JP2006026881A - 耐熱合金の高速切削で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン系サーメットからなる超硬基体の表面に、(a)0.8〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Z) AlXSiZ)N(ただし、原子比で、Xは0.25〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足する(Ti,Al,Si)N層からなる下部層、(b)0.1〜0.5μmの平均層厚を有するCrN層からなる密着接合層、(c)0.8〜5μmの平均層厚を有するCrB2層からなる上部層、以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる。
【選択図】 なし
Description
組成式:(Ti1-(X+Z)AlX SiZ)N(ただし、原子比で、Xは0.25〜0.65、Z:0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Si)Nで示す]層からなる硬質被覆層を1〜10μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られており、かつ前記被覆超硬工具の硬質被覆層である(Ti,Al,Si)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Tiによって高温強度を具備し、さらに同Siによる一段の耐熱性向上効果と相俟って、これを各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている。
(a)上記従来被覆超硬工具の硬質被覆層である(Ti,Al,Si)N層を下部層とし、これの上に上部層として硼化クロム(以下、CrB2で示す)層を形成すると、前記CrB2層は熱的安定性にすぐれ、特に被削材である耐熱合金の高速切削時に発生する高熱で高温加熱された状態でも前記被削材である耐熱合金との親和性がきわめて低く、低い反応性を保持することから、前記下部層である(Ti,Al,Si)N層は保護され、この結果(Ti,Al,Si)N層のもつすぐれた特性が長期に亘って十分に発揮されるようになること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
(a)0.8〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Z) AlXSiZ)N(ただし、原子比で、Xは0.25〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足する(Ti,Al,Si)N層からなる下部層、
(b)0.1〜0.5μmの平均層厚を有するCrN層からなる密着接合層、
(c)0.8〜5μmの平均層厚を有するCrB2層からなる上部層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる、耐熱合金の高速切削で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
(a)下部層の組成式のX値およびZ値、並びに平均層厚
下部層を構成する(Ti,Al,Si)N層におけるAl成分には高温硬さと耐熱性を向上させ、一方同Ti成分には高温強度を向上させ、さらに同Si成分にはAlとの共存において一段と耐熱性を向上させる作用があるが、Alの割合を示すX値がTiとSiの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.25未満になると、相対的にTiの割合が多くなり過ぎて、高速切削に要求されるすぐれた高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、摩耗進行が急激に促進するようになり、一方Alの割合を示すX値が同0.65を越えると、相対的にTiの割合が少なくなり過ぎて、高温強度が急激に低下し、この結果切刃部にチッピング(微少欠け)などが発生し易くなることから、X値を0.25〜0.65と定めた。また、Siの割合を示すZ値がTiとAlの合量に占める割合で、0.01未満では、所望の耐熱性向上効果が得られず、一方同Z値が0.10を超えると、高温強度が低下するようになることから、Z値を0.01〜0.10と定めた。
さらに、その平均層厚が0.8μm未満では、自身のもつすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方その平均層厚が5μmを越えると、上記の耐熱合金の高速切削では切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.8〜5μmと定めた。
その平均層厚が0.1μm未満では、上部層と下部層の間に強固な接合強度を確保することができず、一方その平均層厚が0.5μmを越えると、硬質被覆層の強度が密着接合層部分で急激に低下するようになり、これがチッピング発生の原因となることから、その平均層厚を0.1〜0.5μmと定めた。
上部層を構成するCrB2層は、上記の通り熱的にきわめて安定した性質を有し、高温加熱された被削材および切粉との反応性の著しく低い特性をもつものであるから、熱発生が著しい耐熱合金の高速切削でも、下部層である(Ti,Al,Si)N層を前記高温加熱された被削材および切粉から保護し、これの摩耗進行を抑制する作用を発揮するが、その平均層厚が0.8μm未満では、前記作用に所望の効果が得られず、一方その平均層厚が5μmを越えて厚くなり過ぎると、チッピング発生の原因となることから、その平均層厚を0.8〜5μmと定めた。
さらに、硬質被覆層の上部層形成用カソード電極(蒸発源)として、0.8μmの平均粒径を有するCrB2粉末を温度:1500℃、圧力:20MPa、保持時間:3時間の条件でホットプレスして成形したCrB2焼結体を用意した。
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al−Si合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Ti−Al−Si合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al−Si合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al,Si)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)上記の下部層形成用Ti−Al−Si合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を停止し、装置内の雰囲気を同じ3Paの窒素雰囲気に保持すると共に、超硬基体への直流バイアス電圧(−100V)も同じくしたままで、カソード電極の前記金属Crとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって同じく表3に示される目標層厚のCrN層を硬質被覆層の密着接合層として蒸着形成し、
(e)上記金属Crとアノード電極とのアーク放電を続行させながら、前記蒸着装置内の雰囲気を、窒素雰囲気に代って、Arと窒素の混合ガス雰囲気とするが、経時的にArの導入割合を漸次増加させ、一方窒素の導入割合は漸次減少させた雰囲気として、最終的にAr雰囲気とすると共に、この間の反応雰囲気も同じく経時的に3Paから0.3Paに漸減し、かつ前記蒸着装置中へのArと窒素の混合ガス導入と同時に前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置したCrB2焼結体に、スパッタ出力:3kWの条件でスパッタリングを開始し、前記金属Crとアノード電極とのアーク放電は前記反応雰囲気のArと窒素の混合ガスの窒素の割合が10容量%になった時点で中止し、
(f)以後、上記の0.3PaのAr雰囲気を保持しながら、上記CrB2焼結体とアノード電極と間のスパッタ出力も3kWと同じくした条件でスパッタリングを続行し、同じく表3に示される目標層厚のCrB2層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成しすることにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
被削材:質量%で、Ti−6%Al−4%Vの組成を有するTi基合金の丸棒、
切削速度:110m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件A)でのTi基合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は50m/min.)、
被削材:質量%で、Ni−19%Cr−18.5%Fe−5.2%Cd−5%Ta−3%Mo−0.9%Ti−0.5%Al−0.3%Si−0.2%Mn−0.05%Cu−0.04%Cの組成を有するNi基合金の丸棒、
切削速度:80m/min.、
切り込み:1.0mm、
送り:0.15mm/rev.、
切削時間:6分、
の条件(切削条件B)でのNi基合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は50m/min.)、
被削材:質量%で、Co−23%Cr−6%Mo−2%Ni−1%Fe−0.6%Si−0.4%Cの組成を有するCo基合金の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:60m/min.、
切り込み:0.5mm、
送り:0.1mm/rev.、
切削時間:4分、
の条件(切削条件C)でのCo基合金の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ni−19%Cr−14%Co−4.5%Mo−2.5%Ti−2%Fe−1.2%Al−0.7%Mn−0.4%Siの組成を有するNi基合金の板材、
切削速度:55m/min.、
溝深さ(切り込み):1.2mm、
テーブル送り:410mm/分、
の条件でのNi基合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)、本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ti−3%Al−2.5%Vの組成を有するTi基合金の板材、
切削速度:100m/min.、
溝深さ(切り込み):3.0mm、
テーブル送り:500mm/分、
の条件でのTi基合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は50m/min.)、本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Co−20%Cr−15%W−10%Ni−1.5%Mn−1%Si−1%Fe−0.12%Cの組成を有するCo基合金の板材、
切削速度:50m/min.、
溝深さ(切り込み):4.0mm、
テーブル送り:150mm/分、
の条件でのCo基合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は25m/min.)をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表7にそれぞれ示した。
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Co−20%Cr−20%Ni−4%Mo−4%W−4%Cd−3%Fe−1.5%Mn−0.7%Si−0.38%Cの組成を有するCo基合金の板材、
切削速度:40m/min.、
送り:0.08mm/rev、
穴深さ:8mm、
の条件でのCo基合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は25m/min.)、本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ni−19%Cr−18.5%Fe−5.2%Cd−5%Ta−3%Mo−0.9%Ti−0.5%Al−0.3%Si−0.2%Mn−0.05%Cu−0.04%Cの組成を有するNi基合金の板材、
切削速度:50m/min.、
送り:0.1mm/rev、
穴深さ:15mm、
の条件でのNi基合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)、本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ti−3%Al−2.5%Vの組成を有するTi基合金の板材、
切削速度:65m/min.、
送り:0.2mm/rev、
穴深さ:30mm、
の条件でのTi基合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は40m/min.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、
(a)0.8〜5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1-(X+Z) AlXSiZ)N(ただし、原子比で、Xは0.25〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足するTiとAlとSiの複合窒化物層からなる下部層、
(b)0.1〜0.5μmの平均層厚を有する窒化クロム層からなる密着接合層、
(c)0.8〜5μmの平均層厚を有する硼化クロム層からなる上部層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる、耐熱合金の高速切削で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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