JP2005510460A - 分子 - Google Patents

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Abstract

ポリペプチドの未変性状態を安定化する方法であって、前記ポリペプチドの未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で前記ポリペプチドに結合する能力を有する安定化分子に、前記ポリペプチドをばく露するステップを含む方法を開示する。

Description

本発明は、ポリペプチドに関し、具体的にはポリペプチドの未変性コンフォメーションを安定化する能力を有する分子に関する。
三次構造の維持はタンパク質の活性にとって極めて重要である。例えば、タンパク質のコンフォメーションは、他の分子と結合するその能力またはその酵素活性に、不可欠な役割を果たしている。タンパク質のコンフォメーションが、例えば変性などによって乱されると、失活が起こりうる。
腫瘍抑制遺伝子p53は細胞を癌から守るうえで、重要な役割を果たしている。これは転写因子であって、正常細胞には低レベルで存在し、DNA損傷に応答して、または正常な細胞成長にとって危険があるような他の条件に応答して誘導される(Huppら、2000;SigalおよびRotter、2000に総説がある)。p53は、その細胞内レベルの増加に続いて、いくつかの遺伝子を活性化し、遺伝子に障害を有する細胞の増殖を妨げる細胞プロセスを引き起こす。これは細胞周期停止を媒介することによって、またはアポトーシスによって達成される。
ヒト癌は、その50%以上が、p53をコードする遺伝子に、その不活化をもたらすミスセンス突然変異を有している(HainautおよびHollstein、2000)。そのような突然変異は、ほぼすべてが、DNA結合コアドメイン内にある(HainautおよびHollstein、2000)。最もよく見られる6つの癌関連突然変異は、「ホットスポット」と呼ばれるR175H、G245S、R248Q、R249S、R273HおよびR282Wである。これらの突然変異は、p53コアドメインの結晶構造(Choら、1994)に基づいて、2つのカテゴリー、すなわち(1)DNA結合残基の喪失をもたらすDNA接触突然変異(DNA-contact mutation)(R248およびR273)と、(2)p53コアドメインの構造変化(これは局所的な歪みから完全なアンフォールディングまでさまざま形をとりうる)をもたらす「構造突然変異」とに、分類することができる。突然変異体の熱力学的安定性およびDNA結合特性に基づく突然変異データベースの新たな評価(Bullockら、2000)によれば、大きくわけて3つの表現型、すなわち(i)フォールディング/安定性にはほとんど影響を及ぼさないDNA接触突然変異(例えばR273H)、(ii)局所的な歪みを、主にDNA結合部位の近傍に引き起こす突然変異(例えばR249S、これによる不安定化は通常、2kcal/mol未満である)、および(iii)3kcal/molを超える不安定化(例えばI195T)をもたらす全体的アンフォールディングを引き起こす突然変異(例えばコアドメインβサンドイッチ内の突然変異)に分類される。
p53のC末端調節ドメインに由来する短いペプチドによる突然変異体コアドメインの活性化(Abarzuaら、1996;Huppら、1995;Selivanovaら、1997;Selivanovaら、1999)が、p53を安定化する手段として提案されている。これらのペプチドは、コアドメインを安定化するのではなく、コアドメイン活性を特異的に調節することによって作用する。したがって、このような先行技術ポリペプチドは本願発明とは無関係である。
癌を治療するためにp53突然変異体および腫瘍抑制タンパク質の他の突然変異体をレスキューして腫瘍抑制活性を回復する手段を提供することは、当分野における課題である。腫瘍遺伝子中の突然変異は腫瘍活性を引き起こすことも知られている。そのような腫瘍原性突然変異をレスキューする手段を提供することも、当分野における課題である。
本発明者らは、腫瘍抑制タンパク質および腫瘍遺伝子タンパク質の突然変異体の種類が異なると、異なるレスキュー戦略が必要であることを、初めて認識した。例えば、腫瘍抑制タンパク質のDNA接触突然変異体をレスキューするには、DNAとの新たな接触を確立して欠けている接触を補う官能基を、導入する必要がある。我々は、全体的にアンフォールドした突然変異体または局所的に歪んだ突然変異体のレスキューを、当該突然変異体のリフォールディングをもたらし、それが結果として野生型p53活性の回復をもたらすような安定化によって、達成しうることを発見した。
突然変異型p53のレスキューはCP−31398などの小分子によって達成できると報告されている。CP−31398は、活性なコンフォメーションをとっている新たに合成されたp53だけを安定化し、それがこの画分の時間依存的な蓄積を可能にするとされている(Fosterら、Science,vol 286,1999,2507-2510)。しかし、我々も他のグループも、実際にはCP−31398がp53の活性なコンフォメーションを安定化するようには働かないことを、見いだしていない。
したがって我々は、タンパク質の未変性コンフォメーションを、当該未変性コンフォメーションを安定化するような形で結合する能力を有する分子を、初めて提供するものである。我々はそのような分子を「安定化分子」と呼ぶ。未変性コンフォメーションを安定化することにより、ポリペプチドのアンフォールドした、変性した、そして/または不活性なコンフォメーションと、適切にフォールドした、未変性の、そして活性な形態との平衡を、後者の側にシフトさせることが可能になる。その結果、未変性タンパク質の蓄積が起こる。本発明の安定化分子は、好ましくは、変性/不活性型のペプチドに結合せず、そのため、活性なコンフォメーションを選択的に安定化する。
したがって、第一の態様として、本発明は、ポリペプチドの未変性状態(native state)を安定化する方法であって、該方法は、該ポリペプチドの未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で該ポリペプチドに結合する能力を有する安定化分子に、該ポリペプチドをばく露(expose)するステップを含む方法を提供する。
本発明の上記の態様によれば、好ましくは、前記ポリペプチドは、未変性状態で存在するように可逆的に変性され、前記安定化分子は変性状態の前記ポリペプチドには結合しない。
本発明のさらなる態様によれば、系において可逆的に変性するポリペプチドの未変性状態の濃度を増加させる方法であって、該系は、第一の未変性状態および第二の変性状態の該ポリペプチドを含み、該方法は、(a)該第一の未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で該ポリペプチドに結合し、これにより該ポリペプチドの第一の未変性状態を安定化する安定化分子を供するステップと、(b)該安定化分子を該ポリペプチドに結合させるステップとを含む方法が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、ポリペプチド中に突然変異を含む生物の野生型表現型を回復する方法であって、該突然変異は、該ポリペプチドの変性および突然変異体表現型をもたらし、該方法は、機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で未変性状態の該ポリペプチドに結合し、これにより該ポリペプチドの未変性状態を安定化する安定化分子に、該生物または該生物の一部をばく露するステップを含む方法が提供される。
本発明のさらにもう一つの態様として、患者の疾患を処置する方法であって、該疾患は、ポリペプチドの変性をもたらす該ポリペプチド中の突然変異によって起こるか、またはそのような突然変異に関係し、該方法は、該ポリペプチドの未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で該ポリペプチドに結合し、これにより該ポリペプチドの未変性状態を安定化する安定化分子を、該患者に投与するステップを含む方法も提供される。
好ましい実施形態では、安定化分子は、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーではない。好ましくは、安定化分子は、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーの断片からなる。より好ましくは、安定化分子は、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーのポリペプチド結合ドメイン(好ましくは結合ループ)を含むように操作されたポリペプチドである。
安定化分子は、ポリペプチドまたは系に、ポリペプチドの天然の結合パートナーの存在下でばく露することができる。好ましくは、安定化分子とポリペプチドまたは結合部位との間の結合親和性は、ポリペプチドの天然の結合パートナーとポリペプチドまたは結合部位との親和性よりも低い。より好ましくは、ポリペプチドと天然の結合パートナーとの間の結合を可能にするように、安定化分子と結合部位との間の結合はポリペプチドを安定化する。最も好ましくは、ポリペプチドと天然の結合パートナーとの間の結合は、ポリペプチドの未変性状態を安定化する。
本発明のさらにもう一つの態様によれば、ポリペプチドと該ポリペプチドの天然の結合パートナーとの間の結合を補助する方法であって、本明細書に記載する方法によって前記ポリペプチドの未変性状態を安定化するステップと、前記安定化されたポリペプチドを前記天然の結合パートナーにばく露するステップとを含む方法が提供される。
本発明は、さらにもう一つの態様として、ポリペプチドと第一の分子との間の結合を補助する方法であって、該ポリペプチドは未変性状態および変性状態で存在し、該方法は、(a)該ポリペプチドの未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位に結合する能力を有する第二の安定化分子を供するステップと、(b)該第二の安定化分子を該ポリペプチドに結合させて複合体を形成させ、これにより該ポリペプチドの未変性状態を安定化するステップと、(c)該ポリペプチドと、結合した第二の安定化分子との複合体を、該第一の分子にばく露するステップと、(d)該第一の分子を該ポリペプチドに結合させ、これにより該第二の安定化分子を置き換えるステップとを含む方法を提供する。
機能部位は、好ましくは、構造ドメイン、タンパク質結合ドメイン、核酸結合ドメイン、もしくは酵素の活性部位を含むか、またはそれらと少なくとも部分的にオーバーラップする。より好ましくは、機能部位は、ポリペプチドの構造もしくは活性またはその両者にとって不可欠である。
本発明の極めて好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、腫瘍原性タンパク質(oncogenic protein)または腫瘍抑制タンパク質を含む。好ましくは、前記ポリペプチドはp53である。より好ましくは、前記ポリペプチドは、突然変異(好ましくはR175H、G245S、R248Q、R249S、R273H、R282WおよびI195T)を含むp53であり、該突然変異は前記ポリペプチドの可逆的変性をもたらす。
安定化分子は、REDEDEIEWという配列を有するCDB3ポリペプチドを含みうる。好ましくは、このペプチドはそのN末端をフルオレセインで標識しうる。そのようなペプチドはFl−CDB3と呼ばれ、Fl−REDEDEIEWという配列を有する。
本発明のさらにもう一つの態様として、ポリペプチドの未変性状態に結合してそれを安定化するが、該ポリペプチドの変性状態に結合してそれを安定化することはない安定化分子であって、該ポリペプチドの機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位に結合し、該ポリペプチドの天然の結合パートナーからは構成されない安定化分子が提供される。
好ましくは、前記ポリペプチドはp53である。より好ましくは、前記ポリペプチドは、突然変異(好ましくはR175H、G245S、R248Q、R249S、R273H、R282WおよびI195T)を含むp53であって、該突然変異は前記ポリペプチドの可逆的変性をもたらす。最も好ましくは、安定化分子は、REDEDEIEWという配列を有するCDB3ポリペプチドを含む。
本発明のさらにもう一つの態様によれば、我々は、ポリペプチドを安定化する能力を有する安定化分子を同定する方法であって、該ポリペプチドは未変性状態および変性状態で存在するように可逆的に変性することができ、該方法は、(a)機能部位を含む該ポリペプチドの未変性状態を供するステップと、(b)該ポリペプチドを候補安定化分子にばく露するステップと、(c)該ポリペプチドの未変性状態の機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位に結合する該候補安定化分子を選択するステップと、(d)該結合が該ポリペプチドの未変性状態を安定化するかどうかを決定するステップとを含む方法を提供する。
本発明のさらにもう一つの態様によれば、ポリペプチドを安定化する能力を有する安定化分子を同定する方法であって、該ポリペプチドは未変性状態および変性状態で存在するように可逆的に変性することができ、該方法は、(a)該ポリペプチドの機能部位を同定して、その機能部位を含むポリペプチド断片を供するステップと、(b)該ポリペプチド断片に、機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で結合する候補安定化分子を選択するステップと、(c)該選択された候補安定化分子がポリペプチドの未変性状態を安定化するかどうかを決定するステップとを含む方法が提供される。
前記ポリペプチド断片は、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーへの結合部位を含む機能部位を含みうる。
本発明のさらにもう一つの態様によれば、ポリペプチドを安定化する能力を有する安定化分子であって、先に挙げた本発明の2つの態様の方法によって同定される安定化分子が提供される。
本明細書に記載する安定化分子は、好ましくは、天然のもしくは誘導体化された炭水化物(derivatised carbohydrate)、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、核酸、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質−核酸(PNA)または小分子化合物を含む。本明細書に記載する方法では、そのような誘導体化されたまたは天然の安定化分子を使用することができる。より好ましくは、安定化分子は、糖、ホスフェート、アミン、アミド、サルフェート、スルフィド、ビオチン、蛍光団または発色団で誘導体化されてもよい。最も好ましくは、安定化分子は、蛍光団、好ましくはフルオレセインを使って誘導体化することができる。
前記ポリペプチドへの安定化分子の結合は、NMR分光法(NMR spectroscopy)、好ましくは異種核NMR分光法(heteronuclear NMR spectroscopy)、蛍光異方性(fluorescence anisotropy)、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)または示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を使って検出することができる。
本発明のさらにもう一つの態様として、我々は、先に挙げた本発明の関連態様による疾患処置用の安定化分子を提供する。
本発明者らは、本発明の安定化分子がアポトーシスの発生または進行を誘導するのに特に役立ちうることを見いだした。
したがってさらにもう一つの態様として、本発明は、1つまたは複数の細胞におけるアポトーシスの発生または進行を誘導する方法であって、該1つまたは複数の細胞を本発明の安定化分子で処置するステップを含む方法を提供する。
さらにもう一つの態様として、本発明は、1つまたは複数の細胞を安定化分子で処置するステップを含む、前記1つまたは複数の細胞におけるアポトーシスの発生または進行を誘導するための医薬品の調製における安定化分子の使用を提供する。
本発明の上記の態様によれば、好ましくは、安定化分子は本明細書に記載するCDB3ペプチドである。
本明細書にいう「アポトーシス」または細胞死とは、形質膜が完全な状態を保ったまま細胞核の凝集とそれに続く断片化が起こることを特徴とする制御された細胞内プロセスを指す。このプロセスではアスパラギン酸残基を切断するカスパーゼを含む酵素のカスケードが活性化される。
アポトーシスを誘導する方法は、当業者にはよく知られており、例えば化学療法剤または放射線療法剤へのばく露、また可能であれば必須生存因子の使用中止などが挙げられる。処置細胞と無処置細胞との間の相違は、試験化合物に起因すると考えることのできる効果を示す。
アポトーシスを測定する方法は、当業者にはよく知られており、本明細書でも説明する。
本発明のさらにもう一つの態様によれば、本明細書に記載する安定化分子と、医薬的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤と含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらにもう一つの態様によれば、疾患処置用医薬品の製造における本明細書記載の安定化分子の使用を提供する。
さらにもう一つの態様によれば、本発明は、疾患の処置における本明細書記載の安定化分子の使用を提供する。
好ましくは、前記疾患は癌である。
本発明は、ポリペプチドの未変性型に結合することによってそれを安定化する能力を有する安定化分子の提供に依拠している。
ポリペプチドが、未変性の、適切にフォールドした、または活性な形態と、変性した、アンフォールドした、または不活性な形態との間で平衡状態にある場合、安定化分子がポリペプチドの未変性型に結合することにより、その未変性型が安定化され、フォールドした、活性な、または未変性型の方向に平衡が動く。このように安定化分子は、変性型と比較した未変性型ポリペプチドの相対濃度を増加させることができる。そのような安定化分子は未変性状態のポリペプチドには結合するが、変性状態のポリペプチドには結合しない。質量作用の法則により、そのような場合には、平衡が未変性状態側にシフトし、活性タンパク質の量が増加することになる。
好ましくは、ポリペプチドは可逆的に変性する。言い換えると、どのような系にあっても、ポリペプチド分子の一部は未変性の、フォールドした、または活性な形態をとり、ポリペプチド分子の一部は不活性な、アンフォールドした(部分的アンフォールドであるか完全なアンフォールドであるかを問わない)、または変性した形態をとっている。そのような変性はさまざまな方法で起こりうるものであり、本発明は、それらのどの状況における使用にも適している。例えばポリペプチドは、非生理的環境へのばく露などによって、その変性をもたらす環境にばく露される場合がある。ポリペプチドは空気へのばく露によって酸化されたり、熱、高塩濃度または低塩濃度などへのばく露によって変性したりする場合がある。ポリペプチドは補因子の除去によって変性する場合もある。
しかし、極めて好ましい実施形態では、ポリペプチドの可逆的変性は遺伝子突然変異に起因して起こる。例えば、ポリペプチドの配列に突然変異があると、そのポリペプチドに不安定化が起こり、変性する傾向が生じる。好ましくは、そのような突然変異は、ポリペプチドの失活をもたらす。突然変異は、ポリペプチドの突然変異体表現型、またはその突然変異体表現型を有する細胞、組織もしくは生物をもたらす場合もあり、そのような突然変異体表現型は、突然変異を有さないポリペプチドすなわち野生型ポリペプチドに伴う野生型表現型とは、検出可能な何らかの点で相違する。したがって本発明の方法はそのような突然変異体表現型をレスキューするのに適している。これらの方法は、突然変異体型のタンパク質、例えば突然変異体型の腫瘍遺伝子タンパク質または腫瘍抑制タンパク質を、当該タンパク質の未変性状態には結合するが、変性状態には結合せず、結果としてこれら2つの形態の間に存在する平衡を未変性状態の方へシフトさせる安定化分子によってレスキューするためにも使用することができる。
突然変異型の腫瘍遺伝子および腫瘍抑制タンパク質は腫瘍形成に関与することが知られている。上述のように、そのような突然変異は当該ポリペプチドの部分的変性と失活につながる場合がある。したがって本発明の方法は、そのような突然変異型腫瘍遺伝子および/または腫瘍抑制タンパク質を安定化し、野生型活性を回復させるのに適している。それゆえに、本明細書に記載する方法は、腫瘍遺伝子および腫瘍抑制因子の野生型活性をレスキューするのに適しており、したがって腫瘍形成および/または癌を防止するのに適している。腫瘍遺伝子は、好ましくは、p21rasまたは当分野で知られている他の任意の腫瘍遺伝子を含む。腫瘍抑制因子は、好ましくは、p53または網膜芽細胞腫タンパク質を含む。このp53は部分変性(好ましくは可逆的変性)をもたらす突然変異を有しても良い。そのような突然変異の例としては、R175H、G245S、R248Q、R249S、R273HおよびR282Wが挙げられる。
さらに、多くの疾患は、ポリペプチド突然変異によって引き起こされるか、またはポリペプチド突然変異に関係し、それらの突然変異は当該タンパク質の不安定化および可逆的変性をもたらしうることが知られている。本明細書に記載する安定化分子を、そのような疾患を患っている患者に投与すれば、前記ポリペプチドの未変性型が安定化され、変性型に対する未変性型の量または相対濃度が増加するだろう。したがって安定化分子の投与は、そのような突然変異に関係する疾患またはそのような突然変異によって引き起こされる疾患を処置するために使用することができる。
極めて好ましい実施形態では、安定化分子は、前記ポリペプチド中の機能部位を含む部位に結合するか、または前記ポリペプチド中の機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位に結合する。安定化分子が結合する部位は、好ましくは、機能部位とオーバーラップするか、または機能部位からなる。そのような機能部位は、好ましくは、当該ポリペプチドの関連活性にとって不可欠な部位を含む。機能部位は当該ポリペプチドの構造にとって不可欠な部位であってもよい。機能部位は、細胞内の他の分子(例えば他のポリペプチド、小分子、リガンド、高分子、核酸などを含む当該ポリペプチドの天然の結合パートナーなど)と相互作用する相互作用部位であってもよい。
そのような機能部位の例としては、当該ポリペプチドが酵素である場合には、活性部位または基質結合部位が挙げられる。結合タンパク質の場合、機能部位は、当該ポリペプチドの結合部位または結合ドメインを含むか、当該ポリペプチドの結合部位または結合ドメインと少なくともオーバーラップする。例えば核酸結合部位の場合、機能部位は核酸結合部位、例えばDNA結合タンパク質中のDNA結合部位またはRNA結合タンパク質中のRNA結合部位を含む。当該ポリペプチドが他のポリペプチドと相互作用する場合、すなわち当該ポリペプチドがポリペプチド結合活性を有する場合、機能部位は、好ましくは、ポリペプチド相互作用ドメインまたはポリペプチド相互作用配列を含む。すなわち、機能部位は、他のポリペプチドと相互作用する配列を含むか、他のポリペプチドと相互作用する配列とオーバーラップするか、または他のポリペプチドと相互作用する配列である。
したがって好ましくは、ポリペプチドの未変性状態を安定化することによって、当該ポリペプチドに対する他の分子の結合が可能になる。当該他の分子は、好ましくは、安定化分子とは異なる分子であるか、安定化分子とは無関係な分子である。例えば、安定化分子でポリペプチドを安定化することにより、好ましくは、機能部位の適切なコンフォメーションを当該ポリペプチド中に維持することが可能になり、その結果、他の分子の結合が可能になる。当該他の分子は、好ましくは、当該ポリペプチドの天然の結合パートナー(例えばポリペプチドがDNA結合タンパク質である場合はDNA)である。
したがって安定化分子は、前記ポリペプチドまたは機能部位への結合に関して、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーと競合する能力を有する。しかし好ましくは、前記ポリペプチドに対する安定化分子の結合親和性は、前記ポリペプチドに対する天然の結合パートナーの結合親和性よりも低い。したがって天然の結合パートナーは、機能部位または天然の結合パートナーの結合部位から安定化分子を追い出す能力を有する。したがって、この好ましい実施形態では、前記ポリペプチドに対する安定化分子の結合は、前記ポリペプチドに対する天然の結合パートナーの結合を可能とするのに十分な長さにわたって、前記ポリペプチドの未変性状態を安定化する。
未変性状態への安定化分子の結合は、平衡を、この状態に向かってシフトさせる。したがって、好ましくは、安定化分子はその安定化活性にエネルギーを必要としない。本明細書に記載する安定化分子は、古典的なシャペロン活性とは対照的に、ポリペプチドを能動的にリフォールドさせるのではない。
好ましくは、機能部位は、未変性の、活性な、または適切にフォールドした形態のポリペプチドだけに存在する。より好ましくは、機能部位は、変性型ポリペプチドには存在しない。好ましくは、未変性型ポリペプチドに対する安定化分子の結合親和性は、変性型ポリペプチドに対する結合親和性よりも大きい。極めて好ましい実施形態では、安定化分子は実質上、未変性型ポリペプチドだけに結合し、変性型ポリペプチドには結合しない。
小さい安定化分子も包含されるが、好ましい安定化分子はポリペプチドを含み、好ましくは、安定化しようとするポリペプチドの天然の結合パートナーに由来するポリペプチドを含む。これにより、小分子の合成に伴う困難と費用を抑えることができる。また、同定された小分子の合成手順をスケールアップするのは困難であることが多い。
安定化しようとするポリペプチドの天然の結合パートナーを安定化分子として使用してもよいが、極めて好ましい一実施形態は、当該ポリペプチドの天然の結合パートナーではない安定化分子の使用に依拠する。これは、安定化分子が、好ましくは、自然界には存在しないが未変性型の当該ポリペプチドに結合してそれを安定化する能力を有する、操作された分子であることを意味する。操作された安定化分子は、組換えDNA技術を含む当分野で知られている手段によって作製することができる。それら操作された安定化分子は、好ましくは、天然の結合パートナーの断片(好ましくは結合活性を含む断片)を含むか、またはそれらの断片からなる。したがって、例えば安定化分子がポリペプチドである場合、これはポリペプチド結合配列、ループまたはドメインからなるか、またはそれらを含むとよい。その一例は、p53結合ポリペプチド53BP2(アクセッション番号NM_005426.1)の一断片であるCDB3からなる安定化分子である。
安定化分子が突然変異型タンパク質のレスキューに単独で作用しうることは、当業者には理解されるだろう。また、安定化分子は、タンパク質のレスキューに、他のペプチドまたは他の安定化分子と共同して作用する場合もある。1つまたは複数のペプチドまたは分子との間には相加的効果がみられる場合もあるし、相乗作用する場合もある。
好ましい一態様として、前記ポリペプチドは、腫瘍原性タンパク質または腫瘍抑制タンパク質、好ましくは突然変異型腫瘍原性タンパク質または突然変異型腫瘍抑制タンパク質であるタンパク質はp53であること、好ましくはp53の突然変異体であると有利である。腫瘍抑制タンパク質は網膜芽細胞腫タンパク質(RB=)を含むことができる。このリストが決して網羅的なリストでないことは、当業者には理解されるだろう。
未変性ポリペプチドへの安定化分子の結合は、当分野で知られている任意の適切な手段を使って検出することができる。好ましい手段として、NMR分光法などの物理的方法が挙げられる。好ましい一実施形態ではNMRに異種核NMR分光法を使用する。結合は表面プラズモン共鳴を使って検出することもできる。もう一つの選択肢として、未変性型ポリペプチドへの安定化分子の結合は、示差走査熱量測定(DSC)および/または蛍光異方性を使って検出される。これらの方法はすべて当業者にはよく知られており、本明細書でも詳述する。
これに代わる実施形態として、ポリペプチドの各状態(すなわち未変性状態または変性状態)への安定化分子の結合は、1つまたは複数のモノクローナル抗体に対するエピトープであって、一方の形態のポリペプチドにしか存在しないエピトープを発現させるポリペプチド試料の画分を調べることによって、検出することもできる。タンパク質のコンフォメーション変換を検出するのに適した他の方法には、例えば電気泳動や、薄層クロマトグラフィーなども含まれる。当業者には他の適切な方法もわかるだろう。
ある実施形態ではポリペプチドはDNA結合タンパク質を含む。突然変異型のDNA結合ポリペプチドは、DNAと結合することができない変性型を含む。DNAと結合することができないアンフォールドしたまたは歪んだ腫瘍原性タンパク質と結合して、変性状態と未変性「野生型」状態との間に存在する平衡を後者の側にシフトさせるような安定化分子が提供される。そうするとDNAは突然変異型タンパク質と結合して、好ましくはペプチドである前記分子を追い出すことができるので、当該分子は再び自由に他のタンパク質分子と結合することができるようになる。
好ましい一態様では、ポリペプチドの変性がそのポリペプチド中の突然変異に起因する。そのような突然変異は野生型と比較して局所構造の歪みを引き起こしうる。DNA結合タンパク質の場合、突然変異型タンパク質は主としてDNA結合部位の近傍に突然変異を含みうる。このタイプの典型的な突然変異型タンパク質は、2kcal/mol未満の不安定化を起こすだろう。「突然変異型タンパク質」という用語の範囲には、全体的なアンフォールディングを引き起こす突然変異を、例えばp53などのDNA結合タンパク質のコアドメインβサンドイッチ内などに持つタンパク質も包含される。このタイプの典型的突然変異型タンパク質は、3kcal/molを超える不安定化を起こすだろう。タンパク質のフォールディングまたは安定性にはほとんど影響を及ぼさない接触突然変異体は、ここに定義する「突然変異型タンパク質」という用語の範囲には包含されない。
本明細書においてコアドメインとは、タンパク質(好ましくはp53タンパク質)のうち、一般に明確な二次および/または三次アミノ酸コンフォメーションを有する領域を表す。これは一般に、当該タンパク質の残りの部分が存在しなくても構造的に安定であり、好ましくは、当該タンパク質に構造上の安定性を付与する。この領域内に突然変異が生じると、しばしば構造的に不安定になり、そのタンパク質の部分的なまたは完全なアンフォールディングおよび/または機能的活性の喪失が起こる。
腫瘍原性タンパク質には、癌の発生または維持に役割を果たすタンパク質が含まれる。また、本明細書における「腫瘍原性タンパク質」という用語の範囲には、癌の発生または維持の抑制および/または防止に役割を果たすタンパク質も包含される。この種の腫瘍原性タンパク質には、p53などの腫瘍抑制タンパク質が含まれる。
「未変性状態」にあるポリペプチドは、野生型ポリペプチドのコンフォメーションに相当するコンフォメーションを含みうる。このポリペプチドは、明確な三次元構造を有することができ、本来の生物学的活性および/または結合活性を有しうる。本明細書において「変性ポリペプチド」とは、未変性/野生型タンパク質と比較して、少なくとも部分的に構造的な歪みを生じかつ/またはアンフォールドしているタンパク質を表す。一般に、変性タンパク質には、野生型または未変性タンパク質と比較して、生物学的活性の少なくとも部分的な喪失および/または変化が起こっている。
ある一組の条件における未変性ポリペプチドの(変性ポリペプチドに対する)割合が、レスキューされていないポリペプチドと比較して増加する場合に、ポリペプチド(好ましくは突然変異型ポリペプチド)は「レスキューされる」。正常な生物学的活性および/または結合活性および/または構造を有する未変性型のタンパク質が、好ましくはかなりのポリペプチド分子数まで回復しうる。好ましくは、レスキューされるポリペプチド分子の一部は、野生型または未変性タンパク質と同じ構造コンフォメーションを有する。本明細書に記載する方法は、好ましくは、未変性ポリペプチドの割合を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上増加させることができる。好ましくは、あるポリペプチド集団のうち、50%またはそれ以上、好ましくは60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の分子が、未変性状態にある。最も好ましくは、ある集団内のポリペプチド分子の実質上すべてが未変性状態にある。
別段の定義を設けない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて(例えば細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学などの)当業者に一般に理解されているとおりの意味を有する。分子的、遺伝学的および生化学的方法(概要については、参考として本明細書に組み込むSambrookら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第二版(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)およびAusubelら「Short Protocols in Molecular Biology」(1999)第4版(John Wiley & Sons,Inc.)を参照されたい)ならびに化学的方法には、標準的技術を使用する。また、標準的な免疫学技術については、HarlowおよびLane「A Laboratory Manual」(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)が挙げられる。
[安定化分子]
安定化分子は問題のポリペプチドの未変性型に結合する能力を有する。安定化分子の結合部位は、前記タンパク質の機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップするか、その機能部位を含むか、またはその機能部位に含まれうる。
ポリペプチドへの安定化分子の結合は、その安定化分子が当該ポリペプチドの未変性型を安定化するような結合でなければならない。したがって、安定化分子の結合部位は、未変性型ポリペプチド中に存在する必要がある。安定化分子の結合部位は、変性型ポリペプチド中には存在しないことが好ましい。しかしそうである場合には、安定化分子は変性型よりも高い親和性で未変性型に結合すべきである。すなわち安定化分子は未変性型のポリペプチドに優先的に結合すべきである。
結合部位またはポリペプチドへの安定化分子の結合は、任意の既知機構によって、例えばイオン結合、共有結合、極性結合、塩橋、ファンデルワールス相互作用、疎水相互作用などによって起こりうる。安定化分子は、例えばポリペプチドを特定のコンフォメーションに保つことによって、またはコンフォメーション変化を誘導することによって、そのポリペプチドを安定化しうる。安定化は安定化分子がポリペプチドに結合したときに起こるという点以外は、安定化分子が未変性型のポリペプチドを安定化する機序は重要ではない。好ましくは、安定化分子は変性型には結合しないか、変性型に(上述したように未変性型より低い親和性で)結合する場合は、変性型を実質的には安定化しない。安定化が起こる場合、変性型に起こる安定化の程度は、未変性型の安定化よりも低い。
ポリペプチドまたはポリペプチドのある形態の「安定化」という場合、これは、そのポリペプチドまたはその形態が、安定化していない場合よりも、アンフォールディングを、またはもう一つの形態への変換を、起こしにくいことを意味すると解釈すべきである。安定化されたポリペプチドは、好ましくは、安定化されていないポリペプチドよりも高い融点(Tm)を有するだろう。例えば、ポリペプチドの安定化により、そのポリペプチドの見かけのTmは上昇する。好ましくは、Tmは0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30度またはそれ以上、上昇する。Tmを測定する手段は、当分野では知られている。
安定化は、kCal/molまたはこれと等価な測定値、例えばkJ/molなどの形で評価することもできる。好ましくは、安定化されたポリペプチドは、安定化されていない分子と比較して、0.5、1、1.5、2、2.5、3kCal/molもしくはkJ/molまたはそれ以上の増加を示す。
安定化という用語を使って、当該ポリペプチドの一方の形態からもう一つの形態への平衡のシフトを表してもよい。例えば、ポリペプチドの一つの形態を安定化することにより、関連集団中でその形態をとっているポリペプチドの割合を高くすることができる。
さらに安定化は、ある形態のポリペプチドが一つの形態で存在している時間をもう一つの形態で存在している時間と比較することによって、評価することもできる。
安定化分子はさまざまな手段によって同定することができる。適切な候補は、活性部位または機能部位で、またはその近傍で、ポリペプチドに結合する分子から同定することができる。候補は、問題のポリペプチドに結合する既知分子から同定することができる。そのような分子はポリペプチド、小分子、核酸などを含みうる。そのような分子の断片、例えば既知結合ポリペプチドの、例えば結合部位を含む断片を作製し、スクリーニングすることができる。安定化しようとするポリペプチド自体の断片も、候補として作製することができる。これらには、機能部位と相互作用してそれを安定化するポリペプチド内の断片、または好ましくは結合部位近くにもしくは結合部位に結合することによって、ポリペプチド全体の安定化に関与するポリペプチド内の断片を、好適に含めることができる。後述する具体的実施例では、候補結合ペプチドをp53分子そのものから作製し、p53の安定化についてアッセイする。
当分野で知られているように、そのような分子を同定するためのアッセイを使用することができる。例えばライブラリー(例えばコンビナトリアルライブラリーまたは核酸ライブラリー、あるいはファージディスプレイなどによって宿主上に発現させてもよいポリペプチドライブラリーなど)を、ポリペプチドまたは機能部位を含むポリペプチドの断片への結合に関して、スクリーニングすることができる。大量スクリーニングでは候補分子またはポリペプチドもしくはそれらの断片のアレイを使用してもよい。既知結合分子についてはデータベース検索を行って候補を同定することができる。ELISA、ゲルシフトアッセイ、または以下に詳述するような他の方法を使って、結合アッセイを行ってもよい。
本明細書で使用する「機能部位」という用語は、当該ポリペプチドの関連活性の維持に関与する部位を指す。機能部位は多くのポリペプチドで知られており、タンパク質データベースまたは関連ポリペプチドに関する文献に挙げられている。そのような機能部位としては結合部位、例えば、他の分子(例えば他のポリペプチド、核酸、またはリガンドなどの他の分子)への当該ポリペプチドの結合を調整する部位を挙げることができる。機能部位には、当該ポリペプチドの構造または活性(活性は結合活性であっても、酵素活性であっても、他のどの種類の活性であってもよい)にとって不可欠な部位も含めることができる。そのような活性をアッセイする方法は問題にしている活性に依存し、当分野では知られているだろう。
同定された候補分子は、例えばポリペプチドの融点を、そのポリペプチドと候補分子との複合体の融点と比較することなどによって、ポリペプチドの未変性型を安定化する能力について調べることができる。
[安定化分子の性質]
本明細書で使用する「安定化分子」という用語には、例えば、原子または無機分子もしくは有機分子、生物学的エフェクター分子および/または生物学的エフェクター分子などの作用因子をコードする核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ウイルス、ウイルス様粒子、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチドの合成類似体、リボヌクレオチドの合成類似体、修飾ヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、アミノ酸、アミノ酸類似体、修飾アミノ酸、修飾アミノ酸類似体、ステロイド、プロテオグリカン、脂質、脂肪酸および炭水化物である分子などが含まれるが、これらに限るわけではない。安定化分子は溶液状態でも懸濁状態(例えば結晶状、コロイド状、または他の粒状)でもよい。安定化分子は、単量体、二量体、オリゴマーなどの形態で、または他の形の複合体として存在しうる。
安定化分子は、当分野で知られている放射性同位体、例えば32Pまたは35Sまたは99Tcなどによって、または核酸、ポリペプチドなどの分子、もしくは放射性同位体と結合させた後述するような他の分子によって標識することができる。安定化分子はX線放射などの放射線に対して不透過であってもよい。安定化分子は、特定の細胞、組織、器官、または動物の体内の他のコンパートメントに安定化分子を誘導するためのターゲティング手段も含みうる。例えば安定化分子は、ある生物中の所定の分子、組織または細胞に特異的な放射標識抗体を含んでもよい。
使用する安定化分子が1つである必要はなく、ポリペプチドを安定化するために2以上の安定化分子を利用することが可能であることは、理解されるだろう。したがって「安定化分子」という用語には、本明細書に開示するような原子、分子などの混合物、融合物、組み合わせおよび結合体も包含される。例えば、安定化分子として、ポリペプチドと組み合わせた核酸、互いに結合させた2以上のポリペプチド、生物学的に活性な分子(これはプロドラッグなどの小分子であってもよい)に結合したタンパク質、または生物学的に活性な分子とイメージング剤との組み合わせなどが挙げられるが、これらに限るわけではない。
「安定化分子」という用語は、さらに、生物学的な系で活性を有する分子も表しうる。生物学的な系で活性を有する分子としては、例えばタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドなど、例えば構造タンパク質、酵素、サイトカイン(インターフェロンおよび/またはインターロイキンなど)、抗生物質、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはその有効部分(例えばFvフラグメント)(この抗体またはその断片は天然抗体、合成抗体またはヒト化抗体であることができる)、ペプチドホルモン、受容体、シグナリング分子、または他のタンパク質など;以下に定義する核酸、例えばオリゴヌクレオチドまたは修飾オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノムDNA、人工染色体もしくは天然染色体(例えば酵母人工染色体)またはその一部、RNA(mRNA、tRNA、rRNAまたはリボザイムを含む)、またはペプチド核酸(PNA)など;ウイルスまたはウイルス様粒子;ヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはその合成類似体(これらは修飾されていても無修飾であってもよい);アミノ酸またはその類似体(これらは修飾されていても無修飾であってもよい);非ペプチド(例えばステロイド)ホルモン;プロテオグリカン;脂質;または炭水化物などが挙げられるが、これらに限るわけではない。無機および有機化学物質を含む小分子も本発明には有用である。
[結合アッセイ]
ポリペプチドへの安定化分子の結合は、NMR分光法など、当分野で知られているさまざまな手段を使って検出することができる。好ましい実施形態として、NMRでは異種核NMR分光法を使用する。もう一つの実施形態ではNMR分光法と蛍光異方性を併用する。もう一つの選択肢として、ポリペプチドへの安定化分子の結合を、表面プラズモン共鳴または示差走査熱量測定(DSC)を使って検出する。
これらの方法はすべて当業者にはよく知られており、本明細書でも以下に詳述する。説明はp53用の安定化分子、例えばCDB3に関するものでありうるが、当業者であれば、これらに変更を加えて、ポリペプチドと安定化分子または候補安定化分子との間の結合を検出し、定量化することができるだろう。
NMR分光法用の試料は、当業者に知られている方法を使って調製することができる。例えば、NMR実験用の試料は、25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中の150mM KCl、5mMジチオスレイトール(DTT)、5%D2Oに、濃度225μMの15N標識ポリペプチド(p53コアドメインなど)と、最終濃度2〜2.5mMの対応する安定化分子(CDBペプチドなど)とを含みうる。115N HSQCスペクトルはWongらの論文(1999)に記述されているように取得することができる。p53コアドメイン−DNA複合体の場合、本明細書に記載する方法での使用に適したDNAは、二本鎖12マーコンセンサスp53結合配列5’−GGAACATGTTCCである。
表面プラズモン共鳴測定はBIACORE 2000を使って、当業者によく知られている方法で行うことができる。例えば、これにはセンサーチップSA(BIAcore AB、スウェーデン・ウプサラ)を装着して、ポリペプチドを安定化分子の結合に関してスクリーニングすることも、ポリペプチドへの安定化分子の結合を定量することもできる。例えばBIACOREは、ペプチドをp53コアドメイン結合に関してスクリーニングするためにも、ペプチドCDB3へのp53コアドメインの結合を定量化するためにも使用することができる。ビオチン化した安定化分子(例えばCDBペプチドなど)を固定化することができ、そうすることで、ポリペプチド(この場合はp53)の結合を調べることができる。
固定化および結合測定はすべて、50mM HEPES(pH7.2)、5mM DTTをランニング緩衝液として、1Hzのサンプル頻度を使って、10℃で行うことができる。チップのストレプトアビジン表面は、ペプチドを固定化する前に、50M NaOH、1M NaClを使って、20μL/分で1分間を3サイクルすることによって、活性化することができる。ビオチン化したペプチドを最終濃度が1.5〜4.0mMになるように(0.13M NaClを添加した上記の緩衝液に)溶解し、それを5μL/分の流量で、飽和レベルに達するまで固定化することができる。上記の実施例では、フローセル1をバルク屈折率の変化に関するバックグランドとして使用することができる。
p53とCDB3に関する一具体例では、固定化したペプチドへの結合に関してスクリーニングするために、さまざまな濃度のp53コアドメインを解析する(上記の緩衝液中0.36〜18μM)。会合相は10μL/分で15分間調べる。結合したタンパク質は、各p53コアドメイン注入間に、1M NaClで1〜3分の再生サイクルを行うことによって、解離させる。
固定化CDB3に対するp53コアドメインの結合親和性は、さまざまな濃度のp53コアドメイン(0.019〜0.19μM)を使った結合等温線の半飽和濃度から見積もる。結合会合は、上記の緩衝液(塩の添加なし)中、20℃にて、30μL/分で5分間測定する。結合時の相対的応答を、p53コアドメイン濃度の対数に対してプロットし、Kaleidagraphソフトウェア(Abelbeck Software)を使って二状態式にあてはめる。
可溶性非標識CDB3の結合親和性は、BIAcoreによる競合実験を使って、上記の緩衝液(塩の添加なし)中、20℃で調べる(Niebaら、1996)。いずれも0.20μM p53コアドメインと、さまざまな濃度のCDB3(0.030〜120μM)とを含む、21個の試料を調製する。20℃で1時間のインキュベーション後に、結合データを、ランダムな試料順序で収集する。会合相を30μL/分で5分間測定した後、表面の再生を上述のように行う。実験時間中は5試料毎に、タンパク質だけを含む対照試料をレファレンスとして解析する。BIAevaluation 3.1ソフトウェア(Biacore AB、スウェーデン・ウプサラ)を使ってデータの最初の150秒に一次式をあてはめることにより、結合の初期会合速度を見積もる。遊離p53コアドメインの相対濃度を記述するこれらのデータ(図3c)を、Kaleidagraphを使って、1:1結合モデル(Niebaら、1996)に従って解析する。測定した結合の会合速度が0.19〜1.9μM(タンパク質のみ)の範囲でp53コアドメインの濃度に比例していることと、増加したイオン強度の影響(高ペプチド濃度によるもの)が会合速度を有意に変化させないこと(0〜20mM NaCl)とを確認するために、対照実験を行う。
蛍光異方性は、結合の測定および/または定量化に利用することができる。例えば、実験ソフトウェアで制御されたHamiltonマイクロラボMディスペンサーを装着したPerkin-Elmer LS−50bルミネセンス分光蛍光計により、フルオレセイン標識CDB3(FL−CDB3、配列:FL−REDEDEIEW−NH2)を使って、10℃で実験を行うことができる。タンパク質の凝集が起こるので、生理的温度での滴定は行うことができない。5mM DTTを含む50mM Hepes緩衝液(pH7.2)にペプチド(〜5μM,900μL)を溶解する。励起波長480nm(バンド幅8nm)および蛍光波長525nm(バンド幅2.5nm)で蛍光異方性を測定する。遊離のペプチドはr=0.04という固有の異方性値を有し、この値はp53コアドメインを添加すると0.20の極限値まで増加した。
さまざな条件下でさまざまなp53野生型および突然変異型コンストラクトと複合体を形成したCDB3に関する解離定数を決定するために、次の実験計画を使用する。すなわち、FL−CDB3(900μl,〜5μM)をキュベットに入れる。適当なp53コンストラクト(240μl,〜50μM)をHamiltonマイクロラボMディスペンサーシリンジに入れる。温度を10℃に保つ。タンパク質を3μLずつ、〜1分ごとに、ペプチド溶液に滴下し、溶液を30分秒撹拌し、異方性を測定する。異方性の増加および総蛍光量の減少をFL−CDB3−p53複合体の蛍光寄与に比例すると解釈する。
異方性および蛍光滴定曲線(希釈について補正したもの)を、次の単純な1:1平衡モデルにあてはめることによって、FL−CDB3−p53複合体に関する解離定数を計算する。
p53+FL-CDB3 ⇔ 複合体 (1)
d=[p53][FL-CDB3]/[複合体] (2)
[複合体]=([p53]0+[FL-CDB3]0+Kd−((Kd−[p53]0+[FLCDB3]02+4*Kd*[p53]01/2)/2 (3)
式中、[p53]0は総タンパク質濃度であり、[FL-CDB3]0は総ペプチド濃度である。
与えられた滴定段階における総蛍光量は、
total=FCDB3*[FL-CDB3]/[FL-CDB3]0+Fcomplex*[複合体]/[FL-CDB3]0 (4)
によって表すことができる。また、与えられた時刻における総異方性は、
total=RCDB3*FCDB3*[FL-CDB3]/[FL-CDB3]0*Ftotal+Rcomplex*Fcomplex*[複合体]/[FL-CDB3]0*Ftotal
である。
この場合、FtotalおよびRtotalはそれぞれ総蛍光量および総異方性であり、FCDB3、Fcomplex、RCDB3、Rcomplexは各分子種の蛍光および異方性値である。Marquardtアルゴリズムおよび実験ソフトウェアを使って、上記の式にデータをあてはめる。
CDB3変異体またはgadd45 30マーDNAが、p53コアドメインの結合部位に関して、フルオレセイン標識CDB3とどのように競合するかを(間接的に)調べるために、競合実験で異方性を測定する。スリット幅(励起光10nm、蛍光8nm)と、DTTを含まない緩衝液に非標識試料を溶解する点以外は、上記と同じ実験条件を使用する。900μLの2.0μM p53コアドメインと0.5μM FL−CDB3とを含むキュベットに、非標識CDB3の原液を、3μLずつ80段階に分けて滴下滴定する。競合ペプチドは90秒毎に加え、溶液を30秒撹拌し、60秒後にモニタリングを開始した。3種類の非標識CDB3原液濃度(0.26、1.3および2.6mM)と1種類のビオチン化CDB3濃度(0.24mM)を使用する。DNAの場合は、5μMと25μMの原液を使用する。
競合剤を添加する前のp53コアドメイン−FL−CDB3複合体の濃度と遊離FL−CDB3の濃度(それぞれ[FP]0および[F]0)は、式(3)と、与えられた解離定数0.53μMを使って計算する。競合ペプチドの原液をn回添加した後の遊離FL−CDB3の濃度[F]nは、
[F]n=(ΔRn/ΔR0)*[PF]0+[F]0 (6)
[式中、ΔR0はFL−CDB3だけ(下限値)からFL−CDB3とp53コアドメインとの混合物への異方性の変化量であり、ΔRnはn回目の添加を行った後の異方性の総変化量である]
によって見積もられる。タンパク質と非標識CDB3との間の複合体の濃度[PU]nは、p53コアドメインの濃度から、次のように決定される。
[PU]n=[P]total−[P]free,n−[PF]n (7)
[U]total(非標識ペプチドの濃度)が[P]total(総タンパク質濃度)に対して過剰である場合は、式(2)を使って非標識CDB3のKdを計算した。
示差走査熱量測定も、結合の検出および/または定量化に使用することができる。示差走査熱量測定は当業者に知られている方法を使って行うことができる。好適な一例では、Microcal VP−DSC微小熱量計(Microcal,マサチューセッツ州アマースト)を使ってDSC実験を行う。ベースライン測定にも利用したHepes緩衝液(pH7.2)、1mM DTTを使って、5℃から95℃までの温度を、60度/時間の速度で走査する。前記の緩衝液中に、FL−CDB3(15〜80μM)の存在下または不在下で、野生型および突然変異型p53コアドメイン(6〜15μM)の試料を調製した後、各実験に先立って15分間の脱気を行う。セルに25psi(1.56気圧)の圧力をかける。Originソフトウェア(Microcal)を使ってデータを解析する。
[ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質]
本明細書に記載する方法は、未変性型のポリペプチドを安定化するのに適している。好ましくは、安定化分子はポリペプチドを含む。本明細書で使用する「ペプチド」「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互いに同義である。
本明細書における「ペプチド」という用語は、互いにペプチド結合で連結された2以上のアミノ酸を包含する。通例、ペプチドは5、10または20個を超えるアミノ酸を有し、600アミノ酸までの任意の長さを有しうる。好ましい実施形態では、ペプチドは200個未満のアミノ酸を有し、特に好ましい実施形態では、ペプチドは100個未満のアミノ酸を有し、さらに好ましい実施形態では、ペプチドは50個未満のアミノ酸を有する。さらに好ましい実施形態では、ペプチドは20個未満のアミノ酸を有する。最も好ましい実施形態では、ペプチドは10個未満のアミノ酸を有する。ポリペプチドまたはタンパク質には、一本鎖ポリペプチド分子と、個々の構成ポリペプチドが共有結合または非共有結合によって連結されている多ポリペプチド複合体とが包含される。
ペプチドである安定化分子の具体的アミノ酸組成が、その安定化分子に結合させようとしているタンパク質に依存することは、当業者には理解されるだろう。アミノ酸は天然アミノ酸でも合成アミノ酸でもよい。アミノ酸の適切な供給源は当業者にはわかるだろう。
ポリペプチド(ペプチド安定化分子を含む)は、当業者に知られているであろう合成的方法によって作製することができる。もう一つの選択肢として、ポリペプチドは、天然または合成タンパク質および/またはポリペプチドおよび/またはペプチドから生成させることもできる。タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの分解は、当業者によく知られている方法を使って、酵素的消化および/または化学的消化によって行うことができる。他の適切な消化方法は当業者にはわかるだろう。
本明細書における「ペプチド」という用語の範囲には、本明細書に記載するようなその誘導体および変異体も包含される。
誘導体の例としては、リン酸基の付加などの翻訳後修飾を受けたペプチドが挙げられる。また、ホスフェート、アミン、アミド、サルフェート、スルフィド、ビオチン、蛍光団、および発色団からなる群より選択される1つまたは複数のリガンドが付加されていてもよい。このリストが網羅的であるとは考えていないことは、当業者には理解されるだろう。この態様の好ましい実施形態では、ペプチドである安定化分子が、蛍光団を使って誘導体化される。特に好ましい実施形態では、蛍光団がフルオレセインである。
本明細書に記載するアミノ酸に関して「変異体」または「誘導体」という用語は、当該配列からの、または当該配列への、1つ(または複数)のアミノ酸の任意の置換、変異、修飾、置き換え、欠失、または付加を包含する。
本明細書に記載するペプチドの変異体は、おそらく保存的アミノ酸置換を含むだろう。保存的置換とは、例えば下記の表に従って定義することができる。2列目の同じブロックにあるアミノ酸、また好ましくは3列目の同じ行にあるアミノ酸は、互いに置換することができる。
Figure 2005510460
[ペプチド合成]
ペプチドは当業者に知られている方法を使って合成することができる。典型的な手順を以下に詳述する。
ペプチドは432A Synergyペプチド合成装置(Applied Biosystems(ABI))を使って合成することができる。NOVAbiochemから購入することができるFmoc−Ser(PO(OBzl)OH)−OHを除いて、保護アミノ酸誘導体、試薬類および溶媒類はABIから購入することができる。標準的なFmoc法を、カップリング試薬HBTU/HOBtと共に使用することができる。ペプチドは、トリフルオロ酢酸:トリイソプロピルシラン:水=90:5:5の混合物を使って樹脂から切り離し、冷エチルエーテルで沈殿させ、冷エチルエーテルで3回洗浄し、水または水:アセトニトリル=1:1の混合液に溶解し、凍結乾燥することができる。
ペプチドは逆相HPLC(996PDA検出器を装着したWaters 600)を使って精製することができる。カラムには分取用逆相C8カラム(Vydac)を使用することができ、勾配は35分で100%Aから100%Bまでとする(A=0.1%TFA/水、B=95%アセトニトリル、5%水、0.1%TFA)。精製したペプチドをMALDI−TOF MSで特徴づける。精製したペプチドは予想されるMwを有していた。
ビオチン化ペプチドの場合は、固相合成中に、ビオチンをN末端にそのカルボン酸を使ってカップリングすることができる。ビオチンカップリングには、場合によって2回繰り返すこと以外は、保護アミノ酸のカップリングと同じ条件を適用することができる。タンパク質とペプチドは市販のものを購入してもよい。例えばフルオレセイン標識CDB3は、Graham Bloomberg博士(英国ブリストル大学)から購入する。
タンパク質合成およびペプチド合成の方法は知られており、例えばManiatisらの著書に記載されている。例えばヒトp53コアドメイン野生型および突然変異型(残基94〜312)やヒト四量体型p53(残基94〜360)などのタンパク質は、当業者によく知られている方法を使って、特に先に記述された方法(Bullockら、1997)を使って、クローン化し、発現させ、精製することができる。15N標識ヒトp53コアドメインは、先に記述された方法(Wongら、1999)で、製造することができる。
[安定化分子の用途]
さらに、少なくとも1つまたは複数の安定化分子と医薬的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤とを含む組成物を記載する。
本明細書に記載する安定化分子(好ましくはペプチド)および組成物は、インビボ治療用途およびインビボ予防用途、インビトロおよびインビボ診断用途、インビトロアッセイおよび試薬用途などに利用することができる。
本明細書に記載する安定化分子および組成物の治療的および予防的用途では、それらを受容哺乳動物(例えばヒト)に投与する。
「防止」という用語は、疾患誘発前に行われる防御組成物の投与に関係する。「抑制」とは、誘発後ではあるが、疾患の臨床発現前に行われる組成物の投与を指す。「処置」は、疾患症状が顕在化した後の防御組成物の投与に関係する。
疾患からの保護または疾患の処置に関する、選択した安定化分子またはペプチドまたは組成物の有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系は、入手することが可能であり、当業者にはよく知られているだろう。
一般に、安定化分子、ペプチドまたは組成物は、精製された形で、薬理学的に適切な担体と共に利用されるだろう。典型的には、これらの担体には、水性またはアルコール/水性の溶液、エマルションまたは懸濁液(いずれも食塩水および/または緩衝媒質を含む)が含まれる。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液デキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、ならびに乳酸加リンゲル液などがある。必要であれば、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保っておくための、生理学的に許容できる適切なアジュバントを、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギナートなどの増粘剤から選択することができる。
静脈内賦形剤には、水分および栄養補給剤ならびに電解質補給剤、例えばリンゲル液デキストロースに基づくものなどがある。保存剤および他の添加剤、例えば抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガスなども含まれていてよい(Mack(1982)「Remington's Pharmaceutical Sciences」第16版)。
本明細書に記載する選択した安定化分子は、単独で投与される組成物として使用してもよいし、他の作用因子と併用してもよい。それら他の作用因子としては、シクロスポリン、メトトレキセート、アドリアマイシンまたはシスプラチナムなどのさまざまな免疫療法剤および免疫毒素、または放射線療法もしくは放射性同位体もしくは他のタイプの放射線との併用などを挙げることができる。医薬組成物にはさまざまな薬剤の「カクテル」も含めることができる。
医薬組成物の投与経路は、当業者に一般に知られている経路のいずれでもよい。例えば免疫療法などの治療には、選択した安定化分子または組成物を、標準的な技術に従って、任意の患者に投与することができる。投与は、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮投与、肺経由の投与、または適宜、カテーテルを使った直接注入による投与など、任意の適切な形式で行うことができる。投与量と投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の同時投与、禁忌ならびに臨床家が考慮すべき他のパラメータに依存するだろう。ペプチドは、DNAまたはRNA型のベクター(例えば細胞に形質導入する能力を有するウイルスベクター)からの発現によって投与してもよい。例えば、レトロウイルス、レンチウイルスまたはポックスウイルスベクターを使って、CDB3ペプチドをコードする核酸を細胞に形質導入することができる。もう一つの選択肢として、核酸の直接注入も使用することができる。
上記の代わりに、または上記に加えて、ペプチドまたはペプチドをコードする核酸の細胞への取り込みを促進するために、化学試薬を使用してもよい。適切な化学試薬としては、核酸にはリン酸カルシウムおよびDEAE−デキストラン、またペプチドの送達には、Lipofectamine(商標)、リポソームに基づく送達系、例えばウイルス膜融合ペプチド、核移行ペプチド(例えばVP22)およびペネトラチンなどのペプチドとの融合などが挙げられる。このリストが網羅的であるとは考えていないことは、当業者には理解されるだろう。
本発明者らは、ペプチドCDB3、特にフルオレセイン標識型のCDB3は、独力で細胞内部に侵入する能力を有するが、その送達効率はLipofectamine(商標)などの化学試薬の使用によって向上することを見いだした。さらに本発明者らは、野生型p53または著しく損なわれた突然変異体R175Hを発現させる細胞では、p53を欠く細胞よりも、著しいCDB3の核局在化が起こることを見いだした。p53は通常はその作用を核内で発揮するので、これはCDB3がp53との複合体を形成した後、核内に輸送されることを示唆している。
選択した安定化分子、ペプチドまたは組成物は、貯蔵のために凍結乾燥し、使用前に適切な担体で復元することができる。既知の凍結乾燥技術および復元技術を使用することができる。凍結乾燥と復元がさまざまな度合いの機能活性喪失をもたらしうること、そしてこれを補償するために使用レベルは上向きに調節する必要がありうることは、当業者には理解されるだろう。
安定化分子またはそのカクテルを含む組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与することができる。いくつかの治療用途では、選択した細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調整、殺細胞、または他の測定可能なパラメータを達成するのに十分な量を「治療有効用量」と定義する。この投薬を達成するのに必要な量は、疾患の重症度および患者自身の免疫系の全般的状態に依存するだろうが、一般的には体重1キログラムにつき選択したペプチドまたは他の安定化分子0.005〜5.0mgの範囲であり、より一般的には0.05〜2.0mg/kg/回の用量が使用される。予防的用途の場合も、この選択した安定化分子またはそのカクテルを、同様の投与量またはさらに低い投与量で投与することができる。
安定化分子および/または組成物は、タンパク質コンフォメーション、フォールディングおよび凝集のエラーがその疾患の一因となっている任意の疾患の処置に使用することができる。例として癌、嚢胞性線維症および神経変性などが挙げられる。特に好ましい実施形態では、前記の疾患が癌である。このリストが網羅的であるとは考えていないことは、当業者には理解されるだろう。
[p53の安定化]
極めて好ましい実施形態として、我々は、p53ポリペプチドの未変性状態を安定化する能力を有する安定化分子を提供する。
この好ましい安定化分子はポリペプチドであり、REDEDEIEW−NH2という配列を有する9アミノ酸残基ペプチドからなる。このペプチドをCDB3と呼ぶ。我々は、p53コアドメインに結合しそれを安定化することができるCDB3のフルオレセイン標識誘導体(FL−CDB3)も提供する。
CDB3はp53結合ポリペプチド53BP2に由来し、このタンパク質の残基490〜498からなっている。残基490〜498はこのタンパク質中のp53結合ループの一つを構成している。FL−CDB3の最も際だった性質は、それが(1)見かけの融点を上昇させることからわかるように、p53コアドメインを安定化し、(2)可逆的に変性したp53コアドメインのリフォールディングを誘発する能力を有することである。したがって、小さいペプチドは、p53コアドメインを、単に、その未変性状態には結合するが変性状態には結合せず、平衡を未変性型の方にシフトさせることによって、安定化することができる。
[ポリペプチド標的部位]
安定化しようとするポリペプチド内に安定化分子の結合部位を同定することが必要になる場合がある。これは当分野で知られる様々な方法で行うことができる。
p53コアドメイン内のCDB3結合部位の構造的特徴づけがキーポイントである。というのも、この部位はコアドメイン安定化分子の特異的標的として役立つかもしれないからである。NMR化学シフト解析によってマッピングされたように、CDB3結合部位は、DNA結合部位の端に位置し、配列上は離れているが空間的には近い3つの構造要素(ループ1、ヘリックス2、およびストランド8の端)からなっている。p53安定化分子の一般標的としてのこの部位の利点は、それがDNA結合部位の近傍に位置しているために、その部位での局所的な安定化効果が可能になることである。事実、化学シフトデータは、DNA結合とCDB3結合の効果の相違を示している。CDB3結合は、p53コアドメイン内のDNA結合部位に対して、強い局在化した効果をもたらすが、DNA結合時の化学シフトパターンはかなり異なり、シフトはそれほど局在化しておらず、むしろタンパク質構造全体に広がっている。
興味深い知見は、CDB3が53BP2タンパク質中の親ループと同じ位置ではp53コアドメインと結合しないことである(GorinaおよびPavletich,1996)。元の53BP2ループはコアドメインのヘリックス2とループ3の間に結合して、53BP2のTrp498は主としてp53のループ3と接触し、53BP2のカルボン酸側鎖はp53 Arg273(ヘリックス2の近くにあってストランド10中に位置するDNA結合残基)と接触する(GorinaおよびPavletich,1996)。CDB3結合部位も53BP2に対するもう一つの結合部位であって、2つの代替的結合部位が調節的役割を有しているのかもしれない。CDB3と元の53BP2ループがp53を異なる部位で結合するという知見は、相互作用の部分的に静電的な性質によって説明されるかもしれない。遊離ペプチドとしてのCDB3は、その高い負電荷ゆえに、DNA結合部位の正荷電表面と結合する負荷電「DNA模倣体」として、ある程度作用するのかもしれない。
[p53コアドメイン突然変異体のレスキュー]
CDB3は、2つのp53コアドメインホットスポット突然変異体、すなわち弱く不安定化されているG245S(Bullockら、2000)と、DNA結合領域内が歪んでいるR249S(Bullockら、2000;Wongら、1999)とに結合することがわかる。野生型とほとんど同様にフォールドするG245S突然変異体(Bullockら、2000)に対するFL−CDB3の親和性は、野生型の場合と同じである。より強く不安定化しているR249Sへの結合は弱い(ただしそれでも低マイクロモル濃度領域である)。さらにCDB3は、著しく不安定化しているp53コア突然変異体(195T)にも結合する。この突然変異体中の突然変異は、典型的な腫瘍原性ホットスポットの一つにはない。
CDB3が突然変異体に結合するという知見から、そのような化合物はそのような突然変異体を安定化することによってそれらをレスキューするために使用することができるという可能性が生じる。それらの一般作用機序は単に未変性状態に結合し平衡をシフトさせることであるから、CDB3様化合物は、DNAに結合することができない弱く不安定化した(例えばG245S)突然変異体および全体的にアンフォールドした(例えばV143A)突然変異体のレスキューに使用することができるだろう(下記参照)。局所的に歪んだ突然変異体(例えばR249S)のレスキューへのCDB3の応用は、そのペプチドの特異的結合モードに依存し、またその突然変異によって起こる特異的歪みにも依存する。一般に、局所的に歪んだ突然変異体には、歪んだ部位の近くのコンフォメーションを変化させる、より特異的な分子が必要になる。我々はそれが可能であることをR249Sについて証明する。すなわちFL−CDB3はR249Sを安定化する。FL−CDB3は歪み部位の近傍に結合するからである(DNA結合部位のループ2および3の近く、Wongら、1999も参照されたい)。DNA結合部位の端に結合するFL−CDB3は、この歪み部位での局所的コンフォメーション変化の一因となるのかもしれない。
CDB3の作用様式は、先に報告されたp53 C末端ペプチドの作用様式とは異なっている。CDB3は、p53の未変性状態に結合するが、p53の変性状態は結合しないことによって、p53を安定化する。これに対して、C末端ペプチドはp53コアドメインの活性およびDNA結合を特異的に調節する(Abarzuaら、1996;Huppら、1995;Selivanovaら、1997;Selivanovaら、1999)。CDB3および特にその標識誘導体FL−CDB3はリード化合物であり、p53コアドメインに対してさらに大きい安定化効果を有するペプチドおよび小分子を将来的に設計するための基礎として使用することができる。CDB3などのペプチドはDNA接触突然変異体をレスキューすることはできない。これらの突然変異体のレスキューには、欠けている相互作用の一助となる残基または小分子の導入を含む他の戦略を使用すべきである。
一例として以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、以下の実施例は決して本発明を限定するものではない。
これらの実施例は、腫瘍抑制タンパク質p53をそのDNA結合部位近くで結合してタンパク質の未変性型を安定化する能力を有する安定化分子CDB3の単離と同定に関する。
薬物として天然の結合部位を使用することにつきまとう欠点は、薬物が天然のリガンドと競合するということである。したがって、DNAとCDB3ペプチドとの競合が、CDB3をリード化合物として使用することを不可能にすると思われるかもしれない。しかしこれはそうであるとは限らない。DNAの結合自体がp53コアドメインを安定化し、DNAは極めて強固に結合するので、CDB3などのペプチドによる安定化は、突然変異型p53が変性したコンフォメーションをとっているためにDNA結合が損なわれている突然変異体だけに必要である。いったんタンパク質がDNAを結合すると、ペプチドはもはや必要なくなる。
p53コアドメインのリフォールディングを誘導するCDB3の能力と、DNAがCDB3をp53から追い出すことができるとうい知見とから、我々は、変性した腫瘍原性タンパク質をレスキューするための「シャペロン」機構を提案するに至った(図7c)。すなわちCDB3は、DNAと結合する能力を有するおそらく生合成直後の腫瘍原性タンパク質の未変性状態だけと結合して、平衡を未変性状態側にシフトさせる。そうすると、DNAはそのタンパク質と結合することができるようになり、その結果、CDB3ペプチドは追い出されて、再び自由に別のタンパク質分子に結合することができる。さらに、CDB3ペプチドはp53の単量体にも四量体にも等しく結合するが、四量体の協同性により、DNAは、四量体の方にはるかに強固に結合するので(未公表)、DNAは薬物をより容易に追い出すことができる。
[実施例1]
[p53コアドメイン結合ペプチド候補の設計]
p53コアドメインの未変性状態と結合するペプチドは、p53結合タンパク質から導くことができる。p53に結合したタンパク質の複合体のなかで高解像度で解析されている希な一例は、p53コアドメイン−53BP2複合体である(GorinaおよびPavletich,1996)。53BP2は、53結合タンパク質(Iwabuchiら、1994)であって、p53によるトランス活性化を増進し、細胞周期進行を妨げ、アポトーシスを誘導する(Iwabuchiら、1998;Lopezら、2000)。53BP2はp53コアドメインをそのDNA結合部位で結合し、そのループのうち3つはp53と接触する(GorinaおよびPavletich,1996)(図1)。これら3つのループに相当する3つのペプチドを合成して調べる(Core Domain Binding(CDB)1-3、表1参照)。
コアドメイン結合ペプチドのもう一つの潜在的供給源は、p53自体に含まれている配列であって、コアドメインと結合しその活性を調節する配列である。C末端ドメイン(アミノ酸363〜393)(Bayleら、1995)とプロリンリッチドメイン(アミノ酸54〜94)(Muller-Tiemannら、1998)は、p53内にある2つのそのような領域である。両方の領域に対応するオーバーラップペプチドをいくつか合成する(表1のCDB4、7〜10)。C末端ドメイン内のSer378はリン酸化を受けることが知られているので(Takenakaら、1995)、この領域に由来するホスホペプチドも合成する(表1のCDB5、6)。C末端ドメインとプロリンリッチドメインとは互いに存在しあう場合にのみ、コアドメインと結合することができるので(Kimら、1999)、これらのドメイン間の融合ペプチドも設計する(表1のCDB11)。
〔p53コアドメインの結合に関するCDBペプチドのスクリーニング〕
p53コアドメインへのペプチドの結合に関する初期スクリーニングは、異種核NMR分光法を使って、15N標識p53コアドメインの主鎖1Hおよび15N共鳴の変化をモニターすることによって行う(Wongら、1999)。化学シフト変化はCDB2とCDB3だけに観察されることから、これらのペプチドだけがp53コアドメインに結合することが示唆される(図2)。
p53コアドメインに対するペプチドの親和性を見積もるには、表面プラズモン共鳴を使用することができる。N末端にビオチン標識を取り付けたペプチドCDB1、2、3、9および11を合成し直す。これらビオチン化ペプチドをストレプトアビジン(SA)センサーチップ上に固定化し、p53コアドメイン(7.2μM)を注入し、BIAcore装置を使って結合をモニターする。対照フローチャネル(ペプチドを固定化していないSAチップ)に合わせて補正した、種々のペプチドに関する相対的応答を、図3aに示す。p53コアドメインはCDB3に対して最も強固な結合を有しており、p53コアドメインがCDB2よりもCDB3によく結合することを示したNMRデータとよく一致した。CDB1およびCDB9への有意な結合はない。
[実施例2]
[CDB3−p53コアドメイン結合の特徴づけ]
表面プラズモン共鳴を使って、CDB3−p53コアドメイン結合定数を定量的に測定することができる。ビオチン化CDB3をSAセンサーチップ上に固定化し、p53コアドメイン(0.02〜2μM)を注入する(図3b)。50%結合時のp53コアドメイン濃度は200nMと見積もられる。
CDB3が結合しているp53コアドメイン中の部位を同定するために、結合型および非結合型p53コアドメインのスペクトル間に見られる化学シフトの相違を利用する。結合状態と非結合状態との間で各残基に見られる主鎖1Hおよび15N共鳴の変化を図4aに示す。化学シフト変化は、主として、DNA結合部位の一端に位置するループ1、ヘリックス2およびストランド8に認められる(図4bでは青色と紫色に色分けしている)。CDB3の存在下での化学シフト変化も、ヘリックス1中の2残基に観察されるが、これらは結合部位を限定するものではなく、おそらく弱い非特異的相互作用によるのだろう。遊離ペプチド(図4bでは赤色に色分けしている)としてのCDB3は、53BP2内の元のループとは異なる位置で、p53コアドメインと結合しているようである(GorinaおよびPavletich,1996)。これは、ループ3とヘリックス2の別の側面とからなるDNA結合部位中央の元の場所ではなく、DNA結合部位の端にあるループ1、ストランド8およびヘリックス2と結合する。
蛍光異方性滴定を使って、p53コアドメイン−CDB3相互作用に関する解離定数を10℃で決定することができる。p53コアドメインでフルオレセイン標識CDB3(FL−CDB3)を滴定して、標識ペプチドの異方性の変化(図5a)と525nmでの総蛍光量とをモニターする。標識ペプチドの初期異方性値は0.04であり、FL−CDB3−p53コアドメイン複合体の極限値は0.20である。結合曲線を1:1の単純な平衡モデルにあてはめると、Kdは0.53±0.09μM(表2)であることがわかる。CDB3が、単離されたコアドメイン(残基94〜312)だけでなく、四量体型p53も結合することを確認するために、四量体型p53コンストラクト(p53 94〜360)への結合に関するKdを同じ方法で決定すると、0.77±0.09μMであることがわかる。
[実施例3]
[フルオレセイン標識ペプチドの結合]
CDB3のN末端に異なる標識(フルオレセインおよびビオチン)を取り付けることによってKdが変化するかどうかを決定するために、非標識ペプチドに関する解離定数を、2つの独立した方法、すなわち競合BIAcore(図3c)および異方性(図5b)により、競合実験で測定することができる。非標識ペプチドは37μMのKdを有していた(表3)。N末端のビオチン化は、(非標識ペプチドとの比較で)親和性を、溶液測定では3倍(Kd=12μM、図5bおよび表3参照)、また固定化試料−BIAcoreアッセイではそれ以上(Kd=0.2μM、図3b参照)に向上させた。おそらく無置換ペプチドは、そのN末端アミノ基上の正電荷と、正に帯電したタンパク質表面との間に静電反発があるために、結合が弱くなっているのだろう。あるいは、フルオレセイン自体が親和性を向上させるのかもしれない。
〔FL−CDB3はp53コアドメインを安定化し、その見かけのTmを上昇させる〕
示差走査熱量測定法(DSC)を使って、FL−CDB3によるp53コアドメインの安定化を検出する。p53コアドメインの熱変性は不可逆的であるので、見かけの融点(Tm)しか決定することはできないが(Bullockら、1997)、安定性の増加は見かけのTmの上昇と相関させることができる。DSC測定はすべて、Hepes緩衝液(pH7.2)、1mM DTT中で行う。これらの条件下で野生型p53コアドメインの見かけのTmは40.1℃である。ペプチドFL−CDB3の存在下ではTmは1.5度上昇し(図6a)、このペプチドの安定化効果が明らかになった。突然変異体R249Sの見かけのTmは34.9℃であり、これは上記ペプチドの存在下では35.9℃に上昇した。R249S突然変異体のシグナルは、タンパク質の凝集が増えるために弱くなっている。同じ濃度の非標識CDB3はTmのシフトを誘発しなかった(図なし)。
[実施例4]
[FL−CDB3は未変性状態のp53コアドメインと結合するが、変性状態のp53コアドメインは結合しない]
FL−CDB3は、p53コアドメインを安定化するペプチドとして、未変性状態と結合するが、変性状態は結合しない。これは「野生型様」のフォールドした安定な突然変異体を、野生型に対する親和性と同等の親和性で結合するが、部分的にアンフォールドした歪んだ突然変異体は、それよりも低い親和性でしか結合しないはずである。2つのp53コアドメイン突然変異体、すなわち、37℃で95%フォールドしており、10℃で1.21kcal/molの不安定化を起こしているG245Sと、37℃で85%フォールドしており、歪んでいて、10℃で1.92kcal/molの不安定化を起こしているR249S(Bullockら、1997;Bullockら、2000)への、FL−CDB3の結合を測定する。10℃ではどちらの突然変異体も、未変性様コンフォメーションをとっていると予想される。この温度での d値は、蛍光異方性から(図5a参照)、G245Sの場合は0.57±0.09μM、R249Sの場合は3.3±0.5μMであり、これは、より強く不安定化されている突然変異体の方が弱く結合していることを示している。
FL−CDB3が未変性状態のp53コアドメインと結合するが、変性状態のp53コアドメインは結合しないことを確認するために、我々は、一連の尿素濃度下で蛍光異方性滴定を繰り返した(図6b)。p53コアドメインをさまざまな尿素濃度で終夜インキュベートし、それを使って、同じ尿素濃度で溶解したFL−CDB3を滴定した。log Kd対尿素濃度のプロット(図6c)により、尿素濃度が上昇して、より多くのタンパク質がアンフォールドした状態になるにつれて、結合は弱くなることがわかった。定量的な解析により、尿素は未変性p53コアドメインへのペプチドの結合も弱くすることがわかった(図なし)。
[実施例5]
[FL−CDB3はp53コアドメインのリフォールディングを誘発する]
部分的に変性したp53コアドメインをリフォールドさせるCDB3の能力を、蛍光異方性を使って決定する。p53コアドメインを3M尿素中、10℃で終夜インキュベートする。この条件下では、p53コアドメインは主に変性している。次に、それを3M尿素中のFL−CDB3と混合し、異方性の変化を経時的にモニターする(図6d)。標識ペプチドの初期異方性値は0.04である。ペプチドをp53コアドメインと混合すると、迅速な結合が起こって、FL−CDB3−p53コアドメイン複合体が形成される。3M尿素と共に終夜インキュベートした後のこの複合体の異方性値は0.06〜0.07であり、これらのFL−CDB3濃度およびp53コアドメイン濃度における結合複合体の限界異方性値0.17(図5aから推定)よりもはるかに低い(図なし)。なぜなら、これらの条件では、タンパク質の大半が変性しており、ペプチドと結合しなかったからである。ペプチドが質量作用によってタンパク質リフォールディングを誘発するにつれて、異方性に経時的な増加が起こる(図6d)。p53コアドメインおよびCDB3(各5μM)を終夜プレインキュベーションなしで3M尿素と混合すると、アンフォールディングが起こって同じ終点に到達した。総合すると、CDB3はp53コアドメインのリフォールディングを誘発し、その存在下で、平衡は未変性状態の方へシフトした。尿素は未変性構造への結合を弱めるので、3M尿素中での安定化効果は、それらが水だけの中に存在するときほどには顕著でない。
[実施例6]
[DNAはp53コアドメイン結合に関してFL−CDB3と競合する]
NMRデータ(図4)によれば、CDB3はp53コアドメインをDNA結合部位の端で結合するらしく、このことから、これら2つの結合部位は少なくとも部分的にオーバーラップすることが示唆される。我々は、p53コアドメインへのFL−CDB3の結合とgadd45 DNAの結合との間の競合を、蛍光異方性を使って測定した。DNA(5〜25μM)は上記のペプチドと結合部位から完全に追い出したことから、DNA結合部位とペプチド結合部位とはオーバーラップしていることが示された(図7a)。p53コアドメインでCDB3とDNAの混合物を滴定すると、ペプチドへの結合ではなくDNAへの結合だけを決定することができた(図なし)。
CDB3結合とDNA結合に関する構造情報をさらに得るために、我々は異種核NMR分光法を使用した。p53コアドメインのHSQCスペクトルを12マーコンセンサスDNA配列の存在下で記録し、CDB3結合部位の場合と全く同様にして、DNA部位を化学シフト解析によってマッピングする。DNAの存在下での化学シフトは、タンパク質全体に分布していて、DNA結合部位にもβサンドイッチにも見いだすことができる。有意なシフトは、例えばループL1(S121)、ストランドS10(R273、R274)、L3(M237、S241)、L2(C176)、S4(A159)、S6およびS7(R202、V216、Y220)、S9とS10の間のヒンジ(L257、D259)およびヘリックスH2内の残基などに観察することができる。総合的にみて、CDB3が結合した場合とDNAが結合した場合とでは、化学シフトパターンにはかなりの相違がある。CDB3部位はH2−L1−S8領域(特にL1)によく局在化しているが、DNA結合はタンパク質全体のさまざまな領域のコンフォメーションに影響を及ぼす。
[実施例7]
[CDB3は著しく不安定化したp53突然変異体I195Tへの配列特異的cDNAを回復させた]
我々は、4.1kcal/molの著しい不安定化を起こしていて結合親和性が低いβサンドイッチ突然変異体I195T(Bullockら、2000)に対するCDB3の効果を観察することにより、p53コアドメイン突然変異体への配列特異的DNA結合活性をCDB3が回復させうるかどうか調べた。CDB3(100μM)の存在下(またはその不在下)で、I195T(10μM)を、10℃で1時間インキュベートし、それを使って、同じペプチド濃度の存在下で、フルオレセイン標識Gadd−45 DNAを滴定した。ペプチドが存在しない場合、I195TはGadd45 DNAをKd=6μMで結合した(図7b)。CDB3とのインキュベーション後は、結合が6倍改善され、Kdは、野生型の0.8μMという値に近い1μMになった。予想通り、CDB3は完全に未変性な野生型p53コアドメインのDNA結合には影響を及ぼさなかった(図なし)。
DNA結合の回復が配列特異的であることを確認するために、我々は、ランダムな二本鎖DNA配列フルオレセイン−AATATGGTTTGAATAAAGAGTAAAGATTTGを使って実験を繰り返した。この配列へのI195Tの結合は極めて弱く、上記のペプチドによって改善されないばかりでなく、むしろ阻害された(図なし)。
[実施例8]
[一般方法]
下記の実施例で使用した一般方法は、参考として本明細書に組み込むBykovら、Nature Med 8,282-288(2002)に詳述されている。
[細胞株]
以下の実施例に記載する実験では以下の細胞株を使用した。p53対立遺伝子が両方とも欠失しているH1299肺癌;R175H突然変異体をトランスフェクトしたH1299であるH1299−His175;p53対立遺伝子が両方とも欠失しているSaos−2骨肉腫;R273H突然変異体をトランスフェクトしたSaos−2−His273;野生型53を有する(また、高レベルのMdm2を有し、ARFは欠失している)HCT116p53+/+;およびp53対立遺伝子を両方とも相同組換えによって欠失させたHCTp53−/−。
[実施例9]
[FLCD83ペプチドで24時間処置した後の細胞におけるFL−CD83の分布]
結果を図8に示す。使用した方法の詳細はBykovら、Nature Med 8,282-288(2002)に記載されている。
図8は、ペプチドで24時間処置した後の細胞におけるFL−CDB3の分布を示している。核はは青色に見え(ヘキスト染色)、ペプチドは緑色である。上段左:p53 R175Hを含むH1299細胞。Fl−CDB3は核に局在化し、大きな沈着が核小体にみとめられた。上段右:一部の例では細胞質への分布も観察された。中段:Lipofectamine 2000(商標)との混合送達後は、核画分も多少は存在したものの、ペプチドの位置は細胞質にあった。下段左右:親のp53ヌルH1299細胞におけるペプチドの分布。p53ヌル細胞では、ペプチドはほとんど細胞質に局在するようであるが(H1299)、一部の細胞では核小体局在も明白である(H12991−1)。ペプチドは少なくとも48時間は見えていた。
結論として、ペプチドFL−CDB3は独力で細胞内部に侵入する能力を有するが、その送達効率はLipofectamine(商標)によって向上させることができた(図8)。重要なことに、野生型p53または著しく損なわれている突然変異体R175Hを発現させる細胞では、p53を欠く細胞の場合と比較して、Fl−CDB3の核局在がはるかに顕著である。p53は通常は核内でその活性を発揮する。
[実施例10]
[Fl−CDB3と共に24時間インキュベートした後のウェスタンブロットによる、誘導されたタンパク質発現の検出]
結果を図9に示す。
A、CおよびD枠:FL−CDB3で処置することにより、p53突然変異体His175およびHis273は、内在性遺伝子p21およびMdm−2の転写を活性化する能力を回復した。His175 p53突然変異体をトランスフェクトした肺癌細胞H1299と、親の非トランスフェクト細胞とを、以下に示す量のペプチドで処置し、24時間インキュベートし、p53、p21、およびMdm−2タンパク質の発現について調べた。アクチンのレベルからタンパク質負荷量は等しいことがわかる。特に、突然変異型p53のレベルは著しく増加していた。B:FL−CDB3で処置することによって、大腸癌HCT116細胞ではwtp53が誘導され、Mdm−2およびp21の発現が活性化される。HCTp53−/−細胞ではp53発現の不在下でp21の誘導もMdm−2の誘導も観察されなかった。A枠とB枠では、レーン1はFl−CDB3なしの対照であり、レーン2は10μg/mL FL−CDB3による処置の24時間後である。C枠とD枠では、レーン1は対照(Fl−CDB3なし)、レーン2は10μg/mL FL−CDB3、そしてレーン3は1μg/mL FL−CDB3である。ペプチドによる処置は、LipofectamineありまたはLipofectamineなしで行った。ここに記載するデータは、C枠とD枠を除いてすべて、Lipofectamineなしで行った処置後に得たデータである。C枠とD枠におけるp53標的遺伝子の誘導はFl−CDB3の濃度に依存するようである。
総合すると、本ペプチドは、内在するp53標的遺伝子p21およびMdm−2を、p53依存的に誘導する(図9)。2つの突然変異体H273とH175を試験した。驚いたことに、どちらの突然変異体の転写活性も復活した。実験はすべて、少なくとも3回は繰り返した。興味深いことに、野生型p53の転写機能も活性化される。野生型および突然変異型p53タンパク質のレベルはかなり上昇した。
[実施例11]
[FL−CDB3が細胞周期に及ぼす効果のFACS解析]
腫瘍細胞を10μg/mLのペプチドで処置し、処置の24時間後にFACS解析法を使って、細胞周期分布と細胞死(サブG1画分として)を解析した。左右一対にしたグラフの左側は、それぞれFl−CDB3なしの対照である。ある実験では、死細胞のパーセンテージを、トリパンブルー排除法によって決定した。H1299−His175細胞における死細胞の数は処置前で5%、処置後は37%であり、対照H1299(p53-)では処置前が3%、処置後が11%、Saos−2−His273細胞では処置前が3%、処置後が28%、対照Saos−2(p53-)では処置前が3%、処置後が13%だった。
この実験の結果から、CDB3ペプチドが腫瘍細胞におけるアポトーシスをp53依存的に誘導することは明らかである(図10)。p53陽性細胞とp53陰性細胞との間には相違がある。驚いたことに、成長停止は検出されなかった。
Figure 2005510460
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[参考文献]
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上記明細書で言及した刊行物はすべて、参考として本明細書に組み込む。ここに記載した本発明の方法およびシステムのさまざまな変更および変形は、本発明の範囲と精神から逸脱しなくとも、当業者には明らかだろう。本発明を特定の好ましい実施形態について説明したが、本願に係る発明はそのような特定実施形態に不当に限定されるべきではないと理解すべきである。実際、ここに記載した実施形態のさまざまな変更態様であって、生化学および分子生物学または関連分野の当業者にとって自明なものは、本願特許請求の範囲に包含されるものとする。
p53コアドメイン(青)−53BP2(赤)複合体の結晶構造(座標はGorinaおよびPavletich,1996による)を表す図であり、本研究用に合成した3つの53BP2由来ペプチド、すなわちCDB1(残基422〜428)−緑、CDB2(残基469〜477)−黄、CDB3(残基490〜498)−紫を、強調表示してある。図はswissPDBビューア(GuexおよびPeitsch,1997)を使って作製したものである。 CDB3の存在下(赤)および不在下(黒)でのp53コアドメインの1H,15N HSQCスペクトルを表す。CDB3の存在下で有意な化学シフトの偏位を示す選択した残基を強調表示してある。 固定化したペプチドへのp53コアドメインの結合を表面プラズモン共鳴によって解析した結果を表す。(a)p53コアドメイン結合ペプチドのスクリーニング。ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンBIAcoreチップに固定化し、p53コアドメイン(7.2μM)を注入する。表示した値は、固定化ペプチドが存在しない状態でp53をフローチャネルに注入したときの応答によって、標準化されている。(b)固定化CDB3へのp53コアドメイン結合の濃度依存性。(c)競合BIAcoreによるp53コアドメインへのCDB3結合の滴定。0.2μM p53コアドメインとさまざまな濃度の遊離CDB3とをインキュベートした後にBIAcore測定を行うことによって、遊離p53コアドメインの濃度(固定化CDB3に結合する際の会合速度に反映される)を解析する。 CDB3に結合した時にp53コアドメインに起こる化学シフト変化(_∂)を表す。(a)1Hおよび15N化学シフトの偏位を残基番号に対してプロットした図。標準偏差の5倍を超える偏位(15Nの場合は_∂>0.25ppm、1Hの場合は_∂>0.05ppm)を有意であるとみなす(背景が白い部分)。_∂が標準偏差の2.5倍〜5倍(15Nの場合は0.125<_∂<0.25ppm、1Hの場合は0.025<_∂<0.05ppm)である場合は軽微な差であるとみなし(背景が薄い灰色の部分)、_∂が標準偏差の2.5倍未満(15Nの場合は_∂<0.125ppm、1Hの場合は_∂<0.025ppm)である場合は有意でないとみなす(背景が濃い灰色の部分)。(b)CDB3結合時のp53コアドメイン構造における化学シフト変化。有意な化学シフト変化を起こす残基を青色で表し、軽微な変化を起こす残基を紫色で表し、変化のない残基を黄色で表す。53BP2−p53複合体内で元々の位置にあるCDB3を赤色で示している(座標はGorinaおよびPavletich,1996による)。 p53コアドメインへのCDB3の結合を、異方性および蛍光によって解析した結果を表す。(a)野生型および突然変異型p53コアドメインでフルオレセイン標識CDB3(4.6μM)を滴定する。異方性の変化をモニターし、解析する。(b)非標識CDB3またはビオチン化CDB3で0.50μMフルオレセイン標識CDB3および2.0μM野生型p53コアドメインを滴定する競合実験(「黒四角」および「白四角」はそれぞれ0.26mMおよび2.6mMの非標識CDB3、「黒丸」は0.24mMビオチン化CDB3)。 FL−CDB3によるp53コアドメインの安定化を示す図。(a)示差走査熱量測定。野生型コアドメインおよびR249Sコアドメインの見かけのTmを、「材料と方法」の項で説明するように、FL−CDB3の存在下または不在下で決定する。野生型コアドメインの場合、ペプチドの不在下ではTm=40.1℃であり、ペプチドの存在下では41.6℃である。R249Sの場合、ペプチドの不在下ではTm=34.9℃であり、ペプチドの存在下では35.9℃である。生データを、わかりやすいようにオフセットして示している。(b〜c)p53−CDB3結合の尿素依存性。一連の尿素濃度の存在下で、野生型p53コアドメインでフルオレセイン標識CDB3を滴定し、異方性の変化をモニターする。(b)さまざまな尿素濃度下での異方性滴定曲線。(c)p53コアドメイン−CDB3相互作用に関するlog Kdと尿素濃度との関係。(d)CDB3はp53コアドメインのリフォールディングを誘導する。野生型p53コアドメインを3M尿素と共に終夜プレインキュベートした後、フルオレセイン標識CDB3と混合し、異方性変化を経時的にモニターする。対照として、同じタンパク質を3M尿素およびフルオレセイン標識CDB3と混合し、プレインキュベーションなしで、異方性変化を経時的にモニターする。 p53をレスキューするための「シャペロン」戦略を表す。(a)DNAはp53コアドメイン結合に関してFL−CDB3と競合する。「材料と方法」の項で説明するように、30マーのgadd−45 DNA(+=25μM、_=5μM)でp53コアドメイン−FL−CDB3の混合物を滴定した。(b)CDB3はI195T突然変異体へのDNA結合を回復させる。I195T(10μM)を100μM CDB3の存在下(黒四角)および不在下(x)で1時間プレインキュベートし、それを使って、15nMフルオレセイン標識30マーGadd45 DNAを滴定した。解離定数を1:1結合モデルへのフィッティングによって計算した。(c)ここに提案するCDB3の作用機序に関する図解モデル。詳細については本文を参照されたい。 ペプチドで24時間処置した後の細胞におけるFL−CDB3の分布。核は青色に見え(ヘキスト染色)、ペプチドは緑色である。上段左:p53 R175Hを含むH1299細胞。Fl−CDB3は核に局在化し、大きな沈着が核小体にみとめられた。上段右:一部の例では細胞質への分布も観察された。中段:Lipofectamine 2000(商標)との混合送達後は、核画分も多少は存在したものの、ペプチドの位置は細胞質にあった。下段左右:親のp53ヌルH1299細胞におけるペプチドの分布。p53ヌル細胞では、ペプチドはほとんど細胞質に局在するようであるが(H1299)、一部の細胞では核小体局在も明白である(H12991−1)。ペプチドは少なくとも48時間は見えていた。 Fl−CDB3と共に24時間インキュベートした後の、ウェスタンブロットによる、誘導されたタンパク質発現の検出。A、CおよびD枠:FL−CDB3で処置することにより、p53突然変異体His175およびHis273は、内在性遺伝子p21およびMdm−2の転写を活性化する能力を回復した。His175 p53突然変異体をトランスフェクトした肺癌細胞H1299と、親の非トランスフェクト細胞とを、以下に示す量のペプチドで処置し、24時間インキュベートし、p53、p21、およびMdm−2タンパク質の発現について調べた。アクチンのレベルからタンパク質負荷量は等しいことがわかる。特に、突然変異型p53のレベルは著しく増加していた。B:FL−CDB3で処置することによって、大腸癌HCT116細胞ではwtp53が誘導され、Mdm−2およびp21の発現が活性化される。HCTp53−/−細胞ではp53発現の不在下でp21の誘導もMdm−2の誘導も観察されなかった。A枠とB枠では、レーン1はFl−CDB3なしの対照であり、レーン2は10μg/mL FL−CDB3による処置の24時間後である。C枠とD枠では、レーン1は対照(Fl−CDB3なし)、レーン2は10μg/mL FL−CDB3、そしてレーン3は1μg/mL FL−CDB3である。ペプチドによる処置は、LipofectamineありまたはLipofectamineなしで行った。この図に示すデータは全て、C枠とD枠を除いてすべて、Lipofectamineなしで行った処置後に得たデータである。C枠とD枠におけるp53標的遺伝子の誘導はFl−CDB3の濃度に依存するようである。 細胞周期に対するFL−CDB3の影響のFACS解析。我々は腫瘍細胞を10μg/mLのペプチドで処置し、処置の24時間後にFACS解析法を使って、細胞周期分布および細胞死(サブG1画分として)を解析した。左右一対にしたグラフの左側は、それぞれFl−CDB3なしの対照である。ある実験では、死細胞のパーセンテージを、トリパンブルー排除法によって決定した。H1299−His175細胞における死細胞の数は処置前で5%、処置後は37%であり、対照H1299(p53-)では処置前が3%、処置後が11%、Saos−2−His273細胞では処置前が3%、処置後が28%、対照Saos−2(p53-)では処置前が3%、処置後が13%だった。

Claims (40)

  1. ポリペプチドの未変性状態を安定化する方法であって、該ポリペプチドの未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で該ポリペプチドに結合する能力を有する安定化分子に、該ポリペプチドをばく露するステップを含む方法。
  2. 前記ポリペプチドが未変性状態および変性状態で存在するように前記ポリペプチドは可逆的に変性し、前記安定化分子は変性状態の前記ポリペプチドには結合しない請求項1に記載の方法。
  3. 系において可逆的に変性するポリペプチドの未変性状態の濃度を増加させる方法であって、該系は、第一の未変性状態および第二の変性状態の該ポリペプチドを含み、該方法は、
    (a)該第一の未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で該ポリペプチドに結合し、これにより該ポリペプチドの第一の未変性状態を安定化する安定化分子を供するステップと、
    (b)該安定化分子を該ポリペプチドに結合させるステップと
    を含む方法。
  4. ポリペプチド中に突然変異を有する生物の野生型表現型を回復させる方法であって、該突然変異は、該ポリペプチドの変性および突然変異体表現型をもたらし、該方法は、機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で未変性状態の該ポリペプチドに結合し、これにより該ポリペプチドの未変性状態を安定化する安定化分子に、該生物または該生物の一部をばく露するステップを含む方法。
  5. 患者の疾患を処置する方法であって、該疾患は、ポリペプチドの変性をもたらす該ポリペプチド中の突然変異によって起こるか、またはそのような突然変異に関係し、該方法は、該ポリペプチドの未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で該ポリペプチドに結合し、これにより該ポリペプチドの未変性状態を安定化する安定化分子を、該患者に投与するステップを含む方法。
  6. 前記安定化分子が、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーではない請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記安定化分子が、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーの断片からなる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記安定化分子が、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーのポリペプチド結合ドメイン、好ましくは結合ループを含むように操作されたポリペプチドである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記安定化分子が、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーの存在下で、前記ポリペプチドまたは前記系にばく露される請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記安定化分子と前記ポリペプチドまたは前記部位との間の結合親和性が、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーと前記ポリペプチドまたは前記結合部位との親和性よりも低い請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記ポリペプチドと天然の結合パートナーとの間の結合を可能にするように、前記安定化分子と前記結合部位との間の結合が前記ポリペプチドを安定化する請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記ポリペプチドと前記天然の結合パートナーとの間の結合が、前記ポリペプチドの未変性状態を安定化する請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. ポリペプチドと該ポリペプチドの天然の結合パートナーとの間の結合を補助する方法であって、請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって前記ポリペプチドの未変性状態を安定化するステップと、前記安定化されたポリペプチドを前記天然の結合パートナーにばく露するステップとを含む方法。
  14. ポリペプチドと第一の分子との間の結合を補助する方法であって、該ポリペプチドは未変性状態および変性状態で存在し、該方法は、
    (a)該ポリペプチドの未変性状態において機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位に結合する能力を有する第二の安定化分子を供するステップと、
    (b)該第二の安定化分子を該ポリペプチドに結合させて複合体を形成させ、これにより該ポリペプチドの未変性状態を安定化するステップと、
    (c)該ポリペプチドと、結合した第二の安定化分子との複合体を、該第一の分子にばく露するステップと、
    (d)該第一の分子を該ポリペプチドに結合させ、これにより該第二の安定化分子を置き換えるステップと
    を含む方法。
  15. 前記機能部位が、構造ドメイン、タンパク質結合ドメイン、核酸結合ドメイン、または酵素の活性部位を含むか、またはそれらと少なくとも部分的にオーバーラップする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記機能部位が、前記ポリペプチドの構造もしくは活性またはその両者にとって不可欠である請求項15に記載の方法。
  17. 前記ポリペプチドが、腫瘍原性タンパク質または腫瘍抑制タンパク質を含む請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
  18. 前記ポリペプチドが、p53である請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 前記ポリペプチドが、突然変異、好ましくはR175H、G245S、R248Q、R249S、R273H、R282WおよびI195Tを含むp53であり、該突然変異が、前記ポリペプチドの可逆的変性をもたらす請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
  20. 前記安定化分子が、REDEDEIEWという配列を有するCDB3ポリペプチドを含む請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
  21. ポリペプチドの未変性状態に結合してそれを安定化するが、該ポリペプチドの変性状態に結合してそれを安定化することはない安定化分子であって、該ポリペプチドの機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位に結合し、該ポリペプチドの天然の結合パートナーからは構成されない安定化分子。
  22. 前記ポリペプチドが、p53である請求項21に記載の安定化分子。
  23. 前記ポリペプチドが、突然変異、好ましくはR175H、G245S、R248Q、R249S、R273H、R282WおよびI195Tを含むp53であり、該突然変異が前記ポリペプチドの可逆的変性をもたらす請求項21または22に記載の安定化分子。
  24. 前記安定化分子が、REDEDEIEWという配列を有するCDB3ポリペプチドを含む請求項21、22または23に記載の安定化分子。
  25. ポリペプチドを安定化する能力を有する安定化分子を同定する方法であって、該ポリペプチドは未変性状態および変性状態で存在するように可逆的に変性することができ、該方法は、
    (a)機能部位を含む該ポリペプチドの未変性状態を供するステップと、
    (b)該ポリペプチドを候補安定化分子にばく露するステップと、
    (c)該ポリペプチドの未変性状態の機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位に結合する該候補安定化分子を選択するステップと、
    (d)該結合が該ポリペプチドの未変性状態を安定化するかどうかを決定するステップと
    を含む方法。
  26. ポリペプチドを安定化する能力を有する安定化分子を同定する方法であって、該ポリペプチドは未変性状態および変性状態で存在するように可逆的に変性することができ、該方法は、
    (a)該ポリペプチドの機能部位を同定して、該機能部位を含むポリペプチド断片を供するステップと、
    (b)該ポリペプチド断片に、該機能部位と少なくとも部分的にオーバーラップする部位で結合する候補安定化分子を選択するステップと、
    (c)該選択された候補安定化分子がポリペプチドの未変性状態を安定化するかどうかを決定するステップと
    を含む方法。
  27. 前記機能部位を含む前記ポリペプチド断片が、前記ポリペプチドの天然の結合パートナーへの結合部位を含む請求項26に記載の方法。
  28. ポリペプチドを安定化する能力を有する安定化分子であって請求項25、26または27に記載の方法によって同定される安定化分子。
  29. 前記安定化分子が、有機小分子もしくは無機小分子、天然のもしくは誘導体化された炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、核酸、DNA、RNA、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質−核酸(PNA)を含んでなる請求項1〜20および25〜27のいずれかに記載の方法または請求項21〜24もしくは28のいずれかに記載の安定化分子。
  30. 糖、ホスフェート、アミン、アミド、サルフェート、スルフィド、ビオチン、蛍光団または発色団で誘導体化された請求項29に記載の方法または安定化分子。
  31. 前記安定化分子が、蛍光団、好ましくはフルオレセインにより誘導体化された請求項29または30に記載の方法または安定化分子。
  32. 前記安定化分子の前記ポリペプチドへの結合が、NMR分光法、好ましくは異種核NMR分光法、蛍光異方性、表面プラズモン共鳴、または示差走査熱量測定(DSC)を使って検出される請求項1〜31のいずれかに記載の方法または安定化分子。
  33. 疾患の処置に使用するための請求項21〜24または28のいずれかに記載の安定化分子。
  34. 請求項21〜24または28のいずれかに記載の安定化分子と、医薬的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物。
  35. 疾患を処置するための医薬品の製造における請求項21〜24または28のいずれかに記載の安定化分子の使用。
  36. 疾患の処置における請求項21〜24または28のいずれかに記載の安定化分子の使用。
  37. 疾患が癌である、請求項5に記載の方法、請求項33に記載の用途のための請求項33に記載の安定化分子または請求項35もしくは36に記載の使用。
  38. 1つまたは複数の細胞におけるアポトーシスの発生または進行を誘導する方法であって、該1つまたは複数の細胞を安定化分子で処置するステップを含む方法。
  39. 1つまたは複数の細胞を安定化分子で処置するステップを含む、前記1つまたは複数の細胞におけるアポトーシスの発生または進行を誘導するための医薬品の調製における安定化分子の使用処置。
  40. 前記安定化分子が、CDB3ペプチドである請求項38に記載の方法または請求項39に記載の使用。
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