JP2006063006A - ラセミ体サイトキサゾンの合成方法 - Google Patents

ラセミ体サイトキサゾンの合成方法 Download PDF

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Shigeru Nishiyama
繁 西山
Masumi Suzuki
麻珠三 鈴木
Masayoshi Asano
正義 浅野
Chiaki Nagasawa
千晶 長澤
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Abstract

【課題】免疫抑制効果を有するサイトキサゾンを、容易に得られる原料から非常に簡潔で安全な工程で合成する方法を提供する。
【解決手段】安価なパラメトキシ桂皮アルコールを出発原料として、同一容器内での水系反応によりエポキシ化、アジド化を達成し、次いでトリフェニルホスフィンによる還元、シアン酸カリウムとの反応、最後に亜硝酸又は亜硝酸塩で処理して高収率で、式1に示すラセミ体サイトキサゾンを安価、かつ、安全に効率的なプロセスで合成する。

【選択図】なし

Description

本発明は、パラメトキシ桂皮アルコールを出発原料として新しいサイトカイン調節因子であるサイトキサゾンを同一容器内で、水系溶媒中で容易に合成する方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎症等の免疫抑制効果を有する医薬品として知られるラセミ体(サイトキサゾン及びその鏡像異性体の等量混合物)の経済的な製造方法に関する。
従来、サイトキサゾンの単離と生物活性については公知である。すなわち、化学式1で示されるサイトキサゾンは、理化学研究所の掛谷らによって発見された新しいサイトカイン調節因子で、2-オキサゾリジノン環を含む公知化合物(非特許文献1,2)で、下記化学式1を有することが知られている。
(化学式1)
掛谷らは、微生物の代謝産物から化学免疫調節因子をスクリーニングし、広島県福山市で採取された土壌から標題化合物を産生する放線菌菌株(Streptomyces sp.,RK95-31,FERM P-16171)を発見した。
また、サイトキサゾンは、以下に述べるように免疫抑制剤としての活用が期待されている(非特許文献1〜4)。
現代社会において、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎症による死亡率は低いが、quality of lifeという観点では深刻な問題である。例えば、アトピー患者では、普通の人には無害なアレルゲンに暴露されることにより、アレルゲンに特異的なIgE抗体が過剰に生産され、その結果、肥満細胞からのヒスタミンの遊離を誘導することが知られている。
CD4T細胞は、抗原特異的、非特異的アレルギー性炎症の誘導及び持続に主要な役割を果たす。CD4T細胞は、サイトカイン分泌パターンによりTh1細胞、Th2細胞の2つのサブセットに分けられる。前者のTh1細胞では、IL-2、GM-CSF、INF-γ、TNFβ(I型サイトカイン)を産生する。これらのうち、IL-2、INF-γ、TNFβは、遅延型過敏症を引き起こす原因となる。一方、後者のTh2細胞では、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13を分泌する(II型サイトカイン)。これらはB細胞の分化や増殖を誘導する活性を有する。
上記Th1細胞とTh2細胞は、それぞれのサブセットのT細胞が産生するサイトカインを通じて、互いの活性を阻害し、これによりB細胞の産生するIgEの量を調節している。このときの産生物の量に不均衡が起こると、アレルギーや深刻な免疫不全症が引き起こされるのである。
アレルギー患者の皮膚と肺の生体組織検査を行うことによりアレルギーを引き起こす中心となる細胞はTh2細胞であることが判明した。
したがって、このTh2細胞の作用と分化を効果的に抑制する治療が、IgEが媒体となるアレルギー反応に伴う炎症を押さえるのに有効である。
また、サイトキサゾンは、Th2細胞の伝達経路を抑制することにより、免疫抑制効果を示す。Th2細胞が産生するIL-4はB細胞の増殖を誘導し、IgEの産生を促すが、Th1細胞が産生するINF-γはIL-4のB細胞への作用を阻害する。サイトキサゾンは、Th1細胞へは作用しないことが知られている。
一方、ラパマイシンやFK506のようなマクロライドは、T細胞の活性や生長に必要なシグナル伝達経路を抑制する効力のある免疫抑制剤である。ラパマイシンは、細胞周期のG1後期からS期への進行を止めることにより、IL-2により刺激されたT細胞の分化増殖を防ぐ。FK506は、IL-2と他のサイトカインをエンコードする、遺伝子の転写を支配するT細胞抗原レセプターに結合してCa2+従属のシグナル伝達を妨げる。
サイトキサゾンは、上述するようなラパマイシンやFK506のような既知の免疫抑制剤と構造や生物活性が異なり、Th2細胞のシグナル伝達経路を理解する上で有効な化合物である。
すなわち、Th2細胞の伝達経路を選択的に抑制することにより免疫抑制効果を示すサイトキサゾンは、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎症等に効果が期待される化合物である。
Carterらは、合成によって得た4種の立体異性体の、IL-2及びIL-10の産生に与える影響を検討し、4種とも、天然型サイトキサゾンと同じく、IL-2に対する抑制効果は少なく、一方IL-10への抑制効果が顕著であることを報告した(非特許文献14)。本化合物には合計4種類の立体異性体が存在するが、異性体の間で活性に差は認められていない。
従来、このようなサイトキサゾンの公知の合成例としては、1999年に中田らがサイトキサゾンの初の全合成を報告(非特許文献5)して以来、多数の例が報告されている。
その代表例を以下に示す。
中田らは、下記反応式で示されるように、パラメトキシ桂皮酸エチルエステル(化学式A)を出発原料とし、8段階、全反応収率49%で初のサイトキサゾンの合成に成功した(非特許文献5)。
上記中田らの方法によれば、先ずSharplessの不斉ジヒドロキシル化を行うことにより、2ヶ所の不斉中心を導入(化学式B)し、次にエステル部分を還元して得られた1級アルコール水酸基をTBDPS基で保護した環状亜硫酸エステル(化学式C)とした。このものはジメチルホルムアミド(DMF)中70℃で、アジ化リチウム(LiN)と反応させ、立体反転を伴って位置選択的にアジド基を導入したが、生成物の硫酸エステルを加水分解する際、TBDPS保護基が脱保護されてしまい、アジドアルコール(化学式D)が得られてきた。1級アルコール水酸基と2級アルコール水酸基を区別する必要があったので、改めて1級アルコール水酸基をTBDPSエーテル(化学式E)とし、これにClCOPhとピリジンを作用させることにより、閉環前駆体であるフェニルカーボナート(化学式F)を得た。アジド基を還元すると同時に環化が起こり、2-オキサゾリジノン構造(化学式G)を得ている。最後にTBDPS基の脱保護を行い、(4R,5R)-サイトキサゾンの合成を達成している。
また、以下の森らの合成法は、基本的には中田らと同じ経路である(非特許文献6)。
相違点は、下記反応式に示すように原料を先にアリルアルコールまで還元し、保護した化合物(化学式H)とし、このものにジヒドロキシル化を行い、トリオール誘導体(化学式I)を得ているところである。また、オキサゾリジノン環への閉環反応も異なっている。7段階、全反応収率26%で(4R,5R)-サイトキサゾンを合成している。



さらに、宮田、内藤らは、下記反応式に示すようにヒドロキシメート(化学式K)のイミノ1,2-Wittig転位とジアステレオマー法による光学分割を鍵段階としたサイトキサゾンの全合成を報告した(非特許文献7)。

上記合成によれば、1,2-Wittig転位は、-78℃のテトラヒドロフラン(THF)中2当量のLDAを加えるという条件で、反応はスムーズに進行し、2-ヒドロキシオキシムエステル(化学式L)を単一生成物として収率82%で得ている。
水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)で還元、得られた脱メトキシ化されたアミノアルコールに2当量のBocOでアシル化して、2つのN-Boc-オキサゾリジノン、cis-Mとtrans-Mを収率81%、2.1:1の比で得た。分離したcis-MはTFAで処理することにより、窒素上のBoc基を除去したオキサゾリジノンとし、オゾン酸化、引き続きNaBHで還元することによってラセミ体サイトキサゾンを得た。このラセミ体のオキサゾリジノンの光学分割は、ラセミ体を(-)-カンファン酸クロリドでアシル化することにより、2つの対応するジアステレオマーエステルとして分離した。その結果、8段階、全反応収率39%で(4R,5R)-サイトキサゾンを合成している。
他にも多数のグループが、サイトキサゾン及び類縁体合成を達成しており、中田らの合成(非特許文献5)と同じジオールを不斉源とする方法(非特許文献8)、糖質から得られるグリセルアルデヒドアセトニドを不斉源とする方法(非特許文献9)、エポキシエステルから得た4種の立体異性体を、酵素を用いた速度論的光学分割によって調製する方法(非特許文献10)、同じく糖質の一種、エリトルロースを不斉源として合成する方法(非特許文献11)、Sharplessの不斉アミノヒドロキシ化によって得られる出発物質を利用する方法(非特許文献12,13)、Evansのオキサゾリジノンを不斉補助基に用いた4種の立体異性体の合成(非特許文献14)等が挙げられる。
さらに、アジドカーボナートを出発物質としてアジドカーボナートのアジド基を還元し、必要により、これを脱保護してサイトキサゾンを合成する方法が開示されており(特許文献1)、菌株を用いる培養の方法では、広島県福山市の土壌から分離されたStreptomyces sp.95-31株をグルコース培地で培養し、産生したサイトキサゾンを有機溶媒抽出していることが開示されている(特許文献2)。
特開2000−86639号公報 特開平11−209355号公報 Kakeya,H.; Morishita,M.; Osono,M.; Ishizuka,M.; Osada,H. J.Antibiot.,1998,51,1126-1128 Kakeya,H.; Morishita,M.; Koshino,H.; Morita,T.; Kobayashi,K.; Osada,H. J.Org.Chem.,1999,64,1052-1053 宮島 篤、北村俊雄、新井直子 サイトカインの分子生物学,1995, 52-54,113-117 垣内史堂 絵とき免疫学の知識,1996 Sakamoto,Y.; Shiraishi,A.; Seonhee,J.; Nakata,T. Tetrahedron Lett.,1999,40,4203-4206 Seki,M.; Mori,K. Eur.J.Org.Chem.,1999,2965-2967 Miyata,O.; Koizumi,T.; Asai,H.; Iba,R.; Naito,T. Tetrahydron,2004,60,3893-3914 Park,J.N.; Ko,S.Y.; Koh,H.Y. Tetrahedron Lett.,2000,41,5553-5556 Madhan,A.; Kumar,A.R.; Rao,B.V. Tetrahedron:Asymmetry,2001,12,2009-2011 Hamersak,Z.; Ljubovic,E.; Mercep,M.; Mesic,M.;Sunjic,V. Synthesis 2001,1989-1992 Carda,M.; Gonzalez,F.; Sanchez,R.; Marco,J.A.Tetrahedron:Asymmetry 2002,13,1005-1010 Madhusudhan,G.; Reddy,G.O.; Ramanatham,J.; Dubey,P.K. Tetrahedron Lett.,2003,44,6323-6325 Milicevic,S.; Matovic,R.; Saicic,R.N. Tetrahedron Lett.,2004,45,955-957 Carter,P.H.; LaPorte,J.R.; Scherle,P.A.; Decicco,C.P. Bioorg.Med.Chem.Lett., 2003,13,1237-1239
これら非特許文献及び特許文献で明らかにされているサイトキサゾンの合成方法は、高価な出発物質を用いたり、合成したサイトキサゾンを非水系の有機溶媒で抽出するため合成装置の安全性を考慮すると、設備コストが高い等の難点がある。また、菌株を培養して産生するサイトキサゾンを得る方法では、培養に長時間を要して、経済性や生産性に劣る。
サイトキサゾンには、上述するように4種類の異性体があり、4種のサイトキサゾンの立体異性体で生物活性に差が見られないことから、原料となる安価なアリルアルコールをエポキシ化し、窒素求核種で開環、官能基変換を経て、短工程で効率よく、ラセミ体サイトキサゾンの合成が達成できるルートの開発が望ましい。
しかしながら、エポキシドにアジ化物を用い、イオンを反応させてアジドアルコールを合成する反応では、途中で得られるエポキシドは非常に不安定な化合物であり、単離は困難で、かつ合成反応中に反応系内に存在する求核性物質(水や、過酸を用いた酸化に伴って生じてくる還元体のカルボン酸等)の求核攻撃を受けやすく、従来知られた通常の酸化方法(m-CPBAやt-BuOOH・金属錯体等)では、副生成物に至る好ましくない反応が起こりやすいという欠点を有することが判明した。また、サイトキサゾンの合成過程で多くの種類の試薬類を用いなくてはならないばかりか、非水系反応であるため合成反応中に大気中の水分の影響等を受けやすい。
そこで、本発明人らは、これらの問題に鑑み、従来にないまったく新しい考え方で対応した。
すなわち、本発明では、下記反応式中の化学式2のパラメトキシ桂皮アルコールを出発原料として、5段階でラセミ体(サイトキサゾン及びその鏡像異性体の等量混合物)を合成する新しい方法が開発できた。
本発明の合成法では、下記反応式に示すようにアジ化物イオンを共存させながら、求核攻撃に用いるアセトニトリル等の反応溶媒に過酸化水素水を添加したエポキシ化試薬を系内で同時に調製、エポキシ化とアジ化物イオンの攻撃を同一容器内で達成できることとなった。
ひきつづき本発明では、上記反応式中の(±)-4化合物(化学式4)のアジドジオールを連続して水系溶媒中におけるトリフェニルホスフィンで還元し、引き続き塩酸を加えて(±)-5化合物(化学式5)のアミノジオール塩酸塩を得、さらにシアン酸カリウムと反応させて(±)-6化合物(化学式6)のカルバミルアミノジオールへと導き、最後に亜硝酸又は亜硝酸塩で処理してオキサゾリジノン環へ閉環するという方法で、目的物の上記(±)-1化合物(化学式1)のラセミ体サイトキサゾンの合成を達成した。
上記反応式における出発物質の2化合物(化学式2)のパラメトキシ桂皮アルコールから生成したエポキシドに対するアジ化物イオンの攻撃によって、アジドアルコールを合成するが、上記(±)-3化合物(化学式3)のエポキシドは、非常に不安定な化合物であり、単離することは困難で、かつ合成中に反応系内に存在する求核性物質の作用を受けやすく、従来知られた通常の酸化法では副生成物に至る好ましくない反応が起こりやすいという欠点を有していた。
本発明の合成法では、アジ化物イオン(アジ化ナトリウム)を共存させながら、求核攻撃に用いる反応溶媒(アセトニリル)に、過酸化水素水を添加し、エポキシ化試薬(Payne試薬)(Payne,G.B.; Deming,P.H.; Williams,P.H. J.Org.Chem.,1961,26,659-663)を系内で同時に調製、エポキシ化とアジ化物イオンの攻撃を同一容器内で達成するという新しい方法を見出した。この方法により2段階を73%の収率で達成することができた。さらに従来、エポキシドをアジ化物イオンで開環してアジドアルコールを得るには、過塩素酸リチウムなどのルイス酸を系内に共存させて行う方法が一般的であったが(Chini, M., Crotti, P., and Macchina, F. Tetrahedron Lett. 1990, 31, 5641-5644)、本発明ではルイス酸を添加することなく開環を達成することができた。
次に、上記反応式中の(±)-4化合物(化学式4)のアジドジオールをトリフェニルホスフィン-THF-水の系で還元、引き続き塩酸を加え、(±)-5化合物(化学式5)のアミノジオール塩酸塩を得た。上記反応におけるアミンの精製法は、トリフェニルホスフィンオキシドが水に溶けにくい性質を利用したものである。すなわち、反応溶液を減圧濃縮し、粗生成物に塩酸を加えて、アミンを塩酸塩として水溶液の形で溶出し、一方で、溶解性が低いトリフェニルホスフィンオキシドは沈殿の形でろ過して除く。従来は、塩酸塩の水溶液とした段階で、ベンゼンで抽出してトリフェニルホスフィンオキシドを除いていた(Knouzi, N., Vaultier, M., Carrie, R. Bull. Soc. Chim. Fr. 1985, 815-819)。本発明では、有機溶媒を一切使わないという大きな利点がある。さらにシアン酸カリウムと反応させ、(±)-6化合物(化学式6)のカルバミルアミノジオールへと導き、最後に亜硝酸で処理してオキサゾリジノン環へ閉環するという方法で、目的物のラセミ体サイトキサゾンの合成を達成した。
本発明の合成法は、アジドジオールから3段階、70%の収率であった。
なお、別法として、上記(±)-5化合物(化学式5)のアミノジオール塩酸塩をトリエチルアミン存在下、Boc20を作用させると、既知のサイトキサゾン前駆体である下記(±)-7化合物(化学式7)のN-Boc体を調製することもできた(非特許文献9)が、この化合物を経由して合成した場合、最終目的物であるサイトキサゾンの精製が必ずしも容易ではなくなるので、今回見出した(±)-6化合物(化学式6)のカルバミルアミノジオールを経る方法を凌ぐものではなかった。



(化学式7)
なお、本合成法においては、シス体の立体化学を有する化合物が圧倒的に優先して得られ、トランス体(エピ体)との生成比は350:1以上であった。
本発明による合成法は、容易に得られるパラメトキシ桂皮アルコール原料から出発し、非常に短工程で、目的化合物が安価な試薬(アジ化ナトリウム、過酸化水素水、トリフェニルホスフィン、塩酸、シアン酸カリウム、亜硝酸ナトリウム等)を用いて容易に合成できる。また、全ての工程において、有機溶媒を一切使用することなく、含水溶媒中で行うことができるので、反応実施中に湿気の混入を気にする必要がなく、しかも中間生成物を単離精製することなしに、全工程を連続的に実施できる等の工業的に大きな利点を有するサイトキサゾンの合成法である。
以下の実施例において、パラメトキシ桂皮アルコール(化学式2)を出発物質とし、段階を追ってその反応生成物を確認した結果を上記合成反応式に基づいて示す。
(2R,3R)-3-アジド-3-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,2-ジオール(化合物4)の反応生成確認:
アジ化ナトリウム(1.976g,30.4mmol)を水(30ml)に溶解し、激しく撹拌しながらパラメトキシ桂皮アルコール(化学式2)(1.004g,6.1mmol)のアセトニトリル溶液(10ml)を加えたところ白色沈殿が生じた。混合物を氷冷し、過酸化水素水(30%,12.5ml,0.16mol)を滴下した。滴下終了後、氷水浴を水浴に交換し、反応温度を徐々に室温まで昇温し、室温に達した時点で水浴を除去した。反応は、発熱的に進行するので、内温は適宜外部から冷却することにより注意深く30℃以下に保った。反応進行に伴い、酸素ガスの発生が確認されたが、30分以内に黄色の均一な溶液になり、発泡はおさまった。室温で一晩撹拌した後、反応混合物は食塩で飽和し、酢酸エーテルで抽出した。有機層は飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。粘稠な褐色油状残渣(1.294g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15g)にて精製した。ヘキサン‐酢酸エーテル混合溶媒(混合容量比3:2)で溶出し、未反応のパラメトキシ桂皮アルコール(化学式2)が51mg(未反応率5%)及び(±)-アジドジオール(油状物質、1.010g,反応収率73%)を得た。
得られた油状物質の赤外吸収スペクトルでは、3356,3005,2935,2839,2102,1612,1585,1514,1464,1032,827cm−1:に吸収が認められた。NMRの測定では、NMRδ(270 MHz,CDCl):1.87(1H,t, J =6.1Hz), 2.03(1H,d,J=4.1Hz), 3.67-3.80(3H,m),3.76(3H,s),4.51(1H,d, J =7.3Hz), 6.88(2H,d, J =8.7Hz), 7.21(2H,d, J =8.7Hz); NMRδC(100MHz,CDCl): 55.3,63.0,66.5,73.9,114.4,127.7,129.0,159.8.にシグナルを示した。また、元素分析結果では、標準物質 C10H13NO: C,53.80; H,5.87; N,18.82%に対して得られた元素分析結果は C,53.71; H,5.82; N,18.34%であり、アジドジオールの生成を確認した。
(2R,3R)-3-アミノ-3-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,2-ジオール塩酸塩(化合物5)の反応生成確認:
アジドアルコール(化学式4)1.506g(6.75mmolに相当)、トリフェニルホスフィン3.529g(13.5mmolに相当)、水1.3ml(72.2mmolに相当)をテトラヒドロフラン(24ml)中で混合、50℃で一晩撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を2M塩酸10mlに溶解するとトリフェニルホスフィンオキシドが析出した。固体をよく粉砕した上でろ過で除き、ろ液と洗液は減圧濃縮してアミノジオール塩酸塩を定量的に2.276g得た。
得られたアミノ塩酸塩のNMRスペクトルは NMRδ(270MHz,DO): 3.41(1H,dd, J =6.4,11.7Hz),3.52(1H,dd, J =5.4,11.7Hz),3.90(3H,s),4.18(1H,ddd, J =4.0,5.4,6.4Hz),4.55(1H,d, J =4.0Hz),7.11(2H,d, J=8.9Hz),7.45(2H,d, J =8.9Hz)となり、アミノジオール(化学式5)の生成を確認した。
このものはこれ以上精製せずに、次の段階に用いた。
(2R,3R)-カルバミルアミノ-3-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,2-ジオール(化合物7)の反応生成確認:
上記粗アミノアルコール塩酸塩2.276g(6.75mmolに相当)を2M塩酸0.7ml及び水3.4mlに溶解し、シアン酸カリウム822mg(10.1mmolに相当)を室温で少しずつ加えた。反応混合物は室温にて終夜撹拌したのち減圧濃縮した。固体残渣をエタノールで抽出し、減圧濃縮して粗カルバミルアミノジオール(化学式6)1.996gを粘稠な油状物質として定量的に得た。
得られたカルバミアルコールのNMRスペクトルの測定結果は下記の通りである。
NMRδ(270MHz,CDOD): 3.20-3.40(2H,m),3.67(3H,s),3.67-3.72(1H,m),4.64(1H,d, J =5.2Hz),6.77(2H,d, J =8.6Hz),7.17(2H,d, J =8.6Hz).
このものはこれ以上精製せずに、次の段階に用いた。
(4R,5R)-5-ヒドロキシメチル-4-(4-メトキシフェニル)-2-オキサゾリジノン(化合物1)の反応生成確認:
上記粗カルバミルアルコール(化学式6)を3M塩酸9.0mlに溶解し、反応容器を超音波洗浄浴に浸漬し短時間減圧排気、アルゴンで系内を置換した。亜硝酸ナトリウム465.6mg(6.75mmolに相当)を加えると直ちに窒素ガスが発生し、白色沈殿が析出した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、亜硝酸ナトリウム95.5mg(1.38mmolに相当)を追加し、さらに20分撹拌した。1M-水酸化ナトリウム水溶液にて中和した後、減圧濃縮した。固体残渣をテトラヒドロフランで抽出し減圧濃縮した。濃縮物を再びテトラヒドロフラン2mlに溶解し、冷凍庫にて静置したところ(±)-ラセミ体サイトキサゾン(化学式1)405.4mgが固体として析出しこのものを傾斜法により得た。上清を減圧濃縮して、得られた残渣(1.200g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(120g)により精製した。
テトラヒドロフラン‐酢酸エーテル(容量混合比1:5)により溶出してラセミ体サイトキサゾン(化学式1)1.13g(収率73%)を得た。これらを合わせ、テトラヒドロフラン(9.0ml)に溶解し、加温しながらヘキサン(3ml)を加えた。溶液を冷蔵庫に静置し、生じた結晶をろ過により得た。
ラセミ体サイトキサゾン(化学式1)794.2mg(アジドジオールからの収率50%)は無色柱状晶として得られた。
得られた無色柱状結晶の融点(Mp)の標準品との比較、赤外吸収(IR)スペクトル及びNMRスペクトル(NMR)、元素分析の計算値との比較結果を以下に示す。
Mp143.9-144.1℃[1it,mp143-144℃], IRνmax cm-1: 3371,3265,2960,1734,1616,1520,1429,1311,1254,1223,1036,980,850,814;NMRδ(400MHz,DMSO-d): 2.90-3.00(2H,m),3.74(3H,s),4.69(1H,ddd, J =4.4,7.3,8.3Hz),4.82(1H,t, J =5.1Hz),4.90(1H,d, J=8.3Hz),6.92(2H,d, J =8.6Hz),7.14(2H,d, J =8.6Hz),8.06(1H,s); NMRδC (100MHz,DMSO-d): 55.01,56.18,61.03,80.01,113.56,127.90,129.14,158.61,158.84.元素分析結果; C,59.02; H,5.91;N,6.26. C11H13NOの計算値;(C,59.19; H,5.87; N, 6.27%)



以上の結果は文献のそれと一致した。
上記再結晶の母液は減圧濃縮し、無水酢酸(5.8ml)及びピリジン(5.8ml)と混合した。室温で一晩撹拌し、定法通り後処理した。油状残渣(605.9mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30g)により精製した。ヘキサン‐酢酸エーテル(容量混合比2:3)で溶出し、酢酸エステル体(±)-8aを得た。このものはヘキサン(1.5m)及び酢酸エーテル(1.4ml)の混合液から再結晶し、微細針状晶(277.4mg)を得た。
再結晶母液は、調製薄層クロマトグラフィー[ヘキサン‐酢酸エーテル(容量混合比2:3)で2度展開]によりさらに34.3mgの(±)-8aを得た。再結晶の融点(Mp)、赤外吸収(IR)スペクトル並びにNMRスペクトル、元素分析による標準物質との比較結果を以下に示す。
Mp114.5-114.7℃.IRνmax cm-1: 3452,3263,1776,1734,1612,1514,1250,1068,1047; NMRδ(270MHz,CDCl): 1.98(3H,s),3.70-3.90(2H,m),3.80(3H,s),4.97(2H,m),5.37(1H,s),6.89(2H,d, J =8.6Hz),7.18(2H,d, J =8.6Hz);NMRδC (100MHz, CDCl): 20.64,55.34,57.35,63.04,77.50,114.35,126.96,127.80,158.70,160.04,170.17.元素分析結果:C,58.67; H,5.70; N,5.17.(C13H15NOの計算値:C,58.86; H,5.70; N,5.28%)


上記酢酸エステルのエピ体(±)-8bを薄層クロマトグラフィー精製によって単離した。化合物4から1.8mg(収率0.2%に相当)を回収し、NMRスペクトルで確認した結果を示す。
NMRδ(270MHz,CDCl): 2.05(3H,s),3.75(3H,s),4.22(1H,dd, J =5.1,12.3Hz),4.28(1H,dd, J=3.7,12.3Hz),4.43-4.47(1H,m),4.57(1H,d, J =6.8Hz),5.25(1H,s),6.87(2H,d, J=8.5Hz),7.20(2H,d, J =8.5Hz).
このようにして得られた先の(±)-8a化合物の合計量は、311.7mgであり、メタノール中トリエチルアミンを添加し、加熱還流することにより定量的にラセミ体サイトキサゾン(化学式1)へと変換することができた。それを合わせ、ラセミ体サイトキサゾンの収率はラセミ体アジドジオール(化学式4)から70%に達した。

Claims (2)

  1. 化学式2のパラメトキシ桂皮アルコールを出発原料として同一容器内でアジ化物イオンを共存させながら求核反応溶媒である含水アセトニトリルに過酸化水素水を添加して化学式4のアジドジオールとし、得られたアジドジオールをトリフェニルホスフィン-THF-水系で還元し、続いて塩酸を加えて化学式5のアミノジオール塩酸塩とし、次いでシアン酸カリウムと反応させて化学式6のカルバミルアミノジオールとし、最後に亜硝酸又は亜硝酸塩で処理してオキサゾリジノン環へ閉環して化学式1のラセミ体サイトキサゾンを合成する方法。
    (化学式2)

    (化学式4)

    (化学式5)

    (化学式6)

    (化学式1)
  2. 化学式2のパラメトキシ桂皮アルコールを出発物質として、同一容器内において以下の水系反応することを特徴とする請求項1に記載のラセミ体サイトキサゾンの合成方法。
    (1)化学式2の化合物をアジ化ナトリウム(NaN)、過酸化水素及びアセトニトリルの存在下にエポキシ化を経て化学式4のアジドジオールとする。

    (化学式2)

    (化学式4)

    (2)上記化学式4のアジドジオールに対してトリフェニルホスフィン、水及びテトラヒドロフランの存在下に反応させたのち、塩酸を加え化学式5のアミノジオール塩酸塩とする。

    (化学式5)

    (3)上記化学式5のアミノジオール塩酸塩に対してシアン酸カリウム及び塩酸の存在下に反応させて化学式6のカルバミルアミノジオールとする。
    (化学式6)

    (4)上記化学式6のカルバミルアミノジオールに亜硝酸及び塩酸で閉環することを特徴とする化学式1のラセミ体サイトキサゾンとする。
    (化学式1)
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