JP2006010596A - 発振判定機能付き電子トランス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アナログ電子回路により模擬した電子トランスの一次側及び二次側に電気回路がそれぞれ接続されている閉ループ回路において、閉ループ回路の一部を開放、短絡するための切替回路5と、閉ループ回路を開放して形成した開ループ回路の一端から小振幅の正弦波電圧を周波数を変化させて入力し、かつ、開ループ回路の他端から電圧を出力させてこれらの入出力信号からボード線図を測定する測定回路2と、測定したボード線図のゲイン−周波数特性、位相−周波数特性から位相余裕を求め、この位相余裕を基準値と比較して発振するか否かを判定する判定回路3とを備える。
【選択図】図1
Description
ここで、図8は理想的な単相トランスの回路図を示しており、11は一次巻線、21は二次巻線、a1,b1は一次側端子、a2,b2は二次側端子である。
[数式1]
V2=n・V1
[数式2]
I2=I1/n
なお、他方の一次側端子b1は電流アンプ31と共に接地され、他方の二次側端子b2は電圧アンプ41と共に接地されている。
同様に、トランスの一次側の電圧を電圧検出器71により検出し、この電圧検出信号を絶縁回路61により絶縁して二次側に設けた電圧アンプ41に電圧指令値として入力する。ここで、電流アンプ31及び電圧アンプ41のゲインは、前述の如く多回転可変抵抗やプログラマブル抵抗モジュールを用いて任意に設定することができ、これによって変圧比を高精度に変更することができる。
[数式3]
V1・KV=V2
[数式4]
I2・KI=I1
[数式5]
KV=KI=n
すなわち、図9の回路を構成して各ゲインKV,KIを変圧比に応じて設定することにより、所望の変圧比を有する理想的な単相トランスを実現することが可能である。
そこで本発明の解決課題は、アナログシミュレータを構成する実回路を対象として発振の有無を容易かつ確実に判定可能とした発振判定機能付き電子トランスを提供することにある。
次に、測定したボード線図のゲイン−周波数特性、位相−周波数特性から位相余裕を求め、その値が予め設定した判定基準値より小さい場合には、発振すると判断する。この場合には、電子トランスや接続機器を故障、焼損させる可能性が高いと判断して、その電気回路81,82を用いたシミュレーションを事前に断念する。但し、この時、開ループ伝達関数を求めるために使用する前記正弦波電圧は、電子トランス等を焼損しないような1V以下の振幅を持つ小さな信号とする必要がある。
(1)閉ループ回路の一端を開放して開ループ回路を構成し、その一端から信号を入力した場合の他端の出力を求め、その出力/入力から開ループ伝達関数を求める。
(2)この開ループ伝達関数のゲイン−周波数特性から、ゲインが1の時、すなわち0dBの時の周波数fxを求める。
(3)次に、開ループ伝達関数の位相−周波数特性から、(2)で求めた周波数fxにおける位相が遅れ位相180°に対してどれだけ余裕があるかを求める。
(4)位相余裕による安定運転の目安は、およそ15°以上であることが経験的に得られているため、これを判定基準値とし、(3)で測定した位相余裕が判定基準値より大きければ安定していて発振のおそれがなく、位相余裕が判定基準値より小さければ不安定で発振のおそれがあると判定する。
通常、高い周波数帯域では、シミュレータ回路(電気回路81,82)はどのようなインピーダンスになるか判らないため、上述した開ループ伝達関数の位相余裕に基づいて発振するか否かを判定する。ただし、電子トランスは一般に商用周波数(50Hzまたは60Hz)で使用されるため、この商用周波数における発振の有無は予め以下のようにして判定することができる。
(1)電圧アンプ及び電流アンプの増幅率(ゲイン)KV,KIは、正である。
(2)電圧アンプ及び電流アンプは理想アンプとする(ゲインKV,KIが周波数に依存せず、一定である)。
(3)電圧検出器、電流検出器のゲイン=1とする。
V2=KV・Vin
[数式7]
I1=KI・I2
[数式8]
Vout=−Z1・I1
[数式9]
V2=Z2・I2
[数式10]
Vout/Vin=KI・KV・(−Z1/Z2)
(a)一次側のインピーダンスZ1が誘導性(インダクタンスLを有する)で二次側のインピーダンスZ2が容量性(コンデンサCを有する)
(b)一次側のインピーダンスZ1が容量性(コンデンサCを有する)で二次側のインピーダンスZ2が誘導性(インダクタンスLを有する)
従って、電子トランスを商用周波数で使用する場合は上記の基準に基づいて発振判定を行えば良い。
但し、この場合には、フィルタの挿入によって電子トランスが理想的なトランスにならない可能性があるため、どのフィルタを用いたらいかなる周波数帯域まで理想トランスとして電子トランスが動作するかを予め実験により検証しておく必要がある。
前記電子トランスは、前記閉ループ回路の一部を開放、短絡するための切替手段と、前記切替手段により前記閉ループ回路を開放して形成した開ループ回路の一端から小振幅の正弦波電圧を周波数を変化させて入力し、かつ、前記開ループ回路の他端から電圧を出力させてこれらの入出力信号からボード線図を測定する手段と、測定したボード線図のゲイン−周波数特性、位相−周波数特性から位相余裕を求め、この位相余裕を基準値と比較して発振するか否かを判定する手段と、を備えたものである。
前記電子トランスは、二次側の電流検出信号が絶縁されて電流指令値として入力される一次側の電流アンプと、一次側の電圧検出信号が絶縁されて電圧指令値として入力される二次側の電圧アンプと、位相特性が異なる複数のフィルタを備えたフィルタ群と、を備え、
前記フィルタ群から任意のフィルタを選択して電流アンプまたは電圧アンプの入力側に接続することにより前記位相余裕を可変としたものである。
まず、図1は請求項1に相当する本発明の第1実施形態を示す発振判定機能付き電子トランス10Aの構成図であり、図9と同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
なお、前述したように電圧検出器71の出力電圧(開ループ回路の出力電圧)をVoutとし、ボード線図測定回路2の出力電圧(開ループ回路への入力電圧)をVinとする。
更に、ボード線図測定回路2から出力される測定信号b(ゲイン−周波数特性、位相−周波数特性)は位相余裕判定回路3に入力されており、測定回路2または判定回路3が位相余裕を計算し、判定回路3が発振の有無を判定可能となっている。位相余裕判定回路3から出力された位相余裕判定信号(すなわち発振の有無の判定信号)cは表示装置4に入力されており、この表示装置4は、位相余裕判定信号cに基づいて、その判定結果や電子回路10Aに接続された電気回路81,82の使用可否等を表示するためのものである。
まず、試験条件に応じて、電子トランス10Aの一次側と二次側の電気回路81,82、すなわちシミュレータ回路を配線すると共に、シミュレータ回路に対して定数設定を行う(図3のステップS1)。このとき、シミュレータ回路内に電圧源が接続されている場合には、この段階では、電圧源の電圧設定値を0Vにしておく。この状態では、切替回路5内のスイッチ5a,5bは電圧検出器71側に接続されており、電子トランス10A及び電気回路81,82によって閉ループ回路が形成されている。
それ以外の場合(S2YES)には、まず、制御回路1からのスイッチ切替信号dにより、切替回路5内のスイッチ5a,5bをボード線図測定回路2側に切り替える(S3)。つまり、電子トランス10A及び電気回路81,82からなる閉ループ回路を開ループ回路に接続替えする。このように切替回路5は、閉ループ回路の一部を開放、短絡する機能を持つ。
同時に、制御回路1からボード線図測定回路2に測定開始信号aを送り、上記開ループ回路において、ボード線図の測定処理を実施する(S4)。このとき、測定回路2では、振幅が1V以下の微少な正弦波電圧の周波数を掃引する。
そして、これらの二つの信号Vin,Voutから、開ループ伝達関数(一巡伝達関数ともいう)を求める。ここで、開ループ伝達関数とは、ゲイン−周波数特性及び位相−周波数特性を指す。
このような試験条件の変更を行わない場合には、位相余裕が小さいと判断された現状回路での電子トランス10Aの使用は不可能であると結論付けて試験を断念する。
この図4によれば、130Hzにおいて位相余裕が18°程度あり、判定基準値である15°より大きいため発振には耐えられたが、2.5kHz近傍の位相余裕は12°であって判定基準値の15°より小さい。このため、例えば図5に示すように、電子トランス10Aに印加する電圧を若干変動させると、2.5kHz程度の周波数で発振が生じ易くなっていることが判る。
ここで、フィルタ群91,92は、例えば、以下のように位相特性が異なる複数種類のフィルタをそれぞれ備えており、制御回路1からのフィルタ切替信号eによってこれらのフィルタのうちで任意のフィルタを選択して接続可能であるものとする。なお、フィルタの種類は下記のものに何ら限定されないのは勿論である。
1)フィルタなし
2)フィルタ1(減衰が緩いローパスフィルタ)
3)フィルタ2(減衰が急峻なローパスフィルタ)
4)フィルタ3(減衰が緩いバンドパスフィルタ)
5)フィルタ4(減衰が急峻なバンドパスフィルタ)
図7のステップS11〜S15,S17,S18は、基本的に図3におけるS1〜S5,S7,S8と同様である。図7において図3と異なるのは、位相余裕がないと判断された場合(S15NO)の処理であり、この実施形態では、位相余裕がない場合に図3のステップS6のような試験条件の変更(シミュレータ回路側の定数や構成の変更)を行わず、フィルタ群91,92内の使用フィルタを変更して(S16)、変更前と同じ手順で位相余裕を判定することとした。なお、前記2)〜5)のフィルタを用いた場合に、いかなる周波数帯域まで電子トランス10Bが理想トランスとして動作するかを、予め実験により検証しておくものとする。
なお、フィルタを何度か切り替えても位相余裕が判定基準値より小さいままであり、発振のおそれを払拭できない場合には、現状回路での電子トランス10Bの使用は不可能であると判断し、必要に応じて試験条件を変更して再度、位相余裕を判定すればよい。
2:ボード線図測定回路
3:位相余裕判定回路
4:表示装置
5:切替回路
5a,5b:スイッチ
10A,10B:発振判定機能付き電子トランス
31:電流アンプ
41:電圧アンプ
51:電流検出器
61,62:絶縁回路
71:電圧検出器
81,82:電気回路
91,92:フィルタ群
Claims (2)
- アナログ電子回路により模擬した電子トランスの一次側及び二次側に、シミュレータ回路を構成するための電気回路がそれぞれ接続されている閉ループ回路において、
前記電子トランスは、
前記閉ループ回路の一部を開放、短絡するための切替手段と、
前記切替手段により前記閉ループ回路を開放して形成した開ループ回路の一端から小振幅の正弦波電圧を周波数を変化させて入力し、かつ、前記開ループ回路の他端から電圧を出力させてこれらの入出力信号からボード線図を測定する手段と、
測定したボード線図のゲイン−周波数特性、位相−周波数特性から位相余裕を求め、この位相余裕を基準値と比較して発振するか否かを判定する手段と、
を備えたことを特徴とする発振判定機能付き電子トランス。 - 請求項1に記載した発振判定機能付き電子トランスにおいて、
前記電子トランスは、
二次側の電流検出信号が絶縁されて電流指令値として入力される一次側の電流アンプと、
一次側の電圧検出信号が絶縁されて電圧指令値として入力される二次側の電圧アンプと、
位相特性が異なる複数のフィルタを備えたフィルタ群と、
を備え、
前記フィルタ群から任意のフィルタを選択して電流アンプまたは電圧アンプの入力側に接続することにより前記位相余裕を可変としたことを特徴とする発振判定機能付き電子トランス。
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