JP2006117463A - 歯科用セメント、ホーパイトのアパタイトへの転換方法とその転換体 - Google Patents
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Abstract
【課題】骨補填、骨組織代替、硬組織再建、人工歯や人工骨プラント、生体インプラント、生体埋入、骨に係る再生医療等で用いられる硬組織用材料は未だ改良・開発の途上にあり、その最良材料としての自家骨にも、供給骨量に制限がある。従って、供給に量的制限がなく、国際的な評価に耐え、高機能性かつ高品質の骨補填材、硬組織代替材料等の開発は、極めて重要な課題である。
【解決手段】全世界で長年にわたり常套かつ常用の歯科用リン酸亜鉛セメント、ホーパイトをカルシウム含有物質に接触させ、該ホーパイトをハイドロキシアパタイト(HAP)に転換する方法;該方法により製造される転換体HAP(tHAP);生体埋入されると骨代謝を高める亜鉛徐放性tHAP;tHAPの用途としての医科歯科分野の骨や歯等に係る疾患、例えば、骨欠損、骨吸収、歯周病等の治療及び再生医療用の材料等。
【選択図】図7
【解決手段】全世界で長年にわたり常套かつ常用の歯科用リン酸亜鉛セメント、ホーパイトをカルシウム含有物質に接触させ、該ホーパイトをハイドロキシアパタイト(HAP)に転換する方法;該方法により製造される転換体HAP(tHAP);生体埋入されると骨代謝を高める亜鉛徐放性tHAP;tHAPの用途としての医科歯科分野の骨や歯等に係る疾患、例えば、骨欠損、骨吸収、歯周病等の治療及び再生医療用の材料等。
【選択図】図7
Description
この発明は、歯科用リン酸亜鉛セメント、ホーパイトのアパタイトへの置換・転換方法、これより生成される転換体、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite;以下「HAP」と略記する)、亜鉛徐放性HAP、及びその用途としての生体インプラント材料、医療用セラミックス、生体埋入材料、人工骨材、骨補填材、骨組織再生促進材等に関するものである。
医科用及び歯科用のHAPは、1974年む頃から盛んに開発され、現在では夥しい数の技術が知られている。例えば、Ca/Pモル比率の調整下で製造される人工歯や人工骨プラント材用のHAP(特許文献1及び2)、HAPと酸化チタンとの複合体(特許文献3)、表面にHAPを有するインプラント用ガラスセラミックス(特許文献4)、珪酸を含有する珪酸置換HAP(特許文献5)、キトサン−HAP複合体(特許文献6)、人工骨移植片用の多孔質HAP(特許文献7)等々が公知である。また、亜鉛徐放性の骨補填剤や骨組織代替材に関しては、亜鉛徐放性リン酸三カルシウム(特許文献8)、亜鉛を固溶したリン酸三カルシウムからなるセラミックス(特許文献9及び10)等が知られている。しかしながら、人工歯根の移植、骨補填、骨組織代替等に用いられる材料は未だ改良あるいは開発の途上にあり、また、硬組織再建方法も未確立の状態にある。
特開昭59−11845
特開平03−45266
特開平05−306108
特開平10−151187
特表2000−517287
特開2002−338602
特表2004−505677
特表2004−175760
特開平11−157923
特開2002−335963
硬組織代替材料の開発や硬組織再建方法の確立は、高齢化社会における医科歯科治療の重要課題である。
更に、高齢者だけではなく、一般の骨疾患、例えば、口唇・口蓋裂患者の骨欠損部位における骨補填療法は、骨補填材の骨への置換変換、歯槽骨の連続性の修復、新生骨部への歯の移動等を可能にし、その有用性は極めて高い。また、骨補填材は、骨粗鬆症等の骨吸収性疾患の治療にも有用である。しかしながら、骨補填療法を要する疾患、例えば、歯槽骨欠損に対し最も有効な手段は結局のところ自家骨、例えば腸骨の移植に帰結する現状にある。自家骨移植の利点は、移植床での直接的な骨形成にあるが、その反面、骨採取による外科的侵襲が不可避であり、骨形成性や機械的強度は期待できず、更に、採取可能な骨量には限度がある。
従って、供給での量的制限を受けず、適格性に係る国際的評価に耐え、しかも高機能性と高品質を兼備した骨補填材、硬組織代替材、硬組織再建用の材料等の開発と提供は、極めて重要な課題である。
更に、高齢者だけではなく、一般の骨疾患、例えば、口唇・口蓋裂患者の骨欠損部位における骨補填療法は、骨補填材の骨への置換変換、歯槽骨の連続性の修復、新生骨部への歯の移動等を可能にし、その有用性は極めて高い。また、骨補填材は、骨粗鬆症等の骨吸収性疾患の治療にも有用である。しかしながら、骨補填療法を要する疾患、例えば、歯槽骨欠損に対し最も有効な手段は結局のところ自家骨、例えば腸骨の移植に帰結する現状にある。自家骨移植の利点は、移植床での直接的な骨形成にあるが、その反面、骨採取による外科的侵襲が不可避であり、骨形成性や機械的強度は期待できず、更に、採取可能な骨量には限度がある。
従って、供給での量的制限を受けず、適格性に係る国際的評価に耐え、しかも高機能性と高品質を兼備した骨補填材、硬組織代替材、硬組織再建用の材料等の開発と提供は、極めて重要な課題である。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、安全性と有効性が古くから公認され、しかも歯科分野で常套手段として長年にわたり常用されてきたリン酸亜鉛セメントの活用に着目し、該セメント(ホーパイト)をハイドロキシアパタイトに転換する技術を新規に開発した。この発明によれば、上記の転換技術とこれより得られる転換体であるハイドロキシアパタイトが提供される。該HAPは、骨組織や生体への適合性、親和性、加工性等に優れて高く、就中、亜鉛徐放性を発揮し、更に耐久性と機械的強度とを兼備し、骨補填、硬組織代替材、インプラント、生体埋入等の材料として優れて適格である。
先ず、本発明の構成を明確にするため、この明細書で用いる用語(1)〜(4)につき、以下に定義付ける。
(1)ホーパイト(hopite):リン酸三亜鉛・4水和物Zn3(PO4)2・4H2Oを意味する。併せて、リン酸亜鉛Zn3(PO4)2、歯科用リン酸亜鉛セメント(酸化亜鉛粉末と正リン酸水溶液からなるリン酸亜鉛生成用キット)、歯科用リン酸亜鉛セメント硬化体(リン酸亜鉛と酸化亜鉛ZnOとの複合体)等、リン酸亜鉛分子を有する物質の総称として用いることがある。
(2)アパタイト(apatite):多様なアパタイトのうち、Ca5(PO4)3(OH)を意味し、併せて、これに類縁のハイドロキシアパタイト(後述される)の略称としても用いることがある。
(3)ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite又はhydroxylapatite):前述の通り、「HAP」と略記する。化合物Ca10(PO4)6(OH)2、Ca10(PO4・CO3)6(OH)2 、及び3Ca3(PO4)2・Ca(OH)2を主に意味し、 更に、上述したアパタイトCa5(PO4)3(OH)等をも含む総称として用いることがある。
(4)転換体HAP(transformant HAP):「tHAP」と略記することがある。本発明に係るホーパイトからHATへの転換方法により得られる転換体(transformant)の総称として使用される。即ち、上述したHAPだけではなく、ホーパイト由来の亜鉛Znあるいは酸化亜鉛ZnOが5%(重量)以下の割合で残存・共存するHAPをも併せて意味する。
この発明によれば、前述の課題を解決するための手段として、次の(1)〜(6)に記載の方法と物質がそれぞれ提供される:
(1)ホーパイトをカルシウム含有物質に接触させることを特徴とするホーパイトかハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(2)カルシウム含有物質が、液状又はガス状である上記(1)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(3)カルシウム含有物質が硝酸カルシウムCa(NO3)2、炭酸カルシウムCaCO3、水酸化カルシウムCa(OH)2及び塩化カルシウムCaCl2からなるカルシウム化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物の水溶液である上記(1)又は(2)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(4)ホーパイトへのカルシウム含有物質の接触、即ちこれ等両者の相互の接触手段が浸漬及び/又は蒸気通である上記(1)、(2)又は(3)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(5)上記(1)、(2)、(3)又は(4)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法により得られる転換体HAP(tHAP)。
(6)亜鉛徐放性のtHAP。尚、該tHAPは、生体内で亜鉛Znを徐放し、次に示すZn作用効果をもたらし、Zn欠乏症の予防に役立つ:即ち、亜鉛は、必須の生体微量金属元素であり、これには骨芽細胞の活性化、破骨細胞の抑制、骨組織再生の強力な促進等の骨代謝の高進、増髪等のZn作用効果、更に、Zn欠乏による味覚異常、皮膚炎、発育遅延、性的発育遅延等が知られている。
先ず、本発明の構成を明確にするため、この明細書で用いる用語(1)〜(4)につき、以下に定義付ける。
(1)ホーパイト(hopite):リン酸三亜鉛・4水和物Zn3(PO4)2・4H2Oを意味する。併せて、リン酸亜鉛Zn3(PO4)2、歯科用リン酸亜鉛セメント(酸化亜鉛粉末と正リン酸水溶液からなるリン酸亜鉛生成用キット)、歯科用リン酸亜鉛セメント硬化体(リン酸亜鉛と酸化亜鉛ZnOとの複合体)等、リン酸亜鉛分子を有する物質の総称として用いることがある。
(2)アパタイト(apatite):多様なアパタイトのうち、Ca5(PO4)3(OH)を意味し、併せて、これに類縁のハイドロキシアパタイト(後述される)の略称としても用いることがある。
(3)ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite又はhydroxylapatite):前述の通り、「HAP」と略記する。化合物Ca10(PO4)6(OH)2、Ca10(PO4・CO3)6(OH)2 、及び3Ca3(PO4)2・Ca(OH)2を主に意味し、 更に、上述したアパタイトCa5(PO4)3(OH)等をも含む総称として用いることがある。
(4)転換体HAP(transformant HAP):「tHAP」と略記することがある。本発明に係るホーパイトからHATへの転換方法により得られる転換体(transformant)の総称として使用される。即ち、上述したHAPだけではなく、ホーパイト由来の亜鉛Znあるいは酸化亜鉛ZnOが5%(重量)以下の割合で残存・共存するHAPをも併せて意味する。
この発明によれば、前述の課題を解決するための手段として、次の(1)〜(6)に記載の方法と物質がそれぞれ提供される:
(1)ホーパイトをカルシウム含有物質に接触させることを特徴とするホーパイトかハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(2)カルシウム含有物質が、液状又はガス状である上記(1)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(3)カルシウム含有物質が硝酸カルシウムCa(NO3)2、炭酸カルシウムCaCO3、水酸化カルシウムCa(OH)2及び塩化カルシウムCaCl2からなるカルシウム化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物の水溶液である上記(1)又は(2)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(4)ホーパイトへのカルシウム含有物質の接触、即ちこれ等両者の相互の接触手段が浸漬及び/又は蒸気通である上記(1)、(2)又は(3)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
(5)上記(1)、(2)、(3)又は(4)のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法により得られる転換体HAP(tHAP)。
(6)亜鉛徐放性のtHAP。尚、該tHAPは、生体内で亜鉛Znを徐放し、次に示すZn作用効果をもたらし、Zn欠乏症の予防に役立つ:即ち、亜鉛は、必須の生体微量金属元素であり、これには骨芽細胞の活性化、破骨細胞の抑制、骨組織再生の強力な促進等の骨代謝の高進、増髪等のZn作用効果、更に、Zn欠乏による味覚異常、皮膚炎、発育遅延、性的発育遅延等が知られている。
この発明は、医科歯科分野の骨や歯等に係る疾患、例えば、骨欠損や骨吸収等の治療のため骨補填材、硬組織再建材、再生医療用材料等として、組織や生体への適合性・親和性、生体埋入性、耐久性、堅牢性等において優れ、特に、骨代謝を高めるZnの徐放等、高い機能と性能を発揮する高品質のtHAPが提供される。また、安全かつ有効なHAPの省力的製造を可能にする。併せて、医科歯科分野の骨や歯等に係る硬組織再建、再生医療等に福音をもたらし、多大に寄与する。
この発明の実施の形態に関し、次の通り詳述する:
(1)カルシウム含有物質に接触させるホーパイトの形状とサイズ:カルシウム含有物質との接触効率あるいは接触表面積を高めるため、粉砕された粉末状ホーパイトの使用が望ましい。
(2)ホーパイトの結晶構造:例えば、酸化亜鉛ZnOの仮焼粉末と正リン酸H3PO4水溶液[例えば、50%(重量)H3PO4水溶液を混液として用いる]とからホーパイト硬化体を調製する工程下で、ZnO粉末/混液(容量比)、即ち、混液比を、例えば、0.5〜5.0の範囲で調整することにより、ホーパイトの結晶構造を随意に調節できる。
(3)カルシウム含有物質の性状:液状、ガス状、液体、気体(蒸気)等のカルシウム含有物質を用いることができる。尚、転換条件の定常化を図るには、例えば、水溶液及び蒸気の使用が望ましい。
(4)前述にて例示した種々のカルシウム含有物質の用法とその濃度:これ等の物質のうち、1種を単独で使用、又2種以上の組合せ使用が可能であり、例えば、水溶液による使用のモル濃度は、0.05M(mol/l)〜1.5M(mol/l)が好ましい。
(5)ホーパイトとカルシウム含有物質との接触操作:浸漬、蒸気通、噴霧、燻蒸等のうち、単独で、あるいはこれ等の2つ以上の操作を組合せて用いることができる。尚、転換条件の定常化を図るには、カルシウム含有物質の水溶液中への浸漬、あるいはカルシウム含有物質の蒸気通が望ましい。ところで、接触させる温度に関し、例えば、浸漬の場合、室温あるいは20℃〜90℃であるが、製造コストと製造上での安全性を考慮すると、40℃〜70℃が望ましい。また、浸漬時間は、ホーパイトの形状とサイズ、カルシウム含有物質の濃度および浸漬温度に依存し、例えば、ホーパイト粉末の場合には、60℃にて0.5M硝酸カルシウム溶液中で浸漬処理すると、4〜10時間の浸漬より、ホーパイト中の亜鉛Zn原子がほぼCaに置換されたtHAPが生成される。
(6)亜鉛徐放性tHAP生成条件:亜鉛徐放性tHAPは、ホーパイト中にZnが残存するよう、ホーパイトからHAPへの転換条件を調節することにより生成できる。調節可能な転換条件としては、ホーパイト硬化体調製時の混液比(ホーパイト結晶構造の調節)、ホーパイトの形状とサイズ、カルシウム含有物質のモル濃度、接触処理の温度と時間等を上げることができる。
(7)tHAPのコーティング:本発明に係るtHAPは、生体埋入材としての組織親和性を高め、また、亜鉛徐放性を持続させるため、コーティングすることができる。コーティング材料には、公知のもの、例えば、合成ゼラチン、ポリグリコール酸、アルギン酸ナトリウム、ポリL−乳酸等々を用いることができる。
(1)カルシウム含有物質に接触させるホーパイトの形状とサイズ:カルシウム含有物質との接触効率あるいは接触表面積を高めるため、粉砕された粉末状ホーパイトの使用が望ましい。
(2)ホーパイトの結晶構造:例えば、酸化亜鉛ZnOの仮焼粉末と正リン酸H3PO4水溶液[例えば、50%(重量)H3PO4水溶液を混液として用いる]とからホーパイト硬化体を調製する工程下で、ZnO粉末/混液(容量比)、即ち、混液比を、例えば、0.5〜5.0の範囲で調整することにより、ホーパイトの結晶構造を随意に調節できる。
(3)カルシウム含有物質の性状:液状、ガス状、液体、気体(蒸気)等のカルシウム含有物質を用いることができる。尚、転換条件の定常化を図るには、例えば、水溶液及び蒸気の使用が望ましい。
(4)前述にて例示した種々のカルシウム含有物質の用法とその濃度:これ等の物質のうち、1種を単独で使用、又2種以上の組合せ使用が可能であり、例えば、水溶液による使用のモル濃度は、0.05M(mol/l)〜1.5M(mol/l)が好ましい。
(5)ホーパイトとカルシウム含有物質との接触操作:浸漬、蒸気通、噴霧、燻蒸等のうち、単独で、あるいはこれ等の2つ以上の操作を組合せて用いることができる。尚、転換条件の定常化を図るには、カルシウム含有物質の水溶液中への浸漬、あるいはカルシウム含有物質の蒸気通が望ましい。ところで、接触させる温度に関し、例えば、浸漬の場合、室温あるいは20℃〜90℃であるが、製造コストと製造上での安全性を考慮すると、40℃〜70℃が望ましい。また、浸漬時間は、ホーパイトの形状とサイズ、カルシウム含有物質の濃度および浸漬温度に依存し、例えば、ホーパイト粉末の場合には、60℃にて0.5M硝酸カルシウム溶液中で浸漬処理すると、4〜10時間の浸漬より、ホーパイト中の亜鉛Zn原子がほぼCaに置換されたtHAPが生成される。
(6)亜鉛徐放性tHAP生成条件:亜鉛徐放性tHAPは、ホーパイト中にZnが残存するよう、ホーパイトからHAPへの転換条件を調節することにより生成できる。調節可能な転換条件としては、ホーパイト硬化体調製時の混液比(ホーパイト結晶構造の調節)、ホーパイトの形状とサイズ、カルシウム含有物質のモル濃度、接触処理の温度と時間等を上げることができる。
(7)tHAPのコーティング:本発明に係るtHAPは、生体埋入材としての組織親和性を高め、また、亜鉛徐放性を持続させるため、コーティングすることができる。コーティング材料には、公知のもの、例えば、合成ゼラチン、ポリグリコール酸、アルギン酸ナトリウム、ポリL−乳酸等々を用いることができる。
以下、参考例、実験例及び実施例を上げ、本発明の構成と効果を具体的に説明する。但し、この発明は、これ等の参考例、実験例及び実施例だけに限定されるわけではない。
(参考例1)
(参考例1)
リン酸亜鉛(ホーパイト)からアパタイトへの転換に用いられた基本操作:リン酸亜鉛セメント硬化体において生成されるホーパイトからアパタイトへの転換の条件を、先ず市販のリン酸亜鉛試薬(ホーパイト結晶粉末)を用いて予備実験を行い検討した。かかるアパタイトへの転換は、ホーパイトをカルシウム含有溶液に浸漬することにより行われた。カルシウム含有溶液の代表例として、硝酸カルシウム[Ca(NO3)2]水溶液を採用した。上記の転換に及ぼす主な浸漬条件として、カルシウム濃度、温度、及び時間をそれぞれ決定した。
次いで、その結果に基づき、リン酸亜鉛セメント硬化体のアパタイトへの転換を実施した。セメント材料としては、(a)市販の歯科用リン酸亜鉛セメント(エリートセメント100;混液50%(重量)正リン酸水溶液付きキット;GC社[日本]製)、及び(b)酸化亜鉛を1,300℃で3時間仮焼した粉末と混液50%(重量)正リン酸水溶液からなる自家製セメント材料の合計2種を使用した。比較対照として市販のハイドロキシアパタイト粉末を用いた。上記(a)と(b)の各セメント材料の用法に関し、通法に従ってセメントと混液とを練和し調製されたペーストを金属型(幅x厚さx長さ:6x3x20mm3)に移注の後、室温で静置して硬化成形し、試験片を作製した。なお、ホーパイトからアパタイトへの転換体の結晶相は、X線回折装置により解析した。更に、その微細構造組織は走査型電顕により観察し、物理的かつ機械的性質は3点曲げ試験(支点間距離は15mm)により評価した。
尚、前記のセメント材料(a)と(b)につき、かかる解析・観察・試験を行った結果、実施例1、2及び3に記載の(a)市販の歯科用リン酸亜鉛セメントの結果と全く同様の結果が、(b)自家製セメント材料においても得られた。
(実験例1)
次いで、その結果に基づき、リン酸亜鉛セメント硬化体のアパタイトへの転換を実施した。セメント材料としては、(a)市販の歯科用リン酸亜鉛セメント(エリートセメント100;混液50%(重量)正リン酸水溶液付きキット;GC社[日本]製)、及び(b)酸化亜鉛を1,300℃で3時間仮焼した粉末と混液50%(重量)正リン酸水溶液からなる自家製セメント材料の合計2種を使用した。比較対照として市販のハイドロキシアパタイト粉末を用いた。上記(a)と(b)の各セメント材料の用法に関し、通法に従ってセメントと混液とを練和し調製されたペーストを金属型(幅x厚さx長さ:6x3x20mm3)に移注の後、室温で静置して硬化成形し、試験片を作製した。なお、ホーパイトからアパタイトへの転換体の結晶相は、X線回折装置により解析した。更に、その微細構造組織は走査型電顕により観察し、物理的かつ機械的性質は3点曲げ試験(支点間距離は15mm)により評価した。
尚、前記のセメント材料(a)と(b)につき、かかる解析・観察・試験を行った結果、実施例1、2及び3に記載の(a)市販の歯科用リン酸亜鉛セメントの結果と全く同様の結果が、(b)自家製セメント材料においても得られた。
(実験例1)
リン酸亜鉛試薬(ホーパイト結晶粉末)のアパタイトへの転換:リン酸亜鉛試薬を硝酸カルシウム溶液に浸漬することにより、ホーパイトからアパタイトへの転換を観察した。硝酸カルシウムの濃度として、0.01M、0.03M、0.1M、及び0.5Mの各硝酸カルシウム水溶液を採用した。浸漬温度は、室温、60℃、及び90℃とした。浸漬終了後、X線回折により、アパタイトへの転換(結晶相)を解析した。尚、比較対照として、未処理(浸漬なし)のリン酸亜鉛試薬、及びハイドロキシアパタイト(HAP)結晶粉末をそれぞれ用いた。併せて、上記の各温度における浸漬中のpH変動を測定した。その結果を、図1(室温浸漬)、図2(60℃浸漬)、図3(90℃浸漬)、及び図4(pH変動)にそれぞれ示す。
上記の結果から、0.1M硝酸カルシウム水溶液中にて、60℃、3時間の浸漬処理により、ホーパイトは、ほとんどHAPへ置換することが判明した。また、処理溶液の濃度(硝酸カルシウム濃度)、及び浸漬温度により、ホーパイトからHAPへの転換率の異なることが確認された。
上記の結果から、0.1M硝酸カルシウム水溶液中にて、60℃、3時間の浸漬処理により、ホーパイトは、ほとんどHAPへ置換することが判明した。また、処理溶液の濃度(硝酸カルシウム濃度)、及び浸漬温度により、ホーパイトからHAPへの転換率の異なることが確認された。
市販のリン酸亜鉛セメント硬化体のアパタイトへの転換:市販の歯科用リン酸亜鉛セメント粉末(エリートセメント100;GC社[日本]製)を、仕様書の指示に基づき、該セメント製剤に添付の混液を用いて練和し、得られたペースト状のリン酸亜鉛セメントを室温に静置してリン酸亜鉛セメントを硬化させ、該セメント硬化体を作製した。その際、リン酸亜鉛セメント粉末/練和用液(容量比)、即ち、混液比を、1.0、1.5、及び3.0(仕様書に記載の標準混液比)に変化させた。リン酸亜鉛セメント硬化体は、粉砕の後、該混液比が1.0のリン酸亜鉛セメント硬化体粉末については、0.5M硝酸カルシウム溶液中で、60℃、6時間、浸漬処理した。浸漬終了後、X線回折により、アパタイトへの置換(結晶相)を解析した。尚、比較対照として、未処理(浸漬なし)のリン酸亜鉛試薬、ハイドロキシアパタイト(HAP)結晶粉末、未処理(浸漬なし)の上記の各混液比のリン酸亜鉛セメント硬化体粉末をそれぞれ用いた。その結果を図5に示す。
この結果から、リン酸亜鉛セメント硬化体中のアパタイトへの転換量あるいは亜鉛残存量は、上記の混液比に依存し、調整できることが判明した。換言すれば、混液比の調整により、種々の薬効作用を有する亜鉛の徐放効果を、ホーパイトからアパタイトへの転換体に付与することが可能である。
この結果から、リン酸亜鉛セメント硬化体中のアパタイトへの転換量あるいは亜鉛残存量は、上記の混液比に依存し、調整できることが判明した。換言すれば、混液比の調整により、種々の薬効作用を有する亜鉛の徐放効果を、ホーパイトからアパタイトへの転換体に付与することが可能である。
市販のリン酸亜鉛セメント硬化体とそのアパタイトへの転換体の曲げ強さ:リン酸亜鉛セメント粉末/練和用液(重量比)、即ち、混液比が3.0で調製した市販のリン酸亜鉛セメント硬化体の試験片を24時間、蒸留水に浸漬の後、更に、6日間、蒸留水に浸漬(a)、6日間、0.1M硝酸カルシウム溶液に浸漬(b)、及び6日間、蒸留水に浸漬の後、90℃にて2時間、0.1M硝酸カルシウムに浸漬(c)した。
また、混液比が1.0で調製した市販のリン酸亜鉛セメント硬化体の試験片を24時間、蒸留水に浸漬の後、更に、6日間、蒸留水に浸漬(d)、及び60℃にて6時間、0.1M硝酸カルシウムに浸漬(e)した。
これ等の浸漬処理済み各試験片につき、3点曲げ試験を行った。その結果を図6(a)と(b)にそれぞれ示す。尚、図中の横軸に記載の(a)〜(e)、上記の浸漬条件(a)〜(e)にそれぞれ対応する。
この結果に基づき、浸漬処理(アパタイトへの転換)後のセメント試験片の曲げ強さは、未処理(アパタイトへの転換なし)のそれに比べ、わずかに低下した。しかし、この程度の低下は転換体アパタイトの品質と性能に影響せず、許容範囲にあると判断された。
また、混液比が1.0で調製した市販のリン酸亜鉛セメント硬化体の試験片を24時間、蒸留水に浸漬の後、更に、6日間、蒸留水に浸漬(d)、及び60℃にて6時間、0.1M硝酸カルシウムに浸漬(e)した。
これ等の浸漬処理済み各試験片につき、3点曲げ試験を行った。その結果を図6(a)と(b)にそれぞれ示す。尚、図中の横軸に記載の(a)〜(e)、上記の浸漬条件(a)〜(e)にそれぞれ対応する。
この結果に基づき、浸漬処理(アパタイトへの転換)後のセメント試験片の曲げ強さは、未処理(アパタイトへの転換なし)のそれに比べ、わずかに低下した。しかし、この程度の低下は転換体アパタイトの品質と性能に影響せず、許容範囲にあると判断された。
市販のリン酸亜鉛セメント硬化体のアパタイトへの転換体の結晶相:混液比が1.0の市販リン酸亜鉛セメント硬化体を実施例1と同様にして調製の後、その硬化体を粉砕することにより、市販リン酸亜鉛セメント硬化体粉末を得た。該セメント硬化体粉末は、60℃にて6時間、0.5M硝酸カルシウム溶液中で浸漬した。次いで、得られたアパタイトへの転換体の結晶相の表層と内部につきX線回折により解析した。その結果を図7に示す。尚、比較対照として、未処理(浸漬なし)のリン酸亜鉛試薬、ハイドロキシアパタイト(HAP)結晶粉末、未処理(浸漬なし)の上記セメント硬化体粉末及び市販リン酸亜鉛セメント粉末をそれぞれ用いた。
この結果に基づき、上記の条件下では、転換体の表層も内部も同様に、ほぼHAPに転換していると判断された。
この結果に基づき、上記の条件下では、転換体の表層も内部も同様に、ほぼHAPに転換していると判断された。
この発明に係る、歯科用リン酸亜鉛セメント、ホーパイトからアパタイトへの転換方法は再生医療や歯科用材料の製造分野で有用である。また、これより得られる転換体HAP(tHAP)は、生体インプラント材料、医療用セラミックス、ファインセラミックス、生体埋入材料、人工骨材、骨補填材、骨組織再生促進材等に利用できる。
Claims (6)
- ホーパイトをカルシウム含有物質に接触させることを特徴とするホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
- カルシウム含有物質が、液状又はガス状である請求項1に記載のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
- カルシウム含有物質が硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び塩化カルシウムからなるカルシウム化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物の水溶液である請求項1又は2に記載のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
- ホーパイトへのカルシウム含有物質の接触が浸漬及び/又は蒸気通である請求項1、2又は3に記載のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法。
- 請求項1、2、3又は4に記載のホーパイトからハイドロキシアパタイトへの転換方法により得られる転換体ハイドロキシアパタイト。
- 亜鉛徐放性である請求項5に記載の転換体ハイドロキシアパタイト。
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