JP4957260B2 - 化学反応用カートリッジ及びその使用方法 - Google Patents
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Description
このような用途に使用される化学反応用カートリッジとして、例えば、弾性体の裏面に表面側に窪んだ複数の室と、これら複数の室を繋ぐ流路が形成され、弾性体の裏面に、室及び流路を密閉するように基板を接着したものがある(例えば、特許文献1参照)。この化学反応用カートリッジにおいては、予め室内にサンプルや試薬などの溶液を注入しておき、弾性体の表面側からローラを押し付けることにより、流路又は反応室あるいは両者が部分的に変形して、その流路又は反応室内にある溶液が移動し、これによって溶液の混合や試薬の添加などを行う。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、室及び流路を移動する溶液の付着性や浸透性が等しくなり、送液に優れたものとすることのできる化学反応用カートリッジ及びその使用方法を提供することを目的としている。
前記弾性体は、上下に積層された少なくとも二層構造からなり、上層の弾性体と下層の弾性体との間に、前記複数の室及び流路が設けられ、
前記上層の弾性体と前記下層の弾性体とは、同一材質であり、
前記下層の弾性体の下面に、前記弾性体より硬質の基板が、前記下層の弾性体の下面と前記基板の上面とのうちの一方に形成された少なくとも2つ以上の凹部と、他方に形成されて前記凹部に嵌合する少なくとも2つ以上の凸部との嵌合による2点以上で接合されており、
前記凸部を前記凹部に嵌合する際に、前記凸部と前記凹部とが弾性変形力により固定されることを特徴とする。
前記凸部及び前記凹部は、アンダーカット形状をなしていることを特徴とする。
前記凸部及び前記凹部は、フック状とされていることを特徴とする。
前記凸部及び前記凹部は、帯状をなしていることを特徴とする。
前記下層の弾性体と前記基板とは、互いに分離可能であることを特徴とする。
前記化学反応用カートリッジを使用して、溶液の化学反応を実施した後は、前記弾性体部分を廃棄し、前記基板を再利用することを特徴とする。
また、下層の弾性体と硬質の基板との接合の際の位置決めや固定が容易でかつ確実に固定できる。そして、弾性体の上面に外力を加えて室及び流路にある溶液を移動させる場合にも溶液溜まりが生じることなく確実かつスムーズに送液することができる。
[第一の実施の形態]
図1(a)は、化学反応用カートリッジ1の斜視図、(b)は、化学反応用カートリッジ1の上面図、(c)は、化学反応用カートリッジ1を切断線I−Iに沿って切断した際の矢視断面図、図2は、化学反応用カートリッジ1を切断線II−IIに沿って切断した際の矢視断面図であり、図2(a)は、二層の弾性体11,12と基板13との接合前の状態、 (b)は、二層の弾性体11,12と基板13との接合後の状態を示している。図3(a)は、下層弾性体12の下面図、(b)は基板13の上面図、図4(a)〜(c)は、ローラ14の動作を示した化学反応用装置100の上面図、図4(d)は、図4(c)における切断線IV−IVに沿って切断した際の矢視断面図である。
図1〜図4に示すように、化学反応用装置100は、基板13上に二層の弾性体11,12が重ねられて、二層の弾性体(以下、上層弾性体11、下層弾性体12と言う)の間に溶液が収容される複数の室21〜25及びこれら室21〜25を連結する流路26〜29が形成されてなるカートリッジ1と、上層弾性体11の上面に接触しながら移動することにより、弾性体11,12に外力を加えて流路26〜29又は室21〜25あるいは両者を部分的に塞いで、塞がれた流路26〜29又は室21〜25にある溶液X,Yを移動させるローラ14とを備えている。
ローラ14は、例えば長尺な円柱状であり、カートリッジ1の幅方向に沿って延在しており、ローラ14が上層弾性体11の上面に接触しながら移動するようになっている。ガイドレールは、カートリッジ1の長手方向に沿って延在し、ガイドレールに沿ってスライダが移動自在に設けられ、スライダにローラ14が固定されている。そして、スライダがガイドレールに沿って移動することにより、ローラ14もガイドレールに沿って移動し、カートリッジ1の上面が押圧されるため、送液が行われる。アクチュエータの駆動源としては、例えば、電力、機械力、空気圧あるいは油圧等によるものが挙げられる。
まず、カートリッジ1に形成された注入室21,22に予め溶液Xと溶液Yをそれぞれ注入しておく。注入は、図1(c)に示すように上層弾性体11に例えば直接、ニードル20により注入室21,22内に注入する。
また、下層弾性体12の下面に硬質の基板13が、凸部121,122と凹部131,132との嵌合によって接合されているので、下層弾性体12と基板13との接合の際の位置決めや固定が容易でかつ確実に固定することができる。また、上層弾性体11の上面に外力を加えて室21〜25及び流路26〜29にある溶液を移動させる場合にも溶液溜まりが生じることなく確実かつ容易に移動させることができる。この位置の固定は、カートリッジ1が上層弾性体11及び下層弾性体12で変形しやすいため、カートリッジ1とローラ14の相対的な位置を確定するために非常に重要である。
凸部121,122の径d1は凹部131,132の径d2より大きく、凸部121,122と凹部131,132とが弾性変形力により固定されるので、凸部121,122と凹部131,132との密着性が高く、凸部121,122と凹部131,132との嵌合がより強固となる。下層弾性体12と基板13とは互いに分離可能であるので、再利用でき、また下層弾性体12と基板13とを分別して廃棄でき、環境面で非常に好ましい。
図5は、化学反応用カートリッジ3を図2と同様に切断線II−IIに沿って切断した際の矢視断面図であり、(a)は、二層の弾性体31,32と基板33との接合前の状態、(b)は、二層の弾性体31,32と基板33との接合後の状態を示している。
第二の実施の形態は、下層弾性体32の凸部321,322と基板33の凹部331,332との形状が第一の実施の形態と異なるものであり、その他は第一の実施の形態と同様のため異なる点のみについて説明する。
図5に示すように、下層弾性体32の凸部321,322は、下方に突出する棒状部321a,322aと、棒状部321a,322aの先端に形成されて側面視横長の楕円形状の楕円部321b,322bとから構成されている。楕円部321b,322bは、弾性材料からなるので横方向において収縮するようになっている。
基板33の凹部331,332は、基板33の上下面に貫通して形成され円柱状をなしている。凹部331,332の横幅d4は、楕円部321b,322bの横幅d3より小さく、かつ、棒状部321a,322aの横幅より大きくなっている。楕円部321b,322bの横幅d3を凹部331,332の横幅d4よりも大きくすることにより、楕円部321b,322bにおける弾性力を利用して凹部331,332内に密着して強固に固定することができる。
図6は、化学反応用カートリッジ4を図2と同様に切断線II−IIに沿って切断した際の矢視断面図であり、(a)は、二層の弾性体41,42と基板43との接合前の状態、(b)は、二層の弾性体41,42と基板43との接合後の状態を示している。
第三の実施の形態は、下層弾性体42の凸部421,422と基板43の凹部431,432との形状が第一の実施の形態と異なるものであり、その他は第一の実施の形態と同様のため異なる点のみについて説明する。
図6に示すように、下層弾性体42の凸部421,422は、下方に突出しアンダーカット形状をなしたフック状である。具体的には、下方に向けて広がるテーパ面421a,422aを有する側面視略台形状である。凸部421,422は、弾性材料からなるので横方向及び縦方向において収縮するようになっている。
基板43の凹部431,432は、基板43の上面で凸部421,422に対応する位置に下方に窪んで形成され、凹部431,432は基板43の下面を貫通していない。凹部431,432は、凸部421,422と同形状のアンダーカット形状で、凹部431,432の開口側の横幅d6は凸部421,422の底部側の横幅d5よりも小さくなっている。凸部421,422の横幅d5を凹部431,432の横幅d6よりも大きくすることにより、凸部421,422における弾性力を利用して凹部431,432内に密着して強固に固定することができる。また、凸部421,422の高さh1を凹部431,432の深さh2より短くすると、厚さ方向(縦方向)にも弾性力を利用することができる。
図7(a)は、化学反応用カートリッジ5における二層の弾性体51,52と基板53との接合前の状態を示した斜視図であり、(b)は、(a)における下層弾性体52の下面図である。
第四の実施の形態は、下層弾性体52の凸部521,522と基板53の凹部531,532との形状が第一の実施の形態と異なるものであり、その他は第一の実施の形態と同様のため異なる点のみについて説明する。
図7(a),(b)に示すように、下層弾性体52の凸部521,522は、下方に突出しアンダーカット形状をなした帯状である。具体的には、下方に向けて広がるテーパ面521a,522aを有する側面視略台形状である。この凸部521,522は下層弾性体52の長手方向両端部において幅方向に延在して形成されている。凸部521,522は、弾性材料からなるので横方向において収縮するようになっている。
基板53の凹部531,532は、基板53の上面で凸部521,522に対応する位置に下方に窪み基板の幅方向に延在して形成され、凹部531,532は基板53の下面を貫通していない。凹部531,532は、凸部521,522と同形状のアンダーカット形状で、凹部531,532の開口側の横幅d8は凸部521,522の底部側の横幅d7よりも小さくなっている。凸部521,522の横幅d7を凹部531,532の横幅d8より大きくすることにより、凸部521,522における弾性力を利用して凹部531,532内に密着して強固に固定することができる。
例えば、上記第三及び第四の実施の形態において、下層弾性体42,52と基板43,53とを二色成形法により接合しても良い。二色成形することにより、下層弾性体42,52と基板43,53との形成とともに一度に接合することができ、施工の手間を省くことができる。
また、上記第四の実施の形態において、凸部521,522は下層弾性体52の長手方向両端部に幅方向に延在してそれぞれ二辺形成され、これに対応して凹部531,532も基板53の長手方向両端部に、幅方向に延在してそれぞれ二辺形成されているとしたが、例えば図7(c)に示すように、下層弾性体62の長手方向一端部に幅方向に延在して一辺の凸部621を形成し、さらに、長手方向に延在して一辺の凸部622を形成しても良い。そして、図示しないが、同様にして凸部621,622に対応する基板の上面に凹部をそれぞれ形成しても良い。また、その他、図示しないが、二辺以上の凸部及び凹部を形成しても良い。凸部521,522や凹部531,532を帯状に形成することによって、カートリッジ5の長手方向及び幅方向を固定でき、同時に基板53と下層弾性体52とのめくれを防止することができる。
また、下層弾性体12,32,42,52に凸部121,122,321,322,421,422,521,522を形成し、基板13,33,43,53に凹部131,132,331,332,431,432,531,532を形成するとしたが、反対に下層弾性体に凹部を形成し、基板に凸部を形成するとしても良い。
さらに、第一〜第四の実施の形態では弾性体は上層弾性体11,31,41,51と下層弾性体12,32,42,52との二層構造であるとしたが、三層構造以上としても良い。
また、弾性体11,12と基板13とは、接着により固定しても良い。この場合、分割は困難になるが、内部液体に対しては同一材質で流路を形成できるため、溶液の付着性や浸透性の問題は改善することができる。
11,31,41,51 上層弾性体
12,32,42,52 下層弾性体
13,33,43,53 基板
21〜25 室
26〜29 流路
121,122,321,322,421,422,521,522 凸部
131,132,331,332,431,432,531,532 凹部
X,Y,Z 溶液
Claims (6)
- 少なくとも一部が弾性体で形成され、内部に溶液が収容される複数の室及び複数の室を連結する流路を有し、外部から前記弾性体に外力を加えることにより、前記室及び流路にある溶液を移動又は阻止する化学反応用カートリッジにおいて、
前記弾性体は、上下に積層された少なくとも二層構造からなり、上層の弾性体と下層の弾性体との間に、前記複数の室及び流路が設けられ、
前記上層の弾性体と前記下層の弾性体とは、同一材質であり、
前記下層の弾性体の下面に、前記弾性体より硬質の基板が、前記下層の弾性体の下面と前記基板の上面とのうちの一方に形成された少なくとも2つ以上の凹部と、他方に形成されて前記凹部に嵌合する少なくとも2つ以上の凸部との嵌合による2点以上で接合されており、
前記凸部を前記凹部に嵌合する際に、前記凸部と前記凹部とが弾性変形力により固定されることを特徴とする化学反応用カートリッジ。 - 前記凸部及び前記凹部は、アンダーカット形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の化学反応用カートリッジ。
- 前記凸部及び前記凹部は、フック状とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学反応用カートリッジ。
- 前記凸部及び前記凹部は、帯状をなしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化学反応用カートリッジ。
- 前記下層の弾性体と前記基板とは、互いに分離可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学反応用カートリッジ。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学反応用カートリッジの使用方法において、
前記化学反応用カートリッジを使用して、溶液の化学反応を実施した後は、前記弾性体部分を廃棄し、前記基板を再利用することを特徴とする化学反応用カートリッジの使用方法。
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