JP2006021944A - 平面ガラスの接合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】接合面に気泡や異物が残存せず、清浄な状態で平面ガラスを接合する。
【解決手段】鏡面研磨された石英ガラス板2枚を純水の流水中で接合面を近接させて相対的に動かして気泡、異物を接合面間から除去し、位置合わせをおこない、0.01MPa、500℃で一昼夜真空乾燥して強固に接合する。清浄な純水の流水を用いているので異物の除去効果が高くなると共に相対移動によって気泡の発生を防止し、更に、治具等からの再汚染を防ぐことができる。
【選択図】なし

Description

本発明はガラス製品、特に光学セル、または、マイクロチップ、マイクロリアクター、SOIウエハなどを作製する際のガラス製部品同士の組立接合方法に関するものである。
ガラス製品、例えば試料の分光学的特性を測定する際に使用される光学セルにおいては、表裏を鏡面研磨した平面状ガラス部品を透光板として組立接合して製作される。一般的な分光分析用セルは、2枚の透光板と2枚の側板及び底板を組み合わせて試料を収容する容器を作製している。
一般的には、ガラス板の接合面を鏡面研磨し、次いで双方の接合面部位を合わせて組み立てた後、ガラスの軟化点以下の比較的低温領域で加熱して接着するオプティカルコンタクト法により接合して組み立て、光学セルを作製している。
また、最近の機器のマイクロ化に対応したフローセルの製造においても、鏡面研磨したガラス表面にフォトエッチングで任意形状・長さの流路となる溝を形成し、鏡面研磨した石英ガラス板を蓋としてオプティカルコンタクト法により接合して組み立てている。
酸水素火炎や電気加熱による通常の溶接方法による接合では、石英ガラスの場合、溶接温度が1,700〜1,800℃といった石英ガラスの軟化点以上の温度が必要となるため、加熱された接合部は、流動変形を起こして面ダレを生じるため、厚さの制御や特に薄物の超高寸法精度の制御は不可能であり、900〜1300℃(石英ガラスの軟化点)で一体接合することが可能なオプティカルコンタクト法が有利である。接合の際に両者を加圧すると、更に溶着温度を下げることができると共に、強固な接合状態を得ることができる。
オプティカルコンタクト法による作製方法においては、双方の鏡面を貼り合わせる際に、夫々の鏡面に乾燥状態で付着している汚れをワイパーなど紙とアルコールやエーテルなどの溶剤を用いて前もって拭取ってから鏡面研磨面の接合面を合わせて加熱接合をおこなっている。
特開昭48−17786号公報 特開2004−53345号公報
しかしながら、ワイパーと溶剤による汚れの拭取りは、十分な清浄度を得るためには熟練が必要であり、大面積になるほど拭取りムラが生じやすく、接合面の泡の発生原因となっている。更に、拭き取った後に、再度パーティクルや異物等の汚れが接合面に付着して再汚染が生ずることがあり、清浄度の高い状態で接合ができなかった。また、ワイパーの使用は、接合面をこすり取るものであるため、微細なキズが発生するという問題があった。
本発明は、接合面における気泡の発生や気泡介在による接合力の低下の要因となるガラスの接合表面に付着する異物、及び汚れを容易に取り除くことができるようにすると共に、洗浄後の表面の清浄度を組み立てが完了するまで維持できるようにすることである。
本発明は、鏡面研磨されたガラスの接合面を流水中で接合面が近接した状態で相対的に動かして接合面の異物を洗浄除去すると共に接合面における気泡の発生を防止し、更に、真空状態とすることによって接合面に残存する水分を除去し、強固な接合状態を得るものである。接合面から除去された異物及び気泡は、流水により運び去られるため、再汚染の恐れがなく、高い除去効率が得られると共に洗浄後の清浄度が維持される。また、接合面間に水膜が介在した状態で異物の除去が行なわれるため、接合面のキズの発生を極めて小さいものに押さえることができる。
本発明が適用されるガラスは、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス等のバルク、及び成膜あるいは熱酸化によって得られるガラス等が挙げられるが、比較的耐水性の高いガラスであることが好ましい。
接合面の鏡面研磨は、一般的な酸化セリウム、コロイダルシリカ等により光学研磨をおこなう。表面の不純物、異物を除去するための洗浄をおこなったのち、純水等の流水の下でガラスの接合面が近接した状態で相対的に動かして気泡、異物を界面間から除去する。このとき、接合面の間には純水が存在するため水膜が防護膜となり、接合面同士の接触、異物によるキズの発生は極めて低く押さえられる。また、清浄な流水を用いているので、異物の除去効果が高くなると共に治具等からの再汚染を防ぐ効果がある。
流水は、純水を使用するのが好ましい。ガラス表面の汚れを取り除くために、有機物、無機物、金属不純物など汚れの種類、程度に応じて純水のほか、除去効果の高い水素水、オゾン水、アンモニア添加純水、HF添加純水を適宜選択して用いることが有効である。
純水が接合面に介在し、接合面が直接接触していない状態で位置合わせをおこない、真空状態として接合面間の余剰水を乾燥させて除去すると、接合面の鏡面同士が接触して接合される。
真空状態における温度を上げると、接合面間の余剰水の蒸発が促進され効率があがるが、当初から水の沸点以上の温度とすると水分の急激な膨張が生じるため、接合面積、残余水量に応じて真空度、昇温パターンを設定してガラスの剥がれ、位置ずれを起こすことがないようにする。
真空度及び温度については予め真空度と昇温パターンをプログラムした多段制御、または、真空度と温度を個別に制御してもよい。
真空状態で加熱乾燥する場合は、真空度と昇温パターンのプログラムを組んで自動制御するが、水分の急激な膨張を防ぐために最初は比較的低温状態として乾燥させ、その後、温度を上げてよりしっかりとした接合状態を得ることが好ましい。
真空状態とすることと加熱は同時におこなう必要はなく、真空状態として水分を蒸発させやすい環境にして蒸発を開始後、加熱処理して水分の蒸発を促進させる2段階方式でも構わない。または、石英ガラスの場合、真空状態で例えば常温〜900℃程度の温度に昇温加熱して乾燥させ余剰水の除去をおこなった後に、より強固な接合状態を得るために、更に1000〜1300℃程度の高温に加熱する処理をおこなっても構わない。
なお、接合のプロセスとしては、以下が考えられる。常温または低温での真空雰囲気により接合面間の余剰水が脱水され、該接合面が余剰水のOH基により表面活性化され、清浄な接合界面のもとでOH基による水素結合が生じ、更に加熱処理によりH2Oの蒸発に伴い、水素結合から共有結合への進行が起こり、接合面が密着、結合される。このように真空加熱乾燥で接合界面の余剰水を除去すると共に、清浄面を保ち、ガラスの接合界面のH2O膜の拡散過程を経ることで接合力が発生、強化されていくものと考えられる。
なお、本発明はガラスセルに限らず、他の例として、透明石英ガラスの接合面と黒色石英ガラスの接合面とを予め鏡面研磨を施しておき、双方の接合面を合わせて加熱して接合し、光透過部と光遮蔽部とに別れた境界面を持つ光学部品や、鏡面研磨した平面ガラス部材の表面に凹部加工を施したもの同士を組立接合して、任意形状の空間を有するガラス治工具類の作製、更には、マイクロチップ、マイクロリアクターなどのガラス部品についてもこの方法で作製することができる。特にマイクロチップはその微細構造のため本発明による製作方法が有利であると言え、電気泳動チップ、DNAチップ、タンパク質分析チップなどに応用でき、DNAチップでは、サンプルホール(マイクロウェル)形成手段としてガラス平板と貫通孔加工を複数施したガラス平板の接合などに用いることができる。
本発明の実施の形態について以下に例を挙げて説明するが、本発明は以下の説明及び例示によって、何ら制限されるものではない。
鏡面研磨された石英ガラス板を洗浄用治具にセットし、酸・アルカリ系もしくは有機系の洗浄剤で洗浄する。洗浄用治具は、洗浄液が十分接合面に接するように設置し、治具のワーク支持点と石英ガラス板との接点を少なくする。
石英ガラス板を純水に浸漬させてリンスするが、その際純水は清浄度保持のため、かけ流しの状態とし、常に新しい純水が接合面に注がれるようにする。5〜30分純水に浸漬させた状態でワークを取り出す。取り出す際は清浄度が高い手袋を用いておこなう必要があり、事前に手袋を純水でよく洗っておく。
汚れは洗浄剤で取り除くため、洗浄後のリンスとして使用する流水は純水で十分であるが、状況に応じて水素水、オゾン水、アンモニア添加純水、HF添加純水のいずれかを適宜選択してまたは組み合わせて流水として使用する。
次に接合しようとする石英ガラス板2枚を純水を十分にかけながら流水中で接合面を合わせる。その際、接合面には純水の他に気泡や異物が入る場合もあるが、石英ガラス板同士を相対的に動かしながらこれらを除去し、位置合わせをする。
接合面に泡・異物等がない状態を維持しながら真空加熱乾燥に移行するが、接合面に残存する純水の潤滑作用によってガラスが相対移動しないように治具やクリップで固定しておく。
治具等で固定した状態で、真空加熱装置に接合した状態の石英ガラス板をセットし加熱をおこなう。真空度及び加熱条件はワークの接合面積、残余水、処理数によっても異なるが、真空度で数Pa〜数MPa程度、加熱は水分が気化し且つワークが変形しにくい温度、例えば石英ガラスの場合、常温〜軟化点以下である1300℃以下、好ましくは水の蒸発効率(速度)の促進とガラスの変形流動の防止を考慮して、100℃以上1200℃以下とすることがより望ましく、この温度で1昼夜保つ。
このような処理を施すことにより、剥がれ・位置ずれのないガラスの接合ができる。
鏡面研磨された石英ガラス板2枚を純水の流水中で、接合面を近接させて相対的に動かして気泡、異物を接合面間から除去して位置合わせをおこなう。位置合わせをした状態の石英ガラス板を0.01MPa、500℃で一昼夜真空加熱乾燥して接合した。
この接合状態の石英ガラス板を手で左右にずらして剥がそうとしたが、強力に接合しており、剥がれなかった。また、光学顕微鏡で接合面を観察したところ、泡・異物の存在は認められなかった。
実施例1に準じて、流水を順次水素水、オゾン水、アンモニア添加純水、HF添加純水として、夫々の流水中で2枚の石英ガラス板の接合面を相対的に動かして気泡、異物を接合面間から除去したのち、位置合わせをおこない、0.01MPa、500℃で一昼夜真空加熱乾燥して石英ガラス板を接合した。
このケースにおいても石英ガラス板は強力に接合されており、手でずらして剥がすことはできず、また、接合面間に泡・異物等は観察されなかった。
比較例1
実施例1に準じて、鏡面研磨した石英ガラス板2枚を純水の流水中で、接合面を近接した状態で相対的に動かしながら気泡、異物を接合面間から除去した。その後、大気圧、500℃で一昼夜加熱乾燥して石英ガラス板の接合をおこなった。
この接合状態の石英ガラス板を手で左右にずらす力を加えたところ、接合面がずれてしまった。
比較例2
実施例1に準じて、鏡面研磨した石英ガラス板2枚を工業用水中に浸漬し、接合面が近接した状態で、相対的に動かしながら気泡、異物を接合面間から除去した。その後、0.01MPa、500℃で一昼夜真空加熱乾燥して平面ガラスの接合をおこなった。
光学顕微鏡で接合面を観察したところ、泡・異物が接合面間に発生していた。
本発明は、鏡面研磨したガラス接合面を、流水中で接合面を近接させた状態で相対的に動かすことで異物及び気泡を接合面間から除去し、真空状態乾燥することにより接合面間の余剰水を除去して接合状態を得るものであり、接合面に付着する異物、汚れを容易に取り除くことができると共に、再付着することがなく、真空状態で水分を蒸発させて乾燥するので接合面の清浄度を維持したままで接合することができ、且つ、位置ずれのない強固な接合状態を得ることができる。

Claims (3)

  1. 鏡面研磨した平面ガラスを流水中で、接合面を近接した状態で相対的に動かして気泡、異物を接合面間から除去し、真空状態で接合面間の余剰水を乾燥除去する平面ガラスの接合方法。
  2. 請求項1において、流水が純水、水素水、オゾン水、アンモニア添加純水、HF添加純水のいずれか、またはそれらの組み合わせである平面ガラスの接合方法。
  3. 請求項1または2のいずれかにおいて、平面ガラスが石英ガラスであり、乾燥温度が常温〜1300℃である平面ガラスの接合方法。
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