JP2006017603A - マイクロチップ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 微小で且つ複雑な内部構造を有するマイクロチップにおいて、チップ表面に弾性部材を容易に形成することができ、且つ弾性部材に中空針を繰返し刺し抜きしても弾性部材が破損し難いマイクロチップを提供する。
【解決手段】 容積が1ml以下である溶液の収容部屋及び収容部屋に通ずる溶液の注入出口を有するプラスチック製の基材と、注入出口を閉塞して収容部屋を密閉するための弾性部材とを備え、弾性部材に中空針を突き刺して溶液を収容部屋に注入出するマイクロチップにおいて、弾性部材の厚さが0.05〜1mmであることを特徴とするマイクロチップを提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】 容積が1ml以下である溶液の収容部屋及び収容部屋に通ずる溶液の注入出口を有するプラスチック製の基材と、注入出口を閉塞して収容部屋を密閉するための弾性部材とを備え、弾性部材に中空針を突き刺して溶液を収容部屋に注入出するマイクロチップにおいて、弾性部材の厚さが0.05〜1mmであることを特徴とするマイクロチップを提供する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、微量な試料の反応・分析等を行う際の試料を一時的もしくは長期的に保存するためのマイクロチップ及びその製造方法に関する。
近年、μ−TAS(Micro Total Analysis System)と呼ばれる数cm角程度のガラスやシリコン等で形成されたマイクロチップ上に送液、混合、反応、分析等の機能部を集積化した化学・生化学分析統合システムが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。μ−TASは、これまでの分析統合システムに比べてサンプルや試料の量を大幅に減らすことができるため、スループットの時間短縮や廃液の減少が期待される。
従来、μ−TASチップでは、ウェルや流路が形成された基材の表面から基材内のウェルに試薬を注入し、その後に別部材(カバー)で基材を覆うことにより試料を封入する場合がある。しかしながら、このような封入方法では試料の注入・封止処理が複雑となる。さらに、上述のような封入方法では、マイクロチップ内に試料を封入した後に外部から別の試料を注入する場合やウェル間の試料を混交させる場合に、その実行に手間がかかるという問題がある。また、マイクロチップの基材とカバーとを接着する際に余分な接着剤がマイクロチップ内の微小流路にはみ出したり、あるいは、基材とカバーとを接着する際の熱的な歪みによって流路が潰れたり歪んだりするといった様々な問題も生じる。
一般に、液体・気体を問わず何らかの試料を密封するための容器としては、容器の開口部を弾性材料で形成された蓋で閉塞する構造の容器が知られている。このような容器では、蓋を取り外すことなく注射器で直接容器内部の試料を注入出することができる。また、このような容器では、注射針を容器から抜いた後、蓋に形成された注射針の孔は弾性材料の弾性作用により閉塞されるので、容器内部の試料が漏洩することがなくなるとともに、外気との接触を避けることができ、ほこり等が試料内部に侵入することも防止することができる。このような弾性部材を容器の栓もしくは蓋として用いて容器の密封性を維持する技術は、弾性部材と容器との接着方法や弾性部材の技術的工夫等の相違はあるものの、数多く存在する(例えば、特許文献3〜5参照)。また、従来、弾性部材を用いて容器を密封する方法で得られる同様の作用を、弾性部材を用いずに機械的な工夫によりに得ようとする方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献3〜5で提案されている容器の密封技術は、μ−TASで用いられるような薄くて微小な注入口を有するマイクロチップに適用することを想定したものではなく、特許文献3〜5で用いられている弾性部材を超小型もしくは複雑な形状のマイクロチップのカバーとして適用した場合、注入出口となる弾性部材が大きすぎたり厚すぎたりしてマイクロチップの設計において大きな障害となる。また、従来、弾性材料で形成されたシールを樹脂容器の外面に貼着け、その容器内の試料の取り扱いをシールを介して注射器で行うことにより、容器の密封状態を維持し易くする技術も提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、この技術では、シールを貼るためののりしろ部分が必要となるため、シールを貼れる場所の面積や形状、シールを貼った後の外部からの注入出の位置が制限されてしまうという問題が生じる。
上述の問題を解決する方法として、従来、弾性フィルム自体をマイクロチップのカバー材もしくは基材(容器)として用いる方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
ところで、上述の特許文献7で用いられるような柔らかな弾性部材(弾性フィルム)を表面に凹凸のあるマイクロチップの基材上に貼り合わせる場合、その貼り合わせが困難であるという問題がある。また、何らかの方法で柔らかな弾性部材をマイクロチップの基材表面に精度良く張り合わせることができたとしても、弾性部材と基材との接触面積が小さいので、試薬などをマイクロチップに注入出するために中空針等を弾性部材に刺し抜きした際、弾性部材と基材とが剥離する恐れがある。
また、マイクロチップの基材上に張り合わせる弾性体部材が薄すぎると、試薬の注入出の際に突き刺した中空針の影響で弾性部材が破れる恐れがある。
さらに、マイクロチップの基材上に張り合わせる弾性部材の疎水性や吸着性といった表面特性により、マイクロチップ使用時に検体であるタンパク質や核酸等が弾性部材の表面に吸着するという問題が発生する恐れもある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の目的は、微小量の試料の注入出の際に高い精度を必要とし、且つ、微小で複雑な内部構造を有するマイクロチップにおいて、試料等を中空針でマイクロチップ内に注入出するための注入出口に弾性部材を容易に形成することができ、弾性部材に中空針を繰返し刺し抜きしても、弾性部材が破損し難く、且つ、弾性部材が基材から剥離し難いマイクロチップ及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、マイクロチップ使用時に検体であるタンパク質や核酸等がマイクロチップの注入出口に設けられた弾性部材の表面に吸着し難いマイクロチップ及びその製造方法を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、マイクロチップであって、容積が1ml以下である溶液室と該溶液室に流通する該溶液の注入出口とを有するプラスチック製の基材と、厚さが0.05〜1mmであり、該注入出口に取り付けられて該溶液室を密閉する弾性部材とを備え、該弾性部材に中空針を突き刺して該溶液が該中空針を介して該溶液室に注入出されることを特徴とするマイクロチップが提供される。
本発明のマイクロチップは、極少量の検体を取り扱うことを想定したマイクロチップであり、1ml以下の溶液、特に100μl以下の溶液を内部に確保できるマイクロチップである。本発明のマイクロチップでは、基材の溶液の注入出口に弾性部材(例えば、弾性材料で形成された蓋や栓等)を設けることにより基材の溶液室を密封する。そして、本発明のマイクロチップでは溶液の注入出口に設けられた弾性部材の厚みを0.05〜1mmとすることにより、マイクロチップの使用時に中空針で弾性部材を突き破る際、マイクロチップおよび中空針への負荷を減らすことができ、弾性部材を破損し難くすることができる。
本発明のマイクロチップでは、上記弾性部材が、シリコーンゴム(PDMS:polydimethylsiloxane)、ラテックスゴム及び天然ゴムからなる群から選ばれる1種の材料で形成されていることが好ましい。
本発明のマイクロチップでは、上記基材が直方体状であり、上記弾性部材が上記基材の注入出口側表面と該注入出口側表面に垂直で且つ互いに対向する一対の面とに接着されていることが好ましい。
本発明のマイクロチップの一例を図1に示す。図1に示したマイクロチップは、ウェル3(溶液室)を有する直方体状の基材2と蓋1(弾性部材)とから構成され、基材2は熱可塑性プラスチック製(ポリカーボネート等)であり、蓋1は弾性材料で形成されている。図1の例では、基材2に形成されたウェル3の開口部が溶液の注入出口となる。そして、図1のマイクロチップでは、図1(b)に示すように、蓋1を基材2のウェル3側の表面に接着してウェル3を密閉する。なお、本発明のマイクロチップは、これに限定されず、例えば、蓋1のウェル3に対向する表面の少なくとも一部に弾性部材を設けても良い。
蓋1は、図1に示すように、コ型の板状部材であり、上面部1aと、上面部1aの長手方向の両端辺から下方に延在した側面部1b及び1cとから構成される。図1の例では、上面部1aの厚さが0.05〜1mmとなっている。また、図1のマイクロチップでは、蓋1の上面部1aの基材2に対向する側の表面のサイズは基材2の表面サイズとほぼ同じサイズであり、側面部1b及び1cの内側面の高さは基材2の高さとほぼ同じ高さである。
図1に示す本発明のマイクロチップでは、蓋1を、図1(b)に示すように、基材2上に被せて接着する際、蓋1の上面部1aを基材2のウェル3側表面に接着すると共に、蓋1の側面部1b及び1cを基材2の長手方向に垂直な2つの側面にも接着するので、蓋1と基材2との接着面積が広くなり、蓋1と基材2との接着強度を向上させることができる。それゆえ、本発明のマイクロチップでは、蓋1に中空針を繰返し刺し抜きしても蓋1と基材2とが力学的に剥離し難い構造にすることができる。なお、本発明のマイクロチップの構造は、これに限定されず、例えば蓋1の側面部1b及び1cを上面部1aの短手方向の両端辺から下方に延在して形成し、その側面部1b及び1cを基材2の短手方向に垂直な2つの側面に接着しても良いし、蓋1の上面部1aの全ての辺から下方に延在した側面部を形成し、すなわち、箱状の蓋1を形成し、基材2の全ての側面に蓋1の側面部を接着しても良い。
また、図1に示した本発明のマイクロチップのように弾性部材を基材の蓋として用いる場合、弾性部材の基材側面に接着される部分(図1では側面部1b及び1c)の厚みをより厚くすることが好ましい。弾性部材の基材側面に接着される部分の厚みをより厚くすることにより、貼り合わせ強度をさらに向上させることができる。なお、図1に示すような弾性部材で形成された蓋1は、例えば、硬化前の2液混合タイプのモノマーを密閉金型内に導入し真空にして気泡の発生を防ぎながら弾性材料を充填し、次いで、金型内で弾性材料をプレス成形することにより作製することができる。
また、図1に示すような本発明のマイクロチップでは、基材2に形成されたウェル3の開口部全体が溶液の注入出口となるので、中空針を突き刺すことのできる領域がより広くなり、中空針を弾性部材に突き刺して溶液を中空針を介してウェル3に注入出する際の中空針のアライメント(位置決め)が容易になる。
また、本発明のマイクロチップでは、上記弾性部材の上記注入出口に対向する表面が親水化されていることが好ましい。
マイクロチップの溶液の注入出口に設ける弾性部材としては、マイクロチップ内に溶液を注入する時あるいは注入後に試薬の漏れを防ぐために、撥水性が高く且つ基材との密着性がより高い材料で形成されてことが必要とされる。それゆえ、このような条件を有する弾性部材をマイクロチップの溶液の注入出口に設けると、上述したように、マイクロチップ使用時に検体であるタンパク質や核酸等が弾性部材の表面に吸着する恐れがある。すなわち、注入出口に設けられた弾性部材の表面特性が、注入される溶液との関係で、マイクロチップ使用時に悪影響を与える恐れがある。
この課題を解決する方法としては、弾性部材と試料(溶液)との界面となる弾性部材の表面領域(注入出口に対向する表面)に局所的なプラズマ処理を施して親水化する方法や、弾性部材の試料との界面となる部分を2色成形法により他の材料(例えば、2−ハイドロキシエチルメタクリレート等の親水性のある材料)で形成する方法などを用いて、弾性部材の試料との界面となる領域の表面改質を行うことが好ましい。プラズマ処理で弾性部材の試料との界面となる表面領域を親水化する場合には、公知の真空もしくは大気プラズマ処理等を用いることが好ましい。
本発明のマイクロチップでは、上記弾性部材と上記基材とが一体化されていることが好ましい。
上述したように注入出口に設けられた弾性部材の表面特性が、注入される溶液との関係で、マイクロチップ使用時に悪影響(検体の吸着等)を与える恐れもあるので、弾性部材の注入出口、ウェルあるいは流路等に露出する面積は極力小さくすることが好ましい。そのためには、図3に示すように、弾性部材を基材の一部に一体化して形成し、弾性部材のウェルや流路等に露出する面積をできる限り小さくすることが好ましい。
図3は本発明のマイクロチップの容器の概略構成図である。図3に示すマイクロチップの容器30では、図3(a)及び(b)に示すように、容器基材31の底部の一部に、弾性材料34が一体化して設けられ、弾性部材34に中空針を突き刺してウェル32に溶液を注入出する。図3に示すように、弾性材料34を基材の一部に一体化して形成することにより、弾性部材のウェルや流路に露出する面積を極力小さくすることができ、マイクロチップ使用時の検体の吸着等の影響を抑制することができる。
なお、本発明のマイクロチップは、外径1mm以下(内径0.9mm以下)の中空針を用いて溶液を注入出する場合に好適である。本発明らの検証実験によると、このようなサイズの中空針を本発明のマイクロチップに対して用いた場合、中空針をマイクロチップに突き刺した際に弾性部材の屑が中空針の内径に詰まり難くなることが分かった。なお、中空針を用いてマイクロチップ内部(溶液室)に注入することの難しい試料、例えば、磁性ビーズ等に対しては予め試料を水溶性ポリマーに包み、チップ内に保存しておいても良い。
本発明の第2の態様に従えば、容積が1ml以下である溶液室と該溶液室に流通する該溶液の注入出口とを有するプラスチック製の基材と、該注入出口の取り付けられて該溶液室を密閉する弾性部材とを備えるマイクロチップの製造方法であって、該弾性部材をLIM法で成形することと、成形された該弾性部材を、第1金型内の所定位置に取り付けることと、所定の凹凸形状が第1金型に対向する面に形成された第2金型を該弾性部材上からプレスすることと、第1金型、第2金型及び該弾性部材により画成された空間に熱可塑性プラスチック樹脂を射出して該基材の一部を成形することとを含むマイクロチップの製造方法が提供される。
本発明のマイクロチップの製造方法は、例えば、図3に示すような構造の容器30を有するマイクロチップの製造方法であり、弾性部材のウェルや流路に露出する面積を極力小さくするために弾性部材と基材の一部(図3の例では容器基材31)とを一体化して作製する方法である。
図3に示すマイクロチップ容器30の製造方法の一例を図4に示す。製造手順は次の通りである。まず、溶液の注入出口を閉塞するための弾性部材34を液状樹脂射出成形(LIM:Liquid Injection Molding)法を用いて成形する。LIM法について簡単に説明すると、LIM法は、一般に、常温で液状の原料からなる主剤及び硬化剤の2液を一定の比率で混合し、高温の金型に射出成形して加熱硬化させる成形方法である。液状原料、特に液状ゴムの場合、原料のノウハウ、ロール練りなどの準備工程がいらないので、プラスチック成形と同様に内製化が容易である等の理由から、シリコーンゴムを中心に様々な材料の成形に用いられる。
次いで、LIM法で成形された弾性部材34を、図4(a)に示すように、基材成形用金型40の第1金型43内の所定位置に設置する。次いで、図4(b)に示すように、容器基材31に形成すべきウェル等の凹部とは反転した形状の凸部44が表面に形成された第2金型41を弾性部材34上からプレスする。次いで、熱可塑性プラスチック樹脂を第2金型41の注入孔42から第1金型43、第2金型41及び弾性部材34により画成された空間45に流し込み(射出成形)、容器基材31を成形するとともに容器基材31と弾性部材34とを一体化する。なお、本発明はこれに限定されず、例えば、マイクロチップの基材が容器と蓋とで構成されており、蓋の所定の一部分に弾性部材を蓋と一体化して形成する場合にも、図4に示した成形方法を用い得る。また、上述のように弾性部材をLIM法で作製する場合には、LIM用の金型を別途用意しても良いし、基材成形用金型を用いても良い。
上述のように、LIM法と射出成形法を組み合わせて弾性部材と基材とを一体化させることにより、弾性部材のウェルや流路に露出する面積を極力小さくすることができ、マイクロチップ使用時の検体の吸着等の影響を抑制することができる。また、本発明のマイクロチップの製造方法を用いることにより、微小で且つ複雑な形状の基材及び弾性部材を有するマイクロチップの量産が非常に容易になる。さらに、本発明のマイクロチップの製造方法では、弾性部材及び基材が微細で複雑な構造であっても、弾性部材と基材との密着性を向上させることができる。
本発明のマイクロチップによれば、マイクロチップの溶液の注入出口を閉塞する弾性部材の厚みを0.05〜1mmとすることにより、マイクロチップ使用時に弾性部材を中空針で突き破る際、マイクロチップおよび中空針への負荷を減さすことができ、弾性部材を破損し難くすることができる。また、本発明のマイクロチップでは、図1の例のように、弾性部材を基材の少なくとも溶液の注入出口側表面と注入出口側表面に垂直で且つ互いに対向する一対の面とに接着することにより、弾性部材と基材との接着強度を向上させることができるので、弾性部材に中空針を繰返し刺し抜きしても弾性部材が基材から剥離し難くすることができる。さらに、本発明のマイクロチップでは、弾性部材と試料(溶液)との界面となる弾性部材の表面領域をプラズマ処理等により親水化するので、マイクロチップ使用時に検体であるタンパク質や核酸等の弾性部材への吸着を抑制することができる。
また、本発明のマイクロチップの製造方法によれば、LIM法と射出成形法を組み合わせて弾性部材と基材とを一体化させるので、弾性部材のウェルや流路に露出する面積を極力小さくすることができ、マイクロチップ使用時の検体の吸着等の影響を抑制することができるとともに、微小で且つ複雑な形状の弾性部材及び基材を有するマイクロチップの量産が非常に容易になる。それゆえ、本発明のマイクロチップの製造方法を用いれば、高い精度を必要とし、極小で複雑な構造を有するマイクロチップを大量かつ安価に生産することができる。
以下に、本発明のマイクロチップ及びその製造方法の実施例について図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[マイクロチップ]
実施例1では核酸抽出用のマイクロチップを作製した。この例で作製したマイクロチップの概略構成図を図1に示した。この例で作製したマイクロチップ10は、図1(a)に示すように、蓋1と基材2とから構成される。
実施例1では核酸抽出用のマイクロチップを作製した。この例で作製したマイクロチップの概略構成図を図1に示した。この例で作製したマイクロチップ10は、図1(a)に示すように、蓋1と基材2とから構成される。
基材2はポリカーボネート等のプラスチック樹脂製であり、図1(a)に示すように、直方体状の形状を有し、基材2の一方の表面には、試薬等の溶液が注入される開口部(注入出口)が四角形状の2つのウェル3と、ウェル3間を繋ぐ流路4とが形成されている。この例では、基材2のサイズを56×31×1.0mmとし、ウェル3のサイズを15×25×0.8mmとした。
蓋1は、図1(a)に示すように、コ型の板状部材であり、上面が四角形状の上面部1aと、上面部1aの長手方向の両端辺から下方に延在して形成された2つの側面部1b及び1cとから構成される。この例では、蓋1の上面部1aの基材2に対向する側の表面のサイズを基材2の表面サイズ(56×31mm)とほぼ同じサイズにした。また、側面部1b及び1cの内側面の高さを基材2の高さ(1.0mm)とほぼ同じ高さにした。また、この例では、蓋1の上面部1aの厚さを0.3mmとし、側面部1b及び1cの厚さを1.0mmとした。蓋1はPDMS(KE1950:信越化学工業株式会社)製である。
この例のマイクロチップでは、図1(b)に示すように、蓋1を基材2のウェル3側の表面に接着してウェル3を密閉し、中空針やニードル等を蓋1上から突き刺して中空針やニードル等を介してマイクロチップ内に溶液を注入出する。
[マイクロチップの製造方法]
次に、この例のマイクロチップの製造方法について説明する。基材2は従来の射出成形法を用いて作製した。一方、蓋1は次のようにして作製した。
次に、この例のマイクロチップの製造方法について説明する。基材2は従来の射出成形法を用いて作製した。一方、蓋1は次のようにして作製した。
まず、蓋1は、図2に示すようなプレス成形金型により成形した。この例で用いたプレス成形金型20は、図2(a)に示すように、図1に示した蓋1の形状に対応した凹凸が表面に形成された可動金型21と、可動金型21の凹凸表面側に対向する位置に配置された固定金型25とを備える。可動金型21の表面には、図2(a)に示すように、蓋1の上面部1aの成形部となる凸部24と、凸部24の両側に形成され、蓋1の側面部1b及び1cの成形部となる2つの凹部23とが形成されている。ただし、この例では、可動金型21の表面に形成された凸部24の幅は蓋1の側面部1b及び1cの内側面間の間隔とほぼ同じ幅とした。また、凹部23の幅は蓋1の側面部1b及び1cの厚さより大きくし、凹部23の深さは蓋1の側面部1b及び1cの高さとほぼ同じにした。
蓋1の成形方法は次の通りである。まず、図2(b)に示すように、気泡の発生を防ぎながらPDMS26を金型内部に充填し、可動金型21内の通気孔22を介して金型内部を真空にした後、可動金型21を固定金型25の方向に移動させてPDMS26をプレスした。次いで、図2(c)に示すように、プレス成形された弾性部材27を金型から剥離した後、弾性部材27の外周に形成された不要な部分(図2(c)の破線の外側部)をカットして蓋1を成形した。次いで、成形された蓋1をプレス成形金型より取り出した(図2(d))。
次いで、プレス成形金型から取り出した蓋1を、後述する基材2と蓋1とを接着する際に使用する加熱装置に装着し、蓋1の試薬に接する側の表面にプラズマ処理を施して蓋1の試薬に接する側の表面を親水化した。蓋1の試薬に接する側の表面にプラズマ処理を施すことにより、試薬が蓋1の表面に吸着することを防止し、試薬が流路部分をスムーズに移動できるようにすることができる。このようにして、この例のマイクロチップ10の蓋1を作製した。
最後に、図1(b)に示すように、蓋1を基材2のウェル3側から接着してウェル3を密閉した。この際、蓋1の上面部1a及び2つの側面部1b及び1cを、基材2の上面部(ウェル3等が形成されている側の表面)及び基材2の長手方向に垂直な2つの側面部にそれぞれ接着した。なお、この例では、基材2と蓋1はプライマー(KE4579:信越化学工業株式会社)を用いて接着した。この際、接着反応を促進するために加熱装置を用いて接着した。このようにして、この例のマイクロチップ10を作製した。
この例のマイクロチップ10では、図1(b)に示すように、蓋1の上面部1a及び2つの側面部1b及び1cを、基材2の上面部(ウェル等が形成されている側の表面)及び基材2の長手方向に垂直な2つの側面部にそれぞれ接着したので、蓋1と基材2との接着強度が向上し、蓋1に中空針を繰返し刺し抜きしても蓋1と基材2とが力学的に剥離し難い構造にすることができる。
また、この例のマイクロチップでは、基材2に形成されたウェル3の開口部全体が溶液の注入出口となるので、中空針を突き刺すことのできる領域がより広くなり、中空針を弾性部材に突き刺して中空針を介して溶液をウェル3に注入出する際の中空針のアライメント(位置決め)が容易になる。
[試薬の注入試験]
上述の製造方法で作製されたマイクロチップのウェルに中空針を用いて試薬を注入する実験を行った。この実験では、外径0.42mm(内径0.34mm)及び外径0.26mm(内径0.18mm)の中空針を用い、約0.8mlの試薬をマイクロチップ内のウェルに注入した。ウェルへの溶液の注入は中空針を蓋上から突き刺して行った。その結果、外径0.42mm及び0.26mmのいずれの中空針を用いた場合においても、試薬注入後、中空針を抜いても試薬はマイクロチップから漏れることは無く、また、試薬を長時間ウェル内に封入することができた。具体的には、試薬をウェル内に注入した後、3日間試薬はウェルから漏れ出すことはなかった。
上述の製造方法で作製されたマイクロチップのウェルに中空針を用いて試薬を注入する実験を行った。この実験では、外径0.42mm(内径0.34mm)及び外径0.26mm(内径0.18mm)の中空針を用い、約0.8mlの試薬をマイクロチップ内のウェルに注入した。ウェルへの溶液の注入は中空針を蓋上から突き刺して行った。その結果、外径0.42mm及び0.26mmのいずれの中空針を用いた場合においても、試薬注入後、中空針を抜いても試薬はマイクロチップから漏れることは無く、また、試薬を長時間ウェル内に封入することができた。具体的には、試薬をウェル内に注入した後、3日間試薬はウェルから漏れ出すことはなかった。
また、上記実験において外径0.26mmの中空針を用いた場合には、蓋の表面の中空針を刺した跡は殆ど目立たなかった。さらに、この例のマイクロチップでは、外径0.42mm及び0.26mmの中空針を蓋に数回刺し抜きしても、蓋と基材とが剥離することもなく、また、中空針内部に蓋を形成するPDMSの屑も詰まらなかった。
また、この例では、比較のために、蓋の上面部の厚さが0.05mm未満であるマイクロチップと、蓋の上面部の厚さが1mmを超えるマイクロチップとを上述の製造方法と同様の方法で作製し、上述と同様の実験を行った。その結果、蓋の上面部の厚さが0.05mm未満のマイクロチップでは、中空針を刺した跡が塞がらず試薬が漏洩した。一方、蓋の上面部の厚さが1mmを超えるマイクロチップでは、中空針を引き抜く際に蓋が基材から剥がれてしまうマイクロチップも存在した。以上の結果より、この例で作製したマイクロチップでは、蓋の上面部の厚みを0.05〜1mmとすることが望ましいことが分かった。
[マイクロチップ]
実施例2では、基材と弾性部材とを一体化したマイクロチップを作製した。実施例2で作製したマイクロチップの容器の概略図を図3に示した。
実施例2では、基材と弾性部材とを一体化したマイクロチップを作製した。実施例2で作製したマイクロチップの容器の概略図を図3に示した。
この例のマイクロチップの容器30は、図3(a)及び(b)に示すように、2つのウェル32とウェル32間を繋ぐ流路33と有する容器基材31と、容器基材31の底部の一部に設けられた弾性部材34とから構成される。それ以外は、実施例1の基材と同様の容器構造とした。すなわち、この例で作製したマイクロチップの容器30の外形サイズ(56×31×1.0mm)及び容器30内のウェル32や流路33のサイズは実施例1で作製したマイクロチップの基材と同じにした。なお、この例のマイクロチップでは、容器基材31の底部の一部に設けた弾性部材34に中空針やニードル等を突き刺して中空針やニードル等を介してウェル32に溶液を注入出する。
弾性部材34は、図3(a)及び(b)に示すように、2つのウェル32の流路33側とは反対側の端部付近の底部に容器基材31の長手方向に延在して設けられ、弾性部材34が2つのウェル32に渡って延在するように形成されている。弾性部材34のサイズは47×8.1×0.4mmとした。
この例のマイクロチップでは、図3に示すように、弾性材料34を基材の一部(容器基材31)に一体化して形成するので、弾性部材34のウェル32や流路33に露出する面積を極力小さくすることができ、マイクロチップ使用時の検体の吸着等の影響を抑制することができる。
[マイクロチップの製造方法]
この例で作製したマイクロチップの容器30では、後述するように、弾性部材34をLIM法で成形し、容器基材31を射出成形法により成形した。容器基材31を射出成形する際に用いた基材用成形金型の概略断面図を図4(a)に示した。基材成形用金型40は、図4(a)に示すように、可動金型41と固定金型43とから構成され、可動金型41内には熱可塑性プラスチック樹脂を射出するための注入孔42が形成されている。また、可動金型41の固定金型43側の表面には、図4(a)に示すように、容器基材31に形成されるべき所望のウェル32や流路33の形状(凹部)とは反転した形状の凸部44が形成されている。具体的には、可動金型43の表面の凸部44が容器基材31のウェル32に対応する。
この例で作製したマイクロチップの容器30では、後述するように、弾性部材34をLIM法で成形し、容器基材31を射出成形法により成形した。容器基材31を射出成形する際に用いた基材用成形金型の概略断面図を図4(a)に示した。基材成形用金型40は、図4(a)に示すように、可動金型41と固定金型43とから構成され、可動金型41内には熱可塑性プラスチック樹脂を射出するための注入孔42が形成されている。また、可動金型41の固定金型43側の表面には、図4(a)に示すように、容器基材31に形成されるべき所望のウェル32や流路33の形状(凹部)とは反転した形状の凸部44が形成されている。具体的には、可動金型43の表面の凸部44が容器基材31のウェル32に対応する。
次に、この例のマイクロチップの製造方法を説明する。まず、容器30の製造方法を図4を用いて説明する。最初に、別途用意した弾性部材用成形金型を用いて弾性部材34をLIM法で作製した。具体的には、弾性部材成形用金型にシリコーンゴム原液の主剤(KE1990A:信越化学工業株式会社)及び硬化剤(KE1990B:信越化学工業株式会社)の混合液を注入し、弾性部材成形用金型を加熱して弾性部材34を作製した。
次いで、LIM法で成形された弾性部材34を、図4(a)に示すように、基材成形用金型40の固定金型43内の所定位置にはめ込んだ。次いで、図4(b)に示すように、可動金型41を固定金型43方向に下降させて、弾性部材34をプレスした。次いで、可動金型41の注入孔42を介して熱可塑性プラスチック樹脂を固定金型43、可動金型41及び弾性部材34により画成された空間45に射出し、弾性部材34に接して容器基材31を成形した(不図示)。この射出成形により容器基材31と弾性部材34とを一体化して、容器30を成形した。次いで、可動金型41を図4(c)に示すように、元の位置に戻した後、固定金型43から容器30を取り出した。このようにして図3に示すようなマイクロチップの容器30を作製した。
上述のようにLIM法と射出成形法を組み合わせてマイクロチップの容器30を作製することにより、弾性部材34と容器基材31との密着性を向上させることができる。また、この例で用いた製造方法を用いることにより、弾性部材34及び容器基材31の構造が微小で且つ複雑な形状であっても容器30の量産が非常に容易になり生産性が向上する。それゆえ、マイクロチップの生産性も向上する。
なお、この例で作製したマイクロチップの蓋(不図示)は、実施例1と同じ形状及びサイズで形成し、蓋は熱可塑性プラスチック製であり、公知の射出成形法で作製した。また、この例では蓋と基材とを、超音波融着法で接着した。このようにして、この例のマイクロチップを作製した。
[試薬の注入試験]
次に、この例で作製したマイクロチップに対して、実施例1と同様に、マイクロチップ内のウェルに中空針を用いて試薬を注入する実験を行った。すなわち、外径が0.42mm及び0.26mmの中空針で、約0.8mlの試薬をマイクロチップ内のウェルに注入した。ただし、この例では、容器基材の底部に設けた弾性部材に中空針を突き刺して試薬を注入した。その結果、外径0.42mm及び0.26mmのいずれの中空針を用いた場合においても、試薬注入後、中空針を抜いても試薬はマイクロチップから漏れることは無く、また、試薬を長時間ウェル内に封入することができた。具体的には、試薬をウェル内に注入した後、3日間試薬はウェルから漏れ出すことはなかった。
次に、この例で作製したマイクロチップに対して、実施例1と同様に、マイクロチップ内のウェルに中空針を用いて試薬を注入する実験を行った。すなわち、外径が0.42mm及び0.26mmの中空針で、約0.8mlの試薬をマイクロチップ内のウェルに注入した。ただし、この例では、容器基材の底部に設けた弾性部材に中空針を突き刺して試薬を注入した。その結果、外径0.42mm及び0.26mmのいずれの中空針を用いた場合においても、試薬注入後、中空針を抜いても試薬はマイクロチップから漏れることは無く、また、試薬を長時間ウェル内に封入することができた。具体的には、試薬をウェル内に注入した後、3日間試薬はウェルから漏れ出すことはなかった。
上記実施例1及び2では、PDMS(シリコーンゴム)製の弾性部材を用いたマイクロチップの例を説明したが、本発明はこれに限定されない。PDMSの代わりに、例えば、ラテックスゴム、天然ゴム等を用いても良い。また、弾性部材の代わりに、ポリプロピレン、ナイロン、PET等の高分子製の薄膜層とアルミ等の無機層とからなるバリアフィルムを用いても良い。このような場合には、少なくとも目的作業が完了するまでは、中空針を貫通させた後にバリアフィルムにできる亀裂がマイクロチップ内に密封される各溶液に対して悪影響を起こさない程度のサイズになるように、中空針の外径を限定することが好ましい。
本発明のマイクロチップによれば、マイクロチップ内に試料等を中空針で注入出する際、注入出口に設けられた弾性部材に中空針を繰返し刺し抜きしても、弾性部材が破損し難く、且つ、弾性部材が基材から剥離し難いマイクロチップを提供することができる。また、本発明のマイクロチップの製造方法によれば、試料等を中空針でマイクロチップ内に注入出するための注入出口に弾性部材を容易に形成することができるとともにマイクロチップを大量且つ安価に製造することが可能となる。それゆえ、本発明のマイクロチップ及びその製造方法は、μ−TASに用いられるような微細で複雑な構造を有するマイクロチップ及びその製造方法として好適である。
1 蓋
2 基材
3,32 ウェル
4,33 流路
20 プレス成形金型
21,41 可動金型
25,43 固定金型
30 容器
31 容器基材
34 弾性部材
40 射出成形金型
2 基材
3,32 ウェル
4,33 流路
20 プレス成形金型
21,41 可動金型
25,43 固定金型
30 容器
31 容器基材
34 弾性部材
40 射出成形金型
Claims (6)
- マイクロチップであって、
容積が1ml以下である溶液室と該溶液室に流通する該溶液の注入出口とを有するプラスチック製の基材と、
厚さが0.05〜1mmであり、該注入出口に取り付けられて該溶液室を密閉する弾性部材とを備え、
該弾性部材に中空針を突き刺して該溶液が該中空針を介して該溶液室に注入出されることを特徴とするマイクロチップ。 - 上記弾性部材が、シリコーンゴム、ラテックスゴム及び天然ゴムからなる群から選ばれる1種の材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
- 上記基材が直方体状であり、上記弾性部材が上記基材の注入出口側表面と該注入出口側表面に垂直で且つ互いに対向する一対の面とに接着されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロチップ。
- 上記弾性部材と上記基材とが一体化されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロチップ。
- 上記弾性部材の上記注入出口に対向する表面が親水化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロチップ。
- 容積が1ml以下である溶液室と該溶液室に流通する該溶液の注入出口とを有するプラスチック製の基材と、該注入出口の取り付けられて該溶液室を密閉する弾性部材とを備えるマイクロチップの製造方法であって、
該弾性部材をLIM法で成形することと、
成形された該弾性部材を、第1金型内の所定位置に取り付けることと、
所定の凹凸形状が第1金型に対向する面に形成された第2金型を該弾性部材上からプレスすることと、
第1金型、第2金型及び該弾性部材により画成された空間に熱可塑性プラスチック樹脂を射出して該基材の一部を成形することとを含むマイクロチップの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004196323A JP2006017603A (ja) | 2004-07-02 | 2004-07-02 | マイクロチップ及びその製造方法 |
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JP (1) | JP2006017603A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105218878A (zh) * | 2015-09-18 | 2016-01-06 | 安徽创业机电设备有限公司 | 一种耐低温水泵用密封圈 |
-
2004
- 2004-07-02 JP JP2004196323A patent/JP2006017603A/ja not_active Withdrawn
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