JP2006121313A - バラントランス設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 良好な電気特性を有するバラントランスを容易に設計可能なバラントランス設計方法を提供すること。
【解決手段】 不平衡信号と平衡信号とを変換するバラントランスを設計するバラントランス設計方法において、不平衡端子側のインピーダンスZin、平衡端子側インピーダンスZL、偶モードのインピータンスZev及び奇モードインピーダンスZodとが、所望の関係を有するように、バラントランスを設計する。
【選択図】 図1
【解決手段】 不平衡信号と平衡信号とを変換するバラントランスを設計するバラントランス設計方法において、不平衡端子側のインピーダンスZin、平衡端子側インピーダンスZL、偶モードのインピータンスZev及び奇モードインピーダンスZodとが、所望の関係を有するように、バラントランスを設計する。
【選択図】 図1
Description
本発明はバラントランスに関し、特に、不平衡信号伝送線路と平衡信号伝送線路とをインピーダンス整合して接続するバラントランスのバラントランス設計方法に関する。
バランとは不平衡信号伝送線路と平衡信号伝送線路を接続するための整合用変成器である。不平衡信号伝送線路は、アース電位に対する電位の変化を伝送し、平衡信号伝送線路は振幅が等しく互いの位相が180度異なる一対の信号を伝送する。バランにより変換された平衡信号は、耐雑音性に優れ、低電圧動作化することによって省電力と高速化が可能であることから、例えばIC内の差動増幅回路などに利用されている。
バランを設計するには、不平衡信号伝送線路と平衡信号伝送線路の電磁結合比を変化させてインピーダンス比を調整する必要がある。従来、バランの電気的特性を考慮した理論的な設計手法が提案されている。式(3)は、従来の設計でしばしば用いられるバランの設計方程式を示す(例えば、非特許文献1参照。)。
式(3)では、偶モードのインピータンスをZev、不平衡端子側のインピーダンスZin、平衡端子側のインピーダンスをZLとした。式(3)によれば、奇モードインピーダンスZodの2倍(=差動インピーダンス2*Zod)の2乗が、不平衡端子側のインピーダンスZinと平衡端子側のインピーダンスZLの積となるようにバランを設計できる。
また、別の設計方程式によりバランを設計する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の設計方法では、平衡信号および不平衡信号の伝送線路が所定の設計方程式で表される所望のインピーダンス比を有するように、ストリップライン構造の伝送線路幅、伝送線路間隔、誘電体厚みを調整する。
特開2004−172284号公報
E. Valletta, L.C.N de Vreede, J.N. Burghartz、「Design of planar Marchand Balun for MMIC Applications」、 Proc. SAFE 2002、 November 27-28, 2002、 Veldhoven、 The Netherlands、 Publ. STW、ISBN 90-73461-33-2、4pages
しかしながら、式(3)が偶モードインピーダンスZevを含まないことに示されるように、式(3)の設計方程式は、バランを構成する伝送線路の偶モードインピーダンスが奇モードインピーダンスに比べて非常に大きいとする仮定に基づいて導出されたものである。したがって、当該設計方程式を用いて実際にバランを設計できる適用範囲は限られてしまう。例えば、ビルドアップ基板内部のように、グランド平面で挟まれた空間では、従来の設計方程式を設計に用いることができない場合が多い。式(3)を適用できない場合、インピーダンス整合する伝送線路の断面構造を3次元シミュレーションして適当な断面構造を求める等、試行錯誤を積み重ねなければならず多くの時間が費やされる。
また、特許文献1記載の設計方程式では、与えられた条件下で必ずしも最適の電気特性をもったバランが得られるとは限らない。最適の電気特性をもったバランが得られない場合、設計方程式で定められる範囲を適宜変えて再度バランを設計することとなり、試行錯誤や経験的な作業を要求されるため、式(3)を適用した場合と同様の問題が生じる。すなわち、従来の設計方程式による設計には、任意性が含まれるためバランの形状を定めるパラメータを一意に算出できなかった。
本発明は上記問題に鑑み、良好な電気特性を有するバラントランスを容易に設計可能なバラントランス設計方法を提供することを目的とする。
上記問題に鑑み、本発明は、不平衡信号と平衡信号とを変換するバラントランスを設計するバラントランス設計方法において、不平衡端子側のインピーダンスをZin、平衡端子側のインピーダンスをZL、偶モードのインピータンスをZev及び奇モードインピーダンスをZodとした場合、これらが所定の関係を有するように、バラントランスを設計するバラントランス設計方法であることを特徴とする。本発明によれば、試行錯誤等を必要とせずに所望のインピーダンス整合を行うバラントランスを一意に設計することができる。
また、本発明のバラントランス設計方法は、不平衡伝送線路と平衡伝送線路とが、バラントランスの断面において、互いに鏡映対称又は点対称に配設されていることを特徴とする。実際には、不平衡伝送線路と平衡伝送線路とがスパイラル状等に配線されるので、バラントランスの断面には不平衡伝送線路と平衡伝送線路とがそれぞれ複数現れるが、本発明のバラントランス設計方法は、一組(例えば直近)の不平衡伝送線路と平衡伝送線路とが鏡映対称又は点対称であれば適用できる。なお、鏡映対称という場合には線対称を含む。
また、本発明のバラントランス設計方法で設計されたバラントランスは、リターン損失Rが所定の範囲に含まれることを特徴とする。すなわち、リターン損失から見て充分な電気特性のバラントランスを容易に設計可能となる。
また、本発明のバラントランス設計方法では、バラントランスの断面の構造を規定する断面構造パラメータと、バラントランスを構成する材料の物性値と、をパラメータとしてバラントランスを設計することを特徴とする。例えば、2次元空間の電磁界解析シミュレータを用いれば、断面構造パラメータを変えながら、断面構造の偶モードインピーダンスZevと奇モードインピーダンスZodを算出できる。
また、本発明のバラントランス設計方法では、バラントランスの断面の構造を規定する断面構造パラメータと、バラントランスを構成する材料の物性値と、をパラメータとしてバラントランスを設計することを特徴とする。例えば、2次元空間の電磁界解析シミュレータを用いれば、断面構造パラメータを変えながら、断面構造の偶モードインピーダンスZevと奇モードインピーダンスZodを算出できる。
より具体的には、断面構造パラメータは、バラントランスの誘電体内に並設された不平衡伝送線路及び平衡伝送線路の断面視において、不平衡伝送線路及び/又は平衡伝送線路の幅W、厚みT、不平衡信号伝送線路と前記平衡信号伝送線路の距離d、不平衡伝送線路及び/又は平衡伝送線路とアース電位層との距離h、のうち少なくとも一以上である。また、バラントランスを構成する材料の前記物性値とは、前記誘電体の比誘電率εSである。少なくとも一以上であるので、アース電位層がない場合、アース電位層が一又は複数ある場合を含む。
良好な電気特性を有するバラントランスを容易に設計可能なバラントランス設計方法及びバラントランスを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づき実施例を挙げて説明する。図1は、バラントランスの一例としてマーシャントバラン(Marchand balun)の等価回路を示す。マーシャントバランの等価回路は、伝送線路を伝送する信号波長λの4分の1の長さを持つ2組の結合伝送線路から構成されている。図1の回路によって、平衡端子につながる平衡伝送線路(以下、単に平衡線路という)と、不平衡端子につながる不平衡伝送線路(以下、単に不平衡線路という)との間をインピーダンス整合することができる。
図1の等価回路を実現する具体的な伝送線路構造としては、マイクロストリップやストリップライン、コプレーナストリップラインなど無数にあるが、本実施の形態では、ストリップラインが平行に配線されたスタック・ペア構造に基づき説明する。図2は、図1の等価回路のAA線の断面構造を示す。図2のスタック・ペア構造は、上下をアース電位層に挟まれ、それらと平行に配された一対の伝送線路を有する結合線路の構造を模式的に示している。伝送線路の幅をW、2つの伝送線路の厚さをT、伝送線路間の距離をd、誘電体の比誘電率εS、アース電位と2つの伝送線路とのそれぞれの距離をh(以下、これらを断面構造パラメータという。なお、断面構造パラメータは、バラントランスの型に応じてこれらから適切なパラメータを抽出し、また、これら以外のパラメータが含まれることもある。)とする。
バランインピーダンスに対する要求仕様として、バランからみた不平衡端子側のインピーダンスが50ohm、平衡端子側の差動インピーダンスが200ohmであるとする。特許請求の範囲記載の式(1)を用いれば、このようなインピーダンス条件を満足して平衡―不平衡間をインピーダンス整合するバラントランスの断面構造パラメータを見つけることができる(以下、式(1)をデザイン方程式と称す)。
まず、適当な2次元空間の電磁界解析シミュレータを用いて、断面構造パラメータを変えながら、図2の断面構造の偶モードインピーダンスZevと奇モードインピーダンスZodを算出する。偶モードインピーダンスZevと奇モードインピーダンスZodが算出されたら、要求仕様である不平衡端子側のインピーダンスと平衡端子側の差動インピーダンスを満足する断面構造パラメータを決定する。
ところで、2つの伝送線路の厚さT、伝送線路間の距離d、アース電位と伝送線の距離h、また、使用する誘電体(例えばSiO2)により比誘電率εSは、それぞれ製造設備等の関係で所定の大きさに定まっている場合がある。例えば、2つの伝送線路の厚さTは17ミクロン、伝送線路間の距離dは30ミクロンというように、ビルドアップ基板の典型的なサイズがある。本実施の形態では、一例として線路幅Wが設計において自由に変えられるものとする。
具体的に、線路幅Wを決定する方法を説明する。まず、図2の断面構造において、線路幅Wを変えながら偶モードインピーダンスZevと奇モードインピーダンスZodを算出する。なお、計算には上述のとおり一般的な2次元空間の電磁界解析シミュレータを用い、伝送線を伝送される信号の振動数は2.4GHzとした。
次に、シミュレーションで求めたZevとZodの値、平衡線路側のインピーダンスZL=200ohmを式(4)に代入して、Zinを計算する。なお、式(4)は、式(1)を変形したものである。デザイン方程式の導出の詳細については後述する。
式(4)により計算されたZinの値が、不平衡側のインピーダンス(=50ohm)に最も近いときの線路幅Wが、要求仕様を満たすバラントランスを設計するための最適解となる。図3は、線路幅Wを変えてZinを計算した結果をまとめた表を示す。図3の表によれば、線路幅W=45ミクロンの場合、不平衡端子側から見たバランインピーダンス(Zin)が50ohmに最も近い。したがって、線路幅W=45ミクロンでバラントランスを設計すればよいことがデザイン方程式を利用することで求められることが分かる。なお、図3の表ではZin=50ohmとなる線路幅Wは得られていないが、計算する際の線路幅Wのインクリメント値を小さくすれば、設計上必要な精度でZin=50ohmに限りなく近い線路幅Wを得ることができる。
次いで、デザイン方程式を用いて得られたバラントランスの電気的特性を3次元電磁界シミュレーション(Sパラメータ解析)によって確認した。図4は、図2の断面構造において、2つの伝送線路の厚さTを17ミクロン、伝送線路間の距離dを30ミクロン、線路幅Wを45ミクロン、誘電体の比誘電率εSを3.4とした場合の、リターン損失と挿入損失のシミュレーション結果を示す。なお、シミュレーションには、Ansoft社HFSSソフトウェアを用いた。
図4のシミュレーション結果は、不平衡端子側のインピーダンスを50ohmとして、平衡端子のインピーダンスを180ohm、200ohm、220ohmと変えたときの、不平衡端子から見たリターン損失(小さい方が好ましい)と挿入損失(大きい方が好ましい)を、伝送信号の振動数に対してプロットしている。
図4のグラフからわかるように、線路幅Wを計算する際に用いた信号の振動数2.4GHzの近傍では、平衡端子側のインピーダンスが200ohmの場合に、リターン損失が小さく最も電気特性がよいことが分かる。要求仕様とした平衡端子側のインピーダンスが200ohmの場合に電気特性がよいことから、デザイン方程式を用いたバラントランスの設計が有効であることが確認できる。
デザイン方程式によるバラントランスの設計の有効性について、実測データにより検証した結果を説明する。図5は、本実施例のバラントランスの分解斜視図を示す。不平衡線路20と平衡線路10及び11が、上下のアース電位層13及び15の間に誘電体30を介して配設される。不平衡線路20及び平衡線路10、11は、実装スペースを低減するためスパイラル状に形成される。不平衡線路20は信号波長λの1/2、平衡線路10・11は信号波長λの1/4、の長さをそれぞれ有する。
不平衡線路20、平衡線路10及び11は、上下のアース電位層13及び15と平行に配設され、また、不平衡線路20は、平衡線路10及び11の上側に、断面構造が図2のようになるよう重畳して配置されている。
不平衡線路20の一端20aは、上側のアース電位層15に設けられた不平衡端子19と接続される。不平衡線路20の他端は開放状態である。平衡線路10の一端10a及び平衡線路11の一端11aは、ビアホール17を介して上側のアース電位層15の平衡線路10b及び11bにそれぞれ接続され、他端は開放状態である。
図6は、1対の平衡線路10aと11aの平面図を示す。平衡線路のスパイラルは、2.8mm角、線路間隔は155ミクロンとした。平衡線路10aと11aのスパイラルの長さは、それぞれ約17mmである。この長さは、伝送信号の振動数が2.4GHzの場合、λ/4に等しい。
なお、誘電体30は例えば、IC内部にバランを作り込む場合は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などが用いられ、不平衡線路20、平衡線路10及び11は、AlもしくはCuを主成分とする材料で形成する。ICパッケージやプリント配線基板に作り込む場合は、誘電体30には有機材料あるいはセラミック材料が用いられ、不平衡線路20、平衡線路10および11は、Cuを主成分とする材料で形成する。また、不平衡線路20、平衡線路10及び11は、スパイラル状の他、ミアンダ状(蛇行形状)にしてもよい。
本実施例のバラントランスは、誘電体30を有機材料、不平衡線路20、平衡線路10及び11をCuとし、ICパッケージのビルドアップ層に形成することを想定した。以上の構成により、不平衡信号は、不平衡端子19から入出力され、平衡信号が平衡端子10b及び11bから出入力される。
断面構造は、図2と同様であるので説明は省略する。本実施例では、断面構造パラメータのうち、配線幅W以外のパラメータは全て固定し、配線幅Wだけを設計することができるものとする。適当な2次元空間の電磁界解析シミュレータを用いて、配線幅wを変えながら偶モードインピーダンスZevと奇モードインピーダンスZodを計算する。
次に、電磁界解析シミュレータにより得られた偶モードインピーダンスZevと奇モードインピーダンスZodをデザイン方程式に代入して不平衡側のインピーダンスZinの値を計算する。なお、誘電体30の比誘電率は3.3、平衡端子側のインピーダンスZLを100ohmとした。
図7は、線路幅W を変えながら2次元空間の電磁界解析シミュレータにより計算されたZinの値を示す。図7によれば、不平衡側のインピーダンスZinの値が、50ohmに最も近いのは、線路幅W=70ミクロンの場合である。したがって、図5のバラントランスは、線路幅w=70ミクロンに設計すればよいことが分かる。
デザイン方程式により得られたバラントランスの電気特性を、3次元電磁界シミュレーションと実測により検証した。図8(a)は伝送信号の周波数とリターン損失の関係を、図8(b)は伝送信号の周波数と挿入損失の関係を、それぞれ示す。図8においては、実線がシミュレーションの結果を、点線が実測による結果を示す。
図8は、3次元電磁界シミュレーションと実測の双方において、中心周波数(2.4GHz)近傍で、−20db以下の反射損失、−1.1db程度の挿入損失が得られており、バラントランスとして良好な特性が確保できていることがわかる。したがって、デザイン方程式を利用した2次元電磁界シミュレーションによる設計法は、良好な特性をもつバランを得るために有効であると言える。
また、リターン損失及び挿入損失のいずれにおいても、実測結果はシミュレーション結果と良好に相関していることから、3次元電磁界シミュレーションによりデザイン方程式の有効性を評価する手法も有効であることが分かる。
実施例2では、従来技術との比較結果について説明する。バラントランスの断面構造としては、図2と同様に、2つの伝送線路の厚さTを17ミクロン、伝送線路間の距離dを30ミクロン、誘電体の比誘電率εSを3.4とした。2次元空間の電磁界解析シミュレータを用い、伝送線路を伝送される信号の振動数は2.4GHzとして、従来の設計方程式に適合する線路幅Wを算出した。従来の設計方程式を用いた場合、適切な線路幅Wは、62ミクロンと算出される。次いで、線路幅Wを62ミクロンとした場合のリターン損失を3次元電磁界シミュレーショタによりシミュレーションした。
図9は、線路幅Wを62ミクロンとした場合のリターン損失のシミュレーション結果を示す。比較のために、線路幅W=62ミクロンのシミュレーション結果(点線)と図3の表より得られた線路幅W=45ミクロンのシミュレーション結果(実線)を示す。図9のシミュレーション結果によれば、線路幅W=45ミクロンのバラントランスの方が、線路幅W=62ミクロンのバラントランスより低いリターン損失が得られている。すなわち、本実施例によるデザイン方程式を設計に用いた方が、電気特性の優れたバラントランスを得ることができる。
以上説明したように、本実施例のデザイン方程式を用いれば、与えられた制約条件下において、所望のインピーダンス変換比を有するバラントランスを、2次元空間の電磁界解析シミュレータのみにより一意に得ることができる。これに対して、従来の設計方程式では、必ずしも良い電気特性が得られるとは限らず、所望の電気特性が得られなかった場合、試行錯誤により線路幅Wを決定する等の作業を要することとなる。すなわち従来は、一意にバラントランスを設計することができず、所望の変換比のバラントランスが設計できるまで非常に長時間を要した。これに対し本実施例のデザイン方程式を用いれば、所望のインピーダンス変換比を有するバラントランスを、短時間で設計することが可能である。
また、本実施例のバラントランスは、偶モードインピーダンスZevが無視できないような基板条件でも設計が容易に行える。図3のシミュレーション結果に示すように、スタック線路等、偶モードインピーダンスZevが奇モードインピーダンスZodと比較して無視できない場合も設計が可能である。
〔デザイン方程式の導出〕
デザイン方程式の導出方法について詳細に説明する。図10は、1対の分布定数線路からなる結合線路の回路図を示す。図10に示すように、結合線路は4つのノード(ノード1〜4)を有する。各ノードにおける電流Iiと電圧Vi( i = 1、2、3、4)との関係は、一般に、式(5)に示すインピーダンス行列によって次式で与えられる。
デザイン方程式の導出方法について詳細に説明する。図10は、1対の分布定数線路からなる結合線路の回路図を示す。図10に示すように、結合線路は4つのノード(ノード1〜4)を有する。各ノードにおける電流Iiと電圧Vi( i = 1、2、3、4)との関係は、一般に、式(5)に示すインピーダンス行列によって次式で与えられる。
式(5)の右辺は、図10の結合線路のインピーダンス行列であり、それらの各成分は次のように与えられる。なお、このインピーダンス行列は、「倉石源三郎“例題演習マイクロ波回路” 東京電機大学出版局 p196(1986)」に示されている。
式(5)、及び、式(6)〜(13)が、バラントランスのデザイン方程式を導出するための基礎方程式である。
次に、図10の結合線路を、図11に示すように終端した場合を考える。図11の結合線路では、ノード2が抵抗r2で終端され、ノード3は接地され、ノード4は開放端とされる。
ノード1からみた図11の結合線路のインピーダンスを計算する。この計算は、式(5)〜(13)に、図11の3つの終端条件を課すことによって行うことができる。具体的には、式(5)は4つの式からなるが、式(5)に対して終端条件をひとつ課すたびに、式(5)が含む方程式の数をひとつずつ減らすことができる。ノード1から見た図11の結合線路のインピーダンスは、次のようになる。
次に、図10の結合線路を図12のように終端した場合を考える。図12の結合線路では、ノード2が接地され、ノード3は抵抗r1で終端され、ノード4はインピーダンスZで終端される。同様に、ノード1からみたインピーダンスを求めると、次のようになる。
したがって、図12の結合線路において、ノード4を終端しているインピーダンスZの実数部と虚数部に、式(14)(15)をそれぞれ代入するだけで、バラントランスのインピーダンスを求めることができる。すなわち、式(14)〜(20)が図13に示したようなバラントランスのインピーダンスを与える一組の式となる。
バラントランスのインピーダンスを与える式(14)〜(20)は、すべての周波数に対する表式である。したがって、これを利用すれば、任意の周波数におけるバラントランスのインピーダンスが得られる。しかしながら、実際の設計では、すべての周波数ではなく、動作中心周波数(1/4波長が信号線路と同じ長さになる周波数)において、所望のインピーダンス変換比が得られるようにバランを設計したいと考えることが多い。そこで、中心周波数におけるインピーダンスの式を導出する。式(14)〜(20)においてθ=π/2と置くと、バラントランスのインピーダンスの式(16)は次のように書くことができる。
バラントランスのインピーダンスを与える式(14)〜(20)は、すべての周波数に対する表式である。したがって、これを利用すれば、任意の周波数におけるバラントランスのインピーダンスが得られる。しかしながら、実際の設計では、すべての周波数ではなく、動作中心周波数(1/4波長が信号線路と同じ長さになる周波数)において、所望のインピーダンス変換比が得られるようにバランを設計したいと考えることが多い。そこで、中心周波数におけるインピーダンスの式を導出する。式(14)〜(20)においてθ=π/2と置くと、バラントランスのインピーダンスの式(16)は次のように書くことができる。
式(21)が、図13のバラントランスの等価回路において不平衡端子からみたインピーダンスとなる。実際には、バラントランスの等価回路において、終端抵抗がつながっているノードには、平衡線路が接続される。すなわち、2つの終端抵抗の値r1とr2が等しい場合を考えることが多い。そこで、式(21)において、r1=r2=ZL/2とおくと、次のようになる。但し、ZLは平衡線路側のインピーダンスである。
次いで、式(22)を用いてバラントランスを設計する場合において、電気特性の良いインピーダンスの範囲を規定する。動作中心周波数において不平衡端子からみたバランの反射係数をΓとすると、Γは式(22)を用いて次のように表される。
〔本実施例のデザイン方程式を適用可能なバラントランスの例〕
本実施例のデザイン方程式は、不平衡伝送線路20と平衡伝送線路10とが、バラントランスの断面において、互いに鏡映対称又は点対称に配設されていれば適用可能である。
本実施例のデザイン方程式は、不平衡伝送線路20と平衡伝送線路10とが、バラントランスの断面において、互いに鏡映対称又は点対称に配設されていれば適用可能である。
図14は、本実施例のデザイン方程式を適用して設計できるバラントランスの種々の断面構造を示す。これまで説明したように図14(a)のような、対称線Bに対し上下に鏡映対称なスタック・ペア構造のバラントランスにおいて、本実施例のデザイン方程式を好適に適用できる。また、図14(b)に示すように、左右に鏡映対象なストリップライン型のバラントランスに対しても本実施例のデザイン方程式を好適に適用できる。
図14(c)のバラントランスは、一方のグランド平面がないいわゆるマイクロストリップライン型のバラントランスであるが、バラントランスの断面が鏡映対称であるので、本実施例のデザイン方程式を好適に適用できる。
また、図14(d)は、点Pに対し点対称となるように上側の不平衡線路20と下側の平衡線路10とが配置されているが、本実施例のデザイン方程式は、かかる断面構造でも好適に適用できる。すなわち、不平衡線路と1対の平衡線路とが上下にまったく重畳していなくもよいし、一部重畳していてもよい等、適用できる基板条件が広い。
図14(e)は、マイクロストリップ・コプレーナ線路の断面構造を示す。図14(e)のマイクロストリップ・コプレーナ線路は、誘電体1、2及び3の3つの誘電体層を有し、誘電体層1に不平衡伝送線路20と平衡伝送線路10が配置されている。また、不平衡伝送線路20と平衡伝送線路10の両側に、コプレーナグランドプレーンが配置され、不平衡伝送線路20と平衡伝送線路10の上側に浮遊導体30が配置されている。図14(e)のような断面構造であっても、当該断面構造は対称線Bに対し鏡映対称な構造となっているので、本実施例のデザイン方程式を好適に適用できる。
10、11 平衡線路
10b、11b 平衡端子
13、15 アース電位層
17 ビアホール
19 不平衡端子
20 不平衡線路
30 浮遊導体
10b、11b 平衡端子
13、15 アース電位層
17 ビアホール
19 不平衡端子
20 不平衡線路
30 浮遊導体
Claims (5)
- 不平衡伝送線路と平衡伝送線路とが、バラントランスの断面において、互いに鏡映対称又は点対称に配設されていることを特徴とする請求項1記載のバラントランス設計方法。
- バラントランスの断面の構造を規定する断面構造パラメータと、バラントランスを構成する材料の物性値と、をパラメータとしてバラントランスを設計する、
ことを特徴とする請求項1記載のバラントランス設計方法。 - 前記断面構造パラメータは、
前記バラントランスの誘電体内に並設された不平衡伝送線路及び平衡伝送線路の断面視において、
前記不平衡伝送線路及び/又は平衡伝送線路の幅W、厚みT、
前記不平衡信号伝送線路と前記平衡信号伝送線路の距離d、
前記不平衡伝送線路及び/又は平衡伝送線路とアース電位層との距離h、のうち少なくとも一以上であり、
バラントランスを構成する材料の前記物性値は、前記誘電体の比誘電率εSである、
ことを特徴とする請求項4記載のバラントランス設計方法。
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---|---|---|---|
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