(第1の実施形態)
まず、本発明を実現する上で本願発明者が考案した、フォトマスクによる解像度向上方法、具体的には、孤立スペースパターンの解像度を向上させるための「輪郭強調法」を用いたフォトマスクについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る輪郭強調法を用いたフォトマスク(以下、輪郭強調マスクと称する)、具体的には、孤立コンタクトパターンと対応する透光部が設けられた輪郭強調マスクの平面図である。
図1に示すように、輪郭強調マスク1は、露光光に対して透過性を有する透過性基板2と、透過性基板2の主面に形成され且つ露光光を部分的に透過させる透過率を持つ半遮光部3と、透過性基板2の主面に半遮光部3に囲まれるように形成され且つ孤立コンタクトパターンと対応する透光部(開口部)4と、透過性基板2の主面における半遮光部3と透光部4との間に透光部4を取り囲むように形成されたリング状の位相シフター5とを備えている。輪郭強調マスク1においては、透光部4を基準として露光光を同位相で透過させる半遮光部3と、透光部4を基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフター5とによって、遮光性を有するマスクパターンが構成されている。
尚、本明細書においては、(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差は同位相とみなし、(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差は反対位相とみなす。
また、露光光に対する半遮光部3の透過率は15%以下であり、好ましくは6%以上で且つ15%以下である。このような半遮光部3の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ta(タンタル)、Zr(ジルコニュウム)若しくはMo(モリブデン)等の金属又はこれらの金属の合金からなる薄膜(厚さ50nm以下)を用いることができる。前述の合金としては、具体的には、Ta−Cr合金、Zr−Si合金又はMo−Si合金等がある。さらに、半遮光部3の厚さを大きくしたい場合には、ZrSiO、Cr−Al−O、TaSiO又はMoSiO等の酸化物を含有する材料を用いてもよい。
また、露光光に対する位相シフター5の透過率は、半遮光部3の透過率よりも高く且つ透光部4の透過率と同等以下である。
〈輪郭強調法の原理〉
次に、本実施形態で用いた、孤立スペースパターンの解像度を向上させるための「輪郭強調法」について、ポジ型レジストプロセスによりコンタクトパターンを形成する場合を例として説明する。ここで、「輪郭強調法」は、ポジ型レジストプロセスにおける微小スペースパターンであれば、その形状に関わらず全く同様に成り立つ原理である。また、「輪郭強調法」は、ネガ型レジストプロセスを用いる場合も、ポジ型レジストプロセスにおける微小スペースパターン(レジスト除去パターン)を微小パターン(レジストパターン)と置き換えて考えれば全く同様に適用できる。
図2(a)〜(g)は、コンタクトパターン形成領域における光の転写像を強調するための原理を説明する図である。
図2(a)は、透過性基板表面に形成され且つ露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部に、コンタクトパターンと対応する開口部が設けられてなるフォトマスクの平面図である。また、図2(b)は、図2(a)に示すフォトマスクを透過して被露光材料上における線分AA’と対応する位置に転写される光の振幅強度を示している。
図2(c)は、透過性基板主面に形成された完全遮光部に、図2(a)に示す開口部の周辺領域と対応するようにリング状の位相シフターが設けられてなるフォトマスクの平面図である。また、図2(d)は、図2(c)に示すフォトマスクを透過して被露光材料上における線分AA’と対応する位置に転写される光の振幅強度を示している。ここで、図2(d)に示す光の振幅強度は、該光が位相シフターを透過したものであるため、図2(b)に示す光の振幅強度に対して反対位相の関係にある。
図2(e)は、本実施形態に係る輪郭強調マスクの一例であり、透過性基板主面に形成された半遮光部に、図2(a)に示すフォトマスクと同様のコンタクトパターンと対応する開口部が設けられ且つ図2(c)に示すフォトマスクと同様のリング状の位相シフターが開口部の周辺領域に設けられてなるフォトマスクの平面図である。また、図2(f)及び図2(g)は、図2(e)に示すフォトマスクを透過して被露光材料上における線分AA’と対応する位置に転写される光の振幅強度及び光強度(光の振幅強度の2乗)を示している。
以下、図2(e)に示す輪郭強調マスクを透過した光の転写像が強調される原理について説明する。図2(e)に示すフォトマスクの構造は、図2(a)の半遮光部と図2(c)の位相シフターとを透過性基板上で重ね合わせた構造になっている。また、図2(b)、図2(d)及び図2(f)に示すように、図2(e)に示すフォトマスクを透過した光の振幅強度は、図2(a)及び図2(c)のそれぞれに示すフォトマスクを透過した光の振幅強度を重ね合わせたような分布になっている。ここで、図2(f)から分かるように、図2(e)に示すフォトマスクにおいて、開口部の周辺に配置された位相シフターを透過した光は、開口部及び半遮光部を透過した光の一部を打ち消すことができる。従って、図2(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光の強度を、開口部を囲む輪郭部の光が打ち消されるように調整すれば、図2(g)に示すように、開口部周辺と対応する光強度がほぼ0に近い値まで減少した光強度分布の形成が可能となる。
また、図2(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光は、開口部周辺の光を強く打ち消す一方、開口部中央付近の光を弱く打ち消す。その結果、図2(g)に示すように、図2(e)に示すフォトマスクを透過した光における、開口部からその周辺部に向けて変化する光強度分布のプロファイルの傾きが増大するという効果も得られる。従って、図2(e)に示すフォトマスクを透過した光の強度分布は、シャープなプロファイルを有するようになるので、コントラストの高い光強度の像が形成される。
以上が本発明における光強度の像(イメージ)を強調する原理である。すなわち、露光光の一部を透過させる透過率を有する半遮光部を用いて形成されたマスクの開口部の輪郭部に沿って位相シフターを配置することにより、図2(a)に示すフォトマスクによって形成される光強度の像の中に、開口部の輪郭部と対応する非常に強い暗部を形成することが可能となる。これによって、開口部の光強度とその輪郭部の光強度との間でコントラストが強調された光強度分布を形成できる。本明細書においては、このような原理によってイメージ強調を行なう方法を「輪郭強調法」と称すると共に、この原理を実現するフォトマスクを「輪郭強調マスク」と称する。
ここで、本発明の基本原理となる輪郭強調法と、従来のハーフトーン位相シフトマスクによる原理との違いについて説明する。輪郭強調法の原理において最も重要なことは、半遮光部及び開口部を透過する光の一部が位相シフターを透過する光によって打ち消され、それによって光強度分布内に暗部を形成している点である。すなわち、位相シフターがあたかも不透明パターンのごとき振る舞いをするという点である。そのため、図2(f)に見られるように、輪郭強調マスクを透過した光の振幅強度においても、同じ位相側での強度変化によって暗部が形成されている。そして、この状態のときのみ斜入射露光によってコントラストを向上させることが可能になる。
一方、コンタクトパターンと対応する開口部を有する従来のハーフトーン位相シフトマスクを露光したときの光強度分布においても、図29(g)に示すように、開口部の周辺に強い暗部が形成される。しかし、従来のハーフトーン位相シフトマスクを露光したときの光の振幅強度を表す図29(f)と、輪郭強調マスクを露光したときの光の振幅強度を表す図2(f)とを比べると、次のような違いが明らかに存在する。すなわち、図29(f)に示すように、ハーフトーン位相シフトマスクを露光した場合の振幅強度分布においては位相境界が存在していると共に、図29(g)に示すように、該位相境界つまり位相端によって光強度分布の暗部が生じてイメージ強調が実現されている。但し、位相端による暗部が形成されてコントラストの強調効果を得るためには、フォトマスクに対して垂直に入射する光の成分が必要となる。言い換えると、斜入射露光によっては位相境界が発生しても位相端による暗部は形成されず、その結果、コントラスト強調効果は得られない。これが、ハーフトーン位相シフトマスクに対して斜入射露光を行なってもコントラスト強調効果が生じない理由である。従って、ハーフトーン位相シフトマスクに対しては、干渉度の低い小さな光源を用いて露光を行なわなければならない。それに対して、図2(f)に示すように、輪郭強調マスクを露光した場合の振幅強度分布においては位相境界が生じないため、斜入射露光の成分によっても微小な孤立スペースパターンの形成に必要な光の転写像を高いコントラストで形成できる。
〈輪郭強調マスクにおける位相シフター幅の最適化〉
次に、輪郭強調法において、斜入射露光成分によって高いコントラストが得られることを詳細に示す前に、図2(e)に示すような輪郭強調マスクの構造であっても、位相シフターの幅が過剰に大きくなると、輪郭強調法の効果が得られなくなることを説明しておく。
図3(a)は、透過性基板主面に形成され且つ露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部に、コンタクトパターンと対応する開口部と、該開口部を囲む領域に位置する小さい幅の位相シフターとが設けられてなる輪郭強調マスクの平面図である。また、図3(b)は、図3(a)に示す輪郭強調マスクに対して干渉度σ=0.4の小さな光源を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示しており、図3(c)は、図3(a)に示す輪郭強調マスクに対して輪帯照明を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示している。
また、図3(d)は、透過性基板主面に形成され且つ露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部に、コンタクトパターンと対応する開口部と、該開口部を囲む領域に位置する大きい幅の位相シフターとが設けられてなる輪郭強調マスクの平面図である。また、図3(e)は、図3(d)に示す輪郭強調マスクに対して干渉度σ=0.4の小さな光源を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示しており、図3(f)は、図3(d)に示す輪郭強調マスクに対して輪帯照明を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示している。
ここで、図3(d)に示す輪郭強調マスクにおける位相シフターの幅は、輪郭強調法の原理が成り立たないほど過剰に大きく設定されているものとする。具体的には、図3(a)及び図3(d)に示す開口部の寸法は共に220nm四方であり、図3(a)に示す位相シフターの幅は60nmであり、図3(d)に示す位相シフターの幅は150nmである。また、輪帯照明としては、図30(b)に示すような輪帯露光光源、具体的には、外径σ=0.75、内径σ=0.5の2/3輪帯と呼ばれるものを用いた。また、露光条件としては、光源波長λ=193nm(ArF光源)、開口数NA=0.6を用いた。さらに、位相シフターの透過率は6%である。尚、以下の説明においては、特に断らない限り、光強度を、露光光の光強度を1としたときの相対光強度で表す。
図3(b)及び(c)に示すように、輪郭強調法の原理が成り立つ図3(a)に示す輪郭強調マスクを用いた場合、位相シフターの不透明化作用による暗部は光源の種類によらず現れていると共に光強度分布におけるコントラストは輪帯照明によってより高い値が得られている。
一方、位相シフターが過剰に大きい図3(d)に示す輪郭強調マスクを用いた場合、位相シフターを透過する光が強くなりすぎるため、振幅強度分布において反対位相の強度分布が形成されてしまう。このような状況では、ハーフトーン位相シフトマスクと同様の原理が作用する。その結果、図3(e)及び(f)に示すように、小さな光源による露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されてコントラスト強調効果が現れる一方、斜入射露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されないために非常にコントラストの悪い像が形成される。
すなわち、輪郭強調法を実現するためには、マスク構造において、半遮光部に囲まれた開口部の周辺に位相シフターが配置されているだけではなく、その位相シフター内を透過する光が制限されている必要がある。後者の方は、原理的なメカニズムによれば、位相シフターを透過する光が、半遮光部及び開口部を透過する光を打ち消す以上の強度を有し、且つその振幅強度分布において一定の大きさ以上の反対位相の強度分布が形成されないことを意味する。
実際に位相シフターを透過する光を制限するために、位相シフターの透過率に応じてその幅に条件(具体的には上限)を設ける方法を用いることができる。以下、この条件について、位相シフターを透過する光によって位相シフター周辺からの光を打ち消すための条件を考察した結果(図4(a)〜(d)参照)を用いて説明する。
図4(a)に示すように、透過性基板上に透過率T、線幅Lの位相シフターが設けられたフォトマスク(位相シフターマスク)を用いた露光において、被露光材料上におけるマスクパターンの中心と対応する位置に生じる光強度をIh(L、T)とする。また、図4(b)に示すように、位相シフターマスクの位相シフターに代えて完全遮光膜が設けられたフォトマスク(遮光マスク)を用いた露光において、被露光材料上におけるマスクパターンの中心と対応する位置に生じる光強度をIc(L)とする。また、図4(c)に示すように、位相シフターマスクの位相シフターに代えて通常の透光部(開口部)が設けられ、且つ位相シフターマスクの透光部に代えて完全遮光膜よりなる遮光部が設けられたフォトマスク(透過マスク)を用いた露光において、被露光材料上におけるマスクパターンの中心と対応する位置に生じる光強度をIo(L)とする。
図4(d)は、図4(a)に示す位相シフターマスクを用いた露光において位相シフターの透過率T及びマスクパターンの線幅Lを色々変化させた場合における光強度Ih(L、T)のシミュレーション結果を、透過率T及び線幅Lをそれぞれ縦軸及び横軸に取って光強度の等高線で表した様子を示している。ここで、T=Ic(L)/Io(L)の関係を表すグラフを重ね書きしている。また、シミュレーション条件は、露光光の波長λ=0.193μm(ArF光源)、露光機の投影光学系の開口数NA=0.6、露光光源の干渉度σ=0.8(通常光源)である。
図4(d)に示すように、光強度Ih(L、T)が最小となる条件はT=Ic(L)/Io(L)の関係で表すことができる。これは、物理的には、位相シフター内を透過する光の光強度を表すT×Io(L)と、位相シフター外を透過する光の光強度Ic(L)とが釣り合う関係を表している。従って、位相シフター内を透過する光が過剰となって振幅強度分布において反対位相の振幅強度が現れる位相シフターの幅Lは、T×Io(L)がIc(L)よりも大きくなる幅Lということになる。
また、光源種類によって多少の違いはあるが、透過率1の位相シフター内を透過する光が、位相シフター外を透過する光と釣り合うときの幅Lは0.3×λ(光源波長)/NA(開口数)程度(図4(d)の場合で100nm程度)であることが、種々のシミュレーション結果から経験的に得られた。さらに、図4(d)から分かるように、6%以上の透過率を有する位相シフター内を光が過剰に透過することを防止するためには、透過率1(100%)の位相シフターの場合と比べて幅Lを2倍以下にする必要がある。すなわち、6%以上の透過率を有する位相シフター内を光が過剰に透過することを防止するためには、位相シフターの幅Lの上限は0.6×λ/NA以下でなければならない。
以上の考察を輪郭強調マスクに当てはめると、輪郭強調マスクにおいては位相シフター外を透過する光としては、実質的に位相シフターの両側ではなく片側のみを考慮すればよいので、輪郭強調マスクにおける位相シフターの幅Lの上限は上記の考察による上限の半分と考えればよい。従って、輪郭強調マスクにおける位相シフターの幅Lの上限は、位相シフターの透過率が6%以上の場合で0.3×λ/NA以下である。ただし、これは十分条件ではなく、位相シフターの透過率が6%よりも高くなると、位相シフターの幅Lの上限を0.3×λ/NAよりも小さくする必要がある。但し、位相シフターの幅Lは、位相シフターとしての光学的な作用が得られる0.1×λ/NA以上であることが好ましい。
尚、本明細書においては、特に断らない限り、位相シフター幅等の種々のマスク寸法を被露光材料上での寸法に換算して表すこととするが、マスク実寸法は、換算寸法に、露光機の縮小投影光学系の縮小倍率Mを乗ずることにより簡単に求めることができる。
〈輪郭強調マスクと斜入射露光との組み合わせによるコントラスト〉
次に、輪郭強調マスクにおいて斜入射露光によってイメージ強調が実現されることを、輪郭強調マスクに対して様々な光源位置から露光を行なった場合における光強度分布のコントラストの変化に基づいて詳細に説明する。
図5(a)は輪郭強調マスクの一例の平面図である。ここで、半遮光部の透過率は7.5%であり、位相シフター及び開口部の透過率は100%である。また、開口部の寸法(被露光ウェハ上換算)は200nm四方であり、位相シフターの幅は50nmである。
図5(c)は、図5(a)に示す輪郭強調マスクに対して、開口数NAで規格化された様々な光源位置の点光源から露光を行なった場合における図5(a)の線分AA’と対応する光強度分布を光学シミュレーションにより計算して、該計算結果(例えば図5(b)に示されるような光強度分布)における開口部中央に相当する位置の光強度Ioを読み取り、該光強度Ioを各光源位置に対してプロットした結果を示している。ここでは、光源波長λが193nm(ArF光源)、開口数NAが0.6として光学計算によるシミュレーションを行なった結果を示している。尚、以下の説明では特に断らない限り、光学シミュレーションにおいて、波長λ=193nm(ArF光源)、開口数NA=0.6の条件で計算を行なうものとする。
図5(c)に示すように、開口部中央の光強度Ioは外側の光源位置(図5(c)の原点から遠い光源位置)の点光源で露光される程大きくなる。すなわち、斜入射成分の強い光源で露光される程、コントラストが強くなることが分かる。図面を参照しながら具体的に説明する。図5(d)、図5(e)及び図5(f)は、図5(c)に示すサンプル点P1、P2及びP3のそれぞれに点光源が位置する場合における、図5(a)の線分AA’と対応する光強度分布をプロットしたものである。図5(d)、図5(e)及び図5(f)に示すように、点光源の位置が外側になるに従って、言い換えると、大きい斜入射光源位置になるに従って、高いコントラストの像が形成されている。
以上の結果から分かるように、輪郭強調マスクは、従来のハーフトーン位相マスクでは実現できなかった、コンタクトパターン等の微小な孤立スペースパターンの形成における斜入射露光による光強度分布のコントラスト強調を可能とするものである。
次に、密集コンタクトパターンと対応する複数の開口部が設けられた輪郭強調マスクに対して様々な光源位置から露光を行なった場合における、光強度分布のコントラストの光源位置に対する依存性について説明する。
図6(a)は、複数の開口部が設けられた輪郭強調マスクの一例の平面図である。ここで、半遮光部の透過率は7.5%であり、位相シフター及び開口部の透過率は100%である。図6(a)に示すように、開口部が位相シフターを挟んで密に配置された輪郭強調マスクでは、一の開口部の周辺に設けられた位相シフターが、一の開口部と隣り合う他の開口部の周辺に設けられた位相シフターと結合される。尚、各開口部の寸法(被露光ウェハ上換算)は200nm四方であり、各開口部の繰り返し周期(被露光ウェハ上換算)は270nmである。従って、位相シフターの幅(被露光ウェハ上換算)は70nmである。
図6(c)は、図6(a)に示す輪郭強調マスクに対して、開口数NAで規格化された様々な光源位置の点光源から露光を行なった場合における図6(a)の線分AA’と対応する光強度分布を光学シミュレーションにより計算して、該計算結果(例えば図6(b)に示されるような光強度分布)における一の開口部中央に相当する位置の光強度Ioを読み取り、該光強度Ioを各光源位置に対してプロットした結果を示している。
図6(c)に示すように、各光源位置に対する開口部中央の光強度Ioの分布は同心円状に変化するのではなく、開口部の繰り返し周期に依存して光強度Ioの分布形状が変化する一方、基本的に外側の光源位置に最もコントラストの高い領域が存在する。図6(c)に示す光強度Ioの分布の場合、図30(c)に示すような四重極露光光源と呼ばれる、マスクパターンの配置方向に対して45度方向の斜めの位置から入射する光によって最高のコントラストが得られる。図6(d)、図6(e)及び図6(f)は、図6(c)に示すサンプル点P1、P2及びP3のそれぞれに点光源が位置する場合における、図6(a)の線分AA’と対応する光強度分布をプロットしたものである。図6(d)、図6(e)及び図6(f)に示すように、点光源の位置が外側になるに従って、言い換えると、大きい斜入射光源位置になるに従って、高いコントラストの像が形成されている。
以上の結果から分かるように、輪郭強調マスクにおいては、密集コンタクトパターンを形成する場合にも孤立コンタクトパターンを形成する場合と同様に、各光強度分布の像において最も高いコントラストを実現できるのは外側の光源位置である。従って、輪郭強調マスクに対して斜入射露光を行なうことによって、孤立コンタクトパターンと密集コンタクトパターンとを同時に、光強度分布におけるコントラストを強調しながら形成できることが分かる。
〈輪郭強調マスクにおける焦点深度〉
次に、輪郭強調マスクによって形成される光強度分布において焦点深度(DOF)が増加することを説明する。輪郭強調マスクにおいては、半遮光部を用いたことによるDOFの増加効果、及び、位相シフターの補助によるDOFの増加効果の両方が合わさって飛躍的にDOFが増加する。
以下、本発明の輪郭強調マスクを用いてコンタクトパターンを形成した場合におけるパターンの仕上がり寸法(CD:Critical Dimension)のデフォーカス依存性つまりDOF特性をシミュレーションした結果について、従来のクロムマスク、ハーフトーンマスク及びハーフトーン位相シフトマスクのそれぞれを用いた場合と比較して説明する。
図7(a)は、透過性基板主面に形成された半遮光部に、コンタクトパターンと対応する開口部(幅W)と、該開口部を囲む領域に位置する位相シフター(幅d)とが設けられてなる輪郭強調マスクの平面図である。また、図7(b)は、透過性基板主面に形成された完全遮光部となるクロム膜に、コンタクトパターンと対応する開口部(幅W)が設けられてなるクロムマスクの平面図である。また、図7(c)は、透過性基板主面に形成された半遮光部に、コンタクトパターンと対応する開口部(幅W)が設けられてなるハーフトーンマスクの平面図である。さらに、図7(d)は、透過性基板主面に形成された遮光部となる位相シフターに、コンタクトパターンと対応する開口部(幅W)が設けられてなるハーフトーン位相シフトマスクの平面図である。尚、幅W及び幅d等のマスク寸法は、図7(a)〜図7(d)に示す各マスクを用いたベストフォーカス状態の露光によって形成される各コンタクトパターンの寸法が、同じ露光量において同一(具体的には0.12μm)になるように調整されているものとする。
図7(e)は、図7(a)〜図7(d)に示す各マスクを用いた露光におけるDOF特性を示している。尚、光学シミュレーションにおいては斜入射露光である四重極露光を用いている。また、ベストフォーカス状態のフォーカス位置を基準の0μmとしている。図7(e)に示すように、クロムマスクのDOF特性と比べてハーフトーンマスクのDOF特性は向上しており、ハーフトーンマスクのDOF特性と比べて輪郭強調マスクのDOF特性はさらに向上している。また、ハーフトーン位相シフトマスクのDOF特性はクロムマスクのDOF特性よりも悪い。
以上の結果から分かるように、輪郭強調マスクのDOF特性は、従来のクロムマスク、ハーフトーンマスク及びハーフトーン位相シフトマスクのいずれのDOF特性よりもさらに向上している。
〈輪郭強調マスクにおける半遮光部の透過率依存性〉
ここまで、輪郭強調マスクによってコントラスト及びDOFが向上することを説明してきたが、次に、輪郭強調マスクにおける半遮光部の透過率に対するコントラスト及びDOFの依存性について説明する。具体的には、図8(a)に示す輪郭強調マスクを用いたパターン形成における、各種マージンをシミュレーションした結果(図8(b)〜図8(f))に基づいて説明を行なう。図8(b)は、露光を行なったときに形成される光強度分布を示している。図8(b)においては、幅100nmのホールパターンを形成しようとした場合に定義される各種のマージンに関する値も図中に示している。具体的には、臨界強度Ithはレジスト膜が感光する光強度であり、この値に対して各種のマージンが定義される。例えばIpを光強度分布のピーク値とすると、Ip/Ithはレジスト膜を感光させる感度に比例する値となり、この値が高いほど好ましい。また、Ibを半遮光部を透過する光のバックグラウンド強度とすると、Ith/Ibが高い程、パターン形成時にレジスト膜の膜減り等が発生しないことを意味し、この値が高いほど好ましい。一般にIth/Ibの値は2以上あることが望まれている。以上のことを踏まえて各マージンについて説明する。
図8(c)は、パターン形成時における半遮光部の透過率に対するDOFの依存性について計算した結果を示している。ここで、DOFは、パターンの仕上がり寸法の変化が10%以内に収まるフォーカス位置の幅として定義してある。図8(c)に示すように、DOFの向上には半遮光部の透過率は高いほど好ましい。また、図8(d)は、パターン形成時における半遮光部の透過率に対するピーク値Ipについて計算した結果を示している。図8(d)に示すように、ピーク値Ipつまりコントラストの向上にも半遮光部の透過率は高いほど好ましい。以上の結果から、輪郭強調マスクにおいては、半遮光部の透過率は高い程好ましく、具体的には、図8(c)及び(d)に示すように、透過率が0%から6%程度まで上がる間にマージンの向上率が大きくなっており、透過率が6%以上の半遮光部を用いることが好ましいことが理解できる。
図8(e)は、パターン形成時における半遮光部の透過率に対するIth/Ibについて計算した結果を示している。図8(e)に示すように、Ith/Ibは半遮光部の透過率が高くなるほど低くなっており、Ith/Ibの向上には半遮光部の透過率が高くなりすぎると好ましくない。具体的には、半遮光部の透過率が15%程度でIth/Ibは2よりも小さくなってしまう。また、図8(f)は、パターン形成時における半遮光部の透過率に対するIp/Ithについて計算した結果を示している。図8(f)に示すように、半遮光部の透過率が15%程度のところにIp/Ithはピークを持っている。
以上に説明したように、輪郭強調マスクにおいては、DOF又はコントラストは半遮光部の透過率を高くするほど向上し、その効果は半遮光部の透過率が6%を越えるとより顕著になる。一方、パターン形成時におけるレジスト膜の膜減り防止、又はレジスト感度の最適化等の観点からは、半遮光部の透過率の最大値は15%程度にしておくことが好ましい。従って、輪郭強調マスクにおける半遮光部の透過率の最適値は6%以上で且つ15%以下であると言える。
〈輪郭強調マスクのバリエーション〉
図9(a)〜(f)は、コンタクトパターンと対応する開口部が設けられた輪郭強調マスクにおける、半遮光部と位相シフターとによって構成される遮光性のマスクパターンのバリエーションを示す平面図である。
図9(a)に示す輪郭強調マスク1aは、図1に示す輪郭強調マスクと同じ構成を有している。すなわち、露光光に対して透過性を有する透過性基板2aと、透過性基板2a上に形成された半遮光部3aと、半遮光部3aを開口して設けられ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4aと、半遮光部3aと開口部4aとの間に開口部4aを取り囲むように形成されたリング状の位相シフター5aとを備えている。
図9(b)に示す輪郭強調マスク1bは、露光光に対して透過性を有する透過性基板2bと、透過性基板2b上に形成された半遮光部3bと、半遮光部3bを開口して設けられ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4bと、開口部4bの各辺と同一長さを有する矩形状の4つの位相シフター部からなり且つ開口部4bの各辺に接するように形成された位相シフター5bとを備えている。この輪郭強調マスク1bは、孤立パターン形成において輪郭強調マスク1aとほとんど同じ特性を有している。ところで、この輪郭強調マスク1bのマスクパターン(半遮光部3bと位相シフター5bとから構成される)を基本構造として、コンタクトパターンと対応する開口部を蜜に配置した場合には、さらに有効な効果が得られる。図10は、図9(b)に示す輪郭強調マスク1bのマスクパターンを基本構造として、コンタクトパターンと対応する開口部が蜜に配置された輪郭強調マスクの平面図である。図10に示す輪郭強調マスクにおいては、各開口部と接する位相シフター同士の結合は2方向以下でしか生じないので、位相シフター同士の結合部で位相シフターを透過する反対位相の光が過剰になる事態を防止できる。これにより、輪郭強調マスクの開口部と対応する場所以外の他の場所に、光強度のピーク(つまりサイドローブ)が生じることを防止できる。すなわち、対角部分を除く開口部の周囲が位相シフターによって囲まれた輪郭強調マスク(図9(b)又は図10に示す輪郭強調マスク)を用いた場合、開口部が孤立状態であっても密集状態であっても輪郭強調法の原理が成り立つ。
図9(c)に示す輪郭強調マスク1cは、露光光に対して透過性を有する透過性基板2cと、透過性基板2c上に形成された半遮光部3cと、半遮光部3cを開口して設けられ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4cと、開口部4cの各辺の長さよりも短い長さを有する矩形状の4つの位相シフター部からなり且つ開口部4cの各辺の中央と各位相シフター部の中央とが位置合わせされた状態で開口部4cの各辺に接するように形成された位相シフター5cとを備えている。この輪郭強調マスク1cにおいては、開口部4cの幅(大きさ)を固定して位相シフター5cの各位相シフター部の長さを変更することによって、露光後に形成されるレジストパターンの寸法調整を行なうことができる。例えば、位相シフター5cの各位相シフター部の長さを短くするほど、レジストパターンの寸法は大きくなる。ここで、輪郭強調の作用を保つために位相シフター5cの各位相シフター部の長さを変更できる下限は、光源(露光光)波長の半分程度までに限定される一方、マスク寸法の変更量の半分程度しかパターン寸法が変化しないので、位相シフター部の長さを調整することは、パターン寸法調整方法として非常に優れた方法となる。
図9(d)に示す輪郭強調マスク1dは、露光光に対して透過性を有する透過性基板2dと、透過性基板2d上に形成された半遮光部3dと、半遮光部3dを開口して設けられ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4dと、半遮光部3dと開口部4dとの境界から所定の寸法だけ半遮光部3d側に入った位置に形成されたリング状の位相シフター5dとを備えている。この位相シフター5dは、半遮光部3dをリング状に開口することによって形成されており、位相シフター5dと開口部4dとの間にはリング状の半遮光部3dが介在している。
図9(e)に示す輪郭強調マスク1eは、露光光に対して透過性を有する透過性基板2eと、透過性基板2e上に形成され且つ露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部3eと、半遮光部3eを開口して設けられ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4eと、半遮光部3eと開口部4eとの境界から所定の寸法だけ半遮光部3e側に入った位置に形成された位相シフター5eとを備えている。位相シフター5eは、開口部4eの各辺の長さよりも長い矩形状をそれぞれ有し且つ開口部4eの対角線上で互いの角部が接する4つの位相シフター部からなる。ここで、位相シフター5eと開口部4eとの間には、リング状の半遮光部3eが介在している。輪郭強調マスク1eにおいては、位相シフター5eの大きさ及び配置を固定して開口部4eの幅(大きさ)のみを変更することによって、露光後に形成されるレジストパターンの寸法調整を行なうことができる。例えば、開口部4eの幅を大きくするに従ってレジストパターンの寸法も大きくなる。この開口部の幅のみを変更するパターン寸法調整方法によれば、開口部及び位相シフターの両方を同時にスケーリングしてパターン寸法の調整を行なう方法と比べて、MEEF(Mask Error Enhancement Factor :マスク寸法変化量に対するパターン寸法変化量の比)を半分程度まで低減することができる。
図9(f)に示す輪郭強調マスク1fは、露光光に対して透過性を有する透過性基板2fと、透過性基板2f上に形成された半遮光部3fと、半遮光部3fを開口して設けられ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4fと、半遮光部3fと開口部4fとの境界から所定の寸法だけ半遮光部3f側に入った位置に形成された位相シフター5fとを備えている。位相シフター5fは、開口部4fの各辺の長さと同一長さの矩形状をそれぞれ有し且つ開口部4fの各辺と対向する4つの位相シフター部からなる。ここで、位相シフター5fの各位相シフター部の長さは、開口部4fの各辺の長さよりも長くても短くても良い。輪郭強調マスク1fによれば、図9(c)に示す輪郭強調マスク1cと同様にレジストパターンの寸法調整を行なうことができる。
尚、図9(d)〜(f)に示す輪郭強調マスクにおいて、開口部と位相シフターとの間の半遮光部の幅は、位相シフターによる光の干渉効果を及ぼすことができる寸法、つまりλ/NA(λは露光光の波長、NAは開口数)の10分の1以下であることが望ましい。また、図9(a)〜(f)に示す輪郭強調マスクにおいて、開口部の形状として正方形を用いたが、例えば8角形のような多角形又は円形等であってもよい。また、位相シフターの形状も、連続したリング形状又は複数個の長方形に限られない。例えば、複数個の正方形の位相シフター部を並べることによって位相シフターを形成してもよい。
次に、輪郭強調マスクにおける開口部と位相シフターとの位置関係に対する、DOF向上特性の依存性について説明する。図11(a)は、開口部の寸法(開口幅)とDOFとの関係を求めるためのシミュレーションに用いた輪郭強調マスクの構造を示す平面図であり、図11(b)は、開口幅に対するDOFの依存性のシミュレーション結果を示す図である。具体的には、図11(a)に示す輪郭強調マスクは、透過性基板主面を覆う半遮光部に、幅Wの開口部と、該開口部の外周上に位置する幅dのリング状の位相シフターとが設けられた構造として一般化して定義されたものである。また、図11(b)は、図11(a)に示す輪郭強調マスクにおいてdを50nmに固定し且つWを170〜280nmの範囲で変化させたときのDOF特性をシミュレーションした結果を示している。ここで、シミュレーションにおける露光条件は、λが193nm、NAが0.6、使用光源が輪帯露光光源である。
図11(b)に示すように、開口部の幅Wが0.8×λ/NA以下の値である場合、位相シフターよる干渉効果が得られるので、DOFが良好な値となる。特に、開口部の幅Wが0.6×λ/NA以下の値である場合、DOFの向上効果が顕著に現れる。従って、開口部と半遮光部との境界に位相シフターが設けられた位置関係が、DOF特性向上のために最も優れた位置関係(正確には輪郭強調マスクにおける開口部と位相シフターとの位置関係)となる。すなわち、輪郭強調マスクにおいては位相シフターの干渉作用が開口部中心に及ぶことによる特別なDOF特性向上効果があり、該効果が確実に得られる開口部の幅W、つまり位相シフターの干渉作用が強く生じる開口部の幅Wは0.8×λ/NA以下である。
以上のように、図9(a)〜(f)に示すマスクパターン形状のうち、DOF特性の最適化の観点からは、半遮光部と開口部との境界に位相シフターが設けられた、図9(a)〜(c)に示すマスクパターン形状が好ましい。一方、MEEFを抑制しながらパターン寸法調整を実現する上では、位相シフターが開口部との境界から所定の寸法だけ半遮光部側に入った位置に配置された、図9(d)〜(f)に示すマスクパターン形状が好ましい。
尚、本実施形態では、コンタクトパターンとなるスペースパターンを形成する場合を対象として説明してきたが、これに代えて、コンタクトパターン以外の他のスペースパターンを形成する場合にも同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、遮光性のマスクパターンが開口部(透光部)を囲んでいる輪郭強調マスクを用いてスペースパターンを形成する場合を対象として説明してきた。しかし、これに代えて、遮光性のマスクパターンが開口部(透光部)によって囲まれている輪郭強調マスクを用いてラインパターンを形成する場合にも、例えばライン状の半遮光部の周辺領域つまりマスクパターンにおける透光部の近傍領域に位相シフターを配置することによって、同様の効果を得ることができる。この場合も、DOF特性の最適化の観点からは、半遮光部と透光部との境界に位相シフターが設けられたマスクパターン形状を採用することが好ましい。一方、MEEFを抑制しながらパターン寸法調整を実現する上では、位相シフターが開口部との境界から所定の寸法だけ半遮光側に配置されたマスクパターン形状を採用することが好ましい。
(第2の実施形態)
次に、本発明を実現する上で本願発明者が考案した、フォトマスクによる解像度向上方法、具体的には、孤立ラインパターンの解像度を向上させるための「中心線強調法」を用いたフォトマスクについて説明する。
図12は、本発明の第2の実施形態に係る中心線強調法を用いたフォトマスク(以下、イメージ強調マスクと称する)、具体的には、孤立ラインパターンを形成するためのイメージ強調マスクの平面図である。
図12に示すように、イメージ強調マスク6は、露光光に対して透過性を有する透過性基板7と、透過性基板7上に形成され、露光光の一部分を透過させる透過率を持ち且つ孤立ラインパターンと対応する半遮光部8と、半遮光部8の内部の開口部に設けられた位相シフター9とを備えている。イメージ強調マスク6においては、透光部7を基準として露光光を同位相で透過させる半遮光部8と、透光部7を基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフター9とによって、遮光性を有するマスクパターンが構成されている。
また、露光光に対する半遮光部8の透過率は15%以下であり、好ましくは6%以上で且つ15%以下である。このような半遮光部8の材料としては、例えば、Cr、Ta、Zr若しくはMo等の金属又はこれらの金属の合金からなる薄膜(厚さ50nm以下)を用いることができる。前述の合金としては、具体的には、Ta−Cr合金、Zr−Si合金又はMo−Si合金等がある。さらに、半遮光部8の厚さを大きくしたい場合には、ZrSiO、Cr−Al−O、TaSiO又はMoSiO等の酸化物を含有する材料を用いてもよい。
また、露光光に対する位相シフター9の透過率は、半遮光部8の透過率よりも高く且つ透光部(透過性基板7におけるマスクパターンが形成されていない部分)の透過率と同等以下である。
〈中心線強調法の原理〉
次に、孤立ラインパターンの解像度を向上させるための「中心線強調法」について、ポジ型レジストプロセスにより微少なラインパターンを形成する場合を例として説明する。「中心線強調法」においても、「輪郭強調法」と同様に、基本的な原理は、位相シフターの不透明作用により光強度分布における暗部を形成してコントラストを向上させることである。
まず、ライン状のマスクパターンを構成する半遮光部の内部に位相シフターを設けることによる効果について図13(a)〜(c)を参照しながら説明する。
図13(a)は、幅Lのライン状のマスクパターンを構成する半遮光部(透過率Tc)の内部に幅Sの位相シフター(透過率Ts)が設けられたイメージ強調マスクの平面図と、該イメージ強調マスクを透過して線分AA’と対応する位置に転写される光の光強度とを合わせて示している。ここで、マスクパターン中心と対応する光強度をIe(L,S)と表す。図13(b)は、幅Lの半遮光部(透過率Tc)よりなる半遮光パターンが設けられたマスクの平面図と、該マスクを透過して線分AA’と対応する位置に転写される光の光強度と合わせてを示している。ここで、半遮光パターン中心と対応する光強度をIc(L)とする。尚、図13(a)及び(b)に示す半遮光部は、透光部を基準として同位相の光を透過させるものとする。図13(c)は、マスク表面を覆う完全遮光部に幅Sの位相シフター(透過率Ts)よりなる位相シフトパターンが設けられたマスクの平面図と、該マスクを透過して線分AA’と対応する位置に転写される光の光強度とを合わせて示している。ここで、位相シフトパターン中心と対応する光強度をIo(S)とする。
図13(a)に示すイメージ強調マスクは、図13(b)及び(c)のそれぞれに示すマスク構造を重ねあわせたものである。このため、Ic(L)とIo(S)とが釣り合うようなLとSとの関係においてIe(L,S)を最小化でき、それによって図13(a)に示すイメージ強調マスクによるコントラストの強調を実現できる。 すなわち、ライン状のマスクパターンを構成する半遮光部の内部に位相シフターを設けることによって、光強度分布のコントラスト、具体的にはマスクパターン中心におけるコントラストを中心線強調法の原理によって強調することができる。
ところで、前述の光強度Io(S)を発生させるためのイメージ強調マスクの位相シフター(半遮光部に設けられた開口領域)の形状は、半遮光部の形状と対応させる必要はない。図14(a)及び図14(b)は、イメージ強調マスクにおける位相シフターの他の形状を示す平面図である。具体的には、図14(a)及び図14(b)は、ライン状のマスクパターンを構成する半遮光部内に設けられた位相シフターを示しており、図14(a)に示す位相シフターは、2本の長方形パターンから構成されており、図14(b)に示す位相シフターは、5個の正方形パターンから構成されている。図14(a)及び図14(b)に示す位相シフターが設けられたイメージ強調マスクによっても、図12に示すイメージ強調マスクと同様な効果を得ることができる。従って、イメージ強調マスクの位相シフターの形状を、半遮光部内に収まる範囲内で、長方形、正方形、円又は多角形等の任意の形状に設定することができる。その理由は、微細な開口部は、そこを透過する光の強度が同じであれば、開口部の形状によらず全く同じ光学的振る舞いをするからである。
〈イメージ強調マスクにおけるDOF特性〉
本願発明者は、イメージ強調マスクと斜入射露光との組み合わせの有効性を明確にするために、位相シフターとなる開口部の寸法がそれぞれ異なる複数のイメージ強調マスクを用いて、色々な露光光入射方向からの露光を行なった場合におけるDOF(フォーカス深度)特性をシミュレーションによって計算してみた。図15(a)〜(c)はその結果を示しており、図15(a)は露光光入射方向が光源座標(ライン状のマスクパターンの幅方向及び長さ方向にそれぞれx軸及びy軸を取った座標)の中心方向からの垂直入射である場合のシミュレーション結果を示し、図15(b)は露光光入射方向が光源座標のX軸方向又はY軸方向からの斜入射である場合のシミュレーション結果を示し、図15(c)は露光光の入射方向が光源座標の45度方向(X軸方向又はY軸方向と45度の角度をなす方向)からの斜入射である場合のシミュレーション結果を示す。ここで、イメージ強調マスクとして、各露光光入射方向に対して遮光性が最大になるように調整された開口部幅(以下、最適開口部幅と称する)を有するイメージ強調マスクと、最適開口部幅よりも小さい開口部幅を有するイメージ強調マスクと、最適開口部幅よりも大きい開口部幅を有するイメージ強調マスクとを用いた。また、比較のために、イメージ強調マスクのマスクパターンに代えて同一の外形形状を有する完全遮光パターンが設けられたフォトマスク(完全遮光マスク)を用いた場合におけるDOF特性についてもシミュレーションによって計算してみた。尚、DOF特性は、ベストフォーカス時に各マスクパターンと対応して形成されるパターン(レジストパターン)の寸法が0.12μmとなるように露光エネルギーを設定したときに、デフォーカスによってパターン寸法がどのように変化するかを基準にして評価されている。また、図15(a)〜(c)において、Lはマスクパターン幅、Sは開口部幅を示しており、フォーカス位置(横軸)0がベストフォーカス位置と対応している。
図15(a)に示すように、露光光入射方向が光源座標の中心方向からの入射方向である場合、イメージ強調マスクの開口部幅を大きくするに従ってDOF特性は劣化しており、完全遮光マスクを用いたとき(L=0.12μm、S=0μm)(以下、L/S=0.12/0μmと略す)のDOF特性が最も優れている。一方、図15(b)に示すように、露光光入射方向が光源座標のX軸方向又はY軸方向からの斜入射である場合、DOF特性はイメージ強調マスクの開口部幅に依存しておらず、イメージ強調マスクを用いた場合も完全遮光マスクを用いた場合(L/S=0.13/0μm)も同じDOF特性である。しかし、図15(c)に示すように、露光光入射方向が光源座標の45度方向からの斜入射である場合、イメージ強調マスクの開口部幅を大きくするに従ってDOF特性が向上しており、完全遮光マスクを用いたとき(L/S=0.15/0μm)のDOF特性が最低である。すなわち、45度方向からの斜入射露光においてマスクパターン回折光とマスクパターン透過光との干渉により生じる光強度分布のデフォーカス特性を向上させるためには、必要最低限の実効的な遮光性を実現できる範囲でマスクパターン透過光(つまり位相シフターの配置領域)を可能な限り増大させればよいことが分かる。
次に、イメージ強調マスクにおける位相シフターの配置位置について説明する。図16(a)は、半遮光部よりなる幅Lの半遮光パターンが設けられたフォトマスクの平面図と、該マスクを透過して線分AA’と対応する位置に転写される光の光強度とを合わせて示している。このような半遮光パターンの内部に位相シフターを設けてイメージ強調マスクを作成する場合、半遮光パターンの幅Lが大きくなるに従って、最大コントラストを実現できる位相シフターの幅は小さくなる。しかしながら、図16(a)に示すように、半遮光パターンはどんなに広い幅を有している場合でも、半遮光パターンの中心と対応する光強度が0にはならず、必ず残留光強度が存在する。従って、イメージ強調マスクにおいてマスクパターンを構成する遮光部として半遮光部を用いる場合には、図16(b)に示すように、半遮光部の幅Lが大きくなるに従って位相シフターの幅は小さくなるが、半遮光部の幅Lがどんなに大きくなっても、前述の残留光強度と釣り合う位相シフターを必ず設ける必要が出てくる。従って、マスク上で形成可能な位相シフターの最小寸法をこの残留光強度に合わせておくことによって、イメージ強調マスクの実現に必要な位相シフターは全て形成可能となる。但し、この残留光強度が実際の露光においてレジスト膜を感光させない量となるように、半遮光部の透過率を定めておく必要がある。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るフォトマスク及びそのマスクデータ作成方法について図面を参照しながら説明する。
図17は、輪郭強調法及び中心線強調法を利用した、第3の実施形態に係るマスクデータ作成方法、具体的には、フォトマスクを用いて形成しようとする所望のパターンに基づいてマスクパターンの作成を行なうマスクデータ作成方法のフロー図を示している。また、図18(a)〜(d)及び図19(a)〜(d)は、図17に示すマスクデータ作成方法を用いてスペースパターン形成用のマスクパターンを形成する場合の各工程を示す図である。また、図20(a)〜(d)及び図21(a)〜(c)は、図17に示すマスクデータ作成方法を用いてラインパターン形成用のマスクパターンを形成する場合の各工程を示す図である。
まず、ステップS11において、フォトマスクを用いて形成しようとする所望のパターンを入力する。図18(a)及び図20(a)はそれぞれ、所望のパターンの一例を示している。図18(a)に示す所望のパターンは、レジスト除去パターン(レジストパターン中の開口部)であり、図20(a)に示す所望のパターンはレジストパターンである。
次に、ステップS12において、所望のパターンに基づいてマスクパターンの形状を決定すると共にマスクパターンに用いる半遮光部の透過率Tcを設定する。このとき、露光条件をオーバー露光にするか又はアンダー露光にするかに応じて、所望のパターンに対して該パターンを拡大したり又は縮小したりするリサイズを行なう。図18(b)及び図20(b)はそれぞれ、リサイズ後の所望のパターンに基づき作成されたマスクパターンの一例を示している。図18(b)に示すマスクパターンは、所望のパターンと対応する開口部(透光部)を囲む半遮光部から構成されている。図20(b)に示すマスクパターンは、透光部によって囲まれた半遮光部から構成されている。
次に、ステップS13において、マスクパターンにおける所定の寸法D1以下で開口部に挟まれた領域、言い換えると、マスクパターンにおける幅が所定の寸法D1以下である領域を抽出する。ここで、D1としては0.8×λ/NA程度が望ましい(λは光源波長、NAは開口数)。図18(c)及び図20(c)は、図18(b)及び図20(b)のそれぞれに示すマスクパターンにおいて所定の寸法D1以下で開口部に挟まれた領域を示している。
次に、ステップS14において、ステップS13で抽出された領域内に中心線強調法が成り立つように位相シフターを挿入する。図18(d)及び図20(d)は、図18(c)及び図20(c)のそれぞれに示す、抽出された領域内に、中心線強調法が成り立つように適正な幅の位相シフターが挿入された様子を示している。
次に、ステップS15において、マスクパターン内に輪郭強調法が成り立つように位相シフターを挿入する。具体的には、図19(a)は、図18(d)に示すマスクパターン内に輪郭強調法が成り立つように位相シフターが挿入された様子を示している。図19(a)に示すように、マスクパターンにおける開口部(方形状)の各辺と接する領域に所定寸法の位相シフターが挿入されている。尚、図19(a)に示すマスクパターンにおいては、図9(b)に示すタイプの位相シフター配置を行なっているが、位相シフター配置はこれに限られるものではない。また、図21(a)は、図20(d)に示すマスクパターン内に輪郭強調法が成り立つように位相シフターが挿入された様子を示している。図21(a)に示すように、マスクパターンにおける幅が所定の寸法D1を超える領域の周縁部に位相シフターが挿入されている。尚、図21(a)においては、図9(a)に示すタイプの位相シフター配置を行なっているが、位相シフター配置はこれに限られるものではない。
以上のステップS11からステップS15までの工程によって、中心線強調法及び輪郭強調法を用いて、微細パターン形成を可能ならしめるマスクパターンの作成を行なえた。そこで、さらに、露光によりマスクパターンと対応して形成されるパターンの寸法調整のための近接効果補正、及び、縮小露光系の縮小倍率の値に基づくマスク寸法の換算等の、通常のマスクデータ作成処理を行なえばマスクパターンが完成する。しかしながら、パターン寸法調整においてMEEFが大きいと、マスクグリッド(マスク寸法の調整が可能な最小幅)の影響によってパターン寸法調整誤差の大きいマスクパターンとなってしまう。そこで、第3の実施形態においては、さらなるマスクパターンの改良のために、近接効果補正の実施の上で低いMEEFでパターン寸法の調整を可能とし、且つマスクグリッドに起因するパターン寸法調整誤差を低減する工程を追加的に実施する。
すなわち、ステップS16において、中心線強調法及び輪郭強調法が適用されたマスクパターンに対してMEEF低減手法を適用する。前述の輪郭強調法の原理において説明したように、パターン寸法の調整のためには位相シフターの位置又は寸法を変更する方法と、半遮光部の寸法を変更する方法とがある。一般に、透光部を基準として反対位相の光を透過する領域となる位相シフターは、非常に強い遮光性を有するので、位相シフターの周辺にさらに半遮光部を付加しても、フォトマスクを透過した光の強度分布は影響を受けにくい。そのため、半遮光部の寸法を変更する方法は、MEEFが低くなるという点で、位相シフターの位置又は寸法を変更する方法よりも優れている。そこで、パターン寸法を調整するためのCD(パターン寸法)調整領域として、開口部と位相シフターとの境界に半遮光部を挿入する。図19(b)及び図21(b)はそれぞれ、図19(a)及び図21(a)にそれぞれ示すマスクパターンに対してCD調整用の半遮光部が設定された様子を示している。図19(b)に示すように、スペースパターン形成用の開口部は、ステップS16によって必ず半遮光部により囲まれることになる。また、図21(b)に示すように、ラインパターン形成用のマスクパターン内の位相シフターは、ステップS16によって必ず半遮光部により囲まれることになる。尚、位相シフターの周辺にCD調整領域として設けられる半遮光部は、位相シフターの遮光性に影響を与えない大きさであることが望ましいので、第3の実施形態においては、CD調整領域の幅を0.1×λ/NA以下に設定した。すなわち、CD調整領域の幅は、位相シフターによる光の干渉効果が及ぶ寸法であるλ/NAの10分の1以下であることが望ましい。
ステップS11からステップS16までの工程によって作成されたマスクパターンは、微細パターン形成可能なマスクパターンである。また、このマスクパターンの作成において、近接効果補正を適用する際に、パターン寸法調整を、開口部又は位相シフターを囲む半遮光部の寸法変更によって行なえば、低いMEEFでパターン寸法の調整を実現できる。すなわち、マスクパターンのグリッドの影響に起因するパターン寸法調整誤差の低い優れたマスクパターン作成方法を実現できる。
ところで、一般に、半遮光部(つまり透過性の遮光パターン)を用いたマスクパターンを露光したときに転写される光強度は、マスクパターンの内部にいくにつれて単純に減少するのではなく、振動しながら減少していく。この光強度分布における振動は、マスクパターンの端からλ/NA以下のところでピークつまりサイドローブを有するものとなる。そこで、第3の実施形態では、実際のパターン形成時の露光においてオーバー露光によって、レジスト膜における半遮光部と対応する部分が感光しないように、さらなる露光マージンの拡大を実現するための工程を追加的に実施する。
すなわち、ステップS17において、中心線強調法、輪郭強調法及びMEEF低減手法が適用されたマスクパターンにサイドローブ低減用位相シフターを挿入する。ここで、孤立の開口パターンの周辺に単独で発生するサイドローブ、又はマスクパターンの内側に発生するサイドローブは殆ど問題にならない。しかし、開口部同士がλ/NA〜2×λ/NA程度の距離で隣り合う場合、2つのサイドローブのピークが重なり合う領域が生じるので、オーバー露光を行なうと、該領域の光強度によってレジスト膜が感光してしまう可能性がある。また、マスクパターンにおける幅が2×λ/NA以下の部分においては該部分の両側からの2つのサイドローブのピークが重なり合うので、オーバー露光を行なうと、その部分の光強度によってレジスト膜が感光してしまう可能性がある。しかし、前述の輪郭強調法の原理のところでも述べたように、半遮光部を用いているマスクパターン内においては、位相シフター同士の間隔が0.8×λ/NA以上であれば、言い換えると、マスクパターンの幅が0.8×λ/NA以上であれば、半遮光部による残留光強度に相当する光を打ち消すための位相シフターを任意の位置に配置できる。第3の実施形態においては、この原理を利用して、開口部間の間隔が2×λ/NA以下の領域に、半遮光部による残留光強度と釣り合う位相シフターを配置することによって、サイドローブのピークが重なり合う領域における光強度を全て打ち消すことができる。同様に、マスクパターンにおける幅が0.8×λ/NAを超えている部分(但し輪郭強調法に基いて位相シフターを配置した後においても)に、半遮光部による残留光強度と釣り合う位相シフターを配置することによって、サイドローブのピークが重なり合う領域における光強度を全て打ち消すことができる。すなわち、ステップS17により、ステップS11〜S16によって作成されたマスクパターンを用いて露光を行なうときのオーバー露光マージンを拡大できる。図19(c)は、図19(b)に示すマスクパターンにおける2×λ/NA以下の間隔で開口部に挟まれた領域に、サイドローブ低減用位相シフターが挿入された様子を示している。また、図21(c)は、図21(b)に示すマスクパターンにおける幅が0.8×λ/NAを超えている部分(輪郭強調法の適用後)に、サイドローブ低減用位相シフターが挿入された様子を示している。
最後に、ステップS18において、ステップS11からステップS17までの工程によって作成されたマスクパターンを出力する。以上のステップS11からステップS18までの工程によって、微細パターンを高精度に形成でき、且つパターン形成時の露光マージンが優れたマスクパターンの作成を行なうことができる。尚、ここまで、マスクパターンを構成する遮光部の全てが半遮光部であることを前提としてきたが、中心線強調法のために挿入された位相シフター、及び、輪郭強調法が適用された開口部のそれぞれから十分な距離(つまり光の干渉影響を無視できる距離である2×λ/NAよりも大きな距離)離れた領域は、完全遮光部としてもよいことは言うまでもない。図19(d)は、図19(c)に示すマスクパターンにおける位相シフター及び開口部から十分離れた領域が、完全遮光部として設定された様子を示している。
以上に説明したように、第3の実施形態によると、レジスト膜を感光させない程度に弱い光を透過させる半遮光部を用いてマスクパターンを形成することにより、マスクパターンの任意の位置における光強度のコントラストを強調できる位相シフターの挿入が可能となった。但し、挿入される位相シフター同士を所定の寸法以上離しておく必要がある。これにより、任意の開口形状を有するレジストパターンの形成に中心線強調法及び輪郭強調法の適用が可能となる。言い換えると、マスクパターンと対応する遮光像における光強度分布のコントラストをパターンの疎密に関わらず斜入射露光によって強く強調できるため、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に形成できる。
また、第3の実施形態によると、微細パターンの形成が可能なマスクパターンを実現できると共に、近接効果補正を適用する際に低いMEEFでパターン寸法の調整が可能なマスクパターンをも実現できる。さらに、マスクパターンの任意の位置に位相シフターを挿入できるので、サイドローブの発生を抑制でき、それにより、パターン形成時の露光マージンが高いマスクパターンの形成も可能となる。
また、第3の実施形態によると、半遮光部と位相シフターとを有するマスクパターンにおいて、所定の幅以下の部分には中心線強調法に従って位相シフターを配置すると共に、所定の幅を越える部分には輪郭強調法に従って位相シフターを配置する。このため、任意の形状のマスクパターンによって露光時に非常にコントラストの強い像を形成できる。よって、このようなマスクパターンが設けられたフォトマスクを用いて、レジストが塗布された基板に対して露光を行なうことによって、微細なレジストパターンの形成が可能となる。また、このフォトマスクに対して斜入射照明を用いて露光を行なうことによって、フォーカス変動に対してパターン寸法の変動が生じにくい微小パターン形成が可能となる。
図22は、マスクパターンの線幅に応じて中心線強調法又は輪郭強調法を実現するための位相シフターの挿入方法をまとめて示している。図22に示すように、所定の線幅を越えるマスクパターンに対しては輪郭強調法が適用される一方、所定の線幅以下のマスクパターンに対しては中心線強調法が適用されることになる。ここで、所定の線幅としては0.8×λ/NAを基準に選ぶことが好ましいが、それ以下の値に設定してもかまわない。また、図22に示すように、中心線強調法においては、マスクパターン線幅が太いほどマスクパターン内部に挿入される位相シフターが細くなり、マスクパターン線幅が細くなるほどマスクパターン内部に挿入される位相シフターは太くなる。この位相シフターの線幅の最適寸法を求める方法については前述の通りである。尚、中心線強調法が適用される場合、位相シフターのみでマスクパターンが構成されることもある。
一方、図22に示すように、輪郭強調法においては、所定の線幅を越えるマスクパターンの周縁部に位相シフターが挿入されることになる。このときの位相シフターの線幅は、位相シフター内を透過する光が過剰状態にならないのであれば、マスクパターンの線幅に依存することなく全てのマスクパターンにおいて一定の値となってもよい。すなわち、中心線強調法を適用するべきか、又は輪郭強調法を適用するべきかは、マスクパターンの線幅に基づいて一意的に決定できる。
ところで、半遮光部を使用していることに起因して、所定の寸法のマスクパターンにおいてはサイドローブ現象が顕著に発生する。しかし、そのような条件にあるマスクパターンに対しては、前述のように、半遮光部による残存光強度と釣り合う位相シフターを任意に挿入できるマスクパターンとなるため、図22に示すように、例えばマスクパターンの中心にサイドローブ低減用位相シフターを挿入すればよい。この場合、マスクパターンにおける位相シフターの配置だけを見ると、同じマスクパターンに対して輪郭強調法と中心線強調法とが同時に適用された状態となる。また、サイドローブ現象が最大になる寸法よりも十分に大きい寸法のマスクパターンにおいては、マスクパターン中心にサイドローブ低減用位相シフターを挿入するか否かは任意に決められる。尚、図22に示す例では、マスクパターンの寸法が十分に大きい場合、サイドローブ低減用位相シフターの挿入を省略するものとして扱っている。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るフォトマスク及びその作成方法について図面を参照しながら説明する。
図23は、第4の実施形態に係るフォトマスク、具体的には、本発明の中心線強調法を実現するためのラインパターン形成用マスク部分と、本発明の輪郭強調法を実現するためのコンタクトパターン形成用マスク部分(マスクパターンによって透光部(開口部)が囲まれている)とを有するフォトマスクの平面図である。また、図24(a)〜(f)はそれぞれ、図23におけるAA’線の断面図を示している。すなわち、図23に示すような平面構成を有するフォトマスクの実現方法としては、基本的に、図24(a)〜(f)に示す6つのタイプがある。但し、図24(a)〜(f)に示す断面構成は基本タイプであって、これらを組み合わせた断面構成を有するフォトマスクも実現可能である。以下、図24(a)〜(f)に示す基本タイプのフォトマスクの作成方法について説明する。
図24(a)に示すタイプにおいては、透過性基板10におけるマスクパターン形成領域の上に、透光部を基準として露光光を反対位相で透過させる第1の位相シフター膜11が形成されている。また、第1の位相シフター膜11における半遮光部形成領域の上に、第1の位相シフター膜11を基準として露光光を反対位相で透過させる第2の位相シフター膜12が形成されている。これによって、第2の位相シフター膜12と第1の位相シフター膜11との積層構造よりなる半遮光部が形成されると共に、第1の位相シフター膜11の単層構造よりなる位相シフターが形成される。この第2の位相シフター膜12と第1の位相シフター膜11との積層構造よりなる半遮光部は、透光部を基準として露光光を同位相で透過させる。つまり、図24(a)に示すタイプにおいては、透光部を透過する光を基準として、透過する光の位相をそれぞれ反転させる位相シフター膜の積層膜を加工することによって、位相シフターと半遮光部とから構成される所望のマスクパターンが実現されている。また、位相シフター膜の積層膜によって、露光光の一部分を透過させる透過率を有する半遮光部が実現されている。
図24(b)に示すタイプにおいては、透過性基板20における半遮光部形成領域の上に、露光光の一部分を透過させる透過率を持ち且つ透光部を基準として露光光を同位相で透過させる半遮光膜21が形成されている。すなわち、半遮光膜21よりなる半遮光部が形成されている。また、透過性基板20における位相シフター形成領域を所定の厚さだけ掘り下げることにより、透光部を基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフターが形成されている。すなわち、図24(b)に示すタイプにおいては、透光部と比べてほとんど位相差を生じない半遮光膜21と、透過性基板20の掘り込み部分とを組み合わせることによって、半遮光部と位相シフターとから構成される所望のマスクパターンが実現されている。
図24(c)に示すタイプにおいては、透過性基板30における半遮光部形成領域の上に、位相シフターを基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフター膜31が形成されている。また、透過性基板30における透光部形成領域が所定の厚さだけ掘り下げられ、それにより、位相シフターを基準として露光光を反対位相で透過させる透光部が形成されている。すなわち、図24(c)に示すタイプにおいては、これまで透光部と定義してきた部分が透過率の高い位相シフターと置き換えられ、位相シフターと定義してきた部分が透光部と置き換えられ、半遮光部と定義してきた部分が、露光光の一部分を透過させる透過率を有する位相シフターと置き換えられたフォトマスクが実現されている。このとき、図24(c)に示すフォトマスクの各構成要素間の相対位相差の関係は、図24(a)、図24(b)及び図24(d)〜(f)のそれぞれに示す他のタイプのフォトマスクと同じである。
図24(d)に示すタイプにおいては、透過性基板40における半遮光部形成領域の上に、露光光の一部分を透過させる透過率を持ち且つ透光部を基準として露光光を同位相で透過させる薄膜化された遮光膜41が形成されている。すなわち、遮光膜41よりなる半遮光部が形成されている。また、透過性基板40における位相シフター形成領域を所定の厚さだけ掘り下げることにより、透光部を基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフターが形成されている。ここで、通常の金属膜を薄膜化することによっても、露光光の一部分を透過させる透過率を有する遮光膜41を形成できる。遮光膜41を透過する光は、遮光膜41が薄膜化されているため、位相変化は僅かである。尚、半遮光部を透過する光の位相が、透光部を透過する光に対して位相差を有すると、半遮光部を用いたマスクパターンによって形成される光の像において僅かに焦点位置がずれる。しかし、この位相差が30度程度までであれば、焦点位置のずれに対する影響は皆無に等しい。よって、遮光膜41として、薄膜化した金属膜等を用いることにより、透光部を基準としてほぼ同じ位相の光を弱く透過させる半遮光部を実現できる。すなわち、図24(d)に示すタイプにおいては、図24(b)に示すタイプと同様の効果が得られる。また、透光部を比べてほとんど位相差を生じない半遮光膜として、薄膜化された遮光膜を代用できるので、位相制御用の透過性厚膜を使用することなく、位相シフターと半遮光部とから構成される所望のマスクパターンを簡単に実現できる。
図24(e)に示すタイプにおいては、透過性基板50におけるマスクパターン形成領域の上に、露光光の一部分を透過させる透過率を持ち且つ透光部を基準として露光光を同位相で透過させる半遮光膜51が形成されている。また、半遮光膜51における位相シフター形成領域を所定の厚さだけ掘り下げることにより、透光部を基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフターが形成されている。言い換えると、半遮光膜51の非掘り下げ部分よりなる半遮光部が形成されていると共に半遮光膜51の掘り下げ部分よりなる位相シフターが形成されている。すなわち、図24(e)に示すタイプにおいては、透光部を透過する光を基準として透過する光の位相を反転させる位相シフターを、半遮光膜51の掘り下げ部分を用いて作成することにより、位相シフターと半遮光部とから構成される所望のマスクパターンが実現される。
図24(f)に示すタイプにおいては、透過性基板60におけるマスクパターン形成領域の上に、露光光の一部分を透過させる透過率を持ち且つ透光部を基準として露光光を同位相で透過させる半遮光膜61が形成されている。また、半遮光膜61における位相シフター形成領域の上に、透光部を基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフター膜62が形成されている。これによって、半遮光膜61の単層構造よりなる半遮光部が形成されると共に、半遮光膜61と位相シフター膜62との積層構造よりなる位相シフターが形成される。すなわち、図24(f)に示すタイプにおいては、半遮光膜61の上に位相シフター膜62を積層することによって、位相シフターと半遮光部とから構成される所望のマスクパターンが実現される。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係るパターン形成方法、具体的には第1〜第4の実施形態のいずれかに係るフォトマスク(以下、本発明のフォトマスク)を用いたパターン形成方法について図面を参照しながら説明する。前述のように、本発明のフォトマスク、つまり輪郭強調法又は中心線強調法が成り立つように作成されたフォトマスクを用いて露光を行なうことにより、微小パターンの形成が可能となる。また、例えば、図23に示すようなフォトマスクに対して露光を行なってウェハ上にパターンの縮小転写を行なう場合、輪郭強調法の原理及び中心線強調法の原理で説明したように、輪郭強調法を実現するマスク部分(輪郭強調マスク)についても中心線強調法を実現するマスク部分(イメージ強調マスク)についても斜入射露光を行なうことによって、コントラストの高い像を形成できる。また、これによって、フォーカス変動に対してパターン寸法が変動しにくいパターン形成を実現できる。
図25(a)〜(d)は、本発明のフォトマスクを用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図25(a)に示すように、基板100上に、金属膜又は絶縁膜等の被加工膜101を形成した後、図25(b)に示すように、被加工膜101の上に、ポジ型のレジスト膜102を形成する。
次に、図25(c)に示すように、本発明のフォトマスク、例えば、図24(a)に示すタイプのフォトマスク(但し図25(c)ではコンタクトパターン形成用マスク部分のみを図示している)に対して露光光103を照射し、該フォトマスクを透過した透過光104によってレジスト膜102を露光する。尚、図25(c)に示す工程で用いるフォトマスクの透過性基板10上には、第1の位相シフター膜11と第2の位相シフター膜12との積層構造よりなる半遮光部と、第1の位相シフター膜11の単層構造よりなる位相シフターとからなるマスクパターンが設けられている。このマスクパターンは、所望のパターン(レジスト除去パターン)と対応する開口部(透光部)を囲んでいる。すなわち、図25(c)に示す露光工程では、この輪郭強調法を実現するフォトマスクを介して、斜入射露光光源を用いてレジスト膜102に対して露光を行なう。このとき、低い透過率を有する半遮光部がマスクパターンに用いられているため、レジスト膜102の全体が弱いエネルギーで露光される。しかし、図25(c)に示すように、現像工程でレジストが溶解するに足りる露光エネルギーが照射されるのは、レジスト膜102におけるフォトマスクの開口部と対応する潜像部分102aのみである。
次に、図25(d)に示すように、レジスト膜102に対して現像を行なって潜像部分102aを除去することにより、レジストパターン105を形成する。このとき、図25(c)に示す露光工程において、開口部とそれを囲む領域との間の光強度分布のコントラストが高いため、潜像部分102aとそれを囲む領域との間のエネルギー分布も急激に変化するので、シャープな形状を有するレジストパターン105が形成される。
以上に説明したように、第5の実施形態によると、パターン形成に、半遮光部と位相シフターとから構成されるマスクパターンを有する本発明のフォトマスクを用いる。ここで、該フォトマスクの透光部の近傍には輪郭強調法に従って位相シフターが配置されており、マスクパターンにおける所定の寸法以下で透光部に挟まれた領域には中心線強調法に従って位相シフターが配置されている。このため、透光部の周辺部又はマスクパターンの微小幅部分における光強度分布のコントラストをパターンの疎密に関わらず斜入射露光によって強く強調できる。よって、本発明のフォトマスクを用いて、レジストが塗布された基板に対して露光を行なうことにより、微細なレジストパターンの形成が可能となる。また、このフォトマスクに対して斜入射照明を用いて露光を行なうことによって、フォーカス変動に対してパターン寸法の変動が生じにくい微小パターン形成が可能となる。
尚、第5の実施形態において、輪郭強調法が成り立つフォトマスクを用いた露光をポジ型レジストプロセスにおいて実施する場合を例として説明を行なったが、言うまでもなく本発明はこれに限られるものではない。すなわち、中心線強調法が成り立つフォトマスク、若しくは輪郭強調法と中心線強調法とが成り立つフォトマスクを用いた露光をポジ型レジストプロセスにおいて実施してもよい。或いは、輪郭強調法及び中心線強調法の少なくとも一方が成り立つフォトマスクを用いた露光をネガ型レジストプロセスにおいて実施してもよい。ここで、ポジ型レジストプロセスを用いる場合、露光光を照射されたポジ型レジスト膜を現像して、ポジ型レジスト膜におけるマスクパターンと対応する部分以外の他の部分を除去することにより、マスクパターン形状のレジストパターンを形成できる。また、ネガ型レジストプロセスを用いる場合、露光光を照射されたネガ型レジスト膜を現像して、ネガ型レジスト膜におけるマスクパターンと対応する部分を除去することにより、マスクパターン形状の開口部を有するレジストパターンを形成できる。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係るフォトマスク及びそのマスクデータ作成方法について図面を参照しながら説明する。尚、以下に説明するマスクデータ作成方法はいずれも、本発明の中心線強調法又は本発明の輪郭強調法によって位相シフターが挿入されたマスクパターンから、パターン転写時にパターン形状が変形しやすい所定の形状部分を抽出し、該形状部分が所望の形状となるように位相シフターの挿入、変形又は消去を行なうものである。すなわち、本実施形態のマスクデータ作成方法を、例えば第3の実施形態に係るマスクデータ作成方法と組み合わせて実施することにより、パターン線幅又はパターン間隔の微細化に加えて、所望の形状を有するパターンの形成が可能となる。
具体的には、パターン転写時にパターン形状が変形しやすい形状部分として、例えば図26(a)に示すような、所定寸法よりも細いラインパターンの端部がある。通常、このようなラインパターンと対応するマスクパターンの端部は遮光効果が悪いので、パターン形成時にはラインの長さが減少する。これは、ライン端部の後退と呼ばれる現象である。このようなライン端部が後退する現象に対して、単純にマスクパターンの長さを伸ばして変形補償することもできる。また、パターン形成時にライン長を露光量変動やフォーカス変動に対して安定させる別の方法として、マスクパターンのライン端幅を太くする方法がある。これは通常の完全遮光膜よりなるマスクパターンを用いた方法でも行われている方法であって、ライン端を太くした形状はハンマーヘッドパターンと呼ばれている。本発明の中心線強調法によれば、マスクパターンにおける遮光効果が減少する部分にさらに大きな位相シフターを挿入することによって遮光効果を向上させることができる。すなわち、マスクパターンにおいて、ライン中央よりも遮光効果が劣化するライン端で、より太い位相シフターを用いることによって高い遮光性を実現できる。よって、図26(a)に示すように、ライン端を位相シフターよりなるハンマーヘッドパターンに変形してもよい。
図26(a)に示す変形補償方法に代えて、さらに汎用性の高い変形補償方法として、図26(b)に示すように、ライン端に対して輪郭強調法を応用することもできる。具体的には、ラインパターンを形成するためのマスクパターンに対して、その両端から所定の距離以内の領域におけるライン方向と平行な周辺部に位相シフターを配置する。このようにすると、ラインパターンが孤立して存在する場合には、ライン端部の特性がハンマーヘッドパターンの特性とほぼ同じものとなる。
ところで、図26(b)に示す方法によれば、ラインパターンの端が他のパターンと近接して存在する場合、両パターン間のスペース形成において特にMEEFの低減に格別の効果があり、それによりパターンブリッジ等の致命的なパターン変形を防ぐために非常に優れた効果が得られる。以下、ラインパターンの端部が他のパターンと近接する場合における変形補償方法について説明する。
まず、図26(c)に示すように、ラインパターンの端同士が近接する場合、各ラインパターンを形成するためのマスクパターンにおける各ライン端の変形を行なう。このような場合にはライン端同士がブリッジしないように且つライン端間のスペースが最小になるようにパターン形成を行なう必要がある。本発明の図26(c)に示す変形補償方法を用いることによって、同じ目標パターン寸法におけるMEEFの値が大幅に低減されている。
次に、図26(d)に示すように、一のラインパターンの端と、中心線強調法が適用されるくらい細い他のラインパターンとが近接する場合、一のラインパターンを形成するための一のマスクパターンにおけるライン端の変形方法は図26(b)と同様である。一方、他のラインパターンを形成するための他のマスクパターンに対しては、一のマスクパターンの近傍部分における一のマスクパターン側の端から所定寸法以内に配置された位相シフターを半遮光部に変更する。このとき、他のマスクパターンの中心線上に挿入された位相シフターにおける一のマスクパターンの近傍部分のみを、一のマスクパターンの反対側の端に移動させてもよい。図26(d)に示す場合は、位相シフターの所定部分を半遮光部に変更した例である。この場合、結果的には位相シフターの幅を縮小したようになる。本発明の図26(d)に示す変形補償方法を用いることによって、同じ目標パターン寸法におけるMEEFの値が大幅に低減される。
次に、図26(e)に示すように、一のラインパターンの端と、輪郭強調法が適用されるくらい太い他のラインパターンとが近接する場合、一のラインパターンを形成するための一のマスクパターンにおけるライン端の変形方法は図26(b)と同様である。一方、他のラインパターンを形成するための他のマスクパターンに対しては、一のマスクパターンの近傍部分に配置された位相シフターを半遮光部に変更する。このとき、他のマスクパターンにおいて、一のマスクパターンの近傍部分に配置された位相シフターをより内側に移動させてもよい。図26(e)に示す場合は、他のマスクパターンにおいて位相シフターの所定部分をより内側に移動させた例であるが、この場合の効果は、位相シフターの所定部分を半遮光部に変更した場合と実質的に同じである。本発明の図26(e)に示す変形補償方法を用いることによって、同じ目標パターン寸法におけるMEEFの値が大幅に低減される。
以上のように、図26(a)〜(e)に示す本実施形態の変形補償方法が適用されたマスクパターンを用いてパターン形成を行なうと、MEEFが大幅に低減されるため、マスク作成時の寸法誤差に対するマージンを小さくできるので、より微細なパターンの形成が可能となる。
尚、パターン転写時にパターン形状が変形しやすい形状部分としては、前述のようなラインパターンの端部の他にも、例えば図27(a)に示すような、中心線強調法が適用されるくらい細いラインから構成されたL型コーナーパターンがある。この場合の変形補償方法としては、図27(a)に示すように、マスクパターンにおけるL型コーナーの屈曲点(マスクパターンの輪郭線が折れ曲がっている箇所)から所定の寸法以内の領域に、中心線強調用の位相シフターに代えて半遮光部を配置する。このとき、該領域の中心線強調用の位相シフターの寸法を縮小してもよい。また、マスクパターンにおけるL型コーナーの外側の周縁部に、コーナー強調用の位相シフターを配置してもよい。尚、コーナー強調用の位相シフターは輪郭強調用の位相シフターと同じように見えるが、コーナー強調のために、輪郭強調用の位相シフターが本来配置される位置よりも若干外側に配置されるものである。一方、図27(b)に示すような、輪郭強調法が適用されるくらい太いラインから構成されたL型コーナーパターンの場合、マスクパターンの周縁部におけるL型コーナーの内側の屈曲点から所定の寸法以内の領域に輪郭強調用の位相シフターに代えて半遮光部を配置する。このとき、該領域の輪郭強調用の位相シフターの寸法を縮小してもよい。また、マスクパターンの周縁部におけるL型コーナーの外側の屈曲点から所定の寸法以内の領域に、輪郭強調用の位相シフターに代えて前述のコーナー強調用の位相シフターを配置してもよい。
図27(a)及び(b)に示す変形補償方法は、マスクパターンにおける遮光効果が強いコーナー内側の強調パターン(位相シフター)を消去すると共に、マスクパターンにおける遮光効果の弱いコーナー外側の強調パターンを変形するものである。図27(a)及び図27(b)に示す本実施形態の変形補償方法によって、目的とするパターン形状に近い形状が得られる。その理由は、マスクパターンにおける遮光性が過剰となるコーナー部から位相シフターが除去されているために、遮光バランスが改善されるからである。
また、パターン転写時にパターン形状が変形しやすい形状部分の他の例として、例えば図27(c)に示すような、中心線強調法が適用されるくらい細いラインから構成されたT型コーナーパターンがある。この場合の変形補償方法としては、図27(c)に示すように、マスクパターンにおけるT型コーナーの屈曲点から所定の寸法以内の領域に、中心線強調用の位相シフターに代えて半遮光部を配置する。このとき、該領域の中心線強調用の位相シフターの寸法を縮小してもよい。また、マスクパターンの周縁部におけるT型コーナーの分岐の反対側に輪郭強調用の位相シフターを配置してもよい。一方、図27(d)に示すような、輪郭強調法が適用されるくらい太いラインから構成されたT型コーナーパターンの場合、マスクパターンの周縁部におけるT型コーナーの屈曲点から所定の寸法以内の領域に、輪郭強調用の位相シフターに代えて半遮光部を配置する。このとき、該領域の輪郭強調用の位相シフターの寸法を縮小してもよい。また、マスクパターンの周縁部におけるT型コーナーの分岐の反対側に、輪郭強調用の位相シフターに代えてコーナー強調用の位相シフターを配置してもよい。
図27(c)及び(d)に示す変形補償方法は、マスクパターンにおける遮光効果が強いコーナー内側の強調パターンを消去すると共に、マスクパターンにおける遮光効果の弱いコーナー外側の強調パターンを変形するものである。図27(c)及び図27(d)に示す本実施形態の変形補償方法によって、目的とするパターン形状に近い形状が得られる。その理由は、マスクパターンにおける遮光性が過剰となるコーナー部から位相シフターが除去されているために、遮光バランスが改善されるからである。
さらに、パターン転写時にパターン形状が変形しやすい形状部分の他の例として、例えば図27(e)に示すような、中心線強調法が適用されるくらい細いラインから構成されたクロス型コーナーパターンがある。この場合の変形補償方法としては、図27(e)に示すように、マスクパターンにおけるクロス型コーナーの屈曲点から所定の寸法以内の領域に、中心線強調用の位相シフターに代えて半遮光部を配置する。このとき、該領域の中心線強調用の位相シフターの寸法を縮小してもよい。一方、図27(f)に示すような、輪郭強調法が適用されるくらい太いラインから構成されたクロス型コーナーパターンの場合、マスクパターンの周縁部におけるクロス型コーナーの屈曲点から所定の寸法以内の領域に、輪郭強調用の位相シフターに代えて半遮光部を配置する。このとき、該領域の輪郭強調用の位相シフターの寸法を縮小してもよい。
図27(e)及び(f)に示す変形補償方法は、マスクパターンにおける遮光効果が強いコーナー内側の強調パターンを消去するものである。図27(e)及び図27(f)に示す本実施形態の変形補償方法によって、目的とするパターン形状に近い形状が得られる。その理由は、マスクパターンにおける遮光性が過剰となるコーナー部から位相シフターが除去されているために、遮光バランスが改善されるからである。
以上に説明したように、第6の実施形態によると、半遮光部と位相シフターとを有するマスクパターンにおいて、所定の幅以下の部分には中心線強調法に従って位相シフターを配置すると共に、所定の幅を越える部分には輪郭強調法に従って位相シフターを配置する。このため、任意の形状のマスクパターンによって露光時に非常にコントラストの強い像を形成できる。よって、このようなマスクパターンが設けられたフォトマスクを用いて、レジストが塗布された基板に対して露光を行なうことによって、微細なレジストパターンの形成が可能となる。また、このフォトマスクに対して斜入射照明を用いて露光を行なうことによって、フォーカス変動に対してパターン寸法の変動が生じにくい微小パターン形成が可能となる。
また、第6の実施形態によると、マスクパターンにおけるコーナー部分の内側等のように、通常の完全遮光パターンでは遮光効果が強くなりすぎる部分においても、半遮光部を用いることにより遮光効果を低減できる。すなわち、マスクパターンにおける遮光効果が過剰となる部分に、単純に中心線強調法又は輪郭強調法に従って遮光効果強調用の位相シフターを挿入してしまうことをしなければ、不要な遮光効果の発生を防止できる。従って、この効果を利用して、位相シフターの挿入を制限することにより、任意形状のパターンを目的の形状通りに作成することが容易になる。
尚、第6の実施形態において、輪郭強調法又は中心線強調法が成り立つフォトマスクを用いた露光をポジ型レジストプロセスにおいて実施する場合を例として説明を行なったが、言うまでもなく本発明はこれに限られるものではない。すなわち、輪郭強調法及び中心線強調法の少なくとも一方が成り立つフォトマスクを用いた露光をポジ型レジストプロセスにおいて実施してもよい。或いは、輪郭強調法及び中心線強調法の少なくとも一方が成り立つフォトマスクを用いた露光をネガ型レジストプロセスにおいて実施してもよい。ここで、ポジ型レジストプロセスを用いる場合、露光光を照射されたポジ型レジスト膜を現像して、ポジ型レジスト膜におけるマスクパターンと対応する部分以外の他の部分を除去することにより、マスクパターン形状のレジストパターンを形成できる。また、ネガ型レジストプロセスを用いる場合、露光光を照射されたネガ型レジスト膜を現像して、ネガ型レジスト膜におけるマスクパターンと対応する部分を除去することにより、マスクパターン形状の開口部を有するレジストパターンを形成できる。