JP2006114677A - ロッド型固体レーザ装置 - Google Patents

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周一 藤川
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Abstract

【課題】 一定の励起パワーのもとでロッド型固体レーザ媒質の熱レンズ強度を低減することにより、単一のロッド型固体レーザ媒質より抽出することのできる最大レーザ出力を増加せしめ、優れたビーム品質のもとで高いレーザ出力を低コストで得ることができるロッド型固体レーザ装置を得る。
【解決手段】 複数方向より発せられる励起光の光軸が、前記ロッド型固体レーザ媒質の光軸に対し一定距離オフセットし、前記固体レーザロッドの光軸と直角に交わる平面上で前記固体レーザロッドの光軸を中心軸として等角度間隔となるように前記励起光源を配置し、励起光照射方向数をn、前記ロッド型固体レーザ媒質の半径をr、励起光波長に対する前記ロッド型固体レーザ媒質の吸収係数をa、励起光光軸のオフセット量をΔとした場合、
(Δ/r)/{n・exp(−a・r)} > 0.2
を満たすよう励起部を構成する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、ロッド型の固体レーザ媒質を光励起しレーザ光を発生させるロッド型固体レーザ装置に関する。
ロッド型固体レーザ媒質に励起光を照射すると、媒質断面内において励起密度に比例した発熱を生じる。通常、ロッド型固体レーザ媒質はロッド側面を冷却するため、ロッド断面内において中央部で温度が高く周縁部において温度が低い凸型の温度分布が形成される。固体レーザ媒質の屈折率は概ね温度に比例する。従って励起されたロッド型固体レーザ媒質はレンズと同様な光学作用を呈するようになる。発熱にともなうレンズ効果であるため、この現象は熱レンズと呼ばれている。
従来のロッド型固体レーザ装置においては、固体レーザ媒質断面内において、中央部の励起密度が最大となる凸型の励起密度分布、もしくは固体レーザ媒質断面全体にわたり略平坦な励起密度分布を形成していた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特開2001−244526号公報(第0066段落、第12図) 特開平10−275952号公報(第0038段落、第0039段落、第7図)
固体レーザ媒質断面全体にわたり均一な励起密度分布を形成した場合、固体レーザ媒質断面内の温度分布は放物面形状となるため、固体レーザ媒質断面内の位置に依らず熱レンズの焦点距離は一定となる。一方、固体レーザ媒質断面内において凸型の励起密度分布を形成した場合、ロッド断面内の温度勾配は更に急峻になり、熱レンズの焦点距離は局所的に変化するとともに、均一な励起密度分布を形成した場合に比べ、熱レンズの焦点距離は短くなる。
ところで、ロッド型固体レーザ媒質の断面全体にわたり均一な励起密度分布を仮定すると、熱レンズの焦点距離fは、ロッド型固体レーザ媒質内部での総発熱量Qに反比例し、ロッド型固体レーザ媒質の熱伝導率K、ロッド型固体レーザ媒質の半径rの二乗に比例する。即ち、以下の式が成り立つ。

f ∝ K・r/Q (1)

また単一のロッド型固体レーザ媒質内の総発熱量Qは励起光総吸収量に比例し、単一のロッド型固体レーザ媒質から抽出されるレーザ出力Pは発振しきい値分を無視すれば励起光総吸収量に比例するため、(1)式は(2)式に書き直すことができる。

f ∝ K・r/P (2)

単一のロッド型固体レーザ媒質に最も汎用的な平面ミラーを用いた対称安定型共振器を適用した場合、共振器の安定動作範囲の上限は、ロッド固体レーザ媒質の熱レンズによって制限される。即ち、(3)式に示すように共振器長をLとすれば、ロッド型固体レーザ媒質の熱レンズの焦点距離fが共振器長Lの4分の1にまで減少した際に所謂共振条件に到達し、熱レンズ焦点距離が共振器長の4分の1以下となった場合、早速安定なレーザ発振を維持することは困難になる。

f = L/4 (3)

一方、レーザ光の集光性がロッド型固体レーザ媒質自体の開口により規定される場合、理論限界の集光ビーム径を1とした場合の相対集光ビーム径を表すビーム品質指標M値は、ロッド半径rの二乗に比例し共振器長Lに反比例する。即ち、以下の式が成り立つ。

∝ r/L (4)

(3)、(4)式を(2)式へ代入することにより、一定の共振器構成のもとで単一の固体レーザ媒質より抽出することができる最大レーザ出力Pmax、換言すると熱レンズの焦点距離fが共振器長の4分の1になる際のレーザ出力は、ビーム品質指標M値に比例することが分る。

Pmax ∝ M (5)

また(5)式は、ビーム品質指標M値が一定であれば、単一の固体レーザ媒質より抽出することができる最大レーザ出力Pmaxは、ロッド型固体レーザ媒質の半径rに依らず一定であることを示している。
よって、上記安定型共振器理論から明らかなように、一定のビーム品質のもとで単一のロッド型レーザ媒質から抽出可能な最大レーザ出力を増加させるためには、一定の励起パワーのもとで熱レンズの焦点距離を長くする、換言すれば如何に熱レンズ強度を弱くするかがポイントとなる。
従って、従来のロッド型固体レーザ装置のように熱レンズの焦点距離が短くなる場合においては、一定のビーム品質のもとで、単一のロッド型固体レーザ媒質から抽出することができるレーザ出力には上限があり、一定のビーム品質を維持しながら、ロッド型固体レーザの高出力化を図るためには、複数のロッド型固体レーザ媒質を光軸に沿って直列に配置し、光学的に連結しなければならず装置が大型化するという問題点があった。
また複数のロッド型固体レーザ媒質を直列に配設する構成においては、ロッド型固体レーザ媒質毎に励起光源を備えた励起モジュール、所謂キャビティを設けるとともに、各キャビティ間を精度よく配置する必要が生じるため、ロッド型固体レーザ装置を構成する部品点数が増加し、製造コストが高騰するとともに、組立、調整に要するコストも増加するという問題点があった。
また複数のロッド型固体レーザ媒質を直列に配設する構成においては、固体レーザ媒質毎の熱レンズ強度のばらつきがある場合、レーザ発振の安定性がより低下するという問題点があった。
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、一定の励起パワーのもとで熱レンズ強度を低減することにより、単一のロッド型固体レーザ媒質より抽出することのできる最大レーザ出力を増加せしめ、優れたビーム品質のもとで高いレーザ出力を低コストで得ることができるロッド型固体レーザ装置を提供することを目的としている。
この発明に係るロッド型固体レーザ装置においては、光軸に沿って直列に配設された単一もしくは複数のロッド型固体レーザ媒質、ロッド型固体レーザ媒質を光励起する励起光源を備え、該ロッド型固体レーザ媒質断面内において、中央部の励起密度が周縁部の励起密度より低い凹型の励起密度分布を形成するものである。
この発明は以上説明したように、該ロッド型固体レーザ媒質断面内において、中央部の励起密度が周縁部の励起密度より低い凹型の励起密度分布を形成したので、ロッド型固体レーザ媒質の熱レンズ強度を軽減し、一定のビーム品質のもとで、単一のロッド型固体レーザ媒質より抽出することができる最大レーザ出力を増加させることができる効果がある。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1におけるロッド型固体レーザ装置の励起部の、レーザ光軸に垂直な平面における断面を示す模式図である。図1において、1はロッド型固体レーザ媒質、101はロッド型固体レーザ媒質1の光軸、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2hはロッド型固体レーザ媒質1の側方8方向に配設された励起光源である半導体レーザ、201a、201b、201c、201d、201e、201f、201g、201hは半導体レーザ2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2hのそれぞれ光軸を示す一点鎖線である。各半導体レーザ2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2hは、各光軸201a、201b、201c、201d、201e、201f、201g、201hが、ロッド型固体レーザ媒質1の光軸101に対し距離Δだけオフセットし、図1の紙面上にてロッド型固体レーザ媒質1の光軸101を中心軸として等角度間隔となるように配置されている。なお本実施の形態においては、ロッド型固体レーザ媒質1に、直径8mmの活性媒質としてNd(ネオジウム)がドープされたYAG(イットリウムアルミニウムガーネット)結晶を使用しており、オフセット量Δを2.5mmに設定している。
図2は図1に示す本実施の形態の励起構成におけるロッド型固体レーザ媒質1断面内の励起密度分布を示す計算値である。図2に示すように本実施の形態の励起構成においては、ロッド型固体レーザ媒質1の断面周縁部に比べ断面中央部の励起密度が低くなる凹型の励起密度分布を形成している。なお固体レーザ媒質内の発熱量は励起密度に比例するため、図2に示す励起密度分布は発熱分布に等しいと考えて差し支えない。固体レーザ媒質内の温度分布は、固体レーザ媒質側方より直接水冷等により略均一に冷却を行う場合、発熱分布と固体レーザ媒質の物性値である熱伝導率、固体レーザ媒質と冷却媒体間の熱伝達率によって一義的に定まる。
図3は、横軸にロッド型固体レーザ媒質断面中における媒質中心からの半径方向距離を取り、凹型、均一、凸型の励起密度分布にそれぞれ対応し形成される固体レーザ媒質内の半径方向に対する温度勾配の2階微係数をプロットしたグラフである。図3中、21は凹型の励起密度分布を形成する本実施の形態における温度勾配の2階微係数、22は均一な励起分布形成する従来のロッド型固体レーザ装置における温度勾配の2階微係数、23は凸型の励起分布形成する従来のロッド型固体レーザ装置における温度勾配の2階微係数を示している。凹型、均一、凸型の励起密度分布それぞれ対応する温度勾配の2階微係数21、22、23は、何れも同一の励起パワー(励起光吸収量)を仮定した計算値であり、均一励起時に得られる温度勾配の2階微係数を1とした相対値で示している。
固体レーザ媒質の屈折率は温度に略比例する。このため温度勾配の2階微係数は屈折率の2階微係数に相当し、局所的な熱レンズの焦点距離の逆数、即ち屈折力(ジオプティカルパワー)に比例する。従って温度勾配の2階微係数の値が小さくなるほど熱レンズの焦点距離は長くなる。図2において、均一励起を想定した温度分布は放物面型となるため、半径方向の位置に依らず温度勾配の2階微係数22の値は一定となる。また凸型の励起密度分布を形成した場合には、温度勾配の2階微係数23は均一励起を仮定した値22より大きく、固体レーザ媒質の中心に近づくほど増加する傾向を示している。即ち、一定の励起パワーのもとで、凸型の励起分布を形成した場合、均一励起時に比べ熱レンズの焦点距離は短くなる。一方、本実施の形態に示すように、凹型の励起密度分布を形成すれば、均一な励起密度分布22、凸型の励起密度分布23を形成した場合に比べ、温度勾配の2階微係数21を低減することができるので、一定の励起パワーのもとで熱レンズの焦点距離を長くすることができる。
図4は、平面ミラーを用いた対称安定型共振器を想定しビーム品質指標M値に対し、単一のロッド型固体レーザ媒質より抽出することのできる最大レーザ出力をプロットしたグラフである。図4中、31は本実施の形態に示すロッド型固体レーザを使用し実験的に得られた最大レーザ出力を示しており、共振器長Lを変化させることによりM値を増減させている。32は均一励起を仮定し理論計算により求めた最大レーザ出力の計算値である。例えば、コア径600ミクロンの光ファイバにてビーム伝送を行う場合の標準的なビーム品質であるM値=70の場合で比較すると、本実施の形態である凹型の励起密度分布を形成した場合には、最大1350Wのレーザ出力が抽出できたのに対し、均一励起を仮定した従来のロッド型固体レーザ装置では、最大レーザ出力は約1000Wに留まっている。本実施の形態に示すように、ロッド型固体レーザ媒質の断面内において凹型の励起密度分布を形成すれば、従来のロッド型固体レーザ装置と比較し、一定の励起パワーにおいて熱レンズの焦点距離を長くすることが可能になるので、共振器の安定限界である熱レンズの焦点距離が共振器長の4分の1に至る際の励起パワーを、効果的に増加せしめ、従来のロッド型固体レーザ装置と比較し、大幅な高出力化を図ることが可能になる。
次にロッド型固体レーザ媒質の断面内において、凹型の励起密度分布を形成するための具体的な設計手法について述べる。発明者らは、固体レーザ媒質の励起光波長に対する吸収係数、ロッド型固体レーザ媒質の寸法、励起光源の配置等に基づき光線追跡をベースとした確率的手法により、固体レーザ媒質内部の励起密度分布を理論的に計算する手法を開発した。また本手法を用いた理論検討および実験的見地から、(6)式に示す無次元パラメータSの値が0.2以上であれば、ロッド型固体レーザ媒質の半径、励起光波長に対する吸収係数に依らず、固体レーザ媒質断面内において周縁部よりも中央部の励起密度が低い、凹型の励起密度分布が得られることを見出した。

S = (Δ/r)/{n・exp(−a・r)} (6)

但し、Δはロッド型固体レーザ媒質の光軸に対する励起光の光軸のオフセット量、rはロッド型固体レーザ媒質の半径、nはロッド型固体レーザ媒質に対する励起光の照射方向数、aは励起光波長に対するロッド型固体レーザ媒質の吸収係数である。なお図1に示す本実施の形態における無次元パラメータSの値は、励起光の光軸のオフセット量が2.5mm、ロッド半径が4mm、励起光の照射方向数が8、励起光波長に対する吸収係数が0.25/mmであるので0.21となる。
図5は無次元パラメータSに対する励起密度分布の計算結果を示している。S値の増加とともに励起密度分布の固体レーザ媒質中央部への集中が緩和され、S=0.189にて概ね均一な励起密度分布となり、S=0.252時の励起密度分布は、中央部の励起密度が周縁部より低い凹型の励起密度分布を呈している。
本実施の形態に示すロッド型固体レーザ装置のように、固体レーザ媒質断面内において中央部の励起密度が周縁部よりも低い凹型の励起密度分布を形成すれば、凸型もしくは平坦な励起密度分布を有する従来のロッド型固体レーザ装置に比べ、同一の励起パワー(励起光吸収量)における固体レーザ媒質の屈折力(焦点距離の逆数)を低減し、共振器の安定限界における励起パワーを増することが可能になるので、一定のビーム品質を維持しながら、単一のロッド型固体レーザ媒質から抽出可能なレーザ出力を効果的に増加さることができる。
また本実施の形態に示すように、ロッド型固体レーザ媒質側方に複数の励起光源である半導体レーザを等角度間隔で配置し、固体レーザ媒質の光励起を行うロッド型固体レーザ装置においては、(6)式に示す無次元パラメータSの値が、0.2以上となるようロッド型固体レーザ媒質の光軸に対する励起光光軸のオフセット量、ロッド型固体レーザ媒質の半径、ロッド型固体レーザ媒質に対する励起光の照射方向数、励起光波長に対するロッド型固体レーザ媒質の吸収係数等設定すれば、ロッド型固体レーザ媒質断面内において中央部の励起密度が周縁部よりも低い凹型の励起密度分布を得ることができる。なお励起光波長に対する吸収係数は、固体レーザ媒質中の活性媒質の濃度、励起光波長自体の選定により調整することができる。
またロッド型固体レーザ媒質の熱レンズ強度は、無次元パラメータSの値が大きくなるほど軽減されるため、所望する熱レンズ強度に応じて、ロッド型固体レーザ媒質の光軸に対する励起光光軸のオフセット量、ロッド型固体レーザ媒質の半径、ロッド型固体レーザ媒質に対する励起光の照射方向数、励起光波長に対するロッド型固体レーザ媒質の吸収係数等設定すればよい。
なお上記実施の形態1においては、半導体レーザを出射する励起光を直接ロッド型固体レーザ媒質側方より照射する構成を示したが、ロッド型固体レーザ媒質の形態はこれに限るものではなく、例えばマイクロレンズ等を用いて励起光を平行化してもよいし、導波板により励起光を伝送する構成に対しても適用することができる。またロッド型固体レーザ媒質の周囲に、金属反射面や誘電体、拡散反射体等で構成する集光器を配設すれば、励起光を固体レーザ媒質近傍に閉じ込め、効率よく固体レーザ媒質を励起することが可能になる。
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2によるロッド型固体レーザ装置を示す構成図である。図5中、図1と同一符号は同一部分もしくは相当部分を示している。図中、10a、10bは、ロッド型固体レーザ媒質1a、1bおよび励起光源である半導体レーザ2a、2bを主要構成要素とし2台直列に配設されたキャビティ、3は平面ミラーからなる全反射鏡、4は同じく平面ミラーからなる部分反射鏡で、全反射鏡3ならびに部分反射鏡4は光共振器を構成している。全反射鏡3および部分反射鏡4から構成される光共振器によって励起されたロッド型固体レーザ媒質から誘導放出を介しレーザ光5が取り出される。光共振器を出射したレーザ光5は、伝送レンズ6により発散角が補正され、一定値以下のビーム径を維持しながら結合レンズ7へ入射する。結合レンズ7によりレーザ光5は集光され、ステップインデックス型の光ファイバ8へ導光される。
本実施の形態にて使用している2台のキャビティ10a、10bは、図1において示した前記実施の形態1と同一の励起構成を有している。また全反射鏡3と第1のロッド型固体レーザ媒質1a間の距離、および部分反射鏡4と第2のロッド型固体レーザ媒質1b間の距離を等距離Lに設定するとともに、第1のロッド型固体レーザ媒質1aと第2のロッド型固体レーザ媒質1b間の距離を2Lに設定している。本方式はカスケード連結や周期連結と呼ばれる平面ミラーを用いた対称安定型共振器を連結する一般的な構成であり、単一固体レーザ媒質から取り出すビーム品質を一定に保ちながら、複数の固体レーザ媒質を光学的に連結し高出力化を図ることができる。
また本実施の形態においては、コア径600ミクロンの光ファイバ8を使用しており、光共振器を出射するレーザ光5のビーム品質指標M値は70となるよう、ロッド型固体レーザ媒質1a、1bと光共振器を構成する全反射鏡3、部分反射鏡4間の距離Lを設定している。図4に示すように、本構成においては単一のロッド型レーザ媒質より最大1350Wのレーザ出力を抽出することが可能である。従って、2本のロッド型固体レーザ媒質1a、1b間の連結効率が100%であれば、最大2700Wのレーザ光を発生することができる。但し、2本のロッド型固体レーザ媒質1a、1b間の光軸ずれ、熱レンズ焦点距離のばらつき、機械精度等に起因する出力低下を考慮し、定格出力は2500Wに設定している。
図4に示すように、従来のロッド型固体レーザ装置においては、固体レーザ媒質断面内において、凸型もしくは平坦な励起密度分布を形成していたため、本実施の形態に比べ同一の励起パワー(励起光吸収量)における熱レンズの焦点距離が短く、ビーム品質指標M値を70に設定した場合、単一のロッド型レーザ媒質から抽出することができるレーザ出力は最大1000W付近に留まっていた。このため2500Wのレーザ出力をコア径600ミクロンの光ファイバにてビーム伝送する固体レーザ装置を構成するためには、最低3本のロッド型固体レーザ媒質、即ちキャビティを使用する必要が生じていた。
本実施の形態に示すように、ロッド型固体レーザ媒質1a、1bの断面内において凹型の励起密度分布を形成するキャビティ10a、10bを使用しロッド型固体レーザ装置を構成すれば、ロッド型固体レーザ媒質の熱レンズ強度を効果的に低減し、単一のロッド型固体レーザ媒質から抽出することができる最大レーザ出力を増加させることが可能になるため、従来のロッド型固体レーザ装置に比べ、所望するレーザ出力に対し少数のキャビティにて装置を構成し、ロッド型固体レーザ装置の大幅な小型化を図ることができる。
また本実施の形態によれば、少ないキャビティの数で所望するレーザ出力を得ることが可能になるので、ロッド型固体レーザ装置を構成する部品点数とともに組立工数の削減も可能となり、安価なコストで優れた性能を備えたロッド型固体レーザ装置を製造することができる。更にキャビティ数の削減により、キャビティ間の光軸調整、共振器ミラーのアライメント等発振器調整に要する工数も大幅に低減することが可能となり、生産性に加え保守性に関しても格段に向上させることができる。
また本実施の形態によれば、直列に連結するキャビティの数を削減することが可能になるので、キャビティ毎の熱レンズ強度のばらつきによって生じるレーザ発振の不安定性を抑制するとともに、キャビティ間で発生するレーザ光の損失を低減し、高い連結効率のもとで安定かつ容易に高出力のレーザ光を発生させることができる。
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3によるロッド型固体レーザ装置の励起部構成を示す模式図である。図7中、図1と同一符号は同一部分もしくは相当部分を示している。本実施の形態においては、前記実施の形態とは異なり5方向に等角度間隔で配置された励起光源である半導体レーザ2a、2b、2c、2d、2eの光軸201a、201b、201c、201d、201eと、ロッド型固体レーザ媒質1の光軸101との間にオフセットは設けていない。
本実施の形態に示すように、ロッド型固体レーザ媒質の側方に複数の励起光源を等角度間隔で配置し、各励起光源の光軸とロッド型固体レーザ媒質の光軸間にオフセットを設けない場合には、(7)式に示す無次元パラメータS’の値を1.5以下とするようロッド型固体レーザ媒質の半径r、ロッド型固体レーザ媒質に対する励起光の照射方向数n、励起光波長に対するロッド型固体レーザ媒質の吸収係数aを設定すれば、ロッド型固体レーザ媒質断面内において中央部の励起密度が周縁部よりも低い凹型の励起密度分布が形成できることを理論計算および実験により確認している。

S’ = n・exp(−a・r) (7)
本実施の形態によれば、上記実施の形態1乃至実施の形態2と同様な効果が得られるばかりでなく、励起光光軸とロッド型固体レーザ媒質光軸との間にオフセットを設ける必要がないので、ロッド型固体レ−ザ装置の励起部構成が簡単になり、励起部の組立、調整を容易にし、更にロッド型固体レーザ装置の製造コストを低減することができる。
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4によるロッド型固体レーザ装置の励起部構成を示す模式図である。図8中、図1と同一符号は同一部分もしくは相当部分を示している。本実施の形態においては、ロッド型固体レーザ媒質1側方8方向より励起光を照射する構成を示しているが、励起光の光軸201a、201b、201c、201d、201e、201f、201g、201hは等角度間隔では配置されておらず、第1の励起光源である半導体レーザ2aと第2の励起光源である半導体レーザ2b、第3の励起光源である半導体レーザ2cと第4の励起光源である半導体レーザ2d、第5の励起光源である半導体レーザ2eと第6の励起光源である半導体レーザ2f、第7の励起光源である半導体レーザ2gと第8の励起光源である半導体レーザ2hがそれぞれ対をなしている。そして、励起光源対をなすそれぞれの励起光源の光軸が、ロッド型固体レーザ媒質1の光軸101を通過する直線に並行でかつ該直線を挟んで同一のオフセット量Δにて対称になるように、かつ各励起光源対は図8の紙面上にてロッド型固体レーザ媒質1の光軸101を中心軸として等角度間隔となるように配置されている。
本実施の形態においても、オフセット量Δを適切に設定することにより、ロッド型固体レーザ媒質断面内において、中央部の励起密度が周縁部よりも低い凹型の励起密度分布を得ることができる。このため前記実施の形態1乃至実施の形態2と同様な効果を得ることができる。なおオフセット量Δは、理論計算もしくは実験によって最適化できることは言うまでもない。
本実施の形態においては、2つの励起光源で励起光源対を構成し、各励起光源対の励起光光軸は励起光源対の数に応じて等角度間隔に設定しているので、上記実施の形態1で示した励起光源の数に応じて励起光の光軸方向を等角度配分する場合に比べ励起部を簡易に構成し、励起部の組立、調整を簡単にすることができる。
また本実施の形態においては、単一の励起光光軸方向に対し、同一のオフセット量Δにて2つの励起光源を対称に配置するため、ロッド型固体レーザ媒質断面内の周方向に対し発生する励起光光軸方向に依存する励起密度分布の不均一性を効果的に緩和し、更に安定したレーザ発振が可能になるとともに、励起密度分布の不均一性に起因する回折損失やモード不整合等を低減し、固体レーザ媒質より効率よくレーザ光を抽出することが可能になる。
ところで上記説明では、ロッド型固体レーザ媒質の励起光源に半導体レーザを使用する構成について示したが、励起光源の種類はこれに限るものではなく、例えば放電ランプを使用しても凹型の励起密度分布を形成すれば同様な効果を得ることができる。
また上記説明では、ロッド型固体レーザ媒質として、Nd(ネオジウム)がドープされたYAG(イットリウムアルミニウムガーネット)結晶を使用した構成について示したが、固体レーザ媒質の種類はこれに限るものではなく、例えばリン酸ガラスやバナデート結晶等を使用した場合であっても、同様な効果を得ることができる。
また上記説明では、ロッド型固体レーザ媒質の光軸に対し、規則的に励起光源を配置し、ロッド型固体レーザ媒質側方より励起光を照射する構成を示したが、励起光源の配置はこれに限るものではなく、要は与えられた制約条件もとで、励起光源配置や光軸方向、励起光源の数、ロッド型固体レーザ媒質の直径、励起光波長に対する固体レーザ媒質の吸収係数等を調整し、凹型の励起分布を形成してやればよい。
また上記説明では、ロッド型固体レーザ媒質に対し、側方より励起光を照射する構成のみ示したが、励起光の照射方法はこれに限るものではなく、例えばロッド型固体レーザ媒質の端面より励起光を入射させる構成としても、固体レーザ媒質断面内において、凹型の励起分布を形成すれば同様な効果が得られることは言うまでもない。
この発明の実施の形態1におけるロッド型固体レーザ装置の励起部構成を示す模式図である。 この発明の実施の形態1におけるロッド型固体レーザ媒質断面内の励起密度分布を示す計算値である。 横軸にロッド型固体レーザ媒質断面中における媒質中心からの半径方向距離を取り、凹型、均一、凸型の励起密度分布にそれぞれ対応し形成される固体レーザ媒質内の半径方向に対する温度勾配の2階微係数をプロットしたグラフである。 平面ミラーを用いた対称安定型共振器を想定しビーム品質指標M値に対し、単一のロッド型固体レーザ媒質より抽出することのできる最大レーザ出力をプロットしたグラフである。 無次元パラメータSに対する励起密度分布の計算結果である。 この発明の実施の形態2によるロッド型固体レーザ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態3によるロッド型固体レーザ装置の励起部構成を示す模式図である。 この発明の実施の形態4によるロッド型固体レーザ装置の励起部構成を示す模式図である。
符号の説明
1 ロッド型固体レーザ媒質
2 励起光源
101 ロッド型固体レーザ媒質の光軸
201 励起光源の光軸

Claims (5)

  1. 光軸に沿って配設されたロッド型固体レーザ媒質と、
    該ロッド型固体レーザ媒質を光励起する励起光源とを備え、
    該ロッド型固体レーザ媒質断面内において、中央部の励起密度が周縁部の励起密度より低い凹型の励起密度分布を形成することを特徴とするロッド型固体レーザ装置。
  2. ロッド型固体レーザ媒質の側方に配設された複数の励起光源により、複数方向より前記ロッド型固体レーザ媒質側面へ励起光を照射し、前記ロッド型固体レーザ媒質を励起するロッド型固体レーザ装置において、
    複数方向より発せられる励起光の光軸が、前記ロッド型固体レーザ媒質の光軸に対し一定距離オフセットし、前記固体レーザロッドの光軸と直角に交わる平面上で前記固体レーザロッドの光軸を中心軸として等角度間隔となるように前記励起光源を配置し、励起光照射方向数をn、前記ロッド型固体レーザ媒質の半径をr、励起光波長に対する前記ロッド型固体レーザ媒質の吸収係数をa、励起光光軸のオフセット量をΔとした場合、
    (Δ/r)/{n・exp(−a・r)} > 0.2
    を満たすよう励起部を構成し、前記ロッド型固体レーザ媒質断面内において、中央部の励起密度が周縁部の励起密度より低い凹型の励起密度分布を形成することを特徴とするロッド型固体レーザ装置。
  3. ロッド型固体レーザ媒質の側方に配設された複数の励起光源により、複数方向より前記ロッド型固体レーザ媒質側面へ励起光を照射し、前記ロッド型固体レーザ媒質を励起するロッド型固体レーザ装置において、
    複数方向より発せられる励起光の光軸が前記ロッド型固体レーザ媒質の光軸を通過するよう前記励起光源を配置し、励起光照射方向数をn、前記ロッド型固体レーザ媒質の半径をr、励起光波長に対する前記ロッド型固体レーザ媒質の吸収係数をaとした場合、
    n・exp(−a・r)} < 1.5
    を満たすよう励起部を構成し、前記ロッド型固体レーザ媒質断面内において、中央部の励起密度が周縁部の励起密度より低い凹型の励起密度分布を形成することを特徴とするロッド型固体レーザ装置。
  4. 前記励起光源が2つ1組で複数の励起光源対をなし、各励起光源対をなすそれぞれの励起光源の光軸が、ロッド型固体レーザ媒質の光軸を通過する直線に並行でかつ該直線を挟んで同一のオフセット量Δにて対称になるように配置され、各励起光源対は前記固体レーザロッドの光軸と直角に交わる平面上にて前記ロッド型固体レーザ媒質の光軸を中心軸として等角度間隔に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のロッド型固体レーザ装置。
  5. 前記ロッド型固体レーザ媒質を複数備え、部分反射鏡と該複数のロッド型固体レーザ媒質と全反射鏡を直列に配設し、該部分反射鏡と該部分反射鏡側のロッド型固体レーザ媒質の距離および該全反射鏡と該全反射鏡側のロッド型固体レーザ媒質の距離をLとし、該複数のロッド型固体レーザ媒質間の距離を2Lとしたことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のロッド型固体レーザ装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018056146A (ja) * 2015-02-06 2018-04-05 スペクトロニクス株式会社 レーザ光源装置及びレーザパルス光生成方法

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