JP2005519673A - 頸椎人工装具 - Google Patents

Abstract

本発明は、隣接する椎体の一つと接続される２つのカバープレートを有する頸椎人工装具にある。この２つのカバープレート（１，３）の少なくとも１つは、歯状部（９）を備える。この歯状部（９）は、椎体（７）に面しており、その歯は、急峻で腹面方向の側面（１０）及び急峻ではない背面方向の側面（１１）を有する。隣接する椎体間において十分に圧縮することにより人工装具がフィットされるとき、のこぎり状の歯状部及び隣接面とのコンビネーションは、人工装具を所望のポジションに安全に保持するのに十分である。多くの場合、これにより、付加的に螺旋体により固定することを省略することができる。隣接面（１６）を有するフランジ（１５）は、この場合、便宜上短くされ、そのためフランジが骨（７）の凹部に収納され、人工装具は、隣接する椎体（７）の腹部のアライメント面を超えて横方向に突出していない。

Description

発明の詳細な説明

脊椎の頸部領域において、椎間人工装具を受けるために用いることができるスペースはわずかしかない。人工装具のパーツが背面方向に僅かでもシフトすれば、脊髄の神経に影響を与えることとなる。そのため、人工装具を安定して固定することは、非常に重要なことである。脊椎の腰椎領域用の椎間人工装具の場合、隣接する椎体に面する人工装具のカバープレートにリブ若しくは突出部が設けられ、このリブ若しくは突出部が、椎体の予め準備された溝部に係合し、又は鋭利にセルフカットされたようにデザインされたものが知られている。これは、腰椎の椎体が比較的大きくそして高く、そのためこの種の固定装置に用いられるスペースが十分存在するため可能である。また、これは固定フランジを備え、この固定フランジは、人工装具のカバープレートの腹側端部に設けられ、関連する椎体にカバープレートを固定するための骨螺旋体を受ける。頸部領域においては、椎体が小さくまた低いので、通常これらの固定装置を使用することができないか、若しくは上記固定装置では不十分である。これは、人工装具の一部が、頸椎の直ぐ前にある食道を刺激するため、それらが腹側方向に突出するのを防止しなければならない状況においては特にそうである。

そのため、本発明は、制限された空間状況を考慮し、十分な安全性を与えることができ、小さな固定部を有する頸椎人工装具を提供することを目的とする。

本発明に係る解決手段は、クレームの特徴部にある。基本的なコンセプトは、互いに作用する２つの固定手段、つまり、骨と連携し人工装具の腹面方向の相対的な動きを防止し、背面方向の相対的な動きを促進するのこぎり状の歯状部と、背面方向の相対的な動きを極力制限する隣接面とを使用することである。

請求項１によれば、人工装具に備えられた２つのカバープレートの少なくとも１つの、関連する椎体と連携する面に歯状部を設け、この歯状部は、少なくとも１つの歯を有し、この歯は、急峻で腹面に向いた側面、及び急峻ではない背面に向いた側面とを有することを特徴とする。これは、一般的にのこぎり状と称されている。これらののこぎり状部の効果は、カバープレート及び対応する椎体間の相対的な動きの中で、カバープレートを背面方向に押すような力が椎体に作用することである。これにより、のこぎり状部は、カバープレート及び人工装具が腹側方向にシフトしないように固定する。そのような歯を歯状部に複数設けることが好ましい。歯は、便宜上、リブのように矢状方向に対して横方向に延びる。歯状部は、略全表面を覆うべきである。少なくとも、椎体に接する利用可能な表面のおよそ半分を覆うべきである。この歯は、十分な効果が出るように高くなければならない。一方、水平方向の間隔が小さくなるように、歯状部はできるだけ小さくなければならない。歯状部が、０.２と０.６ｍｍの間の高さを有し、また矢状方向の間隙が０.５と２ｍｍとの間にあることが好ましい。

歯状部がカバープレートに作用する背面方向の力は、カバープレートと、対応する椎体とが相対的に動くときに効果的である。そのような相対的な動きは、一般的な環境において、カバープレートと、対応する椎体との間の絶対的な固定が期待されるため望ましくない。実際は、肉眼で荒さと捉えられる歯により、通常カバープレートと、対応する椎体との間の固定を保つことができる。これは、さらに人工装具の表面にコーティングを設けることにより促進される。このコーティングは、例えば、ミクロ細孔及び／又は骨成長を促進する対生物活性材料により、骨と人工装具の表面とを密接に接触させる。

相対的な動きの中で、歯状部がカバープレートに対して背面方向に作用する力は、隣接面により打ち消される。この隣接面は、カバープレートの腹側の端部に設けられ、これと対応する椎体の腹側の縁部と協同する。この隣接面の効果は、カバープレートの隣接面が椎体の腹側の縁部に対して支持されるまで、のこぎり状部の力によりカバープレート及び人工装具を背面方向に移動させることができるということである。隣接面が椎体の腹側の縁部に対して支持されるときに丁度人工装具の所望の位置に達するように、その大きさが選択される。

隣接面は、便宜上フランジとして形成され、このフランジは、幅方向に亘ってカバープレートの腹側端部に対照的に配置され、上記幅は、便宜上カバープレートの内外側方向の大きさの少なくとも半分である。この結果、常に、椎体の腹側の縁部にフランジが平行に支持され、椎体の矢状方向に対して人工装具の所望の矢状軸が傾いていることを考慮する必要がない。

固定部品、例えば骨螺旋体を受けるための開口部をフランジに設ける。しかし、多くの場合、これは必要なことではない。そのような螺旋体ホールを備えず、隣接機能を発揮することができる範囲でフランジがより低い高さを有する設計が特に好ましい。これは、上記設計により、フランジを受けるための凹部を椎体に形成することができるからである。その結果、人工装具を隣接する椎体の腹側アライメント面に対して背面方向にかなり押し進めることができるので、食道若しくはそこまで延びる神経若しくは血管の刺激を引き起こすことがない。人工装具は、このアライメント面を完全に超えており、横方向から見ると、椎体の領域において完全に固定されている。螺旋体ホールを用いずに行うことにより、フランジの高さが低くなり、挿入物は非常に小さくなり、例えば内視鏡の狭いアクセス通路を介してフランジを挿入することができるという有利な効果を奏する。

のこぎり状部が、矢状方向に関して横方向に延びるリブとして設計される場合、カバープレートが、対応する椎体に対してこれらのリブの方向にシフトする可能性がある。これは、歯状リブの方向に対して横方向に延びる溝部若しくはリブを設けることにより避けることができる。溝部により、骨成長させ、それにより望ましくない横方向の移動を抑制する。設けられたあらゆるリブは、人工装具が挿入されるとき、椎体の表面に突きささるように便宜上セルフカットされている。

隣接面は、フランジとして形成される必要はない。そうではなく、カバープレートの平面に対して横方向に向いた突出部で十分である。これらの突出部を、ペアで対照的に配置し、椎体の方向と一致するように人工装具を方向付けるべきである。対照的に配置された一対の突出部であって、互いに離間して形成された突出部を隣接面として形成することにより、基本的に食道の近くにある椎体の腹側中央領域に人工装具のパーツがないことが好ましい。

人工装具の腹側の縁部及び端部の全てに丸みを与えて、隣接する臓器に刺激を与える可能性を最小にすべきである。

本発明は、好ましい実施の形態を示した図面を参照して以下に詳細に説明しているが、この実施形態はこれに限定されるものではない。

人工装具は、堅くて耐性のある材料、特に金属からなる底部カバープレート１、良好なスライド特性を有するポリエチレン若しくは他のプラスティックからなる人工装具コア部、及び底部カバープレート１と同じ材料からなる上部カバープレート３を備える。この人工装具コア部２は、底部カバープレート１と分離可能であっても、強固に接続される。この接続は、背面側の、下を切り取った棚部４、及び底部カバープレート１の両側面により行う。相補的な溝部が設けられた人工装具コア部２を底部カバープレートの側面方向に押しこむことができる。押しこめられた位置においてコア部２をボルト５により固定する。この人工装具２及び上部カバープレート３は、相互に作用する相補的な、好ましくは球状のスライド表面６を形成する。

カバープレート１及び３の表面は同じように設計されている。それぞれの表面は、対応する椎体７に面している。これらの表面のより多くの部分は、複数の歯状部９により覆われている。この歯状部９は、のこぎり状のデザインをしている。つまり、この歯状部９は、腹面に向いた急峻な側面１０と、背面に向いた急峻ではない側面１１とを備える。この急峻な側面は、カバープレートの平面に対しておよそ垂直であることが好ましい。

歯状部９はリブ状に形成されている。このリブは、矢状中軸８に関して横方向に延び、中央部分において中断され、溝部１２が形成されている。歯状部９は、溝部１２の領域において存在しない。示された具体例において、溝部の底面１３は、歯状部の底面と一致しており、図３における波線により示される。しかし、この溝部は、より深くてもよいし若しくはより浅くてもよい。中央に配置された溝部の代わりに、複数の可能な限り狭い溝部を設けてもよい。この狭い溝部は表面全域に配置されている。対照的な配置が好ましい。人工装具を挿入した後、隣接する骨と連携して、溝部に向かう歯状部９の横端面により、人工装具が骨に対して横方向にシフトするのを抑止する。骨が溝部１２に成長する結果、使用中この抑止力は増加する。

溝部による代わりに、歯９を形成するリブの方向に対して横方向に延びている１以上のリブによっても、この効果をもたらすことができる。これらのリブは、狭くまた鋭く形成すべきである。これは、人工装具を挿入するとき、これらの人工装具が容易に骨を貫通し、それぞれ対応する骨表面にカバープレート表面が即座に強固にフィットされるからである。

人工装具表面と骨表面とを完全に接触するために、人工装具表面にコーティング１４を設けてもよい。骨は、このコーティング１４の孔に成長し、及び／又は生物学的に骨の結合を促進する。

カバープレート１、３の腹側端部にリッジ状の突起部１５を設ける。このリッジ状突起部１５は、歯状部９を保持する表面を超えて頭の方向若しくは尾の方向に突出している。その最も平面的な拡がりのため、この突出部はフランジとも称される。簡単のため、突出部が図３に示すように低い高さを有するとき、この表現が使用される。挿入の時、このフランジは、背面方向に向いた隣接面１６が、対応する椎体７の腹側境界面１７に対向するように配置される。しかし、解剖学上の環境に依存して、そのような配置により、人工装具のパーツは、隣接する椎体のアライメント面２３を超えて水平に延び、食道若しくは他の臓器を刺激するため、フランジ１５（図３に示されるように）が骨の中に入り込んでいるようなオペレーティング技術が好ましい。即ち、形状及び大きさがフランジ１５の形状及び大きさと適合する凹部であって挿入後にフランジを受ける凹部が形成されるように、椎体の腹部の縁部において少量の材料が作用している。そのとき、フランジの隣接面１６は、この凹部の腹側端面に対向して存在する。この端面上で、隣接面１６をきつく支えるために、このフランジの端部１８は丸みをおびていていも良い。骨があまりにも弱くならないように、歯状部９を有する表面を超えるフランジの高さは低い。この高さは、０.５〜２ｍｍ、好ましくは０.８〜１.３ｍｍのオーダであるべきである。前後方向（Ａ−Ｐ方向）の最大挿入量を割合で表現すると、これは好適には０.５〜２テンス（tenths）である。

フランジの高さが低いことにより、フランジに固定部（例えば螺旋体ホール）が設けられた実施の形態と比較して、挿入量が大きく減少するという有利な効果を奏する。挿入量が減少することにより、例えば内視鏡挿入のように、これに相応して直径が減少した外科的開口部、若しくは挿入通路を介して挿入することができる。

本発明に係る人工装具は、非常に安全にフィットさせることができる。ここで、フランジが人工装具の背面方向への動きを制限しつつ、のこぎり状の歯により腹面方向への不慮のシフトを防止する。こののこぎり状の歯により、背面への「供給方向」をもたらす。挿入の時に選ばれる位置であって、フランジ１５の隣接面１６が、関連する椎体、若しくは椎体に形成された凹部の対応する腹側面に対して支持された位置が維持される。

歯９により得られる人工装具の適合の安全性は、隣接する椎体において十分圧縮することにより、人工装具がフィットされることに依存する。後方の縦方向の靱帯が保持される場合、この圧縮で一般的に十分である。これが可能でない場合、内科医は骨螺旋体による付加的な固定を選ぶ。このため、一点鎖線１９により示しているように、フランジ１５がより大きな高さを有し、一点鎖線により示される骨螺旋体２０を受けるために有用な螺旋体ホールを備えるように設計される。圧縮によるフィットのみによって人工装具と歯９とを安定に固定するために骨の質が十分であるか否かについて、手術を行っている外科医が疑問を持っている場合、上記のような設計が推奨されるだろう。より高いフランジを有するバージョンを選択する場合、内科医は一般的に椎体に形成された凹部により、このフランジを椎体に埋め込む。これは、このようにすることにより椎体があまりにも脆弱になり得るからである。この場合の人工装具は、フランジが脊椎の腹面の前に存在するように、一般的にフィットされる。

それぞれのケースにおいて、例えば端部２１から分かるように、隣接する椎体のアライメント面を超えて腹側方向に突出している全ての端部は丸みを帯びている。これは、隣接する臓器のあらゆる刺激を抑止するか若しくは最小に押さえるためである。

人工装具の歯状部９は鋭利であるために、人工装具は挿入直後、隣接する椎体に対する最終位置に到達する。即ち、後の工程において、隣接する椎体間で圧縮が行われている間、歯状部は無視しうる程度以上に椎体に沈む。実際に、これは、椎骨間の神経路の断面積の好ましくない減少に関連する。これに関して言えば、歯の高さは０.２〜０.６ｍｍ、好ましくは０.３〜０.５ｍｍにあることが好ましく、また歯の間隔は０.４〜２ｍｍ、好ましくは０.６〜１.３ｍｍにあることが好ましい。

腹側の隣接面１６は、人工装具の全幅に亘って拡がっている必要はない。そうではなく、分離して間隙を空けられた突出部により人工装具が形成されていてもよい。ここで、突出部を便宜上対照に配置している。そのような２つの突出部２２を図１に示している。フランジ状の隣接面１６を設ける場合、図２に示すように、これは便宜上凹んだ形状をし、椎体の腹側の境界面に適合される。フランジが螺旋体ホールを有せず、椎体の凹部にフランジが挿入されるように、対応して短くされる場合、直線的な隣接面１６が都合がよい。フランジと協同する凹部の端面を所望のように成形することができ、また直線的な成形は特に簡単であるからである。

図１は、人工装具の上部端部プレートをおよそ実際のスケールで描いた平面図である。 図２は、同一のものを拡大して示したものである。 図３は、図２に対応するスケールの矢状断面を示している。

Claims (20)

1. 隣接する椎体（７）にそれぞれ接続された２つのカバープレート（１，３）を備える頸椎人工装具であって、
   上記２つのカバープレート（１，３）の少なくとも１つが、歯状部（９）を有し、該歯状部（９）は、椎体（７）に面しさらに少なくとも１つの歯（９）を有し、該歯（９）は急峻で腹面に向いた側面（１０）及び急峻ではなく背面に向いた側面（１１）を有し、
   上記カバープレート（１，３）は、その腹面側の端部において、背面に向いた隣接面（１６）を有し、該隣接面（１６）は、椎体（７）の腹側に向いた面と協同することを特徴とする頸椎人工装具。
2. 両方のカバープレート（１，３）が、上記の歯状部（９）及び隣接面（１６）を有することを特徴とする請求項１記載の頸椎人工装具。
3. 上記歯状部が、のこぎりの形状をした複数の歯（９）からなり、上記椎体（７）に接する表面の少なくとも半分が歯状部により覆われていることを特徴とする請求項１記載の頸椎人工装具。
4. 上記椎体（７）に接する表面の略全面が、上記歯状部（９）により覆われていることを特徴とする請求項３記載の頸椎人工装具。
5. 上記歯の高さが、０.２〜０.８ｍｍにあることを特徴とする請求項３記載の頸椎人工装具。
6. 上記歯の間隔が、０.４〜２ｍｍにあることを特徴とする請求項５記載の頸椎人工装具。
7. 上記歯状部の歯（９）が、上記矢状方向（８）に関して実質的に横方向に延びることを特徴とする請求項３又は４記載の頸椎人工装具。
8. 上記の椎体（７）に接する表面が、溝部（１２）、及び／又は歯状部の歯に対して横方向に延びるリブを有することを特徴とする請求項７に記載の頸椎人工装具。
9. 上記歯はコーティング（１４）を有し、該コーティング（１４）は、多孔性であり及び／又は骨成長を促進することを特徴とする請求項３記載の頸椎人工装具。
10. 上記隣接面（１６）が、カバープレート（１，３）の腹面側フランジ（１５）により形成されることを特徴とする請求項１又は２記載の頸椎人工装具。
11. 上記フランジ（１５，１９）が、螺旋体ホールを有することを特徴とする請求項１０記載の頸椎人工装具。
12. 上記フランジ（１５）が、螺旋体ホールを有さないことを特徴とする請求項１０記載の頸椎人工装具。
13. 上記の歯状部を有する面（１３）を超えるフランジ（１５）の高さが、０.５〜２ｍｍであることを特徴とする請求項１０記載の頸椎人工装具。
14. 上記の歯状部（９）を有する面（１３）を超えるフランジ（１５）の高さが、上記カバープレートの前後方向の長さの５分の１より大きくないことを特徴とする請求項１０記載の頸椎人工装具。
15. 上記フランジ（１５）が、上記カバープレートの幅の少なくとも半分に亘って延びることを特徴とする請求項１０記載の頸椎人工装具。
16. 上記隣接面（１６）が、２つの突出部（２２）により形成され、該突出部（２２）は、互いに離間して、上記カバープレート（１，３）の矢状中央軸（８）に関して対照的に形成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載の頸椎人工装具。
17. 上記腹側端部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項１又は２記載の頸椎人工装具。
18. 少なくとも１つのカバープレート（１，３）を有し、該カバープレート（１，３）は、歯状部（９）及び背面方向に向いている腹面側の隣接面（１６）を備える頸椎人工装具を挿入するための方法であって、
    上記頸椎人工装具を挿入する前に、上記カバープレート（１，３）と協同する椎体（７）の腹面側に凹部を設け、該凹部が、カバープレート（１，３）の、隣接面（１６）を有する部分（１５）を受けることを特徴とする方法。
19. 上記の前後方向における凹部の深さが、人工装具の部分が、隣接する椎体（７）の腹面側のアライメント面を超えて食道に向かって大幅に突出することがないように決定されることを特徴とする請求項１４記載の方法。
20. 内視鏡検査により行われることを特徴とする請求項１４記載の方法。
    

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