JP2006033502A - 収音装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 マイクロホンが近接する場合にも指向性を有する信号を生成することができるとともに、どの方向から到来する音に対しても周波数特性の歪みの少ない信号を得ることができる収音装置を提供する。
【解決手段】 フィルタ回路FT1は、マイクロホンMC1からの受音信号X1(f)の低周波数域の増幅を行ない、フィルタ回路FT2は、マイクロホンMC2からの受音信号X2(f)の低周波数域の増幅を行なう。減算部SBは、フィルタ回路FT1の出力信号からフィルタ回路FT2の出力信号を減算して、減算された信号を指向性信号Y(f)として出力する。
【選択図】 図1
【解決手段】 フィルタ回路FT1は、マイクロホンMC1からの受音信号X1(f)の低周波数域の増幅を行ない、フィルタ回路FT2は、マイクロホンMC2からの受音信号X2(f)の低周波数域の増幅を行なう。減算部SBは、フィルタ回路FT1の出力信号からフィルタ回路FT2の出力信号を減算して、減算された信号を指向性信号Y(f)として出力する。
【選択図】 図1
Description
この発明はマイクロホンアレーを備えた収音装置に関し、特に、特定の方向から到達する音を強く増幅する指向性処理を行なう収音装置に関するものである。
様々な音が発せられている状況下で特定の音声を抽出する技術として、空間上に複数個のマイクロホンを設置し、各々のマイクロホンから得られた音声信号を用いて空間的に指向性を形成して、目的の音声を分離する技術(マイクロホンアレー技術)が提案されている。
マイクロホンアレーは音声信号を受信する機器に広く用いられる。マイクロホンアレーの利用される機器の例として、たとえば、携帯電話、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ボイスレコーダ、会議収音システムなどがある。
マイクロホンアレーの利用例について具体的に説明する。ボイスレコーダの場合、マイクロホンアレーは話者方向から到達する音声のみを強調して周辺雑音の受信を抑制する雑音抑圧機能を実現する。別の例として、携帯電話の場合、マイクロホンアレーは話者が携帯電話から少し離れた位置から発話する場合に周辺雑音の受信を抑制するハンズフリー通話機能を実現する。さらに別の例として、ビデオカメラの場合、マイクロホンアレーは、左右それぞれの方向に指向性を持った信号を生成し、それらをステレオ信号として用いることで、立体感のある音声を録音するステレオ化機能を実現する。
マイクロホンアレーを構成するマイクロホンには、たとえば、ECM(Electret Condenser Microphone)が用いられる。ECMは、音を電気信号に変換して出力する電子部品であり、1対の電極板で構成されたコンデンサと、そのコンデンサに接続された電子回路を備えている。上述のコンデンサは、電極板の一方が音を受けて振動する構造となっており、振動に伴って電極板間の距離が変化するので、容量が変化する。また、電極板にはエレクトレット(永続的に電荷が保持されるようにした物質)が用いられており、電極板間には電圧が生じているので、容量変化に伴って電圧変化や電流変化が生じて音が電気信号に変換される。上述の電子回路は、得られた電気信号の増幅やインピーダンスの調整を行なって信号の出力を行なう回路であり、トランジスタ、コンデンサ、抵抗などで構成される。また、ECMの種類によってはA/D変換器を内蔵し、電気信号をデジタル化して出力するものもある。
マイクロホンアレーを用いて指向性を形成する技術として、遅延和型アレーや、減算型アレーがある。
遅延和型アレーを用いて指向性処理を行なう例として、たとえば、特開2000−354290号公報(特許文献1)では、それぞれ異なる周波数帯域に狭指向性を示す複数のマイクロホンを配置し、それぞれの受音信号を加算し、広い周波数帯域においても鋭い指向性を得ることが可能なマイクロホン装置の例が開示される。
また、減算型アレーを用いて指向性処理を行なう例として、たとえば、特開2000−287295号公報(特許文献2)では、指向性処理を行なうマイクロホンアレーを2つ設け、これら2つのマイクロホンアレーを交差して配置することで、音響的に立体感のある音声信号を得ることが可能な信号処理装置の例が開示される。以下では、遅延和型アレーと減算型アレーによって指向性を形成する方法を説明する。
以下、遅延和型アレーと、減算型アレーの構成と動作について説明する。
(遅延和型アレー)
図15は、遅延和型アレーのマイクロホンの配置を示す図である。ここでは、マイクロホンの個数を8個とし、マイクロホンMC1〜MC8には、それぞれ番号1〜番号8が付されているものとする。マイクロホンMC1〜MC8は、その番号順に、直線状(つまりX軸上)かつ等間隔Dで並べられている。
図15は、遅延和型アレーのマイクロホンの配置を示す図である。ここでは、マイクロホンの個数を8個とし、マイクロホンMC1〜MC8には、それぞれ番号1〜番号8が付されているものとする。マイクロホンMC1〜MC8は、その番号順に、直線状(つまりX軸上)かつ等間隔Dで並べられている。
図16は、遅延和型アレーの構成を示すブロック図である。同図を参照して、マイクロホンMCn(n=1〜8のいずれかの整数である)は、たとえば、ECMで構成されており、音圧をアナログの電気信号に変換して、アナログ受音信号として出力する。
図16を参照して、AD変換部AD10n(n=1〜8のいずれかの整数である)は、マイクロホンMCnから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。A/D変換部AD10nから出力されるデジタルの受音信号を周波数領域で表現したものをXn(f)と示すことにする。
遅延部DL10n(n=1〜7のいずれかの整数である)は、入力される受音信号Xn(f)を時間τn=(7−n+1)D/c(但し、cは音速)だけ遅延させる。遅延τnを加える処理は、周波数領域においてexp(−2πifτn)を乗ずることに等しい。ここで、iは虚数単位である。したがって、遅延部DL10nから出力される信号は、以下の式(A1)のように表わされる。
Xn(f)exp(−2πif(7−n+1)D/c)…(A1)
A/D変換部AD108および遅延部DL101〜DL107から出力される信号は合成部ADDR1によって加算処理が行なわれ、平均化される。合成部ADDR1から出力される指向性信号Y(f)は以下の式(A2)のように示される。
A/D変換部AD108および遅延部DL101〜DL107から出力される信号は合成部ADDR1によって加算処理が行なわれ、平均化される。合成部ADDR1から出力される指向性信号Y(f)は以下の式(A2)のように示される。
Y(f)=1/8Σn=1 8Xn(f)exp(−2πif×(7−n+1)D/c) …(A2)
以下に遅延和型アレーの効果について説明する。
以下に遅延和型アレーの効果について説明する。
図15に示すように、音波SWが平面波として進行し、マイクロホンMC1〜MC8を結ぶX軸に対し、音波SWが到来角Φで到達したとする。ここで、到来角Φは、音波SWが到来する方向(つまり、音源の方向)の角度をいう。また、原点にマイクロホンが設置されていると仮定した場合に原点上のマイクロホンで得られる信号をX(f)とする。このとき、ある波面が原点に到達した時刻を基準にすると、その波面はマイクロホンMCn(nは1〜8のいずれかの整数である)に時間をτ1nだけ遅延して到達する。時間τ1nは、次の式(A3)のように表わされる。
τ1n=(n−1−3.5)×DcosΦ/c …(A3)
ここで、時間τ1nが負の場合は、原点よりもマイクロホンMCnに音波が早く到達することを示す。
ここで、時間τ1nが負の場合は、原点よりもマイクロホンMCnに音波が早く到達することを示す。
よって、マイクロホンMCn(nは1から8までの整数である)で得られる受音信号Xn(f)は、X(f)に対し時間τ1nだけ遅延する。受音信号X(f)を時間τ1nだけ遅延させた受音信号Xn(f)は以下の式(A4)のように表わされる。
Xn(f)=X(f)exp(−2πif×(n−1−3.5)×DcosΦ/c) …(A4)
式(A4)を式(A2)に代入すると、指向性信号Y(f)は、以下の式(A5)のように表わされる。
式(A4)を式(A2)に代入すると、指向性信号Y(f)は、以下の式(A5)のように表わされる。
Y(f)=(1/8)X(f)Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)
=(1/8)X(f)exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)×Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c) …(A5)
さて、受音信号X(f)に対する指向性信号Y(f)の振幅特性比G(f)は以下に示す式(A6)のように定義される。
=(1/8)X(f)exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)×Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c) …(A5)
さて、受音信号X(f)に対する指向性信号Y(f)の振幅特性比G(f)は以下に示す式(A6)のように定義される。
G(f)=|Y(f)/X(f)| …(A6)
式(A6)は、式(A5)を用いると、以下の式(A7)のように順次変形される。
式(A6)は、式(A5)を用いると、以下の式(A7)のように順次変形される。
G(f)=|(1/8)X(f)exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)/X(f)|
=|(1/8)exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)|
=|(1/8)||exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)||Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)|
=(1/8)|Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)| …(A7)
式(A7)において到来角Φ=0°のとき、1〜8のすべての整数nに対しexp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)の位相が揃うので、加算によって強められる。一方で、Φ=0°でないときは、exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)の位相は整数nによって異なるので、加算によってもそれほど強められない。よって、遅延和型アレーでは、到来角Φ=0°の方向に指向性が形成される。つまり、到来角Φが0°の場合、振幅特性比G(f)の値は最も大きくなる。
=|(1/8)exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)|
=|(1/8)||exp(2πifD(3.5cosΦ−7)/c)||Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)|
=(1/8)|Σn=1 8exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)| …(A7)
式(A7)において到来角Φ=0°のとき、1〜8のすべての整数nに対しexp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)の位相が揃うので、加算によって強められる。一方で、Φ=0°でないときは、exp(−2πif(n−1)D(cosΦ−1)/c)の位相は整数nによって異なるので、加算によってもそれほど強められない。よって、遅延和型アレーでは、到来角Φ=0°の方向に指向性が形成される。つまり、到来角Φが0°の場合、振幅特性比G(f)の値は最も大きくなる。
図17は、遅延和型アレーの振幅特性比G(f)と到来角の関係を示すグラフである。同図において、振幅特性比G(f)の単位はdBである。また、周波数fが2000Hzであり、マイクロホンMC1〜MC8の各々の間隔Dが0.02m(2cm)である。同図に示すように、到来角Φが0°付近で振幅特性比G(f)は大きいが、到来角Φが0°以外で振幅特性比G(f)は小さくなる。つまり到来角Φ=0°付近の音波に対して大きな振幅が得られており、それ以外の方向では振幅が小さく抑えられている。よって、このグラフからも、遅延和型アレーによって、到来角Φ=0°の方向に指向性が形成されることが示される。
(減算型アレー)
図18は、減算型アレーのマイクロホンの配置を示す図である。同図を参照して、マイクロホンの個数を2個であり、マイクロホンMC,MC2には、それぞれ番号1,番号2が付されているものとする。マイクロホンMC1とMC2は、間隔Dで並べられている。
図18は、減算型アレーのマイクロホンの配置を示す図である。同図を参照して、マイクロホンの個数を2個であり、マイクロホンMC,MC2には、それぞれ番号1,番号2が付されているものとする。マイクロホンMC1とMC2は、間隔Dで並べられている。
図19は、減算型アレーのブロック構成を示す図である。同図を参照して、マイクロホンMCn(nは、1または2である)は、たとえば、ECMで構成されており、音圧をアナログの電気信号に変換して、アナログ受音信号として出力する。
AD変換部AD10n(nは、1または2のいずれかの整数である)は、マイクロホンMCnから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。A/D変換部AD10nから出力されるデジタルの受音信号を周波数領域で表現したものをXn(f)と示すことにする。
遅延部DL101は、入力される受音信号X2(f)を時間τ=αD/c(但し、cは音速,αは定数)だけ遅延させる。遅延τを加える処理は、周波数領域においてexp(−2πifτ)を乗ずることに等しい。ここで、iは虚数単位である。したがって、遅延部DL101から出力される信号は、以下の式(A8)のように表わされる。
X2(f)exp(−2πifαD/c)…(A8)
減算部SB1は、A/D変換部AD101から出力される受音信号から遅延部DL101から出力される信号を減算処理し、以下の式(A9)で示される指向性信号Y(f)を出力する。
減算部SB1は、A/D変換部AD101から出力される受音信号から遅延部DL101から出力される信号を減算処理し、以下の式(A9)で示される指向性信号Y(f)を出力する。
Y(f)=X1(f)−X2(f)exp(−2πifαD/c) …(A9)
以下に減算型アレーの効果について説明する。
以下に減算型アレーの効果について説明する。
図18に示すように、音波SWが平面波として進行し、マイクロホンMC1とMC2とを結ぶX軸に対し、音波SWが到来角Φで到達したとする。マイクロホンMC1とマイクロホンMC2の中点が原点とし、原点にマイクロホンが設置されていると仮定した場合に原点上のマイクロホンで得られる信号をX(f)とする。このとき、ある波面が原点に到達した時刻を基準にすると、その波面はマイクロホンMCn(nは1または2である)に時間をτ1nだけ遅延して到達する。時間τ1nは、次の式(A10)のように表わされる。
τ1n=(n−1−0.5)×DcosΦ/c …(A10)
ここで、時間τ1nが負の場合は、原点よりもマイクロホンMCnに音波が早く到達することを示す。
ここで、時間τ1nが負の場合は、原点よりもマイクロホンMCnに音波が早く到達することを示す。
よって、マイクロホンMCn(nは1または2)で得られる受音信号Xn(f)は、X(f)に対し時間τ1nだけ遅延する。受音信号X(f)を時間τ1nだけ遅延させた受音信号Xn(f)は以下の式(A11)のように表わされる。
Xn(f)=X(f)exp(−2πif×(n−1−0.5)DcosΦ/c) …(A11)
式(A9)を式(A11)を用いて変形すると、以下の式(A12)が得られる。
式(A9)を式(A11)を用いて変形すると、以下の式(A12)が得られる。
Y(f)=X(f)exp(πifDcosΦ/c)−X(f)exp(−πifDcosΦ/c)exp(−2πifαD/c)
=X(f){exp(πifDcosΦ/c+πifαD/c)−exp(−πifDcosΦ/c−πifαD/c)}exp(−πifαD/c)
=X(f){exp(πifD(cosΦ+α)/c)−exp(−πifD(cosΦ+α)/c)}exp(−πifαD/c)
=X(f){2i×sin(πfD(cosΦ+α)/c)}exp(−πifαD/c)
=2i×sin(πfD(cosΦ+α)/c)exp(−πifαD/c)X(f) …(A12)
さて、式(A6)で定義される振幅特性比G(f)は、式(A12)を用いると、以下の式(A13)のように表わされる。
=X(f){exp(πifDcosΦ/c+πifαD/c)−exp(−πifDcosΦ/c−πifαD/c)}exp(−πifαD/c)
=X(f){exp(πifD(cosΦ+α)/c)−exp(−πifD(cosΦ+α)/c)}exp(−πifαD/c)
=X(f){2i×sin(πfD(cosΦ+α)/c)}exp(−πifαD/c)
=2i×sin(πfD(cosΦ+α)/c)exp(−πifαD/c)X(f) …(A12)
さて、式(A6)で定義される振幅特性比G(f)は、式(A12)を用いると、以下の式(A13)のように表わされる。
G(f)=|2i×sin(πfD(cosΦ+α)/c)exp(−πifαD/c)X(f)/X(f)|
=|2i×sin(πfD(cosΦ+α)/c)exp(−πifαD/c)|
=|2sin(πfD(cosΦ+α)/c)| …(A13)
さて、α=1/2のときには、振幅特性比G(f)は、式(A14)で表わされる。
=|2i×sin(πfD(cosΦ+α)/c)exp(−πifαD/c)|
=|2sin(πfD(cosΦ+α)/c)| …(A13)
さて、α=1/2のときには、振幅特性比G(f)は、式(A14)で表わされる。
G(f)=|2sin(πfD(cosΦ+1/2)/c)| …(A14)
α=1/2のときには、Φ=120°(cosΦ=−1/2)ではG(f)=0となる。G(f)が0になるような到来角Φを以後、死角と称する。
α=1/2のときには、Φ=120°(cosΦ=−1/2)ではG(f)=0となる。G(f)が0になるような到来角Φを以後、死角と称する。
マイクロホンMC1,MC2が近接して間隔Dが十分小さい場合には、どの到来角に対しても常に|πfD(cosΦ+1/2)/c|<π/2が成立ち、さらに式(A14)を参照すると、この範囲では、G(f)は、|πfD(cosΦ+1/2)/c|に対して単調増加する。したがって、到来角Φが0°、つまりcosΦが1のときに、|πfD(cosΦ+1/2)/c|が最大値をとるので、振幅特性比G(f)も最大値をとる。つまり、減算型アレーでは、到来角Φ=0°の方向に指向性が形成される。
図20は、減算型アレーの振幅特性比G(f)と到来角の関係を示すグラフである。同図において、振幅特性比G(f)の単位はdBである。また、音波SWの周波数fが2000Hzであり、マイクロホンMC1,MC2の間隔Dが0.02m(2cm)である。同図で示されるように、振幅特性比G(f)は到来角Φが0°付近で最も大きくなる。つまり、到来角Φ=0°付近の音波に対して大きな振幅が得られており、それ以外の方向では振幅が小さく抑えられていることになる。従って、このグラフからも、減算型アレーによって、到来角Φ=0°の方向に指向性が形成されることがわかる。
特開2000−354290号公報
特開2000−287295号公報
従来の遅延和型アレーまたは減算型アレーの場合、マイクロホンが近接して配置されると良好な指向特性を得ることが難しいという課題がある。
(遅延和型アレー)
図21は、マイクロホンを近接した場合の遅延和型アレーの振幅特性比G(f)を示すグラフである。同図において、振幅特性比G(f)の単位はdBである。グラフは、音波SWの到来角Φおよび周波数fに対する振幅特性比G(f)を示す。マイクロホンの間隔Dは0.002m(2mm)である。周波数の低い帯域(たとえば周波数が0Hz〜4000Hzの範囲)では、どの方向からの音も振幅特性比G(f)が大きく指向性が形成できていない。
図21は、マイクロホンを近接した場合の遅延和型アレーの振幅特性比G(f)を示すグラフである。同図において、振幅特性比G(f)の単位はdBである。グラフは、音波SWの到来角Φおよび周波数fに対する振幅特性比G(f)を示す。マイクロホンの間隔Dは0.002m(2mm)である。周波数の低い帯域(たとえば周波数が0Hz〜4000Hzの範囲)では、どの方向からの音も振幅特性比G(f)が大きく指向性が形成できていない。
遅延和型アレーの場合に周波数の低い帯域で指向性が形成されない理由は、周波数の低い帯域では、どの方向からの音であっても、マイクロホン間で位相差があまり生じず、加算平均によって強められてしまうためである。このような場合、低周波数成分を多く含む雑音を充分に抑圧することができないとともに、指向方向以外から到来する音は低域のみが強調されて歪んだ音となる、という問題が生じる。また特に、マイクロホンの間隔が狭くなるほど、マイクロホン間の位相差が小さくなるため、この問題は生じやすい。
(減算型アレー)
図22は、マイクロホンを近接した場合の減算型アレーの振幅特性比G(f)を示すグラフである。同図において、振幅特性比G(f)の単位はdBである。グラフは、音波SWの到来角Φおよび周波数fに対する振幅特性比G(f)を示す。マイクロホンの間隔Dは図16のグラフと同様に0.002m(2mm)である。周波数の低い帯域(たとえば周波数が0Hz〜4000Hzの範囲)での振幅特性比G(f)は、周波数が12000Hz〜20000Hzの範囲の振幅特性比G(f)よりも低い。また、周波数の低い帯域では、どの方向からの音も振幅特性比G(f)が小さく、指向性が形成できていない。
図22は、マイクロホンを近接した場合の減算型アレーの振幅特性比G(f)を示すグラフである。同図において、振幅特性比G(f)の単位はdBである。グラフは、音波SWの到来角Φおよび周波数fに対する振幅特性比G(f)を示す。マイクロホンの間隔Dは図16のグラフと同様に0.002m(2mm)である。周波数の低い帯域(たとえば周波数が0Hz〜4000Hzの範囲)での振幅特性比G(f)は、周波数が12000Hz〜20000Hzの範囲の振幅特性比G(f)よりも低い。また、周波数の低い帯域では、どの方向からの音も振幅特性比G(f)が小さく、指向性が形成できていない。
減算型アレーの場合に周波数の低い帯域で振幅特性比G(f)が小さく、指向性が形成できていない理由は、どの方向からの音であっても、マイクロホン間で位相差があまり生じないため、減算によって弱められてしまうためである。
このような場合、低周波数成分を多く含む目的音声を充分に捉えることができない問題や、目的音声は高域のみが強調されて歪んだ音となるという問題が生じる。特に、マイクロホンの間隔が狭くなるほどマイクロホン間の位相差が小さくなるため、この問題は生じやすくなる。
マイクロホンアレーは近年では携帯電話やボイスレコーダなど小型機器に多く搭載されるのでマイクロホンの間隔は可能な限り狭いことが望ましい。しかしマイクロホンの間隔が狭くなるほど、このような問題は生じやすい。
しかしながら、上述の特許文献1,2にはこのようにマイクロホンが近接した場合に生じる問題に対する解決方法は開示されていない。
それゆえに、本発明の目的は、マイクロホンが近接する場合にも指向性を有する信号を生成することができるともに、どの方向から到来する音に対しても周波数特性の歪みの少ない信号を得ることができる収音装置を提供することである。
本発明のある局面に係る収音装置は、特定の方向から到達する音声信号を大きく増幅する指向性処理を行なう収音装置であって、第1の受音素子と、第2の受音素子と、
第1の受音素子を通して得られる受音信号X1(f)と、第2の受音素子を通して得られる受音信号X2(f)とを受けて、以下の式(B1)〜(B10)に従う指向性信号Y(f)を生成する信号処理回路とを備える。
第1の受音素子を通して得られる受音信号X1(f)と、第2の受音素子を通して得られる受音信号X2(f)とを受けて、以下の式(B1)〜(B10)に従う指向性信号Y(f)を生成する信号処理回路とを備える。
Y(f)=H1(f)X1(f)−H2(f)X2(f) …(B1)
H1(f)=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c) …(B2)
H2(f)=H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c) …(B3)
E1=∫W(f){A1|P(f)H(f)|−1}2df …(B4)
E2=∫W(f){A2|P(f)|−1}2df …(B5)
A1=∫W(f)|P(f)H(f)|df/∫W(f)|P(f)H(f)|2df …(B6)
A2=∫W(f)|P(f)|df/∫W(f)|P(f)|2df …(B7)
P(f)=2sin(πfD(α+1)/c) …(B8)
W(f)≧0 …(B9)
E1<E2 …(B10)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、Dは第1の受音素子と第2の受音素子との間隔を表す定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、αは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(B4)、(B5)、(B6)および(B7)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。
H1(f)=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c) …(B2)
H2(f)=H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c) …(B3)
E1=∫W(f){A1|P(f)H(f)|−1}2df …(B4)
E2=∫W(f){A2|P(f)|−1}2df …(B5)
A1=∫W(f)|P(f)H(f)|df/∫W(f)|P(f)H(f)|2df …(B6)
A2=∫W(f)|P(f)|df/∫W(f)|P(f)|2df …(B7)
P(f)=2sin(πfD(α+1)/c) …(B8)
W(f)≧0 …(B9)
E1<E2 …(B10)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、Dは第1の受音素子と第2の受音素子との間隔を表す定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、αは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(B4)、(B5)、(B6)および(B7)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。
好ましくは、W(f)は、以下の式(B11)および(B12)に従う。
W(f)=0 (f<300(Hz)、または3400(Hz)<f) …(B11)
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(B12)
好ましくは、W(f)は、以下の式(B13)および(B14)に従う。
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(B12)
好ましくは、W(f)は、以下の式(B13)および(B14)に従う。
W(f)=0 (f<20(Hz)、または20000(Hz)<f) …(B13)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(B14)
好ましくは、W(f)は、受音信号X1(f)およびX2(f)がサンプリング周波数Fs(Hz)でサンプリングされたデジタル信号であり、Fsが40000(Hz)以下の場合に、以下の式(B15)および(B16)に従う。
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(B14)
好ましくは、W(f)は、受音信号X1(f)およびX2(f)がサンプリング周波数Fs(Hz)でサンプリングされたデジタル信号であり、Fsが40000(Hz)以下の場合に、以下の式(B15)および(B16)に従う。
W(f)=0 (f<20(Hz)、またはFs/2(Hz)<f) …(B15)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(B16)
好ましくは、人間の聴覚的な感度の高い周波数ほどW(f)は大きく、聴覚的な感度が所定のレベル以下の周波数ではW(f)=0である。
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(B16)
好ましくは、人間の聴覚的な感度の高い周波数ほどW(f)は大きく、聴覚的な感度が所定のレベル以下の周波数ではW(f)=0である。
好ましくは、信号処理回路は、H1(f)に応じた第1のフィルタ係数を有し、受音信号X1(f)を受けて、信号H1(f)X1(f)を出力する第1のフィルタ回路と、H2(f)に応じた第2のフィルタ係数を有し、受音信号X2(f)を受けて、信号H2(f)X2(f)を出力する第2のフィルタ回路と、第1のフィルタ回路の出力と第2のフィルタ回路の出力とを合成して、指向性信号Y(f)を出力する合成部とを含む。
好ましくは、信号処理回路は、α≧0の場合に、受音信号X2(f)を|Dα/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、遅延回路の出力と受音信号X1(f)とを合成する合成部と、H1(f)に応じたフィルタ係数を有し、合成部で合成された信号を受けて、指向性信号Y(f)を出力するフィルタ回路とを含み、信号処理回路は、α<0の場合に、受音信号X1(f)を|Dα/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、遅延回路の出力と受音信号X2(f)とを合成する合成部と、H2(f)に応じたフィルタ係数を有し、合成部で合成された信号を受けて、指向性信号Y(f)を出力するフィルタ回路とを含む。
好ましくは、H(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B17)に従う、または式(B17)で近似される。
H(f)=β/{2i×sin(πfD(α+1)/c)} …(B17)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
好ましくは、H(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B18)に従う、または式(B18)で近似される。
H(f)=β/{2i(πfD(α+1)/c)} …(B18)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
好ましくは、H(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B19)に従う、または式(B19)で近似される。
|H(f)|=|β/{2sin(πfD(α+1)/c)}| …(B19)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
好ましくは、H(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B20)に従う、または式(B20)で近似される。
|H(f)|=|β/{2(πfD(α+1)/c)}| …(B20)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
また、本発明の別の局面に係る収音装置は、特定の方向から到達する音声信号を大きく増幅する指向性処理を行なう収音装置であって、1からN(N≧3)までの番号が振られており、その番号順に、直線状、かつ等間隔に配置されたN個の受音素子と、N個の受音素子を通して得られるN個の受音信号X1(f)〜XN(f)を受けて、以下の式(B21)〜(B33)に従う指向性信号Y(f)を生成する指向性信号生成回路とを備える。
Xn 1(f)=Xn(f) (n=1〜N)…(B21)
Xn k+1(f)=R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(B22)
R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
=H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(B23)
H1 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ+πifD′αk/c) …(B24)
H2 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ−πifD′αk/c) …(B25)
Y(f)=X1 N(f) …(B26)
E1k=∫W(f){A1k|Pk(f)Hk(f)|−1}2df …(B27)
E2k=∫W(f){A2k|Pk(f)|−1}2df …(B28)
A1k=∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|2df …(B29)
A2k=∫W(f)|Pk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)|2df …(B30)
Pk(f)=2sin(πfD′(αk+1)/c) …(B31)
W(f)≧0 …(B32)
E1k<E2k …(B33)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、D′は、隣り合う受音素子間の距離であり、αkは定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(B27)、(B28)、(B29)および(B30)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。
Xn k+1(f)=R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(B22)
R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
=H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(B23)
H1 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ+πifD′αk/c) …(B24)
H2 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ−πifD′αk/c) …(B25)
Y(f)=X1 N(f) …(B26)
E1k=∫W(f){A1k|Pk(f)Hk(f)|−1}2df …(B27)
E2k=∫W(f){A2k|Pk(f)|−1}2df …(B28)
A1k=∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|2df …(B29)
A2k=∫W(f)|Pk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)|2df …(B30)
Pk(f)=2sin(πfD′(αk+1)/c) …(B31)
W(f)≧0 …(B32)
E1k<E2k …(B33)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、D′は、隣り合う受音素子間の距離であり、αkは定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(B27)、(B28)、(B29)および(B30)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。
好ましくは、W(f)は、以下の式(B34)および(B35)に従う。
W(f)=0 (f<300(Hz)、または3400(Hz)<f) …(B34)
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(B35)
好ましくは、W(f)は、以下の式(B36)および(B37)に従う。
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(B35)
好ましくは、W(f)は、以下の式(B36)および(B37)に従う。
W(f)=0 (f<20(Hz)、または20000(Hz)<f) …(B36)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(B37)
好ましくは、W(f)は、受音信号X1(f)およびX2(f)がサンプリング周波数Fs(Hz)でサンプリングされたデジタル信号であり、Fsが40000(Hz)以下の場合に、以下の式(B38)および(B39)に従う。
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(B37)
好ましくは、W(f)は、受音信号X1(f)およびX2(f)がサンプリング周波数Fs(Hz)でサンプリングされたデジタル信号であり、Fsが40000(Hz)以下の場合に、以下の式(B38)および(B39)に従う。
W(f)=0 (f<20(Hz)、またはFs/2(Hz)<f) …(B38)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(B39)
好ましくは、人間の聴覚的な感度の高い周波数ほどW(f)の値が大きく、聴覚的な感度が所定のレベル以下の周波数ではW(f)=0である。
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(B39)
好ましくは、人間の聴覚的な感度の高い周波数ほどW(f)の値が大きく、聴覚的な感度が所定のレベル以下の周波数ではW(f)=0である。
好ましくは、指向性信号生成回路は、k段目(1≦k≦(N−1))に、(N−k)個の信号処理回路を含み、1段目のn番目の信号処理回路は、信号Xn 1(f)およびXn+1 1(f)を受けて、信号H1 1(f)Xn 1(f)−H2 1(f)Xn+1 1(f)を信号Xn 2(f)として出力し、2≦k≦(N−1)について、k段目のn番目の信号処理回路は、(k−1)段目のn番目の信号処理回路および(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路に接続され、(k−1)段目のn番目の信号処理回路から信号Xn k(f)を受けるとともに、(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路から信号Xn+1 k(f)を受けて、信号H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)を信号Xn k+1(f)として出力する。
より好ましくは、1≦k≦(N−1)を満たすいずれかのkについて、k段目の第n番目の信号処理回路は、H1 k(f)に応じた第1のフィルタ係数を有し、(k−1)段目のn番目の信号処理回路から信号Xn k(f)を受けて、信号H1 k(f)Xn k(f)を出力する第1のフィルタ回路と、H2 k(f)に応じた第2のフィルタ係数を有し、(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路から信号Xn+1 k(f)を受けて、信号H2 k(f)Xn+1 k(f)を出力する第2のフィルタ回路と、第1のフィルタ回路の出力と第2のフィルタ回路の出力とを合成して、信号Xn k+1(f)を出力する合成部とを含む。
より好ましくは、1≦k≦(N−1)を満たすいずれかのkについて、k段目の第n番目の信号処理回路は、αk≧0のときに、信号Xn+1 k(f)を|D′αk/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、遅延回路の出力と信号Xn k(f)とを合成する合成部と、H1 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、合成部で合成された信号を受けて、信号Xn k+1(f)を出力するフィルタ回路とを含み、1≦k≦(N−1)を満たすいずれかのkについて、k段目の第n番目の信号処理回路は、αk<0のときに、信号Xn k(f)を|D′αk/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、遅延回路の出力と信号Xn+1 k(f)とを合成する合成部と、H2 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、合成部で合成された信号を受けて、信号Xn k+1(f)を出力するフィルタ回路とを含む。
好ましくは、指向性信号生成回路は、N個のフィルタ回路と、合成部とを含み、第i番目(1≦i≦N)のフィルタ回路は、以下の式(B40)に従うHai(f)に応じたフィルタ係数を有し、受音信号Xi(f)を受けて、信号Hai(f)Xi(f)を出力する。
Hai(f)=Σ ΠHd(j,k-1)+1 k(f) …(B40)
ここで、Σzは、集合S(i−1,N−1)に属するjについてのzの総和を示し、Πzは、kを1から(N−1)まで変化させたときのzの総積を示し、集合S(a,b)は、0〜2b−1の整数をb桁の2進表現した場合に1の個数がa個である整数の集合を示し、d(a,b)は、整数aを2進表現した場合に、最下位ビットを第0ビットとしたときの、第bビットの値である。合成部は、N個のフィルタ回路の出力信号を合成して、指向性信号Y(f)を出力する。
ここで、Σzは、集合S(i−1,N−1)に属するjについてのzの総和を示し、Πzは、kを1から(N−1)まで変化させたときのzの総積を示し、集合S(a,b)は、0〜2b−1の整数をb桁の2進表現した場合に1の個数がa個である整数の集合を示し、d(a,b)は、整数aを2進表現した場合に、最下位ビットを第0ビットとしたときの、第bビットの値である。合成部は、N個のフィルタ回路の出力信号を合成して、指向性信号Y(f)を出力する。
好ましくは、Hk(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B41)に従う、または式(B41)で近似される。
Hk(f)=β/{2i×sin(πfD′(αk+1)/c)} …(B41)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
好ましくは、Hk(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B42)に従う、または式(B42)で近似される。
Hk(f)=β/{2i(πfD′(αk+1)/c)} …(B42)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
好ましくは、Hk(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B43)に従う、または式(B43)で近似される。
|Hk(f)|=|β/{2sin(πfD′(αk+1)/c)}| …(B43)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
好ましくは、Hk(f)は、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(B44)に従う、または式(B44)で近似される。
|Hk(f)|=|β/{2(πfD′(αk+1)/c)}| …(B44)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
本発明の収音装置によれば、特にマイクロホンが近接する場合にも指向性を有する信号を生成することが可能になる。また、本発明の収音装置によれば、どの方向から到来する音に対しても周波数特性の歪みの少ない信号を得ることが可能になる。
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の収音装置のブロック図である。図1を参照して、収音装置1Aは、受信した音波SWを電気信号に変換して出力する受信回路DT1,DT2と、各々の受信回路から出力される受音信号X1(f)、X2(f)を受けて指向性を有する指向性信号Y(f)を生成する信号処理回路SP1とを備える。なお、fは周波数を示す。
図1は、実施の形態1の収音装置のブロック図である。図1を参照して、収音装置1Aは、受信した音波SWを電気信号に変換して出力する受信回路DT1,DT2と、各々の受信回路から出力される受音信号X1(f)、X2(f)を受けて指向性を有する指向性信号Y(f)を生成する信号処理回路SP1とを備える。なお、fは周波数を示す。
指向性信号Y(f)は、収音装置1Aが利用される装置によって適切に処理される。たとえば、装置がボイスレコーダであれば指向性信号Y(f)の内容はメモリに保存される。また、装置が携帯電話であれば指向性信号Y(f)は圧縮処理を行なう音声コーデックに送られる。
受信回路DT1は、音波SWを受けて、アナログ形式の電気信号を出力するマイクロホンMC1と、マイクロホンMC1の出力をデジタル信号に変換するA/D変換部AD1とを含む。マイクロホンMC1は、たとえばECMによって構成される。A/D変換部AD1は、マイクロホンMC1から出力されるアナログ信号に特定の周波数帯域の信号のみ通過させる帯域制限処理や離散化、量子化を行ない、デジタル信号を出力する。
受信回路DT2は、マイクロホンMC2とA/D変換部AD2とを含む。受信回路DT2の構成は、受信回路DT1の構成と同様である。よって、受信回路DT2の構成についての説明は繰り返さない。また、A/D変換部AD1,AD2は、同一のサンプリング周波数(離散化が行なわれる周波数)で動作する。
以下では、A/D変換部AD1,AD2から出力されるデジタルの受音信号を周波数領域で表現したものをX1(f)、X2(f)と示すことにする。
信号処理回路SP1は、受音信号X1(f),受音信号X2(f)を受けて、以下の式(C1)〜(C3)に示される指向性信号Y(f)を生成する
Y(f)=H1(f)X1(f)−H2(f)X2(f) …(C1)
H1(f)=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c) …(C2)
H2(f)=H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c) …(C3)
ここで、fは音声信号の周波数である。また、iは虚数単位であり、τは原点に音声信号が到達した時間を起点として経過した任意の時間であり、DはマイクロホンMC1,MC2の間隔である。さらに、αは定数であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数である。H(f)については、後述する。
Y(f)=H1(f)X1(f)−H2(f)X2(f) …(C1)
H1(f)=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c) …(C2)
H2(f)=H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c) …(C3)
ここで、fは音声信号の周波数である。また、iは虚数単位であり、τは原点に音声信号が到達した時間を起点として経過した任意の時間であり、DはマイクロホンMC1,MC2の間隔である。さらに、αは定数であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数である。H(f)については、後述する。
以下、信号処理回路SP1の処理について詳細に説明する。
マイクロホンMC1,MC2に到達する音波SWの到来角をΦとする。なお、マイクロホンMC1,MC2の配置は、図18におけるマイクロホンMC1,MC2と同様である。原点にマイクロホンがあると仮定し、マイクロホンから出力される信号をX(f)とすると受音信号Xn(f)(nは1か2かのいずれかの整数である)はX(f)exp(−2πif×(n−1−0.5)DcosΦ/c)と表わされる。
式(C1)を順次変形すると、指向性信号Y(f)は、以下の式(C4)のように表わされる。
Y(f)=H1(f)X1(f)−H2(f)X2(f)
=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)X(f)exp(πifDcosΦ/c)−H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c)X(f)exp(−πifDcosΦ/c)
=H(f)X(f){exp(πifDα/c+πifDcosΦ/c)−exp(−πifDα/c−πifDcosΦ/c)}exp(−2πifτ)
=H(f)X(f){exp(πifD(α+cosΦ)/c)−exp(−πifD(α+cosΦ)/c)}exp(−2πifτ)
=H(f)X(f){2i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)}exp(−2πifτ)
=2i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)×H(f)X(f) …(C4)
式(C4)を用いて振幅特性比G(f)(=|Y(f)/X(f)|)は、以下の式(C5)のように順次変形される。
=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)X(f)exp(πifDcosΦ/c)−H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c)X(f)exp(−πifDcosΦ/c)
=H(f)X(f){exp(πifDα/c+πifDcosΦ/c)−exp(−πifDα/c−πifDcosΦ/c)}exp(−2πifτ)
=H(f)X(f){exp(πifD(α+cosΦ)/c)−exp(−πifD(α+cosΦ)/c)}exp(−2πifτ)
=H(f)X(f){2i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)}exp(−2πifτ)
=2i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)×H(f)X(f) …(C4)
式(C4)を用いて振幅特性比G(f)(=|Y(f)/X(f)|)は、以下の式(C5)のように順次変形される。
G(f)=|2i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)H(f)X(f)/X(f)|
=|2i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)| …(C5)
さらに振幅特性比G(f)を式(C5)から変形する。間隔Dは十分小さく、πfD(α+cosΦ)/cの絶対値が十分小さいとする。|x|が十分小さい範囲ではsin(x)はxに近似されるので、振幅特性比G(f)は、式(C5)から近似されて以下の式(C6)のように変形される。
=|2i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)| …(C5)
さらに振幅特性比G(f)を式(C5)から変形する。間隔Dは十分小さく、πfD(α+cosΦ)/cの絶対値が十分小さいとする。|x|が十分小さい範囲ではsin(x)はxに近似されるので、振幅特性比G(f)は、式(C5)から近似されて以下の式(C6)のように変形される。
G(f)≒|2πfD(α+cosΦ)/c||H(f)|
=2πD/c|f||α+cosΦ||H(f)| …(C6)
式(C6)を用いて周波数fと振幅特性比G(f)の関係について説明する。まず、振幅特性比G(f)は|f||H(f)|に比例する。関数|f||H(f)|の性質は到来角Φには依存せず、どの方向からの音であっても同じ形状の周波数特性を有する。
=2πD/c|f||α+cosΦ||H(f)| …(C6)
式(C6)を用いて周波数fと振幅特性比G(f)の関係について説明する。まず、振幅特性比G(f)は|f||H(f)|に比例する。関数|f||H(f)|の性質は到来角Φには依存せず、どの方向からの音であっても同じ形状の周波数特性を有する。
また、振幅特性比G(f)は関数|α+cosΦ|に比例する。関数|α+cosΦ|の性質は周波数fには依存せず、どの周波数であっても同じ形状の指向特性を有する。
関数|α+cosΦ|の値は定数αの値に応じて変化する。まず、定数αが−1未満(α<−1)であれば、cosΦが−1から1まで増加するにつれて、関数|α+cosΦ|は単調減少し、cosΦ=1(Φ=0°)で最小値、cosΦ=−1(Φ=180°)で最大値となる。よって、Φ=180°に単一のピークを持つ指向特性を有する。またαが−1のときには、関数|α+cosΦ|はcosΦが−1から1まで増加する間に、単調に減少し、cosΦ=1(Φ=0°)で関数|α+cosΦ|は0となる。つまりαが−1の場合、Φ=180°に単一のピークを持ち、Φ=0°に死角を持った指向特性となる。
また、関数|α+cosΦ|は、αが−1より大きく0未満(−1<α<0)であればcosΦが−1から−αまで変化する間は単調減少し、cosΦが−αから1まで変化する間は単調増加する。また、関数|α+cosΦ|はcosΦ=−αのときに最小値である0となり、cosΦ=−1(Φ=180°)で最大値となる。よって、Φ=0°に小さなピーク、Φ=180°に大きなピークを持ち、cosΦ=−αを満たすΦの方向に死角を持った指向特性となる。
また、α=0のとき、関数|α+cosΦ|は、cosΦが−1から0まで増加する間に、単調に減少し、cosΦが0から1まで増加する間に、単調に増加し、cosΦ=0で最小値である0となり、cosΦ=1(Φ=0°)とcosΦ=−1(Φ=180°)で最大値をとる。よって、Φ=0°とΦ=180°に同じ大きさのピークを持ち、Φ=90°に死角を持った特性となる。このような特性を「双指向特性」と称する。
さらに、αが0より大きく1未満(0<α<1)であれば、関数|α+cosΦ|は、cosΦが−1から−αまで増加する間に、単調に減少し、cosΦが−αから1まで増加する間に、単調に増加し、cosΦ=−αで最小値である0となり、cosΦ=1(Φ=0°)で最大値となる。よって、Φ=0°に大きなピーク、Φ=180°に小さなピークを持ち、cosΦ=−αを満たすΦの方向に死角を持った指向特性となる。なお、α=1であれば関数|α+cosΦ|は、cosΦが−1から1まで増加する間に単調に増加し、cosΦ=−1(Φ=180°)で最小値である0となり、cosΦ=1(Φ=0°)で最大値をとる。よって、Φ=0°に単一のピークを持ち、Φ=180°に死角を持った指向特性となる。
さらに、関数|α+cosΦ|は、αが1より大きい場合(1<α)であれば、cosΦが−1から1まで変化するにつれて単調増加し、cosΦ=−1(Φ=180°)で最小値となり、cosΦ=1(Φ=0°)で最大値となる。つまり、振幅特性比G(f)の変化を示す曲線はΦ=0°に単一のピークを持った指向性を有する。以上に示すように指向特性の形状は、αの値に応じて決定される。
以下に、実施の形態1の収音装置による効果について説明する。
従来の減算型アレーは、周波数の低い帯域で振幅特性比G(f)がどの到来角においても小さいために、指向性が形成できないという問題があった。また、目的音声は高域のみが強調されて歪んだ音として収音されるという問題があった。
したがって、本実施の形態に係る収音装置1Aにおける式(C5)で示される振幅特性比G(f)が、従来の減算型アレーにおける式(A13)で示される振幅特性比G(f)よりも、周波数fに対してフラットな特性を有するようにすることによって、従来の問題点を改善する。以下、このように、式(C5)の振幅特性比G(f)が式(A13)の振幅特性比G(f)よりもフラットな特性を有するために必要となるH(f)の条件を導出する。
まず、準備として、ある周波数−振幅特性がフラットな特性に近いかを評価する方法について説明する。
ある周波数−振幅特性をQ(f)とし、特定の大きさの振幅を持つ完全にフラットな特性をU(f)=1とする。
単純にQ(f)とU(f)の距離(近さ)を算出する場合、式(C7)の評価量E′が考えられる。
E′=∫{Q(f)−U(f)}2df
=∫{Q(f)−1}2df …(C7)
式(C7)の評価量E′は、各周波数成分についてQ(f)とU(f)との2乗誤差を算出し、それらを総和(積分)した値である。したがって、評価量E′はQ(f)がU(f)に近いほど小さな値となり、U(f)に一致したときに0となる。
=∫{Q(f)−1}2df …(C7)
式(C7)の評価量E′は、各周波数成分についてQ(f)とU(f)との2乗誤差を算出し、それらを総和(積分)した値である。したがって、評価量E′はQ(f)がU(f)に近いほど小さな値となり、U(f)に一致したときに0となる。
しかし、Q(f)がフラットな特性にどれだけ近いかを評価するときに、式(C7)のように、直接にU(f)(=1)との2乗誤差を算出するのは妥当でない。その理由は、フラットな特性とは、振幅が1に限定されるものではなく、Q(f)は、Q(f)との誤差が最も小さい振幅を持ったフラットな特性と比較されるべきだからである。
そこで、Q(f)がフラットな特性にどれだけ近いかを示す評価量として、式(C8)のE″が考えられる。
E″=∫{AQ(f)−1}2df …(C8)
ここで、Aは定数であり、E″が最小になるように定められる。式(C8)のE″は、各周波数成分についてQ(f)の定数A倍とU(f)(=1)との2乗誤差を算出し、それらを総和(積分)した値である。したがって、E″は、Q(f)の定数A倍がU(f)(=1)に近いほど、つまりフラットなほど小さな値となり、U(f)(=1)に一致するときに0となる。
ここで、Aは定数であり、E″が最小になるように定められる。式(C8)のE″は、各周波数成分についてQ(f)の定数A倍とU(f)(=1)との2乗誤差を算出し、それらを総和(積分)した値である。したがって、E″は、Q(f)の定数A倍がU(f)(=1)に近いほど、つまりフラットなほど小さな値となり、U(f)(=1)に一致するときに0となる。
ところで、Q(f)を定数A倍することは、単に出力信号が定数A倍されることに対応し、出力信号の大きさ(音量)の違いとして表れるだけであり、信号の増幅(あるいは減衰)によって簡単に調整可能である。
以上の点から、Q(f)の特性とAQ(f)の特性を区別することに意味がなく、式(C8)のようにAQ(f)を用いてQ(f)の特性の評価を行なっても差し支えない。
また、Q(f)を固定して(定数A倍せずに)、フラットな特性の振幅を変えて、つまり、フラットな特性としてU(f)(=1)を定数A倍したものを用いて、2乗誤差を算出する式(C9)も考えることができる。
E^=∫{Q(f)−A}2df …(C9)
しかし、式(C9)では、評価する特性ごとに、比較されるフラットな特性の振幅が異なることになり、複数の特性に対する評価量E^を直接比較することができない。一方、式(C8)では、評価する特性が違っても、比較されるフラットな特性(U(f))の振幅が同一であり、複数の特性に対する評価量E″を直接比較することができる。
しかし、式(C9)では、評価する特性ごとに、比較されるフラットな特性の振幅が異なることになり、複数の特性に対する評価量E^を直接比較することができない。一方、式(C8)では、評価する特性が違っても、比較されるフラットな特性(U(f))の振幅が同一であり、複数の特性に対する評価量E″を直接比較することができる。
以上の説明から明らかなように、式(C8)に基づいて、Q(f)がフラットな特性にどれだけ近いかを評価することができる。
さらに検討すると、Q(f)がフラットな特性にどれだけ近いかを評価する場合に、各周波数における誤差を一様に評価するのは妥当ではないといえる。なぜなら、聴覚的な性質や信号の統計的な性質が反映されないからである。
たとえば、300〜3400Hzには、音声を認識するための重要な成分が含まれており、さらに加えてこの周波数帯域における周波数成分は、他の周波数帯域の周波数成分に比べて大きいことが一般的に知られているからである。
また、サンプリング定理に基づき、サンプリング周波数の1/2以上の周波数の周波数成分は、折り返し歪みを防ぐために帯域制限されるのが一般的である。
したがって、聴覚的に重要な周波数領域における誤差は大きく評価し、重要でない周波数領域における誤差は小さく評価することや、帯域制限された周波数成分を含まないように評価することが重要になる。
そこで、人間の聴覚の特性や信号の統計的な性質を考慮した式(C10)を評価量として用いることにする。
E=∫W(f){AQ(f)−1}2df …(C10)
W(f)は、W(f)≧0であり、聴覚的な性質や信号の統計的な性質に基づいて予め定められた重み関数である。また、式(C10)において積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲をとればよいことになる。
W(f)は、W(f)≧0であり、聴覚的な性質や信号の統計的な性質に基づいて予め定められた重み関数である。また、式(C10)において積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲をとればよいことになる。
以上の説明によって、式(C10)の評価量Eが小さいほど、Q(f)がフラットな特性に近いと判断することができることが導かれた。
次に、式(C10)において、Eを最小にする定数Aを定める方法について説明する。式(C10)のEを最小にするAは、∂E/∂A=0を満たす。∂E/∂Aは、EのAによる偏微分である。
式(C10)におけるEをAで偏微分すると、式(C11)のようになる。
∂E/∂A=2∫W(f)Q(f){AQ(f)−1}df
=2A∫W(f)Q(f)2df−2∫W(f)Q(f)df …(C11)
ここで、式(C11)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
=2A∫W(f)Q(f)2df−2∫W(f)Q(f)df …(C11)
ここで、式(C11)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
∂E/∂A=0として、Aについて解くと、式(C12)が得られる。
A=∫W(f)Q(f)df/∫W(f)Q(f)2df …(C12)
ここで、式(C12)の2つの積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
ここで、式(C12)の2つの積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
よって、式(C12)にしたがって、Aを算出することにより、Eを最小にするAが定められる。
さて、以上を踏まえて、式(C5)で示される本実施の形態の振幅特性比G(f)が、式(A13)で示される従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)よりも、周波数fに対してフラットとなる条件を導出する。
本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)は、式(C6)で示されるように、音の到来角Φが違っても、周波数fの変化に対して同一の形状を有する。
また、式(A13)で示される従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)についても同様に検討する。式(A13)の振幅特性比G(f)を変形する。間隔Dは十分小さく、πfD(cosΦ+α)/cの絶対値が十分小さいとする。|x|が十分小さい範囲ではsin(x)はxに近似されるので、式(A13)の振幅特性比G(f)は、以下の式(C13)で近似される。
G(f)≒|2πfD(cosΦ+α)/c|
=2πD/c|f||α+cosΦ| …(C13)
式(C13)を用いて周波数fと従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)との関係について説明する。式(C13)によれば、従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)は、|f|に比例する。つまり、従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)は、本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)と同様に、音の到来角Φが違っても、周波数fの変化に対して同一の形状を有する。
=2πD/c|f||α+cosΦ| …(C13)
式(C13)を用いて周波数fと従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)との関係について説明する。式(C13)によれば、従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)は、|f|に比例する。つまり、従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)は、本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)と同様に、音の到来角Φが違っても、周波数fの変化に対して同一の形状を有する。
以上より、任意の到来角Φに対して、本実施の形態の収音装置1Aにおける式(C5)の振幅特性比G(f)と、従来の減算型アレーにおける式(A13)の振幅特性比G(f)のいずれが周波数fに対してフラットな特性を有するかを評価するのに、Φ=0°のときの両者の振幅特性比G(f)を比較して評価すれば、Φ=0°以外でも、同じ評価が可能となる。
本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)のΦ=0°のときの振幅特性比P1(f)および、従来の遅延型アレーの振幅特性比G(f)のΦ=0°のときの振幅特性比P2(f)は、式(C14)〜(C16)で表わされる。
P1(f)=|P(f)H(f)| …(C14)
P2(f)=|P(f)| …(C15)
P(f)=2sin(πfD(α+1)/c) …(C16)
P1(f),P2(f)がフラットな特性にどれだけ近いかを示す評価量E1,E2は、式(C17),(C18)で表わされる。
P2(f)=|P(f)| …(C15)
P(f)=2sin(πfD(α+1)/c) …(C16)
P1(f),P2(f)がフラットな特性にどれだけ近いかを示す評価量E1,E2は、式(C17),(C18)で表わされる。
E1=∫W(f){A1|P(f)H(f)|−1}2df …(C17)
ここで、式(C16)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
ここで、式(C16)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
E2=∫W(f){A1|P(f)|−1}2df …(C18)
ここで、式(C17)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
ここで、式(C17)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
ただし、A1,A2は、式(C19),(C20)で表わされる。
A1=∫W(f)|P(f)H(f)|df/∫W(f)|P(f)H(f)|2df …(C19)
ここで、式(C19)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
ここで、式(C19)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
A2=∫W(f)|P(f)|df/∫W(f)|P(f)|2df …(C20)
ここで、式(C20)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
ここで、式(C20)の積分の範囲は、W(f)>0となるfの範囲である。
本実施の形態では、前述のように、300〜3400Hzには、音声を認識するための重要な成分が含まれており、さらに加えてこの周波数帯域における周波数成分は、他の周波数帯域の周波数成分に比べて大きいことが一般的に知られていることから、W(f)は、以下の式(C21)、(C22)を満たすものとする。
W(f)=0 (f<300(Hz)、または3400(Hz)<f) …(C21)
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(C22)
さて、本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)が、従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)よりも、周波数fに対してフラットとなるためには、以下の条件を満たすことが必要となる。
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(C22)
さて、本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)が、従来の減算型アレーの振幅特性比G(f)よりも、周波数fに対してフラットとなるためには、以下の条件を満たすことが必要となる。
E1<E2 …(C23)
以上より、本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)が、従来の収音装置の振幅特性比G(f)よりも、周波数fに対してフラットな特性を示すための条件は、式(C14)〜(C23)で表わされることが示された。つまり、式(C14)〜(C23)の条件を満たす本実施の形態の収音装置1Aを用いることで、従来の収音装置と比べて、よりフラットな周波数特性を実現することができる。また同時に、低域においても良好な指向特性を得ることができる。なお、式(C14)〜(C23)をフラットとなる条件ということにする。
以上より、本実施の形態の収音装置1Aの振幅特性比G(f)が、従来の収音装置の振幅特性比G(f)よりも、周波数fに対してフラットな特性を示すための条件は、式(C14)〜(C23)で表わされることが示された。つまり、式(C14)〜(C23)の条件を満たす本実施の形態の収音装置1Aを用いることで、従来の収音装置と比べて、よりフラットな周波数特性を実現することができる。また同時に、低域においても良好な指向特性を得ることができる。なお、式(C14)〜(C23)をフラットとなる条件ということにする。
(信号処理回路SP1の詳細)
次に、信号処理回路SP1の詳細な構成について説明する。信号処理回路SP1は、上記の式(C14)〜(C23)の条件を満足するように、式(C1)〜(C3)に従う処理を行なうことが可能であれば様々な構成が可能であり、特定の構成要素を含むよう限定されるものではない。図1では、信号処理回路SP1の構成の一例を開示して説明する。
次に、信号処理回路SP1の詳細な構成について説明する。信号処理回路SP1は、上記の式(C14)〜(C23)の条件を満足するように、式(C1)〜(C3)に従う処理を行なうことが可能であれば様々な構成が可能であり、特定の構成要素を含むよう限定されるものではない。図1では、信号処理回路SP1の構成の一例を開示して説明する。
信号処理回路SP1は、フィルタ回路FT1と、フィルタ回路FT2とを含む。
フィルタ回路FT1は、周波数特性がH1(f)となるようなフィルタ係数を有し、受音信号X1(f)を受けて、信号H1(f)X1(f)出力する。
フィルタ回路FT2は、周波数特性がH2(f)となるようなフィルタ係数を有し、受音信号X2(f)を受けて、信号H2(f)X2(f)出力する。
フィルタ回路FT1,FT2は、たとえばインパルス応答を有限時間内に終了させるFIR(Finite Impulse Response)フィルタである。フィルタ回路FT1,FT2のフィルタ係数は、周波数特性がH1(f),H2(f)となるように定められる。以下では、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足するようなフィルタ係数の定め方について説明する。
最初に、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足するH′(f)を選択する。このようなH′(f)の選択は、たとえば、次のように行なう。式(C6)によれば、本実施の形態の収音装置1Aの周波数特性は|f||H(f)|に比例する。また、式(C13)によれば、従来の減算型アレーの周波数特性は|f|に比例する。従って、|f|は周波数に比例して増加する関数であるが、この増加を打ち消すような関数H(f)をH′(f)として選択すれば、よりフラットな周波数特性を得ることができる。つまり、H′(f)としてfa(ただし、aは−1≦a<0の範囲のいずれかの実数)などの関数を選択すればよい。また、後述するように実施の形態1の変形例4〜7に示したH(f)をH′(f)として選択してもよい。
さて、このH′(f)を用いて、周波数特性H1 ′(f)を以下の式(C24)で定義する。
H1 ′(f)=H′(f)exp(−2πifτ+πifDα/c) …(C24)
さらに、H1″(f)を、以下の式(C25)〜(C29)のように定める。
さらに、H1″(f)を、以下の式(C25)〜(C29)のように定める。
H1″(f)=0 (0≦f≦fq0) …(C25)
H1″(f)=H1′(f)×(1.0−cos(π×(f−fq0)/(fq1−fq0)))/2.0 (fq0<f<fq1) …(C26)
H1″(f)=H1′(f) (fq1≦f≦fq2) …(C27)
H1″(f)=H1′(f)×(1.0+cos(π×(f−fq2)/(fq3−fq2)))/2.0 (fq2<f≦fq3) …(C28)
H1″(f)=0 (fq3<f≦Fs/2) …(C29)
式(C25)〜(C29)において、fq0、fq1、fq2、およびfq3は、周波数を表わす定数であり、fq0≦fq1≦fq2≦fq3を満たす。またさらに、fq1、fq2は、fq1≦f≦fq2の範囲が、W(f)>0となる範囲と一致するように設定される。
H1″(f)=H1′(f)×(1.0−cos(π×(f−fq0)/(fq1−fq0)))/2.0 (fq0<f<fq1) …(C26)
H1″(f)=H1′(f) (fq1≦f≦fq2) …(C27)
H1″(f)=H1′(f)×(1.0+cos(π×(f−fq2)/(fq3−fq2)))/2.0 (fq2<f≦fq3) …(C28)
H1″(f)=0 (fq3<f≦Fs/2) …(C29)
式(C25)〜(C29)において、fq0、fq1、fq2、およびfq3は、周波数を表わす定数であり、fq0≦fq1≦fq2≦fq3を満たす。またさらに、fq1、fq2は、fq1≦f≦fq2の範囲が、W(f)>0となる範囲と一致するように設定される。
式(C25)〜(C29)で表わされるH″(f)は、fq1≦f≦fq2の範囲(W(f)>0の範囲)でH′(f)に従い、0≦f≦fq0とfq3<f≦Fs/2の範囲で値が0となり、それらの間は、なだらかに補間される周波数特性を示している。従って、H′(f)が式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足し、H″(f)は
W(f)>0の範囲でH′(f)に等しいので、H″(f)も式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することになる。
W(f)>0の範囲でH′(f)に等しいので、H″(f)も式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することになる。
このH1″(f)を近似するFIRフィルタの係数を導出する方法を説明する。
(STEP1)
まず、周波数領域で帯域制限および離散変換を行なう
Ck(k=0〜N−1)を以下の式(C30)〜(C36)より算出する。ただし、N=2M(Mは正の整数)を満たす整数である。
まず、周波数領域で帯域制限および離散変換を行なう
Ck(k=0〜N−1)を以下の式(C30)〜(C36)より算出する。ただし、N=2M(Mは正の整数)を満たす整数である。
k=0およびk=N/2のときに、
Ck=0 …(C30)
1≦k≦(N/2)−1の範囲で、
Ck=0 (k×Fs/N≦fq0) …(C31)
Ck=H′(k×Fs/N)×(1.0−cos(π×(k×Fs/N−fq0)/(fq1−fq0)))/2.0 (fq0<k×Fs/N<fq1) …(C32)
Ck=H′(f) (fq1≦k×Fs/N≦fq2) …(C33)
Ck(f)=H′(f)×(1.0+cos(π×(k×Fs/N−fq2)/(fq3−fq2)))/2.0 (fq2<k×Fs/N≦fq3) …(C34)
Ck=0 (fq3<k×Fs/N) …(C35)
(N/2+1)≦k≦N−1の範囲で、
Ck=CN−kの複素共役 …(C36)
(STEP2)
次に、Ck(k=0〜N−1)について、式(C37)に示すように、N点の逆離散フーリエ変換を行って、時間領域のフィルタ係数cj(j=0〜N−1)を算出する。
Ck=0 …(C30)
1≦k≦(N/2)−1の範囲で、
Ck=0 (k×Fs/N≦fq0) …(C31)
Ck=H′(k×Fs/N)×(1.0−cos(π×(k×Fs/N−fq0)/(fq1−fq0)))/2.0 (fq0<k×Fs/N<fq1) …(C32)
Ck=H′(f) (fq1≦k×Fs/N≦fq2) …(C33)
Ck(f)=H′(f)×(1.0+cos(π×(k×Fs/N−fq2)/(fq3−fq2)))/2.0 (fq2<k×Fs/N≦fq3) …(C34)
Ck=0 (fq3<k×Fs/N) …(C35)
(N/2+1)≦k≦N−1の範囲で、
Ck=CN−kの複素共役 …(C36)
(STEP2)
次に、Ck(k=0〜N−1)について、式(C37)に示すように、N点の逆離散フーリエ変換を行って、時間領域のフィルタ係数cj(j=0〜N−1)を算出する。
cj=ΣCkexp(2πi×jk/N) (Σは、k=0〜N−1の範囲の和) …(C37)
(STEP3)
次に、以下のようにして、ccj(j=0〜N/2−1)を求め、FIRフィルタの係数とする。
(STEP3)
次に、以下のようにして、ccj(j=0〜N/2−1)を求め、FIRフィルタの係数とする。
ccj=cj+N/2 (j=0〜N/2−1) …(C38)
ccj=cj−N/2 (j=N/2〜N−1) …(C39)
以上によって、フィルタ回路FT1のフィルタ係数ccjが得られた。フィルタ係数ccjの周波数特性H1(f)(=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c))は、離散化や量子化の誤差、サンプル数Nの制限などによって、周波数特性H1″(f)と完全に一致するのではなく、近似となる。
ccj=cj−N/2 (j=N/2〜N−1) …(C39)
以上によって、フィルタ回路FT1のフィルタ係数ccjが得られた。フィルタ係数ccjの周波数特性H1(f)(=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c))は、離散化や量子化の誤差、サンプル数Nの制限などによって、周波数特性H1″(f)と完全に一致するのではなく、近似となる。
しかしながら、サンプル数Nが多くなるほど、H1(f)はH1″(f)に近づき、fq1≦f≦fq2のfの範囲(W(f)>0の範囲)では、H1(f)はH′(f)にも近づくという性質を有する。したがって、サンプル数Nが多くなるほど、H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することになる。
以上より、サンプル数Nを十分大きくとって、STEP1〜STEP3の処理を行なうことで、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足するようなフィルタ係数を算出する方法が示された。
フィルタ回路FT2のフィルタ係数も、上記と同様にして求めることができる。
フィルタ回路FT1,FT2は、たとえば、ハードウェアのデジタル回路として構成され、A/D変換部AD1,AD2のサンプリング周波数に同期して動作する。つまり、A/D変換部AD1,AD2からデジタル信号が1サンプル送られるたびにフィルタ処理を行ない、処理結果を1サンプルごとに出力する。フィルタ回路FT1,FT2のフィルタ係数は、上述のSTEP1〜STEP3の処理をソフトウェアがコンピュータに処理させることで予め求められる。また、フィルタ係数は、たとえば図1に図示されない、ROM(Read Only Memory)などの記憶手段に記憶され、フィルタ回路FT1,FT2の処理に応じて記憶手段から読み出される。
信号処理回路SP1は、さらに、フィルタ回路FT1の出力からフィルタ回路FT2の出力を減算して指向性信号Y(f)を出力する減算部SBを含む。
減算部SBはフィルタ回路FT1,FT2と同様に、たとえばハードウェアのデジタル回路として構成される。減算部SBはフィルタ回路FT1,FT2から出力される値を1サンプル毎に減算して、1サンプルごとの結果を指向性信号Y(f)として出力する。
以上のように、本実施の形態に係る収音装置によれば、周波数特性は音の到来角Φに依存せず一定であり、指向特性も周波数fに依存せず、αに応じた一定の形状の特性が形成される。つまり、実施の形態1の収音装置によれば、マイクロホンを近接して配置した場合にも、周波数に依存しない良好な指向特性を形成し、さらに、どの方向から到来する音に対しても周波数特性の歪みの少ない受音信号を得ることができる。
なお、信号処理回路SP1は、図1に示される構成に限定されるものではなく、式(C1)と等価な指向性信号Y(f)が得られるのであれば、以下の示すような他の構成であっても良い。
(変形例A)
信号処理回路SP1の他の構成例として、たとえば、図1におけるフィルタ回路FT2を別のフィルタ回路に置き換え、このフィルタ回路のフィルタ係数が、フィルタ回路FT2のフィルタ係数の符号を反転したフィルタ係数とする例がある。この場合、減算部SBを加算回路に置き換えて加算処理を行なう。また、減算の前段で、受音信号X1(f)にexp(−2πifτ+πifDα/c)に相当する遅延を加える処理と、受音信号X2(f)にexp(−2πifτ−πifDα/c)に相当する遅延を加える処理を行ない、減算の後段で、H(f)に相当するフィルタ処理を行なっても良い。以上のように、式(C1)〜(C3)で示される処理はフィルタ処理、減算処理、加算処理、符号反転処理などの各種処理を組合せによって実現することが可能である。よって処理の内容が等価でになる構成であればよい。
信号処理回路SP1の他の構成例として、たとえば、図1におけるフィルタ回路FT2を別のフィルタ回路に置き換え、このフィルタ回路のフィルタ係数が、フィルタ回路FT2のフィルタ係数の符号を反転したフィルタ係数とする例がある。この場合、減算部SBを加算回路に置き換えて加算処理を行なう。また、減算の前段で、受音信号X1(f)にexp(−2πifτ+πifDα/c)に相当する遅延を加える処理と、受音信号X2(f)にexp(−2πifτ−πifDα/c)に相当する遅延を加える処理を行ない、減算の後段で、H(f)に相当するフィルタ処理を行なっても良い。以上のように、式(C1)〜(C3)で示される処理はフィルタ処理、減算処理、加算処理、符号反転処理などの各種処理を組合せによって実現することが可能である。よって処理の内容が等価でになる構成であればよい。
(変形例B)
信号処理回路SP1は、ハードウェアのデジタル回路によって構成されるものと限定されず、たとえば信号処理回路SP1は、DSP(Digital Signal Processor)であって、ソフトウェアによって実行されるものであってもよい。
信号処理回路SP1は、ハードウェアのデジタル回路によって構成されるものと限定されず、たとえば信号処理回路SP1は、DSP(Digital Signal Processor)であって、ソフトウェアによって実行されるものであってもよい。
(変形例C)
フィルタ回路FT1,FT2はFIRフィルタに限定されず、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタであってもよい。
フィルタ回路FT1,FT2はFIRフィルタに限定されず、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタであってもよい。
(変形例D)
フィルタ回路FT1,FT2は周波数領域でフィルタ処理を行なう方法、つまり、受音信号X1(f),X2(f)を短時間フーリエ変換などによって周波数領域に変換し、周波数領域でH1(f),H2(f)を乗じ、逆変換によって時間領域に戻す構成としても良い。
フィルタ回路FT1,FT2は周波数領域でフィルタ処理を行なう方法、つまり、受音信号X1(f),X2(f)を短時間フーリエ変換などによって周波数領域に変換し、周波数領域でH1(f),H2(f)を乗じ、逆変換によって時間領域に戻す構成としても良い。
(変形例E)
フィルタ回路FT1,FT2、および減算部SBは、デジタル回路に限定されず、アナログ回路であってもよい。つまり、受信回路DT1、DT2においてA/D変換部AD1,AD2を含まず、フィルタ回路および減算部SBにはアナログ信号であるX1(f),X2(f)にフィルタ処理や減算処理などを行なうアナログ回路を用いても良い。
フィルタ回路FT1,FT2、および減算部SBは、デジタル回路に限定されず、アナログ回路であってもよい。つまり、受信回路DT1、DT2においてA/D変換部AD1,AD2を含まず、フィルタ回路および減算部SBにはアナログ信号であるX1(f),X2(f)にフィルタ処理や減算処理などを行なうアナログ回路を用いても良い。
(変形例F)
フィルタ係数は、周波数領域で離散化し、逆離散フーリエ変換によって時間領域に変換して、近似的に求められるものに限定されず、その他の一般的な周波数−時間変換の手法や離散化の手法を用いて、フィルタ係数を決定しても良い。また、理想的な特性との誤差を評価関数として表し、適当な最適化手法(たとえば勾配法)によって誤差が最小になるように決定しても良い。
フィルタ係数は、周波数領域で離散化し、逆離散フーリエ変換によって時間領域に変換して、近似的に求められるものに限定されず、その他の一般的な周波数−時間変換の手法や離散化の手法を用いて、フィルタ係数を決定しても良い。また、理想的な特性との誤差を評価関数として表し、適当な最適化手法(たとえば勾配法)によって誤差が最小になるように決定しても良い。
[実施の形態1の変形例1]
実施の形態1の変形例1は、実施の形態1におけるW(f)の変形例に関する。
実施の形態1の変形例1は、実施の形態1におけるW(f)の変形例に関する。
人間の可聴域は、20〜20000Hzであり、それ以外の周波数は、聞き取れないと言われている。
したがって、本変形例では、式(D1)および(D2)に示すW(f)を用いることによって、音として知覚できる成分の特性を効果的に評価することができる。
W(f)=0 (f<20(Hz)、20000(Hz)<f) …(D1)
=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(D2)
[実施の形態1の変形例2]
実施の形態1の変形例2は、実施の形態1におけるW(f)の別の変形例に関する。
=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(D2)
[実施の形態1の変形例2]
実施の形態1の変形例2は、実施の形態1におけるW(f)の別の変形例に関する。
ある信号をデジタル化(離散化)する場合、そのサンプリング周波数の1/2以上の周波数成分は折り返し歪みとして現れることが、サンプリング定理として知られている。よって、デジタル信号は、そのサンプリング周波数の1/2以下に帯域制限されて用いられるのが一般的である。
したがって、本変形例では、信号がデジタル信号で、そのサンプリング周波数Fs(Hz)が40000Hz以下の場合に、人間の可聴域の成分の特性を評価できるとともに、帯域制限された周波数領域を評価の対象に含めないように、式(E1)および(E2)に示すW(f)を用いる。
W(f)=0 (f<20(Hz)、Fs/2(Hz)<f) …(E1)
=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(E2)
[実施の形態1の変形例3]
実施の形態1の変形例3は、実施の形態1におけるW(f)の別の変形例に関する。
=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(E2)
[実施の形態1の変形例3]
実施の形態1の変形例3は、実施の形態1におけるW(f)の別の変形例に関する。
人間の可聴域内であっても、1000Hz付近では物理的に小さな音を聞き取ることができるが、低域や高域では、大きな音でないと聞き取れないといった、感度の違いがることが知られている。
したがって、本変形例では、人間の聴覚特性に基づいて、聴覚的な感度に高い周波数ほど、W(f)の値が大きくなるようにするとともに、聴覚的な感度が所定のレベル以下の周波数では、W(f)=0となるようにする。
これにより、人間の聴覚的な感度の高い周波数ほど、誤差の量を大きく評価することができ、人間の聴覚の性質にあった評価が可能となる。
なお、周波数に依存した人間の聴覚的な感度については、たとえばISO226、ISO532などにおいて具体的に定められているので、これらを用いるものとすればよい。
[実施の形態1の変形例4]
実施の形態1の変形例4は、関数H(f)の変形例に関する。本変形例の関数H(f)は、以下の式(F1)で表される。
実施の形態1の変形例4は、関数H(f)の変形例に関する。本変形例の関数H(f)は、以下の式(F1)で表される。
H(f)=β/{2i×sin(πfD(α+1)/c)} …(F1)
ただし、βは予め求まる定数である。この場合、指向性信号Y(f)を式(C4)を用いて変形すると、指向性信号Y(f)は以下の式(F2)のように表わされ、振幅特性比G(f)は式(C5)を用いて順次変形すると式(F3)のように表わされる。
ただし、βは予め求まる定数である。この場合、指向性信号Y(f)を式(C4)を用いて変形すると、指向性信号Y(f)は以下の式(F2)のように表わされ、振幅特性比G(f)は式(C5)を用いて順次変形すると式(F3)のように表わされる。
Y(f)=2×i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)H(f)X(f)
=2×i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)β/{2×i×sin(πfD(α+1)/c)}X(f)
=β{sin(πfD(α+cosΦ)/c)/sin(πfD(α+1)/c)}exp(−2πifτ)X(f) …(F2)
G(f)=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2×i×sin(πfD(α+1)/c)}|
G(f)=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/sin(πfD(α+1)/c)| …(F3)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホンMC1,MC2の間隔Dが十分小さいと|πfD(α+cosΦ)/c|および|πfD(α+1)/c|も十分小さいとみなすことができる。よって指向性信号Y(f)および振幅特性比G(f)は次の式(F4)、(F5)のように近似される。
=2×i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)β/{2×i×sin(πfD(α+1)/c)}X(f)
=β{sin(πfD(α+cosΦ)/c)/sin(πfD(α+1)/c)}exp(−2πifτ)X(f) …(F2)
G(f)=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2×i×sin(πfD(α+1)/c)}|
G(f)=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/sin(πfD(α+1)/c)| …(F3)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホンMC1,MC2の間隔Dが十分小さいと|πfD(α+cosΦ)/c|および|πfD(α+1)/c|も十分小さいとみなすことができる。よって指向性信号Y(f)および振幅特性比G(f)は次の式(F4)、(F5)のように近似される。
Y(f)≒β{(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)}exp(−2πifτ)X(f)
=β(α+cosΦ)/(α+1)exp(−2πifτ)X(f) …(F4)
G(f)≒|β(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)|
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(F5)
式(F5)の振幅特性比G(f)に表わされるように、周波数の振幅特性は周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足する。
=β(α+cosΦ)/(α+1)exp(−2πifτ)X(f) …(F4)
G(f)≒|β(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)|
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(F5)
式(F5)の振幅特性比G(f)に表わされるように、周波数の振幅特性は周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足する。
また、指向性信号Y(f)を示す式(F4)においてexp(−2πifτ)は時間τの単純な遅延に相当するので、X(f)の位相特性も変化を受けない。
図2は、式(F1)の関数H(f)を用いたときの収音装置1Aの特性を示すグラフである。
図2を参照して、周波数fおよび到来角Φに対する振幅特性比G(f)が示される。なお、マイクロホンの間隔Dは0.002mである。また、定数α=−cos120°であり、定数β=1である。
図2のグラフにおいて、音の到来角Φに依存しないフラットな周波数特性と、周波数fに依存しない到来角0°方向への指向特性が得られている。よって、実施の形態1の変形例4に従うと、得られる信号の周波数特性を、より理想的な特性にすることができる。
さて、信号処理回路SP1が、このような関数H(f)によって信号処理を行なうために、実施の形態1で説明したようなフィルタ回路を用いる場合には、実施の形態1で説明したように、予めソフトウェアがコンピュータによって、次の式(F6)に示すように、式(F1)のH(f)をH′(f)として、STEP1〜STEP3を実行することにより、フィルタ係数を算出することが必要となる。
H′(f)=β/{2i×sin(πfD(α+1)/c)} …(F6)
STEP1〜STEP3の実行によって、算出されたフィルタ回路FT1のフィルタ係数の周波数特性H1(f)は、fq1≦f≦fq2のfの範囲では、H1′(f)(=β/{2i×sin(πfD(α+1)/c)}exp(−2πifτ+πifDα/c))およびH1″(f)の近似となる。
STEP1〜STEP3の実行によって、算出されたフィルタ回路FT1のフィルタ係数の周波数特性H1(f)は、fq1≦f≦fq2のfの範囲では、H1′(f)(=β/{2i×sin(πfD(α+1)/c)}exp(−2πifτ+πifDα/c))およびH1″(f)の近似となる。
図3は、H1″(f)の振幅を示すグラフである。
図4は、サンプル数Nが64のときに算出されたフィルタ回路FT1のフィルタ係数の周波数特性H1(f)の振幅を示すグラフである。
図5は、サンプル数Nが2048のときに算出されたフィルタ回路FT1のフィルタ係数の周波数特性H1(f)の振幅を示すグラフである。
図6は、サンプル数Nが65536のときに算出されたフィルタ回路FT1のフィルタ係数の周波数特性H1(f)の振幅を示すグラフである。
図3〜図6において、|H1(f)|および|H1″(f)|はdB表示されている。また、これらの図において、fq0=200Hz、fq1=300Hz、fq2=20000Hz、fq3=22000Hzとし、D=0.002m、α=1/2とする。
図3〜図6で示されるように、サンプル数Nが大きくなるほど、フィルタ回路FT1の周波数特性H1(f)の振幅は、fq1≦f≦fq2のfの範囲では、H1″(f)の振幅に近づく。
図7は、サンプル数Nと、H1″(f)の振幅に対するフィルタ回路の周波数特性H1(f)の振幅のSNRとの関係を示す表である。
ここで、SNRは、以下の式(F7)に基づいて算出され、H1(f)がH1″(f)に近いほど、SNRの値は大きくなる。
SNR(dB)=10×log10(∫(H1″(f))2df/∫(H1(f)−H1″(f))2df) …(F7)
式(F7)において∫は、0(Hz)からFs/2(Hz)までの積分を示す。
式(F7)において∫は、0(Hz)からFs/2(Hz)までの積分を示す。
図7に示されるように、サンプル数Nが多くなるほど、SNRは大きくなり、H1(f)によってH1″(f)を精度よく近似できる。したがって、サンプル数Nが十分に多ければ、算出されたフィルタ係数の周波数特性H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することになる。
[実施の形態1の変形例5]
実施の形態1の変形例5は、関数H(f)の別の変形例に関する。本変形例の関数H(f)は以下の式(G1)で表わされる関数である。
実施の形態1の変形例5は、関数H(f)の別の変形例に関する。本変形例の関数H(f)は以下の式(G1)で表わされる関数である。
H(f)=β/{2i(πfD(α+1)/c)} …(G1)
式(G1)に示される関数H(f)を用いた場合、指向性信号Y(f)を式(C4)を用いて変形すると、指向性信号Y(f)は以下の式(G2)で表わされ、振幅特性比G(f)は式(C5)を用いて順次変形すると以下の式(G3)で表わされる。
式(G1)に示される関数H(f)を用いた場合、指向性信号Y(f)を式(C4)を用いて変形すると、指向性信号Y(f)は以下の式(G2)で表わされ、振幅特性比G(f)は式(C5)を用いて順次変形すると以下の式(G3)で表わされる。
Y(f)=2×i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ)H(f)X(f)
=2×i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ){β/2iπfD(α+1)/c}X(f)
=βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)exp(−2πifτ)X(f) …(G2)
G(f)=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2×iπfD(α+1)/c}}|
=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)| …(G3)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホン間隔Dが充分小さく、|πfD(α+cosΦ)/c|が充分小さい範囲では、指向性信号Y(f)、振幅特性比G(f)は各々近似されて変形された結果、次式の式(G4),(G5)のように表わされる。
=2×i×sin(πfD(α+cosΦ)/c)exp(−2πifτ){β/2iπfD(α+1)/c}X(f)
=βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)exp(−2πifτ)X(f) …(G2)
G(f)=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2×iπfD(α+1)/c}}|
=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)| …(G3)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホン間隔Dが充分小さく、|πfD(α+cosΦ)/c|が充分小さい範囲では、指向性信号Y(f)、振幅特性比G(f)は各々近似されて変形された結果、次式の式(G4),(G5)のように表わされる。
Y(f)≒β{(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)}exp(−2πifτ)X(f)
=β(α+cosΦ)/(α+1)exp(−2πifτ)X(f) …(G4)
G(f)≒|β(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)|
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(G5)
よって、式(G5)の振幅特性比G(f)に表わされるように、周波数の振幅特性は周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することは明らかである。また、Y(f)の式においてexp(−2πifτ)は時間τの単純な遅延に相当するので、X(f)の位相特性も変化を受けない。
=β(α+cosΦ)/(α+1)exp(−2πifτ)X(f) …(G4)
G(f)≒|β(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)|
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(G5)
よって、式(G5)の振幅特性比G(f)に表わされるように、周波数の振幅特性は周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することは明らかである。また、Y(f)の式においてexp(−2πifτ)は時間τの単純な遅延に相当するので、X(f)の位相特性も変化を受けない。
[実施の形態1の変形例6]
実施の形態1の変形例6について以下に説明する。本変形例の関数H(f)は、以下の式(H1)で表わされる関数である。
実施の形態1の変形例6について以下に説明する。本変形例の関数H(f)は、以下の式(H1)で表わされる関数である。
|H(f)|=|β/{2sin(πfD(α+1)/c)}| …(H1)
振幅特性比G(f)は、式(C5)を用いて順次変形すると以下の式(H2)で表わされる。
振幅特性比G(f)は、式(C5)を用いて順次変形すると以下の式(H2)で表わされる。
G(f)=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2sin(πfD(α+1)/c)}|
=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/sin(πfD(α+1)/c)|
…(H2)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホン間隔Dが充分小さく、|πfD(α+cosΦ)/c|および|πfD(α+1)/c|が充分小さい範囲では、振幅特性比G(f)は、変形されて以下の式(H3)に表わされるようになる。
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2sin(πfD(α+1)/c)}|
=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/sin(πfD(α+1)/c)|
…(H2)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホン間隔Dが充分小さく、|πfD(α+cosΦ)/c|および|πfD(α+1)/c|が充分小さい範囲では、振幅特性比G(f)は、変形されて以下の式(H3)に表わされるようになる。
G(f)≒|β(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)|
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(H3)
よって、式(H3)の振幅特性比G(f)に表わされるように、周波数の振幅特性は周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することは明らかである。
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(H3)
よって、式(H3)の振幅特性比G(f)に表わされるように、周波数の振幅特性は周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することは明らかである。
なお、関数H(f)の位相特性については特に条件が与えられていないので信号の位相特性は変化を受ける可能性がある。しかし、人間の聴覚は振幅特性に対して敏感に反応するが、位相特性に対しては敏感には反応しないので、信号の位相特性が変化しても問題とならない。また、H(f)の振幅特性のみを条件として与えることにより、FIRフィルタなどでH(f)を近似的に実現する場合に、振幅特性を優先的に近似して設計することができるので、振幅特性の精度をより高めることができる。
[実施の形態1の変形例7]
実施の形態1の変形例7は、関数H(f)の別の変形例に関する。本変形例の関数H(f)は、以下の式(I1)で表わされる関数である。
実施の形態1の変形例7は、関数H(f)の別の変形例に関する。本変形例の関数H(f)は、以下の式(I1)で表わされる関数である。
|H(f)|=|β/{2(πfD(α+1)/c)}| …(I1)
この場合、振幅特性比G(f)は、式(I1)を用いて順次変形すると以下の式(I2)で表わされる。
G(f)=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2πfD(α+1)/c}|
=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)| …(I2)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホン間隔Dが充分小さく、|πfD(α+cosΦ)/c|が充分小さい範囲では、振幅特性比G(f)は、変形されて式(I3)のように表わされる。
この場合、振幅特性比G(f)は、式(I1)を用いて順次変形すると以下の式(I2)で表わされる。
G(f)=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||H(f)|
=|2sin(πfD(α+cosΦ)/c)||β/{2πfD(α+1)/c}|
=|βsin(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)| …(I2)
xを任意の角度として|x|が十分に小さい範囲では、sin(x)はxと近似される。マイクロホン間隔Dが充分小さく、|πfD(α+cosΦ)/c|が充分小さい範囲では、振幅特性比G(f)は、変形されて式(I3)のように表わされる。
G(f)≒|β(πfD(α+cosΦ)/c)/(πfD(α+1)/c)|
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(I3)
なお、得られる効果について説明すると、実施の形態1の変形例6の場合と同様である。つまり、周波数の振幅特性が周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することは明らかである。
=|β(α+cosΦ)/(α+1)| …(I3)
なお、得られる効果について説明すると、実施の形態1の変形例6の場合と同様である。つまり、周波数の振幅特性が周波数fに依存せず、完全にフラットな特性になる。したがって、関数H(f)は、式(C14)〜(C23)のフラットとなる条件を満足することは明らかである。
H(f)の位相特性については特に条件が与えられていないため、受音信号の位相特性は変化を受ける可能性があるが、このような構成にした理由については、実施の形態1の変形例6において説明したように、人間の聴覚は位相特性よりも振幅特性に敏感であるという性質を考慮したためである。
[実施の形態2]
実施の形態2の収音装置は、実施の形態1の収音装置と比較して低コストのシステムを実現可能にする。
実施の形態2の収音装置は、実施の形態1の収音装置と比較して低コストのシステムを実現可能にする。
図8は、実施の形態2の収音装置の構成を示すブロック図である。図1、図8を参照して、収音装置1Bは、図1の信号処理回路SP1に代えて信号処理回路SP2を備える点において図1の収音装置1Aと異なる。この収音装置1Bは、α≧0のときにおいて、式(C1)で示される指向性信号Y(f)を生成するものである。以下の説明では、α≧0であることを前提とする。
信号処理回路SP2は、図1のフィルタ回路FT1,FT2に代えてA/D変換部AD2から出力される受音信号X2(f)を遅延させて出力する遅延部DL1と、減算部SBの出力に補正処理を行なうフィルタ回路FT3を含む点で、図1の信号処理回路SP1と異なる。フィルタ回路FT3からは指向性信号Y(f)が出力される。
遅延部DL1は、exp(−2πifDα/c)に相当する時間遅延を受音信号X2(f)に加える。遅延時間はDα/cである。Nを1以上の整数とすると、遅延時間は、A/D変換部AD2のサンプリング周期(サンプリング周波数の逆数)のN倍になるように設定される。つまり、遅延部DL1は、A/D変換部AD2から送られる受音信号X2(f)を単純にNサンプル分遅らせて出力するデジタルの遅延回路である。
減算部SBは、図1の減算部SBと同様の構成であり、A/D変換部AD1と遅延部DL1から出力される値を1サンプル毎に減算し、減算した結果の信号である(X1(f)−X2(f)exp(−2πifDα/c))を1サンプル毎に出力する。
フィルタ回路FT3は、周波数特性がH1(f)、つまり、H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)となるようなフィルタ係数を有し、減算部SBから信号(X1(f)−X2(f)exp(−2πifDα/c))を受けて、H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)(X1(f)−X2(f)exp(−2πifDα/c))を出力する。
フィルタ回路FT3は、実施の形態1で説明したフィルタ回路FT1,FT2と同様に、たとえばFIRフィルタによって構成される。フィルタ回路FT3のフィルタ係数は、実施の形態1で説明したように、ソフトウェアがコンピュータにSTEP1〜STEP3を実行させることによって予め算出される。
図8の収音装置1Bの処理について以下に説明する。
まず、図1の収音装置1Aの場合と同様に、音波SWはマイクロホンMC1,MC2の順に到達するものとし、音波SWの到来角をΦとする。また、遅延部DL1は、入力される受音信号X2(f)に対し、遅延時間Dα/cだけ受音信号X2(f)を遅延させる。したがって、遅延部DL1から出力される信号は以下の式(J1)のように表わされる。
X2(f)exp(−2πifDα/c)…(J1)
よって、指向性信号Y(f)は、以下の式(J2)のように表わされる。
よって、指向性信号Y(f)は、以下の式(J2)のように表わされる。
Y(f)=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)(X1(f)−X2(f)exp(−2πifDα/c))
=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)X1(f)−H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)exp(−2πifDα/c)X2(f)
=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)X1(f) −H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c)X2(f) …(J2)
式(J2)は、式(C1)〜(C3)に一致する。よって収音装置1Bは、図1の収音装置1Aと同じ処理を行なう。
=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)X1(f)−H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)exp(−2πifDα/c)X2(f)
=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c)X1(f) −H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c)X2(f) …(J2)
式(J2)は、式(C1)〜(C3)に一致する。よって収音装置1Bは、図1の収音装置1Aと同じ処理を行なう。
以下に,実施の形態2の収音装置の効果について説明する。
フィルタ回路FT3のようなフィルタを構成するには、一般的に、フィルタ係数を記憶する記憶手段(たとえば上述のROMである)や、入力される信号をサンプリングした値を格納する記憶手段(たとえばRAMなどのメモリ)が必要である。また、フィルタ回路は記憶手段以外にも乗算や加算を行なうための演算手段を含む。
図8の収音装置1Bにおいて信号処理回路SP2は、フィルタ回路FT3と遅延部DL1とを含む。遅延部DL1に含まれる記憶手段は遅延処理に必要な数個程度のサンプルを保存できる記憶容量があればよい。実施の形態1の収音装置1Aにおいて2つ含まれるフィルタが実施の形態2の収音装置では1つになり、代わりに数サンプルの遅延を行なう単純な遅延回路に置き換えられる。よって、より低コストのシステムで処理を行なうことができる。つまり、信号処理回路SP2がハードウェアで実現する場合には、より小さな回路規模で同様の処理を行なうことができる。
なお、図8の収音装置1Bにおいて、信号処理回路SP2がDSPで構成される場合も可能である。この場合、DSPは少ない演算量で処理を実行できるので高速な処理が可能となるとともに、少ない記憶容量で処理を実行するのでシステムの規模を小さくすることができる。
なお、α<0のときには、信号処理回路SP2に含まれる遅延部DL1の配置と、フィルタ回路FT3のフィルタ係数とを上述のものから変更することによって、式(J2)で示される指向性信号Y(f)を生成することができる。
すなわち、遅延部DL1は、受音信号X1(f)を|Dα/c|だけ遅延する。そして、減算部SBは、遅延部DL1の出力信号から受音信号X2(f)を減算する。
また、フィルタ回路FT3は、H2(f)、つまりH(f)exp(−2πifτ−πifDα/c)に応じたフィルタ係数をもち、減算部SBの出力を受けて、指向性信号Y(f)を出力する。
なお、フィルタ回路FT3は、実施の形態1で説明したフィルタ回路FT1,FT2と同様のものに限定されるものではなく、実施の形態1の変形例A〜変形例Fで説明したものを用いるものとしてもよい。
[実施の形態3]
実施の形態3の収音装置は、3つ以上のマイクロホンを用いて、より鋭い指向性(鋭指向性)を得ることを可能にする。
実施の形態3の収音装置は、3つ以上のマイクロホンを用いて、より鋭い指向性(鋭指向性)を得ることを可能にする。
図9は、実施の形態3の収音装置の構成を示すブロック図である。なお、図9ではマイクロホンを4つ含む収音装置の例について説明する。図9を参照して、収音装置1Cは、受信した音波SWを電気信号に変換して出力する受信回路DT1〜DT4と、各々の受信回路から出力される受音信号X1(f)〜X4(f)を受け、各々の信号を合成して指向性を有する指向性信号Y(f)を生成する指向性信号生成回路ST3とを備える。
受信回路DT1は、マイクロホンMC1とA/D変換部AD1とを含む。なお、図9の受信回路DT1は、図1の受信回路DT1と構成及び機能が同一である。よって、以後、受信回路DT1の構成および機能に関する説明は繰り返さない。また、受信回路DT2〜DT4の構成および機能は、受信回路DT1の構成及び機能と同様であるので、以後の説明は繰り返さない。なお、マイクロホンの配置について説明すると、マイクロホンMC1〜MC4は、マイクロホンMC1からマイクロホンMC2,MC3,MC4の順に直線状かつ等間隔(間隔をD′とする)で配置される。マイクロホンMC2とマイクロホンMC3との中点に原点があるとする。
指向性信号生成回路ST3は、多段に組み合わされた信号処理回路SP11〜SP31を含む。なお、以後の説明の便宜のため、信号処理回路SP11〜SP31のいずれかの信号処理回路を示す場合には、信号処理回路SPk,n(k=1〜3、n=1〜4−k)とも示すことにする。
信号処理回路SP11〜SP31の構成は、図1の信号処理回路SP1あるいは図8の信号処理回路SP2と同様である。
信号処理回路SP11〜SP31は、3段に直列接続され、前段の2個の信号処理回路に後段の1個の信号処理回路が接続される。図9において、信号処理回路SP11〜SP13が1段目に配置されるとし、信号処理回路SP21,SP22は2段目、信号処理回路SP31は3段目に配置されるとする。たとえば、信号処理回路SP21は、信号処理回路SP11,SP12に接続される。同様に、信号処理回路SP22は、信号処理回路SP12,SP13に接続される。さらに、信号処理回路SP31は、信号処理回路SP21,SP22に接続される。
なお、信号処理回路SP11〜SP13の各々は、前段のA/D変換部AD1〜AD4の隣接する2個のA/D変換部から出力される信号を受ける。たとえば、信号処理回路SP11は、A/D変換部AD1,AD2から出力される受音信号X1(f),X2(f)を受ける。
信号処理回路が直列接続される段数は、受信回路の個数に依存する。Nを3以上の整数とすると、受信回路の個数がN個であれば信号処理回路は直列に(N−1)段に接続される。
以下に、指向性信号生成回路ST3の動作について説明する。
信号処理回路SPk,nに用いられるH(f)の特性は、式(F1)で示されるH(f)の特性である。なお、式(F1)において、D=D′、α=αkである。ここで、αkは以下のように定められる。
α1=−cos55°、α2=−cos105°、α3=−cos155°
各々の信号処理回路に入力される信号をXa(f),Xb(f)とし、各信号処理回路SPk,nで処理されて出力される信号をR(Xa(f),Xb(f),αk,D′)と定める。R(Xa(f),Xb(f),αk,D′)は、以下の式(K1)〜(K4)のように表わされる。
各々の信号処理回路に入力される信号をXa(f),Xb(f)とし、各信号処理回路SPk,nで処理されて出力される信号をR(Xa(f),Xb(f),αk,D′)と定める。R(Xa(f),Xb(f),αk,D′)は、以下の式(K1)〜(K4)のように表わされる。
R(Xa(f),Xb(f),αk,D′)=H1 k(f)Xa(f)−H2 k(f)Xb(f) …(K1)
H1 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ+πifD′αk/c) …(K2)
H2 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ−πifD′αk/c) …(K3)
Hk(f)=1/{2×i×sin(πfD′(αk+1)/c) …(K4)
このときに、指向性信号生成回路ST3は、式(K5)〜(K7)の漸化式に基づいて、指向性信号Y(f)を生成する。
H1 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ+πifD′αk/c) …(K2)
H2 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ−πifD′αk/c) …(K3)
Hk(f)=1/{2×i×sin(πfD′(αk+1)/c) …(K4)
このときに、指向性信号生成回路ST3は、式(K5)〜(K7)の漸化式に基づいて、指向性信号Y(f)を生成する。
Xn 1(f)=Xn(f) (n=1〜4)…(K5)
Xn k+1(f)=R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
(k=1〜3、n=1〜4−k)…(K6)
Y(f)=X1 4(f) …(K7)
ただし、fは周波数であり、D′は、隣り合う受音素子間の距離であり、αkは定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数である。
Xn k+1(f)=R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
(k=1〜3、n=1〜4−k)…(K6)
Y(f)=X1 4(f) …(K7)
ただし、fは周波数であり、D′は、隣り合う受音素子間の距離であり、αkは定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数である。
以下、指向性信号生成回路ST3に含まれる各信号処理回路の処理内容を説明する。
A/D変換部ADnから出力される受音信号Xn(f)をXn 1(f)とおく。
信号処理部SP11は、A/D変換部AD1から出力される信号X1 1(f)と、AD変換部AD2から出力される信号X2 1(f)を受けて、所定の信号処理R(X1 1(f),X2 1(f),α1,D′)を行ない、生成された信号をX1 2(f)として出力する。
信号処理部SP12は、A/D変換部AD2から出力される信号X2 1(f)と、AD変換部AD3から出力される信号X3 1(f)を受けて、所定の信号処理R(X2 1(f),X3 1(f),α1,D′)を行ない、生成された信号をX2 2(f)として出力する。
信号処理部SP13は、A/D変換部AD3から出力される信号X3 1(f)と、AD変換部AD4から出力される信号X4 1(f)を受けて、所定の信号処理R(X3 1(f),X4 1(f),α1,D′)を行ない、生成された信号をX3 2(f)として出力する。
以上のようにして、式(K6)の漸化式のk=1、n=1〜3に対する処理が行なわれる。
信号処理部SP21は、信号処理部SP11から出力される信号X1 2(f)と、信号処理部SP12から出力される信号X2 2(f)を受けて、所定の信号処理R(X1 2(f),X2 2(f),α2,D′)を行ない、生成された信号をX1 3(f)として出力する。
信号処理部SP22は、信号処理部SP12から出力される信号X2 2(f)と、信号処理部SP13から出力される信号X3 2(f)を受けて、所定の信号処理R(X2 2(f),X3 2(f),α2,D′)を行ない、生成された信号をX2 3(f)として出力する。
以上のようにして、式(K6)の漸化式のk=2、n=1〜2に対する処理が行なわれる。
信号処理部SP31は、信号処理部SP21から出力される信号X1 3(f)と、信号処理部SP22から出力される信号X2 3(f)を受けて、所定の信号処理R(X1 3(f),X2 3(f),α3,D′)を行ない、生成された信号をX1 4(f)として出力する。
以上のようにして、式(K6)の漸化式のk=3、n=1に対する処理が行なわれる。
信号処理部SP31から出力された信号X1 4(f)が指向性信号Y(f)となる。
次に、実施の形態3の収音装置の効果について説明する。
実施の形態1で説明したように、Xa(f),Xb(f)が2つのマイクロホンA、Bで得られた受音信号としたときに、2つのマイクロホンA、Bの中点にマイクロホンがあると仮定した場合、その仮定されたマイクロホンで得られる受音信号をV(f)とすると、
Xa(f)=V(f)exp(−2πif×(−0.5)D′cosΦ/c) …(K8)
Xb(f)=V(f)exp(−2πif×(0.5)D′cosΦ/c) …(K9)
と表わされる。ただし、Φは、マイクロホンA,Bに到達する音波SWの到来角であり、D′は、マイクロホンAとマイクロホンBとの間隔である。
Xa(f)=V(f)exp(−2πif×(−0.5)D′cosΦ/c) …(K8)
Xb(f)=V(f)exp(−2πif×(0.5)D′cosΦ/c) …(K9)
と表わされる。ただし、Φは、マイクロホンA,Bに到達する音波SWの到来角であり、D′は、マイクロホンAとマイクロホンBとの間隔である。
式(K8)および式(K9)を用いると、式(K1)は以下の式(K10)のように変形される。
R(Xa(f),Xb(f),αk,D′)=β{sin(πfD′(αk+cosΦ)/c)/sin(πfD′(αk+1)/c)}exp(−2πifτ)V(f) …(K10)
1段目の信号処理回路SP1,n(ただし、nは1〜3のいずれかの整数である)から出力される信号をXn 2(f)とすると、信号Xn 2(f)は、式(K6)より以下の式(K11)と表わされる。
1段目の信号処理回路SP1,n(ただし、nは1〜3のいずれかの整数である)から出力される信号をXn 2(f)とすると、信号Xn 2(f)は、式(K6)より以下の式(K11)と表わされる。
Xn 2(f)=R(Xn 1(f),Xn+1 1(f),α1,D′) …(K11)
ただし、Xn 1(f)=Xn(f)である。
ただし、Xn 1(f)=Xn(f)である。
さらに、式(K11)は、式(K10)を用いると、以下の式(K12)のように変形される。
Xn 2(f)=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)Vn 2(f) …(K12)
ここで、関数Vn 2(f)はマイクロホンMCnとマイクロホンMCn+1の中点にマイクロホンがあるとした場合にそのマイクロホンで得られる受音信号に相当する。
ここで、関数Vn 2(f)はマイクロホンMCnとマイクロホンMCn+1の中点にマイクロホンがあるとした場合にそのマイクロホンで得られる受音信号に相当する。
また、Xn 2(f)は、この仮想的に配置されたマイクロホンで得られる受音信号Vn 2(f)に、β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)で表わされる特性をかけたものに等しい。
同様に、2段目の信号処理回路SP2,n(ただし、nは1か2のいずれかである)から出力される信号をXn 3(f)とすると、信号Xn 3(f)は、式(K6)より以下の式(K13)と表わされる。
Xn 3(f)=R(Xn 2(f),Xn+1 2(f),α2,D′) …(K13)
式(K13)は、式(K1)および(K12)を用いると、以下の式(K14)のように表わされる。
式(K13)は、式(K1)および(K12)を用いると、以下の式(K14)のように表わされる。
Xn 3(f)=H1 2(f)Xn 2(f)−H2 2(f)Xn+1 2(f)
=H1 2(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)Vn 2(f)−H2 2(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)Vn+1 2(f)
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ){H1 2(f)Vn 2(f)−H2 2(f)Vn+1 2(f)}
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)R(Vn 2(f),Vn+1 2(f),α2,D′) …(K14)
ここで、関数Vn 2(f)はマイクロホンMCnとマイクロホンMCn+1の中点にマイクロホンがあると仮定した場合に得られる受音信号であり、関数Vn+1 2(f)はマイクロホンMCn+1とマイクロホンMCn+2の中点にマイクロホンがあると仮定した場合に得られる受音信号であり、これら2つの仮定されたマイクロホンの間隔はD′に等しいので、式(K10)を用いることが可能である。よって、式(K10)を用いてさらに式変形を進めると、式(K15)のようになる。
=H1 2(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)Vn 2(f)−H2 2(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)Vn+1 2(f)
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ){H1 2(f)Vn 2(f)−H2 2(f)Vn+1 2(f)}
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)R(Vn 2(f),Vn+1 2(f),α2,D′) …(K14)
ここで、関数Vn 2(f)はマイクロホンMCnとマイクロホンMCn+1の中点にマイクロホンがあると仮定した場合に得られる受音信号であり、関数Vn+1 2(f)はマイクロホンMCn+1とマイクロホンMCn+2の中点にマイクロホンがあると仮定した場合に得られる受音信号であり、これら2つの仮定されたマイクロホンの間隔はD′に等しいので、式(K10)を用いることが可能である。よって、式(K10)を用いてさらに式変形を進めると、式(K15)のようになる。
Xn 3(f)=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)Vn 3(f) …(K15)
ここで、関数Vn 3(f)は、マイクロホンMCnとマイクロホンMCn+1の中点にあると仮定されたマイクロホンと、マイクロホンMCn+1とマイクロホンMCn+2の中点にあると仮定されたマイクロホンの中点にマイクロホンがあると仮定した場合に得られる受音信号、つまり、マイクロホンMCn+1の位置で得られる受音信号である。
ここで、関数Vn 3(f)は、マイクロホンMCnとマイクロホンMCn+1の中点にあると仮定されたマイクロホンと、マイクロホンMCn+1とマイクロホンMCn+2の中点にあると仮定されたマイクロホンの中点にマイクロホンがあると仮定した場合に得られる受音信号、つまり、マイクロホンMCn+1の位置で得られる受音信号である。
また、Xn 3(f)は、この仮想的に配置されたマイクロホンで得られる受音信号Vn 3(f)に、β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)で表わされる特性をかけたものに等しい。
同様に、3段目の信号処理回路SP31から出力される受音信号X1 4(f)については式(K6)より、以下の式(K16)と表わされる。
X1 4(f)=R(Xn 3(f),Xn+1 3(f),α3,D′) …(K16)
式(K1)および(K15)を用いて式(K16)を順次変形すると、次の式(K17)のようになる。
式(K1)および(K15)を用いて式(K16)を順次変形すると、次の式(K17)のようになる。
X1 4(f)=H1 3(f)X1 3(f)−H2 3(f)X2 3(f)
=H1 3(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)V1 3(f)−H2 3(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)V2 3(f)
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ){H1 3(f)V1 3(f)−H2 3(f)V2 3(f)}
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)R(V1 3(f),V2 3(f),α3,D′) …(K17)
ここで、関数V1 3(f)はMC2の位置にマイクロホンがある場合に得られる受音信号であり、関数V2 3(f)は、マイクロホンMC3の位置にマイクロホンがある場合に得られる受音信号である。これら2つの仮定されたマイクロホンの間隔はD′に等しいので、式(K10)を用いることが可能である。よって、さらに式(K10)を用いて式変形を進めると、次の式(K18)のようになる。
=H1 3(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)V1 3(f)−H2 3(f)β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)V2 3(f)
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ){H1 3(f)V1 3(f)−H2 3(f)V2 3(f)}
=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)R(V1 3(f),V2 3(f),α3,D′) …(K17)
ここで、関数V1 3(f)はMC2の位置にマイクロホンがある場合に得られる受音信号であり、関数V2 3(f)は、マイクロホンMC3の位置にマイクロホンがある場合に得られる受音信号である。これら2つの仮定されたマイクロホンの間隔はD′に等しいので、式(K10)を用いることが可能である。よって、さらに式(K10)を用いて式変形を進めると、次の式(K18)のようになる。
X1 4(f)=β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α3+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α3+1)/c)}exp(−2πifτ)V1 4(f) …(K18)
ここで、関数V1 4(f)は、マイクロホンMC2とマイクロホンMC3の中点にあるマイクロホンで得られた受音信号に相当する。つまり、V1 4(f)は原点にマイクロホンがある場合に得られる信号である。
ここで、関数V1 4(f)は、マイクロホンMC2とマイクロホンMC3の中点にあるマイクロホンで得られた受音信号に相当する。つまり、V1 4(f)は原点にマイクロホンがある場合に得られる信号である。
よって、最終的に得られる指向性信号Y(f)(=X1 4(f))は、原点にマイクロホンがあるとして受信した信号V1 4(f)に、
β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α3+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α3+1)/c)}exp(−2πifτ)
で示される特性をかけたものに等しい。ここで、
β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)、
β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)、
β{sin(πfD′(α3+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α3+1)/c)}exp(−2πifτ)は、それぞれ、定数α1、α2、α3の示す各々の到来角Φを死角とし、到来角Φが0°または180°に指向性のピークがある特性を示す。さらに、周波数特性は音の到来角Φに依存せず、広い周波数帯域に渡ってフラットな特性を示す。
β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)β{sin(πfD′(α3+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α3+1)/c)}exp(−2πifτ)
で示される特性をかけたものに等しい。ここで、
β{sin(πfD′(α1+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α1+1)/c)}exp(−2πifτ)、
β{sin(πfD′(α2+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α2+1)/c)}exp(−2πifτ)、
β{sin(πfD′(α3+cosΦ)/c)/sin(πfD′(α3+1)/c)}exp(−2πifτ)は、それぞれ、定数α1、α2、α3の示す各々の到来角Φを死角とし、到来角Φが0°または180°に指向性のピークがある特性を示す。さらに、周波数特性は音の到来角Φに依存せず、広い周波数帯域に渡ってフラットな特性を示す。
このように、指向性信号Y(f)の特性は、上記3つの特性を、それぞれの到来角Φ、周波数fにおいて乗算して得られる特性である。指向性信号Y(f)は、定数α1、α2、α3のすべてに応じた死角があり、到来角0°に指向性のピークがある鋭指向性を形成する。また、その指向特性は周波数fに依存せず一定の形状のままであり、周波数特性が音の到来角Φに依存せず、広い周波数帯域に渡ってフラットな振幅特性比G(f)の得られる特性も保たれる。よって、実施の形態3の収音装置によれば、マイクロホンを近接して配置した場合にも、特定の方向に急峻な指向特性を持った鋭指向性を実現することができる。さらに、その場合に、周波数に依存しない良好な指向特性を形成し、どの方向から到来する音に対しても周波数特性の歪みの少ない受音信号を得ることができる。
以上の説明は、マイクロホンの個数が4個の場合で、かつHk(f)が式(F1)で表わされる場合についてのものだが、以下では、一般的な場合、つまりマイクロホンの個数がN個で、かつHk(f)が式(F1)に限定されない場合について説明する。
N個のマイクロホンは、1からNまでの番号が振られており、その番号順に、直線状、かつ等間隔に配置されているとする。
指向性信号生成回路ST3は、N個のマイクロホンを通して得られるN個の受音信号X1(f)〜XN(f)を受けて、以下の式(K19)〜(K31)に従う指向性信号Y(f)を生成する。
Xn 1(f)=Xn(f) (n=1〜N)…(K19)
Xn k+1(f)=R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(K20)
R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
=H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(K21)
H1 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ+πifD′αk/c) …(K22)
H2 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ−πifD′αk/c) …(K23)
Y(f)=X1 N(f) …(K24)
E1k=∫W(f){A1k|Pk(f)Hk(f)|−1}2df …(K25)
E2k=∫W(f){A2k|Pk(f)|−1}2df …(K26)
A1k=∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|2df …(K27)
A2k=∫W(f)|Pk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)|2df …(K28)
Pk(f)=2sin(πfD′(αk+1)/c) …(K29)
W(f)≧0 …(K30)
E1k<E2k …(K31)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、D′は、隣り合う受音素子間の距離であり、αkは定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(K25)、(K26)、(K27)および(K28)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。
Xn k+1(f)=R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(K20)
R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
=H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(K21)
H1 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ+πifD′αk/c) …(K22)
H2 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ−πifD′αk/c) …(K23)
Y(f)=X1 N(f) …(K24)
E1k=∫W(f){A1k|Pk(f)Hk(f)|−1}2df …(K25)
E2k=∫W(f){A2k|Pk(f)|−1}2df …(K26)
A1k=∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|2df …(K27)
A2k=∫W(f)|Pk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)|2df …(K28)
Pk(f)=2sin(πfD′(αk+1)/c) …(K29)
W(f)≧0 …(K30)
E1k<E2k …(K31)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、D′は、隣り合う受音素子間の距離であり、αkは定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(K25)、(K26)、(K27)および(K28)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。
W(f)の具体例として、実施の形態1、実施の形態1の変形例1、実施の形態1の変形例2、または実施の形態1の変形例3で説明したW(f)を用いるものとしてもよい。
また、指向性信号生成回路ST3の具体例として、たとえば、k段目(1≦k≦(N−1))に、(N−k)個の信号処理回路を含むものとすることができる。
1段目のn番目の信号処理回路は、信号Xn 1(f)(=受音信号Xn(f))およびXn+1 1(f)(=受音信号Xn+1(f))を受けて、信号H1 1(f)Xn 1(f)−H2 1(f)Xn+1 1(f)を信号Xn 2(f)として出力する。
また、2≦k≦(N−1)について、k段目のn番目の信号処理回路は、(k−1)段目のn番目の信号処理回路および(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路に接続される。k段目のn番目の信号処理回路は、(k−1)段目のn番目の信号処理回路から信号Xn k(f)を受けるとともに、(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路から信号Xn+1 k(f)を受けて、信号H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)を信号Xn k+1(f)として出力する。
これらの信号処理回路の具体的な構成として、たとえば、実施の形態1における信号処理回路SP1であってもよい。
すなわち、k段目の第n番目の信号処理回路SP1は、フィルタ回路FT1と、フィルタ回路FT2と、減算部SBとを含む。
フィルタ回路FT1は、H1 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、(k−1)段目のn番目の信号処理回路から信号Xn k(f)を受けて、信号H1 k(f)Xn k(f)を出力する。
フィルタ回路FT2は、H2 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路から信号Xn+1 k(f)を受けて、信号H2 k(f)Xn+1 k(f)を出力する。
減算部SBは、フィルタ回路FT1の出力信号H1 k(f)Xn k(f)からフィルタ回路FT2の出力信号H2 k(f)Xn+1 k(f)を減算する。
また、信号処理回路の他の具体的な構成として、たとえば、実施の形態2のような信号処理回路SP2であってもよい。
すなわち、k段目の第n番目の信号処理回路SP2は、遅延部DL1と、減算部SBと、フィルタ回路FT3とを含む。
αk≧0の場合の信号処理回路SP2に含まれる、遅延部DL1は信号Xn+1 k(f)を|Dαk/c|の時間だけ遅延させ、減算部SBは信号Xn k(f)から遅延部DLの出力信号を減算し、フィルタ回路FT3はH1 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、合成部で合成された信号を受けて、信号Xn k+1(f)を出力する。
一方、αk<0の場合の信号処理回路SP2に含まれる、遅延部DL1は、信号Xn k(f)を|Dαk/c|の時間だけ遅延させ、減算部SBは遅延部DL1の出力から信号信号Xn+1 k(f)を減算し、フィルタ回路FT3はH2 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、合成部で合成された信号を受けて、信号Xn k+1(f)を出力する。
なお、指向性信号生成回路に含まれる信号処理回路は、同一種類ものでなくてもよい。すなわち、指向性信号生成回路に含まれるある信号処理回路として、実施の形態1における信号処理回路SP1を用い、指向性信号生成回路に含まれる別の信号処理回路として、実施の形態2における信号処理回路SP2を用いるものとしてもよい。
また、指向性信号生成回路に含まれる信号処理回路は、上記に限定されることはなく、一般的なフィルタ処理、減算処理、加算処理、符号反転処理などの組合せによって様々な構成で実現することが可能であるが、式(K19)〜(K31)に基づいて、指向性信号Y(f)が生成されるものである限り、いずれの構成であっても良い。
また、指向性信号生成回路は、多段に組み合わされた信号処理回路を含む構成に限定されることはなく、一般的なフィルタ処理、減算処理、加算処理、符号反転処理などの組合せによって様々な構成で実現することが可能であるが、式(K19)〜(K31)に基づいて、指向性信号Y(f)が生成されるものである限り、いずれの構成であっても良い。
また、Hk(f)は、式(K25)〜(K31)を満たすものとする代わりに、実施の形態1の変形例4〜7で説明したように、W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(K32)、(K33)、(K34)、または(K35)で示されるものであってもよい。
Hk(f)=β/{2i×sin(πfD(αk+1)/c)} …(K32)
Hk(f)=β/{2i(πfD(αk+1)/c)} …(K33)
|Hk(f)|=|β/{2sin(πfD(αk+1)/c)}| …(K34)
|Hk(f)|=|β/{2(πfD(αk+1)/c)}| …(K35)
ただし、式(K32)〜(K35)において、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算である。
Hk(f)=β/{2i(πfD(αk+1)/c)} …(K33)
|Hk(f)|=|β/{2sin(πfD(αk+1)/c)}| …(K34)
|Hk(f)|=|β/{2(πfD(αk+1)/c)}| …(K35)
ただし、式(K32)〜(K35)において、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算である。
また、定数αkの値としては上記に示される値以外であってもよい。定数αkにおいて、αk=−cosθを満たす角度θは死角の形成される角度に相当する。図9の収音装置1Cでは、マイクロホンの個数がN個の場合にN−1個の死角を設定することができる。指向性を形成する方向の周辺を除いて、ほぼ等間隔になるよう死角を設定することで良好な鋭指向性を得ることができる。マイクロホンの個数Nが3、5、6の各々の場合において、到来角Φが0°の方向に良好な鋭指向性を得るための定数αkの設定例は、たとえば以下のようになる。
N=3の場合、α1=−cos70°、α2=−cos140° …(K36)
N=5の場合、α1=−cos50°、α2=−cos85°、α3=−cos125°、α4=−cos160° …(K37)
N=6の場合、α1=−cos45°、α2=−cos75°、α3=−cos105°、α4=−cos130°、α5=−cos165° …(K38)
図10は、マイクロホンの個数が4個のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係を示すグラフである。Hk(f)は、式(K32)に示すものを用いている。図10を参照して、マイクロホンの間隔Dが0.002mであり、定数βが1のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係が示される。到来角0°方向への急峻な指向特性が得られている。また、その周波数特性は音の到来角Φに依存せず、指向特性も周波数fに依存していないことが示される。
N=5の場合、α1=−cos50°、α2=−cos85°、α3=−cos125°、α4=−cos160° …(K37)
N=6の場合、α1=−cos45°、α2=−cos75°、α3=−cos105°、α4=−cos130°、α5=−cos165° …(K38)
図10は、マイクロホンの個数が4個のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係を示すグラフである。Hk(f)は、式(K32)に示すものを用いている。図10を参照して、マイクロホンの間隔Dが0.002mであり、定数βが1のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係が示される。到来角0°方向への急峻な指向特性が得られている。また、その周波数特性は音の到来角Φに依存せず、指向特性も周波数fに依存していないことが示される。
図11は、マイクロホンの個数が3個のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係を示すグラフである。Hk(f)は、式(K32)に示すものを用いている。図11を参照して、図10と同様にマイクロホンの間隔Dは0.002mであり、定数βは1のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係が示される。図10と同様に、到来角0°方向への急峻な指向特性が得られている。また、その周波数特性は音の到来角Φに依存せず、指向特性も周波数fに依存していないことが示される。
図12は、マイクロホンの個数が5個のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係を示すグラフである。Hk(f)は、式(K32)に示すものを用いている。図12を参照して、図10,11と同様にマイクロホンの間隔Dは0.002mであり、定数βは1のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係が示される。図10,11と同様に到来角0°方向への急峻な指向特性が得られている。また、その周波数特性は音の到来角Φに依存せず、指向特性も周波数fに依存していないことが示される。
図13は、マイクロホンの個数が6個のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係を示すグラフである。Hk(f)は、式(K32)に示すものを用いている。図13を参照して、図10〜図12と同様にマイクロホンの間隔Dは0.002mであり、定数βは1のときの周波数fおよび到来角Φと振幅特性比G(f)との関係が示される。図10〜図12と比較すると到来角0°方向への急峻な指向特性が得られている。また、その周波数特性は音の到来角Φに依存せず、指向特性も周波数fに依存していないことがわかる。
なお、以上の説明において、定数αkは死角が存在する範囲、つまり、−1≦αk≦1の範囲を取り上げたが定数αkはαk≦−1または、1≦αkであってもよい。定数αkの範囲を変えた場合にも、それぞれのαkに対応する指向特性が、最終的な指向性信号Y(f)の特性に乗算されるだけなので同様の効果が得られる。よって、αkの範囲は−1≦αk≦1に特に限定されるものではない。
[実施の形態3の変形例]
実施の形態3の変形例では、実施の形態3で多段に構成される信号処理回路をフィルタにまとめた構成とする。
実施の形態3の変形例では、実施の形態3で多段に構成される信号処理回路をフィルタにまとめた構成とする。
図14は、実施の形態3の変形例の収音装置の構成を示すブロック図である。なお、図9との比較のため、図14では受信回路が4個の場合の収音装置の例が示される。
図9,図14を参照して、収音装置1Dは、図9の指向性信号生成回路ST3に代えて指向性信号生成回路ST4を含む点で、図9の収音装置1Cと異なる。指向性信号生成回路ST4は、受信回路DT1〜DT4の出力を各々受けるフィルタ回路FTA1〜FTA4と、フィルタ回路FTA1〜FTA4の出力を合成する合成部ADDRとを含む。
フィルタ回路FTA1〜FTA4の出力は加算されて指向性信号Y(f)になる。各フィルタ回路FTAnの周波数特性Han(f)は、以下の式(L1)〜(L4)のようになる。
Ha1(f)=H1 1(f)H1 2(f)H1 3(f) …(L1)
Ha2(f)=H1 1(f)H1 2(f)H2 3(f)+H1 1(f)H2 2(f)H1 3(f)+H2 1(f)H1 2(f)H1 3(f) …(L2)
Ha3(f)=H1 1(f)H2 2(f)H2 3(f)+H2 1(f)H1 2(f)H2 3(f)+H2 1(f)H2 2(f)H1 3(f) …(L3)
Ha4(f)=H2 1(f)H2 2(f)H2 3(f) …(L4)
ただし、式(L1)〜(L4)において示されるH1 k(f)、H2 k(f)は、式(K22)、(K23)および(K25)〜(K31)の条件を満たすH1 k(f)、H2 k(f)である。また、W(f)としては、実施の形態1、その変形例1、その変形例2、その変形例3のいずれかを用いるものとすればよい。また、Hk(f)として、(K32)〜(K35)のいずれかを用いるものとしてもよい。
Ha2(f)=H1 1(f)H1 2(f)H2 3(f)+H1 1(f)H2 2(f)H1 3(f)+H2 1(f)H1 2(f)H1 3(f) …(L2)
Ha3(f)=H1 1(f)H2 2(f)H2 3(f)+H2 1(f)H1 2(f)H2 3(f)+H2 1(f)H2 2(f)H1 3(f) …(L3)
Ha4(f)=H2 1(f)H2 2(f)H2 3(f) …(L4)
ただし、式(L1)〜(L4)において示されるH1 k(f)、H2 k(f)は、式(K22)、(K23)および(K25)〜(K31)の条件を満たすH1 k(f)、H2 k(f)である。また、W(f)としては、実施の形態1、その変形例1、その変形例2、その変形例3のいずれかを用いるものとすればよい。また、Hk(f)として、(K32)〜(K35)のいずれかを用いるものとしてもよい。
以上の説明は、マイクロホンの個数が4個の場合についのものだが、以下では、一般的な場合、つまりマイクロホンの個数がN個の場合について説明する。
N個のマイクロホンは、1からNまでの番号が振られており、その番号順に、直線状、かつ等間隔に配置されているとする。
指向性信号生成回路ST4は、N個のフィルタ回路と、合成部とを含む。
第i番目(1≦i≦N)の前記フィルタ回路は、以下の式(L5)に従うHai(f)に応じたフィルタ係数を有し、受音信号Xi(f)を受けて、信号Hai(f)Xi(f)を出力する。
Hai(f)=Σ ΠHd(j,k-1)+1 k(f) …(L5)
ここで、Σzは、集合S(i−1,N−1)に属するjについてのzの総和を示す。
ここで、Σzは、集合S(i−1,N−1)に属するjについてのzの総和を示す。
また、Πzは、kを1から(N−1)まで変化させたときのzの総積を示す。たとえば、Πa(k)=a(1)×a(2)×・・・×a(N−1)である。
ここで、集合S(a,b)は、0〜2b−1の整数をb桁の2進表現した場合に1の個数がa個である整数の集合を示す。たとえば、0〜23−1の整数を3桁の2進表現すると、「000」、「001」、「010」、「011」、「100」、「101」、「110」、「111」となるので、S(2,3)={3、5、6}である。
また、d(a,b)は、整数aを2進表現したときの、最下位ビットを第0ビットとしたときの、第bビットの値である。たとえば、12を2進表現すると、「1100」となるので、d(12,0)=0、d(12,1)=0、d(12,2)=1、d(12,3)=1である。
合成部は、N個のフィルタ回路の出力信号を合成して、指向性信号Y(f)を生成する。
なお、図9の信号処理回路SPk,nに用いられるフィルタ回路、あるいは図14のフィルタ回路FTA1〜FTA4における具体的な構成は、実施の形態1、および(変形例A)〜(変形例F)で説明したものを用いることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1A,1B,1C,1D 収音装置、100 遅延和型アレー、101 減算型アレー、AD1〜AD4,AD101〜AD108 A/D変換部、ADDR,ADDR1 合成部、DL1,DL101〜DL107 遅延部、DT1〜DT4 受信回路、FT1〜FT3,FTA1〜FTA4 フィルタ回路、MC1〜MC8 マイクロホン、SB,SB1 減算部、SP1,SP2,SP11,SP12,SP13,SP21,SP22,SP31 信号処理回路、ST3,ST4 指向性信号生成回路、SW 音波。
Claims (24)
- 特定の方向から到達する音声信号を大きく増幅する指向性処理を行なう収音装置であって、
第1の受音素子と、
第2の受音素子と、
前記第1の受音素子を通して得られる受音信号X1(f)と、前記第2の受音素子を通して得られる受音信号X2(f)とを受けて、以下の式(1)〜(10)に従う指向性信号Y(f)を生成する信号処理回路とを備える収音装置。
Y(f)=H1(f)X1(f)−H2(f)X2(f) …(1)
H1(f)=H(f)exp(−2πifτ+πifDα/c) …(2)
H2(f)=H(f)exp(−2πifτ−πifDα/c) …(3)
E1=∫W(f){A1|P(f)H(f)|−1}2df …(4)
E2=∫W(f){A2|P(f)|−1}2df …(5)
A1=∫W(f)|P(f)H(f)|df/∫W(f)|P(f)H(f)|2df …(6)
A2=∫W(f)|P(f)|df/∫W(f)|P(f)|2df …(7)
P(f)=2sin(πfD(α+1)/c) …(8)
W(f)≧0 …(9)
E1<E2 …(10)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、Dは第1の受音素子と第2の受音素子との間隔を表す定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、αは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(4)、(5)、(6)および(7)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。 - 前記W(f)は、以下の式(11)および(12)に従う、請求項1記載の収音装置。
W(f)=0 (f<300(Hz)、または3400(Hz)<f) …(11)
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(12) - 前記W(f)は、以下の式(13)および(14)に従う、請求項1記載の収音装置。
W(f)=0 (f<20(Hz)、または20000(Hz)<f) …(13)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(14) - 前記W(f)は、受音信号X1(f)およびX2(f)がサンプリング周波数Fs(Hz)でサンプリングされたデジタル信号であり、Fsが40000(Hz)以下の場合に、
以下の式(15)および(16)に従う、請求項1記載の収音装置。
W(f)=0 (f<20(Hz)、またはFs/2(Hz)<f) …(15)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(16) - 人間の聴覚的な感度の高い周波数ほどW(f)は大きく、聴覚的な感度が所定のレベル以下の周波数ではW(f)=0である、請求項1記載の収音装置。
- 前記信号処理回路は、
前記H1(f)に応じた第1のフィルタ係数を有し、前記受音信号X1(f)を受けて、信号H1(f)X1(f)を出力する第1のフィルタ回路と、
前記H2(f)に応じた第2のフィルタ係数を有し、前記受音信号X2(f)を受けて、信号H2(f)X2(f)を出力する第2のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路の出力と前記第2のフィルタ回路の出力とを合成して、前記指向性信号Y(f)を出力する合成部とを含む、請求項1記載の収音装置。 - 前記信号処理回路は、α≧0の場合に、
前記受音信号X2(f)を|Dα/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、
前記遅延回路の出力と前記受音信号X1(f)とを合成する合成部と、
前記H1(f)に応じたフィルタ係数を有し、前記合成部で合成された信号を受けて、前記指向性信号Y(f)を出力するフィルタ回路とを含み、
前記信号処理回路は、α<0の場合に、
前記受音信号X1(f)を|Dα/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、
前記遅延回路の出力と前記受音信号X2(f)とを合成する合成部と、
前記H2(f)に応じたフィルタ係数を有し、前記合成部で合成された信号を受けて、前記指向性信号Y(f)を出力するフィルタ回路とを含む、請求項1記載の収音装置。 - 前記H(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(17)に従う、または式(17)で近似される、請求項1から7のいずれか1項に記載の収音装置。
H(f)=β/{2i×sin(πfD(α+1)/c)} …(17)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。 - 前記H(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(18)に従う、または式(18)で近似される、請求項1から7のいずれか1項に記載の収音装置。
H(f)=β/{2i(πfD(α+1)/c)} …(18)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。 - 前記H(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(19)に従う、または式(19)で近似される、請求項1から7のいずれか1項に記載の収音装置。
|H(f)|=|β/{2sin(πfD(α+1)/c)}| …(19)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。 - 前記H(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(20)に従う、または式(20)で近似される、請求項1から7のいずれか1項に記載の収音装置。
|H(f)|=|β/{2(πfD(α+1)/c)}| …(20)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。 - 特定の方向から到達する音声信号を大きく増幅する指向性処理を行なう収音装置であって、
1からN(N≧3)までの番号が振られており、その番号順に、直線状、かつ等間隔に配置されたN個の受音素子と、
前記N個の受音素子を通して得られるN個の受音信号X1(f)〜XN(f)を受けて、以下の式(21)〜(33)に従う指向性信号Y(f)を生成する指向性信号生成回路とを備える収音装置。
Xn 1(f)=Xn(f) (n=1〜N)…(21)
Xn k+1(f)=R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(22)
R(Xn k(f),Xn+1 k(f),αk,D′)
=H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)
(k=1〜N−1、n=1〜N−k)…(23)
H1 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ+πifD′αk/c) …(24)
H2 k(f)=Hk(f)exp(−2πifτ−πifD′αk/c) …(25)
Y(f)=X1 N(f) …(26)
E1k=∫W(f){A1k|Pk(f)Hk(f)|−1}2df …(27)
E2k=∫W(f){A2k|Pk(f)|−1}2df …(28)
A1k=∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)Hk(f)|2df …(29)
A2k=∫W(f)|Pk(f)|df/∫W(f)|Pk(f)|2df …(30)
Pk(f)=2sin(πfD′(αk+1)/c) …(31)
W(f)≧0 …(32)
E1k<E2k …(33)
ただし、fは周波数であり、W(f)は、周波数fに依存する、予め定められた重み関数であり、D′は、隣り合う受音素子間の距離であり、αkは定数であり、τは所定の遅延時間を表す定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率であり、cは音速であり、exp()は自然対数の底を底とした指数関数であり、sin()は正弦関数であり、‖は絶対値を求める演算であり、式(27)、(28)、(29)および(30)の積分の範囲は、W(f)>0となる周波数fの範囲である。 - 前記W(f)は、以下の式(34)および(35)に従う、請求項12記載の収音装置。
W(f)=0 (f<300(Hz)、または3400(Hz)<f) …(34)
W(f)=1 (300(Hz)≦f≦3400(Hz)) …(35) - 前記W(f)は、以下の式(36)および(37)に従う、請求項12記載の収音装置。
W(f)=0 (f<20(Hz)、または20000(Hz)<f) …(36)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦20000(Hz)) …(37) - 前記W(f)は、受音信号X1(f)およびX2(f)がサンプリング周波数Fs(Hz)でサンプリングされたデジタル信号であり、Fsが40000(Hz)以下の場合に、
以下の式(38)および(39)に従う、請求項12記載の収音装置。
W(f)=0 (f<20(Hz)、またはFs/2(Hz)<f) …(38)
W(f)=1 (20(Hz)≦f≦Fs/2(Hz)) …(39) - 人間の聴覚的な感度の高い周波数ほどW(f)の値が大きく、聴覚的な感度が所定のレベル以下の周波数ではW(f)=0である、請求項12記載の収音装置。
- 前記指向性信号生成回路は、k段目(1≦k≦(N−1))に、(N−k)個の信号処理回路を含み、
1段目のn番目の信号処理回路は、前記信号Xn 1(f)およびXn+1 1(f)を受けて、信号H1 1(f)Xn 1(f)−H2 1(f)Xn+1 1(f)を信号Xn 2(f)として出力し、
2≦k≦(N−1)について、k段目のn番目の信号処理回路は、(k−1)段目のn番目の信号処理回路および(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路に接続され、(k−1)段目のn番目の信号処理回路から信号Xn k(f)を受けるとともに、(k−1)段目の(n+1)番目の信号処理回路から信号Xn+1 k(f)を受けて、信号H1 k(f)Xn k(f)−H2 k(f)Xn+1 k(f)を信号Xn k+1(f)として出力する、請求項12記載の収音装置。 - 1≦k≦(N−1)を満たすいずれかのkについて、k段目の第n番目の信号処理回路は、
前記H1 k(f)に応じた第1のフィルタ係数を有し、前記信号Xn k(f)を受けて、信号H1 k(f)Xn k(f)を出力する第1のフィルタ回路と、
前記H2 k(f)に応じた第2のフィルタ係数を有し、前記信号Xn+1 k(f)を受けて、信号H2 k(f)Xn+1 k(f)を出力する第2のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路の出力と前記第2のフィルタ回路の出力とを合成して、前記信号Xn k+1(f)を出力する合成部とを含む、請求項17記載の収音装置。 - 1≦k≦(N−1)を満たすいずれかのkについて、k段目の第n番目の信号処理回路は、αk≧0のときに、
前記信号Xn+1 k(f)を|D′αk/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、
前記遅延回路の出力と前記信号Xn k(f)とを合成する合成部と、
前記H1 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、前記合成部で合成された信号を受けて、前記信号Xn k+1(f)を出力するフィルタ回路とを含み、
1≦k≦(N−1)を満たすいずれかのkについて、k段目の第n番目の信号処理回路は、αk<0のときに、
前記信号Xn k(f)を|D′αk/c|の時間だけ遅延させる遅延回路と、
前記遅延回路の出力と前記信号Xn+1 k(f)とを合成する合成部と、
前記H2 k(f)に応じたフィルタ係数を有し、前記合成部で合成された信号を受けて、前記信号Xn k+1(f)を出力するフィルタ回路とを含む、請求項17記載の収音装置。 - 前記指向性信号生成回路は、N個のフィルタ回路と、合成部とを含み、
第i番目(1≦i≦N)の前記フィルタ回路は、以下の式(40)に従うHai(f)に応じたフィルタ係数を有し、前記受音信号Xi(f)を受けて、信号Hai(f)Xi(f)を出力し、
Hai(f)=Σ ΠHd(j,k-1)+1 k(f) …(40)
ここで、Σzは、集合S(i−1,N−1)に属するjについてのzの総和を示し、Πzは、kを1から(N−1)まで変化させたときのzの総積を示し、集合S(a,b)は、0〜2b−1の整数をb桁の2進表現した場合に1の個数がa個である整数の集合を示し、d(a,b)は、整数aを2進表現した場合に、最下位ビットを第0ビットとしたときの、第bビットの値であり、
前記合成部は、N個のフィルタ回路の出力信号を合成して、前記指向性信号Y(f)を出力する請求項12記載の収音装置。 - 前記Hk(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(41)に従う、または式(41)で近似される、請求項12から20のいずれか1項に記載の収音装置。
Hk(f)=β/{2i×sin(πfD′(αk+1)/c)} …(41)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。 - 前記Hk(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(42)に従う、または式(42)で近似される、請求項12から20のいずれか1項に記載の収音装置。
Hk(f)=β/{2i(πfD′(αk+1)/c)} …(42)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。 - 前記Hk(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(43)に従う、または式(43)で近似される、請求項12から20のいずれか1項に記載の収音装置。
|Hk(f)|=|β/{2sin(πfD′(αk+1)/c)}| …(43)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。 - 前記Hk(f)は、前記W(f)≠0となるfの範囲で、以下の式(44)に従う、または式(44)で近似される、請求項12から20のいずれか1項に記載の収音装置。
|Hk(f)|=|β/{2(πfD′(αk+1)/c)}| …(44)
ただし、βは定数であり、iは虚数単位であり、πは円周率である。
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JP2004210434A JP2006033502A (ja) | 2004-07-16 | 2004-07-16 | 収音装置 |
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JP2017531971A (ja) * | 2014-08-22 | 2017-10-26 | フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ | ビームフォーミングフィルタのためのfirフィルタ係数の算出 |
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2004
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US10419849B2 (en) | 2014-08-22 | 2019-09-17 | Fraunhofer-Gesellschaft Zur Foerderung Der Angewandten Forschung E.V. | FIR filter coefficient calculation for beam-forming filters |
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