JP2005504830A - Hkid−1関連タンパク質ファミリーの新規な分子およびその使用 - Google Patents

Hkid−1関連タンパク質ファミリーの新規な分子およびその使用 Download PDF

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Abstract

新規のHKID−1ポリペプチド、HKID−1タンパク質、およびHKID−1核酸分子が開示される。単離された全長HKID−1タンパク質へのさらなる付加により、本発明は、単離されたHKID−1融合タンパク質、HKID−1抗原性ペプチド、および抗HKID−1抗体をさらに提供する。本発明はまた、HKID−1核酸分子、本発明の核酸分子を含むHKID−1組み換え発現ベクター、発現ベクターが導入されている宿主細胞、およびHKID−1遺伝子が導入されているか、または破壊されている非ヒトトランスジェニック動物を提供する。本発明の組成物を使用する診断方法、スクリーニング方法、および治療方法もまた提供される。

Description

【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
プロテインキナーゼは、細胞増殖および分裂に関連する、生化学的変化および形態変化の調節において重要な役割を果たす(D’Urso,G.ら(1990)Science 250:786−791;Birchmeier.C.ら(1993)Bioessays 15:185−189)。それらは、増殖因子レセプターおよびシグナル伝達物質として働き、細胞のトランスフォーメーションおよび悪性度に関連している(Hunter,T.ら(1992)Cell 70:375−387;Posada,J.ら(1992)Mol.Biol.Cell 3:583−592;Hunter,T.ら(1994)Cell 79:573−582)。例えば、プロテインキナーゼは、増殖因子レセプターからのシグナル伝達(Sturgill,T.W.ら(1988)Nature 344:715−718;Gomez,N.ら(1991)Nature 353:170−173)、細胞が有糸分裂状態に入ることの制御(Nurse,P.(1990)Nature 344:503−508;Maller,J.L.(1991)Curr.Opin.Cell Biol.3:269−275)およびアクチンの束形成(bundling)の調節(Husain−Chishti,A.ら(1988)Nature 334:718−721)に関与することが示されている。プロテインキナーゼは、アミノ酸配列の類似性、またはセリン/スレオニンもしくはチロシン残基のいずれかに対する特異性のいずれかに基づいて、2つの大きな群に分けられ得る。少数の二重特異性キナーゼは、セリン/スレオニン特異的群に構造的に類似している。広い分類内では、キナーゼは、そのメンバーが、高い程度の触媒性ドメインアミノ酸配列同一性を共有し、類似の生化学的特性もまた有するファミリーにさらに下位分類され得る。大部分のプロテインキナーゼファミリーのメンバーはまた、それらの特定の細胞役割を反映するキナーゼドメイン以外に構造的特徴を共有する。これらとしては、キナーゼ活性または他のタンパク質との相互作用を制御する調節ドメインが挙げられる(Hanks,S.K.ら(1988)Science 241:42−52)。
【0002】
ラットKID−1は、膜脱分極またはフォルスコリンによって誘導されるが、ニューロトロフィンによっても増殖因子によっても誘導されないセリン/スレオニンプロテインキナーゼである(Feldman,J.D.ら(1998)J.Biol.Chem.273:16535−16543)。ラットKID−1は、最初期遺伝子であり、カイニン酸および電気痙攣ショックに応答して海馬および皮質の特定の領域において誘導される。このことは、ラットKID−1が、神経機能、シナプス形成性、学習、および記憶、ならびにカイニン酸による痙攣およびいくつかの神経系関連疾患(例えば、痙攣および癲癇)に関与することを示唆する。ラットKID−1パラログとしては、前癌遺伝子であることが公知のPIM−1タンパク質が挙げられる。Pim−1は、サイトカイン媒介性有糸分裂シグナルの伝達に関与する。さらに、Pim−1とcMycとの間には強い相乗的腫瘍形成、ならびにアポトーシス誘導に対する関連がある(Mochizuki,T,ら(1999)J.Biol.Chem.274:18659−18666)。細胞サイクルホスファターゼCdc25A(cMycの直接的な転写標的)はまた、Pim−1キナーゼの基質であることが見いだされた。本発明は、少なくとも一部分は、ラットKID−1のヒト種のオルソログ(HKID−1とよばれる)の発見に基づく。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも一部分は、HKID−1(セリン/スレオニンプロテインキナーゼスーパーファミリーのメンバーであると推定される細胞内タンパク質)をコードする遺伝子の発見に基づく。このことに基づいて、本発明は、単離されたHKID−1タンパク質およびHKID−1タンパク質をコードする核酸分子を提供する。本発明はまた、HKID−1タンパク質またはHKID−1核酸を検出する方法、およびHKID−1タンパク質またはHKID−1核酸の調節因子を同定するための方法を提供する。
【0004】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヒトHKID−1(セリン/スレオニンキナーゼスーパーファミリーのメンバー)をコードするcDNA分子の発見に基づく。ヒトHKID−1タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、図1に示される(配列番号1;配列番号3は、オープンリーディングフレームのみを含む)。HKID−1タンパク質の推定アミノ酸配列もまた、図1に示される(配列番号2)。
【0005】
配列番号2のHKID−1タンパク質は、以下の部位またはドメインを有すると推定される:配列番号2のアミノ酸260〜263由来の1つのcAMP依存性およびcGMP依存性キナーゼリン酸化部位(PS00004;配列番号4);配列番号5;配列番号2のアミノ酸137〜139、275〜277、および279〜281に由来する3つのプロテインキナーゼCリン酸化部位(PS00005;配列番号6);配列番号7〜9;配列番号2のアミノ酸202〜205、211〜214、および321〜324に由来する3つのカゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006;配列番号10);配列番号11〜13;配列番号2のアミノ酸33〜40に由来する1つのチロシンキナーゼリン酸化部位(PS00007;配列番号14);配列番号15;配列番号2のアミノ酸43〜48、49〜54、57〜62、63〜68、80〜85、98〜103、および295〜300に由来する7つのN−ミリストイル化部位(PS00008;配列番号16);配列番号17〜23;配列番号2のアミノ酸46−54に由来する1つのプロテインキナーゼATP結合領域シグナチャ(PS00107;配列番号24);配列番号25;配列番号2のアミノ酸166〜178に由来する1つのセリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグナチャ(PS00108;配列番号26;配列番号27;ならびに配列番号2のアミノ酸40〜293の隠されたMarkovモデル(HMM)に由来する1つの真核生物プロテインキナーゼドメインコンセンサス(PF00069;配列番号28);配列番号29。PFAM識別子に関する一般的情報については、PSプレフィクスおよびPFプレフィクスドメイン識別番号とは、Sonnhammerら(1997)Protein 28:405−420およびwww.psc.edu/general/software/packages/pfam/pfam.html.をいう。
【0006】
配列番号2のHKID−1ポリペプチド配列を、MEMSAT膜貫通ドメイン推定ソフトウェアを用いて分析した。MEMSATにより、配列番号2のHKID−1ポリペプチド配列の3つの潜在的膜貫通ドメイン:アミノ酸42〜58(配列番号42)、アミノ酸78〜94(配列番号43)、およびアミノ酸226〜245(配列番号44)が推定された。HKID−1のラットオルソログであるラットKID−1は、可溶性タンパク質であることが公知であるので、MEMSATによって推定されるこの潜在的膜貫通ドメインは、HKID−1タンパク質のコアでの疎水性相互作用に関与するHKID−1タンパク質の疎水性ドメインを示すのであって、膜貫通ドメインではない可能性が高い。
【0007】
本発明の実施形態において、HKID−1分子は、非限定的例としての神経系の細胞、海馬および皮質の細胞において発現されそして/または機能するプロテインキナーゼである。
【0008】
本明細書中で使用される場合、用語「プロテインキナーゼ」は、それ自体のリン酸化状態または別のタンパク質もしくはポリペプチドのリン酸化状態を調節し得る、タンパク質またはポリペプチドを含む。プロテインキナーゼは、セリン/スレオニン残基、チロシン残基、またはセリン/スレオニンおよびチロシン残基の両方(例えば、二重特異性キナーゼ)に対する特異性(すなわち、リン酸化する特異性)を有し得る。チロシンまたはセリン/スレオニンのいずれかのリン酸化に対するプロテインキナーゼの特異性は、サブドメインのうちの2つ(VIbおよびVIII)の配列によって推定され得る(例えば、Hanksら(1988)Science 241:42−52(その内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載される)。
【0009】
プロテインキナーゼは、これらを発現する細胞と関連するシグナル伝達系路において役割を果たす。従って、HKID−1分子は、神経細胞において発現されるので、HKID−1は、以下に関与し得る:1)神経系障害;2)痙攣;3)癲癇;4)学習;5)記憶;または6)シナプス形成性。HKID−1はまた、前癌遺伝子であることが公知であるPIM−1タンパク質のパラログであるので、増殖障害(例えば、癌)に関与し得る。
【0010】
細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、癌(例えば、癌腫、肉腫、転移性障害もしくは造血新生物障害(例えば、白血病))が挙げられる。転移性腫瘍は、多数の原発性腫瘍型(前立腺、結腸、肺、胸部および肝臓が起源のものが挙げられるが、これらに限定されない)から生じ得る。
【0011】
本明細書中で使用される場合、用語「癌」、「過剰増殖性」および「新生物性」とは、自律的増殖の能力を有する細胞(すなわち、急激に拡大する細胞増殖によって特徴付けられる異常な状況または状態)をいう。過剰増殖状態および新生物性疾患状態は、病理的(すなわち、疾患状態を特徴付けるかまたは構成する)と分類され得るか、または非病理的(すなわち、正常からずれてはいるが、疾患状態とは関連しない)と分類され得る。この用語は、組織病理学的型または侵襲性の段階とは無関係に、全ての型の癌性増殖もしくは腫瘍形成プロセス、転移性組織もしくは悪性に変化した細胞、組織もしくは器官を含むことが意味される。「病理的過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖により特徴付けられる疾患状態において発生する。非病理的過剰増殖性細胞の例としては、創傷修復に関連する細胞の増殖が挙げられる。
【0012】
用語「癌」または「新生物」は、種々の器官系(例えば、罹患している肺、胸部、甲状腺、リンパ、胃腸管および尿生殖器管)の悪性度、ならびに悪性度を含む腺癌(例えば、大部分の結腸癌、腎細胞癌腫、前立腺癌および/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌腫、小腸の癌および食道の癌)を含む。
【0013】
用語「癌腫」は、当該分野で認識されており、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖器系癌腫、精巣癌腫、胸部癌腫、前立腺癌種、内分泌系癌腫、および黒色腫を含む、上皮組織または内分泌組織の悪性疾患をいう。例示的な癌腫としては、頸部(cervix)、肺、前立腺、胸部、頭部および頸部(neck)、結腸ならびに卵巣の組織から形成する癌腫が挙げられる。この用語はまた、癌肉腫(例えば、これは、癌性かつ肉腫性組織から構成される悪性腫瘍を含む)を含む。「腺癌」とは、腺組織に由来するかまたは腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫をいう。
【0014】
用語「肉腫」は、当該分野で認識されており、間葉由来の悪性腫瘍をいう。
【0015】
造血性新生物障害としては、造血性起源の過形成性/新生物性細胞(例えば、骨髄系統、リンパ系統もしくは赤血球系統、またはこれらの前駆細胞から生じる)を含む疾患が挙げられる。好ましくは、これらの疾患は、未分化型急性白血病(例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じる。さらなる例示的な骨髄障害としては、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus,L.(1991)Crit.Rev.in Oncol./Hemotol.11:267−97において総説される)が挙げられるが、それらに限定されない;リンパ系の悪性疾患としては、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(B系統ALLおよびT系統ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病(PLL)、ヘアリーセル白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる形態の悪性リンパ腫としては、非ホジキンリンパ腫およびその異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(cutaneous T−cell lymphoma)(CTCL)、大顆粒リンパ性白血病(large granular lymphocytic leukemia)(LGF)、ホジキン病、およびリード−スターンバーグ病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の種々の局面は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載される。
【0017】
(I.単離された核酸分子)
HKID−1 cDNA配列(配列番号1)は、非翻訳領域を含めて約2126ヌクレオチド長であり、約35.86kDa(翻訳後修飾を除く)の推定分子量を有する326アミノ酸タンパク質(配列番号2)をコードする、978塩基対の推定メチオニン開始コード配列(配列番号1のヌクレオチド171〜1259;配列番号3)を含む(図1)。
【0018】
本発明の1つの局面は、HKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分をコードする単離された核酸分子、ならびにハイブリダイゼーションプローブとして使用してHKID−1コード核酸(例えば、HKID−1 mRNA)を同定するに十分な核酸分子、およびHKID−1核酸分子の増幅または変異のためのPCRプライマーとして用いられるフラグメントを提供する。本明細書中で用いられる場合、用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)ならびにヌクレオチドアナログを用いて作製されたDNAまたはRNAのアナログを包含することが意図される。この核酸分子は、1本鎖または2本鎖であり得るが、好ましくは2本鎖DNAである。
【0019】
「単離された」核酸分子は、その核酸の天然の供給源中に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子である。好ましくは、「単離された」核酸は、その核酸を誘導した生物のゲノムDNAにおいて天然でその核酸に隣接する配列(すなわち、その核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)(好ましくは、タンパク質コード配列)を含まない。例えば、種々の実施形態では、この単離されたHKID−1核酸分子は、その核酸を誘導した細胞のゲノムDNA中のその核酸分子に天然で隣接する、約5kb未満、約4kb未満、約3kb未満、約2kb未満、約1kb未満、約0.5kb未満または約0.1kb未満のヌクレオチド配列を含み得る。さらに、「単離された」核酸分子(例えば、cDNA分子)は、他の細胞性物質を、組換え技術によって産生された場合は培養培地を実質的に含まなくてもよく、あるいは、化学的に合成された場合、化学的前駆体も他の化学物質も実質的に含まなくてもよい。
【0020】
本発明の単離された核酸分子(例えば、配列番号1もしくは配列番号3のヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの相補体を有する核酸分子)は、標準的な分子生物学的技術および本明細書中に提供される配列情報を用いて単離され得る。ハイブリダイゼーションプローブとして配列番号1または配列番号3の核酸配列の全てまたは一部分を用いて、HKID−1核酸分子は、標準的なハイブリダイゼーション技術およびクローニング技術を用いて単離され得る(例えば、Sambrookら編,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載される通り)。
【0021】
本発明の核酸分子は、cDNA、mRNAまたはゲノムDNAをテンプレートとして、そして適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、標準的PCR増幅技術に従って増幅され得る。このようにして増幅された核酸は、適切なベクター中にクローニングされ得、そしてDNA配列分析によって特徴付けられ得る。さらに、HKID−1ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的合成技術によって(例えば、自動化DNA合成機を用いて)調製され得る。
【0022】
本発明は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列またはその相補体に対して少なくとも26%(または30%、35%、40%、45%、55%、65%、75%、85%、90%、95%、もしくは98%)同一である、単離された核酸分子を特徴とする。本発明はまた、配列番号3に示されるヌクレオチド配列またはその相補体に対して少なくとも43%(または45%、50%、55%、65%、75%、85%、90%、95%、もしくは98%)同一である、単離された核酸分子を特徴とする。
【0023】
本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95.5%(または95.8%、96%、96.5%、97%、98%もしくは99%)同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を特徴とする。
【0024】
1つの実施形態では、単離されたHKID−1核酸分子は、配列番号1または配列番号3に示されるヌクレオチド配列を有する。
【0025】
本発明内にあるのはまた、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントをコードする単離された核酸分子であり、このフラグメントは、配列番号2のうちの少なくとも15(または25、30、50、100、150、200、250、270、290、310もしくは326)個連続したアミノ酸を含む。
【0026】
さらに、本発明の単離された核酸分子は、HKID−1をコードする単離された核酸配列の一部分のみ(例えば、プローブもしくはプライマーとして用いられ得るフラグメント、またはHKID−1の生物学的に活性な部分をコードするフラグメント(例えば、配列番号1のヌクレオチド306〜332を含むフラグメント、HKID−1のこのプロテインキナーゼATP結合領域シグネチャードメインをコードするフラグメント、配列番号1のヌクレオチド666〜704、HKID−1のセリン/トレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグネチャードメインをコードするフラグメント、およびHKID−1の真核生物プロテインキナーゼドメインをコードする配列番号1のヌクレオチド288〜1049))を含み得る。
【0027】
ヒトHKID−1の遺伝子および/またはcDNAから決定されたヌクレオチド配列は、他の細胞型における(例えば、他の組織由来の)HKID−1ホモログ、ならびに他の哺乳動物由来のHKID−1オルソログおよびHKID−1ホモログを同定ならびに/またはクローニングする際に使用するために設計されたプローブおよびプライマーの作製を可能にする。このプローブ/プライマーは代表的に、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを包含する。このオリゴヌクレオチドは代表的に、ストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは配列番号3のセンス配列またはアンチセンス配列、または配列番号1もしくは配列番号3の天然に存在する変異体および/もしくは対立遺伝子改変体のうちの少なくとも約12、好ましくは約25、より好ましくは約50、75、100、125、150、175、200、250、300、350または400個連続したヌクレオチドに対してハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を包含する。
【0028】
ヒトHKID−1ヌクレオチド配列に基づくプローブを用いて、同じかもしくは同一のタンパク質またはそれらの対立遺伝子改変体をコードする、転写産物、cDNA、またはゲノム配列を検出し得る。このプローブは、それに結合した標識基(例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、酵素補因子)を含む。このようなプローブは、例えば、被験体由来の細胞のサンプル中のHKID−1をコードする核酸のレベルを測定することによって(例えば、HKID−1 mRNAレベルを検出することまたはゲノムHKID−1遺伝子が変異したかもしくは欠失したかを決定することによって)、HKID−1タンパク質を誤って発現する細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として用いられ得る。
【0029】
本発明の別の実施形態は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼスーパーファミリーの他のメンバーをコードする核酸分子と比較して、HKID−1核酸分子を特異的に検出する、単離されたHKID−1核酸分子を特徴とする。例えば、1つの実施形態では、単離されたHKID−1核酸分子は、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号3のヌクレオチド配列を含む核酸分子またはそれらの相補体に対してハイブリダイズする。別の実施形態では、単離されたHKID−1核酸分子は、少なくとも547(または550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2126もしくは2200)ヌクレオチド長であり、そしてストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子またはそれらの相補体に対してハイブリダイズする。別の実施形態では、単離されたHKID−1核酸分子は、HKID−1のプロテインキナーゼATP結合領域シグネチャードメインをコードする、配列番号1のヌクレオチド306〜332、またはその相補体を含む。なお別の実施形態では、単離されたHKID−1核酸分子は、HKID−1のセリン/トレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグネチャードメインをコードする、配列番号1のヌクレオチド666〜704、またはその相補体を含む。別の実施形態では、単離されたHKID−1核酸分子は、HKID−1の真核生物プロテインキナーゼドメインをコードする、配列番号1のヌクレオチド288〜1049、またはその相補体を含む。別の実施形態では、本発明は、HKID−1核酸のコード鎖に対してアンチセンスである、単離された核酸分子を提供する。
【0030】
「HKID−1の生物学的に活性な部分」をコードする単離された核酸フラグメントは、配列番号1または配列番号3の一部分を単離し、HKID−1タンパク質のコードされる部分を(例えば、インビトロでの組換え発現によって)発現し、そしてHKID−1のコードされる部分の活性を評価することによって調製され得る。例えば、HKID−1の生物学的に活性な部分をコードする単離された核酸フラグメントとしては、以下のうちの1以上が挙げられる:配列番号2の(例えば、アミノ酸260〜263由来の)cAMPおよびcGMP依存性のプロテインキナーゼリン酸化部位(PS00004;配列番号4);配列番号5;配列番号2の(例えば、アミノ酸137〜139、275〜277、および279〜281由来の)プロテインキナーゼCリン酸化部位(PS00005;配列番号6);配列番号7〜9;配列番号2の(例えば、アミノ酸202〜205、211〜214、および321〜324由来の)カゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006;配列番号10);配列番号11〜13;配列番号2の(例えば、アミノ酸33〜40由来の)チロシンキナーゼリン酸化部位(PS00007;配列番号14);配列番号15;配列番号2のアミノ酸43〜48、49〜54、57〜62、63〜68、80〜85、98〜103、および295〜300由来のN−ミリストイル化部位(PS00008;配列番号16);配列番号17〜23;配列番号2の(例えば、アミノ酸46〜54由来の)プロテインキナーゼATP結合領域シグネチャー(PS00107;配列番号24);配列番号25;配列番号2の(例えば、アミノ酸166〜178由来の)セリン/トレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグネチャー(PS00108;配列番号26);配列番号27;ならびに配列番号2の(例えば、アミノ酸40〜293由来の)真核生物プロテインキナーゼドメイン(PF00069;配列番号28);配列番号29。
【0031】
本発明はさらに、遺伝コードの縮重に起因して、配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列と異なり、従って、配列番号1または配列番号3に示されるヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質と同じHKID−1タンパク質をコードする、単離された核酸分子を包含する。
【0032】
配列番号1または配列番号3に示されるヒトHKID−1ヌクレオチド配列に加えて、HKID−1のアミノ酸配列における変化をもたらすDNA配列多型が、集団(例えば、ヒトの集団)内に存在し得ることを当業者は理解する。HKID−1遺伝子におけるこのような遺伝的多型は、天然の対立遺伝子バリエーションに起因して集団内の個体間に存在し得る。対立遺伝子は、所定の遺伝子座に代替的に存在する遺伝子の群の1つである。本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」および「組換え遺伝子」とは、HKID−1タンパク質、好ましくは、哺乳動物HKID−1タンパク質をコードする、オープンリーディングフレームを含む核酸分子をいう。本明細書中で使用される場合、句「対立遺伝子改変体」とは、HKID−1遺伝子座に存在するヌクレオチド配列か、またはこのヌクレオチド配列にコードされるポリペプチドをいう。このような天然の対立遺伝子バリエーションは、代表的に、HKID−1遺伝子のヌクレオチド配列において、1〜5%の変異を生じ得る。代替的な対立遺伝子は、多くの異なる個体において目的の遺伝子を配列決定することによって同定され得る。これは、種々の個体における同じ遺伝子座を同定するためのハイブリダイゼーションプローブを使用することによって、容易に行われ得る。天然の対立遺伝子バリエーションの結果であり、そしてHKID−1の機能活性を変更しない、HKID−1における、このようなヌクレオチドバリエーション、および生じるアミノ酸多型もしくはアミノ酸バリエーションのいずれか、および全ては、本発明の範囲内にあることが意図される。HKID−1の対立遺伝子改変体は、実施例5に示されるHKID−1の遺伝子座および物理的位置に対して、第22染色体連鎖群の先端から196.70centiRayの、D22S1169とD22S_qterマーカーとの間の第22染色体にあると物理的および遺伝子的にマッピングされる。
【0033】
本発明は、天然に存在する対立遺伝子改変体をコードする単離された核酸分子を含み、この核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドの、完全に機能的なタンパク質、部分的に機能的なHKID−1タンパク質または非機能的なタンパク質をコードし、ここで、この核酸分子は、ストリンジェントな条件下配列番号1、配列番号3、またはでその補体を含む核酸分子にハイブリダイズする。
【0034】
さらに、他の種由来のHKID−1タンパク質をコードする単離された核酸分子(HKID−1ホモログまたはHKID−1オルソログ)(これらは、ヒトHKID−1のヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列を有する)は、当該分野で公知のもの(例えば、HKID−1のラット種オルソログおよびXenopus laevis(カエル)種オルソログ)を除いて、本発明の範囲内であることが意図される。本発明のHKID−1cDNAの天然の対立遺伝子改変体、ホモログ、およびオルソログに対応する核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標準的なハイブリダイゼーション技術に従ってハイブリダイゼーションプローブとして、ヒトcDNAまたはその部分を使用して、本明細書中に開示されるヒトHKID−1核酸に対するその同一性に基づいて単離され得る。HKID−1のオルソログは、しばしば、実施例5に示されるヒトHKID−1の遺伝子座とシンテニーである遺伝子座および物理的位置に対して、第22染色体連鎖群の先端から196.70centiRayの、D22S1169とD22S_qterマーカーとの間の第22染色体にあるとマッピングされる。
【0035】
本発明の別の実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、1)配列番号1に示されるヌクレオチド配列のうちの、少なくとも547ヌクレオチド(または少なくとも、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100または2126ヌクレオチド)であるか;2)配列番号3に示されるヌクレオチド配列の少なくとも415ヌクレオチド(または450、500、550、600、650、700、800、900または978ヌクレオチド)であるか;または3)配列番号1;配列番号30のヌクレオチド1〜923由来の少なくとも8ヌクレオチド(または10、15、20、25、35、45、65、85、105、125、175、225、275、325、375、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900または923ヌクレオチド)であるか;あるいは4)配列番号3;配列番号31のヌクレオチド1〜344由来の少なくとも8ヌクレオチド(または10、15、20、25、35、45、65、85、105、125、175、225、275、325または344ヌクレオチド)であり、そしてストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号3のヌクレオチド配列(好ましくは、コード配列)またはその相補体を含む核酸分子にハイブリダイズする。
【0036】
別の実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1もしくは配列番号3に示されるヌクレオチド配列の相補体である核酸分子、またはその一部を含む。所定のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、ストリンジェントな条件下でその所定のヌクレオチド配列にハイブリダイズし得る程度に十分に、その所定のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄についての条件を記載している。ストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、そしてCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989)、6.3.1−6.3.6に見出され得る。水性および非水性の方法が、その参考文献に記載されており、いずれの方法も使用され得る。好ましい、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後の、0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃での1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの別の例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後の、0.2×SSC、0.1%SDS中、55℃での1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後の、0.2×SSC、0.1%SDS中、60℃での1回以上の洗浄である。好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後の、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃での1回以上の洗浄である。特に好ましいストリンジェンシー条件(および分子が本発明のハイブリダイゼーション限定の中に入るか否かを決定するためにどの条件を適用すべきかについて、実施者が未確定の場合に使用されるべき条件)は、0.5M リン酸ナトリウム、7% SDS、65℃、その後の0.2×SSC、1% SDS、65℃での1回以上の洗浄である。好ましくは、ストリンジェントな条件下で配列番号1または配列番号3の配列にハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は、天然に存在する核酸分子に対応する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「天然に存在する」核酸分子は、自然界で生じるヌクレオチド配列を有する(例えば、天然のタンパク質をコードする)RNA分子またはDNA分子をいう。
【0039】
集団に存在し得るHKID−1配列の天然に存在する対立遺伝子改変体に加え、当業者はさらに、HKID−1タンパク質の生物学的活性を変更することなく、配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列中へ変異によって変化が導入され得、これによってコードされるHKID−1タンパク質のアミノ酸配列に変化を導き得ることを理解する。例えば、当業者は、「非必須」アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導く、ヌクレオチド置換を作製し得る。「非必須」アミノ酸残基は、HKID−1の野生型配列(例えば、配列番号2の配列)から、その生物学的活性を変更することなく変更され得る残基であるが、「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性に必要とされる。例えば、種々の種のHKID−1間で保存されていないか、または単に準保存的(semi−conserved)にすぎないアミノ酸残基は、活性に非必須であり得、従って、変更の標的となり得る。あるいは、種々の種のHKID−1タンパク質間で保存されているアミノ酸残基は、活性に必須であり得、従って、変更の標的ではない。
【0040】
例えば、本発明のHKID−1タンパク質は、配列番号2のアミノ酸46〜54;配列番号25由来の少なくとも1つの保存されたプロテインキナーゼATP結合領域表示(PS00107;配列番号24);配列番号2のアミノ酸166〜178;配列番号27由来の少なくとも1つの保存されたセリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位表示(PS00108;配列番号26);および配列番号2のアミノ酸40〜293;配列番号29由来の少なくとも1つの保存された真核生物プロテインキナーゼドメイン(PS00069;配列番号28)を含む。例えば、本発明のHKID−1タンパク質は、例えば、配列番号2のアミノ酸260〜263;配列番号5由来の少なくとも1つの保存されたまたは保存されていないcAMP依存性およびcGMP依存性プロテインキナーゼリン酸化部位(PS00004;配列番号4);例えば、配列番号2のアミノ酸137〜139、275〜277、および279〜281;配列番号7〜9由来のプロテインキナーゼCリン酸化部位(PS00005;配列番号6);例えば、配列番号2のアミノ酸202〜205、211〜214、および321〜324;配列番号11〜13由来のカゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006;配列番号10);例えば、配列番号2のアミノ酸33〜40;配列番号15由来のチロシンキナーゼリン酸化部位(PS00007;配列番号14);例えば、配列番号2のアミノ酸43〜48、49〜54、57〜62、63〜68、80〜85、98〜103、および295〜300;配列番号17〜23由来のN−ミリストリル化部位(PS00008;配列番号16)を含み得る。
【0041】
従って、本発明の別の局面は、活性に必須でないアミノ酸残基の変更を含むHKID−1タンパク質をコードする核酸分子を提供する。このようなHKID−1タンパク質は、配列番号2とアミノ酸配列が異なるが、生物学的活性を依然として保持している。1つの実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも約45%、55%、65%、75%、85%、90%、95%、96%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0042】
配列番号2の配列と異なる配列を有するHKID−1タンパク質をコードする単離された核酸分子は、1つ以上のアミノ酸置換、付加、または欠失がコードされるタンパク質に導入されるように、配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列に1つ以上のヌクレオチド置換、付加、または欠失を導入することによって作製され得る。変異は、標準的な技術(例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発)によって導入され得る。好ましくは、保存的アミノ酸置換が、1以上の推定非必須アミノ酸残基でなされ得る。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。従って、HKID−1における推定非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖のファミリーからの別のアミノ酸残基と置換される。あるいは、変異は、HKID−1コード配列の全てまたは一部に沿って無作為に導入され得(例えば、飽和変異誘発(saturation mutagenesis))、そして生じた変異体は、活性を維持する変異体を同定するためにHKID−1の生物学的活性についてスクリーニングされ得る。変異誘発後、コードタンパク質は、組換え発現され得、そしてこのタンパク質の活性が、測定され得る。
【0043】
1つの実施形態において、変異HKID−1は、(1)プロテインキナーゼによりリン酸化される能力、(2)N−ミリストイル化される能力、(3)ATPに結合する能力、(4)タンパク質をリン酸化する能力、および(5)セリン残基およびスレオニン残基上で特異的にタンパク質をリン酸化する能力についてアッセイされ得る。別の実施形態において、変異HKID−1は、HKID−1を発現する細胞(例えば、神経系の細胞)に関連するシグナル伝達経路において役割を果たすその能力、HKID−1を発現する細胞において発現されるその基質タンパク質とタンパク質−タンパク質相互作用を形成する能力、およびHKID−1を発現する細胞に存在するシグナル伝達経路および生物学的経路におけるタンパク質とタンパク質−タンパク質相互作用を形成する能力についてアッセイされ得る。
【0044】
本発明はさらに、アンチセンス核酸分子(すなわち、タンパク質をコードするセンス核酸に相補的(例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的)またはmRNA配列に相補的である分子)を包含する。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合し得る。アンチセンス核酸は、HKID−1コード鎖全体に相補的であり得るか、その一部(例えば、タンパク質コード領域(すなわちオープンリーディングフレーム)の全体またはその一部)にのみ相補的であり得る。アンチセンス核酸分子は、HKID−1をコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域に対してアンチセンスであり得る。非コード領域(「5’および3’の非翻訳領域」)は、コード領域に隣接し、かつアミノ酸に翻訳されない5’および3’の配列である。
【0045】
本明細書中に開示されるHKID−1をコードするコード鎖配列(例えば、配列番号1または配列番号3)を考慮すると、本発明のアンチセンス核酸を、ワトソン−クリック塩基対合則に従って設計し得る。アンチセンス核酸分子は、HKID−1mRNAのコード領域全体に相補的であり得るが、より好ましくは、HKID−1mRNAのコード領域または非コード領域の一部に対してのみアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、HKID−1mRNAの翻訳開始部位を取り囲む領域に相補的であり得る(例えば、以下の配列:AGAGCAGCATCGCGGGCGACGGC(配列番号35)またはAGCAGCATCGCGGGCGAC(配列番号36)を有するオリゴヌクレオチド)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、45ヌクレオチド長または50ヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当該分野で公知の手順を使用する、化学合成および酵素連結反応を使用して構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、あるいは分子の生物学的安定性を増加するように、またはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように(例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドが使用され得る)設計された種々の改変ヌクレオチドを使用して、化学的に合成され得る。アンチセンス核酸を生成するために使用され得る改変ヌクレオチドの例としては、以下が挙げられる:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン(mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリン。あるいは、アンチセンス核酸は、発現ベクターを使用して生物学的に生成され得、この発現ベクター内に、核酸がアンチセンス方向でサブクローニングされている(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向のRNAであり、これは、以下の小節でさらに記載される)。
【0046】
代表的に、本発明のアンチセンス核酸分子は、被験体に投与されるか、またはインサイチュで生成され、その結果これらは、HKID−1タンパク質をコードする細胞性のmRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズするか、またはこれらに結合し、それによって、タンパク質の発現を阻害する(例えば、転写および/または翻訳を阻害することによって)。ハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖を形成するための従来のヌクレオチド相補性により得るか、または例えば、DNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合においては、その二重らせんの大きい方の溝における特異的相互作用を介し得る。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例としては、組織部位での直接注射が挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的するように改変され得、次いで全身的に投与され得る。例えば、全身投与のために、アンチセンス分子は、それらが、選択された細胞表面上で発現されるレセプターまたは抗原に特異的に結合するように、例えば、細胞表面のレセプターまたは抗原に結合するペプチドまたは抗体に、このアンチセンス核酸分子を結合することによって、改変され得る。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書中に記載されるベクターを使用して細胞に送達され得る。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、強力なpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に、このアンチセンス核酸分子を配置したベクター構築物が、好ましい。
【0047】
本発明のアンチセンス核酸分子は、α−アノマー核酸分子であり得る。α−アノマー核酸分子は、相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成し、ここで、通常のβユニットとは対照的に、この鎖は、互いに平行に走る(Gaultierら(1987)Nucleic Acids Res.15:6625−6641)。このアンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoueら(1987)Nucleic Acids Res.15:6131−6148)またはキメラRNA−DNAアナログ(Inoueら(1987)FEBS Lett.215:327−330)を含み得る。
【0048】
本発明はまた、リボザイムを包含する。リボザイムは、一本鎖核酸(例えば、mRNA)(これに対して、リボザイムは相補的領域を有する)を切断し得るリボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNA分子である。従って、リボザイム(例えば、ハンマーヘッド(hammerhead)リボザイム(HaselhoffおよびGerlach(1988)Nature 334:585〜591に記載される))を使用して、HKID−1 mRNA転写物を触媒的に切断して、それにより、HKID−1 mRNAの翻訳を阻害し得る。HKID−1をコードする核酸に対する特異性を有するリボザイムは、本明細書に開示されるHKID−1 cDNAのヌクレオチド配列(例えば、配列番号1、配列番号3)に基づいて設計され得る。例えば、Tetrahymena L−19 IVS RNAの誘導体は、活性部位のヌクレオチド配列がHKID−1をコードするmRNAの切断されるべきヌクレオチド配列に相補的であるように構築され得る。例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号;およびCechら、米国特許第5,116,742号を参照のこと。あるいは、HKID−1 mRNAを使用して、RNA分子のプールから特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNAを選択し得る。例えば、BartelおよびSzostak(1993)Science 261:1411〜1418を参照のこと。
【0049】
本発明はまた、三重らせん構造を形成する核酸分子を包含する。例えば、HKID−1遺伝子発現は、HKID−1の調節領域(例えば、HKID−1プロモーターおよび/またはHKID−1エンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的化し、標的細胞中のHKID−1遺伝子の転写を妨害する三重らせん構造を形成することによって阻害され得る。一般に、Helene(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569;Helene(1992) Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27;およびMaher(1992)Bioassays 14(12):807を参照のこと。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明の核酸分子は、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格において改変されて、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解度を改良し得る。例えば、核酸のデオキシリボースリン酸骨格は、ペプチド核酸を生成するように改変され得る(Hyrupら(1996)Bioorganic & Medicinal Chemistry 4:5を参照のこと)。本明細書で使用される場合、用語「ペプチド核酸」または「PNA」は、デオキシリボースリン酸骨格が、偽ペプチド(pseudopeptide)骨格に置換され、そして4つの天然核酸塩基のみが保持されている、核酸模倣物(例えば、DNA模倣物)をいう。PNAの中性骨格は、低イオン強度の条件下でDNAおよびRNAに対する特異的ハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、Hyrupら(1996)、前出;Perry−O’Keefeら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14670に記載されるような標準的な固相ペプチド合成プロトコルを使用して実施され得る。
【0051】
HKID−1のPNAは、治療的適用および診断的適用において使用され得る。例えば、PNAは、例えば、転写阻止もしくは翻訳阻止を誘導することまたは複製を阻害することによって、遺伝子発現の配列特異的調節のためのアンチセンスまたは抗遺伝子(antigene)薬剤として使用され得る。HKID−1のPNAはまた、例えば、PNA指向型PCRクランピング(clamping)によって;他の酵素(例えば、S1ヌクレアーゼ)と組み合わせて使用される場合に人工制限酵素として(Hyrup(1996),前出);あるいはDNA配列決定およびハイブリダイゼーションのためのプローブまたはプライマーとして(Hyrup(1996)、前出;Perry−O’Keefeら(1996)、前出)、例えば、遺伝子における1つの塩基対変異の分析において使用され得る。
【0052】
別の実施形態において、HKID−1のPNAは、PNAに対する脂肪親和性基または他のヘルパー基を付着することによって、PNA−DNAキメラの形成によって、あるいはリポソームまたは当該分野で公知の薬物送達の他の技術の使用によって、例えば、それらの安定性、特異性または細胞性取り込みを増強するために改変され得る。PNA−DNAキメラの合成は、Hyrup(1996)、前出、Finnら(1996)Nucleic Acids Res.24(17):3357〜63、Magら(1989)Nucleic Acids Res.17:5973、およびPeterserら(1975)Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119に記載されるように実施され得る。
【0053】
(II.単離されたHKID−1タンパク質)
本発明の1つの局面は、単離されたHKID−1タンパク質、およびその生物学的に活性な部分、ならびに抗HKID−1抗体を惹起するための免疫原としての使用に適切なポリペプチドフラグメントを提供する。1つの実施形態において、ネイティブHKID−1タンパク質は、標準的なタンパク質精製技術を使用する適切な精製スキームによって細胞または組織供給源から単離され得る。別の実施形態において、HKID−1タンパク質は、組換えDNA技術によって生成される。組換え発現に代えて、HKID−1タンパク質またはポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。
【0054】
「単離された」タンパク質もしくはその生物学的に活性な部分または「精製された」タンパク質もしくはその生物学的に活性な部分は、HKID−1タンパク質が誘導される細胞または組織供給源からの細胞性物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含有しないか、あるいは、化学的に合成される場合に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しない。語「細胞性物質を実質的に含有しない」は、HKID−1タンパク質が単離されるかまたは組替え的に生成される細胞の細胞性成分からこのタンパク質が分離されている、HKID−1タンパク質の調製物を含む。従って、細胞性物質を実質的に含有しないHKID−1タンパク質は、約30%、20%、10%または5%(乾燥重量で)未満の非HKID−1タンパク質(本明細書において「夾雑タンパク質」ともいわれる)を有するHKID−1タンパク質の調製物を含む。HKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え的に生成される場合、これはまた、好ましくは実質的に培養培地を含有しない(すなわち、培養培地が、タンパク質調製物の容量の約20%、10%または5%未満を示す)。HKID−1タンパク質が化学合成によって生成される場合、これは、好ましくは実質的に化学的前駆体または他の化学物質を含有しない(すなわち、このタンパク質は、このタンパク質の合成に関与する化学的前駆体、または他の化学物質から分離される)。従って、HKID−1タンパク質のこのような調製物は、約30%、20%、10%または5%(乾燥重量で)未満の化学的前駆体または非HKID−1化学物質を有する。
【0055】
1つの実施形態において、本発明の単離されたタンパク質(好ましくは、HKID−1タンパク質)は、これらのタンパク質における少なくとも1つの「プロテインキナーゼATP結合部位」および少なくとも1つの「セリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位」の存在に、ならびに配列番号2を含むアミノ酸配列に対する少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、85%、90%、95%、96%、98%、99%、またはそれより大きい相同性のアミノ酸配列を有することに基づいて、同定される。本明細書中において使用される場合、用語「プロテインキナーゼATP結合部位」は、プロテインキナーゼにおいて保存される配列番号24のプロテインキナーゼATP結合領域シグネチャー(signature)配列(PS00107)に対する有意なアミノ酸配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。本明細書中において使用される場合、用語「セリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位」は、タンパク質上のセリン残基およびスレオニン残基をリン酸化するプロテインキナーゼ中に保存される、配列番号26のセリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグネチャー配列(PS00108)に対する有意なアミノ酸配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
別の実施形態において、本発明の単離されたタンパク質(好ましくは、HKID−1タンパク質)は、少なくとも1つの真核生物プロテインキナーゼドメインの存在に、および配列番号2を含むアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、85%、90%、95%、96%、98%、99%、またはそれより大きい相同性のアミノ酸配列を有することに基づいて、同定される。本明細書中において使用される場合、用語「真核生物プロテインキナーゼドメイン」は、プロテインキナーゼにおいて保存される、配列番号28の真核生物プロテインキナーゼドメイン配列(PF00069)に対する有意なアミノ酸配列類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0057】
本発明のなお別の実施形態は、配列番号3に少なくとも約43%(または45%、50%、55%、65%、75%、85%、90%、95%、または98%)同一な核酸分子を有するヌクレオチド配列によってコードされる、単離されたHKID−1タンパク質;配列番号2のアミノ酸260〜263由来のcAMPおよびcGMPに依存するプロテインキナーゼリン酸化部位(PS00004;配列番号4)をコードする配列番号1の一部と、少なくとも約65%、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一なヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、単離されたHKID−1タンパク質;配列番号5;配列番号2のアミノ酸137〜139、275〜277、および279〜281由来の3つのプロテインキナーゼCリン酸化部位(PS00005;配列番号6);配列番号7〜9;配列番号2のアミノ酸202〜205、211〜214、および321〜324由来の3つのカゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006;配列番号10);配列番号11〜13;配列番号2のアミノ酸33〜40由来のチロシンキナーゼリン酸化部位(PS00007;配列番号14);配列番号15;配列番号2のアミノ酸43〜48、49〜54、57〜62、63〜68、80〜85、98〜103、および295〜300由来の7つのN−ミリストイル化部位(PS00008;配列番号16);配列番号17〜23;ならびに配列番号2のアミノ酸46〜54由来のプロテインキナーゼATP結合領域シグネチャー(PS00107;配列番号24)をコードする配列番号1の一部に、少なくとも約65%、好ましくは、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一なヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、単離されたHKID−1タンパク質;配列番号25(例えば、配列番号1の約ヌクレオチド306〜332;配列番号32);配列番号2のアミノ酸166〜178由来のセリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグネチャー(PS00108;配列番号26);配列番号27(例えば、配列番号1の約ヌクレオチド666〜704;配列番号33);ならびに配列番号2のアミノ酸40〜293由来の真核生物プロテインキナーゼドメイン(PS00069;配列番号28);配列番号29(例えば、配列番号1の約ヌクレオチド288〜1049;配列番号34)、および配列番号3のヌクレオチド配列を有する核酸分子にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、単離されたHKID−1タンパク質、またはこれらの相補体を含む。
【0058】
HKID−1タンパク質の生物学的に活性な部分は、HKID−1タンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列)と実質的に同一であるかまたはこのアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含むペプチドを含み、このペプチドは、全長HKID−1タンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、そしてHKID−1タンパク質の少なくとも1つの活性を示す。代表的に、生物学的に活性な部分は、HKID−1タンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。HKID−1タンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100またはそれ以上のアミノ酸長であるポリペプチドであり得る。生物学的に活性なポリペプチドは、1つ以上の同定されたHKID−1構造ドメイン(例えば、配列番号2の例えばアミノ酸260〜263由来のcAMPおよびcGMPに依存するプロテインキナーゼリン酸化部位(PS00004;配列番号4);配列番号5;例えば、配列番号2の例えばアミノ酸137〜139、275〜277、および279〜281由来のプロテインキナーゼCリン酸化部位(PS00005;配列番号6);配列番号7〜9;例えば、配列番号2のアミノ酸202〜205、211〜214、および321〜324由来のカゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006;配列番号10);配列番号11〜13;例えば、配列番号2のアミノ酸33〜40由来のチロシンキナーゼリン酸化部位(PS00007;配列番号14);配列番号15;例えば、配列番号2のアミノ酸43〜48、49〜54、57〜62、63〜68、80〜85、98〜103、および295〜300由来のN−ミリストイル化部位(PS00008;配列番号16);配列番号17〜23;例えば、配列番号2のアミノ酸46〜54由来のプロテインキナーゼATP結合領域シグネチャー(PS00107;配列番号24);配列番号25;例えば、配列番号2のアミノ酸166〜178由来のセリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグネチャー(PS00108;配列番号26);配列番号27;ならびに例えば、配列番号2のアミノ酸40〜293由来の真核生物プロテインキナーゼドメイン(PS00069;配列番号28);配列番号29)を含む。
【0059】
さらに、他の生物学的に活性な部分(ここで、タンパク質の他の領域が欠失されている)は、組換え技術によって調製され得、そしてネイティブHKID−1タンパク質の1つ以上の機能的活性について評価され得る。
【0060】
HKID−1タンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する。他の有用なHKID−1タンパク質は、配列番号2と実質的に同一であり、そして天然の対立遺伝子改変または変異誘発に起因してアミノ酸配列が異なってもなお、配列番号2のタンパク質の機能的活性を保持する。例えば、このようなHKID−1のタンパク質およびポリペプチドは、本明細書中に記載される少なくとも1つの生物学的活性を有し、この生物学的活性は、例えば、以下である:(1)プロテインキナーゼによってリン酸化される能力、(2)N−ミリストイル化される能力、(3)ATPを結合する能力、(4)タンパク質をリン酸化する能力、(5)セリン残基およびスレオニン残基で特異的にタンパク質をリン酸化する能力、(6)HKID−1を発現する細胞(例えば、神経系の細胞)に関連するシグナル伝達経路において役割を果たす能力、(7)HKID−1が発現される細胞中で発現されるその基質タンパク質とタンパク質−タンパク質相互作用を形成する能力、ならびに(8)HKID−1が発現される細胞中に存在するシグナル伝達経路および生物学的経路において、タンパク質とタンパク質−タンパク質相互作用を形成する能力。従って、有用な単離されたHKID−1タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約45%同一、好ましくは55%、65%、75%、85%、90%、95%、96%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、そして配列番号2のHKID−1タンパク質の機能的活性を保持する、タンパク質である。他の例において、HKID−1タンパク質は、配列番号2のアミノ酸260〜263由来のcAMPおよびcGMPに依存するプロテインキナーゼリン酸化部位(PS00004;配列番号4)を1つ含む1つ以上のHKID−1ドメインと、55%、65%、75%、85%、90%、95%、96%、98%または99%同一なアミノ酸配列を有するタンパク質;配列番号5;配列番号2のアミノ酸137〜139、275〜277、および279〜281由来の3つのプロテインキナーゼCリン酸化部位(PS00005;配列番号6);配列番号7〜9;配列番号2のアミノ酸202〜205、211〜214、および321〜324由来の3つのカゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006;配列番号10);配列番号11〜13;配列番号2のアミノ酸33〜40由来の1つのチロシンキナーゼリン酸化部位(PS00007;配列番号14);配列番号15;配列番号2のアミノ酸43〜48、49〜54、57〜62、63〜68、80〜85、98〜103、および295〜300由来の7つのN−ミリストイル化部位(PS00008;配列番号16);配列番号17〜23;配列番号2のアミノ酸46〜54由来の1つのプロテインキナーゼATP結合領域シグネチャー(PS00107;配列番号24);配列番号25;配列番号2のアミノ酸166〜178由来の1つのセリン/スレオニンプロテインキナーゼ活性部位シグネチャー(PS00108;配列番号26);配列番号27;ならびに配列番号2のアミノ酸40〜293由来の1つの真核生物プロテインキナーゼドメイン(PF00069;配列番号28);配列番号29を有するタンパク質である。1つの実施形態において、HKID−1タンパク質は、配列番号2のHKID−1タンパク質の機能的活性を保持する。
【0061】
2つのアミノ酸配列のパーセント同一性または2つの核酸のパーセント同一性を決定するために、配列は、最適比較目的のために整列される(例えば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列中の一方または両方に、ギャップが導入され得、そして比較の目的で、非相同配列が無視され得る)。好ましい実施形態において、比較の目的で整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、なおより好ましくは少なくとも60%、そしてなおより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが、比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、分子は、その位置で同一である。(本明細書中において使用される場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等価である。)2つの配列間のパーセント同一性は、これら2つの配列の最適な整列のために導入することが必要とされるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、それらの配列によって共有される同一位置の数の関数である。
【0062】
配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)においてGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444−453)のアルゴリズムを用い、Blossum 62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれか、ならびにギャップウェイト16、14、12、10、8、6、または4およびレングスウェイト(length weight)1、2、3、4、5、または6を用いて決定される。さらに別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMPマトリクスならびにギャップウェイト40、50、60、70、または80およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を用いて決定される。特に好ましいセットのパラメータ(およびある分子が本発明の配列同一性内に入るか相同性の限度内に入るかを決定するために適用されるべきパラメータについて実施者が不確かである場合に使用されるべきパラメータ)は、Blossum 62スコアリングマトリクスを、ギャップオープンペナルティー12、ギャップエクステンドペナルティー4、およびフレームシフトギャップペナルティー5で使用することである。
【0063】
2つのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.MeyersおよびW.Miller((1989)CABIOS、4:11−17)のアルゴリズムを用い、PAM120ウェイトレジデューテーブル(weight redidue table)、ギャップレングスペナルティー12、およびギャップペナルティー4を用いて決定され得る。
【0064】
本明細書中に記載される核酸配列およびタンパク質配列は、公のデーターベースに対して検索を実施して、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するための、「問い合わせ配列」として使用され得る。このような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403〜10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施され得る。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施されて、本発明のHKID−1核酸分子に対するヌクレオチド配列相同性を獲得し得る。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施されて、本発明のHKID−1タンパク質分子に対するアミノ酸配列相同性を獲得し得る。比較目的のためのギャップ化アラインメントを獲得するために、ギャップ化BLASTは、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389〜3402に記載されるように利用され得る。BLASTおよびギャップ化BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが、使用され得る。www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0065】
2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップを可能にしてかまたは可能にすることなく、上記と類似の技術を使用して決定され得る。パーセント同一性の計算において、正確な一致のみが計数される。
【0066】
本発明はまた、HKID−1キメラまたはHKID−1融合タンパク質を提供する。本明細書で使用される場合、HKID−1の「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非HKID−1ポリペプチドに作動可能に連結されるHKID−1ポリペプチドを含む。「HKID−1ポリペプチド」は、HKID−1に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいい、一方、「非HKID−1ポリペプチド」は、HKID−1タンパク質に実質的に同一でないタンパク質(例えば、HKID−1タンパク質と異なり、そして同じまたは異なる生物に由来するタンパク質)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。HKID−1融合タンパク質において、HKID−1ポリペプチドは、HKID−1タンパク質の全てまたは一部、好ましくはHKID−1タンパク質の少なくとも1つの生物学的に活性な部分に対応し得る。融合タンパク質において、用語「作動可能に連結される」は、HKID−1ポリペプチドおよび非HKID−1ポリペプチドがインフレームで互いに融合されることを示すことが意図される。非HKID−1ポリペプチドは、HKID−1ポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。
【0067】
1つの有用な単離された融合タンパク質は、HKID−1配列がGST配列のC末端に融合された、GST−HKID−1融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、組換えHKID−1の精製を容易にし得る。
【0068】
別の実施形態において、融合タンパク質は、そのN末端で異種シグナル配列を含むHKID−1タンパク質である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、HKID−1の発現および/または分泌は、異種シグナル配列の使用を通じて増加され得る。例えば、バキュロウイルスエンベローブタンパク質のgp67分泌配列は、異種シグナル配列として使用され得る(Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編、John Wiley & Sons,1992)。真核生物異種シグナル配列の他の例には、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼの分泌配列が挙げられる(Stratagene;La Jolla,California)。なお別の例において、有用な原核生物異種シグナル配列には、phoA分泌シグナル(Sambrookら、前出)およびプロテインA分泌シグナル(Pharmacia Biotech;Piscataway,New Jersey)が挙げられる。
【0069】
なお別の実施形態において、融合タンパク質は、HKID−1−イムノグロブリン融合タンパク質であり、これは、HKID−1の全てまたは一部がイムノグロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列に融合される。
【0070】
好ましくは、本発明のHKID−1キメラタンパク質またはHKID−1融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントは、従来の技術に従って(例えば、連結のために平滑末端または付着末端(staggered−end)を使用すること、適切な末端を提供するための制限酵素消化、望ましくない結合を避けるための適切なアルカリホスファターゼ処理のような付着末端(cohesive end)の埋まり(filling−in)、および酵素的連結によって)インフレームでともに連結される。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、引き続いてキメラ遺伝子配列を生成するためにアニール化され、そして再増幅され得る2つの連続する遺伝子フラグメント間の相補的突出部を生じるアンカープライマーを使用して実施され得る(例えば、Ausubelら、前出を参照のこと)。さらに、多くの発現ベクターは、すでに融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をコードして市販されている。HKID−1をコードする核酸は、このような発現ベクターへクローン化され得、その結果、融合部分は、インフレームでHKID−1タンパク質に連結される。
【0071】
本発明はまた、HKID−1タンパク質の改変体(すなわち、HKID−1アミノ酸配列の配列とは異なる配列を有するタンパク質)を提供する。このような改変体は、HKID−1アゴニスト(模倣物)またはHKID−1アンタゴニストのいずれかとして機能し得る。HKID−1タンパク質の改変体は、変異誘発(例えば、HKID−1タンパク質の個々の点変異または切断)によって、生成され得る。HKID−1タンパク質のアゴニストは、天然に存在する形態のHKID−1タンパク質の生物学的活性(例えば、(1)タンパク質キナーゼによりリン酸化される能力、(2)N−ミリストイル化される能力、(3)ATPに結合する能力、(4)タンパク質をリン酸化する能力、(5)セリン残基およびスレオニン残基上でタンパク質を特異的にリン酸化する能力、(6)HKID−1を発現する細胞(例えば、神経系の細胞)と関連するシグナル伝達経路において役割を果たす能力、(7)HKID−1が発現される細胞において発現されるその基質タンパク質との、タンパク質−タンパク質相互作用を形成する能力、ならびに(8)HKID−1が発現される細胞に存在するシグナル伝達経路および生物学的経路におけるタンパク質とのタンパク質−タンパク質相互作用を形成する能力)と実質的に同じであるか、またはそのサブセットであり得る。HKID−1タンパク質のアンタゴニストは、例えば、HKID−1タンパク質を含む細胞シグナル伝達カスケードの下流メンバーまたは上流メンバーに競合的に結合することによって、天然に存在する形態のHKID−1タンパク質の活性の1つ以上を阻害し得る。従って、特定の生物学的効果が、限定される機能の改変体での処置により引き起こされ得る。天然に存在する形態のタンパク質の生物学的活性のサブセットを有する改変体を用いる被験体の処置は、天然に存在する形態のHKID−1タンパク質を用いる処置と比較して、被験体における副作用がより少なくあり得る。
【0072】
処置は、患者への治療剤の適用もしくは投与、または患者から単離した組織もしくは細胞株への治療剤の適用もしくは投与と定義され、この患者は、疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を有し、この適用または投与は、この疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を、治療するか、治癒するか、活性化するか、軽減するか、変更するか、改善するか、回復するか、改善するかまたは影響を与える目的で行われる。本明細書中で使用する場合、「被験体」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)、または実験動物もしくは疾患モデルをいい得る。この被験体はまた、非ヒト動物(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、または他の家畜)であり得る。治療剤としては、小分子、ペプチド、抗体、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
HKID−1アゴニスト(模倣物)として、またはHKID−1アンタゴニストとしてのいずれとして機能するHKID−1タンパク質の改変体は、HKID−1タンパク質のアゴニスト活性もしくはアンタゴニスト活性についてのHKID−1タンパク質の変異体(例えば、短縮化変異体)のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る。1つの実施態様において、HKID−1改変体の変化を与えた(variegated)ライブラリーは、核酸レベルでコンビナトリアルな変異誘発により生成され、そして変化を与えられた遺伝子ライブラリーによりコードされる。HKID−1改変体の変化を与えられたライブラリーは、潜在的なHKID−1配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、あるいはそこにあるHKID−1配列のセット(例えば、ファージディスプレイのための)を含むより大きな融合タンパク質のセットとして発現可能であるように、例えば、遺伝子配列に合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的に連結することにより生成され得る。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的なHKID−1改変体のライブラリーを生成するために使用され得る種々の方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動化DNA合成機で行われ得、次いで、合成遺伝子が適切な発現ベクターに連結され得る。遺伝子の縮重セットの使用は、1つの混合物において、潜在的なHKID−1配列の所望のセットをコードする配列の全ての供給を可能にする。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当該分野で公知である(例えば、Narang(1983)Tetrahedron 39:3;Itakuraら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakuraら(1984)Science 198:1056;Ikeら(1983)Nucleic Acids Res.11:477を参照のこと)。
【0074】
さらに、HKID−1タンパク質コード配列のフラグメントのライブラリーを使用して、スクリーニングおよび引き続いてHKID−1タンパク質の改変体の選択のための、変化を与えたHKID−1フラグメントの集団を生成し得る。1つの実施態様において、コード配列フラグメントのライブラリーは、HKID−1コード配列の二本鎖PCRフラグメントを、ニックが1分子につき約1回だけ生じる条件下でヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性させ、DNAを異なるニック化産物由来のセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成するように再生し、S1ヌクレアーゼでの処理によって再形成された二重鎖から一本鎖部分を除去し、そして得られたフラグメントライブラリーを発現ベクター中に連結することにより生成され得る。この方法によって、この発現ライブラリーが誘導され得、このライブラリーは、HKID−1タンパク質の種々のサイズのN末端フラグメントおよび内部フラグメントをコードする。
【0075】
点変異または短縮化により作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングし、そして選択された特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術は、当該分野で公知である。このような技術は、HKID−1タンパク質のコンビナトリアル変異誘発により生成された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングのために適合される。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も広範に使用される技術(これは、高スループット分析になじみやすい)としては、代表的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングし、適切な細胞を、得られるベクターのライブラリーで形質転換し、そして所望の活性の検出が、その産物が検出される遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現することが挙げられる。ライブラリーにおける機能的変異体の頻度を増強する技術である反復的な全体変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)をスクリーニングアッセイとの組み合わせで使用して、HKID−1改変体を同定し得る(ArkinおよびYourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgraveら(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
【0076】
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドの全体的に機能的なタンパク質、部分的に機能的なタンパク質、または非機能的タンパク質を含む、天然に存在する対立遺伝子改変体である単離されたポリペプチドもまた、本発明の範囲内であり、ここでこのポリペプチドは、配列番号1、配列番号3またはその相補体を含む核酸分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされる。HKID−1の対立遺伝子改変体は、遺伝子によってコードされ、この遺伝子は、D22S1169とD22S qterマーカーとの間の第22染色体であり、この第22染色体の連結部分の上から196.70centiRayにあることが実施例5で示されているHKID−1の遺伝的かつ物理的位置に物理的かつ遺伝子的マッピングされる。
【0077】
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、HKID−1の種オルソログである単離されたポリペプチドもまた、本発明の範囲内であり、このポリペプチドは、配列番号1、配列番号3またはその相補体を含む核酸分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされる。HKID−1の種オルソログは、これらが由来するゲノムの、D22S1169とD22S qterマーカーとの間のヒト第22染色体にシンテニーであり、この第22染色体の連結基の上から196.70centiRayである領域に、しばしば物理的かつ遺伝子的にマッピングされる。
【0078】
(III.抗HKID−1抗体)
本発明は、本発明のHKID−1タンパク質に結合する抗体を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫学的に活性な免疫グロブリン分子の一部(すなわち、抗原を特異的に結合する抗原結合部位を含む分子(例えば、HKID−1))をいう。HKID−1に特異的に結合する分子は、HKID−1を結合する分子であるが、天然にHKID−1を含むサンプル(例えば、生物学的サンプル)中の他の分子とは実質的に結合しない。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例としては、酵素(例えば、ペプシン)で抗体を処理することにより生成され得るF(ab)フラグメントおよびF(ab’)フラグメントが挙げられる。本発明は、HKID−1を結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を提供する。用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、本明細書中で使用される場合、HKID−1の特定のエピトープと免疫反応し得る抗原結合部位の1種のみを含む抗体分子の集団をいう。従って、モノクローナル抗体組成物は、代表的には、これが免疫反応する特定のHKID−1タンパク質に対する単一の結合親和性を提示する。
【0079】
単離されたHKID−1タンパク質、またはその部分もしくはフラグメントは、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製のための標準的な技術を使用して、HKID−1を結合する抗体を作製するために、免疫原として使用され得る。全長HKID−1タンパク質が、用いられエルカ、あるいは、本発明は、免疫源として使用するためのHKID−1の抗原性ペプチドフラグメントを提供する。HKID−1の抗原性ペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列の少なくとも8(好ましくは、10、15、20または30)のアミノ酸残基を含み、かつHKID−1のエピトープを包含し、その結果、このペプチドに対して惹起された抗体は、HKID−1との特異的免疫複合体を形成する。
【0080】
抗原性ペプチドにより含まれるエピトープは、タンパク質の表面に位置するHKID−1の領域である。ヒトHKID−1タンパク質のポリペプチド配列(配列番号2)の、図3に示される表面確率分析は、以下の可能な抗原性領域;アミノ酸28〜39、アミノ酸124〜129およびアミノ酸277〜283が、このタンパク質の表面に存在する可能性が特に高く、従って、抗体作製の標的化のために有用な表面残基をコードする可能性があることを同定する。
【0081】
AN HKID−1免疫原は、代表的に、適切な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の動物)をこの免疫原で免疫することによって、抗体を調製するために使用される。適切な免疫原の調製は、例えば、組換え発現されたHKID−1タンパク質または化学的に合成されたHKID−1ポリペプチドを含み得る。この調製物は、さらに、アジュバンド(例えば、フロイト完全アジュバンドもしくはフロイント不完全アジュバント、または類似の免疫刺激剤)を含み得る。適切な被験体の免疫原性HKID−1調製物での免疫は、ポリクローナル抗HKID−1抗体応答を誘発する。
【0082】
ポリクローナル抗HKID−1抗体は、適切な被験体をHKID−1免疫原で免役することによって、上記の様にして調製され得る。この免疫された被験体における抗HKID−1抗体の力価は、標準的な技術によって(例えば、固定化HKID−1を使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて)、経時的にモニタリングされ得る。所望の場合、HKID−1に対して指向される抗体分子を、哺乳動物から(例えば、血液から)単離し得、そしてさらに、周知の技術(例えば、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィー)により精製し得る。免疫後、適切な時間に、例えば、抗HKID−1抗体の力価が最も高いときに、抗体生成細胞を被験体から獲得し得、そしてこれを使用して、標準的技術(例えば、初めは、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497により記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunol.Today 4:72)、EBVハイブリドーマ技術(Coleら(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁)またはトリオーマ(trioma)技術)によりモノクローナル抗体を調製し得る。ハイブリドーマを生成する技術は、周知である(一般には、Current Protocols in Immunology(1994)Coliganら(編)、John Wiley&Sons,Inc.,New York,NYを参照のこと)。簡潔には、不死化細胞株(代表的には骨髄腫細胞)を、上記のようにHKID−1免疫原で哺乳動物由来の免疫したリンパ球(代表的には、脾臓細胞)と融合し、そして得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングして、HKID−1を結合するモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを同定する。
【0083】
リンパ球と不死化細胞株とを融合するために使用される任意の多くの周知のプロトコルは、抗HKID−1モノクローナル抗体を生成する目的で適用され得る(例えば、Current Protocols in Immunology、前出;Galfreら(1977)Nature 266:550−52;R.H.Kenneth、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses,Plenum Publishing Corp.,New York,New York(1980);およびLerner(1981)Yale J.Biol.Med.,54:387−402を参照のこと)。さらに、当業者は、このような方法の多くのバリエーションが存在し、これらがまた有用であることを理解する。代表的には、不死化細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)はリンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。例えば、マウスハイブリドーマは、本発明の免疫原性調製物を免疫したマウス由来のリンパ球と不死化マウス細胞株(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養培地(「HAT培地」)に感受性である骨髄腫細胞株)とを融合することにより作製され得る。多くの骨髄腫細胞株のうち任意のものが、標準的技術に従う融合パートナーとして使用され得る(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14骨髄腫株)。これらの骨髄腫株は、ATCCから入手可能である。代表的には、HAT感受性マウス骨髄腫細胞を、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウス脾臓細胞に融合する。次いで、融合から得られたハイブリドーマ細胞を、HAT培地を用いて選択する(このことにより、融合していない細胞および生成性でない融合骨髄腫細胞は死ぬ(融合していない脾臓細胞は、形質転換していないので数日後に死ぬ))。本発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞は、HKID−1を結合する抗体について、ハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより(例えば、標準的ELISAアッセイを使用して)検出される。
【0084】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製するかわりに、モノクローナル抗HKID−1抗体を同定し得、そして組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)を、HKID−1を用いてスクリーニングすることにより単離し得、それによってHKID−1を結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離し得る。ファージディスプレイライブラリーを生成し、そしてスクリーニングするためのキットは、市販されている(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System,カタログ番号27−9400−01;およびthe Stratagene SurfZAPTM Phage Display Kit,カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーを生成し、そしてスクリーニングする際の使用に特になじみやすい方法および試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号;PCT公開番号WO92/18619;PCT公開番号WO91/17271;PCT公開番号WO92/20791;PCT公開番号WO92/15679;PCT公開番号WO93/01288;PCT公開番号WO92/01047;PCT公開番号WO92/09690;PCT公開番号WO90/02809;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hayら(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huseら(1989)Science 246:1275−1281;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734に見出され得る。
【0085】
さらに、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含む組換え抗HKID−1抗体(例えば、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体)は、本発明の技術範囲内であり、これは、標準的な組換えDNA技術を用いて作製され得る。このようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該分野で公知の組換えDNA技術により(例えば、PCT公開番号WO87/02671;欧州特許出願184,187号;欧州特許出願171,496号;欧州特許出願173,494号;PCT公開番号WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Canc.Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;およびShawら(1988)J.Natl.Cancer.Inst.80:1553−1559;Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)Bio/Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;およびBeidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記載される方法を使用して)生成され得る。
【0086】
完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置のために特に望ましい。このような抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現できないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現し得るトランスジェニックマウスを用いて生成され得る。このトランスジェニックマウスは、選択された抗原(例えば、HKID−1の全てまたは一部分)を用いて通常の様式で免疫される。この抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて得られ得る。トランスジェニックマウスにより保有されるこのヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配置され、そして続いてクラススイッチおよび体細胞変異を受ける。従って、このような技術を用いて、治療的に有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を生成することは可能である。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概観については、LonbergおよびHuszar(1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成することに関するこの技術ならびにそのような抗体を生成するためのプロトコールについての詳細な議論については、例えば、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;および米国特許第5,545,806号を参照のこと。さらに、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)のような会社は、上記に記載の技術に類似の技術を使用する選択された抗体に対して指向されるヒト抗体を提供することを保証し得る。
【0087】
選択されたエピトープを認識する完全なヒト抗体は、「導かれた選択」として言及される技術を用いて生成され得る。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)を使用して、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択を導く。
【0088】
第1に、選択された抗原(エピトープ)を結合する非ヒトモノクローナル抗体(例えば、HKID−1活性を阻害する抗体)が同定される。非ヒト抗体の重鎖および軽鎖はクローニングされ、そしてこれを使用してファージディスプレイFabフラグメントを作製する。例えば、重鎖遺伝子は、重鎖が細菌から分泌され得るように、プラスミドベクターへクローニングされ得る。軽鎖遺伝子は、軽鎖がファージの表面上に発現され得るように、ファージコートタンパク質遺伝子にクローニングされ得る。ファージに融合したヒト軽鎖レパートリー(無作為収集物)を使用して、非ヒト重鎖を発現する細菌に感染させる。得られる子孫ファージは、ハイブリッド抗体(ヒト軽鎖/非ヒト重鎖)を提示する。選択された抗原をパニングスクリーニングにおいて使用して、選択された抗原に結合するファージを選択する。このようなファージを同定するために、数回の選択が必要であり得る。次いで、ヒト軽鎖遺伝子は、選択された抗原を結合する選択されたファージから単離される。次いで、これらの選択されたヒト軽鎖遺伝子を使用して、以下のとおり、ヒト重鎖遺伝子の選択を導く。選択されたヒト軽鎖遺伝子は、細菌による発現のためにベクターに挿入される。選択されたヒト軽鎖を発現する細菌を、ファージに融合されたヒト重鎖のレパートリーで感染させる。得られる子孫ファージは、ヒト抗体(ヒト軽鎖/ヒト重鎖)を提示する。
【0089】
次いで、選択された抗原をパニングスクリーニングにおいて使用して、選択された抗原を結合するファージを選択する。この工程で選択されたファージは、最初に選択された非ヒトモノクローナル抗体により認識される同じエピトープを認識する完全なヒト抗体を提示する。重鎖および軽鎖の両方をコードする遺伝子は、容易に単離され、そしてヒト抗体を生成するためにさらに操作され得る。この技術は、Jespersら(1994,Bio/Technology 12:899−903)に記載される。
【0090】
抗HKID−1抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して、標準的技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィーもしくは免疫沈降)によりHKID−1を単離し得る。抗HKID−1抗体は、細胞からの天然のHKID−1および宿主細胞中で発現される、組換え生成されたHKID−1の生成を容易にし得る。さらに、抗HKID−1抗体を使用して、HKID−1タンパク質の発現量および発現パターンを評価するために、HKID−1タンパク質(例えば、細胞溶解物または細胞上清において)を検出し得る。抗HKID−1抗体を、例えば、診断的に使用して、(例えば、所定の処置レジメンの有効性を決定するために)臨床試験手順の一部として、組織中のタンパク質レベルをモニターし得る。検出可能な物質に抗体を結合することにより、検出は容易になり得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射活性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子団の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニラミン(dichlorotriazinylamine)、フルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、そして適切な放射活性物質の例としては、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0091】
(IV.組換え発現ベクターおよび宿主細胞)
本発明は、さらに、本発明のHKID−1タンパク質をコードする核酸またはその一部を含むベクター、好ましくは、発現ベクターを提供する。
【0092】
本明細書中で用いられる場合、用語「ベクター」とは、それに連結された別の核酸を輸送し得る核酸分子をいう。1つの型のベクターは、「プラスミド」であり、これはさらなるDNAセグメントを連結し得る環状二本鎖DNAループをいう。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントが、ウイルスゲノムに連結され得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自発的に複製し得る(例えば、細菌の複製起点を有するウイルスベクターまたはエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に、宿主細胞のゲノムへと組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターである発現ベクターは、それらに作動可能に連結される遺伝子の発現を指向し得る。一般に、発現ベクターの組換えDNA技術における有用性は、しばしばプラスミド(ベクター)の形態である。しかし、本発明は、このような他の形態の発現ベクター(例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)、これらは等価な機能に貢献する)を含むように意図される。
【0093】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸を、宿主細胞における核酸の発現に適する形態で含む。これは、この組換え発現ベクターが、発現されるべき核酸配列に作動可能に連結されている、発現のために用いられるべき宿主細胞を基礎に選択された1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクター内で、「作動可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列が、調節配列(単数または複数)に、ヌクレオチド配列の発現を可能にするような様式(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞中に導入されるとき宿主細胞において)で連結されていることを意味することが意図される。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよびその他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。調節配列は、多くの型の宿主細胞でヌクレオチド配列の構成的発現を指向する配列、および特定の宿主細胞でのみヌクレオチド配列の発現を指向する配列(例えば、組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどのような因子に依存し得ることは当業者に認識される。本発明の発現ベクターは、宿主細胞中に導入され得、それによって本明細書に記載されるような核酸によってコードされる、融合タンパク質またはペプチド(例えば、HKID−1タンパク質、HKID−1タンパク質の変異形態、融合タンパク質など)を含む、タンパク質またはペプチドを生成する。
【0094】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物細胞または真核生物細胞におけるHKID−1タンパク質の発現のために設計され得る。例えば、HKID−1タンパク質は、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いる)、酵母細胞、または哺乳動物細胞中で発現され得る。適切な宿主細胞は、Goeddel(前出)でさらに論議されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いてインビトロで転写および翻訳され得る。
【0095】
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質のいずれかの発現を指向する構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターを用い、E.coli中で最も頻繁に実施される。融合ベクターは、多くのアミノ酸を、その中にコードされるタンパク質に(通常、組換えタンパク質のアミノ末端に)付加する。代表的には、このような融合タンパク質は、3つの目的の役に立つ:1)組換えタンパク質の発現を増加すること;2)組換えタンパク質の溶解度を増加すること;および3)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製を支援すること。しばしば、融合発現ベクターにおいては、タンパク質切断部位が、融合部分と組換えタンパク質との融合の接続部に導入され、この融合タンパク質の精製の次に融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。このような酵素、およびそれらの同族起源の認識配列は、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを含む。代表的な融合発現ベクターは、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAをそれぞれ標的組換えタンパク質に融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;SmithおよびJohnson(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、MA)およびpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ)を含む。
【0096】
適切な誘導性非融合E.coli発現ベクターの例としては、pTrc(Amannら(1988)Gene 69:301−315)およびpET 11d(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、California(1990)60−89)が挙げられる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存する。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、同時発現されたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されるT7 gn10−lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写制御下にT7 gn1遺伝子を有する、常在性λプロファージ由来の宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)によって補充される。
【0097】
E.coliにおいて組換えタンパク質発現を最大化するための1つのストラテジーは、組換えタンパク質をタンパク質分解性切断する減弱した能力を有する宿主細菌中でタンパク質を発現することである(Gottesman Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,California(1990)119−128)。別のストラテジーは、各アミノ酸に対する個々のコドンがE.coli中で優先的に利用されるものであるように、発現ベクター中に挿入されるべき核酸の核酸配列を変更することである(Wadaら(1992)Nucleic Acids Res.20:2111−2118)。本発明の核酸配列のこのような変更は、標準的DNA合成技術によって行われ得る。
【0098】
別の実施形態において、HKID−1発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.cerivisaeにおける発現のためのベクターの例としては、pYepSec1(Baldariら(1987)EMBO J.6:229−234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、CA)およびpPicZ(InVitrogen Corp.San Diego、CA)が挙げられる。
【0099】
あるいは、HKID−1は、バキュロウイルス発現ベクターを使用して、昆虫細胞中で発現され得る。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現に適切なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smithら(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers(1989)Virology 170:31−39)が挙げられる。
【0100】
なお別の実施形態では、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞中で発現される。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら(1987)EMBO J.6:187−195)が挙げられる。哺乳動物細胞中で用いられる場合、発現ベクターの制御機能は、しばしば、ウイルス調節エレメントにより提供される。例えば、一般に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。原核生物細胞および真核生物細胞の両方に適切な他の発現系については、Sambrook、J.ら、前出の第16章および第17章を参照のこと。
【0101】
別の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指向し得る(例えば、組織特異的調節エレメントが核酸の発現に使用される)。組織特異的調節エレメントは、当該分野で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら(1987)Genes Dev.1:268−277)、リンパ特異的プロモーター(CalameおよびEaton(1988)Adv.Immunol.43:235−275)、T細胞レセプターの特定のプロモーター(WinotoおよびBaltimore(1989)EMBO J.8:729−733)、および免疫グロブリン(Banerjiら(1983)Cell 33:729−740;QueenおよびBaltimore(1983)Cell 33:741−748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;ByrneおよびRuddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら(1985)Science 230:912−916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清ホエープロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開番号264,166号)が挙げられる。発生的に調節されるプロモーター(例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss(1990)Science 249:374−379)およびα−フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman(1989)Genes Dev.3:537−546))もまた、含まれる。
【0102】
本発明はさらに、アンチセンス方向で発現ベクターにクローニングされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターを提供する。すなわち、このDNA分子は、(DNA分子の転写によって)HKID−1 mRNAに対してアンチセンスのRNA分子の発現を可能にする様式で、調節配列に作動可能に連結される。アンチセンス方向でクローニングされた核酸に作動可能に連結された調節配列が、選択され得、この調節配列は、種々の細胞型においてアンチセンスRNA分子の連続した発現を指向し、例えば、アンチセンスRNAの構成的な、組織特異的なまたは細胞型特異的な発現を指向する、ウイルスプロモーターおよび/もしくはウイルスエンハンサー、または調節配列が選択され得る。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率調節領域の制御下で産生される、組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒化ウイルスの形態であり得、その活性は、これらのベクターが導入される細胞型により決定され得る。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節の考察については、Weintraubら、(Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1)1986)を参照のこと。
【0103】
本発明の別の局面は、本発明の組換え発現ベクターが導入される宿主細胞の使用に関する。用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書中で、交換可能に使用される。このような用語は、特定の被験細胞をいうのみでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫をいう。変異または環境的影響のいずれかに起因して、特定の改変は次の世代において存在し得るので、このような子孫は、実際、親の細胞と同一でなくてもよく、本明細書中で使用されるようなこの用語の範囲内になお含まれる。
【0104】
宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、HKID−1タンパク質は、細菌細胞(例えば、E.coli)、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞)で発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0105】
ベクターDNAは、従来的な形質転換技術またはトランスフェクション技術を介して原核生物細胞または真核生物細胞に導入され得る。本明細書中で使用される場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」とは、外来性の核酸(例えば、DNA)を宿主細胞中に導入するための当該分野で認識される種々の技術をいうことを意図し、これらには、リン酸カルシウム共沈殿もしくは塩化カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションが挙げられる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrookら(前出)、および他の実験説明書において見出され得る。
【0106】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのために、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、小さい割合の細胞のみが、そのゲノム中に外来のDNAを組み込み得ることが公知である。これらの組み込みを同定および選択するために、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、一般に、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。選択マーカーとしては、薬物(例えば、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセート)に対する耐性を付与するものが挙げられる。選択マーカーをコードする核酸は、HKID−1をコードするベクターと同じベクター上で宿主細胞に導入され得るか、または別個のベクター上で導入され得る。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定され得る(例えば、選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は、生存するが、他の細胞は死滅する)。
【0107】
本発明の宿主細胞(例えば、培養物中の原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞)は、HKID−1タンパク質を生成する(すなわち、発現する)ために使用され得る。従って、本発明は、本発明の宿主細胞を用いてHKID−1タンパク質を産生する方法をさらに提供する。1つの実施形態では、この方法は、本発明の宿主細胞(これにHKID−1をコードする組換え発現ベクターが導入されている)を、適切な培地中で、HKID−1タンパク質が産生されるように培養する工程を包含する。別の実施形態では、この方法は、上記培地または宿主細胞からHKID−1を単離する工程をさらに包含する。
【0108】
本発明の宿主細胞をまた使用して、非ヒトトランスジェニック動物を作製し得る。例えば、1つの実施形態において、本発明の宿主細胞は、受精卵または胚性幹細胞であり、この細胞に、HKID−1コード配列が導入される。次いで、このような宿主細胞を使用して、非ヒトトランスジェニック動物を作製し得、ここにおいて、外因性のHKID−1配列が、それらのゲノムまたは相同な組換え動物に導入され、ここで、内因性のHKID−1配列が、変更される。このような動物は、HKID−1の機能および/または活性を研究するため、ならびにHKID−1活性のモジュレーターを同定および/または評価するために、有用である。本明細書中で使用される場合、「トランスジェニック動物」は、非ヒト動物であり、好ましくは、哺乳動物であり、より好ましくは、ラットまたはマウスのようなげっ歯類であり、ここで、これらの動物の1つ以上の細胞が、導入遺伝子を含む。トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などが挙げられる。導入遺伝子は、外因性DNAであり、この外因性DNAは、トランスジェニック動物が成長する細胞のゲノムに取り込まれ、かつ成熟動物のゲノムにおいて維持され、それによってこのトランスジェニック動物の1つ以上の細胞型または組織における、コードされた遺伝子産物の発現を指向する。本明細書中で使用される場合、「相同な組換え動物」は、非ヒト動物であり、好ましくは、哺乳動物であり、より好ましくは、マウスであり、ここで、内因性のHKID−1遺伝子は、この内因性遺伝子と、動物の成長前にこの動物の細胞(例えば、動物の胚細胞)に導入される外因性DNA分子との間の相同組換えによって変更される。
【0109】
本発明のトランスジェニック動物は、HKID−1のコード核酸を、受精卵の雄前核に、例えば、マイクロインジェクション、レトロウイルス感染によって導入し、そして卵母細胞を偽妊娠雌養母動物において成長させることによって作製され得る。HKID−1のcDNA配列(例えば、配列番号1または配列番号3の配列)は、導入遺伝子として、非ヒト動物のゲノムに導入され得る。あるいは、ヒトのHKID−1遺伝子の非ヒトホモログ(例えば、マウスHKID−1遺伝子)は、ヒトHKID−1のcDNAへのハイブリダイゼーションに基づいて単離され得、そして導入遺伝子として使用され得る。イントロン配列およびポリアデニル化シグナルもまた、導入遺伝子の発現の効力を増加させるように、この導入遺伝子に含まれ得る。組織特異的調節配列は、HKID−1導入遺伝子に作動可能に連結されて、HKID−1タンパク質の発現を特定の細胞に指向し得る。胚操作およびマイクロインジェクションを介して、トランスジェニック動物(特に、マウスのような動物)を作製するための方法は、当該分野において慣習的であり、例えば、以下に記載されている:米国特許第4,736,866号および同第4,870,009号、米国特許第4,873,191号、ならびにHogan,Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)。類似の方法が、他のトランスジェニック動物の作製のために使用され得る。トランスジェニックファウンダー(founder)動物は、そのゲノムにおけるHKID−1導入遺伝子の存在、および/あるいは動物の組織または細胞におけるHKID−1 mRNAの発現に基づいて、同定され得る。次いで、トランスジェニックファウンダー動物を使用して、導入遺伝子を保有するさらなる動物を産出し得る。さらに、HKID−1をコードする導入遺伝子を有するトランスジェニック動物はさらに、他の導入遺伝子を有する他のトランスジェニック動物を産出し得る。
【0110】
相同な組換え動物を作製するために、HKID−1遺伝子(例えば、HKID−1遺伝子(例えば、マウスHKID−1遺伝子)のヒトホモログまたは非ヒトホモログ)の少なくとも一部を含むベクターが調製され、このベクターに、欠失、付加または置換が導入されて、それによって、HKID−1遺伝子が変更される(例えば、機能的に破壊される)。1つの実施形態において、ベクターは、相同組換えの際に、内因性のHKID−1遺伝子が機能的に破壊される(すなわち、もはや機能的タンパク質をコードしない;「ノックアウト」ベクターとも呼ばれる)ように、設計される。あるいは、ベクターは、相同組換えの際に、内因性のHKID−1遺伝子が変異されるか、さもなければ変更されるが依然として機能的タンパク質をコードする(例えば、上流の調節領域が変更され、それによって内因性のHKID−1タンパク質の発現を変更し得る)ように、設計され得る。相同な組換えベクターにおいて、HKID−1遺伝子の変更された部分は、HKID−1遺伝子のさらなる核酸配列によって、その5’末端および3’末端に隣接し、ベクターによって保有される外因性のHKID−1遺伝子と、胚性幹細胞における内因性HKID−1遺伝子との間に、相同組換えが生じることを可能にする。さらなる隣接のHKID−1核酸は、内因性遺伝子との首尾よい相同組換えに十分な長さの核酸である。代表的には、隣接したDNA(5’末端と3’末端との両方)の数キロベースが、このベクターに含まれる(例えば、相同組換えベクターの記載については、ThomasおよびCapecchi(1987)Cell 51:503を参照のこと)。ベクターは、胚性幹細胞株に、(例えば、エレクトロポーションによって)導入され、そして導入されたHKID−1遺伝子が内因性のHKID−1遺伝子と相同に組み換わる細胞が、選択される(例えば、Liら(1992)Cell 69:915を参照のこと)。次いで、この選択された細胞は、動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注射され、凝集キメラを形成し得る。(例えば、Bradley,Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,Robertson編(IRL,Oxford,1987)113−152頁)を参照のこと)。次いで、キメラ胚は、適切な偽妊娠雌養母動物に移植され得、そしてこの胚は、生殖(term)され得る。生殖細胞において相同組換えされたDNAを含む子孫を使用して、動物を繁殖させ得、ここにおいて、この動物の全ての細胞は、導入遺伝子の生殖系列伝達によって相同組換えされたDNAを含む。相同な組換えベクターおよび相同な組換え動物を構築するための方法は、以下にさらに記載される:Bradley(1991)Current Opinion in Bio/Technology 2:823−829、PCT国際公開番号WO 90/11354;WO 91/01140;WO 92/0968およびWO 93/04169。
【0111】
別の実施形態において、トランスジェニック非ヒト動物が作製され得、これは、導入遺伝子の調節された発現を可能にする、選択された系を含む。このような系の1つの例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系である。cre/loxPリコンビナーゼ系の記載については、例えば、Laksoら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6232−6236を参照のこと。リコンビナーゼ系の別の例は、Saccharomyces cerevisiaeのFLPリコンビナーゼ系である(O’Gormanら(1991)Science 251:1351−1355)。cre/loxPリコンビナーゼ系を使用して導入遺伝子の発現を調節する場合、Creリコンビナーゼおよび選択されたタンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含む動物が、必要とされる。このような動物は、「二重」トランスジェニック動物の構築によって(例えば、2種のトランスジェニック動物(一方は、選択されたタンパク質をコードするトランスジーンを含み、他方は、リコンビナーゼをコードするトランスジーンを含む)を交配させることによって)提供され得る。
【0112】
本明細書中に記載される非ヒトトランスジェニック動物のクローンはまた、Wilmutら、(1997)Nature 385:810−813およびPCT公報番号WO 97/07668およびWO 97/07669に記載される方法に従って産生され得る。まとめると、トランスジェニック動物に由来する細胞(例えば、体細胞)は、単離され得、そして増殖サイクルを出てG期に入るように誘導され得る。次いで、静止細胞は、例えば、電気パルスの使用によって、静止細胞が単離されたのと同じ種の動物に由来する、徐核した卵母細胞に融合され得る。次いで、再構築された卵母細胞は、桑実胚または胚盤胞に発達するように培養され、次いで、偽妊娠の雌性里親(foster)動物に移植される。この雌性里親動物の子孫は、細胞(例えば、体細胞)が単離された動物のクローンである。
【0113】
(V.薬学的組成物)
本発明のHKID−1核酸分子、HKID−1タンパク質、および抗HKID−1抗体(本明細書中で「活性化合物」ともいわれる)は、投与に適切な薬学的組成物中に取り込まれ得る。このような組成物は、代表的には、核酸分子、タンパク質、または抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む。本明細書中で使用される場合、言語「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与に適合性の任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むことが意図される。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤がこの活性化合物と非適合性である範囲を除いて、この組成物におけるそれらの使用が意図される。補助的な活性化合物はまた、この組成物中に取り込まれ得る。
【0114】
本発明の薬学的組成物は、投与のその意図された経路と適合性であるように処方される。投与の経路の例には、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与)、経口投与(例えば、吸入投与)、経皮投与(局所投与)、経粘膜投与、および直腸投与が挙げられる。非経口適用、皮内適用または皮下適用に使用される溶液または懸濁液には、以下の成分が挙げられ得る:滅菌希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、アセテート、シトレート、またはホスフェート)、および張度を調整するための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)で調節され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックから作製されるアンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量のバイアル中に含まれ得る。
【0115】
注射用の使用に適切な薬学的組成物は、滅菌注射溶液または分散液の即時調製物のための滅菌水溶液(ここでは水溶性)または分散液、および滅菌粉末を含む。静脈内注射については、適切なキャリアには、生理学的な生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF;Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合では、この組成物は、滅菌されなければならず、そして容易なシリンジ能力(syringability)が存在する程度にまで流動的にされるべきである。これは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して保存されなければならない。このキャリアは、溶媒または分散培地(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなどを含む)、ならびにそれらの安定な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用によって、分散の場合に必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトール、塩化ナトリウム)をこの組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の延長した吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)をこの組成物中に含むことによって、もたらされ得る。
【0116】
滅菌注射用溶液は、活性化合物(例えば、HKID−1タンパク質または抗HKID−1抗体)を、上記で列挙した成分の1以上の組合せで、必要とされる量において適切な溶媒中に取り込ませ、必要とされる場合、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散剤は、活性化合物を、基本的な分散媒体および上記に列挙された成分のうちの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に取り込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の方法は、減圧乾燥および凍結乾燥であり、これらは、活性成分の粉末およびその以前に滅菌濾過された溶液からの任意のさらなる所望の成分を生じる。
【0117】
経口組成物は、一般に、不活性な希釈剤または食用キャリアを含む。それらは、ゼラチンカプセル中に含まれるか、または錠剤へと圧縮される。経口治療投与のために、この活性化合物は、賦形剤とともに取り込まれ、そして錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用される。経口組成物はまた、口内洗浄としての使用のための流体キャリアを使用して調製され得、ここでこの流体キャリア中の化合物は、経口で適用され、そして口内洗浄され(swish)、吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント物質は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分、または同様の性質の化合物のいずれかを含み得る:結合剤(例えば、微結晶セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプン);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes);滑動剤(glidant)(例えば、コロイド二酸化珪素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);あるいは香料剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料)。吸入による投与については、これらの化合物は、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素のようなガスまたはネブライザ)を含む加圧した容器またはディスペンサーからエアロゾルスプレの形態で送達される。
【0118】
全身投与はまた、経粘膜手段または経皮手段によってであり得る。経粘膜投与または経皮投与については、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤(penetrant)が、この処方物中にて使用され得る。このような浸透剤は、一般に、当該分野において公知であり、そして例えば、経粘膜投与、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤の使用を通じて達成され得る。経皮投与については、これらの活性化合物は、当該分野において一般に公知である、軟膏剤(ointment)、軟膏(salve)、ゲル剤、またはクリーム剤に処方される。
【0119】
これらの化合物はまた、直腸送達のために、坐剤の形態(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような従来の坐剤基剤とともに)または貯留注腸の形態で調製され得る。
【0120】
1つの実施形態において、これらの活性化合物は、身体からの化合物の迅速な除去に対してこの化合物を保護するキャリアとともに調製される(例えば、制御放出処方物(移植片およびマイクロカプセル化送達系を含む))。生分解性の生体適合性ポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調製の方法は、当業者に明らかである。この物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から市販され得る。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、当業者に公知の方法(例えば、米国特許第4,522,811号に記載される)に従って調製され得る。
【0121】
投与の容易さおよび投薬の均一性のために、投薬単位形態で経口組成物または非経口組成物を処方することは、特に有利である。本明細書中で使用される場合、投薬単位形態は、処置される被検体に対して単回投薬として適切な物理的に分離した単位をいう;各々の単位は、必要とされる薬学的キャリアと一緒に所望の治療効果を生じるように算定された所定量の活性化合物を含む。疾患の型および重篤度に依存して、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)の抗体が、例えば、1つ以上の別個の投与であろうと、連続した注入であろうと、患者への投与のための開始候補投薬量である。代表的な一日投薬量は、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であり得、これは上記の要因に依存する。数日またはより長い期間にわたる繰り返し投与のために、状態に依存して、処置は、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続される。しかし、他の投薬レジメンが有用であり得る。この治療の進行は、慣用的な技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。例示的な投薬レジメンは、WO 94/04188に開示される。本発明の投薬単位形態についての詳細は、活性化合物の独特な特徴および達成される特定の治療効果、ならびに個体の処置のためのこのような活性化合物を混合する当該分野に固有の制限によって示され、そして直接的に依存する。
【0122】
本発明の核酸分子は、ベクター中に挿入され得、そして遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)によってか、または定位注射(例えば、Chenら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054〜3057)によって被検体に送達され得る。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、受容可能な希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含み得るか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている緩徐な放出マトリクスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが、組換え細胞(レトロウイルスベクター)からインタクトで産生され得る場合、この薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1以上の細胞を含み得る。
【0123】
薬学的組成物は、容器、パック、またはディスペンサー内に、投与のための使用説明書と一緒に含まれ得る。
【0124】
(VI.本発明の使用および方法)
本明細書中に記載される核酸分子、タンパク質、タンパク質ホモログ、および抗体は、1以上の以下の方法に使用され得る:a)スクリーニングアッセイ;b)検出アッセイ(例えば、染色体マッピング、組織タイピング、法医学標本);c)予測的な医薬品(例えば、診断アッセイ、予後アッセイ、臨床試験のモニタリング、および薬理遺伝学);ならびにd)処置方法(例えば、治療および予防)。HKID−1タンパク質は、他の細胞タンパク質と相互作用し、従って、HKID−1タンパク質を発現する細胞またはHKID−1経路に関与する細胞(例えば、神経系の細胞)において、HKID−1タンパク質を調節するための治療的分子を開発するための標的として使用され得る。本発明の単離された核酸分子は、HKID−1タンパク質を(例えば、遺伝子治療適用における宿主細胞中での組換え発現ベクターを通じて)発現するため、(例えば、生物学的サンプル中の)HKID−1 mRNAまたはHKID−1遺伝子における遺伝的損傷を検出するために、ならびにHKID−1活性を調節するために使用され得る。さらに、HKID−1タンパク質は、HKID−1活性または発現を調節するために薬物または化合物をスクリーニングするため、ならびにHKID−1タンパク質の不十分または過剰な産生、あるいはHKID−1野生型タンパク質と比較して減少したかまたは異常な活性を有するHKID−1タンパク質形態の産生によって特徴付けられる障害を処置する使用され得る。さらに、本発明の抗HKID−1抗体は、HKID−1タンパク質を検出かつ単離するために、かつHKID−1活性を調節するために使用され得る。
【0125】
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイにより同定される新規な薬剤および本明細書中に記載されるような処置のためのその使用に提供する。
【0126】
(A.スクリーニングアッセイ)
本発明は、HKID−1タンパク質に結合するか、または例えば、HKID−1発現もしくはHKID−1活性に対する刺激効果もしくは阻害効果を有するモジュレーター、すなわち候補または試験化合物または因子(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、低分子または他の薬物)を同定するための方法(本明細書中で「スクリーニングアッセイ」ともいわれる)を提供する。
【0127】
1つの実施形態において、本発明は、HKID−1タンパク質またはそのポリペプチドもしくは生物学的に活性な部分に結合するか、あるいはその活性を調節する候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー方法(生物学的ライブラリー;空間的に接近可能な対応する固相または溶液相ライブラリー;デコンボルーション(deconvolution)を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー方法を含む)における任意の多くのアプローチを使用して得られ得る。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定され、一方、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0128】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、例えば、以下において、当該分野で見出され得る:DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994)、J.Med.Chem.37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem.37:1233。
【0129】
化合物のライブラリーは、溶液中に存在し得るか(例えば、Houghten(1992)Bio/Techniques 13:412〜421)、ビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82〜84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555〜556)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、芽胞上(特許第5,571,698号;同第5,403,484号;および同第5,223,409号)、プラスミド上(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865〜1869)またはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386〜390;Devlin(1990)Science 249:404〜406;Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6387〜6382;ならびにFelici(1991)J.Mol.Biol.222:301〜310)であり得る。
【0130】
1つの実施形態では、本発明のアッセイは、無細胞ベースのアッセイであり、ここでHKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分と、試験化合物とを接触させる工程、およびHKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分と結合する試験化合物の能力を決定する工程を包含する。HKID−1タンパク質への試験化合物の結合は、本明細書中に記載されるように、直接的にかまたは間接的にかのいずれかによって決定され得る。1つの実施形態では、このアッセイは、HKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分と、HKID−1を結合する既知の化合物とを接触させてアッセイ混合物を形成する工程、このアッセイ混合物を試験化合物と接触させる工程、およびこの試験化合物がHKID−1タンパク質と相互作用する能力を決定する工程を包含し、ここでこの試験化合物がHKID−1タンパク質と相互作用する能力を決定する工程が、既知の化合物と比較した場合、試験化合物がHKID−1またはその生物学的に活性な部分と優先的に結合する能力を決定する。
【0131】
別の実施形態において、アッセイは、以下を含む無細胞アッセイである:HKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分を試験化合物と接触する工程、およびHKID−1またはその生物学的に活性な部分の活性を調節する(例えば、刺激するまたは阻害する)試験化合物の能力を決定する工程。HKID−1の活性を調節する試験化合物の能力を決定する工程は、例えば、直接的な結合を決定するために上述の方法の1つによって、HKID−1標的分子に結合するHKID−1タンパク質の能力を決定することによって達成され得る。代替の実施形態において、HKID−1の活性を調節する試験化合物の能力を決定する工程は、HKID−1標的分子をさらに調節するHKID−1タンパク質の能力を決定する工程によって達成され得る。例えば、適切な基質に対する標的分子の触媒的/酵素的活性は、先に記載されたように決定され得る。
【0132】
なお別の実施形態において、無細胞アッセイは、HKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分を、HKID−1に結合する公知の化合物と接触させて、アッセイ混合物を形成する工程、このアッセイ混合物を試験化合物と接触させる工程、および試験化合物がHKID−1タンパク質と相互作用する能力を決定する工程を包含し、ここで、試験化合物がHKID−1タンパク質と相互作用する能力を決定する工程が、HKID−1タンパク質が、HKID−1標的分子に優先的に結合するか、またはHKID−1標的分子の活性を調製する能力を決定する工程を包含する。
【0133】
リン酸化基質のホスホアミノ酸分析はまた、HKID−1基質上のどの残基がリン酸化されるかを決定するために、実施され得る。簡単に述べると、放射リン酸化タンパク質バンドは、SDSゲルから切り出され得、そして部分的な酸加水分解に供され得る。次いで、この生成物は、1次元電気泳動によって分離され得、そして例えば、ホスホイメージャー(phosphoimager)において分析され得、そしてニンヒドリン染色ホスホアミノ酸標準と比較される。
【0134】
本発明のなお別の実施形態において、無細胞アッセイは、例えば、インビトロキナーゼアッセイによって、HKID−1タンパク質が、HKID−1標的分子をリン酸化する能力を決定する。簡単に述べると、HKID−1標的分子(例えば、このような分子を発現する細胞株由来の免疫沈降したHKID−1標的分子)を、MgClおよびMnCl(例えば、10mM MgClおよび5mM MnCl)を含む緩衝液中で、HKID−1タンパク質および放射活性ATP(例えば、[γ−32P]ATP)とともにインキュベートし得る。インキュベーションに続いて、免疫沈降したHKID−1標的分子は、還元条件下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離され得、膜(例えば、PVDF膜)に移され、そしてオートラジオグラフされ得る。オートラジオグラフ上の検出可能なバンドの出現は、HKID−1基質がリン酸化されたことを示す。
【0135】
1つの実施形態では、アッセイは、細胞ベースのアッセイであり、ここでHKID−1タンパク質の可溶性形態、またはその生物学的に活性な部分を発現する細胞は、試験化合物と接触され、そしてHKID−1タンパク質に結合する試験化合物の能力が決定される。例えば、細胞は、酵母細胞または哺乳動物起源の細胞であり得る。試験化合物がHKID−1タンパク質に結合する能力の決定は、例えば、試験化合物を放射性同位体または酵素標識とカップリングさせ、その結果、HKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分に対する試験化合物の結合が、複合体における標識化合物を検出することによって決定され得ることによって達成され得る。例えば、試験化合物は、125I、35S、14C、またはHで、直接的または間接的のいずれかで標識され得、そしてこの放射性同位体が、放射線放射の直接的な計数によってか、またはシンチレーション計数によって検出され得る。あるいは、試験化合物は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素的に標識され得、そしてこの酵素標識は、適切な基質の産物への転換を決定することによって検出され得る。1つの実施形態では、このアッセイは、HKID−1タンパク質の可溶性形態、またはその生物学的に活性な部分を細胞表面上に発現する細胞と、HKID−1を結合する既知の化合物とを接触させて、アッセイ混合物を形成する工程、このアッセイ混合物を試験化合物と接触させる工程、およびこの試験化合物がHKID−1タンパク質と相互作用する能力を決定する工程であって、ここでこの試験化合物がHKID−1タンパク質と相互作用する能力を決定する工程が、既知の化合物と比較した場合、試験化合物がHKID−1またはその生物学的に活性な部分に優先的に結合する能力を決定する工程を包含する、工程を包含する。
【0136】
別の実施形態では、アッセイは、細胞ベースのアッセイであり、HKID−1タンパク質の可溶性形態、またはその生物学的に活性な部分を発現している細胞と、試験化合物とを接触させる工程、ならびにこの試験化合物がHKID−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分の活性を調節する(例えば、刺激するかまたは阻害する)能力を決定する工程を包含する。試験化合物がHKID−1またはその生物学的に活性な部分の活性を調節する能力を決定する工程は、例えば、HKID−1タンパク質がHKID−1標的分子に結合するかまたはそれと相互作用する能力を決定することによって達成され得る。本明細書中で使用され得る場合、「標的分子」は、HKID−1タンパク質が天然で結合するかまたは相互作用する分子(例えば、HKID−1タンパク質を発現する細胞の内部においてHKID−1タンパク質によってリン酸化される基質分子、細胞膜の内部表面に会合している分子または細胞質分子)である。HKID−1標的分子は、非HKID−1分子、または本発明のHKID−1タンパク質もしくはポリペプチドであり得る。1つの実施形態では、HKID−1標的分子は、シグナル伝達を媒介するシグナル伝達経路の構成要素である。
【0137】
HKID−1タンパク質がHKID−1標的分子に結合するかまたはそれと相互作用する能力を決定する工程は、直接的な結合を決定するための、上記の方法のうちの1つによって達成され得る。1つの実施形態では、このHKID−1タンパク質がHKID−1標的分子に結合するかまたはそれと相互作用する能力を決定する工程は、この標的分子の活性を決定することによって達成され得る。例えば、この標的分子の活性は、この標的の細胞セカンドメッセンジャー(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導を検出すること、適切な基質に対するこの標的の触媒/酵素活性を検出すること、レセプター遺伝子(例えば、検出可能なマーカー(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする核酸に作動可能に連結されたHKID−1応答性調節エレメント)の誘導を検出すること、あるいは細胞応答(例えば、細胞分化、または細胞増殖)を検出することによって決定され得る。
【0138】
本発明のアッセイ方法の種々の実施形態において、HKID−1またはその標的分子のいずれかを固定し、このタンパク質の1つまたは両方の複合体化されていない形態からの複合体化された形態の分離を促進すること、およびアッセイの自動化に適応することが所望され得る。候補化合物の存在下および非存在下でのHKID−1に対する標的化合物の結合、またはHKID−1と標的分子との相互作用は、反応物質を含むために適切な任意の容器において達成され得る。このような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管および微量遠心管が挙げられる。1つの実施形態において、このタンパク質の1つまたは両方をマトリックスに結合させるドメインを付加する融合タンパク質が提供され得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/HKID−1融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical;St.Louis,MO)またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレート上に吸着され得、次にこれらは、試験化合物または試験化合物および非吸着標的タンパク質またはHKID−1タンパク質のいずれかと組み合わされ、そしてこの混合物は、複合体形成を誘導する条件下で(例えば、塩およびpHについての生理学的条件下で)インキュベートされる。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルは任意の非結合成分を除去するために洗浄され、そして複合体形成は、例えば、上記のように直接または間接的にのいずれかで測定される。あるいは、その複合体は、マトリックスから解離され得、そしてHKID−1結合または活性のレベルは、標準的技術を用いて決定される。
【0139】
マトリックス上にタンパク質を固定するための他の技術はまた、本発明のスクリーニングアッセイにおいて用いられ得る。例えば、HKID−1またはその標的分子のいずれかは、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合体化を利用して固定され得る。ビオチン化HKID−1または標的分子は、当該分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals;Rockford,IL)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製され得、そしてストレプトアビジン被膜96−ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルにおいて固定され得る。あるいは、HKID−1または標的分子と反応性だが、HKID−1タンパク質のその標的分子への結合を妨害しない抗体は、プレートのウェル、および抗体結合体化によりこのウェル中に閉じ込められた非結合の標的またはHKID−1に誘導体化され得る。このような複合体を検出するための方法は、GST−固定複合体について上記された方法に加えて、HKID−1または標的分子と反応性の抗体を用いる複合体の免疫検出、ならびにHKID−1または標的分子に関連する酵素活性を検出することに依存する酵素結合アッセイを含む。
【0140】
別の実施形態において、HKID−1発現の調節因子は、細胞が候補化合物と接触される方法において同定され、そして細胞中のHKID−1のmRNAまたはタンパク質の発現が決定される。候補化合物の存在下におけるHKID−1のmRNAまたはタンパク質の発現レベルが、候補化合物の非存在下におけるHKID−1のmRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較される。次いで、この候補化合物は、この比較に基づき、HKID−1発現の調節因子として同定され得る。例えば、候補化合物の存在下におけるHKID−1のmRNAまたはタンパク質の発現が非存在下におけるその発現よりも大きい(統計学的に有意に大きい)場合、この候補化合物は、HKID−1のmRNAまたはタンパク質の発現の刺激因子として同定される。あるいは、候補化合物の存在下におけるHKID−1のmRNAまたはタンパク質の発現が非存在下におけるその発現よりも少ない(統計学的に有意に少ない)場合、この候補化合物は、HKID−1のmRNAまたはタンパク質の発現のインヒビターとして同定される。細胞におけるHKID−1のmRNAまたはタンパク質発現のレベルは、HKID−1のmRNAまたはタンパク質を検出するために本明細書において記載された方法により決定され得る。
【0141】
本発明のなお別の局面において、HKID−1タンパク質は、HKID−1に結合するかまたは相互作用し(「HKID−1結合タンパク質」または「HKID−1−bp」)そしてHKID−1活性を調節する他のタンパク質を同定するため、2ハイブリッドアッセイまたは3ハイブリッドアッセイにおいて「ベイトタンパク質」として用いられ得る(例えば、米国特許番号第5,283,317号;Zerovosら(1993)Cell 72:223〜232;Maduraら(1993)J.Biol.Chem.268:12046〜12054;Bartelら(1993)Bio/Techniques 14:920〜924;Iwabuchiら(1993)Oncogene 8:1693〜1696;およびPCT公開番号WO94/10300を参照のこと)。このようなHKID−1結合タンパク質はまた、HKID−1タンパク質によるシグナルの伝達(例えば、HKID−1経路の上流エレメントまたは下流エレメント)に関与するようである。本発明はまた、2ハイブリットスクリーニングにおけるベイトとしてのHKID−1と相互作用するタンパク質(例えば、HKID−1との2ハイブリットインタラクター)の使用およびHKID−1相互作用タンパク質相互作用タンパク質の同定を提供する。HKID−1相互作用タンパク質相互作用タンパク質は、HKID−1シグナル伝達経路に関与するようである。
【0142】
本発明は、本明細書に記載される処置について上記のスクリーニングアッセイおよびその使用により同定される新規の因子にさらに提供する。
【0143】
(B.検出アッセイ)
本明細書において同定されたcDNA配列(および対応する完全遺伝子配列)の部分またはフラグメントは、ポリヌクレオチド試薬として多くの方法で用いられ得る。例えば、これらの配列は以下のために用いられ得る:(i)染色体上のそれぞれの遺伝子をマッピングし、それにより遺伝病に関連する遺伝子領域の位置付けをするため;(ii)わずかな生物学的サンプルから個体を同定する(組織タイピング)ため;および(iii)生物学的サンプルの法医学的な同定を補助するため。これらの適用は以下の小節において記載される。
【0144】
(1.組織タイピング)
本発明のHKID−1配列はまた、わずかな生物学的サンプルから個体を同定するために用いられ得る。例えば、合衆国軍は、その職員の同定のために制限フラグメント長多型性(RFLP)の使用を検討している。この技術では、個体のゲノムDNAが1つ以上の制限酵素で消化され、そしてサザンブロット上にプローブされ、同定のための特有のバンドを生じる。この方法であれば、失われ、入れ替えられまたは盗まれ得る、ポジティブな同定を困難にする「ドッグタグ(Dog Tag)」の現在の制限をうけない。本発明の配列はRFLP(米国特許第5,272,057号に記載)のためのさらなるDNAマーカーとして有用である。
【0145】
さらに、本発明の配列は、個体のゲノムの選択した部分の実際の塩基ごとのDNA配列を決定する代替技術を提供するために用いられ得る。従って、本明細書において記載されるHKID−1配列は、その配列の5’末端および3’末端から2つのPCRプライマーを調製するために用いられ得る。次いで、これらのプライマーは、個体のDNAを増幅し、続いてそれを配列決定するために用いられ得る。
【0146】
この様式で調製された、個体由来の対応するDNA配列のパネルは、特有の個体の同定を提供し得る。なぜなら、それぞれの個体は対立遺伝子の差異に起因するこのようなDNA配列の特有のセットを有するからである。本発明の配列は、個体由来、および組織由来のこのような同定配列を得るために用いられ得る。本発明のHKID−1配列は、ヒトゲノムの部分を特有に示す。対立遺伝子改変は、これらの配列のコード領域においてある程度まで生じ、そして非コード領域においてより大きい程度まで生じる。個々のヒトの間の対立遺伝子改変は、500塩基あたりおよそ1個の頻度で生じると推定される。本明細書において記載される配列のそれぞれは、同定目的のために比較され得る個体由来のDNAに対して、ある程度まで、標準物として用いられ得る。非コード領域においては、より多数の多型性が生じるので、個体を区別するのに必要な配列はより少なくなる。配列番号1の非コード配列は、100塩基の非コードの増幅された配列をそれぞれ生じる、おそらく10〜1,000のプライマーのパネルを用いて、ポジティブ個体同定を十分に提供する。推定コード配列(例えば、配列番号3)が用いられる場合、ポジティブ個体同定のためのプライマーのより適切な数は500〜2,000である。
【0147】
本明細書において記載されるHKID−1配列からの試薬のパネルが、個体のための特有の同定データベースを生成するために用いられる場合、これらの同じ試薬は、その個体由来の組織を同定するために後で用いられ得る。特有の同定データベースを用いて、個体(生存または死亡している)のポジティブ同定は、非常にわずかな組織サンプルからなされ得る。
【0148】
(2.法医生物学における部分HKID−1配列の使用)
DNAに基づく同定技術はまた、法医生物学において用いられ得る。法医生物学は、例えば犯罪の加害者をポジティブに同定するための手段として、犯罪現場で発見された生物学的証拠の遺伝子タイピングを使用する科学分野である。このような同定を行うため、PCR技術が、犯罪現場で発見された、組織(例えば、毛髪または皮膚)または体液(例えば、血液、唾液または精液)のような非常に少量の生物学的サンプルから取り出されたDNA配列を増幅するために用いられ得る。次いで、増幅された配列は、標準物と比較され得、これにより、生物学的サンプルの起源の同定が可能になる。
【0149】
本発明の配列は、ヒトゲノム中の特定の遺伝子座に標的化される、ポリヌクレオチド試薬(例えば、PCRプライマー)を提供するために用いられ得、これは例えば、別の「同定マーカー」(すなわち、特定の個体に特有の別のDNA配列)を提供することにより、DNAに基づく法医同定の信頼性を増強し得る。上記のように、実際の塩基配列情報は、制限酵素が生成したフラグメントにより形成されたパターンに対する正確な代替物として同定のために用いられ得る。配列番号1の非コード領域に対して標的された配列は、この非コード領域でより多数の多型性が生じる場合、この用途のために特に適切である。このことは、この技術を用いて個体を区別することを容易にする。ポリヌクレオチド試薬の例としては、HKID−1配列またはその部分(例えば、少なくとも20または30塩基の長さを有する、配列番号1の非コード領域由来のフラグメント)が挙げられる。
【0150】
本明細書において記載されるHKID−1配列は、さらにポリヌクレオチド試薬、例えば、標識プローブまたは標識可能プローブ(これは、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション技術において、特定の組織(例えば、脳組織)を同定するために用いられ得る)を提供するために用いられ得る。これは、法医病理学者が不明の起源の組織を提示される場合に非常に有用であり得る。このようなHKID−1プローブのパネルは、種のタイプおよび/または器官の型により組織を同定するために用いられ得る。
【0151】
類似の様式で、これらの試薬(例えば、HKID−1のプライマーまたはプローブ)は、混入物について組織培養物をスクリーニング(すなわち、培養中の異なる型の細胞の混合物の存在についてスクリーニング)するために用いられ得る。
【0152】
(C.予測医学)
本発明はまた、診断アッセイ、予後アッセイ、薬理ゲノム学および臨床試験モニタリングが予後(予測的)目的のために用いられる予測医学の分野を提供し、それにより個体を予防的に処置する。従って、本発明の1つの局面は、生物学的サンプル(例えば、血液、血清、細胞、組織)の状況で、HKID−1タンパク質および/または核酸の発現ならびにHKID−1活性を決定するための診断アッセイに関し、これにより、個体が、異常なHKID−1発現または活性に関連する疾患または障害に罹患しているか、または障害を発生する危険性があるか否かを決定する。本発明はまた、個体がHKID−1タンパク質、核酸発現または活性に関連する障害を発症する危険性があるか否かを決定するための予後(すなわち予測的)アッセイを提供する。例えば、HKID−1遺伝子における変異は、生物学的サンプル中でアッセイされ得る。このようなアッセイは、予後目的または診断目的のために用いられ得、これによりHKID−1タンパク質、核酸発現または活性により特徴づけられるかまたはこれらに関連する障害の発現の前に個体を予防的に処置する。
【0153】
本発明の別の局面は、個体におけるHKID−1タンパク質、核酸発現またはHKID−1活性を決定し、これにより、その個体について適切な治療的薬剤または予防的薬剤を選択するための方法(本明細書において「薬理ゲノム」とよぶ)を提供する。薬理ゲノムは、個体の遺伝子型(例えば、個体が特定の薬剤に応答する能力を決定するために試験された個体の遺伝子型)に基づく個体の治療的処置または予防的処置のための薬剤(例えば、薬物)の選択を可能にする。
【0154】
本明細書のなお別の局面は、臨床試験におけるHKID−1の発現または活性に対する、薬剤(例えば、薬物または他の化合物)の影響のモニタリングを提供する。
【0155】
これらおよび他の薬剤は、以下の節でさらに詳細に記載される。
【0156】
(1.診断アッセイ)
生物学的サンプル中におけるHKID−1の存在または非存在を検出するための例示的方法は、試験被験体から生物学的サンプルを入手する工程、およびこの生物学的サンプルを、HKID−1のタンパク質または核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)(HKID−1タンパク質をコードする)を検出し得る化合物または因子と接触させ、これにより生物学的サンプル中でHKID−1の存在が検出される工程を含む。HKID−1のmRNAまたはゲノムDNAを検出するための因子は、HKID−1のmRNAまたはゲノムDNAにハイブリダイズし得る標識された核酸プローブであり得る。核酸プローブは、例えば、全長HKID−1核酸(例えば、配列番号1または3の核酸)またはその部分(例えば、少なくとも15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、そしてHKID−1のmRNAまたはゲノムDNAにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチド)であり得る。本発明の診断アッセイにおける使用に適切な他のプローブが、本明細書に記載される。
【0157】
HKID−1タンパク質を検出するための因子は、HKID−1タンパク質に結合し得る抗体(好ましくは検出可能標識を有する抗体)であり得る。抗体は、ポリクローナル抗体、またはより好ましくはモノクローナル抗体であり得る。インタクトな抗体またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab’))が用いられ得る。プローブまたは抗体に関して、用語「標識された」は、プローブまたは抗体への検出可能な物質の結合(すなわち、物理的連結)によるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに直接標識されている別の試薬との反応によるプローブまたは抗体の間接的標識を含むことが意図される。間接的標識化の例としては、蛍光的に標識した二次抗体を用いる一次抗体の検出、およびビオチンを用いるDNAプローブの末端標識化(これにより、このプローブは蛍光的に標識されたストレプトアビジンで検出され得る)が挙げられる。用語「生物学的サンプル」は、被験体から単離された組織、細胞および生物学的流体、ならびに被験体中に存在する組織、細胞および流体を含むことが意図される。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロおよびインビボにおいて生物学的サンプル中のHKID−1のmRNA、タンパク質またはゲノムDNAを検出するために用いられ得る。例えば、HKID−1のmRNAの検出のためのインビトロ技術としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションが挙げられる。HKID−1タンパク質の検出のためのインビトロ技術としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光法が挙げられる。HKID−1ゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。さらに、HKID−1タンパク質の検出のためのインビボ技術は、標識した抗HKID−1抗体を被験体に導入する工程を含む。例えば、抗体は、被験体における存在および位置が標準的画像化技術により検出され得る放射性マーカーで標識され得る。
【0158】
1つの実施形態において、生物学的サンプルは、試験被験体からのタンパク質分子を含む。あるいは、この生物学的サンプルは、試験被験体由来のmRNA分子または試験被験体由来のゲノムDNA分子を含み得る。生物学的サンプルは、被験体から従来の手段により単離された末梢血白血球サンプルである。
【0159】
別の実施形態において、この方法はさらに、以下の工程を包含する:コントロール被験体からコントロール生物学的サンプルを得る工程、このコントロールサンプルを、HKID−1のタンパク質、mRNA、またはゲノムDNAを検出し得る化合物または薬剤と接触させ、その結果、HKID−1のタンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの存在がこの生物学的サンプルにおいて検出される工程、およびこのコントロールサンプル中のHKID−1のタンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの存在を、試験サンプル中のHKID−1のタンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの存在と比較する工程。
【0160】
本発明はまた、生物学的サンプル(試験サンプル)中のHKID−1の存在を検出するためのキットを包含する。このようなキットを使用して、被験体がHKID−1の異常な発現と関連する障害(例えば、免疫学的障害)を罹患しているか、またはこのような障害を発症する危険性が増加しているか否かを検出し得る。例えば、このキットは、生物学的サンプル中のHKID−1のタンパク質またはmRNAを検出し得る標識された化合物または薬剤、およびこのサンプル中のHKID−1の量を決定するための手段(例えば、抗HKID−1抗体、またはHKID−1をコードするDNA(例えば、配列番号1または配列番号3)に結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を備え得る。キットはまた、試験される被験体が、HKID−1のタンパク質またはmRNAの量が正常レベルより高いかまたはそれ未満の場合に、HKID−1の異常な発現と関連する障害に罹患しているか、またはそのような障害を発症する危険性にあるかを観察するための指示書を備え得る。
【0161】
抗体ベースのキットについて、このキットは、例えば、以下を備える:(1)HKID−1タンパク質に結合する第1抗体(例えば、固体支持体に付着されている);および必要に応じて、(2)HKID−1タンパク質または第1抗体に結合し、かつ検出可能な薬剤に結合体化されている、第2の異なる抗体。
【0162】
オリゴヌクレオチドベースのキットについて、このキットは、例えば、以下を備え得る:(1)HKID−1核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例えば、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド)、または(2)HKID−1核酸分子を増幅するために有用な一対のプライマー。
【0163】
このキットはまた、例えば、緩衝化剤、保存剤、またはタンパク質安定化剤を備え得る。このキットはまた、検出可能な薬剤を検出するために必要な成分(例えば、酵素または基質)を備え得る。このキットはまた、アッセイされそして含まれる試験サンプルと比較され得るコントロールサンプルまたは一連のコントロールサンプルを備え得る。このキットの各成分は、通常、個別の容器内に包含され、そして様々な容器の全ては、試験される被験体がHKID−1の異常な発現に関連する障害に罹患しているかまたはそのような障害を発症する危険性にあるか否かを観察するための指示書とともに、単一のパッケージ内にある。
【0164】
(2.予後アッセイ)
本明細書中に記載される方法はさらに、異常なHKID−1の発現または活性に関連する疾患または障害を有するか、またはそれを発症する危険性のある被験体を同定するための診断アッセイまたは予後アッセイとして利用され得る。例えば、本明細書中に記載されるアッセイ(例えば、前述の診断アッセイまたは以下のアッセイ)は、HKID−1のタンパク質、核酸発現もしくは活性に関連する障害を有するか、またはそれを発症する危険性にある被験体を同定するために利用され得る。あるいは、予後アッセイは、このような疾患または障害を有するか、またはそれを発症する危険性にある被験体を同定するために利用され得る。従って、本発明は、試験サンプルが被験体から得られ、そしてHKID−1のタンパク質または核酸(例えば、mRNA,ゲノムDNA)が検出される方法を提供し、ここでHKID−1のタンパク質または核酸の存在は、異常なHKID−1の発現または活性と関連する疾患または障害を有するか、またはそれを発症する危険性にある被験体についての診断である。本明細書中使用される場合、「試験サンプル」とは、目的の被験体から得られる生物学的サンプルをいう。例えば、試験サンプルは、生物学的流体(例えば、血清)、細胞サンプル、または組織であり得る。
【0165】
さらに、本明細書中に記載される予後アッセイは、被験体が異常なHKID−1の発現または活性と関連する疾患または障害を処置するために薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子、または他の薬物候補体)を投与され得るか否かを決定するために使用され得る。例えば、このような方法は、被験体が、特定の薬剤または薬剤のクラス(例えば、HKID−1活性を減少する型の薬剤)を用いて効果的に処置され得るか否かを決定するために使用され得る。従って、本発明は、被験体が、異常なHKID−1の発現または活性と関連する障害について、薬剤を用いて効果的に処置され得るか否かを決定するための方法を提供し、ここで、試験サンプルが得られ、そしてHKID−1のタンパク質または核酸が検出される(例えば,ここで、HKID−1のタンパク質または核酸の存在は、異常なHKID−1の発現または活性と関連する障害を処置するために薬剤を投与され得る被験体についての診断である)。
【0166】
本発明の方法はまた、HKID−1遺伝子における遺伝子損傷または変異を検出するために使用され得、それにより、損傷した遺伝子を有する被験体が、異常な細胞増殖および/または分化によって特徴付けられる傷害についての危険性にあるか否かを決定する。実施形態において、この方法は、被験体由来の細胞のサンプルにおいて、HKID−1タンパク質をコードする遺伝子の完全性またはHKID−1遺伝子の誤った発現に影響する少なくとも1つの変更によって特徴付けられる遺伝子損傷または変異の存在または非存在を検出する工程を包含する。例えば、このような遺伝子損傷または変異は、以下の少なくとも1つの存在を確認することによって検出され得る:1)HKID−1遺伝子からの1つ以上のヌクレオチドの欠失;2)HKID−1遺伝子への1つ以上のヌクレオチドの付加;3)HKID−1遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの置換;4)HKID−1遺伝子の染色体再編成;5)HKID−1遺伝子のメッセンジャーRNA転写物のレベルにおける変更;6)ゲノムDNAのメチル化パターンのような、HKID−1遺伝子の異常な修飾;7)HKID−1遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在;8)HKID−1タンパク質の非野生型レベル;9)HKID−1遺伝子の対立遺伝子欠損;および10)HKID−1タンパク質の不適切な翻訳後修飾。本明細書中に記載されるように、HKID−1遺伝子における損傷を検出するために使用され得る当該分野で公知の多数のアッセイ技術が存在する。生物学的サンプルは、被験体から従来の手段によって単離された、末梢血白血球サンプルである。
【0167】
特定の実施形態において、損傷の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号を参照のこと)(例えば、アンカーPCRまたはRACE PCR)、あるいはリガーゼ(ligation)連鎖反応(LCR)(例えば、Landegranら(1988)Science 241:1077−1080;およびNakazawaら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:360−364を参照のこと)における、プローブ/プライマーの使用を含む。この後者は、HKID−1遺伝子における点変異を検出するために特に有用であり得る(例えば、Abravayaら(1995)Nucleic Acids Res.23:675−682を参照のこと)。この方法は、患者からサンプル細胞を収集する工程、サンプル細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNAまたは両方)を単離する工程、核酸サンプルを、(存在する場合)HKID−1遺伝子のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こる条件下で、HKID−1遺伝子に特異的にハイブリダイズする1つ以上のプライマーに接触させる工程、および増幅産物の存在または非存在を検出する工程、または増幅産物のサイズを検出しそしてコントロールサンプルと長さを比較する工程を包含し得る。PCRおよび/またはLCRは、本明細書中に記載される変異の検出に用いられる任意の技術との組合せで、予備増幅工程としての使用が所望され得ることが予測される。
【0168】
代替的増幅方法としては、自己持続性配列複製(self sustained sequence replication)(Guatelliら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅系(Kwohら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−Beta Replicase(Lizardiら(1988)Bio/Technology 6:1197)または任意の他の核酸増幅方法、それに続く、当業者に周知の技術を使用するその増幅された分子の検出が挙げられる。これらの検出スキームは、核酸分子が、非常に少数で存在する場合に、そのような分子の検出に特に有用である。
【0169】
代替の実施形態において、サンプル細胞由来のHKID−1遺伝子における変異は、制限酵素切断様式の変更によって同定され得る。例えば、サンプルおよびコントロールDNAを単離し、(必要に応じて)増幅し、1種類以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、そしてゲル電気泳動によってフラグメント長サイズが決定され、そして比較される。サンプルDNAとコントロールDNAとの間のフラグメント長の違いは、サンプルDNAにおける変異を示す。さらに、配列特異的リボザイム(例えば、米国特許第5,498,531号を参照のこと)の使用を用いて、リボザイム切断部位の発生または喪失によって、特定の変異の存在についてスコアリングし得る。
【0170】
他の実施形態において、HKID−1における遺伝子変異は、サンプル核酸およびコントロール核酸(例えば、DNAまたはRNA)を、数百または数千のオリゴヌクレオチドプローブを含む高密度アレイ(Croninら(1996)Human Mutation 7:244〜255;Kozalら(1996)Nature Medicine 2:753〜759)にハイブリダイズさせることよって同定され得る。例えば、HKID−1における遺伝的変異は、Croinら(前出)に記載されるように、発光DNAプローブを含む二次元アレイにおいて同定され得る。簡単にいうと、プローブの第1のハイブリダイゼーションアレイを用いて、サンプル中およびコントロール中の長いDNA鎖を通じて走査し、配列が重複するプローブの直線アレイを作製することによって配列間の塩基変換を同定し得る。この工程は、点変異の同定を可能にする。この工程に引き続き、検出される全ての改変体または変異体と相補的な、より小さく、特化したプローブアレイを使用して、特定の変異の特徴付けを可能にする第2のハイブリダイゼーションアレイを行う。各変異アレイは、平行プローブセット(一方は、野生型遺伝子に相補的であり、他方は、変異体遺伝子に相補的である)からなる。
【0171】
なお別の実施形態において、当該分野に公知の任意の種々の配列決定反応を用いて、HKID−1遺伝子を直接的に配列決定し、そしてサンプルHKID−1の配列を対応する野生型(コントロール)配列と比較することによって変異を検出し得る。配列決定反応の例としては、MaximおよびGilbert((1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560)またはSanger((1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)によって開発された技術に基づく配列決定反応が挙げられる。任意の種々の自動配列決定手順が、質量分析法による配列決定(例えば、PCT子会番号WO 94/16101;Cohenら(1996)Adv.Chromatogr.36:127〜162;およびGriffinら(1993)Appl.Biochem.Biotechnol.38:147〜159を参照のこと)を含む、診断のアッセイ((1995)Bio/Technology 19:448)を行う場合に利用され得ることがまた、意図される。
【0172】
HKID−1遺伝子における変異を検出するための他の方法としては、切断剤からの保護を用いて、RNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖におけるミスマッチ塩基を検出する方法(Myersら(1985)Science 230:1242)が挙げられる。一般に、「ミスマッチ切断」の技術は、組織サンプル由来の潜在的な変異RNAまたは変異DNAと、野生型HKID−1配列を含む(標識した)RNAまたはDNAとをハイブリダイズさせることによって形成されるヘテロ二重鎖の提供を必要とする。この2本鎖二重鎖を、コントロール鎖とサンプル鎖との間の塩基対ミスマッチに起因して存在するような二重鎖の1本鎖領域を切断する薬剤で処理する。RNA/DNA二重鎖をRNaseで処理することで、ミスマッチ領域が消化され得、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処理して、ミスマッチ領域が消化され得る。他の実施態様において、DNA/DNA二重鎖またはRNA/DNA二重鎖のいずれかが、ミスマッチ領域を消化するために、ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムとピペリジンとを用いて処理され得る。ミスマッチ領域の消化後、次いで、得られた物質を、変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズによって分離して、変異の部位を決定する。例えば、Cottonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4397;Saleebaら、(1992)Methods Enzymol.217:286−295を参照のこと。好ましい実施態様において、コントロールDNAまたはRNAは、検出のために標識され得る。
【0173】
なお別の実施態様において、このミスマッチ切断反応は、細胞のサンプルから得られたHKID−1 cDNAにおける点変異を検出およびマッピングするための規定されたシステムにおいて、二本鎖DNAにおけるミスマッチ塩基対を認識する1つ以上のタンパク質(いわゆる、「DNAミスマッチ修復」酵素)を使用する。例えば、E.coliのmutY酵素は、G/AミスマッチでAを切断し、そしてHeLa細胞からのチミジンDNAグリコシラーゼは、G/TミスマッチでTを切断する(Hsuら、(1994)Carcinogenesis 15:1657−1662)。例示的な実施形態に従って、HKID−1配列(例えば、野生型HKID−1配列)に基づくプローブを、試験細胞由来のcDNAまたは他のDNA産物にハイブリダイズさせる。この二重鎖をDNAミスマッチ修復酵素で処理し、そして、存在する場合に、この切断産物を電気泳動プロトコルなどから検出し得る。例えば、米国特許第5,459,039号を参照のこと。
【0174】
他の実施形態において、電気泳動移動度における変化を使用して、HKID−1遺伝子における変異を同定する。例えば、一本鎖配座多型(single−strand conformation polymorphism)(SSCP)を使用して、変異体核酸と野生型核酸との間の電気泳動移動度における差異を検出し得る(Oritaら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2766;またCotton(1993)Mutat.Res.285:125−144;Hayashi(1992)Genet.Anal.Tech.Appl.9:73−79を参照のこと)。サンプルおよびコントロールHKID−1核酸の一本鎖DNAフラグメントは、変性され、そして再生される。一本鎖核酸の二次構造は、配列に従って変動し、そして電気泳動移動度において生じた変化は、単一の塩基変化さえ検出することが可能にする。DNAフラグメントは、標識され得るか、または標識したプローブを用いて検出され得る。このアッセイの感度は、(DNAよりむしろ)RNAを使用することによって増強され得、ここで、その二次構造が、配列における変化に対してより感受性である。実施形態において、本発明の方法は、ヘテロ二重鎖分析を利用して、電気泳動移動度における変化に基づいて二本鎖へテロ二重鎖分子を分離する(Keenら(1991)Trends Genets.7:5)。
【0175】
なお別の実施形態において、変性剤の勾配を含むポリアクリルアミドゲルにおける変異体または野生型のフラグメントの移動は、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Myersら(1985)Nature 313:495)を使用してアッセイされる。DGGEが分析方法として使用される場合、DNAは、例えば、PCRによって高融点のGCリッチなDNAの約40pのGCクランプを付加することによって、DNAが完全には変性しないことを確証するように改変される。さらなる実施形態において、温度勾配を、変性勾配の代わりに用いて、コントロールDNAおよびサンプルDNAの移動度における差異を同定する(RosenbaumおよびReissner(1987)Biophys.Chem.265:12753)。
【0176】
点変異を検出するための他の技術の例としては、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、既知の変異が中央に配置されて調製され得、次いで完全な一致が見出される場合のみにハイブリダイゼーションを可能にする条件下で標的DNAにハイブリダイズされ得る(Saikiら(1986)Nature 324:163;Saikiら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6230)。このような対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズメンブランに付着され、そして標識化標的DNAとハイブリダイズされる場合に、PCR増幅された標的DNA、または多数の異なる変異にハイブリダイズされる。
【0177】
あるいは、対立遺伝子特異的増幅技術(これは、選択的PCR増幅に依存する)は、本発明と共に用いられ得る。特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、分子の中央において目的の変異を保有し得る(その結果、増幅は、示差的ハイブリダイゼーション(Gibbsら、(1989)Nucleic Acids Res.17:2437−2448)、または適切な条件下で、ミスマッチがポリメラーゼ伸長を防止もしくは減少させ得る、1つのプライマーの一番端の3’末端(Prossner(1993)Tibtech 11:238)に依存する)。さらに、変異の領域に新規の制限部位を導入して、切断に基づく検出を生じることが望ましくあり得る(Gaspariniら(1992)Mol.Cell.Probes 6:1)。特定の実施形態において、増幅はまた、増幅のためのTaqリガーゼを用いて行われ得ることが予測され得る(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189)。このような場合において、連結は、5’側配列の3’末端に完全一致が存在する場合にのみ生じ、特定の部位での既知の変異の存在を、増幅の存在または非存在を探すことによって検出可能にする。
【0178】
本明細書中に記載される方法は、例えば、本明細書中に記載される少なくとも1つのプローブ核酸または抗体試薬を含む予めパッケージ化された診断キットを利用することによって、行われ得る。このキットは、例えば、臨床的設定において、HKID−1遺伝子に関する疾患もしくは疾病の症状または家族歴を示す患者を診断するために、都合良く使用され得る。
【0179】
さらに、HKID−1が発現される任意の細胞型または組織、好ましくは末梢血白血球は、本明細書中に記載される予後アッセイにおいて利用され得る。
【0180】
(3.薬理ゲノム学)
本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイによって同定されるような、HKID−1活性(例えば、HKID−1遺伝子発現)に対する刺激または阻害効果を有する試薬もしくはモジュレーターは、個体に投与されて、異常なHKID−1活性と関連する障害(例えば、HKID−1が発現される細胞および組織(例えば、神経系の細胞)を含む障害)を処置(予防的にまたは治療的に)し得る。このような処置と共に、個体の薬理ゲノム学(すなわち、個体の遺伝子型と、外来の化合物もしくは薬物に対するその個体の応答との間の関連性の研究)が、考察され得る。治療薬の代謝における差異は、薬理学的に活性な薬物の用量と血中濃度との間の関連性を変化させることによって、重篤な毒性または治療的失敗を引き起こし得る。従って、個体の薬理ゲノム学は、個体の遺伝子型の考察に基づいて、予防的または治療的な処置のための有効な薬剤(例えば、薬物)の選択を可能にする。このような薬理ゲノム学をさらに用いて、適切な投薬量および治療レジメンを決定し得る。従って、個体における、HKID−1タンパク質の活性、HKID−1核酸の発現、またはHKID−1遺伝子の変異量を決定して、それによって個体の治療的または予防的な処置のための適切な薬剤を選択し得る。
【0181】
薬理ゲノム学は、罹患した人における変化された薬物分布および異常な作用に起因する、薬物に対する応答における臨床的に有意な遺伝的バリエーションを扱う。例えば、Linder(1997)Clin.Chem.43(2):254−266を参照のこと。一般に、2つの型の薬理遺伝的状態は区別され得る。身体に対する薬物作用の様式を変化させる単一の因子として伝達される遺伝状態は、「変化された薬物作用」といわれる。薬物に対する身体作用の様式を変化させる単一の因子として伝達される遺伝状態は、「変化された薬物代謝」といわれる。これらの薬理遺伝的状態は、まれな欠損または多型のいずれかとして生じ得る。例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症(G6PD)は、一般的な遺伝酵素病である。この主な臨床的合併症は、酸化薬物(抗マラリア剤、スルホンアミド、鎮痛薬、ニトロフラン)の摂取およびソラマメの消費の後の溶血である。
【0182】
例示的な実施形態として、酵素を代謝する薬物の活性は、薬物作用の効力および持続時間の両方の主な決定因子である。薬物代謝酵素(例えば、N−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)、ならびにシトクロムP450酵素のCYP2D6およびCYP2C19)の遺伝的多型の発見は、何人かの患者が、薬物の標準的かつ安全な用量を得た後に、予想される薬物効果を得ないか、または過度の薬物応答および重篤な毒性を示す理由に関しての説明を提供した。これらの多型は、集団における2つの表現型(高代謝群(extensive metabolizer)(EM)および低代謝群(PM)(poor metabolizer))で表される。PMの有病率は、種々の集団について異なる。例えば、CYP2D6をコードする遺伝子は、高度な多型であり、そして、いくつかの変異がPMにおいて同定されており、これは、全て機能的CYP2D6の非存在に導く。CYP2D6およびCYP2C19の低代謝群は、それらが、標準的な用量を受ける場合に、過度の薬物応答および副作用を、きわめて頻繁に経験する。代謝産物が、活性な治療用分子である場合、PMは、そのCYP2D6型代謝産物であるモルヒネによって媒介されるコデインの鎮痛効果について実証されるような、治療的応答を示さない。他の極端なものは、標準的な用量に応答しない、いわゆる、超迅速代謝群(ultra−rapid metabolizer)である。最近、超迅速代謝の分子的な基礎は、CYP2D6遺伝子増幅によるものであることが確認された。
【0183】
従って、個体における、HKID−1タンパク質の活性、HKID−1核酸の発現、HKID−1遺伝子の変異量を決定して、それによって個体の治療的または予防的な処置のための適切な薬剤を選択し得る。さらに、薬理遺伝的研究を用いて、個体の薬物応答性表現型の同定に、薬物代謝酵素をコードする多型対立遺伝子の遺伝子型決定を適用し得る。この知見により、投薬量または薬物の選択に適用する場合に、有害な反応または治療的失敗を避け得、従って被験体をHKID−1モジュレーター(例えば、本明細書中に記載される例示的スクリーニングアッセイの1つによって同定されるモジュレーター)を用いて処置する場合に、治療的または予防的な効果を増大させ得る。
(4.臨床試験の間の効果のモニタリング)
HKID−1の発現または活性に対する薬剤(例えば、薬物、化合物)の影響(例えば、異常な細胞増殖および/または分化を調節する能力)をモニターすることは、基本的薬物スクリーニングにおいてのみならず、臨床試験においても適用され得る。例えば、HKID−1遺伝子発現、タンパク質レベル、またはタンパク質活性を、増大させるための、本明細書中に記載されるようなスクリーニングアッセイによって決定されるような、薬剤の有効性は、低下したHKID−1遺伝子発現、タンパク質レベル、もしくはタンパク質活性を示す被験体の臨床試験においてモニターされ得る。あるいは、スクリーニングアッセイによって決定されるような、HKID−1遺伝子発現、タンパク質レベル、またはタンパク質活性を、低下させるための薬剤の有効性は、増加したHKID−1遺伝子発現、タンパク質レベル、もしくはタンパク質活性を示す被験体の臨床試験においてモニターされ得る。このような臨床試験において、HKID−1発現または活性は、そして好ましくは、例えば、細胞増殖障害に関与する他の遺伝子の発現または活性は、特定の細胞の免疫応答性のマーカーとして用いられ得る。
【0184】
例えば、そして限定を意味しないが、HKID−1活性を調節する薬剤(例えば、化合物、薬物、または低分子)での処理によって細胞において調節される遺伝子(HKID−1を含む)が、(例えば、本明細書中に記載されているスクリーニングのアッセイにおいて同定されるように)同定され得る。従って、細胞増殖障害に対する薬剤の効果を研究するために、例えば、臨床試験において、細胞は、単離され得、そしてRNAが調製され、そしてHKID−1遺伝子、およびこの障害に関与する他の遺伝子の発現のレベルについて分析される。遺伝子発現のレベル(すなわち、遺伝子発現パターン)は、本明細書中に記載されるように、ノーザンブロット分析もしくはRT−PCRによって定量され得るか、実施例2において記載されるような多重組織発現アレイにハイブリダイズすることによって、または、あるいは、産生されるタンパク質の量を測定することによって、本明細書中に記載されるような方法の1つによって、またはHKID−1遺伝子もしくは他の遺伝子の活性のレベルを測定することによって、定量され得る。この方法において、遺伝子発現パターンは、薬剤に対する細胞の生理学的応答を示す、マーカーとして役立ち得る。従って、この応答状態は、薬剤での個体の処置の前、およびその間の様々な時点で測定され得る。
【0185】
実施形態において、本発明は、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子、または本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイによって同定される他の薬物候補)での被験体の処置の有効性をモニタリングするための方法を提供する。この方法は、(i)薬剤の投与の前に被験体由来の投与前サンプルを得る工程;(ii)投与前サンプルにおいて、HKID−1タンパク質、mRNA、もしくはゲノムDNAの発現のレベルを検出する工程;(iii)被験体由来の1つ以上の投与後サンプルを得る工程;(iv)投与後のサンプルにおいてHKID−1タンパク質、mRNA、もしくはゲノムDNAの発現もしくは活性のレベルを検出する工程;(v)投与後のサンプルにおけるHKID−1タンパク質、mRNA、またはゲノムDNAと、投与前サンプルにおけるHKID−1タンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの発現もしくは活性のレベルを比較する工程;ならびに(vi)被験体への薬剤の投与を変化させる工程を包含する。例えば、薬剤の増加した投与は、検出されるより高いレベルまで、HKID−1の発現または活性を増加(すなわち、薬剤の有効性を増加)させることが望まれ得る。あるいは、薬剤の低下した投与は、検出されるより低いレベルまで、HKID−1の発現または活性を低下(すなわち、薬剤の有効性を低下)させることが望まれ得る。
【0186】
(D.処置の方法)
本発明は、異常なHKID−1発現または活性と関連する障害の危険性のある、またはその障害を有する被験体を処置する予防的および治療的な方法の両方を提供する。
【0187】
(1.予防法)
1つの局面において、本発明は、HKID−1発現、または少なくとも1つのHKID−1活性を調節する薬剤を被験体に投与することによって、異常なHKID−1発現もしくは活性と関連する疾患または状態を、患者において防止する方法を提供する。異常なHKID−1発現もしくは活性によって、引き起こされるか、または異常なHKID−1発現もしくは活性に寄与する疾患の危険性のある被験体は、例えば、本明細書中に記載されるような診断または予防のアッセイのいずれか、もしくは組合せによって同定され得る。予防的薬剤の投与は、HKID−1異常性の特徴的な症状の徴候の前に行われ得、その結果、疾患または障害は、その進行において予防され得るか、あるいは遅延され得る。HKID−1異常性の型に依存して、例えば、HKID−1アゴニストまたはHKID−1アンタゴニストは、被験体を処置するために用いれられ得る。適切な薬剤は、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイに基づいて、決定され得る。
【0188】
(2.治療法)
本発明の別の局面は、治療目的のためのHKID−1発現または活性を調節する方法を提供する。本発明の調節方法は、細胞と関連するHKID−1タンパク質活性の1つ以上の活性を調節する薬剤と、細胞とを接触させる工程を包含する。HKID−1タンパク質活性を調節する薬剤は、本明細書中に記載される薬剤(例えば、低分子(例えば、HKID−1のタンパク質キナーゼ活性を調節する低分子)核酸もしくはタンパク質、HKID−1タンパク質の天然に存在する同族リガンド、ペプチド、HKID−1ペプチド模倣物)であり得る。1つの実施形態において、この薬剤は、HKID−1タンパク質の1つ以上の生物学的活性を刺激する。このような刺激性薬剤の例としては、HKID−1の1つ以上の活性(例えば、HKID−1タンパク質キナーゼ活性)を刺激する低分子、活性なHKID−1タンパク質および細胞に導入されたHKID−1タンパク質をコードする核酸分子が挙げられる。別の実施形態において、この薬剤は、HKID−1タンパク質の1つ以上の生物学的活性を阻害する。このような阻害性薬剤の例としては、1つ以上のHKID−1活性(例えば、HKID−1タンパク質キナーゼ活性)を阻害する低分子、アンチセンスHKID−1核酸分子および抗HKID−1抗体が挙げられる。これらの調節方法は、(例えば、この薬剤で細胞を培養することによって)インビトロで、あるいは(例えば、被験体にこの薬剤を投与することによって)インビトロで行われ得る。このように、本発明は、HKID−1タンパク質または核酸分子の異常な発現もしくは活性によって特徴付けられる疾患または障害に罹患した個体を処置する方法を提供する。本発明はまた、HKID−1およびHKID−1タンパク質または核酸分子の活性を調節することによって処置され得る疾患または障害に罹患する個体を処置する方法を提供する。1つの実施形態において、本方法は、HKID−1発現または活性を調節する(例えば、アップレギュレートするか、もしくはダウンレギュレートする)薬剤(例えば、低分子(例えば、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイによって同定される薬剤))、または薬剤の組合せを投与することを包含する。
【0189】
HKID−1活性の刺激は、HKID−1が異常にダウンレギュレートされる状況、および/または増大したHKID−1活性が有益な効果を有するようである状況において望ましい。逆に、HKID−1活性の阻害は、HKID−1活性が異常にアップレギュレートされる状況、および/または低下したHKID−1活性が有益な効果を有するようである状況において望ましい。
【0190】
本発明は、限定として解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例示される。本出願の全体を通じて引用される全ての参照、特許および公開特許出願の内容は、本明細書で参考として援用される。
【実施例】
【0191】
(実施例1:HKID−1のヌクレオチド配列の決定)
標準的なクローニングベクターにおいて構築されたcDNAライブラリーから単離されたヒトHKID−1 cDNAを配列決定した。cDNA配列を、コンティグへとアセンブリし、HKID−1配列を、このコンティグのコンセンサス配列から決定した。コンティグの分析により、新規の326アミノ酸タンパク質をコードすると予想される978塩基対のオープンリーディングフレームを有する、約2126kbのHKID−1 cDNA配列が明らかとなった。非翻訳領域を含む約2126のヌクレオチド長であるヒトHKID−1配列(図1A;配列番号1)は、予想されたメチオニン開始コード配列(停止コドンを含む約981のヌクレオチド(すなわち、配列番号1のヌクレオチド171〜1151;配列番号3のヌクレオチド1〜981))を含む。コード配列は、326アミノ酸タンパク質(配列番号1)をコードする。
【0192】
(実施例2:ヒト組織におけるHKID−1 mRNAの分布)
HKID−1 mRNA発現を、ナイロンメンブレン上(ヒト多重組織発現(MTE)アレイ、Clontech;Palo Alto,CA)にアレイされたヒトポリA+RNAに対して、放射性標識されたHKID−1特異的DNAプローブをハイブリダイズさせることによって分析した。以下のヒト組織および細胞株由来のポリA+RNAが、MTEアレイに存在する:脳の全体、大脳皮質、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、大脳皮質の中心傍回、橋、左小脳、右小脳、脳梁、扁桃、尾状核、海馬、延髄、被殻、黒質、側坐核、視床、下垂体、脊髄、心臓、大動脈、左心房、右心房、左心室、右心室、心室中隔、心尖、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸(ilocecum)、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、直腸、骨格筋、脾臓、胸腺、末梢血白血球、リンパ節、骨髄、気管、肺、胎盤、膀胱、子宮、前立腺、精巣、卵巣、肝臓、膵臓、副腎、甲状腺、唾液腺、乳腺、HL−60白血球細胞株、S3 HeLa細胞株、K−562白血球細胞株、MOLT−4白血球細胞株、ラージバーキット(Raji Burkitt)リンパ細胞株、ダウジバーキット(Daudi Burkitt)リンパ細胞株、SW480結腸直腸腺癌、A549肺癌細胞株、胎児脳、胎児心臓、胎児腎臓、胎児肝臓、胎児脾臓、胎児胸腺、胎児肺。
【0193】
発現分析を行うために、HKID−1 cDNAの一部分を、ハイブリダイゼーションプローブとしての用途目的で、PCRを用いて合成した。HKID−1特異的DNAを、供給業者の指示書に従い、Prime−Itキット(Stratagene;La Jolla,CA)を用いて、32P−dCTPにより放射能標識した。MTEアレイフィルターを、ExpressHybハイブリダイゼーション溶液(Clontech)中で、放射標識したHKID−1特異的DNAプローブによりプローブし、製造業者の推奨に従い、高ストリンジェントに洗浄した。これらの試験は、HKID−1 mRNAは、MTEアレイに含まれる全ての組織において発現されることを明らかにした。次いで、成体組織における高い発現を、胎盤において検出し、次いで、気管、次いで、肺、次いで、末梢血白血球、次いで、心臓の順で検出した。胎児組織において、最も高い発現を、肺において検出し、次いで、心臓、次いで、腎臓、次いで、脾臓の順で検出した。HKID−1 mRNAの低い発現を、分析した全ての組織において検出した。HKID−1 mRNA発現は、成体黒質および成体下垂体(これらでは、HKID−1 mRNAレベルは、中程度であった)を除いて、成体および胎児脳の両方において全体で弱いものであった。
【0194】
(実施例3:HKID−1タンパク質の特徴付け)
この実施例において、ヒトHKID−1タンパク質のアミノ酸配列を、タンパク質に存在する公知のモチーフおよび/またはドメインのアミノ酸配列および公知のタンパク質のポリペプチド配列と比較した。HKID−1中に存在するポリペプチドドメインおよび/またはポリペプチドモチーフを、HKID−1と有意に類似のアミノ酸を有するタンパク質であると同定した。さらに、ヒトHKID−1タンパク質の分子量を予想した。
【0195】
上記のように同定されたヒトHKID−1ヌクレオチド配列(図1;配列番号1)は、326アミノ酸タンパク質(図1;配列番号2)をコードする。HKID−1は、翻訳後改変を含まない約35.86kDaと予想されるMWを有する。配列番号2のHKID−1ポリペプチド配列を用い、タンパク質パターンのPROSITEデータベースに問合わせ、そして共通タンパク質ドメインおよびファミリーを認識し得る隠れマルコフモデル(HMM)のライブラリーに問い合わせた。PROSITEデータベースの検索により、配列番号2のアミノ酸260〜263から1つのcAMP−依存的タンパク質キナーゼリン酸化部位およびcGMP−依存的タンパク質キナーゼリン酸化部位(PS00004;配列番号4);配列番号5;配列番号2のアミノ酸137〜139、275〜277、および279〜281から3つのタンパク質キナーゼCリン酸化部位(PS00005;配列番号6);配列番号7〜9;配列番号2のアミノ酸202〜205、211〜214、および321〜324から3つのカゼインキナーゼIIリン酸化部位(PS00006;配列番号10);配列番号11〜13;配列番号2のアミノ酸33〜40から1つのチロシンキナーゼリン酸化部位(PS00007;配列番号14);配列番号15;配列番号2のアミノ酸43〜48、49〜54、57〜62、63〜68、80〜85、98〜103、および295〜300から7つのN−ミリストイル化部位(PS00008;配列番号16);配列番号17〜23;配列番号2のアミノ酸46〜54から1つのタンパク質キナーゼATP結合領域特性(PS00107;配列番号24);配列番号25;配列番号2のアミノ酸166〜178から1つのセリン/トレオニンタンパク質キナーゼ活性部位特性(PS00108;配列番号26);配列番号27の存在が明らかになった。PFAM分析は、HKID−1が、真核生物タンパク質キナーゼドメインを有することを示す。HMMデータベースの検索により、配列番号2のアミノ酸40〜293から1つの真核生物タンパク質キナーゼドメイン;配列番号29の存在が、262.4のスコアおよび5.9×1075のE値(図2を参照のこと)で明らかになった。PFAM識別子に関する一般的な情報について、PS識別記号およびPF識別記号モチーフ同定数は、Sonnhammerら(1997)Protein 28:405〜420およびwww.psc.edu/general/software/packages/pfam/pfam.htmlを参照のこと。
【0196】
配列番号2のHKID−1ポリペプチド配列を、BLOSUM62マトリクスおよびタンパク質ワード長3を有するBLASTPプログラムを使用して、タンパク質配列のPROTOTデータベースをクエリするために使用した。このBLASTP分析によって同定された、HKID−1に対して最も密接に関連する5つのタンパク質を列挙する:HKID−1は、ラットKID−1(AF086624;配列番号37)に対して1646のスコアで326アミノ酸にわたって95%同一であり、Xenopus laevis(カエル)PIM−1(Q91822;配列番号38)に対して922のスコアで77%同一であり、マウスPIM−1(P06803;配列番号39)に対して873のスコアで類似しており、ラットPIM−1(P26794;配列番号40)に対して884のスコアで類似しており、そしてヒトPIM−1(P11309;配列番号41)に対して883のスコアで類似していることが見出された。
【0197】
図4は、PAM250残基加重表を用いるJ.Hein法を使用してDNASTAR配列分析パッケージのMegAlignプログラムで実施された、配列番号2のHKID−1ポリペプチド配列のアライメントを示し、そしてBLASTP分析によって同定された最も近いHKID−1関係物を5つのみ列挙する。表1は、HKID−1とBLASTP分析によって同定されたその最も近い5つの関係物との間の、ポリペプチド配列類似性パーセントおよびポリペプチド配列分岐パーセントの両方ならびにこのHKID−1関係物と各他のものとの間のポリペプチド配列類似性パーセントおよびポリペプチド配列分岐パーセントを示す。配列対の距離を、PAM250残基加重表を用いるJ.Hein法を使用してDNASTAR配列分析パッケージのMegAlignプログラムで実施した。これらの分析は、HKID−1が、ラットKID−1(Feldman,J.D.ら、(1998)J.Biol.Chem.273:16535−16543)およびカエルKID−1の種オルソログであることを示す。なぜなら、HKID−1は、PIM−1タンパク質よりもこれら2つのタンパク質により密接に関連するからである。カエルPIM−1およびラットKID−1が、種オルソログであることは報告された(Feldman,J.D.ら、(1998)J.Biol.Chem.273:16535−16543)。HKID−1は、ヒトPIM−1、マウスPIM−1、およびラットPIM−1のパラログである。HKID−1は、その種オルソログ(ラットKID−1およびカエルPIM−1)が、これらが由来する種において果たす、いくつかまたは全ての役割をヒトにおいて果たす。
【0198】
ラットKID−1、カエルPIM−1、ならびにヒトPIM−1およびマウスPIM−1は、インビトロリン酸化アッセイにおいてセリン/トレオニンプロテインキナーゼ活性を有することが全て公知である。HKID−1とラットKID−1、カエルPIM−1、ならびにヒトPIM−1、HKID−1およびマウスPIM−1、HKID−1との間の高いポリペプチド配列類似性は、HKID−1が、セリン/トレオニンプロテインキナーゼであることを示す。
【0199】
ラットKID−1は、Feldman,J.D.ら、(1998).J.Biol.Chem.273:16535−16543に記載される。ラットKID−1は、カイニン酸および電気痙攣ショックに応答して、海馬および皮質の特定の領域において誘導され、このことは、ラットKID−1が、神経機能、シナプス形成性、学習および記憶ならびにカイニン酸発作およびいくつかの神経系関連疾患(例えば、発作および癲癇)に関連することを示唆する。HKID−1がラットKID−1の種オルソログであるので、HKID−1は、ラットKID−1が関連するプロセスおよび疾患のいくつかまたは全てに関連する。さらに、HKID−1パラログ(PIM−1タンパク質)は、癌原遺伝子である。従って、HKID−1が、細胞増殖制御、癌、ならびに関連する経路および疾患に関連することは可能である。
【0200】
【表1】
Figure 2005504830
(表1)
BLASTP分析において同定されたHKID−1の対距離および最も密接に関連する5つのタンパク質。類似性パーセントを、上向き三角形象限で示し、分岐パーセントを、上向き三角形象限で示す。配列対距離を、PAM250残基加重表を用いるJ.Hein法を使用してDNASTAR配列分析パッケージのMegAlignプログラムで実施した。
【0201】
(実施例4:HKID−1融合タンパク質の調製)
組換えHKID−1を、種々の発現系で産生する。1つの実施形態において、成熟HKID−1ペプチドを、E.coli中で組換えグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として発現し、この融合タンパク質を、単離し得、特徴付け得る。HKID−1を、GSTに融合し、この融合タンパク質を、E.coli株PEB199において発現する。GST−HKID−1融合タンパク質のPEB199における発現を、IPTGで誘導する。組換え融合タンパク質を、誘導されたPEB199株の粗細菌溶解物から、グルタチオンビーズでのアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。細菌溶解物から精製したポリペプチドのポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を使用して、得られた融合ポリペプチドの分子量を、決定する。
【0202】
(実施例5:HKID−1の染色体位置の同定)
HKID−1の染色体位置を決定するために、配列番号1のHKID−1ヌクレオチド配列を、BLASTNプログラム(Altschul S.F.ら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−410)をワード長12で使用し、そしてBLOSUM62スコア付けマトリクス(ヒトゲノム上にマップされた核酸分子由来のヒトヌクレオチド配列のデータベース)を使用するクエリのために使用した。WI−11798ヌクレオチド配列は、HKID−1配列を含むことが見出され、WI−11798およびHKID−1が同じ染色体位置(第22染色体の結合群の最初から196.70センチレイ(centiRay)の、D22S1169とD22S_qterマーカーとの間の第22染色体)にマップされることが確立された。
【0203】
(実施例6:大スケール組織特異的ライブラリースクリーニングによるHKID−1 mRNAの組織分布)
標準的分子生物学的方法(Sambrook,J.,Fritsh,E.F.,およびManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratofy,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)を、多くのヒト組織由来の、プラスミドベクター中のcDNAライブラリーを構築するために使用した。各ライブラリーからの個々のcDNAクローンを、単離し、そして配列決定し、これらのヌクレオチド配列を、データベースに入力した。配列番号1のHKID−1ヌクレオチド配列を、BLASTNプログラム(Altschul S.F.ら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−410)をワード長12で使用し、BLOSUM62スコア付けマトリクスを使用して、組織特異的ライブラリーcDNAクローンヌクレオチド配列データベースをクエリするために使用した。配列番号1のHKID−1ヌクレオチド配列の部分に同一であるヌクレオチド配列を、ヒトの、皮膚、腎臓、肺、心臓、胸腺、内皮細胞、前立腺、子宮、リンパ節、ニューロン、胎盤、T細胞、胸部および筋肉に由来するcDNAライブラリーに見出した。この結果は、HKID−1 mDNA、またはこれらのフラグメントが、列挙される組織に発現されることを示すが、この組織におけるHKID−1 mDNAの発現レベルについてのなんらかの結論を引き出すことは可能ではない。さらに、HKID−1同一配列が、他の組織由来のライブラリーにおいて検出されなかったという事実は、HKID−1 mRNAが、これらの組織において発現されないということを意味しない。HKID−1核酸配列、このフラグメント、これらの配列によってコードされるタンパク質、およびこのフラグメントならびにHKID−1遺伝子またはタンパク質活性のモジュレーターは、HKID−1 mDNAが発現される組織に関連する疾患を診断または処置するために有用であり得る。
【0204】
(実施例7:HKID−1 mRNAの組織分布)
HKID−1(すなわち、「2190」または「MID2190」)を、いくつかの転写プロファイリング(T×P)実験によって同定した。正常なヒト卵巣上皮細胞(NOE)が数人の患者由来の臨床的腹水サンプルと比較される場合、HKID−1がNOEに比べて腹水サンプルの2/2において、アップレギュレートされることが見出された。この結果を、Taqman(登録商標)ブランド定量的PCRキット、Applied Biosystemsを使用して、続いての定量的PCR実験によって確認した(表2)。定量的PCR反応を、キットの製造業者の指示書に従って実施した。
【0205】
【表2】
Figure 2005504830
(表2)
Taqman(登録商標)ブランド定量的PCRキット、Applied Biosystemsを使用した、正常卵巣細胞および卵巣腹水における2190発現。定量的PCR反応を、キットの製造業者の指示書に従って実施した。
【0206】
同様に、形質転換可能細胞株Hs578Tに比べて正常なHs578Bst乳房細胞株を使用する、乳部モデルプロファイリング実験は、Hs578Bstに比べてHs578T株において、HKID−1の高い発現を示した(表3)。軟寒天中で増殖する場合、MCF10A細胞株はまた、プラスチック上で増殖する場合より高いHKID−1の発現を示した(表3)。
【0207】
【表3−1】
Figure 2005504830
【0208】
【表3−2】
Figure 2005504830
(表3)
上記、表2に記載されるように、定量的PCRによってモニターされる、種々の胸部組織および細胞株の発現。
【0209】
重要なことに、HKID−1は、血清添加によって、オンコジーンcMycと類似する発現パターンで、HEY卵巣細胞株において誘導されることが示された。HKID−1の発現はまた、HCT116 NOC同期化細胞における時間経過実験において研究された(表4)。
【0210】
【表4】
Figure 2005504830
(表4)
Nocodazole(Noc)で同期化された、HCT116結腸癌細胞の発現。発現を、上記、表2において記載されるように、定量的PCRによってモニターした。
【0211】
実験はまた、種々の組織および細胞型におけるHKID−1の発現を決定するために実施された(表4〜6を参照のこと)。HKID−1は、卵巣サンプル、胸部サンプル、肺サンプルおよび少しの結腸腫瘍臨床サンプルにおいて高度に発現されることが示された(下記)。
【0212】
【表5】
Figure 2005504830
(表5)
正常な(N)および腫瘍の(T)、組織および細胞を含む、種々の組織および細胞株における、2190発現。略語一覧:IDC(侵襲性腺管癌);ILC(侵襲性小葉癌);SCC(扁平上皮細胞癌);Liver Met(結腸癌肝臓転移);HMVEC Arr(ヒト微小血管内皮細胞停止性);HMVEC Prol(HMVEC増殖性)。発現を、上記、表2に記載されるように、定量的PCRによってモニターした。
【0213】
【表6−1】
Figure 2005504830
【0214】
【表6−2】
Figure 2005504830
(表6)
種々の組織および細胞株における2190の発現。略語一覧:SMC(平滑筋細胞);CHF(うっ血性心不全);COPD(慢性閉塞性肺疾患);IBD(炎症性腸疾患);PBMC(末梢血単核細胞(休止))。発現を、上記、表2に記載されるように、定量的PCRによってモニターした。
【0215】
【表7】
Figure 2005504830
(表7)
種々の組織および細胞株における2190発現。発現を、上記、表2に記載されるように、定量的PCRによってモニターした。
【0216】
このデータを、2/2正常卵巣サンプル(低発現)、7/7卵巣腫瘍(中程度から高発現)、3/3正常肺(低発現)、4/4肺腫瘍(中程度の発現)、1/1正常結腸(低発現)2/2結腸腫瘍(高発現)、および2/2結腸から肝臓転移(高発現)にHKID−1を局在化するISHによって確認した。発現を、上記、表2に記載されるように、定量的PCRによってモニターした。
【0217】
従って、データは、HKID−1が、卵巣細胞モデル系においてcMycと類似して制御されることを示す。さらに、HKID−1の過剰発現は、多くのヒト臨床腫瘍サンプルにおいて観察される。従って、MID2190(KID−1)セリン/トレオニンキナーゼの阻害は、Myc依存性様式で腫瘍細胞増殖の低下を補助し得る。
【0218】
(実施例8:COS細胞における組換えHKID−1タンパク質の発現)
COS細胞中でHKID−1遺伝子を発現するために、Invitrogen Corporation(San Diego,CA)によるpcDNA/Ampベクターを使用する。このベクターは、SV40複製起点、アンピシリン耐性遺伝子、E.coli複製起点、CMVプロモーターおよび続くポリリンカー領域、ならびにSV40イントロンおよびポリアデニル化部位を含む。全HKID−1タンパク質をコードするDNAフラグメントおよびインフレームでこのフラグメントの3’末端に融合されたHAタグ(Wilsonら、(1984)Cell 37:767)またはFLAGタグを、ベクターのポリリンカー領域にクローン化し、それによってCMVプロモーターの制御下に組換えタンパク質の発現を配置する。
【0219】
プラスミドを構築するために、HKID−1 DNA配列を、2つのプライマーを使用してPCRによって増幅する。5’プライマーは、目的の制限部位および続く開始コドンから開始する約20ヌクレオチドのHKID−1コード配列を含み;3’末端配列は、他の目的の制限部位に相補的な配列、翻訳終止コドン、HAタグまたはFLAGタグおよびHKID−1コード配列の最後20ヌクレオチドを含む。PCR増幅フラグメントおよびpCDNA/Ampベクターを、適切な制限酵素で消化し、ベクターを、CIAP酵素(New England Biolabs,Beverly,MA)を使用して脱リン酸化する。好ましくは、選択された2つの制限部位は異なり、その結果、HKID−1遺伝子を正しい方向で挿入する。ライゲーション混合物で、E.coli細胞(Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CAから入手可能なHB101株、DH5α株、SURE株を使用し得る)を形質転換し、形質転換された培養物を、アンピシリン培地プレート上にプレートし、耐性コロニーを選択する。プラスミドDNAを、形質転換体から単離し、そして正しいフラグメントの存在について制限分析によって試験する。
【0220】
その後、COS細胞を、リン酸カルシウム共沈降法または塩化カルシウム共沈降法、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを使用して、HKID−1−pcDNA/AmpプラスミドDNAでトランスフェクトする。宿主細胞をトランスフェクトするための他の適切な方法は、Sambrook,J.,Fritsh,E.F.およびManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に見出され得る。22348ポリペプチド、23553ポリペプチド、25278ポリペプチド、または26212ポリペプチドの発現を、放射標識(NEN,Boston,MAから入手可能な35S−メチオニンまたは35S−システインが使用され得る)およびHA特異的モノクローナル抗体を使用する免疫沈降(Harlow,E.およびLane,D.Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988)によって検出する。簡潔には、細胞を、35S−メチオニン(または35S−システイン)で8時間標識する。次いで、培養培地を、回収し、細胞を、界面活性剤(RIPA緩衝液、150mM NaCl、1% NP−40、0.1% SDS、0.5% DOC、50mM Tris、pH7.5)を使用して溶解する。細胞溶解物および培養培地の両方を、HA特異的モノクローナル抗体で沈殿する。次いで、沈殿されたポリペプチドを、SDS−PAGEによって分析する。
【0221】
あるいは、HKID−1コード配列を含むDNAを、適切な制限部位を使用してpCDNA/Ampベクターのポリリンカーに直接クローン化する。得られたプラスミドを、上記される様式でCOS細胞中にトランスフェクトし、HKID−1ポリペプチドの発現を、放射標識およびHKID−1特異的モノクローナル抗体を使用する免疫沈降によって検出する。
【0222】
本発明は、多くの異なる形態で実施され得、そして本明細書中に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく;むしろ、これらの実施形態は、本発明が、当業者に本発明を十分に知らせるために提供される。本発明の多くの改変および他の実施形態は、本発明が関係する、前述の記載に示される教示の利益を有する当業者に思い浮かぶ。特定の用語が使用されるが、これらは、他に示されない限り当該分野での用語として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1a】図1aは、ヒトHKID−1の配列(配列番号1)および推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す。配列番号1のオープンリーディングフレームは、ヌクレオチド171〜ヌクレオチド1259(配列番号3)に及ぶ。
【図1b】図1aは、ヒトHKID−1の配列(配列番号1)および推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す。配列番号1のオープンリーディングフレームは、ヌクレオチド171〜ヌクレオチド1259(配列番号3)に及ぶ。
【図2】図2は、HKID−1のアミノ酸配列の一部(配列番号29;配列番号2のアミノ酸40〜293に対応する)と、隠されたMarkovモデル(PF00069;配列番号28)由来の真核生物プロテインキナーゼドメインコンセンサス配列との整列を示す。整列における上側の配列は、PF00069配列であるが、下側の配列は、配列番号2のアミノ酸40からアミノ酸293である。
【図3】図3は、配列番号2のHKID−1アミノ酸配列のProtean分析を示す。示されているものは、以下である:Garnier−Robsonアルゴリズムを用いて同定されたα領域、β領域、ターン領域およびコイル領域;Chou−Fasmanアルゴリズムを用いて同定されたα領域、β領域およびターン領域;Kyte−Doolittleアルゴリズムを用いて作成された親水性および疎水性プロット;Eisenbergアルゴリズムを用いて同定されたα両親媒性領域およびβ両親媒性領域;Karplus−Schulzアルゴリズムを用いて同定された可撓性領域;Jameson−Wolfアルゴリズムを用いて計算された抗原性指数;ならびにEminiアルゴリズムを用いて計算された表面確率プロット。疎水性プロットについては、相対的疎水性が破線の上に示され、相対的親水性が、破線の下に示される。
【図4】図4は、PAM250残基重み表とともにJ.Hein法を用いるDNASTAR配列分析パッケージのMegAlignプログラムによって行われた、配列番号2のHKID−1ポリペプチド配列およびラットKID−1(AF086624;配列番号37)、Xenopus laevis(カエル)PIM−1(Q91822;配列番号38)、マウスPIM−1(P06803;配列番号39)、ラットPIM−1(P26794;配列番号40)、およびヒトPIM−1(P11309;配列番号41)のポリペプチド配列整列を示す。

Claims (22)

  1. 細胞におけるポリペプチドのレベルまたは活性を調節するための方法であって、該方法は、薬剤が、該ポリペプチドのレベルまたは活性を調節することを可能にする条件下で、該ポリペプチドを発現する細胞を、該薬剤と接触させる工程を包含し、ここで、該ポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、方法。
  2. 前記薬剤が、抗体である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞がインビトロにある、請求項1に記載の方法。
  4. 前記細胞がインビボにある、請求項1に記載の方法。
  5. 前記細胞が、該細胞に関連する増殖性障害を有する被験体由来である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記調節が、癌に関連する障害を有するか、または該障害を有する素因を有する被験体における調節である、請求項1に記載の方法。
  7. 細胞におけるポリペプチドのレベルまたは活性を調節するための方法であって、該方法は、薬剤が、該ポリペプチドのレベルまたは活性を調節することを可能にする条件下で、該ポリペプチドを発現する細胞を、該薬剤と接触させる工程を包含し、ここで、該ポリペプチドは、以下:
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列の配列改変体のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、ここで該配列改変体は、キナーゼ活性を有し、そして配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる、ポリペプチド;
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列の配列改変体のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、ここで該配列改変体は、キナーゼ活性を有し、そして配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる、ポリペプチド;および
    (c)配列番号1に示されるアミノ酸配列の配列改変体のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、ここで該配列改変体は、キナーゼ活性を有し、そして配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約98%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされる、ポリペプチド、
    からなる群より選択される、方法。
  8. 前記薬剤が、抗体である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記細胞がインビトロにある、請求項7に記載の方法。
  10. 前記細胞がインビボにある、請求項7に記載の方法。
  11. 前記細胞が、該細胞に関連する増殖性障害を有する被験体由来である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記調節が、癌に関連する障害を有するか、または該障害を有する素因を有する被験体における調節である、請求項7に記載の方法。
  13. 細胞における核酸分子のレベルを調節するための方法であって、該方法は、薬剤が、該核酸分子のレベルを調節することを可能にする条件下で、該核酸分子を含む細胞を、該薬剤と接触させる工程を包含し、ここで、該核酸分子は、以下:
    (a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列;
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
    からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、方法。
  14. 前記細胞がインビトロである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記細胞がインビボである、請求項13に記載の方法。
  16. 前記細胞が、該細胞に関連する増殖性障害を有する被験体由来である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記調節が、癌に関連する障害を有するか、または該障害を有する素因を有する被験体における、請求項13に記載の方法。
  18. 細胞における核酸分子のレベルを調節するための方法であって、該方法は、薬剤が、該核酸分子のレベルを調節することを可能にする条件下で、該核酸分子を含む細胞を、該薬剤と接触させる工程を包含し、ここで、該核酸分子は、以下:
    (a)キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここで、該ヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%の配列同一性を有する、ヌクレオチド配列;
    (b)キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここで、該ヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約95%の配列同一性を有する、ヌクレオチド配列;および
    (c)キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここで、該ヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約98%の配列同一性を有する、ヌクレオチド配列、
    からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する、方法。
  19. 前記細胞がインビトロである、請求項18に記載の方法。
  20. 前記細胞がインビボである、請求項18に記載の方法。
  21. 前記細胞が、該細胞に関連する増殖性障害を有する被験体由来である、請求項20に記載の方法。
  22. 前記調節が、癌に関連する障害を有するか、または該障害を有する素因を有する被験体における調節である、請求項19に記載の方法。
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