JP2006076854A - 抗菌性ガラス微小球およびその製造方法 - Google Patents

抗菌性ガラス微小球およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、粉砕工程が必要なく、分散性に優れたガラス微小球を得ることができるとともに、抗菌性能を長期間にわたって持続できる抗菌性ガラス微小球およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の抗菌性ガラス微小球は、抗菌性金属を含有し、平均粒径が1.0μm以下の抗菌性ガラス微小球であって、温水浸漬処理とその後の乾燥を3回繰り返しても、大腸菌を用いた液体培地希釈法において800ppm以下の最小発育阻止濃度を示すことを特徴とし、また、本発明の抗菌性ガラス微小球の製造方法は、金属M化合物と抗菌性金属化合物の水溶液をpH6.5〜7.0に調整してから加水分解性の有機ケイ素化合物を添加して攪拌する工程、アルカリ触媒を添加してpH12〜13に調整して攪拌する工程、焼成する工程を有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌性ガラス微小球およびその製造方法に関するものである。
近年、台所廻りの雑貨、医療器具、衣料品等に、雑菌が繁殖しないように抗菌性を有する樹脂や合成繊維が使用されている。このような樹脂は、樹脂に粉末または繊維状の抗菌性を有するガラス(抗菌性ガラス)を練り込んで作製される。抗菌性ガラスには、抗菌性を有する金属(抗菌性金属)が含まれており、抗菌性ガラスから抗菌性金属が溶出することによって抗菌性を発現している。
抗菌性ガラスの製造方法の一つとして、ゾル−ゲル法が知られている。(例えば、特許文献1、2参照。)。ゾル−ゲル法とは、ガラス形成酸化物の原料としてテトラエチルオルトシリケート、アルミニウムイソプロポキシド等の金属アルコキシド化合物を用い、これを加水分解してゲル体を調整した後、焼成してガラスを製造する方法である。
特許文献1、2には、加水分解性の有機ケイ素化合物、金属Mを含有する加水分解性の化合物(ただし、Mは酸化物となったときにその価数が配位数よりも少ない金属原子を示し、具体的にはAl、La、Y、Ti、Zr、Nb、Taなどを指す。)、抗菌性金属化合物、触媒および水を混合してゲル化させた後、焼成する方法が開示されている。これらの方法を用いて作製した抗菌性ガラスは、抗菌性金属がイオンの状態で分散してガラス中に存在し、ガラスが着色せず緻密で安定である。
特許文献1に記載の方法では、酸触媒を用いるため、バルク体として抗菌性ガラスを得ることができる点と、バルクの中心から表面に至るまで均一に抗菌性金属イオンが分散している点で優れている。しかし、この方法で作製された抗菌ガラスを樹脂に練り込むためには、粉砕工程が必要となりコストが高くなるとともに、粒子径のばらつきが大きくなりやすい。
また、特許文献2に記載の方法は、アルカリ触媒を用いるため、粉砕工程を経ることなくゲルからガラス微粒子が得られる点と、ガラス微粒子のうち抗菌性能に最も寄与する表面層にのみ抗菌性金属を存在させることができる点において優れている。しかし、この方法では、ガラス微粒子の粒子径のばらつきが大きく、また凝集も起こりやすいため安定した抗菌性能が得られにくかった。
そこで、粉砕工程が必要なく、粒子径のばらつきの小さいガラス微小球を得ることができるとともに、粒子の分散性に優れた抗菌性ガラス微小球の作製方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法は、加水分解性の有機ケイ素化合物と、金属Mを含有する加水分解性の化合物とを混合攪拌した後に、抗菌性金属とアルカリ触媒を一緒に添加し、焼成して抗菌性ガラスを作製するものである。
特開平9−110463号公報 特開2001−97735号公報 特開2003−206139号公報
しかし、特許文献3に記載の方法で作製した抗菌性ガラスは、抗菌性能を長期間にわたって保てないことがわかった。
本発明の目的は、粉砕工程が必要なく、分散性に優れたガラス微小球を得ることができるとともに、抗菌性能を長期間にわたって持続できる抗菌性ガラス微小球およびその製造方法を提供することである。
特許文献3に記載の方法で作製した抗菌性ガラスは、ケイ素と金属Mとが酸素原子を介して形成するガラスネットワークが密であり、抗菌性金属がガラスネットワーク中に均一に分散しにくい。そのため、抗菌性ガラスから抗菌性金属が最初は急速に溶出するが、その後溶出しにくくなることによって抗菌性能が維持できなくなるものと、本発明者等は考えた。そこで、ガラスネットワーク中に均一に金属Mと抗菌性金属を分散させることによって上記した問題を解決できることを見いだし、本発明として提案するものである。
つまり、金属M化合物および抗菌性金属の水溶液のpHを6.5〜7.0に調整してから加水分解性の有機ケイ素化合物を添加して、ガラスネットワークを形成した後、アルカリ触媒を添加することによって、抗菌性金属が均一に分散した、凝集しにくい微小球を作製できることを突き止めた。
本発明の抗菌性ガラス微小球は、抗菌性金属を含有し、平均粒径が1.0μm以下の抗菌性ガラス微小球であって、温水浸漬処理とその後の乾燥を3回繰り返しても、大腸菌を用いた液体培地希釈法において800ppm以下の最小発育阻止濃度を示すことを特徴とする。
また、本発明の抗菌性ガラス微小球の製造方法は、金属M化合物と抗菌性金属化合物の水溶液をpH6.5〜7.0に調整してから加水分解性の有機ケイ素化合物を添加して攪拌する工程、アルカリ触媒を添加してpH12〜13に調整して攪拌する工程、焼成する工程を有することを特徴とする。
本発明の抗菌性ガラス微小球は、分散性に優れるとともに、抗菌性能を長期間にわたって持続することができる。
すなわち、温水浸漬処理とその後の乾燥を3回繰り返した抗菌性ガラス微小球であっても大腸菌において抗菌性能規格基準である800ppm以下とすることができるため十分な抗菌性能を発揮できる。
また、ガラスネットワーク中に、抗菌性金属が均一にイオン化して存在するため、抗菌性金属が長期間にわたって徐々に溶出して抗菌性を維持できる。
なお、温水浸漬処理は、抗菌性ガラスを0.1g、蒸留水を20mlポリプロピレン製の容器に封入し、容器を60℃に設定した恒温漕に入れて回転頻度100rpmで振動しながら温水中に6時間浸漬する。また、乾燥は、前記容器を恒温漕より取り出し、遠心分離器を用いて、抗菌性ガラスを取り出し、120℃で抗菌性ガラスを乾燥する。
本発明の抗菌性ガラス微小球の作製方法について説明する。
まず、金属M化合物、抗菌性金属化合物および加水分解性の有機ケイ素化合物を用意する。
金属Mは、酸化物となったときにその酸化数(n)が配位数(z)よりも少ない金属原子を示し、具体的にはAl、La、Y、Ti、Zr、Nb、Taなどが挙げられるが、特にAlであると安価であるとともに抗菌性ガラス微小球の化学耐久性が高まるため好ましい。
金属M化合物としては、硝酸アルミニウム9水和物等の水溶性アルミニウム化合物が好適である。
抗菌性金属としては、Ag、Cu、Znなどが挙げられるが、特にAgであると抗菌性に優れるとともに安全性(無害性)が高いため好ましい。
抗菌性金属化合物としては、硝酸銀、リン酸銀、硝酸銅(I)、硝酸亜鉛等が使用可能
である。
加水分解性の有機ケイ素化合物としては、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、γ−グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が使用可能であるが、特にTEOSであると抗菌性ガラス微小球の化学耐久性が高まるため好ましい。
なお、加水分解性の有機ケイ素化合物とは、水と反応して(加水分解して)Si−OHの部分を有する化合物となり、2つのSi−OHの部分が縮重合してSi−O−Siというシロキサン結合を形成できるものを指す。
原料として好ましい配合比は、Siの原子数を1とするとき、金属Mの原子数の割合が0.001〜0.5であり、抗菌性金属の原子数の割合が0.001〜0.1である。
金属Mの原子数の割合が0.001より少ないと、抗菌性金属を多く保持できないため抗菌性が得られにくい傾向がある。一方、0.5より大きいと、抗菌性金属が溶出しにくくなる傾向があるため好ましくない。
抗菌性金属の原子数の割合が0.001より少ないと、抗菌性が得られにくい傾向がある。一方、0.1よりも多いと、抗菌性金属が凝集してコロイド粒子を形成し、着色しやすい傾向がある。
次に、金属M化合物および抗菌性金属化合物を水に添加し、水溶液を作製する(溶液1)。水は、水道水であってもよいが、蒸留水や脱イオン水の方が好ましい。
原子比{M/(抗菌性金属)}≧1であると、抗菌性金属をガラス中にイオンの状態で安定に存在できるため好ましい。
続いて、溶液1のpHを6.5〜7.0に調整した後、有機ケイ素化合物を添加して0.5〜5時間攪拌する(溶液2)。有機ケイ素化合物が水に溶けにくい場合は、エタノールやメタノールのように水に溶けやすい有機溶媒に溶かして溶液1に添加する。なお、pHの調整には、アンモニア水や酢酸のような弱アルカリ性または弱酸性で抗菌性ガラス微小球に残留しにくい試薬を使用することが好ましい。
通常、金属M化合物と抗菌性金属化合物とが溶解した水溶液は、pH2〜3の酸性溶液になる。この状態で、加水分解性の有機ケイ素化合物を添加すると、有機ケイ素化合物の加水分解反応および、縮重合反応が促進されてガラスネットワークが連続的になり、微小球が生成しにくくなる。そこで、加水分解性の有機ケイ素化合物を添加する前に、アルカリ性の試薬を用いて、pHを6.5〜7.0にする必要がある。
pHが6.5よりも低い、または7.0よりも大きいとこの時点で縮重合反応が進みすぎ、分散した微小球が得られにくい傾向がある。
攪拌時間が0.5時間よりも短いと十分に縮重合反応できず、5時間よりも長いと縮重合反応が進行して、後のアンモニア添加を行なっても分散した微小球が得られにくい傾向がある。
また、有機ケイ素化合物の加水分解および縮重合過程で金属Mも抗菌性金属イオンもゲル中に均一に存在する。ゲル中に含まれる金属Mは、酸化数(n)が配位数(z)よりも少ないので、負電荷を帯びたz個の配位子(酸素原子)がn+の電荷を有する金属Mの周囲に存在するため、金属Mの周囲は負の電荷を帯び、正の電荷を有する抗菌性金属イオンがカウンターイオンとなって電荷が相殺され安定に存在できる。従って、焼成しても抗菌性金属をイオンの状態で均一にしかも安定に分散させることができる。そのため、抗菌性金属がコロイド化せずガラスが着色しない。
さらに、溶液2にアルカリ触媒を添加してpH12〜13に調整して15〜40時間攪拌する(溶液3)。
pHが12よりも低いと微小球化するのに十分な電気量が帯電しにくい傾向があり、一方、pHが13よりも高いと逆に凝集を起こしやすい傾向があるため好ましくない。
また、攪拌時間が15時間よりも短いと均一な粒径にしにくい傾向があり、一方、40時間よりも長いと溶液中で粒同士の凝集が起こりやすい傾向があるため好ましくない。
アルカリ触媒としては、アンモニア、KOH、NaOH、トリエチルアミン等が使用可能であるが、特にアンモニアであると抗菌性ガラス微小球中に触媒が残存しにくいため好ましい。なお、アンモニアは、アンモニア水として添加しても、アンモニアガスをバブリングしても良い。
アルカリ触媒を添加すると、触媒添加直後に生成したゲル微粒子の表面が負に帯電し、そのクーロン反発力により、微粒子同士の結合が抑制されるため、分散性に優れる。
最後に、遠心分離機を用いて溶液3から固形分を沈澱させ、分離した固形分を700〜900℃で0.5〜12時間焼成して抗菌性ガラス微小球を作製する。
焼成温度が700℃よりも低いとガラスネットワークが緻密化しにくいため、抗菌性金属のコロイドが生成してガラスが着色するとともに抗菌性が損なわれる傾向があり、900℃よりも高いとガラスネットワークが密になりすぎて、抗菌性金属が移動しにくいため抗菌性能を長期間にわたって維持できない傾向にある。
また、ガラス粒子の表面から抗菌性金属が溶出しても、粒子内部の抗菌性金属がイオン状態で安定であるとともに、ガラスネットワークが適度に緻密で抗菌性金属がイオン状態で拡散できるため、粒子表面からの抗菌性金属の溶出は緩やかで連続的である。このため長期間にわたって抗菌性能を維持できる。
このようにして得られる抗菌性ガラス微小球は、球状体でありほとんど凝集を起こしていない。抗菌性ガラスは通常、単独で使用されず、樹脂に練り込まれて繊維、プラスチック、フィルム等に加工して使用されるため、平均粒子径1.0μm以下と小さいと、繊維、プラスチック、フィルム等に加工した際、均一に分散させることができる。その結果、繊維、プラスチック、フィルム等内で抗菌性ガラスの濃度が均一となり、抗菌製品において所望の抗菌性能を得ることができる。
焼成時間が0.5時間よりも短いとガラス化させるには不十分であり、12時間よりも長いと凝集が起こりやすく、解砕が必要になるため好ましくない。
本発明の抗菌性ガラス微小球の製造方法は、同じ条件で作製された焼成前の固形分であっても、高い温度で焼成するとガラスネットワークが密になる傾向があり、低い温度で焼成するとガラスネットワークが密でなくなる傾向がある。そのため、抗菌性金属の溶出速度を焼成温度で制御することもできる。
本発明の抗菌性ガラス微粒子は、SiO2−Mxy系ガラスであり、原子数比{M/(抗菌性金属)}≧1であると、抗菌性金属がコロイド化しにくいため好ましい。
なお、原子数比{M/(抗菌性金属)}≦10であると、さらに好ましい。前記の値が10よりも大きいと抗菌性金属を保持できる部分が多数存在することになるため抗菌性金属が溶出しにくく、抗菌性が損なわれやすい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
表1に、実施例1〜3および比較例1、2の原料組成、平均粒径、比表面積を示す。
[実施例1]
まず、恒温漕中で30℃に保持したテフロン(登録商標)製容器に、蒸留水8.75g、エタノール43mlを入れた。その中に、硝酸アルミニウム9水和物を0.15g、硝酸銀を0.07g添加し、30分間攪拌することにより水溶液を作製した。この時のpHは2であったため、28%アンモニア水を用い、pHを約6.8に調整した。(水溶液A)
次に、30℃で保持したテフロン(登録商標)製容器に、エタノール43ml、テトラエトキシシラン(TEOS)8.44gを添加し、10分間攪拌して溶液Bを作製し、溶液Bを水溶液Aに添加して、1時間撹拌した(溶液C)。
続いて、溶液Cに、28%アンモニア水を300ml添加してpHを12とし、24時間撹拌を続けた。
最後に、遠心分離器で固形分と液相とを分離し、デカンテーションした後、固形分を60℃に設定した乾燥機内で1日乾燥させた後、800℃で2時間焼成し、白色粉末状のガラス試料を作製した。
[実施例2]
硝酸アルミニウム9水和物を0.30g用いた以外は実施例1と同様の方法でガラス試料を作製した。
[実施例3]
硝酸アルミニウム9水和物を0.45g、硝酸銀を0.21g用いた以外は実施例1と同様の方法でガラス試料を作製した。
[比較例1]
まず、恒温槽中で50℃に保持したテフロン(登録商標)製容器に溶媒としてエタノール60ml、蒸留水1.5gを入れ、TEOSを4.3g加え、密閉状態で10時間撹拌した(溶液D)。
次に、溶液Cに、アルミニウムトリイソプロポキシド[Al(OPr)3]を0.13g加え、さらに5時間撹拌した(溶液E)。
続いて、反応温度を室温に下げ、溶液Eに28%アンモニア水119ml、硝酸銀0.11gを添加し、さらに24時間撹拌を続けた。
最後に、遠心分離器で固形分と液相とを分離し、デカンテーションした後、固形分を50℃で1日乾燥させた後、1000℃で2時間焼成し、白色粉末状のガラス試料を作製した。
[比較例2]
700℃で2時間焼成した以外は比較例1と同様の方法でガラス試料を作製した。
平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製 SALD−2000J)を用いて測定し、屈折率には実数部は1.9、虚数部は0.05iを用いて算出した。
比表面積は、比表面積測定装置(島津製作所製 ASAP−2400)を用いて、ガラス試料を1000mg標準セルに採り、前処理として温度300℃で6時間脱ガス処理をして測定した。
(1)ガラス試料および銀の状態
作製したガラス試料がアモルファス状態かどうかと、ガラス試料中に銀がイオンとして存在しているかどうかを確認するために、粉末X線回折を測定した。
実施例1〜3および比較例1は、ガラスのハローパターンのみが観察でき、ガラス試料がアモルファス状態であることと、銀がイオンとしてガラス中に取り込まれていることが確認された。
一方、比較例2は、ガラス試料自体に着色が生じた。また、粉末X線回折を行うと、Agコロイドのピークが確認でき、Agがイオン状態で安定に担持できていないことが確認された。
(2)ガラスの化学耐久性およびAgの溶出性
作製したガラス試料の化学耐久性およびAgの徐放性を評価するために、以下の要領でガラス中から水中へのSiおよびAgの溶出量を調べた。
まず、作製したガラス試料を0.1g、蒸留水を20mlポリプロピレン製の容器に封入し、容器を37℃に設定した恒温漕に入れて100rpmで振動した。なお、1種類のガラス試料に対して5セット用意した。
振動を与えながらガラス試料を水中に1日、2日、3日、6日または13日間浸漬した後、容器を恒温漕より取り出し、濾過してガラス試料と水溶液とを分離し、前記溶液中のSiおよびAgの濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分析により測定した。図1に、時間に対するSi濃度変化のグラフであり、図2に、時間に対するAg濃度変化のグラフである。また、表2に、Agの溶出量を示す。
なお、溶出量は、単位表面積あたりに換算したものである。
図1より、実施例1〜3および比較例1では、Siの溶出量は浸漬時間が長くなるにつれて、ほぼ一定速度で増加し、13日後におけるSiの溶出量は2ppm以下であり、化学耐久性に優れていた。なお、同様にしてAlの溶出量について測定したところ、Alの溶出はほとんど確認できなかった。これは、ガラス表面で難溶性のアルミニウムの水和物を形成するためであると考えられる。
図2より、実施例1〜3および比較例1では、浸漬時間の増加とともにAgの溶出量は増加傾向にある。実施例1と2とを比較すると、ともにAgの含有量は同じであるが、Alの含有量の少ない実施例1の方がAgの溶出量が多い。これは、先にも述べているように、ガラス表面に難溶性のアルミニウムの水和物が形成され、Agの溶出を抑制しているためであると考えられる。また、Agの含有量の最も多い実施例3は、最も多くのAgを溶出していた。
また、比較例1は、浸漬時間が長くなるにつれて溶出量の増加傾向が弱まる傾向にある。これは、比較例1のガラスネットワークが密であるため、ガラス内部に存在する銀イオンの拡散が抑制されて、時間の経過とともにAgの溶出量が小さくなるものと考えられる。
(3)ガラスの初期抗菌性
作製したガラス試料の初期抗菌性について評価した。評価方法は液体培地希釈法による最小発育阻止濃度(MIC)法を用い、下記の手順で測定した。
まず、ミューラーヒントン(MHB)液体培地で大腸菌および黄色ブドウ球菌を調整した。(菌液:1.0〜5.0×104cfu/ml)
また、各ガラス試料を180℃で120分間加熱して滅菌処理した。
次に、MHB培地に6400ppmのガラス試料を添加し、それを基準にして順次に1/2倍希釈を行い、試料培地を調整した。
続いて、調整した菌液をそれぞれに希釈された試験培地にそれぞれ接種した。
最後に、菌液を接種した試料培地を35℃のウォーターバスに入れて、24時間振とう培養した。MIC法により作製したサンプルのMIC値を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例1〜3および比較例1は、800ppm以下であり抗菌性能規格基準を満たしていた。
一方、比較例2は、Agコロイドが析出しているため、Agイオンとして溶出せず抗菌性が低かった。
(4)ガラスの抗菌持続性
ガラス試料の抗菌持続性を以下の要領で評価した。
まず、ガラス試料を0.1g、蒸留水を20mlポリプロピレン製の容器に封入し、容器を60℃に設定した恒温漕に入れて回転頻度100rpmで振動した。なお、1種類のガラス試料に対して3セット用意した。
次に、振動を与えながらガラスを水中に6時間浸漬後、容器を恒温漕より取り出し、遠心分離を用いて、ガラスを取り出し、120℃でガラス試料を乾燥して処理回数1のガラス試料を作製した。
続いて、処理回数1のガラス試料に対して上記の処理を行ない、処理回数2のガラス試料を作製した。また、処理回数2のガラス試料に同様の処理を行なって処理回数3のガラス試料を作製した。
処理回数1〜3のガラス試料を用いて上記したMIC法に従って抗菌性を評価した。結果を表4に示す。なお、試験菌は大腸菌を用いた。
表4より、実施例1〜3は、処理回数によってMIC値が変化することなく、すべて400ppm以下であり抗菌性能規格基準を満たしていた。
一方、比較例1は、処理回数が多くなるにつれてMIC値が大きくなり、処理回数3では抗菌性能規格基準を満たしていなかった。上記したようにAgイオンの単位時間あたりの溶出量が時間とともに減少しているため、菌の増殖を抑制するために必要な量のAgイオンを溶出できなくなり、抗菌性が低下したものと考えられる。
本発明の抗菌性ガラス微小球は、良好な抗菌性能を発揮できるとともに、長期間にわたって抗菌性能を持続することができる。また、粒子径が小さくても凝集しないため、繊維、建材、フィルム、プラスチック、塗料、水の殺菌等の持続的に抗菌性が必要とされる用途に好適である。
Siの溶出量を示すグラフである。 Agの溶出量を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 抗菌性金属を含有し、平均粒径が1.0μm以下の抗菌性ガラス微小球であって、温水浸漬処理とその後の乾燥を3回繰り返しても、大腸菌を用いた液体培地希釈法において800ppm以下の最小発育阻止濃度を示すことを特徴とする抗菌性ガラス微小球。
  2. SiO2−Mxy系ガラスからなり、原子数比{M/(抗菌性金属)}≧1であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性ガラス微小球。
  3. 抗菌性金属がAgであることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性ガラス微小球。
  4. MがAlであることを特徴とする請求項2に記載の抗菌性ガラス微小球。
  5. 金属M化合物と抗菌性金属化合物の水溶液をpH6.5〜7.0に調整してから加水分解性の有機ケイ素化合物を添加して攪拌する工程、アルカリ触媒を添加してpH12〜13に調整して攪拌する工程、焼成する工程を有することを特徴とする抗菌性ガラス微小球の製造方法。
  6. 有機ケイ素化合物に含まれるSiの原子数を1とするとき、金属M化合物に含まれる金属Mの原子数が0.001〜0.5であり、抗菌性金属化合物に含まれる抗菌性金属の原子数が0.001〜0.1であることを特徴とする請求項5に記載の抗菌性ガラス微小球の製造方法。
  7. 抗菌性金属がAgであることを特徴とする請求項5または6に記載の抗菌性ガラス微小球の製造方法。
  8. 金属MがAlであることを特徴とする請求項6に記載の抗菌性ガラス微小球の製造方法。
  9. アルカリ触媒が、アンモニアであることを特徴とする請求項5に記載の抗菌性ガラス微小球の製造方法。
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