JP2005523017A - Candidaalbicans由来の細胞壁マンノプロテイン及び活性エピトープならびにこれらを認識する抗体 - Google Patents

Candidaalbicans由来の細胞壁マンノプロテイン及び活性エピトープならびにこれらを認識する抗体 Download PDF

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Abstract

その中に特異的な活性のペプチド及び炭水化物領域及び免疫原性エピトープを有し、そしてカンジダ症の間に強力な抗体応答を誘発する、酵母Candida albicans由来のmp58として知られる単離した表面タンパク質が提供される。mp58ならびにその中の免疫原性領域及びエピトープを認識し得る、そのタンパク質及びその活性領域及びエピトープから生じる抗体も提供される。従って、本発明のタンパク質及び抗体は、C.albicans及び他の酵母の感染を診断、モニタリング、処置または予防する方法において有用であり、そしてカンジダ症のような疾患状態の同定及び処理のための免疫に基づく予防、治療及び診断技術の開発の基礎を提供し得る。

Description

関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願番号60/446,560(2003年2月12日出願)及び60/373,324(2002年4月18日出願)の利益を主張する。
発明の分野
本発明は、微生物学、分子生物学、及び免疫学の分野に関し、そしてより詳細には、Candida albicans由来の表面及び細胞壁マンノプロテインならびにこれらのエピトープ領域(炭水化物部分のエピトープを含む)、これらのエピトープ及びこれらのタンパク質を認識する抗体のこれらのタンパク質及びこれらのエピトープからの産生、ならびにヒト及び動物の患者における感染(例えば、種々の真菌の株(例えば、Candida種由来の株)により引き起こされるもの)を予防、処置、診断、またはモニタリングするための、これらのタンパク質及び抗体の使用に関する。本発明はまた、これらのタンパク質及び抗体に基づくワクチン、キット、及び治療法にも関し、そしてより詳細には、C.albicans由来のmp58マンノプロテイン及び免疫原性であるC末端領域を含むタンパク質由来の特異的なエピトープを認識することができるモノクローナル抗体に関する。
発明の背景
Candida albicansは、最も一般的なヒトの真菌性病原体であり、そしてアメリカ合衆国において得られる血液培養物から単離される3番目または4番目に一般的な微生物である。C.albicansは、ヒトの共生的及び日和見性病原体の両方である二形性真菌である。潜在する宿主の欠陥に依存して、Candidaは、宿主における実質的に全ての器官に感染する能力を有する、粘膜から生命を危うくする播種性カンジダ症までの範囲の種々の感染を引き起こし得る。カンジダ症についての準備因子としては、免疫抑制療法、大量の抗生物質での治療、細胞毒療法、静脈内カテーテル及び留置デバイス、超低出生体重、AIDS、糖尿病、移植医学、薬物依存などが挙げられる。正常な個体において、この生物は、胃腸管、膣、及びいくつかの皮膚領域にコロニー形成する。日和見性表在性及び全身性のC.albicansの感染は、未熟新生児、AIDS及び衰弱した癌患者において生じ、そして特に、骨髄移植後に頻繁に生じかつ重篤である。これらの日和見性感染は、内因性起源を有すると考えられている。
C.albicansの感染から生じる1つの特定の条件は、免疫不全の患者における罹患率及び死亡率の主要な要因である侵襲性カンジダ症である。一般的に、酵母と菌糸成長形態との間の形態形成変換は、明らかに、侵襲性カンジダ症の病原性において必須であり、そして環境シグナル(例えば、細胞外pH)によって調節され得る。従って、C.albicansが宿主組織中に侵襲する能力は、主として、酵母と糸状形態の間の形態形成変換に基づくことをほとんどの人が同意している。酵母細胞及び菌糸は、宿主内で種々のミクロニッチ(micronich)に遭遇し得る。温度及び血清以外に、細胞外pHは、酵母と菌糸成長形態との間の変化を調節する重要な環境因子である。
C.albicansによって引き起こされる非常に重篤な問題(早期かつ正確な診断手順の欠如、最も一般的かつ有効な処置により示される高い毒性、及び経験的な予防処置に起因する耐性株の出現が挙げられる)は、播種性感染に関する非常に高い罹患率及び死亡率を生じた。これらの理由に起因して、カンジダ症の管理に対する複合的な取り組みを増強または補足するための予防的戦略の開発及び新規または代替的な治療法のための調査に、増大した興味が存在する。しかし、多数の調査グループの努力にも関わらず、この微生物の病原性機構の現在の我々の理解、及び宿主感染性を決定する因子の我々の知見は、いまだ、調査中の範囲である。
上記のように、酵母感染から生じる病原性はまた、宿主関連因子に依存する。より重要なのは、宿主の免疫学的状態は、真菌及び酵母の感染に対する感受性に非常に関連するようである。C.albicans及び他の病原性真菌の場合、保護のための細胞の防御機構の重要性は、最も侵襲性の形質発現が、細胞性免疫の欠陥を有する患者において検出されるという事実に支持される。細胞媒介性免疫(T細胞)及び非特異的細胞性免疫(マクロファージ、好中球、及びNK細胞)は、一般的に、カンジダ症に対する防御において重要な役割を果たすと考えられている。しかし、抗体免疫の重要性の支持または否定のいずれかの対照的な報告が有り、カンジダ症及び他の真菌感染における体液性免疫の役割は、いまだに、論争中の問題である。
いずれにしても、真菌及び酵母の感染(例えば、侵襲性カンジダ症)の分野において、特に、感受性の高い患者(例えば、未熟新生児、AIDS罹患者及び衰弱した癌患者)の間での、そのような感染の発生を制御するためにそのような感染を同定、処置、または予防するための適切な手段を開発するための明確な問題が残っている。特に、真菌感染及び疾患(例えば、Candida微生物により引き起こされるカンジダ症)を処置及び予防するための組成物及び方法を開発するための課題が残っている。
発明の要旨
従って、疾患状態(例えば、Candida微生物によって引き起こされるカンジダ症)の診断、モニタリング、処置または予防に有用な組成物及び方法を提供することは、本発明の目的である。
Candida albicansからmp58マンノプロテインを単離すること、及びこのタンパク質及び/またはそのエピトープを認識することができ、従ってCandida微生物によって引き起こされる疾患及び感染の同定及び/または処置または予防に有用である抗体の開発においてこのタンパク質ならびにその中の免疫原性エピトープ及び活性領域を使用することは、本発明のさらなる目的である。
C.albicans由来のmp58マンノプロテインおよび/またはその活性領域もしくはエピトープ領域を認識することができるモノクローナル抗体を提供することは、本発明のなおさらなる目的である。
ヒト及び動物における真菌及び酵母の感染の予防において用いられ得るワクチン、キット、及び他の治療方法を提供することは、本発明のなお別の目的である。
これらおよび他の目的は、Candida albicansから単離及び/または精製された表面タンパク質(すなわち、mp58マンノプロテイン)、並びにmp58マンノプロテイン及び/またはこれらの活性領域もしくはエピトープ領域を認識することができる抗体を産生するために、免疫原性量で用いられ得る活性領域またはエピトープ領域を含むこれらから単離及び/または精製されたペプチドまたは炭水化物を包含する本発明を用いて提供される。さらに、本発明は、mp58マンノプロテイン、またはその中の活性領域もしくはエピトープ領域を認識することができるモノクローナル抗体(Candida属由来の種々の微生物上のこれらのタンパク質及びエピトープを認識し、従って、広範において反応性であり、そしてCandida微生物によって引き起こされる種々の感染及び他の疾患状態を診断、モニタリング、処置、または予防するために用いられ得るモノクローナル抗体を含む)の産生を含む。
最後に、本発明はまた、Candida感染の診断、モニタリング、処置、または予防において用いられ得るワクチン、キット、ならびに他の治療方法及び/または免疫原性処置方法も含む。
これらの実施形態ならびに開示される本発明の精神及び範囲内の他の代替物及び改変は、本明細書及び/または本明細書中に引用される参考文献(これらは、参考として援用される)を読むことによって、当業者に容易に明らかとなる。
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明に従い、C.albicans由来の単離した表面タンパク質及びエピトープ、すなわち、以下にさらに述べるようなCandida albicansの細胞壁58キロダルトン細胞壁マンノプロテイン(mp58)ならびにその中の活性領域及びエピトープが提供される。さらに、本発明者らは、モノクローナル抗体(例えば、1H4、3H3及び3C2と示されるもの)を作製した。mAb 1H4の試験は、それが、C.albicans細胞の表面上のpH感受性炭水化物エピトープを認識することができること、及びこのエピトープがmp58に限定されず、真菌病原体の他の細胞壁マンノプロテインに共有されることを示す。さらなる試験は、mAb3H3及び3C2がmp58のタンパク質部分を認識することを示した。
免疫組織学的知見は、ヒトカンジダ症の組織切片におけるC.albicans細胞上での1H4エピトープの発現が、そのニッチ(niche)の組織侵襲及びpHに関連することを示した。従って、1H4エピトープの発現が侵襲性及び潜在的に攻撃的な形態のCandida albicansを選択的に識別するという事実は、ヒトカンジダ症の管理ならびにCandida微生物により引き起こされる疾患及び感染に対する処置及び保護におけるその潜在的な価値を支持する。さらに、本発明は、適切なワクチンの調製、医療機器及び補綴デバイスにおける感染の予防、ならびにC.albicansによる感染を同定するために用いられるキットの供給(全て、本明細書中にさらに詳細に示す)を含む本発明の抗体のその他の使用を包含する。
本発明は、C.albicansの細胞壁タンパク質及びマンノプロテインの同定及び特徴付けに焦点を当てており、宿主細胞及び組織への付着に関連するこれらの表面成分を特に目的とする。いくつかの他の病原性微生物と同様に、C.albicansにおいて、宿主細胞及び組織へのこの真菌の付着は、感染の確立をもたらす最初の過程であると考えられ、次いで、血行性播種が、身体を通しての転移性の感染に導かれ得る。これらの付着プロセスは、真菌及び宿主の両方の表面における相補性分子によって媒介される。この文脈において、糖部分(最も一般的にはマンナンとして知られている)がその相互作用において必須の役割を果たすようである種に加えて、インテグリン及びレクチン様の活性を有する分子を含む、いくつかのカテゴリーの受容体様分子(用語アドヘシンとしても示される)が、C.albicansの表面上で同定されている。ここまでに記載されているアドヘシンとしては、インテグリンβ1サブユニットに対して惹起される抗血清、補体フラグメントiC3b及びC3dのレセプター、種々の血清タンパク質及び多数の細胞外マトリクス(ECM)成分(例えば、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、エンタクチン及びビトロネクチン)に対し交差反応性を示した分子;プラスチックへの結合を媒介しかつ細胞表面の疎水性を担う部分;真菌が脾臓及びリンパ節中のマクロファージに結合するマンナン部分を含む独特の付着系;フィンブライアルアドヘシン(fimbrial adhesin);ならびに上皮細胞への接着を媒介する細胞外アドヘシンが挙げられる。Candidaによって示されるアドヘシンのレパートリーは、恐らく、それが宿主において侵襲し得る部位の範囲を反映し、そして付着に対する種々のレセプター様分子の寄与は、それが上皮細胞、正常な内皮細胞、または露出された細胞外マトリクスのいずれであるかを考慮して、細胞または組織の型に依存して異なり得る。
本明細書中に記載されるように、本発明者らは、C.albicansの表面上の58kDaのフィブリノーゲン結合マンノプロテイン(mp58)を同定し、特徴付け、そしてクローニングし、そして精製した成分に対して抗体を惹起させた。mp58は、明らかに、両方の形態学的フェーズの真菌のβ−メルカプトエタノール(β−ME)細胞壁抽出物における主要な成分である。それは、Nグリコシル化及びO−グリコシル化されている。共焦点顕微鏡での研究によって、mp58が真菌の表面に沿って不均一に分布していることが明らかになった。それは、他の表面アドヘシン(例えば、ラミニンレセプター、エンタクチンレセプター、及びレセプター結合補体因子)と異なり、そしてそれは高度に疎水性である。mp58は、試験される全てのC.albicalns株(コレクション株(collection strain)及び新しい臨床分離株を含む)において発現される。さらに、それは、患者の組織に感染する真菌細胞において発現される。播種性カンジダ症に罹患する患者由来の血清は、mp58に対する抗体を保有しているが、表在性の形態のこの疾患に罹患する患者及びコントロール(正常な)個体由来の血清は、mp58に対する抗体を保有していない。これらの観察は、C.albicansと宿主との間の相互作用の間のmp58の積極的な役割を示しており、そしてCandida微生物によって引き起こされる種々の感染状態の診断、モニタリング、処置または予防における、mp58及びこれから発生する抗体の重要性も反映している。
従って、本発明の1つの特定の実施形態において、C.albicans由来の単離及び/または精製した58キロダルトンの細胞壁マンノプロテイン(mp58として同定されている)が活性領域及び他のエピトープと共に提供され、これらは免疫原性であり、従ってmp58及び/またはその活性領域及びエピトープを認識することができる抗体の産生において用いられ得る。細胞壁マンノプロテインmp58は、以前に同定されており、そして以下のアミノ酸配列(GenBankにおいて示されている)を有する:
MP58アミノ酸配列(配列番号2)
Figure 2005523017
さらに、このタンパク質をコードする核酸配列が公知であり、そしてGenBankから入手可能であり、そしてこれらの配列またはこれらに由来する縮重配列は、mp58をコードし、そして本発明の一部を形成する。このタンパク質をコードする核酸配列は、以下の配列を有する1596ヌクレオチドの遺伝子配列から誘導され、ここで、コーディング領域は、この配列の塩基569〜1468である:
PRA1遺伝子(配列番号1)
Figure 2005523017
従って、mp58のコーディング領域は、900ヌクレオチドの以下の核酸配列であり、そして本発明は、当業者に認識されるように、この配列が本明細書中に開示されるmp58マンノプロテイン、またはそのペプチド及びエピトープをコードする等価の縮重配列も有することを企図する。
MP58核酸配列(配列番号3)
Figure 2005523017
Candida albicansの表面上の58キロダルトンのマンノプロテイン(mp58)は、高度に免疫原性であり、試験される全てのC.albicans分離株によって発現され、そしてカンジダ症の間、強力な抗体応答を誘発する。それは、Aspergillusの種々の種においてもホモログを有する、免疫優性の真菌抗原のファミリーに属する。本発明に従い、上記のように、コード化遺伝子(FBP1/PRA1)のDNA配列から推定されるmp58のタンパク質部分のアミノ酸配列は、誘導体化したポリエチレンピンの表面に共有結合したオーバーラッピングドデカペプチド(オーバーラップ、7;オフセット、5)の完全なセットを合成するために用いた。多数の抗mp58抗体を保有する抗血清調製物によって認識される連続するエピトープを同定するために、これらのピンに結合したペプチドを、改変酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)において用いた。この包括的なエピトープ走査研究によって、このタンパク質配列内の複合免疫反応性の連続するB細胞エピトープの存在が明らかになった。反応性の増加した領域としては、成熟タンパク質のアミノ末端及びカルボキシ末端の両方(夫々、アミノ酸残基16〜50(配列番号4)及び286〜299(配列番号5)を包含する)そして66〜92位(配列番号6)、121〜142(配列番号7)、148〜192位(配列番号8)、及び211〜232位(配列番号9)にわたる4つの内部領域が挙げられる。
エピトープ領域のさらなる描写及び抗原性部位の境界の同定を、mp58のタンパク質部分におけるこれらの反応性領域にわたる完全オーバーラッピング8マーペプチドから構成される第二のPepsetを用いるELISA試験で実施した。このタンパク質のC末端の高度に反応性のエピトープ領域を、ウインドウネット(window net)及びリプレースメントネット(replacement net)分析を用いてさらに評価した。このタンパク質のC末端の最後の10アミノ酸残基に対応する合成ペプチドは、担体タンパク質に結合した後にマウスに注射した場合、免疫原性であった。さらに、得られた血清中の抗体は、ELISA及びイムノブロットアッセイにおいて、相同のmp58を特異的に認識し、従って、これらの抗体及びmp58に対する免疫学的応答は、本明細書中以下に記載されるように、カンジダ症の管理のための、免疫に基づく予防的、治療的、及び診断的またはモニタリング技術の開発に有用である。
特に、本発明は、mp58マンノプロテインからの抗体ならびに上記の活性領域を含むペプチドおよびエピトープの産生を企図する。「抗体」とは、抗原を認識する任意のインタクトな抗体またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab’)2フラグメント)を意味し、そしてポリクロナールまたはモノクローナルタイプであり得、そして本発明に従う抗体は、種々のCandida微生物に共通するmp58マンノプロテイン及び/または特定のエピトープを認識することができ、従ってCandidaの感染を診断、モニタリング、処置または予防する方法において有効である。「エピトープ」とは、抗体分子との免疫化学結合を担う任意の抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、タンパク質分子の化学的に活性な表面基(surface grouping)(アミノ酸及びしばしば糖側鎖も含む)内に存在し、そして特定の三次元構造特徴及び特定の電荷特徴を有する。本明細書中に記載されるmp58マンノプロテイン、またはそのエピトープ及びペプチドに関して、そのような用語は、天然に存在するものと異なるタンパク質及びペプチド、または1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/もしくは付加による組換えタンパク質であるが、タンパク質全体に対して惹起される抗体によって認識される能力を保持するものを含むと理解されている。例は、抗原全体またはその免疫反応性フラグメントの担体/抗原融合ポリペプチドであり、ここで、抗原またはフラグメントは、担体ポリペプチド内に包埋され得るか、または担体ポリペプチドにいずれかの末端で連結され得る。
例えば、このタンパク質のC末端の最後の10アミノ酸残基に対応する合成ペプチド(290HTHADGEVHC298)(配列番号10)は、担体タンパク質への結合の後に2匹のマウスに注射されたときに、免疫原性であった。さらに、得られる血清は、ELISA及びイムノブロットアッセイにおいて相同のmp58を特異的に認識した。最初の実験は、ヒト血清サンプル中のこのミメティック(mimetic)配列に対する抗体の存在を試験するための合成ペプチドに基づく抗体捕捉アッセイを最適化することに関する。以下の抗体捕捉ELISAのパラメータを評価した:i)ウェルをコーティングするための物質としてのKLH−結合ペプチドの使用と比較した、遊離のペプチドの使用、ii)マイクロタイタープレートのウェルをコーティングするための種々の量のペプチドの使用、iii)合成ペプチドの最適な吸着のための種々の型のELISAプレート(種々の型のプラスチック及び化学修飾プレートを含む)の使用、iv)種々のコーティングバッファーの使用、v)種々のブロッキング試薬(タンパク質及び界面活性剤を含む)の使用、およびvi)種々に希釈した血清の使用。その最終的なフォーマットにおいて、KLH−結合ペプチドを、炭酸緩衝液(pH9.6)中、1μg/ウェルの濃度で用いて、Immulon2プレートをコーティングし、4℃での一晩のインキュベーション及びPBSでの洗浄の後、カンジダ症を有する患者由来の種々の血清サンプル(0.05%のTween20を有するPBS[PBST]及び1%BSA中1:1000希釈)を、これらのウェルに添加し、そして37℃で1時間インキュベートした。次いで、これらのプレートをPBSTを用いて洗浄しそしてペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG(1:2,000希釈)を用いて37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートを発色させ(クエン酸緩衝液中のOPD)そしてマイクロタイタープレートリーダー中、490nmで読み取った。一旦アッセイを最適化した後、播種性カンジダ症を有する患者由来(n=13)及びコントロールの個体(n=22)より多数の血清サンプルを試験した。
これらの実験により、コントロールの個体と比較して、播種性カンジダ症を有する患者由来の血清サンプル中のこのペプチドに対し増加したレベルの抗体を確認した(図4、パネルA及びB)。さらに、抗ペプチド抗体のレベルは、致死の結果となった患者と比較して生存した患者において有意に高く(図4、パネルC)、従って、このペプチドが本発明に従う、カンジダ症の間の保護エピトープを意味することを示す。さらに、良好及び死に至る結果での血清中の抗体の、C.albicansサイトゾル及びβ−ME抽出物に対する反応性のレベルは同様であり、従ってC末端ペプチドに対するより高い反応性のレベルは、このペプチドの免疫原性特性を示し、そしてこの感染で死亡したヒトに対する生存者におけるより高い全体的な抗体レベルに起因するものではなかった。
同様に、本発明に従い産生した抗体が、mp58マンノプロテイン自体を認識することに加え、mp58マンノプロテインの活性領域及び/または他のエピトープを認識する能力を測定するための試験を、以下にさらに記載するように実施した。これらの試験において、Immulon2 HB high−binding 96ウェルマイクロタイタープレート(Dynex)を、1μg/ウェルの1×PBS(pH7.4)中のC.albicans10261株、26555株のβ−ME細胞壁抽出物またはmp58 C末端ペプチド(HTHADGEVH)(配列番号11)でコーティングし、そして室温で2時間インキュベートした。ELISAにおける全ての洗浄工程を、1×PBS,0.05% Tween−20洗浄バッファーを用いて3回実施した。プレートを洗浄し、そしてウェルにハイブリドーマ上清サンプルを添加する前、1時間、室温で、1%BSA溶液を用いてブロックした。プレートをサンプル及び適切なコントロール(例えば、培地単独)を用い、室温で1時間インキュベートし、洗浄し、1×PBS、0.05% Tween−20、0.1%BSA中に1:5000に希釈したヤギ抗マウスIgG−AP(Sigma)を二次試薬として用いた。プレートを4−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)(Sigma)の1mg/ml溶液の添加、引き続く37℃での30分間のインキュベーションによって発色させた。405nmでの吸光度を、SpectraMax 190プレートリーダー(Molecular Devices Corp.)を用いて読み取った。バックグラウンド(培地単独、約0.1 OD)より3倍以上高いOD405を有する抗体上清を陽性と考えた。これらの試験の結果は、3H3及び3C2 mAbとして同定されたmp58モノクローナル抗体が、Candida albicansの細胞壁において発現されるネイティブのmp58及びmp58のC末端の配列から誘導される合成ノナペプチド(アミノ酸HTHADGEVH)(配列番号11)を認識することを示す。
本発明に従い、単離及び/または精製したmp58認識抗体を、C.albicans由来のmp58マンノプロテインもしくは上記のようなこのタンパク質の1つ以上の活性領域、または上記のようなC末端領域由来のエピトープペプチド配列のような特定のエピトープから産生することができる。これらの抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、そして当該分野において周知の抗体を惹起するための任意の適切な方法を用いて産生され得る。
例えば、ポリクローナル抗体について、これらは、一般的に、適切な宿主への単離及び/もしくは精製または組換え産生したmp58(またはその免疫原性活性ペプチドもしくはエピトープ)を注射して次いで宿主から回収され得るポリクローナル抗体を産生することを含む多数の適切な方法を用いて産生され得る。本発明に従う1つの特定の例において、精製したmp58を、ウサギに注射して、この成分に対するポリクローナル抗血清(PAb 抗−mp58)を産生させた。このポリクローナル抗血清がイムノブロット及びIIF技術に用いられる場合、認識パターンは、フィブリノーゲン結合について検出されたものと基本的に同一であった。
さらに、本発明に従うモノクローナル抗体は、当業者によって容易に理解される適切なハイブリドーマを用いて産生され得る。好ましいプロセスにおいて、C.albicans由来のmp58マンノプロテインは、第一に多数の適切な方法で単離及び/もしくは精製され得、または当該分野において共通して用いられる組換え法によって産生され得る。1つの適切な精製プロセスにおいて、細胞壁のタンパク質が、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロット技術を用いて、単離及び試験される。好ましいプロセスにおいて、化学的(β−ME)及び酵素的(ザイモリアーゼ)可溶化技術の組み合わせが、C.albicansのインタクトの細胞から真性の細胞壁成分を放出するために用いられる。β−MEを用いるC.albicansの酵母細胞及び発芽管の両方の処理は、タンパク質及びマンノプロテインの複合アレイの可溶化をもたらす。フィブリノーゲン及び抗フィブリノーゲン抗体の組み合わせを用いるリガンド親和性ブロッティングは、ヒトフィブリノーゲンと特異的に相互作用する両方の真菌形態由来の抽出物中の58kDa成分(mp58)の検出を可能にした。mp58は、コンカナバリンA(ConA)に対するその反応性によって示されるマンノプロテインである。また、ポリスチレン−ラテックスマイクロビーズに結合するその能力について測定されるように、それは非常に疎水性である。C.albicans発芽管を間接的免疫蛍光実験においてフィブリノーゲンの存在下でインキュベートしたとき、強力な蛍光が観察された。mp58を精製し、次いで精製した調製物を、本発明に従う抗体を産生するために用いた。
1つの適切なプロセスにおいて、精製工程の後に上記のようにmp58を単離することによってモノクローナル抗体を産生した。mp58の精製のために、βME中の成分を、Laemmliにより記載されるような変性条件下でのプレパラティブ ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離した。mp58に対応するゲルの横断セクション(クマシー染色によって識別される)を、切り取り、砕き、そしてポリペプチド部分を電気溶出(electroelute)した。組換えmp58を産生するための第二のプロセスは、クローニング及びS.cerevisiaeにおけるmp58の発現である。簡単には、mp58DNAをPCRによって、V5及びHisタグへのC’融合としてpYES2/CT、またはXpress及びHisタグへのN’融合としてpYES2/NTへとクローニングした。これらのプラスミドを、YPH499へと形質転換し、そしてSD−URAプレート上で選択した。mp58融合は、GAL1プロモーターの制御下にあり、そしてその発現は、ガラクトースによって誘導される。酵母細胞からmp58を抽出するために以下の3つの方法を用いた;a)酵母細胞を、1×PBS(7.4)、1mM EDTA、1mM DTT、0.5% Triton X−100、5%グリセロール、1mM PMSF、1×PIC(Sigma)を含む酵母抽出バッファー中でガラスビーズと共にボルテックスによって破壊した、b)酵母細胞を1×PBS(7.4)、1%SDS、1%β−ME中に再懸濁し、そして30分間で沸点近くまで加熱した、そしてc)酵母細胞を、2.5mg/mlのザイモリアーゼ−20Tを含む1×PBS(7.4)中、37℃で3時間処理した。mp58融合タンパク質の発現を、抗His抗体及びmAb 3C2の両方によって検出した。組換えHisタグmp58を、金属キレートクロマトグラフィーによって精製した。
モノクローナルを産生するために、純粋なmp58をアジュバントと混合し、そしてBALB/cマウスに注射した。免疫プロトコルは、第一の注射(完全Freund’アジュバントを用いる)、引き続く3週間間隔での2回のブースター注射(不完全Freund’アジュバントを用いる)、及び融合の3日前のアジュバントを用いない1回の最後のブースター注射から構成されていた(全ての注射は皮下であった)。ハイブリドーマ産生のために、マウスを犠牲にし、それらの脾臓を無菌的に除去した。抗体分泌細胞を単離し、そしてポリエチレングリコールの滴下を用いてミエローマ細胞(NS1)と混合した。融合の後、細胞を選択培地(ビタミン補充したDMEM/HAT)中に希釈し、そしてマルチウェル組織培養ディッシュ中に低密度でプレートした。得られた融合物由来の組織上清をELISA(マイクロタイタープレートのウェルをコーティングするためのトータル2−ME抽出物を用いる)及びイムノブロット技術の両方によってスクリーニングした。これらの陽性ウェルからの細胞を増殖させ、そして1つの細胞を限界希釈によってクローニングし、そして上清を、ELISA及びイムノブロットの両方によるさらに1ラウンドのスクリーニングに供した。陽性クローンを同定し、そしてモノクローナル抗体をハイブリドーマ上清(3H3を含む)として収集した(これは、IgG1である)。
Mab 3H3によって認識されるエピトープの決定を、Multipin Peptide Technology(上記を参照のこと)によって実施した。これは、このMabが、ポリクローナル抗血清調製物を用いることによって高度に反応性であると予め同定されているC末端エピトープを認識したことを実証した(Viudesら、I&I 2001)。Mab 3H3によって認識されるエピトープのさらなる描写を、ウインドウネット及びリプレースメントネットアプローチを用いて実施した。ウインドウネット分析により、Mab 3H3の抗体結合活性のほとんどを保持する最小限の領域としてノナペプチド290HTHADGEVH298(配列番号11)を同定した。これらのヒスチジン残基の各々1つの置換が反応性のレベルにおける急激な減少を生じたので、リプレースメントネット分析によって、抗体による認識におけるヒスチジン(残基290、292及び298)の重要な役割が明らかになった。
従って、本発明に従い、mp58ならびに/またはその中に含まれるその活性領域及びエピトープから産生される抗体が生産され、そしてそのような抗体は、mp58ならびに/またはそのエピトープ及び活性領域を認識及び結合することができ、そして以下により詳細に記載されるもののような多くの診断及び治療用途において使用され得る。
ワクチン、ヒト化抗体及びアジュバント
本発明の単離された抗体、または上記のような単離したタンパク質もしくはエピトープは、以下に詳細に記載されるような酵母及び真菌の感染に対する能動及び受動免疫のためのワクチンの開発においても使用され得る。能動ワクチンの場合、これらのワクチンは、免疫原性量のmp58マンノプロテインまたは上記の活性領域もしくはエピトープを提供することによって調製され、従って、本発明に従う能動ワクチンは、免疫原性量のタンパク質またはペプチドを含み、そしてそのようなワクチンを必要とするヒトまたは動物に投与される。このワクチンは、上記のような適切な薬学的に許容されるビヒクル、賦形剤または担体も含み得る。上で言及されるような、本発明に従い用いられる「免疫原性量」の抗原とは、所望の予防的または治療的効果がもたらされるような免疫原性応答が宿主において誘発されるような、非毒性であるが十分な量の薬剤を意味することが意図される。従って、必要とされる抗原の正確な量は、被験体の種、年齢、及び一般的な状態、処置される状態の重篤度、用いられる特定の担体またはアジュバント及びその投与の様式等に依存して、被験体ごとに変化する。同様に、任意のそのような抗原ワクチン組成物の「免疫原性量」は、特定の環境に基づき変化し、そして適切な免疫原性量は、当業者によって、各々の場合の適用において、慣用の実験のみを用いて決定され得る。用量は、その組成物が投与される個体に適するように調整されるべきであり、そして個体の年齢、体重及び代謝によって変化する。
さらに、本発明の抗体は、真菌及び酵母が宿主細胞に付着する能力を妨害すること及び感染の程度及び広がりを抑制することができるので、患者に薬学的組成物として投与される場合、または医療用具またはインビトロ及びインビボでのポリマー性生体材料をコーティングするために用いられる場合も、これらの抗体は、有用である。
さらに、この抗体は、特定の例において、投与される患者においてより免疫原性がより少ないように必要に応じて修飾され得る。例えば、その患者がヒトである場合、抗体は、例えば、Jonesら、Nature 321:522−525(1986)またはTempestらBiotechnology 9:266−273(1991)に記載されるように、ヒトモノクローナル抗体に、ハイブリドーマ由来の抗体の相補性決定領域を移植することによって「ヒト化」され得るか、またはPadlan、Molecular Imm.28:489−498(1991)(これらの参考文献は本明細書中に参考として援用される)により記載されるように、免疫グロブリン可変領域における表面に露出したマウスフレームワーク残基を、相同のヒトフレームワーク対応物を模倣するように変化させることによって「ベニヤ(veneer)」され得る。さらに、所望される場合、本発明のモノクローナル抗体は、本発明の組成物が真菌感染に対抗する能力をさらに増強するために適切な抗生物質と共に投与され得る。
好ましい実施形態において、これらの抗体は、酵母または真菌の感染を処置または予防するために適する抗体を提供するのに有用な受動ワクチンとして用いられ得る。当業者に認識されるように、ワクチンは、多数の適切な方法での(例えば、非経口(すなわち、筋肉内、皮内または皮下)投与または鼻咽頭(すなわち、鼻内)投与による)投与のためにパッケージ化され得る。1つのそのような様式は、ワクチンが筋肉内に(例えば、三角筋に)注射されるような場合であるが、特定の投与様式は、処理される真菌感染の性質及び患者の状態に依存する。好ましくは、ワクチンは、投与を容易にするために薬学的に許容されるビヒクル、担体または賦形剤と組み合わせられ、そしてこの担体は、保存剤を有するかまたは有さない、水または緩衝化生理食塩水である。ワクチンは、投与時に再懸濁するように凍結乾燥されてもよいし、溶液中にあってもよい。
本発明に従う抗体組成物の投与のための好ましい用量は、真菌感染を予防または処置するのに有効な量であり、この量が感染の性質及び患者の状態に高度に依存することが容易に認識される。本発明に従い用いられる抗体または医薬の「有効量」は、所望の予防または治療効果がもたらされるような、非毒性であるが十分量の薬剤を意味することが意図される。従って、抗体または特定の薬剤の正確な量は、被験体の種、年齢、及び一般的な状態、処置される状態の重篤度、用いられる特定の担体またはアジュバント、及び投与の様式等に依存して、患者毎に変化する。従って、任意の特定の抗体組成物の「有効量」は、特定の環境に基づき変化し、そして適切な有効量は、各々の場合の投与において、ルーチン実験のみを用いて当業者により決定される。用量は、組成物が投与される個体に適するように調整されるべきであり、そして個体の年齢、体重及び代謝により変化する。これらの組成物はさらに、安定化剤または薬学的許容される保存剤(例えば、チメロサール(エチル(2−メルカプトベンゾエート−S)水銀ナトリウム塩)(Sigma Chemical Company,St.Louis,MO))を含み得る。
さらに、上記の本発明の抗体組成物及びワクチンは、抱合に対する免疫応答を増強するのに有効な量の適切なアジュバントと共に投与され得る。例えば、適切なアジュバントとしては、ヒトにおいて広範に用いられるミョウバン(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、及び他のアジュバント(例えば、サポニン及びその精製成分Quil A、Freund’完全アジュバント、ならびに研究及び獣医学的用途に用いられる他のアジュバント)が挙げられ得る。なお他の化学的に定義される調製物(例えば、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピッドA、ホスホリピッド複合体(例えば、Goodman−Snitkoffら、J.Immunol.147:410−415(1991)に記載され、本明細書中に参考として援用されるもの)、Millerら、J.Exp.Med.176:1739−1744(1992)に記載され、本明細書中に参考として援用されるプロテオリポソーム内の複合体のカプセル化物、ならびに脂質ビヒクル中のタンパク質のカプセル化物(例えば、NovasomeTM脂質ビヒクル(Micro Vescular Systems,Inc.,Nashua,NH))も有用であり得る。
薬学的組成物
当業者に認識されるように、本発明の抗体は、酵母または真菌の感染(例えば、Candida種微生物により引き起こされるもの)を処置または予防するためのヒトまたは動物の患者への投与に適する薬学的組成物に形成され得る。上で規定及び記載される本発明の抗体を含む薬学的組成物、例えば、生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、他の治療化合物、及びこれらの組合せを含む、当該分野において一般的に用いられる任意の適切な薬学的ビヒクル、賦形剤または担体と組み合わせて処方され得る。当業者が認識するように、用いられる特定のビヒクル、賦形剤または担体は、患者及び患者の状態に依存して変化し、そして種々の投与の様式が、当業者に認識されるように、本発明の組成物に適する。本願に開示される任意の薬学的組成物の投与の適切な方法としては、局所、経口、肛門、膣、静脈、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻内及び皮内投与が挙げられるがこれらに限定されない。
局所投与のために、この組成物は、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、ドロップ(例えば、点眼薬及び点耳薬)、または溶液(例えば、マウスウォッシュ)の形態に処方される。創傷または手術包帯(surgical dressing)、縫合糸およびエアロゾルは、この組成物に浸漬される。この組成物は、従来の添加物(例えば、保存剤)、透過を促進するための溶媒、及びエモリエントを含み得る。局所処方物も、従来の担体(例えば、クリームまたは軟膏ベース、エタノール、またはオレイルアルコール)を含み得る。
抗体組成物のさらなる形態、ならびに他の微生物表面タンパク質及びペプチドに関する組成物、方法及び用途に関する他の情報は、一般的に、モノクローナル抗体を含む本発明に適用可能であり、そして例えば、米国特許第6,288,214号(Hookら)(本明細書中に参考として援用される)に開示される。
本発明に従い作製される抗体組成物はまた、酵母に対する免疫原性応答を増強するのに有効な量で適切なアジュバントと共に投与され得る。例えば、適切なアジュバントとしては、ヒトにおいて広範に用いられるミョウバン(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、及び他のアジュバント(例えば、サポニン及びその精製成分Quil A、Freund’完全アジュバント、RIBIアジュバント、ならびに研究及び獣医学的用途に用いられる他のアジュバント)が挙げられ得る。なお他の化学的に定義される調製物(例えば、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピッドA、ホスホリピッド複合体(例えば、Goodman−Snitkoffら、J.Immunol.147:410−415(1991)に記載され、本明細書中に参考として援用されるもの)、Millerら、J.Exp.Med.176:1739−1744(1992)に記載され、本明細書中に参考として援用されるプロテオリポソーム内の複合体のカプセル化物、ならびに脂質ビヒクル中のタンパク質のカプセル化物(例えば、NovasomeTM脂質ビヒクル(Micro Vescular Systems,Inc.,Nashua,NH))も有用であり得る。
従って、いずれにしても、本発明の抗体組成物は、酵母及び他の真菌による結合相互作用を妨害、調節、または阻害するのに有用である。従って、本発明は、酵母及び真菌の感染を予防または処理する組成物及び方法の開発、ならびに宿主細胞への酵母及び真菌の結合及び拡散の阻害における特定の用途を有する。
方法:
Candida微生物により引き起こされる感染の検出及び診断
本発明に従い、上記のようなmp58マンノプロテイン、エピトープ及びペプチド、ならびにそのようなタンパク質、エピトープ及び/またはペプチドを認識する抗体の使用を介して、Candida微生物(例えば、C.albicans)の感染を同定及び診断するための方法が提供される。本発明に従い、上に示される本発明の抗体は、Candida感染を診断するためのキットにおいて用いられ得、そしてそのようなキットは、当該分野において公知の型のものであり得、そして本発明の抗体に結合する目的の抗原または微生物を検出するために一般的に用いられ得る。これらの診断キットは、一般的に、当業者に容易に理解され得るような抗体による結合を検出するために適する手段と共に本発明の抗体を含む。例えば、抗体の結合を検出するための手段は、この抗体に連結される検出可能な標識を含み得る。次いで、これらのキットは、Candida感染の存在を検出するための診断方法において用いられ得、ここで、1つ以上のCandida微生物に感染されていることが疑われるサンプル(例えば、個体からとったサンプル(例えば、血液、唾液、尿、脳脊髄液、尿生殖器管、組織、骨、筋肉、軟骨、または皮膚))を得、そしてこれらのサンプルに1つ以上の上記の抗体を導入する。抗体の導入の後、次いで、従来の方法を介して(例えば、適切な標識、またはアッセイ(ここで、これらの抗体が固体支持体に結合しており、そしてその結合がサンプル中の標的の抗原または微生物の存在に反映する)を介して)、サンプル中に抗原または微生物による結合が存在しているか否かが決定される。
抗体または抗原のレベルをモニタリングするための方法
本発明に従い、本発明の別の使用は、Candida抗原またはこの抗原を認識する抗体を保有することが疑われるヒトもしくは動物の患者におけるこれらの抗原または抗体のレベルのモニタリングにおけるものであることが企図される。好ましいプロセスにおいて、これは、最初にヒトまたは動物の患者から生物学的サンプルを得ることによって実施され得、そしてこれは、感染について慣用的にモニタリングされる任意の適切なサンプル(例えば、血液、血清、唾液、組織、骨、筋肉、軟骨、または皮膚)を含む。次に、このサンプルに以下のいずれかを導入する:(1)Candida抗体のレベルをモニタリングすることが所望される場合、Candida抗体が結合する測定可能なレベルのCandidaのタンパク質またはペプチド(例えば、本明細書中及び上記のタンパク質及びペプチド(mp58マンノプロテイン(配列番号2)及びその活性領域エピトープ(配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11を含む)を含む));または(2)Candida抗原のレベルをモニタリングすることが所望される場合、このサンプルに、mp58もしくは上記のペプチドもしくはエピトープを認識し得る本発明に従う測定可能なレベルのCandida抗体を導入する。このプロセスにおける次の工程は、サンプル中の抗原及び抗体が結合を達成するような十分な時間及び条件の後、サンプル中に存在するCandida抗原、またはそれに対する抗体の量またはレベルを反映する抗原−抗体結合のレベルを測定することである。所望のプロセスにおいて、レベルは、入院または処置の期間の間、Candida感染の進行/寛解を追跡するために規則的な時間間隔(例えば、時間毎、日毎、等)でモニタリングされ得る。
Candida感染を検出及び診断するためのアッセイ
本発明に従い、生物学的流体(例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、尿生殖器管)または他の生物学的物質(例えば、組織、骨、筋肉、軟骨、または皮膚)中に存在するCandida抗原の検出は、Candida種の微生物により引き起こされる急性または慢性の感染(カンジダ症を含む)の診断法を構成し得る。上記の抗体はいくつかのCandida酵母において見出されるエピトープを認識し得るので、これらの抗体は、カンジダ感染及び疾患状態の診断を可能にするアッセイにおいて用いられ得る。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれもが、このアッセイに用いられ、そしてモノクローナル(例えば、上記のもの)の場合、mp58マンノプロテイン自体に加えて、mp58マンノプロテインの特定のエピトープが検出され得る。本発明のアッセイの使用によって同定される検出される抗原は、ウェスタンイムノブロット及び他の類似の試験を含む多数の従来の方法によって検出され得る。
本発明のアッセイに関し、これらのアッセイは、標識された形態の本発明の抗体を使用し得、そして抗体を標識する全ての周知の方法(酵素複合体、色素での直接的標識、放射性同位体、蛍光、または粒子状標識(例えば、リポソーム、ラテックス、ポリスチレン、及びコロイド金属または非金属)が挙げられるが、限定されない)が企図される。複合的な抗体アッセイ系(例えば、抗原捕捉サンドイッチアッセイ)も本発明の範囲内である。さらに、標識タンパク質を含む競合免疫アッセイまたは血清抗体を検出するための標識タンパク質を用いるアッセイも本発明の診断アッセイの企図される形態である。溶液中で行う診断アッセイ以外に、固定化抗体またはタンパク質を含むアッセイも本発明の範囲内であると考えられる。(例えば、Milesら、Lancet 2:492、1968;Berryら、J.Virol.Met.34:91−100、1991;Engvallら、G.Immunochemistry、8:871、1971、Tom、Liposomes and Immunology、Elsevier/North Holland、New York、N.Y.、1980;Gribnauら、J.of Chromatogr.376:175−89、1986及び本明細書中に引用された全ての参照文献を参照のこと)。本発明において用いられ得る標識の型の例としては、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物、粒子、及び金属キレートが挙げられるがこれらに限定されない。当業者は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体(または抗原)に結合する他の適切な標識を知るか、またはルーチン実験の使用によってこれらを確認することができる。さらに、モノクローナルまたはポリクローナル抗体(または抗原)へのこれらの標識の結合は、当業者に一般的に知られている標準的な技術を用いて達成され得る。
本発明のアッセイ試薬(一般的にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または抗原)が検出可能に標識され得る方法のうち1つは、酵素へのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または抗原の結合によるものである。次いで、この酵素は、後でその基質に曝されたときに、例えば、分光法または蛍光法の手段によって検出され得る化学的部分を産生するような様式で基質と反応する。本発明の試薬を検出可能に標識するために用いられ得る酵素の例としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−VI−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
本発明の検出可能に標識された試薬の存在は、ガンマカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用のような手段によって検出され得る放射性同位体を用いて試薬を標識することによって検出され得る。本発明の目的に特に有用な同位体は、.sup.3 H.、sup.125 I.、sup.32 P、sup.35 S、.sup.14C、sup.51 Cr、sup.36 Cl、sup.57 Co、sup.58 Co、sup.59 Fe、sup.75 Seである。蛍光化合物でモノクローナルまたはポリクローナル抗体を標識することによって、本発明の検出可能に標識された試薬の結合を検出することも可能である。蛍光標識試薬が適切な波長の光に曝されると次いで、その色素の蛍光に起因して、その存在が検出され得る。最も一般的に用いられる蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド(o−phthaldehyde)、及びフルオレスカミンである。本発明の試薬はまた、化学発光化合物に結合させることによって検出可能に標識され得る。次いで、化学発光標識された試薬の存在は、化学反応の進行する間に生じる発光の存在を検出することによって測定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノ−ル、セロマチックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。同様に、生物発光化合物は、本発明の試薬を標識するために用いられ得る。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加させる生物系において見出される化学発光の1つのタイプである。生物発光試薬の存在は、発光の存在を検出することによって測定される。標識の目的に重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンである。
本発明と組み合わせて用いられる場合に、より高い感度をもたらし得る別の技術は、低分子量ハプテンへの本発明のモノクローナルまたはポリクローナル抗体の結合からなる。次いで、ハプテンは、第二の反応の手段によって特異的に検出され得る。例えば、この様式で、ビオチン(アビジンと反応する)またはジヒトロフェノール、ピリドキサル及びフルオレスカミン(特定の抗ハプテン抗体と反応する)のようなハプテンを用いることが一般的である。検出可能であるがなお未知の量のCandida抗原を含む任意の生物学的サンプルがアッセイにおいて用いられ得る。通常、好ましくはサンプルは、液体(例えば、尿、唾液、脳脊髄液、血液、血清等)または固体もしくは半固体(例えば、組織、便など)である。
本発明の診断アッセイは、キットの形態のそのようなアッセイを含む。このキットは、必要に応じて固定化され得る、上記のような(mp58マンノプロテイン全体またはその活性な免疫反応性フラグメントもしくはアナログに対して生じる)mp58マンノプロテイン及び/またはそのエピトープに対する抗体、ならびに生物学的サンプルを調製するため及び分析を実施するために必要な任意の試薬及び装置(例えば、保存剤、反応媒体(例えば、非毒性緩衝液)、マイクロタイタープレート、マイクロピペット等)を含む。試薬(Abs及び/または抗原)は、凍結乾燥または低温保存され得る。上記のように、アッセイのフォーマットに依存して、抗体が標識され得るか、またはキットがさらに、生物学的流体または組織中のmp58に対する抗体の検出を可能にするような関連するエピトープを含む標識されたmp58マンノプロテイン、そのフラグメントもしくはアナログを含み得る。アナログとは、その天然に存在するものとは異なり得るタンパク質もしくはペプチド、または1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/または付加による組換え対応物であるが、タンパク質全体に対して生じる抗体によって認識される能力を保持するものを意味する。例は、抗原全体またはその免疫応答性フラグメントの担体/抗原融合ポリペプチドであり、ここで、抗原またはフラグメントは、担体ポリペプチド内に包埋、またはいずれかの末端で担体ポリペプチドに連結され得る。従って、本発明に従う抗体は、そのようなアナログも認識し得る。キット形態に組み込まれ得るイムノアッセイのタイプは多い。本発明の抗体を使用し得るいくつかのイムノアッセイのうち代表的な例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)及びイムノメトリック(immunometric)、またはサンドイッチ、イムノアッセイである。
「イムノメトリックアッセイ」または「サンドイッチイムノアッセイ」とは、同時(simultaneous)サンドイッチ、フォワード(forward)サンドイッチ及びリバース(reverse)サンドイッチイムノアッセイを含むことを意味する。これらの用語は、当業者に十分に理解されている。当業者は、本発明のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び/または抗原が、現在知られている、または将来に開発され得るイムノアッセイの他のバリエーション及び形態において有用であることを理解する。これらは、本発明の範囲内に含まれることが意図される。フォワードサンドイッチイムノアッセイにおいて、サンプルは、最初に、抗原に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を含む固相免疫吸着剤と共にインキュベートされる。インキュベーションを、サンプル中の抗原が固相において固定化された抗体に結合するのに十分な時間続けられる。第一のインキュベーションの後、固相免疫吸着剤は、インキュベーション混合物から分離され、そしてサンプル中に存在し得る過剰の抗原及び他の干渉物質(例えば、非特異的結合タンパク質)を除去するために洗浄される。固定化抗体に結合した抗原を含む固相免疫吸着剤は、引き続いて可溶性標識化抗体(単数または複数)と共に第二の時間インキュベートされる。第二のインキュベーションの後、結合していない標識抗体を固相免疫吸着剤から除去するため及び非特異的結合した標識化抗体を除去するために更なる洗浄が実施される。次いで、固相免疫吸着剤に結合した標識化抗体が検出され、そして検出された標識化抗体の量は元のサンプル中に存在する抗原の量の直接的な尺度としての役割を果たす。
あるいは、免疫吸着剤複合体に結合しない標識化抗体も検出され得る(この場合、この尺度は、サンプル中に存在する抗原の量に対して反比例する)。フォワードサンドイッチアッセイは、例えば、米国特許第3,867,517号;同第4,012,294号及び4,376,110号(本明細書中に参考として援用される)に記載されている。フォーワードイムノメトリックアッセイの実施において、このプロセスは、より詳細には、(a)第一にサンプルと固相結合抗体との混合物を形成すること、及びこの混合物をサンプル中の抗原が固相結合抗体に結合するのに十分な時間及び条件下でインキュベートすること、(b)工程(a)のインキュベーションの後、この混合物に検出可能に標識した抗体(単数または複数)を添加し、そして新しく得られた混合物を、標識化抗体が固相免疫吸着剤上の抗原−抗体複合体に結合することを可能にするのに十分な時間及び条件下でインキュベートすること;(c)工程(b)におけるインキュベーションの後、混合物から固相免疫吸着剤を分離すること;ならびに(d)固相免疫吸着剤上の抗原−抗体複合体に結合した標識化抗体(単数または複数)またはこれに結合していない抗体のいずれかを検出することを含み得る。
リバースサンドイッチアッセイにおいて、サンプルは、最初に、標識化抗体と共にインキュベートされ、その後、それに複数の固定化抗体を含む固相免疫吸着剤が添加され、そして第二のインキュベーションが実施される。フォワードサンドイッチアッセイの最初の洗浄工程は必要とされないが、洗浄は第二のインキュベーションの後に実施される。リバースサンドイッチアッセイは、例えば、米国特許第4,098,876号及び同第4,376,110号に記載されている。リバースイムノメトリックアッセイの実施において、このプロセスは、より詳細には;(a)第一にサンプルと可溶性の検出可能に標識された抗体との混合物を、サンプル中の抗原が標識化抗体に結合することを可能にするのに十分な時間及び条件下で形成すること;(b)工程(a)のインキュベーションの後、この混合物に、固相結合抗体を添加し、そして新しく得られた混合物を、標識化抗体に結合した抗原が固相抗体に結合することを可能にするのに十分な時間及び条件下でインキュベートすること;(c)工程(b)におけるインキュベーションの後、インキュベーティング混合物から固相免疫吸着剤を分離すること;ならびに(d)固相免疫吸着剤に結合した標識化抗体またはこれと結合していない抗体のいずれかを検出することを含み得る。
同時サンドイッチアッセイにおいて、サンプル、複数の固定化抗体を有する免疫吸着剤及び標識化可溶性抗体(単数または複数)が1回のインキュベーション工程で同時にインキュベートされる。この同時アッセイは、一回のインキュベーションを必要とするのみであり、そして洗浄工程を含まない。同時アッセイの使用は、断然好ましいものである。この型のアッセイは、操作の容易さ、均質性、再現性、ならびにアッセイの線形性及び高精度をもたらす。抗原を含むサンプル、固定化抗体を有する固相免疫吸着剤及び標識化可溶性抗体(単数または複数)は、抗原が固定化抗体及び可溶性抗体に結合することを可能にするのに十分な条件及び時間でインキュベートされる。一般的に、可能な限り多くの抗原を結合するのに十分なインキュベーション条件を提供することは、固相への標識化抗体の結合を最大化し、それによりシグナルを増強するので、このことが所望される。時間及び温度の代表的な条件は、45℃で2時間、または37℃で12時間である。標識化抗体は溶液中にあるのに対し、固定化抗体は固相の支持体に結合しているので、代表的に、抗原は、固定化抗体より標識化抗体により迅速に結合する。このことに起因して、標識化抗体は、固定化抗体より低濃度で使用され得、そして標識化抗体について高い比活性を使用することが好ましい。例えば、標識化抗体は、アッセイ毎に約1〜50ngの濃度で用いられ、一方、固定化抗体は、抗体当りアッセイ毎に10〜500ngの濃度を有し得る。標識化抗体は、例えば、1分子当り1つの放射性ヨウ素、または抗体分子当り2つ以上の放射性ヨウ素程度の高さの比活性を有し得る。
当然、標識化及び固定化抗体の特定の濃度、インキュベーションの温度及び時間、ならびに他のアッセイ条件は、サンプル中の抗原の濃度、サンプルの性質等を含む多くの因子に依存して変化し得る。当業者は、ルーチン実験を使用することによって、各々の測定について、操作可能で最適なアッセイ条件を決定することができる。
多価抗原を含むサンプルに対する同時イムノメトリックアッセイの実施において、このプロセスは、より詳細には:(a)固相結合抗体及び可溶性標識化抗体(単数または複数)と共にサンプルを含む混合物を同時に形成すること;(b)工程(a)で形成された混合物を、サンプル中の抗原が固定化及び標識化抗体の両方に結合することを可能にするのに十分な時間及び条件下でインキュベートすること;(c)インキュベーションの後、インキュベーション混合物から固相免疫吸着剤を分離すること;ならびに(d)固相免疫吸着剤に結合した標識化抗体またはそれに結合していない標識化抗体のいずれかを検出することを含み得る。当然、洗浄、攪拌、振とう、ろ過等のような他の工程が、任意の特定の状況について慣用または必要であるように、これらのアッセイに加えられ得る。
本発明において用いられている、及び用いられ得る多くの固相免疫吸着剤が存在する。周知の免疫吸着剤としては、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、デキストラン、ナイロン及び他の材料;そのような材料から形成された、またはコーティングされた、チューブ、ビーズ及びマイクロタイタープレート等が挙げられる。固定化抗体は、例えば、アミドまたはエステル結合を介する共有結合のような技術によって、または吸収によって、固相免疫吸着剤に共有結合または物理的結合のいずれかで結合され得る。当業者は、多くの他の適切な固相免疫吸着剤及びそれに抗体を固定化するための方法を知るか、またはルーチン実験のみを用いて、それを確認することができる。
キット
上記のように、本発明に従い、上記のような本発明の抗体は、カンジダ感染を診断するためのキットにおいて用いられ得る。そのような診断キットは、当該分野において周知であり、そして一般的に、本発明の抗体に結合する真菌、エピトープもしくはタンパク質の存在を決定するのに適するように調製される。これらの診断キットは、一般的に、当業者に容易に理解されるような、抗体による結合を検出するのに適する手段と共に本発明の抗体を含む。例えば、抗体の結合を検出するための手段は、この抗体に結合する検出可能な標識を含み得る。次いで、これらのキットは、カンジダの感染の存在を検出するための診断方法において用いられ得、ここで、そのような感染を有することが疑われる生物学的サンプル(例えば、個体からとった(例えば、血液、唾液、尿、脳脊髄液、尿生殖器管、組織、骨、筋肉、軟骨、または皮膚由来の)サンプル)を得、このサンプルに、上記の1つ以上の抗体を導入し、次いで抗体がこのサンプルに結合するか(このことは、サンプル中のそのような微生物の存在を示す)否かを決定する。
さらに、上記のように、これらのキットはまた、ヒトまたは動物の患者の血清中のCandida抗体または抗原のレベルをモニタリングする方法において有用であり得る。Candida抗原のレベルをモニタリングすることが所望される場合、このキットは、この抗体への結合のレベルを決定するための手段と共に上記のような本発明に従うCandida抗体を含む。サンプル中のCandida抗体のレベルを測定することが所望される場合、このキットは、好ましくは、上記のような単離したCandidaエピトープ炭水化物部分タンパク質、またはペプチド(例えば、mp58マンノプロテイン(配列番号2)及びその活性領域エピトープ(配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11を含む)からなる群より選択されるタンパク質またはペプチドを、サンプル中のCandida抗体に対するの結合を検出するための手段と共に含む。
感染に対する処置または予防
本発明に従い、Candida種の微生物(例えば、C.albicans)によって引き起こされる感染を予防または処置するための方法が提供され、この方法は、そのような処置を必要とするヒトまたは動物の患者に、感染を処置または予防するのに有効な量で、有効量の上記の抗体を投与することを含む。従って、本発明に従い、上記の従来法のいずれか(例えば、局所的、非経口、筋肉内等)での本発明の抗体の有効量の投与は、ヒトまたは動物の患者におけるカンジダ感染を処置または予防する非常に有用な方法を提供する。上記のように、有効量とは、酵母または真菌の付着を防ぐため、または宿主細胞へのカンジダ生物の結合及びコロニー形成を阻害するためのいずれかのために十分であり、従ってそのような感染の処置または予防において有用である使用レベル(例えば、抗体力価)を意味する。さらに、これらの抗体は、多数の他の機構(感染性微生物の直接的な殺傷、増加したオプソニン作用、形態学的変化の阻害等)による保護効果も示し、従って、有効量の抗体は、保護効果を達成するための任意の手段が得られる量を含む。当業者により認識されるように、感染の処置または予防において有効であるために必要な抗体力価のレベルは、患者の性質及び状態ならびに/または先在する感染の重篤度に依存して変化する。
免疫応答の誘発
本発明に従い、ヒトまたは動物における免疫反応を誘発するための方法が提供され、この方法は、ヒトまたは動物に、免疫応答を誘発するために上記のような免疫有効量の単離したmp58マンノプロテイン、または免疫原性フラグメント、領域またはエピトープを投与することを含む。上記のように、免疫反応を得るために本発明に従い用いられる抗原の「免疫原性量」とは、免疫原性応答が宿主において誘発されて所望の予防または治療効果がもたらされるような非毒性であるが十分な薬剤の量を意味する。従って、そのような応答を誘発するために必要とされる単離したタンパク質の正確な量は、被験体の種、年齢、及び一般的な条件、ならびに処置される状態の重篤度、用いられる特定の担体またはアジュバント及び投与の様式等に依存して、被験体毎に変化する。本発明は、上記のようなmp58マンノプロテイン及びそのエピトープを認識する抗体を産生する方法も企図し、そしてモノクローナル及びポリクローナル抗体を産生する適切な方法は上により詳細に記載される。
コーティング装置
本発明に従い、上記のような抗体及び組成物は、特定の医療器具及び他のインプラント材料(例えば、補綴デバイス)上での酵母及び真菌感染の発生に対する処置または保護をするためにも用いられ得る。本明細書中に記載される抗体及び/または組成物で有利にコーティングされ得る医療器具またはポリマー生体物質としては、ステープル、縫合糸、代替心臓弁、心補助装置、ハード及びソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ移植物(前眼房または後眼房)、他の移植物(例えば、角膜インレー、ケラトプロテーゼ、血管ステント、エピケラトファリア装置、緑内障シャント、レチナールステープル、強膜バックル、デンタルプロテーゼ、甲状軟骨形成装置、喉頭形成装置、血管移植物、軟及び硬組織補綴物(ポンプ、スティミュレーター及びレコーダーを含む電気装置、聴覚プロテーゼ、ペースメーカー、人工喉頭、歯科インプラント、乳房移植物、陰茎移植物、頭蓋/顔面の腱、人工関節、腱、靱帯、半月および半月板、人工骨、人工組織(人工膵臓、人工心臓、人工四肢、及び心臓弁を含む);ステント、ワイヤ、ガイドワイヤ、静脈内及び中心静脈カテーテル、レーザー及びバルーン血管形成装置、血管及び心臓装置(チューブ、カテーテル、バルーン)、心室補助、血液透析部品、血液酸素供給器、尿道/尿管/尿装置(フォーリーカテーテル、ステント、チューブ及びバルーン)、気道カテーテル(気管内及び気管切開術チューブ及びカフ)、腸内供給チューブ(経鼻胃、胃内及び空腸チューブを含む)、創傷ドレナージ管、体腔(例えば、胸膜、腹膜、頭側、及び心膜の腔)から排水するために用いられるチューブ、血液バッグ、試験管、血液回収チューブ、採血管、シリンジ、針、ピペット、ピペットチップ、及び血液チュービングが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で用いられる場合、用語「コーティングされた」または「コーティング」とは、装置の表面(好ましくは、Candida種の微生物により引き起こされる感染のような酵母または真菌の感染に曝される外部表面)に上記の抗体または組成物を塗布することを意味することは、当業者に理解される。デバイスの表面が、完全にこのタンパク質、抗体または活性フラグメントで覆われる必要はない。
上記のように、本発明の抗体、またはその活性部分もしくはフラグメントは、感染を担う酵母または真菌病原体と哺乳動物宿主との間の物理的相互作用を妨げるためにも有用であり得、そして酵母または真菌が細胞外マトリクスタンパク質(例えば、フィブリノーゲン)に付着する能力を妨げることにおいても有用であり得る。従って、本発明の抗体は、患者の処置及びカンジダ感染(例えば、カンジダ症)の予防または軽減において、または留置医療器具及び補綴物をより安全に使用するための、それらの中のそのような生物の感染及び侵入の軽減及び排除においても有用であり得る。
簡単には、上記のような本発明の抗体は、ヒト及び動物の患者におけるカンジダ微生物による感染の検出、処置もしくは予防、またはそのような生物によって引き起こされ得る医療器具及び補綴物の感染の予防または軽減において非常に有用であり得る。特に、本発明は、非常に感受性である群(例えば、未熟新生児、AIDS及び衰弱した癌患者であり、そして特に骨髄移植後に頻繁かつ重篤である)におけるそのような感染の処置及び予防において重要である。
本発明の好ましい実施形態の局面を例示する以下の実施例が提供される。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らによって見出されている技術を表し、従って、その実施のための好ましい様式を構成すると考えられ得ることが、当業者に理解されるべきである。しかし、当業者は、本発明の開示の点から、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変化がなされ得、そしてなお同じまたは同様の結果を得ることを理解する。
実施例1.Candida albicans由来の細胞壁タンパク質及びマンノプロテインの同定及び特徴付け
導入
Candida albicansの表面上の58キロダルトンのマンノプロテイン(mp58)は、非常に免疫原性であり、試験される全てのC.albicans分離株によって発現され、そしてカンジダ症の間に強力な抗体応答を誘発する。それは、Aspergillusの種々の種においてもホモログを有する免疫優性真菌抗原のファミリーに属する。mp58のコード遺伝子(FBP1/PRA1)のDNA配列から推定されるそのタンパク質部分のアミノ酸配列を、誘導体化ポリエチレンピンの表面に共有結合したオーバーラッピングドデカペプチド(オーバーラップ、7:オフセット、5)の完全セットを合成するために用いた。このピンに結合したペプチドを、改変酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)において用いて、抗mp58抗体を含む多数の抗血清調製物によって認識される連続するエピトープを同定した。この包括的なエピトープ走査研究によって、このタンパク質配列内に多数の免疫反応性の連続するB細胞エピトープの存在が明らかになった。反応性の増加した領域は、成熟タンパク質のアミノ及びカルボキシ末端の両方(夫々、アミノ酸残基16〜50及び286〜299を含む)、ならびにアミノ酸66〜92位、121〜142位、148〜192位、及び211〜232位にわたる内部領域を含んでいた。エピトープ領域のさらなる描写及び抗原性部位の境界の同定を、mp58のタンパク質部分におけるこれらの反応領域にわたる完全オーバーラッピング8マーペプチドからなる第二のPepsetを用いるELISA試験で実施した。このタンパク質のC末端の高度に反応性のエピトープ領域を、ウインドウネット及びリプレースメントネット分析の両方を用いてさらに評価した。このタンパク質のC末端の最後の10アミノ酸残基に対応する合成ペプチドは、担体タンパク質に結合した後にマウスに注射した場合、免疫原性であった。さらに、得られた血清中の抗体は、ELISA及びイムノブロットアッセイにおいて相同のmp58を認識した。mp58に応答する抗体の描写は、カンジダ症の管理のための新規の免疫に基づく予防、治療、及び診断技術の開発の基礎を提供する。
背景及び意義
Candida albicansは、ヒトの共生性及び日和見性病原体の両方である二形性真菌である。宿主の欠損に依存して、Candidaは、粘膜性から命を脅かす播種性のカンジダ症の範囲をとる種々の感染を引き起こすことができ、宿主の実質的に全ての器官に感染する能力を有する(1、2)。カンジダ症の素因となる因子としては、免疫抑制療法、大量の抗生物質療法、細胞毒性療法、静脈内カテーテル及び留置装置、非常に軽い出生時体重、AIDS、糖尿病、移植医療、薬物依存等が挙げられる(1)。初期及び正確な診断手順に欠けること、最も一般的かつ有効な処置により示される高い毒性、及び経験則による予防処置に起因する耐性株の発生は、播種性感染に関連する高い罹患率及び死亡率の原因である(3)。これらの理由に起因して、予防戦略の開発、及びカンジダ症を管理するための多成分のアプローチを促進または補完するための新規または代替的な治療についての研究に非常に興味が持たれている。しかし、多数の研究者のグループの努力にも関わらず、この微生物の病原性機構の我々の現在の理解、及び宿主の感受性を決定する因子の我々の知見は、なお、予備的領域にある。C.albicansの推定毒性因子の提唱されるリストとしては、形態学的変化、抗原変異性、表現型転換、宿主構造に対する付着、細胞表面の疎水性、分子擬態、及び細胞外酵素の産生が挙げられる(4)。細胞の外側のほとんどの部分として、細胞壁は、これらの活性のほとんどが存在する構造である。C.albicansの細胞壁は、グルカン及びキチンが硬い微小繊維ネットワークを形成し、そしてタンパク質及びグリコ(マンノ)プロテインがこの骨格中に包理されておりかつその外側表面にも存在する、複合的な多層構造である(5)。今日、細胞壁は、共生性または病原性の生活形態への適合に有用な可変性構成成分を示差的に発現する能力を有する高度に動的なオルガネラとして認識されている。タンパク質及びマンノプロテインは、構造及び生理学的観点の両方から重要な役割を果たすと考えられており、そして形態形成(6、7)、細胞表面疎水性(8−11)、付着(12−15)、ならびに抗原提示及び免疫調節(5、16)のようなプロセスに関与し得る。
以前に言及されるように、病原性は、宿主に関連する因子にも依存する。より具体的には、宿主の免疫学的状態は、真菌感染に対する感受性に特に関連するようである。C.albicans及び他の病原性真菌の場合、保護のための細胞性防御機構の重要性は、ほとんどの侵襲性の形質発現が、細胞免疫における欠損を有する患者において検出されるという事実によって支持される(17)。細胞媒介免疫(T細胞)及び非特異的細胞免疫(マクロファージ、好中球及びNK細胞)は、一般的に、カンジダ症に対する保護において重要な役割を果たすと考えられている(17)。しかし、カンジダ症及び他の真菌感染における体液性免疫の役割は、抗体免疫の重要性の支持または否定のいずれかの矛盾した報告のある論点のままである(18)。抗体免疫の重要性に対する矛盾する証拠のいくつかは、免疫血清における保護、非保護、及び感染増強抗体応答の存在する液性応答の複雑な性質によって説明され得る(18)。C.albicansに対する抗体が宿主の防御に寄与し得る多数の機構が存在する。本発明者らのグループは以前に、菌糸抗原に対するMabのFabフラグメントが、増大した付着及び侵襲に関連する酵母から菌糸への変化を阻害することを記載しており(6)、そして本発明者らは、細胞壁成分に対する抗体が宿主組織への付着を防ぐことも実証している(19)。抗体は、直接的なカンジダ殺傷能力も示し得(20)、オプソニック抗体は食作用を刺激し得(21)、そしてこれらは、免疫調節多糖に結合し得る(22)。近年、いくつかの抗体が感染の進行の間、宿主に有利な免疫保護機構を示し得る多数の説得力のある証拠が出てきており、従って、このことは、カンジダ症を予防するためのワクチンアプローチの可能性を示唆している。最近の報告は、いくつかの抗体が粘膜(膣)のカンジダ症における保護を媒介し得ることを明白に実証している(20、23−25)。より重要なのは、播種性感染の場合、患者の回復は、血清中のC.albicans HSP90に対する抗体の存在に対応することが見出された(26−29)。より最近には、Han及びCutlerは、マンナンアドヘシンに対する抗体が、宿主の播種性カンジダ症の耐性を補助し得ることを実証した(30)。両方の場合において、抗体保護応答を誘発する分子(HSP90及びマンナンアドヘシン)が細胞壁成分であり(47kDa細胞壁部分はHSP90の分解産物である、31)、そしてこの観察が上で議論される細胞壁成分の位置及び機能に関連するという事実を強調することが重要である。
本発明者らの仕事は、C.albicansの細胞壁タンパク質及びマンノプロテインの同定及び特徴付けに焦点を当てており、宿主細胞及び組織に対する付着に関連する表面成分に特に注目する。幾つかの他の病原性微生物と同様に、C.albicansにおいて、宿主細胞及び組織への真菌の付着は、感染の確立をもたらす最初の過程であり、次いで、血行性の伝播が、身体を通じての播種性の感染をもたらし得ると考えられている(12、13)。これらの付着プロセスは、真菌及び宿主の両方の表面における補体分子によって媒介される。この文脈において、糖部分(最も一般的にはマンナンとして知られている)が相互作用において必須の役割を果たすようである種に加えて、インテグリン及びレクチン様の活性を有する分子を含む、いくつかのカテゴリーのレセプター様分子(用語アドヘシンを用いても示される)が、C.albicansの表面上で同定されている(12)。以前に記載されているアドヘシンとしては、インテグリンβ1サブユニット(32)、補体フラグメントiC3b及びC3dについてのレセプター(33〜37)、種々の血清タンパク質(38〜40)及び多数の細胞外マトリクス(ECM)成分(ラミニン(41、42)、フィブロネクチン(43〜46)、コラーゲン(43、45)、エンタクチン(19)及びビトロネクチン(47));プラスチックに対する結合を媒介し(48)そして細胞表面疎水性を担う(10、11)部分;真菌が脾臓及びリンパ節においてマクロファージに結合するマンナン部分を含む独特の付着系(49〜53);線毛アドヘシン(54、55);ならびに上皮細胞への付着を媒介する細胞外アドヘシン(56、57)に対して惹起された抗血清に対して交差反応性を示した分子が挙げられる。Candidaによって提示されるアドヘシンのこのレパートリーは、おそらく、宿主においてそれが侵襲し得る部位の範囲を反映しており、付着に対する種々のレセプター様分子の寄与は、それが上皮細胞、正常の内皮または露出した細胞外マトリクスのいずれであるかによって、細胞または組織のタイプに依存して異なり得る(12、14)。本発明者らは、C.albicansの表面上の58kDaのフィブリノーゲン結合マンノプロテイン(mp58)、及びその精製した成分に対して生じたポリクローナル抗体(PAb抗mp58)を同定、特徴付け、及びクローニングした(39)。mp58は、明らかに、真菌の両方の形態学的フェーズのβ−メルカプトエタノール(β−ME)細胞壁抽出物における主要な成分である。それは、N−及びO−グリコシル化の両方である。共焦点顕微鏡法研究によって、mp58が真菌の表面に沿って不均一に分布していることが明らかになった(58)。それは他の表面アドヘシン(例えば、ラミニンレセプター(41、42)、エンタクチンレセプター(19)、及び補体因子を結合するレセプター(59))とは異なり、そしてそれは非常に疎水性である(11、60)。mp58は、試験される全てのC.albicans株(コレクション株及び新鮮な臨床分離株を含む)において発現される。さらに、それは、真菌細胞感染組織において発現される(39)。表在性形態のカンジダ症に罹患する患者及びコントロールの(正常な)個体ではなく、播種性カンジダ症に罹患する患者由来の血清は、mp58に対する抗体を保有する。これらの観察は、C.albicansと宿主との間の相互作用の間のmp58の能動的な役割を示唆するようである。
C.albicansの58kDaの細胞表面フィブリノーゲン結合マンノプロテインの同定及び特徴付け
多数の研究が、細胞壁のタンパク質組成に関連する高い程度の複雑性を示している。一般的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロット技術が、カンジダ細胞壁のタンパク質及びマンノプロテインを研究及び分析するために用いられてきた(61〜65)。本発明者らは、C.albicansのインタクトの細胞からの真性の細胞壁成分の放出をもたらすために化学的(β−ME)及び酵素的(ザイモリアーゼ)可溶化技術の組み合わせを記載した(61、62)。β−MEを用いるC.albicansの酵母細胞及び発芽管の両方の処理は、タンパク質及びマンノプロテインの複雑なアレイの可溶化をもたらした。フィブリノーゲン及び抗フィブリノーゲン抗体の組み合わせを用いるリガンド親和性ブロッティングは、ヒトフィブリノーゲンと特異的に相互作用する両方の真菌形態由来の抽出物中の58kDa成分(mp58)の検出を可能にした(39)。mp58はコンカナバリン(ConA)に対するその反応性によって示されるマンノプロテインである。また、それは、ポリスチレン−ラテックスマイクロビーズを結合するその能力について測定されるように、非常に疎水性である(11、60)。C.albicans発芽管が間接的免疫蛍光実験においてフィブリノーゲンの存在下でインキュベートされた場合、強力な蛍光が観察された。発芽管の起源である母出芽型胞子のほとんど、及び発芽していない酵母細胞は、かすかな蛍光を示したが;しかし、比較的低いパーセンテージの発芽していない出芽型胞子は、強力な蛍光を示した。mp58を精製し、そして精製した調製物をウサギに注射して、この成分に対するポリクローナル抗血清(PAb抗mp58)を産生させた。このポリクローナル抗体をイムノブロット及びIIF技術に用いた場合、認識パターンは、基本的に、フィブリノーゲン結合について検出されたものと同一であった。図1を参照のこと。
C.albicansの表面に沿ったmp58の不均一な分布を、IIFアッセイにおいてプローブとしてフィブリノーゲン及びPAb抗mp58の両方の結合を用いる、共焦点顕微鏡法によってさらに確認した(58)。レセプターのクラスター化は、この微生物と宿主との間の相互作用の安全性を増大した。全身性カンジダ症と確認された患者から検死(剖検)の際に得られたヒト組織検体及び表在性の皮膚及び尿道のカンジダ症を有する患者由来の生検サンプルを、PAb抗mp58を用いて、免疫組織化学染色のために処理した(39)。これらの実験によって、mp58がヒト組織に感染したC.albican細胞の表面上で高いレベルで発現されることが明らかになり、従って、感染の間のmp58の役割を示唆する。mp58のグリコ(マンノ)プロテインの性質をさらに調査した。N結合炭水化物部分を切断するEndo Hでの処理により、ネイティブのmp58の47kDa種への変換が生じた。なおPAb抗mp58によって認識されかつConAに結合することができたこのバンドは、フィブリノーゲンに結合する能力を保持していた。O−結合したオリゴ糖を除去するβ脱離は、その分子量が約1.5kDa減少したので、mp58の電気泳動移動度を有意に変えなかった。興味深いことに、O−脱グリコシル化種は、ConA及びPAb抗mp58との反応性の変化を示さなかったが、フィブリノーゲンとは相互作用することができず、このことは、フィブリノーゲンの結合におけるO−結合した糖残基の役割を示唆する。
いくつかの研究室が、種々の宿主リガンド(例えば、補体因子、ラミニン、及びフィブリノーゲン)に結合するC.albicansのタンパク質について同様のサイズを報告したが、その関連は不明である。また、これらのカンジダレセプターについての複合的な生物学的活性の存在が仮定されている(66)。これらの観察は、本発明者らに、mp58とヒトタンパク質についての他のカンジダレセプターとの間の可能性のある関係を調査させた。次のパラグラフに記載される実験は、明らかに、mp58がレセプター様の活性を示す他のC.albicans分子と異なることを実証する。
mp58と補体フラグメントC3dについてのカンジダレセプターとの比較研究
以前の研究において報告される、これらの2つのレセプター様分子の間のいくつかの類似点としては:1)両方の分子がグリコ(マンノプロテイン)であること、ii)これらのいずれも完全な形態学的特異性を示さないこと、iii)両方が同様の見かけの分子量(約60kDa)を有すること、iv)同様の技術を用いて抽出された細胞壁物質中に見出されたこと、v)感染された組織においてインビボで発現されること、及びvi)両方とも液体培地に分泌された物質中に見出されたことが挙げられる(34、37、39、60、67、68)。しかし、両方の分子の間にはいくつかの相違点も存在する;おそらく、最も重要であるのは、種々のリガンドの結合が同じ分子の異なるドメインを介して生じる可能性はあるが、C3dレセプターの場合、タンパク質部分がリガンド結合に関与する構造であり(13)、一方で、58kDaマンノプロテインの場合、フィブリノーゲン結合がこの分子の糖部分によって媒介されるようであること(39)である。また、これらの差異はこれらの研究において用いられる異なる成長条件に起因し得るが、顕微鏡技術を用いて、両方の抗血清についての認識パターンが異なることが記載されている(39、69)。
本発明者らは、C.albicans C3dレセプター(CR2、PAb抗CR2)及びmp58(PAb抗mp58)に対して惹起された抗体、ならびにリガンド相互作用を、これらの2つの分子の間の関係及びこれらの可能性のあるホモロジーを研究するために用いた(59)。間接的免疫蛍光アッセイにおいて、PAb抗CR2を用いた場合に母(mother)出芽型胞子においてより高い認識が生じ;一方で、プローブとしてPAb抗mp58または可溶性フィブリノーゲンの結合を用いた場合、菌糸の伸長においてより高い蛍光のレベルを観察した。PAb抗CR2レセプター及びフィブリノーゲンまたはPAb抗mp58のいずれかを用いるデュアル標識実験(dual label experiment)において、蛍光パターンにおける競合も変化も観察されなかった。イムノブロットにおいて、PAb抗CR2は、細胞壁由来のβ−ME抽出物において3つの異なる別々のバンドを認識し、一方で、PAb抗mp58の場合、異なる、1つのより広いバンドが検出された。しかし、細胞壁抽出物中に存在する物質を分離するために非変性条件が用いられた場合、ウエスタンブロットにおいてPAb抗mp58では、反応性は検出されなかった。PAb抗CR2をプローブとして用いた場合、約40kDaに対応する領域に泳動する1つのバンドが検出された。これらの観察は、ネイティブの状態における、これらの分子のより高い分子量を示唆し、従ってこれらの分子が、細胞壁構造の一部としてこれら自体または他の細胞壁部分のいずれかと相互作用していることを示す。これらのレセプター様分子と他の細胞壁部分(より具体的にはMab DC3H10により認識されるエピトープを保有する分子(70))との間の関係及び可能性のある相互作用の説明において、全体的な細胞壁機構におけるこれらの分子の間の複雑な相互作用が示唆された(71)。
mp58及びカンジダラミニンレセプターの比較研究
ラミニンは、基底膜の主要成分(細胞外マトリクス、ECMから特殊化する)であり、ここで、それは、IV型コラーゲン及びエンタクチンのような他の成分と相互作用する。それは、正常な細胞接着の間だけでなく、腫瘍細胞及び微生物による組織浸潤及び転移の間にも重要な役割を果たすようである大きいマルチドメイングリコプロテインである。約68〜70kDaの分子量でありC.albicansの菌糸状細胞に特異的なラミニンレセプターが記載されている(41)。しかし、本発明者らの実験条件下及びアフィニティブロッティング実験(上記を参照のこと)を用いると、mp58部分が特異的にフィブリノーゲンと相互作用し、そしてそれは、ラミニンまたはフィブロネクチンと結合することができなかった。さらに、ラミニンの場合、本発明者らは、同じリガンドアフィニティブロッティング技術を用いてラミニンと相互作用する能力を有する、C.albicansの出芽型胞子由来のβ−ME抽出物中に排他的に存在する37及び67kDaの2つのポリペプチドを検出した(42)。37kDa部分(p37)は、ヒト高親和性ラミニンレセプターと抗原性ホモロジーを示し、そしてそれは、IIFによって示されるように、C.albicansの出芽型胞子の表面上に不均一に分布しており、mp58について検出された蛍光パターンと同様の蛍光パターンを有していた。しかし、デュアル蛍光標識実験(dual fluorescence label experiment)において、mp58についてプローブとしてフィブリノーゲン結合を用い、そしてp37についてのプローブとして精製p37に対して産生したポリクローナル抗体(PAb抗p37)の結合を用いて、本発明者らは、各々のレセプターの濃縮領域が異なることを観察し、これは、これらの成分が、潜在的なレセプター複合体として、同じ場所に局在化しなかったことを明らかにした。
C.albicansに対するエンタクチンの結合の特徴付け
エンタクチン(ニドジェンとしても知られている)は、硫酸化グリコプロテインであり、基底膜の成分であり、ここで、それは、ラミニンとタイトな化学量論的複合体を形成し、そしてIV型コラーゲンと相互作用する。本発明者らは、C.albicansとこの最近特徴付けられたECM成分との間の相互作用を調査した(19)。真菌、出芽型胞子、及び出芽型胞子保有発芽管の両方の形態は、間接免疫蛍光アッセイにより検出される場合に、組換えエンタクチンと結合する能力を有していた。C.albicansの両方の成長形態由来のβ−ME細胞壁抽出物中に存在する物質は、用量依存の様式で、固定化組換えエンタクチンと結合することができ、そしてエンタクチンへの結合は、ラミニンについて観察される結合の約2倍であった。エンタクチンとC.albicansとの間の相互作用は、Arg−Gly−Asp−Ser(RGDS)(配列番号12)ペプチドによって部分的に阻害された。C.albicansのエンタクチンレセプターが哺乳動物細胞のエンタクチンレセプターとして報告されているので(72)、このことは、それが、インテグリンファミリーのレセプターに属することを示し得る。種々のC.albicans細胞壁抽出物中に存在する成分に対して惹起されたポリクローナル抗エンタクチン抗血清、及びプールされた抗血清調製物は、完全またはほぼ完全に、結合を破壊した。エンタクチン分子の種々のドメインに結合する形態特異的レセプター様分子の存在が、競合結合アッセイにおいて除外された。細胞壁中のエンタクチン結合物質はラミニン及びフィブロネクチンに結合する幾分かの能力を示したので、これらは、特定の程度の混乱を示した。出芽型胞子及び発芽管の両方由来のβ−ME細胞壁抽出物中に存在する約25、44、及び65kDaの分子量を有する部分が、リガンドアフィニティブロッティング実験において、エンタクチンを結合する能力を有するものとして検出された。これらの部分は、同じ抽出物中に存在するmp58とは明らかに異なっていた。本発明者らの知る限り、これは、エンタクチンについて非宿主部分との相互作用における(より具体的には、病原性微生物の結合における)役割を示唆する最初の文書による報告であり、病原性における重要な意味を有し得る観察である。
C.albicansの臨床株におけるフィブリノーゲン結合マンノプロテイン(mp58)の発現
本発明者らは、出芽型分生子及び出芽型分生子保有発芽管として成長させる条件下で増殖した種々のC.albicansの臨床分離株の細胞壁中のmp58の存在を調査した。種々の株由来のβ−ME細胞壁抽出物に関連するタンパク質組成全体の分析は、高い程度の複雑性及び特定の程度の変動を示し、定性的及び定量的差異の両方が検出された。しかし、技術の組合せを用いて、約58kDaの電気泳動移動度を有し、そしてこの抽出物中の主要な成分であるような部分が、全ての試験された株から検出された。mp58に対して産生された一価ポリクローナル抗体を用いるイムノブロット分析により、株及び培養条件に依存する認識パターンの差異が明らかになった。主要な株は、明らかにリガンドアフィニティ実験においてフィブリノーゲンに結合する能力によって検出されるような、機能的mp58を有する。これらの結果は、mp58が試験した全ての株において一貫して存在し、そして播種性カンジダ症についての潜在的な抗原性マーカーであることを示唆する。図2を参照のこと。
カンジダ症患者由来の血清中の抗体を用いるエピトープマッピング
本発明者らの以前の研究を通して、mp58のタンパク質部分のアミノ酸配列は知られている。mp58の299アミノ酸残基を合成し、そして配列に沿って5残基ずつずれている完全なセットのオーバーラッピングドデカペプチド(12マー)としてピンに結合した。そのようにすることで、このタンパク質からの全ての配列の8残基が少なくとも1つのぺプチド中に表される。これらのオーバーラッピングペプチドは、このタンパク質の全配列(15アミノ酸シグナルペプチド及び284アミノ酸を含む成熟タンパク質を含む)をカバーした。最終的なPepsetは、合計59ペプチド、及び2つのコントロールペプチドからなった。得られたピン−セットは、8×12のマイクロプレートフォーマットに適合し、そして改変ELISA手順を用いてB細胞エピトープについてのサーチにおいて走査され得る。第一のシリーズの実験において、ピンに結合したペプチドを、全身性カンジダ症を有する患者由来の血清サンプル中に存在するIgG抗体により認識される連続するエピトープを同定するための改変酵素結合イムノソルベント検定法に用いた。同定されたIgG反応性ドメインは、C.albicans mp58で免疫した動物由来の血清を用いて同定されたドメインと類似していた(Viudesら、I&I、2001)。タンパク質配列中の2つのドデカペプチドは、コントロール(感染していない)個体由来の血清サンプルを用いた反応と比較して、播種性カンジダ症を有する患者由来の血清と高い反応性を示した(図3を参照のこと)。
該タンパク質のC末端の最後の10アミノ酸残基に対応する合成ペプチド(290HTHADGEVHC298)(配列番号10)は、担体タンパク質に結合した後、2匹のマウスに注射した際、免疫原性であった。さらに、得られた血清は、ELISA及びイムノブロットアッセイにおいて相同のmp58を特異的に認識した。最初の実験は、ヒト血清サンプル中のこの模倣配列に対する抗体の存在を試験するための合成ペプチドに基づく抗体捕捉アッセイを最適化することに関していた。抗体捕捉ELISAの以下のパラメータを評価した:i)ウェルをコーティングするための物質としてKLH結合ペプチドの使用と比較した遊離ペプチドの使用:ii)マイクロタイタープレートのウェルをコーティングするための種々の量のペプチドの使用:iii)合成ペプチドの最適な吸着のための種々の型のELISAプレート(種々の型のプラスチック及び化学修飾したプレートを含む)の使用、iv)種々のコーティングバッファーの使用、v)タンパク質及び界面活性剤を含む種々のブロッキング試薬の使用、vi)様々に希釈した血清の使用。その最終的なフォーマットにおいて、KLH結合ペプチドを、炭酸緩衝液(pH9.6)中、1μg/ウェルの濃度で用いて、Immulon 2 プレートをコーティングするために使用し、4℃での一晩のインキュベーション及びPBSでの洗浄の後、カンジダ症の患者由来の種々の血清サンプル(0.05% Tween20を有するPBS[PBST]及び1%BSA中、1:1,000希釈)をウェルに添加し、そして37℃で1時間インキュベートした。次いで、これらのプレートを、PBSTを用いて洗浄し、そしてペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG(1:2,000希釈)と共に37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、これらのプレートを発色させ(クエン酸緩衝液中のOPD)そしてマイクロタイタープレートリーダーにおいて490nmで読み取った。一旦アッセイを最適化し、播種性カンジダ症の患者(n=13)及びコントロールの個体(n=22)由来のより多い数の血清サンプルを試験した。これらの実験によって、コントロールの個体と比較して、播種性カンジダ症の患者由来の血清サンプルにおいてこのペプチドに対する増加したレベルの抗体を確認した(図4、パネルA及びB)。さらに、抗ペプチド抗体のレベルは死に至った患者と比較して、生存した患者において有意に高く(図4、パネルC)、従って、このペプチドはカンジダ症の間の保護エピトープを表し得ることを示す。(重要なことに、C.albicansのサイトゾル及び2ME抽出物に対する、良好及び死に至る結果となった血清における抗体の反応性のレベルは、同様であり、従って、C末端ペプチドに対するより高いレベルの反応性は、この感染により死亡したものに対する生存者における全体的としてのより高い抗体レベルに起因するものではない)
カンジダ症の患者由来の血清サンプルを、ELISAによって試験して、C末端ペプチドに指向されるIgGサブクラスの分布を評価した。これらの実験の性質は、種々の免疫グロブリンサブクラスの正確な定量をもたらさなかったが、結果は、免疫グロブリンG(IgG)抗体サブクラスがIgG2>IgG1>IgG3>IgG4であることを示した。結果は、全体としてTh1の優勢である、混合Th1/Th2応答(これは、カンジダ症に対する保護に対応していた)を示す(Romani,L.1999.Immunity to Candida albicans:Th1、Th2 cells and beyond.Curr.Opin.Microbiol.2:363−7)。図5を参照のこと。
モノクローナル抗体3H3の産生
mp58の精製のために、βME中の成分を、Laemmliにより記載されるような変性条件下で分取ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離した。mp58に対応するゲルの横断セクション(クマシー染色により識別される)を、切り出し、砕き、そしてポリペプチド部分を電気溶出(electroelute)した。純粋なmp58をアジュバントと混合し、そしてBALB/cマウスに注射した。免疫プロトコルは、第一の注射(完全Freund’アジュバントを用いる)、引き続く3週間間隔での2回のブースター注射(不完全Freund’アジュバントを用いる)、及び融合の3日前のアジュバントを用いない1回の最後のブースター注射から構成されていた(全ての注射は皮下であった)。ハイブリドーマ産生のために、マウスを犠牲にし、それらの脾臓を無菌的に除去した。抗体分泌細胞を単離し、そしてポリエチレングリコールの滴下を用いてミエローマ細胞(NS1)と混合した。融合の後、細胞を選択培地(ビタミン補充したDMEM/HAT)中に希釈し、そしてマルチウェル組織培養ディッシュ中に低密度でプレートした。得られた融合物由来の組織上清をELISA(マイクロタイタープレートのウェルをコーティングするためにトータル2−ME抽出物を用いる)及びイムノブロット技術の両方によってスクリーニングした。これらの陽性ウェルからの細胞を増殖させ、1つ細胞を限界希釈によりクローニングし、そして上清をELISA及びイムノブロットの両方によるさらに1回のスクリーニングに供した。陽性クローンを同定し、そしてモノクローナル抗体をハイブリドーマ上清(3H3を含む)として収集した(これは、IgG1である)。
Mab 3H3により認識されるエピトープの決定を、Multipin Peptide Technology(上記を参照のこと)を用いて実施し、このMabが、ポリクローナル抗血清調製物を用いて、すでに高度に反応性であることが同定されているC末端エピトープを認識したことを実証した(Viudesら、I&I 2001)。Mab 3H3によって認識されるエピトープのさらなる描写を、ウインドウネット及びリプレースメントネットアプローチを用いて実施した。ウインドウネット分析は、Mab 3H3の抗体−結合活性のほとんどを保持する最小限の領域としてノナペプチド290HTHADGEVH298を同定した。これらのヒスチジン残基の各々1つの置換が反応性のレベルにおける急激な減少を生じたので、リプレースメントネット分析によって、抗体による認識におけるヒスチジン(残基290、292及び298)の重要な役割が明らかになった。
ペプチドHTHADGEVHCに対するポリクローナル抗体の応答
mp58のC末端デカペプチドに対応する合成ペプチド(HTHADGEVHC、同定されたノナペプチドエピトープ及びネイティブの末端システイン)は、担体タンパク質(KLH)に結合し、そしてマウスに注射されたときに、免疫原性であった。得られた血清を、種々の免疫学的手順によって特徴付けした。過免疫血清は、マイクロタイタープレートのウェルに結合した遊離のペプチドを、用量依存及び飽和様式で認識した。産生された両方の抗血清は、エンドポイントELISAによって決定される場合の高い力価の抗ぺプチド抗体を保有していた。遊離の可溶性ペプチドは、ペプチド及びmp58への抗体の結合の有効なコンペティター(competitor)であり、この反応の特異性を示した。抗ペプチド抗血清は、相同のC.albicans mp58を認識し、そして細胞壁抽出物中に存在する他の抗原との交差反応性は検出されなかった。この結果は、単一のペプチドモチーフでの免疫が高度に特異的な抗体応答をもたらすこと及びこのデカペプチドが他のカンジダ抗原との有意な配列相同性を欠損していることを示唆する。
モノクローナル抗体(mAb)3H3での受動免疫は、血行中を伝播するカンジダ症に対して保護する
Mab 3H3の保護効果を、血行中を伝播するカンジダ症のマウスモデルにおいて評価した。簡単には、Mab 3H3腹水(ascitis)を2つの異なる濃度(高用量[約1.8mgのIgG]及び低用量[約0.3mgのIgG]、コントロール群には生理食塩水注射を受けた)を、1×106細胞のC.albicansを用いる致死量の静脈内チャレンジでの感染の2時間前に、静脈注射を介してマウスの群に受動的に投与した。感染接種中に存在する細胞の数及び生存力の確認を、プレートカウントにより実施した。保護効果の試験を、感染後、毎日の生存をモニタリングすることによって実施した。生存データ及びグループ間での差異を、カプラン−マイヤーテストを用いて解析した。結果は、高用量の3H3が、コントロールグループと比較して生存を有意に増加させ(p=0.015)、(コントロールの6匹中0匹と比較して)6匹中4匹の処置した動物が15日間より長く生存した。
実施例1に関連して引用される以下の参照文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される:
Figure 2005523017
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実施例2.ヒトカンジダ症における組織侵襲性及び非酸性pHは、新規モノクローナル抗体1H4により認識される炭水化物エピトープの、C.albicansによる「インビボ」発現と相関する。
侵襲性カンジダ症は、免疫無防備状態患者における罹患及び死亡の主要な要因である。酵母と菌糸成長形態との間の形態学的変化は、明らかに、侵襲性カンジダ症の病因において重要であり、そして細胞外pHのような環境シグナルによって調節され得る。本発明者らは、Candida albicansの58キロダルトン細胞壁マンノプロテイン(mp58)に対して産生されるモノクローナル抗体1H4によって認識されるエピトープを特徴付け、そして種々の条件のpH及び温度下で、表在性及び全身性カンジダ症の患者由来の種々のヒト組織において「インビボ」で培養されたC.albicans細胞におけるその対応するエピトープの発現を評価した。本発明者らの結果は、1H4がC.albicans細胞の表面上のpH感受性の炭水化物エピトープを認識すること、及びこのエピトープがmp58に限定されず、他の細胞壁マンノプロテインと共有されることを示す。免疫組織化学的知見は、ヒトカンジダ症由来の組織切片中でのC.albicans細胞上の1H4エピトープの発現が、ニッチの組織侵襲及びpHに関連することを示した。従って、1H4エピトープの発現が侵襲性及び潜在的に攻撃的な形態のCandida albicansを選択的に同定するという事実は、ヒトカンジダ症の管理におけるその潜在的な価値を支持する。
細胞壁抽出物の生物、培養条件、および調製
C.albicans 3153A株をこの研究において用いた。それを2%(W/V)寒天を含むSabouraud培地上で維持した。酵母細胞を22℃で、Leeらの培地中での懸濁培養で増殖させた(9)。発芽管を、同じ培地中で37℃で4〜6時間、インキュベートすることによって定常期の酵母細胞から誘導した。細胞壁抽出物を、既述のようにβ−メルカプトエタノール(β−ME)での処理によってインタクトの細胞(発芽管)から調製した(10)。簡単には、発芽管を、1%(v/v)のβ−MEを含むアルカリ緩衝液中に再懸濁し、そして穏やかに攪拌しながら37℃で45分間インキュベートした。処理後、これらの細胞を沈殿させ、そして上清流体を回収し、透析し、そして凍結乾燥した(β−ME抽出物)。この抽出物中の総糖分量を、標準法によりマンノースを用いて比色測定した。
別の系列の実験(凝集、以下を参照のこと)において、C.albicans 3153A、SC5314及び412株(11)の液体培養物を、予め中性(pH6.8〜7.2)または酸性(pH4.0)pHに調整しておいた種々の培地(酵母ペプトンデキストロース(YPD、1% w/v酵母エキス、2% w/vペプトン、2% w/vデキストロース[US Biological,Swampscott、MA])、Lee及びRPMI 1640(Angus Buffers and Chemicals、Niagara Falls、NY)における種々の温度での一晩のインキュベーションによって得た。
C.albicans mp58の精製
mp58の精製のために、β−ME中の成分を、変性条件下でのプレパラティブドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離した。簡単には、約10mg(総糖含量に基づく)の対応するβ−ME抽出物を、幅13cm×高さ20cmの5〜15%のポリアクリルアミドスラブグラジエントゲルに添加した。予め染色した分子量標準(Gibco−BRL、Life Technologies Inc.、Gaitherburg、Md)を、分離ゲルスラブの一方の端に形成される1つの参照ウェルにおいて平行して展開させた。mp58に対応するゲルの横断セクション(クマシー染色によって識別される)を、切り出し、砕き、そしてポリペプチド部分を電気溶出(electroelute)した(12)。
1H4モノクローナル抗体(Mab)の産生
二匹の(BALB/c)マウスを、プレパラティブ電気泳動により精製した25μgのmp58で免疫し、引き続きゲルスライスから電気溶出した(上記を参照のこと)。免疫プロトコルは、第一の注射(完全Freund’アジュバントを用いる)、引き続く3週間間隔での2回のブースター注射(不完全Freund’アジュバントを用いる)、及び融合の3日前のアジュバントを用いない1回の最後のブースター注射から構成されていた(全ての注射は皮下であった)。ハイブリドーマ産生のために、マウスを犠牲にし、それらの脾臓を無菌的に除去した。抗体分泌細胞を単離し、そしてポリエチレングリコールの滴下を用いてミエローマ細胞(NS1)と混合した。融合の後、細胞を選択培地中に希釈し、そしてマルチウェル組織培養ディッシュ中に低密度でプレートした。C.albicans mp58に対する抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株をELISA及びイムノブロット手順の両方によってスクリーニングし、そして1つの細胞を限界希釈法によってサブクローニングした。1H4と示されるMab(アイソタイピングキット(Zymed)によって決定されたIgG1)を産生するハイブリドーマ細胞株を確立した。この細胞株1H4についての腹水を、プリスタンでプライムされた(pristan−primed)マウスにおいて対応するハイブリドーマを用いて調製した。
イムノブロットアッセイ
イムノブロットのために、C.albicans 3153A β−ME抽出物中に存在する物質をプレキャスト4%〜15%グラジエントミニゲル(Bio−Rad)を用いるSDS−PAGEによって分離し、そしてニトロセルロース膜に移した。3%のBSA(w/v)を含む、0.9%(w/v)NaClを補充したTris−HCl緩衝液(TBS)中で膜をブロッキングした後、これらを、Mab 1H4(0.05% Tween20及び1% BSAを有するTBS中に1:1,000希釈)の存在下またはC.albicans細胞壁抽出物に対して産生したウサギポリクローナル抗血清と共にインキュベートした(13)。ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスまたは抗ウサギ免疫グロブリン(Bio−Rad)を、二次抗体として用いた。発色試薬としてH22及び4−クロロ−1−ナプトール(4-chloro-1-napthol)を用いて有色反応性バンドを発色させた。
Mab 1H4と反応性の抗原性調製物の過ヨウ素酸塩処理
1H4 Mabにより認識されるエピトープの性質を特徴付けるために、1H4 Mabと最初に反応する抗原性調製物の過ヨウ素酸塩処理を、改変ELISAアッセイを用いて実施した(14)。簡単には、β−ME抽出物または精製mp58を用いて、マイクロタイタープレート(Immulon2)の選択されたウェルをコーティングした。一晩のインキュベーションの後、ウェルを、0.05%Tween 20を添加したリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)(PBS)(PBST)で4回洗浄した。次いで、プレートを、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)でリンスし、そして過ヨウ素酸塩に曝した。次いで、ウェルのセットを暗所中室温で10mMのm−過ヨウ素酸ナトリウム(Sigma)に、1時間曝した。次いで、これらのプレートを、酢酸ナトリウム緩衝液で洗浄し、そしてアルデヒド基を1%グリシン溶液を用いてブロックした。次いで、これらのプレートをPBSTを用いて4回洗浄し、そして200μlの1:1,000希釈のMab 1H4 1%BSA含有PBSTと共に1時間インキュベートした。このプレートを洗浄し、そして1%BSA添加PBST中に1:2,000希釈でヤギ抗マウスIgG(Bio−Rad)をマイクロタイタープレートのウェルに添加し、そして1時間インキュベートした。前記のように洗浄した後、200μl/ウェルのo−フェニレンジアミン基質を、添加し、暗所中で穏やかに攪拌しながら、10分間発色させた。100μl/ウェルの1M H2SO4を添加することによって発色を止め、そしてプレートを、Benchmark microplate reader(Bio−Rad、Hercules、Calif.)において490nmで読み取った。
凝集実験
スライド凝集試験を、Mab 1H4を分泌するハイブリドーマ由来の過剰増殖した(overgrown)組織培養物上清15μlと酵母細胞懸濁液(約2×108細胞/ml)30μlとを直接混合することによって実施した。これらの調製物を、室温で1分間混合し、そして裸眼及び低出力明視野顕微鏡法による凝集の観察によって凝集を測定した。凝集反応を、非常に強い(+++)、強い(++)、中間(+)、弱い(+/−)、または凝集なし(−)として記録した。
組織
粘膜皮膚及び全身性カンジダ症の患者由来の24のヒト組織サンプルを、Department of Pathology、Hospital Clinico Universitario、Valenciaのファイルから取り出した。14のサンプルを、検死試験の間に得、そして9つは、切開または内視鏡生検に対応した。これらのケースは広範囲に特徴付けされている(15、16)。
免疫組織化学
免疫組織化学的研究を、4μmのパラフィンに包埋した組織切片に対して、以前に記載されているようにアビジン−ビオチンイムノペルオキシダーゼ技術によって実施した(15)。これらの組織切片を無水メタノール中0.3%のH22に30分間曝すことによって内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。インキュベーションのシークエンスは、以下の通りであった:2%正常なウマ血清(20分間)、1H4培養物上清(45分間)、ビオチン化ウマ抗マウスIgG(Vector、Burligame、CA)(30分間)、及びアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(Vector)(45分間)。反応物を、0.5mg/mlの3−3’ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(Sigma、St.Louis、MO)及び50mmol TRIS中3μl/mlの3%H22(pH7.6)中で発色させた。これらのスライドを、ヘマトキシリンを用いて対比染色した。全てのインキュベーションを、室温で実施した。いずれの場合も抗原回収技術を適用しなかった。
Mab産生ハイブリドーマの確立及びMab 1H4の特徴付け
本発明者らは、1H4として示される、Mabを産生するハイブリドーマ細胞株を確立した。Mab 1H4は、ELISA実験において、C.albicans細胞壁抽出物および精製したmp58に反応性であったIgG1であった。イムノブロッティング実験は、Mab 1H4がmp58(マウスを免疫するために用いられる)を認識したが、C.albicansの細胞壁抽出物中に存在する、より高い分子量の多分散系の物質も認識することを示した(図6)。
Mab 1H4に反応性の抗原の過ヨウ素酸塩処理の効果
C.albicans mp58は、細胞表面マンノプロテインである。2つの初期の観察から、本発明者らは、Mab 1H4により認識されるエピトープが炭水化物の性質をもつものであり得ると考えるにいたった。第一に、エピトープマッピング実験において、この抗体がC.albicans mp58のタンパク質部分の全配列を包含するオーバーラップペプチドのいずれも認識しなかった(示さず)。第二に、図6に示されるように、Mab 1H4を用いるイムノブロット分析は、高分子量の、主に炭水化物を表す高度多分散系物質とのその交差反応性を示した。図7に示されるように、Mabと反応した抗原決定基は、過ヨウ素酸塩処理に対して感受性であり、そして10mMのm−過ヨウ素酸ナトリウム処理によって、mp58及び細胞壁抽出物の両方へのMab 1H4の結合がほとんど完全に破壊された。これらの結果は、Mab 1H4により認識されるエピトープが炭水化物の性質をもつものであることを示す。
種々のインビトロ増殖条件下でのMab 1H4により認識されるエピトープの発現:pH依存性
最初の観察により、C.albicans酵母細胞がMab 1H4の存在下でインキュベートされる場合に、Mab 1H4が凝集抗体を構成することを確立した。本発明者らは、種々の環境条件(増殖培地及びpH)の下で増殖したC.albicans細胞の表面上での、このMabにより認識されるエピトープの発現をさらに調査するために、この特性を利用した。第1表は、異なる温度及びpHのYPDで酵母細胞として増殖させた3つの異なるC.albicans株を用いたこれらの凝集実験からの結果を概説する。表に示されるように、Mab 1H4は、中性pH、種々の温度のYPDで増殖した全ての株由来の酵母細胞を凝集したが、酸性pH下で増殖させたものを凝集しなかった。これらの観察は、このMabにより認識されるエピトープの発現のpH依存性を示していた。しかし、この抗体は、異なる培地(Lee及びRPMI)において酵母細胞として増殖させた場合、同じC.albicans株を(非常に少ない程度であるが)凝集させたので、このpH依存性は、完全ではない。
第1表.種々の増殖条件下で酵母形態として増殖したC.albicans(3153A、SC5314及び412株)の表面上での、Mab 1H4により認識されるエピトープの発現を試験するための凝集試験の結果
Figure 2005523017
凝集反応を、以下のように記録する:+++、非常に強い;++、強い;+、中間;+/−、弱い,−、凝集なし。
ヒト表在性及び全身性カンジダ症における免疫組織化学
免疫組織化学の結果を、第2表に示す。非酸性pHの粘膜表面(例えば、舌、食道、小腸、及びほとんどの皮膚領域)由来の組織サンプルにおいて、繊維状の形態のC.albicansが優勢であり、そしてこれらのほとんどが、1H4免疫染色及び侵襲性表現型の両方を示した(図8)。全身性カンジダ症の患者由来の非酸性pHを有する内部器官(肝臓、肺、心臓、甲状腺)において、実質的に全ての場合において、菌糸または偽菌糸と共に、変動する数の酵母細胞が見出された。これらの組織において、酵母及び繊維状形態の両方が、強い1H4免疫反応性を示した(図9、10)。
対照的に、酸性pHのこれらの組織(例えば、胃及び腎臓の集合管)において、Candida albicans細胞の優性形態は、出芽型胞子(酵母)であった。興味深いことに、これらの場所において、酵母細胞は、1H4免疫反応を示さなかった(図11、A−B)。しかし、近縁組織侵襲が存在する場合、菌糸または偽菌糸が優性形態であった。強力な1H4細胞表面免疫染色が、これらの繊維状形態のC.albicansのほとんどにおいて見出された(図11、C−D)。
侵襲性カンジダ症のいくつかの場合、本発明者らは、食細胞(特に、マクロファージ)の細胞質内の変性(degenerated)Candida生物の細胞レムナントにおける1H4免疫染色を見出した(図12)。
第II表.ヒト表在性及び全身性カンジダ症におけるCandida albicans の1H4免疫反応性の組織分布
Figure 2005523017
−、陰性;+、陽性;np、存在せず
酵母から菌糸への変化をさせる能力は、明らかに、侵襲性カンジダ症の病原性において決定的に重要である(4、5、6)。酵母細胞及び菌糸の両方が、感染された組織において見出され、そして病原性に寄与している。酵母細胞は、迅速な血行での伝播により適しているが菌糸要素を伴っても、これらは、上皮及び内皮の障壁を破って広範な器官に損傷を与えることができる(4)。感染プロセスの間、酵母細胞及び菌糸は、宿主内の種々の微小環境に遭遇し得る。酸性pHにおいて、Candida albicansは、ほとんどが酵母形態で増殖し;アルカリ性pHにおいて、それは、主として繊維状の形態で増殖する(2、6、7)。胃酸は、ほとんどの微生物に対して有効な障壁を提供する(正常な胃のpH値は、1〜3.5である)。対照的に、無塩酸症及びH2−アンタゴニストの使用(これらは、胃のpHを上昇させる)が、非常に高いパーセンテージの侵襲性の胃のカンジダ症に関連することが見出された(17)。同様に、皮膚は真菌の増殖が比較的生じにくいが(18)、皮膚表面のpHの実験的な増加は、ヒト志願者における明白な皮膚のカンジダ症をもたらした(19)。
アルカリ誘導された繊維状化は、遺伝子発現の変化に関連する。3つの遺伝子がこのアルカリ誘導プロセスに関与することが知られている:PRA1/FBP1、PHR1及びRIM101(7、20、21)。他の遺伝子(EFG1、CPH1、TUP1)は、非pH依存性の酵母から繊維への変化に関与する(7)。PRA1/FBP1の生成物が、フィブリノーゲンへのその結合親和性によって最初に同定された細胞壁マンノプロテインである、C.albicans mp58である(21〜24)。mp58の炭水化物部分(N−及びO−グリコシル結合した糖残基)が、フィブリノーゲン結合親和性において重要な役割を果たすことが知られている(22)。PRA1/FBP1遺伝子発現は、宿主細胞の損傷における役割が示唆されている(5)遺伝子であるRIM101(7)によって調節される。さらに、mp58の免疫原性の能力におけるタンパク質部分の関連は、多くの関心を集めており、抗原性における炭水化物の役割も期待されている(25)。本発明者らは、1H4 mAbにより認識されるエピトープが炭水化物の性質を有するものであり、そしてそれがmp58中に存在するが、このグリコプロテインに限定されず、他の細胞壁マンノプロテインと共有されることを示した。
真菌感染に関して、疾患及び宿主応答の型が、それらの疾患を引き起こす特定の株のC.albicansの侵襲性に依存することが、最近、仮定されている(3)。疾患を引き起こすほとんどの株が患者由来の共生生物であるので、未知の調節現象が、侵襲性状態への引き金をひくと考えられている(3)。カンジダ症の病原性に関与するC.albicansの主要な毒性因子は:宿主組織への付着;フェーズの変化(すなわち、酵母細胞から繊維状形態への変換;酵素活性、及び表現型転換である(3、26)。C.albicansの形態形成は、それらの環境に対する真菌細胞の非常に複雑な応答であり、インビボ及びインビトロでフィラメントを形成する株の能力の間に明確な相関はない(6)。さらに、C.albicansの毒性は、組織特異的であり(27)、そしてCandida生物の毒性に強く影響する局所的な因子の1つは、組織のpHである(5、7、26、28)。一方、Candida感染に対する免疫保護も部位特異的である(26)。
本発明者らの結果は、宿主細胞侵襲及び組織損傷ならびにpH依存性の表現型に対する、C.albicans細胞壁におけるPRA1/FBP1遺伝子産物に一部連結する1H4エピトープの関連を支持する。胃腸の障壁が、特に免疫抑制された患者において診断処置及び治療によって医原的に変更された場合、Candida生物は、発芽管を産生しそして組織を侵襲する。本明細書中に、本発明者らは、mAb 1H4により認識されるエピトープのC.albicans細胞表面発現が侵襲の間に有意に増加していることを記載する。種々の株及び培養条件を用いる凝集実験において示されるように、1H4エピトープの発現は、pH条件またはCandida生物のフェーズの形態に排他的には依存しない。「インビボ」での研究は、それが、酸性pHのニッチにおける繊維状形態、及び内部器官における侵襲性の酵母形態において検出され得るが、非侵襲性酵母細胞において検出されないことを示す。さらに、この炭水化物エピトープが免疫優性抗原の一部であるので、この分子に対する強力な免疫応答が感染の間に予想される(25、29、30)。このことは、感染を包含し得るが、可能性として、増加した組織損傷ももたらし、それによる残りの生物の伝播も促進し得る。従って、保護免疫と増加した伝播との間の繊細なバランスが存在するようである。結局、実験室における今回の実験は、全身性カンジダ症のマウスモデルにおけるMab 1H4の潜在的な保護の役割を評価するものである。
結果的に、本発明者らは、培養物中のC.albicans細胞の表面上のpH感受性炭水化物エピトープを認識する新規のMab(1H4)を産生しそして特徴付けした。ヒトカンジダ症のケースから得られた組織切片中のC.albicans細胞の表面上での1H4エピトープの「インビボ」での発現は、主として組織侵襲に、そして二次的にニッチ及び形態に関連する。実際、本発明者らのデータは、侵襲性と形態との間よりも、侵襲性とこの特定のエピトープの発現との間の強い相関を示す。本発明者らの知見は、このエピトープがCandida感染の残存及び伝播の促進に関与することを示唆する。さらに、Mab 1H4により認識されるエピトープの「インビボ」での発現が、侵襲性及び潜在的に攻撃的な形態のC.albicansにおいて選択的に検出されるので、このMabは、ヒトカンジダ症の管理における有用なツールとしての役割を果たし得る。
実施例3.Mab 1H4を用いる受動的移動の保護実験
雌のBALB/cマウス(6〜7週齢)をバイオクリーンフード中にグループで収容し、適宜、水及び食糧を与えた。6〜8匹のマウスを、各々の実験群として用いた。Mab 1H4(約0.6mgのIgG)を、感染の2時間前に腹水として腹腔内に投与した。コントロール動物に同じ容量の生理食塩水を与えた。全てのマウスに、YEPD中、37℃(図13、パネルA)またはLee培地中、24℃(図13、パネルB)で一晩増殖した1×106細胞のC.albicans臨床株412で静脈内チャレンジを受けた。Mab 1H4の保護効果の実験を、感染後毎日生存を(30日まで)モニタリングすることによって実施した。生存データ及びグループ間の差異を、カプラン−マイヤー及びログランク試験を用いて解析した。P<0.05を統計的に有意であると考えた。
実施例4.抗mp−58モノクローナル抗体の特徴付け
mp58タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を、酵母細胞壁抽出物に対するELISAによってさらに特徴付けした。
ELISA分析
Immulon 2−HB high−binding 96ウェルマイクロタイタープレート(Dynex)を、1μg/ウェルの1×PBS(pH7.4)中のC.albicans 10261株、26555株のBME細胞壁抽出物またはmp58C末端ペプチド(HTHADGEVH)でコーティングし、そして室温で2時間インキュベートした。ELISAにおける全ての洗浄工程を1×PBS、0.05% Tween−20洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。プレートを洗浄し、そしてハイブリドーマ上清サンプルをウェルに添加する1時間前に1% BSA溶液を用いて室温でブロッキングした。プレートをサンプル及び適切なコントロール(例えば、培地単独)と共に、室温で、1時間インキュベートし、洗浄し、そして1×PBS、0.05% Tween−20、0.1% BSA中に1:5000に希釈したヤギ抗マウスIgG−AP(Sigma)を二次試薬として用いた。4−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)(Sigma)の1mg/ml溶液を添加し、37℃で30分間インキュベートすることによってプレートを発色させた。SpectraMax 190 Plate Reader(Molecular Devices Corp.)を用いて405nmで吸光度を読み取った。バックグラウンド(培地単独、約0.1OD)の3倍以上のOD405を有する抗体上清を陽性と考えた。
第3表.ELISA反応性
Figure 2005523017
これらの結果は、3H3及び3C2 mAbがCandida albicansの細胞壁において発現されたネイティブのmp58及びmp58のC末端の配列から誘導される合成ペプチド(アミノ酸HTHADGEVH)(配列番号11)を認識することを示す。
実施例5.全細胞Candida株へのクローン抗mp58モノクローナル抗体の結合
これらの実験を、抗mp58 mAbの、Candida sp.の表面上で発現されるネイティブmp58との反応性を決定するために実施した。
全細胞酵母への結合
酵母細胞(C.albicans SC5314株及びC.albicans 3153株、C.glabrata、C.guillermondi、C.parpsilosis、C.tropicalisならびに、mp58発現ベクターでトランスフェクトしたS.cerevisae X−33)を回収し、洗浄し、そしてウサギIgG(50μg/ml)でブロックした後、2μg/mlの濃度の抗体またはPBS単独(コントロール)と共にインキュベートした。抗体とのインキュベーションの後、検出抗体としての役割を果たすヤギ−F(ab'2−抗マウス−F(ab'2−FITCと共に酵母細胞をインキュベートした。抗体標識の後、FACScaliberフローサイトメーターを通して酵母細胞を吸引し、蛍光発光を分析した(励起:483、発光:570)。各々の酵母株について、10,000イベントを回収及び測定した。PBSコントロールと比較することによって、ゲートされたポジティブイベント(gated positive event)のパーセントとしての単位を測定した。
表4.フローサイトメトリー分析
Figure 2005523017
ND=実施せず
これらのデータは、mAb 3H3及び3C2が、C.albicansに加えて、C.glabrata、C.guillermondii、C.parapsilosis、及びC.tropicalsを含む多数のCandida種により発現されるmp58に対して広範に反応性であることを示す。
参考文献
追加の実施例に関連して引用される以下の文献及び引用文献は、その全体が本明細書中に参考として援用される:
Figure 2005523017
Figure 2005523017
Figure 2005523017
Figure 2005523017
図1は、C.albicans酵母細胞(レーン1、3、5)及び発芽管(レーン2、4、6)に由来する、β−ME細胞壁抽出物のPAb抗mp58(レーン1、2)、ザイモリアーゼ抽出物(レーン3、4)、及びプロトプラストホモジネート(レーン5、6)を用いた、これらの抽出物中に存在する成分のSDS−PAGEによる分離の後の、クマシー(A)、Con−A(B)、フィブリノーゲンとのリガンド親和性ブロット(C)、及びイムノブロットを示す。 図2は、プローブとしてPAb抗mp58を用いるイムノブロット実験によって検出される、種々のC.albicans臨床分離株由来のβ−ME細胞壁抽出物中のmp58の存在を示す。 図3は、mp58のタンパク質部分の全配列にわたるドデカペプチドと、播種性カンジダ症を有する患者(n=6)及びコントロール個体(n=5)の血清サンプルとのIgG反応性を示す。結果は、平均及び標準の偏差を示す。アスタリスクは、反応性の統計的有意差(p<0.05)(カンジダ症 対 コントロール)がこの特定のペプチドについて検出されたことを意味する。 図4は、カンジダ症を有する患者及びコントロール(非感染)患者由来の血清サンプル中に存在する抗体の検出のための、mp58のKLHと結合したC末端デカペプチドを用いる抗体捕捉ELISAの結果を示す。パネルAは、平均及び標準誤差として反応性(OD490単位として表される)を示す。パネルBは、両方の群についてのOD読み値の散布図を示す。播種性カンジダ症の生存患者(良好、n=7)または非生存患者(致死、n=6)からの血清サンプルの反応性(平均及び標準誤差)を、パネルCに示す。 図5は、C末端ペプチドに対して指向されるIgGサブクラスの分布を評価するためにELISAによって試験したカンジダ症を有する患者からの血清サンプルを示す。これらの実験の性質は、種々の免疫グロブリンサブクラスの正確な定量を可能にするものではなかったが、結果は、免疫グロブリンG(IgG)抗体サブクラスがIgG2>IgG1>IgG3>IgG4であったことを示した。結果は、混合Th1/Th2応答を示し、全体として、Th1の優勢である。このことは、カンジダ症に対する保護に相関する(Romani、L.1999.Immunity to Candida albicans:Th1,Th2 cells and beyond.Curr.Opin.Microbiol.2:363−7)。 図6は、Mab 1H4とC.albicans細胞壁物質との反応性を評価するために用いられるイムノブロット分析を示す。パネルAは、C.albicans β−ME抽出物中に存在するほとんどの部分に対する抗体を含むウサギポリクローナル抗血清の反応性を示し、そしてパネルBは、細胞壁抽出物中に存在する物質に対するMab 1H4の反応性を示す。 図7は、改変ELISAアッセイによって試験されるMab 1H4の反応性に対するC.albicans mp58及びC.albicans β−ME抽出物の過ヨウ素酸酸化の効果を示す。数値を、コントロール(未処理)サンプル(100%)と比較した%反応性として表す。エラーバーは、標準偏差を示す。 図8は、食道の侵襲性カンジダ症における1H4の免疫反応性を示す。低出力(A)では、実質的に全てのCandida生物が標識され;高出力(B)では、菌糸状細胞のみが存在する(イムノペルオキシダーゼ、ヘマトキシリン対比染色)。 図9は、全身性カンジダ症を有する患者由来の肝臓(A)及び甲状腺(B)組織サンプルにおけるCandida生物の1H4免疫反応性を示す(イムノペルオキシダーゼ、ヘマトキシリン対比染色)。 図10は、全身性カンジダ症において強い1H4免疫染色を示す菌糸状及び酵母細胞の両方を示す(甲状腺組織、イムノペルオキシダーゼ、ヘマトキシリン対比染色)。 図11は、剖検(A−C)及び内視鏡バイオプシー(D)で得られた侵襲性カンジダ症を有する患者からの胃潰瘍を示す:1H4−陰性の酵母は、表在部(A及びB)上の優勢形態であり、1H4−陽性の菌糸状細胞は偶発的なもののみである(D)。1H4免疫反応性を示す多数の侵襲性菌糸状細胞が潰瘍の深部において見出される(C)。(イムノペルオキシダーゼ、ヘマトキシリン対比染色) 図12は、組織マクロファージの細胞質内の真菌の残存物中で検出される1H4免疫染色を示す(イムノペルオキシダーゼ、ヘマトキシリン対比染色)。 図13は、本発明に従いMab 1H4を用いて得ることができるCandida感染に対する保護の受動伝達を示す。パネルAは、YEPD中、37℃で一晩、増殖した1×106細胞のC.albicans臨床株412を用いて静脈内チャレンジを受けたマウスの結果を示し、パネルBにおいて、静脈チャレンジは、Leeメディウム中、24℃であった。Mab 1H4の保護効果の試験を、感染後、生存している間毎日(30日まで)モニタリングすることによって実施した。生存データ及びグループ間の差異を、カプラン−マイヤー及びログランクテストを用いて分析した。P<0.05を、統計的に有意であると考えた。

Claims (43)

  1. pH感受性炭水化物部分、ならびに配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11により示されるアミノ酸配列を有するペプチドからなる群より選択される、C.albicansのMp58マンノプロテイン由来の免疫原性ペプチドまたはエピトープを認識し得る単離した抗体。
  2. モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
  3. ポリクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
  4. 前記抗体がキメラモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体及びヒトモノクローナル抗体からなる群より選択されるタイプのものである、請求項2に記載のモノクローナル抗体。
  5. 前記抗体が単鎖モノクローナル抗体である、請求項2に記載のモノクローナル抗体。
  6. 前記抗体がヒトまたは動物におけるCandida感染を予防する、請求項1に記載の抗体。
  7. 前記抗体が細胞外マトリクスアドヘシンへのCandida微生物の結合を阻害する、請求項1に記載の抗体。
  8. 前記抗体が、ヒトまたは動物における非経口、経口、鼻内、皮下、エアロゾルまたは静脈内投与に適する、請求項1に記載の抗体。
  9. 請求項1に記載の抗体を含む、単離した抗血清。
  10. 請求項1に記載の抗体及び該抗体による結合を検出するための手段を含む、診断キット。
  11. 前記結合を検出するための手段が、前記抗体に結合する検出可能な標識を含む、請求項10に記載の診断キット。
  12. ヒトまたは動物の患者に、有効量の請求項1に記載の抗体を投与することを含む、Candida属の微生物の感染を処置または予防する方法。
  13. 有効量の請求項1に記載の抗体及び薬学的に許容されるビヒクル、担体または賦形剤を含む、カンジダ感染を処置または予防するための薬学的組成物。
  14. C.albicansのmp58マンノプロテイン、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11からなる群より選択される、mp58由来の炭水化物エピトープまたはmp58由来のペプチドエピトープを認識し得るモノクローナル抗体。
  15. 前記抗体がモノクローナル抗体1H4、3H3、及び3C2からなる群より選択される、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
  16. 前記抗体がヒトまたは動物においてCandida属のメンバーにより引き起こされる感染を処置または予防し得る、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
  17. 請求項14に記載の抗体を含む単離した抗血清。
  18. 請求項14に記載の抗体及び該抗体による結合を検出するための手段を含む診断キット。
  19. 前記結合を検出するための手段が、前記抗体に結合する検出可能な標識を含む、請求項18に記載の診断キット。
  20. ヒトまたは動物の患者に、有効量の請求項14に記載の抗体を投与することを含む、Candida属の微生物の感染を処置または予防する方法。
  21. 有効量の請求項14に記載のモノクローナル抗体及び薬学的に許容されるビヒクル、担体または賦形剤を含む、カンジダ感染を処置または予防するための薬学的組成物。
  22. カンジダ感染を有することが疑われる生物学的物質のサンプル中に請求項14に記載の抗体を導入すること、及び該抗体が該サンプル中の抗原と結合するか否かを決定することを含む、Candida属の微生物により引き起こされる感染を診断する方法。
  23. 配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11からなる群より選択される、タンパク質またはペプチドを含む、C.albicansから単離した免疫原性タンパク質またはペプチド。
  24. ヒトまたは動物に免疫学的有効量の請求項23に記載の単離したタンパク質またはペプチドを投与することを含む、ヒトまたは動物における免疫原性反応を誘発する方法。
  25. 免疫原性量の請求項23に記載の単離したタンパク質またはペプチド及び薬学的に許容されるビヒクル、担体または賦形剤を含む、ワクチン。
  26. 請求項23に記載の単離したタンパク質またはペプチド及び適切なビヒクル、担体または賦形剤を含む、薬学的組成物。
  27. 請求項23に記載のタンパク質またはペプチドをコードする単離した核酸配列。
  28. Candida微生物由来の抗原を保有することが疑われる生物学的サンプル中の該抗原の存在をアッセイする方法であって、該方法は、(a)固相免疫吸着剤に結合した固相固定化抗体または可溶性標識抗体のいずれかの形態の請求項14に記載の抗体と共に、該サンプルを含む混合物を同時に形成すること、(b)工程(a)において形成された混合物を、該サンプル中の抗原が該固定化または標識化抗体に結合することを可能にするのに十分な時間及び条件下でインキュベートすること;及び(c)該固相免疫吸着剤に結合した標識抗体を検出することまたは該標識化可溶性抗体を検出することを含む。
  29. 洗浄、攪拌、振とうまたはろ過工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
  30. Candida抗原または該抗原を認識する抗体を保有することが疑われるヒトまたは動物の患者における該抗原または抗体のレベルをモニタリングする方法であって、該方法は、(a)該ヒトまたは動物の患者から生物学的サンプルを得ること;(b)該サンプル中に、Candida抗原のレベルをモニタリングすることが所望される場合、決定可能なレベルの請求項14に記載の抗体を導入すること、或いは該抗原を認識する抗体のレベルをモニタリングすることが所望される場合、決定可能なレベルの配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11からなる群より選択されるCandidaタンパク質もしくはペプチドを導入すること、(c)該抗原または抗体と合わせた場合、該サンプルを、該抗原及び抗体が結合することを可能にするのに十分な時間及び条件下でインキュベーションすること;ならびに(d)サンプル中に存在するCandida抗原またはそれに対する抗体のいずれかのレベルを反映する抗原−抗体結合のレベルを測定することによって該サンプル中の抗原または抗体のレベルをモニタリングすることを含む。
  31. mp58マンノプロテイン由来のpH感受性炭水化物エピトープを認識し得るモノクローナル抗体。
  32. 前記抗体がキメラモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、及び単鎖モノクローナル抗体からなる群より選択されるタイプのものである、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
  33. 前記抗体がmAb 1H4である、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
  34. 前記抗体が、ヒトまたは動物におけるCandida属のメンバーにより引き起こされる感染を処置または予防し得る、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
  35. 請求項31に記載の抗体を含む、単離した抗血清。
  36. 請求項31に記載の抗体及び該抗体による結合を検出するための手段を含む診断キット。
  37. 前記結合を検出するための手段が、前記抗体に結合する検出可能な標識を含む、請求項36に記載の診断キット。
  38. ヒトまたは動物の患者に、有効量の請求項31に記載の抗体を投与することを含む、Candida属の微生物の感染を処置または予防する方法。
  39. 有効量の請求項31に記載のモノクローナル抗体及び薬学的に許容されるビヒクル、担体または賦形剤を含む、カンジダ感染を処置または予防するための薬学的組成物。
  40. カンジダ感染を有することが疑われる生物学的物質のサンプル中に請求項31に記載の抗体を導入すること、及び該抗体が該サンプル中の抗原と結合するか否かを決定することを含む、Candida属の微生物により引き起こされる感染を診断する方法。
  41. モノクローナル抗体mp58により認識されるC.albicans mp58マンノプロテイン由来のpH感受性炭水化物エピトープを含む、単離した免疫原性炭水化物部分。
  42. mp58に対する抗体を有することが疑われる生物学的物質のサンプル中に請求項41に記載の単離した炭水化物部分を導入して該炭水化物部分が該サンプル中の抗体と結合するか否かを決定することを含む、Candida albicansのmp58マンノプロテインに対する抗体の存在を検出する方法。
  43. 請求項41に記載の単離した炭水化物部分及び該部分への抗体による結合を検出するための手段を含む、診断キット。
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