JP2005511044A - Thermusoshimai核酸ポリメラーゼ - Google Patents
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Abstract
本発明は、好熱性生物であるThermus oshimai由来の核酸ポリメラーゼ酵素についての核酸およびポリペプチドを提供する。本発明はまた、これらの核酸およびポリペプチドを使用するための方法を提供する。本発明の単離された核酸は、好ましい実施形態では、5−3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異を有する。本発明の単離された核酸は、好ましい実施形態では、ジデオキシヌクレオチド三リン酸に対する識別能を低下させる変異を有する。
Description
(発明の分野)
本発明は、好熱性細菌であるThermus oshimai由来の核酸ポリメラーゼ酵素に対する核酸およびポリペプチドに関する。
本発明は、好熱性細菌であるThermus oshimai由来の核酸ポリメラーゼ酵素に対する核酸およびポリペプチドに関する。
(発明の背景)
DNAポリメラーゼは、1つの核酸鎖を読み取り、その相補鎖を生成することによってDNAを複製するために細胞により使用される天然に存在する細胞内酵素である。DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は、核酸プライマーの伸長末端の3’ヒドロキシル基と新たに付加されるヌクレオチド三リン酸の5’リン酸基との間の結合の形成を触媒する。DNA合成に使用されるヌクレオチド三リン酸は、通常、デオキシアデノシン三リン酸(A)、デオキシチミジン三リン酸(T)、デオキシシトシン三リン酸(C)、およびデオキシグアノシン三リン酸(G)であるが、これらのヌクレオチドの改変または変更されたものもまた使用され得る。ヌクレオチドが付加される順番は、Aヌクレオチド塩基とTヌクレオチド塩基との間の水素結合形成およびGヌクレオチド塩基とCヌクレオチド塩基との間の水素結合形成によって指示される。
DNAポリメラーゼは、1つの核酸鎖を読み取り、その相補鎖を生成することによってDNAを複製するために細胞により使用される天然に存在する細胞内酵素である。DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は、核酸プライマーの伸長末端の3’ヒドロキシル基と新たに付加されるヌクレオチド三リン酸の5’リン酸基との間の結合の形成を触媒する。DNA合成に使用されるヌクレオチド三リン酸は、通常、デオキシアデノシン三リン酸(A)、デオキシチミジン三リン酸(T)、デオキシシトシン三リン酸(C)、およびデオキシグアノシン三リン酸(G)であるが、これらのヌクレオチドの改変または変更されたものもまた使用され得る。ヌクレオチドが付加される順番は、Aヌクレオチド塩基とTヌクレオチド塩基との間の水素結合形成およびGヌクレオチド塩基とCヌクレオチド塩基との間の水素結合形成によって指示される。
細菌細胞は、3つの型のDNAポリメラーゼ(ポリメラーゼI、II、およびIIIと呼ばれる)を含有する。DNAポリメラーゼIは、最も豊富なポリメラーゼであり、一般的に、特定の型のDNA修復(DNA複製の間の岡崎フラグメントの連結を可能にする修復様反応を含む)を担う。DNAポリメラーゼIは、UV照射および放射性模倣薬物(radiomimetic drug)により誘導されるDNA損傷の修復に必須である。DNAポリメラーゼIIは、SOS応答を誘導するDNA損傷を修復する上で役割を果たすと考えられている。DNAポリメラーゼIおよびIIIの両方を欠く変異体において、DNAポリメラーゼIIは、UVにより誘導される損傷を修復する。DNAポリメラーゼIおよびIIは、モノマーポリメラーゼであるが、一方、DNAポリメラーゼIIIは、複数のサブユニットの複合体である。
DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は、しばしば、cDNA合成およびDNA配列決定反応を含む種々の生化学的適用のためにインビトロで使用される。Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版,Cold Spring Harbor Laboratoty Press,2001)を参照のこと(本明細書中で参考として援用する)。DNAポリメラーゼはまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Mullisら,米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第4,800,159号(参考として援用する))およびRNA転写媒介増幅方法(例えば、Kacianら,PCT公開番号WO91/01384(参考として援用する))のような方法による核酸の増幅のためにも使用される。
DNA増幅は、DNAポリメラーゼ活性の使用を通じたプライマー伸長、それに続いて、別の回のプライマーアニーリングおよび伸長のための新たなテンプレートを提供するための、得られた二本鎖核酸の熱変性のサイクルを利用する。鎖の変性のために必要な高い温度は、多くのDNAポリメラーゼを不可逆的に不活性化するので、約37℃より高い温度で活性を維持できるDNAポリメラーゼの発見および使用は、費用効率および労働効率の面での利点を提供する。
耐熱性DNAポリメラーゼは、多くの好熱性生物(Thermus aquaticus、Thermus thermophilus、ならびにBacillus属内の種、Thermococcus属内の種、Sulfobus属内の種、およびPyrococcus属内の種を含む)において発見されている。Thermus aquaticus由来の全長の耐熱性DNAポリメラーゼ(Taq)は、Lawyerら、J.Biol.Chem.264:6427−6437(1989)およびGelfandら、米国特許第5,466,591号によって記載されている。さらに、短縮型のDNAポリメラーゼのクローニングおよび発現は、Lawyerら,PCR Methods and Applications,2:275−287(1993)、およびBarnes,PCT公開番号WO92/06188(1992)に記載されている。Sullivanは、EPO番号公開0482714A1(1992)において、変異型のTaq DNAポリメラーゼのクローニングを報告している。Thermus thermophilus由来のDNAポリメラーゼもまた、クローニングおよび発現されている。Asakuraら,J.Ferment.Bioeng.(Japan),74:265−269(1993)。しかし、熱に安定なDNAポリメラーゼが単離されている一方、熱に安定であるRNAポリメラーゼは、入手不可能である。さらに、この入手可能なDNAポリメラーゼの性質は、様々である。
従って、RNAおよびDNAの両方を合成し得、かつ改善された配列識別能、より良い耐塩性、種々の程度の耐熱性、標識ヌクレオチドまたはジデオキシヌクレオチドに対する改善された許容性および他の価値のある特性を有する、新規のポリメラーゼが必要である。
(発明の要旨)
本発明は、好熱性生物である、Thermus oshimaiから単離された核酸ポリメラーゼ酵素についての核酸およびポリペプチドを提供する。本発明の核酸をクローニングするために使用された株は、株CB1と名付けられた(Williams,R.A.D.,Smith,K.E.,Welch,S.G.およびMicallef、J.Thermus oshimai sp.nov.,Isolated from Hot Springs in Portugal,Iceland,and the Azores,and Comment on the Concept of a Limited Geographical Distrubution of Thermus Species International Journal of Systematic Bacteriology,(1996)46:403〜408)。
本発明は、好熱性生物である、Thermus oshimaiから単離された核酸ポリメラーゼ酵素についての核酸およびポリペプチドを提供する。本発明の核酸をクローニングするために使用された株は、株CB1と名付けられた(Williams,R.A.D.,Smith,K.E.,Welch,S.G.およびMicallef、J.Thermus oshimai sp.nov.,Isolated from Hot Springs in Portugal,Iceland,and the Azores,and Comment on the Concept of a Limited Geographical Distrubution of Thermus Species International Journal of Systematic Bacteriology,(1996)46:403〜408)。
1つの実施形態において、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4を含む単離された核酸および相補的な核酸を提供する。別の実施形態において、本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8との少なくとも93%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする単離された核酸を提供する。本発明はまた、これらの単離された核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現ベクターを含む、これらの単離された核酸を含むベクターを提供する。このような単離された核酸およびベクターを含む宿主細胞、特に、ポリペプチドが、DNAポリメラーゼ活性またはRNAポリメラーゼ活性を有する、核酸配列によってコードされる耐熱性ポリペプチドを発現することが可能な宿主細胞もまた、本発明によって提供される。
別の実施形態において、本発明は、5−3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を提供する。誘導体核酸ポリメラーゼの低下した5−3’エキソヌクレアーゼ活性とは、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較してである。
別の実施形態において、本発明は、ジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を提供する。この低下したジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能とは、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較してである。
本発明はまた、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28のアミノ酸配列を含み得る、単離されたポリペプチドを提供する。本発明により提供される単離されたポリペプチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28との少なくとも93%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得、それらは、例えば、タンパク質1mgあたり50,000Uとタンパク質1mgあたり500,000Uとの間のDNAポリメラーゼ活性またはRNAポリメラーゼ活性を有し得る。
別の実施形態において、本発明は、5−3’エキソヌクレーゼ活性を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼを提供する。この誘導体核酸ポリメラーゼの低下した5−3’エキソヌクレアーゼ活性とは、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較してである。
別の実施形態において、本発明は、ジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼを提供する。この低下したジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能とは、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較してである。
本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を含むポリペプチドと核酸とをこの核酸の重合を可能にするのに十分な条件下で接触させる工程を含む、核酸を合成する方法をさらに提供する。この核酸は、好ましくはDNAである。
本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を含むポリペプチドとRNAとを、RNAテンプレートからDNAの重合を可能にするのに十分な条件下で接触させる工程を含む、RNAテンプレートからDNAを合成する方法をさらに提供する。
本発明は、核酸と、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を有する耐熱性ポリペプチドとを、この核酸の増幅に適切な条件下で接触させる工程およびこの核酸を増複する工程を含む、核酸の熱サイクル増幅のための方法をさらに提供する。このような増幅は、例えば、逆転写反応、鎖置換増幅反応またはポリメラーゼ連鎖反応を含み得る。
本発明はまた、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を含むポリペプチドとDNAとを、DNAの重合を可能にするのに十分な条件下で接触させる工程を含む、DNAをプライマー伸長する方法を提供する。このようなプライマー伸長は、例えば、DNAを配列決定するためか、またはDNAを増幅するために実施され得る。
本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を含む核酸ポリメラーゼを作製する方法をさらに提供する。この方法は、RNAの転写および翻訳に対して十分な条件下でプロモーターに作動可能に連結された、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を含むポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞をインキュベートする工程を包含する。1つの実施形態において、この方法は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4を含む核酸を使用する。本発明はまた、この方法によって作製された核酸ポリメラーゼ酵素に関する。
本発明はまた、本発明の核酸ポリメラーゼ酵素を含む容器を備えるキットを提供する。このような核酸ポリメラーゼ酵素は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を含むアミノ酸配列を有し得る。このキットはまた、未標識ヌクレオチド、標識ヌクレオチド、ヌクレオチドのバランスのとれた混合物、鎖終結ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、緩衝溶液、マグネシウム含有溶液、クローニングベクター、制限エンドヌクレアーゼ、配列決定プライマー、逆転写酵素含有溶液、またはDNA増幅プライマーもしくはRNA増幅プライマーを含む容器を備え得る。このようなキットは、例えば、DNA配列決定反応、DNA増幅反応、逆転写反応またはプライマー伸長反応を実施するために適合され得る。
(発明の詳細な説明)
本発明は、好熱性生物由来の核酸ポリメラーゼ酵素をコードする核酸配列およびアミノ酸配列に関する。特に、本発明は、Thermus oshimai(例えば、Thermus oshimai、株CB1)由来の核酸ポリメラーゼ酵素を提供する。本発明のThermus oshimaiポリメラーゼポリペプチドは、種々の手順(DNA合成手順、DNAプライマー伸長手順、逆転写手順、DNA配列決定手順およびDNA増幅手順を含む)において使用され得る。
本発明は、好熱性生物由来の核酸ポリメラーゼ酵素をコードする核酸配列およびアミノ酸配列に関する。特に、本発明は、Thermus oshimai(例えば、Thermus oshimai、株CB1)由来の核酸ポリメラーゼ酵素を提供する。本発明のThermus oshimaiポリメラーゼポリペプチドは、種々の手順(DNA合成手順、DNAプライマー伸長手順、逆転写手順、DNA配列決定手順およびDNA増幅手順を含む)において使用され得る。
(定義)
用語「アミノ酸配列」は、ペプチド分子、ポリペプチド分子、またはタンパク質分子における、アミノ酸の位置的配置および正体(identity)をいう。用語「アミノ酸配列」の使用は、そのアミノ酸配列を、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の完全なネイティブのアミノ酸配列に限定することを意味しない。
用語「アミノ酸配列」は、ペプチド分子、ポリペプチド分子、またはタンパク質分子における、アミノ酸の位置的配置および正体(identity)をいう。用語「アミノ酸配列」の使用は、そのアミノ酸配列を、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の完全なネイティブのアミノ酸配列に限定することを意味しない。
「キメラ」は、DNA配列(例えば、ベクターまたは遺伝子)が、異なる起源の1つより多いDNA配列で構成されており、このDNA配列は、組換えDNA技術によって別のDNA配列に融合されて、天然には存在しない、より長いDNA配列を生成していることを示すために使用される。
用語「コード領域」は、目的のタンパク質をコードする核酸セグメントをいう。タンパク質のコード領域は、5’側が開始メチオニンをコードするヌクレオチドトリプレット「ATG」に、そして3’側が停止コドンを特定する3つのトリプレット(すなわち、TAA、TAG、TGA)のうちの1つに結合されている。
「構成性発現」は、構成性プロモーターを用いる発現をいう。
「構成性プロモーター」は、細胞の生活環の全てまたはほぼ全ての相においてそれが制御する遺伝子を発現し得るプロモーターをいう。
「相補的」または「相補性」は、核酸間の塩基対合またはハイブリダイゼーションの程度を規定するために使用される。例えば、当業者に公知のように、アデニン(A)は、チミン(T)と水素結合または塩基対を形成し得、そしてグアニン(G)はシトシン(C)と水素結合または塩基対を形成し得る。従って、AはTと相補的であり、一方、GはCと相補的である。相補性は、二本鎖核酸における全ての塩基が塩基対合する場合、完全であり得る。あるいは、相補性は、核酸中の塩基のいくつかだけが塩基対合の法則に従って一致する場合、「部分的」であり得る。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対する影響を有する。
参照核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチド、または参照ペプチドの「誘導体」は、それぞれの参照核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチド、または参照ペプチドと関連するが異なる配列または化学構造を有する、それぞれ、核酸、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである。誘導体核酸、誘導体タンパク質、誘導体ポリペプチド、または誘導体ペプチドは、一般的に、参照核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチド、または参照ペプチドに存在しないかまたはわずかにしか存在しないいくつかの化学的特性、物理的特性、または機能的特性を増強または組み込む目的で作製される。誘導体核酸は、一般的に、参照核酸とヌクレオチド配列が異なり得、一方、誘導体タンパク質、誘導体ポリペプチド、または誘導体ペプチドは、それぞれ、参照タンパク質、参照ポリペプチド、または参照ペプチドと、アミノ酸配列が異なり得る。このような配列の相違は、1つ以上の置換、挿入、付加、欠失、融合、および短縮であり得、これらは任意の組合せで存在し得る。相違は、わずか(例えば、1つのヌクレオチドまたはアミノ酸の相違)であり得るし、またはより実質的であり得る。しかし、誘導体の配列は、当業者が、その誘導体とその参照とが構造および/または機能において関連することを認識しないほどには参照と異ならない。一般的に、相違は、その参照およびその誘導体が、全体的に緊密に類似し、そして多くの領域において同一であるように制限される。「改変体」は、参照核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチド、または参照ペプチドの化学的特性、物理的特性、または機能的特性を有意に変更しないサイレントな構造上の相違を有し得るという点で、「誘導体」核酸、「誘導体」タンパク質、「誘導体」ポリペプチド、または「誘導体」ペプチドと異なる。対称的に、参照と誘導体との間の核酸、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの相違は、参照核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチド、または参照ペプチドの1つ以上の化学的特性、物理的特性、または機能的特性を改善するために行われた意図的な変化である。
用語「DNAポリメラーゼ活性」、「合成活性」、および「ポリメラーゼ活性」は、交換可能に使用され、そして酵素がデオキシヌクレオシド三リン酸の組み込みにより新たなDNA鎖を合成する能力をいう。テンプレート依存様式でデオキシヌクレオシド三リン酸の組み込みによる新たなDNA鎖の合成を指示し得るタンパク質は、「DNA合成活性が可能」であるといわれる。
用語「5’エキソヌクレアーゼ活性」は、タンパク質における、核酸の5’末端からヌクレオチドを除去し得る活性の存在をいう。
用語「3’エキソヌクレアーゼ活性」は、タンパク質における、核酸の3’末端からヌクレオチドを除去し得る活性の存在をいう。
「発現」は、生物における内因性または外因性の遺伝子の転写および/または翻訳をいう。発現は、一般的に、mRNAの転写および安定な蓄積をいう。発現はまた、タンパク質の生成をいい得る。
「発現カセット」は、特定のヌクレオチド配列の発現を指示し得る核酸配列を意味する。発現カセットは、一般的に、終止シグナルに作動可能に連結された、発現されるべきヌクレオチド配列(例えば、コード領域)に作動可能に連結されたプロモーターを含む。発現カセットはまた、代表的に、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要とされる配列を含む。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであり得、これは、その構成要素の少なくとも1つがその他の構成要素の少なくとも1つに対して異種であることを意味する。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成性プロモーターの制御下、または宿主細胞がいくつかの特定の外部刺激に曝された場合にのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあり得る。多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織もしくは器官または発達段階に特異的であり得る。
用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連する核酸の任意のセグメントをいうために広い意味で使用される。用語「遺伝子」は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、または構造RNAのコード領域を包含する。用語「遺伝子」はまた、コード領域のいずれかの末端から約2kbまでの距離の配列を含む。これらの配列は、「隣接」配列または「隣接」領域といわれる(これらの隣接配列は、mRNA転写産物に存在する非翻訳領域の5’側または3’側に位置する)。5’隣接領域は、調節配列(例えば、プロモーターおよびエンハンサー)またはその遺伝子の転写を制御するかもしくはその転写に影響を及ぼすタンパク質に対する他の認識配列もしくは結合配列を含み得る。3’隣接領域は、転写の終結を指示する配列、転写後切断を指示する配列、およびポリアデニル化を指示する配列、ならびに他のタンパク質に対する認識配列を含み得る。遺伝子にコードされるタンパク質あるいはポリペプチドは、全長であるか、または全ての活性もしくは機能的特性が保持されるような、または全長タンパク質または全長ポリペプチドの選択された活性(例えば、酵素活性、リガンド結合、またはシグナル伝達)のみが保持されるような、その任意の部分であり得る。タンパク質またはポリペプチドは、プロタンパク質または前駆ポリペプチドの生成に必要な任意の配列を含み得る。用語「ネイティブ遺伝子」は、非形質転換細胞のゲノムに天然に存在する遺伝子をいう。
「ゲノム」は、生物中に天然に存在し、かつある世代から次の世代へと伝えられる、完全な遺伝物質のことをいう。
用語「異種核酸」または「外来性核酸」は、特定の宿主細胞に対して外来の供給源を起源とする核酸をいうか、または、同じ供給源由来である場合は、その元の形態から改変されている核酸をいう。従って、宿主細胞中の異種遺伝子は、特定の宿主細胞に対して内来性であるが、例えば、DNAシャッフリングの使用を介して改変されている遺伝子を含む。この用語はまた、天然に存在する核酸の天然に存在しない複数のコピーも含む。従って、この用語は、この細胞に対して外来性もしくは異種であるか、またはその細胞内で通常に見出されるが、この細胞もしくはゲノム内の通常では見出されない位置にある、核酸セグメントをいう。
用語「相同性」は、核酸と参照核酸との間、またはポリペプチドと参照ポリペプチドとの間の類似性の程度をいう。相同性は部分的であり得るかまたは完全であり得る。完全な相同性とは、核酸配列またはアミノ酸配列が同一であることを示す。部分的に相同な核酸配列またはアミノ酸配列は、参照核酸配列または参照アミノ酸配列に対して同一ではない配列である。従って、部分的に相同な核酸は、その配列中に、比較される核酸に対するヌクレオチドの相違を1つ以上有する。相同性の程度は、配列比較によって決定され得る。あるいは、当業者によって充分理解されるように、種々のハイブリダイゼージョン条件下でのDNA−DNAハイブリダイゼージョンまたはDNA−RNAハイブリダイゼージョンは、核酸間の相同性の程度の推定を提供し得る(例えば、HainesおよびHiggins(編)、Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,Oxford,U.K.を参照のこと)。
「ハイブリダイゼージョン」とは、相補的な核酸鎖上のヌクレオチド塩基間に水素結合を形成することによって、相補的な核酸鎖をアニーリングするプロセスのことをいう。ハイブリダイゼージョン、および核酸間の会合の強度は、ハイブリダイズしている核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比のような因子によって影響される。
「誘導性プロモーター」とは、外部刺激(例えば、化学物質、光、ホルモン、ストレス、温度または病原体)によって、1種以上の細胞型において始動(turn on)され得る、調節されるプロモーターのことをいう。
「開始部位」は、転写配列の一部である第1ヌクレオチドの位置(これは、+1位として定義される)を取り囲む領域である。遺伝子の全てのヌクレオチド位置は、転写配列の第1ヌクレオチド(これは、開始部位内に存在する)を参照することによって番号付けされる。下流配列(すなわち、3’方向の配列)は、ポジティブと呼ばれ、一方、上流配列(すなわち、5’方向の配列)は、ネガティブと呼ばれる。
「単離された」もしくは「精製された」核酸または「単離された」もしくは「精製された」ポリペプチドは、ヒトの手によって、そのネイティブな環境とは離されて存在し、よって天然の産物ではない、核酸またはポリペプチドである。単離された核酸またはポリペプチドは、精製された形態で存在し得るか、または、例えば、トランスジェニック宿主細胞内のような、ネイティブではない環境中に存在し得る。
用語「インベーダーオリゴヌクレオチド」とは、プローブオリゴヌクレオチドの5’末端に位置する配列と実質的に同一である配列をその3’末端に含むオリゴヌクレオチドをいう。これらの領域は、相補的な標的核酸に沿った同一のセグメントへのハイブリダイゼーションについて競合する。
用語「標識」は、検出可能な(好ましくは定量可能な)シグナルを提供するために使用され得、そして核酸またはタンパク質に結合し得る、任意の原子または分子をいう。標識は、蛍光、放射能、比色定量、重量測定、X線回折またはX線吸収、磁性、酵素活性などによって検出可能なシグナルを提供し得る。
用語「核酸」は、糖、リン酸塩および塩基(プリンまたはピリミジンのいずれか)を含むモノマー(ヌクレオチド)から構成される、一本鎖または二本鎖形態のいずれかである、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーをいう。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、そして天然に存在するヌクレオチドと類似の様式で代謝される、天然のヌクレオチドの既知のアナログを含む核酸を包含する。他に示されない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に改変されたその改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列ならびに明白に示される参照配列も暗黙のうちに包含する。
用語「オリゴヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合、2つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、好ましくは、3つより多く、そして通常は、10個または15個より多いデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから構成される分子として定義される。オリゴヌクレオチドのサイズには、正確な上限はない。しかし、一般的に、オリゴヌクレオチドは、約250ヌクレオチドよりも短く、好ましくは、約200ヌクレオチドよりも短く、より好ましくは、約100ヌクレオチドよりも短い。正確なサイズは、多くの因子に依存し、この因子は、続いて、オリゴヌクレオチドの最終的な機能または用途に依存する。このオリゴヌクレオチドは、任意の様式(化学合成、DNA複製、逆転写またはこれらの組み合わせを含む)で作製され得る。
用語「オープンリーディングフレーム」および「ORF」は、コード配列の翻訳開始コドンと翻訳終止コドンとの間でコードされたアミノ酸配列をいう。用語「開始コドン」および「終止コドン」は、それぞれ、タンパク質合成(mRNA翻訳)の開始および鎖の終止を特定するコード配列中の3つの隣接するヌクレオチドの単位(「コドン」)をいう。
「作動可能に連結される」とは、同じ核酸分子の一部として結合され、その結果その一方の機能が他方によって影響されることを意味する。一般的に、「作動可能に連結される」とはまた、2つ以上の核酸が適切に配置されて配向され、その結果それらが共に機能し得ることも意味する。核酸は、しばしば、作動可能に連結されて、コード領域の転写がプロモーターから始められることを可能にする。例えば、調節配列は、調節配列がコード領域の発現に影響を及ぼすような状況(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)に2つの配列がある場合に、RNAまたはポリペプチドをコードするDNA配列に「作動可能に連結される」または「関連する」といわれる。コード領域は、センスな配向またはアンチセンスな配向で、調節配列に作動可能に連結され得る。
用語「プローブオリゴヌクレオチド」は、標的核酸と相互作用して、インベーダーオリゴヌクレオチドの存在下または非存在下において切断構造を形成する、オリゴヌクレオチドをいう。標的核酸にアニーリングする場合、このプローブオリゴヌクレオチドおよび標的は、切断構造を形成し、そしてプローブオリゴヌクレオチド内で切断が生じる。このプローブオリゴヌクレオチド上流のインベーダーオリゴヌクレオチドの存在は、(インベーダーの非存在下での切断部位に対して)プローブオリゴヌクレオチド内の切断部位をシフトし得る。
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼに対する認識部位および適切な転写に必要とされる他の因子を提供することによってコード領域の発現を制御する、(通常、コード領域に対して上流(5’側)の)ヌクレオチド配列をいう。「プロモーター」としては、最小のプロモーター(これは、TATAボックスから構成される短いDNAセグメントである)が挙げられるが、これに限定されない。従って、プロモーターは、転写開始部位を特定して、そして発現を制御または調節するように作用する他の配列(例えば、エンハンサー)を含む。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激し得るDNAのセグメントであり、そしてプロモーターの先天的エレメントまたはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を増強するために挿入された異種エレメントであり得る。エンハンサーは、両方向(順方向または逆方向)に作動し得、そしてプロモーターから上流または下流のいずれかに移動した場合にさえ、機能し得る。プロモーターは、ネイティブの遺伝子からその全体を誘導され得るか、または天然に見出される異なるプロモーター由来の異なるエレメントから構成され得るか、または合成DNAセグメントからも構成され得る。プロモーターはまた、生理学的状態または発達状態に応答して転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNAセグメントも含み得る。
用語「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、本明細書中で交換可能に使用される。
「調節配列」および「調節エレメント」は、核酸配列の発現のいくつかの局面を制御するヌクレオチド配列をいう。このような配列またはエレメントは、コード配列の上流(5’側非コード配列)、コード配列内、またはコード配列の下流(3’側非コード配列)に配置され得る。「調節配列」および「調節エレメント」は、転写、RNAプロセシングもしくはRNA安定性、または関連するコード配列の翻訳に影響を及ぼす。調節配列としては、エンハンサー、イントロン、プロモーター、ポリアデニル化シグナル配列、スプライシングシグナル、終止シグナル、および翻訳リーダー配列が挙げられる。調節配列はまた、天然の配列および合成配列を含む。
本明細書中で使用される場合、用語「選択マーカー」は、その遺伝子を有する生物中で発現されそして検出され得る、観察可能な形質または選択可能な形質をコードする遺伝子をいう。選択マーカーは、しばしば、目的の核酸の存在を追跡または選択するために、観察可能な形質をコードしないかもしれない、目的の核酸に連結される。当業者に公知の任意の選択マーカーが本発明の核酸とともに使用され得る。いくつかの選択マーカーは、マーカーを有さなければ宿主が死ぬ状況下で、宿主が生存することを可能にする。選択マーカーの例としては、抗生物質耐性(例えば、テトラサイクリン耐性またはアンシピリン耐性)が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェンシー」は、核酸ハイブリダイゼージョンが行なわれる、温度、イオン強度および有機溶媒のような他の化合物の存在の条件を定義するために使用される。「高ストリンジェンシー」条件では、核酸塩基対合は、高い頻度の相補塩基配列を有する核酸間のみで生じる。「弱い」または「低い」ストリンジェンシー条件では、核酸の相補配列の頻度は通常より低く、その結果、異なる配列を有する核酸が検出および/または単離され得る。
用語「実質的に類似」および「実質的に相同」は、本発明の配列の機能的等価物を示す、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をいう。例えば、遺伝暗号の縮重を単に反映するがそれにもかかわらず本発明のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードする、変更されたヌクレオチド配列は、本発明の配列と実質的に類似である。さらに、本発明の配列と実質的に類似のアミノ酸配列は、アミノ酸全体の同一性が活性で熱的に安定な核酸ポリメラーゼを提供するのに十分であるアミノ酸配列である。例えば、本発明の配列と実質的に類似のアミノ酸配列は、アミノ酸全体の同一性が、本発明のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは90%以上(例えば、91%、92%、93%または94%)、およびより好ましくは95%以上(例えば、96%、97%、98%、または99%)である配列である。
「終結剤」、「終結ヌクレオチド」または「ターミネーター」は、DNA合成またはDNA配列決定と関連して、特定の塩基におけるDNA配列決定反応を特異的に終結し得る化合物のことをいい、このような化合物としては、2’,3’ジデオキシ構造を有するジデオキシヌクレオシド(例えば、ddATP、ddCTP、ddGTPおよびddTTP)が挙げられるが、これらに限定されない。
「耐熱性の」とは、核酸ポリメラーゼが、約37℃より高い温度で活性を維持することを意味する。好ましくは、本発明の核酸ポリメラーゼは、約42℃より高い温度で活性を維持する。より好ましくは、本発明の核酸ポリメラーゼは、約50℃より高い温度で活性を維持する。なおより好ましくは、本発明の核酸ポリメラーゼは、約60℃より高い温度に曝された後に活性を維持する。最も好ましくは、本発明の核酸ポリメラーゼは、約70℃より高い温度への曝露にもかかわらず活性を維持する。
「導入遺伝子」は、形質転換によってゲノム中に導入されており、安定に維持される、遺伝子をいう。導入遺伝子としては、例えば、形質転換される特定の生物の遺伝子に対して非相同であるかまたは相同であるかのいずれかの遺伝子が挙げられ得る。さらに、導入遺伝子は、非ネイティブの生物中に挿入されるネイティブな遺伝子、またはキメラ遺伝子を含み得る。用語「内因性遺伝子」は、生物のゲノム中の天然の位置にあるネイティブな遺伝子をいう。「外来性」遺伝子または「外因性」遺伝子とは、宿主生物中で正常に見出されないが、遺伝子移入によって導入される遺伝子をいう。
用語「形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝を生じる、宿主細胞のゲノム中への核酸フラグメントの移入をいう。形質転換された核酸フラグメントを含む宿主細胞は、「トランスジェニック」細胞と呼ばれ、そしてトランスジェニック細胞を含む生物は、「トランスジェニック生物」と呼ばれる。形質転換は、当該分野で公知の種々の手段によって達成され得、この手段としては、カルシウムDNA共沈、エレクトロポレーション、ウイルス感染などが挙げられる。
参照核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチドまたは参照ペプチドの「改変体」は、それぞれの参照核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチドまたは参照ペプチドと関連するが異なる配列を有する、それぞれ、核酸、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドである。改変体と参照との間の核酸、参照タンパク質、参照ポリペプチドまたは参照ペプチドの相違は、サイレントな相違または保存的な相違である。改変体核酸は、参照核酸とはヌクレオチド配列が異なり、一方、改変体核酸、改変体タンパク質、改変体ポリペプチドまたは改変体ペプチドは、それぞれ、参照タンパク質、参照ポリペプチド、または参照ペプチドとアミノ酸配列が異なる。改変体および参照の核酸、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、1つ以上の置換、挿入、付加、欠失、融合および短縮(これらは、任意の組み合わせで存在し得る)によって配列が異なり得る。相違は、わずか(例えば、1つのヌクレオチドまたはアミノ酸の相違)であり得るかまたはより実質的であり得る。しかし、この改変体の構造および機能は当業者が、改変体および参照が構造および/または機能において関連していることを認識しないほどには参照と異ならない。一般的には、相違は参照および改変体が、全体的に緊密に類似しており、多くの領域で同一であるように制限される。
用語「ベクター」は、別の核酸セグメントを細胞中に移入し得る核酸をいうために使用される。「ベクター」としては、とりわけ、自己伝播性または動員性であってもそうでなくてもよい、二本鎖または一本鎖、線形または環状形態の、任意のプラスミド、コスミド、ファージまたは核酸が挙げられる。ベクターは、細胞ゲノム中に組みこむことによってかまたは染色体外に存在する(例えば、複製起点を有する自律複製プラスミド)ことによって、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞を形質転換し得る。細菌系に使用されるベクターは、しばしば、ベクターを細菌染色体とは独立して複製させることが可能な複製起点を含む。用語「発現ベクター」は、発現カセットを含むベクターをいう。
用語「野生型」とは、天然に存在する供給源から単離される場合の遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する、遺伝子または遺伝子産物をいう。野生型遺伝子は、集団中で最も頻繁に観察される遺伝子形態であり、従って、任意に、遺伝子の「正常」形態または「野生型」形態と呼ばれる。対照的に、用語「改変体」または「誘導体」とは、野生型遺伝子または野生型遺伝子産物と比較した場合に、配列および/または機能的特性における改変(すなわち、変更された特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物のことをいう。天然に存在する誘導体は、単離され得る。これらは、野生型遺伝子または野生型遺伝子産物と比較した場合にそれらが変更された特徴を有するという事実によって同定される。
(本発明のポリメラーゼをコードする核酸)
本発明は、Thermus oshimai核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸、ならびに活性で熱的に安定な核酸ポリメラーゼをコードする、その誘導体、フラグメントおよび改変体の核酸を提供する。従って、本発明の1つの局面は、Thermus oshimai 株CB1由来の核酸ポリメラーゼに関する。配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列(これらは、Thermus oshimai野生型およびいくつかの誘導体ポリメラーゼについてのアミノ酸配列である)をコードする任意の核酸もまた、本発明によって企図される。
本発明は、Thermus oshimai核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸、ならびに活性で熱的に安定な核酸ポリメラーゼをコードする、その誘導体、フラグメントおよび改変体の核酸を提供する。従って、本発明の1つの局面は、Thermus oshimai 株CB1由来の核酸ポリメラーゼに関する。配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列(これらは、Thermus oshimai野生型およびいくつかの誘導体ポリメラーゼについてのアミノ酸配列である)をコードする任意の核酸もまた、本発明によって企図される。
1つの実施形態において、本発明は、配列番号1の核酸(核酸ポリメラーゼ酵素をコードする野生型Thermus oshimai核酸)を提供する:
本発明の核酸は、Thermus aquaticusおよびThermus thermophilus由来のDNAポリメラーゼをコードする核酸の部分に対して相同性を有する。しかし、本発明の核酸配列のかなりの部分は、異なっている。
本発明はまた、配列番号1〜4のフラグメント核酸および改変体核酸を包含する。本発明によって包含される核酸「フラグメント」は、2つの一般的な型のものである。第1の、全長DNAポリメラーゼをコードしないが、DNAポリメラーゼ活性を有する熱安定性ポリペプチドをコードするフラグメント核酸は、本発明に包含される。第2の、ハイブリダイゼーションプローブとして有用であるが生物学的活性を維持するポリメラーゼを一般にコードしないフラグメント核酸もまた、本発明に包含される。従って、配列番号1〜4のようなヌクレオチド配列のフラグメントは、約9ヌクレオチド、約12ヌクレオチド、約15ヌクレオチド、約17ヌクレオチド、約18ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチド以上の程度の小ささであり得る。一般に、本発明のフラグメント核酸は、本発明の核酸に配列が関連するが全長ではない限り、任意のサイズ上限を有し得る。
上に示されたように、「改変体」は、実質的に類似であるかまたは実質的に相同な配列である。ヌクレオチド配列について、改変体としては、遺伝暗号の縮重に起因して、ネイティブなDNAポリメラーゼIタンパク質の同一のアミノ酸配列をコードする配列が挙げられる。改変体核酸としてはまた、ネイティブなDNAポリメラーゼIタンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有さないが、アミノ酸配列中に保存的変化を有する、活性な、熱的に安定なDNAポリメラーゼIをコードするポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。
当業者に公知であるように、遺伝暗号は「縮重」し、これは、いくつかのトリヌクレオチドコドンが同じアミノ酸をコードし得ることを意味する。この縮重性は、表1から明らかである。従って、改変体のヌクレオチド配列における多くの変化はサイレントであり得、そしてその核酸によってコードされるアミノ酸配列を変更させないかもしれない。核酸配列の変更がサイレントである場合、改変体核酸は、参照核酸と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。従って、本発明の特定の核酸配列はまた、縮重したコドン置換を有する改変体およびその相補配列、ならびに配列番号によって明白に特定される配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換は、参照コドンがその参照コドンによって特定されるアミノ酸に対するコドンのいずれかによって置換されている配列を生成することによって、達成され得る。
しかし、本発明は、本発明のヌクレオチド配列におけるサイレントな変化に限定されないが、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を保存的に変更する改変体核酸配列もまた含む。本発明に従って、本発明の改変体核酸および参照核酸は、コードされるアミノ酸配列が、1つ以上の置換、付加、挿入、欠失、融合および短縮によって異なり得、これらは、活性な、熱的に安定な核酸ポリメラーゼが改変体核酸によってコードされる限り、任意の組み合わせで存在し得る。このような改変体核酸は、参照核酸と正確に同じアミノ酸配列をコードするわけではないが、保存的配列変化を有する。
サイレントな保存的な変化を有する改変体核酸は、参照核酸に対する相同性の程度によって定義および特徴付けされ得る。好ましい改変体核酸は、本発明の参照核酸に対して「実質的に相同」である。当業者によって認識されるように、このような実質的に類似の核酸は、ストリンジェントな条件下で、本明細書中の配列番号によって同定される参照核酸とハイブリダイズし得る。これらの型の実質的に相同な核酸は、本発明によって包含される。
一般に、本発明の核酸の誘導体および改変体は、本明細書中で定義される参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、または94%の配列同一性を有する。好ましくは、本発明の核酸は、本明細書中で定義される参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。
改変体核酸は、標準的なハイブリダイゼーション手順によって、検出および単離され得る。
このような配列を検出または単離するためのハイブリダイゼーションは、一般に、ストリンジェントな条件下で実施される。核酸ハイブリダイゼーション実験(例えば、サザンハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーション)の文脈における、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、そして異なる環境パラメータの下で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの広範な指針は、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,1頁、第2章、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」Elsevier,New York(1993)に見出される。J.Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.,9.31−9.58頁(1989);J.Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.(第3版、2001)もまた参照のこと。
本発明はまた、核酸ポリメラーゼ活性をコードする誘導体核酸または改変体核酸の、検出および単離のための方法を提供する。この方法は、配列番号1、2、3または4を含む核酸の少なくとも一部を、サンプル核酸にハイブリダイズさせ、これによって、ハイブリダイゼーション複合体を形成する工程;およびハイブリダイゼーション複合体を検出する工程を含む。この複合体の存在は、核酸ポリメラーゼの少なくともセグメントをコードする誘導体核酸または改変体核酸の存在に相関する。一般に、ハイブリダイゼーションのために使用される、配列番号1、2、3または4を含む核酸の部分は、少なくとも15ヌクレオチドであり、そしてハイブリダイゼーションは、実質的に相同な核酸の検出および単離を可能にするのに十分なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下においてである。代替の実施形態において、核酸サンプルは、配列番号1、2、3または4から選択されるプライマーオリゴヌクレオチドを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される。
一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は、規定のイオン強度およびpHにおいて、特定の二本鎖配列についての熱融解点(Tm)より約5℃より低いように選択される。例えば、「高度にストリンジェントな条件」下または「高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」下において、核酸は、他の配列より検出可能に大きい程度で(例えば、バックグラウンドを少なくとも2倍超えて)、その相補体とハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄の条件のストリンジェンシーを制御することによって、100%相補的な核酸が同定され得る。
あるいは、ストリンジェンシー条件は、配列におけるいくらかのミスマッチを許容し、その結果、より低い程度の類似性が検出されるように調節され得る(異種プロービング)。代表的に、ストリンジェントな条件とは、pH7.0〜8.3で、塩濃度が約1.5M未満のNaイオン、代表的には、約0.01〜1.0MのNaイオン(または他の塩)の濃度であり、そして温度が短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃で、そして長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを超える)については少なくとも約60℃の条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって、達成され得る。
例示的な低ストリンジェンシーの条件としては、30〜35%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液を用いた37℃でのハイブリダイゼーション、ならびに1×〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaClおよび0.3Mクエン酸三ナトリウム)中50〜55℃での洗浄が挙げられる。例示的な中程度にストリンジェンシーの条件としては、40〜45%のホルムアミド、1.0MのNaCl、1%のSDS中37℃でのハイブリダイゼーション、ならびに0.5×〜1×SSC中55〜60℃での洗浄が挙げられる。例示的な高ストリンジェンシーの条件としては、50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS中37℃でのハイブリダイゼーション、ならびに0.1×SSC中60〜65℃での洗浄が挙げられる。
ハイブリダイゼーションの間に得られるハイブリッドの相補性または相同性の程度は、代表的に、ハイブリダイゼーション後の洗浄と相関関係にあり、重要な要因は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。ハイブリダイズする核酸の型および長さもまた、ハイブリダイゼーションが起こるか否か、ならびに形成される任意のハイブリッドが所定のセットのハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件下で安定であるか否かに、影響を与える。DNA−DNAハイブリッドについて、Tmは、MeinkothおよびWahl Anal.Biochem.138:267−284(1984)の方程式から近似され得る;Tm81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L;ここで、Mは、一価陽イオンのモル濃度であり、%GCは、DNAにおけるグアノシンヌクレオチドおよびシトシンヌクレオチドの百分率であり、%formは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの百分率であり、そしてLは、ハイブリッドの塩基対長一致である。Tmは、(定義されたイオン強度およびpHで)完全に整合したプローブに50%の相補的標的配列がハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブについてのTmに等しいように選択される。
100を超える相補的残基を有する相補的核酸の、サザンブロットまたはノーザンブロットにおけるフィルタ上での、ハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃で、1mgのヘパリンを含む50%ホルムアミドであり、このハイブリダイゼーションは、一晩行われる。高度にストリンジェントな条件の例は、72℃で約15分間0.15M NaClである。ストリンジェントな洗浄条件の例は、65℃で15分間、0.2×SSCでの洗浄である(Sambrook(後出)をまた参照のこと)。しばしば、高ストリンジェンシーの洗浄の前に、バックグラウンドプローブシグナルを除去するために、低ストリンジェンシーの洗浄が行われる。例えば、100ヌクレオチドを超える二重鎖についての中程度のストリンジェンシーの例は、45℃で15分間、1×SSCである。例えば、100ヌクレオチドを超える二重鎖についての例示的な低ストリンジェンシーの洗浄の例は、40℃で15分間、4〜6×SSCである。短いプローブ(例えば、約10〜50ヌクレオチド)については、ストリンジェントな条件としては、代表的に、pH7.0〜8.3において、約1.0M未満のNaイオンの塩濃度、代表的に、約0.01〜1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)が挙げられ、その温度は、代表的に、少なくとも約30℃である。
ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおける無関係のプローブについて観察されるシグナル対ノイズ比の2倍の(またはそれより高い)シグナル対ノイズ比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。ストリンジェントな条件下では互いにハイブリダイズしない核酸は、これらがコードするタンパク質が実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。これは例えば、核酸のコピーが、遺伝暗号によって許容される最大コドン縮重を使用して作製される場合に起こる。
以下は、本発明の参照核酸と実質的に同一な相同核酸を検出および単離するために使用され得る、ハイブリダイゼーション/洗浄条件のセットの例である:参照ヌクレオチド配列は、好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で、50℃で参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズし、2×SSC、0.1% SDS中で、50℃で洗浄され、より望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で、50℃でハイブリダイズし、1×SSC、0.1% SDS中で、50℃で洗浄され、より望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で、50℃でなおもハイブリダイズし、0.5×SSC、0.1% SDS中で、50℃で洗浄され、好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で、50℃でハイブリダイズし、0.1×SSC、0.1% SDS中で、50℃で洗浄され、より好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で、50℃でハイブリダイズし、0.1×SSC、0.1% SDS中で、65℃で洗浄される。
一般に、Tmは、1%のミスマッチごとに約1℃低下する。従って、Tm、ハイブリダイゼーション条件、および/または洗浄条件は、所望の配列同一性の配列にハイブリダイズするように調整され得る。例えば、90%を超える同一性を有する配列が求められる場合、Tmは、10℃低下され得る。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにおいて、特定の配列およびその相補体についての熱融解点(Tm)より約5℃低く選択される。しかし、非常にストリンジェントな条件は、熱融解点(Tm)より1℃、2℃、3℃、または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得る;中程度にストリンジェントな条件は、熱融解点(Tm)より6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得る;低ストリンジェンシーの条件は、熱融解点(Tm)より11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、または20℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得る。
所望の程度のミスマッチが、45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)未満のTmを生じる場合、より高い温度が使用され得るように、SSC濃度を上昇させることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションについての広範な指針は、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part 1,第2章(Elsevier,New York);およびAusubelら編(1995)Current Protocols in Molecular Biology,第2章(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York)に見出される。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)を参照のこと。Tm、ミスマッチ、ならびにハイブリダイゼーション条件および洗浄条件の間の関係について、これらの参考文献および本明細書の教示を使用して、当業者は、本発明の核酸の改変体を作製し得る。
コンピュータ分析をまた配列の比較のために利用して、配列同一性を決定し得る。このような分析としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:PC/GeneプログラムにおけるCLUSTAL(Intelligenetics,Mountain View,Californiaから入手可能);Wisconsin Genetics Software Package,バージョン8におけるALIGNプログラム(バージョン2.0)およびGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA(Genetics Computer Group(GCG)、575 Science Drive,Madison,Wisconsin,USAから入手可能)。これらのプログラムを使用するアライメントは、デフォルトパラメータを使用して実施され得る。CLUSTALプログラムは、Higginsら.Gene 73:237 244(1988);Higginsら、CABIOS 5:151−153(1989);Corpetら.Nucleic Acids Res.16:10881−90(1988);Huangら.CABIOS 8:155−65(1992);およびPearsonら.Meth.Mol.Biol.24:307−331(1994)によって、十分に記載されている。ALIGNプログラムは、MyersおよびMiller(前出)のアルゴリズムに基づく。Altschulら、J.Mol.Biol.215:403(1990)のBLASTプログラムは、KarlinおよびAltschul(前出)のアルゴリズムに基づく。比較の目的でギャップを含むアライメントを得るためには、Gapped BLAST(BLAST 2.0中)が、Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389(1997)において記載されるように、利用され得る。あるいは、PSI−BLAST(BLAST 2.0中)は、分子間の距離の関係を検出する反復検索を実施するために使用され得る。Altschulら,前出を参照のこと。BLAST、Gapped BLAST、PSI−BLASTを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、ヌクレオチド配列についてBLASTN、タンパク質についてBLASTX)が使用され得る。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、11のワード長さ(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長さ(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリング行列を使用する(HenikoffおよびHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,10915(1989)を参照のこと)。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。アライメントはまた、調査によって手動で実施され得る。
本発明の目的で、配列同一性%の決定のためのヌクレオチド配列の、本明細書中に開示されるポリメラーゼ配列との比較は、好ましくは、BlastNプログラム(バージョン1.4.7以降)を使用してそのデフォルトパラメータを用いて、または任意の等価なプログラムを使用して、行われる。「等価なプログラム」とは、好ましいプログラムによって作製される対応するアライメントと比較した場合に、問題の任意の2つの配列について、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の一致、ならびに同一の配列同一性%を有するアライメントを生じる、任意の配列比較プログラムを意図する。
(ポリメラーゼをコードする核酸の発現)
本発明の核酸は、本発明の核酸ポリメラーゼポリペプチドの組換え発現のために使用され得る。一般的に、本発明のポリメラーゼポリペプチドの組換え発現は、特定の型の宿主細胞における使用に適合させた発現ベクターへ、そのポリペプチドをコードする核酸を導入することによって実行される。本発明の核酸は、任意の宿主生物、例えば、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞の両方において導入され得、そして発現され得る。宿主細胞の例としては、細菌細胞、酵母細胞、培養された昆虫細胞株、および培養された哺乳動物細胞株が挙げられる。好ましくは、核酸ポリメラーゼが由来する生物のものと類似の様式で、新生ポリペプチドをプロセシングし、そして翻訳後修飾する、組換え宿主細胞系が、選択される。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素ポリペプチドを発現し、そして単離する目的のために、原核生物が好ましく、例えば、Escherichia coliが好ましい。従って、本発明は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
本発明の核酸は、本発明の核酸ポリメラーゼポリペプチドの組換え発現のために使用され得る。一般的に、本発明のポリメラーゼポリペプチドの組換え発現は、特定の型の宿主細胞における使用に適合させた発現ベクターへ、そのポリペプチドをコードする核酸を導入することによって実行される。本発明の核酸は、任意の宿主生物、例えば、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞の両方において導入され得、そして発現され得る。宿主細胞の例としては、細菌細胞、酵母細胞、培養された昆虫細胞株、および培養された哺乳動物細胞株が挙げられる。好ましくは、核酸ポリメラーゼが由来する生物のものと類似の様式で、新生ポリペプチドをプロセシングし、そして翻訳後修飾する、組換え宿主細胞系が、選択される。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素ポリペプチドを発現し、そして単離する目的のために、原核生物が好ましく、例えば、Escherichia coliが好ましい。従って、本発明は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
導入されるべき核酸は、目的の生物における発現のための発現カセット中に、簡便に配置され得る。このような発現カセットは、本発明の核酸に連結された転写開始領域を含む。発現カセットはまた、好ましくは、種々の制御エレメントの転写調節下にあるべき核酸の挿入のための、複数の制限部位を有する。この発現カセットはさらに、選択マーカー遺伝子を含み得る。適切な制御エレメント(例えば、エンハンサー/プロモーター、スプライス結合点、ポリアデニル化シグナルなど)は、適切な転写の開始および/または1次RNA転写の正確なプロセシングを可能にする必要がある場合、遺伝子のコード領域に非常に近接して配置され得る。あるいは、本発明の発現ベクターにおいて利用されるコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライス結合点、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性制御エレメントおよび外因性制御エレメントの両方の組み合わせを含み得る。
好ましくは、ベクター中の核酸は、宿主細胞中における適切なプロモーターまたは他の転写調節エレメントの制御下にあり、そしてそれらと作動可能に連結される。ベクターは、複数の宿主において機能する二機能性発現ベクターであり得る。転写カセットは、一般的に、その転写の5’−3’方向で、その生物において機能的な、プロモーター、転写開始領域および翻訳開始領域、目的のDNA配列、ならびに転写終止領域および翻訳終止領域を含む。この終止領域は、転写開始領域にとってネイティブであり得るか、目的のDNA配列にとってネイティブであり得るか、または、別の供給源由来であり得る。
原核生物細胞および真核生物細胞における組換えDNA配列の効率的発現は、一般的に、効率的な終止に指示する調節制御エレメントおよび生じる転写産物のポリアデニル化を必要とする。転写終止シグナルは、一般的に、ポリアデニル化シグナルの下流において見出され、そして数百ヌクレオチド長である。用語「ポリA部位」または「ポリA配列」は、本明細書で使用される場合、新生RNA転写産物の終止およびポリアデニル化の両方を指示するDNA配列を表す。組換え転写産物の効率的なポリアデニル化は、ポリAテールを欠く転写産物が、不安定でかつ迅速に分解されるので、望ましい。
核酸ポリメラーゼをコードする核酸は、当業者に公知の方法によって、細菌宿主細胞に導入され得る。例えば、本発明の好熱性ポリメラーゼをコードする核酸は、一般的に使用されている形質転換手順によって(例えば、塩化カルシウムによる処理または電気穿孔によって)細菌細胞に導入され得る。好熱性ポリメラーゼが、真核生物宿主細胞において発現されるべき場合、好熱性ポリメラーゼをコードする核酸は、多数の手段(リン酸カルシウム共沈、スフェロプラスト融合、電気穿孔などが挙げられる)によって真核生物宿主細胞に導入され得る。真核生物宿主細胞が、酵母細胞の場合、形質転換は、酢酸リチウムによる宿主細胞の処理または電気穿孔によってもたらされ得る。
従って、本発明の1つの局面は、本発明の核酸ポリメラーゼポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターおよび宿主細胞を提供することである。広範な発現ベクターが、当該分野において周知である。種々の発現ベクターの説明およびそれらの使用方法については、とりわけ、米国特許第5,604,118号;同第5,583,023号;同第5,432,082号;同第5,266,490号;同第5,063,158号;同第4,966,841号;同第4,806,472号;同第4,801,537号およびGoedelら,Gene Expression Technology,Methods of Enzymology,第185巻、Academic Press,San Diego(1989)において見出され得る。組換え細胞系におけるポリメラーゼの発現は、十分に確立された技術である。DNAポリメラーゼの組換え発現の例は、米国特許第5,602,756号;同第5,545,552号;同第5,541,311号;同第5,500,363号;同第5,489,523号;同第5,455,170号;同第5,352,778号;同第5,322,785号;および同第4,935,361号において見出され得る。
本発明の局面をなし、そしてそれを使用するのを助けるために使用され得る組換えDNA技術および分子クローニング技術は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第1〜3巻,Cold Spring Harbor laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001);Ausubel(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(1994);T.Maniatis,E.F.FritschおよびJ.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989);ならびにT.J.Silhavy,M.L.BermanおよびL.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1984)によって記載されている。
(核酸ポリメラーゼ酵素)
本発明は、Thermus oshimai核酸ポリメラーゼ酵素ならびにそのフラグメントおよび活性でかつ熱に安定な改変体核酸ポリメラーゼ酵素を提供する。配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列(これらは、野生型Thermus oshimaiのポリメラーゼおよび誘導体ポリメラーゼについてのアミノ酸配列である)を含む任意のポリペプチドは、本発明によって意図される。本発明のポリペプチドは、単離されたポリペプチドか、または実質的に精製されたポリペプチドである。特に、本発明の単離されたポリペプチドは、Thermus oshimai細菌中に通常存在するタンパク質を実質的に含まない。
本発明は、Thermus oshimai核酸ポリメラーゼ酵素ならびにそのフラグメントおよび活性でかつ熱に安定な改変体核酸ポリメラーゼ酵素を提供する。配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列(これらは、野生型Thermus oshimaiのポリメラーゼおよび誘導体ポリメラーゼについてのアミノ酸配列である)を含む任意のポリペプチドは、本発明によって意図される。本発明のポリペプチドは、単離されたポリペプチドか、または実質的に精製されたポリペプチドである。特に、本発明の単離されたポリペプチドは、Thermus oshimai細菌中に通常存在するタンパク質を実質的に含まない。
1つの実施形態において、本発明は、配列番号5のポリペプチド(これは、野生型Thermus oshimai核酸ポリメラーゼポリペプチドである)を提供する。
多くのポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ活性に加えて活性を有する。このような活性としては、例えば、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’−5’エキソヌクレアーゼ活性が挙げられる。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、組み込まれたかもしれない不正確な塩基を除去することによって、新規に合成された鎖の正確さを改善する。このような活性が低いかまたは存在しないDNAポリメラーゼは、ヌクレオチド残基のプライマー伸長鎖への組み込みにおいてエラーを起こしやすい。Taq DNAポリメラーゼは、低い3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有すると報告されている。Lawyerら,J.Biol Chem.264:6427−6437を参照のこと。DNAの複製が、しばしばプライマー伸長サイクルの数に関して幾何的である核酸増幅手順のような適用において、このようなエラーは、重大な人為的問題(例えば、核酸増幅産物(アンプリコン)の配列不均一性)をもたらし得る。従って、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、このような目的のために使用される耐熱性DNAポリメラーゼの望ましい特徴である。
対照的に、ポリメラーゼ酵素の5’−3’エキソヌクレアーゼ活性は、しばしば、この活性が、5’末端が保護されていない核酸(プライマーを含む)を消化し得るので、望ましくない。従って、弱められた5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するか、またはこのような活性が存在しない耐熱性ポリメラーゼは、生化学的適用に対して望ましい。種々のDNAポリメラーゼ酵素が、記載されており、ここで、改変が、この目的を達成するDNAポリメラーゼに導入されている。例えば、E.coli DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントは、このタンパク質のうちの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性制御ドメインが除去されているホロ酵素のタンパク質分解フラグメントとして産生され得る。このKlenowフラグメントは、依然として、ポリメラーゼ活性および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を保持する。Barnes,PCT公開番号WO92/06188(1992)およびGelfandら,米国特許第5,466,591号は、5’−3’エキソヌクレアーゼ欠損組換えThermus aquaticus DNAポリメラーゼを産生している。Ishinoら、EPO公開番号0517418A2は、Bacillus caldotenax由来の5’−3’エキソヌクレアーゼ欠損DNAポリメラーゼを産生している。
別の実施形態において、本発明は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が低減しているかまたは除去されているThermus oshimai誘導体ポリペプチドである、ポリペプチドを提供する。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性欠損DNAポリメラーゼは、PCRおよび鎖終結ポリヌクレオチド配列決定に関して優れた特性を有する。DNAポリメラーゼにおいて3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異は、当業者に利用可能である。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を低減する変異の導入方法についての指針は、とりわけ米国特許第5,466,591号;米国特許第5,541,099号;米国特許第5,489,523号;Bernadら、Cell 59:219−288(1989);およびXuら、Biochemical and mutational studies of the 5’−3’ exonuclease of DNA polymerase I of Escherichia coli、J.Mol.Biol.1997年5月2日;268(2):284−302に見出され得る。1つの実施形態において、Aspは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が低下したポリペプチドを作製するために、43位のGlyのかわりに使用される。それは、以下の配列番号6を有する。
このような改変体ポリペプチドおよび誘導体ポリペプチドは、例えば、遺伝的多型またはヒト操作から生じ得る。このような操作のための方法は、一般的に、当該分野で公知である。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列改変体は、DNAにおける変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当該分野において周知である。例えば、Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985);Kunkelら,Methods in Enzymol.,154,367(1987);米国特許第4,873,192号;WalkerおよびGaastra編,Techniques in Molecular Biology,MacMillan Publishing Company,New York(1983)ならびにそれらに引用されている参考文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換についての指針は、Dayhoffら,Atlas of Protein Sequence and Structure,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,C.D.(1978)のモデルに見出され得、これは本明細書で参考として援用される。
本発明の単離されたポリペプチドの誘導体および改変体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7もしくは配列番号8のアミノ酸位置の少なくとも約92%と同一性を有し、かつ核酸ポリメラーゼ活性もしくはDNAポリメラーゼ活性を有し、かつ/または耐熱性である。好ましい実施形態において、ポリペプチド誘導体およびポリペプチド改変体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7もしくは配列番号8のアミノ酸位置の少なくとも約93%と同一性を有し、かつ核酸ポリメラーゼ活性またはDNAポリメラーゼ活性を有し、かつ/または耐熱性である。より好ましい実施形態において、ポリペプチド誘導体およびポリペプチド改変体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7もしくは配列番号8のアミノ酸位置の少なくとも約95%と同一性を有し、かつ核酸ポリメラーゼ活性またはDNAポリメラーゼ活性を有し、かつ/または耐熱性である。
単離されたポリペプチドならびにポリペプチド誘導体およびポリペプチド改変体のアミノ酸残基は、遺伝的にコードされるL−アミノ酸、天然に存在する、遺伝的にコードされないL−アミノ酸、合成L−アミノ酸または上記のいずれかのD−鏡像体であり得る。遺伝的にコードされる20個のL−アミノ酸および一般的にコードされないアミノ酸について、本明細書で使用されるアミノ酸記号は、従来の通りであり、表2に示されるとおりである。
本発明の改変体ポリペプチドにおいて相互に置換可能であるアミノ酸は、一般に、類似のクラスまたはサブクラス内に存在する。当業者に公知であるように、アミノ酸は、そのアミノ酸側鎖の特徴に主に依存して、以下の3つの主要なクラスに分けられ得る:親水性アミノ酸、疎水性アミノ酸およびシステイン様アミノ酸。これらの主要なクラスは、サブクラスにさらに分けられ得る。親水性アミノ酸としては、酸性側鎖、塩基性側鎖または極性側鎖を有するアミノ酸が挙げられ、そして疎水性アミノ酸としては、芳香族側鎖または無極性側鎖を有するアミノ酸が挙げられる。無極性アミノ酸は、とりわけ、脂肪族アミノ酸を含むようにさらに細分され得る。本明細書中で使用される場合、これらのクラスのアミノ酸の定義は、以下のとおりである:
「疎水性アミノ酸」とは、生理学的pHにて無電荷でありかつ水溶液によってはじかれる側鎖を有するアミノ酸をいう。遺伝的にコードされる疎水性アミノ酸の例としては、Ile、LeuおよびValが挙げられる。遺伝的にコードされない疎水性アミノ酸の例としては、t−BuAが挙げられる。
「疎水性アミノ酸」とは、生理学的pHにて無電荷でありかつ水溶液によってはじかれる側鎖を有するアミノ酸をいう。遺伝的にコードされる疎水性アミノ酸の例としては、Ile、LeuおよびValが挙げられる。遺伝的にコードされない疎水性アミノ酸の例としては、t−BuAが挙げられる。
「芳香族アミノ酸」とは、共役π電子系を有する少なくとも1個の環(芳香族)を含む側鎖を有する疎水性アミノ酸をいう。この芳香族基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ニトロ基およびアミノ基などのような置換基でさらに置換され得る。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸の例としては、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンが挙げられる。一般に遭遇する遺伝的にコードされない芳香族アミノ酸としては、フェニルグリシン、2−ナフチルアラニン、β−2−チエニルアラニン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニンおよび4−フルオロフェニルアラニンが挙げられる。
「無極性アミノ酸」とは、生理学的pHにて一般に無電荷でありかつ極性ではない側鎖を有する疎水性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされる無極性アミノ酸の例としては、グリシン、プロリンおよびメチオニンが挙げられる。コードされない無極性アミノ酸の例としては、Chaが挙げられる。
「脂肪族アミノ酸」とは、飽和または不飽和の直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素側鎖を有する無極性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされる脂肪族アミノ酸の例としては、Ala、Leu、ValおよびIleが挙げられる。コードされない脂肪族アミノ酸の例としては、Nleが挙げられる。
「親水性アミノ酸」とは、水溶液によって結合される側鎖を有するアミノ酸をいう。遺伝的にコードされる親水性アミノ酸の例としては、SerおよびLysが挙げられる。コードされない親水性アミノ酸の例としては、CitおよびhCysが挙げられる。
「酸性アミノ酸」とは、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。酸性アミノ酸は、代表的には、水素イオンの損失に起因して、生理学的pHにて負に荷電した側鎖を有する。遺伝的にコードされる酸性アミノ酸の例としては、アスパラギン酸(アスパルテート)およびグルタミン酸(グルタメート)が挙げられる。
「塩基性アミノ酸」とは、7より高い側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。塩基性アミノ酸は、代表的には、ヒドロニウムイオンとの会合に起因して、生理学的pHにて正に荷電した側鎖を有する。遺伝的にコードされる塩基性アミノ酸の例としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。遺伝的にコードされない塩基性アミノ酸の例としては、非環状アミノ酸であるオルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸およびホモアルギニンが挙げられる。
「極性アミノ酸」とは、生理学的pHにて無荷電であるが、2つの原子によって共有される電子対がこれらの原子のうちの一方により接近して保持された結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸をいう。遺伝的にコードされる極性アミノ酸の例としては、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。遺伝的にコードされない極性アミノ酸の例としては、シトルリン、N−アセチルリジンおよびメチオニンスルホキシドが挙げられる。
「システイン様アミノ酸」とは、別のアミノ酸残基の側鎖と共有結合(例えば、ジスルフィド結合)を形成することが可能な側鎖を有するアミノ酸をいう。代表的には、システイン様アミノ酸は、一般に、少なくとも1個のチオール(SH)基を含む側鎖を有する。遺伝的にコードされるシステイン様アミノ酸の例としては、システインが挙げられる。遺伝的にコードされないシステイン様アミノ酸の例としては、ホモシステインおよびペニシラミンが挙げられる。
当業者によって理解されるように、上記の分類は、絶対的ではない。数種のアミノ酸は、1を超える特徴的な特性を示し、それゆえ、1を超えるカテゴリーに含まれ得る。例えば、チロシンは、芳香族環と極性ヒドロキシル基との両方を有し得る。従って、チロシンは、二重の特性を有し、そして芳香族カテゴリーと極性カテゴリーとの両方に含まれ得る。同様に、ジスルフィド結合を形成することができることに加えて、システインはまた、無極性特性を有する。従って、厳密には疎水性アミノ酸としても無極性アミノ酸としても分類されないが、多くの場合において、システインは、ポリペプチドに疎水性を与えるために使用され得る。
遺伝的にコードされずかつ本発明の改変体ポリペプチド中に存在し得るか、またはアミノ酸で置換され得る、特定の一般に遭遇するアミノ酸としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:β−アラニン(b−Ala)および他のω−アミノ酸(例えば、3−アミノプロピオン酸(Dap)、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4−アミノ酪酸など);α−アミノイソ酪酸(Aib);ε−アミノヘキサン酸(Aha);δ−アミノ吉草酸(Ava);N−メチルグリシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t−ブチルアラニン(t−BuA);t−ブチルグリシン(t−BuG);N−メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);2−ナフチルアラニン(2−Nal);4−クロロフェニルアラニン(Phe(4−Cl));2−フルオロフェニルアラニン(Phe(2−F));3−フルオロフェニルアラニン(Phe(3−F));4−フルオロフェニルアラニン(Phe(4−F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);β−2−チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(MSO);ホモアルギニン(hArg);N−アセチルリジン(AcLys);2,3−ジアミノ酪酸(Dab);2,3−ジアミノ酪酸(Dbu);p−アミノフェニルアラニン(Phe(pNH2));N−メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys)およびホモセリン(hSer)。これらのアミノ酸はまた、上で定義されるカテゴリーに分類される。
上記の遺伝的にコードされるアミノ酸およびコードされないアミノ酸の分類は、以下の表3において要約される。表3は、例示目的のみのためであり、本明細書中に記載される改変体ポリペプチドおよび誘導体ポリペプチドを含み得るアミノ酸残基の完全な列挙であることを意味しないことが理解されるべきである。本明細書中に記載される改変体ポリペプチドおよび誘導体ポリペプチドを作製するために有用である他のアミノ酸残基は、例えば、Fasman,1989,CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,CRC Press,Inc.およびその中で引用される参考文献において見出され得る。本明細書中で特に言及されていないアミノ酸は、既知の挙動ならびに/または特に特定されたアミノ酸と比較した場合のそれらの特徴的な化学的特性および/もしくは物理的特性に基づいて、上記のカテゴリーに簡便に分類され得る。
「ドメインシャッフリング」または「耐熱性キメラ核酸ポリメラーゼ」の構築は、新規の特性を含む耐熱性ポリメラーゼを提供するために使用され得る。例えば、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼのコドン1〜288の後ろへのThermus oshimai ポリメラーゼコード領域由来のコドン289〜422の配置は、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼドメイン(1〜288)、Thermus oshimaiポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼドメイン(289〜422)、およびThermus aquaticus DNAポリメラーゼのDNAポリメラーゼドメイン(423〜832)を含む新規の耐熱性核酸ポリメラーゼを生じる。あるいは、このThermus oshimaiポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼドメインおよび3’−5’エキソヌクレアーゼドメインは、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼのDNAポリメラーゼ(dNTP結合ドメインおよびプライマー/テンプレート結合ドメイン)部分(コドン約423〜832)に融合され得る。ドナーおよびレシピエントは、Thermus aquaticusポリメラーゼおよびThermus oshimaiポリメラーゼに限定される必要性はない。Thermus thermophilus DNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼドメイン、5’−3’エキソヌクレアーゼドメインおよびDNAポリメラーゼドメインによって同様に、本発明のThermus oshimaiポリメラーゼにおけるドメインを置換し得る。
Thermus aquaticusポリメラーゼIのエキソヌクレアーゼドメインは、耐熱性の有意な損失もポリメラーゼ活性の有意な損失もなしに、このタンパク質のアミノ末端から除去され得ることが実証されている(Erlichら(1991)Science 252:1643−1651,Barnes,W.M.,(1992)Gene 112:29−35.,Lawyerら(1989)JBC 264:6427−6437)。他のN末端欠失は、同様に、耐熱性および活性を維持することが示されている(Vainshteinら(1996)Protein Science 5:1785−1792およびその中の参考文献)。従って、本発明はまた、本明細書中で提供される、同様に短縮型形態の任意の野生型ポリメラーゼまたは改変体ポリメラーゼを含む。例えば、本発明はまた、本発明によって提供されるポリメラーゼのうちのいずれかの活性な短縮型改変体に関し、ここで、最初の330アミノ酸が除去されている。
さらに、本発明は、配列番号39の短縮型形態のポリメラーゼを提供する。ここでは、野生型Thermus oshimaiポリメラーゼのN末端の289アミノ酸が除去されている。
本発明のポリペプチドを含むキットおよび組成物は、細胞性物質を実質的に含まない。このような調製物および組成物は、約30(乾燥重量)%未満、約20(乾燥重量)%未満、約10(乾燥重量)%未満、約5(乾燥重量)%未満の夾雑細菌細胞性タンパク質を有する。
ポリメラーゼポリペプチドおよび改変体ポリペプチドの活性は、当業者に公知の任意の手順によって評価され得る。例えば、本発明の改変体ポリメラーゼポリペプチドおよび非改変体ポリメラーゼポリペプチドのDNA合成活性は、標準的なDNA配列決定反応またはDNAプライマー伸長反応において試験され得る。1つのこのようなアッセイは、100μl(最終容積)の反応混合物で行われ得、この反応混合物は、例えば、50mM KCl、1mM DTT、10mM MgCl2および50mMの緩衝化合物(例えば、PIPES、Trisまたはトリエチルアミンを含む緩衝液中、0.1mM dCTP、dTTP、dGTP、α−32P−dATP、0.3mg/mlの活性化子ウシ胸腺DNAおよび)0.5mg/ml BSAを含む。各ポリメラーゼ酵素の0.1単位/μlまでの希釈物を調製し、そして5μlのこのような希釈物を、この反応混合物に加え、続いて、60℃にて10分間インキュベートする。反応産物を、DNAに組み込まれた32Pの量を決定するかまたはポリアクリルアミドゲルでの分離後の産物を観察することによって、検出し得る。
(核酸ポリメラーゼについての使用)
本発明の耐熱性酵素は、核酸ポリメラーゼ酵素活性が必要であるかまたは望ましい、任意の目的のために使用され得る。例えば、本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、以下の手順の1つ以上において使用され得る:DNA配列決定、DNA増幅、逆転写、RNA増幅、DNA合成および/またはプライマー伸長。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNAテンプレートまたはRNAテンプレートを増幅するために使用され得る。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、Sanger配列決定手順によってDNAを配列決定するために使用され得る。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素はまた、プライマー伸長反応においても使用され得る。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、ターミネーターヌクレオチドを使用する一ヌクレオチドプライマー伸長によって、一塩基多型(SNP)について試験するために使用され得る。任意のこのような手順および関連手順(例えば、ポリヌクレオチド標識またはプライマー標識、ミニ配列決定(minisequencing)など)は、本発明の核酸ポリメラーゼ酵素について使用することが企図される。
本発明の耐熱性酵素は、核酸ポリメラーゼ酵素活性が必要であるかまたは望ましい、任意の目的のために使用され得る。例えば、本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、以下の手順の1つ以上において使用され得る:DNA配列決定、DNA増幅、逆転写、RNA増幅、DNA合成および/またはプライマー伸長。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNAテンプレートまたはRNAテンプレートを増幅するために使用され得る。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、Sanger配列決定手順によってDNAを配列決定するために使用され得る。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素はまた、プライマー伸長反応においても使用され得る。本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、ターミネーターヌクレオチドを使用する一ヌクレオチドプライマー伸長によって、一塩基多型(SNP)について試験するために使用され得る。任意のこのような手順および関連手順(例えば、ポリヌクレオチド標識またはプライマー標識、ミニ配列決定(minisequencing)など)は、本発明の核酸ポリメラーゼ酵素について使用することが企図される。
本発明の方法は、プライミングしたポリヌクレオチドテンプレートを、少なくとも1つの標識ヌクレオチドを用いて伸長させる工程を包含し、ここで、この伸長は、本発明のポリメラーゼによって触媒される。Sanger配列決定のために使用されるDNAポリメラーゼは、蛍光標識される産物を生成し得、この産物は、自動化蛍光ベースの配列決定装置(例えば、Applied Biosystems 310または377(Applied Biosystems,Foster City,Calif.))によって分析される。Sanger配列決定のための詳細なプロトコルは、当業者に公知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)において見出され得る。
1つの実施形態において、本発明の核酸ポリメラーゼ酵素は、核酸増幅のために使用される。DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素を用いる任意の増幅手順は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、鎖置換増幅および他の増幅手順において使用され得る。鎖置換増幅は、Walkerら(1992)Nucl.Acids Res.20,1691−1696において記載されるように使用され得る。用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、K.B.Mullis、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;および同第4,965,188号(本明細書中で参考として援用される)の方法(これらは、ゲノムDNA、RNAまたは他の核酸の混合物中の標的配列のセグメント濃度を、クローニングも精製もすることなしに増加させるための方法を記載する)をいう。
標的配列を増幅するためのPCRプロセスは、大過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、所望の標的配列を含む核酸の混合物に導入し、続いてポリメラーゼの存在下での一連のサーマルサイクリングを含む核酸の混合物に導入する工程からなる。これら2つのプライマーは、二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅をもたらすために、この混合物を変性させ、そしてプライマーを、標的分子内の相補配列にアニーリングする。アニーリングの後、このプライマーを、相補鎖の新たな対を形成するように、ポリメラーゼを用いて伸長させる。変性工程、プライマーのアニーリング工程およびポリメラーゼ伸長工程を、「サイクル」と呼ぶ。多数のサイクルが存在し得、生成された増幅核酸の量は、各サイクルの度に増加する。従って、高濃度の増幅された標的核酸を獲得するために、多くのサイクルが行われる。
PCR核酸増幅法に含まれる工程は、以下に、より詳細に記載される。議論を容易にするために、増幅される核酸を、二本鎖であるものとして記載する。しかし、最終的な産物は一般的に二本鎖DNAであるが、このプロセスは一本鎖核酸(例えば、mRNA)を増幅するためにも等しく有用である。一本鎖核酸の増幅において、第一の工程は、相補鎖の合成を含む(例えば、2つの増幅プライマーのうちの1つが、この目的のために用いられ得る)。引き続く工程は、一般的に以下のように進められる:
(a)各核酸鎖を、4つの異なるヌクレオシド三リン酸および増幅されるべき各核酸鎖に対する1つのオリゴヌクレオチドプライマーと接触させる。ここで、各プライマーは、増幅されるべき核酸鎖の一部分に実質的に相補的であるように選択されており、その結果、一方のプライマーから合成された伸長産物は、その相補体と分離された際に、他方のプライマーの伸長産物の合成のためのテンプレートとしての役割を果たし得る。プライマーと増幅されるべき核酸鎖との適切なアニーリングを促進するために、相補的核酸鎖への各プライマーのハイブリダイゼーションを可能にする温度が使用される。
(a)各核酸鎖を、4つの異なるヌクレオシド三リン酸および増幅されるべき各核酸鎖に対する1つのオリゴヌクレオチドプライマーと接触させる。ここで、各プライマーは、増幅されるべき核酸鎖の一部分に実質的に相補的であるように選択されており、その結果、一方のプライマーから合成された伸長産物は、その相補体と分離された際に、他方のプライマーの伸長産物の合成のためのテンプレートとしての役割を果たし得る。プライマーと増幅されるべき核酸鎖との適切なアニーリングを促進するために、相補的核酸鎖への各プライマーのハイブリダイゼーションを可能にする温度が使用される。
(b)プライマーアニーリングの後に、プライマーによってハイブリダイズされる鎖に相補的な伸長する核酸鎖へのヌクレオシド三リン酸を取りこむプライマー伸長のために、ポリメラーゼが使用される。一般に、このプライマー伸長反応は、酵素の活性を促進し、かつ完全な第2プライマー結合を介して伸長する「全長」相補的核酸鎖を合成するのに有効な温度および時間で実施される。しかし、その温度は、その核酸テンプレート鎖から各伸長産物を分離するほどには高くない。
(c)次いで、工程(b)からの混合物は、それらの相補的なテンプレートからプライマー伸長産物を分離するのに十分な時間および温度で加熱される。この選択された温度は、その混合物中に存在するポリメラーゼを不可逆的に変性させるほどには高くない。
(d)(c)からの混合物は、工程(b)で生成された各々の一本鎖分子にプライマーのハイブリダイゼーションを促進するのに有効な時間および温度で冷却される。
(e)工程(d)からの混合物は、ポリメラーゼによるプライマー伸長を促進して、「全長」伸長産物を生成するのに十分な時間および温度で維持される。使用される温度は、相補的鎖テンプレートから各伸長産物を分離するほどには高くない。工程(c)〜(e)は、所望のレベルの増幅が得られるまで反復される。
増幅方法は、既知の配列の大量の特異的核酸配列を生成するためだけでなく、存在することは知られているが完全には特定されていない核酸配列を生成するためにも有用である。それらの位置における所望の配列との異なる鎖にハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーが調製され得るに十分に詳細な、配列両方の末端での十分な数の塩基の正体のみを知る必要がある。伸長産物は、1つのプライマーから合成される。その伸長産物が、テンプレートから分離される場合、その伸長産物は、他のプライマーの伸長に対するテンプレートとして働き得る。この配列の両方の末端の塩基についての知見が多くなればなるほど、標的核酸配列についてのプライマーの特異性が、高くなり得る。
従って、耐熱性ポリメラーゼが、一般的に、PCRに使用される。なぜなら、これらのポリメラーゼが、二本鎖標的DNAを融解するため、およびPCR反応の各サイクルの間にプライマーをアニーリングするために使用される高温で機能し得るからである。高温は、標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションに有利であって、かつ標的ではない配列とのハイブリダイゼーションに有利で熱力学的条件を生じる(H.A.Erlich(編)、PCR Technology、Stockton Press[1989])。
本発明の耐熱性ポリメラーゼは、増幅反応(例えば、PCR)における有効な使用のための要件を満たす。本発明のポリメラーゼポリペプチドは、増幅プロセスの間に二本鎖核酸を融解するのに必要な時間で、必要とされる上昇した温度に供される際に、不可逆的に変性(不活化)されない。本明細書における目的のための不可逆的な変性は、酵素活性の永久的かつ完全な損失をいう。核酸の変性のために必要な加熱条件は、例えば、緩衝液の塩濃度ならびに変性される核酸の組成および長さに依存するが、代表的には、約90℃〜約105℃で、主に、温度および核酸の長さに依存した時間(代表的に、数秒間から4分間まで)の範囲におよぶ。緩衝液の塩濃度および/または核酸のGC組成が上昇するにつれて、より高い温度が必要とされ得る。本発明のポリメラーゼポリペプチドは、約90℃〜100℃の温度への比較的短い曝露に対しては、不可逆的に変性されない。
本発明の耐熱性ポリメラーゼポリペプチドは、それらのポリメラーゼが機能をする至適温度を有し、その温度は、約45℃より高い。45℃未満の温度は、テンプレートへのプライマーのハイブリダイゼーションを促進するが、塩の組成および濃度ならびにプライマーの組成および長さに依存して、テンプレートへのプライマーのハイブリダイゼーションは、より高い温度(例えば、45℃〜70℃)で生じ得、これは、プライマーハイブリダイゼーション反応の特異性を促進し得る。本発明のポリメラーゼポリペプチドは、約37℃〜約90℃広範な温度範囲にわたって活性を示す。
本発明のポリメラーゼポリペプチドは、PCRについての特定の有用性を有する。このことは、これらの耐熱性に起因するだけでなく、標的核酸の複製におけるそれらの忠実度にもまた起因する。PCRにおいて、1コピーの特定の標的核酸を、いくつかの異なる方法論によって検出可能なレベルに増幅することが可能である。しかし、標的核酸の配列が、忠実に複製されない場合、増幅産物は、多様な配列を有する核酸のプールを含み得る。従って、標的の配列を正確に複製し得るポリメラーゼが、非常に望ましい。
任意の核酸が、本発明のPCR法のための「標的核酸」として作用し得る。ポリメラーゼ連鎖反応を参照して使用される場合、用語「標的」は、ポリメラーゼ連鎖反応のために使用されるプライマーに結合される核酸の領域をいう。ゲノムDNAに加えて、任意のcDNA、RNA、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、適切なセットのプライマー分子を用いて増幅され得る。特に、PCRプロセス自体により作製された増幅されたセグメントは、それら自体が、次のPCR増幅のための効率的なテンプレートである。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、プライマーの互いに対する相対的な位置により決定され、従って、この長さは、制御可能なパラメータである。
増幅された標的核酸は、当業者に公知の任意の方法によって検出され得る。例えば、標的核酸は、しばしば、これらの核酸がサイズ分離ゲルにて可視のバンドを形成するような程度に増幅される。標的核酸はまた、標識されたプローブとのハイブリダイゼーションによって;PCRの間のビオチン化プライマーの取り込みとそれに続くアビジン−酵素結合体検出によって;PCRの間の32P−標識されたデオキシヌクレオチド三リン酸の取り込みによって、などにより、検出され得る。
増幅の量がまた、例えば、米国特許第5,723,591号に記載されるようなレポーター−クエンチャーオリゴヌクレオチド、および5’−3’ヌクレアーゼ活性を有する本発明のDNAポリメラーゼの使用によりモニタリングされ得る。このレポーター−クエンチャーオリゴヌクレオチドは、結合されたレポーター分子および結合されたクエンチャー分子を有し、このクエンチャー分子は、これら2つの分子が近位にある場合にレポーター分子の蛍光をクエンチし得る。クエンチングは、レポーター−クエンチャーオリゴヌクレオチドが相補的核酸にハイブリダイズしていない場合に生じる。なぜなら、レポーター分子とクエンチャー分子とは、近位にあるか、またはクエンチングに最適な距離にある傾向にあるためである。ハイブリダイズされる場合、レポーター−クエンチャーオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズされていない場合よりも多くの蛍光を放出する。なぜなら、レポーター分子とクエンチャー分子とがさらに離れている傾向があるためである。増幅をモニタリングするために、レポーター−クエンチャーオリゴヌクレオチドは、増幅プライマーに対して3’側にハイブリダイズするように設計される。増幅の間、ポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性は、レポーターオリゴヌクレオチドプローブを消化し、これによりレポーター分子をクエンチャー分子から分離する。増幅が実施される際、レポーター分子の蛍光は、増加する。従って、実施された増幅の量は、観察される蛍光の増加に基づき定量され得る。
PCRプライマーについて使用されるオリゴヌクレオチドは、通常、約9ヌクレオチド長〜約75ヌクレオチド長、好ましくは、約17ヌクレオチド長〜約50ヌクレオチド長である。好ましくは、PCR反応における使用のためのオリゴヌクレオチドは、約40以下(例えば、9、12、15、18、20、21、24、27、30、35、40または9と40との間の任意の数)のヌクレオチド長である。一般的に特異的なプライマーは、少なくとも約14ヌクレオチド長である。最適な特異性および費用効果のために、16〜24ヌクレオチド長のプライマーが、一般的に好ましい。
当業者は、PCRのようなプロセスに使用するためのプライマーを容易に設計し得る。例えば、DNA増幅のための潜在的なプライマーは、このプライマーが単一の標的について選択的であるか否か、およびどのような条件が、サンプルまたは核酸の複合的な混合物中の標的に対するプライマーのハイブリダイゼーションを可能にするかを決定するためのプローブとして使用され得る。
本発明はまた、他の手順または酵素と組み合わせた、本発明のポリメラーゼポリペプチドの使用も企図する。例えば、これらのポリメラーゼポリペプチドが、特定のRNAの逆転写について使用され得る。この方法において、そのRNAは、本発明のポリメラーゼの逆転写酵素活性に起因してcDNAに変換され、次いで、同じポリメラーゼを使用して増幅される。別のRNAポリメラーゼを追加する必要はない。RNAの逆転写および増幅についての手順は、本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,322,770号に提供される。
別の実施形態において、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する本発明のポリメラーゼが、インベーダー指向切断アッセイ(invader−directed cleavage assay)において標的核酸を検出するために使用される。この型のアッセイは、例えば、米国特許第5,994,069号に記載される。DNAポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼは、核酸の5’末端からヌクレオチドを漸次切断する現実のエキソヌクレアーゼではなく、特定の型の核酸構造体を切断して、オリゴヌクレオチド切断産物を生成し得るヌクレアーゼであることに注意することが重要である。そのような切断は、ときどき、構造特異的切断と呼ばれる。
一般的に、インベーダー指向切断アッセイは、標的核酸と相互作用して、そのポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性についての切断構造体を形成する少なくとも一対のオリゴヌクレオチドを使用する。特徴的な切断産物は、その切断構造体がそのポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性により切断される際に放出される。そのような標的依存性切断構造の形成および得られた切断産物は、試験サンプル中の特異的標的核酸配列の存在を示す。
従って、インベーダー指向切断手順において、本発明のポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性は、標的核酸と相互作用して5’−3’ヌクレアーゼについての切断構造体を形成する少なくとも一対のオリゴヌクレオチドもまた必要とされる。ときどき「プローブ」と呼ばれる第一のオリゴヌクレオチドは、標的部位内であるが、ときどき「インベーダー」オリゴヌクレオチドと呼ばれる第二のオリゴヌクレオチドの下流で、ハイブリダイズし得る。このインベーダーオリゴヌクレオチドは、このプローブオリゴヌクレオチドに隣接しかつ上流でハイブリダイズし得る。しかし、このプローブオリゴヌクレオチドおよびインベーダーオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする標的部位は、インベーダーオリゴヌクレオチドの3’側セグメントがプローブオリゴヌクレオチドの5’側セグメントと重複するように、重複する。本発明のポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼは、内側部位でプローブオリゴヌクレオチドを切断して、サンプル中の標的核酸の存在の診断に役立つ(diagnostic)特徴的(distinctive)フラグメントを生成し得る。特定の状況へのインベーダー指向切断アッセイの適合についてのさらなる詳細および方法は、米国特許第5,994,069号において見出され得る。
1つ以上のヌクレオチドアナログもまた、本発明の方法、キットと共に、そしてポリメラーゼポリペプチドと共に使用され得る。そのようなヌクレオチドアナログは、改変されているか、または天然に存在しないヌクレオチド(例えば、7−デアザプリン(すなわち、7−デアザ−dATPおよび7−デアザ−dGTP))であり得る。ヌクレオチドアナログは塩基アナログを含み、そしてデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの改変形態を含む。本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチドアナログ」は、PCR混合物中に存在する標的を参照して使用する際、dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP以外のヌクレオチドの使用をいい;従って、PCRにおけるdUTP(天然に存在するdNTP)の使用は、PCRにおけるヌクレオチドアナログの使用を含む。反応混合物中のdUTP、7−デアザ−dATP、7−デアザ−dGTPまたは任意の他のヌクレオチドアナログを使用して作製されたPCR産物は、ヌクレオチドアナログを含むといわれる。
本発明はまた、少なくとも1つの本発明のポリメラーゼポリペプチドを備えるキットを提供する。個々のキットは、以下の手順のうち1つ以上の実施のために適合され得る:DNA配列決定、DNA増幅、RNA増幅および/またはプライマー伸長。本発明のキットは、本発明のポリメラーゼポリペプチドおよび少なくとも1つのヌクレオチドを含む。本発明のキット中に提供されるヌクレオチドは、標識されてもよく、または標識されなくてもよい。好ましくは、キットはまた、キットが適合される手順を実施する方法に対する指示書も備え得る。
必要に応じて、本発明のキットは、このキットが実施するために適合されている方法を実施するために必要とされる少なくとも1つの他の試薬をさらに備え得る。そのような追加の試薬の例としては、以下が挙げられる:別の未標識ヌクレオチド、別の標識ヌクレオチド、ヌクレオチドのバランスのとれた(balance)混合物、1つ以上の鎖終結ヌクレオチド、1つ以上のヌクレオチドアナログ、緩衝溶液、マグネシウム溶液、クローニングベクター、制限エンドヌクレアーゼ、配列決定プライマー、逆転写酵素、およびDNA増幅プライマーまたはRNA増幅プライマー。本発明のキットに備えられる試薬は、より高い精度および正確度を提供するために予め測定された単位で供給され得る。代表的に、キットの試薬および他の成分は、別個の容器中に配置および保有される。反応容器、試験管、マイクロウェルトレイ、マイクロタイターディッシュ、または他の容器もまた、このキットに備えられ得る。異なるラベルが、異なる試薬に対して使用され得、その結果、各々の試薬が、互いに区別され得る。
以下の実施例は、本発明をさらに例示し、そして本発明の範囲を限定することは意図されない。
(実施例1:Thermus oshimai核酸ポリメラーゼをコードする遺伝子のクローニング)
(細菌の増殖およびゲノムDNAの単離)
Thermus oshimaiポリメラーゼ核酸を、CB1と名付けられた株からクローニングした。その単離源は、Azores(R.A.D.Williams博士,Queen Mary and Westfield College,London,Englandから)である。Thermus oshimai CB1株の凍結乾燥したサンプルを得、ATCC培養培地461(Castenholz TYE培地)中で回復させ、そして定常期まで一晩増殖させた。Thermus oshimaiゲノムDNAを、QiagenゲノムDNA調製プロトコルおよびキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を用いて調製した。
(細菌の増殖およびゲノムDNAの単離)
Thermus oshimaiポリメラーゼ核酸を、CB1と名付けられた株からクローニングした。その単離源は、Azores(R.A.D.Williams博士,Queen Mary and Westfield College,London,Englandから)である。Thermus oshimai CB1株の凍結乾燥したサンプルを得、ATCC培養培地461(Castenholz TYE培地)中で回復させ、そして定常期まで一晩増殖させた。Thermus oshimaiゲノムDNAを、QiagenゲノムDNA調製プロトコルおよびキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を用いて調製した。
(クローニング方法)
第1の順方向プライマーおよび逆方向プライマーを、Thermus aquaticus(Taq)、Thermus thermophilus(Tth)、Thermusfiliformis(Tfi)、Thermus caldophilus、およびThermus flavus(Tfl)のDNA配列の5’末端および3’末端の相同性保存領域の分析によって設計した。部分的なThermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子のフラグメントを、N末端プライマー5’ ggc cac cac ctg gcc tac 3’(配列番号29)およびC末端プライマー5’ ccc acc tcc acc tcc ag 3’(配列番号30)を用いて増幅した。PCR反応混合物は、25μlの全反応容積中に、2.5μlの10×Amplitaq緩衝液(ABi)、2mM MgCl、100ng DNAテンプレート、(各)2.5mM dNTP、20pmolの各プライマー、および1.25単位のAmplitaq DNAポリメラーゼを含んだ。
第1の順方向プライマーおよび逆方向プライマーを、Thermus aquaticus(Taq)、Thermus thermophilus(Tth)、Thermusfiliformis(Tfi)、Thermus caldophilus、およびThermus flavus(Tfl)のDNA配列の5’末端および3’末端の相同性保存領域の分析によって設計した。部分的なThermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子のフラグメントを、N末端プライマー5’ ggc cac cac ctg gcc tac 3’(配列番号29)およびC末端プライマー5’ ccc acc tcc acc tcc ag 3’(配列番号30)を用いて増幅した。PCR反応混合物は、25μlの全反応容積中に、2.5μlの10×Amplitaq緩衝液(ABi)、2mM MgCl、100ng DNAテンプレート、(各)2.5mM dNTP、20pmolの各プライマー、および1.25単位のAmplitaq DNAポリメラーゼを含んだ。
このPCR反応混合物について、(97℃で3秒間、56℃で30秒間、72℃で3分間)を30サイクル行い、最後の工程は(72℃で7分間)であった。これにより、約2.4kbのDNAフラグメントが生成され、このDNAフラグメントを、Qiagen PCR クリーンアップキット(Qiagen)を使用してPCR反応混合物から精製した。このThermus oshimai CB1株フラグメントをpCR(商標登録)T7−CT−TOPO(商標登録)ベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)に連結した。このクローニングされたフラグメントの配列は、ヌクレオチド644と3060との間のThermus thermophilus PolI遺伝子(Genebank登録番号466573)にいくらか相同性を示した。
全長Thermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子の配列を得るために、Thermus oshimaiゲノムDNAのSmaI消化によってライブラリーを構築した。完全な消化の後、生じたフラグメントをGenomeWalkerTMアダプター(Universal GenomeWalkerTMキット、Clonetech、Mountainview、CA)に連結した。Thermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子の5’末端部分を含むフラグメントを、遺伝子特異的プライマー(5’−catcctccttcagggccttga−3’、配列番号31)およびClonetechアダプタープライマーAP1(Universal Genome Walkerキット、Clonetech、Moutainview、CA)を使用して増幅した。PCR混合物を80℃に加熱し、次いで遺伝子特異的プライマーを加えた。サイクル条件は、(94℃を25秒間、72℃を3分間)を7サイクルに続いて、(96℃を5秒間、66℃を1分間)を30サイクルであった。GenomeWalkerTMライブラリーから増幅されたフラグメントを、Quiagen PCRクリーンアップキット(Quiagen)を使用してPCR反応混合物から精製した。そのフラグメントを、増幅に使用したのと同じ遺伝子特異的プライマーを使用して配列決定した。Thermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子の3’末端の配列を得るために、遺伝子特異的プライマー 5’−ttg cag gtg cac gac gag ctg gtc−3’(配列番号32)を使用して同じSmaIライブラリーを用いて、上記のプロセスを反復した。Thermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子の3’末端を含むフラグメントを、同じ遺伝子特異的プライマーによって配列決定した。これらの配列を、Thermus oshimai核酸ポリメラーゼ遺伝子全体を得るために最初の遺伝子フラグメントの配列で組み立てた。Thermus oshimai遺伝子のN末端のDNA配列(開始コドンは太字)は、以下である:
このPCR反応は、約2.5kbのDNAフラグメントを生成した。この増幅したフラグメントを、Qiagen PCRクリーンアップキット(Qiagen)を使用してPCR反応混合物から精製した。Thermus oshimai CB1株フラグメントを、誘導性発現ベクターpCR(商標登録)T7CT−TOPO(商標登録)(Invitrogen,Carlsbad,CA)に連結した。異なる3つのクローニングしたThermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子を、PCRエラーを除外するために独立に配列決定した。その結果生じたコンセンサス配列は、本発明の報告されるThermus oshimai核酸ポリメラーゼ配列である。
(野生型Thermus oshimaiポリメラーゼ遺伝子の改変)
ダイターミネーターDNA配列決定に適切な形態のThermus oshimaiポリメラーゼを生成するために、2つのアミノ酸置換を行った。それらは、FS変異(米国特許第5,614,365号;TaborおよびRichardson、1995 PNAS 92:6339−6343)およびエキソマイナス変異(米国特許第5,466,591号;Xuら、Biochemical and mutational studies of the 5’−3’exonuclease of DNA polymerase I of Escherichia coli、J.Mol.Biol.1997年5月2日;268(2):284−302)である。Thermus oshimai G43D改変体ポリペプチドは、エキソヌクレアーゼ活性が非常に低いレベルに低下しており、そしてThermus oshimai F665Y改変体ポリペプチドは、ddNTPとdNTPとの識別能が低下している。変異誘発を、SawanoおよびMiyawaki(2000)、Nucleic Acids Research 第28巻に記載される、改変したQuickChangeTM(Stratagene)PCR変異誘発プロトコルを使用して実施した。この変異した遺伝子を再度完全に配列決定して、変異の導入を徹底的に確認し、かつPCRエラーが導入されていないことを確実にし。
ダイターミネーターDNA配列決定に適切な形態のThermus oshimaiポリメラーゼを生成するために、2つのアミノ酸置換を行った。それらは、FS変異(米国特許第5,614,365号;TaborおよびRichardson、1995 PNAS 92:6339−6343)およびエキソマイナス変異(米国特許第5,466,591号;Xuら、Biochemical and mutational studies of the 5’−3’exonuclease of DNA polymerase I of Escherichia coli、J.Mol.Biol.1997年5月2日;268(2):284−302)である。Thermus oshimai G43D改変体ポリペプチドは、エキソヌクレアーゼ活性が非常に低いレベルに低下しており、そしてThermus oshimai F665Y改変体ポリペプチドは、ddNTPとdNTPとの識別能が低下している。変異誘発を、SawanoおよびMiyawaki(2000)、Nucleic Acids Research 第28巻に記載される、改変したQuickChangeTM(Stratagene)PCR変異誘発プロトコルを使用して実施した。この変異した遺伝子を再度完全に配列決定して、変異の導入を徹底的に確認し、かつPCRエラーが導入されていないことを確実にし。
(実施例2:タンパク質の発現および精製)
細胞を1.2ODの光学密度まで1リットルのTerrific Broth(Maniatis)中で培養し、1.0mM IPTGを用いて4時間誘導して、タンパク質を過剰生成させた。その細胞を遠心分離により収集し、50mM Tris(pH7.5)、5mM EDTA、5%グリセロール、10mM EDTA中で洗浄して、増殖培地を除去し、そしてその細胞ペレットを−80℃で凍結した。
細胞を1.2ODの光学密度まで1リットルのTerrific Broth(Maniatis)中で培養し、1.0mM IPTGを用いて4時間誘導して、タンパク質を過剰生成させた。その細胞を遠心分離により収集し、50mM Tris(pH7.5)、5mM EDTA、5%グリセロール、10mM EDTA中で洗浄して、増殖培地を除去し、そしてその細胞ペレットを−80℃で凍結した。
Thermus oshimaiポリメラーゼを単離するために、その細胞を解凍し、50mM Tris(pH7.2)、400mM NaCl、1mM EDTAの2.5容積(湿重量)中に再懸濁した。その細胞壁を超音波処理によって破壊し、生じたE.coli細胞破片を遠心分離によって除去した。その結果生じた溶解産物を水浴中で(75℃で45分間)低温殺菌し、非耐熱性E.coliタンパク質の大部分を変性および沈殿させ、そして耐熱性Tosh Pol Iを溶液中に残した。0.3%ポリエチレンイミン(PEI)を用いた共沈によって、E.coliゲノムDNAを除去した。次いで、清浄な溶解産物を一連の2つのカラムに適用した:(1)過剰PEIをキレートするBiorex70陽イオン交換樹脂および(2)このポリメラーゼを保持するヘパリンアガロースカラム(提供される寸法)。このカラムを、カラムの5倍の容積の20mM Tris(pH8.5)、5%グリセロール、100mM NaCl、0.1mM EDTA、0.05%Triton X−100および0.05%Tween−20(KTA)で洗浄する。次いで、このタンパク質を、0.1〜1.0M NaClの線形勾配を用いて溶出させた。このポリメラーゼは、0.8M NaClに溶出した。溶出したThermus oshimaiポリメラーゼを濃縮し、Millipore濃縮フィルター(30kD M.W.カットオフ)を使用して緩衝液を交換した。濃縮したタンパク質をKTA(塩なし)+50%グリセロール中で−20℃に保存した。
ポリメラーゼの活性を、標準サケ精子DNA放射測定活性アッセイを使用して測定し、そして配列決定をBig Dye Version3を使用して試験した。酵素は、0.2mM dATP、0.2mM dCTP、0.2mM dUTPおよび0.3mM dITPからなるdNTP混合物において、pH8.0〜10.0の40〜80mM Tris、1.0〜2.0mM MgCl中で活性であり、最適活性は、pH9.0と9.58との間にある。この酵素はまた、0〜100mMのKCl濃度においても活性であり、このことは、T.oshimaiポリメラーゼが、Tthほど塩耐性ではないが、TfilまたはTaqのいずれよりも塩耐性が高いことを示す。
上の明細書において述べられたすべての刊行物および特許は、本明細書中で参考として援用される。本発明の記載された方法およびシステムの種々の改変およびバリエーションは、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態と関連して記載されているが、本願発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきでないことが理解されるべきである。実際に、当業者に明らかな本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあると意図される。
Claims (46)
- 配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼをコードする、単離された核酸。
- 5−3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする、単離された核酸。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して、低下した5−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項2に記載の単離された核酸。
- ジデオキシヌクレオチド三リン酸に対する識別能を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする、単離された核酸。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して、ジデオキシヌクレオチド三リン酸に対する低下した識別能を有する、請求項4に記載の単離された核酸。
- 配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4を含む核酸ポリメラーゼをコードする、単離された核酸。
- 配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4に相補的な配列を含む、単離された核酸。
- 配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を含む、ベクター。
- 5−3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を含む、ベクター。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下した5−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項9に記載のベクター。
- ジデオキシヌクレオチド三リン酸に対する識別能を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする、単離された核酸を含む、ベクター。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下したジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能を有する、請求項11に記載のベクター。
- 配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4を含む核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を含む、ベクター。
- 配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む、発現ベクター。
- 5−3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む、発現ベクター。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下した5−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項15に記載の発現ベクター。
- ジデオキシヌクレオチド三リン酸に対する識別能を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む、発現ベクター。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下したジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能を有する、請求項17に記載の発現ベクター。
- 配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む、発現ベクター。
- 宿主細胞が、前記核酸によってコードされる耐熱性ポリペプチドを発現し得、かつ該ポリペプチドが、DNAポリメラーゼ活性を有する、請求項19に記載の宿主細胞。
- 配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を含む、宿主細胞。
- 5−3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を含む、宿主細胞。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下した5−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項22に記載の宿主細胞。
- ジデオキシヌクレオチド三リン酸に対する識別能を低下させる変異を有する配列番号5のアミノ酸配列を含む誘導体核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を含む、宿主細胞。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下したジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能を有する、請求項24に記載の宿主細胞。
- 配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4を含む核酸ポリメラーゼをコードする単離された核酸を含む、宿主細胞。
- 配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含む、単離された核酸ポリメラーゼ。
- 5−3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる変異を有する配列番号5を含む、単離された誘導体核酸ポリメラーゼ。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下した5−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項28に記載の単離された誘導体核酸ポリメラーゼ。
- ジデオキシヌクレオチド三リン酸に対する識別能を低下させる変異を有する配列番号5を含む、単離された誘導体核酸ポリメラーゼ。
- 前記誘導体核酸ポリメラーゼが、配列番号5のアミノ酸配列を含む核酸ポリメラーゼと比較して低下したジデオキシヌクレオチド三リン酸識別能を有する、請求項30に記載の単離された誘導体核酸ポリメラーゼ。
- 核酸ポリメラーゼを含む容器を備えるキットであって、該核酸ポリメラーゼは、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含む、キット。
- 未標識ヌクレオチド、標識ヌクレオチド、ヌクレオチドのバランスのとれた混合物、鎖終結ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、緩衝溶液、マグネシウム含有溶液、クローニングベクター、制限エンドヌクレアーゼ、配列決定プライマー、逆転写酵素含有溶液、またはDNA増幅プライマーもしくはRNA増幅プライマーを含む容器をさらに備える、請求項32に記載のキット。
- DNA配列決定反応、DNA増幅反応、逆転写反応、RNA増幅反応またはプライマー伸長反応を実施するために適合されている、請求項32に記載のキット。
- 配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8を含む核酸ポリメラーゼを作製する方法であって、該方法は、RNAの転写および翻訳に十分な条件下で、プロモーターに作動可能に連結した、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8を含むポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞をインキュベートする工程を包含する、方法。
- 前記核酸が、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4を含む、請求項35に記載の方法。
- 請求項35に記載の方法によって作製された核酸ポリメラーゼ。
- DNAを合成する方法であって、該方法は、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8を含むポリペプチドを、DNAの重合を可能にするのに十分な条件下で、DNAと接触させる工程を包含する、方法。
- 核酸の熱サイクルによる増幅のための方法であって、該方法は、以下:
(a)核酸を、該核酸の増幅に適切な条件下で、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8を有する熱安定性ポリペプチドと接触させる工程、および
(b)該核酸を増幅する工程、
を包含する、方法。 - 前記核酸の熱サイクルによる増幅が、変性、プライマーアニーリングおよびプライマー伸長のサイクルを含む、請求項39に記載の方法。
- 前記核酸の熱サイクルによる増幅が、鎖置換増幅によって実施される、請求項39に記載の方法。
- 前記DNAの熱サイクルによる増幅が、ポリメラーゼ連鎖反応によって実施される、請求項39に記載の方法。
- DNAをプライマー伸長する方法であって、該方法は、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8を含むポリペプチドを、DNAの重合を可能にするのに十分な条件下で、核酸と接触させる工程を包含する、方法。
- 前記核酸がDNAである、請求項43に記載の方法。
- 前記プライマー伸長が、前記核酸を配列決定するために実施される、請求項43に記載の方法。
- 前記プライマー伸長が、前記核酸を増幅するために実施される、請求項43に記載の方法。
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