JP2006035466A - 積層シート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層は、溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂からなる最外層と、該最外層と接して変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1種類からなる層が、共押出し法により形成されたものである積層シート。
【選択図】なし
Description
特許文献2では、吸水性樹脂とカチオン性成分及び架橋剤等を必須成分とする組成物からなる水性インク受容層を少なくとも一方の外層とする水性インク記録用シートが開示されている。
特許文献3では、ポリビニルアルコールを主成分とし、かつカチオン性高分子化合物を含有するインクジェット記録用樹脂組成物が開示されている。
特許文献4では、親水性の熱可塑性樹脂及びカチオン性ポリマーAを含むインク受容層上に、最外層としてポリビニルアルコール及びカチオン性ポリマーBを含む表面層を有するインクジェット用記録材が開示されている。
本願発明は、樹脂同士及び支持体との密着性が良好で剥離することがなく、インクジェット記録適性に優れた積層シートを提供することを目的とする。
(1) 支持体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層は、溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂からなる最外層と、該最外層と接して変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1種類からなる層が、共押出し法により形成された熱可塑性樹脂層であることを特徴とする記載の積層シート。
(2)支持体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層は、溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂からなる最外層と、該最外層と接してエチレンメタアクリル酸共重合体又はエチレンビニルアルコール共重合体からなる層が、共押出し法により形成された熱可塑性樹脂層であることを特徴とする(1)記載の積層シート。
(3)最外層を形成する親水性熱可塑性樹脂がポリビニルアルコールである(1)又は(2)記載の積層シート。
(4)支持体が紙基材である(1)〜(3)のいずれかに記載の積層シート。
(5)積層シートがインクジェット記録用紙であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の積層シート。
(6)支持体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層は、溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂からなる最外層と、該最外層と接して変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1種類からなる層を形成するにあたり、これらの層を形成する樹脂を共押出し法により支持体上にラミネートすることを特徴とする積層シートの製造方法。
(1)最外層を溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂としたことにより、押出しラミネートが可能である。
(2)最外層の直下に変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂をラミネートしたので、その上に用いられた親水性熱可塑性樹脂の密着性を高めて、樹脂層間あるいは支持体との剥離を生じることがない。
(3)熱可塑性樹脂層を支持体に形成する方法として、全層を共押出しによる方法を採用することにより、層間の密着性をより一層向上させることができる。
(4)従って、本願発明の積層シートは、様々な用途に使用することができ、インクジェット記録用の記録媒体として好適であり、実用的価値の大変高いものである。
本願発明に使用される支持体としては、上質紙、再生紙、コート紙(塗工紙)等の紙基材、合成紙、フィルム等を挙げることができる。望ましくは、銀塩写真調の面感を与えることからコート紙、特にキャストコート紙であることが好ましい。
上質紙、あるいはコート紙の原紙の原料としては、特にパルプの種類等に制限はなくLBKP、NBKP、メカニカルパルプ等の木材繊維を主体に、必要に応じてコットンリンター、ケナフ、麻、竹等の非木材繊維、オレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、ガラス、ロックウール等の無機繊維が使用可能である。また、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等の無機填料や、必要に応じて内添、外添工程にて定着剤、顔料、染料、サイズ剤、紙力向上剤等を添加して、従来公知の製造方法に従い製造される。
支持体をコート紙、特にキャストコート紙とすることにより、表面の平滑性と光沢性が高くなり、積層シートにデザインを記録した時の美麗性が銀塩写真に匹敵するほど高く、用途に応じた商品とした場合の商品価値を高くするという効果を生じ好ましい。
コート紙は、一般に原紙上にバインダーと有機又は無機顔料とを主体として含有する塗工層を設けたものであり、各種方式による印刷用紙や記録用紙として広く用いられている。コート紙の製造方法も公知であり、通常使用されている種類の材料及び装置が適宜使用される。例えば、バインダーとしてはポリビニルアルコール、スチレン重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などやその誘導体等を挙げることができる。顔料はカオリン、焼成クレー、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらのバインダー、顔料、その他必要に応じて各種の添加剤を水系で分散させ塗工液を調製し、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター等を用いて、原紙の表面に塗工することにより塗工層を設ける。
中でもキャストコート紙は、湿潤状態にある塗工層を加熱した鏡面の金属ドラムに押し当てて乾燥させ、平滑な表面を得た紙であり、次のような製法により製造された紙である。塗工液が塗工された紙は、乾燥設備を通らず、塗工面側をキャストドラムに押し当てられる。キャストドラムに押し当てられると、塗工液中の水分は紙の裏側から蒸発する。一方、キャストドラムは鏡面ドラムからなっており、キャストドラムに押し当てられた側の面(塗工面)は、高い光沢を有するようになる。このようにして製造される直接法の他に塗工面の塗液を凝固液でゲル化させた後にキャストドラムに押し当てる凝固法、一度乾燥させた塗工面を再度湿潤させた後にキャストドラムに押し当てるリウェット法があるが、いずれの製法で得られたキャストコート紙でも本願発明の支持体として使用可能である。
本願発明で用いられるこれらの支持体は、市販のものを利用することができる。
本願発明の積層シートは、上記した支持体の片面に少なくとも2層の熱可塑性樹脂層を設けたものであり、その最外層が溶融ラミネートできる親水性樹脂からなり、インクジェット記録用インクを吸収できるものを1種類あるいは2種類以上を適宜選択して使用する。
親水性樹脂としては、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、吸水性ポリマーなどが挙げられる。中でも変性ポリビニルアルコールは、親水性はもちろんのこと、溶融押出し適性、ラミネート加工適性が良好であることから優れた樹脂である。変性ポリビニルアルコールとしては、一般に重合度が比較的低く、且つケン度が50〜90%のポリビニルアルコールは、250℃以下での温度で溶融押出し成型をすることが可能である。
また、例えば特許文献1に記載されているような、オキシアルキレン基を含有する重合体樹脂を使用することが可能である。例えば、次式で示されるオキシアルキレン基含有ビニルアルコール系重合体、すなわち、−(CHR2−CHR3−O)p−H[ただし、R2、R3は水素原子又はアルキル基(とくにメチル基又はエチル基)、pは整数]で示されるオキシアルキレン基を含有するエチレン性不飽和モノマーと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物が有用である。
最外層の熱可塑性樹脂には、不透明性、筆記性等を持たせる目的で酸化チタン、炭酸カルシウム等の白色無機顔料を配合することもできる。無機顔料の配合量は、これが配合される最外層に対して25重量%以下、できれば15重量%以下とすることが好ましい。配合量を増やすと、積層シートの平滑性や光沢などの表面性を悪化させることがある。無機顔料の粒径としては0.1〜20μmのものが好ましい。
最外層に用いられる親水性樹脂の直下には、最外層とその下に積層される熱可塑性樹脂層あるいは支持体との密着性を高めるために、接着性を有する熱可塑性樹脂を積層すると耐剥離性が向上する。支持体がコート紙であったり最外層の下に他の熱可塑性樹脂層が存在する場合は、最外層が剥離しやすい傾向があるため、中間に挟まれる樹脂は、最外層及び最外層の下に位置する熱可塑性樹脂層あるいは紙基材の双方への接着性が良好でなければならない。特に上記の親水性樹脂は、本来、水などに溶解し塗料の一部として含有されるものであるため、このような親水性樹脂に対しても強固な接着性を発揮する必要がある。
このような接着性を有する樹脂としては、本願発明では溶融押出し適性のある変性ポリオレフィン又は水酸基(OH基)を有する熱可塑性樹脂、あるいはこれらと親水性樹脂との混合物からなる樹脂組成物等を挙げることができる。また、同じ種類あるいは異なる種類を選び1層又は2層以上積層してもよい。
変性ポリオレフィンは、ポリオレフィン系炭素原子数2〜20のα-オレフィンの単独重合体あるいは共重合体を極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーでグラフト変性した変性物を使用することが好ましい。
単独重合体あるいは共重合体の例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・ペンテン-1共重合体、エチレン・4-メチルペンテン-1共重合体及びエチレン-ブテン-1共重合体等を挙げることできる。このような単独重合体あるいは共重合体のASTM-D-1238により測定したメルトフローレートは、通常は0.1〜30g/10分、多くの場合1〜20g/10分の範囲内にあり、ASTM-D-2117により測定した融点は、通常は50〜170℃、多くの場合80〜150℃の範囲内にある。さらに、ASTM-D-1505により測定した密度は、通常は0.88〜0.96g/cm3、多くの場合0.89〜0.96g/cm3の範囲内にある。
また、水酸基を有する熱可塑性樹脂は、最上層の親水性樹脂との親和性が高く接着性を高めることができる。水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられる。具体的には例えば、エチレンユニットとビニルアルコールユニットを含む共重合体樹脂を使用することができる。エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)あるいは、エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコールアセタール共重合体樹脂などが好ましい。これらの共重合体樹脂それぞれのユニットのモル比率は特に限定しない。エチレンユニットのモル比率は溶融押し出し温度で可塑性が発揮され、またインク記録層としてのインク吸収性が発揮されればよいが、25〜90モル%であることが好ましい。あるいは、少なくとも酢酸ビニルユニットとビニルアルコールユニットと側鎖に親水基を有するエチレン基とを含む共重合体樹脂を使用することもできる。例えば次式で示される共重合体、すなわち、-(CH2-CHOH)l -[CH2-CH(CH3OCO)]m -(CH2-CHR1)n -〔ただしR1は水素原子又はアルキル基、又は親水基(例えばカルボキシル基、アセトアセチル基、アミノ基、スルホン基などの親水基又はこれらの親水基で置換されたアルキル基等)、l、m、nは1以上の整数〕で示される。
EVOHはインクジェット記録の際のコックリングに対して優れている。
コックリングは、インク中の水分がインク吸収層を伝わって紙基材に入り、紙基材が伸び記録体全体として凹凸が生じる現象である。EVOHは、エチレンメタアクリル酸共重合体や他のポリオレフィン系樹脂(PP、PE)よりも、ガスバリアー性や水蒸気バリアー性が良好であって、水分が紙基材に浸透することが防止され、紙基材に凹凸の発生が押さえられるので印刷が乱れることがない。
本発明の積層シートにおいては、支持体と変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂からなる層との間に、他の熱可塑性樹脂層を積層することが可能である。これらは単一の樹脂を単層で使用しても、複数の樹脂を複層で使用しても良い。このような層を形成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等、ラミネート加工可能な樹脂を挙げることができる。
特に、支持体に接する層としては、密着性が良好なことからシングルサイト系触媒で合成された直鎖状低密度ポリエチレン(SS−LLDPE)が好ましく用いられる。SS−LLDPEは、活性点が均一なシングルサイト系触媒により合成されるため、汎用されるチーグラー触媒を用いて合成された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と比べ、シャープな分子量分布を示す。シングルサイト系触媒の代表的なものとしては、メタロセン系触媒を挙げることができる。これは、2個のシクロペンタジエン環に、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン等の遷移金属原子が、サンドイッチ状に挟まれた構造を有する触媒である。なお、シングルサイト系触媒を用いたLLDPEの合成は、気相法、高圧法、溶液法のいずれの方法で行っても構わない。
本願発明では、支持体の片面に性質の異なる上記の熱可塑性樹脂が積層されるものであるが、支持体の反対面は任意である。用途により、何も設けない、粘着剤を塗布する、低融点の接着性樹脂を単独あるいは複数の層としてラミネートするなどの場合がある。支持体の両面に熱可塑性樹脂層が存在する場合、これらの熱可塑性樹脂層の種類及び積層順序等は、一方の面と他方の面とで同一であっても異なっていてもよい。また、支持体の裏面には何も設けないか、必要に応じて樹脂をラミネートしたり塗工層を設けてもよい。樹脂層を設ける場合は、記録面側の積層樹脂と同じ樹脂を同じ構成で積層するのが好ましい。本願発明において、いわゆる記録面には必ず親水性樹脂を使用することが重要である。
支持体上への積層は、共押出しラミネーション法を用いて、最外層が親水性熱可塑性樹脂からなるように、その他の熱可塑性樹脂層を支持体上に積層し、製造する。共押出ラミネーション法は、溶融状態で樹脂を重ね合わせるため、逐次樹脂を積層し多層化するよりも樹脂層間の密着性を強くできるとともに、生産効率にも優れる。共押出しラミネーション法は、2台以上の押出機を用い、各熱可塑性樹脂を溶融状態でTダイに導き、各Tダイから同時に押出して積層接着するもので、例えば特開平11−207882号公報等に開示されているように、多層フィルム等の製造方法としても知られている。
共押出しラミネーションにあたり、樹脂は通常、150℃〜300℃程度の温度で溶融加工されるが、本願発明で好ましい範囲は160℃〜250℃、より好ましくは180〜220℃ある。溶融温度が低すぎると押出し機のトルク負荷が大きく押出し困難となり、高すぎると親水性樹脂が分解してしまうため、この範囲とすることによりラミネート適性が良好となる。
前記したように、不透明性等を目的として酸化チタン等の無機填料を最外層に配合すると、ラミネーション加工性は悪化することがある。かかる場合には、この無機填料が配合された樹脂を、無機填料を含まない樹脂と共押出しラミネートすれば、樹脂層の厚さを薄くしても、いわゆる膜切れ等のトラブルの発生を押さえて、安定した積層操作を行うことができる。
また、支持体及び熱可塑性樹脂の種類や操業条件等により、支持体と熱可塑性樹脂層、あるいは熱可塑性樹脂層同士の間の接着性が不良な場合には、支持体に予め接着層を塗工又は積層することも可能であり、また熱可塑性樹脂層と接着性樹脂層を共押出しラミネーションすることも可能である。接着性樹脂としては、最外層の下に用いられる変性ポリオレフィン系樹脂等をはじめ、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が使用される。
支持体上に積層される熱可塑性樹脂層の各層及び全体の厚さは、片面10〜80μm好ましくは20〜70μmの範囲にあることが好ましい。樹脂層全体の厚さが薄すぎる場合、共押出しラミネーション法による各層の積層が困難となる。また、厚すぎると製造コストが高くなり、しかも静電気が発生しやすくなるので、その必要がある場合には導電剤の使用などの対応が好ましい。
特に、最外層の下に位置する変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂からなる層の厚みは2〜20μm、好ましくは3〜15μmさらに好ましくは5〜10μmであることが好ましい。
最外層、変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂からなる層、及び他の熱可塑性樹脂層には、上記した以外にも、本願発明の目的を害さない限り、種々の添加剤を添加したり、塗工剤を塗工したりすることができる。例えば、これらの添加剤や塗工剤として、最外層、他の熱可塑性樹脂層には耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ等)、接着性向上剤など、一般的に使用される添加剤や塗工剤を使用することができる。また、インクジェット記録方式に対応させる場合は、最外層の上にインク受理のためさらに別の塗工層(顔料と接着剤含有層)や樹脂層等を設けてもよい。
本願発明の積層シートをインクジェット記録方式による記録に用いる場合には、親水性の熱可塑性樹脂からなる最外層の表面を記録面とする。この最外層はインクジェット記録用インクの吸収性に優れインク乾燥性も速く、記録の前後で表面性が悪化することもない。従って、良好なインクジェット記録画像と美麗な表面調が得られる。
さらに、親水性熱可塑性樹脂からなる層を両面の最外層とすることにより、両面記録が可能となる。また、本願発明の積層シートはその記録面側にインクを吸収させながら、支持体を排出させるため、親水性熱可組成樹脂からなる最外層の直下に特定の熱可塑性樹脂層を設けることにより、インクが支持体へ染込むことを防止でき、画像濃度を向上することができる。
美麗性が重視され高光沢が必要とされる用途の場合には、共押出しラミネーションにあたり、溶融した樹脂と接するクーリングロールとして周面を鏡面仕上げとしたものを用い、さらに、クーリングロールと対向するニップロールとして硬度の大きいものを用いて、高い線圧で樹脂と紙基材等との押圧・圧着を行えば、積層された樹脂表面を高光沢とすることができる。この目的のため、ニップロールとしては硬度80度(JIS K−6253)以上のものを用い、線圧は15kgf/cm以上で押圧・圧着を行うことが好ましい。なお、ここで高光沢とは、JIS P−8142に準じて測定を行った場合に、光沢度75%以上を示すことをいう。
最外層に用いられる熱可塑性樹脂として、親水性の熱可塑性樹脂を用いることにより、インクの吸着性が良好となり、記録後の画像濃度が向上する。また、最外層の直下に特定の樹脂層を設けることにより、最外層とこれに接する支持体あるいは他の熱可塑性樹脂との間での層間剥離が起こることのない、強固な密着性が付与される。本願発明で使用される変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂は接着性を有し、最外層の親水性熱可塑性樹脂、特に変性ポリビニルアルコールに対して優れた接着性を示す。この理由は、接着性樹脂が多官能基又はOH基を持つため、熱によって結合力が変化しやすくなり、ラミネート時の急激な加熱によって接着性がより強固になるためと考えられる。
次の評価試験を各実施例、比較例に対して行った。実施例及び比較例を表1に示し、実施例の評価結果を表2に示し、比較例の評価結果を表3に示す。
(発色濃度)
エプソン社製インクジェットプリンター『PM−G800染料インキ』、エプソン社製インクジェットプリンター『PX−G900顔料インキ』を表計算ソフト『エクセル』で黒(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)のベタ画像を作製し、プリンター添付のプリンタードライバーの設定を、印字品質については写真調、用紙については専用光沢紙をそれぞれ選択してプリントアウトした。恒温恒湿室にて一日間放置した後、マクベス濃度計(RD915、Macbeth社製)を用いて各色の印字濃度を測定し、その平均値を平均濃度とした。
◎:平均濃度が1.8以上である
○:平均濃度が1.7以上〜1.8未満の範囲である
△:平均濃度が1.6以上〜1.7未満の範囲である
×:平均濃度が1.6未満である
発色濃度と同様にしてグレー色の画像を印字し、顕微鏡にて250倍に拡大したドットの形状を、目視により以下の基準で評価した。
◎:輪郭がほぼ真円に近い
○:輪郭はなめらかであり、形もほぼ円形である
△:輪郭が乱れかつ円というよりむしろ楕円形である
×:輪郭がぎざぎざで円とは言い難い
マゼンタとグリーンのベタ画像が隣接するパターンを印字し、その境界部分の滲み(ブリード)を下記の基準にて目視によって評価した。マゼンタとグリーンで生じる境界にじみ部は黒色になるため、より厳密な評価ができる。
◎:境界部で滲みが全く認められない
○:境界部で滲みがほとんど認められない
△:境界部で滲みがやや認めらる
×:境界部で滲みが著しく認められる
金属板に両面テープを貼りつける。次に、幅1.5cm、長さ7cmのサンプルをカットし、金属板に貼りつけた両面テープにサンプルの支持体の裏面(熱可塑性樹脂が積層されてない面)を貼りつける。さらにサンプルの熱可塑性樹脂の最外層表面に、ニチバン社製透明粘着テープ(商品名セロテープ(登録商標))を強固に密着させ、この透明粘着テープを強制的に剥離して、次の基準で目視にて評価した。
◎:テ−プ粘着面に熱可塑性樹脂は付着しておらず粘着性が残っており、熱可塑性樹脂層間が強固に接着している状態。
○:テ−プ粘着面に熱可塑性樹脂層が付着し紙基材上にも熱可塑性樹脂層が残り層間剥離が見られるが、剥離に際して高い抵抗があり、実用上問題ない程度に熱可塑性樹脂層間が密着している状態。
△:テープ粘着面に熱可塑性樹脂が付着し紙基材にも熱可組成樹脂が残り層間剥離が見 られ、剥離に際し若干の抵抗はあるものの、熱可塑性樹脂層間が十分接着しておらず実用上問題のある状態。
×:熱可塑性樹脂層間で容易に剥離し、十分に接着していない状態。
上記と同様の試験を行い、紙基材とその上の熱可塑性樹脂層との密着性について、次の基準で目視にて評価した。
◎:剥離せず密着性良好。
○:若干剥離しやすいが実用上問題なし。
△:剥離しやすく密着性に劣る。
×:紙基材に全く密着していない。
市販のキャストコート紙(日本製紙(株)製商品名CLCキャスト)上に、中間層を設けないで、オキシアルキレン基を含む変性ポリビニルアルコール(クラレ社製CP−1000)100重量部を200℃で押出しラミネートを行ない、積層シートを得た。樹脂厚さは20μmとした。
最外層のオキシアルキレン基を含む変性ポリビニルアルコール(クラレ社製CP−1000)を低密度ポリエチレン(三井化学社製ミラソン11P)に代えた以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
最外層のオキシアルキレン基を含む変性ポリビニルアルコール(クラレ社製CP−1000)を低密度ポリエチレン(三井化学社製ミラソン11P)に代え、中間層のエチレンビニルアルコール共重合体樹脂(クラレ社製エバールCP−109)をエチレンメタアクリル酸共重合体樹脂(三井デュポンポリケミカル製ニュクレル42115C)に代えた以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
中間層のエチレンビニルアルコール共重合体樹脂(クラレ社製エバールCP−109)を低密度ポリエチレン(三井化学社製ミラソン11P)に代えた以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
市販のキャストコート紙(日本製紙製(株)商品名CLCキャスト)を支持体とし、320℃で低密度ポリエチレン(三井化学社製ミラソン11P)100重量部を8μmの厚さになるように押出しラミネートした。次に、200℃でオキシアルキレン基を含む変性ポリビニルアルコール(クラレ社製CP−1000)100重量部を厚さ20μmとなるように押出しラミネートして、積層シートを得た。
市販のキャストコート紙(日本製紙(株)製商品名CLCキャスト)上に、中間層を設けないで、低密度ポリエチレン(三井化学社製ミラソン11P)100重量部を320℃で押出しラミネートを行ない、積層シートを得た。ラミネート樹脂厚さは20μmとした。
中間層のエチレンビニルアルコール共重合体樹脂(クラレ社製エバールCP−109)を無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製アドマーSE800)に代えた以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
市販のキャストコート紙(日本製紙製(株)商品名CLCキャスト)を支持体とし、260℃でエチレンビニルアルコール共重合体樹脂(クラレ社製エバールCP−109)100重量部を8μmの厚さになるように押出しラミネートした。次に、200℃でオキシアルキレン基を含む変性ポリビニルアルコール(クラレ社製CP−1000)100重量部を厚さ20μmとなるように押出しラミネートして、積層シートを得た。
比較例4は、最外層は親水性の熱可塑性樹脂でありインクジェット記録適性は良好であるものの、中間層に低温での密着性の無い低密度ポリエチレンを使用しているため、層間剥離が生じたり支持体との密着性に劣っていた。比較例5は、エチレンメタアクリル共重合体を溶融押出しラミネートした後、最外層の親水性熱可塑性樹脂を溶融押出しラミネートしたものであるが、樹脂層間及び支持体との接着性が低く層間剥離などが生じた。比較例6は、支持体上に親水性の無い低密度ポリエチレンをラミネートしたもので、満足できる品質性能は得られなかった。比較例7は、無水マレイン酸変成を用いた例であるが、200℃程度の温度では本発明で用いる樹脂に比べて接着力に劣っていた。
Claims (6)
- 支持体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層は、溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂からなる最外層と、該最外層と接して変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1種類からなる層が、共押出し法により形成された熱可塑性樹脂層であることを特徴とする積層シート。
- 支持体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層は、溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂からなる最外層と、該最外層と接してエチレンメタアクリル酸共重合体又はエチレンビニルアルコール共重合体からなる層が、共押出し法により形成された熱可塑性樹脂層であることを特徴とする請求項1記載の積層シート。
- 最外層を形成する親水性熱可塑性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1又は2記載の積層シート。
- 支持体が紙基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
- 積層シートがインクジェット記録用紙であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
- 支持体の片面あるいは両面に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層は、溶融ラミネートできる親水性熱可塑性樹脂からなる最外層と、該最外層と接して変性ポリオレフィン又は水酸基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1種類からなる層を形成するにあたり、これらの層を形成する樹脂を共押出し法により支持体上にラミネートすることを特徴とする積層シートの製造方法。
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