図1は本発明の実施の形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る通信装置は、例えば、狭域通信用の無線通信装置であって、基地局として使用される。そして、本実施の形態に係る通信装置は、自動的に適切な送信出力値あるいは受信感度値を設定することが可能である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る通信装置は、アンテナ1と、無線部2と、モデム部3と、制御部4とを備えており、これらの構成要素で移動局との通信を行う通信部を構成している。
無線部2は、アンテナ1を介して入力された移動局からの送信信号を受信し、その受信信号を増幅し周波数変換してモデム部3に出力する。モデム部3は、入力された受信信号を復調して、受信信号からデジタル信号の受信データを取得して制御部4に出力する。またモデム部3は、受信信号の復調時に得られる受信信号の受信レベルRSLを受信レベル伝達部6に出力し、受信レベル伝達部6は受け取った受信レベルRSLを受信感度値設定部7に出力する。このように、モデム部3は、復調器だけではなく、受信信号の受信レベルを取得する受信レベル取得部としても機能する。
またモデム部3には、制御部4で生成されたデジタル信号の送信データが入力される。モデム部3は、受け取った送信データでキャリアを変調して送信信号を生成し、無線部2に出力する。無線部2は、受け取った送信信号を周波数変換し増幅してアンテナ1を介して移動局に送信する。
図2は無線部2の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、無線部2は、送受信切換スイッチ20と、送信部21と、受信部22とを備えている。送信部21は、可変利得送信アンプ21a及び周波数変換部21bを備えており、受信部22は、可変利得受信アンプ22a及び周波数変換部22bを備えている。
周波数変換部21bは、モデム部3から出力された送信信号を低周波信号から高周波信号に周波数変換し、可変利得送信アンプ21aに出力する。可変利得送信アンプ21aは、入力された送信信号を増幅し、送受信切換スイッチ20に出力する。また、可変利得送信アンプ21aはその増幅率が可変であり、当該増幅率は後述する送信アンプ用制御電圧Vtsによって制御される。本実施の形態では、可変利得送信アンプ21aの増幅率を変化させることによって、送信部21での送信出力を調整することができる。
送受信切換スイッチ20は、制御部4から出力される送受信選択信号SELによって制御され、可変利得送信アンプ21a及び可変利得受信アンプ22aのどちらかをアンテナ1に接続する。送受信切換スイッチ20によってアンテナ1と可変利得送信アンプ21aとが接続されている場合、可変利得送信アンプ21aから出力された送信信号はアンテナ1を介して移動局に送信される。
可変利得受信アンプ22aは、送受信切換スイッチ20によってアンテナ1と接続されている場合、アンテナ1から入力された受信信号を増幅して周波数変換部22bに出力する。また、可変利得受信アンプ22aはその増幅率が可変であり、当該増幅率は後述する受信アンプ用制御電圧Vtrによって制御される。本実施の形態では、可変利得受信アンプ22aの増幅率を変化させることによって、受信部22での受信感度を調整することができる。周波数変換部22bは、受け取った受信信号を高周波信号から低周波信号に変換してモデム部3に出力する。
制御部4は、アンテナ1、無線部2及びモデム部3を介して移動局とデータ通信を行い、その通信結果を図2に示される正常受信率取得部5及び正常送信率取得部9に出力する。また、制御部4には時間計測部4aが設けられおり、この時間計測部4aは、後述する、送信出力更新用時間Tscr1、受信感度更新用時間Trcr1、通信確認用時間Tscn1,Trcn1、正常送信率測定用時間Tsm1及び正常受信率測定用時間Trm1を計測する。そして制御部4は、モデム部3から受け取った受信データに基づいて、図示しない表示部に各種情報を表示したり、図示しないスピーカに音声信号を出力したりする。
正常受信率取得部5は、制御部4から受け取った通信結果から正常受信率RRTを算出して取得し、受信感度値設定部7及び相関データ取得部12に出力する。正常送信率取得部9は、制御部4から受け取った通信結果から正常送信率SRTを算出して取得し、送信出力値設定部10及び相関データ取得部12に出力する。なお、正常受信率RRT及び正常送信率SRTについては後で詳細に説明する。
相関データ取得部12は、設定値記憶部13に記憶されている、受信信号に対する受信感度値RSVを当該設定値記憶部13から読み出して、受信感度値RSVと正常受信率RRTとの相関データRRDを生成して取得する。また、相関データ取得部12は、設定値記憶部13に記憶されている、送信信号の送信出力値SPVを当該設定値記憶部13から読み出して、送信出力値SPVと正常送信率SRTとの相関データSRDを生成して取得する。そして、相関データ取得部12は、取得した相関データSRD,RRDをそれぞれ送信出力値設定部10及び受信感度値設定部7に出力する。なお、相関データSRD,RRDについても後で詳細に説明する。
受信感度値設定部7は、受信信号の受信レベルRSLと相関データRRDなどに基づいて設定値記憶部13内の受信感度値RSVを更新する。また、送信出力値設定部10は、相関データSRDなどに基づいて設定値記憶部13内の送信出力値SPVを更新する。
受信感度調整部8は、更新された受信感度値RSVを設定値記憶部13から読み出して、その更新後の受信感度値RSVに応じた受信アンプ用制御電圧Vtrを生成して可変利得受信アンプ22aに出力し、その増幅率を制御する。これにより、受信部22には更新後の受信感度値RSVが設定され、受信部22ではその受信感度値RSVでもって受信信号が受信される。
また、送信出力調整部11は、更新された送信出力値SPVを設定値記憶部13から読み出して、その更新後の送信出力値SPVに応じた送信アンプ用制御電圧Vtsを生成して無線部2の可変利得送信アンプ21aに出力し、その増幅率を制御する。これにより、送信部21には更新後の送信出力値SPVが設定され、送信部21ではその送信出力値SPVでもって送信信号が送信される。
次に、本実施の形態に係る通信装置での送信出力値SPVの更新動作について詳細に説明する。図3は、本通信装置での送信出力値SPVの更新動作を示すフローチャートであって、図4は図3中のステップs6の内容を詳細を示すフローチャートである。図3に示されるように、本通信装置の電源が投入されると、ステップs1において、制御部4の時間計測部4aは、送信出力更新用時間Tscr1を計測するカウンタを初期化し、その後当該カウンタを動作させて送信出力更新用時間Tscr1の計測を開始する。これと同時に、時間計測部4aは送信出力更新用時間Tscr1の計測が停止していることを示す動作停止フラグFsstopをクリアする。動作停止フラグFsstopが“0”のとき送信出力更新用時間Tscr1の計測中であり、“1”のときその計測が停止中である。
次に、ステップs2において、送信出力調整部11は設定値記憶部13内の送信出力値SPVを読み出して、ステップs3において、それを無線部2の送信部21に設定する。これにより、制御部1で生成された送信データを含む送信信号は、設定値記憶部13内の送信出力値SPVの送信出力で移動局に送信可能となる。なお、本通信装置の電源投入後に最初に用いられる送信出力値SPVの初期値は任意の値で良いが、本通信装置が最初に設置される環境が予め想定できる場合には、その環境に適した値を実験等で予め求めておいて、それを初期値として設定値記憶部13内に記憶させても良い。
次に、ステップs4において、時間計測部4aは、本通信装置と移動局との通信不能時間を示す通信確認用時間Tscn1を計測するカウンタを初期化し、その後当該カウンタを動作させて通信確認用時間Tscn1の計測を開始する。そして、ステップs5において、制御部4は移動局と通信可能か判断する。制御部4は、通信確認用データをモデム部3、無線部2及びアンテナ1を介して移動局に送信し、その通信確認用データを受け取った移動局は、それを受け取った旨を示すACKデータを本通信装置に出力する。制御部4は、アンテナ1、無線部2及びモデム部3を介して移動局からACKデータを受信すると、移動局と通信可能と判断する。
なお制御部4は、このような移動局への通信確認用データの送信を例えば数ms間隔で行っており、当該データの送信ごとに、移動局からのACKデータを受信するかどうかを確認している。
ステップs5において移動局と通信可能と判断されると、ステップs6において、送信出力値SPVと正常送信率SRTとの相関データSRDが取得される。具体的には、図4に示されるように、まずステップs60において、時間計測部4aは、送信出力更新用時間Tscr1を計測するカウンタの動作を停止し、送信出力更新用時間Tscr1の計測を停止する。これと同時に、動作停止フラグFsstopを“1”に設定する。そして、時間計測部4aは、ステップs61において、通信確認用時間Tscn1の計測を停止する。
次にステップs62において、時間計測部4aは、正常送信率測定用時間Tsm1を計測するカウンタを初期化して、その後当該カウンタを動作させて正常送信率測定用時間Tsm1の計測を開始する。そしてステップs63において、制御部4は、移動局に対する通信確認用データの送信回数と、その通信確認用データが移動局に正常に送信できた回数(以後、「正常送信回数」と呼ぶ)とのカウントを開始する。その後、ステップs64において、正常送信率測定用時間Tsm1がしきい値時間Tsm2を超えると、制御部4は、通信確認用データの送信回数と正常送信回数のカウントを終了し、正常送信率取得部9に、しきい値時間Tsm2の間における通信確認用データの全送信回数と正常送信回数とを出力する。その後、ステップs65において、時間計測部4aは正常送信率測定用時間Tsm1を計測するカウンタを停止させて、正常送信率測定用時間Tsm1の計測を停止する。
本通信装置と通信を行う移動局は通信確認用データを受信すると、それに含まれる所定データを識別できるか否かを判断する。そして、識別できた場合には、通信確認用データの受信が正常に行われた旨を示す受信正常データをACKデータに含めて本通信装置に出力する。一方、上記所定データの識別ができなかった場合には、通信確認用データの受信が正常に行われなかった旨を示す受信異常データをACKデータに含めて本通信装置に出力する。本通信装置は、ACKデータを参照して受信正常データを確認すると、通信確認用データが正常に送信できたと判断する。この動作を通信確認用データの送信ごとに行うことによって、正常受信回数をカウントできる。
次にステップs66において、正常送信率取得部9は、受け取った全送信回数と正常受信回数とに基づいて正常送信率SRTを算出する。正常送信率SRTは、全送信回数をNstotal、正常送信回数をNsとすると、以下の式(1)を用いて算出される。
正常送信率取得部9は、正常送信率SRTを取得するとそれを送信出力値設定部10及び相関データ取得部12に出力する。次にステップs67において、相関データ取得部12は、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを読み出して、それと受け取った正常送信率SRTとをペアで記憶する。これにより、送信出力値SPVと正常送信率SRTとの相関データSRDが記憶される。
ステップs67が実行されると、図3に示されるステップs7において、送信出力値設定部10は、受け取った正常送信率SRTが予め定められたしきい値Stよりも大きいか否かを判断し、大きい場合には正常送信率SRTが良好であると判断する。
ステップs7で正常送信率SRTが良好であると判断されると、再度ステップs4,s5が順次実行される。ステップs5において、本通信装置と移動局との通信が可能であると判断されると、再度ステップs6,s7が順次実行される。なお、本通信装置の電源投入後の2回目以降のステップs60は、その直前で既に送信出力更新用時間Tscr1の計測が停止している場合にはスキップされる。
このように、本通信装置では、取得した正常送信率SRTが良好である場合には、そのときの送信出力値SPVを変更せずに移動局と通信している。
一方、ステップs7において、正常送信率SRTがしきい値St以下であり、正常送信率SRTが良好でないと判断されると、ステップs8において、送信出力値設定部10は、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを変更する。本実施の形態では、送信出力値SPVにn段階の設定値O1〜On(n>1)が設定可能であり、送信出力値設定部10は、これらの設定値O1〜Onからいずれか一つを選択し、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを、その選択した設定値に変更する。その後、ステップs2,s3が順次実行されて、変更後の送信出力値SPVが無線部2の送信部21に設定される。そして、ステップs4,s5が再度実行される。ステップs5において、本通信装置と移動局と通信可能である場合には、上記ステップs6が実行されて、変更後の送信出力値SPVと、その送信出力値SPVが設定されている際の正常送信率SRTとがペアで相関データ取得部12に記憶される。
なお、本実施の形態に係るステップs7では、正常送信率SRTがしきい値Stよりも大きい場合に良好と判断したが、しきい値St以上の場合に良好と判断しても良い。この場合には、正常送信率SRTがしきい値St未満のときに良好でないと判断される。
このように、本実施の形態に係る通信装置では、ステップs6〜s8が繰り返して実行されることによって、相関データ取得部12には、送信出力値SPVと正常送信率SRTとの相関データSRDが順次蓄積される。図5は、相関データ取得部12で取得される相関データSRDの一例を示す図である。なお図5では、送信出力値SPVに設定値O1〜O8が設定できる場合の相関データSRDの一例を示しており、正常送信率SRTを百分率表示している。
本実施の形態では、送信出力値SPVに設定可能な設定値O1〜Onは、送信出力値SPVと正常送信率SRTとの相関データSRDに基づいて予め決定されており、送信出力値設定部10内に記憶されている。以下に設定値O1〜Onの決定方法について詳細に説明する。
まず、図6に示されるような、送信出力値SPVと正常送信率SRTとの相関データSRDを示すグラフ100を実験やシミュレーションで求める。通常、通信システムでは、その設計仕様において運用上の最低条件が定められている。例えば、基地局側の通信装置や移動局側の通信装置での送信出力値や受信感度値などが最低どれだけの値を満足すべきかが定めされている。グラフ100はその最低条件における相関データSRDを示している。
次に、グラフ100から、正常送信率SRTがしきい値Stよりも大きくなる送信出力値SPVの範囲の幅Rs(以後、「送信良好範囲幅Rs」と呼ぶ)を求める。そして、システムの設計仕様において定められている送信出力値SPVの範囲(以後、「送信出力値設定範囲」と呼ぶ)の幅Rを送信良好範囲幅Rsで除算した際の端数Rfを求める。次に、送信出力値設定範囲を送信良好範囲幅Rsと端数Rfとを用いて複数のエリアに分割する。図7は、送信出力値設定範囲が送信良好範囲幅Rsと端数Rfで分割された様子を示す図である。図7に示されるように、送信出力値設定範囲の最低値から、その最低値に端数Rfの半分の値を足し合わせた値までの範囲を範囲A1とする。また、送信出力値設定範囲の最高値から端数Rfの半分の値を差し引いた値から、その最高値までの範囲を範囲Anとする。そして、残りの範囲を送信良好範囲幅Rsで分割し、値の低い方から順に範囲A2〜An-1とする。
次に、範囲A1〜Anにおいてそれぞれを代表する値を決定する。範囲A1,Anについては、送信出力値設定範囲の最低値及び最高値をそれぞれ代表値として決定する。範囲A2〜An-1については、それぞれの範囲の中心値を代表値とする。そして、これらの範囲A1〜Anの代表値を、それぞれ上述の設定値O1〜Onとする。
上述のようにグラフ100に示される相関データSRDは、本通信装置が使用されるシステムの設計仕様において定められている運用上の最低条件で取得されたデータであるため、グラフ100から求めた送信良好範囲幅Rsは、通常、実運用のシステムから得られるそれよりも小さいものとなる。従って、上述のような方法で、送信出力値SPVに設定可能な設定値O1〜Onを決定することにより、それらの設定値O1〜Onには、正常送信率SRTが良好となる値、つまり正常送信率SRTがしきい値Stよりも大きくなる値が必ず一つは存在することになる。
次に、ステップs8での送信出力値SPVの変更方法について詳細に説明する。図8は、本通信装置が移動局と連続して通信可能であって、送信出力値SPVを変更しても正常送信率SRTが良好とならず、ステップs2〜s8までが連続して繰り返して実行される場合の当該ステップs8での送信出力値SPVの変更動作を示すフローチャートである。
ステップs7で正常送信率SRTが良好でないと判断されると、図8に示されるように、送信出力値設定部10は、ステップs8においてステップs150,151を実行する。ステップs150では、送信出力値設定部10は、送信出力値SPVの現在の設定値Ox(x=1〜n)を設定値記憶部13から読み出して、これを基準設定値Oxとする。そしてステップs151において、送信出力値設定部10は、図9に示されるように、基準設定値Oxよりも一段階小さい値の設定値Ox-1あるいは一段階大きい値の設定値Ox+1を選択する。
本実施の形態では、設定値Ox-1,Ox+1のどちらを選択するかは、上述ステップs67で取得された、正常送信率SRTと送信出力値SPVとの相関データSRDに基づいて決定する。具体的には、設定値Ox-1,Ox+1のうち、相関データSRDにおいて正常送信率SRTが最も大きい送信出力値SPVに近い方の値を選択する。そして、送信出力値設定部10は、設定値記憶部13内の送信出力値SPVの設定値Oxを、設定値Ox-1,Ox+1のうちの選択した一方に書き換える。
例えば、相関データ取得部12から受け取った相関データSRDが図5に示されるようなデータであって、基準設定値Oxが設定値O4の場合、相関データSRDにおいて最も正常送信率SRTが大きい設定値が設定値O6であるため、送信出力値設定部10は、設定値O3,O5のうち設定値O5を選択する。そして、設定値記憶部13内の送信出力値SPVの設定値を設定値O4から設定値O5に書き換える。
なお基準設定値Oxが、相関データSRDにおいて正常送信率SRTが最も大きい送信出力値SPVの値と同じである場合には、設定値Ox-1,Ox+1のどちらを選択してもよく、本例では設定値Ox-1を選択するものとする。また、送信出力値設定部10は、基準設定値Oxが最小の設定値O1である場合には設定値O2を、最大の設定値Onである場合には設定値On-1を選択する。
ステップs151において送信出力値SPVを変更した後も、新たなステップs7で正常送信率SRTが良好でないと判断されると、送信出力値設定部10は、ステップs8においてステップs152を実行し、その実行結果によってステップs153あるいはステップs154を実行する。
ステップs152では、送信出力値設定部10は、今回のステップs7で用いた正常送信率SRTが前回よりも大きくなっているか否かを確認する。そして、今回の正常送信率SRTが前回よりも大きくなり、前回のステップs8で送信出力値SPVの設定値が変更前よりも小さい値に変更されている場合には、送信出力値設定部10は、ステップs153において、送信出力値SPVとして更に小さい設定値を選択して、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを変更する。例えば、前回のステップs8において、送信出力値SPVの設定値が設定値Oxから設定値Ox-1に変更された場合には、ステップs153において設定値Ox-1から設定値Ox-2に変更する。このように変更するのは、図10のグラフ200に示されるように、送信出力値SPVの設定値を小さくして正常送信率SRTが大きくなった場合には、その設定値を更に小さくする方向に正常送信率SRTのピークが存在する確率が高いからである。
また、ステップs152において、今回の正常送信率SRTが前回よりも大きい場合であって、前回のステップs8で送信出力値SPVの設定値が変更前よりも大きい値に変更されている場合には、送信出力値設定部10は、ステップs153において、送信出力値SPVとして更に大きい設定値を選択して、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを変更する。これは、図10のグラフ201に示されるように、送信出力値SPVの設定値を大きくして正常送信率SRTが大きくなった場合には、その設定値を更に大きくする方向に正常送信率SRTのピークが存在する確率が高いからである。
このように、送信出力値SPVを小さい値に変更した際の正常送信率SRTがその変更前の正常送信率SRTよりも大きくなったときには、送信出力値SPVを更に小さい値に変更し、送信出力値SPVを大きい値に変更した際の正常送信率SRTがその変更前の正常送信率SRTよりも大きくなったときには、送信出力値SPVを更に大きい値に変更することによって、送信出力値SPVの設定値の選択回数を低減することができ、正常送信率SRTが良好となる適切な送信出力値SPVを早期に見つけだすことができる。
一方、ステップs152において、今回の正常送信率SRTが前回と同じかそれよりも小さく、前回よりも大きくなっていないと確認されると、ステップs154において、送信出力値設定部10は、設定値Ox-1,Ox+1のうちステップs151で選択されていない方の設定値を選択して、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを変更する。
ステップs153において送信出力値SPVが変更された後も、新たなステップs7で正常送信率SRTが良好でないと判断されると、送信出力値設定部10は、ステップs8において再度ステップs152を実行する。そして、ステップs152での結果によってステップs153あるいはステップs154が実行される。なおステップs153において、選択すべき送信出力値SPVの設定値が存在しない場合にはステップs154が実行される。
また、ステップs154において送信出力値SPVが変更された後も、新たなステップs7で正常送信率SRTが良好でないと判断されると、送信出力値設定部10は、ステップs8においてステップs155を実行し、その実行結果によってステップs156あるいはステップs157を実行する。
このステップs155では、ステップs150の直前のステップs7で用いられた正常送信率SRT、つまり、送信出力値SPVに基準設定値Oxが設定されていた場合の正常送信率SRTよりも、今回の正常送信率SRTが大きくなっているか否かが確認される。そして、今回の正常送信率SRTが、基準設定値Oxが設定されている場合よりも大きくなり、ステップs154で送信出力値SPVが基準値設定値Oxよりも小さい値に変更されている場合には、ステップs156において、送信出力値SPVとして更に小さい設定値が選択されて、設定値記憶部13内の送信出力値SPVが変更される。
また、ステップs154の実行後のステップs155において、今回の正常送信率SRTが、基準設定値Oxが設定されている場合よりも大きくなり、ステップs154で送信出力値SPVが基準値設定値Oxよりも大きい値に変更されている場合には、ステップs156において、送信出力値SPVとして更に大きい設定値が選択され、設定値記憶部13内の送信出力値SPVが変更される。
一方、ステップs154の実行後のステップs155において、今回の正常送信率SRTが、基準値設定値Oxが設定されている場合よりも大きくなっていないと確認されると、ステップs157が実行される。このステップs157では、図9に示される設定値O1〜Onの配置において、基準設定値Oxを基準としてステップs154で選択された設定値とは反対側に位置する未選択の設定値のうち、基準設定値Oxに最も近いものが選択される。そして、設定値記憶部13内の送信出力値SPVがその選択された設定値に変更される。
例えば、送信出力値SPVに設定値O1〜O10まで設定可能であって、基準設定値Oxが設定値O8であり、ステップs157の実行直前までに設定値O5〜O7が選択されているとすると、ステップs154で設定値O9が選択された場合、ステップs157では、基準設定値O8を基準として設定値O9とは反対側に位置する未選択の設定値O1〜O4のうち、基準設定値O8に最も近い設定値O4が選択される。そして、設定値記憶部13内の送信出力値SPVが設定値O9から設定値O4に変更される。
ステップs156において送信出力値SPVが変更された後も、新たなステップs7で正常送信率SRTが良好でないと判断されると、送信出力値設定部10は、ステップs8においてステップs155を実行する。このステップs155では、ステップs154の実行直後のステップs155とは異なり、今回の正常送信率SRTが前回よりも大きくなっているか否かが確認される。以後、このステップs155を「ステップs155b」と呼ぶ。
ステップs155bにおいて、今回の正常送信率SRTが前回よりも大きくなったと確認されるとステップs156が実行される。このステップs156では、ステップs154,s155が順次実行された直後に実行される上述のステップs156とは異なり、今回の正常送信率SRTが前回よりも大きくなり、前回のステップs8で送信出力値SPVの設定値が変更前よりも小さい値に変更されている場合には、送信出力値設定部10は、送信出力値SPVとして更に小さい設定値を選択して、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを変更する。そして、ステップs155bが再度実行される。
また、このステップs156では、今回の正常送信率SRTが前回よりも大きい場合であって、前回のステップs8で送信出力値SPVの設定値が変更前よりも大きい値に変更されている場合には、送信出力値設定部10は、送信出力値SPVとして更に大きい設定値を選択して、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを変更する。そして、ステップs155bが再度実行される。
一方、ステップs155bにおいて、今回の正常送信率SRTが前回よりも大きくなっていないと確認されるとステップs157が実行される。このステップs157では、ステップs154,s155が順次実行された直後に実行される上述のステップs157とは異なり、基準設定値Oxを基準として前回のステップs8で選択された設定値とは反対側に位置する未選択の設定値のうち、基準設定値Oxに最も近いものが選択される。以後、このステップs157を「ステップs157b」と呼び、ステップs154,s155が順次実行された直後に実行されるステップs157を「ステップs157a」と呼ぶ。
ステップs157a,157bにおいて送信出力値SPVが変更された後も、新たなステップs7で正常送信率SRTが良好でないと判断されると、送信出力値設定部10は、ステップs8においてステップs158を実行して、その実行結果によってステップs157bあるいはステップs159を実行する。
ステップs158では、ステップs150の開始からステップs158の直前までに、送信出力値SPVに設定可能な設定値O1〜Onのすべてが選択されたかどうかが確認される。ステップs158において、設定値O1〜Oxのすべてが選択されていないと確認されると、ステップs157bが実行されて送信出力値SPVが変更される。
一方、ステップs158において設定値O1〜Onのすべてが選択されたと確認されると、ステップs159において送信出力値SPVが基準設定値Oxに変更される。そして、基準設定値Oxに変更後も新たステップs7で正常送信率SRTが良好でないと判断されると、ステップs151が実行される。以後、同様の動作が正常送信率SRTが良好となるまで繰り返して実行される。
なお、基準設定値Oxが最小の設定値O1であったり、最大の設定値Onであることにより、ステップs154において選択すべき送信出力値SPVの設定値が存在しない場合には、設定値O1〜Onのうちの未選択の設定値において、基準設定値Oxに近いものから順に選択されて送信出力値SPVが変更される。そして、送信出力値SPVを変更するたびにステップs7において正常送信率SRTが良好か否かが確認される。
また、ステップs156において選択すべき送信出力値SPVの設定値が存在しない場合には、ステップs157bが実行される。
また、ステップs157a,157bにおいて選択すべき送信出力値SPVの設定値が存在しない場合には、設定値O1〜Onのうちの未選択の設定値において、基準設定値Oxに近いものから順に選択されて送信出力値SPVが変更される。そして、送信出力値SPVを変更するたびにステップs7において正常送信率SRTが良好か否かが確認される。
以上のように、ステップs2〜s8が繰り返して実行されることによって、送信出力値SPVは正常送信率SRTが良好となるような適切な値に収束しつつ、同時に送信出力値SPVと正常送信率SRTとの相関データSRDを蓄積することができる。
また、本実施の形態では、ステップs152〜s156を実行することによって、正常送信率SRTが前回よりも低下するまで送信出力値SPVを小さくしたりあるいは大きくしたりし、正常送信率SRTが前回よりも低下すると、今まで設定していた設定値とは基準設定値Oxを基準にして反対側の設定値を選択して大きくしたりあるいは小さくしたりしている。これにより、正常送信率SRTのピークが基準設定値Oxよりも小さい領域と大きい領域との両方に存在し、どちらか一方の領域で正常送信率SRTが良好とならない場合であっても、もう一方の領域で適切な送信出力値SPVの設定値を早急に見つけ出すことができる。
また、図6,7を参照して説明したように、本実施の形態では、送信出力値SPVに設定可能な設定値O1〜Onを、正常送信率SRTと送信出力値SPVとの相関データSRDに基づいて決定しているため、送信出力値SPVを変更する際にこれらの複数の設定値O1〜Onから選択することによって早期に適切な送信出力値SPVを自動で設定することができる。
また、ステップs151では、取得した相関データSRDに基づいて送信出力値SPVの設定値を決定しているため、より早期に適切な送信出力値SPVを自動で設定することができる。
なお、ステップs7において正常送信率SRTが良好と判断されると、その後のステップs8ではステップs150から実行される。また、後述するステップs16が実行された場合であっても、その後のステップs8ではステップs150から実行される。
次に、上述のステップs5において、本通信装置が移動局と通信不能と判断された場合の本通信装置の動作について説明する。図3に示されるように、ステップs5において、本通信装置が移動局からACKデータを受信することができず移動局と通信不能と判断されると、ステップs16において、時間計測部4aは通信確認用時間Tscn1がしきい値時間Tscn2よりも大きいかどうかを確認する。そして、通信確認用時間Tscn1がしきい値時間Tscn2以下の場合には、ステップs5が再度実行される。一方、通信確認用時間Tscn1がしきい値時間Tscn2よりも大きい場合には、ステップs17において、時間計測部4aは、通信確認用時間Tscn1用カウンタの動作を停止、通信確認用時間Tscn1の計測を停止する。なお、しきい値時間Tscn2は例えば500msに設定される。
次に、ステップs18において、時間計測部4aは、送信出力更新用時間Tscr1がしきい値時間Tscr2よりも大きいかどうかを確認する。しきい値時間Tscr2は例えば2sに設定される。ステップs18において送信出力更新用時間Tscr1がしきい値時間Tscr2以下の場合には、ステップs19において、送信出力値設定部10は、ステップs67で蓄積した相関データSRDに基づいて送信出力値SPVを更新する。以下に、ステップs19での送信出力値設定部10の動作について具体的に説明する。
送信出力値設定部10は、ステップs67で取得された相関データSRDを参照して、設定値O1〜Onのそれぞれにおいて、ステップs66で求められた正常送信率SRTがしきい値Stよりも大きくなった回数(以後、「正常送信率良好回数」と呼ぶ)を求める。図11は、上述の図5に示される相関データSRDにおける正常送信率良好回数を示す図である。図11に示されるように、本例では、送信出力値SPVに設定値O6が設定された場合に正常送信率良好回数が最も多くなっている。
送信出力値設定部10は、設定値O1〜Onから正常送信率良好回数が最も多い設定値を選択し、設定値記憶部13内の送信出力値SPVをその選択した設定値に書き換えて、送信出力値SPVを更新する。
なお、送信出力値設定部10が選択した設定値が、設定値記憶部13内の現在の設定値と偶然に同じである場合には、更新後であっても、設定値記憶部13内の設定値は変化しない。
また、蓄積された相関データSRD中に正常送信率SRTがしきい値Stよりも大きくなる送信出力値SPVの設定値が存在しない場合には、正常送信率SRTが最も大きい値を示す設定値を設定値O1〜Onから選択し、それでもって設定値記憶部13内の送信出力値SPVを更新する。また、本通信装置の電源投入直後にステップs16〜s18が実行されて、相関データ取得部12に相関データSRDが全く蓄積されていない場合には、このステップs19はスキップされる。
ステップs19において設定値記憶部13内の送信出力値SPVが更新されると、ステップs20において、時間計測部4aは動作停止フラグFsstopが“1”に設定されている否かを確認する。動作停止フラグFsstopが“1”に設定されており、送信出力更新用時間Tscr1の計測が停止している場合には、ステップs1が実行されて、送信出力更新用時間Tscr1が初期化され、動作停止フラグFsstopがクリアされる。そして、ステップs2,s3が順次実行されて、無線部2の送信部21に更新された送信出力値SPVが設定される。
一方、ステップs20において動作停止フラグFsstopが“0”の場合には、ステップs1は実行されずにステップs2,s3が順次実行され、無線部2の送信部21に更新された送信出力値SPVが設定される。
ステップs18において、送信出力更新用時間Tscr1がしきい値時間Tscr2よりも大きいと確認されると、ステップs21において、時間計測部4aは、送信出力更新用時間Tscr1を計測するカウンタの動作を停止して、送信出力更新用時間Tscr1の計測を停止する。なお、送信出力更新用時間Tscr1の計測がすでに停止している場合には、このステップs21はスキップされる。
次にステップs22において、送信出力値設定部10は、設定値記憶部13内の送信出力値SPVを変更し、その後ステップs1が実行される。そして、ステップs2、s3が順次実行されて、送信部21に変更後の送信出力値SPVが設定される。
ステップs22では、その直前での送信出力値SPVの設定値を除いて、設定値O1〜Onが順次選択される。図12は、本通信装置と移動局とが長時間連続して通信不能であって、ステップs19で選択される設定値が常に設定値O3である場合のステップs22で選択される設定値の変化の様子を示す図である。図12に示されるように、ステップs19で設定値O3が選択された後のステップs22では、まず設定値O1が選択されて、送信出力値SPVが設定値O3から設定値O1に変更される。そして、設定値O1に変更後であっても、本通信装置と移動局とがしきい値時間Tscn2の間通信不能の場合には、ステップs19が実行される。このステップs19では、相関データ取得部12内の相関データSRDに変化がないため、再度設定値O3が選択され設定値O1から設定値O3に更新される。
そして、本通信装置と移動局とがしきい値時間Tscr2の間通信不能となると、ステップs22が実行される。このステップs22では設定値O2が選択され、設定値O3から設定値O2に変更される。そして、設定値O2に変更後であっても、本通信装置と移動局とがしきい値時間Tscn2の間通信不能の場合には、ステップs19が実行され、設定値O2から設定値O3に更新される。
本通信装置と移動局とがしきい値時間Tscr2の間通信不能となると、ステップs22が実行され、今度は設定値O4が選択される。そして、設定値O4に変更後であっても、本通信装置と移動局とがしきい値時間Tscn2の間通信不能の場合にはステップs19が実行され、設定値O4から設定値O3に更新される。以後、同様に動作して、次のステップs22では設定値O5が選択され、その後ステップs22では、設定値O3を除く設定値O1〜O5が順次選択される。
以上のように、本実施の形態では、しきい値時間Tscn2よりも長い時間、本例では500msよりも長い時間、本通信装置と移動局とが連続して通信不可能な場合には、ステップs19において、ステップs67で取得した相関データSRDに基づいて送信出力値SPVが更新される。そして、しきい値時間Tscr2よりも長い時間、本例では2sよりも長い時間、本通信装置と移動局とが連続して通信不可能な場合には、ステップs22において送信出力値SPVが必ず変更される。
このように、通信結果により取得した正常送信率SRTと、送信出力値SPVとの相関データSRDに基づいて送信出力値SPVを更新することによって、適切な送信出力値SPVを自動で設定することができる。従って、事前の人手による送信出力の調整が不要となり、本通信装置を設置場所に配置するだけで、いつでも簡単にシステムの運用を開始させることができる。
また、本通信装置の設置場所が変更になって通信環境が変化したり、規格値ぎりぎりの通信性能を有する移動局が通信エリアに侵入したりして本通信装置と移動局とが長時間通信不能となった場合であっても、本実施の形態のように、一定時間の間、本通信装置と移動局とが通信不能の場合には送信出力値SPVを変更することによって、適切な送信出力値SPVを自動的に設定することが可能になる。
また本実施の形態では、本通信装置が移動局に対して数msごとに通信確認用データを送信しているため、ステップs22において送信出力値SPVを変更したとしても本通信装置と移動局とが通信不能の場合には、ステップs19において、相関データSRDに基づいて送信出力値SPVが更新される。従って、通信不能原因が通信環境の変化や移動局の通信性能では無く、単に移動局が通信エリアに存在しないために通信不能である場合にも、適切な送信出力値を自動で設定することができる。
次に、本実施の形態に係る通信装置での正常受信率RRTの更新動作について詳細に説明する。図13は、本通信装置での正常受信率RRTの更新動作を示すフローチャートであって、図14は図13中のステップs36の内容を詳細に示すフローチャートである。ある。図13に示されるように、本通信装置の電源が投入されると、ステップs31において、制御部4の時間計測部4aは、受信感度更新用時間Trcr1を計測するカウンタを初期化し、その後当該カウンタを動作させて受信感度更新用時間Trcr1の計測を開始する。このとき、受信感度更新用時間Trcr1の計測が停止していることを示す動作停止フラグFrstopをクリアする。動作停止フラグFrstopが“0”のとき受信感度更新用時間Trcr1の計測中であり、“1”のときその計測が停止中である。
次に、ステップs32において、受信感度調整部8は設定値記憶部13内の受信感度値RSVを読み出して、ステップs33において、それを無線部2の受信部22に設定する。これにより、本通信装置は、設定値記憶部13内の受信感度値RSVが示す受信感度で、移動局からの受信信号を受信することができる。なお、受信感度値RSVの初期値は任意の値で良いが、本通信装置が最初に設置される環境が予め想定できる場合には、その環境に適した値を実験等で予め求めておいて、それを初期値として設定値記憶部13内に記憶させても良い。
次に、ステップs34において、時間計測部4aは、受信感度値RSVを更新する際に用いる通信確認用時間Trcn1を計測するカウンタを初期化し、その後当該カウンタを動作させて通信確認用時間Trcn1の計測を開始する。そして、ステップs35において、制御部4は移動局と通信可能か判断する。なお、通信可能かどうかの判断方法は、上述の送信出力値SPVを更新する場合と同様である。
ステップs35において移動局と通信可能と判断されると、ステップs36において、受信感度値RSVと正常受信率RRTとの相関データRRDが取得される。具体的には、図14に示されるように、まずステップs360において、時間計測部4aは、受信感度更新用時間Trcr1を計測するカウンタの動作を停止し、受信感度更新用時間Trcr1の計測を停止する。これと同時に、動作停止フラグFrstopを“1”に設定する。そして、時間計測部4aは、ステップs361において、通信確認用時間Trcn1の計測を停止する。
次にステップs362において、時間計測部4aは、正常受信率測定用時間Trm1を計測するカウンタを初期化して、その後当該カウンタを動作させて正常受信率測定用時間Trm1の計測を開始する。そしてステップs363において、制御部4は、移動局からの受信信号を受信すべき回数(以後、「受信可能回数」と呼ぶ)と、移動局からの受信信号を正常に受信した回数(以後、「正常受信回数」と呼ぶ)とのカウントを開始する。そして、ステップs364において、正常受信率測定用時間Trm1がしきい値時間Trm2を超えると、制御部4は、受信可能回数と正常受信回数のカウントを終了し、正常受信率取得部5に、しきい値時間Trm2の間の全受信可能回数と正常受信回数とを出力する。その後、ステップs365において、時間計測部4aは正常受信率測定用時間Trm1を計測するカウンタを停止させて、正常受信率測定用時間Trm1の計測を停止する。
上述のように、本通信装置が移動局に対して通信確認用データを送信すると、それを受信した移動局はACKデータを送信する。つまり、通信確認用データが、移動局に対する信号の送信命令の役割を担っている。従って、通信確認用データを送信した回数を、移動局からの受信信号に対する受信可能回数と見ることができるため、本実施の形態では、通信確認用データの送信回数をカウントして受信可能回数を取得する。
また上述のように、移動局が送信するACKデータには、本通信装置からの通信確認用データの受信が移動局側で正常に行われた旨を示す受信正常データや、正常に行われなかった旨を示す受信異常データが含まれているが、本通信装置は、この受信正常データあるいは受信異常データを識別できた場合には、移動局からの受信信号の受信が正常に行われたと判断し、識別できなかった場合には受信が正常に行われなかったと判断する。そして制御部4は、受信正常データあるいは受信異常データを正常に識別できた回数をカウントし、正常受信回数を取得する。
次にステップs366において、正常受信率取得部5は、受け取った全受信可能回数と正常受信回数とに基づいて正常受信率RRTを算出する。正常受信率RRTは、全受信可能回数をNrtotal、正常受信回数をNrとすると、以下の式(2)を用いて算出される。
正常受信率取得部5は、正常受信率RRTを取得するとそれを受信感度値設定部7及び相関データ取得部12に出力する。次にステップs367において、相関データ取得部12は、設定値記憶部13内の受信感度値RSVを読み出して、それと受け取った正常受信率RRTとをペアで記憶する。これにより、受信感度値RSVと正常受信率RRTとの相関データRRDが記憶される。
ステップs367が実行されると、図13に示されるステップs37において、受信感度値設定部7は、受け取った正常受信率RRTが予め定められたしきい値Reよりも大きい場合には、正常受信率RRTが良好であると判断する。
ステップs37で正常受信率RRTが良好であると判断されると、再度ステップs34,s35が実行される。そして、新たなステップs35において、本通信装置と移動局との通信不能が確認されると、ステップs36,s37が順次実行される。なお、本通信装置の電源投入後の2回目以降のステップs360は、その直前で既に受信感度更新用時間Trcr1の計測が停止している場合にはスキップされる。
このように、本通信装置では、取得した正常受信率RRTが良好である場合には、そのときの受信感度値RSVを変更せずに移動局と通信している。
一方、ステップs37において、正常受信率RRTがしきい値Re以下であり、正常受信率RRTが良好でないと判断されると、ステップs38において、受信感度値設定部7は、設定すべき受信感度値RSVを決定し、設定値記憶部13内の受信感度値RSVをこの決定した値で更新する。本実施の形態では、受信感度値RSVにn段階の設定値S1〜Sn(n>1)が設定可能であり、受信感度値設定部7は、これらの複数の設定値S1〜Snからいずれか一つを選択し、設定値記憶部13内の受信感度値RSVを更新する。その後、ステップs32,s33が順次実行されて、更新後の受信感度値RSVが無線部2の受信部22に設定される。そして、ステップs34,s35が実行される。新たなステップs35において、本通信装置と移動局とが通信不能である場合には、上記ステップs36が実行されて、更新後の受信感度値RSVと、その受信感度値RSVが設定されている際の正常受信率RRTとがペアで相関データ取得部12に記憶される。
このように、本実施の形態に係る通信装置では、ステップs36〜s38が繰り返して実行されることによって、相関データ取得部12には、受信感度値RSVと正常受信率RRTとの相関データRRDが順次蓄積される。図15は、相関データ取得部12で取得される相関データRRDの一例を示す図である。なお図15では、受信感度値RSVに設定値S1〜S8が設定できる場合の相関データRRDの一例を示しており、正常受信率RRTを百分率表示している。
本実施の形態では、受信感度値RSVに設定可能な設定値S1〜Snは、受信感度値RSVと正常受信率RRTとの相関データRRDに基づいて予め決定されており、受信感度値設定部7内に記憶されている。以下に設定値S1〜Snの決定方法について詳細に説明する。
まず、図16に示されるような、受信感度値RSVと正常受信率RRTとの相関データRRDを示すグラフ300を実験やシミュレーションで求める。上述のように、通常、通信システムでは、その設計仕様において運用上の最低条件が定められている。このグラフ300はその最低条件における相関データRRDを示している。
次に、グラフ300から、正常受信率RRTがしきい値Reよりも大きくなる受信感度値RSVの範囲の幅Rr(以後、「受信良好範囲幅Rr」と呼ぶ)を求める。そして、システムの設計仕様において定められている受信感度値RSVの範囲(以後、「受信感度値設定範囲」と呼ぶ)の幅RRを受信良好範囲幅Rrで除算した際の端数Rf2を求める。次に、受信感度値設定範囲を受信良好範囲幅Rrと端数Rf2とを用いて複数のエリアに分割する。図17は、受信感度値設定範囲が受信良好範囲幅Rrと端数Rf2で分割された様子を示す図である。図17に示されるように、受信感度値設定範囲の最低値から、その最低値に端数Rf2の半分の値を足し合わせた値までの範囲を範囲B1とする。また、受信感度値設定範囲の最高値から端数Rf2の半分の値を差し引いた値から、その最高値までの範囲を範囲Bnとする。そして、残りの範囲を受信良好範囲幅Rrで分割し、値の低い方から順に範囲B2〜Bn-1とする。
次に、範囲B1〜Bnにおいてそれぞれを代表する値を決定する。範囲B1,Bnについては、受信感度値設定範囲の最低値及び最高値をそれぞれ代表値として決定する。範囲B2〜Bn-1については、それぞれの範囲の中心値を代表値とする。そして、これらの範囲B1〜Bnの代表値を、それぞれ上述の設定値S1〜Snとする。
上述のようにグラフ300に示される相関データRRDは、本通信装置が使用されるシステムの設計仕様において定められている運用上の最低条件で取得されたデータであるため、グラフ300から求めた受信良好範囲幅Rrは、通常、実運用のシステムから得られるそれよりも小さいものとなる。従って、上述のような方法で、受信感度値RSVに設定可能な設定値S1〜Snを決定することにより、それらの設定値S1〜Snには、正常受信率RRTが良好となる値、つまり正常受信率RRTがしきい値Reよりも大きくなる値が必ず一つは存在することになる。
次に、ステップs38での受信感度値RSVの更新方法について詳細に説明する。本実施の形態では、受信感度値設定部7は、モデム部3で取得された受信信号の受信レベルRSLに応じて受信感度値RSの設定値を更新する。受信感度値設定部7は、図18に示されるような、受信信号の受信レベルRSLと受信感度値RSVの変更段階数との対応関係を示すデータを予め記憶しており、このデータを参照して、設定値記憶部13内の受信感度値RSVを更新する。このようなデータは実験やシミュレーションで予め取得することができる。
ここで「変更段階数」とは、現在の受信感度値RSVの設定値をどれだけの段階数変更すべきかを示す値であって、変更段階数が“1”の場合には現在の設定値を1段階増加し、“−1”の場合には1段階減少させる。例えば、現在の設定値が設定値S5のとき、変更段階数が“1”の場合には設定値S6に変更し、“−1”の場合には設定値S4に変更する。なお、変更段階数が“0”のときには現状の設定値は変更されない。
受信感度値設定部7は、受信レベル伝達部6から受信レベルRSLを受け取ると、予め記憶している上記データから、その受信レベルRSLが示す値Lに対応した変更段階数を取得する。図18の例では、値Lに対応する変更段階数は“−2”であるため、受信感度値設定部7は、設定値記憶部13内の現在の受信感度値RSVの設定値を2段階減少させる。ステップs38では、このようにして、設定値記憶部13内の受信感度値RSVが更新される。
以上のように、本実施の形態では、ステップs36〜s38が繰り返して実行されることによって、本通信装置と移動局とが通信中の場合には、受信感度値RSVは正常受信率RRTが良好となる適切な値に設定され、受信感度値RSVと正常受信率RRTとの相関データRRDが蓄積される。
また、本実施の形態では、取得した受信レベルRSLに応じて受信感度値RSVの設定値を更新しているため、正常受信率RRTが良好となる適切な受信感度値RSVを自動で設定することができる。
また、図16,17を参照して説明したように、本実施の形態では、受信感度値RSVに設定可能な設定値S1〜Snを、正常受信率RRTと受信感度値RSVとの相関データRRDに基づいて決定しているため、受信感度値RSVを変更する際にこれらの設定値S1〜Snから選択することによって早期に適切な受信感度値RSVを自動で設定することができる。
次に、上述のステップs35において、本通信装置が移動局と通信不能と判断された場合の本通信装置の動作について説明する。図13に示されるように、ステップs35において、本通信装置と移動局とが通信不能と判断されると、ステップs46において、時間計測部4aは通信確認用時間Trcn1がしきい値時間Trcn2よりも大きいかどうかを確認する。そして、通信確認用時間Trcn1がしきい値時間Trcn2以下の場合には、ステップs35が再度実行される。一方、通信確認用時間Trcn1がしきい値時間Tscn2よりも大きい場合には、ステップs47において、時間計測部4aは、通信確認用時間Trcn1用カウンタの動作を停止し、通信確認用時間Trcn1の計測を停止する。なお、しきい値時間Trcn2は例えば500msに設定される。
次に、ステップs48において、時間計測部4aは、受信感度更新用時間Trcr1がしきい値時間Trcr2よりも大きいかどうかを確認する。しきい値時間Trcr2は例えば2sに設定される。ステップs48において受信感度更新用時間Trcr1がしきい値時間Trcr2以下の場合には、ステップs49において、受信感度値設定部7は、ステップs367で蓄積した相関データRRDに基づいて受信感度値RSVを更新する。以下に、ステップs49での受信感度値設定部7の動作について具体的に説明する。
受信感度値設定部7は、ステップs367で取得された相関データRRDを参照して、設定値S1〜Snのそれぞれにおいて、ステップs366で取得された正常受信率RRTがしきい値Reよりも大きくなった回数(以後、「正常受信率良好回数」と呼ぶ)を求める。図19は、上述の図15に示される相関データRRDにおける正常受信率良好回数を示す図である。図19に示されるように、本例では、受信感度値RSVに設定値S6が設定された場合に正常受信率良好回数が最も多くなっている。
受信感度値設定部7は、設定値S1〜Snから正常受信率良好回数が最も多い設定値を選択し、設定値記憶部13内の受信感度値RSVをその選択した設定値に書き換えて、受信感度値RSVを更新する。
なお、受信感度値設定部7が選択した設定値が、設定値記憶部13内の現在の設定値と偶然に同じである場合には、更新後であっても、設定値記憶部13内の設定値は変化しない。
また、蓄積された相関データRRD中に正常受信率RRTがしきい値Reよりも大きくなる受信感度値RSVの設定値が存在しない場合には、正常受信率RRTが最も大きい値を示す設定値を設定値S1〜Snから選択し、それでもって設定値記憶部13内の受信感度値RSVを更新する。また、本通信装置の電源投入直後にステップs46〜s48が実行されて、相関データ取得部12に相関データRRDが全く蓄積されていない場合には、このステップs49はスキップされる。
ステップs49において設定値記憶部13内の受信感度値RSVが更新されると、ステップs50において、時間計測部4aは動作停止フラグFrstopが“1”に設定されている否かを確認する。動作停止フラグFrstopが“1”に設定されており、受信感度更新用時間Trcr1の計測が停止している場合には、ステップs31が実行されて、受信感度更新用時間Trcr1が初期化され、動作停止フラグFrstopがクリアされる。そして、ステップs32,s33が順次実行されて、無線部2の受信部22に更新された受信感度値RSVが設定される。
一方、ステップs50において動作停止フラグFrstopが“0”の場合には、ステップs31は実行されずにステップs32,s33が順次実行され、無線部2の受信部22に更新された受信感度値RSVが設定される。
ステップs48において、受信感度更新用時間Trcr1がしきい値時間Trcr2よりも大きいと確認されると、ステップs51において、時間計測部4aは、受信感度更新用時間Trcr1を計測するカウンタの動作を停止して、受信感度更新用時間Trcr1の計測を停止する。なお、受信感度更新用時間Trcr1の計測がすでに停止している場合には、このステップs51はスキップされる。
次にステップs52において、受信感度値設定部7は、設定値記憶部13内の受信感度値RSVを変更し、その後ステップs31が実行される。そして、ステップs32、s33が順次実行されて、受信部22に変更後の受信感度値RSVが設定される。
ステップs52では、その直前での受信感度値RSVの設定値を除いて、設定値S1〜Snが順次選択される。図20は、本通信装置と移動局とが長時間連続して通信不能であって、ステップs49で選択される設定値が常に設定値S3である場合のステップs52で選択される設定値の変化の様子を示す図である。図20に示されるように、ステップs49で設定値S3が選択された後のステップs52では、まず設定値S1が選択されて、受信感度値RSVが設定値S3から設定値S1に変更される。そして、設定値S1に変更後であっても、本通信装置と移動局とがしきい値時間Trcn2の間通信不能の場合には、ステップs49が実行される。このステップs49では、相関データ取得部12内の相関データRRDに変化がないため、再度設定値S3が選択され設定値S1から設定値S3に更新される。
そして、本通信装置と移動局とがしきい値時間Trcr2の間通信不能となると、ステップs52が実行される。このステップs52では設定値S2が選択され、設定値S3から設定値S2に変更される。そして、設定値S2に変更後であっても、本通信装置と移動局とがしきい値時間Trcn2の間通信不能の場合には、ステップs49が実行され、設定値S2から設定値S3に更新される。
本通信装置と移動局とがしきい値時間Trcr2の間通信不能となると、ステップs52が実行され、今度は設定値S4が選択される。そして、設定値S4に変更後であっても、本通信装置と移動局とがしきい値時間Trcn2の間通信不能の場合にはステップs49が実行され、設定値S4から設定値S3に更新される。以後、同様に動作して、次のステップs52では設定値S5が選択され、その後ステップs52では、設定値S3を除く設定値S1〜S5が順次選択される。
なお、本実施の形態に係る通信装置では、図13,14等を参照して説明した受信感度値RSVの更新動作と、図3,4,8等を参照して説明した送信出力値SPVの更新動作とは、時間的に並列して実行される。例えば、ステップs1の実行の後にステップs31を実行し、ステップs2の実行の後にステップs32を実行するようにして、図3に示される各ステップと、図13に示される各ステップとを交互に実行することによって、送信出力値SPVの更新動作と、受信感度値RSVの更新動作とを時間的に並列実行できる。また、ステップs5の内容とステップs35の内容とは同じであるため、どうちらか一方が実行されれば良い。
以上のように、本実施の形態では、しきい値時間Trcn2よりも長い時間、本例では500msよりも長い時間、本通信装置と移動局とが連続して通信不可能な場合には、ステップs49において、ステップs367で取得した相関データRRDに基づいて受信感度値RSVが更新される。そして、しきい値時間Trcr2よりも長い時間、本例では2sよりも長い時間、本通信装置と移動局とが連続して通信不可能な場合には、ステップs52において受信感度値RSVが必ず変更される。
このように、通信結果により取得した正常受信率RRTと、受信感度値RSVとの相関データRRDに基づいて受信感度値RSVを更新することによって、正常受信率RRTが良好となる適切な受信感度値RSVを自動で設定することができる。従って、事前の人手による受信感度の調整が不要となり、本通信装置を設置場所に設置するだけで、いつでも簡単にシステムの運用を開始させることができる。
また、本通信装置の設置場所が変更になって通信環境が変化したり、規格値ぎりぎりの通信性能を有する移動局が通信エリアに侵入したりして本通信装置と移動局とが長時間通信不能となった場合であっても、本実施の形態のように、一定時間の間、本通信装置と移動局とが通信不能の場合には受信感度値RSVを変更することによって、適切な受信感度値RSVを自動的に設定することが可能になる。
また本実施の形態では、本通信装置が移動局に対して数msごとに通信確認用データを送信しているため、ステップs52において受信感度値RSVを変更したとしても本通信装置と移動局とが通信不能の場合には、ステップs49において、相関データRRDに基づいて受信感度値RSVが決定される。従って、通信不能原因が通信環境の変化や移動局の通信性能では無く、単に移動局が通信エリアに存在しないために通信不能である場合にも、適切な受信感度値RSVを早期に自動で設定することができる。
3 モデム部、4a 時間計測部、5 正常受信率取得部、7 受信感度値設定部、9 正常送信率取得部、10 送信出力値設定部、21 送信部、22 受信部。