JP2005533489A - グルコースからパラ−ヒドロキシスチレンへの微生物変換 - Google Patents

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Abstract

組換え宿主細胞によってpHSを産生するためのin vivoでの方法を開示する。この宿主細胞は、チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子またはフェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子のいずれかとの組み合わせで、パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を発現する。

Description

本件出願は2002年5月23日に出願された米国仮特許出願第60/383450号の利益を主張するものである。
本発明は分子生物学および微生物学の分野に関する。特に、本発明はグルコースなどの単純な炭素源からパラ−ヒドロキシスチレンを産生するための方法に関する。
樹脂、コーティング、インキの製造をはじめとする多種多様な工業用途での利用が見込める周知の化合物のひとつに、パラ−ヒドロキシスチレン(pHS)がある。
pHSの化学的な合成方法は多数知られている。たとえば、5ステップからなるプロセスではエチルベンゼンから(特許文献1)、あるいは2ステップからなるプロセスであればパラ−ヒドロキシアセトフェノールから(特許文献2)pHSを生成することができる。こうした方法を用いればpHSを生成できることに違いはないが、これには強酸性または強塩基性の反応条件下で反応温度を高くしなければならない上、必要のない副生物が大量に生成されるのが普通である。また、化学的な方法では高価な開始材料を用いる必要があり、これがpHSの産生コストを増すことになる。pHSにはさまざまな用途があるにもかかわらず、この素材を得るための安価な原料はいまのところ開発されていない。
菌・カビ(非特許文献1)および(非特許文献2)、酵母(非特許文献3)、グラム陰性菌ならびにグラム陽性菌(非特許文献4)および(非特許文献5)をはじめとする多数の微生物で4−ヒドロキシスチレンが生成されることが知られている。上記の事例のいずれにおいても、フェニルプロパノイドクラスのカルボン酸が脱炭酸化され、対応する4−ヒドロキシスチレンが生成される。
パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性によってパラ−ヒドロキシケイ皮酸(pHCA)がpHSに変換される(非特許文献6)。クレブシエラオキシトカ(Klebsiella oxytoca)由来の4−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ遺伝子を有するDNA断片をE.coli JM109にて構成的に発現させると4−ヒドロキシスチレンが放出されるとの報告がなされた。この組換え宿主細胞には、想定されるpHS前駆体であるパラ−ヒドロキシケイ皮酸(pHCA)を産生する他の遺伝子はまったく含まれていなかった。
さらに、ハシドコ(Hashidoko)らは、クレブシエラオキシトカ(Klebsiella oxytoca)由来のヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼによって4−ヒドロキシケイ皮酸を脱炭酸化することでヒドロキシスチレンが生成されることも示した(非特許文献7)。このハシドコ(Hashidoko)らによるin vitroでの生物学的なpHS産生方法には、高価な開始材料であるpHCAから極めて低い力価しか得られないという制約がある。
米国特許第4,503,271号明細書 米国特許第5,523,378号明細書 ベイン(Bayne)ら、J. Gen. Microbiol. 95、188〜190(1976) ハラダ(Harada)ら、J. Gen. Microbiol.11、1258〜1262(1976) グッディ(Goodey)ら、J. Gen. Microbiol、128、2615〜620(1982) フィンクル(Finkle)ら、J. Biol. Chem. 237、2926〜2931(1962) リンゼイ(Lindsay)ら、J. Appl. Bacteriol. 39、181〜187(1975) ハシドコ(Hashidoko)ら、Biosci. Biotech. Biochem.、58(1)、217〜218(1994) Arch. Biochem. Biophys.(1998)、359(2)、225〜230)
上記に鑑みると、炭水化物または糖類などの安価な材料を用いるpHSの産生方法を提供し、かつ、pHCA中間体を用いてpHS産生プロセスの効率を高めることは、当該技術分野におけるひとつの進展となろう。この方法が副生物の発生を抑えつつ所望の生成物を高い濃度で産生できるものであると特に好都合であろう。このような方法を開発するには、グルコースなどの炭水化物からpHCAへの変換ならびにpHCAからpHSへの変換を担う遺伝子装置(genetic machinery)を操作できなければならない。
上述した生物学的・化学的な系ではpHSの産生に役立つ場合のある多数の経路が得られるが、未だこのモノマーの効率的な産生には至っていない。したがって、解決すべき課題は、安価な基質または発酵性炭素源を用いて生物源からpHSを効率的に産生するための方法を設計し、これを実施することである。本願出願人らは、微生物宿主を画策してフェニルアラニンアンモニアリアーゼ/チロシンアンモニアリアーゼ(PAL/TAL)およびパラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(PDC)活性をコードする外来遺伝子を発現させることでpHSを生成し、上記の課題を解決した。
本発明は、パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を、チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子またはフェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子のうちのいずれか一方との組み合わせで発現する組換え宿主細胞によってpHSを産生するためのin vivoでの方法を含んでなる。
したがって、本発明は、
(i)
a)チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と、
b)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と
を含んでなる組換え宿主細胞と発酵性炭素基質とを接触させ、
(ii)パラ−ヒドロキシスチレンを産生するのに十分な時間、該組換え細胞を成長させ、
(iii)場合により該パラ−ヒドロキシスチレンを回収する
ことを含んでなる、パラ−ヒドロキシスチレンの産生方法を提供するものである。
あるいは、本発明は、
(i)
a)フェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と、
b)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と
を含んでなる組換え宿主細胞と発酵性炭素基質とを接触させ、
(ii)パラ−ヒドロキシスチレンを産生するのに十分な時間、該組換え細胞を成長させ、
(iii)場合により該パラ−ヒドロキシスチレンを回収する
ことを含んでなる、パラ−ヒドロキシスチレンの産生方法を提供するものである。
さらに、本発明は、
a)チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と、
b)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と
を含んでなる、組換え宿主細胞を提供するものである。
同様に、本発明は、
a)フェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と、
b)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と
を含んでなる、組換え宿主細胞を提供するものである。
配列表の簡単な説明
以下の配列は米国特許施行規則第1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則」)に準拠し、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)、EPOおよびPCTの配列表要件(施行規則5.2および49.5(a−bis)ならびに実施細則第208号および附属書C)に従ったものである。
配列番号1は赤色酵母(R.glutinis)由来のフェニルアラニン−チロシンアンモニアリアーゼ(pal/tal)酵素のヌクレオチド配列である。
配列番号2は配列番号1の推定アミノ酸配列である。
配列番号3は乳酸菌(L.plantarum)由来のパラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(pdc1)のヌクレオチド配列である。
配列番号4は配列番号3の推定アミノ酸配列である。
配列番号5は枯草菌(B.subtilis)由来のパラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(pdc2)のヌクレオチド配列である。
配列番号6は配列番号5の推定アミノ酸配列である。
配列番号7は赤色酵母(R.glutinis)由来のpalの増幅に用いられるプライマーである。
配列番号8は赤色酵母(R.glutinis)由来のpalの増幅に用いられるプライマーである。
配列番号9は乳酸菌(L.plantarum)由来のpdc1の増幅に用いられるプライマーである。
配列番号10は乳酸菌(L.plantarum)由来のpdc1の増幅に用いられるプライマーである。
配列番号11は枯草菌(B.subtilis)由来のpdc2の増幅に用いられるプライマーである。
配列番号12は枯草菌(B.subtilis)由来のpdc2の増幅に用いられるプライマーである。
配列番号13は変異体TAL酵素のアミノ酸配列である。
配列番号14はRM120−1という変異体TAL酵素のアミノ酸配列である。
配列番号15はRM120−2という変異体TAL酵素のアミノ酸配列である。
配列番号16はRM120−4という変異体TAL酵素のアミノ酸配列である。
配列番号17はRM120−7という変異体TAL酵素のアミノ酸配列である。
配列番号18はRM492−1という変異体TAL酵素のアミノ酸配列である。
発明の詳細な記述
本願明細書および特許請求の範囲を解釈するにあたっては、以下の略号および定義を用いる。
「フェニルアラニンアンモニア−リアーゼ」をPALと略記する。
「チロシンアンモニア−リアーゼ」をTALと略記する。
「パラ−ヒドロキシケイ皮酸」をpHCAと略記する。
「ケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼ」をC4Hと略記する。
「パラ−ヒドロキシスチレン」をpHSと略記する。
「パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼをPDCと略記する。
本願明細書では「ケイ皮酸」および「ケイ皮酸塩」という用語を同義のものとして使用し、CAと略記する。
「TAL活性」という用語は、チロシンからpHCAへの直接的な変換を触媒するタンパク質の機能を示す。
「PAL活性」という用語は、フェニルアラニンからケイ皮酸への変換を触媒するタンパク質の機能を示す。
「P−450/P−450レダクターゼ系」という用語は、ケイ皮酸からpHCAへの触媒変換を担うタンパク質の系を示す。P−450/P−450レダクターゼ系は、ケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼの機能を果たす当該技術分野において周知のいくつかの酵素または酵素系のうちのひとつである。本願明細書において使用する「ケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼ」という用語がケイ皮酸からpHCAへの変換を引き起こす一般的な酵素活性を示すのに対し、「P−450/P−450レダクターゼ系」という用語は、ケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼ活性を持つ特定の二成分タンパク質系を示す。
「C4H」という表現はケイ皮酸塩の水酸化に必要なp450/p450レダクターゼ系のP−450酵素と等価であるケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼを示す。
「PAL/TAL活性」または「PAL/TAL酵素」という用語は、PAL活性とTAL活性の両方を含むタンパク質を示す。このようなタンパク質は、酵素基質としてのチロシンとフェニルアラニンの両方に対して少なくともいくらかの特異性を持つ。
「変異体PAL/TAL」という用語は、PAL活性よりもTAL活性の方が大きい野生型PAL酵素に由来するタンパク質を示す。変異体PAL/TALタンパク質は、もともとフェニルアラニンよりもチロシンに対して高い基質特異性を持つものである。
「フェニルアラニン過剰産生株」という用語は、その株の野生型で見られるよりもかなり高い内在レベルでフェニルアラニンを産生する微生物株を示す。E.coliフェニルアラニン過剰産生体の具体例のひとつにE.coli株NST74(米国特許第4,681,852号明細書)がある。また、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)(イケダ(Ikeda),M.およびカツマタ(Katsumata),R. トリプトファン産生コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株でチロシンまたはフェニルアラニンを産生するための代謝工学、Appl. Environ. Microbiol.(1992)、58(3)、第781〜785ページ)もあげられる。
「チロシン過剰産生株」という用語は、その株の野生型で見られるよりもかなり高い内在レベルでチロシンを産生する微生物株を示す。チロシン過剰産生体の具体例のひとつにオムニジーンバイオプロダクツインコーポレイテッド(Omnigene Bioproducts,Inc.)(マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge)から得られるTYI株がある。また、コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)(マサト(Masato),I.およびリョウイチ(Ryoichi),K. トリプトファン産生コリネバクテリウムグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株でチロシンまたはフェニルアラニンを産生するための代謝工学、Appl. Environ. Microbiol.(1992)、58(3)、第781〜785ページ、ハギノ(Hagino),H.およびナカヤマ(Nakayama),K. 微生物による芳香族アミノ酸の産生、Agr. Biol. Chem.(1973)、37(9)、第2001〜2005ページおよび2013〜2023ページ)ならびにブレビバクテリウムラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)(イトウ(Ito),H.サクライ(Sakurai),S.タナカ(Tanaka),T.サトウ(Sato),K.エネイ(Enei),H. ブレビバクテリウムラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)からのL−チロシン産生体の遺伝子育種、Agr. Biol. Chem.(1990)、54(3)、第699〜705ページ)もあげられる。
「触媒効率」という用語は、酵素のkcat/Kであると定義される。「触媒効率」は、基質に対する酵素の特異性を表す目的で用いられる。
「kcat」という表記は「代謝回転数」に用いられることが多い。「kcat」という表記は、単位時間に生成物に変換された基質分子の活性部位あたりの最大数または単位時間に酵素が代謝回転した回数として定義される。kcat=Vmax/[E]であり、式中、[E]は酵素濃度(フェルスト(Ferst)、Enzyme Structure and Mechanism、第2版;W.H.フリーマン(Freeman):ニューヨーク、1985;第98〜120頁)。
「発酵性炭素基質」という用語は、本発明の宿主生物によって代謝される炭素源、特に、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、一炭素基質またはこれらの混合物よりなる群から選択される炭素源を示す。
「相補的である」という表現については、互いにハイブリダイズできるヌクレオチド塩基間の関係を示す際に使用する。たとえば、DNAに関していえば、アデノシンはチミンに対して相補的であり、シトシンはグアニンに対して相補的である。したがって、本発明には、添付の配列表に記載の完全配列に対して相補的である単離された核酸断片のみならず、実質的に類似の核酸配列も含まれる。
「遺伝子」とは、コード配列に先行(5’非コード配列)および後続(3’非コード配列)する制御配列をはじめとする特定のタンパク質を発現する核酸断片を意味する。「天然遺伝子」または「野生型遺伝子」とは、それぞれに制御配列を持つ自然界に見られるような遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」とは、天然遺伝子ではなく、自然界では一緒に見られることのない制御配列とコード配列とを含んでなるあらゆる遺伝子を意味する。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する制御配列とコード配列とを含んでなるものであってもよいし、同一起源由来であるが自然界で見られる形とは違った形に配列された制御配列およびコード配列を含んでなるものであってもよい。「内在性遺伝子」とは、生物のゲノムにおいて正常な位置にある天然遺伝子を示す。「外来遺伝子」とは、宿主生物には通常は見られないが、遺伝子移行によって宿主生物に導入された遺伝子を意味する。外来遺伝子は、自然界には存在しない生物に挿入された天然遺伝子、あるいはキメラ遺伝子を含んでなる場合がある。
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を示す。
「好適な制御配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内またはコード配列の下流(3’非コード配列)に位置し、関連のコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、あるいは翻訳に影響するヌクレオチド配列を示す。制御配列としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列があげられる。
「プロモーター」とは、コード配列または機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を示す。通常、コード配列はプロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、全体が天然遺伝子由来のものであってもよいし、自然界に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素からなるものであってもよく、あるいは、合成DNAセグメントを含んでなるものであってもよい。プロモーターが変われば、異なる組織または細胞型の遺伝子の発現、異なる発達段階での遺伝子の発現、あるいは異なる環境条件に応答しての遺伝子の発現が指示される場合があることは、当業者であれば理解できよう。ほとんどの細胞型でほぼ常に遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「構成的プロモーター」と呼ばれている。さらに、多くの場合は制御配列の正確な境界が完全に画定されていないため、長さの異なるDNA断片が同じプロモーター活性を持つこともあると言われている。
「作動的に結合された」という表現は、一方の機能が他方に影響するような形で1つの核酸断片上に核酸配列が会合した状態を示す。たとえばプロモーターであれば、コード配列の発現に影響をおよぼすことができる(すなわちそのコード配列がプロモーターの転写制御下にある)ときに、そのコード配列と作動的に結合されていると言う。コード配列は、センスまたはアンチセンスの向きで制御配列への作動的な結合が可能なものである。
本願明細書で使用する「発現」という用語は、本発明の核酸断片由来のセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を示す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を示すこともある。「アンチセンス阻害」とは、標的タンパク質の発現を抑制することのできるアンチセンスRNA転写物が生成されることを示す。「過発現」とは、健常な生物または非形質転換生物において生成されるレベルを超えて遺伝子産物がトランスジェニック生物で生成されることを示す。「コサプレッション」とは、同一または実質的に類似の外来遺伝子または内在性遺伝子の発現を抑制することのできるセンスRNA転写物が生成されることを示す(米国特許第5,231,020号明細書)。
「RNA転写物」とはDNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写によって生じる産物を示す。RNA転写物がDNA配列の完全に相補的なコピーである場合、これを一次転写物と呼び、一次転写物の転写後プロセシングで得られるRNA配列であれば成熟RNAと呼ぶ。「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、イントロンを持たず、細胞によるタンパク質への翻訳が可能なRNAを示す。「cDNA」とは、mRNAと相補であり、mRNAに由来する二本鎖DNAを示す。「センス」RNAとは、mRNAを含み、細胞によるタンパク質への翻訳が可能なRNA転写物を示す。「アンチセンスRNA」とは、標的遺伝子の発現をブロックする標的の一次転写物またはmRNAの全体または一部に対して相補であるRNA転写物を示す(米国特許第5,107,065号明細書)。アンチセンスRNAの相補性は、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロンまたはコード配列など特定の遺伝子転写物のどの部分に対するものであってもよい。「機能的RNA」とは、翻訳はされないが、それでもなお細胞プロセスに対する影響力を持つ、アンチセンスRNA、リボザイムRNAまたは他のRNAを示す。
「形質転換」とは、核酸断片が宿主生物のゲノムに移行し、遺伝的に安定した遺伝継承がなされることを示す。形質転換された核酸断片を含む宿主生物を「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換された」生物と呼ぶ。
「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」の各用語は、通常は環状二本鎖DNA分子の形で、細胞の中心的代謝の一部ではない遺伝子を持っていることの多い特別な染色体因子を示す。このような因子としては、あらゆるソースに由来する自己複製配列、ゲノム組込配列、ファージまたはヌクレオチド配列、線状または環状で一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAが可能であり、この場合、複数のヌクレオチド配列が連結または組換えられて、選択された遺伝子産物に対するプロモーター断片およびDNA配列を適切な3’未翻訳配列と共に細胞に導入できる独特の構成となっている。「形質転換カセット」とは、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする因子を有する特定のベクターを示す。「発現カセット」とは、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えて外来宿主でその遺伝子の発現を増すことのできる因子を有する特定のベクターを示す。
本願明細書で利用する標準的な組換えDNAおよび分子クローニング法は当該技術分野において周知のものであり、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチ(Fritsch),E.F.およびマニアティス(Maniatis),T.著、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)、1989(以下、「マニアティス」とする)およびシルハビー(Silhavy),T.J.、ベンナン(Bennan),M.L.およびエンキスト(Enquist),L.W.著、Experiments with Gene Fusions、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)、1984ならびにオースベル(Ausubel),F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、グリーンパブリッシングアンドウィレイ−インターサイエンス(Greene Publishing and Wiley−Interscience)出版、1987によって説明されている。
本発明はパラ−ヒドロキシスチレン(pHS)を産生するための生物学的な方法を説明するものである。これらの方法では、タンパク質のフェニルアラニンアンモニア−リアーゼ(PAL)活性またはチロシンアンモニア−リアーゼ(TAL)活性ならびにパラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(PDC)活性をコードする遺伝子を利用する。PAL活性はP−450/P−450レダクターゼ[ケイ皮酸−4−ヒドロキシラーゼ(C4H)およびP−450レダクターゼ]系の存在下でフェニルアラニンをpHCAに変換するものである。TAL活性の高い酵素はチロシンを中間工程なしで直接pHCAに変換する。パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼはpHCAをpHSに脱炭酸化することが知られている。
したがって、微生物宿主を工学設計し、PALおよびP−450/P−450レダクターゼ系をコードする遺伝子と併用して、PDCをコードする遺伝子を少なくとも1つ導入するか、あるいはTAL活性をコードする遺伝子を用いるかのいずれかで、pHSを産生することができる。
本発明は、イオン交換樹脂、インキ用バインダー樹脂、ポリマーブレンド相溶化剤、選択透過膜、ポリマー担体をはじめとするさまざまな商業材料において役立つpHSへの安価な生物学的経路を提供するものである。また、UV硬化型コーティング、金属表面処理剤、高温ホットメルト接着剤の用途といったさまざまなコーティング用途にpHSを利用することもできる。
遺伝子
本発明において用いる鍵になる酵素活性は、当該技術分野において周知の多数の遺伝子によってコードされる。主な酵素活性として、フェニルアラニンアンモニウムリアーゼ(PAL)、チロシンアンモニウムリアーゼ(TAL)、パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(PDC)があげられる。組換え宿主にPAL酵素を用いるのが望ましい場合は、ケイ皮酸−4−ヒドロキシラーゼ(C4H)またはP−450/P−450レダクターゼ系のいずれかをコードする遺伝子を得て発現させなければならないこともある。
フェニルアラニンアンモニウムリアーゼ(PAL)活性、チロシンアンモニウムリアーゼ(TAL)活性、パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(PDC)活性。
PALをコードする遺伝子は当該技術分野において周知であり、このうちいくつかは植物と微生物の両方のソースですでに配列が決定されている(たとえば、EP 321488号明細書[赤色酵母(R.toruloides)]、国際公開第9811205号パンフレット[ユーカリグランディス(Eucalyptus grandis)およびラジアタ松(Pinus radiata)]、国際公開第9732023号パンフレット[ペチュニア]、特開平05−153978号公報[エンドウマメ(Pisum sativum)]、国際公開第9307279号パンフレット[ジャガイモ、コメ]を参照のこと)。PAL遺伝子の配列については入手可能である(たとえば、GenBank AJ010143およびX75967を参照のこと)。組換え宿主で野生型PAL遺伝子を発現させると望ましい場合、野生型遺伝子を、ロドトルラ属(Rhodotorula sp.)、赤色酵母属(Rhodosporidium sp.)およびスポロボロミセス属(Sporobolomyces sp.)などの酵母、ストレプトマイセス(Streptomyces)などの細菌生物、エンドウマメ、ジャガイモ、コメ、ユーカリ、マツ、トウモロコシ、ペチュニア、シロイヌナズナ、タバコ、パセリなどの植物を含むがこれに限定されるものではない、どのようなソースから得るようにしてもよい。
TAL活性のみを持つ、すなわち、pHCAを産生するための基質としてチロシンのみを利用する酵素をコードする遺伝子は知られていない。しかしながら、上述したPAL酵素の中にはチロシンに対する基質親和性をいくらか有する酵素もあり、最近になってロドバクターカプスレイタス(Rhodobacter capsulatus)から明らかになった酵素ではチロシンに対する触媒効率がフェニルアラニンに対する触媒効率よりも約150倍高い(キント(Kyndt)ら、FEBS Lett. 512: 240(2002)。したがって、TAL活性をコードする遺伝子を、上述したpal遺伝子と同時に同定および単離できる可能性がある。たとえば、パセリから単離したPAL酵素(アパート(Appert)ら、Eur. J. Biochem.225:491(1994)およびトウモロコシから単離したPAL酵素(ハヴィール(Havir)ら、Plant Physiol.48:130(1971)にはどちらも基質としてチロシンを利用する機能があることが分かっている。同様に、赤色酵母(Rhodosporidium)から単離したPAL酵素(ホッジンス(Hodgins) D.S.,J. Biol. Chem. 246:2977(1971)も基質としてチロシンを利用できる。このような酵素を本願明細書ではPAL/TAL酵素または活性と呼ぶ。PAL/TAL活性をコードする野生型遺伝子を発現する組換え生物を作出するのが望ましい場合、ハンソン(Hanson)およびハヴィール(Havir)、The Biochemistry of Plants;アカデミック(Academic):ニューヨーク、1981;第7巻、第577〜625頁に記載されているように、トウモロコシ、コムギ、パセリ、リゾクトニアソラニ(Rhizoctonia solani)、赤色酵母(Rhodosporidium)、スポロボロミセスパラロセウス(Sporobolomyces pararoseus)、赤色酵母(Rhodosporidium)から単離した遺伝子を用いることができ、このうち赤色酵母(Rhodosporidium)から単離した遺伝子が好ましい。
パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(PDC)をコードする遺伝子は周知であり、いずれも本発明においては適するものとなり得る。たとえば、PDCをコードする遺伝子が、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)(AAC45282.1 GI:1762616 )、ラクトバチルスクリスパータス(Lactobacillus crispatus)(AAF82761.1 GI:9082168)、ラクトバチルスパラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(AAF82762.1 GI:9082170)、ラクトバチルスペントサス(Lactobacillus pentosus)(AAF82763.1 GI:9082172)、ラクトバチルスブレビス(Lactobacillus brevis)(AAF82766.1 GI:9082178)、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)(AAK85433.1 GI:15150391)、ペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)(CAC16794.1 GI:11322458)、バチルスプミルス(Bacillus pumilus)(CAC18719.1 GI:11691810)、ラクトコッカスラクチス(Lactococcus lactis)(NP_268087.1 GI:15673912 )から単離されており、このうちラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)から単離され、それぞれ配列番号4および配列番号6に示すポリペプチドをコードするPDC遺伝子が好ましい。
フェニルアラニンからpHCAへの変換用の主な酵素としてPALを選択する場合、ケイ皮酸−4−ヒドロキシラーゼ活性およびP−450レダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子のクローニングが必要になることがある。P−450/P−450レダクターゼ系を発現させるのが望ましい場合、この系の遺伝因子は周知であり、当該技術分野において入手可能である。たとえば、レダクターゼはすでに、キクイモ(ヘリアンサスツベロスス(Helianthus tuberosus)、[embl位置 HTU2NFR、登録番号26250.1]、パセリ(ペトロセリナムクリスパム(Petroselinum crispum)[コープマン(Koopmann)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94(26)、14954〜14959(1997)、[位置AF024634登録番号AF024634.1]、カリフォルニアポピー(エスコルチアカリフォルニカ(Eschscholzia californica)、ロスコ(Rosco)ら、Arch. Biochem. Biophys. 348(2)、369〜377(1997)、[位置ECU67186登録番号U67186.1]、アラビドプシスサリアナ(Arabidopsis thaliana)[pir:位置S21531]、カラスノエンドウ(フィシアサティバ(Vicia sativa)、[pir:位置S37159]、リョクトウ(ビグナラジアタ(Vigna radiata)、シェット(Shet)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90(7)、2890〜2894(1993)、[pir:位置A47298]、ケシ(パパヴェルソムニフェルム(Papaver somniferum)、[位置PSU67185登録番号U67185.1]から単離されている。
シトクロムP−450はすでに、キクイモ(Helianthus tuberosus)、[embl位置HTTC4MMR、登録番号Z17369.1]、ヒャクニチソウ(Zinnia elegans)、[スイスプロット(Swissprot):位置TCMO ZINEL、登録番号Q43240] ニチニチソウ(Catharanthus roseus)[スイスプロット:位置TCMO CATRO、登録番号P48522]、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides)[スイスプロット:位置TCMO POPTM、登録番号O24312]、ヤマナラシキタカミハクヨウ(Populus kitakamiensis)[スイスプロット:位置TCMO POPKI、登録番号Q43054]、シナカンゾウ(Glycyrrhiza echinata)[スイスプロット:位置TCMO GLYEC、登録番号Q96423]、ダイズ(Glycine max)[スイスプロット:位置TCMO SOYBN、登録番号Q42797]ならびに他のソースから単離されている。
ケイ皮酸−4−ヒドロキシラーゼ(C4H)をコードする遺伝子も周知であり、ムラサキ属(Lithospermum)(ジェンバンク(Genbank)AB055508、ジェンバンクAB055508)、ワタ属(Gossypium)(ジェンバンクAF286648)、トウガラシ属(Capsicum)(ジェンバンクAF212318)、ニチニチソウ属(Catharanthus)(スイスプロットP48522)、ハコヤナギ属(Populus)(ジェンバンクAF302495、スイスプロットQ43054)、ヒマワリ属(Helianthus)(スイスプロットQ04468)ジニア属(Zinnia)、(スイスプロットQ43240)、ミカン属(Citrus)(ジェンバンクAF255014)をはじめとするさまざまな植物源から単離されている。
本発明は上述した特定の活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子に限定されるものではなく、標準的な方法で得られるこのような遺伝子の好適な相同体も包含することは理解できよう。配列依存性プロトコールを利用してこれらの遺伝子に対する相同体を得る方法は当該技術分野において周知である。配列依存性プロトコールの例としては、核酸ハイブリダイゼーション法ならびに、核酸増幅技術(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)など)のさまざまな用途に見られるようなDNAおよびRNA増幅法があげられるが、これに限定されるものではない。
たとえば、既知の配列の全部または一部をDNAハイブリダイゼーションプローブとして利用して、上述した活性を有するポリペプチドのいずれかの相同体をコードする遺伝子を直接単離し、当業者間で周知の方法で所望の植物、菌・カビ、酵母または細菌からライブラリをスクリーニングすることが可能であった。当該技術分野において周知の方法(マニアティス(Maniatis)、上掲)で、文献に記載の(literature)核酸配列に基づく特定のオリゴヌクレオチドプローブを設計し、合成することができる。さらに、ランダムプライマーDNA標識、ニックトランスレーションまたは末端標識法などの当業者間で周知の方法で、完全配列を使ってDNAプローブを直接合成したり、あるいは利用可能なin vitro転写系を使ってRNAプローブを直接合成したりすることも可能である。さらに、特定のプライマーを設計し、これを利用して本配列の一部または全長を増幅することが可能である。得られる増幅産物については、増幅反応時に直接標識してもよいし、増幅反応後に標識し、適切なストリンジェンシーの条件下で全長cDNA断片またはゲノム断片を単離するためのプローブとして利用してもよい。
また、文献に記載の配列の短いセグメント2つをポリメラーゼ連鎖反応のプロトコールに利用し、DNAまたはRNAから相同遺伝子をコードする長めの核酸断片を増幅することができる。一方のプライマーの配列を文献に記載の配列由来のものとし、他方のプライマーの配列で細菌遺伝子をコードするmRNA前駆体の3’末端に対するポリアデニル酸領域の存在を利用して、クローニングされた核酸断片のライブラリでポリメラーゼ連鎖反応を行うようにしてもよい。あるいは、第2のプライマーの配列をクローニングベクター由来の配列に基づくものとしても構わない。たとえば、当業者であれば、RACEプロトコール(フローマン(Frohman)ら、PNAS USA 85:8998(1988))に従ってPCRでcDNAを生成し、転写物中の一点と3’末端または5’末端との間の領域のコピーを増幅することができる。文献に記載の配列から、3’方向のプライマーと5’方向のプライマーとを設計することが可能である。市販の3’RACE系または5’RACE系(ギブコ(GIBCO) BRL、メリーランド州ロックビル(Rockville))を利用すれば、特定の3’または5’cDNA断片を単離することができる(オハラ(Ohara)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5673(1989);ロウ(Loh)ら、Science 243:217(1989))。
変異体PAL/TAL活性:
チロシンからPHCAへの直接的な変換が望ましい場合、フェニルアラニンに対する基質特異性よりもチロシンに対する基質特異性の高い変異体PAL/TAL活性を発現する変異体を誘導すると都合がよい。このような変異体の産生にはさまざまな方法を利用できる。一般に、この方法ではフェニルアラニンに対する基質特異性よりもチロシンに対する基質特異性の高いPAL/TAL活性を持つ生物を選択することになる。通常、基質特異性はkcat/K(触媒効率)で表されるが、これは酵素において同定された活性部位の数を基準にして算出されるものである。
フェニルアラニンアンモニアリアーゼは分子量が約330,000であり、約80kDaの同一のサブユニット4つで構成されている(ハヴィール(Havir)ら、Biochemistry 14:1620〜1626(1975))。また、PALには触媒的に重要なデヒドロアラニン残基が含まれるのではないかという意見がある(ハンソン(Hanson)ら、Arch. Biochem. Biophys.141:1〜17(1970))。パセリのPALのSer−202がデヒドロアラニンの前駆体であることが明らかになっている(ランガー(Langer)ら、Biochemistry、36:10867〜10871(1997))。相同的な酵素であるヒスチジンアンモニアリアーゼ(HAL)の結晶構造に関する最近の研究から得られる情報を用いてPALのkcatを算出した。これらの研究では、酵素の活性部位における求電子的な反応性残基が4−メチリデン−イミダゾール−5−オンであり、これがAla−Ser−Gly配列を含む残基142〜144の環化および脱水によって自己触媒的に形成されるものであることが明らかになった(シュウェーデ(Schwede)ら、Biochemistry 38:5355〜5361(1999))。現在までに研究がなされている四量体のPAL酵素はいずれも活性部位それぞれにAla−Ser−Gly配列を含むため、PALの各活性部位にこの配列から形成される4−メチリデン−イミダゾール−5−オンも含まれている可能性が高い。
本発明に関してみれば、突然変異誘発の目的で選択する好適な野生型酵素の触媒効率はチロシンの場合で約4.14×10から1×10−1sec−1であり、この触媒効率が約1×10−1sec−1から約5×10−1sec−1の範囲にあると好ましい。
好適なPAL/TAL酵素を選択するプロセスでは、弱い発現ベクターを作製し、突然変異を誘発し、palコード配列を発展させ、最後にTAL活性が亢進した変種を選択する必要がある。
palの突然変異誘発:
PAL/TAL酵素の突然変異誘発にはさまざまな手法を用いることができる。本願明細書で使用する好適な手法として、error−prone PCR(レオン(Leung)ら、Techniques、1:11〜15(1989)およびツォウ(Zhou)ら、Nucleic Acids Res.19:6052〜6052(1991)およびスピー(Spee)ら、Nucleic Acids Res.21:777〜778(1993))とin vivo突然変異誘発の2つがあげられる。
error−prone PCRの主な利点として、この方法で導入する突然変異はすべてpal遺伝子内にあり、PCR条件を変えるだけでどのような変化でも容易に制御できるという点がある。あるいは、ストラタジーン(Stratagene)(カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla)のストラタジーン社(Stratagene)、グリーナー(Greener)およびカラハン(Callahan)、Strategies 7:32〜34(1994)から入手可能なE.coli XL1−Red株およびEpicurian coli XL1−Red変異誘発遺伝子株などの市販の材料を用いるin vivo突然変異誘発を利用してもよい。この株では主要なDNA修復経路のうち3つ(mutS、mutD、mutT)が不足しているため、野生型の場合と比して変異率が5000倍になる。in vivo突然変異誘発はライゲーション効率に左右されない(error−prone PCRの場合同様)が、ベクターのどの領域でも変異が起こる可能性があり、一般に変異率はかなり低い。
突然変異誘発方法の如何を問わず、触媒効率が約4.14×10−1sec−1から約1×10−1sec−1の酵素を得ることを想定しており、一般的な触媒効率は約12.6×10−1sec−1である。
TAL活性が亢進した変種の選択:
pHCA反応に対するチロシンの可逆性による選択
TAL活性が亢進したタンパク質をコードする遺伝子を持つ変異体を選択するために、pHCA反応に対するチロシンの可逆性を利用した選択系を開発した。チロシンのpHCAへの変換を担うTAL活性が逆の反応で平衡状態になることは明らかであろう。チロシンがないと成長できないE.coliチロシン栄養要求株に変異体遺伝子を標準的な方法でクローニングした。形質転換体を適切な濃度のpHCAの存在下でチロシンマイナス培地に移した。このような条件下で成長したコロニーを採取し、変異体遺伝子の有無を分析した。このようにして、触媒効率が約12.6×10−1sec−1であり、野生型では0.5のPAL触媒活性に対するTAL触媒活性の比が1.7である酵素を発現する遺伝子を単離した。
当業者であれば、亢進したTAL活性をコードする遺伝子を選択する別のスクリーンを想定することができよう。たとえば、Acinetobacter calcoaceticus DSM 586(ATCC 33304)はp−クマル酸(pHCA)を効率的に分解でき、これを単一の炭素源として利用することが周知である(デルネリ(Delneri)ら、Biochim. Biophys. Acta 1244:363〜367(1995))。
TAL/PAL比を比較することによる選択
PALまたはTAL活性が変化した遺伝子を同定するための高スループットのアッセイを開発することで微生物の形質転換体のスクリーニングが大幅にやりやすくなることは当業者であれば理解できよう。細胞全体のTAL活性とPAL活性とを別々に測定する簡単な方法のひとつを開示する。この方法では、PAL活性に対するTALの比を算出し、すみやかに野生型での活性と比較してバイオ触媒の活性の変化をモニタリングすることができる。
必須のアミノ酸をTAL活性で同定
上記の手法を利用して、本願出願人らは、野生型遺伝子と比してTAL活性が亢進したさまざまな変異型PAL酵素を同定した。これらの変異体については、上述した突然変異誘発およびスクリーニングの方法を用いて同定した。変異体、変化したアミノ酸残基およびTAL/PAL活性を以下にまとめておく。
Figure 2005533489
Figure 2005533489
上述した特定の突然変異だけでなく、化学的に等価なアミノ酸による置換が可能な突然変異も本発明に包含されることは理解できよう。したがって、あるアミノ酸を非極性の脂肪族アミノ酸であるアラニンで置換する場合、これと化学的に等価なアミノ酸であるセリンで同じ部位を置換できると考えられる。このように、本発明は、野生型TALアミノ酸配列(配列番号8)に以下のアミノ酸置換を含む変異型TALタンパク質を提供するものである。
Figure 2005533489
生成生物−微生物宿主:
本発明の生成生物には、pHCAの生成に必要な遺伝子を発現できる一切の生物を含む。一般に、生成生物は微生物と植物とに限定される。
本発明においてpHSを生成するのに有用な微生物としては、腸内細菌(エシェリキア(Escherichia)およびサルモネラ(Salmonella)など)ならびにバチルス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ストレプトマイセス(Streptomyces)などの放線菌(Actinomycetes)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、メチロジーナス(Methylosinus)などのメタノトローフ(Methanotrophs)、メチロモナス(Methylomonas)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomona)などの細菌、ロドバクター(Rhodobacter)およびシネコシスティス(Synechocystis)などのシアノバクテリア、サッカロミセス(Saccharomyces)、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ムコール(Mucor)、ピヒア(Pichia)、トルロプシス(Torulopsis)などの酵母、アスペルギルス(Aspergillus)およびアルトロボトリス(Arthrobotrys)などの糸状菌類、藻類などがあげられるが、これに限定されるものではない。本発明のpal、pal/tal、C4Hおよびpdc遺伝子を上記微生物の宿主ならびに他の微生物宿主にて産生させれば、商業的に有用な大量のpHSを生成することができる。
上述した微生物はいずれもpHSの産生において有用なものと思われるが、好ましいのはフェニルアラニンまたはチロシンを過剰産生する細菌の変異体株である。本発明は遺伝因子の少なくとも2通りの異なる組み合わせを用いてpHSを産生する方法を提供するものである。一例では、チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子とパラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子とを発現するように組換え宿主を構成することができる。この状況では、組換え宿主がチロシンを過発現すると好ましい。チロシン過剰産生株は周知であり、コリネバクテリア(Corynebacteria)、ブレビバクテリア(Brevibacteria)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、E.coli、アルトロバクター(Arthrobacter)、カンジダ(Candida)、シトロバクター(Citrobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、メチロモナス(Methylomonas)を含むがこれに限定されるものではない。特に有用なチロシン過剰産生株は、ミクロバクテリウムアンモニアフィルム(Microbacterium ammoniaphilum) ATCC 10155、コリネバクテリウムリリウム(Corynebactrium lillium) NRRL−B−2243、ブレビバクテリウムディバリカツム(Brevibacterium divaricatum) NRRL−B−2311、アルトロバクターシトレウス(Arthrobacter citreus) ATCC 11624およびメチロモナス(Methylomonas) SD−20を含むがこれに限定されるものではない。他にも好適なチロシン過剰産生体が当該技術分野において周知であり、たとえば、Microbial production of L−tyrosine: A Review、T.K.マイティ(Maiti)ら、ヒンドスタン抗生物質誌(Hindustan Antibiotic Bulletin)第37巻、51〜65、1995を参照のこと。
あるいは、組換え宿主が、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を、パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子との組み合わせで含むものであってもよい。この状況ではさらに、細胞は上述したようなケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼである(P−450/P−450レダクターゼ)系を有する遺伝子を何組か発現するものでなければならない。これらの補足的な遺伝子は宿主細胞に元々あるものであってもよいし、導入されたものであってもよい。いずれにしても、主な酵素がチロシンとの対比でフェニルアラニンに対する基質優位性を有する場合、宿主細胞がフェニルアラニン過剰産生体であると好ましい。フェニルアラニン過剰産生株は周知であり、E.coli、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、コリネバクテリア(Corynebacteria)、アルトロバクター(Arthrobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、ブレビバクテリア(Brevibacteria)を含むがこれに限定されるものではない。特に有用なフェニルアラニン過剰産生株としては、ミクロバクテリウムアンモニアフィルム(Microbacterium ammoniaphilum) ATCC 10155、コリネバクテリウムリリウム(Corynebactrium lillium) NRRL−B−2243、ブレビバクテリウムディバリカツム(Brevibacterium divaricatum) NRRL−B−2311、E.coli NST74、アルトロバクターシトレウス(Arthrobacter citreus) ATCC 11624を含むがこれに限定されるものではない。他にも好適なフェニルアラニン過剰産生株が周知であり、その概要が上掲のマイティ(Maiti)ら、Metabolic Engineering For Microbial Production Of Aromatic Amino Acids And Derived Compounds、J.ボンゲラテス(Bongaertes)ら、Metabolic Engineering第3巻、289〜300、2001に説明されている。
外来タンパク質の発現を高いレベルで指示する制御配列を含む微生物の発現系および発現ベクターが当業者間で周知である。このうちどれを使ってpHS生成用のキメラ遺伝子を構築しても構わない。これらのキメラ遺伝子を形質転換して適当な微生物に導入すれば、酵素を高いレベルで発現できるようになる。
好適な微生物宿主細胞の形質転換に役立つベクターまたはカセットは当該技術分野において周知である。一般に、このベクターまたはカセットには、関連遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、自己複製または染色体組み込みを可能にする配列が含まれる。好適なベクターは、転写開始制御部を含む遺伝子の5’の領域と転写終結を制御するDNA断片の3’の領域とを含んでなる。これは両方の制御領域が形質転換宿主細胞と相同遺伝子に由来するものである場合に最も好ましいが、このような制御領域が産生宿主として選択した特定の種に固有の遺伝子に由来するものでなくてもよいことは理解できよう。
所望の宿主細胞での関連遺伝子の発現を起こさせるのに役立つ開始制御領域またはプロモーターには多くのものがあり、当業者には馴染みのあるものである。これらの遺伝子を駆動できるほとんどすべてのプロモーターが本発明に適しており、その一例として、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス(Saccharomyces)での発現に有用)、AOX1(ピヒア(Pichia)での発現に有用)、lac、trp、lP、lP、T7、tac,およびtrc(エシェリキアコリ(Escherichia coli)での発現に有用)があげられるが、これに限定されるものではない。
終結制御領域も好ましい宿主に固有のさまざまな遺伝子から誘導することができる。場合により、終結部位が必要ないこともあるが、終結部位を含む形が最も好ましい。
pHSの量産が望まれる場合、さまざまな発酵法を適用することができる。たとえば、バッチ発酵法または連続発酵法のどちらでも大量産生することができる。
従来からのバッチ発酵は、培地の組成物を発酵開始時に仕込み、発酵の途中で人工的に変化させることのない閉じた系のひとつである。このため、発酵開始時に所望の微生物または複数の微生物を培地に播種し、系に何も加えずに発酵を引き起こさせる。しかしながら、一般に「バッチ」発酵での炭素源の濃度には限度があるため、pHおよび酸素濃度などの要因の制御が試みられることが多い。バッチ系では、発酵が停止するまで系の代謝物とバイオマス組成が絶えず変化する。バッチ培養では、細胞は動きのない誘導期から大きく成長する対数期へと移り、最後に静止期において成長率が低下または停止する。未処理の状態では、静止期の細胞は最終的には死んでしまう。最終生成物または中間体の大半が対数期の細胞によって作られるのが普通である。
標準的なバッチ系のバリエーションのひとつにFed−バッチ系がある。Fed−バッチ発酵プロセスも本発明において好適であり、発酵が進むにつれて基質を増やしながら加えること以外は一般的なバッチ系を含んでなる。Fed−バッチ系は、カタボライト抑制によって細胞の代謝が阻害されやすい場合や、培地に含まれる基質の量を制限するのが望ましい場合に有用なものである。Fed−バッチ系で実際の基質濃度を測定するのは困難であるため、pH、溶存酸素、COなどの廃ガスの分圧といった測定可能な要因の変化に基づいて濃度を推測する。バッチ発酵およびFed−バッチ発酵は、一般的かつ当該技術分野において周知であり、その一例が、本願明細書に援用するブラック(Brock),T.D.;Biotechnology: A Textbook of Industrial Microbiology、第2版;Sinauer Associates:マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland)、1989;またはデシュパンド(Deshpande),M.V.,Appl. Biochem. Biotechnol.36:227(1992)に記載されている。
連続発酵を用いてpHSを商業的に産生することもできる。連続発酵は、処理時に一定の発酵培地を連続してバイオリアクターに加えると同時に、これと同じ量の条件培地を除去する開いた系のひとつである。連続発酵では細胞が主に成長の対数期にある培養を一定の高い密度に維持するのが普通である。
連続発酵では、細胞の成長または最終生成物の濃度に影響する要因をいくつでも調整することができる。たとえば、ひとつの方法では、炭素源などの限られた栄養素または窒素濃度を一定率に維持し、他のすべてのパラメータを加減できるようにする。他の系では、培地の混濁度で測定される細胞濃度を一定に保ちながら、成長に影響する多数の要因を連続して変化させることができる。連続系は、定常状態の成長条件を維持することを目指すものであるため、発酵時における細胞の成長率と培地除去による細胞喪失とのバランスを保つようにしなければならない。連続発酵プロセスで栄養素と成長因子とを調節する方法ならびに、生成物の形成速度を最大限にするための手法は工業用微生物学の当該技術分野において周知であり、上掲のブラック(Brock)の著書においてさまざまな方法が詳細に説明されている。
組換え産生−植物:
植物および藻類には本発明によるpHSの産生に必要とされる酵素の多くが関与する完全かつ複雑なフェニルプロぺノイド経路があることが分かっている。本発明の核酸断片を利用して、pHSの産生に必要な遺伝子を発現する機能を持つトランスジェニック植物を作出することができる。好ましい植物宿主は、本件酵素の高い産生レベルの土台となるあらゆる種類の植物である。好適な緑色植物としては、ダイズ、ナタネ(ブラッシカナプス(Brassica napus)、ブラッシカカンペストリス(B.campestris)、ヒマワリ(ヘリアンサスアヌース(Helianthus annus)、ワタ(ゴシッピウムヒルスーツム(Gossypium hirsutum)、トウモロコシ、タバコ(ニコチアナタバカム(Nicotiana tabacum)、アルファルファ(メディカゴサティバ(Medicago sativa)、コムギ(トリチカムsp(Triticum sp)、オオムギ(ホルデウムウルガレ(Hordeum vulgare)、オートムギ(アベナサティバエル(Avena sativa,L)、モロコシ(ソルガムバイカラー(Sorghum bicolor)、コメ(オリザサティバ(Oryza sativa)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、ナタネ科の野菜類(ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、パースニップなど)、メロン、ニンジン、セロリ、パセリ、トマト、ジャガイモ、イチゴ、ピーナッツ、ブドウ、グラス・シード・クロップ(grass seed crop)、サトウダイコン、サトウキビ、マメ類、エンドウマメ、ライムギ、アマ、広葉樹、針葉樹、まぐさがあげられるが、これに限定されるものではない。藻類の種としては、スピルリナ属(Spirulina)、ヘマトコッカス(Haemotacoccus)およびドゥナリエラ(Dunalliela)などの商業上重要な宿主があげられるが、これに限定されるものではない。所望の組織において所望の発育段階で遺伝子の発現を指示できるプロモーターにコード領域が作動的に結合された本発明のキメラ遺伝子をまず作製することで、pHSを過産生させることができる。便宜上の理由で、キメラ遺伝子が同一の遺伝子に由来するプロモーター配列と翻訳リーダー配列を含んでなることがある。転写終結シグナルをコードする3’非コード配列もなければならない。さらに、本件キメラ遺伝子は、遺伝子発現を容易にするためにイントロンを1つまたはそれ以上含んでなるものであってもよい。
このキメラ遺伝子配列では、コード領域の発現を誘導できるどのようなプロモーターとターミネーターとをどのように組み合わせて用いてもよい。プロモーターおよびターミネーターのいくつかの好適な例として、ノパリン合成酵素(nos)遺伝子、オクトピン合成酵素(ocs)遺伝子、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)遺伝子から得られるものがあげられる。使用できる効率的な植物プロモーターのタイプのひとつに高等植物のプロモーターがある。このようなプロモーターは、本発明の遺伝子配列と作動的に結合された際に、本願遺伝子産物の発現を促進できるものでなければならない。本発明において使用できる高等植物のプロモーターとしては、ダイズからの例から得られるリブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(ss)のプロモーター(ベリー−ロウ(Berry−Lowe)ら、J. Molecular and App. Gen.1:483〜498、(1982))ならびにクロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーターがあげられる。これらの2種類のプロモーターは植物細胞において光誘導されることが知られている(たとえば、Genetic Engineering of Plants、an Agricultural Perspective、A.キャッシュモア(Cashmore)、プレナム(Plenum)、ニューヨーク(1983)、第29〜38ページ、コルッチ(Coruzzi),G.ら、The Journal of Biological Chemistry、258:1399(1983)、ダンスミア(Dunsmuir),P.ら、Journal of Molecular and Applied Genetics、2:285(1983)を参照のこと)。
このようにして、本件キメラ遺伝子を含むプラスミドベクターを作製することができる。どのプラスミドベクターを選択するかは、宿主植物の形質転換に使用する方法によって決まる。当業者であれば、キメラ遺伝子を含む宿主細胞を形質転換し、選択し、増殖させる過程を成功させるにはプラスミドベクターにどのような遺伝因子を存在させておく必要があるか分かるであろう。また、当業者であれば、互いに独立した異なる形質転換イベントでは得られる発現のレベルやパターンが異なる(ジョーンズ(Jones)ら、EMBO J.4:2411〜2418(1985)、デ・アルメイダ(De Almeida)ら、Mol.Gen.Genetics 218:78〜86(1989))ため、所望の発現レベルとパターンとを呈する株を得るには複数のイベントをスクリーニングしなければならないことも理解できよう。このようなスクリーニングについては、DNAブロットのサザン分析(サザン(Southern)、J. Mol. Biol.98:503(1975))、mRNA発現のノーザン分析(クロックツェック(Kroczek)、J. Chromatogr. Biomed. Appl.,618(1〜2):133〜145(1993))、タンパク質発現のウェスタン分析または表現型の分析によって行うことができる。
細胞内または細胞外でのpHS蓄積濃度を高めることにつながるpHS産生用の酵素経路のさまざまな要素の変異体を作製できるだろうと考えられる。天然遺伝子の配列を突然変異させ、活性を変化または亢進させた遺伝子産物を生成する方法にはさまざまなものが周知であり、その一例として、error prone PCR(メルニコフ(Melnikov)ら、Nucleic Acids Research、(1999年2月15日)第27巻、No.4、第1056〜1062ページ)、部位特異的突然変異誘発(クームス(Coombs)ら、Proteins(1998)、259〜311、1プレート、編集者(ら):アンゲレッチ(Angeletti)、ルースオーグ(Ruth Hogue)。出版社:カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)、アカデミック(Academic))、「遺伝子シャッフリング」(本願明細書に援用する、米国特許第5,605,793号明細書、同第5,811,238号明細書、同第5,830,721号明細書、同第5,837,458号明細書)があげられるが、これに限定されるものではない。
好ましい実施形態の記述:
本発明において定義する産生方法は、単一の宿主生物にpal/tal遺伝子およびpdc遺伝子を導入し、グルコースなどの再生可能な資源をpHSに変換する。
パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ(pdc)をコードする有効な遺伝子を同定するために、さまざまな微生物由来の細胞抽出液をスクリーニングした。ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)(ATCC#14917)でPDCの濃度が高いことが観察されたため、この株を以後の研究用として選択した。さらに、さまざまな微生物について、これらの生物が高めのレベルでPDC酵素を発現しているであろうという前提で、pHCAをpHSに変換する機能を調べた。バチルスサブチリス(Bacillus subtilis)(ATCC#6633)でpHCAからpHSへの変換率が高いことが観察されたため、この株を以後の研究用として選択した。ラクトバチルス(Lactobacillus)パラ−クマル酸デカルボキシラーゼ(ジェンバンク登録番号U63827)の既知の配列から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、2つのpdc遺伝子を単離し、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来のpdc1およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)由来のpdc2とした。これらの遺伝子pdc1およびpdc2を単離し、ロドトルラ(Rhodotorula)フェニルアラニンアンモニウムリアーゼをコードする非相同遺伝子を有するフェニルアラニン過剰産生株にクローニングした。さまざまな発酵性炭素基質で細胞を成長させると、良好な収率でpHSの産生が観察された。
以下の実施例において本発明をさらに定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、例示目的であげたものにすぎない点を理解されたい。当業者であれば、上記の説明および以下の実施例から本発明に不可欠な特徴を把握することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明にさまざまな変更および改変を施してこれをさまざまな用途および条件に合わせることができる。
PCR増幅、DNAをクローニングするのに望ましい末端を生成するためのエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼによるDNAの修飾、ライゲーションおよびバクテリア形質転換に必要な手順が当該技術分野において周知である。本願明細書で使用する標準的な分子クローニング手法は当該技術分野において周知であり、サムブルック(Sambrook),J.,フリッチ(Fritsch),E.F.およびマニアティス(Maniatis),T.によるMolecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版;コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory):ニューヨーク州コールドスプリング(Cold Spring)、1989(以下「マニアティス」)ならびにシルハビー(Silhavy),T.J.,ベンナン(Bennan),M.L.およびエンキスト(Enquist),L.W.によるExperiments with Gene Fusions;コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory):ニューヨーク州コールドスプリング(Cold Spring)、1984、さらにはオースベル(Ausubel)らによるCurrent Protocols in Molecular Biology;グリーンパブリッシングアソシエーツアンドウィレイ−インターサイエンス(Greene Publishing and Wiley−Interscience);1987に記載されている。
細菌培養の管理と成長に適した材料および方法が当該技術分野において周知である。以下の実施例において使用するのに適した手法が、Manual of Methods for General Bacteriology;フィリップゲアハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マレー(Murray)、ラルフ(Ralph) N.コスティロー(Costilow)、ユージーン(Eugene) W.ネスター(Nester)、ウィリス(Willis) A.ウッド(Wood)、ノエル(Noel) R.クリーグ(Krieg)およびG.ブリッグズフィリップス(Briggs Phillips)編、米国微生物学会(American Society for Microbiology)、ワシントン(Washington),DC.,1994)またはT.D.ブラック(Brock)著、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版、シナウアーアソシエーツインコーポレイテッド(Sinauer Associates,Inc.)、マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland)(1989)に記載されている。特に明記しない限り、細菌細胞の成長および管理に用いる試薬、制限酵素、材料はいずれも、アルドリッチケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、DIFCO ラボラトリーズ(Laboratories)(ミシガン州デトロイト(Detroit)、ギブコ/BRL(メリーランド州ゲイザースバーグ(Gaithersburg)またはシグマケミカルカンパニー(Sigma Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis)から入手したものである。
PCR反応については、GeneAMP PCR System 9700においてAmplitaqまたはAmplitaq Gold酵素(カリフォルニア州フォスターシティ(Foster City)のPE Applied Biosystems)を用いて実施した。サイクリング条件および反応については製造業者の指示に従って標準化した。
略号の意味は以下のとおりである。「sec」は秒(単数または複数)を意味し、「min」は分(単数または複数)を意味し、「h」は時間(単数または複数)を意味し、「d」は日数(単数または複数)を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモル(単数または複数)を意味し、「μモル」はマイクロモルを意味し」、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」はユニットを意味し、「mU」はミリユニットを意味し、「rpm」は1分あたりの回転数を意味し、「OD」は光学密度を意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを意味し、「IPTG」はイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドを意味し、「X−gal」は5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドを意味し、「g」は引力定数を意味する。
基本方法:
HPLC分析用試料の調製:
細胞全体によって形成されたケイ皮酸、pHCA、pHS、フェニルアラニンおよびチロシンの濃度を測定するためのHPLCアッセイを開発した。一般的なアッセイでは、選択した培地で成長した培養を遠心処理した後、上清200〜1000μLをリン酸で酸性化し、0.2または0.45ミクロンのフィルタを通して濾過し、HPLCで分析して成長培地中のpHS、pHCA、ケイ皮酸、フェニルアラニンおよびチロシンの濃度を求めた。
HPLC法:
オートサンプラーとダイオードアレイUV/Vis検出器とを備えたヒューレットパッカード製の1090L HPLC系を、MAC−MOD アナリティカルインコーポレイテッド(Analytical Inc.)(ペンシルバニア州チャッドフォード(Chadds Ford)から提供された逆相Zorbax SB−C8カラム(4.6mm×250mm)で用いた。アッセイではカラム温度40℃で1分あたりの流量を1.0mLとした。250、230、270、290および310nmの波長で溶出液をモニタリングできるようにUV検出器を設定した。HPLC分析で用いた条件を表1にまとめておく。また、表1に示す条件での分析の対象とする代謝物の保持時間を表2にあげておく。
Figure 2005533489
Figure 2005533489
実施例1
無細胞抽出物中でのPDC活性のスクリーニング
この実施例の目的は、多数の細菌株ならびに酵母株のPDC酵素活性、細胞成長、pHCA誘導をスクリーニングすることにある。
バチルスサブチリス(Bacillus subtilis)(ATCC#6633)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(ATCC#11156)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(ATCC#17559)、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)A型(ATCC#17453)の株をグリセロールストックからLBプレートに画線した。ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)(ATCC#14917)とロドトルラルブラ(Rhodotorula rubra)(ATCC#889)とを栄養寒天プレートに画線した。これらの株をすべて37℃または30℃のいずれかで成長させた。続いてシングルコロニーを選択し、250mL容の滅菌フラスコに入れたLB、MRS(ディフコ(Difco)または2xYTのいずれかの液体培地50mL中に移した。これらの細胞を振盪機にて250rpmで37℃または30℃で一晩成長させた。各株のアリコート5.0mLを新鮮な培地45mLの入った250mL容のフラスコ2つに移した。枯草菌(B.subtilis)、蛍光菌(P.fluorescens)、出芽酵母(S.cerevisiae)(ATCC#2034)またはロドトルラルブラ(Rhodotorula rubra)(ATCC#889)を含む一方のフラスコに、pHCAを最終濃度が1.2mMになるようにして加えた。これらの細胞を飽和するまで成長させた後、遠心処理によって収集した。乳酸菌(L.plantarum)株を含む一方のフラスコに、培養が対数増殖期中期に達した後にpHCAを最終濃度が1.2mMになるように加え、1.0時間後に細胞を収集した。
無細胞抽出物の調製:
これらの細胞を洗浄した後、ロイペプチン、ペプスタチンA、E−64(プロテアーゼインヒビタ、ロシェモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)、インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis)1.0μg/mLと、ベスタチン40μg/mLと、EDTA1.0mMと、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸(アルドリッチ(Aldrich)から入手したAEBSF)0.1mg/mLとを含有するpH6.0の25mMリン酸緩衝液に再懸濁させた。次に18,000psiに設定したフレンチプレス(French Pressure Cell)に細胞を2回通した。遠心処理によって細胞片を除去し、得られた上清を酵素アッセイ用の無細胞抽出物として利用した。
PDC酵素アッセイ:
プラスチック製のUV透過性キュベットにてpH6.0の25mMリン酸緩衝液と0.2mM pHCAとを含む溶液1.0mLに酵素1.0μLを加えることで反応を開始させた。この反応を、pHCA消失のモル吸光係数を6000cm−1に設定して室温で315nmにて分光光度的に5分間続けた。比活性をタンパク質1ミリグラムにつき1分あたりに分解されたpHCAのマイクロモル量で表す。
タンパク質アッセイ:
タンパク質アッセイキット(バイオ−ラドラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories)、カリフォルニア州ヘクレス(Hecules)を用いてウシ血清アルブミンを標準とし、製造業者のプロトコールに従って総タンパク質濃度を求めた。
結果:
表3のデータから明らかなように、枯草菌(B.subtilis)、乳酸菌(L.plantarum)、蛍光菌(P.fluorescens)のPDC比活性がpHCAでの誘導時に増加した。乳酸菌(L.plantarum)では、PDC活性はpHCAの添加によってタンパク質0から1.7U/mgまで増大した。
Figure 2005533489
細菌および酵母によるpHCAからpHSへの生物変換:
細菌である乳酸菌(L.plantarum)と枯草菌(B.subtilis)ならびに、酵母であるサッカロミセスセレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)およびロドトルラルブラ(Rhodotorula rubra)(ATCC#889)を、1.0mM pHCAを含有するLB培地または2xYT培地のいずれかにて、30℃で一晩成長させた。18時間後、培地の試料を上述したようにしてHPLC分析用に採取した。表4に示した結果から明らかなように、被験細菌株では酵母株よりもPDC活性が10から20倍高かった。したがって、乳酸菌(L.plantarum)と枯草菌(B.subtilis)のpdc遺伝子を以後の代謝工学に向けた宿主株からのクローニング用に選択した。
Figure 2005533489
実施例2
ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)由来のPDC酵素(Enzme)の特性
この実施例の目的は、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)からのPDC酵素をE.coliで過発現させ、これらの酵素を精製してさらにキャラクタリゼーションできるようにすることにある。
ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)由来のpdc遺伝子のクローニング:
乳酸菌(L.plantarum)と枯草菌(B.subtilis)とをテンプレートとして利用し、ゲノムDNAを用いて配列番号3および配列番号5のpdc遺伝子をPCRで増幅した。このゲノムDNAについては、DNeasy(登録商標)キット(キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア(Valencia)を使用して、MRS培地で成長させた乳酸菌(L.plantarum)と、LB培地で成長させた枯草菌(B.subtilis)とから単離した。乳酸菌(L.plantarum)由来のパラ−クマル酸デカルボキシラーゼ(ジェンバンク登録番号U63827)すなわち配列番号3のpdc1遺伝子用としたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号9で示す5’−GGTAATTCATATGACAAA−3’ならびに配列番号10で示す5’−TCACGTGAAACATTACTTATT−3’であり、これにはNdeI部位(下線で示したヌクレオチド)が含まれていた。フェノール酸デカルボキシラーゼ(ジェンバンク登録番号AF−17117)すなわち配列番号5の枯草菌(B.subtilis) pdc2用としたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号11で示す5’−GTGTGTCATATGGAAAACT−3’ならびに配列番号12で示す5’−TCGCGGGAATTGTGATGGT−3’であり、これにもNdeI部位(下線で示したヌクレオチド)が含まれていた。キアゲン(Qiagen)PCRクリーンアップキット(Clean Up Kit)を利用してpdc1遺伝子とpdc2遺伝子の両方について推定550bpのDNA断片を精製し、インビトロゲン(Invitrogen)のTAクローニング(TA Cloning)(登録商標)キットを用いてpCRII−TOPOクローニングベクターにライゲートした。ワンショット(One Shot)(登録商標)ケミカリーコンポーネント(Chemically Competent)E.coli(インビトロゲン(Invitrogen)を、SOCに代えて2xYT培地を用いたこと以外は製造業者の指示どおりに利用して形質転換を行った。X−galおよびIPTGを含む50μg/mLアンピシリンプレートに上記の形質転換細胞を延展した。これらのプレート各々から、白色のコロニー10個を選択し、アンピシリンプレートに再画線した。pdc1で形質転換した細胞とpdc2遺伝子で形質転換した細胞とを用いて以下の手順を実施した。
これらのコロニーを各々、アンピシリン50μg/mLを含有するLB培地で一晩成長させた。キアゲン(Qiagen)ミニプレップキット(Miniprep Kit)を用いてプラスミドを細胞から精製した。インサートの有無を調べるために、このプラスミドを37℃で1時間かけてEcoRIで消化した。消化産物をキロベースマーカーと共に1%アガロースゲルに仕込み、電気泳動を実施した。得られたゲルでは、一方はインサートに対応する約550bp、もう一方はベクターに対応する3.9kbpの2つのバンドが観察された。
上記のミニプレップのうち1つで得られたベクターを含む細胞を、アンピシリン50μg/mLを含有する培養液50mL中で一晩成長させた。キアゲン(Qiagen)ミディプレップキアフィルタ(Midiprep QIAfilter)を用いて製造業者の指示に従い、ベクターをこれらの細胞から精製した。ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)pdc遺伝子から得られたプラスミドをpDC1、バチルスサブチリス(Bacillus subtilis)pdc遺伝子から得られたプラスミドをpDC2とした。ベクターにM13フォワードプライマーとリバースプライマーとを利用して、デュポンのシーケンシング機関(DuPont Sequencing Facility)において上記のインサートをシーケンシングし、配列を確認した。ベクターNTI(インフォーマックス社(InforMax,Inc.、メリーランド州フレデリック(Frederick)))ソフトウェアを利用して、これらの配列のコンピュータ分析を行った。
プラスミドpDC1を37℃にて4時間かけてNdeIおよびEcoRIで消化した。プラスミドpDC2を37℃にて4時間かけてNdeIおよびNotIで消化した。消化産物をキロベースマーカーと共に1%アガロースゲルに仕込み、電気泳動を実施した。pDC1の消化産物ではインサートに対応する555bpのバンドとベクターに対応する3.9kbpのバンドが観察された。pDC2の消化産物ではインサートに対応する583bpのバンドとベクターに対応する3.9kbpのバンドが観察された。インサートのバンドをゲルから切り出し、キアゲン(Qiagen)ゲル抽出キット(Gel Extraction Kit)を用いて製造業者のプロトコールに沿って精製した。ノバジェン社(Novagen,Inc.)(ウィスコンシン州マディソン(Madison)から得られるpET−17bベクターを上述したようにして消化し、1%アガロースゲルで泳動させた。切断ベクターに対応する3.3kbpのベクターバンドをゲルから切り出し、キアゲン(Qiagen) ゲル抽出キット(Gel Extraction Kit)を用いて製造業者のプロトコールに沿って精製した。
T4 DNAリガーゼを用いてpDC1インサートと切断ベクターとをライゲートした。同様に、pDC2と切断ベクターとをライゲートした。この反応物を室温にて1時間インキュベートした。各反応で得られたアリコートを用いて、ノバジェン(Novagen,Inc.)から入手したB834(DE3)pLysS コンピテント細胞を、製造業者の指示に従って形質転換した。この形質転換細胞にSOC培地を加え、37℃で1時間成長させた。これらの培養物のアリコートを、アンピシリン50μg/mLを含有するLBプレートに蒔き、37℃で一晩成長させた。これらのプレートで得られるコロニーを新鮮なプレートに再画線した後、アンピシリン100μg/mLを含有するLB培地で一晩成長させた。pDC1含有細胞の場合、キアゲン(Qiagen)ミニプレップキット(Miniprep Kit)を用いてプラスミドを単離した後、NdeIおよびNotIで2時間かけて消化した。消化産物をキロベースマーカーと共に1%アガロースゲルで泳動させた。1つを除くすべてのクローンにインサートが含まれることが分かった。インサートを含むクローンのうちの1つを発現研究用に選択した。pDC2含有細胞の場合、アンピシリン100μg/mLを含有するLB培地で成長させた培養物の試料をおよそ10分間ボイルした後、5分間遠心処理した。これらの試料のアリコートをPCRチューブに移し、上述したようにしてPCRを実施した。PCR反応混合物のアリコートをキロベースマーカーと共に1%アガロースゲルで泳動させた。クローンのうちの1つにインサートが含まれることが明らかになった。このクローンを発現研究用に利用した。
選択したクローンを、アンピシリン100μg/mLを含有するLB培地で成長させた。pDC2含有クローンの場合、培地にはクロラムフェニコール34μg/mLも含有させた。これらの培養をスターター培養とした。これらのスターター培養を新鮮な培地への播種に利用し、600nmで測定したODが0.5から1.0になるまで細胞を37℃で成長させた。続いてpDC1含有細胞培養の一方とpDC2含有細胞培養の一方に最終濃度が1mMになるようにIPTGを加えた。これらの培養を37℃で4時間かけて成長させた。続いて、細胞を遠心処理によって収集し、−80℃で凍結させた。以後の研究では、細胞を解凍した上で、ロイペプチン、ペプスタチンA、E−64を各々1μg/mLと、ベスタチン40μg/mL、1mM EDTA、AEBSF 0.1mg/mL、少量のDNaseを含有する25mMリン酸緩衝液(pH6.0)1mLに再懸濁させた。pLysが存在することから細胞は自然に溶解し、得られる懸濁液を10分間遠心処理した。細胞抽出液のタンパク質濃度とPDC活性とを実施例1で説明したようにして測定した。pDC1とpDC2で形質転換した細胞ではどちらも、誘導細胞の方が予測した分子量のタンパク質を多く産生し、酵素の比活性も誘導なしで産生した場合よりも高かった。これらの結果から、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)由来のpdc遺伝子をうまくクローニングしE.coliで発現させられたことが分かる。
E.coliからの組換えタンパク質精製:
上述したpDC1およびpDC2形質転換E.coli細胞各々のシングルコロニーを採取し、アンピシリン100μg/mLを含有するLB培地10mLへの播種に利用した。この細胞を250rpmの振盪機にて37℃で一晩成長させた。翌日、この培養をアンピシリン100μg/mLを含有するLB培地への播種に利用した。この培養を250rpmの振盪機にて37℃で4時間かけてインキュベートした。培養のODが600nmで0.6に達したら、1mM IPTGを加えた。この培養を250rpmの振盪機にて37℃で4時間インキュベートした後、16,000×gでの遠心処理によって20分かけて細胞を収集した。これらの細胞をLB培地に再懸濁させ、再度9,000×gで遠心処理した。細胞を25mMリン酸緩衝液(pH6.0)に再懸濁させ、フレンチプレス(French Press)に最高圧力で2回通した。14,000rpmで30分間の遠心処理によって細胞片を除去した。得られた上清を無細胞抽出物として利用した。
後述するように硫酸アンモニウムを加えて無細胞抽出物を分画した。後述するように、比活性の最も高い50%画分を、HQカラムを用いるアニオン交換クロマトグラフでの精製に利用し、続いてPEカラムを用いる疎水性相互作用クロマトグラフィに利用した。
硫酸アンモニウム沈殿:
15分間の過程で最終濃度が30%、40%、50%になるように、無細胞抽出物約2.0mLに飽和(NHSOを加えた。試料を氷上でさらに15分間攪拌した後、ベンチトップ遠心処理装置において最大速度(14,000rpm)で4℃にて15分間遠心処理した。上清を次の抽出ステップ用に保管した。ペレットをpH6.0の25mMリン酸緩衝液200μLに再懸濁させた。すべての画分のPDC活性を試験した。比活性の最も高い画分(50%上清)を25mMリン酸緩衝液1.0Lに対して2時間かけて透析した。
HQカラムでのアニオン交換クロマトグラフィ:
1.6mLポロス(Poros)(登録商標)灌流カラム(ロシェアプライドサイエンス(Roche Applied Science)、インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis)を5×カラム容量に合わせてpH6.0の25mMリン酸緩衝液中で平衡化した後、透析後の50%上清1.0mLを適用した。リン酸緩衝液での洗浄後、20×カラム容量で0.0から500mM KClまで、KCl塩勾配でカラムを溶出させた。画分(0.8mL)を回収し、PDC活性を持つ画分をプールし、次のステップに利用した。
PEカラムでの疎水性相互作用クロマトグラフィ:
100%飽和硫酸アンモニウム2.0mLを加えることで、アニオン交換クロマトグラフィステップでプールした画分2ミリリットルを50%(NHSO飽和させた。1.0M NaOHを20μL加え、pHが6.8になるように調節した。得られた混合物を、pH6.8の25mMリン酸塩中で50%硫酸アンモニウムで平衡化した1.6mLポロス(Poros)(登録商標)PEカラムに適用した。PDCをステップ勾配(50%−30%−20%)で溶出させたところ、主な活性は50%と30%との間で溶出された。活性の高い画分をプールし、試験した。各精製ステップではSDS−PAGEを利用した。
PAGE分析:
低分子量マーカー(14.4から9.4kDa、アマシャムファルマシアバイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)を用いる変性SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)(12.5%分解ゲル)によって、PDC活性のあるタンパク質抽出物を分離した。
乳酸菌(L.plantarum)および枯草菌(B.subtilis)由来のPDC酵素のキャラクタリゼーション:
乳酸菌(L.plantarum)および枯草菌(B.subtilis)から単離したPDC酵素の特性を標準的な分光測定・電気泳動手法で求めた。これを表5にあげておく。
Figure 2005533489
実施例3
E.coliでのpdc遺伝子の機能的発現
バージニア州マナッサス(Manassas)の米国菌株保存機関(ATCC)から株ATCC No.31884として入手可能なフェニルアラニン過剰産生株E.coli NST74を、乳酸菌(L.plantarum)(pdc1)または枯草菌(B.subtilis)(pdc2)由来のpdc遺伝子で形質転換した場合のパラ−ヒドロキシスチレン(pHS)産生能について試験した。pHSは、パラ−ヒドキシ(hydoxy)ケイ皮酸デカルボキシラーゼ(PDC)によって触媒される一ステップ酵素反応によってパラ−ヒドロキシケイ皮酸(pHCA)から産生可能である。これら2つのpdc遺伝子すなわち、配列番号5で示すL.plantarum由来のpdc1と配列番号7で示すB.subtilis由来のpdc2とをE.coli NST74で機能的に発現させた。後述するようにエレクトロポレーションによって形質転換を行った。
ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)およびバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)由来のpdc遺伝子のクローニング:
乳酸菌(L.plantarum)と枯草菌(B.subtilis)とをテンプレートとして利用し、ゲノムDNAを用いて配列番号3および配列番号5のpdc遺伝子をPCRで増幅した。このゲノムDNAについては、DNeasy(登録商標)キット(キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア(Valencia)を使用して、MRS培地で成長させた乳酸菌(L.plantarum)と、LB培地で成長させた枯草菌(B.subtilis)とから単離した。乳酸菌(L.plantarum)由来のパラ−クマル酸デカルボキシラーゼ(ジェンバンク登録番号U63827)すなわち配列番号3のpdc1遺伝子用としたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号9で示す5’−GGTAATTCATATGACAAA−3’ならびに配列番号10で示す5’−TCACGTGAAACATTACTTATT−3’であり、これにはNdeI部位(下線で示したヌクレオチド)が含まれていた。フェノール酸デカルボキシラーゼ(ジェンバンク登録番号AF−17117)すなわち配列番号5の枯草菌(B.subtilis) pdc2用としたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号11で示す5’−GTGTGTCATATGGAAAACT−3’ならびに配列番号12で示す5’−TCGCGGGAATTGTGATGGT−3’であり、これにもNdeI部位(下線で示したヌクレオチド)が含まれていた。キアゲン(Qiagen)PCRクリーンアップキット(Clean Up Kit)を利用してpdc1遺伝子とpdc2遺伝子の両方について推定550bpのDNA断片を精製し、インビトロゲン(Invitrogen)のTAクローニング(TA Cloning)(登録商標)キットを用いてpCRII−TOPOクローニングベクターにライゲートした。続いて、これらのプラスミドをBamHIとXbaIで消化し、pdc遺伝子を含む断片を、あらかじめBamHIとXbaIで消化しておいたpKSM715(ATCCから入手)にライゲートし、それぞれpKSM−pdc1およびpKSM−pdc2を形成した。
エレクトロコンピテントE.coli細胞の調製:
フェニルアラニン過剰産生E.coli株NST74のグリセロールストックの試料を抗生物質なしでアガロースプレートに延展し、37℃で一晩インキュベートした。シングルコロニーを採取し、LB培地4.0mLに播種し、37℃で一晩成長させた。LB培地1リットルに1/100容量の新鮮な一晩培養を播種した。強く振盪しながらODが600nmで約0.5から0.7になるまで細胞を37℃で成長させた。これらの細胞を、冷却ローターにて冷却遠心分離ボトルで4000×gで15分間遠心処理した。上清を破棄し、全部で1.0Lの氷冷10%グリセロールに細胞ペレットを静かに再懸濁させた。細胞を上述したようにして遠心処理した後、氷冷10%グリセロール0.5Lに再懸濁させた。上記の手順を繰り返して細胞を得て、これを氷冷10%グリセロール250mLに再懸濁させ、再度洗浄した。最終洗浄で得られた細胞ペレットを最終容量が3.0〜4.0mLになるように氷冷10%グリセロールに再懸濁させた。細胞懸濁液のアリコートをドライアイスで凍結させ、−80℃で保管した。
形質転換および選択の手順:
上述したエレクトロコンピテントE.coli細胞を氷上で解凍し、この細胞を入れたチューブにプラスミドDNA(上述したプラスミドpKSM−pdc1またはpKSM−pdc2のものを50ng以内)を加えた。次に、このDNA/細胞懸濁液をあらかじめ冷却したエレクトロポレーション(electorporation)キュベット(0.1cm、バイオ−ラド(Bio−Rad)、カリフォルニア州ヘラクレス(Hercules)に移し、キュベットを氷上に保持した。ジーンパルサー(Gene Pulser)(バイオ−ラド(Bio−Rad)(25μF、200オーム)で18kV/cmで各試料に電気パルスを加えた。パルス印加後すみやかに各キュベットにSOC培地(1.0mL)を加えた。この細胞混合物をチューブに移し、振盪機に放置した(37℃で1.0時間、220rpmで振盪)。各形質転換反応の試料(100μL)をピペットで別のLBプレートに移し、37℃で一晩インキュベートした。LBプレートにはアンピシリン100μg/mLまたはカナマイシン50μg/mLのいずれかを入れておいた。
組換えE.coliによるパラ−ヒドロキシスチレン生合成:
pHCAからpHSへの生物変換のために、まず最初にpdc1遺伝子またはpdc2遺伝子を含む組換えE.coli株の細胞を、グリセロールストックから適切な抗生物質を含むLB寒天プレートに画線した。シングルコロニーを選択し、抗生物質を含むLB培地で種培養として一晩成長させた。この種培養をLB培地に播種した(600nmでのOD約0.5)。この培養を、1.0mM pHCAの存在下、1.0mM IPTGで誘導した。誘導細胞を1.0mM pHCAと共に60時間放置すると、形成されるpHSが上述したHPLC法で検出できるようになった。表6のデータから明らかなように、pdc1形質転換体では0.60mMのpHSが生成されたが、これはpdc2形質転換体で生成されたpHSの量(0.52mM)よりもわずかに多かった。表6のデータは、代表的な1つの実験を3回実施して平均で表したものである。これらのin vivoでの結果から、pHCAを基質としたときにバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)由来の酵素(pdc2)よりも乳酸菌(L.plantarum)由来のPDC酵素(pdc1)の方がわずかに活性が高いことが分かる。
Figure 2005533489
実施例4
フェニルアラニン過剰産生E.coli株でのpdc1およびpalの同時発現
赤色酵母(R.glutinis)由来のpal遺伝子(配列番号1)でpdc1遺伝子をE.coli NST74に同時形質転換した。
ロドトルラグルチニス(Rhodotorula glutinis)からのpal遺伝子のクローニング:
ロドトルラグルチニス(Rhodotorula glutinis)(ATCC No.10788)pal遺伝子すなわち配列番号1(ジェンバンク登録番号M18261)を、フェニルアラニン含有複合培地で成長させた対数期細胞から精製した逆転写RNAから増幅した。ロドトルラグルチニス(Rhodotorula glutinis)としても知られるロドスポリジウムトルロイデス(Rhodosporidium toruloides)を含むさまざまなソースから得たpalの遺伝子配列がすでに得られており、刊行物に記載されている(エドワーズ(Edwards)ら、Proc. Natl. Acad. Sci.,USA 82:6731〜6735(1985)、クレーマー(Cramer)ら、Plant Mol. Biol. 12:367〜383(1989)、ロイス(Loisら)、EMBO J. 8:1641〜1648(1989)、ミナミ(Minami)ら、Eur. J. Biochem. 185:19〜25(1989)、アンソン(Anson)ら、Gene 58:189〜199(1987)、ラスムッセン(Rasmussen)&エルム(Oerum)、DNA Sequence、1:207〜211(1991))。
ロドトルラグルチニス(Rhodotorula glutinis)のmRNAを、パーキンエルマー(Perkin Elmer)(コネチカット州ノーウィッチ(Norwich)ジーンアンプキット(GeneAmp Kit)の指示に従って、ジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水を使用せずに逆転写した。プライマーにはキットに付属のランダムヘキサマーを用いた。pal遺伝子の増幅に使用したプライマーには、EcoRI制限部位を含む上流側プライマー5’−ATAGTAGAATTCATGGCACCCTCGCTCGACTCGA−3’(配列番号7)と、ロドスポリジウムトルロイデス(Rhodosporidium toruloides)のpal遺伝子に基づいて合成したPstI制限部位を含む下流側PCRプライマー5’−GAGAGACTGCAGAGAGGCAGCCAAGAACG−3’(配列番号8)とが含まれていた。PCR断片をEcoRIおよびPstIで消化し、あらかじめEcoRIおよびPstIで切断しておいたpKK223−3にライゲートしてpCA16を形成した。
E.coli NST74でのpdc1およびpalの同時発現:
palの発現にpCA16、pdc1の発現でpKSM−pdc1またはpdc2の発現ではpKSM−pdc2を使用して、E.coli NST74細胞を実施例3にて説明した手順で形質転換した。
pal遺伝子とpdc遺伝子の両方を含むこれらの形質転換細胞を、アンピシリン100μg/mLおよびカナマイシン50μg/mLの両方を用いて選択し、最小培地にてpHCAを添加せずに上述したように培養した。IPTG誘導の2、4、6、8、24、48、60時間後に培養の試料を採取し、上述したようにHPLCで分析した。表7の結果から明らかなように、これらのpal/pdc形質転換体は、グルコースを用いてLB培地またはM9培地のいずれかにおいて60時間成長させると、pHCA、ケイ皮酸塩、pHSを産生した。
Figure 2005533489
pHSを産生するために、適切な抗生物質を用いてLB寒天プレートで形質転換体を選択し、LB培地またはM9培地のいずれかで60時間成長させた。これらの培養でのフェニルアラニンおよびチロシンの濃度を上述したHPLC法で測定した。結果を表8に示す。培養中のフェニルアラニン濃度はpal/pdc1形質転換体およびpal/pdc2形質転換体のどちらでも対照の場合に近かったが、pal/pdc1培養中のチロシン濃度はpal/pdc2培養中の場合よりもかなり低かった。pal/pdc1形質転換体培養の方がチロシンが少ないことから、PDC1酵素の比活性が高いことが分かる。
Figure 2005533489
実施例5
pal/pdc1形質転換体によるpHS産生の最適化
pHS産生に対してpal/pdc1形質転換体が高めの活性を示したため、これを以後の研究用に選択した。これらの形質転換体をグルコースを用いてM9培地で成長させ、IPTGでの誘導の6時間後と60時間後に、上述したHPLC法を用いてpHCA、pHS、CAのレベルを求めた。表9に示す結果から明らかなように、6時間の時点では少量のpHCAしか観察されなかったのに対し、60時間でpHCAは全く観察されなかった。ケイ皮酸塩(CA)の濃度が60時間後に約0.1mMから約0.25mMまで上昇したことから、形成されるケイ皮酸塩の大半が培養中に残っているという事実が立証されることとなった。60時間の培養にはpHCAは観察されなかったが、pHSの濃度は6時間の試料での約0.05mMから60時間後の約0.30mMまで上昇した。
Figure 2005533489
6時間後と60時間後にHPLCを利用して上記の培養中のフェニルアラニンとチロシンの濃度を測定し、6時間後に測定した濃度を表10にあげておく。対照培養には成長6.0時間後に約0.3mMのフェニルアラニンと0.03mMのチロシンとが含まれていた。pal/pdc1形質転換体培養の分析ではフェニルアラニンの存在は示されなかったが、極めて少量のチロシンが観察された。60時間の試料を分析したところ、pal/pdc1形質転換体培養に約0.3mMのフェニルアラニンが存在することが明らかになったが、チロシンは検出できなかった(表11)。
Figure 2005533489
Figure 2005533489
上記にて概説した実験は、酵母由来のpalとグルコースからpHSへの変換用のフェニルアラニン過剰産生E.coli株におけるラクトバチルス(Lactobacillus)およびバチルス(Bacillus)種由来のpdc遺伝子との同時発現が成功する最初の例を構成するものである。また、本願発明者らの結果から、成長速度と開発された生物の遺伝子発現とに関するなお一層詳細な研究が必要であることも分かる。特に重要なのは培養で形成されるpHSが宿主生物のさまざまな酵素活性に対しておよぼす毒性である。
実施例6
グルコースからpHSへの変換用のpal遺伝子とpdc遺伝子の両方を含む組換えE.coli NST74株での成長速度の研究
実施例4で説明したように、pCA16およびpKSM−pdc1での形質転換ならびにアンピシリンおよびカナマイシン耐性に基づく選択によって、E.coliフェニルアラニン過剰産生株E.coli NST74から2つの株(WWQ51.1およびWSQ1で示す)を作出した。予備実験ではどちらの構築物でも同様のパターンが示されていたことから、本願発明者らは株WWQ51.1を以後の研究用に選択した。
野生型pal/tal遺伝子(PAL/TAL比2.0)を含むE.coli株は、PAL経路とTAL経路の両方を使ってグルコースをCAおよびpHCAの両方に変換する。また、本願発明者らがPAL/TAL酵素を用いて過去に行った速度論的研究では、この酵素では、TAL(0.76)に比してPAL(5.5)のVmaxが高いことが明らかになった。速度論的情報に立脚すると、フェニルアラニンの存在が酵素のTAL活性にとっての障害となっているのであろうと考えられる。また、TAL活性に対するpHCAのKが低い(16μM)ことは、pHCAがわずかに蓄積されるだけでもTAL活性が阻害される可能性があることを強調するものである。
自らの過去の所見に立脚し、本願発明者らは、pal/tal遺伝子とpdc遺伝子の両方を含むE.coli株に関して自らが持つ現在の観察結果について、以下のとおり説明する。これらの二重形質転換体では、形成されるpHCAがpHSに変換される。この過程でのpHSの形成量は、pal/tal遺伝子のみを含む株で形成されるpHCAの量よりも多い。この観察についてのひとつの説明として、pHCAのプールならびにそのpHSへの変換をなくすと、(高いpHCA濃度によって)TAL活性の潜在的な阻害が排除され、pHSの形成につながるpHCAの産生がさらに容易になるということがあろう。また、TAL活性によってチロシンを除去するとチロシンによるコリスミ酸/p−プレフェン酸デヒドラターゼのフィードバック阻害がなくなり、系をさらに最適な状態で機能させられる可能性もある。pal/tal遺伝子とpdc遺伝子の両方を含む株の培養でpHCAの残留濃度が若干認められたことは、pHCAからpHSへの完全な形質転換にはPDC活性のin vivo発現レベルを高める必要性を強調するものである。
実施例7
pal/pdc1遺伝子発現がフェニルアラニン過剰産生E.coli形質転換体の成長に対しておよぼす影響
乳酸菌(L.plantarum)由来の野生型pal遺伝子およびpdc1遺伝子を含む、pCA16およびpKSM−pdc1の両方で形質転換したフェニルアラニン過剰産生株E.coli NST74(実施例4参照)を、IPTG誘導ありまたはなしの状態でLB培地に播種した。この研究の成長速度の結果を吸光度600nmで測定した細胞密度で表12に示す。株E.coli NST74のpal/pdc形質転換体の成長は、IPTGを約3.0時間加えたところで減速しはじめ、7.0時間まで低めの率に維持された。対照として使用したのは、IPTGなしで成長させた同じ株である。この結果から、細胞に対して有毒であることがすでに分かっているpHCAおよびpHSが形成されることがおそらくの原因で、IPTGの存在下では成長速度が遅くなることが分かった。過去の研究では、pHCAおよびpHSはいずれも細胞に対して有毒であるということが分かっており、pHSでは0.5g/Lという低い濃度で毒性が認められた。
Figure 2005533489
IPTGで誘導した培養中でフェニルアラニンは短時間で消費され、誘導6時間後には消失したが、未誘導の培養ではほぼ変化せずに残った(表13)。
Figure 2005533489
IPTGによる誘導6.0時間以内でのフェニルアラニンの完全な消費はpal/pdc1形質転換体によって達成された(表13)。しかしながら、IPTG誘導なしの組換え株ではフェニルアラニンの消費がわずかに認められただけである。この観察結果については、野生型pal/tal遺伝子を持つpKK223由来のpCA16プラスミドプロモーターからの発現が低レベルであることと、同じ細胞中のpKSM715(IPTGによって厳密に制御される)の存在とによって説明できよう。誘導後、ケイ皮酸(CA)も産生され(表14)培地に蓄積された。
Figure 2005533489
pal/pdc1形質転換体によるチロシンの消費はIPTGでの誘導2.0時間後に開始され、7.0時間まで継続された(表15)。IPTGでの誘導を行っていない対照では、実験中を通して培地中のチロシンが一定濃度に維持された(表15)。チロシンの消失に伴って培地中にpHCA(表16)およびpHS(表17)の出現した。IPTG誘導なしでは、pHSは観察されず、pHCAについてはいくらか観察できた。しかしながら、IPTGで誘導すると、培地のpHS濃度が上昇しはじめた(表17)。pHSが形成されている間、pHCAの濃度が一定のままである(表16)ことは興味深かった。この観察結果についてのひとつの説明として、pHSへの変換に用いられるpHCAがなくなることで、これがTAL酵素を阻害しなくなってpHCAの産生が促進されるのであろうといえる。誘導6.0時間後、培地中のpHSが減少しはじめた。実験終了時の培養液中のpHCAの存在は、pHSへの変換のための十分なPDC活性が不足していることを示している。
Figure 2005533489
Figure 2005533489
Figure 2005533489
実施例8
フラスコ内でのグルコースからpHSへの発酵
実施例6で説明したE.coli株WWQ51.1を、250mL容のバッフルフラスコで培地50mL中にて成長させ、グルコースからのpHSの産生を試験した。培地には、0.5g/LのMgSO、4g/Lの(NHSO、0.1MのMOPS、KHPO/KHPOから1g/LのP0、1mg/Lのチアミン、15g/Lのグルコース、クエン酸(100mg/L)を含む微量金属、CaCl(15mg/L)、FeSO−7HO(25mg/L)、ZnSO−7HO(2mg/L)、CuSO−5HO(2mg/L)、CoCl−6HO(12mg/L)、MnCl−4HO(1.5mg/L)を含有させた。抗生物質すなわちカナマイシン(50ppm)およびアンピシリン(100ppm)を加えた。IPTGを誘導物質として0.5mMで加えた。濃KOHまたはHClを用いてpHが6.8〜7.0になるように調節した。種培養を16時間かけて成長させた後、重複(duplicate)フラスコにて550nm(OD550)で測定したODが0.1から0.2になるように新鮮な培地中で希釈した。これらの培養を300rpm、35℃で50時間インキュベートし、0、9、25、50時間の時点でHPLCでの分析用に試料を得た。結果を表18に示す。発酵50時間で、利用したグルコース1グラムあたりpHSの収率0.0051〜0.0052gで64〜68mg/LのpHSが産生された。
Figure 2005533489
実施例9
pHSへのラクトースの発酵
別の炭素源として、E.coli株WWQ51.1によるpHS産生用の発酵基質としてのラクトースを試験した。シードフラスコを12時間インキュベートし、これらのフラスコから得た細胞を被験フラスコ内で新鮮な培地に播種した。この発酵の種培地は、グルコースの代わりにラクトースを用いたこと以外は実施例8で使用したものと同一とした。被験フラスコには、250mL容のバッフルフラスコに培養液50mLを入れたものを利用し、播種時にはラクトース15.5g/Lを用いた。これらを300rpmで35℃にて4日間インキュベートした。これらのフラスコに、0mM、0.5mMまたは5mMのいずれかの濃度でIPTGを加え、プラスミドからの遺伝子発現を誘導した。表19に示すようなラクトースからpHSへの発酵はグルコースからpHSへの発酵よりも有意に良好であった。5mM IPTGのときに力価0.249g/Lに達し、利用したラクトース1gあたりのpHSの収率0.021〜0.024gという最良の結果が得られた。
Figure 2005533489
実施例10
10L規模でのグルコースからpHSへの発酵
14Lのブラウンボイスタット(Braun Biostat)C発酵槽(ビーブラウンバイオスタットインターナショナルゲーエムベーハー(B.Braun Biotech International Gmbh)、ドイツのメルスンゲン(Melsungen)におけるグルコースからのpHSの産生をホスフェート(PO)制限条件下で試験した。E.coli株WWQ51.1を発酵槽の播種前に種培養で12時間かけて成長させた。6.72時間の時点でIPTG(0.5mM)を発酵槽に加えた。
発酵プロトコール:
KHPOを1.6g、MgSOを15.0g、マズ(Mazu)DF204泡防止剤(BASF社(BASF Corporation)、ニュージャージー州マウントオリーブ(Mount Olive)8.0mL、チアミン8mgを含有する初期バッチ7Lで容器培地(vessel medium)を調製した。滅菌後、グルコース溶液(50%w/w)240g、微量元素溶液(表20)160mL、カナマイシン50mg/L、アンピシリン100mg/Lを最終容量が8Lになるようにして加えた。水酸化アンモニウム(40%w/v)とHSOを20%w/vとをpH調節用に利用した。攪拌、曝気、pH、圧力、溶存酸素(DO)のセットポイントを以下の表21にあげておく。溶存酸素濃度(DO)を、酸素要求量の増加に伴って最初は攪拌によって上昇させ、続いて曝気を行って空気飽和の25%に調節した。種培養500mLを2L容のフラスコに入れてOD550が約2.0。になるように300rpmで12時間かけて35℃で成長させた。発酵槽でOD550が4に達した後にIPTGを0.5mMまで加えた。1〜5g/Lでグルコースの供給を開始し、以下の式を利用して細胞成長のためのグルコース供給量を調節した。
供給速度(g/分)=OD550×発酵容量(L)×0.0022。
グルコースが2g/Lを超えて蓄積された場合はグルコース供給速度を落とした。
Figure 2005533489
Figure 2005533489
pHSへのグルコース発酵の反応速度を表22に示す。pHSの産生量は発酵約56時間後に0.40g/Lに達した。
Figure 2005533489

【配列表】
Figure 2005533489
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Claims (21)

  1. (i)
    a)チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と、
    b)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と
    を含んでなる組換え宿主細胞と発酵性炭素基質とを接触させ、
    (ii)パラ−ヒドロキシスチレンを産生するのに十分な時間、該組換え細胞を成長させ、
    (iii)場合により該パラ−ヒドロキシスチレンを回収する
    ことを含んでなる、パラ−ヒドロキシスチレンの産生方法。
  2. (i)
    c)フェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と、
    d)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子と
    を含んでなる組換え宿主細胞と発酵性炭素基質とを接触させ、
    (ii)パラ−ヒドロキシスチレンを産生するのに十分な時間、該組換え細胞を成長させ、
    (iii)場合により該パラ−ヒドロキシスチレンを回収する
    ことを含んでなる、パラ−ヒドロキシスチレンの産生方法。
  3. 該発酵性炭素基質が、単糖類と、オリゴ糖類と、多糖類と、二酸化炭素と、メタノールと、ホルムアルデヒドと、ギ酸塩と、炭素含有アミンと、よりなる群から選択される請求項1または2に記載の方法。
  4. 該発酵性炭素基質が、グルコースとラクトースと、よりなる群から選択される請求項3に記載の方法。
  5. 該組換え宿主細胞が、細菌と、酵母と、糸状菌類と、シアノバクテリア藻類と、植物細胞と、よりなる群から選択される請求項1または2に記載の方法。
  6. 該組換え宿主細胞が、エシェリキア(Escherichia)と、サルモネラ(Salmonella)と、バチルス(Bacillus)と、アシネトバクター(Acinetobacter)と、ストレプトマイセス(Streptomyces)と、コリネバクテリウム(Corynebacterium)と、メチロジーナス(Methylosinus)と、メチロモナス(Methylomonas)と、ロドコッカス(Rhodococcus)と、シュードモナス(Pseudomona)と、ロドバクター(Rhodobacter)と、シネコシスティス(Synechocystis)と、サッカロミセス(Saccharomyces)と、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)と、クルイベロミセス(Kluyveromyces)と、カンジダ(Candida)と、ハンゼヌラ(Hansenula)と、デバリオミセス(Debaryomyces)と、ムコール(Mucor)と、ピヒア(Pichia)と、トルロプシス(Torulopsis)と、アスペルギルス(Aspergillus)と、アルトロボトリス(Arthrobotrys)と、ブレビバクテリア(Brevibacteria)と、ミクロバクテリウム(Microbacterium)と、アルトロバクター(Arthrobacter)と、シトロバクター(Citrobacter)と、よりなる群から選択される請求項5に記載の方法。
  7. 該組換え宿主細胞がフェニルアラニン過剰産生株である請求項4に記載の方法。
  8. 該フェニルアラニン過剰産生株が、ミクロバクテリウムアンモニアフィルム(Microbacterium ammoniaphilum)ATCC 10155と、コリネバクテリウムリリウム(Corynebactrium lillium)NRRL−B−2243と、ブレビバクテリウムディバリカツム(Brevibacterium divaricatum)NRRL−B−2311と、E.coli NST74と、アルトロバクターシトレウス(Arthrobacter citreus)ATCC 11624と、よりなる群から選択される請求項7に記載の方法。
  9. 該組換え宿主細胞がチロシン過剰産生株である請求項5に記載の方法。
  10. 該チロシン過剰産生株が、ミクロバクテリウムアンモニアフィルム(Microbacterium ammoniaphilum)ATCC 10155と、コリネバクテリウムリリウム(Corynebactrium lillium)NRRL−B−2243と、ブレビバクテリウムディバリカツム(Brevibacterium divaricatum)NRRL−B−2311と、アルトロバクターシトレウス(Arthrobacter citreus)ATCC 11624と、メチロモナス(Methylomonas)SD−20と、よりなる群から選択される請求項9に記載の方法。
  11. 該宿主細胞が、ケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子をさらに含んでなる請求項2に記載の方法。
  12. ケイ皮酸4−ヒドロキシラーゼ活性を有する該ポリペプチドが、ジェンバンク(Genbank)AB055508、ジェンバンクAB055508、ジェンバンクAF286648、ジェンバンクAF212318、スイスプロット(Swissprot)P48522、ジェンバンクAF302495、スイスプロットQ43054、スイスプロットQ04468、スイスプロットQ43240、ジェンバンクAF255014に記載の遺伝子によってコードされる請求項11に記載の方法。
  13. 該組換え宿主細胞が、ダイズと、ナタネと、ヒマワリと、ワタと、トウモロコシと、タバコと、アルファルファと、コムギと、オオムギと、オートムギと、モロコシと、コメと、ブロッコリーと、カリフラワーと、キャベツと、パースニップと、メロンと、ニンジンと、セロリと、パセリと、トマトと、ジャガイモと、イチゴと、ラッカセイと、ブドウと、グラス・シード・クロップ(grass seed crop)と、サトウダイコンと、サトウキビと、マメ類と、エンドウマメと、ライムギと、アマと、広葉樹と、針葉樹と、まぐさと、よりなる群から選択される請求項1または2に記載の方法。
  14. 該チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子が、チロシンに対する触媒効率が約4.14×10−1sec−1から約1×10−1sec−1のポリペプチドをコードする請求項1または2に記載の方法。
  15. 該チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子が、配列番号2と、配列番号13と、配列番号14と、配列番号15と、配列番号16と、配列番号17と、配列番号18と、よりなる群から選択されるポリペプチドをコードする請求項1または2に記載の方法。
  16. 該パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子が、(AAC45282.1 GI:1762616)と、(AAF82761.1 GI:9082168)と、(AAF82762.1 GI:9082170)と、(AAF82763.1 GI:9082172)と、(AAF82766.1 GI:9082178)と、(AAK85433.1 GI:15150391)と、(CAC16794.1 GI:11322458)と、(CAC18719.1 GI:11691810)と、(NP_268087.1 GI:15673912)と、に記載されているポリペプチドをコードする請求項1または2に記載の方法。
  17. 該パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子が、配列番号4または配列番号6に記載のポリペプチドをコードする請求項1または2に記載の方法。
  18. チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子が、ロドトルラグルチニス(Rhodotorula glutinis)由来のものである請求項1または2に記載の方法。
  19. パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子が、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)由来のものである請求項1または2に記載の方法。
  20. a)チロシンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と、
    b)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と
    を含んでなる、組換え宿主細胞。
  21. a)フェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と、
    b)パラ−ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子と
    を含んでなる、組換え宿主細胞。
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