JP2005515751A - Nkdタンパク質のヒトホモログおよび非ヒト霊長類ホモログ、ならびにそれをコードする核酸配列、ならびにこれらの使用 - Google Patents
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Abstract
Wntシグナル伝達に関与する新規タンパク質および対応するDNAを教示する。このタンパク質の発現を標的化する抗体、アンチセンス、およびリボザイムもまた、提供する。このタンパク質の発現を検出および調節する工程を包含する治療方法および検出方法が、さらに提供される。より詳細には、本発明は、Dishevelledタンパク質(Dsh)に関連し、Wntシグナル伝達に関係する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質を提供する。
Description
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮出願番号60/252,884(2000年11月27日出願)および米国仮出願番号60/291,109(2001年5月16日出願)、および米国仮出願番号60/325,571(2001年10月1日出願)からの優先権を主張する。これらの出願は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、Wntシグナル伝達経路の調節因子であるタンパク質およびヒトまたは非ヒト霊長類タンパク質をコードする対応する核酸配列、このタンパク質のフラグメントまたは改変体、ならびにこの核酸配列またはタンパク質を治療または診断用途に使用する方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
Dishevelled(Dsh)と呼ばれるDrosophila遺伝子は、細胞膜から核へのwinglessシグナルを運搬するタンパク質鎖の成分である細胞内調節タンパク質をコードする。Dshは他の脊椎動物において発現され、そして十分に保存された構造を有する[Millerら、Oncogene 18:7860(1999);Aelrodら、Genes Dev.12:2160(1998);Boutrosら、Cell 94:109(1998);Lieら、EMBO J.18:4233(1999)]。今日までに研究されている全てのDshタンパク質は、3つの高度に保存されたドメインを有する。これらの中で、N末端DIXドメインはまた、winglessシグナルの負のレギュレーターであるAxinにも存在する。中間PDZドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用ドメインであることが示されている。さらに、C末端DEPドメインは、Gタンパク質シグナル伝達に関係する[Axelrodら、Genes Dev.12:2160(1998);Boutrusら、Cell 94:109(1998);およびLiら、EMBO J.18:4233(1999)]。
【0004】
wingless経路において役立っていることに加えて、Dshはまた、Drosophilaにおける、Jun N末端キナーゼ(JNK)を活性化する平面内極性経路(planar porality pathway)に必須である。今日までのいくつかの系列の証拠は、Dshが、これらの2つの異なる経路に示差的に補充されることを示唆する。Dshの第3の既知の機能は、Notchと相互作用する(おそらく、Notchシグナル伝達をブロックすることにより)ことである。
【0005】
Wg/Wntリガンドおよびそれらのレセプターfrizzledは、少なくとも2つの経路に関係する。1つの経路は、細胞増殖、発達、および腫瘍形成に対する効果を発揮するβ−カテニン経路を介する。この経路のいくつかの成分、β−カテニン、APC、アキシン、ならびにいくつかのWntリガンドおよびレセプターが、種々のヒト癌において変異しているかまたは誤発現していることが報告されており、このことは、この経路が、腫瘍形成に関係し得ることを示唆する[SmalleyおよびDale、Canc.Metast Rev.18(2):215−230(1999)]。もう一方の経路は、Rhoおよびc−jun N末端キナーゼを通って表皮構造における平面内極性を確立する。この経路は、DrosophilaにおけるPCPおよび収斂伸長運動を制御する[Shumanら、Trends Genet.14:452(1998);TadaおよびSmith、Devel.12:2227(2000);Wallingfordら、Nature 405:81(2000)]。Dishevelledは、両方の経路に必要とされる近位の下流成分である。
【0006】
示されているように、異なるfrizzledレセプターは、可変性の固有のシグナル伝達能力を有し、そして少なくとも2つの同定された異なる経路に関係するが、両方とも伝達成分としてDshを利用する。従って、2つの構造的に関連するレセプターは、共通のタンパク質を通して(しかし、異なるエフェクター経路を介して)シグナル伝達する[BoutrosおよびMlodzikら、Science 288:1825−1828(2000)]。例えば、frizzledレセプターFz1およびFz2の両方は、膜に対してDshを効果的に補充し、このことは、異なる細胞下のDshの局在化が、シグナル伝達の効果および特異性を決定しないことを示唆する[Boutrosら(2000)(同書)]。Boutrosらはまた、その中で、Fz2がWnt−β−catシグナル伝達の強力なアクチベーターであり、Fz1が平面内極性経路の強力なアクチベーターであるが、これら両方のレセプターはいずれかの経路を相互活性化する固有の能力を有することを報告している[Boutrosら(2000)(同書)]。
【0007】
高等生物におけるDishevelledの正確な機能は未だ明らかにされていないが、マウスDishevelled1(mDvl 1)を欠損したマウスの株は、ヒトにおけるいくつかの神経学的障害の特徴を示す[Lijamら、Cell 90:895−905(1997)]。このマウスの株はまた、マウスにおけるDsh遺伝子の役割のさらなる研究のためのモデルを提供する。
【0008】
Dsh機能の損失は、正規のWnt経路およびPCP経路の両方を破壊することが知られており、そしてDshの過剰発現は、正規のWnt経路を活性化するが、なおPCP経路を伴うこともまた知られている。これらの結果は、PCP経路が用量感受性であり、そしてこの経路の過剰発現または抑制発現のいずれかにより破壊され得ることを示す[Axelrodら、Genes Dev.12:261(1998);Boutrosら、Cell 94:109(1998);BoutrosおよびMlodzik、Science 288:1825−1828(2000);Wallingfordら、Nature 405:81(2000)]。しかし、wingless経路、JNK経路、およびNotch経路におけるDshの機能のさらなる理解が、物理的または機能的にDshに関連するタンパク質(特に、ヒトタンパク質)の発見により促進される。
【0009】
記載されるように、Wntシグナル伝達が多くの異なる悪性腫瘍および他の疾患(例として、結腸癌、黒色腫、肝細胞癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、皮膚癌、多発性嚢胞腎疾患、髄芽腫毛質腫(medulloblastoma pilomatricoma)、頭頸部癌、および前立腺癌が挙げられる)の開始において役割を果たし得るので、このようなタンパク質(特に、ヒトホモログ)の同定は有益である(Morin PJ Bioessays、21(12):1021−1030;Polakis P、Genes Dev.14(15):1837−1851(2000);Peifer MおよびPolakis P、Science 287:1606−9(2000);Smalley MJおよびDale TC、Cancer and Metastasis Rev.18(2):215−230(1999))。また、アルツハイマー病におけるWntシグナル伝達の役割の可能性が示唆されている[DeFerrariら、Brain Res.Brain Res.Rev.33(1):1−12(2000)]。従って、Wntシグナル伝達において活発な役割を果たす(特に、Wntシグナル伝達を阻害する)新規タンパク質および対応する遺伝子の同定は、これらのタンパク質がWntシグナル伝達に関係する癌の新規の治療および診断方法の設計において可能性を有し得るので、有益である。なおさらに、これらのタンパク質およびDNAは、Wntシグナル伝達に関係する疾患の診断および処置における有用性を有し得る新規のリガンドおよび分子の同定において有用であり得る。
【0010】
さらに、Wntシグナル伝達に関係するヒト遺伝子およびタンパク質の同定は、診断用途を有し得る。なぜならば、このタンパク質の異常な発現またはその異常な形態の発現がWnt経路に関係する疾患(例えば、結腸癌のような癌)の発症に関係し得るからである。
【0011】
近年、Wg/Wntシグナル伝達経路に関係するタンパク質であるNkdが、Drosophila(Zengら、Nature 403(9771):789−795(2000))およびマウス[Yanら、「Mammalian Nkd is a Dishevelled Associated Regulate of Wnt Signaling Pathways」(2000)(本明細書中でその全体が参考として援用される)]において同定された。特にZengら(2000)(同書)は、Wg/Wnt経路と拮抗するWgシグナル伝達のWg誘導性インヒビターをコードするDrosophila Nkd遺伝子の同定を報告した[Zengら(2000)]。さらに、Yanら(2000)(同書)は、Drosophila Nkdのマウスホモログの同定を記載しており、さらに、特にWg/Wnt経路に対するいくつかのその生物学的効果を報告している。しかし、本発明以前に、Nkdのヒトまたは非ヒトホモログは同定されていない。このようなヒトまたは非ヒトホモログの同定は有益であり、特に癌(例えば、乳癌、肺癌、および結腸癌)および神経学的障害(例えば、アルツハイマー病)の潜在的な治療または診断の設計におけるこのようなタンパク質またはその対応するDNAの潜在的な適用をもたらす。より詳細には、ヒトNkdタンパク質または核酸配列転写物の異常な発現の検出が、異なる癌または神経学的障害を診断する手段を提供し得ることが予期される。また、hNkdタンパク質の投与または分析は、Wntシグナル伝達に関係するいくつかの癌または神経学的障害の処置において有用であり得る。
【0012】
(発明の要旨および目的)
この目的のために、Dishevelledタンパク質(Dsh)に関連し、Wntシグナル伝達に関係する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質を提供することが、本発明の目的である。対応するヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質の改変体を提供することが、本発明の別の目的である。
【0013】
対応するヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質のフラグメントを提供することが、本発明の別の目的である。
【0014】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd、または対応するヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdのフラグメントもしくは改変体をコードする核酸配列または分子を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0015】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdに特異的に結合するが、DrosophilaまたはマウスNkdに認められ得る程度で結合しないポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
生理学的環境または細胞内環境において、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd mRNAを標的とし、そしてそれらの翻訳を阻害または減少させるアンチセンス核酸またはリボザイムを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0017】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdをコードする核酸配列に相補的な核酸プローブ(特に、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdコード配列に特異的に結合し、安定な二本鎖を形成するが、Drosophilaまたはマウスのそれらに対してはそうではないプローブ)を提供することが、本発明の別の目的である。
【0018】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdのアゴニストまたはアンタゴニストを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0019】
少なくとも1つのヒトまたは非ヒト霊長類Nkdあるいは対応するネイティブのヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持するそれらの改変体またはフラグメントと組み合わせて、Dshまたはそれらのフラグメントもしくは改変体を含む複合体を提供することが、本発明の別の目的である。
【0020】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd、あるいはそれらの改変体またはフラグメントを利用してJNK経路を活性化することが、本発明のなお別の目的である。
【0021】
哺乳動物細胞(好ましくは、ヒトまたは非ヒト霊長類細胞)において、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd、あるいはネイティブのヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの活性を有するそれらの改変体またはフラグメントを過剰発現させることにより、Wntシグナル伝達を阻害することが、本発明の別の目的である。
【0022】
ヒトまたは非ヒトNkdの1つまたは両方の対立遺伝子の発現がノックアウトされた、ヒトまたは非ヒト細胞を提供することが、本発明のなお別の目的である。
【0023】
Wntシグナル伝達を阻害するのに効果的な量のヒトまたは非ヒトNkdあるいはネイティブのヒトまたは非ヒト霊長類の少なくとも1つの生物学的活性を保持するそれらの改変体またはフラグメントの投与により、疾患(特に、癌、神経学的障害、または異常なWntシグナル伝達に関係する他の疾患)を処置する新規の方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0024】
有効量のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdのアゴニストを投与することにより、Wntシグナル伝達に関係する癌(例えば、乳癌または肺癌)を処置することが、本発明のさらに別の目的である。
【0025】
配列番号1に含まれる核酸配列または50より長いヌクレオチド長のコード配列のフラグメントを含む単離された核酸分子;あるいは配列番号5によりコードされるタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有するタンパク質をコードする、配列番号1に含まれる核酸分子に少なくとも90%同一の核酸分子を提供することが、本発明のより詳細な目的である。
【0026】
hNkd遺伝子の調節領域(特に、プロモーター)を用いて、hNkd以外のコード配列の発現を調節することが、本発明のなおさらに別の目的である。
【0027】
hNkdプロモーター配列または少なくともそのような連続するヌクレオチドを含むそのフラグメントを用いて他のプロモーター(例えば、Wntシグナル伝達に関係するβ−カテニンまたは他の分子に応答性のプロモーター)を同定することもまた、本発明の目的である。
【0028】
配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸配列、または配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドに少なくとも90%同一のポリペプチドをコードする核酸、または配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメント;もしくはこのフラグメントの改変体(この改変体フラグメントは、このフラグメントに少なくとも95%同一であるが、ただし、このような改変体は、最も類似する領域が整列される場合、対応するマウス配列またはDrosophila配列と最大90%、好ましくは85%の同一性を有する)をコードする核酸配列(このフラグメントは、少なくとも50アミノ酸長である)を提供することが、本発明の別の目的である。
【0029】
配列番号7に含まれるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、または配列番号7に含まれるアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは少なくとも50アミノ酸長を含むそれらのフラグメント、あるいはそのフラグメントの改変体(そのアミノ酸残基の少なくとも95%がこのフラグメントと同一であるが、ただし、このような改変体は、最も類似する領域が整列される場合、対応するマウス配列またはDrosophila配列と最大90%、好ましくは85%の同一性を有する)を提供することが、本発明の別の詳細な目的である。
【0030】
配列番号7に含まれるアミノ酸配列に特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、またはこのアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、あるいは配列番号7を有するアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープを示すそれらのフラグメントに特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(ただし、このような抗体はマウスまたはDrosophilaのNkdタンパク質に認められ得る程度で結合しない)を提供することが、本発明のなお別の詳細な目的である。
【0031】
(発明の詳細な説明)
先に議論したように、本発明は、以前にDrosophila[Zengら、Nature 493(6771):789−795(Feb.17,2000)]およびマウス[Yanら、(2000)]において同定されていたWg/Wntシグナル伝達に関係するタンパク質であるNkdのヒトまたは非ヒト霊長類ホモログに関する。より詳細には、Zengら(2000)(同書)は、Wg/Wnt経路と拮抗するWgシグナル伝達のWg誘導性インヒビターをコードするDrosophila Nkd遺伝子を報告した。それらに関連して、Yanら(2000)(同書)は、Zengら(同書)のDrosophila遺伝子のマウスホモログの同定を報告し、インビトロおよびインビボの両方におけるその生物学的特性ならびにWg/Wnt経路に対する効果のいくつかの詳細な説明を提供した。例えば、Yanら(2000)は、mNkd遺伝子のmRNAレベルを測定レベルが、Wntに応答して増加すること;mNkdが、細胞培養物および脊椎動物Xenopus laevisにおけるβ−カテニンおよびJNKおよび平面内極性に対するWntの効果をブロックすることにより、Wnt経路と明らかに拮抗すること;ならびにこれらの効果は、Wnt経路および平面内極性経路の共通の成分であるDishevelled(Dsh)とmNkdとの直接的な相互作用により媒介されるようであることを開示する。
【0032】
より詳細には、Yanら(2000)は、酵母ツーハイブリッドアプローチを用いたマウス胚9.5および10.5d.p.c. cDNAライブラリーをスクリーニングすることによる、mNkd遺伝子の同定を開示している。特に、このスクリーニング方法を用いて、Yanらは、全長Dvl2およびDvl3タンパク質と相互作用するいくつかのタンパク質フラグメントの同定を報告している。mNkdタンパク質はこれらのタンパク質の中から同定され、そして単一のEF−ハンドカルシウム結合モチーフを含むことが発見された。このモチーフは、カルシウム結合タンパク質のファミリーの研究において見出されたモチーフと最も類似することが開示されている(Zhenら(2000))。mNkdタンパク質は、Zengら(2000)(同書)により報告されたDrosophila Nkdタンパク質に対して49%類似し、34%同一であることが開示されており、そして類似するEF−ハンドを含むことが報告されている。Yanら(2000)はまた、ツーハイブリッドスクリーニングにおいてDvlと相互作用するmNkdのドメインの位置が、アミノ酸107〜230に介在し、そしてEF−ハンドモチーフを含むことを教示している。
【0033】
Yan(2000)(同書)により報告されたマウスNkdの生物学的特性は、Wnt経路およびJNK経路におけるその役割と一致する。例えば、その中で記載されているように、mNkdの過剰発現は、哺乳動物細胞におけるWntシグナル伝達を阻害する。さらに、哺乳動物細胞におけるmNkdの発現は、JNKを活性化し、応答がDshの発現によっても見られた。これらの結果は、mNkdがJNK経路のアクチベーターであり、そしてWntシグナル伝達に関係することを示唆する。
【0034】
先に示されたように、異常なWntシグナル伝達は、いくつかの癌および神経学的障害(例えば、アルツハイマー病)において役割を果たしていることが考えられる。例えば、Wntシグナル伝達のアップレギュレーションは、いくつかの結腸癌を生じる。過剰に活性化されたWntシグナル伝達はまた、Wntシグナル伝達に対する阻害効果を有するmNkdの機能をダウンレギュレーションすることにより達成され得る。いくつかの結腸癌において、mNkdの発現は、正常細胞における発現よりも低くあり得る。この観察に基づき、mNkdのヒトホモログは類似の生物学的効果を発揮し、そしていくつかのヒト癌または神経学的障害の発症および発達に関係し得ることが予想される。
【0035】
従って、これまでに同定されたマウスおよびDrosophilaのNkd遺伝子のヒトまたは非ヒト霊長類の等価物の同定は重要であり、特に、Wnt経路の負の調節が哺乳動物において腫瘍形成に関係し得[SmalleyおよびDate、Canc.Metast.Res.18(2):215−230(1999)]、そして特に、とりわけ癌(例えば、結腸癌、乳癌、卵巣癌)に関係し得ることを示唆する先行研究に照らして、その重要な潜在的な診断適用および治療適用を与える。
【0036】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd(例えば、遺伝子または対応するポリペプチド)の同定は、潜在的なヒト治療の関係で、特に重要である。なぜならば、多くの異なる癌の発症に関係するヒトNkdは、それが同定された場合、ヒト細胞においてWnt経路を調節し得ることが期待されるからである。さらに、ヒトまたは霊長類タンパク質は、ヒト治療のために非ヒトタンパク質よりも優れているようである。なぜならば、ヒトまたは霊長類タンパク質は、そのヒト起源を考慮すると、おそらくヒト被験体においていかなる免疫応答も誘発しないからである。従って、これは、長期的な基礎において(例えば、Wnt経路に関係する癌(例えば、乳癌)または異常なWntシグナル伝達に関係する神経学的障害の処置のために)潜在的に投与可能である。また、ヒトタンパク質は、例えば、hNkd発現の異常なレベルに基づく癌または癌の可能性を診断する手段として、hNkdタンパク質の発現レベルを検出するため、またはhNkd発現をアゴナイズまたはアンタゴナイズするための診断薬剤または治療薬剤としての有用性を有する抗体を生成するために有用である。
【0037】
この目的のために、本発明は、その存在が以前に知られておらず、そして本発明の以前に予見され得なかったヒトまたは非ヒト霊長類Nkdポリペプチドおよび対応する核酸配列を提供する。
【0038】
本発明のタンパク質のヒトNkd核酸配列および対応するポリペプチドは、以下の実施例に開示される方法によって得られた。ヒトNkd全体の配列について、その配列は、ヌクレオチドレベルで、マウスNkd遺伝子に85%同一であり、そしてタンパク質レベルで87%同一であることが見出された。これらのタンパク質は、残基133〜168を含む、結合に関与する同一のEF−ハンド領域を含む。マウスNkdの核酸配列に対する本発明のヒトNkd遺伝子の核酸配列のアライメントを、図1に示す(それぞれ、配列番号2および配列番号1)。さらに、マウスNkdタンパク質に対するヒトNkdタンパク質のアミノ酸配列のアライメントを、図2に示す(それぞれ、配列番号4および配列番号3)。さらに、hNkdおよびmNkdをコードする核酸配列を、図3および図4に別々に示す(それぞれ、配列番号5および配列番号6)。また、hNkdおよびmNkdのアミノ酸配列を、図5および6に別々に示す(それぞれ、配列番号7および配列番号8)。
【0039】
本発明の全長ヒトNkd核酸配列は、ヒト第16染色体に含まれる。詳細には、コード領域全体ならびに5’および3’UTR(11個のエキソンに含まれる)は、第16染色体に見出される86キロベース領域に含まれる。このマッピングの結果を含む図を、図8に示す。さらに、11個の全てのエキソンの配列ならびに推定プロモーターならびに5’および3’UTRを、図7に示す(それぞれ、配列番号9〜配列番号22)。
【0040】
培養哺乳動物細胞におけるマウスNkd mRNAの転写レベルに対するWntリガンドの見かけの誘導性の効果を考慮すると、本発明のヒトNkdの転写が、それによって同様に誘導され得ることが仮定される。この仮定をさらに試験するために、ヒトNkdプロモーター配列を使用して、ヒトゲノム配列を含む公知のデータベースをブラスト(blast)した。実際、これらのゲノム検索は、このプロモーターが、他の遺伝子中のTcf結合についての逆方向コンセンサス(A/T A/T CAAG)(Gieseら、Gevens Dev.5:2567(1991))(その全体が本明細書中で参考として援用される)(この領域は、β−カテニン応答性を付与するために必要であり得る)と一致するいくつかの配列エレメントを含むことを明らかにした。高レベルのβ−カテニンを有する結腸癌細胞もまた、高レベルのヒトNkd RNA転写物を発現するという事実は、この仮定と一致する。このことは、ヒトNkdプロモーターが、β−カテニンの直接的な標的であることを示唆する。これに関連して、β−カテニンがLEF−1/TCF、APCおよびコンダクチン(conductin)/アキシン(axin)と相互作用すること、およびそのような相互作用が腫瘍形成に重要であり得ることもまた公知である(Van Kriesら、Nat.Struct.Biol.7(9):800−807(2000);Behrens,J.Ann.NY Acad.Sci.910:21−33(2000))。β−カテニンに関与する変異が、いくつかの癌(特に、卵巣癌、乳癌および結腸癌)に関与することが周知である(Wrightら、Int.J.Cancer.82(5):62−629(1999);Liら、Am.J.Patnol.153(3):709−714(1998);およびFukuchiら、Cancer Res.58(16):3526−3528(1998))。
【0041】
この観察に基づいて、hNkd、またはその異常な発現(ここで、異常な発現には、減少または増加された発現が含まれる)、または改変形態の発現の検出が、いくつかの癌(例えば、結腸癌、乳癌、卵巣癌、および異常なWntシグナル伝達に関連する他の癌)を検出する手段を提供することが予測される。
【0042】
詳細には、これらの結果は、癌および異常なWntシグナル伝達に関連する他の疾患(とりわけ、結腸癌、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌、皮膚癌、多発性嚢胞腎疾患、髄芽細胞腫、毛質性上皮腫、頭部および頸部の癌、前立腺癌、ならびに神経学的障害(例えば、アルツハイマー病)の可能性のある治療法としては、hNkd発現を調節する化合物(例えば、抗体、hNkdタンパク質、およびそれらのフラグメントまたは改変体;ならびにhNkd mRNA転写を特異的に標的化する、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド;ならびにhNkd発現を調節する低分子)の投与が挙げられ得ることを示唆する。潜在的に処置可能な癌の好ましい例としては、結腸癌、乳癌および卵巣癌が挙げられる。
【0043】
タンパク質レベルおよびDNAレベルの両方での、ヒトNkdとマウスNkdとの間の観察された構造的類似性に基づいて、これらのタンパク質およびDNAが、類似の生物学的活性を示すことが予測される。詳細には、hNkdタンパク質が、mNkdと同様に、JNK経路を活性化し、そしてWntシグナル伝達を阻害することが予測される。このことに基づいて、本発明は、新規のヒトおよび非ヒト霊長類のNkdタンパク質および核酸配列、それらの改変体およびフラグメント、ならびに新規タンパク質の設計およびその使用におけるそれらの使用に対して広範に関し、これらを、以下により詳細に議論する。しかし、これらのタンパク質、核酸配列およびそれらの使用を詳細に説明する前に、以下の定義を提供する。さもなければ、本明細書中の用語は、関連する分野において理解されるこれらの意味を有する。
【0044】
「単離されたヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質」とは、その通常のヒトまたは霊長類の細胞環境にはない、任意のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質をいう。これらとしては、例えば、組換えhNkdを含む組成物、精製hNkdを含む薬学的組成物、精製hNkdを含む診断組成物、およびhNkdを含む単離されたタンパク質組成物が挙げられる。好ましい実施形態において、単離されたhNkdタンパク質は、配列番号3に含まれるアミノ酸配列または実質的に同じ配列を有する天然のホモログもしくは変異体を含む、実質的に純粋なタンパク質を含み、つまり、他のタンパク質を実質的に含まず、好ましくは、少なくとも90%純粋である。天然に存在する変異体は、例えば、変異されたhNkdタンパク質配列をコードする遺伝子を発現する腫瘍細胞において見出され得る。
【0045】
「ネイティブヒトNkdタンパク質」とは、図5および配列番号7に含まれるアミノ酸配列を含むタンパク質をいう。
【0046】
「ネイティブ非ヒトNkdタンパク質」とは、図5および配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するタンパク質の非ヒト霊長類ホモログであるタンパク質をいう。他の霊長類に対するヒトの系統学的近縁性を考慮すると、ヒトおよび非ヒトNkdタンパク質は、高度に類似し、おそらく、95%程度以上の配列同一性のアミノ酸配列を有することが予測される。
【0047】
「ネイティブマウスNkdタンパク質」とは、図6および配列番号8に含まれるアミノ酸配列を含むタンパク質をいう。
【0048】
「単離されたヒトまたは非ヒト霊長類Nkd核酸分子または配列」とは、その通常のヒトの細胞環境にはない(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類染色体DNAに含まれない)、ヒトNkdをコードする核酸分子をいう。これらとしては、例えば、hNkd核酸分子を含むベクター、検出可能な部分(例えば、蛍光標識または放射性標識)を直接的または間接的に結合したhNkd核酸配列を含むプローブ、または異なるDNA(例えば、プロモーター、または検出可能なマーカーもしくはエフェクター部分をコードするDNA)にその5’末端または3’末端が融合されたhNkdをコードする核酸分子を含むDNA融合物が挙げられる。好ましい核酸配列は、ヒトNkdタンパク質をコードし、そして図3における配列番号5に含まれる核酸配列を有する。実質的に同じ配列を有する天然のホモログまたは変異体もまた、含まれる。縮重する天然に存在するホモログは、配列番号5がコードする同じタンパク質をコードするが、対応するアミノ酸配列を変化させないヌクレオチド差異を含む。天然に存在する変異体は、腫瘍細胞に見出され得る、ここでは、このようなヌクレオチド差異が、変異体Nkdタンパク質を生じる。保存的置換を含む天然に存在するホモログもまた、含まれる。
【0049】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質の改変体」とは、対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質に対して、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも91%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも92%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも93%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも94%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも96%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも98%の配列同一性、そして最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、タンパク質をいい、ここで、配列同一性は、以下に定義されるとおりである。好ましくは、この改変体は、ネイティブhNkdまたは霊長類Nkdタンパク質と共通する少なくとも1つの生物学的特性を有し、例えば、この改変体は、哺乳動物細胞、好ましくは、ヒトまたは非ヒト霊長類細胞において、Wntシグナル伝達を阻害する。
【0050】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd核酸分子または配列の改変体」とは、対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類核酸配列に対して、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも92%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも93%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも94%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも96%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性、そして最も好ましくは99%の配列同一性を有する核酸配列をいい、ここで、「配列同一性」は、以下に定義されるとおりである。
【0051】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの生物学的に活性なフラグメント」とは、その対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性(例えば、Wntシグナル伝達を阻害する能力、または対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの免疫原性エピトープを提示する能力(抗hNkd抗体または抗非ヒトNkd抗体に結合またはこれらを惹起する能力によって決定されるような))を含むタンパク質をいい;但し、この生物学的に活性なフラグメントは、それに最も類似するマウスまたはDrosophila Nkdタンパク質の部分と整列させた場合に、それと同一でないアミノ酸配列を有し、そしてより好ましくは、それと高くとも90%の配列同一性を有し、そしてより好ましくは、それと高くとも89%、88%、87%、86%または85%の配列同一性を有し、ここで、配列同一性は、以下に定義されるとおりである。
【0052】
陽性の生物学的に活性なhNkdフラグメントまたは改変体の生物学的活性は、そのようなフラグメントまたは改変体が、インビトロまたはインビボで、Wntシグナル伝達を阻害する能力、JNKを活性化する能力、Dshと相互作用する能力に基づいて決定され得る。適切なアッセイを、以下の実施例に開示する。
【0053】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd核酸分子または配列のフラグメント」とは、配列番号7に含まれるネイティブヒトNkd核酸配列またはネイティブ非ヒト霊長類Nkd核酸分子の一部に対応する核酸配列をいい、この部分は、少なくとも約50ヌクレオチド長、より好ましくは、少なくとも75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800または1825ヌクレオチド長である。好ましくは、このようなフラグメントは、配列番号7に含まれるヒトNkd核酸配列またはそその非ヒト霊長類ホモログの約500個〜約1500個連続するヌクレオチドを含む。
【0054】
「hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdの抗原性フラグメント」とは、それ自体かまたは免疫原性キャリアを結合して使用した場合に、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdを特異的に結合する抗体を誘発する、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdのフラグメントあるいはそれらの改変体またはホモログに対応するポリペプチドをいう。代表的には、このような抗原性フラグメントは、少なくとも20アミノ酸長である。
【0055】
用語「生物学的に等価」は、本発明のタンパク質またはDNAが、ネイティブヒトNkdまたは非ヒト霊長類のNkdタンパク質またはDNAと必ずしも同じ程度ではないが、同じ生物学的特性のいくつかまたは全てあるいは類似の様式を実証し得ることを意味することが、意図される。好ましくは、生物学的に等価とは、ネイティブヒトNkdに匹敵する程度にWntシグナル伝達を阻害する、hNkdの改変体をいう。示されるように、生物学的活性は、そのタンパク質またはDNAが、インビトロアッセイまたはインビボアッセイにおいて、他のWntシグナル伝達を阻害する能力、JNKを活性化する能力、Dshと相互作用する能力に基づいて評価され得、これらのアッセイを、以下の実施例に開示する。
【0056】
「実質的に相同」によって、別の種(好ましくは、別の霊長類)のNkdに対するヒトまたは非ヒト霊長類の相同性の程度は、そのhNkdまたは非ヒト霊長類Nkdと任意の以前に報告されたNkd(例えば、マウスまたはDrosophila Nkd)との間の相同性の程度より高いことが意味される。
【0057】
配列同一性または同一性%は、2つの配列を、Lasergeneバイオコンピューティングソフトウェア(DNASTAR,INC,Madison,WI)におけるマルチプル配列アライメントのClustal法[Higginsら、Cabios 8:189−191(1992)]を使用して整列させた場合、その2つの配列間で共有される同じ残基のパーセンテージ(非ヒトNkd(例えば、マウスNkdまたは非ヒト霊長類Nkd)との同一性%を決定する場合、ヒトNkdを基準として)を意味することが意図される。この方法において、マルチプルアライメントを、順送り様式で行い、ここで、より大きいアライメント群とより大きいアライメント群が、一連の対合アライメントから計算された類似性スコアを使用してアセンブルされる。最適な配列アライメントは、最大アライメントスコアを見出すことによって得られ、このスコアは、アライメント中の別々の残基間の全てのスコアの平均であり、これは、所定の進化的間隔にわたって2つの関連するタンパク質に生じる所定のアミノ酸変化の可能性を表す、残基重み表(residue weight table)から決定される。アライメント中にギャップを空けそして伸長させるためのペナルティーは、このスコアに寄与する。このプログラムで使用されるデフォルトパラメーターは、以下の通りである:マルチプルアライメントについてのギャップペナルティー=10;マルチプルアライメントについてのギャップ長ペナルティー=10;対合アライメントにおけるk−タプル値=1;対合アライメントにおけるギャップペナルティー=3;対合アライメントにおけるウインドウ値=5;対合アライメントにおいて保存される対角線=5。アライメントプログラムに使用される残基重み表は、PAM250[Dayhoffetら、Atlas of Protein Sequence and Structure、Dayhoff編、NDRF、Washington、第5巻、補遺3、345頁(1978)]である。
【0058】
保存%は、2つの残基が保存的置換(PAM250残基重み表にいて0.3以上のログオッズ値(log odds value)を有するものして定義される)を示す位置のパーセンテージに、同一残基のパーセンテージを加えることによって、上記アライメントから計算される。保存は、保存%を決定する場合、非ヒトNkd(例えば、mNkd)との保存%を決定する場合のヒトNkdを基準とする。この要件を満足する保存的アミノ酸変化は、以下である:R−K;E−D、Y−F、L−M;V−I、Q−H。
【0059】
(ポリペプチドフラグメント)
本発明は、開示されたタンパク質のポリペプチドフラグメントを提供する。本発明のポリペプチドフラグメントは、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdまたはそれらのアナログの、少なくとも8アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも25アミノ酸残基、なおより好ましくは少なくとも50アミノ酸残基を含み得る。より詳細には、このようなフラグメントは、配列番号7を有するポリペプチドの少なくとも75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、455、460、461、462、463、464、465、466または467残基を含む。さらにより好ましくは、タンパク質フラグメントは、ネイティブNkdの大部分(すなわち、hNkdの少なくとも約200〜400個連続する残基、またはさらにより好ましくは、少なくとも400〜460個連続する残基)を含む。好ましいタンパク質フラグメントとしては、EFハンドを含むフラグメントが挙げられる。好ましくは、このようなフラグメントは、ヒトまたは非ヒトNkdタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有する。このような生物学的活性を確認するために、インビトロまたはインビボアッセイを行って、例えば、そのフラグメントが、Dvlを結合するか否か、哺乳動物細胞によるWntシグナル伝達を阻害するか否か、Xenopus laevis胚におけるWnt誘導性二次軸形成を誘導するか否か、またはJNK平面極性経路に影響を及ぼすか否かを決定し得る。例示的な方法を、本願の実施例に開示する。
【0060】
(生物学的に活性なフラグメント)
本明細書中に開示されるタンパク質およびポリペプチドの改変体もまた、存在し得る。改変体は、天然に存在し得るかまたは天然に存在しないものであり得る。天然に存在する改変体は、ヒトまたは非ヒト霊長類種に見出され、配列番号7に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む。ヒトNkdタンパク質の非ヒト霊長類ホモログまたは改変体は、以下に記載されるような、本発明の部分ゲノムポリヌクレオチドを使用して、他のヒトまたは非ヒト霊長類細胞由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングに適切なプローブまたはプライマーを作製して、得られ得る。あるいは、霊長類ホモログは、ヒトNkdタンパク質またはDNA配列を用いて霊長類DNAデータベースをブラストすることによって同定され得る。
【0061】
天然に存在するタンパク質改変体と実質的に同じ生物学的活性を保持する、天然に存在しない改変体もまた、本発明に包含される。好ましくは、天然に存在する改変体または天然に存在しない改変体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列に少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、これらの分子は、少なくとも96%、97%、98%または99%同一である。同一性%は、当該分野で公知の方法によって決定される。限定されない例は、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムであり、これは、ギャップオープンペナルティー、12およびギャップ伸長ペナルティー、2、BLOSUMマトリクス、62を用いるアフィンギャップ(affine gap)検索を使用する。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、SmithおよびWaterman、Ad.Appl.Math.(1981)2:482−489に教示される。
【0062】
どのアミノ酸残基が、生物学的または免疫学的活性を失うことなく置換、挿入または欠失され得るかの決定についてのガイダンスは、当該分野で周知のコンピュータープログラム(例えば、DNASTARソフトウェア)を使用して見出され得る。好ましくは、タンパク質改変体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化(すなわち、類似の荷電アミノ酸または非荷電アミノ酸の置換)である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖に関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に、以下の4つのファミリーに分けられる:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時折、芳香族アミノ酸として共に分類される。
【0063】
ムテインと呼ばれる、変異体のサブセットは、中性アミノ酸(例えば、セリン)が、ジスルフィド結合に関与しないシステイン残基に代わって置換されたポリペプチドの群である。これらの変異体は、ネイティブの分泌タンパク質よりも広い温度範囲にわたって安定であり得る。Markら、米国特許第4,959,314号を参照のこと。
【0064】
イソロイシンまたはバリンでのロイシンの分離した(isolated)置換、グルタミン酸でのアスパラギン酸の置換、セリンでのトレオニンでの置換、または構造的に関連するアミノ酸でのアミノ酸の類似の置換は、得られる分泌タンパク質またはポリペプチド改変体の生物学的特性に対して大きな効果を有さないことが当然予測される。hNkdタンパク質またはポリペプチドの改変体の特性および機能は、配列番号7のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と同じ型の特性および機能であるが、改変体の機能および特性は、ある程度異なり得る。
【0065】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質改変体としては、グリコシル化形態、他の分子との凝集結合体、および関連しない化学部分との共有結合改変体が挙げられる。また、hNkdタンパク質改変体としてはまた、対立遺伝子改変体、種改変体、およびムテインが挙げられる。hNkdタンパク質の差示的な発現に影響しない領域の切断または欠失もまた、改変体である。共有結合改変体は、当該分野で公知のように、アミノ酸側鎖に見出される基に対してか、あるいはN末端残基またはC末端残基で、官能基を連結することによって、調製され得る。
【0066】
本発明のhNkdタンパク質のいくつかのアミノ酸は、タンパク質の構造または機能に対する有意な効果を伴わずに変更され得ることが当該分野で認識される。配列におけるこのような差異が意図される場合、活性を決定するタンパク質の重要な領域が存在することに留意する。一般に、類似の機能を果す残基を使用する場合には、三次構造を形成する残基を置換することが可能である。他の例において、変更がそのタンパク質の重要でない領域で生じる場合、残基の型は、完全には重要でない。アミノ酸の置換はまた、細胞表面レセプターへの結合の選択性を変化させ得る。Ostadeら、Nature 361:266−268(1993)は、2つの公知の型のTNFレセプターのうちの1つのみに対するTNF−αの選択的結合を生じる、特定の変異を記載する。したがって、本発明のポリペプチドは、天然の変異または人為操作のいずれか由来の、1以上のアミノ酸置換、欠失または付加を含み得る。
【0067】
本発明は、比較可能な発現パターンを示すかまたは抗原性領域を含む、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdポリペプチドのバリエーションをさらに包含する。このような変異体は、欠失、挿入、逆位、反復、および型置換を含む。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントであるのかに関するガイダンスは、Bowie,J.U.ら、「Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions」、Science 247:1306−1310(1990)に見出され得る。
【0068】
別の荷電アミノ酸での荷電アミノ酸の置換、および中性または負に荷電したアミノ酸での荷電アミノ酸の置換は、重要な目的である。後者は、開示されるタンパク質の特性を改善するように正電荷を減少したタンパク質を生じる。凝集の防止は、非常に望ましい。タンパク質の凝集は、活性の損失を生じるのみならず、それらが免疫原性であり得ることに起因して、薬学的処方物を調製する際に問題となり得る(Pinckardら、Clin.Exp.Immunol.2:331−340(1967);Robbinsら、Diabetes 36:838−845(1987);Clelandら、Crit.Rev.Therpeutic Drug Carrier Systems 10:307−377(1993))。
【0069】
機能に必須である本発明のポリペプチド中のアミノ酸は、当該分野で公知の方法(例えば、部位特異的変異誘発またはアラニンスキャニング変異誘発(CunninghamおよびWells、Science 244:1081−1085(1989)によって同定され得る。後者の手順は、分子中の各残基に1個のアラニン変異を導入する。次いで、得られた変異体分子を、生物学的活性(例えば、天然または合成の結合パートナーに対する結合)について試験する。リガンド−レセプター結合に重要である部位はまた、構造分析(例えば、結晶化、核磁気共鳴または光親和性標識(Smithら、J.Mol.Biol.224:899−904(1992)およびde Vosら、Science 255:306−312(1992))によって決定され得る。
【0070】
示されるように、変化は、好ましくは、重要でない特性の変化(例えば、タンパク質のフォールディングにも活性にも有意に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換)である。もちろん、当業者が作製するアミノ酸置換の数は、多くの要因(上記のような要因を含む)に依存する。一般には、任意の所定のポリペプチドの置換の数は、50個、40個、30個、25個、20個、15個、10個、5個または3個よりも多くない。
【0071】
(融合タンパク質)
hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdのタンパク質またはポリペプチドフラグメントを含む融合タンパク質もまた、構築され得る。融合タンパク質は、アミノ酸配列に対する抗体を作製するため、および種々のアッセイ系における使用のために、有用である。例えば、融合タンパク質は、本発明のタンパク質と相互作用するタンパク質またはその生物学的機能に干渉するタンパク質を同定するために使用され得る。物理的方法(例えば、タンパク質アフィニティークロマトグラフィー)、またはタンパク質−タンパク質相互作用のライブラリーベースのアッセイ(例えば、酵母ツーハイブリッド系またはファージディスプレイ系)もまた、この目的に使用され得る。このような方法は、当該分野で周知であり、そして薬物スクリーニングとしても使用され得る。hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdのシグナル配列および/または膜貫通ドメインあるいはそれらのフラグメントを含む融合タンパク質を使用して、他のタンパク質ドメインを、これらのドメインが通常見出されない細胞部位に標的化し得る(例えば、細胞膜に結合させるか、細胞外に分泌させる)。
【0072】
融合タンパク質は、ペプチド結合によって一緒に融合された2つのタンパク質セグメントを含む。本発明の融合タンパク質における使用のためのアミノ酸配列は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を利用し得るか、または配列番号7の生物学的に活性な改変体またはフラグメント(例えば、上記に記載されるもの)から調製され得る。第1のタンパク質セグメントは、全長hNkdまたはその改変体もしくはフラグメントからなり得る。
【0073】
上記のように、これらのフラグメントは、長さが、約8アミノ酸から、約25アミノ酸、50アミノ酸、75アミノ酸、100アミノ酸、125アミノ酸、150アミノ酸、175アミノ酸、200アミノ酸、225アミノ酸、250アミノ酸、275アミノ酸、300アミノ酸、325アミノ酸、350アミノ酸、375アミノ酸、400アミノ酸、425アミノ酸、450アミノ酸、455アミノ酸、460アミノ酸、465アミノ酸までのサイズの範囲にわたり得る。
【0074】
第2のタンパク質セグメントは、全長タンパク質またはポリペプチドフラグメントであり得る。融合タンパク質構築物において一般に使用されるタンパク質としては、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、自己蛍光タンパク質(青色蛍光タンパク質(BFP)が挙げられる)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。さらに、エピトープタグが、融合タンパク質構築物において使用され得、これらのタグとしては、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV−Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグが挙げられる。他の融合構築物としては、マルトース結合タンパク質(MBP)、S−タグ、Lex DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4 DNA結合ドメイン融合物、ならびに単純ヘルペスウイルス(HSV)BP 16タンパク質融合物が挙げられ得る。
【0075】
これらの融合物は、例えば、2つのタンパク質セグメントの共有結合により、または分子生物学分野における標準的な手順により作製され得る。例えば、当該分野で公知であるように、組み換えDNA法が用いられて、第2のタンパク質セグメントをコードするヌクレオチドと適切なリーディングフレームで配列番号7に含まれるアミノ酸配列をコードするコード配列を含むDNA構築物を作製し、宿主細胞においてこのDNA構築物を発現することにより、融合タンパク質が調製され得る。融合タンパク質を構築するための多くのキットが、発現のためのツールを研究機関に供給する会社(例えば、Promega Corporation(Madison,WI)、Stratagene(La Jolla,CA)、Clontech(Mountain View,CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)、MBL International Corporation(MIC;Watertown,MA)、およびQuantum Biotechnologies(Montreal,Canada;1−888−DNA−KITS)が挙げられる)から入手可能である。
【0076】
本発明のタンパク質、融合タンパク質またはポリペプチドは、組み換えDNA法により生成され得る。組み換えタンパク質、融合タンパク質、またはポリペプチドの生成のために、配列番号5に示されるヌクレオチド配列のコード配列が、当該分野で公知の発現系を用いて、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞において発現され得る。これらの発現系としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞が挙げられる。
【0077】
次いで、得られた発現タンパク質は、当該分野で公知の精製手順を用いて、培養培地または培養細胞の抽出物から精製され得る。例えば、培養培地に十分に分泌されたタンパク質については、無細胞培地を、酢酸ナトリウムを用いて希釈し、陽イオン交換樹脂と、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィーと接触させ得る。この方法を用いると、所望のタンパク質またはポリペプチドは、代表的には、95%を超える純度である。例えば、上記に列挙した技術のいずれかを用いて、さらなる精製が行われ得る。
【0078】
機能的タンパク質を得るために、例えば、適切な部位のリン酸化またはグリコシル化により、酵母または細菌において生成されるタンパク質を改変することが必要であり得る。このような共有結合は、公知の化学的方法または酵素的方法を使用して作製され得る。
【0079】
本発明のヒトまたは非ヒト霊長類のNkdタンパク質またはNkdポリペプチドはまた、精製を容易にする形態において、培養宿主細胞において発現され得る。例えば、タンパク質またはポリペプチドは、マルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼまたはチオレドキシンを含む融合タンパク質として発現され得、市販のキットを使用して精製され得る。このような融合タンパク質の発現および精製のためのキットは、New England BioLabs、Pharmacia、およびInvitrogenのような会社から入手可能である。タンパク質、融合タンパク質、またはポリペプチドはまた、エピトープ(例えば、「Flag」エピトープ(Kodak))を用いてタグ化され得、そのエピトープに特異的に結合する抗体を用いて精製され得る。
【0080】
本明細書中に開示されるコード配列はまた、トランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウシ、ヤギ、ブタ、またはヒツジ)を構築するために使用され得る。次いで、雌性トランスジェニック動物は、本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をそれらの乳汁中に生成し得る。このような動物を構築するための方法は、当該分野で公知であり、かつ広く用いられている。
【0081】
あるいは、合成化学方法(例えば、固相ペプチド合成)を用いて、分泌タンパク質または分泌ポリペプチドを合成し得る。ペプチド、アナログまたは誘導体を生成するための一般的手段は、 Chemistry and Biochemistry of Amino Acid,Peptides,and Proteins−−A Survey of Recent Developments,B.Weinstein編(1983)に概説されている。通常のL立体異性体の代わりにD−アミノ酸を用いて置換することが、分子の半減期を増大させるために行われ得る。
【0082】
代表的には、相同なポリヌクレオチド配列は、当該分野で公知のように、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションにより確認され得る。例えば、以下の洗浄条件:2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1% SDS、室温で2回、各30分間;次いで2×SSC、0.1% SDS、50℃で1回、30分間;次いで、2×SSC、室温で2回、各10分間、を用いて、相同な配列が同定され得る(この配列は、最大で約25〜30%の塩基対ミスマッチを含む)。より好ましくは、相同な核酸鎖は、15〜25%の塩基対ミスマッチ、なおより好ましくは5〜15%の塩基対ミスマッチを含む。
【0083】
本発明はまた、例えば、ハイブリダイゼーションプロトコル(例えば、ノーザンブロッティングもしくはサザンブロッティング、またはインサイチュハイブリダイゼーション)において相補的ヌクレオチド配列を検出するために使用され得るポリヌクレオチドプローブを提供する。本発明のポリヌクレオチドプローブは、配列番号1の少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、もしくは40、またはそれ以上連続したヌクレオチドを含む。ただし、この配列は、マウスNkd配列もしくはDrosophila Nkd配列に対して90%以下の同一性であり、より好ましくは、それらに対して約89、88、87または86%以下の同一性であり、最も好ましくは、それらに対して約85%以下の同一性である。本発明のポリヌクレオチドプローブは、検出可能な標識(例えば、放射性同位体標識、蛍光標識、酵素標識、または化学発光標識)を含み得る。
【0084】
本明細書中に開示されたcDNA配列に対応する単離された遺伝子もまた、提供される。標準的な分子生物学方法が使用されて、本明細書中に提供されるcDNA配列を用いて対応する遺伝子が単離され得る。これらの方法は、哺乳動物(ヒトを含む)のゲノムライブラリーもしくはヒトゲノムDNAの他の供給源から遺伝子を同定または増幅する際に使用するための配列番号5に示されるヌクレオチド配列からのプローブもしくはプライマーの調製を含む。
【0085】
本発明のポリヌクレオチド分子はまた、ポリヌクレオチド増幅方法を用いて、ポリヌクレオチドのさらなるコピーを得るためにプライマーとして使用され得る。ポリヌクレオチド分子は、当該分野で周知の技術を用いて、ベクターおよび細胞株中で増加され得る。ポリヌクレオチド分子は、直鎖状分子であってもよいし、環状分子であってもよい。ポリヌクレオチド分子は、自動的に複製する分子上にあってもよいし、複製配列を含まない分子上にあってもよい。ポリヌクレオチド分子は、当該分野で公知のように、このポリヌクレオチド分子自身の調節配列により調節されてもよいし、他の調節配列により調節されてもよい。
【0086】
(ポリヌクレオチド構築物)
本明細書中に開示されるコード配列を含むポリヌクレオチド分子は、ポリヌクレオチド構築物(例えば、DNA構築物もしくはRNA構築物)において使用され得る。本発明のポリヌクレオチド分子は、例えば、タンパク質の全てもしくは一部、改変体、融合タンパク質、または単鎖抗体を宿主細胞において発現するために発現構築物において使用され得る。発現構築物は、選択された宿主細胞において機能的であるプロモーターを含む。当業者は、当該分野で公知かつ使用されている多数の細胞型特異的プロモーターから適切なプロモーターを容易に選択し得る。この発現構築物はまた、宿主細胞において機能的な転写ターミネーターを含み得る。この発現構築物は、所望のタンパク質の全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドセグメントを含む。このポリヌクレオチドセグメントは、プロモーターの下流に位置する。このポリヌクレオチドセグメントの転写は、プロモーターにおいて開始される。発現構築物は、直鎖状であってもよいし、環状であってもよく、所望であれば、自己複製のための配列を含み得る。
【0087】
Nkdコード配列、または検出マーカーもしくは選択マーカーをコードする他の配列のいずれかに作動可能に連結された、ヒトまたは非ヒト霊長類のNkd遺伝子プロモーターおよびUTR配列(配列番号9)(配列番号10、11、または配列番号22)を含むポリヌクレオチド分子もまた含まれる。このようなプロモーターおよび/またはUTRベースの構築物は、Nkd発現の転写調節および翻訳調節を研究するため、ならびに活性化調節タンパク質および/または阻害性調節タンパク質を同定するために有用である。hNkdプロモーターは、β−カテニンによって明らかに調節され、従って、作動可能に連結された場合に、非hNkd遺伝子の発現をβ−カテニン応答性にするために用いられ得る。
【0088】
(宿主細胞)
発現構築物は、宿主細胞に導入され得る。発現構築物を含む宿主細胞は、任意の適切な原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。細菌における発現系としては、以下に記載されるものが挙げられる:Changら,Nature 275:615(1978);Goeddelら,Nature 281:544(1979);Goeddelら,Nucleic Acids Res.8:4057(1980);EP36,776;U.S.4,551,433;deBoerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25(1983);およびSiebenlistら,Cell 20:269(1980)。
【0089】
酵母における発現系としては、以下に記載されるものが挙げられる:Hinnnenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929(1978);Itoら,J Bacteriol 153:163(1983);Kurtzら,Mol.Cell.Biol.6:142(1986);Kunzeら,J Basic Microbiol.25:141(1985);Gleesonら,J.Gen.Microbiol.132:3459(1986),Roggenkampら,Mol.Gen.Genet.202:302(1986));Dasら,J Bacteriol.158:1165(1984);De Louvencourtら,J Bacteriol.154:737(1983),Van den Bergら,Bio/Technology 8:135(1990);Kunzeら,J.Basic Microbiol.25:141(1985);Creggら,Mol.Cell.Biol.5:3376(1985);米国特許第4,837,148号;米国特許第4,929,555号;BeachおよびNurse,Nature 300:706(1981);Davidowら,Curr.Genet.10:380(1985);Gaillardinら,Curr.Genet.10:49(1985);Ballanceら,Biochem.Biophys.Res.Commun.112:284−289(1983);Tilburnら,Gene 26:205−22(1983);Yeltonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470−1474(1984);KellyおよびHynes,EMBO J.4:475479(1985);EP 244,234;ならびにWO91/00357。
【0090】
昆虫における異種遺伝子の発現は、以下に記載されるように達成され得る:米国特許第4,745,051号;Friesenら(1986)「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」in:THE MOLECULAR BIOLOGY OF BACULOVIRUSES(W.Doerfler編);EP127,839;EP155,476;Vlakら,J.Gen.Virol.69:765−776(1988);Millerら,Ann.Rev.Microbiol.42:177(1988);Carbonellら,Gene 73:409(1988);Maedaら,Nature 315:592−594(1985);Lebacq−Verheydenら,Mol.Cell Biol.8:3129(1988);Smithら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8404(1985);Miyajimaら,Gene 58:273(1987);およびMartinら,DNA 7:99(1988)。多くのバキュロウイルス系統および改変体、ならびに対応する宿主から許容される昆虫宿主細胞は、以下に記載される:Luckowら,Bio/Technology(1988)6:47−55,Millerら,in GENETIC ENGINEERING(Setlow,J.K.ら編),Vol.8,pp.277−279(Plenum Publishing,1986);ならびにMaedaら,Nature,315:592−594(1985)。
【0091】
哺乳動物発現は、以下に記載されるように達成され得る:Dijkemaら,EMBO J.4:761(1985);Gormanetal.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:6777(1982b);Boshartら,Cell 41:521(1985);および米国特許第4,399,216号。哺乳動物発現の他の特徴は、以下に記載されるように容易にされ得る:HamおよびWallace,Meth Enz.58:44(1979);BarnesおよびSato,Anal.Biochem.102:255(1980);米国特許第4,767,704号;米国特許第4,657,866号;米国特許第4,927,762号;米国特許第4,560,655号;WO90/103430,WO87/00195,ならびに米国再発行特許第30,985号。
【0092】
発現構築物は、当該分野で公知の任意の技術を用いて、宿主細胞に導入され得る。これらの技術としては、以下が挙げられる:トランスフェリン−ポリカチオン媒介性DNA移入、裸の核酸またはカプセル化核酸を用いたトランスフェクション、リポソーム媒介性細胞融合、DNAコーティングラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」、およびリン酸カルシウム媒介性トランスフェクション。
【0093】
本発明のタンパク質をコードする内因性遺伝子の発現はまた、この内因性遺伝子とインフレームで転写ユニットを含むDNA構築物を相同組換えにより導入して、この転写ユニットを含む相同組換え細胞を形成することによって操作され得る。この転写ユニットは、標的化配列、調節配列、エキソン、および対になっていないスプライスドナー部位を含む。新しい転写ユニットは、所望される場合、内因性遺伝子をオンまたはオフにするために用いられ得る。この内因性遺伝子発現に影響をもたらす方法は、米国特許第5,641,670号に教示される。
【0094】
標的化配列は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列の少なくとも10、12、15、20、または50の連続するヌクレオチドのセグメントである。ただし、上記配列は、マウスNkd配列もしくはDrosophila Nkd配列に対して90%以下の同一性であり、より好ましくは、これらに対して約89、88、87または86%以下の同一性であり、最も好ましくは、それらに対して85%以下の配列同一性である。転写ユニットは、内因性遺伝子のコード配列の上流に位置する。外因性調節配列は、この内因性遺伝子のコード配列の転写を方向付ける。
【0095】
ヒトまたは非ヒト霊長類のNkdとしてはまた、ハイブリッドおよびそれらの改変形態が挙げられ得、これらとしては、このハイブリッドまたは改変形態が、ヒトもしくは霊長類Nkdタンパク質の生物学的活性を維持する限り、融合タンパク質、フラグメントおよびハイブリッド、ならびに改変形態(ここで特定のアミノ酸は、欠失または置換されている)、例えば、1以上のアミノ酸が改変アミノ酸もしくは異常アミノ酸に変化されているような改変、およびグリコシル化のような改変)が挙げられる。ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの生物学的活性を維持するとは、JNK経路が活性化され、そして/またはWntシグナル伝達が阻害されるが、本明細書中に記載されるように単離されたhNkdの効力と同じレベルである必要も、組換え生成されたhNkdの効力と同じレベルである必要もないことを意味する。
【0096】
任意のヒトまたは非ヒト霊長類タンパク質であるNkd(本明細書中に記載されたhNkdに対する抗体との交差反応性により単離され得るか、またはNkdのコードヌクレオチド配列(ゲノムDNA、mRNAまたはcDNAが挙げられる)が、本明細書中に記載のhNkdもしくはそのフラグメントのゲノムヌクレオチド配列またはサブゲノムヌクレオチド配列またはcDNAの相補的配列とのハイブリダイゼーションを介して単離され得る)がまた、実質的に相同性の意味内に含まれる。縮重DNA配列がヒトまたは非ヒト霊長類のNkdをコードし得ることは当業者に明らかであり、これらはまた、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdの対立遺伝子改変体であるとして、本発明内に含まれることが意図される。
【0097】
本発明の好ましいhNkdは、記載されるように、精製された形態で同定および単離されている。組換えDNA技術により調製されたhNkdもまた、好ましい。「精製形態」、「精製(された)形態」または「実質的に精製された形態」とは、hNkd組成物が、hNkdではない他のタンパク質を実質的に含まないことを意味する。
【0098】
本発明はまた、疾患を有する患者を処置するために有効な量のhNkdもしくは非ヒト霊長類Nkdを含む治療的組成物または薬学的組成物、および治療的有効量のhNkdを投与する工程を包含する方法を含む。これらの組成物および方法は、癌を含む多くの疾患を処置するために有用である。当業者は、hNkdが、生存を促進することまたは特定の細胞型において機能することにおいて有用であるか否かを決定するために当該分野で公知の種々のアッセイを容易に使用し得る。
【0099】
特定の状況において、発現されるhNkdの量を調節または減少させることは望ましいことであり得る。従って、本発明の別の局面において、hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドが作製され得、1以上のhNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与する工程を包含する、細胞によるhNkdの発現レベルを減少させるための方法が利用され得る。mNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドの参照は、hNkdの発現が減少されるようにhNkdの発現に関与する特定の相補的核酸配列と対形成する塩基をして相互作用するヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドに対して行われる。好ましくは、hNkdの発現に関与する特定の核酸配列は、hNkdをコードするゲノムDNA分子またはmRNA分子である。このゲノムDNA分子は、hNkd遺伝子の調節領域、または成熟hNkdタンパク質のコード配列を含み得る。
【0100】
hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびそのための方法の文脈において、用語ヌクレオチド配列に相補的は、細胞において(すなわち、生理学的条件下で)このような配列へのハイブリダイゼーションを可能にするために、その配列に十分相補的であることを意味する。hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、約8〜約100ヌクレオチドを含む配列を含み、より好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約15〜約30ヌクレオチドを含む。hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、核分解に耐性を付与する種々の改変を含み得、例えば、改変されたヌクレオシド間連結[UhlmannおよびPeyman,Chemical Reviews 90:543−548(1990);SchneiderおよびBanner,Tetrahedron Lett.31:335,(1990)(これらは、参考として援用される)]、5,958,773およびそこに開示される特許に開示されるように改変された核酸塩基、ならびに/または糖などである。
【0101】
アンチセンス技術に広く適用可能であることが公知である、アンチセンス分子の任意の改変および変化は、本発明の範囲内に含まれる。このような改変は、米国特許第5,536,821号;同5,541,306号;5,550,111号、同5,563,253号;5,571,799号;同5,587,361号;同5,625,050号および同5,958,773号に開示されるようなリン含有結合の調製を含む。
【0102】
本発明のアンチセンス化合物は、改変された塩基を含み得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、そのオリゴヌクレオチドを1つ以上の部分または結合体に化学的に結合させて、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布または細胞内取り込みを増強させることによって改変され得る。このような部分または結合体としては、脂質(例えば、コレステロール、コール酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質)、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分、例えば、米国特許第5,514,758号、同5,565,552号、同5,567,810号、同5,574,142号、同5,585,481号、同5,587,371号、同5,597,696号および同5,958,773号に開示される他のもの)が挙げられる。
【0103】
キメラのアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、本発明の範囲内であり、例えば、米国特許第5,013,830号、同5,149,797号、同5,403,711号、同5,491,133号、同5,565,350号、同5,652,355号、同5,700,922号および同5,958,773号に記載される方法を使用して、本発明のオリゴヌクレオチドから調製され得る。
【0104】
アンチセンスの分野において、特定の程度の慣用的実験が、特定の標的に対する最適なアンチセンス分子を選択するために必要とされる。効果的であるために、アンチセンス分子は、好ましくは、標的RNA分子のアクセス可能である部分、すなわち、または露出された部分に標的化される。いくつかの場合では、標的mRNA分子の構造について情報が利用可能であるが、アンチセンスを使用する阻害についての現在のアプローチは、実験による。細胞中のmRNAレベルは、処理された細胞およびコントロール細胞において、mRNAの逆転写およびcDNAレベルのアッセイによって慣用的に測定され得る。生物学的効果は、当該分野において公知であるように、細胞増殖または生存度を測定することによって慣用的に決定され得る。
【0105】
cDNAレベルをアッセイおよび分析することによってアンチセンス活性の特異性を測定することは、アンチセンスの結果を検証する、当該分野において認識された方法である。処理された細胞およびコントロール細胞由来のRNAが逆転写され、生じたcDNA集団が分析されるべきであることが、示唆されてきた[Branch,A.D.,T.I.B.S.23:45−50(1998)]。
【0106】
本発明の治療組成物または薬学的組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、髄腔内または大脳内を含む、当該分野において公知の任意の適切な投与経路によって投与され得る。投与は、注射によって迅速にか、あるいは、緩やかな注入または徐放性処方物の投与によるように一定の期間にわたっての、いずれかであり得る。
【0107】
さらに、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdはまた、所望の薬学的または薬力学的な特徴を提供する薬剤と連結または結合体化され得る。例えば、hNkdまたは霊長類Nkdは、血液脳関門を越える浸透または移動を促進するための、当該分野において公知の任意の物質(例えば、トランスフェリンレセプターに対する抗体)に結合され得、そして静脈注射によって投与され得る(例えば、Fridenら、Science 259:373−377(1993)(これは、参考として援用される)を参照のこと)。さらに、このヒトまたは霊長類のNkdタンパク質は、可溶性、安定性、半減期および他の薬学的に有利な特徴といった望ましい特性を得るために、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)に安定に連結され得る[例えば、Davisら、Enzyme Eng.4:169−73(1978);Buruham,Am.J.Hosp.Pharm.51:210−218(1994)(これらは、参考として援用される)を参照のこと)。
【0108】
組成物は、通常、薬学的調製物の形態で利用される。このような調製物は、薬学的な分野において周知の様式で作製される。例えば、Remington Pharmaceutical Science,18th Ed.,Merck Publishing Co.,Easterm PA(1990)を参照のこと。1つの好ましい調製物は、生理食塩水溶液のビヒクルを利用するが、他の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、生理学的濃度の他の非毒性の塩、5%グルコース水溶液、滅菌水など)もまた、使用され得ることが、企図される。適切な緩衝液が組成物中に存在することもまた、所望され得る。このような溶液は、所望される場合、凍結乾燥され得、そして容易な注射のための滅菌水の添加による再構成に容易な滅菌アンプル中に貯蔵され得る。基本的な溶媒は、水性であってもあるいは非水性であってもよい。このヒトまたは霊長類のNkdタンパク質、そのフラグメントまたは改変体はまた、処置が必要とされる組織に移植され得る、固体または半固体の、生体適合性のマトリクスに組み込まれ得る。
【0109】
キャリアはまた、処方物のpH、浸透圧モル濃度、粘性、清澄度、色、無菌せい(sterility)、安定性、分解速度または臭気を改変または維持するための、薬学的に受容可能な他の賦形剤を含み得る。同様に、キャリアはさらに、血液脳関門を越える放出または吸収または浸透を改変または維持するための、薬学的に受容可能な他の賦形剤を含み得る。このような賦形剤は、単位用量または複数用量形態のいずれかでの非経口投与のため、あるいは連続的または周期的な注入による脳脊髄液中への直接注入のための投薬量を処方するために、通常および慣用的に使用される物質である。
【0110】
用量投与は、投薬処方物の経路の薬物動態学的パラメーターおよび使用される投与に依存して反復され得る。
【0111】
このhNkd、霊長類Nkdまたはその改変体もしくはフラグメントを含む特定の処方物は、経口投与されるべきであることもまた、企図される。このような処方物は、好ましくは、カプセル化され、適切なキャリアを用いて固体投薬形態で処方される。適切なキャリア、賦形剤および希釈剤のいくつかの例としては、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエートおよびプロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油などが挙げられる。処方物は、さらに、潤沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、保存薬、甘味料または矯味矯臭剤を含み得る。組成物は、当該分野において周知の手順を使用することによる患者への投与の後に活性成分の迅速な放出、持続的な放出、または遅延放出を提供するように、処方され得る。処方物はまた、蛋白質分解を減少させそして吸収を促進させる物質(例えば、界面活性剤)を含み得る。
【0112】
特定の用量は、患者のおよその体重または体表面積または占められるべき体空間の容積に従って計算される。用量はまた、選択された特定の投与経路に依存して計算される。処置に適切な投与量を決定するために必要な計算のさらなる改善は、当業者によって慣用的になされる。このような計算は、標的細胞のアッセイ調製物における本明細書中に開示される活性の観点から、当業者によって過度の実験なくなされ得る。正確な投与量は、標準的な用量応答研究と併用して決定される。処置される状態、投与される組成物の選択、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の徴候の重篤度、ならびに投与経路の選択を含む、関連する状況の観点から、実際に投与される組成物の量が開業医によって決定されることは、理解される。
【0113】
本発明の1つの実施形態において、hNkdは、生物学的に活性な形態のhNkdまたはhNkdの前駆体(すなわち、身体によりhNkdの生物学的に活性な形態に容易に変換され得る分子)を生成し得るベクターまたは細胞を患者に移植することによって、治療的に投与され得る。1つのアプローチにおいて、hNkdを分泌する細胞は、患者への移植のために半透膜中にカプセル化され得る。これらの細胞は、hNkdまたはその前駆体を正常に発現する細胞であり得るか、あるいは、hNkdまたはその前駆体を発現するように形質転換され得る。患者がヒトの場合、細胞がヒト起源であり、そしてhNkdがヒトhNkdであることが、好ましい。しかし、非ヒト霊長類Nkdが効果的であり得ることは、予期される。
【0114】
多くの状況において、患者中のNkdタンパク質またはmRNAのレベルを決定することが所望される。Nkdがいくつかの疾患(例えば、癌)の間に種々のレベルで発現され得ることを示唆するこれまでの発現の証拠に沿う、本明細書中でのヒトNkdの同定は、hNkdの存在が細胞増殖および細胞生存に関連する正常な生理学的機能を果たすという結論の基礎を提供する。内因的に生成されたヒトNkdはまた、特定の疾患条件において役割を果たし得る。
【0115】
本明細書中で使用される場合、用語「検出」は、患者におけるhNkdの存在を検出する文脈において、患者中でのhNkdの量、またはある量のhNkdを発現する能力を決定すること、疾患の予想される結果および回復の見込みの観点において、予後の判断を推定すること、状況の状態の尺度として一定期間にわたってhNkdレベルをモニタリングすること、ならびに患者についての好ましい治療レジメンを決定するためにhNkdレベルをモニタリングすることを含むことが意図される。
【0116】
患者中のhNkdの存在を検出するために、サンプルが、患者より得られる。サンプルは、組織生検サンプルまたは血液、血漿、血清、CSFなどのサンプルであり得る。hNkdがいくつかの癌(例えば、結腸癌、乳癌および肺癌)において高レベルで発現されることを、見出した。hNkdを検出するためのサンプルは、これらの組織から採取され得る。hNkdの末梢レベルを評価する場合、サンプルは、血液、血漿または血清のサンプルであることが好ましい。中枢神経系におけるhNkdのレベルを評価する場合、好ましいサンプルは、脳脊髄液または神経組織から得られたサンプルである。
【0117】
いくつかの場合において、患者においてか、または患者内の細胞または細胞株において、hNkd遺伝子がインタクトであるか否かを決定することが所望される。インタクトなhNkd遺伝子によって、遺伝子中に変更(例えば、点変異、欠失、挿入、染色体崩壊、染色体再配列など)がないことが意味され、ここで、このような変更は、hNkdの生成を変更するか、またはその生物学的活性、安定性などを変更して、疾患の進行を導き得る。よって、本発明の1つの実施形態において、hNkdにおける任意の変更を検出および特徴付けるための方法が提供される。この方法は、hNkd cDNA、ゲノムDNAまたはそのフラグメントもしくはその誘導体を含むオリゴヌクレオチドを提供する工程を包含する。オリゴヌクレオチドの誘導体によって、誘導体化されたオリゴヌクレオチドは、この誘導体化された配列は、hNkd遺伝子に特異的なハイブリダイズに十分な配列相補性を由来する配列に対して有する点で、由来する配列と実質的に同一であることが意味され、誘導体化されたヌクレオチド配列は、必ずしも物理的にそのヌクレオチド配列に由来しないが、任意の様式(例えば、化学合成またはDNA複製もしくは逆転写もしくは転写を含む)において生成され得る。
【0118】
典型的には、患者のゲノムDNAは、患者由来の細胞サンプルより単離され、そして1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ(例えば、TaqIおよびAluI)で消化される。当該分野において周知であるサザンブロットプロトコルを使用して、このアッセイは、患者、または患者中の特定の組織がインタクトなhNkd遺伝子またはhNkd遺伝子異常を有するか否かを決定する。
【0119】
hNkd遺伝子に対するハイブリダイゼーションは、染色体DNAを変性して一本鎖DNAを得る工程;この一本鎖DNAをNkd遺伝子配列に関連する遺伝子プローブに接触させる工程;およびハイブリダイズしたDNAプローブを同定してヒトhNkd遺伝子の少なくとも一部を含む染色体DNAを検出する工程、を包含する。
【0120】
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」は、プローブ配列と標的領域中の配列との相補性に起因して標的配列とハイブリッド構造を形成する、ポリヌクレオチドから構成される構造をいう。プローブとしての使用に適切なオリゴマーは、標的化された配列に対して相補的である、最小で約8〜12個、好ましくは、最小限約20個連続するヌクレオチドを含み得る。
【0121】
本発明のhNkd遺伝子プローブは、DNAオリゴヌクレオチドであってもRNAオリゴヌクレオチドであってもよく、そして当該分野において公知の任意の方法(例えば、切除、転写または化学合成)によって作製され得る。プローブは、当該分野において公知の任意の検出可能な標識(例えば、放射標識もしくは蛍光標識または酵素的マーカー)で標識され得る。プローブの標識化は、当該分野において公知の任意の方法(例えば、PCR、ランダムプライミング、末端標識、ニックトランスレーションなど)によって達成され得る。当業者はまた、標識されたプローブを使用しない他の方法がハイブリダイゼーションを検出するために使用され得ることを、認識する。ハイブリダイゼーションを検出するために使用され得る方法の例としては、サザンブロッティング、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、およびPCR増幅を用いる一本鎖高次構造多型が挙げられる。
【0122】
ハイブリダイゼーションは、典型的には、25〜45℃、より好ましくは、32〜40℃、より好ましくは、37〜38℃で実施される。ハイブリダイゼーションに必要な時間は、約0.25〜約96時間、より好ましくは、約1〜72時間、最も好ましくは、約4〜約24時間である。
【0123】
hNkd遺伝子異常はまた、PCR法、およびhNkd遺伝子に隣接するかまたはhNkd遺伝子内にあるプライマーを使用することによって、検出され得る。PCR法は、当該分野において周知である。簡単には、この方法は、hNkd遺伝子内にある標的配列に隣接する核酸配列にハイブリダイズしその標的配列を増幅し得る、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して実施される。本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチドプライマー」は、約8〜約30塩基長にわたるDNAまたはRNAの短鎖をいう。上流プライマーおよび下流プライマーは、典型的には、約20〜約30塩基対の長さであり、そしてヌクレオチド配列の複製のために、隣接する領域にハイブリダイズする。そのポリマー化は、デオキシリボヌクレオチド3リン酸、またはヌクレオチドアナログの存在下で、二本鎖DNA分子を生成するDNAポリメラーゼによって特徴付けられる。次いで、二本鎖は、物理的変性方法、化学的変性方法または酵素的変性方法を含む任意の変性方法によって分離される。一般に、物理的変性方法は、典型的には、約80℃〜105℃の温度にまで、約1〜約10分間の範囲の時間にわたって、核酸を加熱する工程を包含する。このプロセスは、所望の数のサイクルについて反復される。
【0124】
プライマーは、増幅されるDNA鎖に実質的に相補的であるように選択される。よって、プライマーは、テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、増幅される鎖と選択的にハイブリダイズするために十分相補的であらねばならない。
【0125】
PCR増幅後、次いで、hNkdまたはそのフラグメントを含むDNA配列は、直接配列決定されるか、または本明細書中に開示される配列との配列比較によって分析されて、活性または発現レベルなどを変化させ得る変更が同定される。
【0126】
別の実施形態において、hNkdタンパク質を検出する方法が、hNkd遺伝子を発現する組織の分析に基づいて提供される。特定の組織(例えば、乳房、肺、結腸など)は、hNkd遺伝子を発現することが見出された。この方法は、hNkd遺伝子を正常に発現する組織のサンプル由来のmRNAに、ポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる工程を包含する。サンプルは、hNkd遺伝子中に異常を有することが予期される患者より得られる。
【0127】
hNkdタンパク質をコードするmRNAの存在を検出するために、サンプルが、患者より得られる。サンプルは、血液由来であっても、組織生検サンプル由来であってもよい。サンプルは、そこに含まれる核酸を抽出するために処理され得る。サンプルより得られた核酸は、ゲル電気泳動または他のサイズ分離技術に供される。
【0128】
サンプルのmRNAを、プローブとして働くDNA配列と接触させて、ハイブリッド二重鎖を形成する。上記で議論された標識プローブの使用は、生じる二重鎖の検出を可能にする。
【0129】
hNkdタンパク質をコードするcDNAまたはこのcDNAの誘導体をプローブとして使用する場合、高ストリンジェンシー条件が、偽陽性を防ぐために使用され得、この偽陽性は、インタクトであり分画されたhNkd遺伝子が実際存在しない場合の、hNkdヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションおよび見かけ上の検出である。hNkd cDNA由来の配列を使用する場合、よりストリンジェントでない条件が使用され得るが、これは、偽陽性の可能性が原因でより好ましくないアプローチである。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション手順および洗浄手順の間の多くの因子(温度、イオン強度、時間の長さおよびホルムアミドの濃度を含む)によって決定される。これらの因子は、例えば、Sambrookら[Sambrookら(1989)上述]に概略される。
【0130】
hNkdタンパク質をコードするmRNAの、サンプル中での検出感度を増強させるために、逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)の技術を使用して、hNkdタンパク質をコードするmRNAより転写されたcDNAを増幅し得る。RT/PCRの方法は、当該分野において周知であり、そして以下のように実施され得る。総細胞性RNAを、例えば、標準的グアニジンイソチオシアネート法によって単離し、そしてこの総RNAを逆転写する。逆転写法は、逆転写酵素および3’末端プライマーを使用する、RNAのテンプレート上でのDNAの合成を包含する。典型的には、プライマーは、オリゴ(dT)配列を含む。次いで、cDNAが、PCR法およびhNkd特異的プライマーを使用して増幅される。[Belyavskyら、Nucl.Acid Res.17:2919−2932(1989);KrugおよびBerger,Methods in Enzymology,152:316−325,Academic Press,NY(1987)(これらは、参考として援用される)]。
【0131】
ポリメラーゼ連鎖反応法は、増幅されるDNAセグメントの2つの隣接する領域に実質的に相補的な2つのオリゴプライマーを使用して上記のように実施される。増幅に続いて、次いで、PCR産物を電気泳動し、そしてエチジウムブロミド染色またはホスホイメージング(phosphoimaging)によって検出する。
【0132】
本発明はさらに、患者から得られたサンプル中におけるhNkdタンパク質の存在を検出するための方法を提供する。タンパク質を検出するための当該分野において公知の任意の方法が、使用され得る。このような方法としては、免疫拡散、免疫電気泳動、免疫化学法、バインダー−リガンドアッセイ、免疫組織化学技術、凝集アッセイおよび補体アッセイが挙げられるがこれらに限定されない。[Basic and Clinical Immunology,217−262,SitesおよびTerr編、Appleton&Lange,Norwalk,CT(1991)(これは、参考として援用される)]。抗体をhNkdタンパク質のエピトープと反応させる工程、および標識化hNkdタンパク質またはその誘導体を競合的に置換させる工程を包含するバインダー−リガンド免疫アッセイ法が、好ましい。
【0133】
本明細書中で使用される場合、hNkdタンパク質の誘導体は、特定のアミノ酸が欠失されたか、あるいは改変されたアミノ酸または通常ではないアミノ酸に置換されたかまたは変更されたポリペプチドを含むことが意図され、ここで、この誘導体は、hNkdに生物学的に等価であり、ここで、このポリペプチド誘導体は、hNkdタンパク質に対して惹起された抗体と交差反応する。交差反応によって、抗体が、その形成を誘導する抗原以外の抗原と反応することを意味する。
【0134】
多くの競合的タンパク質結合免疫アッセイおよび非競合的タンパク質結合免疫アッセイが、当該分野において周知である。このようなアッセイにおいて使用される抗体は、例えば、凝集試験において使用される場合未標識であり得るか、または広範な種々のアッセイ法における使用のために標識され得る。使用され得る標識としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、酵素基質または補因子、酵素インヒビター、粒子、色素などが、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA))、蛍光免疫アッセイなどにおける使用のために、挙げられ得る。
【0135】
被験体非ヒト霊長類またはヒトのNkdタンパク質またはそのエピトープに対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、当該分野において公知の多くの方法のいずれかによって、免疫アッセイにおける使用のために作製され得る。エピトープによって、ポリペプチドの抗原決定基に対して言及がなされる。エピトープは、そのエピトープに独特である空間的コンフォーメーションの3つのアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5個のこのようなアミノ酸からなる。アミノ酸の空間的コンフォーメーションを決定する方法は、当該分野において公知であり、そして例えば、X線結晶解析および2次元核磁気共鳴が挙げられる。
【0136】
タンパク質に対する抗体を調製するための1つのアプローチは、そのタンパク質の全てまたは一部のアミノ酸配列を選択および調製し、この配列を化学的に合成し、そして適切な動物(典型的には、ウサギ、ハムスターまたはマウス)へ注入することである。
【0137】
疎水性領域中にあり、よって、成熟タンパク質においてされる可能性があるオリゴペプチドに基づいて、hNkdタンパク質に対する抗体を生成するための候補として、オリゴペプチドが、選択され得る。hNkdに対する抗体を生成するために使用されるペプチド配列は、以下を含む:
さらなるオリゴペプチドは、例えば、Antigenicity Index,Welling,G.W.ら、FEBS Lett.188:215−218(1985)(これは、参考として本明細書中に援用される)を使用して決定され得る。
【0138】
本発明の他の実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体が提供され、ここで、この抗体は、hNkdに対して特異的であるが、マウスまたはDrosophilaのNkdタンパク質を感知されるほどには結合しない。句「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体(典型的には、マウスモノクローナル抗体)由来の抗体をいう。あるいは、ヒト化抗体は、親の非ヒト抗体の抗原結合特性を保持または実質的に保持するキメラ抗体由来であり得るが、ヒト化抗体は、ヒトに投与される場合、親の抗体と比較して低減された免疫原性を示す。本明細書中で使用される場合、句「キメラ抗体」は、典型的には異なる種由来である2つの異なる抗体由来の配列を含む抗体をいう(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。最も典型的には、キメラ抗体は、ヒトおよびマウスの抗体フラグメント(一般的には、ヒト定常領域およびマウス定常領域)を含む。
【0139】
ヒト化抗体が、ヒトにおいて、親のマウスモノクローナル抗体よりもほとんど免疫原性ではない場合、これらは、アナフィラキシーの危険性をほとんど有することなくヒトの処置に使用され得る。よって、これらの抗体は、ヒトに対するインビボ投与を包含する治療的適用(例えば、新生物性疾患の処置のための放射線増感剤としての使用、または例えば、癌治療の副作用を低減させる方法における使用)において好ましくあり得る。
【0140】
ヒト化抗体は、以下を含む種々の方法によって達成され得る:例えば、(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク領域および定常領域上に移植すること(当該分野において「ヒト化」といわれるプロセス)、あるいは(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、これらを表面残基の置換によるヒト様表面で「覆う(cloaking)」こと(当該分野において「ベニアリング(veneering)」といわれるプロセス)。本発明において、ヒト化抗体は、「ヒト化」抗体および「ベニアリングした」抗体の両方を含む。これらの方法は、例えば、Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984);MorrisonおよびOi、Adv.Immunol.,44:65−92(1988);Verhoeyerら、Science 239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immunol.31(3):169−217(1994)、ならびにKettleborough,C.A.ら、Protein Eng.4(7):773−83(1991)(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)中に開示される。
【0141】
句「相補性決定領域」は、ネイティブな免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を一緒に規定するアミノ酸配列をいう。例えば、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services NIH Publication No.91−3242(1991)を参照のこと。句「定常領域」は、エフェクター機能を与える抗体分子の部分をいう。本発明において、マウス定常領域は、ヒト定常領域によって置換される。そのヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリン由来である。重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ(α、δ、ε、γまたはμ)のいずれかから選択され得る。
【0142】
ヒト化抗体の1つの方法は、ヒト重鎖配列および軽鎖配列に対して非ヒト重鎖配列および軽鎖配列を整列する工程、選択する工程、このような整列に基づいて非ヒトフレームワークをヒトフレームワークと置換する工程、ヒト化配列のコンフォーメーションを予想するために分子モデリングする工程、そして親の抗体のコンフォーメーションに比較する工程を包含する。このプロセスの後に、CDR領域内の残基のバックミューテーションが反復され、この変異は、予想したヒト化配列モデルのコンフォーメーションが、親の非ヒト抗体の非ヒトCDRのコンフォーメーションにかなり近似するまでCDRの構造を妨害する。このようなヒト化抗体はさらに、(例えば、Ashwellレセプターを介する)取り込み及びクリアランスを容易にするように誘導体化され得る。例えば、米国特許第5,530,101号および同5,585,089号(これらの特許は本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0143】
hNkdまたは霊長類Nkdに対するヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されているトランスジェニック動物を使用して生成され得る。例えば、WO 98/24893は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示し、ここで、これらの動物は、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の不活化に起因して、機能的な内因性免疫グロブリンを生成しない。WO 91/10741はまた、免疫原に対する免疫応答をマウントし得るトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示し、ここで、これらの抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、そしてここで、内因性の免疫グロブリンをコードする遺伝子座は、置換されているかまたは不活化されている。WO 96/30498は、哺乳動物中の免疫グロブリン遺伝子座を改変して、例えば、定常領域または可変領域の全てもしくは一部を置換して改変された抗体分子を形成するためのCre/Lox系の使用を開示する。WO 94/02602は、不活化内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示する。米国特許第5,939,598号は、トランスジェニックマウスの作製法を開示し、ここで、このマウスは、内因性重鎖を欠き、そして1つ以上の異種定常領域を含む内因性免疫グロブリン遺伝子座を発現する。
【0144】
上記のトランスジェニック動物を使用して、選択された抗原性分子に対する免疫応答を生成し得、そして抗体産生細胞は、この動物から取り出され得、そしてヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するために使用され得る。免疫化プロトコル、アジュバントなどは、当該分野において公知であり、そして(例えば、WO 96/33735に開示されるようなトランスジェニックマウスの)免疫化において使用される。この公開物は、種々の抗原性分子(IL−6、IL−8、TNF、ヒトCD4、L−セレクチン、gp39および破傷風毒素を含む)に対するモノクローナル抗体を開示する。モノクローナル抗体は、対応するタンパク質の生物学的活性または生理学的効果を阻害または中和する能力について試験され得る。WO 96/33735は、IL−8で免疫されたトランスジェニックマウスの免疫細胞由来のIL−8に対するモノクローナル抗体が、好中球のIL−8誘導性機能をブロックしたことを開示する。トランスジェニック動物を免疫するために使用した抗原に対して特異性を有するヒトモノクローナル抗体がまた、WO 96/34096に開示される。
【0145】
本発明において、本発明のhNkdポリペプチドまたは霊長類Nkdポリペプチドおよびこれらの改変体を使用して、上記のようにトランスジェニック動物を免疫する。モノクローナル抗体は、当該分野において公知の方法を使用して作製され、そしてこれらの抗体の特異性は、単離されたhNkdポリペプチドまたは霊長類Nkdポリペプチドを使用して試験される。
【0146】
ヒトもしくは霊長類のNkdのタンパク質またはそのエピトープの調製法としては、化学合成、組換えDNA技術または生物学的サンプルからの単離が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドの化学合成は、例えば、以下によって実施され得る:固相ペプチド合成の古典的なMerrifeld法(Merrifeld,J.Am.Chem.Soc.85:2149,1963(これは、参考として援用される)、またはRapid Automated Multiple Peptide Synthesis systemにおけるFMOCストラテジー[E.I.du Pont de Nemours Company,Wilmington,DE)(CaprinoおよびHan,J.Org.Chem.37:3404(1972)(これは、参考として援用される)]。
【0147】
ポリクローナル抗体は、ウサギまたは他の動物に抗原を注射することにより免疫すること、続いて適切な間隔でブーストすることによって調製され得る。これらの動物から採血し、そして精製したhNkdまたは霊長類Nkdのタンパク質に対して、通常ELISAによって、あるいはhNkdまたは霊長類Nkdの作用をブロックする能力に基づくバイオアッセイによって、血清をアッセイする。非限定的な例示において、hNkdに対する抗体は、Dishevelledタンパク質に対するhNkdの結合をブロックし得る。鳥種(例えば、ニワトリ、七面鳥など)を使用する場合、抗体は、卵黄より単離され得る。モノクローナル抗体は、MilsteinおよびKohlerの方法の後に、免疫したマウス由来の脾細胞を、継続的に複製する腫瘍細胞(例えば、骨髄腫細胞またはリンパ腫細胞)と融合することによって調製され得る。[MilsteinおよびKohler:Nature 256:495−497(1975);GulfreおよびMilstein,Methods in Enzymology:Immunochemical Techniques 73:1−46,LangoneおよびBanatis編、Academic Press(1981)(これらは、参考として援用される)]。次いで、このように形成されたハイブリドーマ細胞を、限界希釈法によってクローニングし、そして抗体の産生について、ELISA、RIAまたはバイオアッセイによって上清をアッセイする。
【0148】
抗体が、標的タンパク質を認識しそしてそれに特異的に結合する独特の能力は、このタンパク質の過剰発現を標的とするためのアプローチを提供する。従って、本発明の別の局面は、hNkdタンパク質に対する特異的抗体を用いて患者を処置することによって、このhNkdタンパク質の過剰発現に関係する疾患を予防または処置するための方法を提供する。
【0149】
hNkdタンパク質または霊長類Nkdタンパク質に対する特異的ポリクローナル抗体または特異的モノクローナル抗体のいずれかが、上記のように当該分野で公知の適切な任意の方法により産生され得る。例えば、マウスモノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって産生され得るか、あるいは、hNkdタンパク質もしくは霊長類Nkdタンパク質、またはそれらの免疫学的に活性なフラグメント、あるいは抗イディオタイプ抗体またはそのフラグメントが、hNkdタンパク質または霊長類Nkdタンパク質を認識し結合することができる抗体の産生を惹起するために、動物に投与され得る。このような抗体は、任意のクラスの抗体(IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEが挙げられ、鳥類種の場合、IgYが挙げられるが、これらに限定されない)に、そして任意のサブクラスの抗体に、由来し得る。
【0150】
単離されたヒトNkdタンパク質または霊長類Nkdタンパク質を利用可能なことにより、高スループットスクリーニング法(HTS)の慣用的な適用を介して、結合パートナーへのhNkdまたは霊長類Nkdの結合を阻害する、低分子および低分子量化合物を同定することが、可能となる。HTS法は、一般的には、治療能力についてのリード化合物の迅速なアッセイを可能にする技術を指す。HTS技術は、試験物質の自動取扱い、ポジティブシグナルの検出、およびデータの解釈を使用する。リード化合物は、放射能の取込みを介してか、あるいは読み出しとして吸光度、蛍光、または発光に頼る光学アッセイを介して、同定され得る。[Gonzalez,J.E.ら、Curr.Opin.Biotech.9:624〜631(1998)]。
【0151】
例えば、リガンド結合についてhNkdまたは霊長類Nkdと競合することによって、hNkdまたは霊長類Nkdとそのリガンドとの相互作用を阻害する化合物についての高スループットスクリーニングにおける使用のために適合され得るモデル系が、利用可能である。Sarubbiら、Anal.Biochem.237:70〜75(1996)は、IL−1レセプターの活性部位への結合について天然のリガンドと競合する分子を発見するための、無細胞非同位体アッセイを記載する。Martens,C.ら、Anal.Biochem.273:20〜31(1999)は、標識リガンドが、粒子上に固定されたそのレセプターに結合し、レセプター結合について標識リガンドと競合する分子の存在下では、その粒子上の標識が減少する、一般的な粒子ベースの非放射性法を記載する。
【0152】
本発明の、治療hNkdポリヌクレオチドまたは非ヒト霊長類Nkdポリヌクレオチド、ならびに治療hNkdポリペプチドまたは非ヒト霊長類Nkdポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクル中で利用され得る。この遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源であっても、非ウイルス起源であってもよい(一般的に、Jolly,Cancer Gene Therapy 1:51〜64(1994);Kimura,Human Gene Therapy 5:845〜852(1994);Connelly,Human Gene Therapy 1:185〜193(1995);ならびにKaplitt、Nature Genetics 6:148〜153(1994)を参照のこと)。本発明による治療剤のコード配列を含む構築物の送達のための遺伝子治療ビヒクルは、局所投与または全身投与のいずれかで投与され得る。これらの構築物は、ウイルスベクターアプローチまたは非ウイルスベクターアプローチを使用し得る。このようなコード配列の発現は、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導され得る。このコード配列の発現は、構成的であるかまたは調節されるかのいずれかであり得る。
【0153】
本発明は、選択された目的の核酸分子を保有または発現するように構築された組換えレトロウイルスを使用し得る。使用され得るレトロウイルスベクターとしては、EP 0 415 731;WO 90/07936;WO 94/03622;WO 93/25698;WO 93/25234;米国特許第5,219,740号;WO 93/11230;WO 93/10218;VileおよびHart,Cancer Res.53:3860〜3864(1993);VileおよびHart,Cancer Res.53:962〜967(1993);Ramら、Cancer Res.53:83〜88(1993);Takamiyaら、J.Neurosci.Res.33:493〜503(1992);Babaら、J.Neurosurg.79:729〜735(1993);米国特許第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;ならびにEP 0 345 242に記載されるベクターが、挙げられる。好ましい組換えレトロウイルスとしては、WO 91/02805に記載されるものが、挙げられる。
【0154】
上記レトロウイルスベクター構築物を用いる使用に適切なパッケージング細胞株は、容易に調製され得(PCT公開WO 95/30763およびWO 92/05266を参照のこと)、そして組換えベクター粒子を産生する産生細胞株(ベクター細胞株とも呼ばれる)を作製するために使用され得る。本発明の特に好ましい実施形態において、パッケージング細胞株は、ヒト細胞株(例えば、HT1080細胞)またはミンク親細胞株から作製され、それにより、ヒト血清における不活化を生存し得る組換えレトロウイルスの作製が、可能になる。
【0155】
本発明はまた、遺伝子送達ビヒクルとして機能し得る、アルファウイルスベースのベクターを使用する。このようなベクターは、広範な種類のアルファウイルスから構築され得、そのようなアルファウイルスとしては、例えば、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532)が、挙げられる。このようなベクター系の代表的例としては、米国特許第5,091,309号;同第5,217,879号;および同第5,185,440号;ならびにPCT公開番号WO 92/10578;WO94/21792;WO 95/27069;WO 95/27044;およびWO 95/07994に記載されるものが、挙げられる。
【0156】
本発明の遺伝子送達ビヒクルはまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのような、パルボウイルスを使用し得る。代表的例としては、WO 93/09239においてSrivastavaにより、Samulskiら、J.Vir.63:3822〜3828(1989)により;Mendelsonら、Virol.166:154〜165(1988)により;およびFlotteら、P.N.A.S.90:10613〜10617(1993)により開示される、AAVベクターが、挙げられる。
【0157】
アデノウイルスベクターの代表的例としては、Berkner、Biotechniques 6:616〜627(Biotechniques);Rosenfeldら、Science 252:431〜434(1991);WO 93/19191;Kollsら、P.N.A.S.215〜219(1994);Kass−Bislerら、P.N.A.S.90:11498〜11502(1993);Guzmanら、Circulation 88:2838〜2848(1993);Guzmanら、Cir.Res.73:1202〜1207(1993);Zabnerら、Cell 75:207〜216(1993);Liら、Hum.Gene Ther.4:403〜409(1993);Cailaudら、Eur.J.Neurosci.5:1287〜1291(1993);Vincentら、Nat.Genet.5:130〜134(1993);Jaffeら、Nat.Genet.1:372〜378(1992);ならびにLevreroら、Gene 101:195〜202(1992)により記載されるものが、挙げられる。本発明において使用可能な例示的アデノウイルス遺伝子治療ベクターとしてはまた、WO 94/12649、WO 93/03769;WO 93/19191;WO 94/28938;WO 95/11984およびWO 95/00655に記載されるものが、挙げられる。Curiel,Hum.Gene Ther.3:147〜154(1992)に記載されるようなアデノウイルスを死滅させるために連結されたDNAの投与は、使用され得る。
【0158】
他の遺伝子送達ビヒクルおよび遺伝子送達方法が、使用され得、これらとしては、アデノウイルスのみを殺傷するための、連結されたかまたは連結されていない、ポリカチオン性濃縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.3:147〜154(1992));リガンドに連結されたDNA(例えば、Wu,J.Biol.Chem.264:16985〜16987(1989)を参照のこと);真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、1994年5月9日出願の米国特許出願番号08/240,030および米国特許出願番号08/404,796を参照のこと);光重合ヒドロゲル材料の沈着;携帯型遺伝子移入粒子銃(米国特許第5,149,655号に記載される);米国特許第5,206,152号およびWO 92/11033に記載される電離放射線;核電荷中和または細胞膜との融合が挙げられる。さらなるアプローチは、Philip、Mol.Cell Biol.14:2411〜2418(1994)およびWoffendin、Proc.Natl.Acad.Sci.91:1581〜1585(1994)に記載される。
【0159】
裸DNAもまた、使用され得る。例示的裸DNA導入法は、WO 90/11092および米国特許第5,580,859号に記載される。取込み効率は、生分解性ラテックスビーズを使用して改善され得る。DNAコーティングラテックスビーズは、そのビーズによるエンドサイトーシス開始の後、細胞中に効率的に輸送さえる。この方法は、疎水性を増加するため、そしてそれにより、エンドソームの破壊および細胞質中へのDNAの放出を容易にするためのこのビーズの処理によりさらに改善され得る。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号、PCT特許公開番号WO 95/13796、WO 94/23697、およびWO 91/14445、ならびにEP番号0 524 968に記載される。
【0160】
使用に適切なさらなる非ウイルス送達としては、Woffendinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(24):11581〜11585(1994)に記載されるアプローチのような、機械的送達系が、挙げられる。さらに、コード配列およびそのような発現の生成物は、光重合ヒドロゲル材料の沈着を介して送達され得る。コード配列の送達に使用され得る遺伝子送達のための他の従来の方法としては、例えば、米国特許第5,149,655号に記載されるような携帯型遺伝子移入粒子銃の使用;米国特許第5,206,152号およびPCT特許公開番号WO 92/11033に記載されるような、移入遺伝子を活性化するための電離放射線の使用が、挙げられる。
【0161】
本発明は、好ましい実施形態を含んで上記に記載されているが、以下の実施例は、本発明をさらに例証するために提供される。
【0162】
(実施例1)
(ヒトESTデータベースからの部分的ヒトNkd配列の同定)
図1に含まれる配列(配列番号2)を有するマウスNkd核酸配列を使用して、BLASTシリーズのプログラム[Altschul,S.R.およびLipman、D.J.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:5509〜5513(1990)]を使用してヒトESTデータベース中の潜在的ヒトホモログを同定した。候補配列の多重アライメントを、Clustal Wアライメント[Thompson,J.D.ら、Nucl.Acid.Res.22:4673〜4680(1999)]を使用して行った。
【0163】
この検索は、2つのヒットAI167910およびH55148を生じた。このAI167910 ESTを順番付け、配列決定した。この配列分析により、マウスNkd配列と実質的な類似性を有するがこの遺伝子の5’末端を欠く、配列が、明らかになった。
【0164】
(実施例2)
(全長hNkdのクローニング)
全長hNkdを、レーザー捕捉顕微解剖(LCM)法とRT−PCR RACE法との組合せによって、クローニングした。全RNAを、レーザー捕捉顕微解剖(LCM)(Arcturus Engineering Inc.、Mountain View(CA))により、霊長類ヒト結腸癌細胞から抽出した。LCMを、当該分野で周知の方法によって実行した(Simonら、Am.J.Protol.156(a):445〜452(2000)を参照のこと)。これにより、実質的に均質な細胞サンプルを得るための特定の細胞型の単離が、提供される。
【0165】
5’末端を含む遺伝子全体を、上記のような結腸癌患者からLCMにより得た全RNA(RNA prep ID# 100/サンプル1b3521サンプル名UC−C2CA)から合成したcDNAを、RACE用のcDNAテンプレートとして使用して、製造業者のプロトコル(Clontech SMART RACE cDNA Amplification Kit,K1811−1)に従って、5’ RACEによりクローニングした。この製造業者のプロトコルは、下記に記載される:
5’ RACEプロトコル:
RACE用cDNAテンプレートを、癌患者からLCMにより単離したRNA(RNA prep ID# 100/サンプルID352/サンプル名UC−C2CA)から、製造業者のプロトコル(Clontech SMART RACE cDNA Amplification Kit,K1811−1)に従って、合成した。増幅は、製造業者のプロトコルに従って、1M GCにてClontech Advantage GC−cDNA PCRキット(K1907−1)を用いて、上記のcDNAテンプレートと、製造業者により提供されたユニバーサルプライマー混合物と、ヒトNkdに特異的なプライマー(CH308:CTTGCCGTTGTTGTCAAAGTC)とを使用して、実施した。PCRを、94℃で0.5分間/58℃で0.5分間/68℃で2分間の30サイクル、その後、94℃で1分間/58℃で1分間/68℃で2分間の10サイクルについて、実行した。最終回の伸長は、72℃にて10分間行った。このPCR産物を、pCR−TOPO4(Invitrogen)中にクローニングし、そしてE.coli中に形質転換した。正確な5’RACE産物を保有する細菌クローンを、ネスティッドプライマー(CH306:CCCAGCATGGGGAAACTTCAおよびCH308:CTTGCCGTTGTTGTCAAAGTC)を使用するPCRスクリーニングによって、同定した。
【0166】
これにより、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域を含む、全長hNkd遺伝子の単離が生じる。この配列は、図1および図3(それぞれ、配列番号1および配列番号5)に含まれる。
【0167】
ヒトNkdの核酸配列(5’非翻訳領域および3’非翻訳領域を含む)を、図1にあるClustal W Multiple Alignmentにより整列する。ヌクレオチドレベルでmNkdとhNkdとが85%同一であることが、このアライメントから理解され得る。さらに、このhNkd DNA配列およびmNkd DNA配列は、図3および図4(配列番号5および配列番号6)に、別々に示される。
【0168】
ヌクレオチド配列の再吟味により、このタンパク質配列を識別した。この配列は、図5および配列番号7に示される。これから、hNkdタンパク質が、470アミノ酸長であることが、理解され得る。
【0169】
hNkdおよびmNkdのアミノ酸配列が、図2において整列される。マウスNkdのアミノ酸配列およびヒトNkdのアミノ酸配列が、タンパク質レベルで87%同一であること、ならびにマウスNkdが、ヒトNkdタンパク質より1つ少ないアミノ酸残基を含むことが、このアライメントから理解され得る。さらに、hNkdについてのアミノ酸配列およびmNkdについてのアミノ酸配列が、図5および図6(配列番号7および配列番号8)に別個に示される。これらのタンパク質が、結合に関与する残基133〜168に相当する、同一のEFハンド領域を含むこともまた、理解され得る。
【0170】
(実施例3)
(ヒト染色体領域へのhNkdのマッピング)
直前の実施例において得た全長Nkd核酸配列を使用して、Genbankゲノム配列データベースをブラスト実行して、hNkdを含む染色体領域を同定した。この配列は、ヒト第16染色体から、2つのBACヒットを生じた。図7および図8に示されるように、hNkdのコード領域全体は、11個のエキソンからなる。これらのエキソンは、ヒト第16染色体上の86Kb領域にマッピングされ得る。配列分析によって、このゲノム配列が、5’RACEによりクローン化したhNkd配列として、同一のコード領域および3’非翻訳領域を含むことが、明らかとなった。唯一の配列の差異は、Genbankゲノム配列と比較した、5’UTR中の2つのヌクレオチド変化である。この11個のエキソン(非翻訳領域およびコード領域を含む)のヌクレオチド配列は、図7(配列番号9〜22)に含まれる。この時点で、5’UTR中のこの2つのヌクレオチド変化が、hNkd発現に対して何らかの効果を有するか否かは、未知である。
【0171】
(実施例4)
(融合タンパク質の調製)
GST融合タンパク質を、E.coli株BL21 DE3(plyS)において発現させ、そしてグルタチオンビーズ(Pharmacia)を用いて精製する。Myc−hNkdタンパク質を、35S−メチオニンの存在下でTNT共役(TNT coupled)網状赤血球ライセートシステム(Promega)を使用するインビトロ転写および翻訳によって、調製する。この35S標識hNkdを、抗Myc抗体およびプロテインAビーズによってかまたはグルタチオンビーズに固定したGST融合タンパク質によって、4℃にて3時間沈殿させる。
【0172】
(実施例5)
(hNkdによるWntシグナル伝達の阻害)
293細胞を、ホタルルシフェラーゼを発現するLEFルシフェラーゼレポーター、LEF−1発現ベクター、トランスフェクションコントロールとしてRenillaルシフェラーゼを発現するpRL−TKベクター(Promega)、と、以下のプラスミド:pCDNAHis3C β−ガラクトシダーゼ;pCGWnt−1プラスpCDNAHis3C βガラクトシダーゼ;pCGWnt−1プラスpC52+MychNkd;pC52+MychNkd単独とで同時トランスフェクトした。各サンプルのLEF−1ルシフェラーゼレポーター活性を、製造業者の指示書(Promega)に従って二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系を使用して、測定し、そして標準化した。
【0173】
詳細には、293細胞を、12ウェルプレートにおいて増殖させた。細胞を、LEF−1、LEF−1レポーター、Renillaと、β−ガラクトシダーゼ、hNkd、Wnt−1プラスβガラクトシダーゼ、またはWnt−1プラスhNkdの発現構築物でトランスフェクトした。トランスフェクション36時間後の相対的ルシフェラーゼ活性を、測定した。
【0174】
この実験のデータの平均を、図14に含める。これらの結果に基づいて、hNkdが、293細胞におけるルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて、Wnt−1シグナル伝達を阻害したことが、理解され得る(この図において、RLVは、相対的ルシフェラーゼ単位を指す)。
【0175】
(実施例6)
(正常なヒト細胞株およびヒト細胞組織とヒト癌細胞株およびヒト癌組織における、hNkd mRNAの発現)
(正常組織)
hNkd mRNAレベルを、脳、男性心臓、腎臓、肝臓、肺、結腸、骨髄、小腸、脾臓、胃、胸腺、前立腺、骨格、筋肉、精巣、子宮、胎児脳、胎児肝臓、脊髄、胎盤、副腎、膵臓、唾液腺、気管、および乳腺において、リアルタイム定量PCRにより測定した。すべての組織におけるhNkdの発現を、β−グルクロニダーゼのレベルに対して標準化した。この比は、1.00E−03(骨髄において最低の発現)〜4.00E−02(脊髄において最高の発現)の範囲であった。この実験の結果は、図15にあり、これは、hNkdの基礎mRNAレベルが、正常な組織では低いことを示す。
【0176】
(癌細胞株)
ヒト細胞株のコレクションを、ATCCにより推奨される培地にて増殖させた。このコレクションは、Cago.2、SW480、SW620、Colo 320 DM、T84、HCT15、LS174T、LOVO、HT29、HCT116(結腸癌細胞株);184B5(初代乳房細胞株);MDA−MB−231、MDA−MB−435、Alab、MCF−7、MDA−MB−468(乳癌細胞株);DU145、LNCAP、WOCA、PC3、GRDP2(前立腺癌細胞株);SKOV3、OVCAR3(卵巣癌細胞株);IMR90(初代線維芽細胞株);847(SV40形質転換線維芽細胞株);HT1080(線維肉腫細胞株);A−431(類表皮癌細胞株);U373MG(神経膠芽腫細胞株);NCIH23(非小細胞肺癌細胞株);HMVEC(内皮細胞株)を含んだ。全RNAの抽出後、cDNAを、オリゴdTプライマーを用いて合成し、そして定量リアルタイムPCR分析において使用して、その中のアクチンmRNAのレベルに対して標準化したhNkd mRNAの発現レベルを測定した。これらの結果は、図16に含まれ、そして、hNkd mRNAが、結腸癌株においてのみ高レベルで発現され、試験したヒト癌細胞株の他の型においては高レベルでは発現されなかったことを、示す。
【0177】
(実施例7)
(hNkdによるJNKの活性化)
JNKアッセイを、改変を加えて、記載された[Boutrosら、Cell 94:108〜118(1998)]ように実行する。NIH3T3細胞を、6ウェルプレート中で、10%仔ウシ血清を含むDMEM培地において対数増殖まで増殖させる。この細胞を、LipofectAMINEプラス試薬(Lifetech)を製造業者のプロトコルに従って使用して、トランスフェクトする。トランスフェクションの22時間後に、細胞を、SDSサンプル緩衝液中に溶解する。等量のサンプルを、トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(Novex)により分離させ、ニトロセルロース膜上にトランスファーする。この膜を、c−JunのN末端の63位にあるリン酸化セリンを認識するPhosphoPlus c−Jun(Ser63)II抗体(New England Biolabs)を用いてブロッティングする。その後、同じ膜を、ストリッピングし、そして、抗Xpress抗体(Invitrogen)を用いてブロッティングして、発現された、X−pressタグ化hNkdおよびβ−ガラクトシダーゼの量を検出する。同じ膜を再びストリッピングし、そして抗GAP抗体を用いてブロッティングして、ローディングコントロールとして、各サンプル中のGAPの量を検出する。
【0178】
リン酸化c−Junバンドの強度の増加が存在することが、予期される。
【0179】
(実施例8)
(哺乳動物組織におけるhNkdの発現)
哺乳動物組織におけるhNkdの発現を、multiple tissue Northern Blot(Clontech)を使用して調査する。このNorthern Blotを、hNkdの放射標識フラグメントとハイブリダイズさせる。このフラグメントは、hNkdのDishevelled結合ドメインを含む。分析されるべき組織としては、心臓、脳、脾臓、肺、肝臓、筋肉、腎臓、および精巣が、挙げられる。
【0180】
(実施例9)
(DishevelledとのhNkdの相互作用)
ベクターpCDNA3.IHisC(Invitorgen)においてhNkd、hNkd−δ EFハンド、またはGFP遺伝子を発現するCos7細胞を、150mM NaCl、20mM Tris HCl(pH7.5)、0.1% Tritonとプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(Roche)とを含む緩衝液において、溶解する。全細胞溶解物を、モノクローナルDvl抗体1、2、および3(Santa Cruz、California)を用いて免疫沈降させ、そしてXpress抗体を用いてブロッティングする。hNkdのEFドメインがmNkdのEFドメインと同様に挙動することを予期すると、このEFハンドにおけるNkd変異は、DvlへのhNkdの結合に対して有意な効果は有さないはずである。この仮説を試験するために、Mycタグ化Dishevelled、DD2を含むMycタグ化Dishevelledフラグメント、DshのN末端ドメインまたはC末端ドメインを含むMycタグ化Dishevelledフラグメント、およびhNkd変異体を発現する、Cos7細胞からの細胞溶解物を、Myc抗体(Roche)を用いて免疫沈降させ、Xpress抗体を用いてブロッティングする。hNkd変異体は、ネイティブhNkdと比較して変化したEFハンド中の1アミノ酸または2アミノ酸を有する部位特異的変異誘発によって作製する。
【0181】
別の実験において、35Sで標識したMycタグ化hNkdタンパク質を、抗Myc抗体で免疫沈降させるか、またはGST融合タンパク質により沈降させる。この免疫複合体を、電気泳動およびオートラジオグラフィーに供する。細菌由来のGST融合タンパク質を、SDS−PAGEゲル上で分離させ、クーマシーブルー染色する。hNkdがmNkdと同様に挙動すること、および35S−hNkdが、PDZおよび隣接N末端塩基性アミノ酸残基を含むがDshのN末端ドメインもC末端ドメインも含まないDshフラグメントと結合することが、予期される。
【0182】
(実施例10)
(哺乳動物細胞におけるWnt応答性LEF−1レポーター活性に対する、hNkdおよびhNkdのEDハンド変異の効果)
mNkd転写は、Wntおよび塩化リチウム処理誘導性である。hNkd転写が、同様に誘導性であることが、予期される。この仮説を試験するために、HEK 293細胞を、12ウェル培養プレート中2×105/ウェルで播種する。各ウェルを、LipofectaminePlus(Life Science)を合計0.54μgのDNAとともに使用して、トランスフェクトする。このトランスフェクトDNAは、0.02μgのLEF−1、0.2μgのルシフェラーゼレポーター[Hsuら、Mol.Cell.Biol.1918(1998)]、0.02gのpRL−TK(Promega)、および0.1μgのpCGWnt−1と0.2μgのpCDNA3.1HisC GFP、hNkd、またはその誘導体のいずれかとの組合せを含む。EFハンドにおける変異またはEFハンドの欠失を含むサンプル(Wnt−1はトランスフェクしない)において、GFP、hNkdまたはhNkd誘導体単独(0.3μgまたは0.1μg)を、トランスフェクトする。LEF−1ルシフェラーゼレポーター活性を、二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系(Promega)を使用して、測定して標準化する。この結果は、hNkdがβカテニン活性化LEF−1レポーター発現を阻害しないことを示し、hNkdが標準Wntシグナル伝達を負に調節することを示し、EFハンドの点変異および欠失が、Wnt媒介転写応答をhNkdが阻害する能力を損なうことを示すことが、予期される。
【0183】
マウス肝臓上皮細胞を、Wnt−3a馴化培地またはNeoコントロール培地のいずれかで、9時間、19.5時間、または27時間処理する。40mM LiClを含む増殖培地または含まない増殖培地を使用して、細胞を16時間処理する。適切なプライマーを、RT−PCRにおいて使用して、hNkdおよびGAPDHをそれぞれ増幅する。
【0184】
(実施例11)
(Xenopus胚におけるhNkdの効果)
発生Xenopus胚は、Wntシグナル伝達についての有効なインビボアッセイを提供する。なぜなら、この経路の異所性腹側活性化は、異所性背側構造を誘導するからである。mNkdのXwnt−8 mRNAの5〜10pgの腹側注射は、60%以上の胚において第2の軸を誘導することを示した。正規のWnt誘導されたLEF−1依存性転写を阻害するmNkdの能力と一致して、35pgのhNkd mRNAの注射は、同時注射されたXwnt−8の活性を抑制することが予想された。高用量のhNkdの同時注射は、いっそう少ない第2の軸を生じるはずである。なぜなら、非常に高用量のDrosophila Nkdの腹側発現が異所性頭部構造を誘導することが報告されているからである(Zengら;(2000))。
【0185】
Drosophilaの脊椎動物同族の平面内極性経路は、脊椎動物発生の間の収斂に伸びる移動を制御する。XenopusおよびDrosophilaの両方において、この経路の超活性化は、正規のWntシグナル伝達と独立した細胞極性表現性を誘発する。DrosophilaにおけるFrizzled(Fz)の野生型Dshの過剰発現は、上皮平面内極性を破壊し、一方、Xenopusにおいて、野生型Xdsh、Xfz−8またはXfz−7の過剰発現は、細胞極性を破壊し、そして収斂した伸長を阻害する。従って、収斂した伸長は、脊椎動物の平面内極性シグナル伝達の有効なインビボアッセイを示す。
【0186】
インビトロにおいてJNKを活性化するというその予期された能力と一致して、hNkdの過剰発現は、Drosophila NkdおよびマウスNkdと類似した様式で、Xenopus胚の正常な伸張を阻害するはずである。収斂した伸長に対するhNkdのこの効果をより直接的に評価するために、背側中胚葉の片側(open−face)Keller外植片を調べた。Xenopus胚を、4細胞段階の2つの背側割球または2つの腹側割球のいずれかにインビトロ転写したmRNAを用いて注射し、そして表現型のスコア付けのために、30段階まで1/3×MMRにおいて培養する。Keller外植片を、st.10.25で切断し、st.20まで1×Steinberg中でカバーガラスの下で培養する。
【0187】
コントロールXenopus胚を、二次的な軸を発生する5〜10pgのXwnt−8 mRNAを用いて腹部注射する。hNkdとXwnt−8との同時発現は、Xwnt−8単独と比較して、二次的な軸形成の頻度ならびに完全な二次的軸の比率を減少する。
【0188】
発生Xenopus胚におけるmNkdの背側発現は腹背軸の正常な伸長および直線性を阻害したので、hNkdを用いて類似の結果が予想される。初期の構造の正常な形成(例えば、mNkdを発現する胚において)は、その表現型が腹側形成の結果ではないこと示し、これは、mNkdが収斂の伸張を阻害することを示唆する。同様に、背側周辺領域のコントロール外植片は伸張し、そして形状を有意に変化させたが、mNkdを発現する外植片は、伸張もせず形状を変化もしなかった。DN−GSK3の同時発現による正規のWnt経路の下流活性化は、収斂の伸張に対するmNkdの効果をレスキューしなかった。
【0189】
この実験の結果は、コントロール胚から作製した外植片は有意に伸張したが、hNkdを発現する胚から作製した外植片は、伸張しなかったことを示す。これらの予期された結果は、平面内極性カスケードの他の野生型成分(Xdsh、Frizzled−8、Frizzled−7、およびWnt−11を含む)の過剰発現によって誘発される結果と類似する。
【0190】
hNkdはWnt経路の潜在的なインヒビターであると予想されるので、収斂の伸張に対するhNkdの効果がこの活性から生じ得るか否かを試験することが重要である。DN−GSK3(これは、正規のWntシグナル伝達を強力に活性化する(Pierce、1995))とhNkdの実験を実行したが、収斂の伸張のレスキューは見出されなかった。mNkdがJNKを活性化する能力と組み合わせて、これらのデータは、mNkdが平面内極性シグナル伝達カスケードを過剰に刺激することによって、収斂の伸張を阻害することが示される。
【0191】
本発明者らは、特定の作用機構に束縛されないが、mNkdを用いて実行した実験に基づいて、正規のWntシグナル伝達は本明細書中のhNkdによって阻害され、hNkdは正規ではない平面内極性経路を活性化し、hNkdはDshに結合するということが、予想される。従って、hNkdはDshを正規の経路からシャットダウンして平面経路に入れることに関与し得ることが、予想される。このことは、hNkdを、正規のWnt経路と正規ではないWnt経路との間のの分岐を決定する重要なレギュレーターにする。
【0192】
(実施例12 mNkdに結合し得る抗体)
hNkdまたはそのフラグメントに対する抗体を、以下のように調製した。ウサギまたは他の適切な哺乳動物もしくは動物に、hNkdポリペプチドまたはその配列番号7を有するタンパク質の少なくとも20アミノ酸を含む抗原性フラグメントを注射し、続いて、適切な間隔でブーストした。動物を採血し、そして血清を、精製したhNkdタンパク質またはそのフラグメントに対してアッセイした。抗hNkd抗体を産生するためのペプチド配列としては、その少なくとも20個連続するアミノ酸を含むhNkdのフラグメントが挙げられる。
【0193】
好ましくは、hNkdに特異的に結合するがマウスNkdまたはDrosophila Nkdに明らかに結合しない抗体が、選択される。hNkdに特異的に結合するがマウスNkdまたはDrosophila Nkdに結合しないモノクローナル抗体が、免疫した動物由来のB細胞からハイブリドーマを産生すること、およびヒトNkdまたは非ヒト霊長類Nkdに特異的に結合するがマウスNkdまたはDrosophila Nkdに実質的に結合しないモノクローナル抗体を産生するものを選択することによって、得られる。hNkdの異なる部分(例えば、EFハンド)に対して結合する抗体が、好ましくは選択される。
【0194】
(実施例13 抗hNkd抗体を用いる乳癌の処置)
異常なWntシグナル伝達を含む癌(特に、乳癌)を有する患者を、薬学的に受容可能なキャリアを含む、本発明に従う抗hNkd抗体の治療有効量を投与することによって、処置する。
【0195】
この投与は、所望の治療応答が達成されるまで、必要である場合繰り返す。
【0196】
(実施例14 Wntシグナル伝達を含む癌の検出)
被験体を、本発明に従う抗hNkd抗体を用いてこのような被験体の血清中のhNkdタンパク質の量を測定し、そしてこれらのレベルをコントロール血清サンプル(正常な患者の血清)に対応させることによって、hNkdの異常な発現を含む癌の存在についてスクリーニングする。これらのレベルが正常血清サンプル中のhNkdレベルを実質的に超えた場合、陽性の診断がなされる。
【0197】
(実施例15 mNkd mRNAは、Wntリガンドによって誘導される) 漸増する量のβ−カテニンに対する細胞培養物の曝露の際の、hNkd mRNAレベルに対する効果を決定する実験を実行した。これらの結果を、図10に含ませ、8時間、19.5時間および27時間の期間での増加したβ−カテニンの量が、増加したmNkd mRNAレベルによって実証されるように、mNkd発現の誘導を生じることが示される。コントロールとして、コントロール遺伝子(GAPDH mRNA)は、mRNAレベルのこのような増加を示さなかった。これらの結果は、mNkdがWnt/β−カテニン経路のネガティブフィードバックループの一部であり得ることを示唆する。
【0198】
(実施例16 hNkdおよびβ−カテニンmRNAレベルの割合に対する、アンチセンスオリゴの影響)
特定の癌(特に、結腸癌)におけるhNkd遺伝子の関与を確認するために、結腸癌細胞SW620を、β−カテニンRC/ASオリゴで処理した。具体的にいうと、SC620細胞を、以下のアンチセンスオリゴで試験した:CHIR30−5AS 5’−ACTCAGCTTGGTTAGTGTGTCAGGC−3’、および逆方向コントロールオリゴであるCHIR30−5RC 5’−CGGACTGTGTGATTGGTTCGACTCA−3’。この実験を以下のように記載する。
【0199】
(アンチセンスアッセイ)SW620細胞を、10% FBSを補充したDMEM中で増殖させた。細胞を、アンチセンスβ−カテニンオリゴ(AS)または逆方向コントロールオリゴ(RC;異なる配向の同じヌクレオチド配列)を用いて、会社の特許のあるトランスフェクション試薬を用いて100μMの最終濃度でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をPBSを用いて2回洗浄し、そして総RNAを、RNeasy miniキット(Qiagen)を用いて調製した。逆転写および定量的RNA分析を、Roche Molecular BiochemicalsからのLightCyclerシステムを用いることによって、実行した。
【0200】
(hNkd mRNAレベルは、β−カテニンによって調節される)SW620は、Wntシグナル伝達の遺伝子における変異に起因して、アップレギュレートされた細胞質β−カテニンレベルを有する、結腸癌細胞株である。SW620細胞のβ−カテニンアンチセンス処理は、β−カテニンのmRNAレベルを特異的にダウンレギュレートし、このことは、逆方向コントロールオリゴ(RC)を用いて処理した細胞のβ−カテニン mRNAレベルと比較した、β−カテニンアンチセンス(AS)を用いて処理した細胞のβ−カテニン mRNAレベルにおける80%以上の低下によって実証される。これらの結果を、図11に示す。β−カテニンタンパク質レベルもまた、β−カテニンアンチセンス処理したサンプルにおいてダウンレギュレートされる(データは示していない)。同様に、β−カテニンアンチセンスで処理した細胞のhNkd mRNAレベルもまた、逆方向コントロールオリゴを用いて処理した細胞のhNkd mRNAレベルよりも80%低い。ネガティブコントロールとして、GAPDH mRNAレベルを決定し、β−カテニンアンチセンス処理または逆方向コントロール処理のいずれによっても、影響されなかった。従って、β−カテニンアンチセンスを用いて処理した細胞のGAPDHと逆方向コントロールオリゴを用いて処理した細胞のGAPDHの割合は、1に等しい。
【0201】
(実施例17 結腸癌サンプルおよび正常組織におけるhNkd RNAの分布)
hNkd mRNAレベルが細胞培養物におけるβ−カテニンの増加によってアップレギュレートされるという本発明者らの発見に基づいて、そしてさらに、hNkdプロモーター中の多数のTCF結合エレメントを本発明者らが同定したことに基づいて、本発明者らは、hNkdレベルが正常なヒトと比較して、結腸癌患者において上昇していることを予想した。実際、以下により詳細に記載するように、hNkd RNAレベルは、正常培養物と比較して、約70%の結腸癌サンプル中で有意に上昇していることが見出された。
【0202】
(結腸癌サンプルおよび匹敵する患者の正常サンプルにおけるhNkdメッセンジャーRNAレベルの定量的分析)mRNAを、レーザー捕捉顕微解剖(LCM)で調製した結腸癌サンプルから単離した。逆転写反応を、RETROscripキット(Ambion)を用いて、そのキットに提供されるランダムプライマーによって実行した。定量的RNA分析を、Roche Molecular BiochemicalsからのLightCyclerシステムを用いることによって実行した。
【0203】
(hNkd mRNAレベルは、結腸癌患者においてアップレギュレートされる)
80%を超える結腸癌患者が、細胞質β−カテニンレベルのアップレギュレーションを生じるWnt経路の異常な調節を有する。hNkd mRNAレベルはβ−カテニンの量によって調節されるので、本発明者らは、28対の、結腸癌サンプルおよび匹敵する患者の正常サンプルにおけるhNkd mRNAレベルを調べた。これらの結果を、図12に含ませ、そして68%の結腸癌患者が、上昇したhNkd mRNAレベルを有することを示し、このことは、β−カテニンがhNkd mRNAレベルを調節するという本発明者らの知見と一致する。
【0204】
(実施例18)
上記の結果に基づいて、hNkd発現を、結腸癌を診断するためのマーカーとして使用する。結腸サンプルを、結腸癌について試験される被験体から得る。hNkd RNAのレベルを測定し、そして正常コントロール中のhNkd RNAレベルに対して比較する。被験体がコントロールと比較して増大したmNkd RNAレベルを示すか否かに基づいて、陽性の結腸癌診断をした。
【0205】
(実施例19 レポーターの発現をダウンレギュレートする低分子インヒビターについてスクリーニングするための、hNkdプロモーターの使用)
hNkdプロモーターを使用して、プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現をダウンレギュレートする低分子を同定する。例えば、複数TCF結合エレメント(CTTTGA/TA/T)を含むことが見出されたhNkdプロモーターを含むDNA構築物(図13に図示される)を、緑色蛍光タンパク質のコード配列に作動可能に連結させ、そして適切な哺乳動物細胞株に導入する。次いで、この細胞株を異なる低分子と接触させ、そしてレポーター発現に対するその効果を測定する。レポーター発現をダウンレギュレートする低分子を、選択する。これらの分子は、潜在的に、Wnt/β−カテニン経路の異常な調節を含む疾患(特に、癌(例えば、結腸癌))を処置する際に有用である。
【0206】
本発明は、特定の実施形態を参照して記載してきた。しかし、本出願は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得る変更および置換をカバーすることが意図される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、マウスNkdおよびヒトNkdのコード領域ならびに5’および3’非コード領域の核酸配列[それぞれ、配列番号1および配列番号2]の整列を含む。
【図2】
図2は、ヒトNkd(「mdap.pep」)およびマウスNkdのアミノ酸配列[それぞれ、配列番号3および配列番号4]の整列を含む。
【図3】
図3は、ヒトNkdのヌクレオチド配列[配列番号5]を含む。
【図4】
図4は、マウスNkdのヌクレオチド配列[配列番号6]を含む。
【図5】
図5は、ヒトNkdのアミノ酸配列[配列番号7]を含む。
【図6】
図6は、マウスNkdのアミノ酸配列[配列番号8]を含む。
【図7】
図7は、hNkdの推定プロモーター、ならびに5’UTR、コード配列、および3’UTRのエキソン(エキソン1〜11)の核酸配列[配列番号9〜22]を含む。
【図8】
図8は、hNkd遺伝子のコード領域ならびに5’および3’非翻訳領域(エキソン1〜11に含まれる)を、ヒト第16染色体の86Kb領域にマッピングした概略図を含む。
【図9】
図9は、Wnt/Bカテニン経路を示し、そして特に、細胞増殖を促進する遺伝子を同定する。
【図10】
図10は、経時的に漸増する量のβ−カテニンに曝された細胞培養物におけるmNkd mRNAレベルを比較したインビトロ実験の結果を含む。
【図11】
図11は、SW620細胞をβ−カテニンアンチセンスまたは逆コントロールオリゴで処理し、そしてSW620 hNkd、SW620 β−カテニンmRNA、およびコントロールSW620GAPDH mRNAのレベルの比率を処理後に測定した実験の結果を含む。
【図12】
図12は、癌/正常結腸組織におけるhNkdレベルの比率を示す。
【図13】
図13は、hNkdプロモーターを調節する低分子を同定するために使用された構築物を図解により示す。
【図14】
図14は、293細胞における2つのルシフェラーゼレポーターアッセイ実験において獲得されたデータの平均を含む(「RLV」は、「相対的ルシフェラーゼ単位」である)。
【図15】
図15は、種々の正常組織におけるhNkd mRNAレベルを測定したPCR実験の結果を含む(この実験において、このデータを、β−グルコロニダーゼのレベルに対して正規化した)。
【図16】
図16は、ヒト結腸癌細胞株を含む種々のヒト細胞株におけるhNkd mRNAレベルを測定したリアルタイムPCR実験の結果を含む(この実験において、結果を、アクチンのレベルに対して正規化した)。
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮出願番号60/252,884(2000年11月27日出願)および米国仮出願番号60/291,109(2001年5月16日出願)、および米国仮出願番号60/325,571(2001年10月1日出願)からの優先権を主張する。これらの出願は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、Wntシグナル伝達経路の調節因子であるタンパク質およびヒトまたは非ヒト霊長類タンパク質をコードする対応する核酸配列、このタンパク質のフラグメントまたは改変体、ならびにこの核酸配列またはタンパク質を治療または診断用途に使用する方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
Dishevelled(Dsh)と呼ばれるDrosophila遺伝子は、細胞膜から核へのwinglessシグナルを運搬するタンパク質鎖の成分である細胞内調節タンパク質をコードする。Dshは他の脊椎動物において発現され、そして十分に保存された構造を有する[Millerら、Oncogene 18:7860(1999);Aelrodら、Genes Dev.12:2160(1998);Boutrosら、Cell 94:109(1998);Lieら、EMBO J.18:4233(1999)]。今日までに研究されている全てのDshタンパク質は、3つの高度に保存されたドメインを有する。これらの中で、N末端DIXドメインはまた、winglessシグナルの負のレギュレーターであるAxinにも存在する。中間PDZドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用ドメインであることが示されている。さらに、C末端DEPドメインは、Gタンパク質シグナル伝達に関係する[Axelrodら、Genes Dev.12:2160(1998);Boutrusら、Cell 94:109(1998);およびLiら、EMBO J.18:4233(1999)]。
【0004】
wingless経路において役立っていることに加えて、Dshはまた、Drosophilaにおける、Jun N末端キナーゼ(JNK)を活性化する平面内極性経路(planar porality pathway)に必須である。今日までのいくつかの系列の証拠は、Dshが、これらの2つの異なる経路に示差的に補充されることを示唆する。Dshの第3の既知の機能は、Notchと相互作用する(おそらく、Notchシグナル伝達をブロックすることにより)ことである。
【0005】
Wg/Wntリガンドおよびそれらのレセプターfrizzledは、少なくとも2つの経路に関係する。1つの経路は、細胞増殖、発達、および腫瘍形成に対する効果を発揮するβ−カテニン経路を介する。この経路のいくつかの成分、β−カテニン、APC、アキシン、ならびにいくつかのWntリガンドおよびレセプターが、種々のヒト癌において変異しているかまたは誤発現していることが報告されており、このことは、この経路が、腫瘍形成に関係し得ることを示唆する[SmalleyおよびDale、Canc.Metast Rev.18(2):215−230(1999)]。もう一方の経路は、Rhoおよびc−jun N末端キナーゼを通って表皮構造における平面内極性を確立する。この経路は、DrosophilaにおけるPCPおよび収斂伸長運動を制御する[Shumanら、Trends Genet.14:452(1998);TadaおよびSmith、Devel.12:2227(2000);Wallingfordら、Nature 405:81(2000)]。Dishevelledは、両方の経路に必要とされる近位の下流成分である。
【0006】
示されているように、異なるfrizzledレセプターは、可変性の固有のシグナル伝達能力を有し、そして少なくとも2つの同定された異なる経路に関係するが、両方とも伝達成分としてDshを利用する。従って、2つの構造的に関連するレセプターは、共通のタンパク質を通して(しかし、異なるエフェクター経路を介して)シグナル伝達する[BoutrosおよびMlodzikら、Science 288:1825−1828(2000)]。例えば、frizzledレセプターFz1およびFz2の両方は、膜に対してDshを効果的に補充し、このことは、異なる細胞下のDshの局在化が、シグナル伝達の効果および特異性を決定しないことを示唆する[Boutrosら(2000)(同書)]。Boutrosらはまた、その中で、Fz2がWnt−β−catシグナル伝達の強力なアクチベーターであり、Fz1が平面内極性経路の強力なアクチベーターであるが、これら両方のレセプターはいずれかの経路を相互活性化する固有の能力を有することを報告している[Boutrosら(2000)(同書)]。
【0007】
高等生物におけるDishevelledの正確な機能は未だ明らかにされていないが、マウスDishevelled1(mDvl 1)を欠損したマウスの株は、ヒトにおけるいくつかの神経学的障害の特徴を示す[Lijamら、Cell 90:895−905(1997)]。このマウスの株はまた、マウスにおけるDsh遺伝子の役割のさらなる研究のためのモデルを提供する。
【0008】
Dsh機能の損失は、正規のWnt経路およびPCP経路の両方を破壊することが知られており、そしてDshの過剰発現は、正規のWnt経路を活性化するが、なおPCP経路を伴うこともまた知られている。これらの結果は、PCP経路が用量感受性であり、そしてこの経路の過剰発現または抑制発現のいずれかにより破壊され得ることを示す[Axelrodら、Genes Dev.12:261(1998);Boutrosら、Cell 94:109(1998);BoutrosおよびMlodzik、Science 288:1825−1828(2000);Wallingfordら、Nature 405:81(2000)]。しかし、wingless経路、JNK経路、およびNotch経路におけるDshの機能のさらなる理解が、物理的または機能的にDshに関連するタンパク質(特に、ヒトタンパク質)の発見により促進される。
【0009】
記載されるように、Wntシグナル伝達が多くの異なる悪性腫瘍および他の疾患(例として、結腸癌、黒色腫、肝細胞癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、皮膚癌、多発性嚢胞腎疾患、髄芽腫毛質腫(medulloblastoma pilomatricoma)、頭頸部癌、および前立腺癌が挙げられる)の開始において役割を果たし得るので、このようなタンパク質(特に、ヒトホモログ)の同定は有益である(Morin PJ Bioessays、21(12):1021−1030;Polakis P、Genes Dev.14(15):1837−1851(2000);Peifer MおよびPolakis P、Science 287:1606−9(2000);Smalley MJおよびDale TC、Cancer and Metastasis Rev.18(2):215−230(1999))。また、アルツハイマー病におけるWntシグナル伝達の役割の可能性が示唆されている[DeFerrariら、Brain Res.Brain Res.Rev.33(1):1−12(2000)]。従って、Wntシグナル伝達において活発な役割を果たす(特に、Wntシグナル伝達を阻害する)新規タンパク質および対応する遺伝子の同定は、これらのタンパク質がWntシグナル伝達に関係する癌の新規の治療および診断方法の設計において可能性を有し得るので、有益である。なおさらに、これらのタンパク質およびDNAは、Wntシグナル伝達に関係する疾患の診断および処置における有用性を有し得る新規のリガンドおよび分子の同定において有用であり得る。
【0010】
さらに、Wntシグナル伝達に関係するヒト遺伝子およびタンパク質の同定は、診断用途を有し得る。なぜならば、このタンパク質の異常な発現またはその異常な形態の発現がWnt経路に関係する疾患(例えば、結腸癌のような癌)の発症に関係し得るからである。
【0011】
近年、Wg/Wntシグナル伝達経路に関係するタンパク質であるNkdが、Drosophila(Zengら、Nature 403(9771):789−795(2000))およびマウス[Yanら、「Mammalian Nkd is a Dishevelled Associated Regulate of Wnt Signaling Pathways」(2000)(本明細書中でその全体が参考として援用される)]において同定された。特にZengら(2000)(同書)は、Wg/Wnt経路と拮抗するWgシグナル伝達のWg誘導性インヒビターをコードするDrosophila Nkd遺伝子の同定を報告した[Zengら(2000)]。さらに、Yanら(2000)(同書)は、Drosophila Nkdのマウスホモログの同定を記載しており、さらに、特にWg/Wnt経路に対するいくつかのその生物学的効果を報告している。しかし、本発明以前に、Nkdのヒトまたは非ヒトホモログは同定されていない。このようなヒトまたは非ヒトホモログの同定は有益であり、特に癌(例えば、乳癌、肺癌、および結腸癌)および神経学的障害(例えば、アルツハイマー病)の潜在的な治療または診断の設計におけるこのようなタンパク質またはその対応するDNAの潜在的な適用をもたらす。より詳細には、ヒトNkdタンパク質または核酸配列転写物の異常な発現の検出が、異なる癌または神経学的障害を診断する手段を提供し得ることが予期される。また、hNkdタンパク質の投与または分析は、Wntシグナル伝達に関係するいくつかの癌または神経学的障害の処置において有用であり得る。
【0012】
(発明の要旨および目的)
この目的のために、Dishevelledタンパク質(Dsh)に関連し、Wntシグナル伝達に関係する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質を提供することが、本発明の目的である。対応するヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質の改変体を提供することが、本発明の別の目的である。
【0013】
対応するヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質のフラグメントを提供することが、本発明の別の目的である。
【0014】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd、または対応するヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持する新規のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdのフラグメントもしくは改変体をコードする核酸配列または分子を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0015】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdに特異的に結合するが、DrosophilaまたはマウスNkdに認められ得る程度で結合しないポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
生理学的環境または細胞内環境において、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd mRNAを標的とし、そしてそれらの翻訳を阻害または減少させるアンチセンス核酸またはリボザイムを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0017】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdをコードする核酸配列に相補的な核酸プローブ(特に、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdコード配列に特異的に結合し、安定な二本鎖を形成するが、Drosophilaまたはマウスのそれらに対してはそうではないプローブ)を提供することが、本発明の別の目的である。
【0018】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdのアゴニストまたはアンタゴニストを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0019】
少なくとも1つのヒトまたは非ヒト霊長類Nkdあるいは対応するネイティブのヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性を保持するそれらの改変体またはフラグメントと組み合わせて、Dshまたはそれらのフラグメントもしくは改変体を含む複合体を提供することが、本発明の別の目的である。
【0020】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd、あるいはそれらの改変体またはフラグメントを利用してJNK経路を活性化することが、本発明のなお別の目的である。
【0021】
哺乳動物細胞(好ましくは、ヒトまたは非ヒト霊長類細胞)において、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd、あるいはネイティブのヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの活性を有するそれらの改変体またはフラグメントを過剰発現させることにより、Wntシグナル伝達を阻害することが、本発明の別の目的である。
【0022】
ヒトまたは非ヒトNkdの1つまたは両方の対立遺伝子の発現がノックアウトされた、ヒトまたは非ヒト細胞を提供することが、本発明のなお別の目的である。
【0023】
Wntシグナル伝達を阻害するのに効果的な量のヒトまたは非ヒトNkdあるいはネイティブのヒトまたは非ヒト霊長類の少なくとも1つの生物学的活性を保持するそれらの改変体またはフラグメントの投与により、疾患(特に、癌、神経学的障害、または異常なWntシグナル伝達に関係する他の疾患)を処置する新規の方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0024】
有効量のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdのアゴニストを投与することにより、Wntシグナル伝達に関係する癌(例えば、乳癌または肺癌)を処置することが、本発明のさらに別の目的である。
【0025】
配列番号1に含まれる核酸配列または50より長いヌクレオチド長のコード配列のフラグメントを含む単離された核酸分子;あるいは配列番号5によりコードされるタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有するタンパク質をコードする、配列番号1に含まれる核酸分子に少なくとも90%同一の核酸分子を提供することが、本発明のより詳細な目的である。
【0026】
hNkd遺伝子の調節領域(特に、プロモーター)を用いて、hNkd以外のコード配列の発現を調節することが、本発明のなおさらに別の目的である。
【0027】
hNkdプロモーター配列または少なくともそのような連続するヌクレオチドを含むそのフラグメントを用いて他のプロモーター(例えば、Wntシグナル伝達に関係するβ−カテニンまたは他の分子に応答性のプロモーター)を同定することもまた、本発明の目的である。
【0028】
配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸配列、または配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドに少なくとも90%同一のポリペプチドをコードする核酸、または配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメント;もしくはこのフラグメントの改変体(この改変体フラグメントは、このフラグメントに少なくとも95%同一であるが、ただし、このような改変体は、最も類似する領域が整列される場合、対応するマウス配列またはDrosophila配列と最大90%、好ましくは85%の同一性を有する)をコードする核酸配列(このフラグメントは、少なくとも50アミノ酸長である)を提供することが、本発明の別の目的である。
【0029】
配列番号7に含まれるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、または配列番号7に含まれるアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは少なくとも50アミノ酸長を含むそれらのフラグメント、あるいはそのフラグメントの改変体(そのアミノ酸残基の少なくとも95%がこのフラグメントと同一であるが、ただし、このような改変体は、最も類似する領域が整列される場合、対応するマウス配列またはDrosophila配列と最大90%、好ましくは85%の同一性を有する)を提供することが、本発明の別の詳細な目的である。
【0030】
配列番号7に含まれるアミノ酸配列に特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、またはこのアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、あるいは配列番号7を有するアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープを示すそれらのフラグメントに特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(ただし、このような抗体はマウスまたはDrosophilaのNkdタンパク質に認められ得る程度で結合しない)を提供することが、本発明のなお別の詳細な目的である。
【0031】
(発明の詳細な説明)
先に議論したように、本発明は、以前にDrosophila[Zengら、Nature 493(6771):789−795(Feb.17,2000)]およびマウス[Yanら、(2000)]において同定されていたWg/Wntシグナル伝達に関係するタンパク質であるNkdのヒトまたは非ヒト霊長類ホモログに関する。より詳細には、Zengら(2000)(同書)は、Wg/Wnt経路と拮抗するWgシグナル伝達のWg誘導性インヒビターをコードするDrosophila Nkd遺伝子を報告した。それらに関連して、Yanら(2000)(同書)は、Zengら(同書)のDrosophila遺伝子のマウスホモログの同定を報告し、インビトロおよびインビボの両方におけるその生物学的特性ならびにWg/Wnt経路に対する効果のいくつかの詳細な説明を提供した。例えば、Yanら(2000)は、mNkd遺伝子のmRNAレベルを測定レベルが、Wntに応答して増加すること;mNkdが、細胞培養物および脊椎動物Xenopus laevisにおけるβ−カテニンおよびJNKおよび平面内極性に対するWntの効果をブロックすることにより、Wnt経路と明らかに拮抗すること;ならびにこれらの効果は、Wnt経路および平面内極性経路の共通の成分であるDishevelled(Dsh)とmNkdとの直接的な相互作用により媒介されるようであることを開示する。
【0032】
より詳細には、Yanら(2000)は、酵母ツーハイブリッドアプローチを用いたマウス胚9.5および10.5d.p.c. cDNAライブラリーをスクリーニングすることによる、mNkd遺伝子の同定を開示している。特に、このスクリーニング方法を用いて、Yanらは、全長Dvl2およびDvl3タンパク質と相互作用するいくつかのタンパク質フラグメントの同定を報告している。mNkdタンパク質はこれらのタンパク質の中から同定され、そして単一のEF−ハンドカルシウム結合モチーフを含むことが発見された。このモチーフは、カルシウム結合タンパク質のファミリーの研究において見出されたモチーフと最も類似することが開示されている(Zhenら(2000))。mNkdタンパク質は、Zengら(2000)(同書)により報告されたDrosophila Nkdタンパク質に対して49%類似し、34%同一であることが開示されており、そして類似するEF−ハンドを含むことが報告されている。Yanら(2000)はまた、ツーハイブリッドスクリーニングにおいてDvlと相互作用するmNkdのドメインの位置が、アミノ酸107〜230に介在し、そしてEF−ハンドモチーフを含むことを教示している。
【0033】
Yan(2000)(同書)により報告されたマウスNkdの生物学的特性は、Wnt経路およびJNK経路におけるその役割と一致する。例えば、その中で記載されているように、mNkdの過剰発現は、哺乳動物細胞におけるWntシグナル伝達を阻害する。さらに、哺乳動物細胞におけるmNkdの発現は、JNKを活性化し、応答がDshの発現によっても見られた。これらの結果は、mNkdがJNK経路のアクチベーターであり、そしてWntシグナル伝達に関係することを示唆する。
【0034】
先に示されたように、異常なWntシグナル伝達は、いくつかの癌および神経学的障害(例えば、アルツハイマー病)において役割を果たしていることが考えられる。例えば、Wntシグナル伝達のアップレギュレーションは、いくつかの結腸癌を生じる。過剰に活性化されたWntシグナル伝達はまた、Wntシグナル伝達に対する阻害効果を有するmNkdの機能をダウンレギュレーションすることにより達成され得る。いくつかの結腸癌において、mNkdの発現は、正常細胞における発現よりも低くあり得る。この観察に基づき、mNkdのヒトホモログは類似の生物学的効果を発揮し、そしていくつかのヒト癌または神経学的障害の発症および発達に関係し得ることが予想される。
【0035】
従って、これまでに同定されたマウスおよびDrosophilaのNkd遺伝子のヒトまたは非ヒト霊長類の等価物の同定は重要であり、特に、Wnt経路の負の調節が哺乳動物において腫瘍形成に関係し得[SmalleyおよびDate、Canc.Metast.Res.18(2):215−230(1999)]、そして特に、とりわけ癌(例えば、結腸癌、乳癌、卵巣癌)に関係し得ることを示唆する先行研究に照らして、その重要な潜在的な診断適用および治療適用を与える。
【0036】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd(例えば、遺伝子または対応するポリペプチド)の同定は、潜在的なヒト治療の関係で、特に重要である。なぜならば、多くの異なる癌の発症に関係するヒトNkdは、それが同定された場合、ヒト細胞においてWnt経路を調節し得ることが期待されるからである。さらに、ヒトまたは霊長類タンパク質は、ヒト治療のために非ヒトタンパク質よりも優れているようである。なぜならば、ヒトまたは霊長類タンパク質は、そのヒト起源を考慮すると、おそらくヒト被験体においていかなる免疫応答も誘発しないからである。従って、これは、長期的な基礎において(例えば、Wnt経路に関係する癌(例えば、乳癌)または異常なWntシグナル伝達に関係する神経学的障害の処置のために)潜在的に投与可能である。また、ヒトタンパク質は、例えば、hNkd発現の異常なレベルに基づく癌または癌の可能性を診断する手段として、hNkdタンパク質の発現レベルを検出するため、またはhNkd発現をアゴナイズまたはアンタゴナイズするための診断薬剤または治療薬剤としての有用性を有する抗体を生成するために有用である。
【0037】
この目的のために、本発明は、その存在が以前に知られておらず、そして本発明の以前に予見され得なかったヒトまたは非ヒト霊長類Nkdポリペプチドおよび対応する核酸配列を提供する。
【0038】
本発明のタンパク質のヒトNkd核酸配列および対応するポリペプチドは、以下の実施例に開示される方法によって得られた。ヒトNkd全体の配列について、その配列は、ヌクレオチドレベルで、マウスNkd遺伝子に85%同一であり、そしてタンパク質レベルで87%同一であることが見出された。これらのタンパク質は、残基133〜168を含む、結合に関与する同一のEF−ハンド領域を含む。マウスNkdの核酸配列に対する本発明のヒトNkd遺伝子の核酸配列のアライメントを、図1に示す(それぞれ、配列番号2および配列番号1)。さらに、マウスNkdタンパク質に対するヒトNkdタンパク質のアミノ酸配列のアライメントを、図2に示す(それぞれ、配列番号4および配列番号3)。さらに、hNkdおよびmNkdをコードする核酸配列を、図3および図4に別々に示す(それぞれ、配列番号5および配列番号6)。また、hNkdおよびmNkdのアミノ酸配列を、図5および6に別々に示す(それぞれ、配列番号7および配列番号8)。
【0039】
本発明の全長ヒトNkd核酸配列は、ヒト第16染色体に含まれる。詳細には、コード領域全体ならびに5’および3’UTR(11個のエキソンに含まれる)は、第16染色体に見出される86キロベース領域に含まれる。このマッピングの結果を含む図を、図8に示す。さらに、11個の全てのエキソンの配列ならびに推定プロモーターならびに5’および3’UTRを、図7に示す(それぞれ、配列番号9〜配列番号22)。
【0040】
培養哺乳動物細胞におけるマウスNkd mRNAの転写レベルに対するWntリガンドの見かけの誘導性の効果を考慮すると、本発明のヒトNkdの転写が、それによって同様に誘導され得ることが仮定される。この仮定をさらに試験するために、ヒトNkdプロモーター配列を使用して、ヒトゲノム配列を含む公知のデータベースをブラスト(blast)した。実際、これらのゲノム検索は、このプロモーターが、他の遺伝子中のTcf結合についての逆方向コンセンサス(A/T A/T CAAG)(Gieseら、Gevens Dev.5:2567(1991))(その全体が本明細書中で参考として援用される)(この領域は、β−カテニン応答性を付与するために必要であり得る)と一致するいくつかの配列エレメントを含むことを明らかにした。高レベルのβ−カテニンを有する結腸癌細胞もまた、高レベルのヒトNkd RNA転写物を発現するという事実は、この仮定と一致する。このことは、ヒトNkdプロモーターが、β−カテニンの直接的な標的であることを示唆する。これに関連して、β−カテニンがLEF−1/TCF、APCおよびコンダクチン(conductin)/アキシン(axin)と相互作用すること、およびそのような相互作用が腫瘍形成に重要であり得ることもまた公知である(Van Kriesら、Nat.Struct.Biol.7(9):800−807(2000);Behrens,J.Ann.NY Acad.Sci.910:21−33(2000))。β−カテニンに関与する変異が、いくつかの癌(特に、卵巣癌、乳癌および結腸癌)に関与することが周知である(Wrightら、Int.J.Cancer.82(5):62−629(1999);Liら、Am.J.Patnol.153(3):709−714(1998);およびFukuchiら、Cancer Res.58(16):3526−3528(1998))。
【0041】
この観察に基づいて、hNkd、またはその異常な発現(ここで、異常な発現には、減少または増加された発現が含まれる)、または改変形態の発現の検出が、いくつかの癌(例えば、結腸癌、乳癌、卵巣癌、および異常なWntシグナル伝達に関連する他の癌)を検出する手段を提供することが予測される。
【0042】
詳細には、これらの結果は、癌および異常なWntシグナル伝達に関連する他の疾患(とりわけ、結腸癌、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌、皮膚癌、多発性嚢胞腎疾患、髄芽細胞腫、毛質性上皮腫、頭部および頸部の癌、前立腺癌、ならびに神経学的障害(例えば、アルツハイマー病)の可能性のある治療法としては、hNkd発現を調節する化合物(例えば、抗体、hNkdタンパク質、およびそれらのフラグメントまたは改変体;ならびにhNkd mRNA転写を特異的に標的化する、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド;ならびにhNkd発現を調節する低分子)の投与が挙げられ得ることを示唆する。潜在的に処置可能な癌の好ましい例としては、結腸癌、乳癌および卵巣癌が挙げられる。
【0043】
タンパク質レベルおよびDNAレベルの両方での、ヒトNkdとマウスNkdとの間の観察された構造的類似性に基づいて、これらのタンパク質およびDNAが、類似の生物学的活性を示すことが予測される。詳細には、hNkdタンパク質が、mNkdと同様に、JNK経路を活性化し、そしてWntシグナル伝達を阻害することが予測される。このことに基づいて、本発明は、新規のヒトおよび非ヒト霊長類のNkdタンパク質および核酸配列、それらの改変体およびフラグメント、ならびに新規タンパク質の設計およびその使用におけるそれらの使用に対して広範に関し、これらを、以下により詳細に議論する。しかし、これらのタンパク質、核酸配列およびそれらの使用を詳細に説明する前に、以下の定義を提供する。さもなければ、本明細書中の用語は、関連する分野において理解されるこれらの意味を有する。
【0044】
「単離されたヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質」とは、その通常のヒトまたは霊長類の細胞環境にはない、任意のヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質をいう。これらとしては、例えば、組換えhNkdを含む組成物、精製hNkdを含む薬学的組成物、精製hNkdを含む診断組成物、およびhNkdを含む単離されたタンパク質組成物が挙げられる。好ましい実施形態において、単離されたhNkdタンパク質は、配列番号3に含まれるアミノ酸配列または実質的に同じ配列を有する天然のホモログもしくは変異体を含む、実質的に純粋なタンパク質を含み、つまり、他のタンパク質を実質的に含まず、好ましくは、少なくとも90%純粋である。天然に存在する変異体は、例えば、変異されたhNkdタンパク質配列をコードする遺伝子を発現する腫瘍細胞において見出され得る。
【0045】
「ネイティブヒトNkdタンパク質」とは、図5および配列番号7に含まれるアミノ酸配列を含むタンパク質をいう。
【0046】
「ネイティブ非ヒトNkdタンパク質」とは、図5および配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するタンパク質の非ヒト霊長類ホモログであるタンパク質をいう。他の霊長類に対するヒトの系統学的近縁性を考慮すると、ヒトおよび非ヒトNkdタンパク質は、高度に類似し、おそらく、95%程度以上の配列同一性のアミノ酸配列を有することが予測される。
【0047】
「ネイティブマウスNkdタンパク質」とは、図6および配列番号8に含まれるアミノ酸配列を含むタンパク質をいう。
【0048】
「単離されたヒトまたは非ヒト霊長類Nkd核酸分子または配列」とは、その通常のヒトの細胞環境にはない(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類染色体DNAに含まれない)、ヒトNkdをコードする核酸分子をいう。これらとしては、例えば、hNkd核酸分子を含むベクター、検出可能な部分(例えば、蛍光標識または放射性標識)を直接的または間接的に結合したhNkd核酸配列を含むプローブ、または異なるDNA(例えば、プロモーター、または検出可能なマーカーもしくはエフェクター部分をコードするDNA)にその5’末端または3’末端が融合されたhNkdをコードする核酸分子を含むDNA融合物が挙げられる。好ましい核酸配列は、ヒトNkdタンパク質をコードし、そして図3における配列番号5に含まれる核酸配列を有する。実質的に同じ配列を有する天然のホモログまたは変異体もまた、含まれる。縮重する天然に存在するホモログは、配列番号5がコードする同じタンパク質をコードするが、対応するアミノ酸配列を変化させないヌクレオチド差異を含む。天然に存在する変異体は、腫瘍細胞に見出され得る、ここでは、このようなヌクレオチド差異が、変異体Nkdタンパク質を生じる。保存的置換を含む天然に存在するホモログもまた、含まれる。
【0049】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質の改変体」とは、対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質に対して、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも91%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも92%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも93%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも94%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも96%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも98%の配列同一性、そして最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、タンパク質をいい、ここで、配列同一性は、以下に定義されるとおりである。好ましくは、この改変体は、ネイティブhNkdまたは霊長類Nkdタンパク質と共通する少なくとも1つの生物学的特性を有し、例えば、この改変体は、哺乳動物細胞、好ましくは、ヒトまたは非ヒト霊長類細胞において、Wntシグナル伝達を阻害する。
【0050】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd核酸分子または配列の改変体」とは、対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類核酸配列に対して、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも91%の配列同一性、より好ましくは少なくとも92%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも93%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも94%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも96%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性、そして最も好ましくは99%の配列同一性を有する核酸配列をいい、ここで、「配列同一性」は、以下に定義されるとおりである。
【0051】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの生物学的に活性なフラグメント」とは、その対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの生物学的活性(例えば、Wntシグナル伝達を阻害する能力、または対応するネイティブヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの少なくとも1つの免疫原性エピトープを提示する能力(抗hNkd抗体または抗非ヒトNkd抗体に結合またはこれらを惹起する能力によって決定されるような))を含むタンパク質をいい;但し、この生物学的に活性なフラグメントは、それに最も類似するマウスまたはDrosophila Nkdタンパク質の部分と整列させた場合に、それと同一でないアミノ酸配列を有し、そしてより好ましくは、それと高くとも90%の配列同一性を有し、そしてより好ましくは、それと高くとも89%、88%、87%、86%または85%の配列同一性を有し、ここで、配列同一性は、以下に定義されるとおりである。
【0052】
陽性の生物学的に活性なhNkdフラグメントまたは改変体の生物学的活性は、そのようなフラグメントまたは改変体が、インビトロまたはインビボで、Wntシグナル伝達を阻害する能力、JNKを活性化する能力、Dshと相互作用する能力に基づいて決定され得る。適切なアッセイを、以下の実施例に開示する。
【0053】
「ヒトまたは非ヒト霊長類Nkd核酸分子または配列のフラグメント」とは、配列番号7に含まれるネイティブヒトNkd核酸配列またはネイティブ非ヒト霊長類Nkd核酸分子の一部に対応する核酸配列をいい、この部分は、少なくとも約50ヌクレオチド長、より好ましくは、少なくとも75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800または1825ヌクレオチド長である。好ましくは、このようなフラグメントは、配列番号7に含まれるヒトNkd核酸配列またはそその非ヒト霊長類ホモログの約500個〜約1500個連続するヌクレオチドを含む。
【0054】
「hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdの抗原性フラグメント」とは、それ自体かまたは免疫原性キャリアを結合して使用した場合に、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdを特異的に結合する抗体を誘発する、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdのフラグメントあるいはそれらの改変体またはホモログに対応するポリペプチドをいう。代表的には、このような抗原性フラグメントは、少なくとも20アミノ酸長である。
【0055】
用語「生物学的に等価」は、本発明のタンパク質またはDNAが、ネイティブヒトNkdまたは非ヒト霊長類のNkdタンパク質またはDNAと必ずしも同じ程度ではないが、同じ生物学的特性のいくつかまたは全てあるいは類似の様式を実証し得ることを意味することが、意図される。好ましくは、生物学的に等価とは、ネイティブヒトNkdに匹敵する程度にWntシグナル伝達を阻害する、hNkdの改変体をいう。示されるように、生物学的活性は、そのタンパク質またはDNAが、インビトロアッセイまたはインビボアッセイにおいて、他のWntシグナル伝達を阻害する能力、JNKを活性化する能力、Dshと相互作用する能力に基づいて評価され得、これらのアッセイを、以下の実施例に開示する。
【0056】
「実質的に相同」によって、別の種(好ましくは、別の霊長類)のNkdに対するヒトまたは非ヒト霊長類の相同性の程度は、そのhNkdまたは非ヒト霊長類Nkdと任意の以前に報告されたNkd(例えば、マウスまたはDrosophila Nkd)との間の相同性の程度より高いことが意味される。
【0057】
配列同一性または同一性%は、2つの配列を、Lasergeneバイオコンピューティングソフトウェア(DNASTAR,INC,Madison,WI)におけるマルチプル配列アライメントのClustal法[Higginsら、Cabios 8:189−191(1992)]を使用して整列させた場合、その2つの配列間で共有される同じ残基のパーセンテージ(非ヒトNkd(例えば、マウスNkdまたは非ヒト霊長類Nkd)との同一性%を決定する場合、ヒトNkdを基準として)を意味することが意図される。この方法において、マルチプルアライメントを、順送り様式で行い、ここで、より大きいアライメント群とより大きいアライメント群が、一連の対合アライメントから計算された類似性スコアを使用してアセンブルされる。最適な配列アライメントは、最大アライメントスコアを見出すことによって得られ、このスコアは、アライメント中の別々の残基間の全てのスコアの平均であり、これは、所定の進化的間隔にわたって2つの関連するタンパク質に生じる所定のアミノ酸変化の可能性を表す、残基重み表(residue weight table)から決定される。アライメント中にギャップを空けそして伸長させるためのペナルティーは、このスコアに寄与する。このプログラムで使用されるデフォルトパラメーターは、以下の通りである:マルチプルアライメントについてのギャップペナルティー=10;マルチプルアライメントについてのギャップ長ペナルティー=10;対合アライメントにおけるk−タプル値=1;対合アライメントにおけるギャップペナルティー=3;対合アライメントにおけるウインドウ値=5;対合アライメントにおいて保存される対角線=5。アライメントプログラムに使用される残基重み表は、PAM250[Dayhoffetら、Atlas of Protein Sequence and Structure、Dayhoff編、NDRF、Washington、第5巻、補遺3、345頁(1978)]である。
【0058】
保存%は、2つの残基が保存的置換(PAM250残基重み表にいて0.3以上のログオッズ値(log odds value)を有するものして定義される)を示す位置のパーセンテージに、同一残基のパーセンテージを加えることによって、上記アライメントから計算される。保存は、保存%を決定する場合、非ヒトNkd(例えば、mNkd)との保存%を決定する場合のヒトNkdを基準とする。この要件を満足する保存的アミノ酸変化は、以下である:R−K;E−D、Y−F、L−M;V−I、Q−H。
【0059】
(ポリペプチドフラグメント)
本発明は、開示されたタンパク質のポリペプチドフラグメントを提供する。本発明のポリペプチドフラグメントは、ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdまたはそれらのアナログの、少なくとも8アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも25アミノ酸残基、なおより好ましくは少なくとも50アミノ酸残基を含み得る。より詳細には、このようなフラグメントは、配列番号7を有するポリペプチドの少なくとも75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、455、460、461、462、463、464、465、466または467残基を含む。さらにより好ましくは、タンパク質フラグメントは、ネイティブNkdの大部分(すなわち、hNkdの少なくとも約200〜400個連続する残基、またはさらにより好ましくは、少なくとも400〜460個連続する残基)を含む。好ましいタンパク質フラグメントとしては、EFハンドを含むフラグメントが挙げられる。好ましくは、このようなフラグメントは、ヒトまたは非ヒトNkdタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有する。このような生物学的活性を確認するために、インビトロまたはインビボアッセイを行って、例えば、そのフラグメントが、Dvlを結合するか否か、哺乳動物細胞によるWntシグナル伝達を阻害するか否か、Xenopus laevis胚におけるWnt誘導性二次軸形成を誘導するか否か、またはJNK平面極性経路に影響を及ぼすか否かを決定し得る。例示的な方法を、本願の実施例に開示する。
【0060】
(生物学的に活性なフラグメント)
本明細書中に開示されるタンパク質およびポリペプチドの改変体もまた、存在し得る。改変体は、天然に存在し得るかまたは天然に存在しないものであり得る。天然に存在する改変体は、ヒトまたは非ヒト霊長類種に見出され、配列番号7に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む。ヒトNkdタンパク質の非ヒト霊長類ホモログまたは改変体は、以下に記載されるような、本発明の部分ゲノムポリヌクレオチドを使用して、他のヒトまたは非ヒト霊長類細胞由来のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングに適切なプローブまたはプライマーを作製して、得られ得る。あるいは、霊長類ホモログは、ヒトNkdタンパク質またはDNA配列を用いて霊長類DNAデータベースをブラストすることによって同定され得る。
【0061】
天然に存在するタンパク質改変体と実質的に同じ生物学的活性を保持する、天然に存在しない改変体もまた、本発明に包含される。好ましくは、天然に存在する改変体または天然に存在しない改変体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列に少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、これらの分子は、少なくとも96%、97%、98%または99%同一である。同一性%は、当該分野で公知の方法によって決定される。限定されない例は、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムであり、これは、ギャップオープンペナルティー、12およびギャップ伸長ペナルティー、2、BLOSUMマトリクス、62を用いるアフィンギャップ(affine gap)検索を使用する。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、SmithおよびWaterman、Ad.Appl.Math.(1981)2:482−489に教示される。
【0062】
どのアミノ酸残基が、生物学的または免疫学的活性を失うことなく置換、挿入または欠失され得るかの決定についてのガイダンスは、当該分野で周知のコンピュータープログラム(例えば、DNASTARソフトウェア)を使用して見出され得る。好ましくは、タンパク質改変体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化(すなわち、類似の荷電アミノ酸または非荷電アミノ酸の置換)である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖に関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に、以下の4つのファミリーに分けられる:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時折、芳香族アミノ酸として共に分類される。
【0063】
ムテインと呼ばれる、変異体のサブセットは、中性アミノ酸(例えば、セリン)が、ジスルフィド結合に関与しないシステイン残基に代わって置換されたポリペプチドの群である。これらの変異体は、ネイティブの分泌タンパク質よりも広い温度範囲にわたって安定であり得る。Markら、米国特許第4,959,314号を参照のこと。
【0064】
イソロイシンまたはバリンでのロイシンの分離した(isolated)置換、グルタミン酸でのアスパラギン酸の置換、セリンでのトレオニンでの置換、または構造的に関連するアミノ酸でのアミノ酸の類似の置換は、得られる分泌タンパク質またはポリペプチド改変体の生物学的特性に対して大きな効果を有さないことが当然予測される。hNkdタンパク質またはポリペプチドの改変体の特性および機能は、配列番号7のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と同じ型の特性および機能であるが、改変体の機能および特性は、ある程度異なり得る。
【0065】
ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdタンパク質改変体としては、グリコシル化形態、他の分子との凝集結合体、および関連しない化学部分との共有結合改変体が挙げられる。また、hNkdタンパク質改変体としてはまた、対立遺伝子改変体、種改変体、およびムテインが挙げられる。hNkdタンパク質の差示的な発現に影響しない領域の切断または欠失もまた、改変体である。共有結合改変体は、当該分野で公知のように、アミノ酸側鎖に見出される基に対してか、あるいはN末端残基またはC末端残基で、官能基を連結することによって、調製され得る。
【0066】
本発明のhNkdタンパク質のいくつかのアミノ酸は、タンパク質の構造または機能に対する有意な効果を伴わずに変更され得ることが当該分野で認識される。配列におけるこのような差異が意図される場合、活性を決定するタンパク質の重要な領域が存在することに留意する。一般に、類似の機能を果す残基を使用する場合には、三次構造を形成する残基を置換することが可能である。他の例において、変更がそのタンパク質の重要でない領域で生じる場合、残基の型は、完全には重要でない。アミノ酸の置換はまた、細胞表面レセプターへの結合の選択性を変化させ得る。Ostadeら、Nature 361:266−268(1993)は、2つの公知の型のTNFレセプターのうちの1つのみに対するTNF−αの選択的結合を生じる、特定の変異を記載する。したがって、本発明のポリペプチドは、天然の変異または人為操作のいずれか由来の、1以上のアミノ酸置換、欠失または付加を含み得る。
【0067】
本発明は、比較可能な発現パターンを示すかまたは抗原性領域を含む、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdポリペプチドのバリエーションをさらに包含する。このような変異体は、欠失、挿入、逆位、反復、および型置換を含む。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントであるのかに関するガイダンスは、Bowie,J.U.ら、「Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions」、Science 247:1306−1310(1990)に見出され得る。
【0068】
別の荷電アミノ酸での荷電アミノ酸の置換、および中性または負に荷電したアミノ酸での荷電アミノ酸の置換は、重要な目的である。後者は、開示されるタンパク質の特性を改善するように正電荷を減少したタンパク質を生じる。凝集の防止は、非常に望ましい。タンパク質の凝集は、活性の損失を生じるのみならず、それらが免疫原性であり得ることに起因して、薬学的処方物を調製する際に問題となり得る(Pinckardら、Clin.Exp.Immunol.2:331−340(1967);Robbinsら、Diabetes 36:838−845(1987);Clelandら、Crit.Rev.Therpeutic Drug Carrier Systems 10:307−377(1993))。
【0069】
機能に必須である本発明のポリペプチド中のアミノ酸は、当該分野で公知の方法(例えば、部位特異的変異誘発またはアラニンスキャニング変異誘発(CunninghamおよびWells、Science 244:1081−1085(1989)によって同定され得る。後者の手順は、分子中の各残基に1個のアラニン変異を導入する。次いで、得られた変異体分子を、生物学的活性(例えば、天然または合成の結合パートナーに対する結合)について試験する。リガンド−レセプター結合に重要である部位はまた、構造分析(例えば、結晶化、核磁気共鳴または光親和性標識(Smithら、J.Mol.Biol.224:899−904(1992)およびde Vosら、Science 255:306−312(1992))によって決定され得る。
【0070】
示されるように、変化は、好ましくは、重要でない特性の変化(例えば、タンパク質のフォールディングにも活性にも有意に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換)である。もちろん、当業者が作製するアミノ酸置換の数は、多くの要因(上記のような要因を含む)に依存する。一般には、任意の所定のポリペプチドの置換の数は、50個、40個、30個、25個、20個、15個、10個、5個または3個よりも多くない。
【0071】
(融合タンパク質)
hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdのタンパク質またはポリペプチドフラグメントを含む融合タンパク質もまた、構築され得る。融合タンパク質は、アミノ酸配列に対する抗体を作製するため、および種々のアッセイ系における使用のために、有用である。例えば、融合タンパク質は、本発明のタンパク質と相互作用するタンパク質またはその生物学的機能に干渉するタンパク質を同定するために使用され得る。物理的方法(例えば、タンパク質アフィニティークロマトグラフィー)、またはタンパク質−タンパク質相互作用のライブラリーベースのアッセイ(例えば、酵母ツーハイブリッド系またはファージディスプレイ系)もまた、この目的に使用され得る。このような方法は、当該分野で周知であり、そして薬物スクリーニングとしても使用され得る。hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdのシグナル配列および/または膜貫通ドメインあるいはそれらのフラグメントを含む融合タンパク質を使用して、他のタンパク質ドメインを、これらのドメインが通常見出されない細胞部位に標的化し得る(例えば、細胞膜に結合させるか、細胞外に分泌させる)。
【0072】
融合タンパク質は、ペプチド結合によって一緒に融合された2つのタンパク質セグメントを含む。本発明の融合タンパク質における使用のためのアミノ酸配列は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を利用し得るか、または配列番号7の生物学的に活性な改変体またはフラグメント(例えば、上記に記載されるもの)から調製され得る。第1のタンパク質セグメントは、全長hNkdまたはその改変体もしくはフラグメントからなり得る。
【0073】
上記のように、これらのフラグメントは、長さが、約8アミノ酸から、約25アミノ酸、50アミノ酸、75アミノ酸、100アミノ酸、125アミノ酸、150アミノ酸、175アミノ酸、200アミノ酸、225アミノ酸、250アミノ酸、275アミノ酸、300アミノ酸、325アミノ酸、350アミノ酸、375アミノ酸、400アミノ酸、425アミノ酸、450アミノ酸、455アミノ酸、460アミノ酸、465アミノ酸までのサイズの範囲にわたり得る。
【0074】
第2のタンパク質セグメントは、全長タンパク質またはポリペプチドフラグメントであり得る。融合タンパク質構築物において一般に使用されるタンパク質としては、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、自己蛍光タンパク質(青色蛍光タンパク質(BFP)が挙げられる)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。さらに、エピトープタグが、融合タンパク質構築物において使用され得、これらのタグとしては、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV−Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグが挙げられる。他の融合構築物としては、マルトース結合タンパク質(MBP)、S−タグ、Lex DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4 DNA結合ドメイン融合物、ならびに単純ヘルペスウイルス(HSV)BP 16タンパク質融合物が挙げられ得る。
【0075】
これらの融合物は、例えば、2つのタンパク質セグメントの共有結合により、または分子生物学分野における標準的な手順により作製され得る。例えば、当該分野で公知であるように、組み換えDNA法が用いられて、第2のタンパク質セグメントをコードするヌクレオチドと適切なリーディングフレームで配列番号7に含まれるアミノ酸配列をコードするコード配列を含むDNA構築物を作製し、宿主細胞においてこのDNA構築物を発現することにより、融合タンパク質が調製され得る。融合タンパク質を構築するための多くのキットが、発現のためのツールを研究機関に供給する会社(例えば、Promega Corporation(Madison,WI)、Stratagene(La Jolla,CA)、Clontech(Mountain View,CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)、MBL International Corporation(MIC;Watertown,MA)、およびQuantum Biotechnologies(Montreal,Canada;1−888−DNA−KITS)が挙げられる)から入手可能である。
【0076】
本発明のタンパク質、融合タンパク質またはポリペプチドは、組み換えDNA法により生成され得る。組み換えタンパク質、融合タンパク質、またはポリペプチドの生成のために、配列番号5に示されるヌクレオチド配列のコード配列が、当該分野で公知の発現系を用いて、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞において発現され得る。これらの発現系としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞が挙げられる。
【0077】
次いで、得られた発現タンパク質は、当該分野で公知の精製手順を用いて、培養培地または培養細胞の抽出物から精製され得る。例えば、培養培地に十分に分泌されたタンパク質については、無細胞培地を、酢酸ナトリウムを用いて希釈し、陽イオン交換樹脂と、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィーと接触させ得る。この方法を用いると、所望のタンパク質またはポリペプチドは、代表的には、95%を超える純度である。例えば、上記に列挙した技術のいずれかを用いて、さらなる精製が行われ得る。
【0078】
機能的タンパク質を得るために、例えば、適切な部位のリン酸化またはグリコシル化により、酵母または細菌において生成されるタンパク質を改変することが必要であり得る。このような共有結合は、公知の化学的方法または酵素的方法を使用して作製され得る。
【0079】
本発明のヒトまたは非ヒト霊長類のNkdタンパク質またはNkdポリペプチドはまた、精製を容易にする形態において、培養宿主細胞において発現され得る。例えば、タンパク質またはポリペプチドは、マルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼまたはチオレドキシンを含む融合タンパク質として発現され得、市販のキットを使用して精製され得る。このような融合タンパク質の発現および精製のためのキットは、New England BioLabs、Pharmacia、およびInvitrogenのような会社から入手可能である。タンパク質、融合タンパク質、またはポリペプチドはまた、エピトープ(例えば、「Flag」エピトープ(Kodak))を用いてタグ化され得、そのエピトープに特異的に結合する抗体を用いて精製され得る。
【0080】
本明細書中に開示されるコード配列はまた、トランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウシ、ヤギ、ブタ、またはヒツジ)を構築するために使用され得る。次いで、雌性トランスジェニック動物は、本発明のタンパク質、ポリペプチド、または融合タンパク質をそれらの乳汁中に生成し得る。このような動物を構築するための方法は、当該分野で公知であり、かつ広く用いられている。
【0081】
あるいは、合成化学方法(例えば、固相ペプチド合成)を用いて、分泌タンパク質または分泌ポリペプチドを合成し得る。ペプチド、アナログまたは誘導体を生成するための一般的手段は、 Chemistry and Biochemistry of Amino Acid,Peptides,and Proteins−−A Survey of Recent Developments,B.Weinstein編(1983)に概説されている。通常のL立体異性体の代わりにD−アミノ酸を用いて置換することが、分子の半減期を増大させるために行われ得る。
【0082】
代表的には、相同なポリヌクレオチド配列は、当該分野で公知のように、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションにより確認され得る。例えば、以下の洗浄条件:2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1% SDS、室温で2回、各30分間;次いで2×SSC、0.1% SDS、50℃で1回、30分間;次いで、2×SSC、室温で2回、各10分間、を用いて、相同な配列が同定され得る(この配列は、最大で約25〜30%の塩基対ミスマッチを含む)。より好ましくは、相同な核酸鎖は、15〜25%の塩基対ミスマッチ、なおより好ましくは5〜15%の塩基対ミスマッチを含む。
【0083】
本発明はまた、例えば、ハイブリダイゼーションプロトコル(例えば、ノーザンブロッティングもしくはサザンブロッティング、またはインサイチュハイブリダイゼーション)において相補的ヌクレオチド配列を検出するために使用され得るポリヌクレオチドプローブを提供する。本発明のポリヌクレオチドプローブは、配列番号1の少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、もしくは40、またはそれ以上連続したヌクレオチドを含む。ただし、この配列は、マウスNkd配列もしくはDrosophila Nkd配列に対して90%以下の同一性であり、より好ましくは、それらに対して約89、88、87または86%以下の同一性であり、最も好ましくは、それらに対して約85%以下の同一性である。本発明のポリヌクレオチドプローブは、検出可能な標識(例えば、放射性同位体標識、蛍光標識、酵素標識、または化学発光標識)を含み得る。
【0084】
本明細書中に開示されたcDNA配列に対応する単離された遺伝子もまた、提供される。標準的な分子生物学方法が使用されて、本明細書中に提供されるcDNA配列を用いて対応する遺伝子が単離され得る。これらの方法は、哺乳動物(ヒトを含む)のゲノムライブラリーもしくはヒトゲノムDNAの他の供給源から遺伝子を同定または増幅する際に使用するための配列番号5に示されるヌクレオチド配列からのプローブもしくはプライマーの調製を含む。
【0085】
本発明のポリヌクレオチド分子はまた、ポリヌクレオチド増幅方法を用いて、ポリヌクレオチドのさらなるコピーを得るためにプライマーとして使用され得る。ポリヌクレオチド分子は、当該分野で周知の技術を用いて、ベクターおよび細胞株中で増加され得る。ポリヌクレオチド分子は、直鎖状分子であってもよいし、環状分子であってもよい。ポリヌクレオチド分子は、自動的に複製する分子上にあってもよいし、複製配列を含まない分子上にあってもよい。ポリヌクレオチド分子は、当該分野で公知のように、このポリヌクレオチド分子自身の調節配列により調節されてもよいし、他の調節配列により調節されてもよい。
【0086】
(ポリヌクレオチド構築物)
本明細書中に開示されるコード配列を含むポリヌクレオチド分子は、ポリヌクレオチド構築物(例えば、DNA構築物もしくはRNA構築物)において使用され得る。本発明のポリヌクレオチド分子は、例えば、タンパク質の全てもしくは一部、改変体、融合タンパク質、または単鎖抗体を宿主細胞において発現するために発現構築物において使用され得る。発現構築物は、選択された宿主細胞において機能的であるプロモーターを含む。当業者は、当該分野で公知かつ使用されている多数の細胞型特異的プロモーターから適切なプロモーターを容易に選択し得る。この発現構築物はまた、宿主細胞において機能的な転写ターミネーターを含み得る。この発現構築物は、所望のタンパク質の全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドセグメントを含む。このポリヌクレオチドセグメントは、プロモーターの下流に位置する。このポリヌクレオチドセグメントの転写は、プロモーターにおいて開始される。発現構築物は、直鎖状であってもよいし、環状であってもよく、所望であれば、自己複製のための配列を含み得る。
【0087】
Nkdコード配列、または検出マーカーもしくは選択マーカーをコードする他の配列のいずれかに作動可能に連結された、ヒトまたは非ヒト霊長類のNkd遺伝子プロモーターおよびUTR配列(配列番号9)(配列番号10、11、または配列番号22)を含むポリヌクレオチド分子もまた含まれる。このようなプロモーターおよび/またはUTRベースの構築物は、Nkd発現の転写調節および翻訳調節を研究するため、ならびに活性化調節タンパク質および/または阻害性調節タンパク質を同定するために有用である。hNkdプロモーターは、β−カテニンによって明らかに調節され、従って、作動可能に連結された場合に、非hNkd遺伝子の発現をβ−カテニン応答性にするために用いられ得る。
【0088】
(宿主細胞)
発現構築物は、宿主細胞に導入され得る。発現構築物を含む宿主細胞は、任意の適切な原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。細菌における発現系としては、以下に記載されるものが挙げられる:Changら,Nature 275:615(1978);Goeddelら,Nature 281:544(1979);Goeddelら,Nucleic Acids Res.8:4057(1980);EP36,776;U.S.4,551,433;deBoerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25(1983);およびSiebenlistら,Cell 20:269(1980)。
【0089】
酵母における発現系としては、以下に記載されるものが挙げられる:Hinnnenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929(1978);Itoら,J Bacteriol 153:163(1983);Kurtzら,Mol.Cell.Biol.6:142(1986);Kunzeら,J Basic Microbiol.25:141(1985);Gleesonら,J.Gen.Microbiol.132:3459(1986),Roggenkampら,Mol.Gen.Genet.202:302(1986));Dasら,J Bacteriol.158:1165(1984);De Louvencourtら,J Bacteriol.154:737(1983),Van den Bergら,Bio/Technology 8:135(1990);Kunzeら,J.Basic Microbiol.25:141(1985);Creggら,Mol.Cell.Biol.5:3376(1985);米国特許第4,837,148号;米国特許第4,929,555号;BeachおよびNurse,Nature 300:706(1981);Davidowら,Curr.Genet.10:380(1985);Gaillardinら,Curr.Genet.10:49(1985);Ballanceら,Biochem.Biophys.Res.Commun.112:284−289(1983);Tilburnら,Gene 26:205−22(1983);Yeltonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470−1474(1984);KellyおよびHynes,EMBO J.4:475479(1985);EP 244,234;ならびにWO91/00357。
【0090】
昆虫における異種遺伝子の発現は、以下に記載されるように達成され得る:米国特許第4,745,051号;Friesenら(1986)「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」in:THE MOLECULAR BIOLOGY OF BACULOVIRUSES(W.Doerfler編);EP127,839;EP155,476;Vlakら,J.Gen.Virol.69:765−776(1988);Millerら,Ann.Rev.Microbiol.42:177(1988);Carbonellら,Gene 73:409(1988);Maedaら,Nature 315:592−594(1985);Lebacq−Verheydenら,Mol.Cell Biol.8:3129(1988);Smithら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8404(1985);Miyajimaら,Gene 58:273(1987);およびMartinら,DNA 7:99(1988)。多くのバキュロウイルス系統および改変体、ならびに対応する宿主から許容される昆虫宿主細胞は、以下に記載される:Luckowら,Bio/Technology(1988)6:47−55,Millerら,in GENETIC ENGINEERING(Setlow,J.K.ら編),Vol.8,pp.277−279(Plenum Publishing,1986);ならびにMaedaら,Nature,315:592−594(1985)。
【0091】
哺乳動物発現は、以下に記載されるように達成され得る:Dijkemaら,EMBO J.4:761(1985);Gormanetal.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:6777(1982b);Boshartら,Cell 41:521(1985);および米国特許第4,399,216号。哺乳動物発現の他の特徴は、以下に記載されるように容易にされ得る:HamおよびWallace,Meth Enz.58:44(1979);BarnesおよびSato,Anal.Biochem.102:255(1980);米国特許第4,767,704号;米国特許第4,657,866号;米国特許第4,927,762号;米国特許第4,560,655号;WO90/103430,WO87/00195,ならびに米国再発行特許第30,985号。
【0092】
発現構築物は、当該分野で公知の任意の技術を用いて、宿主細胞に導入され得る。これらの技術としては、以下が挙げられる:トランスフェリン−ポリカチオン媒介性DNA移入、裸の核酸またはカプセル化核酸を用いたトランスフェクション、リポソーム媒介性細胞融合、DNAコーティングラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」、およびリン酸カルシウム媒介性トランスフェクション。
【0093】
本発明のタンパク質をコードする内因性遺伝子の発現はまた、この内因性遺伝子とインフレームで転写ユニットを含むDNA構築物を相同組換えにより導入して、この転写ユニットを含む相同組換え細胞を形成することによって操作され得る。この転写ユニットは、標的化配列、調節配列、エキソン、および対になっていないスプライスドナー部位を含む。新しい転写ユニットは、所望される場合、内因性遺伝子をオンまたはオフにするために用いられ得る。この内因性遺伝子発現に影響をもたらす方法は、米国特許第5,641,670号に教示される。
【0094】
標的化配列は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列の少なくとも10、12、15、20、または50の連続するヌクレオチドのセグメントである。ただし、上記配列は、マウスNkd配列もしくはDrosophila Nkd配列に対して90%以下の同一性であり、より好ましくは、これらに対して約89、88、87または86%以下の同一性であり、最も好ましくは、それらに対して85%以下の配列同一性である。転写ユニットは、内因性遺伝子のコード配列の上流に位置する。外因性調節配列は、この内因性遺伝子のコード配列の転写を方向付ける。
【0095】
ヒトまたは非ヒト霊長類のNkdとしてはまた、ハイブリッドおよびそれらの改変形態が挙げられ得、これらとしては、このハイブリッドまたは改変形態が、ヒトもしくは霊長類Nkdタンパク質の生物学的活性を維持する限り、融合タンパク質、フラグメントおよびハイブリッド、ならびに改変形態(ここで特定のアミノ酸は、欠失または置換されている)、例えば、1以上のアミノ酸が改変アミノ酸もしくは異常アミノ酸に変化されているような改変、およびグリコシル化のような改変)が挙げられる。ヒトまたは非ヒト霊長類Nkdの生物学的活性を維持するとは、JNK経路が活性化され、そして/またはWntシグナル伝達が阻害されるが、本明細書中に記載されるように単離されたhNkdの効力と同じレベルである必要も、組換え生成されたhNkdの効力と同じレベルである必要もないことを意味する。
【0096】
任意のヒトまたは非ヒト霊長類タンパク質であるNkd(本明細書中に記載されたhNkdに対する抗体との交差反応性により単離され得るか、またはNkdのコードヌクレオチド配列(ゲノムDNA、mRNAまたはcDNAが挙げられる)が、本明細書中に記載のhNkdもしくはそのフラグメントのゲノムヌクレオチド配列またはサブゲノムヌクレオチド配列またはcDNAの相補的配列とのハイブリダイゼーションを介して単離され得る)がまた、実質的に相同性の意味内に含まれる。縮重DNA配列がヒトまたは非ヒト霊長類のNkdをコードし得ることは当業者に明らかであり、これらはまた、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdの対立遺伝子改変体であるとして、本発明内に含まれることが意図される。
【0097】
本発明の好ましいhNkdは、記載されるように、精製された形態で同定および単離されている。組換えDNA技術により調製されたhNkdもまた、好ましい。「精製形態」、「精製(された)形態」または「実質的に精製された形態」とは、hNkd組成物が、hNkdではない他のタンパク質を実質的に含まないことを意味する。
【0098】
本発明はまた、疾患を有する患者を処置するために有効な量のhNkdもしくは非ヒト霊長類Nkdを含む治療的組成物または薬学的組成物、および治療的有効量のhNkdを投与する工程を包含する方法を含む。これらの組成物および方法は、癌を含む多くの疾患を処置するために有用である。当業者は、hNkdが、生存を促進することまたは特定の細胞型において機能することにおいて有用であるか否かを決定するために当該分野で公知の種々のアッセイを容易に使用し得る。
【0099】
特定の状況において、発現されるhNkdの量を調節または減少させることは望ましいことであり得る。従って、本発明の別の局面において、hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドが作製され得、1以上のhNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与する工程を包含する、細胞によるhNkdの発現レベルを減少させるための方法が利用され得る。mNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドの参照は、hNkdの発現が減少されるようにhNkdの発現に関与する特定の相補的核酸配列と対形成する塩基をして相互作用するヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドに対して行われる。好ましくは、hNkdの発現に関与する特定の核酸配列は、hNkdをコードするゲノムDNA分子またはmRNA分子である。このゲノムDNA分子は、hNkd遺伝子の調節領域、または成熟hNkdタンパク質のコード配列を含み得る。
【0100】
hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびそのための方法の文脈において、用語ヌクレオチド配列に相補的は、細胞において(すなわち、生理学的条件下で)このような配列へのハイブリダイゼーションを可能にするために、その配列に十分相補的であることを意味する。hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、約8〜約100ヌクレオチドを含む配列を含み、より好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約15〜約30ヌクレオチドを含む。hNkdアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、核分解に耐性を付与する種々の改変を含み得、例えば、改変されたヌクレオシド間連結[UhlmannおよびPeyman,Chemical Reviews 90:543−548(1990);SchneiderおよびBanner,Tetrahedron Lett.31:335,(1990)(これらは、参考として援用される)]、5,958,773およびそこに開示される特許に開示されるように改変された核酸塩基、ならびに/または糖などである。
【0101】
アンチセンス技術に広く適用可能であることが公知である、アンチセンス分子の任意の改変および変化は、本発明の範囲内に含まれる。このような改変は、米国特許第5,536,821号;同5,541,306号;5,550,111号、同5,563,253号;5,571,799号;同5,587,361号;同5,625,050号および同5,958,773号に開示されるようなリン含有結合の調製を含む。
【0102】
本発明のアンチセンス化合物は、改変された塩基を含み得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、そのオリゴヌクレオチドを1つ以上の部分または結合体に化学的に結合させて、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布または細胞内取り込みを増強させることによって改変され得る。このような部分または結合体としては、脂質(例えば、コレステロール、コール酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質)、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分、例えば、米国特許第5,514,758号、同5,565,552号、同5,567,810号、同5,574,142号、同5,585,481号、同5,587,371号、同5,597,696号および同5,958,773号に開示される他のもの)が挙げられる。
【0103】
キメラのアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、本発明の範囲内であり、例えば、米国特許第5,013,830号、同5,149,797号、同5,403,711号、同5,491,133号、同5,565,350号、同5,652,355号、同5,700,922号および同5,958,773号に記載される方法を使用して、本発明のオリゴヌクレオチドから調製され得る。
【0104】
アンチセンスの分野において、特定の程度の慣用的実験が、特定の標的に対する最適なアンチセンス分子を選択するために必要とされる。効果的であるために、アンチセンス分子は、好ましくは、標的RNA分子のアクセス可能である部分、すなわち、または露出された部分に標的化される。いくつかの場合では、標的mRNA分子の構造について情報が利用可能であるが、アンチセンスを使用する阻害についての現在のアプローチは、実験による。細胞中のmRNAレベルは、処理された細胞およびコントロール細胞において、mRNAの逆転写およびcDNAレベルのアッセイによって慣用的に測定され得る。生物学的効果は、当該分野において公知であるように、細胞増殖または生存度を測定することによって慣用的に決定され得る。
【0105】
cDNAレベルをアッセイおよび分析することによってアンチセンス活性の特異性を測定することは、アンチセンスの結果を検証する、当該分野において認識された方法である。処理された細胞およびコントロール細胞由来のRNAが逆転写され、生じたcDNA集団が分析されるべきであることが、示唆されてきた[Branch,A.D.,T.I.B.S.23:45−50(1998)]。
【0106】
本発明の治療組成物または薬学的組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、髄腔内または大脳内を含む、当該分野において公知の任意の適切な投与経路によって投与され得る。投与は、注射によって迅速にか、あるいは、緩やかな注入または徐放性処方物の投与によるように一定の期間にわたっての、いずれかであり得る。
【0107】
さらに、hNkdまたは非ヒト霊長類Nkdはまた、所望の薬学的または薬力学的な特徴を提供する薬剤と連結または結合体化され得る。例えば、hNkdまたは霊長類Nkdは、血液脳関門を越える浸透または移動を促進するための、当該分野において公知の任意の物質(例えば、トランスフェリンレセプターに対する抗体)に結合され得、そして静脈注射によって投与され得る(例えば、Fridenら、Science 259:373−377(1993)(これは、参考として援用される)を参照のこと)。さらに、このヒトまたは霊長類のNkdタンパク質は、可溶性、安定性、半減期および他の薬学的に有利な特徴といった望ましい特性を得るために、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)に安定に連結され得る[例えば、Davisら、Enzyme Eng.4:169−73(1978);Buruham,Am.J.Hosp.Pharm.51:210−218(1994)(これらは、参考として援用される)を参照のこと)。
【0108】
組成物は、通常、薬学的調製物の形態で利用される。このような調製物は、薬学的な分野において周知の様式で作製される。例えば、Remington Pharmaceutical Science,18th Ed.,Merck Publishing Co.,Easterm PA(1990)を参照のこと。1つの好ましい調製物は、生理食塩水溶液のビヒクルを利用するが、他の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、生理学的濃度の他の非毒性の塩、5%グルコース水溶液、滅菌水など)もまた、使用され得ることが、企図される。適切な緩衝液が組成物中に存在することもまた、所望され得る。このような溶液は、所望される場合、凍結乾燥され得、そして容易な注射のための滅菌水の添加による再構成に容易な滅菌アンプル中に貯蔵され得る。基本的な溶媒は、水性であってもあるいは非水性であってもよい。このヒトまたは霊長類のNkdタンパク質、そのフラグメントまたは改変体はまた、処置が必要とされる組織に移植され得る、固体または半固体の、生体適合性のマトリクスに組み込まれ得る。
【0109】
キャリアはまた、処方物のpH、浸透圧モル濃度、粘性、清澄度、色、無菌せい(sterility)、安定性、分解速度または臭気を改変または維持するための、薬学的に受容可能な他の賦形剤を含み得る。同様に、キャリアはさらに、血液脳関門を越える放出または吸収または浸透を改変または維持するための、薬学的に受容可能な他の賦形剤を含み得る。このような賦形剤は、単位用量または複数用量形態のいずれかでの非経口投与のため、あるいは連続的または周期的な注入による脳脊髄液中への直接注入のための投薬量を処方するために、通常および慣用的に使用される物質である。
【0110】
用量投与は、投薬処方物の経路の薬物動態学的パラメーターおよび使用される投与に依存して反復され得る。
【0111】
このhNkd、霊長類Nkdまたはその改変体もしくはフラグメントを含む特定の処方物は、経口投与されるべきであることもまた、企図される。このような処方物は、好ましくは、カプセル化され、適切なキャリアを用いて固体投薬形態で処方される。適切なキャリア、賦形剤および希釈剤のいくつかの例としては、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエートおよびプロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油などが挙げられる。処方物は、さらに、潤沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、保存薬、甘味料または矯味矯臭剤を含み得る。組成物は、当該分野において周知の手順を使用することによる患者への投与の後に活性成分の迅速な放出、持続的な放出、または遅延放出を提供するように、処方され得る。処方物はまた、蛋白質分解を減少させそして吸収を促進させる物質(例えば、界面活性剤)を含み得る。
【0112】
特定の用量は、患者のおよその体重または体表面積または占められるべき体空間の容積に従って計算される。用量はまた、選択された特定の投与経路に依存して計算される。処置に適切な投与量を決定するために必要な計算のさらなる改善は、当業者によって慣用的になされる。このような計算は、標的細胞のアッセイ調製物における本明細書中に開示される活性の観点から、当業者によって過度の実験なくなされ得る。正確な投与量は、標準的な用量応答研究と併用して決定される。処置される状態、投与される組成物の選択、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の徴候の重篤度、ならびに投与経路の選択を含む、関連する状況の観点から、実際に投与される組成物の量が開業医によって決定されることは、理解される。
【0113】
本発明の1つの実施形態において、hNkdは、生物学的に活性な形態のhNkdまたはhNkdの前駆体(すなわち、身体によりhNkdの生物学的に活性な形態に容易に変換され得る分子)を生成し得るベクターまたは細胞を患者に移植することによって、治療的に投与され得る。1つのアプローチにおいて、hNkdを分泌する細胞は、患者への移植のために半透膜中にカプセル化され得る。これらの細胞は、hNkdまたはその前駆体を正常に発現する細胞であり得るか、あるいは、hNkdまたはその前駆体を発現するように形質転換され得る。患者がヒトの場合、細胞がヒト起源であり、そしてhNkdがヒトhNkdであることが、好ましい。しかし、非ヒト霊長類Nkdが効果的であり得ることは、予期される。
【0114】
多くの状況において、患者中のNkdタンパク質またはmRNAのレベルを決定することが所望される。Nkdがいくつかの疾患(例えば、癌)の間に種々のレベルで発現され得ることを示唆するこれまでの発現の証拠に沿う、本明細書中でのヒトNkdの同定は、hNkdの存在が細胞増殖および細胞生存に関連する正常な生理学的機能を果たすという結論の基礎を提供する。内因的に生成されたヒトNkdはまた、特定の疾患条件において役割を果たし得る。
【0115】
本明細書中で使用される場合、用語「検出」は、患者におけるhNkdの存在を検出する文脈において、患者中でのhNkdの量、またはある量のhNkdを発現する能力を決定すること、疾患の予想される結果および回復の見込みの観点において、予後の判断を推定すること、状況の状態の尺度として一定期間にわたってhNkdレベルをモニタリングすること、ならびに患者についての好ましい治療レジメンを決定するためにhNkdレベルをモニタリングすることを含むことが意図される。
【0116】
患者中のhNkdの存在を検出するために、サンプルが、患者より得られる。サンプルは、組織生検サンプルまたは血液、血漿、血清、CSFなどのサンプルであり得る。hNkdがいくつかの癌(例えば、結腸癌、乳癌および肺癌)において高レベルで発現されることを、見出した。hNkdを検出するためのサンプルは、これらの組織から採取され得る。hNkdの末梢レベルを評価する場合、サンプルは、血液、血漿または血清のサンプルであることが好ましい。中枢神経系におけるhNkdのレベルを評価する場合、好ましいサンプルは、脳脊髄液または神経組織から得られたサンプルである。
【0117】
いくつかの場合において、患者においてか、または患者内の細胞または細胞株において、hNkd遺伝子がインタクトであるか否かを決定することが所望される。インタクトなhNkd遺伝子によって、遺伝子中に変更(例えば、点変異、欠失、挿入、染色体崩壊、染色体再配列など)がないことが意味され、ここで、このような変更は、hNkdの生成を変更するか、またはその生物学的活性、安定性などを変更して、疾患の進行を導き得る。よって、本発明の1つの実施形態において、hNkdにおける任意の変更を検出および特徴付けるための方法が提供される。この方法は、hNkd cDNA、ゲノムDNAまたはそのフラグメントもしくはその誘導体を含むオリゴヌクレオチドを提供する工程を包含する。オリゴヌクレオチドの誘導体によって、誘導体化されたオリゴヌクレオチドは、この誘導体化された配列は、hNkd遺伝子に特異的なハイブリダイズに十分な配列相補性を由来する配列に対して有する点で、由来する配列と実質的に同一であることが意味され、誘導体化されたヌクレオチド配列は、必ずしも物理的にそのヌクレオチド配列に由来しないが、任意の様式(例えば、化学合成またはDNA複製もしくは逆転写もしくは転写を含む)において生成され得る。
【0118】
典型的には、患者のゲノムDNAは、患者由来の細胞サンプルより単離され、そして1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ(例えば、TaqIおよびAluI)で消化される。当該分野において周知であるサザンブロットプロトコルを使用して、このアッセイは、患者、または患者中の特定の組織がインタクトなhNkd遺伝子またはhNkd遺伝子異常を有するか否かを決定する。
【0119】
hNkd遺伝子に対するハイブリダイゼーションは、染色体DNAを変性して一本鎖DNAを得る工程;この一本鎖DNAをNkd遺伝子配列に関連する遺伝子プローブに接触させる工程;およびハイブリダイズしたDNAプローブを同定してヒトhNkd遺伝子の少なくとも一部を含む染色体DNAを検出する工程、を包含する。
【0120】
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」は、プローブ配列と標的領域中の配列との相補性に起因して標的配列とハイブリッド構造を形成する、ポリヌクレオチドから構成される構造をいう。プローブとしての使用に適切なオリゴマーは、標的化された配列に対して相補的である、最小で約8〜12個、好ましくは、最小限約20個連続するヌクレオチドを含み得る。
【0121】
本発明のhNkd遺伝子プローブは、DNAオリゴヌクレオチドであってもRNAオリゴヌクレオチドであってもよく、そして当該分野において公知の任意の方法(例えば、切除、転写または化学合成)によって作製され得る。プローブは、当該分野において公知の任意の検出可能な標識(例えば、放射標識もしくは蛍光標識または酵素的マーカー)で標識され得る。プローブの標識化は、当該分野において公知の任意の方法(例えば、PCR、ランダムプライミング、末端標識、ニックトランスレーションなど)によって達成され得る。当業者はまた、標識されたプローブを使用しない他の方法がハイブリダイゼーションを検出するために使用され得ることを、認識する。ハイブリダイゼーションを検出するために使用され得る方法の例としては、サザンブロッティング、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、およびPCR増幅を用いる一本鎖高次構造多型が挙げられる。
【0122】
ハイブリダイゼーションは、典型的には、25〜45℃、より好ましくは、32〜40℃、より好ましくは、37〜38℃で実施される。ハイブリダイゼーションに必要な時間は、約0.25〜約96時間、より好ましくは、約1〜72時間、最も好ましくは、約4〜約24時間である。
【0123】
hNkd遺伝子異常はまた、PCR法、およびhNkd遺伝子に隣接するかまたはhNkd遺伝子内にあるプライマーを使用することによって、検出され得る。PCR法は、当該分野において周知である。簡単には、この方法は、hNkd遺伝子内にある標的配列に隣接する核酸配列にハイブリダイズしその標的配列を増幅し得る、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して実施される。本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチドプライマー」は、約8〜約30塩基長にわたるDNAまたはRNAの短鎖をいう。上流プライマーおよび下流プライマーは、典型的には、約20〜約30塩基対の長さであり、そしてヌクレオチド配列の複製のために、隣接する領域にハイブリダイズする。そのポリマー化は、デオキシリボヌクレオチド3リン酸、またはヌクレオチドアナログの存在下で、二本鎖DNA分子を生成するDNAポリメラーゼによって特徴付けられる。次いで、二本鎖は、物理的変性方法、化学的変性方法または酵素的変性方法を含む任意の変性方法によって分離される。一般に、物理的変性方法は、典型的には、約80℃〜105℃の温度にまで、約1〜約10分間の範囲の時間にわたって、核酸を加熱する工程を包含する。このプロセスは、所望の数のサイクルについて反復される。
【0124】
プライマーは、増幅されるDNA鎖に実質的に相補的であるように選択される。よって、プライマーは、テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、増幅される鎖と選択的にハイブリダイズするために十分相補的であらねばならない。
【0125】
PCR増幅後、次いで、hNkdまたはそのフラグメントを含むDNA配列は、直接配列決定されるか、または本明細書中に開示される配列との配列比較によって分析されて、活性または発現レベルなどを変化させ得る変更が同定される。
【0126】
別の実施形態において、hNkdタンパク質を検出する方法が、hNkd遺伝子を発現する組織の分析に基づいて提供される。特定の組織(例えば、乳房、肺、結腸など)は、hNkd遺伝子を発現することが見出された。この方法は、hNkd遺伝子を正常に発現する組織のサンプル由来のmRNAに、ポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる工程を包含する。サンプルは、hNkd遺伝子中に異常を有することが予期される患者より得られる。
【0127】
hNkdタンパク質をコードするmRNAの存在を検出するために、サンプルが、患者より得られる。サンプルは、血液由来であっても、組織生検サンプル由来であってもよい。サンプルは、そこに含まれる核酸を抽出するために処理され得る。サンプルより得られた核酸は、ゲル電気泳動または他のサイズ分離技術に供される。
【0128】
サンプルのmRNAを、プローブとして働くDNA配列と接触させて、ハイブリッド二重鎖を形成する。上記で議論された標識プローブの使用は、生じる二重鎖の検出を可能にする。
【0129】
hNkdタンパク質をコードするcDNAまたはこのcDNAの誘導体をプローブとして使用する場合、高ストリンジェンシー条件が、偽陽性を防ぐために使用され得、この偽陽性は、インタクトであり分画されたhNkd遺伝子が実際存在しない場合の、hNkdヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションおよび見かけ上の検出である。hNkd cDNA由来の配列を使用する場合、よりストリンジェントでない条件が使用され得るが、これは、偽陽性の可能性が原因でより好ましくないアプローチである。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション手順および洗浄手順の間の多くの因子(温度、イオン強度、時間の長さおよびホルムアミドの濃度を含む)によって決定される。これらの因子は、例えば、Sambrookら[Sambrookら(1989)上述]に概略される。
【0130】
hNkdタンパク質をコードするmRNAの、サンプル中での検出感度を増強させるために、逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)の技術を使用して、hNkdタンパク質をコードするmRNAより転写されたcDNAを増幅し得る。RT/PCRの方法は、当該分野において周知であり、そして以下のように実施され得る。総細胞性RNAを、例えば、標準的グアニジンイソチオシアネート法によって単離し、そしてこの総RNAを逆転写する。逆転写法は、逆転写酵素および3’末端プライマーを使用する、RNAのテンプレート上でのDNAの合成を包含する。典型的には、プライマーは、オリゴ(dT)配列を含む。次いで、cDNAが、PCR法およびhNkd特異的プライマーを使用して増幅される。[Belyavskyら、Nucl.Acid Res.17:2919−2932(1989);KrugおよびBerger,Methods in Enzymology,152:316−325,Academic Press,NY(1987)(これらは、参考として援用される)]。
【0131】
ポリメラーゼ連鎖反応法は、増幅されるDNAセグメントの2つの隣接する領域に実質的に相補的な2つのオリゴプライマーを使用して上記のように実施される。増幅に続いて、次いで、PCR産物を電気泳動し、そしてエチジウムブロミド染色またはホスホイメージング(phosphoimaging)によって検出する。
【0132】
本発明はさらに、患者から得られたサンプル中におけるhNkdタンパク質の存在を検出するための方法を提供する。タンパク質を検出するための当該分野において公知の任意の方法が、使用され得る。このような方法としては、免疫拡散、免疫電気泳動、免疫化学法、バインダー−リガンドアッセイ、免疫組織化学技術、凝集アッセイおよび補体アッセイが挙げられるがこれらに限定されない。[Basic and Clinical Immunology,217−262,SitesおよびTerr編、Appleton&Lange,Norwalk,CT(1991)(これは、参考として援用される)]。抗体をhNkdタンパク質のエピトープと反応させる工程、および標識化hNkdタンパク質またはその誘導体を競合的に置換させる工程を包含するバインダー−リガンド免疫アッセイ法が、好ましい。
【0133】
本明細書中で使用される場合、hNkdタンパク質の誘導体は、特定のアミノ酸が欠失されたか、あるいは改変されたアミノ酸または通常ではないアミノ酸に置換されたかまたは変更されたポリペプチドを含むことが意図され、ここで、この誘導体は、hNkdに生物学的に等価であり、ここで、このポリペプチド誘導体は、hNkdタンパク質に対して惹起された抗体と交差反応する。交差反応によって、抗体が、その形成を誘導する抗原以外の抗原と反応することを意味する。
【0134】
多くの競合的タンパク質結合免疫アッセイおよび非競合的タンパク質結合免疫アッセイが、当該分野において周知である。このようなアッセイにおいて使用される抗体は、例えば、凝集試験において使用される場合未標識であり得るか、または広範な種々のアッセイ法における使用のために標識され得る。使用され得る標識としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、酵素基質または補因子、酵素インヒビター、粒子、色素などが、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA))、蛍光免疫アッセイなどにおける使用のために、挙げられ得る。
【0135】
被験体非ヒト霊長類またはヒトのNkdタンパク質またはそのエピトープに対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、当該分野において公知の多くの方法のいずれかによって、免疫アッセイにおける使用のために作製され得る。エピトープによって、ポリペプチドの抗原決定基に対して言及がなされる。エピトープは、そのエピトープに独特である空間的コンフォーメーションの3つのアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5個のこのようなアミノ酸からなる。アミノ酸の空間的コンフォーメーションを決定する方法は、当該分野において公知であり、そして例えば、X線結晶解析および2次元核磁気共鳴が挙げられる。
【0136】
タンパク質に対する抗体を調製するための1つのアプローチは、そのタンパク質の全てまたは一部のアミノ酸配列を選択および調製し、この配列を化学的に合成し、そして適切な動物(典型的には、ウサギ、ハムスターまたはマウス)へ注入することである。
【0137】
疎水性領域中にあり、よって、成熟タンパク質においてされる可能性があるオリゴペプチドに基づいて、hNkdタンパク質に対する抗体を生成するための候補として、オリゴペプチドが、選択され得る。hNkdに対する抗体を生成するために使用されるペプチド配列は、以下を含む:
さらなるオリゴペプチドは、例えば、Antigenicity Index,Welling,G.W.ら、FEBS Lett.188:215−218(1985)(これは、参考として本明細書中に援用される)を使用して決定され得る。
【0138】
本発明の他の実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体が提供され、ここで、この抗体は、hNkdに対して特異的であるが、マウスまたはDrosophilaのNkdタンパク質を感知されるほどには結合しない。句「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体(典型的には、マウスモノクローナル抗体)由来の抗体をいう。あるいは、ヒト化抗体は、親の非ヒト抗体の抗原結合特性を保持または実質的に保持するキメラ抗体由来であり得るが、ヒト化抗体は、ヒトに投与される場合、親の抗体と比較して低減された免疫原性を示す。本明細書中で使用される場合、句「キメラ抗体」は、典型的には異なる種由来である2つの異なる抗体由来の配列を含む抗体をいう(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。最も典型的には、キメラ抗体は、ヒトおよびマウスの抗体フラグメント(一般的には、ヒト定常領域およびマウス定常領域)を含む。
【0139】
ヒト化抗体が、ヒトにおいて、親のマウスモノクローナル抗体よりもほとんど免疫原性ではない場合、これらは、アナフィラキシーの危険性をほとんど有することなくヒトの処置に使用され得る。よって、これらの抗体は、ヒトに対するインビボ投与を包含する治療的適用(例えば、新生物性疾患の処置のための放射線増感剤としての使用、または例えば、癌治療の副作用を低減させる方法における使用)において好ましくあり得る。
【0140】
ヒト化抗体は、以下を含む種々の方法によって達成され得る:例えば、(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク領域および定常領域上に移植すること(当該分野において「ヒト化」といわれるプロセス)、あるいは(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、これらを表面残基の置換によるヒト様表面で「覆う(cloaking)」こと(当該分野において「ベニアリング(veneering)」といわれるプロセス)。本発明において、ヒト化抗体は、「ヒト化」抗体および「ベニアリングした」抗体の両方を含む。これらの方法は、例えば、Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984);MorrisonおよびOi、Adv.Immunol.,44:65−92(1988);Verhoeyerら、Science 239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immunol.31(3):169−217(1994)、ならびにKettleborough,C.A.ら、Protein Eng.4(7):773−83(1991)(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)中に開示される。
【0141】
句「相補性決定領域」は、ネイティブな免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を一緒に規定するアミノ酸配列をいう。例えば、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services NIH Publication No.91−3242(1991)を参照のこと。句「定常領域」は、エフェクター機能を与える抗体分子の部分をいう。本発明において、マウス定常領域は、ヒト定常領域によって置換される。そのヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリン由来である。重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ(α、δ、ε、γまたはμ)のいずれかから選択され得る。
【0142】
ヒト化抗体の1つの方法は、ヒト重鎖配列および軽鎖配列に対して非ヒト重鎖配列および軽鎖配列を整列する工程、選択する工程、このような整列に基づいて非ヒトフレームワークをヒトフレームワークと置換する工程、ヒト化配列のコンフォーメーションを予想するために分子モデリングする工程、そして親の抗体のコンフォーメーションに比較する工程を包含する。このプロセスの後に、CDR領域内の残基のバックミューテーションが反復され、この変異は、予想したヒト化配列モデルのコンフォーメーションが、親の非ヒト抗体の非ヒトCDRのコンフォーメーションにかなり近似するまでCDRの構造を妨害する。このようなヒト化抗体はさらに、(例えば、Ashwellレセプターを介する)取り込み及びクリアランスを容易にするように誘導体化され得る。例えば、米国特許第5,530,101号および同5,585,089号(これらの特許は本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0143】
hNkdまたは霊長類Nkdに対するヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されているトランスジェニック動物を使用して生成され得る。例えば、WO 98/24893は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示し、ここで、これらの動物は、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の不活化に起因して、機能的な内因性免疫グロブリンを生成しない。WO 91/10741はまた、免疫原に対する免疫応答をマウントし得るトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示し、ここで、これらの抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、そしてここで、内因性の免疫グロブリンをコードする遺伝子座は、置換されているかまたは不活化されている。WO 96/30498は、哺乳動物中の免疫グロブリン遺伝子座を改変して、例えば、定常領域または可変領域の全てもしくは一部を置換して改変された抗体分子を形成するためのCre/Lox系の使用を開示する。WO 94/02602は、不活化内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示する。米国特許第5,939,598号は、トランスジェニックマウスの作製法を開示し、ここで、このマウスは、内因性重鎖を欠き、そして1つ以上の異種定常領域を含む内因性免疫グロブリン遺伝子座を発現する。
【0144】
上記のトランスジェニック動物を使用して、選択された抗原性分子に対する免疫応答を生成し得、そして抗体産生細胞は、この動物から取り出され得、そしてヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するために使用され得る。免疫化プロトコル、アジュバントなどは、当該分野において公知であり、そして(例えば、WO 96/33735に開示されるようなトランスジェニックマウスの)免疫化において使用される。この公開物は、種々の抗原性分子(IL−6、IL−8、TNF、ヒトCD4、L−セレクチン、gp39および破傷風毒素を含む)に対するモノクローナル抗体を開示する。モノクローナル抗体は、対応するタンパク質の生物学的活性または生理学的効果を阻害または中和する能力について試験され得る。WO 96/33735は、IL−8で免疫されたトランスジェニックマウスの免疫細胞由来のIL−8に対するモノクローナル抗体が、好中球のIL−8誘導性機能をブロックしたことを開示する。トランスジェニック動物を免疫するために使用した抗原に対して特異性を有するヒトモノクローナル抗体がまた、WO 96/34096に開示される。
【0145】
本発明において、本発明のhNkdポリペプチドまたは霊長類Nkdポリペプチドおよびこれらの改変体を使用して、上記のようにトランスジェニック動物を免疫する。モノクローナル抗体は、当該分野において公知の方法を使用して作製され、そしてこれらの抗体の特異性は、単離されたhNkdポリペプチドまたは霊長類Nkdポリペプチドを使用して試験される。
【0146】
ヒトもしくは霊長類のNkdのタンパク質またはそのエピトープの調製法としては、化学合成、組換えDNA技術または生物学的サンプルからの単離が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドの化学合成は、例えば、以下によって実施され得る:固相ペプチド合成の古典的なMerrifeld法(Merrifeld,J.Am.Chem.Soc.85:2149,1963(これは、参考として援用される)、またはRapid Automated Multiple Peptide Synthesis systemにおけるFMOCストラテジー[E.I.du Pont de Nemours Company,Wilmington,DE)(CaprinoおよびHan,J.Org.Chem.37:3404(1972)(これは、参考として援用される)]。
【0147】
ポリクローナル抗体は、ウサギまたは他の動物に抗原を注射することにより免疫すること、続いて適切な間隔でブーストすることによって調製され得る。これらの動物から採血し、そして精製したhNkdまたは霊長類Nkdのタンパク質に対して、通常ELISAによって、あるいはhNkdまたは霊長類Nkdの作用をブロックする能力に基づくバイオアッセイによって、血清をアッセイする。非限定的な例示において、hNkdに対する抗体は、Dishevelledタンパク質に対するhNkdの結合をブロックし得る。鳥種(例えば、ニワトリ、七面鳥など)を使用する場合、抗体は、卵黄より単離され得る。モノクローナル抗体は、MilsteinおよびKohlerの方法の後に、免疫したマウス由来の脾細胞を、継続的に複製する腫瘍細胞(例えば、骨髄腫細胞またはリンパ腫細胞)と融合することによって調製され得る。[MilsteinおよびKohler:Nature 256:495−497(1975);GulfreおよびMilstein,Methods in Enzymology:Immunochemical Techniques 73:1−46,LangoneおよびBanatis編、Academic Press(1981)(これらは、参考として援用される)]。次いで、このように形成されたハイブリドーマ細胞を、限界希釈法によってクローニングし、そして抗体の産生について、ELISA、RIAまたはバイオアッセイによって上清をアッセイする。
【0148】
抗体が、標的タンパク質を認識しそしてそれに特異的に結合する独特の能力は、このタンパク質の過剰発現を標的とするためのアプローチを提供する。従って、本発明の別の局面は、hNkdタンパク質に対する特異的抗体を用いて患者を処置することによって、このhNkdタンパク質の過剰発現に関係する疾患を予防または処置するための方法を提供する。
【0149】
hNkdタンパク質または霊長類Nkdタンパク質に対する特異的ポリクローナル抗体または特異的モノクローナル抗体のいずれかが、上記のように当該分野で公知の適切な任意の方法により産生され得る。例えば、マウスモノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって産生され得るか、あるいは、hNkdタンパク質もしくは霊長類Nkdタンパク質、またはそれらの免疫学的に活性なフラグメント、あるいは抗イディオタイプ抗体またはそのフラグメントが、hNkdタンパク質または霊長類Nkdタンパク質を認識し結合することができる抗体の産生を惹起するために、動物に投与され得る。このような抗体は、任意のクラスの抗体(IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEが挙げられ、鳥類種の場合、IgYが挙げられるが、これらに限定されない)に、そして任意のサブクラスの抗体に、由来し得る。
【0150】
単離されたヒトNkdタンパク質または霊長類Nkdタンパク質を利用可能なことにより、高スループットスクリーニング法(HTS)の慣用的な適用を介して、結合パートナーへのhNkdまたは霊長類Nkdの結合を阻害する、低分子および低分子量化合物を同定することが、可能となる。HTS法は、一般的には、治療能力についてのリード化合物の迅速なアッセイを可能にする技術を指す。HTS技術は、試験物質の自動取扱い、ポジティブシグナルの検出、およびデータの解釈を使用する。リード化合物は、放射能の取込みを介してか、あるいは読み出しとして吸光度、蛍光、または発光に頼る光学アッセイを介して、同定され得る。[Gonzalez,J.E.ら、Curr.Opin.Biotech.9:624〜631(1998)]。
【0151】
例えば、リガンド結合についてhNkdまたは霊長類Nkdと競合することによって、hNkdまたは霊長類Nkdとそのリガンドとの相互作用を阻害する化合物についての高スループットスクリーニングにおける使用のために適合され得るモデル系が、利用可能である。Sarubbiら、Anal.Biochem.237:70〜75(1996)は、IL−1レセプターの活性部位への結合について天然のリガンドと競合する分子を発見するための、無細胞非同位体アッセイを記載する。Martens,C.ら、Anal.Biochem.273:20〜31(1999)は、標識リガンドが、粒子上に固定されたそのレセプターに結合し、レセプター結合について標識リガンドと競合する分子の存在下では、その粒子上の標識が減少する、一般的な粒子ベースの非放射性法を記載する。
【0152】
本発明の、治療hNkdポリヌクレオチドまたは非ヒト霊長類Nkdポリヌクレオチド、ならびに治療hNkdポリペプチドまたは非ヒト霊長類Nkdポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクル中で利用され得る。この遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源であっても、非ウイルス起源であってもよい(一般的に、Jolly,Cancer Gene Therapy 1:51〜64(1994);Kimura,Human Gene Therapy 5:845〜852(1994);Connelly,Human Gene Therapy 1:185〜193(1995);ならびにKaplitt、Nature Genetics 6:148〜153(1994)を参照のこと)。本発明による治療剤のコード配列を含む構築物の送達のための遺伝子治療ビヒクルは、局所投与または全身投与のいずれかで投与され得る。これらの構築物は、ウイルスベクターアプローチまたは非ウイルスベクターアプローチを使用し得る。このようなコード配列の発現は、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導され得る。このコード配列の発現は、構成的であるかまたは調節されるかのいずれかであり得る。
【0153】
本発明は、選択された目的の核酸分子を保有または発現するように構築された組換えレトロウイルスを使用し得る。使用され得るレトロウイルスベクターとしては、EP 0 415 731;WO 90/07936;WO 94/03622;WO 93/25698;WO 93/25234;米国特許第5,219,740号;WO 93/11230;WO 93/10218;VileおよびHart,Cancer Res.53:3860〜3864(1993);VileおよびHart,Cancer Res.53:962〜967(1993);Ramら、Cancer Res.53:83〜88(1993);Takamiyaら、J.Neurosci.Res.33:493〜503(1992);Babaら、J.Neurosurg.79:729〜735(1993);米国特許第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;ならびにEP 0 345 242に記載されるベクターが、挙げられる。好ましい組換えレトロウイルスとしては、WO 91/02805に記載されるものが、挙げられる。
【0154】
上記レトロウイルスベクター構築物を用いる使用に適切なパッケージング細胞株は、容易に調製され得(PCT公開WO 95/30763およびWO 92/05266を参照のこと)、そして組換えベクター粒子を産生する産生細胞株(ベクター細胞株とも呼ばれる)を作製するために使用され得る。本発明の特に好ましい実施形態において、パッケージング細胞株は、ヒト細胞株(例えば、HT1080細胞)またはミンク親細胞株から作製され、それにより、ヒト血清における不活化を生存し得る組換えレトロウイルスの作製が、可能になる。
【0155】
本発明はまた、遺伝子送達ビヒクルとして機能し得る、アルファウイルスベースのベクターを使用する。このようなベクターは、広範な種類のアルファウイルスから構築され得、そのようなアルファウイルスとしては、例えば、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532)が、挙げられる。このようなベクター系の代表的例としては、米国特許第5,091,309号;同第5,217,879号;および同第5,185,440号;ならびにPCT公開番号WO 92/10578;WO94/21792;WO 95/27069;WO 95/27044;およびWO 95/07994に記載されるものが、挙げられる。
【0156】
本発明の遺伝子送達ビヒクルはまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのような、パルボウイルスを使用し得る。代表的例としては、WO 93/09239においてSrivastavaにより、Samulskiら、J.Vir.63:3822〜3828(1989)により;Mendelsonら、Virol.166:154〜165(1988)により;およびFlotteら、P.N.A.S.90:10613〜10617(1993)により開示される、AAVベクターが、挙げられる。
【0157】
アデノウイルスベクターの代表的例としては、Berkner、Biotechniques 6:616〜627(Biotechniques);Rosenfeldら、Science 252:431〜434(1991);WO 93/19191;Kollsら、P.N.A.S.215〜219(1994);Kass−Bislerら、P.N.A.S.90:11498〜11502(1993);Guzmanら、Circulation 88:2838〜2848(1993);Guzmanら、Cir.Res.73:1202〜1207(1993);Zabnerら、Cell 75:207〜216(1993);Liら、Hum.Gene Ther.4:403〜409(1993);Cailaudら、Eur.J.Neurosci.5:1287〜1291(1993);Vincentら、Nat.Genet.5:130〜134(1993);Jaffeら、Nat.Genet.1:372〜378(1992);ならびにLevreroら、Gene 101:195〜202(1992)により記載されるものが、挙げられる。本発明において使用可能な例示的アデノウイルス遺伝子治療ベクターとしてはまた、WO 94/12649、WO 93/03769;WO 93/19191;WO 94/28938;WO 95/11984およびWO 95/00655に記載されるものが、挙げられる。Curiel,Hum.Gene Ther.3:147〜154(1992)に記載されるようなアデノウイルスを死滅させるために連結されたDNAの投与は、使用され得る。
【0158】
他の遺伝子送達ビヒクルおよび遺伝子送達方法が、使用され得、これらとしては、アデノウイルスのみを殺傷するための、連結されたかまたは連結されていない、ポリカチオン性濃縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.3:147〜154(1992));リガンドに連結されたDNA(例えば、Wu,J.Biol.Chem.264:16985〜16987(1989)を参照のこと);真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、1994年5月9日出願の米国特許出願番号08/240,030および米国特許出願番号08/404,796を参照のこと);光重合ヒドロゲル材料の沈着;携帯型遺伝子移入粒子銃(米国特許第5,149,655号に記載される);米国特許第5,206,152号およびWO 92/11033に記載される電離放射線;核電荷中和または細胞膜との融合が挙げられる。さらなるアプローチは、Philip、Mol.Cell Biol.14:2411〜2418(1994)およびWoffendin、Proc.Natl.Acad.Sci.91:1581〜1585(1994)に記載される。
【0159】
裸DNAもまた、使用され得る。例示的裸DNA導入法は、WO 90/11092および米国特許第5,580,859号に記載される。取込み効率は、生分解性ラテックスビーズを使用して改善され得る。DNAコーティングラテックスビーズは、そのビーズによるエンドサイトーシス開始の後、細胞中に効率的に輸送さえる。この方法は、疎水性を増加するため、そしてそれにより、エンドソームの破壊および細胞質中へのDNAの放出を容易にするためのこのビーズの処理によりさらに改善され得る。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号、PCT特許公開番号WO 95/13796、WO 94/23697、およびWO 91/14445、ならびにEP番号0 524 968に記載される。
【0160】
使用に適切なさらなる非ウイルス送達としては、Woffendinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(24):11581〜11585(1994)に記載されるアプローチのような、機械的送達系が、挙げられる。さらに、コード配列およびそのような発現の生成物は、光重合ヒドロゲル材料の沈着を介して送達され得る。コード配列の送達に使用され得る遺伝子送達のための他の従来の方法としては、例えば、米国特許第5,149,655号に記載されるような携帯型遺伝子移入粒子銃の使用;米国特許第5,206,152号およびPCT特許公開番号WO 92/11033に記載されるような、移入遺伝子を活性化するための電離放射線の使用が、挙げられる。
【0161】
本発明は、好ましい実施形態を含んで上記に記載されているが、以下の実施例は、本発明をさらに例証するために提供される。
【0162】
(実施例1)
(ヒトESTデータベースからの部分的ヒトNkd配列の同定)
図1に含まれる配列(配列番号2)を有するマウスNkd核酸配列を使用して、BLASTシリーズのプログラム[Altschul,S.R.およびLipman、D.J.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:5509〜5513(1990)]を使用してヒトESTデータベース中の潜在的ヒトホモログを同定した。候補配列の多重アライメントを、Clustal Wアライメント[Thompson,J.D.ら、Nucl.Acid.Res.22:4673〜4680(1999)]を使用して行った。
【0163】
この検索は、2つのヒットAI167910およびH55148を生じた。このAI167910 ESTを順番付け、配列決定した。この配列分析により、マウスNkd配列と実質的な類似性を有するがこの遺伝子の5’末端を欠く、配列が、明らかになった。
【0164】
(実施例2)
(全長hNkdのクローニング)
全長hNkdを、レーザー捕捉顕微解剖(LCM)法とRT−PCR RACE法との組合せによって、クローニングした。全RNAを、レーザー捕捉顕微解剖(LCM)(Arcturus Engineering Inc.、Mountain View(CA))により、霊長類ヒト結腸癌細胞から抽出した。LCMを、当該分野で周知の方法によって実行した(Simonら、Am.J.Protol.156(a):445〜452(2000)を参照のこと)。これにより、実質的に均質な細胞サンプルを得るための特定の細胞型の単離が、提供される。
【0165】
5’末端を含む遺伝子全体を、上記のような結腸癌患者からLCMにより得た全RNA(RNA prep ID# 100/サンプル1b3521サンプル名UC−C2CA)から合成したcDNAを、RACE用のcDNAテンプレートとして使用して、製造業者のプロトコル(Clontech SMART RACE cDNA Amplification Kit,K1811−1)に従って、5’ RACEによりクローニングした。この製造業者のプロトコルは、下記に記載される:
5’ RACEプロトコル:
RACE用cDNAテンプレートを、癌患者からLCMにより単離したRNA(RNA prep ID# 100/サンプルID352/サンプル名UC−C2CA)から、製造業者のプロトコル(Clontech SMART RACE cDNA Amplification Kit,K1811−1)に従って、合成した。増幅は、製造業者のプロトコルに従って、1M GCにてClontech Advantage GC−cDNA PCRキット(K1907−1)を用いて、上記のcDNAテンプレートと、製造業者により提供されたユニバーサルプライマー混合物と、ヒトNkdに特異的なプライマー(CH308:CTTGCCGTTGTTGTCAAAGTC)とを使用して、実施した。PCRを、94℃で0.5分間/58℃で0.5分間/68℃で2分間の30サイクル、その後、94℃で1分間/58℃で1分間/68℃で2分間の10サイクルについて、実行した。最終回の伸長は、72℃にて10分間行った。このPCR産物を、pCR−TOPO4(Invitrogen)中にクローニングし、そしてE.coli中に形質転換した。正確な5’RACE産物を保有する細菌クローンを、ネスティッドプライマー(CH306:CCCAGCATGGGGAAACTTCAおよびCH308:CTTGCCGTTGTTGTCAAAGTC)を使用するPCRスクリーニングによって、同定した。
【0166】
これにより、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域を含む、全長hNkd遺伝子の単離が生じる。この配列は、図1および図3(それぞれ、配列番号1および配列番号5)に含まれる。
【0167】
ヒトNkdの核酸配列(5’非翻訳領域および3’非翻訳領域を含む)を、図1にあるClustal W Multiple Alignmentにより整列する。ヌクレオチドレベルでmNkdとhNkdとが85%同一であることが、このアライメントから理解され得る。さらに、このhNkd DNA配列およびmNkd DNA配列は、図3および図4(配列番号5および配列番号6)に、別々に示される。
【0168】
ヌクレオチド配列の再吟味により、このタンパク質配列を識別した。この配列は、図5および配列番号7に示される。これから、hNkdタンパク質が、470アミノ酸長であることが、理解され得る。
【0169】
hNkdおよびmNkdのアミノ酸配列が、図2において整列される。マウスNkdのアミノ酸配列およびヒトNkdのアミノ酸配列が、タンパク質レベルで87%同一であること、ならびにマウスNkdが、ヒトNkdタンパク質より1つ少ないアミノ酸残基を含むことが、このアライメントから理解され得る。さらに、hNkdについてのアミノ酸配列およびmNkdについてのアミノ酸配列が、図5および図6(配列番号7および配列番号8)に別個に示される。これらのタンパク質が、結合に関与する残基133〜168に相当する、同一のEFハンド領域を含むこともまた、理解され得る。
【0170】
(実施例3)
(ヒト染色体領域へのhNkdのマッピング)
直前の実施例において得た全長Nkd核酸配列を使用して、Genbankゲノム配列データベースをブラスト実行して、hNkdを含む染色体領域を同定した。この配列は、ヒト第16染色体から、2つのBACヒットを生じた。図7および図8に示されるように、hNkdのコード領域全体は、11個のエキソンからなる。これらのエキソンは、ヒト第16染色体上の86Kb領域にマッピングされ得る。配列分析によって、このゲノム配列が、5’RACEによりクローン化したhNkd配列として、同一のコード領域および3’非翻訳領域を含むことが、明らかとなった。唯一の配列の差異は、Genbankゲノム配列と比較した、5’UTR中の2つのヌクレオチド変化である。この11個のエキソン(非翻訳領域およびコード領域を含む)のヌクレオチド配列は、図7(配列番号9〜22)に含まれる。この時点で、5’UTR中のこの2つのヌクレオチド変化が、hNkd発現に対して何らかの効果を有するか否かは、未知である。
【0171】
(実施例4)
(融合タンパク質の調製)
GST融合タンパク質を、E.coli株BL21 DE3(plyS)において発現させ、そしてグルタチオンビーズ(Pharmacia)を用いて精製する。Myc−hNkdタンパク質を、35S−メチオニンの存在下でTNT共役(TNT coupled)網状赤血球ライセートシステム(Promega)を使用するインビトロ転写および翻訳によって、調製する。この35S標識hNkdを、抗Myc抗体およびプロテインAビーズによってかまたはグルタチオンビーズに固定したGST融合タンパク質によって、4℃にて3時間沈殿させる。
【0172】
(実施例5)
(hNkdによるWntシグナル伝達の阻害)
293細胞を、ホタルルシフェラーゼを発現するLEFルシフェラーゼレポーター、LEF−1発現ベクター、トランスフェクションコントロールとしてRenillaルシフェラーゼを発現するpRL−TKベクター(Promega)、と、以下のプラスミド:pCDNAHis3C β−ガラクトシダーゼ;pCGWnt−1プラスpCDNAHis3C βガラクトシダーゼ;pCGWnt−1プラスpC52+MychNkd;pC52+MychNkd単独とで同時トランスフェクトした。各サンプルのLEF−1ルシフェラーゼレポーター活性を、製造業者の指示書(Promega)に従って二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系を使用して、測定し、そして標準化した。
【0173】
詳細には、293細胞を、12ウェルプレートにおいて増殖させた。細胞を、LEF−1、LEF−1レポーター、Renillaと、β−ガラクトシダーゼ、hNkd、Wnt−1プラスβガラクトシダーゼ、またはWnt−1プラスhNkdの発現構築物でトランスフェクトした。トランスフェクション36時間後の相対的ルシフェラーゼ活性を、測定した。
【0174】
この実験のデータの平均を、図14に含める。これらの結果に基づいて、hNkdが、293細胞におけるルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて、Wnt−1シグナル伝達を阻害したことが、理解され得る(この図において、RLVは、相対的ルシフェラーゼ単位を指す)。
【0175】
(実施例6)
(正常なヒト細胞株およびヒト細胞組織とヒト癌細胞株およびヒト癌組織における、hNkd mRNAの発現)
(正常組織)
hNkd mRNAレベルを、脳、男性心臓、腎臓、肝臓、肺、結腸、骨髄、小腸、脾臓、胃、胸腺、前立腺、骨格、筋肉、精巣、子宮、胎児脳、胎児肝臓、脊髄、胎盤、副腎、膵臓、唾液腺、気管、および乳腺において、リアルタイム定量PCRにより測定した。すべての組織におけるhNkdの発現を、β−グルクロニダーゼのレベルに対して標準化した。この比は、1.00E−03(骨髄において最低の発現)〜4.00E−02(脊髄において最高の発現)の範囲であった。この実験の結果は、図15にあり、これは、hNkdの基礎mRNAレベルが、正常な組織では低いことを示す。
【0176】
(癌細胞株)
ヒト細胞株のコレクションを、ATCCにより推奨される培地にて増殖させた。このコレクションは、Cago.2、SW480、SW620、Colo 320 DM、T84、HCT15、LS174T、LOVO、HT29、HCT116(結腸癌細胞株);184B5(初代乳房細胞株);MDA−MB−231、MDA−MB−435、Alab、MCF−7、MDA−MB−468(乳癌細胞株);DU145、LNCAP、WOCA、PC3、GRDP2(前立腺癌細胞株);SKOV3、OVCAR3(卵巣癌細胞株);IMR90(初代線維芽細胞株);847(SV40形質転換線維芽細胞株);HT1080(線維肉腫細胞株);A−431(類表皮癌細胞株);U373MG(神経膠芽腫細胞株);NCIH23(非小細胞肺癌細胞株);HMVEC(内皮細胞株)を含んだ。全RNAの抽出後、cDNAを、オリゴdTプライマーを用いて合成し、そして定量リアルタイムPCR分析において使用して、その中のアクチンmRNAのレベルに対して標準化したhNkd mRNAの発現レベルを測定した。これらの結果は、図16に含まれ、そして、hNkd mRNAが、結腸癌株においてのみ高レベルで発現され、試験したヒト癌細胞株の他の型においては高レベルでは発現されなかったことを、示す。
【0177】
(実施例7)
(hNkdによるJNKの活性化)
JNKアッセイを、改変を加えて、記載された[Boutrosら、Cell 94:108〜118(1998)]ように実行する。NIH3T3細胞を、6ウェルプレート中で、10%仔ウシ血清を含むDMEM培地において対数増殖まで増殖させる。この細胞を、LipofectAMINEプラス試薬(Lifetech)を製造業者のプロトコルに従って使用して、トランスフェクトする。トランスフェクションの22時間後に、細胞を、SDSサンプル緩衝液中に溶解する。等量のサンプルを、トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(Novex)により分離させ、ニトロセルロース膜上にトランスファーする。この膜を、c−JunのN末端の63位にあるリン酸化セリンを認識するPhosphoPlus c−Jun(Ser63)II抗体(New England Biolabs)を用いてブロッティングする。その後、同じ膜を、ストリッピングし、そして、抗Xpress抗体(Invitrogen)を用いてブロッティングして、発現された、X−pressタグ化hNkdおよびβ−ガラクトシダーゼの量を検出する。同じ膜を再びストリッピングし、そして抗GAP抗体を用いてブロッティングして、ローディングコントロールとして、各サンプル中のGAPの量を検出する。
【0178】
リン酸化c−Junバンドの強度の増加が存在することが、予期される。
【0179】
(実施例8)
(哺乳動物組織におけるhNkdの発現)
哺乳動物組織におけるhNkdの発現を、multiple tissue Northern Blot(Clontech)を使用して調査する。このNorthern Blotを、hNkdの放射標識フラグメントとハイブリダイズさせる。このフラグメントは、hNkdのDishevelled結合ドメインを含む。分析されるべき組織としては、心臓、脳、脾臓、肺、肝臓、筋肉、腎臓、および精巣が、挙げられる。
【0180】
(実施例9)
(DishevelledとのhNkdの相互作用)
ベクターpCDNA3.IHisC(Invitorgen)においてhNkd、hNkd−δ EFハンド、またはGFP遺伝子を発現するCos7細胞を、150mM NaCl、20mM Tris HCl(pH7.5)、0.1% Tritonとプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(Roche)とを含む緩衝液において、溶解する。全細胞溶解物を、モノクローナルDvl抗体1、2、および3(Santa Cruz、California)を用いて免疫沈降させ、そしてXpress抗体を用いてブロッティングする。hNkdのEFドメインがmNkdのEFドメインと同様に挙動することを予期すると、このEFハンドにおけるNkd変異は、DvlへのhNkdの結合に対して有意な効果は有さないはずである。この仮説を試験するために、Mycタグ化Dishevelled、DD2を含むMycタグ化Dishevelledフラグメント、DshのN末端ドメインまたはC末端ドメインを含むMycタグ化Dishevelledフラグメント、およびhNkd変異体を発現する、Cos7細胞からの細胞溶解物を、Myc抗体(Roche)を用いて免疫沈降させ、Xpress抗体を用いてブロッティングする。hNkd変異体は、ネイティブhNkdと比較して変化したEFハンド中の1アミノ酸または2アミノ酸を有する部位特異的変異誘発によって作製する。
【0181】
別の実験において、35Sで標識したMycタグ化hNkdタンパク質を、抗Myc抗体で免疫沈降させるか、またはGST融合タンパク質により沈降させる。この免疫複合体を、電気泳動およびオートラジオグラフィーに供する。細菌由来のGST融合タンパク質を、SDS−PAGEゲル上で分離させ、クーマシーブルー染色する。hNkdがmNkdと同様に挙動すること、および35S−hNkdが、PDZおよび隣接N末端塩基性アミノ酸残基を含むがDshのN末端ドメインもC末端ドメインも含まないDshフラグメントと結合することが、予期される。
【0182】
(実施例10)
(哺乳動物細胞におけるWnt応答性LEF−1レポーター活性に対する、hNkdおよびhNkdのEDハンド変異の効果)
mNkd転写は、Wntおよび塩化リチウム処理誘導性である。hNkd転写が、同様に誘導性であることが、予期される。この仮説を試験するために、HEK 293細胞を、12ウェル培養プレート中2×105/ウェルで播種する。各ウェルを、LipofectaminePlus(Life Science)を合計0.54μgのDNAとともに使用して、トランスフェクトする。このトランスフェクトDNAは、0.02μgのLEF−1、0.2μgのルシフェラーゼレポーター[Hsuら、Mol.Cell.Biol.1918(1998)]、0.02gのpRL−TK(Promega)、および0.1μgのpCGWnt−1と0.2μgのpCDNA3.1HisC GFP、hNkd、またはその誘導体のいずれかとの組合せを含む。EFハンドにおける変異またはEFハンドの欠失を含むサンプル(Wnt−1はトランスフェクしない)において、GFP、hNkdまたはhNkd誘導体単独(0.3μgまたは0.1μg)を、トランスフェクトする。LEF−1ルシフェラーゼレポーター活性を、二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系(Promega)を使用して、測定して標準化する。この結果は、hNkdがβカテニン活性化LEF−1レポーター発現を阻害しないことを示し、hNkdが標準Wntシグナル伝達を負に調節することを示し、EFハンドの点変異および欠失が、Wnt媒介転写応答をhNkdが阻害する能力を損なうことを示すことが、予期される。
【0183】
マウス肝臓上皮細胞を、Wnt−3a馴化培地またはNeoコントロール培地のいずれかで、9時間、19.5時間、または27時間処理する。40mM LiClを含む増殖培地または含まない増殖培地を使用して、細胞を16時間処理する。適切なプライマーを、RT−PCRにおいて使用して、hNkdおよびGAPDHをそれぞれ増幅する。
【0184】
(実施例11)
(Xenopus胚におけるhNkdの効果)
発生Xenopus胚は、Wntシグナル伝達についての有効なインビボアッセイを提供する。なぜなら、この経路の異所性腹側活性化は、異所性背側構造を誘導するからである。mNkdのXwnt−8 mRNAの5〜10pgの腹側注射は、60%以上の胚において第2の軸を誘導することを示した。正規のWnt誘導されたLEF−1依存性転写を阻害するmNkdの能力と一致して、35pgのhNkd mRNAの注射は、同時注射されたXwnt−8の活性を抑制することが予想された。高用量のhNkdの同時注射は、いっそう少ない第2の軸を生じるはずである。なぜなら、非常に高用量のDrosophila Nkdの腹側発現が異所性頭部構造を誘導することが報告されているからである(Zengら;(2000))。
【0185】
Drosophilaの脊椎動物同族の平面内極性経路は、脊椎動物発生の間の収斂に伸びる移動を制御する。XenopusおよびDrosophilaの両方において、この経路の超活性化は、正規のWntシグナル伝達と独立した細胞極性表現性を誘発する。DrosophilaにおけるFrizzled(Fz)の野生型Dshの過剰発現は、上皮平面内極性を破壊し、一方、Xenopusにおいて、野生型Xdsh、Xfz−8またはXfz−7の過剰発現は、細胞極性を破壊し、そして収斂した伸長を阻害する。従って、収斂した伸長は、脊椎動物の平面内極性シグナル伝達の有効なインビボアッセイを示す。
【0186】
インビトロにおいてJNKを活性化するというその予期された能力と一致して、hNkdの過剰発現は、Drosophila NkdおよびマウスNkdと類似した様式で、Xenopus胚の正常な伸張を阻害するはずである。収斂した伸長に対するhNkdのこの効果をより直接的に評価するために、背側中胚葉の片側(open−face)Keller外植片を調べた。Xenopus胚を、4細胞段階の2つの背側割球または2つの腹側割球のいずれかにインビトロ転写したmRNAを用いて注射し、そして表現型のスコア付けのために、30段階まで1/3×MMRにおいて培養する。Keller外植片を、st.10.25で切断し、st.20まで1×Steinberg中でカバーガラスの下で培養する。
【0187】
コントロールXenopus胚を、二次的な軸を発生する5〜10pgのXwnt−8 mRNAを用いて腹部注射する。hNkdとXwnt−8との同時発現は、Xwnt−8単独と比較して、二次的な軸形成の頻度ならびに完全な二次的軸の比率を減少する。
【0188】
発生Xenopus胚におけるmNkdの背側発現は腹背軸の正常な伸長および直線性を阻害したので、hNkdを用いて類似の結果が予想される。初期の構造の正常な形成(例えば、mNkdを発現する胚において)は、その表現型が腹側形成の結果ではないこと示し、これは、mNkdが収斂の伸張を阻害することを示唆する。同様に、背側周辺領域のコントロール外植片は伸張し、そして形状を有意に変化させたが、mNkdを発現する外植片は、伸張もせず形状を変化もしなかった。DN−GSK3の同時発現による正規のWnt経路の下流活性化は、収斂の伸張に対するmNkdの効果をレスキューしなかった。
【0189】
この実験の結果は、コントロール胚から作製した外植片は有意に伸張したが、hNkdを発現する胚から作製した外植片は、伸張しなかったことを示す。これらの予期された結果は、平面内極性カスケードの他の野生型成分(Xdsh、Frizzled−8、Frizzled−7、およびWnt−11を含む)の過剰発現によって誘発される結果と類似する。
【0190】
hNkdはWnt経路の潜在的なインヒビターであると予想されるので、収斂の伸張に対するhNkdの効果がこの活性から生じ得るか否かを試験することが重要である。DN−GSK3(これは、正規のWntシグナル伝達を強力に活性化する(Pierce、1995))とhNkdの実験を実行したが、収斂の伸張のレスキューは見出されなかった。mNkdがJNKを活性化する能力と組み合わせて、これらのデータは、mNkdが平面内極性シグナル伝達カスケードを過剰に刺激することによって、収斂の伸張を阻害することが示される。
【0191】
本発明者らは、特定の作用機構に束縛されないが、mNkdを用いて実行した実験に基づいて、正規のWntシグナル伝達は本明細書中のhNkdによって阻害され、hNkdは正規ではない平面内極性経路を活性化し、hNkdはDshに結合するということが、予想される。従って、hNkdはDshを正規の経路からシャットダウンして平面経路に入れることに関与し得ることが、予想される。このことは、hNkdを、正規のWnt経路と正規ではないWnt経路との間のの分岐を決定する重要なレギュレーターにする。
【0192】
(実施例12 mNkdに結合し得る抗体)
hNkdまたはそのフラグメントに対する抗体を、以下のように調製した。ウサギまたは他の適切な哺乳動物もしくは動物に、hNkdポリペプチドまたはその配列番号7を有するタンパク質の少なくとも20アミノ酸を含む抗原性フラグメントを注射し、続いて、適切な間隔でブーストした。動物を採血し、そして血清を、精製したhNkdタンパク質またはそのフラグメントに対してアッセイした。抗hNkd抗体を産生するためのペプチド配列としては、その少なくとも20個連続するアミノ酸を含むhNkdのフラグメントが挙げられる。
【0193】
好ましくは、hNkdに特異的に結合するがマウスNkdまたはDrosophila Nkdに明らかに結合しない抗体が、選択される。hNkdに特異的に結合するがマウスNkdまたはDrosophila Nkdに結合しないモノクローナル抗体が、免疫した動物由来のB細胞からハイブリドーマを産生すること、およびヒトNkdまたは非ヒト霊長類Nkdに特異的に結合するがマウスNkdまたはDrosophila Nkdに実質的に結合しないモノクローナル抗体を産生するものを選択することによって、得られる。hNkdの異なる部分(例えば、EFハンド)に対して結合する抗体が、好ましくは選択される。
【0194】
(実施例13 抗hNkd抗体を用いる乳癌の処置)
異常なWntシグナル伝達を含む癌(特に、乳癌)を有する患者を、薬学的に受容可能なキャリアを含む、本発明に従う抗hNkd抗体の治療有効量を投与することによって、処置する。
【0195】
この投与は、所望の治療応答が達成されるまで、必要である場合繰り返す。
【0196】
(実施例14 Wntシグナル伝達を含む癌の検出)
被験体を、本発明に従う抗hNkd抗体を用いてこのような被験体の血清中のhNkdタンパク質の量を測定し、そしてこれらのレベルをコントロール血清サンプル(正常な患者の血清)に対応させることによって、hNkdの異常な発現を含む癌の存在についてスクリーニングする。これらのレベルが正常血清サンプル中のhNkdレベルを実質的に超えた場合、陽性の診断がなされる。
【0197】
(実施例15 mNkd mRNAは、Wntリガンドによって誘導される) 漸増する量のβ−カテニンに対する細胞培養物の曝露の際の、hNkd mRNAレベルに対する効果を決定する実験を実行した。これらの結果を、図10に含ませ、8時間、19.5時間および27時間の期間での増加したβ−カテニンの量が、増加したmNkd mRNAレベルによって実証されるように、mNkd発現の誘導を生じることが示される。コントロールとして、コントロール遺伝子(GAPDH mRNA)は、mRNAレベルのこのような増加を示さなかった。これらの結果は、mNkdがWnt/β−カテニン経路のネガティブフィードバックループの一部であり得ることを示唆する。
【0198】
(実施例16 hNkdおよびβ−カテニンmRNAレベルの割合に対する、アンチセンスオリゴの影響)
特定の癌(特に、結腸癌)におけるhNkd遺伝子の関与を確認するために、結腸癌細胞SW620を、β−カテニンRC/ASオリゴで処理した。具体的にいうと、SC620細胞を、以下のアンチセンスオリゴで試験した:CHIR30−5AS 5’−ACTCAGCTTGGTTAGTGTGTCAGGC−3’、および逆方向コントロールオリゴであるCHIR30−5RC 5’−CGGACTGTGTGATTGGTTCGACTCA−3’。この実験を以下のように記載する。
【0199】
(アンチセンスアッセイ)SW620細胞を、10% FBSを補充したDMEM中で増殖させた。細胞を、アンチセンスβ−カテニンオリゴ(AS)または逆方向コントロールオリゴ(RC;異なる配向の同じヌクレオチド配列)を用いて、会社の特許のあるトランスフェクション試薬を用いて100μMの最終濃度でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をPBSを用いて2回洗浄し、そして総RNAを、RNeasy miniキット(Qiagen)を用いて調製した。逆転写および定量的RNA分析を、Roche Molecular BiochemicalsからのLightCyclerシステムを用いることによって、実行した。
【0200】
(hNkd mRNAレベルは、β−カテニンによって調節される)SW620は、Wntシグナル伝達の遺伝子における変異に起因して、アップレギュレートされた細胞質β−カテニンレベルを有する、結腸癌細胞株である。SW620細胞のβ−カテニンアンチセンス処理は、β−カテニンのmRNAレベルを特異的にダウンレギュレートし、このことは、逆方向コントロールオリゴ(RC)を用いて処理した細胞のβ−カテニン mRNAレベルと比較した、β−カテニンアンチセンス(AS)を用いて処理した細胞のβ−カテニン mRNAレベルにおける80%以上の低下によって実証される。これらの結果を、図11に示す。β−カテニンタンパク質レベルもまた、β−カテニンアンチセンス処理したサンプルにおいてダウンレギュレートされる(データは示していない)。同様に、β−カテニンアンチセンスで処理した細胞のhNkd mRNAレベルもまた、逆方向コントロールオリゴを用いて処理した細胞のhNkd mRNAレベルよりも80%低い。ネガティブコントロールとして、GAPDH mRNAレベルを決定し、β−カテニンアンチセンス処理または逆方向コントロール処理のいずれによっても、影響されなかった。従って、β−カテニンアンチセンスを用いて処理した細胞のGAPDHと逆方向コントロールオリゴを用いて処理した細胞のGAPDHの割合は、1に等しい。
【0201】
(実施例17 結腸癌サンプルおよび正常組織におけるhNkd RNAの分布)
hNkd mRNAレベルが細胞培養物におけるβ−カテニンの増加によってアップレギュレートされるという本発明者らの発見に基づいて、そしてさらに、hNkdプロモーター中の多数のTCF結合エレメントを本発明者らが同定したことに基づいて、本発明者らは、hNkdレベルが正常なヒトと比較して、結腸癌患者において上昇していることを予想した。実際、以下により詳細に記載するように、hNkd RNAレベルは、正常培養物と比較して、約70%の結腸癌サンプル中で有意に上昇していることが見出された。
【0202】
(結腸癌サンプルおよび匹敵する患者の正常サンプルにおけるhNkdメッセンジャーRNAレベルの定量的分析)mRNAを、レーザー捕捉顕微解剖(LCM)で調製した結腸癌サンプルから単離した。逆転写反応を、RETROscripキット(Ambion)を用いて、そのキットに提供されるランダムプライマーによって実行した。定量的RNA分析を、Roche Molecular BiochemicalsからのLightCyclerシステムを用いることによって実行した。
【0203】
(hNkd mRNAレベルは、結腸癌患者においてアップレギュレートされる)
80%を超える結腸癌患者が、細胞質β−カテニンレベルのアップレギュレーションを生じるWnt経路の異常な調節を有する。hNkd mRNAレベルはβ−カテニンの量によって調節されるので、本発明者らは、28対の、結腸癌サンプルおよび匹敵する患者の正常サンプルにおけるhNkd mRNAレベルを調べた。これらの結果を、図12に含ませ、そして68%の結腸癌患者が、上昇したhNkd mRNAレベルを有することを示し、このことは、β−カテニンがhNkd mRNAレベルを調節するという本発明者らの知見と一致する。
【0204】
(実施例18)
上記の結果に基づいて、hNkd発現を、結腸癌を診断するためのマーカーとして使用する。結腸サンプルを、結腸癌について試験される被験体から得る。hNkd RNAのレベルを測定し、そして正常コントロール中のhNkd RNAレベルに対して比較する。被験体がコントロールと比較して増大したmNkd RNAレベルを示すか否かに基づいて、陽性の結腸癌診断をした。
【0205】
(実施例19 レポーターの発現をダウンレギュレートする低分子インヒビターについてスクリーニングするための、hNkdプロモーターの使用)
hNkdプロモーターを使用して、プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現をダウンレギュレートする低分子を同定する。例えば、複数TCF結合エレメント(CTTTGA/TA/T)を含むことが見出されたhNkdプロモーターを含むDNA構築物(図13に図示される)を、緑色蛍光タンパク質のコード配列に作動可能に連結させ、そして適切な哺乳動物細胞株に導入する。次いで、この細胞株を異なる低分子と接触させ、そしてレポーター発現に対するその効果を測定する。レポーター発現をダウンレギュレートする低分子を、選択する。これらの分子は、潜在的に、Wnt/β−カテニン経路の異常な調節を含む疾患(特に、癌(例えば、結腸癌))を処置する際に有用である。
【0206】
本発明は、特定の実施形態を参照して記載してきた。しかし、本出願は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得る変更および置換をカバーすることが意図される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、マウスNkdおよびヒトNkdのコード領域ならびに5’および3’非コード領域の核酸配列[それぞれ、配列番号1および配列番号2]の整列を含む。
【図2】
図2は、ヒトNkd(「mdap.pep」)およびマウスNkdのアミノ酸配列[それぞれ、配列番号3および配列番号4]の整列を含む。
【図3】
図3は、ヒトNkdのヌクレオチド配列[配列番号5]を含む。
【図4】
図4は、マウスNkdのヌクレオチド配列[配列番号6]を含む。
【図5】
図5は、ヒトNkdのアミノ酸配列[配列番号7]を含む。
【図6】
図6は、マウスNkdのアミノ酸配列[配列番号8]を含む。
【図7】
図7は、hNkdの推定プロモーター、ならびに5’UTR、コード配列、および3’UTRのエキソン(エキソン1〜11)の核酸配列[配列番号9〜22]を含む。
【図8】
図8は、hNkd遺伝子のコード領域ならびに5’および3’非翻訳領域(エキソン1〜11に含まれる)を、ヒト第16染色体の86Kb領域にマッピングした概略図を含む。
【図9】
図9は、Wnt/Bカテニン経路を示し、そして特に、細胞増殖を促進する遺伝子を同定する。
【図10】
図10は、経時的に漸増する量のβ−カテニンに曝された細胞培養物におけるmNkd mRNAレベルを比較したインビトロ実験の結果を含む。
【図11】
図11は、SW620細胞をβ−カテニンアンチセンスまたは逆コントロールオリゴで処理し、そしてSW620 hNkd、SW620 β−カテニンmRNA、およびコントロールSW620GAPDH mRNAのレベルの比率を処理後に測定した実験の結果を含む。
【図12】
図12は、癌/正常結腸組織におけるhNkdレベルの比率を示す。
【図13】
図13は、hNkdプロモーターを調節する低分子を同定するために使用された構築物を図解により示す。
【図14】
図14は、293細胞における2つのルシフェラーゼレポーターアッセイ実験において獲得されたデータの平均を含む(「RLV」は、「相対的ルシフェラーゼ単位」である)。
【図15】
図15は、種々の正常組織におけるhNkd mRNAレベルを測定したPCR実験の結果を含む(この実験において、このデータを、β−グルコロニダーゼのレベルに対して正規化した)。
【図16】
図16は、ヒト結腸癌細胞株を含む種々のヒト細胞株におけるhNkd mRNAレベルを測定したリアルタイムPCR実験の結果を含む(この実験において、結果を、アクチンのレベルに対して正規化した)。
Claims (38)
- 単離された核酸分子であって、該核酸分子は、以下:
(a)配列番号7に記載の少なくともアミノ酸2〜460をコードする、ポリヌクレオチド;
(b)配列番号7に記載のアミノ酸1〜460をコードする、ポリヌクレオチド;
(c)配列番号7を有するヒトNkdポリペプチドの少なくともアミノ酸2〜460をコードする、ポリヌクレオチド;
(d)(a)または(b)のポリヌクレオチド相補体;あるいは
(e)(a)、(b)、(c)、または(d)のポリヌクレオチドに少なくとも90%同一なポリヌクレオチド、
からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む、
単離された核酸分子。 - 配列番号7の少なくともアミノ酸2〜460をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号7のアミノ酸1〜460をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域の少なくとも50個連続するヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域の少なくとも200個連続するヌクレオチドを含む、請求項5に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域の少なくとも500個連続するヌクレオチドを含む、請求項5に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域の少なくとも750個連続するヌクレオチドを含む、請求項5に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域を構成する1416ヌクレオチドを含む、請求項5に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域に少なくとも90%同一な核酸配列を含む、単離された核酸分子。
- 配列番号のコード領域に少なくとも95%同一な核酸配列を含む、請求項10に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号5のコード領域によってコードされるタンパク質に少なくとも95%同一なポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
- 単離された核酸分子であって、該核酸分子は、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を除いて、以下:
(a)配列番号7のアミノ酸2〜460;
(b)配列番号7のアミノ酸1〜460;
(c)配列番号7の非ヒト霊長類ホモログのアミノ酸2〜460;
(d)配列番号7の非ヒト霊長類ホモログのアミノ酸1〜460、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
単離された核酸分子。 - プロモーターに作動可能に連結された請求項1に記載の単離された核酸分子を含む、組み換えベクター。
- プロモーターに作動可能に連結された請求項5に記載の単離された核酸分子を含む、組み換えベクター。
- プロモーターに作動可能に連結された請求項12に記載の単離された核酸分子を含む、組み換えベクター。
- 請求項14に記載の組み換えベクターを含む、宿主細胞。
- 請求項15に記載の組み換えベクターを含む、宿主細胞。
- 請求項16に記載の組み換えベクターを含む、宿主細胞。
- ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、該ポリペプチドが発現する条件下で請求項17に記載の宿主細胞を培養する工程、および該ポリペプチドを回収する工程、を包含する、方法。
- ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、該ポリペプチドが発現する条件下で請求項18に記載の宿主細胞を培養する工程、および該ポリペプチドを回収する工程、を包含する、方法。
- ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、該ポリペプチドが発現する条件下で請求項19に記載の宿主細胞を培養する工程、および該ポリペプチドを回収する工程、を包含する、方法。
- 単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、以下:
(a)配列番号7のアミノ酸1〜460;
(b)配列番号7のアミノ酸2〜460;
(c)配列番号7を有するポリペプチドの非ヒト霊長類ホモログまたは該ホモログの少なくとも460個連続するアミノ酸を含む該ホモログの一部、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに少なくとも95%同一なアミノ酸を含む、単離されたポリペプチド。 - 単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を除いて、以下:
(a)配列番号7のアミノ酸1〜460;
(b)配列番号7のアミノ酸2〜460;
(c)配列番号7に対応するポリペプチドの非ヒト霊長類ホモログまたは該ホモログの少なくとも460個連続するアミノ酸を含む該ホモログの一部、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、
単離されたポリペプチド。 - 単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、以下:
(a)配列番号7のアミノ酸1〜460;
(b)配列番号7のアミノ酸2〜460;
(c)配列番号7を有するポリペプチドの全長非ヒト霊長類ホモログまたは該ホモログの少なくとも460個連続するアミノ酸を含む該ホモログの一部、
からなる群から選択されるアミノ酸を含む、
単離されたポリペプチド。 - hNkdに特異的に結合するが、マウスまたはDrosophilaのNkdに特異的に結合しない抗体の産生を誘発する、配列番号7のポリペプチドのフラグメント。
- 配列番号7の少なくとも50個連続するアミノ酸を含む、請求項26に記載のフラグメント。
- 配列番号7のヒトNkdポリペプチドまたはその非ヒト霊長類ホモログに特異的に結合するが、マウスまたはDrosophilaのNkdに認められ得る程度に結合しない、単離された抗体。
- モノクローナル抗体である、請求項28に記載の単離された抗体。
- ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、またはキメラモノクローナル抗体である、請求項29に記載の単離された抗体。
- 配列番号7のアミノ酸配列を有するタンパク質または該タンパク質の全長非ヒト霊長類ホモログおよびDishevelledタンパク質(Dsh)を含む、複合体。
- 配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質のフラグメントまたは該フラグメントの非ヒト霊長類ホモログのフラグメントおよびDishevelledタンパク質(Dsh)を含む、複合体。
- 前記フラグメントが、配列番号7に示されるポリペプチドのEFハンド領域を含む、請求項32に記載の複合体。
- 哺乳動物細胞のWntシグナル伝達を阻害する方法であって、該方法は、配列番号7に含まれるアミノ酸配列を有するタンパク質またはその全長非ヒト霊長類ホモログを投与する工程を包含する、方法。
- 請求項34に記載の方法であって、前記哺乳動物細胞は、配列番号7をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターで形質転換される、方法。
- 異常なWntシグナル伝達を含む癌を処置する方法であって、該方法は、配列番号7を有するポリペプチド、該ポリペプチドの非ヒト霊長類ホモログ、またはこれらのフラグメントの治療有効量を投与する工程を包含し、該フラグメントは、hNkdポリペプチドに特異的に結合する抗体の産生を誘発する配列番号7の少なくとも20個連続するアミノ酸を含む、方法。
- 請求項36に記載の方法であって、前記癌は、結腸癌、頭頸部癌、卵巣癌および乳癌からなる群から選択される、方法。
- 異常なWntシグナル伝達を潜在的に含む癌の型を診断する方法であって、該方法は、ヒト患者から得たヒト癌細胞が、配列番号5を有するコード配列と異なるコード配列を有するヒトNkd遺伝子を含むか否かを検出する工程を包含する、方法。
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