JP2006071365A - 低速陽電子ビーム装置 - Google Patents

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【課題】タングステンを減速材として用いた場合と同等又はそれ以上のビーム強度を有し、かつエネルギー分布の幅が狭い低速陽電子ビームを発生することができるタングステンに替わる減速材を用いた陽電子ビーム装置を提供する。
【解決手段】結晶化されたニッケルメッシュを減速材2として用いる。ニッケルメッシュは、直径1μm以上100μmニッケル単線からなることが好ましく、ニッケル単線は、酸溶液によるエッチングで線径を細くしたものであることが更に好ましい。
【選択図】図1

Description

低速陽電子パルスビームを用いた入射エネルギー可変・陽電子寿命測定法や飛行時間分析型・陽電子消滅励起オージェ電子分光法が開発され、固体表面及び表面近傍における欠陥、不純物、電子状態の分析に利用されている。
ここで、低速陽電子ビームとは、エネルギー数10keV以下でエネルギーのそろった(エネルギー幅の狭い)陽電子ビームをいう。
陽電子は放射性同位元素や加速器、原子炉などを用いて発生することができるが、これらの発生源から得られる陽電子のエネルギーは数100keV〜数MeV程度まで広く分布している。この高エネルギーの白色陽電子線から低エネルギーで単色の陽電子ビームを得るため、次のような手法が用いられる。まず、高エネルギーの陽電子線を固体媒質に入射する。陽電子は固体内の電子及び原子核との相互作用により数ピコ秒程度で熱エネルギー程度まで減速し、その後、固体内を熱拡散する。その一部は拡散により表面まで戻ってくる。ここで、固体内での陽電子の仕事関数が負の場合、表面に戻ってきた陽電子は仕事関数分のエネルギー(通常、数eV以下)を得て真空中に放出される。この再放出陽電子を電場で再加速することによりエネルギーのそろった低速陽電子ビームを得ることができる。
陽電子の減速に用いる固体材料を減速材(モデレーター)と呼ぶ。現在、一般的に用いられている減速材の材料はタングステンである。ただし、一般に市販されているタングステンの素材は、そのままでは陽電子の捕獲サイトとなる空孔欠陥を大量に含んでいるために、材料内での陽電子の拡散距離が短く、表面に戻ってくる確率は低い。また、表面に付着している酸化膜、炭化物などの不純物層も低速陽電子の捕獲サイトとなり再放出の妨げとなる。そのため、使用するタングステン材料は、加工後、真空中で約2000℃の高温熱処理を行ったものを使用する。熱処理により、結晶化が起こり内部の空孔欠陥が取り除かれると同時に表面に付着した不純物層も取り除かれる。タングステンの利点は、仕事関数が−3eVと大きく、再放出エネルギーが高いので、多少不純物が表面に吸着しても、効率がそれほど落ちないことである。そこで、通常、タングステン減速材の加熱処理は陽電子ビーム装置とは別の装置で行われ、加熱後、一度大気にさらされたものが陽電子ビーム装置に導入され、そのままの状態で使用される。
得られる低速陽電子の強度は、減速材の形状、陽電子源との配置にも強く依存する。減速材内部で熱化した陽電子が、拡散によってなるべく多く表面に戻ってくる構造にすることが重要である。タングステンの減速材を用いた従来の構造は、厚さ数μm以下の単結晶又は多結晶薄膜を透過させる構造(図1−a)、薄膜をブラインド状に並べる構造(図1−b)である。最近では、直径数10μm以下のタングステン細線から加工されたメッシュを複数枚重ねた構造(図1−c)が用いられる。メッシュ構造の利点は、体積に対して表面積の割合が大きく、拡散によって陽電子が表面に達しやすい構造となっていること、薄膜に比べて安価であることである。いずれの構造においても、高速陽電子から低速陽電子への変換効率(低速陽電子数/高速陽電子数)は通常10−4台である。
入射エネルギー可変・陽電子寿命測定や飛行時間分析型・陽電子消滅励起オージェ電子分光などの物性評価法では、低速陽電子ビームを短パルス化して使用する。低速陽電子ビーム装置としては、図2のような配置のものが用いられる。すなわち、陽電子源1から発生した高速陽電子を減速材2に入射する。減速材2内で熱化して再放出してきた陽電子を引出電極3を用いて再加速することによりエネルギーのそろった低速陽電子ビームを形成する。減速材及び低速陽電子を輸送するビームライン11は真空ポンプ12で10−6Torr以下の真空に排気され、ガス分子との衝突によるビーム損失を防いでいる。また、ビーム軸方向に静磁場がかけられており、低速陽電子は静磁場に絡みつくように旋回運動する。これによって減速材2から引き出されたほぼ全ての低速陽電子を試料6まで輸送することができる。
ビームラインの途中には、減速材で十分に熱化されずに透過してきた高速陽電子を排除するためのエネルギーフィルター4、及びパルスビームを形成するパルス化装置5が挿入される。パルス化装置5は、時間的に連続したビームから周期的に時間幅の短いビームを切り出すチョッパー及び切り出されたビームを圧縮してパルス幅をさらに短くするためのバンチャーで構成される。低速陽電子パルスビームの照射によって試料から放出される消滅γ線、オージェ電子などの信号は、1個又は複数個の検出器7で検出される。
短パルス低速陽電子ビームを用いた陽電子寿命測定装置や飛行時間分析型・陽電子消滅励起オージェ電子分光装置においては、ビームのパルス幅によって装置の分解能が決まる。分解能が良いほど、信頼性の高い成分解析が可能になる。ここで、より短いパルス幅のパルスビームを形成するためには、エネルギー広がりの少ない陽電子ビームが必要になる。ビームのエネルギー広がりが大きいと、パルス化後、試料に到達するまでの間の飛行時間にばらつきが生じ、これによりパルス幅が広がってしまうからである。
一般的な静磁場をビーム輸送に用いる陽電子ビーム装置では、陽電子は磁場にからみつくように旋回運動しながら進むので、ビーム進行方向だけでなく進行方向に垂直な運動量成分も有する。この場合、陽電子の飛行時間を決めるのは、ビーム進行方向の運動エネルギーであるので、この分布が狭いほどよりパルス幅の狭い陽電子パルスが得られる。
低速陽電子ビームの進行方向成分のエネルギー広がりは、主に減速材から再放出される陽電子のエネルギー分布及びその放出方向によって決まる。これは、減速材として用いる材料の陽電子の仕事関数、減速材の形状と配置、表面処理方法などに依存する。
図3に、従来の静磁場方式のビーム装置においてタングステン減速材を用いた場合、得られる低速陽電子ビームのビーム進行方向のエネルギー広がりを測定した結果を示す。厚さ1μmの単結晶薄膜を透過させる方法、メッシュを重ねて用いる方法のどちらも、陽電子ビームには約3eVのエネルギー広がりがある。これは陽電子の仕事関数を反映したものである。前述したように、仕事関数が負の場合、陽電子は仕事関数分のエネルギーをもらって材料表面から放出される。原子レベルで清浄で平坦な単結晶表面を用いた場合には、陽電子は結晶面にほぼ垂直に放出されることが知られている。
しかしながら、たとえ、単結晶の薄膜面をビーム軸に垂直にしても、表面が荒れていて凹凸がある場合には、陽電子の放出方向に広がりが生じ、ビーム進行方向成分のエネルギー成分が減少することになる。また、表面に不純物層がつくと、散乱やエネルギー損失が起こり、これも進行方向成分のエネルギー減少の原因となる。通常の陽電子ビーム装置の真空度は10−8〜10−9Torr台であるので、原子レベルで清浄な表面を長時間維持することは難しい。通常は表面が酸化した状態で使われており、その場合には表面酸化層でのエネルギー損失によってエネルギー分布に広がりが生じる。
メッシュ構造の場合には、高い効率を得るため、メッシュ細線表面のあらゆる方向に放出される陽電子を磁場で集めているので、ビーム進行方向に放出されたものと垂直方向に放出されたものとで仕事関数3eV分の差が生じる。よって、同じ表面状態であっても、メッシュ構造の方が薄膜透過法より低エネルギー側の成分強度が強く、エネルギー分布はより広いものとなる。
"Positron beams and their applications", Editor Paul Coleman, World ScientificPublishing Co. Pte. Ltd., 2000
本発明は、従来のタングステンを減速材として用いた場合と同等又はそれ以上のビーム強度を有し、かつエネルギー分布の幅が狭い低速陽電子ビームを発生することができるタングステンに替わる減速材及び陽電子ビーム装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために結晶化されたニッケルメッシュを減速材として用いる低速陽電子ビーム装置を提供するものである。
また本発明は、ニッケルメッシュが、直径が1μm以上100μm以下のニッケル単線からなる低速陽電子ビーム装置を提供するものである。
また本発明は、ニッケル単線が、酸溶液によるエッチングにより線径を細くした低速陽電子ビーム装置を提供するものである。
また本発明は、低速陽電子ビーム装置と連通した真空装置に、真空中で200℃以上、1455℃以下の温度で加熱処理を行う加熱機構を備えた低速陽電子ビーム装置を提供するものである。
また本発明は、上記真空装置に、酸素(O2)ガス又は亜酸化窒素(N2O)ガス及び水素(H2)ガスを導入することができるガス導入機構をさらに備えた低速陽電子ビーム装置を提供するものである。
また本発明は、酸素雰囲気中での波長300nm以下の紫外線照射或いは、原子状水素照射、原子状酸素照射又はオゾン照射が可能な照射機構をさらに備えた低速陽電子ビーム装置を提供するものである。
本発明によれば、従来のタングステンを減速材として用いた場合と同等又はそれ以上のビーム強度を有し、かつエネルギー分布の幅がタングステン減速材の約1/3と狭い低速陽電子ビームを発生することができる。これにより、従来よりもパルス幅の狭い低速陽電子パルスビームの発生が可能となり、入射エネルギー可変・陽電子寿命測定法や飛行時間分析型・陽電子励起オージェ電子分光装置等の分解能が向上する。
図1(c)は、本発明の低速陽電子ビーム装置の減速材の形態を模式的に示す断面図である。
減速材としてタングステンメッシュに代えてニッケルメッシュを使用する。ニッケル線によりメッシュを構成する場合の直径は、1μm以上、30μm以下が望ましい。入手できるメッシュのニッケル線径が太い場合(30μm以上)には、希硝酸、希塩酸などにつけてエッチングにより線径を細くすると、より高い変換効率が期待できる。
通常、市販のニッケルメッシュは非晶質のニッケル線から作られているので、加熱処理を行い、結晶化し、陽電子の捕獲サイトとなる空孔欠陥を取り除く。加熱処理温度は、ニッケルの再結晶化温度(200℃)以上であればよいが、融点(1455℃)以下でなるべく高い温度で行う方がより短時間で空孔欠陥のより少ない状態を実現できる。結晶化のための高温加熱処理は、陽電子ビーム装置とは別の装置で行ってもよい。
表面の不純物除去は、酸素(O2)ガス又は亜酸化窒素(N2O)ガス及び水素(H2)ガス雰囲気中での加熱処理により行う。ニッケルメッシュ減速材は、表面への不純物吸着による効率の減少が大きいので、上記ガス雰囲気中での加熱処理は陽電子ビーム装置内で行う。
すなわち、陽電子ビーム装置と連通した真空装置にニッケルメッシュ減速材の加熱機構及び、酸素又は亜酸化窒素及び水素のガス導入機構を装備する。
加熱処理によって表面に偏析してくる炭素等は、酸素又は亜酸化窒素ガス雰囲気中(分圧10−8〜10−6Torr)での加熱(400℃以上)によって除去する。表面に酸化膜が残った場合には、水素ガス雰囲気中(分圧10−8〜10−6Torr)の加熱(400℃以上)によって除去する。
表面不純物の除去は、酸素(O2)ガス雰囲気中での波長300nm以下の紫外線照射或いは、原子状水素照射、原子状酸素照射又はオゾン照射を用いると、上記酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、水素(H2)ガス雰囲気中より低温で行うことが可能である。低温化により、ビーム装置内での加熱による周囲の部品の劣化、損傷を低減することが可能となる。
以下減速材の素材として、ニッケル単線を用いて加工されたメッシュを採用した本発明の実施例について詳細に説明する。
減速材に用いるニッケルメッシュとして、市販のニッケル線径50mm、200メッシュから12mm×12mmに切り出したものを使用した。このメッシュを6%希硝酸中に浸すことにより化学研磨を行い,線径を約20mmとした。細線化されたメッシュを3枚重ね、内径8mmの穴を開けたタンタル板にスポット溶接にて固定した。
市販のニッケルメッシュは非晶質のニッケル線を用いて作られており、ニッケル線内部に陽電子の捕獲サイトとなる空孔欠陥を大量に含んでいる。これを取り除くため、メッシュはタンタル板の枠に固定した状態で、電子衝撃による加熱処理を行った。初回の熱処理は材料内から大量のガス放出があるため、加熱処理専用の真空チェンバーを用いて行った。脱ガスを行いながら少しずつ温度を上昇させ、最終的に2×10−7Torrの真空下で1200℃にて2分間の加熱を行った。さらに、チェンバー内に分圧1×10−6Torrの亜酸化窒素(N2O)ガスを導入しながら、1200℃の加熱を10分間行い、結晶化と同時に加熱により表面に偏析する炭素等の不純物の除去も行った。N2Oガスの導入を止めた後、温度をゆっくりと室温まで下げた。
ニッケルメッシュ減速材は、加熱処理専用装置から大気中に取り出した後、5分以内に低速陽電子ビーム装置に連通した真空装置内に取りつけ、すぐに装置内を真空に排気した。
ニッケルメッシュは、低速陽電子ビーム装置内においても電子衝撃による加熱処理を行った。まず2×10−7Torrの真空のもとで1200℃、2分間の加熱を行い、引き続き低速陽電子ビーム装置内に酸素分子(O2)ガスを分圧1×10−6Torr導入した状態で1200℃、10分間の加熱を行った。
O2ガス導入を止めた後、温度をゆっくりと室温まで下げた。加熱終了後、装置の真空度は、30分以内に5×10−9Torr以下まで回復した。この加熱処理は2回行った。
減速材の性能評価は、以下のように行った。陽電子源にはチタンフォイル内に密封された放射性同位元素Na−22(線源強度は約2.8MBq)を用いた。陽電子源は減速材の1mm後方に設置した。減速材には+250Vの電位を印加し、引き出し電極を接地することにより250eVに加速された低速陽電子ビームを形成した。得られた低速陽電子ビームは100ガウスの静磁場により輸送され、2.5m離れた位置に置かれたマイクロチャンネルプレート検出器で検出した。ビームラインの途中には、ExB型のエネルギーフィルターを置き、メッシュを素通りしてきた高速陽電子及び減速材内で充分に減速されなかった陽電子を除去した。
得られる低速陽電子ビーム強度は、マイクロチャンネルプレート(MCP)検出器で検出される単位時間あたりのカウント数から評価した。上記の条件で加熱処理を行ったニッケルメッシュ減速材を用いて低速陽電子ビーム強度を測定したところ、MCP検出器で毎秒360個のカウントの信号が得られた。MCP検出器の検出効率(60%)とビームライン途中におかれた3枚のメッシュ電極の透過率(66%)を考慮すると、減速材表面から再放出される低速陽電子数は毎秒910個と見積もられる。
使用した線源強度2.8MBqのNa−22陽電子源からは、毎秒2.53×106個の高速陽電子が放出されている。よって、この減速材を用いた場合の高速陽電子から低速陽電子への変換効率は、3.60×10−4となる。
比較のために、従来から用いられているタングステン単結晶フォイル(厚さ1μm)の透過型減速材の評価も同じ装置、同じ条件のもとで行った。使用するタングステン単結晶フォイルは、大気中でNaOH水溶液によるエッチングを行った後、ビーム装置内で真空中(2×10−7Torr以下)及び1×10−6Torrの酸素雰囲気中での2000℃の加熱処理を繰り返し行った。
熱処理直後に得られた低速陽電子数は、毎秒450個であり、高速陽電子から低速陽電子への変換効率は、1.78×10−4であった。
また、タングステンメッシュ(線径0.02mm、50メッシュ、30枚重ね)の減速材についてもタングステンフォイルと同様の処理条件で加熱処理、及び低速陽電子ビーム強度の測定を行った。その結果、得られた低速陽電子数は毎秒835個、高速陽電子から低速陽電子への変換効率は3.29×10−4という結果が得られた。
以上の結果から、上記条件の加熱処理、表面処理を行ったニッケルメッシュによる減速材は、従来のタングステンの減速材と同等又はそれ以上の効率で低速陽電子ビームを形成することが可能である。
次に、低速陽電子ビームのエネルギー分布は、ビームの通過する円筒電極の1つに阻止電位を印加し、この電位に対するビーム強度減少を測定することにより得た。
図3にニッケルメッシュ、タングステン単結晶フォイル、タングステンメッシュ減速材から得られた低速陽電子ビームのエネルギー分布の比較を示す。タングステン単結晶フォイルやタングステンメッシュを減速材として用いた場合には、エネルギー分布には約3eVの広がりがある。これは、タングステンに対する陽電子の仕事関数が−3eVであることが原因である。これに対して仕事関数が−1eVと小さいニッケルメッシュを減速材に用いた場合には、エネルギー幅が1eV以内の非常に狭いエネルギー分布が得られている。
さらに、ニッケルメッシュ及びタングステンメッシュ減速材を用いて発生した低速陽電子ビームのパルス化を行い、パルスビームの時間幅を比較した。この測定では、減速材から発生した低速陽電子ビームを、ビームライン中に挿入されたチョッパー及びバンチャーを用いてパルス化した。チョッパーは3枚メッシュ構造のものを使用し、低速陽電子の連続ビームから、時間幅10ナノ秒のパルスを切り出した。これを動作周波数12.5MHz及び25MHzのダブルギャップ式バンチャーを用いてパルスの圧縮を行った。陽電子パルスの時間構造は、MCP検出器を用いて測定した。
図4にニッケルメッシュ及びタングステンメッシュを減速材として用いて得られた陽電子パルスビーム(エネルギー 250 eV)の時間スペクトルの比較を示す。測定は同一のパルス化条件のもとで行った。得られたパルスの半値幅は、タングステンメッシュの場合590ピコ秒、ニッケルメッシュの場合475ピコ秒となり、明らかにニッケルメッシュを減速材として用いた方がパルス幅の短いパルスビームが得られていることがわかる。
以上、好ましい実施の形態、実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜の変更が可能なものである。
例えば結晶化されたニッケルメッシュの素材は、ニッケル単線を用いて加工されたメッシュに限らずニッケル単板からメッシュ状に打ち抜いたものでもよい。なおニッケル単線は断面が、円形に限らず平角状のものであってもよい。
本発明により、従来のタングステンを減速材に用いた場合よりもパルス幅の狭い低速陽電子パルスビームを形成することが可能となり、これを用いる物性評価装置の分解能を向上させることができる。
本発明が適用可能な低速陽電子パルスビームを用いる物性評価装置とその利用分野は次のとおりである。
1)入射エネルギー可変・陽電子寿命測定装置
表面、薄膜材料の空孔欠陥のサイズ及び深さ分布評価
2)入射エネルギー可変・陽電子寿命・運動量相関測定装置
表面及び表面近傍、薄膜材料などの空孔−不純物複合体の分析
3)飛行時間分析型・陽電子消滅励起オージェ電子分光装置
固体最表面の元素分析
4)飛行時間型・ポジトロニウムエネルギー分析装置
メソポーラス薄膜材料の空孔連結性評価
5)飛行時間型・陽電子誘起脱離イオン質量分析装置
表面吸着分子の高感度質量分析
陽電子減速材の形状と配置を示す模式図 (a)薄膜透過型、(b)ベネチアンブラインド型、(c)メッシュ型 低速陽電子ビーム装置を示す模式図 低速陽電子のビーム進行方向のエネルギー分布図 パルス化された低速陽電子の時間スペクトル
符号の説明
1 陽電子源
2 減速材
3 引き出し電極
4 エネルギーフィルター
5 パルス化装置
6 試料
7 検出器
11 ビームライン(真空容器)
12 真空ポンプ

Claims (6)

  1. 結晶化されたニッケルメッシュを減速材として用いることを特徴とする低速陽電子ビーム装置。
  2. 上記ニッケルメッシュは、直径が1μm以上100μm以下のニッケル単線からなることを特徴とする請求項1記載の低速陽電子ビーム装置。
  3. 上記ニッケル単線は、酸溶液によるエッチングにより線径を細くしたことを特徴とする請求項2記載の低速陽電子ビーム装置。
  4. 低速陽電子ビーム装置と連通した真空装置に、真空中で200℃以上、1455℃以下の温度で加熱処理を行う加熱機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の低速陽電子ビーム装置。
  5. 上記真空装置に、酸素(O2)ガス又は亜酸化窒素(N2O)ガス及び水素(H2)ガスを導入することができるガス導入機構を備えたことを特徴とする請求項4記載の低速陽電子ビーム装置。
  6. 酸素雰囲気中での波長300nm以下の紫外線照射或いは、原子状水素照射、原子状酸素照射又はオゾン照射が可能な照射機構を備えたことを特徴とする請求項4記載の低速陽電子ビーム装置。
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JP2010182672A (ja) * 2009-02-04 2010-08-19 Nu Instruments Ltd 質量分析装置における検出構成

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