。なぜなら、多数の接触タグ間で接触通信する場合、同時に複数の接触タグが送信してしまうと、接触通信が難しいだけでなく、送信モードの接触タグは、受信できない為、接触通信を完了するまでに時間が掛ってしまう。これに対して、1つだけ接触タグが送信モードとすれば、受信モードである他の接触タグは、全て受信できるため、接触通信がより早く完了する。それゆえ、送信モードよりも受信モードが選択される確率を上げておくのが良い。
また、図示省略したが接触タグ1はそれぞれ電源を備えている。1つの接触回路上に電源の種類の異なる接触タグ1が存在する場合は、各モード(送信・受信・休止)への時間配分を次のように設定するとよい。すなわち、AC電源等の外部電源を持つ設備用の接触タグ1は、電力消費の多い送信モードへの時間配分を多くし、バッテリしか持たない携帯型の接触タグ1では、電力消費の多い送信モードへの時間配分を少なくするとよい。また、バッテリしか持たない携帯型の接触タグ1では、通常は、受信モードとし、データを受信した後、送信モードが選択されるようにすれば、節電することができる。ところで、受信モードが送信モードに比較して節電できるのは、受信モードでは、相手の接触タグからの電圧を受信電極で検知してさえいればよいため、送信のための電圧を常に送信電極に印加しておく必要を無くせるためである。
また、自動改札で利用されるスイカのように、通信が必要の時のみ電波にて電気を供給される外部電源を持つ接触タグ1では、送受信モードを半分づつに設定しておくとよい。なお、外部電源としては、AC電源や一部の髭剃機のようなインダクティブ電源や無線タグのようにマイクロ波や電磁誘導を用いたものなど種々のタイプがある。
また、複数の電源(AC電源などの外部電源と、バッテリなど)を持つ接触タグ1については、外部から電源供給を受けているか否か、バッテリ残容量は充分か否かなどといったそれぞれの電源状態を検出し、最適な電源から接触タグ1へ電源供給する電源制御器を設けるのが望ましい。この構成により、どの電源を利用しているかに応じて各モード(送信・受信・休止)への時間配分を変更することができる。
例えば、図3に示すように、外部の1次コイル17aと内蔵された2次コイル17bとの間の電磁誘導で充電がなされる無線電源17と、プラグ18aを介して100Vの交流電源に接続可能なAC電源18と、バッテリ19とを備えている場合、それらの電源17〜19を電源制御器10に接続してCPU7に電源情報を送ることにより、次のような制御が実行できる。
すなわち、図4に示すように、処理を開始するとCPU7は、S101(Sはステップを表す:以下同様)にて、電源制御器10から送られる電源情報に応じた電源状態から各モード(送信・受信・休止)への時間配分を変更する。続くS102では、電源がシャットダウンするなどしてENDとなったか否かを判断し、ENDとなっていなければ(S102:NO)、S101の処理を繰り返し実行する。そして、ENDとなると(S102:YES)、一旦処理を終了する。この処理により、電源消費量を少なくする必要がある場合は、省電力モードである受信や休止の時間配分を多くし、電力が充分な場合は、送信モードの時間配分を多くすることが可能となる。このようにCPU7は、状況に応じて各モードの時間配分を変更する機能を備えている。
次に、図5は、電圧検出部11及び電圧印加部12の構成の1例を詳細に表すブロック図である。図5に示すように、電圧印加部12は、絶縁抵抗器121と電圧印加回路122とを介して基準電極2と送信電極4とを結ぶ回路と、絶縁抵抗器123を介して基準電極2と送信電極4とを結ぶ回路との2回路を備えている。一方、電圧検出部11は、絶縁抵抗器111と電圧検出回路112とを介して基準電極2と受信電極3とを結ぶ1回路のみを備えている。そして、次のように、これらの合計3回路のうちの1回路のみが、上記モードに応じてアクティブになる。
送信モードでは、図6(A)に示すように、絶縁抵抗器121のみをONにして他の絶縁抵抗器をOFFにすることによって、絶縁抵抗器121と電圧印加回路122とを介して基準電極2と送信電極4とを結ぶ回路のみをアクティブにする。なお、図6では、アクティブな回路を太線で表している。すると、基準電極2と送信電極4との間に、電圧印加回路122によって電圧を印加することができる。
休止モードでは、図6(B)に示すように、絶縁抵抗器123のみをONにして他の絶縁抵抗器をOFFにすることによって、絶縁抵抗器123を介して基準電極2と送信電極4とを結ぶ回路のみをアクティブにする。すると、接触タグ1は実質的に絶縁抵抗器123と同一視することができるようになり、接触回路を流れるデータを素通りさせることができる。こうすることで、例えば、1つの接触回路上で3つの接触タグが接触通信する場合、1つの接触タグが休止モードになっていても、他の2つの接触タグの接触回路が途切れないようになる。
更に、受信モードでは、図6(C)に示すように、絶縁抵抗器111のみをONにして他の絶縁抵抗器をOFFにすることによって、絶縁抵抗器111と電圧検出回路112とを介して基準電極2と受信電極3とを結ぶ回路のみをアクティブにする。すると、基準電極2と受信電極3との間に印加される電圧を、電圧検出回路112によって検出することができる。
接触タグ1では、このようにして上記モードを切り換えている。従って、CPU7から電圧検出部11,電圧印加部12に入力されるモード切替命令は、図7に示すように、絶縁抵抗器111,121,123に対するCPU7からの絶縁抵抗調整命令である。なお、送信モードまたは受信モードにおいても、絶縁抵抗器123をONにすることによってバイパス回路を形成し、絶縁抵抗器123の抵抗値を調整してもよい。更に、バイパス回路は、電圧検出部11に設けてもよく、電圧検出部11,電圧印加部12の両方に設けてもよく、どこに設けてもよい。例えば、図8(A)に太線で示すようなバイパス回路を設けてもよく、この場合、CPUからのモード切替命令や絶縁抵抗調整命令は、図8(B)に示すように入力される。
ちなみ、本例は、電圧検出部11及び電圧印加部12の構成の1例であり、もっとシンプルに絶縁抵抗器121と絶縁抵抗器123と絶縁抵抗器111は無くても良い。この場合、電圧印加回路122が直接、基準電極2と送信電極に接続され、電圧検出回路112も直接、基準電極2と送信電極に接続される。また、この場合、休止モードが選択された場合、この接触タグが絶縁される事によって接触回路を絶縁し、これによって、他の接触タグが接触通信できなくなってしまわないようにしておくのが好ましい。その手法としては、図6(B)のような休止モード時でも絶縁しない回路を設けておいたり、自己の接触タグの接触通信の送受信を妨げない程度に導電性を持つように、基準電極と送受信電極の間の接触タグの表面の塗料等の絶縁抵抗値を調整してもよい。また、休止モード時であっても、電圧印加回路122や電圧検出回路112が絶縁しないような構成にしておいても良い。
ところで、接触タグ1のメモリ8には、自己のIDを記憶すると共に、図32に示すような記憶領域に、以下のような情報を記憶しており、後述する処理(図33,図34)で利用される。その記憶している情報を以下で説明する。また、カルテコンピュータ64は、紙のカルテの代わりに、医師が診察時に記録するコンピュータであるが、これも接触タグ1を備えている1種の接触通信装置であり、CPU64aは、接触タグ1のCPU7の機能も備え、メモリ64bは、接触タグ1のメモリ8の機能も備えている。
IDリスト記憶領域:ここには、IDとそのIDが表す内容とを対応付けたIDリストが記憶されている。このIDリストを参照する事によって、通信によって受信したIDが何を示すかやどういう状態かを認識する事ができる。
例えば、接触通信装置20または40の接触タグ1aまたは1bのIDには、その接触通信装置20または40を使用する医師,看護師,または患者の氏名が記憶されている。薬液ビン70の接触タグ1fのIDには、「薬液ビン70」、「キシロカイン10%」などといったその薬液ビン70の保存形態や内容物の名称、注射,点滴などといったその薬液の使用目的、前述のように検出されたその薬液ビン70の開栓,未開栓等の状態を表すフラグ、など多様な情報が記憶されている。ところで、薬液ビン70のようにそのIDが表すものが多い場合は、薬液ビン70や薬液ビン(開封)70というように、簡略して説明する。
通信リスト記憶領域:ここには、自己の接触通信装置が通信した内容を記録した通信リストが記憶される。例えば、図15の例では、看護師Aの通信リストとして、
1.接触受信フラグ,受信時刻,注射器CのID
2.接触受信フラグ,受信時刻,注射器箱DのID
3.接触受信フラグ,受信時刻,棚EのID
4.接触送信フラグ,時刻,看護師AのID
といった通信内容がが記憶される。
また、自己の接触タグ1が通信した内容を記録した通信リストの他、他の接触タグ1の通信リストも記憶しても良い。この場合、接触通信や無線LANや有線LANによって、他の接触タグ1や中央コンピュータと通信した際に、自己の通信リストを送信し、他の接触タグ1の通信リストを受信する事によって、他の接触タグ1の通信リストを得ている。
関連性判定基準リスト記憶領域:ここには、通信リスト内の各送受信データが、それぞれどういう場合に関連性が強いと判定するかの関連性判定基準としての関連性判定基準リストが記憶されており、通信リストを分析する際に用いられる。例えば、関連性が強いと判定するものの例として、下記のような基準がある。
(1)同時接触のデータ、
(2)5分未満の間で接触通信した接触データ
(3)関連性が強いとして抽出した複数の関連データ組合せ間で、同じデータを2つ以上含む場合、
などがある。
(1)の同時接触のデータとは、接触して離れるまでの1度の接触で接触通信した時に得た通信リストのデータである。たとえば、図30(B)左側の看護師Aの通信リストでは、図30(A)の5で接触終了した後、図30(B)左側の8で接触終了している事から、図30(B)左側の6〜7までは、1度の接触通信である事が判る。ところで、同時接触とは、厳密には、多少の時間差があるが、接触してから離れるまでの接触を同時接触としており、これらは、上記のように通信リストの接触終了FGを区切りとして、1度の同時接触として扱う事ができる。
なお、関連性判定基準としては、上記(1)〜(3)の全条件が成立した場合、関連性が高いと判定しても良いし、1つでも条件が成立した場合、関連性が高いと判定しても良い。
チェックリスト記憶領域:ここには、医療ミスであるかどうかを判定するチェックリストとして、次に説明する薬リスト、カルテ、及びヒューマンエラーリストが記憶されている。
・薬リスト:抗癌剤などのように薬毎の使用制限(量や回数)や禁忌(薬の飲み合せ不可)など、薬の基本情報が入力されており、それをOKの場合のキーワードの組合せやNGの場合のキーワードの組合せとして記憶している。OKのキーワード例としては、キシロカイン2%と注射、キシロカイン10%と点滴、などを挙げることができ、NGのキーワード例としては、キシロカイン2%と点滴、キシロカイン10%と注射、などを挙げることができる。
・カルテ:患者毎にこれから行なわれる医療処置や手順などが記憶されると共に実際に行った処置の詳細データが記憶できる欄が設けられている。しかも、看護師などが医療処置を行うと、看護師が装着している接触通信装置20や持っている注射器などとの間で接触回路が形成されて接触通信し、医療処置の内容や実際に医療が行われた瞬間の時刻などが看護師の接触通信装置20などのカルテに正確に記憶される。
例えば、点滴や注射や薬の飲み方や薬の処方箋などの各種医療処置方法や過去の経過(病状や処置)が記憶されている。その処置毎に作業を行った医療スタッフのIDや時刻など記載欄がカルテに設けられており、該当欄に記憶される。それゆえ、処置や薬を飲んだ時刻なども記憶される。更に、医療処置はカルテに基いて行われるため、このカルテに記憶されたデータは、今行われようとしている医療行為がこのカルテに合致しているかどうかを、後述の処理において判定するためにも利用される。
・ヒューマンエラーリスト:ヒューマンエラーの起き易い場合をチェックするために、OKのキーワードの組合せやNGのキーワードの組合せが記憶されている。このヒューマンエラーリストは、薬リストやカルテでもチェックできないようなヒューマンエラーがチェックできるリストであり、このリストの記載形式は、薬リストと同様にヒューマンエラーを起こす場合のキーワードの組合せがNGのキーワードの組合せとして、リスト化されている。また、正常な行動の場合のキーワードの組合せも、OKのキーワードの組合せとして、リスト化されている。
チェック結果リスト記憶領域:後述の人為ミスチェック処理によって、警告が実施されたときのキーワードが、チェック結果リストとして記憶されている。
疑義照会リスト記憶領域:ミスかどうかの判定はできないが、ミスの可能性が高い(疑義)ケースを検知して、ミスでないか確認を求める必要があるケースのキーワードが、疑義照会リストとして記憶されている。これら間違い易いケースのキーワードは、チェックリストなどから近似語などの紛らわしいものの組合せが自動抽出され、本リストに記憶されたり、人間が入力して記憶される。
例えば、前述の注射用の「キシロカイン2%」と点滴用の「キシロカイン10%」の他にも、薬の「テオロング」と「テオドール」、「タキソテール」と「タキソール」や患者名の「鈴木二郎」と「鈴木次郎」などの近似語や間違い易い行動をキーワードの組合せなどとして記憶している。
疑義照会結果リスト記憶領域:後述の疑義照会処理によって、警告が実施された時のキーワードが疑義照会結果リストとして記憶されている。病院内の標準移動時間リスト記憶領域:人間の病院の部屋間での標準移動時間が、病院内の標準移動時間リストとして記憶されている。
次に、このように構成された接触タグ1の、医療における人為ミス防止への応用例を説明する。本例では、看護師は図9に示す接触通信装置20を利き腕(以下右腕として説明するが左右逆であってもよい)に、図10に示す表示装置30を左腕に、それぞれ装着し、患者は図11に示す接触通信装置40を主として注射や点滴を受ける側の腕に装着する。
図9(A)は、接触通信装置20の全体構成を表す斜視図であり、図9(B)は、その主要部の構成を表す正面図である。接触通信装置20は、接触タグ1(以下、他の接触タグ1と区別するため添え字aを付す:後述する他の接触タグ1も同様に添え字を付して区別する)を内蔵した接触タグ部21と、周知の電波時計を内蔵した電波時計部22(時計手段に相当)と、病院内LAN60(図17参照)との無線通信を行うための無線通信部23とを備え、更に、それらを看護師の腕に固定するためのバンド24を備えている。接触タグ部21に設けられた接触タグ1aの各電極2〜4は看護師の腕に密着可能な位置に露出している。無線通信部23の表面には、送受信完了を知らせる音声スピーカ25が設けられ、接触タグ部21の表面には、通信内容等を表示する表示部26が設けられている。また、バンド24は絶縁性の素材で構成されている。
図10(A)は、接触通信装置の1種である表示装置30の主要部の構成を表す正面図であり、図10(B)はそのA−A線断面図である。なお、図10(B)では、導電性の部分を太線で表した。この表示装置30は、後述の図23に示すように絶縁性のバンド31を介して腕に装着して使用してもよく、バンド31を利用することなく手で持って使用してもよい。たとえば、図24(B)のように、表示装置30の両端に設けられた左手把持部32,右手把持部33を看護師がつかむなどして、左手把持部32と右手把持部33とが接触通信装置20を通る接触回路によって導通されると、接触通信装置20と表示装置30の間で接触通信が行われ、これよって、接触通信装置20が記憶しているデータ等に基づく情報が表面の表示部34に表示される。また、表示部34の表面は、右手把持部33と導通した導電性の部材で構成されている。このため、左手把持部32をつかんだ手が表示部34に触れて短絡することなどを防止するため、表示部34と左手把持部32との間には絶縁性の突起35が形成されている。
ところで、看護師は、通常、利き腕で注射をしたり、薬をとったりするので、利き腕で接触回路が形成され易い。この為、接触通信装置20は、利き腕に装着するのが好ましい。また、表示装置30を装着する場合は、非利き腕に装着すると、利き腕で表示装置30を操作でき使用し易い。
図11は、患者用の接触通信装置40の全体構成を表す斜視図である。この接触通信装置40は、患者の血圧や心拍数を測定する測定部29を備えた点で看護師用の接触通信装置20と異なり、他の構成は一致している。そこで、図9と同様に構成された部分には図9で用いた符号を付して、構成の詳細な説明を省略する。また、この接触通信装置40に用いられた接触タグ1を接触タグ1bとする。
図12は、患者用の接触通信装置40の内部構造を概略的に表すブロック図である。看護師用の接触通信装置20は、測定部29を有さない点を除いてこれとほぼ同様に構成されている。
図12に示すように、測定部29が検出した血圧及び心拍数、並びに、電波時計部22が計時した時刻は接触タグ1bのCPU7に入力される。また、CPU7と無線通信部23との間では通信用のデータが入出力され、CPU7と表示部26との間では表示用のデータが入出力される。ところで、後述する図13の注射器などのような小型の器具には、接触タグだけを装着し、人間が装着する場合などのように、比較的に大きくても構わない場合は、接触タグに各種の機器が付加した接触通信装置を用いるのが望ましい。
次に、図13は、この応用例で使用される注射器50の構成を表す説明図である。注射器50は針51及びキャップ52を含めてほぼ全体が導電性の材料によって構成され、ピストン53の取っ手近傍が所定幅に亘って絶縁部53aとなっている。また、シリンダ54の外表面も絶縁塗料により絶縁処理されている。更に、ピストン53の内部には、絶縁部53aを跨いで接触タグ1cが埋設されている。このため、看護師が注射をする際には、看護師の右手→ピストン53の取っ手→接触タグ1c→ピストン53の内部→シリンダ54の内部→針51、といった回路で通電が可能となる。
図14は、この注射器50が収納された注射器袋55及び注射器箱56の構成を表す説明図である。注射器袋55は、ほぼ全体が導電性の材料によって構成されているが、針51の外周を被覆する下部55aとピストン53の外周を被覆する上部55bとが絶縁部55cを介して絶縁されている。
注射器箱56は、未使用の注射器50が入った注射器袋55を9つ収納できるように9区画に区画されており、側壁は絶縁性の材料で、底板は導電性の材料で、それぞれ構成されている。各区画の底面には、絶縁性の材料で扁平な直方体状に構成された支持板57が配設され、この支持板57によって接触タグ1dが次のように支持されている。
すなわち、支持板57の上面57aには全面に導電性塗料が塗布され、その上面57aに接触タグ1dの一方の電極(例えば、基準電極2)が配設されている。また、接触タグ1dのもう一方の電極(例えば、受信電極3及び送信電極4)は、支持板57の下面に配設され、注射器箱56の底板と導通している。
更に、図15に示すように、注射器箱56が載置される棚(図示せず)の、注射器箱56から床面(図示せず)に到る接触回路には、その棚に対応した接触タグ1eが配設されている。また、床面や看護師の靴,看護師の衣服も、導電性の材料で構成されている。
このため、図15に示すように、注射器箱56に収納された注射器50を取ろうとして看護師が注射器袋55の上部55bに触れると、看護師の体を通る次のような接触回路が構成される。すなわち、看護師の胴体→看護師の右腕→注射器袋55の上部55b→ピストン53の取っ手→接触タグ1c→ピストン53の内部→シリンダ54の内部→針51→キャップ52→注射器袋55の下部55a→支持板57の上面57a→接触タグ1d→注射器箱56の底板→上記棚の上部→接触タグ1e→上記棚の下部→床→看護師の足→看護師の胴体、といった回路を通る接触回路が構成される。
また、看護師の体はある程度のインピーダンスを有している。そこで、看護師の右腕の接触通信装置20の接触タグ1aが当接する部分のインピーダンスをZ1、接触通信装置20から指先に到る部分のインピーダンスをZ2、接触通信装置20から看護師の胴を経て足に到る部分のインピーダンスをZ3とすると、図16に示すような等価回路を考えることができる。この回路を介して接触タグ1a,1c,1d,1eが前述のように接触通信を行う。この時、接触タグ1aは、接触通信相手である接触タグ1c,1d,1eと接触通信した通信内容を接触タグ1aのメモリ8内の自己の通信リストに記憶する。また、他の接触タグも同様に通信内容を自己のメモリの通信リストに記憶する。
図17に示すように、病院内の各ナース室及び病室や薬局には、それぞれ無線局61が設けられ、この無線局61は接触通信装置20や表示装置30や接触通信装置40や薬局の計量器260などの無線を備えたた各種接触通信装置と無線通信可能となっている。各無線局61は病院内LAN60によって接続されている。また、病院内LAN60には、中央コンピュータ62、事務用パーソナルコンピュータ(事務PC)63、及び、カルテコンピュータ64が接続されている。そして、この病院内LAN60に接続されている各機器は、中央コンピュータ62を介して、自己のメモリ内のデータを交換して常に最新データに更新している。これによって、患者の状態や処置方法などを記載したカルテが最新に更新されたり、他の接触タグの通信リストを得る事ができる。
また、通常、接触通信では、短時間で通信が完了するように、膨大なデータの通信は行わないが、上記のようにカルテ情報を更新したり、他の接触タグの通信リストを得るために接触通信を利用しても良い。こうする事によって、無線が届き難い場所や、停電等によって無線LANが働かないような状態であっても、接触通信装置同士が接触するたびに情報を交換できる。そして、伝言ゲームのように、次々に、新たな接触通信装置と接触通信して情報を交換していく事で、情報を伝達と更新ができる。
カルテコンピュータ64は、図18に示すように、制御部及び演算部を内蔵したCPU64a、各種データを記憶するメモリ64b、各種画像を表示するディスプレイ64c、各種入力のためのキーボード64d、及び、病院内LAN60と通信するためのLAN通信装置64eを備えている。ところで、カルテコンピュータ64は、接触通信装置としての機能も備えており、CPU64aは、接触タグ1のCPU7の機能も備え、メモリ64bは、接触タグ1のメモリ8の機能も備えている。
このカルテコンピュータ64や接触タグ1での処理については後述することとし、続いて、注射器50以外の器具における接触タグ1について説明する。
図19(A)は、薬液ビン70の構成を表す縦断面図であり、図19(B)はその薬液ビン70の蓋71の構成を表す斜視図、図19(C)及び(D)は図19(A)のB−B線切断端面図及びC−C線切断端面図である。なお、各図では、蓋71を容器本体72に固定するためのネジ部を省略した。また、図19(B)では導電部をハッチングで表し、他図では導電部を太線で表した。
図19(A)〜(C)に示すように、蓋71は、大径部71aの外周面及び上面、並びに小径部71bの外周面の周方向に半分弱が導電部71cとなっており、この導電部71cは大径部71aの下面の一部にも形成されて全体的に導通している。容器本体72には、外周面のほぼ全体に導電部72aが、内壁面のほぼ全体に導電部72bが、それぞれ形成されている。但し、密栓時に小径部71bの導電部71cと対向する部分には少し余裕を持って導電部72bが形成されておらず、更に、大径部71aと対向する上端面や大径部71aの外周と隣接する外周上端にも導電部72aは形成されていない。このため、容器本体72の内壁面の導電部72bと小径部71bの外周面の導電部71cとは、図19(E)に示すように、密栓時には導通しない。なお、図19では、説明の便宜上、小径部71bの外周面と容器本体72の内周面との間に隙間を設けているが、実際には両者は密着している。
また、蓋71の小径部71bの下端には、絶縁性の密封ゴム73が設けられ、薬液79(図22参照)が導電性の場合でも、密栓時に導電部72bと導電部71cとが導通しないようにされている。更に、この密封ゴム73は、薬液ビン70を一旦開栓してしまうと膨張し、2度と密栓できないように構成されている。また、容器本体72の導電部72a,72bの間には、接触タグ1fが埋設されている。
このように構成された薬液ビン70では、密栓状態では図20(A)に示すように、導電部71cと導電部72bとは完全に絶縁されている。このため、導電部72bは外部とは完全に絶縁され、看護師が薬液ビン70をどのように触っても接触タグ1fを通る回路は形成されない。
看護師が薬液ビン70を開栓しようとして蓋71を回すと、図20(B)に示すように導電部71cと導電部72bとが導通する。このとき、通常、看護師は、図21に示すようにして薬液ビン70を持っている。すなわち、蓋71の大径部71aの外周を右手で持ち、容器本体72の外周を左手で持っている。すると、看護師の胴体→看護師の右腕→導電部71c→導電部72b→接触タグ1f→導電部72a→看護師の左腕→看護師の胴体、といった回路を通る接触回路が構成される。従って、前述のように、接触通信装置20の接触タグ1aと接触タグ1fの間で接触通信される。
また、図22のように、薬液ビン70の開栓後、看護師が薬液ビン70の薬液79を注射器50に入れようとして、容器本体72の内面または薬液79と注射器50の針51とが接触したときは、次のような接触回路が構成される。看護師の胴体→看護師の右腕→ピストン53の取っ手→接触タグ1c→ピストン53の内部→シリンダ54の内部→針51→導電部72b→接触タグ1f→導電部72a→看護師の左腕→看護師の胴体、といった回路を通る接触回路が構成される。従って、前述のように、接触通信装置20の接触タグ1aと接触タグ1cと接触タグ1fの間で接触通信される。
なお、前述のように、密封ゴム73の膨張によって、薬液ビン70は一旦開栓すると2度と密栓できないようになっている。このため、接触タグ1fのIDが初めて検出されたときは薬液ビン70が開栓されたものと判断し、検出が2回目以降である場合は、既に開封済であると判断することも可能である。
続いて、薬液79を看護師が患者に注射するときは、次のような接触回路が構成される。但し、患者の衣服も導電性であるものとし、患者が座る椅子(図示せず)にも、前述の注射器箱56の棚と同様に接触タグ1gが設けられているものとする。この場合、図23に示すように、看護師の胴体→看護師の右腕→ピストン53の取っ手→接触タグ1c→ピストン53の内部→シリンダ54の内部→針51→患者の腕→患者の胴体→接触タグ1g→床→看護師の足→看護師の胴体、といった接触回路が構成される。こうして、接触タグ1a、1b、1c、1gの間で接触通信される。
また、看護師が注射等を行うときは、看護師の接触通信装置20の接触タグ1aが記憶しているデータを表示装置30に送って詳細情報を表示させ、処置内容等を確認することができる。この方法としては、主として次の3通りが考えられる。
最も簡単な方法は、図24(A)に示すように、表示装置30を看護師の左腕に装着したままで、看護師の右手と左手を接触させる方法である。この場合、接触タグ1a→看護師の右手→看護師の左手→表示装置30の右手把持部33→表示装置30の左手把持部32→看護師の左腕→看護師の胴体→看護師の右腕→接触タグ1a、といった回路を通って接触タグ1aから表示装置30へデータが送信される。この場合、右手に注射器50を持ったままで上記表示を行うことができる。
また、図24(B)に示すように、表示装置30を左腕から外してその左手把持部32を左手で把持し、表示部34または右手把持部33に右手を接触させてもよい。更に、図24(C)に示すように、表示装置30を左腕に装着したまま、表示部34に右手で触れてもよい。このように、表示装置30を非利き腕に装着すると、使用し易くできる。次に、図25(A)は、錠剤ビン80の構成を表す説明図である。図25(A)に示すように、錠剤ビン80は蓋81と容器本体82とから構成され、ほぼ全体が導電性の材料で構成されているが、容器本体82の側壁部82aと底板部82bとは絶縁部82cによって絶縁されている。そして、絶縁部82cを挟んで、接触タグ1hが側壁部82a,底板部82bに跨って埋設されている。
図25(B)は、計量器85の構成を表しており、この計量器85は、本体86の上に、錠剤ビン80を載置可能な計量皿86aを備えている。本体86を支持する4本の足87は、その内の3本までが絶縁性材料で構成され、1本の足87aが絶縁材の付け根87bを除いて導電性の材料で構成されている。すなわち、足87aの先端は、絶縁材の付け根87bを挟んで導電性の計量皿86a及び本体86と絶縁されている。そして、この絶縁材の付け根87bを挟んで、接触タグ1iが足87aの先端,本体86に跨って埋設されている。
錠剤ビン80または計量器85が載置される棚88も同様で、図26(A),(B)に示すように、4本の足89の内の3本までが、先端に絶縁部89aを有し、1本の足89bが中間部に絶縁部89cを有している。棚88のその他の部分は導電性材料で構成されている。そして、絶縁部89cを挟んで、接触タグ1jが足89bの導電部に跨って埋設されている。
このため、看護師が棚88の上に載置された錠剤ビン80に触れると、図26(A)に示すように、看護師の胴体→看護師の右腕→蓋81→側壁部82a→接触タグ1h→底板部82b→棚88の上部→足89bの上部→接触タグ1j→足89bの先端→床→看護師の足→看護師の胴体、といった接触回路が構成される。こうして、接触タグ1a、1h,1jの間で接触通信される。
また、棚88の上に載置された計量器85に錠剤ビン80を乗せると、図26(B)に示すように、看護師の胴体→看護師の右腕→蓋81→側壁部82a→接触タグ1h→底板部82b→計量皿86a→本体86→接触タグ1i→足87aの先端→棚88の上部→足89bの上部→接触タグ1j→足89bの先端→床→看護師の足→看護師の胴体、といった接触回路が構成される。こうして、接触タグ1a、1h,1i,1jの間で接触通信される。
なお、病院内には、接触タグ1jを有さない一般の棚(但し、全体が導電性)も存在する。このような棚に錠剤ビン80または計量器85が置かれた場合は、上記接触回路の内、「→棚88の上部→足89bの上部→接触タグ1j→足89bの先端→」の部分が単に「→棚→」となり、接触タグ1jを除いた接触タグ1a、1h,1iの間で接触通信される。
ところで、図25のような錠剤ビン80を用いると患者の薬の飲み忘れや禁忌や飲み過ぎなどのチェックもできる。図25(A)のような錠剤ビン80の蓋81を患者が開けるたび、たとえば、蓋81を患者の右手で持ち、容器本体82を左手で持って蓋81を開けようとして、患者と錠剤ビン80の間で接触回路が形成される。こうして、錠剤ビン80の接触タグ1hが接触通信を行って、蓋81を開けた事が検知される。そして、錠剤ビン80に時計を備えておけば、いつ錠剤ビン80を開けたかが記録され、薬の飲み忘れチェックに利用できる。ところで、その患者は、接触通信装置20を必ずしも備えている必要はない。患者が接触通信装置20を備えていれば、錠剤ビン80の接触タグ1hは、誰が蓋81を開けたか検知できるが、通常、飲む人は決まっている為、蓋81を開けたかだけを検知すればよく、錠剤ビン80の接触タグ1hが、自分で送信したデータを受信する同時送受信タイプの接触タグであれば可能となる。(同時送受信タイプの接触タグについては、他で説明)。
また、図25(B)のような計量器85を一体化させた錠剤ビン80を作って、飲む度に薬の量を検知できるようにしてもよい。この場合、患者→錠剤ビン80の蓋81→錠剤ビン80の容器本体82→接触タグ1h→計量皿86a→接触タグ1i→計量器85足87a→床→患者までの接触回路が形成される事によって、接触通信によって検知できる。
この場合、単に薬の飲み忘れがチェックできるだけでなく、薬の取出し重量を検知している為、1回の飲み量毎に事前に小分けしていなくても、必要量を取り出した時をブザー等で知らせるようにする事もできる。図27は、点滴に関わる各種機器の構成を表す説明図である。この場合も、構成の大部分が導電性材料で構成されているが、スタンド90に点滴ビン91を吊り下げるための吊り下げ穴91aと点滴ビン本体91bとの間に絶縁部91cが、点滴ビン91の下部にチューブ92を接続するためのチューブ口91dと点滴ビン本体91bとの間に絶縁部91eが、点滴装置93の本体93aとその本体93aをスタンド90に固定する固定部93bとの間に絶縁部93cが、それぞれ形成されている。
そして、絶縁部91cを挟んで吊り下げ穴91a近傍と点滴ビン本体91bとに跨って接触タグ1kが、絶縁部91eを挟んで点滴ビン本体91bとチューブ口91dとに跨って接触タグ1mが、絶縁部93cを挟んで本体93aと固定部93bとに跨って接触タグ1nが、それぞれ配設されている。
なお、点滴装置93とは、図示しない赤外線センサを備え、赤外線によって検出した薬液79の滴下量が設定された量になるように、押圧棒94によるチューブ95の押圧量を制御する装置である。チューブ口91dに接続されたチューブ92は点滴装置93の上部に接続され、チューブ95の先端には点滴針96が接続されて患者の腕に接続されている。また、点滴装置93はアンテナ97及び無線部98を有し、無線通信によって病院内LANに接続されている。
この場合、点滴ビン91の注入口91fから看護師が注射器50によって薬液79を注入しようとすると、図28に示すような複雑な回路が構成される。なお、図28では、患者の腕の、接触通信装置40の接触タグ1bが当接する部分のインピーダンスもZ1とした。こうして、接触タグ1a,1b,1c,1k,1m,1nの間で接触通信される。
次に、上記ID等のデータを用いた接触通信方法について説明する。なお、これまで説明してきたように、各IDは接触タグ1または部屋(ナース室,病室等)に直接対応するものであるが、以下、説明の便宜上、接触タグ1aのID,接触タグ1bのID,接触タグ1fのID等を、看護師AのID,患者BのID,薬液ビンFのIDといったように、そのIDが実質的に対応するもので表す場合がある。
先ず、各接触タグ1は、上記のようなIDの送受信結果を自己の通信リストに次のように記憶する。例えば、図35の(C)には、共に時計を持たない2つの接触タグの間で接触通信した時の通信リストを説明しており、これにて説明する。
先ず、接触タグBは、接触通信にてデータ(自己のID=接触タグBのID)を送信すると、送信したデータ(接触タグBのID)に接触通信にて送信した事を示す接触送信FGを添えて、自己(接触タグB)の通信リストの1に記憶する。次に、接触タグAが、接触タグBから送信されて来たデータ(接触タグBのID)を接触通信にて受信すると、受信したデータ(接触タグBのID)を接触通信にて受信した事を示す接触受信FGを添えて、自己(接触タグA)の通信リストの1に記憶する。
次に、接触タグAからの接触タグBにデータ(接触タグAのID)が送信されると、同様な記憶方法で、接触タグAの通信リストの2と接触タグBの通信リストの2に記憶する。
次に、非接触になって接触通信ができなくなると、両者の通信リストの3に、接触通信の終了を示す接触終了FGを記憶する。ところで、複数の接触タグの相手と接触通信するため、送受信モードを幾度か切替えて、連続して数回受信できなかった時、接触通信完了と判定して、ランプやブザーを作動させる。さらに、接触通信した相手の接触タグの数に応じて、ブザーを数回鳴らす、または、ランプの数を点灯するようにすると、本当に接触回路上の全ての接触回路と接触通信したかを人間が確認するのに役立てる事ができる。
上記の図35(C)の場合を基本に、例えば、図35の(A)のように、共に時計を備える接触タグAと接触タグB間で接触通信を行った時の通信リストの記憶例を説明する。まず、接触タグBは、自己のID(接触タグBのID)と現在時刻を送信する。この時、接触タグBでは、送信したデータ(時刻と自己のID)に、接触送信FGを添えて、自己の通信リストの1に記憶する。この時、送信されて来たデータ(時刻と接触タグBのID)を接触タグAが受信して、接触タグAでは、送信されて来たデータ(時刻と接触タグBのID)に、接触タグAが備える時計からの現在時刻と接触受信FGを添えて、自己の通信リストの1に記憶する。
次に、接触タグAからの接触タグBにデータを送信する場合も同様な手法で両者の通信リストの2に記憶する。
次に、非接触になって接触通信ができなくなると、両者の通信リストの3に、接触通信の終了を示す接触終了FGを記憶する。
次に、図35(B)では、一方の接触タグにしか時計を備えていない場合の接触通信を説明する。これも基本的には、図35(A)と同様の通信であるが、接触タグBは、時計を備えないため、時刻を送信したり、接触通信にて受信した時刻を添えて記憶する事ができない。しかし、接触タグAが、接触送信時に、送信時刻を送ってくれるため、接触タグBの通信リストの2のように受信データとして時刻を記憶する事ができる。このようにして、接触通信する相手から時刻を得れれるようにしておく事で、接触通信した時刻が判り、後述する制御フローを用いた各種の判断で利用できるよになる。
ところで、図35の(C)のように、共に時計を備えない接触タグ同士で接触通信する場合は、時刻を送信する事も受信する事もできず、通信リストに時刻を記憶する事はできない。しかし、時計を持たない接触タグ同士間での接触通信であっても、図29のように、一方の接触タグが無線通信部23や有線によるLAN通信装置を備えていれば、これによって、時刻を得る事ができる。つまり、接触通信をしている間、または、接触通信の直後に無線通信によって、無線局から時刻を受信するようにする。これによって、接触通信が行われた時刻が、判るようになる。
例えば、図29(A)のように、接触通信の間、無線付接触タグAが無線局61から時刻と無線局61のIDを受信データとして無線受信し、その受信データに、無線受信した事を示す無線受信FGを添えて、自己(接触タグA)の通信リストの2に記憶する。
更に、無線受信した時刻を他の接触タグにも接触通信で送信する場合は、その無線局から受け取った時刻と、その時刻が無線によって得た時刻である事を示す無線FGと自己のID(接触タグAのID)を送信データとして接触送信し、その送信データに接触S送信FGを添えて、自己(接触タグA)の通信リストの3に記憶する。このデータを受信した接触タグBでは、受信したデータ(無線FG,時刻,接触タグAのID)に接触受信FGを添えて、自己(接触タグB)の通信リストの2に記憶する。
こうする事によって、時計も無線有線LANも持たない接触タグBも時刻を得る事ができる。ところで、無線受信した時刻を送信する場合は、正確な現在時刻とは言えないので、本例では、無線フラグ(無線FG)をその時刻のデータに添付して送信するようにしている。また、接触タグAの通信リストの2のように、無線受信FGや無線局IDが添えられいる場合の時刻は、無線によって得た時刻であると判定されるようになっている。また、無線通信によって送信する場合は、自己の通信リストに無線送信FGを添えて、送信したデータを記憶するようにしている。これらのFGによって、接触通信によって得たデータであるか無線によるデータであるかを判別できるようにしてある。
ところで、前述した動作モード(送信モード・休止モード・受信モード)の選択については、時計を有する接触タグでは、時計を有さない接触タグに比較して、送信モードが選択される確率が高くなるように設定する。これによって、時刻データが送信される機会が増え、時計を持たない接触タグは、時刻データを得る機会を得易くなる。
図29(A)では、無線を用いて接触通信の時刻を得る手法を説明したが、図29(B)のように、通信リストに記載されている場所データから、接触通信した時刻を推定するよにしても良い。図29(B)のような通信リストの記載がある場合、ナース室の棚EのIDから、そのナース室を認識し、病室の椅子GのIDからその病室を認識する。そこで、接触タグのメモリに記憶している病院内の標準移動時間リストに基づいて、そのナース室と病室の標準移動時間を得る。その移動時間を通信リストの1の時刻に加算して、通信リストの3の接触通信した時刻を推定する事ができる。
ところで、看護師の位置は、上記のように、位置を特定できる接触タグIDから検知しても良いが、無線通信した時の無線局61のIDやGPSを利用したり、各種機器に付けられた無線タグと無線通信し、その相手の機器のIDなどから場所を推定するなどしてもよい。
また、床全面を導電性にするのではなく、例えばタイルの継ぎ目などを部分的に導電性にしてそこに接触タグ1を配設すれば、その接触タグ1のIDを接触通信装置20などに受信させることも可能となる。すなわち、前述の接触回路が床の特定部分のみを通って構成され、その特定部分に接触タグ1が配設されているので、その接触タグ1のIDを接触通信装置20などで受信して看護師等の位置を検出することも可能となる。
ところで、図63のようにすると、廊下に居る看護師や患者1301の位置を検知する事もできる。廊下壁1303と廊下床1302は、導電材でできている。また、廊下の長手方向の一定距離毎に複数配される手摺1304は、2つの手摺取付部1305,1306の内の一方の手摺取付部1306には、接触通信可能なように接触タグ1が内臓されており、他方の手摺取付部1305は、絶縁材でできている。
これによって、患者1301が手摺1304を掴むと、患者1301→廊下床1302→廊下壁1303→手摺取付部1306→手摺1304→患者1301への接触回路が形成される。そして、手摺取付部1306に内蔵された接触タグ1と患者1301が装着している接触通信装置40が、接触通信すると共に、それぞれ病院内LAN60を介して、中央コンピュータ62と無線通信を行う。
このよううして、病院内での患者の位置が中央コンピュータ62に送信され、患者の位置が検知できる。ところで、手摺取付部1306に内蔵された接触タグ1は、他の例と同様に一方の電極を廊下壁1303側に、他方の電極を手摺1304側とし、接触通信可能に配置されている。このように、壁や床を導電材で形成し、接触通信用の手摺1304を装着さえすれば、簡単に廊下に居る患者などの位置検知ができるようになる。
ここで、図15と図21〜図23で表したような看護師Aが患者Bに注射を打つまでの一連の医療処置を連続して行った時の通信リストの記憶例である図30,31で説明する。図30(A)は、図15のように、看護師Aがナース室の棚Eの注射器箱Dから注射器Cを取出した時の看護師Aの通信リストと、その1つの通信相手である注射器Cの通信リストである。図30(B)は、図21のように、看護師Aが病室へ移動後、薬液ビンFを開封した時の看護師Aの通信リストと、その1つの通信相手であるの薬液ビンFの通信リストである。図31(A)は、図22のように、看護師Aが病室で、薬液ビンFの薬液を注射器Cに注入する時の看護師Aの通信リストと、その1つの通信相手である注射器Cの通信リストである。図31(B)は、図23のように、看護師Aが、椅子Gに座った患者Bの腕に注射器Cを接触させた時の看護師Aの通信リストと、その1つの通信相手である患者Bの通信リストである。
このように、図30,31では、左側に看護師Aの通信リストを記載し、右側には、その1つの通信相手の通信リストを記載して説明する。なお、他にも看護師Aの通信相手は存在するが、省略する。また、図30(A)の通信リストの各下線部は、送信データや受信データを示し、送信側の接触タグから受信側の接触タグへ矢印を付けて送信の方向を説明している。また、他の通信リストでも同様に用いて説明している。例えば、図30(A)の上の2つの下線部と矢印は、注射器Cの接触タグから看護師Aの接触タグへ、注射器CのIDが送信データとして送信された事を示している。
ここで、接触タグ1で行われる判断処理について、詳細に説明する。接触タグ1は、通信リストについて、人為ミスチェック処理及び疑義照会処理を時分割で並行して実行する。通信リストには、看護師等が医療処置をした際、即座にその医療処置をデータとして記憶している為、医療ミスチェックや疑義チェックを、医療処置とほぼ同時に行う事ができる。
ところで、接触通信装置の1種であるカルテコンピュータ64は、さらに、医者によるキーボード64dへの入力についても同様な処置(人為ミスチェック処理及び疑義照会処理)を行う。前述したように、カルテコンピュータ64は、接触タグ1を備える1種の接触通信装置となっており、カルテコンピュータ64のCPU64aは、接触タグ1のCPU7の機能も備え、メモリ64bは、接触タグ1のメモリ8の機能も備えているため、カルテコンピュータ64のCPU64aが、人為ミスチェック処理及び疑義照会処理を実行する。
図33は、接触タグ1のCPU7が実行する人為ミスチェック処理を表すフローチャートである。処理を開始すると、接触タグ1のCPU7は、先ず、S1にて、メモリ8に記憶された通信リストを読込む。その際、各IDは、IDリストを参照して各IDが示すものに変換して読込む。すなわち、接触タグ1aのID,接触タグ1cのID等を、看護師A,注射器C等に変換して読み込む。ところで、IDリストの説明でしたように、IDが多様な情報を表す場合がある。例えば、薬液ビンのIDは、その薬液ビン自体やその保存形態や内容物の名称、注射,点滴などといったその薬液の使用目的、薬液ビンの開栓,未開栓等の状態を表すフラグ、など多様な情報を表す。そうした場合、IDが表す全ての情報を記載して説明すると判り難くなってしまう事から、薬液ビンや薬液ビン(開封)などのように簡略して説明する事にする。
続くS3では、前述の関連性判定基準リストの関連性判定基準に基づいて、通信リストのデータで関連の強いものを抽出し、関連データ組合せを作成する。これによって、通信リストのデータの中から関連性の高いデータが抽出される。
例えば、詳細後述するが、図15と図21〜図23で表したように、看護師Aが患者Bに注射を打とうとして、注射器Cを注射器箱56から取り出した後、注射器Cの針を患者Bに接触させるまでの一連の医療処置を連続して行った時の看護師Aの通信リスト図30(A)〜図31(B)について考えてみる。
その時の看護師Aの通信リストには、図30(A)〜図31(B)の各左側のように記載されているが、この通信リストを前述の関連性判定基準(1)(2)(3)の全条件が成立した場合、関連性の高いデータ組み合せとして抽出すると、関連性の高いデータの組み合せとして、「看護師Aと患者Bと注射器Cと薬液ビンF(開栓)と椅子G」が抽出される。(詳細、後述)
更に、続くS5では、上記関連データ組合せを前述のチェックリストにそれぞれ照会して、ミスをチェックする。例えば、上記の「看護師Aと患者Bと注射器Cと薬液ビンF(開栓)と椅子G」の組合せに対しては、次のようなチェックがなされる。
例えば、薬液ビンFが「キシロカイン10%」が充填された薬液ビン70であった場合、S1のIDリスト参照時に、薬液ビンFの中身は「キシロカイン10%」である事が既に認識されている。「キシロカイン10%」は点滴用であって注射用ではないため、チェックリストの1つである薬リストには、NGキーワード組合せとして「注射−キシロカイン10%」が記載されており、これに合致するとして、NGと判定される。
また、チェックリストの1つでもあるカルテを照会しても、「キシロカイン2%」は指示が記載されているものの「キシロカイン10%」は指示記載されていないため、NGと判定される。更に、チェックリストの1つのヒューマンエラーリストを照会すると、「キシロカイン10%と注射との組合せがNGの例として登録されており、ヒューマンエラーリストに基づいてもNGが判定される。なお、上記チェックリストにおけるキーワードの該当判定は、同義語を含めるようにしてあり、例えば、「注射器」はカルテに記憶の「注射」に該当するとしている。
S5に続くS7では、上記のようなS5におけるチェック結果を受けて、報知及び記録が行われる。上記のNGキーワード組合せに該当する場合、警告が報知されるようになる。なお、判定結果(OKやNGや不明)は音声や表示等で報知され、チェック結果リストに記憶される。例えば、上記の例では、、薬液ビンFの中身が「キシロカイン10%」であった場合、NGとの判定を受けるため、警告が報知される。このように、図23のように、看護師Aが患者Bに注射器Cを当てた瞬間に、警告を発して医療ミスを防止する事ができる。更に、より危険度が高い場合は、NGのレベルが高いと判定して、その判定結果が他の装置にも報知するようにすれば、他の医師などにも迅速に緊急連絡できるようになる。
続くS9では、ENDであるか否かを判断し、ENDでない場合は(S9:NO)、再び上記S1から処理を繰り返す。そして、ENDが入力されている時は、(S9:YES)、処理を終了する。
ところで、ここで、前述のS3での関連データ組合せの抽出方法をより具体的に説明する。図30(A)〜図31(B)の各左側に記載の看護師Aの接触通信装置の通信リストについて説明していく。
関連性判定基準(1)の同時接触した時のデータは、接触状態から非接触状態になった時点で接触終了FGが記載される為、接触終了FGを区切りにして判断できる。つまり、1つの接触終了FGの後の接触通信のデータから次の接触終了FGの前までの接触通信のデータが同時接触したデータとして判断できる。それゆえ、看護師Aの接触通信装置の通信リストから関連性判定基準(1)を用いて抽出すると、図30(A)の1〜4と図30(B)の6〜7と図31(A)の9〜11と図31(B)の13〜16のそれぞれが、同時接触データと判断できる。すなわち、1〜4の「看護師Aと注射器Cと注射器箱Dと棚E」の組合せAと6〜7の「看護師Aと薬液ビンF(開栓)」の組合せBと9〜11「看護師Aと注射器Cと薬液ビンF(開栓)」の組合せCと13〜16「看護師Aと注射器Cと患者Bと椅子G」の組合せDが抽出され、その各組合せ内のデータは同時接触のデータとして判断される。
次に、関連性判定基準(2)を用いて、上記で抽出された4つの組合せから、更に、関連性が高い組合せ同士を抽出する。ここで、仮に、看護師Aが病室Aへの移動に6分掛かり、病室Aで薬液ビンFを開封した時から患者Bに注射をしようとする時までが5分未満だとする。そうすると、看護師Aの通信リストの4と6の間では、5分以上経過している事となり、5分未満の接触通信のデータの組合せとして、組合せAを除いた組合せBと組合せCと組合せDが抽出され、より強い関連があるデータの組合せとして判定される。
更に、関連性判定基準(3)を用いて、上記3つの組合せ間の関連性が、次のように判定される。組合せBと組合せCの中には、同じデータとして看護師Aと薬液ビンFが含まれる事から、関連性が強いと判定され、組合せCと組合せDの中には、同じデータとして看護師Aと注射器Cが含まれる事から、関連性が強いと判定される。組合せBと組合せCは、関連性が高く、また、組合せCと組合せDも関連性が高いと判定される事から、これを総合して、組合せBと組合せCと組合せDが関連性が強いと最終的に判定される。こうして、組合せBと組合せCと組合せDのデータである「看護師Aと患者Bと注射器Cと薬液ビンF(開栓)と椅子G」が関連性の高いデータの組み合せとして最終的に抽出される事になる。
なお、上記S3では、時間の近接など、比較的物理的な要素に基づいて関連データ組合せを作成しているが、関連判定基準としては、IDが付けられたものの特性に応じて変える事もできる。例えば、関連判定基準の対象としては、医療スタッフや医療機器や薬などの直接医療に関わるものだけを取上げるように設定すると、棚Eや注射器箱DのIDは無視することもできる。また、点滴用の「キシロカイン10%」は、注射器50や点滴ビン91などのような特定の器具に入れられることから、そうした器具をより強い関連性のあるデータとして関連付けるように設定しておいてもよい。
次に、図34は、接触タグ1のCPU7が、上記人為ミスチェック処理と並行して実行する疑義照会処理を表すフローチャートである。このフローでは、前述のように人為ミスチェック処理のように人為ミスかどうかの判定はできないが、ミスである可能性がないかその疑義をチェックできる。処理を開始すると、接触タグ1のCPU7は、先ず、S11にて、接触通信などによって入力された通信リストを読み込んで、現在作業中の項目を検知する。例えば、看護師が「タキソール」の入った薬液ビン70を開栓した時には、接触通信によってその薬液ビン70の接触タグ1fのIDを検知して通信リストに記憶されており、この通信リストを読み込んで現在作業中の項目のIDを検知する。因みに、通信リストの過去のデータのIDを読み込んで、これについて処理を行うようにしても構わない。また、医師がカルテコンピュータ64のキーボード64dから「鈴木次郎」と入力した時には、カルテコンピュータ64のCPUが、その入力データを検知する。
続くS13では、上記検知された作業中項目の内、IDで検知されたものをそのIDが示すものに変換して認識する。ちなみに、医師がカルテコンピュータ64のキーボード64dから患者名などを直接入力した場合は、患者IDからその患者を認識する本処置は不要であるため、次のステップS15へ進む。そして、S15では、S11で検知またはS13で認識したものを、疑義照会リストに照会する。そして、続くS17で、その疑義照会結果を音声や表示で報知し、更に疑義照会結果リストに記憶する。
続くS19では、ENDであるか否かを判断し、ENDでない場合は(S19:NO)、再び上記S11から処理を繰り返す。そして、ENDが入力されている場合は(S19:YES)、処理を終了する。
例えば、看護師が「タキソール」の入った薬液ビン70を開栓すると、接触通信によって、看護師の接触通信装置20が薬液ビン70のIDを検知して通信リストのデータに既に記憶しており、この看護師の接触通信装置20が、この通信リストから薬液ビン70のIDをS11にて検知する。次に、S13にて薬液ビン70のIDから薬液ビン70の中身が「タキソール」である事を認識する。さらに、S15で「タキソール」を疑義照会すると、疑義照会リストに間違い易い薬品として記載されている「タキソールとタキソテール」の組合せリストに合致し、S17で「タキソールではなく、タキソテールの間違いでないか?」といった注意が報知される。
また、医師がカルテコンピュータ64のキーボード64dから「鈴木次郎」と入力した時も同様な処理が行われる。つまり、S11でカルテコンピュータ64がキーボード64dで入力された「鈴木次郎」を検知する。そして、「鈴木次郎」を既に認知している為、ID認識は不要の為、次のS15へ進む。S15では、間違い易い患者として疑義照会リストに記載されている「鈴木次郎、鈴木二郎」に合致する為、「鈴木次郎ではなく、鈴木二郎の間違いでないか?」といった注意の報知が行われる。
この処理では、間違い易いキーワードが組み合わせになっている場合の他に、重要な薬品がリストに記載されており、それを検知した場合は、注意が報知されるようになっている。このように、本例では、医療現場における人為ミスが起きる可能性が高い場合、それを事前チェックすることができる。
なお、人為ミスチェック処理及び疑義照会処理をカルテコンピュータ64などで一括して行っても良いが、前述のように各接触タグ1のメモリ8に、前述のIDリスト、通信リスト、関連性判定基準リスト、薬リスト,カルテ,ヒューマンエラーリストを含むチェックリスト、チェック結果リスト、疑義照会リスト、疑義照会結果リスト、病院内の標準移動時間リスト等を記憶して、各接触タグ1において上記処理を実行している。こうする事で、看護師や医師などが装着している接触通信装置や接触タグ1を備えた医療器具自体が警告を発し、よって、迅速に医療ミスを防止できる。また、LAN通信に掛かる時間や通信障害が無くせるため、より早いチェックが可能となる。
次に、薬局への応用例を説明する。この薬局は、前述の病院内の薬局であり、前述した病院LANなどと、この薬局の例で説明する接触通信装置は無線等によって通信できるものとする。また、接触通信装置には、種々の物があり、例えば、計量器260や処方箋コンピュータ220などがある。
図36〜図40が、薬局への応用例を表す説明図である。図36(A)に示すように、この薬局には、絶縁性の台200の上に、調剤テーブル210,処方箋コンピュータ220,及び薬棚230が載置されている。なお、この例でも、薬剤師は前述と同様の接触通信装置20を装着しているものとする。
調剤テーブル210,処方箋コンピュータ220,及び薬棚230は、いずれも表面が導電性材料で構成され、処方箋コンピュータ220を中心にして互いに接触して配置されている。そして、処方箋コンピュータ220の表面と導電性の床との間には、台200を跨いで接触タグ1oが配設されている。なお、処方箋コンピュータ220は、本体221の上に表示部222を備え、この表示部222はタッチパネル式になっている。
薬棚230は、薬ケース240を収納する薬ケース収納部231を上方に2段備え、粉薬ビン250を収納する粉薬ビン収納部232を下方に1段備えている。また、薬ケース収納部231及び粉薬ビン収納部232には、各部に収納されている薬の情報を表示するための表示器233が設けられている。一方、調剤テーブル210は、上面で粉薬259を調合可能に構成されており、調剤テーブル210の上には、計量器260が載置されている。
図36(B)は、粉薬ビン250及び計量器260の構成を詳細に表す説明図である。この粉薬ビン250及び計量器260は、前述の錠剤ビン80及び計量器85と同様に構成されている。すなわち、粉薬ビン250は蓋251と容器本体252とから構成され、ほぼ全体が導電性の材料で構成されているが、容器本体252の側壁部252aと底板部252bとは絶縁部252cによって絶縁されている。そして、絶縁部252cを挟んで、接触タグ1pが側壁部252a,底板部252bに跨って埋設されている。
計量器260は、本体261の上に、粉薬ビン250を載置可能な計量皿262を備えている。本体261を支持する4本の足263は、その内の3本までが絶縁性材料で構成され、1本の足263aが付け根263bを除いて導電性の材料で構成されている。そして、この付け根263bを挟んで、接触タグ1qが足263aの先端,本体261に跨って埋設されている。
図36(C)は、薬ケース240の構成を詳細に表す説明図である。なお、図36(C)では、導電性の部分にハッチングを施した。この薬ケース240は、長方形の底板241の周囲に前板242,後板243,及び一対の側板244を立設してなる周知の箱形状を有しており、底板241に接触タグ1rが埋設されている。そして、薬ケース240の内面と前板242の外面とは、互いに導通して接触タグ1rの一方の電極に導通しており、底板241,後板243,及び側板244の外面は、互いに導通して接触タグ1rのもう一方の電極に導通している。
このため、次のような、種々の接触回路が構成されてその回路を通じて接触通信がなされる。なお、図37には、各接触回路を概略的に示したので参照されたい。すなわち、薬剤師が処方箋コンピュータ220の表示部222に触れると、薬剤師の体→表示部222→本体221→接触タグ1o→床→薬剤師の体、といった接触回路が構成される。薬棚230に収納してある薬ケース240に薬剤師が触れると、薬剤師の体→前板242→底板241の内面→接触タグ1r→底板241または側板244の外面→薬棚230→処方箋コンピュータ220の本体221→接触タグ1o→床→薬剤師の体、といった接触回路が構成される。薬棚230に収納してある粉薬ビン250に薬剤師が触れると、薬剤師の体→側壁部252a→接触タグ1p→底板部252b→薬棚230→処方箋コンピュータ220の本体221→接触タグ1o→床→薬剤師の体、といった接触回路が構成される。更に、薬剤師が粉薬ビン250を計量器260に乗せると、薬剤師の体→側壁部252a→接触タグ1p→底板部252b→計量皿262→本体261→接触タグ1q→足263aの先端→調剤テーブル210→処方箋コンピュータ220の本体221→接触タグ1o→床→薬剤師の体、といった接触回路が構成される。
更に、調剤用のスプーン265も導電性材料で構成されており、図38,39に示すように、計量器260に乗せた粉薬ビン250の側壁部252aにスプーン265が触れると、薬剤師の体→スプーン265→側壁部252a→接触タグ1p→底板部252b→計量皿262→本体261→接触タグ1q→足263aの先端→調剤テーブル210→処方箋コンピュータ220の本体221→接触タグ1o→床→薬剤師の体、といった接触回路が構成される。なお、図38に示すように、計量器260の本体261には、その正面にリセットボタン261a及び表示部261bが設けられている。
また、薬を入れて患者に渡すための薬袋270は、周知の薬袋と同様、図40に示すように一端271が開口し、他端272が閉じているが、これらは導電性材料で構成され、その間に絶縁部273が設けられている。そして、この絶縁部273を挟んで、接触タグ1sが一端271,他端272に跨って配設されている。このため、薬剤師が薬袋270の両端に触れると、薬剤師の体→一端271→接触タグ1s→他端272→薬剤師の体、といった接触回路が構成される。
次に、この薬局で行われる各処理について説明する。薬剤師が処方箋コンピュータ220をONにすると、中央コンピュータ62と通信してこれから処方すべき患者の処方箋が表示部222に表示されると共に、薬剤師が装着している接触通信装置20にその処方箋を送信する。また、必要に応じて計量器260へも送信する。これら送信については、薬剤師が処方箋コンピュータ220や計量器260に接触して接触通信によってでもよいし、無線通信によってでもよい。
そして、薬剤師の接触通信装置20や処方箋コンピュータ220は、図41で表したような処理を行い、処方箋コンピュータ220は、図42で表したような処理を行い、計量器260は、図44で表したような処理を行い、それらが、並行して実行されると共に、常に情報を交換する事で、一人の患者に処方する薬を間違いなく揃える事ができる。そして、揃えられた薬を、図40の薬袋270に入れる時に、薬剤師の接触通信装置20が図45の処理を行って、一人の患者の薬の処方を終了し、次の患者の薬の処方に移って行く。
ところで、薬剤師の接触通信装置20や処方箋コンピュータ220や後述する計量器260は、無線や接触通信で交信し、処方中の処方箋を常に最新状態に更新している。また、病院内LANを介して中央コンピュータ62とも通信して、最新状態に更新している。
図41は、薬棚230から取り出された薬を検知するための取り出し薬検知処理を表すフローチャートであり、薬剤師の接触通信装置20や処方箋コンピュータ220が行う。処理を開始すると、S31にて、薬棚230に収納された薬ケース240または粉薬ビン250の内、薬剤師が触れたものがあるかを接触通信によって検知し、接触通信によって取り出した薬ケース240または粉薬ビン250のIDを取得する。
これには、前述したように、薬棚230が薬剤師の接触通信装置20と接触通信して取り出した薬を検知できるように構成した事が利用されて可能となる。続くS32では、そのIDに対応する薬を認識する。薬が認識されると、S33にて上記IDが接触通信した時刻をその薬の取り出し時刻として、処方中の処方箋に記憶する。また、この時、この薬剤師名も処方箋に記憶する。
更に、続くS34では、薬剤師の接触通信装置20や処方箋コンピュータ220がシャットダウンされるなどしてENDとなったか否かを判断し、ENDとなっていない場合は(S34:NO)、S31へ移行して上記処理を繰り返す。また、ENDとなった場合は(S34:YES)、そのまま一旦処理を終了する。
次に、図42は、薬棚230の表示器233を制御するための表示器制御処理を表すフローチャートであり、処方箋コンピュータ220が行う。S35では、処方中の処方箋で、薬棚230より未だ取り出していない未取り出しの薬を抽出する。このステップでは、最初は処方箋に記載された全ての薬を抽出することになるが、前述の取り出し薬検知処理(図41)によって薬棚230から取り出された薬が検知される毎に、このステップで抽出される薬の種類も減少する。なお、未取り出し薬であるか否かは、処方箋の薬の取り出し時刻が空欄となっているか否かによって判断することができる(S33参照)。
続くS36では、未取り出し薬のある棚区画に設けられた表示器333を点灯する。このステップでは、処方箋に薬の個数が指示されている場合は、表示器333にその個数を表示する。更に続くS37では、処方箋コンピュータ220がシャットダウンされるなどしてENDとなったか否かを判断し、ENDとなっていない場合は(S37:NO)、S35へ移行して上記処理を繰り返す。また、ENDとなった場合は(S37:YES)、そのまま一旦処理を終了する。
この図41,42処理により、例えば、棚区画イ,ロに収納された薬イ,ロをそれぞれ21個,7個取り出す必要がある場合、薬剤師の行動に応じて、処方箋への記憶や表示器33の表示は図43に示すように変化する。
次に、粉薬のように、計量が必要な場合について説明する。粉薬が入った粉薬ビンを取り出して、図38のような計量器260に載せて計量する場合を図44の計量フローチャートで説明する。
図44は、薬剤師が計量器260の計量皿262に粉薬ビン250を乗せて秤量しながら調剤する際に、計量器260のCPUが実行する計量処理を表す計量フローチャートであり、計量器260のCPUは、計量器260の電源がONされるとこの処理を開始し、電源がOFFされるとこの処理を終了する。ところで、計量器260は接触通信装置の1種でもある為、計量器260のCPUは、接触タグのCPU7としての機能を備え、また、計量器260のメモリは、接触タグのメモリ8としての機能も備えており、計量器260のCPUと計量器260の接触タグ1qのCPUは、一体化したものとなっている。
先ずS41にて粉薬ビン250が計量皿262に乗せられた(積載された)か否かを判断する。これは、図38のように、粉薬ビン250を薬剤師が計量皿262に乗せた時、薬剤師を介して接触回路が形成され、その接触回路を通じて計量器260の接触タグ1qと粉薬ビン250の接触タグ1pと薬剤師の接触通信装置が接触通信を行うことによって検知できる。
粉薬ビン250が計量皿262に乗せられていない場合は(S41:NO)、そのままS41にて待機し、粉薬ビン250が計量皿262に乗せられていると判断される場合(S41:YES)は、S42へ移行する。
S42では、接触タグ1pとの接触通信によって得られる粉薬ビン250のIDから、計量中の薬を認識し、続くS43では、処方箋を参照してその薬の必要量を認識する。続くS44では、取出重量を0gにセットし、表示部261bにも次のような表示を行う。すなわち、計量器260にて計量される重量が安定するまでは表示部261bに「取出禁止」と表示し、安定した後に、その時点の取出重量を0gにセットすると共に、表示部261bの表示も「取出重量0g」とする。つまり、粉薬ビン250を計量器260に載せた時点では、粉薬の取出重量が0gにセットされる。
続いて、S45にて計量タイマをリセットすると共にその計量タイマを再スタートし、このとき同時に、粉薬の取り出しがOKである旨音声と表示で告知する。続くS46では、薬剤師による粉薬取り出し後に重量が安定する度に取り出し重量を計量し、取出重量やS43で認識した必要量から過不足重量を計算し、表示部261bに表示する。また、取出重量が必要量とピッタリ一致した場合でも、音声と表示にてその旨告知する。
更に続くS47,S48,S49では、リセットボタン261aがONされたか否か、計量タイマが所定時間を計時して終了したか否か、粉薬ビン250等の重量を検出し続けているか否か、を順次判断する。リセットボタン261aもONされず(S47:NO)、計量タイマも終了せず(S48:NO)、粉薬ビン250等の重量は継続して検出している場合は(S49:YES)、S46へ戻り、S46〜S49の処理を繰り返すことによって引き続き取り出し重量の計量を続ける。
このようにS46〜S49の処理を繰り返している内にリセットボタン261aがONとされたときは(S47:YES)、同じ薬を上記必要量ずつ複数に小分けする場合であるので、この場合、S44から前述の処理を繰り返す。
一方、S46〜S49の処理を繰り返している内に、粉薬ビン250が計量皿262から撤去されてその重量が検出されなくなった場合や(S49:NO)、計量タイマが終了してしまった場合は(S48:YES)、その薬に対する処理を終了し、前述のS41へ移行して再び粉薬ビン250が積載されるまで待機する。
ところで、リセットボタン261aは、接触タグ(非図示)を内臓した接触検知式スイッチとしている。これによって、リセットボタン261a表面に軽く触れるだけでリセットできる為、計量を妨げる揺れが少なくでき、計量を早める事ができる。詳細には、リセットボタン261a内臓の接触タグは、絶縁された2つの電極の内の一方が、リセットボタン261a表面に、他方が、計量器本体261に繋がっている。薬剤師がリセットボタン261aに触れると、薬剤師→リセットボタン261a内臓の接触タグ→計量器本体261→接触タグ1q→テーブル等→薬剤師として、接触回路が形成される。これによって、リセットボタン261a内臓の接触タグと接触タグ1qが接触通信する事で、薬剤師がリセットボタン261aに触れた事が検知される。そして、接触タグ1qのCPU7は、計量器260自体のCPUと一体化している為、計量器260のCPUが、計量をリセットする事になる。
次に、図45は、処方箋コンピュータ220が表示部222に表示する処方箋を順次切り替えるための、処方終了処理を表すフローチャートである。処方箋コンピュータ220は、この処理を開始するとS51にて、前述のS35と同様の方法で、その処方箋に関する全ての薬が取り出されたか否かを判断する。全ての薬が取り出されていない場合は(S51:NO)、そのまま待機し、全ての薬が取り出されると(S51:YES)、続くS52へ移行する。S52では、薬袋270の接触タグ1sを通る前述の接触回路が形成され、その接触タグ1sが接触通信を行ったか否かを判断する。
すなわち、処方が完了すると薬剤師は薬を薬袋270に詰める。そこで、S52では、薬を薬袋270に詰める動作が行われるまで待機するのである。薬が薬袋270に詰められ、薬袋270の接触タグ1sが接触通信を行うと(S52:YES)、処理はS53へ移行し、カルテの処方箋をその薬袋270の接触タグ1sに送信する。なお、このとき、処方箋に記載された薬の飲み方や、禁忌情報なども接触タグ1sに送信される。続くS54では、それまで表示部222に表示していた処方箋が記憶されているカルテを図示しない中央コンピュータに返信し、S55にて、次の患者のカルテを読み込んでその処方箋を表示部222に表示する。
更に続くS56では、処方箋コンピュータ220がシャットダウンされるなどしてENDとなったか否かを判断し、ENDとなっていない場合は(S56:NO)、S51へ移行して上記処理を繰り返す。また、ENDとなった場合は(S56:YES)、そのまま一旦処理を終了する。
このようにして、薬の処方の間違い(種類・量)がないように指示がなされ、また、たとえ、間違えそうになってもチェックされる。さらには、薬剤師以外が触れた時、チェックされ、薬の盗難・不正使用の防止などもできる。
次に、図46は工場への応用例を表す説明図である。図46(A)に示すように、工場内にはベルトコンベア300が配設され、その上に配設されたコンベアプレート310上に、生産中の冷蔵庫320が積載される。また、ベルトコンベア300は、工程毎に区画された複数の作業ブース330を順次通過するように配設され、各作業ブース330の片隅には、作業を指示する指示コンピュータ350と、工具や部品を収納する部品棚340とが配設されている。なお、この例でも、各作業ブース330の床は導電性で、工場の作業者は前述と同様の接触通信装置20を装着しているものとする。
部品棚340は全体が導電性材料で構成されているが、底板下面と各区画の両側面内面と天井面とには、絶縁材が塗布されている。各区画の底面に敷設される敷板341は、図46(B)に示すように、導電板342,343で絶縁板344を挟んだサンドイッチ状の構造を有し、導電板342,343に跨って接触タグ1tが配設されている。また、部品棚340の各区画上部には、表示器345及び棚ランプ346が設けられている。
指示コンピュータ350は、表示部352と本体351とから構成され、全体が導電性材料で構成されると共に、絶縁性の台353を介して作業ブース330に設けられている。そして、作業ブース330の床と本体351との間に跨って接触タグ1uが配設されている。このため、前述の薬局の場合と同様に、部品棚340に収納された工具または部品に作業者が触れると、接触タグ1t及び1uを介して接触通信がなされる。なお、接触タグ1uは、指示コンピュータ350のCPUとも接続されている。
図47(A)には、この接触通信がなされる接触回路を概略的に示した。なお、図47(A)では、部品棚340の各区画に収納された部品をPa,Pb,Pc,…として表し、各区画を構成する敷板341等にも同様の添え字(以下同様)を付した。
冷蔵庫320の4本の足321はいずれも絶縁性の材料で構成され、その内の1本を跨いで、導電性の冷蔵庫320本体とコンベアプレート310との間に、接触タグ1vが配設されている。なお、コンベアプレート310は、単なる鉄板でもよいが、敷板341と同様に接触タグ1を埋設した絶縁材を導電材プレートで挟んだ構造であってもよい。いずれの場合でも、作業者が冷蔵庫320に部品等を装着する際に接触タグ1vを介した接触通信がなされるが、後者の場合、上記接触通信がコンベアプレート310に埋設された接触タグ1をも経由したものとなる。なお、この接触通信がなされる接触回路も、図47(B)に概略的に示した。
更に、冷蔵庫320の正面には無線タグ322が固定され、各作業ブース330におけるベルトコンベア300との隣接位置には、その無線タグ322と通信する無線タグ送受信機331が設けられている。この無線タグ送受信機331は、常時、作業ブース330内にあるベルトコンベア300上の冷蔵庫320の無線タグ322を検知している。そして、無線タグ送受信機331は、無線タグ322から検知した冷蔵庫320のIDを、その作業ブース330の指示コンピュータ350に通信バス332を介して、作業者の接触通信装置20に無線で、それぞれ常時送信している。
次に、このように構成された各作業ブース330における指示コンピュータ350の処理について説明する。先ず、指示コンピュータ350は、自己のメモリに、生産カルテと棚部品リストとを記憶することができる。
生産カルテには、生産する商品毎に仕様や部品の取り付け順序などの生産手順が記憶されている。取り付け部品の順番の指示が詳細に記憶されると共に、実際に生産を行った時の詳細データが記憶できる欄が設けられている。例えば、生産される冷蔵庫320毎に生産カルテが作成されており、取り付けるべき部品や塗装や検査項目などの各種処置方法が記憶されている。そして、その取り付け予定の部品毎に、作業者IDや作業者が部品を部品棚340から取り出した時刻や取り付けた時刻を記載する欄(取り出し時刻欄や取り付け時刻欄)などが詳細に設けられており、随時、該当欄に記憶できるようになっている。
指示コンピュータ350は、無線タグ送受信機331を介して受信した冷蔵庫320のIDに応じて、図示しないLANを介して中央コンピュータからその冷蔵庫320に応じた生産カルテを受信する。そして、その冷蔵庫320に対する当該作業ブース330での作業が終了したら、指示コンピュータ350は生産カルテを中央コンピュータに返信する。
また、棚部品リストは、各作業ブース330にある部品棚340の各区画に入っている部品と敷板341をリスト化したもので、敷板341とそこにある部品とが対応付けて記憶されている。このため、作業者が部品に触れて、その部品の下の敷板341に埋設された接触タグ1tを経由した接触通信が行われると、この棚部品リストを参照することで、部品を認識することができる。なお、同じ作業ブース330にある指示コンピュータ350と作業者の接触通信装置20とは、検知した情報や生産カルテなどの記憶している情報を常時相互に無線交信して最新状態に更新している。
次に、図48は、指示コンピュータ350が表示器345及び棚ランプ346の制御を行う表示制御処理を表すフローチャートである。この処理を開始すると、先ずS61にて指示コンピュータ350は、前述のように受信した生産カルテ中の部品から、未だ取り付けられておらず、かつ、その作業ブース330の棚部品リストにリストアップされている部品を抽出する。なお、部品が取り付け後であるか否かは、後述の処理により生産カルテに記憶されている。
続くS62では、S61で抽出した部品のある区画の棚ランプ346及び表示器345を次のように制御する。すなわち、このステップでは、取り付け順の最も若い番号の部品が入っている区画の棚ランプ346を青色に点灯させ、次に若い番号の部品の入っている区画の棚ランプ346を黄色に点灯させる。また、取り付け順序が決まっていない場合は、S61で抽出した部品のある区画の棚ランプ346を全て青色に点灯させる。更に、同じ部品を複数取り付ける必要がある場合は、表示器345で個数を表示する。
続くS63では、指示コンピュータ350がシャットダウンされるなどしてENDとなったか否かを判断し、ENDとなっていない場合は(S63:NO)、S61へ移行して上記処理を繰り返す。また、ENDとなった場合は(S63:YES)、そのまま一旦処理を終了する。
図49は、作業者による部品の取り出し状態を検知する取り出し検知処理を表すフローチャートであり、指示コンピュータ350や作業者の接触通信装置20で行われる。この処理を開始すると、作業者が部品を取り出すなどして、部品のある棚の敷板341と作業者の接触通信装置20と指示コンピュータ350の間で接触回路が形成され、敷板341の接触タグ1tと作業者の接触通信装置20と指示コンピュータ350の接触タグ1uを経由した接触通信が行われる。こうして、敷板341のIDを検知する(S65)。続くS66では、その敷板341を棚部品リストに照らし合わせることで、作業者が取り出した部品を認識する。
更に、続くS67では、上記接触通信が行われた通信時刻を、作業者が部品を部品棚340から取り出した時刻とみなし、生産カルテにおける上記認識した部品の取り出し時刻欄に記憶する。また、生産カルテにおける当該部品の取り出し者欄に作業者のIDを記憶する。続くS68では、指示コンピュータ350や作業者の接触通信装置20がシャットダウンされるなどしてENDとなったか否かを判断し、ENDとなっていない場合は(S68:NO)、S65へ移行して上記処理を繰り返す。また、ENDとなった場合は(S68:YES)、そのまま一旦処理を終了する。
図50は、作業者による部品の取り付け状態を検知する取り付け検知処理を表すフローチャートである。この処理を開始すると指示コンピュータ350は、先ずS71にて、作業者の接触通信装置20と冷蔵庫320の接触タグ1vとが接触通信を行うまで待機する。作業者の接触通信装置20と冷蔵庫320の接触タグ1vが接触通信を行うと(S71:YES)、その直前に作業者が部品棚340から取り出した部品を冷蔵庫320に取り付けたとみなして、次のような処理を実行する。すなわち、生産カルテから、前述の取り出し検知処理(図49)によって記憶されている取り出し時刻欄の時刻が最新のものを抽出して、その部品を認識する(S72)。
続くS73では、作業者の接触通信装置20と冷蔵庫320の接触タグ1vとの接触通信が行われた通信時刻を、作業者が部品を冷蔵庫320に取り付けた時刻とみなし、生産カルテにおける上記認識した部品の取り付け時刻欄に記憶する。また、生産カルテにおける当該部品の取り付け者欄に作業者のIDを記憶する。続くS74では、指示コンピュータ350や作業者の接触通信装置20がシャットダウンされるなどしてENDとなったか否かを判断し、ENDとなっていない場合は(S74:NO)、S71へ移行して上記処理を繰り返す。また、ENDとなった場合は(S74:YES)、そのまま一旦処理を終了する。
なお、S72における部品の検索は、取り出し時刻欄が記憶済みで、取り付け時刻欄が空欄の部品を検索してもよく、或いは、直前に部品棚340と接触通信したときの部品を記憶しておくことで生産カルテを参照せずに行ってもよい。また、前述のS36では、部品が取り付け済みであるか否か(S73参照)に基づいて棚ランプ346等を制御すべき部品を抽出したが、前述のS67によって生産カルテに記憶される取り出し時刻欄が記載済みであるか否かに基づいて部品を抽出してもよい。
この図48〜図50の処理により、例えば、部品棚340から部品Pa,Pc,Pbを順次取り出して冷蔵庫320に取り付ける必要がある場合、作業者の行動に応じて生産カルテへの記憶や棚ランプ346の制御状態は図51に示すように変化する。このようなシステムを採用した工場では、冷蔵庫320がベルトコンベア300によって作業ブース330に搬送されると、無線タグ送受信機331が冷蔵庫320の無線タグ322を検知し、その冷蔵庫320の生産カルテを指示コンピュータ350や作業者の接触通信装置20が受信する。続いて、図48〜図50の上記処理により、作業者が部品棚340から部品を取り出したことやその部品を冷蔵庫320に取り付けたことが検知され、その検知に応じて表示器345及び棚ランプ346が制御される。そして、全ての部品の取り付けが終了すると、棚ランプ346が全て消灯し、指示コンピュータ350や作業者の接触通信装置20は生産カルテを中央コンピュータに返信する。
しかしながら、作業の途中で冷蔵庫320が他の作業ブース330へ搬送されようとしたり、作業の途中で作業者が作業ブース330を離れたりした場合、ベルトコンベア300を停止する必要がある。そこで、指示コンピュータ350は、次に示すコンベア停止処理によってコンベア停止フラグFGを1にセットまたは0にリセットする。中央コンピュータは、各作業ブース330の指示コンピュータ350におけるコンベア停止フラグの状態を観察し、いずれかの作業ブース330でコンベア停止フラグFGがセットされるとベルトコンベア300を停止する。
図52は、指示コンピュータ350が実行するコンベア停止処理を表すフローチャートである。処理を開始すると、指示コンピュータ350は、コンベア停止フラグFGがセットされているか否かを判断する(S75)。セットされていない場合は(S75:NO)、作業者及び冷蔵庫320が作業ブース330内に検知できるか否かを、接触通信装置20との通信状態及び無線タグ送受信機331の受信状態に基づいて判断する。
作業者及び冷蔵庫320が共に検知できる場合は(S76:YES)、そのまま前述のS75へ移行して、S75,S76の処理を繰り返し実行する。作業者または冷蔵庫320のいずれか一方が検知できなくなると(S76:NO)、S77にてコンベア停止フラグFGをセットした後、前述のS75へ移行する。
コンベア停止フラグFGがセットされた後は(S75:YES)、S75からS78へ移行し、指示コンピュータ350が前述の各処理により全ての部品の取り付けを検知し、生産カルテを中央コンピュータに返信したか否かを判断する。生産カルテが返信済みでない場合は(S78:NO)、そのままS75へ移行する。一方、生産カルテが返信済みとなると(S78:YES)、S79にてコンベア停止フラグFGをリセットした後、前述のS75へ移行する。
すなわち、コンベア停止フラグFGが一旦セット(S77)された後は、全ての部品が取り付けられたことを指示コンピュータ350が検知するまでS75,S78の処理を繰り返しながら待機し、取り付けが終了して生産カルテが返信されると(S78:YES)、コンベア停止フラグFGをリセット(S79)するのである。この処理により、全ての部品が取り付けられるまでベルトコンベア300を停止して、取り付け後は自動的にベルトコンベア300を再稼動させることができる。
また、コンベアは、通常は、一定速度で常に流れており、部品の取り付けが終了する前に、作業ブースから出て行ってしまいそうな場合を検知して、部品の取付けが終了するまで、一時的にコンベアを停止するようにもできる。更に、この例でも、医療ミスの検出と同様に、作業者が冷蔵庫320に取り付ける部品を間違えたり部品の取り付け順序を間違えたりした場合には、ブザー等によって報知することができる。更に、こうした情報を生産カルテの記憶欄に記憶し、後で検証することも可能である。
更に、本発明は、単に作業ミスの防止に止まらず、各種作業状態を検知してそれを有効利用するのに応用することができる。例えば、図53〜図58はスーパーマーケットへの応用例を表す説明図である。
図53は、買物カート410の構成を表している。図53に示すように、買物カート410の骨格411は、取っ手411aも含めて導電性材料で構成され、買物カゴ(図示せず)を受け入れる枠412は、後述の無線タグ422等からの電波を受信するためのアンテナとして機能する。取っ手411aの付け根には、枠412を介して上記電波を受信する送受信機本体413が設けられている。
また、買物カート410の4つの車輪414はその内3つまでが絶縁性材料で構成され、1つの車輪414aのみが導電性材料で構成されている。骨格411における車輪414aの支持部411bは、絶縁部415を介して他の骨格411と絶縁され、その絶縁部415を跨いで接触タグ1aaが配設されている。このため、取っ手411aを持って客が店内を歩くと、客の体→取っ手411a→骨格411→接触タグ1aa→支持部411b→車輪414a→床→客の体、といった接触回路が構成される。
図54は、そのスーパーマーケットにおけるショーケース420の構成を表す説明図である。図54に示すように、ショーケース420には、表面が導電性材料で構成された牛乳430などの商品が陳列される。ショーケース420は、前述の部品棚340とほぼ同様に構成されている。すなわち、敷板421は2つの導電板で絶縁板を挟んだ構成を有し、その2つの導電板に跨って接触タグ1bbが配設されている。このため、客が牛乳430に触れると接触回路が構成され、接触タグ1bbが接触通信を行う。
また、ショーケース420の正面には無線タグ422が設けられ、信号線423を介して接触タグ1bbと接続されている。このため、接触タグ1bbが上記接触通信を行ったとき、無線タグ422から買物カート410に向けて商品価格等のデータを送信することができる。なお、1つの区画には同一種類の牛乳430が陳列されており、接触タグ1bbのIDにより牛乳430の種類や価格を特定することができる。
図55は、惣菜等の商品の計り売りに関する構成を表している。導電性の台440の上には、前述の計量器260と同様に構成された計量器450が載置されている。すなわち、この計量器450は、本体451の上に計量皿452を備え、本体451を支持する4本の足453は、その内の3本までが絶縁性材料で構成され、1本の足453aが付け根453bを除いて導電性の材料で構成されている。そして、この付け根453bを跨いで接触タグ1ccが配設されている。更に、本体451の正面には、信号線454を介して接触タグ1ccと接続された無線タグ455が設けられている。
このため、客が計量皿452に盛り付けられた白飯461を導電性の杓文字463ですくったり、計量皿452に盛り付けられたハンバーグ462を導電性の箸464で取ったりすれば、接触タグ1ccを通る接触回路が構成され、重量減少分に応じた商品価格等のデータが無線タグ455より送信される。なお、この場合も、計量皿452の振動が安定してからデータを送信するようにしてもよい。また、白飯461等は重量減少分をグラム単位で、ハンバーグ462等は重量減少分を個数に変換した数値として、それに対応した価格が演算される。ところで、このハンバーグ462を取り出した後でないと計量できないが、その取り出したハンバーグ462の個数を客の接触通信装置20に送信する必要がある。しかし、ハンバーグ462を取り出した後では、接触回路が形成されていないため、接触通信ができない。そこで、無線通信してハンバーグ462の個数を客の接触通信装置に送信できるように、計量器450と客の接触通信装置20に無線タグを設けた。このように、接触タグは、触れたものだけを正確に検知する事ができるが、逆に、接触していない相手とは通信できないという欠点がある。そこで、無線タグを共に用いている。つまり、接触タグによって、正確に触れた相手を特定し、その特定した相手に無線を利用して通信する事で、購入した客に間違いなく、送信できるようにしている。また、無線タグでは、触れた相手を特定できないという欠点を接触タグを利用する事で、接触した相手を特定できるようにしているという事もできる。
例えば、計量器450に載った計量皿452から、客が必要量の白飯461を取り出す例で詳細に説明する。無線を備えない場合、白飯461を正確に計量するには、客が、白飯461を計量皿452から取り出した後、計量値が安定するまで計量器450の前で待っていて、安定後、客がもう一度計量器450に触れて計量値を客の接触通信装置で受信する必要がある。その為、計量値が安定するまで、計量器450の前で待つ必要がある。
しかし、無線を備えている場合は、白飯461を計量皿452から取り出した時、接触通信によって客が特定されている為、計量器450は、計量値の安定後、その客に無線で計量値を送信できる。こうして客は、計量器450の前で待つ必要がなくなる。
このように、接触通信装置は、触れた客を特定する事はできるが、離れた所へは通信できないという性質がある。逆に、無線は、触れた客を特定する事はできないが、離れた客へも通信できるという特性がある。
このように、無線と接触通信を組み合せると、客が特定できると共に、接触時に限らないで自由に通信できるようになる。これによって、客は、計量器450の前に縛られないで、買物を進める事ができる。また、これによって、計量器450の前では、他の客が買物をする事ができるようになる。
更には、計量器450は、正確に計量するのに時間が掛かるという性質の他、振動を嫌うという性質がある。接触通信であれば、軽く触れるだけで通信できる為、振動は少ないが、計量後の通信を無線化する事によって、振動を無くす事もできる。
図56は、衣類の販売に関する構成を表している。図56(A)に示すように、衣類500、その衣類500を吊るすためのハンガ510、及びそのハンガ510を掛けるためのハンガ掛520は、いずれもほぼ全体が導電性材料で構成されている。但し、ハンガ510の首部511の付け根には絶縁部512が、ハンガ掛520の両方の足521,521の付け根には絶縁部522,522が形成されている。そして、ハンガ510の絶縁部512を跨いで接触タグ1ddが、ハンガ掛520の一方の絶縁部522を跨いで接触タグ1eeが、それぞれ配設されている。
このため、客が衣類500を手に取ると、接触タグ1dd,1eeを通る接触回路が形成され、客の接触通信装置20と接触タグ1dd,1eeが接触通信を行う。また、衣類500には、糸540を介して無線タグ530が取り付けられている。無線タグ530と接触タグ1ddにもその商品に関する価格等のデータが同じように記憶されているため、一方のタグのデータを受信すれば、本来問題はない。しかし、無線タグにおいては、手に取っていない商品の無線タグのデータを受信してしまったり、接触タグにおいては、接触している間においてだけしか通信できないという欠点がある。その為、無線タグと接触タグを用いて、接触タグ1ddからのデータと無線タグ530からのデータを取得する事によって、商品とそれを手にした客が間違いなく特定され、また、客が手にした商品情報の全てが客の接触通信装置に送信されるようになる。
例えば、接触通信の途中で接触通信が中断されてしまって、商品情報の送信が不充分な場合であっても、客の接触通信装置20で、接触通信によって、商品の接触タグ1ddのIDさえ受信できていれば、残りの商品情報は、無線タグ530からの無線通信によって客の接触通信装置20で受信する事ができる。
このように、無線通信は、客が触れた商品を特定できないという問題があり、接触通信では、送信側と受信側での送受信モードが合うのに時間が掛かるなどによって、客が商品に触れている間に通信完了できない問題があるが、これらを組み合せると、接触通信によって客が触れた商品が特定でき、無線通信によって漏れのない情報通信ができるようになる。
このように、接触タグが送信すべき情報として、自己の接触タグのIDの他に、商品情報などがある場合、商品情報よりも自己の接触タグのIDを優先して送信する機能を持っている為、受信できなかった情報を無線によって、受信できるようになる。
なお、衣類500に無線タグを取り付ける場合、その無線タグが平面状のものであると、無線タグのアンテナ面も衣類500と平行に並んでしまう。すると衣類500の平面に直交する方向(例えば、図56(A)に示す矢印Aの方向)からしかデータを検知できない。この場合、ハンガ掛520が店舗の角にあったり衣類500が多数掛けてあったりすると受信できるような場所に無線タグ送受信機を挿入できず、よって、衣類500のデータを検知できない可能性が高くなる。そこで、本実施の形態では、図56(B)に示すように、無線タグ530を互いに直交する3つの平面(第1面531,第2面532,第3面533)によって構成し、各面にチップ及びアンテナを設けた。このため、衣類500の面に沿った方向(例えば、図56(A)に示す矢印Bの方向)からもデータを検知することが可能となる。また、通常、水平配置される第3面533にもチップ及びアンテナを設けたので、無線タグ530がひっくり返ってもデータを検知することができる。但し、このように無線タグ530がひっくり返る可能性は低いので、第3面533からはチップ及びアンテナを省略してもよい。
なお、図56(B)の例では、一辺を揃えて互いに直交するように配置された第1面531,第2面532の中央に、第3面533を設けており、第3面533を第1面531,第2面532の中央に配置する事で、第1面531,第2面532が直交状態を維持し易いにようにしてある。また、図56(C)に示すように、第3面533を第1面531,第2面532の一端に設け、第1面531,第2面532,第3面533で直方体の箱の一角を構成するように配置してもよい。この場合、第3面533が第1面531及び第2面532の通信の邪魔になるのを良好に防止することができる。また、このように3面からなる無線タグ530を使用する場合、各面のIDを123456a,123456b,123456cといったように関連付けておくと、そのIDを用いた処理が容易になる。
ここで、第1面531の構成について、図57(A)を用いて更に詳細に説明する。なお、第2面532及び第3面533も同様に構成されている。図57(A)に示すように、第1面533は、チップ551及びアンテナ552を備えた平面状のタグ部531a,531bを備え、その間に電波遮断層531cを積層状に配設して構成されている。本実施の形態では、このような構成により、次のように検知ミスを防止している。
すなわち、無線タグは、無線であるが故に、検知が楽な反面、検知できないというミスや逆に、検知して欲しくないときに検知してしまう検知ミスが起きてしまう。そこで、検知したときの方向によって、検知ミスかどうか判断できるようにすることが考えられる。
通常の無線タグは、前述のタグ部531aまたは531bのみで構成され、アンテナ552と正対する面であれば、表側でも裏側からでもデータ等を受信できる。これに対して、裏面に無線遮断するための電波遮断層531cを貼れば、表面方向の感度は向上するが裏面方向ではデータの受信が不能となる。そこで、図57(A)に示したように、2枚のタグ部531a,531bの間に電波遮断層531cを挟んで貼り付ければ、表裏面両方向に良好な通信が可能となる。更に、本実施の形態では、互いに直交する第1面531,第2面532,第3面533をこのように構成したので、どんな向きからも無線タグ530からの電波を受信でき、検知したときの方向によって、検知ミスかどうか判断することが可能となる。ところで、電波遮断層を設けると、本来、通信する側の電波が通り難くなる事がある為、電波遮断層の上にフェライトを塗布すると良い。
なお、図56(C)に例示したような無線タグ530を製造する場合は、図57(B)に示すように、互いに直交する第1面561,第2面562,第3面563を備えた台紙560を予め製作しておき、その表面に無線タグを貼り付けてもよい。更には、上記台紙560として、無線を遮断できる電波遮断材を用い、その3面の表裏の各面に無線タグを貼ってもよい。こうすることで、どんな向きからでも無線タグ送受信機にて受信できると共に、受信した方向から、誤検知によって検知したものか、正当に検知できたものかの判断に利用でき、また、その商品の向きも検知できる。
更に、商品には、見せたい面がある。例えば、図57(C),(D)に示すオレンジジュース600であれば、美味しそうなオレンジの絵のある面600aを正面に配置したい。そこで、この場合は、貼合型の無線タグ601を図57(C)に示すように貼り付けたり、立体型の無線タグ602を図57(D)に示すように添付する。そして、図54の牛乳430の代わりにショウケースに並べた場合を考える。
立体型の無線タグ602が、3枚の個別の無線タグを貼り合わせて立体化したものであるとする。すると、ショウケースの無線タグ422は、3枚の無線タグの内、平行なアンテナ面を持つ無線タグのIDしか検知できない事から、オレンジジュース600の向きを検知する事ができる。
なお、貼付型の無線タグ601は、図57(A)に示す電波遮断層531c,タグ部531aを順次積層したものと同様の構成を有し、立体型の無線タグ602は、図56(C)に示した無線タグ530と同様の構成を有する。
更に、本発明は、商品券などに対しても応用することができる。例えば、図58に示すように商品券700の一端701及び他端702を導電性部材で構成し、その間に絶縁部703を設けると共に、絶縁部703を跨いで接触タグ1ffを配設する構成が考えられる。この場合、接触通信装置20を装着した店員が商品券700の両端701,702を摘んだときに、接触タグ1ffを通る接触回路が形成されるので、その商品券700に対するレジでの処理を自動で実行できるようにすることが可能である。
また、接触通信装置20に、上記接触回路が形成されたとき金種等を音声で告知する装置を設ければ、盲人が商品券700の金種を知る手助けとなる。このような構成は、商品券の他、各種切符、入場券、或いは政府が発行する紙幣などにも適用することができる。更に、このような発声機能を備えた接触通信装置20を指輪型に構成し、ゲームセンターのコインや政府が発行する硬貨を前述の敷板341と同様に構成すれば、その接触通信装置20を備えた指(親指以外とする)と親指でそのコイン等を摘むことにより、金種等を発声させることが可能となる。
次に、接触通信の車への適用例を説明する。先ず、歩行者等との衝突検知の例を図59〜図60で説明する。現在、運転席のエアバッグでは、衝突時の衝突Gを検知して作動させるなどしているが、衝突時以外の誤作動を防止するためなどの必要から、単純に衝突Gを検知して作動させればいいというものではなく、種々のセンサーや複雑なアルゴリズムを用いて、衝突を検知している。その為、衝突してから衝突を検知して、運転席エアバッグが作動するまでには、ある程度の時間が必要である。例えば、速度だけではなく、衝突物の堅さに応じて様々な衝突波が発生する為、これを、Gセンサで捉えて分析する為にも、分析時間が必要である。このように、速度(高速・中速・低速)や衝突物の堅さや衝突部位(前面・側面・後部・オフセット衝突)など様々な衝突状況に応じたエアバッグの作動が必要であるが、その為に、多種のセンサーを取り付けて分析しても、衝突推定アルゴリズムの処理に時間が必要となってしまい、エアバッグの作動に間に合わない惧れがある。また、Gセンサは、柔らかなバンパーで衝撃が吸収されている時間、衝撃波が伝わってこなかったり、取付ける車の部位や部材に応じて、衝突波が変わってしまうという問題もある。
そこで、接触タグを衝突検知センサーとして利用すると、衝撃波の伝達所要時間が不要であり、取付位置の制約も小さく、また、図59の例では、前バンパー左部での接触を検知する例としたが、前バンパー右部でも同様に設置して、前バンパー右部での衝突を検知するようにしたりするなど、衝突を検知する箇所毎に、同様の接触タグを設置して車の衝突部位を簡単に特定する事ができる。また、衝突する相手にも接触タグを備えている事で、物であるのか人間なのか、さらには、子供なのか大人なのかまで検知して、最適な対応が可能になる。
例えば、最近、衝突した歩行者用のケガを防止する為のフロントガラス外面で開く歩行者用エアバッグなどもあるが、この作動には、従来の運転席エアバッグに増してすばやい作動が要求され、また、より詳細な衝突状況の検知が必要とされるが、前述の接触タグを用いる事で、これらが可能となる。ところで、無線タグをこうした衝突検知に利用しようとした場合、これだけでは衝突を正確に検知するのは、難しい。なぜなら、無線タグでは、近くにあれば、無線通信してしまう為に、接触しない対象と接触する対象を識別できないからである。そこで、無線タグを利用する場合は、本例のように、接触通信を利用した衝突検知を基本としながら、衝突の前に衝突の準備するのに無線タグを利用するのが好ましい。例えば、無線タグを持っている歩行者を車載の無線タグ送受信機で受信して衝突を検知しようとした場合、接触していない状態であっても、接触している場合であっても通信してしまうため、衝突したかどうかを検知する事は不能であり、また、無線タグを持っている歩行者などが複数居た場合、衝突相手を特定する事もできないが、接触通信装置と無線タグと併用する事で、無線タグからの情報に基いて、衝突相手を予測して歩行者用エアバッグ等を準備し、接触通信装置によって衝突を検知しすると、すぐに歩行者用エアバッグ等させるといった事に利用できる。ところで、無線タグの他、非接触で検知する技術として、レーダーで距離を検知して車の衝突を予測する技術があるが、これだけでも、正確に接触を検知する事ができない。なぜなら、レーダーでは、接触したかどうかという微妙な距離を検知する事ができない事や、車の表面からの距離ではなく、レーダーアンテナからの距離しか検知できない事による。それに対して、接触通信は、接触通信装置からの距離ではなく、正確に車表面からの距離が検知でき、しかも、接触回路さえ設けておけば、接触通信装置が1つで可能となる。
図59は、そうした衝突を検知する接触タグをバンパーに備えた車800を表したものである。バンパーは、絶縁材でできており、上部表面と前表面には、導電材が塗布されているが、バンパー中央部の表面850だけは、絶縁材が塗布されている。これによって、バンパーの左部と右部は、絶縁されている。さらに、バンパーと車体も絶縁されている。バンパー左部810と車体の接続部は、接触タグ811が設けられ、その一方の電極が車体側に、他方が、バンパー左部表面(導電部)に接続されている。こうして、例えば、人間の足900がバンパー左部810に触れると、
人間の足900→バンパー左部810→接触タグ811→車体→タイヤ→地面→人間の足の靴の接触タグ911→人間の足900という接触回路を形成する。こうして、衝突した人を検知する事ができる。また、衝突した時、バンパーが車体と接触して接触回路を形成して、衝突を検知するようにしても良い。例えば、バンパー左部に突部812を設けておく。すると、衝突時には、バンパーが押されて、バンパー左部突部812が車体に接触する。こうして、バンパー左部突部812→車体→接触タグ811→バンパー左部突部812という接触回路し、衝突を検知する事もできる。この場合、接触タグ811は、送信と受信を同時に行っており、自己の接触タグが送信した信号を受信する事で、バンパー左部突部812で接触が起きたことを検知する。もし、1つの接触タグで同時に送信と受信が困難であれば、送信専用の接触タグと受信専用の接触タグの2つの接触タグで接触タグ811を構成してもよい。
図60は、この接触通信を利用した衝突検知の構成図である。車のECU890からは、速度など車の状態量と、無線タグ送受信機880からは、近くに居る人などが持っている無線タグ(図示せず)との通信情報と、時計870からは時刻と、各種センサー862からは、衝突Gデータや衝突音などの音声と、接触タグからは、前述の接触タグ811などを含む車の各所での接触を検知する複数の接触タグからの接触通信データが、歩行者用エアバッグCPU861や記憶装置に送られる。こうした情報を基に歩行者用エアバッグ(図示せず)の作動が判断される。
また、図61には、こうした衝突事故を記憶する場合のアルゴリズムを例示した。図60の記憶装置840のメモリは、例えば、2時間のエンドレステープのように、常に2時間前の記憶データの上に、最新の情報を上書きして記憶し続ける2時間のエンドレスメモリ領域を複数持っている。そして、事故などが疑われる時毎に、その前後の計2時間を記憶するように構成されている。
図61(A)(B)は、その記憶が行なわれる場合のアルゴリズムを示したもので、図60の記憶装置840で行われ、車が生産された以後、常時、並行して作動している。例えば、図61(A)では、図59のように、人間の足900が車に接触した事をS81で検知した時、更に、S82で車のECU890の速度データから走行中と判断されると、S83でタイマーを始動させる。図61(B)では、記憶装置840のメモリの1つのエンドレスメモリ領域には、常に、記憶装置840のCPUに入力されてくるデータの内、最新の2時間が記憶されているが、タイマーは、1時間タイマーだとすると、図61(B)では、図61(A)のS83で始動したタイマーについて、S86で1時間タイマ―が満了と判断されると、S87で作動中のエンドレスメモリ領域の記憶を中止し、別のエンドレスメモリ領域への記憶を開始させる。このようにして、事故などの重要時の前後2時間のデータを記憶する事ができる。また、S82を無くせば、停止中でもエンドレスメモリ領域の記憶を残す事ができ、車上荒しなどが発生した時の前後2時間のデータが保存できる。
次に、ガソリンスタンドへの適用例を図62で説明する。ガソリンスタンドの給油機1100の前には、給油口に最も近いタイヤだけが入るような導電域1202が設けてある。そして、給油機1100には、接触タグ1102が設けられており、その下部の電極は、給油機1100とは絶縁された状態で、導電域1200と導電接続し、上部の電極は、給油機1100と導電接続するようになっている。これは、例えば、図46(A)の接触タグ1uと同様にしてできる。
車1000の給油口1010には、接触タグ1014が設けられている。給油の為に、給油ガン1101を給油口1010に挿入すると、給油ガン1101の先端が給油口1010の上部導電部1011と接触する。こうして、給油機1100の接触タグ1102→給油機1100→給油ガン1101→給油口の上部導電部1011→給油口の接触タグ1014→給油口の下部導電部1013→車体→タイヤ→導電域1200→給油機1100の接触タグ1102まで、接触回路が形成される。この接触回路によって、給油機1100の接触タグ1102と給油口の接触タグ1014が通信し、給油判断され給油が開始する事ができる。
仮に、車に給油口付近に無線タグを設けて、その無線タグと給油機の間で通信して、給油判断しようとした場合、無線タグでは、アンテナの向きが合わないと通信できなかったり、電波が反射して、思わぬところで通信できてしまうなどの問題が発生する。そこで、通信不能を減らそうとして、電波を強くしたり、また、電波が広範囲に届くような周波数を選択したり、アンテナを大きくするなどして、通信できる範囲を広くしようとすると、情報の盗難が生じ易くなるというトレードオフの関係がある。また、どんな車でも通信不良を起こさないように、アンテナの設置位置や方向などを精密に設置し、また、それをすべて車で統一して設置する必要がある。このように、無線タグのアンテナを精密に設置されるようにしたり、規格を揃える事で通信不能を減らす事はできるが、通信不能を減らそうとすれば、電波漏れは増え、電波漏れを減らそうとすれば、通信不能が増えるといったトレードオフの関係にあって、通信良好性と電波漏れ無しを両立するのは困難であり、どうしても、通信漏れが発生してしまう。
これに対して、接触通信を用いると、仮に、車体に触れても接触回路が形成されないので、情報が漏れない。また、仮に車体に広がった接触通信電流を取ろうとしても、もともと500μA以下の微少電流が車体全体に分散してしまっている為、検出できない。また、この例では、接触回路となる導電域1202が、給油機1100の近くで、タイヤ1本だけが入るような狭い領域で設定してあるため、接触回路が給油者の近くにだけしか存在せず、この接触回路から情報を盗難する事が防止し易くなっている。このように、通信不能をおこさず、しかも、第3者への情報漏れを起さないという、通信の確実性と安全性を両立した通信が可能となる。
ところで、本発明は、上記以外にも種々の用途が考えられる。すなわち、本発明は上記各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。また、本発明でいう接触回路とは、必ずしも定常的に電流が流れる回路に限定されず、例えば、床や地面を共通のアース電極とした静電結合的な回路であってもよい。
また、本発明における導電材とは、接触通信が可能な材質を言い、絶縁とは、接触通信を遮断する事を言うものであり、一般に言う絶縁や導電とは、少し異なるものである。また、接触通信は、基本的には、接触した時に通信する技術であるが、厳密には、接触する直前の微小距離の離れた状態でも、静電結合によって通信可能であり、これは、接触通信の印加電圧等を調整して、非接触における通信距離を調節する事ができる。よって、本発明での接触検知とは、接触した時を検知するだけでなく、接触の直前や直後の検知も含める事ができる。
また、接触通信を行う接触回路は、実施例の閉回路に限らず、例えば、いわゆる導波管型の人体通信などを応用してもよい。導波管型と呼ばれる接触通信では、閉回路を形成しなくても導電材で二つの接触タグが結ばれれば通信できる。例えば、バレーボールの選手への接触に利用できる。この場合、選手は、導波管型の接触タグを装着し、ボールも導電材で作成した上に導波管型の接触タグを内臓させる。選手の靴、または、コートの床を絶縁材で作成しておけば、ボールが選手に接触した時、選手の接触タグとボールの接触タグが、接触通信する為、ボールが選手に接触したかを検知できる。
また、本実施例のおける時計とは、全て電波時計を意味し、時刻とは、全て電波時計が発する時刻としている。ただし、接触の前後関係が判るようなものであれば、電波時計に限らなくても良い。例えば、電波時計でなくてもLAN等を介して、1つの時計の時刻を基準時刻として、その基準時刻による時刻を記録するようにしてもよい。また、時計でなくても、前後関係が判るような1つのカウンタのようなものを用いて、そのカウンタのカウンタ数を用いて、接触通信した前後の関係を捉えるようにする事もできる。
また、接触通信を利用すると、薬ビンの開封検知のように、種々のものの開封検知ができ、例えば、ソフトウェアCDの開封検知をしてもよい。そして、ソフトウェアCDの開封検知した場合は、パソコンとの通信などの何らかの通信手段でソフトメーカーに連絡が行くようにするのである。
また、上記各実施の形態の処理におけるS1,S11,S31,S41,S42,S65,S66,S71の処理が検知手段に、S7が第1警告手段に、S17が第2警告手段に、それぞれ相当する。また、無線局61が位置検出手段に相当する。
最後に、本発明の効果について記載する。接触通信は、接触通信ている間だけ、しかも、近くにあっても、接触しない限り通信しないという特殊な通信である。そこで、接触通信による通信記録を取る事によって、この接触通信の通信記録からは、接触した対象だけを特定できる。さらには、接触した瞬間をも精密に捉える事ができる。これによって、何から順番に接触したか、その接触した物の順番まで捉える事ができる。
また、接触した瞬間をも精密に捉える事ができるからこそ、電波時計からの正確な時刻とあわせる事で、紛れもなく実際に行った際のデータ(以後、リアルデータと記載)が捉えられる。例えば、人間が、時刻を見ながらある作業を行い、作業した時刻を完全に記憶する事が、仮に可能であり、その作業やその時刻を作業の後、コンピュータなどで入力するとした場合であっても、人間には、作業をしながらその作業の瞬間の時刻を見る事自体、不可能である為、実際に作業を行った瞬間瞬間のデータを捉える事は不可能である。もちろん、そうした実際に作業した時の作業内容やその時刻のデータを漏れなく入力する事は、手間がかかる為、不可能でもある。また、そのデータを細かく取ろうとすれば、作業を行った時と同じだけの時間が入力にも必要になり、これも不可能である。このように、接触通信以外では、リアルデータを取得する事はできない。
また、無線タグを用いた場合で考えてみる事とする。無線というものは、本質的な性質として、通信できる範囲が明確にできるものではなく、時と場合によって通信範囲も変わってしまうものである。こうした事から、通信できるエリアを厳密に特定できるものではない。例えば、ナース室全体を通信エリアとする無線タグ送受信機と、これと通信できる無線タグを付けた看護師が、ナース室にいる場合、無線通信によっては、厳密にナース室の何処にいるのか判らない。無線エリアが、時と状況によって変わる為、本当は、ナース室の近くの廊下に居ても検知してしまったり、逆に、ナース室に居ても電波障害物などの為に、看護師Bを検知できたりできなかたりするなど、検知エリアが不安定である。また、さらには、看護師が、ある重要な薬ビンに触れたか触れなかったまでは、当然、検知する事はできない。例えば、ある重要な薬ビンと全看護師には、それぞれ無線通信できる無線タグを取り付けた場合、その重要な薬ビンの無線タグは、近くに居る看護師を検知する事はできるが、近くに複数の看護師が居れば複数の看護師を検知してしまい、触れた看護師を特定して検知する事はできない。このように、無線タグによっては、厳密に位置を特定して検知する事もできないし、位置が厳密に特定できないから、その場所に居る時刻がいつからいつまでなのか、たとえ電波時計を持ってしても、時刻を特定する事はできない。
それに対して、接触通信を利用する事で、位置が厳密に特定できるだけではなく、看護師が薬ビンに触れたどうかという動作までも捉える事ができる。そして、電波時計の時刻を利用する事で、それらの事(位置や動作)の実際のデータを捉える事が可能になる。こうしたリアルデータが取得できるからこそ、行った作業の順序や場所が厳密に特定でき、ミスの判定が可能となり、更に、リアルデータだからこそ、ミスを起こす前にミスを防止する事ができる。このように、いつ、どこで、誰が、何を、どうしたかが、精密に、しかも、リアルデータで捉える事ができ、その接触したタイミングなどから、何をどのように組合せて使っているか、また、誰が何をどうしようとしているか、その状態や動作までも捉える事ができる。また、リアルデータが取得できるからこそ、こうした各種の判定ができるようになる。
病院の実施例では、他の人の今やっている作業の最新状況まで確認できるため、現在の状況(緊急手術があるなど)に応じた指示も可能となる。作業した時刻などについて、手入力などが必要だと面倒で時間ロスになり、急がれる医療処置ができない。更に、手入力データとリアルデータとのアンマッチや未入力などが発生し、信頼したデータでないために、これに基づいたミスチェックができない。
これに対して、接触通信であれば、各医療処置の瞬間瞬間がその前後関係も含めて精密に捉えられるので、単に入力が不要となるだけではなく、実際に行われた医療処置の順序(手順)まで精密に捉える事ができる。そして、看護師が、医療としての正しい手順さえを守っていれば、コンピュタへの手入力無しに、自然に実際の行動経過が精密に入力され、また、それは同時に、医療としての正しい手順であるかどうかのチェックまでなされる。更に、車の衝突検知の例のように、どこに接触したか、その部位も正確に検知する事もできる。病院での例をあげれば、細かく接触タグを設置すると、細かな作業手順まで捉える事ができる。例えば、真空ビンを利用した採血法では、注射器が腕に刺さっている間、ゴムバンドの外すタイミングが悪いと真空ビンの中の血が逆流して、真空ビンの細菌が体内に入ってしまうなどの問題があるが、接触タグを注射器やゴムバンド等に取りつける事で、そうした手順までが記録でき、チェックする事ができる。
更に、接触した時の人体等のインピーダンスを検出記録しておくと、過去の手順(接触のし方、部位)などが推定でき、医療ミスが起きた時、検証に利用できる。また、院内感染が発生した場合、接触通信装置によって記憶された人や物の接触の記録から、原因調査もできる。
工場での生産例に関しては、ベルトコンベアによる生産だけではなく、屋台式(セル)生産にも利用できる。特に、工場ラインや薬局のように狭い所で、部品の取り出しなどを検知しようとして無線タグを設置すると、近くの無線タグが誤検知して取り出した部品を正確に検知する事ができない。他の手段で部品などの取り出しを検知しようとすると、そうした検知装置を1つ1つの棚の区画に設置するのは、スペース的にも困難であるし、これも、隣の部品などを取り出す時、誤作動を起こし易くなってしまう。
それに対して、接触通信であれば、接触回路さえ形成すればいいので、部品の所に取出し部品を検知するセンサーを設置する必要がない。つまり、接触タグ自体は、接触回路の途中の何処に置いても構わないので、部品棚の各区画には、接触回路を形成するように導電材だけを配すれば良い。よって、どんな狭い所でも設置でき、しかも、近くで作業しても、その部品に接触しなければ作動しない為、極めて誤作動のない正確な検知が可能とできる。また、普通のボタンなどのスイッチや取出し部品検知センサーは、限られた個所でしか検知できないが、接触通信ならば、接触回路上のどこでも検知でき、工場などのように限られたスペースでの自由度が上げられる。また、ラインのどこの作業が遅れているのか、律速管理できたり、生産手順の教育が不要となり、また、多種多様仕様の冷蔵庫がラインに流れて来ても、指示コンピュータの指示によって、間違なく部品を取り付けられるし、冷蔵庫の生産を臨機応変に変更しても、指示コンピュータがその生産変更に基づいて指示する為、作業者が間違いなく作業できる。さらには、リアルタイムで作業手順を検知記録できる事を利用して、熟練者や初心者の作業タイミングを記録して比較し、作業習熟に利用する事もできる。
また、薬局の例では、接触通信を用いると、薬剤師の状況や薬の状況などを、リアルタイムで検知できるため、計量器が自動的に現在の状況に合わせてくれるため、普通の計量器のように、スイッチを入れたり設定する必要もない。また、だからこそ、そうした入力時に起き易いヒューマンエラーを防止する事ができる。
また、図36からの薬局での処方の例や図46での工場での生産方法の例は、お店でも応用できる。例えば、今のコンビニエンスストアは、複雑で多様な業務を行われているが、未習熟なアルバイト店員で運営されている。その為、よく判らない事も多い。そこで、例えば、客がレジカウンタに来て、「葉書をください」と言うと、レジカウンタに設置されたマイクで葉書という言葉を検知して、レジカウンタ内の葉書棚のランプを点灯させる。それを見た店員が、葉書の収納棚に触れると、その棚と店員がそれぞれ備える接触通信装置が接触通信して、店員が葉書棚に触れた事を検知して、葉書棚のランプを消灯するように制御して、店員をナビゲートするようにもできる。
また、現在の立小便器の自動水洗では、人が便器の前に居るかどうかしか検知できない為、過剰な水で洗い流したり、逆に、効果的に尿臭を抑えられなかったりする。そこで、人体側と小便器にそれぞれ接触通信装置を設けておいて、オシッコをしている間に尿を介して、接触通信する時間を計測して水洗を制御すれば、最適な水洗が可能となる。更に、現在の自動水洗では、立小便器の前に人が立っているだけで水洗してしまうが、こうした無駄な水洗も防止できる。
その他、トレーニングジムにあるトレーニング機器とその使用者のそれぞれに、接触通信装置を備えておけば、使用者がトレーニング機器を使用する為に接触すれば、使用者毎にトレーニング機器を自動設定する事もできる。その際、無線通信のように、近くの他のトレーニング機器や他の人との混信も無くす事もできる。また、手荷物と所有者のそれぞれに、接触通信装置を備えておけば、手荷物を離した時に検知して、忘れ物防止ができる。また、廊下の床や手すりと老人のそれぞれに、接触通信装置を備えておけば、老人徘徊検知もできる。