JP2006042817A - 自然環境からの特定機能微生物およびその遺伝子の検出・定量方法 - Google Patents

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明彦 丸山
Takanori Higashihara
孝規 東原
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寛之 石渡
Tsunemi Fujita
恒美 藤田
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Abstract

【課題】自然環境からの特定機能微生物およびその遺伝子の検出・定量方法、新規16S rRNA遺伝子情報およびプローブを提供すること。
【解決手段】1)自然環境における特定機能微生物の優占度を推定する工程、2)特定機能微生物の増殖が陽性と判定される最も希釈段階の高い培養液中の微生物の特定の遺伝子領域を増幅し、クローニングする工程、3)クローニングした遺伝子領域の異同を調べ、その塩基配列を決定する工程、および4)決定した塩基配列情報から、自然環境下に生息する特定機能微生物を同定する工程を含む、自然環境から特定機能微生物およびその遺伝子を検出および定量する方法。特定の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子。特定の塩基配列の一部を有し、CyCloclasticus属の石油分解細菌と特異的にハイブリダイズしうる、塩基長10〜50bpのRNAまたはDNAプローブおよびその利用法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、自然環境から特定機能微生物およびその遺伝子を検出・定量する方法、新規16S rRNA遺伝子情報の利用に関する。
海洋中には石油を分解する微生物が生息し、石油流出事故のあった油濁海域ではその微生物の活動により石油が分解され、時間とともに自然浄化されていく。これまで、石油の自然浄化を左右する物理化学的要因の解明を通し、様々な処理手法や処理技術が開発されてきている(R.P.J. Swannell, K. Lee and M. Mcdonagh, Microbiol. Rev., 60: 342-365, 1996)が、自然浄化の担い手である微生物群集の構成や群集変動に関する解明はほとんど行われていない。そのため、処理技術の有効性やその普遍性を評価することが困難な状況にある。また、培養条件下で効率的に石油分解を行う微生物を微生物製剤として汚染海域に導入し浄化を促進しようという試みもあるが、人為的に導入した微生物製剤の自然界における安全性や有効性についての評価は十分に行われていない。
石油や有害化学物質汚染現場の分解微生物をモニタリングするためには、培養法による分解微生物の計数、並びに現場試料からの集積培養法や平板培養法による微生物の分離・培養、および分離した微生物の分解性を評価するための培養物中の石油の分析などに多くの労力と時間を要する。また、きわめて重要なことは、自然界に生息する微生物の内、現在上記のように分離・培養できる微生物は1%以下でしかないということである。従って、上記のように従来の分離・培養法に依存した石油分解細菌や有害化学物質分解細菌のモニタリング法のみでは、現場微生物の1%程度を対象としたモニタリングしかできず、汚染現場で石油や有害化学物質の分解に関わる大半の難分離微生物に対するモニタリングはできない。
また、最近石油以外にPCB、トリクロロエチレンなどの有害化学物質による土壌・地下水汚染の浄化に、それらの有害物質を分解する微生物を利用したバイオレメディエーションの開発が進められている(児玉 徹ら編:地球をまもる小さな生き物たち−環境微生物とバイオレメディエーション−、技報堂出版、1995、八木修身ら:バイオレメディエーションの水域環境への適応、(日本水産学会監修(石田祐三郎、日野明徳編):生物機能による環境修復―水産におけるBioremediation は可能か−、恒星社厚生閣、p. 9- 21, 1996)。しかし、バイオレメディエーション過程における微生物群集や分解微生物の挙動などについてはほとんど解明されていない。
本発明は、石油や有害化学物質などで汚染された現場環境で優占する石油や有害化学物質などの汚染物質分解微生物を解明する手法、およびそれらの微生物を利用した環境浄化・修復技術の開発を進める上で不可欠な石油や有害物質等の汚染物質分解微生物、並びに自然環境中から酵素等有用物質生産微生物を検出するための材料および方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、マイクロプレートMPN、ダイレクトPCRおよびシークエンシングを組み合わせた手法により、石油汚染現場の試料から遺伝子レベルで石油分解細菌を検出・定量し、かつ顕微鏡を用いた直接計数法によりその数を全菌数と比較して優占度を把握するという新規なモニタリング手法を開発した。この手法は、石油分解細菌の分離を必要としないこと、また分離が困難な微生物も含めて石油分解細菌のモニタリングが可能なこと等から、従来の問題を克服することができる。さらに、本発明の上記手法は、平板培養分離法によらず分子・細胞レベルで、有害化学物質等の汚染物質を分解する微生物や酵素等の有用物質生産微生物などの特定機能微生物の検出・定量を行い、それら特定機能微生物の環境中での優占度や挙動等の解析に応用できる新規モニタリング手法や新規有用微生物のスクリーニング手法として有用である。
また、本発明者らは、上記の手法により、1997年1月2日の日本海におけるナホトカ号石油流出事故後の同年1月15日に油濁海水中に優占していた微生物の16S rRNA遺伝子(以下、16S rDNAと略称)領域の塩基配列を決定することで、現場環境で優占していた石油分解細菌の16S rDNAの塩基配列情報の分子系統学的な特徴を明らかにした。また、培養法によらず分子・細胞レベルにおいて微生物検出を行うため、得られた塩基配列情報に基づいて前記微生物のみを特異的に標識可能なDNAプローブの開発にも成功した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)自然環境から特定機能微生物およびその遺伝子を検出および定量する方法であって、以下の工程:
1)自然環境から採取した微生物含有試料を段階希釈し、特定機能微生物が増殖しうる条件下で培養を行った後、増殖した特定機能微生物の計数を行う一連の操作と並行して、前記微生物含有試料中の全菌数の計数を行うとともに、全従属栄養微生物の計数を行い、全菌数および/または全従属栄養微生物数に対する特定機能微生物数の比率から、自然環境における特定機能微生物の優占度を推定する工程、
2)特定機能微生物の増殖が陽性と判定される最も希釈段階の高い培養液中の微生物からDNAを抽出し、該DNAを鋳型として特定の遺伝子領域を増幅し、クローニングする工程、
3)クローニングした遺伝子領域の異同を調べ、前記微生物含有試料中の微生物の塩基配列を検索する工程と
4)検索された塩基配列情報から、自然環境下に生息する特定機能微生物を同定する工程
を含む前記方法。
(2)特定機能微生物および全従属栄養微生物の計数をMPN法により行い、全菌数の計数を直接顕微鏡計数法により行い、特定機能微生物の増殖を顕微鏡観察により判定する(1)記載の方法。
(3)特定機能微生物が特定の化学物質を分解する微生物である(1)または(2)記載の方法。
(4)自然環境に優占している微生物の遷移を解析することにより、自然環境の微生物群集機能を評価する工程を含む(1)または(2)に記載の方法。
(5)有害化学物質汚染環境を解析・評価する、請求項(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)配列番号1〜4のいずれかの塩基配列の一部を有し、Cycloclasticus属の石油分解細菌と特異的にハイブリダイズしうる、塩基長10〜50 bpのRNAまたはDNAプローブを使用して塩基配列を検索する、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)配列番号1〜4のいずれかの塩基配列の一部が配列番号5、6および7の塩基配列からなる群より選択される(6)記載の方法。
本発明は、1)自然環境から採取した微生物含有試料を段階希釈し、特定機能微生物が増殖しうる条件下で培養を行った後、増殖した特定機能微生物の計数を行う一連の操作と並行して、前記微生物含有試料中の全菌数の計数を行うとともに、全従属栄養微生物の計数を行い、全菌数および/または全従属栄養微生物数に対する特定機能微生物数の比率から、自然環境における特定機能微生物の優占度を推定する工程、2)特定機能微生物の増殖が陽性と判定される最も希釈段階の高い培養液中の微生物からDNAを抽出し、該DNAを鋳型として特定の遺伝子領域を増幅し、クローニングする工程、3)クローニングした遺伝子領域の異同を調べ、その塩基配列を決定する工程、および4)決定した塩基配列情報から、自然環境下に生息する特定機能微生物を同定する工程を含む、自然環境から特定機能微生物およびその遺伝子を検出および定量する方法を提供する。この方法において全菌数の計数を行うことは、対象とする自然環境試料中での微生物群集全体の大きさ(母集団の大きさ)を知る上で不可欠なものであり、その中での特定機能微生物の優占度を見積もる工程において大変重要な意味をもつ。
ここで、「自然環境」とは、地球上の生物圏を意味し、海洋や湖沼、河川、排水処理環境等の水圏、土壌や陸上地下、海底地下等の地圏、地球表層のような気圏等、微生物が生息している地球上全ての環境をいう。
「特定機能微生物」とは、自然環境に生息する微生物の中で、その機能が培養や遺伝子解析により特定化された微生物のことをいい、例えば、石油、トクロロエチレン、PCB、ダイオキシン等有機塩素化合物、環境ホルモン物質(アルキルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸エステル等)、有機水銀、シアン化合物、有機スズ化合物などの有害化学物質を分解する微生物、およびキチナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リグニン等の分解酵素や各種抗生物質等の有用物質を生産する微生物などを例示することができる。
「特定機能微生物の遺伝子」とは、上記特定機能微生物が保有する遺伝情報のことをいい、たとえばその機能の発現に関与する遺伝子や、リボゾーマルRNA遺伝子(rRNA遺伝子またはrDNAと略称)やトポイソメラーゼ遺伝子等の分類学的な基準遺伝子の中でその特定機能微生物を特定化しうる塩基配列情報などを例示することができる。
「特定機能微生物およびその遺伝子の検出および定量」とは、上記特定機能微生物やその遺伝子を、特異的に検出し定量(計数)することを言う。特定機能微生物を検出・定量する場合、培養に用いる基質利用能の有無に基づき増殖の有無として特異的な検出が可能であり、培養前に試料を段階希釈しておくことにより計数(定量)が可能である。また、この計数を可能とした培養液より微生物の遺伝子や細胞を取り出し解析することにより、定性的な解析(微生物の同定や特定遺伝子の検出)が可能となる。
すなわち、遺伝子を抽出してシークエンサーによりその塩基配列を解読し、分子系統解析や相同性解析等を行うことにより、その微生物の同定や特定遺伝子の検出を行うことができる。このような段階希釈選別・培養を行うことにより、通常のPCR時に問題となる増幅エラーを低減させたより正確で定量的な遺伝子解析が可能となる。また、その特定機能微生物に特異的なDNA/RNAプローブや抗体等を用いることにより、ハイブリダイゼーション手法や抗体に標識した物質(蛍光物質や酵素等)を仲介させた検出手法等を用い、細胞レベルや分子レベル(細胞を破砕して試料調製した場合)でその存在を検出することができる。したがって、これらの定性的な解析過程で、試料中にその遺伝子塩基配列や抗原等の標的物質の存在が確認された場合、その存在は上記特定機能微生物の計数の場合と同様に、標的物質を保有する微生物数として計数し定量化することができる。
上記の方法において、まず、自然環境から採取した微生物含有試料を段階希釈し、特定機能微生物が増殖しうる条件下で培養を行う。
「自然環境から採取した微生物含有試料」とは、微生物が生息する地球上の生物圏から採取した試料をいい、例えば、大気、海洋、湖沼、河川、土壌、陸上地下、海底地下などから採取した水、土壌、底泥、岩石などの試料、および微生物が共存、共生している微細藻類、大型藻類、動物プランクトン、各種動植物などの試料を例示できる。
微生物含有試料の段階希釈は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、微生物がその他の生物と共存、共生していたり微生物が大きな集塊を形成していることが想定される場合には、段階希釈の前に用いる試料(試料が個体の場合は滅菌した初期希釈液)中において、たとえば数分間のボルッテックスミキサー処理や1分程度の超音波洗浄処理等を行い、顕微鏡観察により微生物細胞の分散を確認しながらできるだけ試料中の微生物を遊離、分散させておく。次に、その微生物含有試料を滅菌希釈液で段階希釈する。たとえば、10 mlスケールで10倍の段階希釈を行う場合、滅菌希釈液(例えば、海洋由来の試料では人工海水や天然海水、淡水由来試料では蒸留水等、動植物由来試料では生理食塩水等、この他それぞれの培養に用いる培養液)を滅菌した試験管等に9 mlずつ分注し、その試験管に微生物含有試料1 mlを加え、よく振とう・撹拌する。これを一次希釈試料液(希釈倍率10 倍、10-1 試料)とする。ついで、この一次希釈試料液1 mlを新たな滅菌希釈液9 mlに加えて、十分撹拌・振とうし、これを二次希釈試料液(希釈倍率10倍、10-2 試料)とする。以下、この操作をn回繰り返すことにより、n次希釈試料液(希釈倍率:10 倍、10-n 試料)を得ることができる。このように、10倍段階希釈の場合、試料液と希釈液の比率は1:9であればよい。
各段階希釈物は、特定機能微生物が増殖しうる条件下で培養される。例えば、特定機能微生物が石油または有害化学物質を分解する微生物である場合には、石油または有害化学物質を炭素源とする培地で各段階希釈物を培養する。ここで、「培養」とは、段階希釈物中に存在する微生物を生育・増殖させることをいい、培養は、温度、湿度、pH、栄養源の種類および量等の培地組成などが制御された状態で行われるとよい。
培養後、増殖した特定機能微生物の計数を行う。特定機能微生物の計数は、例えば、液体培地を用いるMPN法(清水 潮:MPN法による一般従属栄養細菌数の測定。沿岸環境調査マニュアルII−水質・微生物篇。日本海洋学会編、恒星社厚生閣、p.281、1990)および/または寒天やシリカゲル等で固化させた固体培地を用いる平板計数法により行うことができる。ここで、特定機能微生物として一般の好気性微生物を対象とする場合には、ガス置換をしない通常の方法で培地調製し培養すればよい。また、培地およびそれを入れる試験管や容器中より空気を窒素ガス等で置換し、酸素混入のない条件で培養することにより、各種嫌気性微生物を計数の対象にすることも可能である。このうち、MPN法は、検出感度が他の方法より高いので好ましい。
具体的には、培地9 mlを含む培養試験管を上記に示した試料の各希釈段階ごとに3本または5本ずつ準備しておく。試料中の微生物数により4〜6段階程度の希釈試料を準備する。微生物数が多いと見込まれる場合には、事前に希釈した試料を培養計数に用いてもよい。MPN法の場合、希釈段階は10倍となる。この培養試験管に、前記微生物含有試料の段階希釈で調製した各希釈段階の試料を3本または5本の培養試験管にそれぞれ1 mlずつ加える。この試験管を微生物の至適な培養温度、例えば20℃で一定時間培養し、培地の濁りなどで菌の増殖を判定する。得られた結果から、MPN計数表(3本法または5本法)によって試料中の微生物数を算出する。
ここで、石油分解菌や有害化学物質分解菌を特定機能微生物としてMPN計数する場合、唯一の炭素源として石油や有害化学物質を上記培地に加えることによって計数することができる。また、キチナーゼ等有用酵素生産微生物の場合、培地の炭素源を目的とする酵素の基質(キチナーゼの場合はキチン等)にすることによって計数できる。
上記において、微生物の増殖の判定には、増殖に伴い生じる菌体の濁りの有無で判定するのがふつうであるが、増殖に伴う培地組成の変化(たとえば、pHや基質濃度の減少、生成物の増大等)で判定することもできる。また、希釈倍率の高い試料で、用いる培地組成や培養条件等により菌体増殖の程度や培地組成の変化が乏しい場合には、試料中の菌体の有無を直接顕微鏡観察して判定することが望ましい。直接顕微鏡観察は、直接顕微鏡計数法(後述)に準拠して行えばよい。ただし、この場合、試料中の菌体の有無の判定を目的としており、試料を添加しない場合のコントロール値より有為な細胞数の検出が確認できればよい。
上記において、特定の基質を用いて増殖が陽性と判定された試料の内、最も希釈倍率の高い試料については、その希釈直後、すなわち培養前に存在していた特定機能微生物の細胞数は、理論的には1〜9細胞、種類数も1〜9種類となる。したがって、通常の寒天平板を用いた培養手法での分離が不可能であっても、この増殖陽性と判定された最も希釈倍率の高い液体培養試料には、増殖によりそれ以上の数の微生物が存在していることになり、これを対象としてDNAレベルでの解析を行う場合、PCR時のエラーの問題が軽減できるという利点がある。実際には、遺伝子解析手法(後述)を用いることにより、その種類を高い精度で効率的に推定することが可能となり、採取した原試料中にいた微生物の細胞数とその種類に関する情報が一度に得られるという利点がある。
上記の段階希釈、培養および特定機能微生物の計数の一連の操作と並行して、前記微生物含有試料中の全菌数の計数を行うとともに、全従属栄養微生物の計数を行う。
「微生物含有試料中の全菌数」とは、試料中に存在する全微生物細胞数のことで、実際には細胞密度(単位容量あたりの細胞数)として表す。
全菌数の計数は、例えば、フォルマリン等で細胞固定した試料を染色せずに血球計数板等を用いてそのまま計数したり、各種DNA蛍光染色剤を用いて染色した細胞をフローサイトメータ計数したりすることもできるが、より正確には直接顕微鏡計数法により行うことができる。
このうち、直接顕微鏡計数法は、環境微生物の全菌数計数法として最も信頼性の高い手法であり、これに用いるDNA特異的染色剤によりアクリジンオレンジ法(J.E. Hobbie et al., Appl. Environ. Microbiol., 33:1225-1228, 1977)やDAPI法(K.G. Porter and Y.S. Feig, Limnol. Oceanogr., 25: 943-948, 1980)等がある。細胞を染色しない場合には、環境試料中に多数存在する微生物以外の粒子を計数してしまう危険性が高く、また染色して機械的に計数する場合でも、微生物細胞を直接認識しないため擬似染色された粒子を計数してしまう可能性が高い。したがって、簡便性と信頼性の点で、直接顕微鏡計数法を用いることが最も好ましい。
以下に、直接顕微鏡計数法の具体的な作業例を示す。試料を採取後、直ちに中性ホルマリン(最終濃度2%程度)を加えて固定し冷蔵庫保存する。それを小分けした試料に対し、DAPI溶液(4',6-diamidino-2-phenylindole)を終濃度 0.5〜5 μg/mlで添加し5分間程度細胞を染色する。次に、染色した微生物細胞を、黒色色素で染色された孔径0.2μm のNucleporeフィルターで濾過し、フィルター上に細胞を捕集する。このフィルターをピンセットで取り外し、あらかじめ1滴の蛍光顕微鏡用エマルジョンオイルを落としたスライドグラス上に濾過面を上にしたままのせる。次いで、1滴のエマルジョンオイルをこのフィルター上に落とし、カバーグラスをかぶせる。こうして得られたプレパラート上に、さらに1滴のエマルジョンオイルを置き、油浸で落射型蛍光顕微鏡下で観察し計数する。全菌数は下記の計算から求める。
全菌数(cells/ml)=(1方形中の平均細菌数×フィルター上の濾過面積)/(試料水中の濾過量(ml)×方形の面積
ここで方形とは、接眼レンズ中に挿入したマイクロメータを通して観察される正方形のグリット視野の大きさのことを意味する。
「従属栄養微生物」とは、増殖に際し、他の生物がつくった有機化合物を細胞構成成分として必須とする微生物をいう。
全従属栄養微生物の計数は、例えば、固体培地を用いる寒天平板法や液体培地を用いるMPN法により行うことができる。特定機能微生物の計数をMPN法で行う場合には、全従属栄養微生物の計数もMPN法で行うことが好ましい。一般の自然環境水試料を対象とした従属栄養細菌計数の場合、MPN法では平板法よりも通常多くの生菌数が数えられることから、検出感度の点でも平板法より好ましい。
具体的に、全従属栄養微生物をMPN法で計数する場合、培地として従属栄養微生物用培地(たとえば実施例1に示した1/2TZ培地)を用い、前述のように一定時間培養し、培地の濁り等で菌の増殖を判定し、得られた結果からMPN計数表によって試料中の全従属栄養微生物数を算出するという手順で行うことができる。
そして、全菌数および/または全従属栄養微生物数に対する特定機能微生物の比率から、自然環境における特定機能微生物の優占度を推定する。具体的には、同じ自然環境から同時に採取した同一試料を測定対象として用い、直接顕微鏡計数手法によって得られた全菌数を分母とし、MPN法等によって得られた特定機能微生物数を分子とすることにより、その優占度を見積もる。この場合、理論的に特定機能微生物数は個々の細胞を認識して計数した全菌数を上回ることはなく、常に0〜100%の幅で優占度を見積もることが可能である。また、全菌数に代え、MPN法等によって得られた全従属栄養細菌数を分母におくことにより、全従属栄養細菌に占める特定機能微生物の割合を求めることもできる。さらに、同じ自然環境から同時に複数の試料を採取し、それぞれ同一試料を用いて上記測定を行い、平均値や標準偏差を求める等の統計処理を行うことにより、対象とした自然環境中での特定機能微生物の優占度の信頼性を向上させることができる。
また、特定機能微生物の増殖が陽性と判定される最も希釈段階の高い培養液中の微生物からDNAを抽出する。
微生物からのDNAの抽出は、公知の方法(例えば、M. G. Murray and W. F. Thompson, Nucleic Acids Research, 8: 4321-4325, 1980 に記載されている方法)により行うことができる。
抽出したDNAを鋳型として特定の遺伝子領域を増幅し、クローニングする。
「特定の遺伝子領域」としては、16S rDNAの他、5S, 18S, 23S rDNA等のリボゾーマルRNA遺伝子、トポイソメラーゼ遺伝子、エロンゲーションファクター遺伝子、二酸化炭素固定酵素遺伝子およびその微生物の基質特異性に関与する酵素等の特定機能遺伝子などを例示することができる。
特定の遺伝子領域の増幅およびクローニングは、公知の方法(例えば、増幅については J. Sambrook et al., Molecular cloning: a laboratory manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, pp. 14.1-14.35, 1989、クローニングについては D. Kaufman and G. Evans, BioTechniques, 9: 304-406, 1990 に記載されている方法)により行うことができる。実際には、無作為に数十クローン試料を選抜し、それら試料中に目的とする特定の遺伝子領域の全長が含まれているかどうかをゲル電気泳動解析により確認する。たとえば、増幅した特定遺伝子領域の全長が2 kbpである場合、ゲル電気泳動上でも2 kbp近辺の位置にバンドが形成され確認できる。
次いで、クローニングした遺伝子領域の異同を調べ、その塩基配列を決定する。
具体的には、上記により獲得したクローン試料、望ましくは30以上の試料を、EcoRIやApaI、XbaI等いくつかの制限酵素を用いて断片化した後、ゲル電気泳動解析によりこれらの制限酵素断片長の多型性(RFLP)パターンの異同を調べる。ここで、異なるRFLPパターンを示した試料は異なる塩基配列情報を有すると考えられることから、この工程により、クローン試料を大まかにグループ化するとともに可能な限り同一クローン試料を除外することで試料を選別し、DNAシークエンサーを用いてその塩基配列を決定する。また、このRFLPパターン解析に基づく試料選別のみならず、DNAプローブを用いたハイブリダイゼーション解析等によっても、その異同(この場合、プローブが標的とする塩基配列の相同性)を事前に調べることができ、違いの大きい(相同性の低い)試料を塩基配列解析の対象として選別することができる。前述のように、本発明の手法では、これらの選別過程においては、理論上最大でも9種のグループが出現するのみである。ここで、もし9種以上のクローン試料が出現した場合には、クローニング過程で用いた微生物が保有する酵素による不可抗力的な塩基置換の可能性も否定できないが、その違いが多岐にわたる場合には、段階希釈−培養計数時における判定ミスの可能性が高いと判断でき、さらにより希釈度の高い試料を対象に優占的な微生物の検出を行うことができる。
最後に、決定した塩基配列情報から、自然環境下に生息する特定機能微生物を同定する。具体的には、GeneBankやEMBL、DDBJ等のデータベースより各分類群にまたがるいくつかの代表種の塩基配列情報を入手し、Clustal W(version 1.7, Des Higgins, 1997)やSe-Al(version 1, Andrew Rambaut, 1996)のようなプログラムを用いて多重アラインメント処理(解析対象とする複数の塩基配列間で塩基の挿入や欠損箇所を削除し、相互に置換の有無のみを示す配列の集合体とするような再配列化処理)をした後、下記に示す分子系統解析や相同性解析を行い、その分子系統上の近縁性や塩基配列の相同性から既存種のどれに近いかを判定し同定する。
同定される微生物は、自然環境から採取した試料中に存在するものであるが、前述したように、希釈倍率の高い試料で検出・同定されるものであれば、その自然環境で優占していた微生物である確率が非常に高い。さらに、自然環境から採取した同一試料について、前述した全菌数や従属栄養細菌数を測定しておけば、より科学的にその優占度を%表記することが可能となる。例えば、石油汚染現場から採取した試料の場合には、上記の方法により、現場に優占する石油分解細菌を同定し、かつ全菌数や全従属栄養細菌数との比較により、その優占度を%表記することができる。
ここで「同定」とは、培養可能な微生物を対象とした現代的な分類・同定の工程の中で、塩基配列情報に基づく分子系統解析の工程のみを指し、解析対象とする微生物の遺伝子について、類縁微生物種のそれと分子系統学上の同一性または近縁性を証明するという行為である。分子系統解析手法としては、近隣結合法(NJ法:N. Saitou and M. Nei, Mol. Biol. Evol., 4: 406-425, 1987)および/または最節約法(MP法:W.M. Fitch, Syst. Zool., 20: 406-416, 1971)、最ゆう法(ML法:J. Felsenstein, J. Mol. Evol., 17: 368-376, 1981)を用いることができる。実際には、NJ法による解析はClustal W(version 1.7, Des Higgins, 1997)やPHYLIP(J. Felsenstein, version 3.57c, 1995)等、MP解析はPAUP* (D. L. Swofford, test version 4.0d63)等、ML解析はMOLPHY(version 2.3b; J. Adachi and M. Hasegawa, Computer science monographs, no. 28. Tokyo Institute of Statistical Mathematics, 1996)等のソフトウエアーを用いて実施することができる。これらの分子系統解析の結果、入手したクローンのいくつかが系統樹上で既存種とは明確に異なる操作上の分類ユニット(Operational Taxonomic Unit)の一群(クラスター)を形成した場合(経験的な目安として、その分岐の再現性確率を示すブートストラップ値が70〜80%以下の場合)、それは分子系統学上新規グループと判断され、分類学上でも新種の可能性が高いと考えることができる。
本発明の上記の方法においては、さらに、この同定の精度を向上させるため、相同性解析などの工程を含むことが好ましい。この相同性解析は、対象とする塩基配列領域において、個々に塩基配列が決定され相互に比較可能な領域、望ましくはその遺伝子の全領域の塩基配列の数を分母とし、その中で塩基配列が完全一致するものの数を分子として%計算する方法により、たとえばGenentyx-MAC 8.0解析ソフト(Genetic Information Processing Software社製)を用いて解析できる。特に、16S rDNAの全領域を対象とし、その相同性が97%以上である場合、それらを互いに同一種と推定することが国際基準として提唱されている(E. Stackebrandt and B.M. Goebel, Int. J. Syst. Bacteriol. 44: 846-849, 1994)という点で有利である。一方、分子系統解析および相同性解析の上から同一種と推定される場合においても、本工程により得られる相同性が100%を下回った場合、同一種の中での塩基配列の多様性の幅や亜種の存在を示唆するものとなる。これは、入手した新しい塩基配列情報やデータベース上の既存情報から種特異的塩基配列を選抜し、そのプローブを設計するといった派生的な作業を行う上で、重要な参照データになり得ることを意味する。
特定機能微生物は特定の化学物質を分解する微生物であってもよく、特定の化学物質としては、石油および石油成分、トリクロロエチレン、PCB、ダイオキシンなどの有機塩素化合物、環境ホルモン物質(洗剤に使用されているアルキルフェノール、主にポリカーボネート樹脂等の原料ビスフェノールA、プラスチックスの可塑剤であるフタル酸エステル)、有機水銀、シアン化合物、有機スズ化合物などの有害化学物質を例示することができる。石油(広義には、一般に原油と呼ばれる。)中に存在する主要な炭化水素は、化学構造によって大きく飽和炭化水素と芳香族炭化水素に分類される。前者はさらにn-パラフィンと分技パラフィン等のパラフィン類と単環と多環のシクロパラフィンを含むシクロパラフィン(ナフテン)類に分けられる。後者は単環と多環の芳香族炭化水素に分けられる(東原孝規、月刊海洋、30巻、10号、613-621、1998)。一般にこのような原油中に含まれる炭化水素を分解する微生物を石油分解微生物という(J.G. Leahy and R.R. Colwell, Microbiol. Rev., 54: 305-315, 1990, R.M. Atlas and R. Bartha, Adv. Microbiol. Ecol., 12: 287-338, 1992)。
また、特定機能微生物は、特定の有用酵素生産微生物であってもよく、特定の酵素としては、キチナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リグニン分解酵素などを例示できる。
上記の方法を用いて、自然環境に優占している微生物の遷移を解析することにより、その自然環境の微生物群集機能を評価することができる。ここで、「微生物群集機能」とは、対象とした自然環境中に生息する複数種の微生物により営まれる総体としての機能のことをいう。ここで言う微生物の種類とは、通常の分類単位である種であることが好ましいが、実験上の機能単位、たとえばPCB分解菌群という一つの機能単位であってもよい。したがって、特定機能微生物一種のみの機能を微生物群集機能とは呼ばない。また、微生物群集内の異種微生物間の相互作用は、共生と呼べるほどの強い場合やただ存在しているだけの場合が考えられるが、その各々全てを特定することが困難であることから、その試料中に見出された全ての微生物による総合的な機能のことを微生物群集機能と呼ぶ。
実際には、一種のみで、現在知られている微生物機能の全てを備えた微生物は存在しないことから、そこで見出された微生物たちは栄養物や酸素等の生育に影響を及ぼす諸要因をめぐりそれぞれに固有のニッチェ(生態学的地位)をもち、その大多数が相互に弱い連携関係にあるものと考えることができる。この微生物群集機能の存在は、たとえば、滅菌海水を用いた培養条件では良好な増殖を示す微生物でも、同じ海水を滅菌せず自然のまま用いた培養条件では同様の増殖が見られないということからも容易に推定できる。
また、石油の分解をめぐっては、脂肪族炭化水素を分解する微生物や芳香族炭化水素を分解する微生物以外にも、それらの分解中間代謝産物を炭酸ガスまで分解する過程には多くの微生物が関与しており、これらの微生物にビタミン等の微量必須栄養素を供給する微生物等も共存しているものと考えられ、複数種の微生物が協同して石油を無機化、無毒化しているものと考えることができる。この場合、ある分解産物が生育阻害物質になりうる場合には、その分解産物を利用可能な微生物と共存することにより分解効率は上昇するものと考えられ、微生物群集全体として高い分解機能が発現されることになる。
具体的には、前述した方法により微生物群集内の一種または複数種の特定機能微生物、たとえば好気性の炭化水素分解菌やPCB分解菌、タンパク質分解菌、グルコース資化性菌等および嫌気性の硫酸還元菌やメタン生成菌等の優占度を調べておき、その経時的な変動を調べることにより、各々の特定機能微生物の遷移を解析することができる。その結果、たとえば、沿岸表層水において、ある時期に硫酸還元菌の優占度が上昇していれば、その時の微生物群集は潜在的に硫酸還元機能が高いと評価できるし、その原因として、試料採取以前に台風や地殻活動等による海底堆積物の巻き上がりや嫌気的な廃水の流入等により、それらが通常の嫌気的な生息環境から移入してきたものと推定することができる。
また、上記の方法を用いて、汚染環境を解析・評価することができる。たとえば、対象とする特定機能微生物が、あるパルプ工場の排水中に特異的に優占する従属栄養細菌である場合、ある時期にその優占度が上昇していれば、その環境はこの排水に汚染されている可能性が高いと判断できるし、その優占度の変化を長期間モニターしその遷移の周期性や季節性を把握していれば、その変化が突発的なものであるかどうか、またその負荷が人為的なものかどうかを評価することができる。
さらに、上記の方法を用いて、有害化学物質汚染環境を解析・評価することができる。たとえば、対象とする特定機能微生物がPCB分解菌である場合、ある時期にその優占度が上昇していれば、その環境はPCB汚染されている可能性が高いと判断できるし、その微生物群集は総体としてPCB分解機能が高まっていると判定できる。さらに、その優占度の変化を長期間モニターしその遷移の周期性や季節性を把握していれば、その変化が突発的なものであるかどうか、その負荷が工場排水の流入等人為的なものかどうかを推定することができる。
また、上記の方法を用いて、油濁環境を解析・評価することができる。たとえば、対象とする特定機能微生物が石油成分由来のもの、たとえばテトラデカンやアントラセンの分解菌である場合、ある時期にその優占度が上昇していれば、その環境は石油等で汚染されている可能性が高いと判断できるし、その微生物群集は総体としてその石油成分の分解機能が高まっていると判定できる。さらに、その優占度の変化を長期間モニターしその遷移の周期性や季節性を把握していれば、その変化が突発的なものであるかどうか、その負荷が船舶事故等に起因した人為的なものかどうかを推定することができる。
また、上記の方法を、有用酵素や抗生物質等の有用物質生産微生物の検出、定量およびスクリーニングに応用することもできる。例えば、培地の炭素源としてキチン、脂質、リグニン、セルロース、キシランなどを用いると、それを分解する酵素(キチナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼなど)を生産する微生物が増殖して、その遺伝子を検出、定量することができる。また、通常のペプトンおよび酵母抽出物などから構成される培養液等を用いて微生物を増殖させ、その生産物の中に抗生物質等有用物質が含まれているかどうかを調べることにより、有用物質生産微生物の検出、定量を行うことができる。
また、最近では、上記酵素等の有用物質生産遺伝子の塩基配列が解明され、データベースが構築されている。したがって、本方法は、試料中に最も優占している微生物の有する遺伝情報を解明し、その塩基配列と既存の酵素等有用物質生産遺伝子データベース上の塩基配列とを対比させることによって、有用物質の検索を可能にするものである。さらに、目的とする酵素等の有用物質生産遺伝子の塩基配列を有する微生物数を定量的に把握することもできる。これは、自然界から有用物質生産微生物の検出、定量およびスクリーニングを行う上できわめて有効である。
従来、これら酵素等の有用物質生産微生物の検出、定量およびスクリーニングには、各種の分離源試料から、酵素の基質となるセルロース、キチン等を唯一の炭素源とした培地を用いて、集積培養法や寒天平板法等により、多数の微生物を分離し、さらに分離菌株の有用物質生産性を試験するなど、多大な労力を要した。
以上のように、本発明は、自然環境中の微生物群集の中から、平板分離法での分離が困難な微生物であっても、酵素等有用物質生産遺伝子塩基配列を有する微生物を定量的に検出し解析することを可能にする方法を提供するものである。したがって、本発明は、従来の方法に比べて効率的かつ利便性が大きく、これまで対象とされていなかった平板培養分離が困難な有用物質生産微生物の検出、定量およびスクリーニング手法としてもきわめて有益である。
上記の方法により、1997年1月2日に起こった日本海重油流出事故により大量の重油が漂着した福井県三国町沿岸域の表層海水から、配列番号1〜4の塩基配列を有する16S rDNAの遺伝子情報が得られた。この遺伝子情報から、現場環境に優占していた石油分解細菌は、Cycloclasticus pugetiiまたはその近縁種であることがわかった。すなわち、後述の実施例に記載のように、上記石油流出事故後の油濁海域における微生物群集の中から、C重油を唯一の炭素源とした液体培地でのMPN培養計数法により優占していた石油分解細菌を選別し、次いで、選別した石油分解細菌の培養細胞からDNAを抽出し、このDNAを鋳型として適当なプライマー(例えば、16S rDNAの保存領域に対応するプライマー)を用いてPCRを行い、PCR反応液を電気泳動にかけることにより、配列番号1〜4の塩基配列を有する16S rDNAを得、この16S rDNAの塩基配列をオートシークエンサーにより決定した。この遺伝情報を用い、前述の分子系統解析や相同性解析を行い、この現場で優占していた石油分解菌がCycloclasticus pugetiiまたはその近縁種に由来するものと同定した。
配列番号1〜4の塩基配列情報に基づいて、種々の用途に適したRNAおよびDNAプローブを設計することができる。プローブの塩基配列および長さは用途に応じて、適宜選択すればよい。例えば、FISH法(fluorescence in situ hybridization)により、試料(例えば、石油流出事故後の石油で汚染された区域の海、河川、湖沼などの水)中のCycloclasticus 属の微生物、特に、Cycloclasticus pugetiiおよびその近縁種の石油分解細菌を検出または定量したり、多数の微生物群の中からCycloclasticus属の微生物、特に、Cycloclasticus pugetiiおよびその近縁種の石油分解細菌をスクリーニングするためには、配列番号1〜4の塩基配列の塩基番号823〜853の領域(Escherichia coliの16S rDNAの塩基配列における5’末端からの位置(ナンバーリングシステム)では、829〜866の領域)などから選択される領域に対応する塩基長10〜50 bp、好ましくは塩基長15〜25 bpのプローブを設計するとよい。一例として以下のプローブを挙げることができる。
(1)5'-GGAAACCCGCCCAACAGT-3'(Cyclopug829-846*, 18mer)(配列番号5)
3'-CCTTTGGGCGGGTTGTCA-5'
(2)5'-TGCACCACTAAGCGGAAACC-3'(Cyclopug847-866*, 20mer)(配列番号6)
3'-ACGTGGTGATTCGCCTTTGG-5'
(3)5'-GGAAACCCGCCCAACAGTTGCACCACTAAGCGGAAACC-3'
(Cyclopug829-866*, 38mer)(配列番号7)
(なお、*(数字)はEscherichia coliの16S rDNA塩基配列における5'末端からの位置(ナンバーリングシステム)を示す(H.F. Noller and C. R. Woese, Science, 212:403-411, 1981)。
(3)のプローブの塩基配列は、(1)と(2)のプローブの塩基配列が隣接したものであるが、この場合はプローブが自己結合する可能性があるので注意が必要になる。
プローブは、公知の方法、例えば、ホスホルアミド法またはトリエステル法により合成することができる。あるいは、DNA自動合成機により合成してもよい。
また、プローブは、アイソトープ(32P、35Sなど)、蛍光色素(ビオチン/アビジン、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン-ローダミン、Fluorescein-isothiocyanate (FITC)、LuciferYellow CH、Rhodamine 123、Acridine orange、Pyronin Y、Ethidium bromide、Propidium iodide、Ethidium homodimer、BOBO-1、POPO-1、TOTO-1、YOYO-1、Carboxyfluorescein diacetate (CFDA)、Fluorescein diacetate (FDA)、Carboxyfluorescein diacetate-acetoxymethylester (CFDA-AM)、5-cyano-2,30ditolyl tetrazolium chloride (CTC)、Tetramethylrhodamine isothiocyanate(TRITC)、Sulforhodamine 101 acid chloride (Texas Red)、Cy3、Cy5、Cy7、2-hydroxy-3-naphtoic acid-2'-phenylanilide phosphate (HNPP)など)、ジゴキシゲニン等の抗原物質などで標識するとよい。もし抗原物質で標識した場合には、酵素免疫学的な手法を用い、基質の酵素分解を経て生じる化学発光や蛍光を検出すればよい。
本発明のRNAまたはDNAプローブを用い、種々のハイブリダイゼーション法(サザンブロット法、ノーザンブロット法、コロニーハイブリダイゼーション、ドットハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション(例えば、FISH法)など)により、Cycloclasticus属の微生物、特に、Cycloclasticus pugetiiおよびその近縁種の石油分解細菌を検出または定量したり、スクリーニングすることができる。
本発明のDNAプローブを用いて、石油流出事故現場の海水から石油分解細菌を検出・定量する方法の一例について以下に説明する。石油流出事故現場の海域から海水を採取し、この海水中に存在する微生物をフィルター(孔径0.2μm)に固定し、これを蛍光色素等で標識した配列番号5の塩基配列を有するDNAプローブとハイブリダイズさせ、プローブを洗い落とした後、蛍光顕微鏡で観察して、DNAプローブとハイブリダイズした細菌(石油分解細菌)の検出または計数を行う。
また、本発明のDNAプローブを用い、コロニーハイブリダイゼーション手法、ドットブロットハイブリダイゼーション手法、フローサイトメトリー法などにより、多数の微生物群の中からCycloclasticus属の微生物、特に、Cycloclasticus pugetiiおよびその近縁種の石油分解細菌をスクリーニングすることができる。
さらに、配列番号1〜4の塩基配列との相同性、または配列番号1〜4の塩基配列情報に基づいて設計したRNAまたはDNAプローブを用いたDNA/DNAまたはDNA/RNAハイブリダイゼーションにより、Cycloclasticus属の石油分解細菌を同定することができる。ここで、「同定」とは、配列番号1〜4のように対象とする遺伝子のほぼ全領域の塩基配列を解析した場合には、その塩基配列間での相同性の計算を意味する。また、上記のようにして設計した分類学的に特異的な塩基配列(この場合、Cycloclasticus属の微生物で、特にCycloclasticus pugetiiという種およびその近縁種に特異的な塩基配列)をもつプローブを用いる場合には、対象とする遺伝子試料がもつ塩基配列間とのハイブリダイゼーション試験のことを意味する。
相同性の計算は、対象とする遺伝子の塩基配列領域、望ましくはその全領域において、個々に塩基配列が決定され相互に比較可能な領域の塩基配列の数を分母とし、その中で塩基配列が完全一致するものの数を分子として%計算する方法により、たとえばGenentyx-MAC 8.0解析ソフト(Genetic Information Processing Software社製)を用いて行うことができる。
配列番号1〜4の塩基配列の相同性によりCycloclasticus属の石油分解細菌を同定するには、16S rDNAの塩基配列に基づく種の一般的な判断基準に従うとよい。すなわち、16S rDNAのほぼ全領域を対象とし、その相同性が97%以下である場合には、便宜的に異種と判断することができる(E. Stackebrandt and B.M. Goebel, Int. J. Syst. Bacteriol., 44: 846-849, 1994)。
たとえば、ある微生物の16S rDNAの塩基配列について、配列番号1〜4の塩基配列との相同性をGenentyx-MAC 8.0(前出)のような解析ソフトを用いて計算した場合、その数値が97%以上の場合は同種と判断され、それが97%未満の場合には異種と判断される。
しかし、一部の分類群では、97%以上の相同性があっても、異種と定義されている場合もある。たとえば、Vibrio choleraeとVibrio mimicusの間では相同性が98.9〜99.4%もあることが知られている(清水と塚本:海洋細菌の分類と同定。海洋微生物とバイオテクノロジー、清水潮編。技報堂出版、pp.1-24, 1991)。また、Vibrio科の海洋細菌を対象とした研究では、種の範囲は相同性が99.3%以上の集団であり、97%以上の相同性をもった集団は属の範囲だと推測されている(清水と塚本:前出)。したがって、この97%以上の相同性という基準を根拠とした同定は、あくまで便宜的なものと考え、予め対象とする分類群についての種と相同性の関係を調べてから適用することが必要である。
具体的には、Cycloclasticus属細菌の場合、C. pugetiiの1種しか正式に種の認定がされていないため、97%の相同性が見られた場合には、便宜的に当該種と同定される。しかし、前述したVibrio属細菌の例を見ても明らかなように、今後の研究を必要とする当該属のような場合、97%程度ではまだ異種の可能性が十分残されている。
RNAまたはDNAプローブを用いたDNA/DNAまたはDNA/RNAハイブリダイゼーションにより、Cycloclasticus属の石油分解細菌を同定するには、以下のようにするとよい。
同定に用いるハイブリダイゼーション手法としては、ドットブロットハイブリダイゼーション手法(H. E. N. Bergmans and W. Gaastra, New Nucleic Acid Techniques (J. M. Walker ed.); Methods in Molecular Biology, vol. 4, Clifton, Humana press, pp. 385-390, 1983)やコロニーハイブリダイゼーション手法(M. Grustein and D.S. Hogness, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 72: 3961-3965, 1975)、サザンブロットハイブリダイゼーション手法(E. M. Southern, J. Mol. Biol., 98: 503-507, 1975)、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(またはホールセルハイブリダイゼーションとも言う)手法(R. I. Amann et al., Microbiol. Rev., 59: 143-169, 1995)などを用いることができる。これらのハイブリダイゼーション解析に用いる微生物からのDNA/RNA試料の調製は、それぞれの文献に記載された公知の方法で行うことができる。
ここで、どのハイブリダイゼーション手法を用いるかによらず重要なことは、用いるプローブとそれが標的とする遺伝子塩基配列を有する標準菌株試料との間で、たとえばD. A. Stahl and R. Amann (Development and application of nucleic acid probes. In: Necleic acid techniques in bacterial systematics. E. Stackebrandt and M. Goodfellow (ed.). John Wiley and Sons, West Sussex, pp.205-248, 1991) などに記載された方法に基づき、ハイブリダイゼーションの温度条件や用いる緩衝液中のフォルムアミド濃度条件を推定し、事前に厳密なハイブリダイゼーション条件、理想的には100%に満たない相補性の場合にはハイブリダイゼーション過程とその後の洗浄過程で遊離してしまう条件を実験的に決定しておくことである。
このようにして決定したハイブリダイゼーション条件に基づき、上記のような標的とする標準菌株やそれとは分類学上大きく離れた別の標準菌株からの遺伝子試料を対象試料として用い、未知試料に対してハイブリダイゼーションを行う。その結果、プローブに直接標識された放射性元素や蛍光物質または抗原(この場合、その抗体に結合させておいた酵素作用を利用する)に起因して生ずる放射能や蛍光、化学発光等(抗原ー抗体ー酵素検出系の場合には、用いる酵素基質を変えることで検出系を選択できる)の強度を測定し、対象試料のそれと対比する。得られた未知試料でのハイブリダイゼーションの強度が、標的とする標準菌株のそれと同等であり、分類学上大きく離れたものとの間に大きな差が認められた場合(理想的には測定限界以下の強度しか検出できない場合)、この未知試料は標的微生物と同一種と同定またはその近縁種と特定することができる。
また、例えば、上記プローブの塩基配列(DNA断片)をプライマーとして用いて、PCRを行うことによって菌種の同定を行うこともできる。すなわち、同定の対象となる菌体を溶菌して、上記プローブの塩基配列をもつDNA断片をプライマーとして添加した後、PCR増幅する。そのPCR産物を電気泳動等により解析し、16S rDNAの増幅が確認されれば、対象とした菌には、用いたDNA断片に相補的な遺伝子部位が存在していることになる。すなわち、配列番号1の塩基配列を有する16S rDNAを持つ微生物と同種の菌であることが特定できる。
本発明の方法により、検出、スクリーニングあるいは同定されたCycloclasticus属の微生物、特に、Cycloclasticus pugetiiおよびその近縁種の石油分解細菌は、微生物製剤(例えば、石油分解用微生物製剤)として利用することができる。
また、本発明の16S rDNAやプローブの塩基配列情報を利用して、石油分解細菌の自然界や石油処理条件下における挙動を解明し、油濁海域への栄養塩などの添加あるいはこの石油分解微生物の散布により石油分解効率を賦活化するといった環境修復技術(バイオレメデイエーション技術)の開発を図ることができる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願平11-237818号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明を以下の実施例により具体的に説明する。これらの実施例は説明のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕
(1)重油流出事故現場海域における石油分解微生物等の調査
1997年1月2日に起こった日本海重油流出事故により大量の重油が漂着した福井県三国町沿岸域の表層海水を汚染直後の1月15日に採取し、プランクトンネット(目合い:約30μm)でろ過した後、マイクロプレートMPN(M-MPN)計数法により、現場表層海水中の石油分解微生物を計数した。M-MPN計数は、1/10NP培地(NH4NO3, 100mg;Ferric citrate, 2mg; K2HPO4, 2mg; Aged seawater, 800ml; Distilled water,200ml; pH7.8)を1.8mlずつ分注した24穴マイクロプレートのウエル中で供試海水を10倍段階希釈後、唯一の炭素源として、n-テトラデカン、灯油およびC重油を各10μl添加し、20℃で培養した。このMPN計数は3本法で行った。増殖の判定は各ウエルの培地の濁度や浮遊する石油の変化などを菌無接種の対照ウエルと比較して行った。並行して、基本的にはPorterとFeigの方法(K.G. Porter and Y.S. Feig, Limnol. Oceanogr., 25:943-948, 1980)に準じて全菌数の計数、ならびに1/2TZ培地(Polypeptone, 2.5g;Bacto-Yeast extract, 0.5g; HEPES, 4.77g; Kester's artificial seawater, 900ml; Distilled water, 100ml; pH7.5)を用いたM-MPN計数による従属栄養細菌の計数を行った。また、事故直後の1997年1月15日から約1年間にわたり、季節ごとに表層海水を採取し、上記方法により海水中の全菌数を直接顕微鏡計数法、従属栄養細菌数や石油分解細菌数をMPN法により調べた。
その結果、油流出現場海域の全菌数は1年を通し105cells/mlオーダーレベルで特に大きな変動はみられなかったが、石油分解細菌数は大きく変動した。すなわち、流出油漂着直後の現場海水中のn-テトラデカン、灯油、C重油分解細菌数は、約103〜104 MPN/ml(全菌数に対する分解細菌数の比率(優占度):1〜10%)と高い値を示したが、同海域で約2ヶ月後では10〜10MPN/ml(優占度:0.01〜1%)と著しく減少した。一方、従属栄養細菌数は、汚染直後は10MPN/ml以上、約2ヶ月後においてもほぼ同程度の10〜10MPN/mlの値を示した。これらのことから、石油流出事故直後の現場微生物群集は、水温が12~13℃と低い冬季であるにもかかわらず、石油成分に対する分解機能を通常より著しく高めていると判断された。
(2)現場海域に優占する石油分解微生物の選別
上記事故直後の1997年1月15日に採取した現場表層海水試料を用い、1/10NP培地にC重油を添加しM-MPN計数に用いたウエルの中で、増殖が陽性と判定される最も高い希釈段階のウエル(増殖陽性フロント試料)の中から石油分解微生物試料を採取した。この微生物試料は、現場微生物群集を10倍段階希釈法により限界まで絞り込んだものの培養液であることから、この中の微生物は現場油濁海域で最も優占していたものと考えることができる。
(3)選別した石油分解微生物からのDNAの抽出
増殖陽性フロント試料を遠心分離により集菌し、567μlのTEバッファー(10mM Tris-HCl, 1mM EDTA, pH8.0)に懸濁した。この懸濁液に30μlの0.01% sodium dodecyl sulfate(SDS)と3μlの20mg/ml Proteinase K溶液を加え、37℃で1時間インキュベートした。次いで、5M NaClを100μl加えよく攪拌し、65℃で10分間インキュベートした後、クロロホルム:イソアミルアルコール混合液(24:1)を700μl加え、穏やかに攪拌した。遠心後、上層(水層)を分取し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(20:24:1)を当量加え穏やかに攪拌した。遠心後、その上層(水層)を分取し、0.6容のイソプロパノールを加え、DNAを遠沈した。そのDNAは70%エタノール(-20℃)で洗浄した後、乾燥させ100μlのTEバッファーに溶解した。
(4)クローニング
(3)により回収・精製したDNAをテンプレートとして16S rRNA遺伝子の保存領域に対応するプライマー27fおよび1525rを用いて、16S rRNA遺伝子をPCR増幅した。
27f:5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’(配列番号8)
1525r:5’-AAAGGAGGTGATCCAGCC-3’(配列番号9)
このPCR産物(16S rDNA)は、電気泳動によりその存在を確認した後、Original TA Cloning(r) kit(Invitrogen Co.)を用いて、クローニングを行った。
(5)RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)解析
まず、無作為に40クローンを選び出し、それらクローンに16S rRNA遺伝子の全長がインサートされているかを確認した。その結果、17クローンが16S rRNA遺伝子の全長がインサートされていることがわかった。次に、それら17クローンを、現場海域で優占していたと考えられる石油分解菌群集の大まかな傾向をつかむため、5種類の制限酵素(EcoRI、HindIII、SalI、XbaIおよびRsaI)を用いて、RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)解析によりグルーピングした。その結果、各制限酵素において、1〜3種類の切断パターンが得られた。最終的には、5種類の制限酵素によるそれぞれの断片パターンから4グループに分かれた。
(6)フルシークエンシング
(5)のRFLP解析によりグループに分けられた4グループから各1クローン、合計4クローン(CHO11-1-1、CHO11-1-2、CHO11-1-4、CHO11-1-34)を選抜し、16S rRNA遺伝子の全塩基配列を決定した。
シークエンスは、RNAシークエンスキット(Thermo SequenaseTM fluorescent labelled primer cycle sequencing kit with 7-deaza-dGTP、アマシャム社製)を用いて、オートシークエンサー(ALFred DNA Sequencer、ファルマシア社製)によりシークエンスを行い、16S rDNAの塩基配列を決定した。
(7)分子系統解析
決定した4クローンの16S rDNAの塩基配列情報より、予備検索としてRibosomal Database Project (RDP) II(イリノイ大学)の検索エンジンを用いて、それらと類似の配列情報をもつ微生物の存在を調べた。次いで、この類似の配列ならびに各分類群の代表菌株の配列をデータベース(GenBankやEMBL、DDBJ等)から入手(ダウンロード)し、Clustal W(前出)やSe-Al(前出)プログラム等を用いて、この4クローンの16S rDNAの塩基配列とともに多重アラインメント処理を行った。このアラインメントデータ(約1500 bp)を対象に、PHYLIP(前出)プログラムを用い、NJ法(前出)による分子系統解析および100回反復によるブートストラップ解析を実施した。
その結果、1997年1月に起こった日本海重油流出事故直後の表層海水に優占していた石油分解微生物は、Proteobacteriaのγサブグループに属する細菌で、Cycloclasticus pugetii(C. pugetii)と非常に近縁のものであることが判明した。また、16S rDNA塩基配列のほぼ全長を対象とした相同性解析の結果、この4クローンの内の3クローン(CHO11-1-2、CHO11-1-4、CHO11-1-34)は、C. pugetiiのそれ(GenBank No.: U12624)と99%前後(記載順に99.2%、98.8、99.1%)の相同性を、しかし、他の1クローン(CHO11-1-1)は、それより低い相同性(97.2%)しか見られないことがわかった。したがって、これら4クローンは、C. pugetiiと同種またはその近縁種に由来する配列と推定された。C. pugetiiと同種またはその近縁種と判断された4クローン(CHO11-1-1、CHO11-1-2、CHO11-1-4、CHO11-1-34)の16S rDNA塩基配列を、それぞれ配列番号1〜4に示す。
上述した4クローンと非常に近縁と判断されたCycloclasticus pugetiiは、最近、米国太平洋岸のポリ塩化ビフェニールで汚染されている海底堆積物から分離された芳香族炭化水素分解能を有する微生物として報告されている(S.E. Dyksterhouse et al., Int. J. Syst. Bacteriol. 45: 116-123, 1995)。そこで、本属種の標準菌株(ATCC 51542)を入手して調べた結果、この微生物はビフェニール等の特殊な有機物を添加した培地でのみ増殖するという特徴をもっており、それらを添加した平板培養では微小コロニーしか生成せず、通常の従属栄養微生物用培地では平板培養分離が困難であることが判明した。
一方、本発明の16S rDNA塩基配列情報は、石油流出事故直後の油濁海水中微生物試料から初めて発見されたものであり、海底堆積物からでも、ポリ塩化ビフェニール汚染海域からでもない点で大きな特徴を有する。これは、上述したように、C. pugetiiまたはその近縁種の分離が大変困難であることに起因するものと推測されるが、今後、本発明に記載されたような方法等により、世界中の海域で広く検出される可能性がある。
得られた16S rDNA塩基配列(配列番号1〜4)は、石油汚染現場よりC重油を唯一の炭素源として用いた段階希釈培養液試料より得られたものであることから、それらはC重油中の炭化水素成分を分解し増殖した微生物に由来する遺伝子塩基配列情報と考えることができる。また、上述したように、これらの配列情報を有していた微生物は、芳香族炭化水素の分解能を有するCycloclasticus pugetiiに分子系統学上近縁であり、相互に高い相同性を有していることも示された。したがって、この配列番号1〜4の塩基配列を有する微生物で、C. pugetiiまたはそれに近縁の微生物は、難分解性の多環芳香族炭化水素等の分解機能を有する細菌と考えることができる。このことは、配列番号1〜4の遺伝子情報が、石油流出現場の微生物相を調べる上で、また、その微生物相や該遺伝子情報を有する微生物の分布密度から石油の汚染状況やその分解状況を解析する上で、きわめて有効であることを意味している。
すなわち、流出原油や流出重油中の難分解性多環芳香族炭化水素は、易分解性脂肪族炭化水素等に比べ長期間汚染海域に残留するため、これら難分解性多環芳香族炭化水素を分解して増殖していた可能性が高い微生物由来の配列番号1〜4の塩基配列情報は、実際の石油汚染沿岸環境やその汚染現場での石油汚染浄化修復プロセスをモニタリングする上で、きわめて有効な指標として利用できるものである。また、配列番号1〜4の塩基配列情報は、Cycloclasticus pugetiiまたはそれに近縁の微生物に由来すると推測されるが、既知のものとは100%の相同性を示さず新規な配列情報を含んでいる。したがって、この分類群において種またはグループ特異的なプローブを作製する上でも、きわめて有益なものと判断される。
さらに、以上のような一連の解析手法、すなわちマイクロプレートMPN/ダイレクトPCR/シークエンシング手法は、現場海域に優占する石油分解微生物を解析するのに非常に有効であることが明らかになった。
〔実施例2〕
(1)Cycloclasticus pugetiiに種特異的な配列の選択(プローブデザイン)
実施例1で行った分子系統解析の結果を用い、16S rRNAの高次構造を考慮して、C. pugetiiに特異的な配列を選択した(プローブデザインを行った)。デザインした2種類のプローブ(Cyclopug829-846とCyclopug847-866)を以下に示す。
◆プローブCyclopug829-846
5'-GGAAACCCGCCCAACAGT-3'(829-846*, 18mer)(配列番号5)
(3'-CCTTTGGGCGGGTTGTCA-5')
◆プローブCyclopug847-866
5'-TGCACCACTAAGCGGAAACC-3'(847-866*, 20mer)(配列番号6)
(3'-ACGTGGTGATTCGCCTTTGG-5')
ここで、*は、Escherichia coliの16S rDNA塩基配列における5’末端からの位置(ナンバーリングシステム)を示す。
(2)データベースによるプローブチェック
(1)でデザインしたプローブの特異性を確認するため、データベース(Ribosomal Database Project II,RDP)を用いて、プローブマッチ検索を行った。検索エンジンは、RDPに付属されているものを使用し、ミスマッチ配列を2塩基の条件で行った。その結果、デザインした2つのプローブともRDP上のCycloclasticus属6株のみとマッチし、ミスマッチ配列が1塩基もなく完全に一致した。また、2つのプローブとも自己結合しないことが確認された。これらのCycloclasticus属6株は、2株がC. pugetiiで、残りの4株はCycloclasticus sp.で未同定株か未承認種の株である。参考までに、RDP上でマッチしたCycloclasticus属6株の由来を表1に示す。
Figure 2006042817
ここで、Cycloclasticus属の16S rDNA塩基配列情報としては、7件6株のものがRDPデータベース上に登録されている。この中で、IJSB(International Journal of Systematic Bacteriology)やIJSEM(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology)等に発表され正式に種と認められているものは、C. pugetiiのみであり、現状では一属一種の分類群である。表1中、C. oligotrophusは未承認種で、C. pugetiiとの違いは明確でない(当該配列間の相同性は99.3%)。
以上のことから、今回、油濁環境由来の微生物16S rDNA塩基配列からデザインした2つのプローブは、Cycloclasticus pugetiiまたはその近縁種と非常に高い特異性をもっていることが明らかになった。
〔実施例3〕
デザインしたプローブとCycloclasticus pugetiiの標準菌株ATCC51542が特異的にハイブリダイズすることをFluorescence in situ hybridization(FISH)法により確認した。
(1)プローブの合成と標識
実施例2において、データベースにより特異性が確認されたプローブのCyclopug829-846及びCyclopug847-866をDNA合成機により合成し、常法により精製した。それらのプローブCyclopug829-846及びCyclopug847-866の5'末端をTetramethylrhodamine isothiocyanate(TRITC)でラベルした。
(2)供試菌株の培養と固定
C. pugetiiの標準菌株ATCC51542をAmerica Type Culture Collection(ATCC)から入手し、ポリ塩化ビフェニルを添加した1/2TZ培地(前述)を用いて、20℃で培養した。また、対照菌株として、Pseudomonas aeruginosa (P. aeruginosa)、Bacillus marinus(B. marinus)、Vibrio parahaemolyticus (V. parahaemolyticus)およびPsychrobacter immobilis (Psy. immobilis)の4種菌の標準菌株を、菌株保存機関が推奨する培地と温度で培養した。それぞれの培養細胞は、3%(w/v)パラホルムアルデヒド/3xPBS(NaCl, 24.0g; KCl, 0.6g; Na2HPO4, 4.32g; KH2PO4, 0.72g)溶液(pH 7.2-7.4)で固定し、遠心分離により集菌した後、3xPBSバッファーで洗浄した。さらに、対照プローブとしては、分子系統樹におけるBacteriaドメインに特異的なプローブEUB338(R.I. Amann et al., J. Bacteriol, 172: 762-770, 1990)を供した。
(3)ハリブリダイゼーション
(2)で前処理を行ったC. pugetiiと4種類の対照菌株の細胞をそれぞれゼラチンコーティング(0.1% gelatine, 0.01% KCr(SO4)2)してあるスライドガラスに滴下し、室温で乾燥させ、スライドガラス上に固定した。その後、50と80、100%エタノールを用いて脱水した。
スライドガラスの試料上にハイブリダイゼーションバッファー(0.9M NaCl, sodium sulphate buffer [pH 7.2], 0.5% sodium dodecyl sulfate [SDS], 5mM EDTA 1mg/ml Denhalt solution × 10 Poly (A))15μlを滴下した後、プローブを5ng/μlとなるように添加して、ハイブリチャンバー内(湿潤状態)で45℃、4.5時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズ終了後、スライドガラス上を5mlの洗浄バッファー(50mM sodium phosphate buffer [pH 7.0], 0.1%SDS, 0.9M NaCl )で洗い流し、50mlの洗浄バッファー中に42℃、30分間浸した。その後、蒸留水で洗浄し風乾した。次いで、試料上に1〜5μg/mlの4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)を添加して室温で5分染色した。蒸留水で洗浄した後、風乾し退色防止剤を滴下し、スライドガラスを被せ封入した。観察は、蛍光顕微鏡(Zeiss, Oberkochen, Germany)を用いてUV励起、B励起およびG励起で行った。
その結果を表2に示す。今回デザインしたプローブCyclopug829-846およびCyclopug847-866の場合、UV励起では各細胞中DNAにDAPIが普遍的に結合した結果として、DAPI由来の青色蛍光がC. pugetiiおよび対照菌株として供した4種類(P. aeruginosa, B. marinus, V. parahaemolyticusおよびPhy. immobilis)とも観察することができた。しかし、同視野をG励起で観察すると、C. pugetiiのみがプローブCyclopug829-846およびCyclopug847-866と相補的な配列を持つため、プローブの5'末端をラベルしたTRITC由来の赤色蛍光を発した。
Figure 2006042817
一方、Bacteriaドメインに特異的なプローブEUB338の場合は、B励起での観察においてもC. pugetiiおよび4種類の対照菌株とも、それぞれEUB338の5'末端をラベルしたFITC由来の緑色蛍光を発した。
以上のことから、今回、油濁環境由来の微生物16S rDNA塩基配列からデザインした2つのプローブは、Cycloclasticus pugetiiまたはその近縁種を特異的に検出する上で、その高次構造に起因する結合上の妨害も見られず、実際に大変有効であることが示された。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明により、自然環境(例えば、石油汚染時の現場環境など)で優占する微生物を解明する手法が提供された。
また、本発明の手法により解析された16S rDNAの塩基配列情報は、油濁環境で優占する能力を有する天然の石油分解微生物に由来すると考えられる。従って、この遺伝子およびこの遺伝子情報に基づいて本微生物の特異的な検出を可能にするように設計されたDNAプローブの塩基配列情報は、この石油分解微生物の自然界や石油処理条件下における挙動を解明し、油濁海域への栄養塩などの添加あるいはこの石油分解微生物の散布により現場石油分解効率を賦活化するといった環境修復技術(バイオレメディエーション技術)の開発を図る上で、きわめて大きな利便性がある。
本発明により、自然環境(例えば、石油や有害化学物質によって汚染された現場環境など)に優占する微生物やバイオレメディエーション過程における分解微生物の挙動を解明する手法が提供された。
さらに、本発明は、微生物を平板培養分離するという手法によらず、特定機能を有する微生物または微生物群を液体培養で選別し、その機能や系統分類学的位置を遺伝子レベルで解析する方法を提供するものである。従って、上記分解機能を有する微生物のみならず、これまで分離が困難であった酵素等有用物質を生産する微生物の検出、定量およびスクリーニングにも有益である。
(配列表の説明)
配列番号1〜4は、16S rDNAの塩基配列を示す。
配列番号5〜7は、プローブの塩基配列を示す。
配列番号8および9は、プライマーの塩基配列を示す。

Claims (7)

  1. 自然環境から特定機能微生物およびその遺伝子を検出および定量する方法であって、以下の工程:
    1)自然環境から採取した微生物含有試料を段階希釈し、特定機能微生物が増殖しうる条件下で培養を行った後、増殖した特定機能微生物の計数を行う一連の操作と並行して、前記微生物含有試料中の全菌数の計数を行うとともに、全従属栄養微生物の計数を行い、全菌数および/または全従属栄養微生物数に対する特定機能微生物数の比率から、自然環境における特定機能微生物の優占度を推定する工程、
    2)特定機能微生物の増殖が陽性と判定される最も希釈段階の高い培養液中の微生物からDNAを抽出し、該DNAを鋳型として特定の遺伝子領域を増幅し、クローニングする工程、
    3)クローニングした遺伝子領域の異同を調べ、前記微生物含有試料中の微生物の塩基配列を検索する工程と
    4)検索された塩基配列情報から、自然環境下に生息する特定機能微生物を同定する工程
    を含む前記方法。
  2. 特定機能微生物および全従属栄養微生物の計数をMPN法により行い、全菌数の計数を直接顕微鏡計数法により行い、特定機能微生物の増殖を顕微鏡観察により判定する請求項1記載の方法。
  3. 特定機能微生物が特定の化学物質を分解する微生物である請求項1または2記載の方法。
  4. 自然環境に優占している微生物の遷移を解析することにより、自然環境の微生物群集機能を評価する工程を含む請求項1または2に記載の方法。
  5. 有害化学物質汚染環境を解析・評価する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 配列番号1〜4のいずれかの塩基配列の一部を有し、Cycloclasticus属の石油分解細菌と特異的にハイブリダイズしうる、塩基長10〜50 bpのRNAまたはDNAプローブを使用して塩基配列を検索する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 配列番号1〜4のいずれかの塩基配列の一部が配列番号5、6および7の塩基配列からなる群より選択される請求項6記載の方法。
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