JP2005501315A6 - コンピュータで関節のモデルを作るための方法と装置 - Google Patents

コンピュータで関節のモデルを作るための方法と装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、関節の数学的コンピュータ・モデルに関する。このモデルは、滑膜組織と軟骨に関する生物学的プロセスの表現を含んでいる。一実施態様では、このモデルは、慢性関節リューマチに冒されたヒトの関節を表現している。

Description

【技術分野】
【0001】
著作権に関する注意
この明細書の一部に、著作権保護の対象となる材料が含まれている。著作権者は、この明細書がアメリカ合衆国特許商標庁の特許ファイルまたは記録に収録されたときには第三者がこの開示された明細書をそっくりそのままコピーすることに異義を唱えないが、それ以外の場合にはあらゆる著作権を保持する。
【0002】
関連する出願の相互参照
本発明は、2001年5月29日に「コンピュータで関節のモデルを作るための方法と装置」という名称で出願されたアメリカ合衆国仮特許出願シリアル番号第60/293,533号と関係があり、その優先権を主張する。なおこの出願は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【背景技術】
【0003】
本発明は、全体として、コンピュータによる関節のモデルに関する。より詳細には、本発明は、例えば慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、変形性関節症や、関節に関するその他の炎症疾患を表現するための、コンピュータによる関節のモデルに関する。
【0004】
滑膜炎、軟骨の急速な分解、冒された関節における骨の侵食は、例えば慢性関節リューマチ(RA)の特徴である。最近の研究によれば、骨格組織の分解と炎症は、リューマチになった関節の中の互いに重なってはいるが同じではない複数の経路を通じて制御されること、そしてこれら2つの側面に対する治療効果は必ずしも互いに関連していないことが示唆されている。さらに、関節のさまざまな生物学的プロセスのどれがRAの病因にどの程度寄与しているかについてはわからないことが多い。したがって、関節の炎症と分解を調節しているメカニズムをよりよく理解する必要がある。そのような理解がなされると、関節を保護するための治療法を戦略的に設計するのに役立つであろう。
【0005】
関節における生物学的プロセスは複雑であるため、数学的コンピュータ・モデルを用いると、関節疾患と健康なホメオスタシスに関係するさまざまな組織画分、さまざまなタイプの細胞、メディエータ、その他の因子の間の相互作用をよりよく理解できるようになる。何人かの研究者が関節の力学的環境に関する簡単なモデルを構築し、結果を軟骨および骨の疾患パターンおよび発達パターンと比較している(WynarskyとGreenwald、J. Biomech.、第16巻、241〜251ページ、1983年;PollatschekとNahir、J. Theor. Biol.、第143巻、497〜505ページ、1990年;Beaupre他、J. Rehabil. Res. Dev.、第37巻、145〜151ページ、2000年;Shi他、Acta Med. Okayama、第17巻、646〜653ページ、1999年)。しかしこれらのモデルは関節の力学的側面に注目したものであり、そこには滑膜やその他の関節画分の細胞に関する生物学的プロセスは明示的には含まれていない。例えばRAでは、この疾患が進行する際に滑膜の細胞が主要な役割を担っていることが知られている(SzekaneczとKoch、Curr. Rheumatol. Rep.、第3巻、53〜63ページ、2001年)。したがって、関節疾患をよりよく理解するため、滑膜を含む多数の画分とこれら画分の相互作用を考慮したコンピュータ・モデルまたは数学的モデルを開発する必要がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明の実施態様は、コンピュータで関節のモデルを作ることに関する。例えば本発明の一実施態様は、慢性関節リューマチに冒されたヒトの関節のコンピュータ・モデルに関する。本発明には、動物の関節の解析モデルを開発する方法も含まれる。
【0007】
本発明の一実施態様は、動物の関節のコンピュータ・モデルを開発する方法である。この方法は、関節の生物学的状態に関するデータを同定するステップと;このデータに関係していて、関節の生物学的状態の少なくとも一部を規定する複数の生物学的プロセスを同定するステップと;これら複数の生物学的プロセスを組み合わせて関節の生物学的状態のシミュレーションを形成するステップとを含んでいる。関節の生物学的状態としては、例えば、正常な関節の状態、または病気になった関節の状態が可能である。モデル化が可能な関節疾患としては、慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、反応性関節炎、変形性関節症などが挙げられる。
【0008】
本発明の別の実施態様は、関節の生物学的状態に関する生物学的プロセスを規定するコードと、生物学的プロセスに関するさまざまな変数間の相互作用に関する数学的関係を規定するコードとを含む、動物の関節の生物学的状態に関するコンピュータ・モデルである。少なくとも2つの生物学的プロセスが、この数学的関係に関係している。生物学的プロセスを規定するコードと、数学的関係を規定するコードを組み合わせると、関節の生物学的状態のシミュレーションが規定される。
【0009】
本発明のさらに別の実施態様は、動物の関節の生物学的状態に関する複数の生物学的プロセスを規定するコードを含む、コンピュータが実行可能なソフトウエア・コードである。そこに含まれるコードは、動物の関節の生物学的状態に関する複数の生物学的プロセスからの第1の生物学的プロセスと、その第1の生物学的プロセスに関する生物学的変数の間の相互作用とに関する数学的関係を規定するコードと、上記複数の生物学的プロセスからの第2の生物学的プロセスと、その第2の生物学的プロセスに関する生物学的変数の間の相互作用とに関する数学的関係を規定するコードである。
【0010】
本発明の別の実施態様は、コードを記憶したコンピュータ可読メモリと、このコンピュータ可読メモリに接続されていてコードを実行するプロセッサを含む、動物の関節のコンピュータ・モデルである。このメモリは、関節の生物学的状態に関する生物学的プロセスを規定するコードと、生物学的プロセスに関するさまざまな変数間の相互作用に関する数学的関係を規定するコードとを含んでいる。複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも2つの生物学的プロセスがこの数学的関係に関係している。生物学的プロセスを規定するコードと、数学的関係を規定するコードを組み合わせると、関節の生物学的状態のシミュレーションが規定される。
【0011】
詳細な説明
概略
本発明の実施態様は、コンピュータで動物の関節のモデルを作ることに関する。この明細書では、“動物”という用語にヒトが含まれる。この明細書では、“関節”という用語に、滑膜組織、滑液、関節軟骨、骨組織や、これらに関する細胞組成物と細胞外組成物、これらに含まれる可溶性メディエータが含まれる。コンピュータ・モデルは、関節に関する生物学的プロセスを表現することができる。一般に、このモデルは、軟骨の代謝に関する生物学的プロセスと、病気になっていない関節における細胞とメディエータの代謝回転に関係した生物学的プロセスを含んでいる。コンピュータ・モデルは、病気になった関節も表現することができる。例えばコンピュータ・モデルは、慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、変形性関節症になった関節、あるいは他の炎症性疾患になった関節を表現することができる。さらに、このモデルは、他のリューマチ疾患(例えば原因不明の一関節関節炎、少数関節関節炎、多関節関節炎)にかかった関節も表現することができる。
【0012】
本発明の実施態様は、コンピュータによる慢性関節リューマチ(RA)(例えばRAに冒された膝関節)のモデル化に関する。このコンピュータは、他の関節(例えば中手指節関節や股関節)も表現することができる。このコンピュータ・モデルは、滑膜と軟骨におけるサイトカインを媒介とした直接的な細胞相互作用に焦点を当てることができる。コンピュータ・モデルのコア要素を微調整する上で、例えば臨床データとの比較結果を用いることが可能である。
【0013】
一実施態様では、コンピュータ・モデルは、例えば成人患者において診断されたRA、確立したRA、初期RA(滑膜の炎症と過形成、パンヌスの形成、軟骨破壊の初期段階など)が活発に進行している状態と関係している。この患者は、例えば滑膜の継続的な過形成と炎症のほか、軟骨マトリックスの連続的な分解を特徴とする。この疾患状態は、健康なホメオスタシスと比較することが可能かつ有益な場合には、その比較を行なうことができる。別の方法として、他の疾患状態と仮想的患者をこのモデルで表現することができる。
【0014】
一実施態様では、コンピュータ・モデルは、プロトタイプとなるRAに冒された1つの関節を表現することができる。このプロトタイプとなる関節の正確な場所は特定する必要がない。利用可能なデータと矛盾がなく、疾患プロセス全体を最もよく反映している抽象化を行なうことができる。コンピュータ・モデルに含まれる主要な画分は、このプロトタイプとなる関節の軟骨-パンヌス接合部における滑膜組織と軟骨を表現することができる。
【0015】
さらに別の一実施態様では、新しいタイプの患者に基づいて、また、新しい要素の付加と、すでにモデル化されている要素の詳細化の両方に基づいて、コンピュータ・モデルを開発することができる。このコンピュータ・モデルには、例えばT細胞の補充調節、組織に存在するさまざまなT細胞のポピュレーション、より複雑にしたメディエータ・ネットワークなどの生物学的特徴を組み込むことができる。別の実施態様では、コンピュータ・モデルに新しい要素(例えば新脈管生成、骨代謝、B細胞、好中球)を付加することができる。
【0016】
本発明の一側面によると、コンピュータが実行可能なソフトウエア・コードは、シミュレーションするさまざまな実験条件のもとで、モデルの数学的方程式を数値的に解く。さらに、コンピュータが実行可能なこのソフトウエア・コードを用いると、さまざまな刺激に対する異なる患者のシミュレーションを行なう際に、モデルの方程式とそれに関係するパラメータを視覚化したり操作したりすることが容易になる。例えば、「シミュレーション・モデルにおいて、オブジェクトと、そのオブジェクトに関係するパラメータ値を制御する方法」という名称のアメリカ合衆国特許第6,078,739号を参照のこと。なおこの特許の開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。したがって、コンピュータ・モデルを用いて仮説を迅速にテストし、薬剤の潜在的なターゲットまたは治療戦略を研究することができる。
【0017】
数学的モデル
コンピュータが実行可能なソフトウエア・コードの数学的モデルは、関節の生物学的状態に関するダイナミックな生物学的プロセスを表現する。使用する数学的方程式の形式としては、例えば、偏微分方程式、確率微分方程式、微分代数方程式、差分方程式、セル・オートマトン、連結マップ、ブール論理ネットワークの方程式、ファジー論理ネットワークの方程式などが挙げられる。一実施態様では、モデルにおいて使用する数学的方程式は、以下の形式の常微分方程式:
dx/dt=f(x, p, t)
である。ここに、xはN次元のベクトルであり、その成分がシステムの生物学的変数(例えば滑膜マクロファージの数、腫瘍壊死因子αの濃度、軟骨のコラーゲンIIの濃度)を表わしており、tは時間であり、dx/dtはxの変化率であり、pはシステムのパラメータのM次元集合(例えばマクロファージ・マトリックス・メタロプロテイナーゼ-1(MMP-1)の合成速度のベースライン値、T細胞のサイクル時間、MMP-1によるコラーゲンIIの分解に関する触媒定数、軟骨の最初の厚さ)であり、fは生物学的変数同士の複雑な相互作用を表わす関数である。
【0018】
“生物学的変数”という用語は、生物学的プロセスを構成する細胞外または細胞内の成分を意味する。生物学的変数としては、例えば、代謝物、DNA、RNA、タンパク質、酵素、ホルモン、細胞、器官、組織、細胞の一部、組織の一部、器官の一部、細胞小器官、化学的反応性のある分子(例えばH+、スーパーオキシド、ATP、クエン酸、タンパク質アルブミン)のほか、このようなタイプの生物学的変数の組み合わせまたは集合表現が挙げられる。生物学的変数としてはさらに、治療薬(例えば、メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、可溶性TNF-α受容体、TNF-α抗体、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト)も挙げられる。
【0019】
この明細書では、“生物学的プロセス”という用語は、生物学的変数同士の1つの相互作用または一連の相互作用を意味する。したがって上記の関数fは、モデルにおける生物学的プロセスを数学的に表現する。生物学的プロセスとしては、例えば、マクロファージの活性化、マクロファージのタンパク質合成の制御、T細胞の増殖、コラーゲンIIの分解などが挙げられる。“生物学的プロセス”という用語には、1つ以上の治療薬を含むプロセス(例えば治療薬を細胞メディエータと結合させるプロセス)も含まれる。生物学的プロセスの各生物学的変数は、例えば何らかの生物学的メカニズムにより、その生物学的プロセスにおける少なくとも1つの他の生物学的変数による影響を受けることがある。しかしこの生物学的メカニズムは特定する必要がなく、理解する必要さえない。
【0020】
この明細書では、“パラメータ”という用語は、2つ以上の生物学的変数の間の相互作用を特徴づける数値を意味する。パラメータの具体例としては、アフィニティ定数、メディエータ合成のベースライン値、EC50値、第2のメディエータによる第1のメディエータのシミュレーション値、マクロファージ・マトリックス・メタロプロテイナーゼ-1(MMP-1)の合成速度のベースライン値、T細胞のサイクル時間、MMP-1によるコラーゲンIIの分解に関する触媒定数、軟骨の最初の厚さなどが挙げられる。
【0021】
この明細書では、“生物学的状態”という用語は、一連の生物学的プロセスが起こった結果を示すのに用いる。生物学的プロセスが互いに変化するにつれ、生物学的状態も変化する。1つの生物学的状態に関する1つの測定値は、所定の実験条件または環境条件のもとでの所定の時刻における生物学的変数、および/またはパラメータ、および/またはプロセスに関する活性レベルを表わす。
【0022】
一実施態様では、生物学的状態は、所定の時刻におけるxとpの値によって数学的に定義することができる。モデルの生物学的状態が数学的に指定されると、コンピュータを用いて上記の方程式を数値積分することにより、例えば生物学的変数の時間変化x(t)が明らかになり、したがって生物学的状態の時間変化が明らかになる。
【0023】
この明細書では、“シミュレーション”という用語は、数学的モデルの数値積分または解析的積分を意味する。シミュレーションは、例えば、上記の方程式(すなわちdx/dt=f(x, p, t))によって規定される生物学的状態の数学的モデルの数値積分を意味することができる。
【0024】
生物学的状態には、例えば、個々の細胞の状態、器官の状態、組織の状態、多細胞生物の状態が含まれる。生物学的状態には、血漿、間質液、細胞内液に含まれるメディエータの濃度状態も含まれる。例えば滑膜炎と滑膜過形成の状態は、それぞれ、滑膜中に炎症メディエータが高濃度であることと、細胞が多数あることによって特徴づけられる。これらの疾患は、実験的に作り出すことが可能である。あるいはこれらの疾患は、あるタイプの患者に存在している可能性がある。例えば軟骨の生物学的状態としては、ある程度の年齢になっていて疾患状態が継続している患者にとっての軟骨細胞の濃度が挙げられる。別の具体例では、滑膜組織のメディエータの集合の生物学的状態として、ある種の疾患にかかっている患者が特定の治療を受けている状態が含まれる。
【0025】
この明細書では、“疾患状態”という用語は、1つ以上の生物学的プロセスが、疾患の原因または臨床徴候と関係している生物学的状態を意味する。疾患状態とは、例えば、病気になった細胞、病気になった器官、病気になった組織、病気になった多細胞生物の状態である。そのような疾患としては、例えば、糖尿病、喘息、肥満、慢性関節リューマチなどが挙げられる。病気になった多細胞生物としては、例えば、個々のヒト患者、ヒト患者からなる特定のグループ、ヒトの集団全体が挙げられる。疾患状態としては、例えば、病的なタンパク質や病気になるプロセス(例えばマトリックスの合成、マトリックスの分解、細胞のアポトーシス、細胞のシグナル伝達における欠陥)も挙げられる。このようなことは、いくつかの異なった器官において起こりうる。
【0026】
この明細書では、“生物学的属性”という用語は、生物学的状態(疾患状態を含む)の生物学的特徴を意味する。特定の疾患状態の生物学的属性としては、例えば、その疾患に関係する臨床徴候や診断基準が挙げられる。生物学的状態(疾患状態を含む)の生物学的属性としては、生物学的変数、生物学的パラメータ、生物学的プロセスの測定値が挙げられる。例えば慢性関節リューマチの疾患状態の場合には、生物学的属性として、滑膜過形成、炎症マーカー、軟骨の厚さについての測定値が挙げられる。
【0027】
この明細書では、“参照パターン”という用語は、正常な生物系または病気になった生物系において測定される一連の生物学的属性を意味する。測定は、例えば、正常なヒトまたは動物、病気になったヒトまたは動物に由来する血液サンプル、バイオプシー・サンプル、細胞培養物について行なうことができる。病気になった生物系の具体例としては、慢性関節リューマチの細胞モデルまたはモデル動物が挙げられる。この中には、慢性関節リューマチのヒト患者も含まれる。
【0028】
コンピュータ・システム
図7は、本発明の一実施態様によるコンピュータ・システムのシステム・ブロック・ダイヤグラムである。上記の方法は、このコンピュータ・システムにおいて、ソフトウエア・コードを通じて実行することができる。コンピュータ・システム700は、プロセッサ702と、主メモリ703と、スタティック・メモリ704を備えており、これらがバス706によって互いに接続されている。コンピュータ・システム700はさらに、ビデオ・ディスプレイ・ユニット708(ユーザー・インターフェイスを表示することのできる、例えば液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))を備えている。コンピュータ・システム700は、英数字入力装置710(例えばキーボード)と、カーソル制御装置712(例えばマウス)と、ディスク駆動ユニット714と、信号発生装置716(例えばスピーカ)と、ネットワーク・インターフェイス装置718も備えることができる。ディスク駆動ユニット714は、ソフトウエア720を記憶させることのできるコンピュータ可読媒体715を備えている。このソフトウエアは、主メモリ703および/またはプロセッサ702の中に全体または一部を収容することもできる。ソフトウエア720は、ネットワーク・インターフェイス装置718を通じて送受信することもできる。
【0029】
この明細書では、“コンピュータ可読媒体”という用語は、この明細書に記載した方法を実行するための一連の命令を記憶またはコードすることのできる任意の媒体を意味する。具体的には、光記憶装置、および/または磁気記憶装置、および/またはディスク、搬送波信号などが挙げられる。
【0030】
コンピュータ・モデル
コンピュータ・モデルは、例えばプロトタイプとなる1つの膝関節の生物学的状態によって代表される正常な生物学的状態の表現から始めることができる。正常な生物学的状態は、モデル化する生物学的状態の要素(生物学的変数や生物学的プロセスなど)を定義する一連のユーザー・インターフェイス・スクリーンを通じてモデル化される。生物学的状態に関するこれらの要素は、互いにダイナミックな関係になっている。効果ダイヤグラムは、生物学的状態に関する要素間のダイナミックな関係を表わすことができる。効果ダイヤグラムの一例として、要約ダイヤグラムが挙げられる。この要約ダイヤグラムは、モデルの個々のモジュールへのリンクを提供する。これらモジュールまたは機能領域は、グループ化されて、モデル化している生物学的状態の非常に複雑な生理学を表現する。
【0031】
モジュールは、状態ノードと機能ノードを通じ、生物学的状態の関連する構成要素をモデル化する。ノード間の関係は、矢印記号を用いることによって明らかにされる。したがって、生物学的状態のさまざまな構成要素についての複雑かつダイナミックな数学的関係が、ユーザー・フレンドリーな方法で簡単に表現される。このようにして、正常な生物学的状態を表現することができる。
【0032】
効果ダイヤグラムと要約ダイヤグラム
図1は効果ダイヤグラムの一例であり、RAに冒された関節の生物学的状態に関してモデル化された生物学的プロセスをいくつか示してある。効果ダイヤグラムが組織化されてモジュールまたは機能領域になる。モジュールをグループ化すると、モデル化している生物学的状態の非常に複雑な生理学が表現される。
【0033】
効果ダイヤグラムは、図1の最上部左側に示したように、要約ダイヤグラムを含むことができる。さらに、効果ダイヤグラムは、モデル化している生物学的状態のさまざまな生物学的プロセスに関するモジュールを含むことができる。ユーザーは、効果ダイヤグラムから、関連したユーザー・インターフェイス・スクリーンのうちの任意のものを(例えば関連したユーザー・インターフェイス・スクリーンへのハイパーリンクをクリックすることにより)選択することができる。
【0034】
図2は、図1の効果ダイヤグラムから取り出した要約ダイヤグラムの一例である。この図2に示したように、要約ダイヤグラムは、効果ダイヤグラムの内容の概要を提供することができる。要約ダイヤグラムは、効果ダイヤグラム内のモジュールにリンクしたノードを含むことができる。これらモジュールは、例えばモデル化している生物学的状態の解剖学的要素(例えば軟骨細胞、サイトカイン、その他の可溶性因子)と軟骨代謝に基づいたものにすることができる。
【0035】
図3は、図2の要約ダイヤグラムに示した解剖学的要素の1つについてのモジュール・ダイヤグラムの一例である。より詳細には、図3は、軟骨代謝に関するモジュール・ダイヤグラムを示している。図4は、図3に示したモジュール・ダイヤグラムの一部に関する別の例である。付録AのA-1〜A-35には、図2の要約ダイヤグラムに示した解剖学的要素に関する別のモジュールをユーザー・インターフェイス・スクリーンとして示した具体例がリストにしてある。付録Aには、図1のモジュールがいくつか示してある。
【0036】
図3に示したように、軟骨代謝に関する生物学的変数と生物学的プロセスは、状態ノードと機能ノードを用いて表現される。これらノードの関係は、矢印記号を使用して定義される。状態ノードと機能ノードと矢印記号を用いることにより、生物学的状態のさまざまな構成要素についての複雑かつダイナミックな数学的関係が、ユーザー・フレンドリーな方法で簡単に表現される。このようにして、正常な生物学的状態を表現することができる。ノードと矢印については、これらダイヤグラム表現のもとになっている数学的関係の文脈において、後で説明する。
【0037】
効果ダイヤグラムにおいてコードされて表現された数学的方程式
上述したように、効果ダイヤグラムは、モデル方程式の視覚的表現である。このセクションでは、一連の常微分方程式をダイヤグラムを用いていかにコード化するかを説明する。話の流れからして状態ノードと機能ノードに関する以下の説明は生物学的変数についてのものであるが、その説明は、適切な任意のタイプの変数にも関係があり、生物学的変数に限定されないことに注意されたい。
【0038】
状態ノードと機能ノード
状態ノードと機能ノードは、これらノードが表わす変数の名前とモデル内の位置を示す。矢印と変更因子は、このモデル内の他のノードとの関係を示す。状態ノードと機能ノードは、シミュレーション実験における数値またはその変数を計算するのに用いるパラメータと方程式も含んでいる。コンピュータ・モデルの一実施態様によると、状態ノードと機能ノードは、アメリカ合衆国特許第6,051,029号と、出願されて現在係属中の第09/588,855号に記載されている方法に従って表現される。両方とも「ノード表現とリンク表現を利用してダイナミック・シミュレーション・モデルのためのディスプレイを発生させる方法」という名称であり、その内容が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。状態ノードと機能ノードに関する別の具体例は、以下の部分で説明する。
【0039】
【数1】
Figure 2005501315
状態ノード(効果ダイヤグラム内にあって一重線で囲まれた楕円)は、システム内の変数であって、その値が、システムへの入力が時間経過とともに累積される効果によって決まる変数を表わす。
【0040】
状態ノードの値は、微分方程式によって決まる。1つの状態ノードについてあらかじめ決められているパラメータとしては、この状態ノードの初期値(S0)と状態が挙げられる。半減期を有する状態ノードは、半減期(h)に関する追加パラメータを持っており、半減期シンボル
【数2】
Figure 2005501315
が取り付けられる。
【0041】
【数3】
Figure 2005501315
機能ノード(効果ダイヤグラム内にあって二重線で囲まれた楕円)は、システム内の変数であって、時間軸上の任意の地点におけるその値が、時間軸上のその同じ地点における入力によって決まる変数を表わす。
【0042】
関数ノードは、これら関数ノードへの入力の代数関数によって定義される。関数ノードに関するあらかじめ決められたパラメータとしては、この関数ノードの初期値(F0)と状態が挙げられる。
【0043】
ノードの状態を設定すると、ノードの値がどのようにして決定されるかに影響が及ぶ。状態ノードまたは機能ノードの状態としては、以下の状態が可能である。
・「計算された」 − 値がノードに入力された結果として計算される
・「指定され、固定されている」 − 値が時間経過に関係なく一定に維持される
・「指定されたデータ」 − 値が、あらかじめ決められた複数のデータ点に従って時間経過とともに変化する
【0044】
状態ノードと機能ノードは、エイリアス・ノードとして効果ダイヤグラムに2回以上現われてもよい。エイリアス・ノードは、上記の状態ノードの表示と同様、1個以上の点によって示される。すべてのノードは、そのノードの位置が、矢印と、他のノードと比べてどうなっているかとによっても決まり、ソース・ノード(S)またはターゲット・ノード(T)のいずれかになる。ソース・ノードは矢印の尾部に位置し、ターゲット・ノードは矢印の頭部に位置する。ノードは、活性または不活性である。活性なノードは白である。不活性なノードは、効果ダイヤグラムの背景色と一致する。
【0045】
状態ノード方程式
状態ノードの計算状態としては、「計算された」、「指定され、固定されている」、「指定されたデータ」のいずれかが可能である。
【0046】
「計算された」状態ノード
dS/dt= 矢印項の和 h=0のとき
= (ln 1/2/h)×S(t)+矢印項の和 h>0のとき
ここにSはノードの値であり、tは時間であり、S(t)は時刻tにおけるノードの値であり、hは半減期である。方程式の末尾の3つの点は、方程式に、あらゆる効果矢印から生じてその方程式に入る別の項と、あらゆる変換矢印によって生じてその方程式から出ていく別の項があることを示す。hが0に等しい場合には、半減期の計算は行なわれず、dS/dtは、ノードに付属する矢印によってのみ決定される。
【0047】
「指定され、ロックされている」状態ノード「あらゆるtについてS(t)=S0
【0048】
「指定されたデータ」の状態ノード「S(t)は、状態ノードのために入力される指定されたデータによって決まる。」
【0049】
状態ノードの値は、最小値が0で、最大値が1となるように制限することができる。最小値が0に制限されている場合には、Sが0よりも小さくなることはなく、Sの値が負になったときには0にリセットされる。最大値が1に制限されている場合には、Sが1よりも大きな値になることはなく、1を超えると1にリセットされる。
【0050】
機能ノード方程式
機能ノード方程式は、指定された関数について、機能ノードの中に向かう矢印を有するノードの値(引数)に加え、この関数表現において使用される任意のオブジェクトと効果ダイヤグラムのパラメータの値を評価することによって計算される。指定された関数を見るには、機能ノードのオブジェクト・ウインドウの中にある評価タブをクリックする。
【0051】
効果ダイヤグラム − 矢印
矢印は、ソース・ノードをターゲット・ノードとリンクしており、これらノード間の数学的関係を表現する。矢印には、矢印の活性を示す円を取り付けることができる。円内の注釈へのキーは、効果ダイヤグラム内の各モジュールの上方左隅に位置している。矢印の頭部が黒い場合には、効果はプラスである。矢印の頭部が白い場合には、効果はマイナスである。
【0052】
矢印のタイプ
【数4】
Figure 2005501315
効果矢印(効果ダイヤグラムにある細い矢印)は、ソース状態ノードまたは機能状態ノードをターゲット状態ノードにリンクする。効果矢印はターゲット・ノードを変化させるが、ソース・ノードには効果を及ぼさない。効果矢印には、矢印の活性を示す円が取り付けられている。
【0053】
【数5】
Figure 2005501315
変換矢印(効果ダイヤグラムにある太い矢印)は、状態ノードの内容が行き先の状態ノードの内容にどのように変換されるかを表わす。変換矢印には、矢印の活性を示す円が取り付けられている。変換は、どちらか一方向に行なうことが可能である。
【0054】
【数6】
Figure 2005501315
引数矢印は、どのノードが機能ノードの入力引数であるかを示す。引数矢印はパラメータや方程式を含まず、活性を示す円も付いていない。
【0055】
矢印の特徴
効果矢印または変換矢印は、一定、比例、相互作用のいずれかが可能である。
【0056】
【数7】
Figure 2005501315
一定矢印は、矢印の軸が途切れている。この矢印は、ターゲットの変更速度がソース・ノードおよびターゲット・ノードの値と独立であるときに使用される。
【0057】
【数8】
Figure 2005501315
比例矢印は、軸が途切れていない実線であり、変化速度がソース・ノードの値に依存するとき、または変化速度がソース・ノードの値の関数であるときに使用される。
【0058】
【数9】
Figure 2005501315
相互作用矢印は、活性を示す円からターゲット・ノードへのループを有する。この矢印は、ターゲットの変化速度が、ソース・ノードとターゲット・ノードの両方に依存すること、またはその両方の関数であることを示す。
【0059】
矢印の特性は、オブジェクト・ウインドウ(図示せず)に表示することができる。このウインドウは、矢印に関する注と引数を表示するためのタブも備えることができる。オブジェクト・ウインドウで注が利用できる場合には、矢印に赤い点(・)が付される。
【0060】
矢印方程式:効果矢印
比例効果矢印:ターゲットの変化速度がソース・ノードの値に依存する。
dT/dt=C・S(t)a+...
ここにTはターゲット・ノードであり、Cは係数であり、Sはソース・ノードであり、aは指数である。
【0061】
一定効果矢印:ターゲットの変化速度が一定である。
dT/dt=K+...
ここにTはターゲット・ノードであり、Kは定数である。
【0062】
相互作用効果矢印:ターゲットの変化速度が、ソース・ノードの値とターゲット・ノードの値の両方に依存する。
dT/dt=C(S(t)a-T(t)b)+...
ここにTはターゲット・ノードであり、Sはソース・ノードであり、aとbは指数である。この方程式は、オブジェクト・ウインドウ内で選択した操作が何であるかによって変化する可能性がある。利用可能な操作は、S+T、S-T、S*T、T/S、S/Tである。
【0063】
矢印方程式:変換矢印
比例変換矢印:ターゲットの変化速度がソース・ノードの値に依存する。
dT/dt=C・R・S(t) a +...
dS/dt=-C・S(t) a +...
ここにTはターゲット・ノードであり、Sはソース・ノードであり、Cは係数であり、Rは変換比であり、aは指数である。
【0064】
一定変換矢印:ターゲットとソースの変化速度は一定であるため、ターゲットの増加がソースの減少に対応する。
dT/dt=K・R+...
dS/dt=-K+...
ここにTはターゲット・ノードであり、Sはソース・ノードであり、Kは定数であり、Rは変換比である。
【0065】
相互作用変換矢印:ターゲットとソースの変化速度がソース・ノードの値とターゲット・ノードの値の両方に依存しており、ターゲットの増加がソースの減少に対応するようになっている。
dT/dt=R・C(S(t)a+T(t)b)+...
dS/dt=-C(S(t) a -T(t) b)+...
ここにTはターゲット・ノードであり、Sはソース・ノードであり、aとbは指数であり、Rは変換比である。この方程式は、オブジェクト・ウインドウ内で選択した操作が何であるかによって変化する可能性がある。利用可能な操作は、S+T、S-T、S*T、T/S、S/Tである。
【0066】
効果ダイヤグラム − 変更因子
変更因子は、ノードが、そのノードが接続されている矢印に及ぼす効果を示す。変更のタイプは、箱の中の記号によって定性的に示される。例えばノードは、矢印の変化を可能にしたり
【数10】
Figure 2005501315
、ブロックしたり
【数11】
Figure 2005501315
、調節したり
【数12】
Figure 2005501315
、抑制したり
【数13】
Figure 2005501315
、促進したり
【数14】
Figure 2005501315
する。
【0067】
変更因子の注釈へのキーは、各モジュールの上方左隅に位置している。
【0068】
変更因子の特性は、オブジェクト・ウインドウ内に表示することができる。ウインドウは、変更因子に関する注、引数、指定されたデータを表示するためのタブを含むこともできる。オブジェクト・ウインドウで注が利用できる場合には、変更因子に赤い点(・)が付される。
【0069】
効果矢印変更因子方程式:dT/dt=M・f(u/N)・矢印項+...
ここにTはターゲット・ノードであり、Mは積定数であり、Nは規格化定数であり、f( )は関数(一次関数であるか、あるいは変換曲線によって指定される関数)であり、矢印項は付属する矢印からの方程式の一部である。
【0070】
変更因子効果
デフォルトにより、変換矢印変更因子は、ソース矢印項とターゲット矢印項の両方に影響を及ぼす。しかし場合によっては、一方性変更因子を用いる。そのような変更因子は、ソース矢印項とターゲット矢印項のいずれかに影響を及ぼし、両方の矢印項に影響を及ぼすことはない。
【0071】
変換矢印ソース単独変更因子方程式:
dS/dt=M・f(u/N)・矢印項+付属する他の矢印項
【0072】
変換矢印ターゲット単独変更因子方程式:
dT/dt=M・f(u/N)・矢印項+付属する他の矢印項
【0073】
ソースとターゲットの変更因子に関する方程式では、ソース単独方程式とターゲット単独方程式の両方が用いられる。
【0074】
積演算変更因子と和演算変更因子が組み合わさった場合には、効果に順序がつく。例えば以下の変更因子:
a1、a2:和演算、ソースとターゲット
m1、m2:積演算、ソースとターゲット
A1、A2:和演算、ターゲットのみ
M1、M2:積演算、ターゲットのみ
が矢印上に存在している場合には、速度は、
ターゲット・ノード:(a1+a2+A1+A2)*(m1*m2)*(M1*M2)
ソース・ノード:(a1+a2)*(m1*m2)
によって変化する。
【0075】
本発明の実施態様
図9は、本発明の一実施態様に従って動物の関節のコンピュータ・モデルを開発する方法のフローチャートである。ステップ910において、関節の生物学的状態に関するデータを同定する。ステップ920において、このデータに関する生物学的プロセスを同定する。これら生物学的プロセスは、関節の生物学的状態の少なくとも一部を示している。ステップ930において、これら生物学的プロセスを組み合わせて関節の生物学的状態のシミュレーションを形成する。
【0076】
動物の関節のコンピュータ・モデルを開発するこの方法は、図9に示したように、コンピュータ・モデルを検証するためのオプションのステップ940、950、960、970をさらに含むことができる。検証プロセスのステップ940において、関節の生物学的状態に関する生物学的属性のシミュレーションが生成される。ステップ950において、この生物学的属性のシミュレーションが、関節の参照パターン内の対応する生物学的属性と比較される。ステップ960と970において、コンピュータ・モデルの有効性が確認される。ステップ960において、生物学的属性のシミュレーションが関節の参照パターンに関する生物学的属性と実質的に整合しているかどうかを明らかにする。生物学的属性のシミュレーションが、関節の参照パターンに関する生物学的属性と実質的に整合している場合には、ステップ970において、そのコンピュータ・モデルが動物の関節の有効なコンピュータ・モデルであることを確認する。
【0077】
図10は、本発明の別の実施態様に従って動物の関節のコンピュータ・モデルを開発する方法のためのフローチャートである。ステップ1010において、関節の生物学的状態に関するデータを同定する。ステップ1020において、このデータに関する生物学的プロセスを同定する。これら生物学的プロセスは、関節の生物学的状態の少なくとも一部を示している。ステップ1030において、これら生物学的プロセスからの第1の生物学的プロセスに関する複数の生物学的変数の間に第1の数学的関係を形成する。ステップ1040において、第1の生物学的プロセスと、これら生物学的プロセスに関する第2の生物学的プロセスとに関する複数の生物学的変数の間に第2の数学的関係を形成する。関節の生物学的状態としては、例えば、正常な関節の状態、または病気になった関節の状態が可能である。
【0078】
ステップ1050、1060、1070はオプションであり、関節の参照パターンに関する少なくとも1つの生物学的属性と実質的に整合性のある生物学的属性のシミュレーションを生成させるために実行することができる。条件ステップ1050では、1つの生物学的属性のシミュレーションまたは一連の生物学的属性のシミュレーションを生成させるべきかどうかの判断がなされる。1つの生物学的属性のシミュレーションを生成させるべき場合には、ステップ1060へと進む。ステップ1060では、第1の数学的関係と第2の数学的関係におけるパラメータ変化の集合が生成される。ステップ1070では、このパラメータ変化の集合からの少なくとも1つのパラメータ変化に基づき、1つの生物学的属性のシミュレーションが生成される。
【0079】
ステップ1080、1090、1100、1110、1120はオプションであり、病気の関節の慢性的進行(例えば健康な状態から病気の状態へ)の表現を得るために実行することができる。ステップ1080では、生物学的変数またはパラメータを変換すべきかどうかが判断される。生物学的変数を変換すべき場合には、ステップ1110と1120に進む。ステップ1110では、第1の生物学的変数を変換し、値が時間経過とともに変化する変換された生物学的変数にする。この第1の生物学的変数は、ステップ1030と1040において形成された第1の数学的関係と第2の数学的関係のうちの少なくとも一方と関係している。ステップ1120において、変換された生物学的変数に基づき、一連の生物学的属性のシミュレーションが生成される。一連の生物学的属性のシミュレーションは、関節の参照パターンに関する対応する生物学的属性と実質的に整合している。一連の生物学的属性のシミュレーションは、関節の参照パターンにおける対応する生物学的属性の慢性的進行を表現する。1つのパラメータを変換して一連の生物学的属性のシミュレーションを得る場合には、ステップ1090と1100に進む。ステップ1090では、1つのパラメータを変換し、値が時間経過とともに変化する変換された生物学的変数にする。このパラメータは、ステップ1030と1040において形成された第1の数学的関係と第2の数学的関係の少なくとも一方と関係している。ステップ1100において、変換された生物学的変数に基づき、一連の生物学的属性のシミュレーションを生成する。
【0080】
本発明の別の実施態様は、動物の関節の生物学的状態に関するコンピュータ・モデルである。このコンピュータ・モデルは、関節の生物学的状態に関する生物学的プロセスを規定するコードと;生物学的プロセスに関する生物学的変数同士の相互作用に関する数学的関係を規定するコードを含んでいる。これら生物学的プロセスからの少なくとも2つの生物学的プロセスが、この数学的関係と関係している。生物学的プロセスを規定するコードと、数学的関係を規定するコードを組み合わせると、関節の生物学的状態のシミュレーションが規定される。このコンピュータ・モデルは、2つの画分を規定するコードをさらに含んでいる。その1つの画分は、滑膜組織に関する生物学的プロセスを含んでおり、第2の画分は、軟骨組織に関する生物学的プロセスを含んでいる。さらに、このコンピュータ・モデルは、これら2つの画分の間の相互作用を規定するコードを含むことができる。
【0081】
本発明のさらに別の実施態様は、コンピュータが実行可能なソフトウエア・コードである。このコードは、動物の関節の生物学的状態に関する生物学的プロセスを規定するコードからなり、その中には、生物学的プロセスに関する数学的関係を規定するコードが含まれる。このコードによって規定される生物学的プロセスは、動物の関節の生物学的状態と関係している。
【0082】
コンピュータが実行可能なこのソフトウエア・コードは、2つの画分を規定するコードをさらに含むことができる。その場合、1つの画分は、滑膜組織に関する生物学的プロセスを含んでおり、第2の画分は、軟骨組織に関する生物学的プロセスを含んでいる。さらに、コンピュータが実行可能なこのソフトウエア・コードは、これら2つの画分の間の相互作用を規定するコードを含むことができる。
【0083】
本発明の別の実施態様は、動物の病気になった関節のコンピュータ・モデルを開発する方法である。この方法は、生物学的状態における変化を病気になった関節の生物学的属性と関係づけるデータに基づいた個々の生物学的プロセスが集まった複数の生物学的プロセスを規定するため、ユーザーが選択した指示を受け取るステップと;組み合わせた生物学的プロセスに基づき、病気になった関節の少なくとも1つの生物学的属性に関する生物学的属性のシミュレーションを生成するステップと;この生物学的属性のシミュレーションと、病気になった関節の参照パターンに関する対応する生物学的属性の比較結果に基づき、コンピュータ・モデルの有効性を評価するステップを含んでいる。
【0084】
本発明の別の実施態様は、動物の関節のコンピュータ・モデルである。このコンピュータ・モデルは、コードを記憶するコンピュータ可読メモリと、このコンピュータ可読メモリに接続されていてこのコードを実行できる構成になったプロセッサを備えている。メモリは、関節の生物学的状態に関する生物学的プロセスを規定するコードと、生物学的プロセスに関する生物学的変数同士の相互作用に関する数学的関係を規定するコードを含んでいる。コードによって規定される少なくとも2つの生物学的プロセスが、この数学的関係と関係している。メモリに記憶されていて生物学的プロセスを規定するコードと、数学的関係を規定するコードを組み合わせることにより、関節の生物学的状態のシミュレーションが規定される。
【0085】
本発明には、動物の関節の解析モデルを開発する方法も含まれる。この方法は、関節の生物学的状態に関するデータを同定するステップと;このデータに関係していて、関節の生物学的状態の少なくとも一部を明らかにする複数の生物学的プロセスを同定するステップと;これら複数の生物学的プロセスを組み合わせて関節の生物学的状態の解析的表現を形成するステップとを含んでいる。一実施態様では、この解析的モデルにおいて、関節の生物学的状態の解析的表現をコンピュータ・システムの助けなしに実現することができる。
【0086】
モデル構成要素の実施例:T細胞のライフサイクル
以下の説明では、上記のコンピュータ・モデルのモジュールを開発する方法の一例を示す。上述のように、生物学的状態のさまざまな要素は、効果ダイヤグラムに示した構成要素によって表現される。これらの構成要素は、生物学的状態の要素を規定している数学的関係を表わす状態ノードと機能ノードによって示される。一般に、これら数学的関係は、関係する生物学的変数と生物学的プロセスに関する一般に利用可能な適切な情報の助けを借りて求められる。滑膜におけるT細胞のライフサイクルに関するモジュール・ダイヤグラムの裏に隠れている数学的関係を求める方法を、一例としてここに説明する。
【0087】
図8は、滑膜におけるT細胞のライフサイクルに関するモジュール・ダイヤグラムの一例である。このモジュール・ダイヤグラムは、説明のために付録AのA-31に示したモジュール・ダイヤグラムを構成し直したものであることに注意されたい。
【0088】
図8は、滑膜におけるT細胞のライフサイクルをモデル化するための生理学的構成要素を示しており、その中には、ノード800(滑膜組織の参照体積に含まれる血管の体積);ノード802(循環しているCD4+T細胞の密度);ノード804(T細胞の補充速度);ノード806(Th1の増殖);ノード808(Th1の増殖速度定数);ノード810(生きている滑膜のCD4+T細胞);ノード812(Th1のアポトーシス);ノード814(T細胞のアポトーシス速度);ノード816(アポトーシスCD4+T細胞)が含まれている。
【0089】
RAに冒された関節では、CD4+T細胞が滑膜に蓄積し、その場所で、可溶性メディエータおよび細胞-細胞接触を通じ、他のタイプの細胞と相互作用する。この相互作用は、関与するCD4+T細胞の特定の表現型と数によって決まる。図8と以下の説明は、滑膜組織の参照体積に存在するTh1(タイプ1のヘルパーT細胞)CD4+T細胞の数の計算にだけ関するものである。モデル化するT細胞の代謝回転の主要なプロセスは、(リンパ系または滑液による)T細胞の補充、増殖、アポトーシス、排出である。モデルでは、これらプロセスの数値的バランスによって生きている滑膜のCD4+T細胞の数が決まり、そのCD4+T細胞が、モデルの別の部分におけるT細胞の正味の活性を変化させる。これらプロセスのいくつかとT細胞の役割は、BuddとFortner、『リューマチ学に関するケリーの教科書』、Ruddy他編、113〜129ページ、2001年にまとめられている。
【0090】
図8は、生きている滑膜CD4+T細胞とアポトーシス滑膜CD4+T細胞のポピュレーションを追跡するのに用いられる微分方程式群の図式表現である。これら微分方程式は、補充速度、増殖速度、アポトーシス速度に関する計算に依存するため、これらの速度についてまず最初に記述した後、ポピュレーションのダイナミクスをつかさどる微分方程式を記述する。
【0091】
CD4+T細胞が滑膜組織の参照体積に流入する正味の流速を決めるT細胞の補充速度は、循環しているCD4+T細胞の密度と、滑膜組織の参照体積に含まれる血管の体積とによって以下のように決まる。
T細胞の補充速度=参照速度*血管の体積*循環しているCD4+T細胞の密度
ノード804に関する数学的関係は、上記のT細胞の補充速度に関する方程式に対応している。血管の体積は血管の表面積に比例すると仮定しているため、関数評価においては血管の体積が表面積で置き換えられる。“参照速度”というパラメータは、1時間当たりに補充される循環CD4+T細胞を表わす。“参照速度”というパラメータには、内皮接着分子、T細胞の表面分子、走化性因子の発現による補充の変更などの効果が含まれる。循環しているCD4+T細胞の密度は、約1.25×106細胞/mlと見積もることができる(Gallin、『ハリソン内科学』、Isselbacher他編、第59章、529ページ、1994年;Janeway他、『免疫生物学』、付録I、636ページ、2001年)。血管の体積は、モデルの別の場所において、血管の密度(一実施態様では5%。Gaffney他、Ann. Rheum. Dis.、第57巻、152〜157ページ、1998年)と滑膜組織の参照体積とから決まる。別の実施態様では、“参照速度”というパラメータの値は、内皮接着分子についてのモデル化された表現と、走化性因子のモデル化された効果と、他のプロセスとに基づいて計算することができよう。本発明の一実施態様において、マクロファージの補充に関してこれを実施した。
【0092】
T細胞の増殖は、特定の時刻に有糸分裂を開始する一部の細胞によって決まる。これはモデルの別の場所において決まり、ノード806(Th1の増殖)によって表現されている。次に、T細胞の増殖速度定数を以下の関数:
T細胞の増殖速度定数=Th1増殖*ln(2)/サイクル時間
によって決める。ここに、“サイクル時間”というパラメータは、すべての細胞が増殖すると仮定したときにポピュレーションが2倍になる時間(単位は時間)であり、ノード806(Th1の増殖)は、細胞のほんの一部の増殖だけに関係する。ノード808に関する数学的関係は、上記の増殖速度定数に関する方程式に対応している。
【0093】
T細胞のアポトーシスは、所定の時刻にアポトーシス・カスケードに入る一部の細胞によって決まる。これはモデルの別の場所において決まり、ノード812(Th1のアポトーシス)によって表現されている。次に、T細胞のアポトーシス速度を以下の関数:
T細胞のアポトーシス速度=Th1のアポトーシス*アポトーシス開始の最大速度
によって決める。ここに、“アポトーシス開始の最大速度”というパラメータは、すべての細胞が協調してアポトーシスを開始する場合にアポトーシスに入る最大速度(単位は1/時間)であり、ノード812(Th1のアポトーシス)は、細胞のほんの一部のアポトーシスだけに関係する。ノード814に関する数学的関係は、上記のアポトーシス速度に関する方程式に対応している。
【0094】
生きているCD4+T細胞(Tv)とアポトーシスCD4+T細胞(Ta)のポピュレーションは、T細胞の補充速度(r)、T細胞の増殖速度定数(p)、T細胞のアポトーシス速度(a)から得られた数値を用いることによって決まる。生きている細胞のポピュレーションは、所定の速度で補充することによって制御されると同時に、生きている細胞のポピュレーションと増殖速度定数の積に等しい速度で増殖する。同様に、生きている細胞は、生きている細胞のポピュレーションとアポトーシス速度定数の積に比例した速度でアポトーシスに入ると同時に、半減期tdによって特徴づけられる流出速度で滑膜から出ていく。その様子は、以下の微分方程式:
dTv/dt=p*Tv-a*Tv-ln(2)/td*Tv+r
で表わされる。ノード810に関する数学的関係は、このdTv/dtに関する方程式に対応している。アポトーシスT細胞のポピュレーションは、生きている細胞が生きている細胞のポピュレーションとアポトーシス速度定数の積に比例した速度でアポトーシスに入ることによって制御されると同時に、半減期t1/2での崩壊によって特徴づけられる速度での貪食と分解により減少する。その様子は以下の微分方程式:
dTa/dt=a*Tv-ln(2)/t1/2*Ta
で表わされる。ノード816に関する数学的関係は、このdTa/dtに関する方程式に対応している。これら方程式が、生きている細胞とアポトーシス細胞のポピュレーション・ダイナミクスを明らかにする。
【0095】
このモジュール内のさまざまな関数で用いられるパラメータの値は、以下に記載する実験データ、臨床データ、ガイドラインと一致するように決定した。一実施態様では、これらガイドラインは以下のような制約として表現される。
1.ポピュレーション(Tv、Ta)は、対照となる未治療の患者においては時間が経過しても一定である。
2.アポトーシスT細胞の割合(Ta/(Ta+Tb))は1%未満である(Firestein他、J. Clin. Invest.、第96巻、1631〜1638ページ、1995年;Ceponis、Rheumatlogy、第38巻、431〜440ページ、1999年;Salmon、J. Clin. Invest.、第99巻、439〜446ページ、1997年)。
3.生きているT細胞が2倍になる時間は24時間以下である(実験室における知見)。
4.アポトーシスの開始に関する最大時定数は、24時間以下である(実験室における知見)。
5.アポトーシス細胞は、アポトーシス・カスケードに入ってから4〜8時間以内に貪食される。
これらの制約を満たすよう、一実施態様では、パラメータを以下のように設定する:補充の“参照速度”=0.4/時間;“サイクル時間”=24時間;“アポトーシスの開始に関する最大速度”=0.1/時間(24時間で90%が開始);生きている細胞の流出半減期(td)=672時間(4週間);アポトーシス細胞の消失半減期(t1/2)=6時間。これらのパラメータ値は、公開されている文献には特に報告されていないが、公開されている文献、または臨床試験や実験室での実験から得られる上記のような制約を満たすように決定された。これらのパラメータ値は、必ずしもこれらの制約を満たす必要はなく、制約が同じである別の実施態様では変えてもよいし、異なる制約の別の実施態様において変えることもできる。それは、例えば時間経過とともに滑膜T細胞の蓄積が増えている患者や、アポトーシスになるT細胞の割合が異なる患者を記述する場合である。
【0096】
滑膜T細胞モデルの構成要素のライフサイクルに関するこの実施例から一般的にわかるように、効果ダイヤグラムの構成要素は、モデル化しようとしている生物学的状態の要素を規定する数学的関係を表わしている。数学的関係は、関係する生物学的変数と生物学的プロセスに関する一般に利用可能な適切な情報の助けを借りて開発することができる。言い換えるならば、効果ダイヤグラムは、所定のモデルの構成要素内でモデル化される数学的関係のタイプを示している。そのため、一般に利用可能な情報を効果ダイヤグラムの構造と適合した形態にすることができる。このようにすると、モデルの構造を開発することができる。
【0097】
病気になった関節の生物学的属性のシミュレーション
モデルには、関節の所定の状態を表わすために選択した一連のベースライン・パラメータが備わっている。一実施態様では、ベースライン・パラメータを選択して確立したRAを表わす。モデルのパラメータを変更すると、疾患がない状態から、軽度の疾患も含め、重い疾患まで、同じ関節疾患のさまざまな状態を表わすことができる。モデルのパラメータを変更し、疾患に関する生物学的プロセスのさまざまなプロファイルを表わせるようにすることもできる。このことを利用すると、同じ疾患に関して異なるタイプの仮想的な患者を作り出して研究することや、さまざまな疾患のモデルを作り出して比較することができる。例えば適切なモデルのパラメータを変更してマクロファージのアポトーシスが減るようにすると、より重症タイプのRA患者になる。
【0098】
コンピュータ・モデルは、関節疾患の発症を表現することができる。すなわち、健康な関節から病気になった関節への慢性的進行のすべてまたは一部と、程度が異なる疾患状態相互間での慢性的進行を表現することができる。例えばコンピュータ・モデルに疾患の進行が含まれるようにするための1つの手段として、以前に特定の値に固定した1つ以上の生物学的変数を、時間経過とともに変化すると同時に、以前に含まれていたいくつかの生物学的プロセスまたは新しいいくつかの生物学的プロセスに依存する生物学的変数で置き換える操作を挙げることができる。例えば一実施態様では、滑膜の樹状突起細胞の数を固定値にすることができる。この値が、特定の疾患状態に関する樹状突起細胞の数を表わしている。この場合に疾患の進行を表現するには、樹状突起細胞の流入、流出、アポトーシスなどの新しいプロセスを付加し、これらのプロセスに関して樹状突起細胞の数を自由に変化させるとよい。疾患の進行を含めるための別の手段は、1つのパラメータを時間の直接的な関数で置き換えること、他の生物学的変数(すなわち生物学的プロセス)の代数関数で置き換えること、常微分方程式などの力学系方程式で置き換えることであろう。
【0099】
例えば一実施態様では、ある特定の病期における軟骨の分解断片に対するT細胞の反応性を指定している以前に固定したパラメータを、時間の直接的な関数、または他の生物学的変数で置き換え、RAの原因である自己免疫の展開の潜在的な役割を表現することができる。病気になった関節の病状進行を表現するコンピュータ・モデルを利用すると、例えばRAの原因を研究したり、継続治療を必要とする一時的な寛解を実現するのではなく疾患を治癒させる方法を研究したりすることができる。また、関節における疾患の進行を予防する、あるいは逆転させるための薬物治療も研究することができる。
【0100】
数学的方程式の数値解とコンピュータ・モデルの出力
上述のように効果ダイヤグラムによって一連の微分方程式が決まるため、生物学的変数の初期値が指定されると標準的なアルゴリズムを用いて方程式をコンピュータで数値的に解くことができる。例えばWilliam H. Press他、『Cにおける数値的方法:科学計算の技法』、第2版(1993年1月)、ケンブリッジ大学出版を参照のこと。T細胞のライフサイクルに関する上記の実施例に示したように、方程式を導き、初期条件を取得し、パラメータの値を一般文献から評価することができる。同様に、他の初期条件とパラメータ値を異なる条件下で評価し、それを用いて生物学的状態の時間変化をシミュレーションすることができる。
【0101】
刺激と環境因子のほか、固有の生物学的特性をパラメータを用いて指定することもできることに注意されたい。例えばモデル・パラメータを選択してインビボでの実験プロトコル(治療薬の投与を含む)をシミュレーションすることができる。さらに、モデル・パラメータを選択してさまざまな環境変化(加齢、栄養、肉体的活動、運動、ストレス、酸素付加、血液の細胞組成など)を表わすこともできる。
【0102】
モデルにおけるあらゆる生物学的変数の時間変化は、例えば数値シミュレーションの結果として得ることができる。したがってコンピュータ・モデルは、例えば任意の生物学的変数を出力すること、または1つ以上の生物学的変数の関数を出力することができる。出力は、コンピュータ・モデルを用いて実行したシミュレーションの結果を解釈するのに役立つ。コンピュータ・モデルを用いて臨床測定(例えば活性化されたマクロファージの割合、滑膜のバイオプシーから得られたアポトーシスT細胞の割合)と治療に対する応答をシミュレーションできるため、モデルの出力をこのような実験および臨床検査の結果と直接比較することができる。
【0103】
モデルは、多数の出力が計算されるように構成することができる。出力としては、例えば、滑膜と軟骨におけるメディエータ(TNF-α、IL-1、IL-6、IFN-γ、PGE-2、MMP-1、MMP-3など)の濃度;内皮接着分子(例えばICAM、VCAM、E-セレクチン)の発現;細胞(マクロファージ、T細胞、線維芽細胞様滑膜細胞)の数;軟骨細胞の数;アポトーシス細胞または活性化された細胞の割合;滑膜組織の体積、軟骨の厚さ、軟骨の分解速度;マトリックス組成物(例えばコラーゲンII、アグレカン)の濃度などが挙げられる。出力は、一般に用いられているいくつかの単位で提示することもできる。
【0104】
コンピュータ・モデルでは治療法をシミュレーションできることに注意されたい。例えば治療法を静的な方法でモデル化することができる。この場合には、適切なタイプの細胞またはメディエータのパラメータ集合を変更することにより、そのタイプの細胞またはメディエータに対する治療効果が表現される。別の方法として、治療法を動的な方法でモデル化することもできる。この場合には、ユーザーが時間変化する方法(および/または周期的な方法)を指定して治療薬を供給できるようにすることができる。そのためには、コンピュータ・モデルに、さまざまなクラスの治療薬の表現(例えば可溶性TNF受容体、可溶性抗TNF抗体、IL-1受容体アンタゴニスト、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、疾患を変化させる他の薬剤(メトトレキサートなど))と、動的な方法においてこれらの治療薬がさまざまなタイプの細胞またはメディエータとどのように相互作用するかを含めるとよい。
【0105】
要するに研究者は、コンピュータ・モデルにより、例えば以下のことができるようになる。すなわち、(1)病気になった関節のダイナミクスをシミュレーションすること、(2)カギとなる生物学的プロセスと、これら生物学的プロセスの内部および相互間のフィードバックを可視化すること、(3)関節疾患の病理生理学をよりよく理解すること、(4)病気になった関節と正常な関節を調べ、仮説を検証すること、(5)潜在的な治療ターゲットを同定し、優先順位をつけること、(6)患者のタイプと、さまざまな介入への応答を明らかにすること、(7)関節疾患に関する知見とデータを組織化すること、が可能になる。
【0106】
コンピュータ・モデルの検証
一般に、コンピュータ・モデルは、そのモデルが表わす生物学的状態とできるだけ同じように振る舞う必要がある。したがってコンピュータ・モデルの応答は、生物学的測定と生物学的応答に関して検証することができる。コンピュータ・モデルは、例えばモデル化している生物学的状態の参照パターンを用いて得られるインビトロのデータまたはインビボのデータに関して検証することができる。したがって検証には、インビトロのデータ(例えばマクロファージがある種の刺激に対する応答として合成するTNF-αに関するデータ)と比較するため、モデルの他の構成要素からの入力なしに所定のタイプの細胞の振る舞いをシミュレーションする操作が含まれる。検証にはさらに、臨床測定の結果(例えば滑膜内の細胞の組織学的マーカー、滑液メディエータの濃度)と比較するための未治療のRA患者のシミュレーションが含むことができる。検証には、対応する臨床試験からの測定結果(例えば滑膜内の細胞の組織学的マーカー、滑液メディエータの濃度、分解・侵食スコア)と比較するため、治療に対するモデルの応答に関するシミュレーションも含めることができる。例えばTNF-αブロッキング療法における測定結果(滑膜における組織学的マーカーの応答に関するデータが含まれている可能性がある)を、モデルの適切な生物学的変数がこの療法に関するプロトコルのシミュレーションに対してどのように応答したかの結果と比較することができる。この比較結果を既知のダイナミックな制約と組み合わせると、モデルの一部を検証すること、あるいはユーザーにモデル内での数学的関係の変化に目を向けさせることができる。その結果、モデルの全体としての忠実さが改善される。
【0107】
コンピュータ・モデルを検証する方法は、2001年5月17日に出願番号第60/292,175号として出願されて係属中の『コンピュータに基づくモデルの開発、分析、検証』に記載されている。この出願は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【0108】
モデルの構成要素と挙動
上述のように、関節のコンピュータ・モデルは、相互に関係した多数の構成要素を含むことができる。その構成要素のそれぞれが、関節内部の1つの要素を表わしている。コンピュータ・モデルの一実施態様には、軟骨の代謝、滑膜マクロファージ、マクロファージの追跡、滑膜線維芽細胞、T細胞、抗原の提示に関する生物学的プロセスが含まれる。これら構成要素のいくつかに関する1つ以上のモジュール・ダイヤグラムが、参考として付録Aに含まれている。これら構成要素のいくつかについては、後で詳しく説明する。
【0109】
以上に加え、炎症と軟骨分解に対する標準的な治療的介入の効果をコンピュータ・モデルにおいて実現することができる。このような治療的介入の具体例についても以下に説明する。
【0110】
画分化
一実施態様では、関節のコンピュータ・モデルは、異なる2つの組織画分、すなわち滑膜組織と軟骨組織を表わす。これら2つの画分は、さまざまな方法で互いに相互作用することができる。相互作用する1つの方法は、各画分に現われるさまざまなタイプの細胞から放出された可溶性メディエータが1つの画分から別の画分へと流入するというものである。2つの画分を相互作用させる別の方法は、軟骨マトリックスから放出された分解生成物を滑膜組織に流入させるというものである。すると滑膜組織に存在する細胞の細胞プロセスを変化させることができる。
【0111】
しかしモデルは必ずしもこれら2つの画分に限定されない。モデルを拡張し、離れた部位(例えば関節外組織や全器官)で起こる疾患関連プロセスの数学的モデルが含まれるようにすることができる。このような細胞外画分の具体例としては、骨、骨髄、胸腺、血液、リンパ節、精巣、胃腸管、心臓などが挙げられる。さらに、モデルは、関節の独立した下位画分と、そのような下位画分の生成および調節に関する細胞プロセスも含むことができる。そのような特別な下位画分としては、血管組織、滑液、異所性リンパ節構造、感覚神経繊維、自律神経繊維などが挙げられる。
【0112】
軟骨画分
モデルの軟骨画分は、健康状態、疾患状態、治療中というそれぞれの場合について軟骨の代謝と軟骨細胞の密度を追跡することができる。一実施態様では、軟骨画分は、軟骨-パンヌス接合の位置における軟骨の均一な区画としてモデル化することができる。軟骨画分は、軟骨組織のライフサイクル、軟骨組織のメディエータ、マトリックスの合成に関する生物学的プロセスと、マトリックスの合成および分解に関わるさまざまなプロセスとを含むことができる。コンピュータ・モデルは、軟骨の分解に影響を及ぼす因子(例えば、サイトカイン(IL-1、TNF-α、IL-6など);増殖因子(IGF、PDGF、TGF-βなど);マトリックスの構成要素(コラーゲンII、アグレカンなど);プロテアーゼ(MMP-1、MMP-3、MMP-13など)に対する軟骨細胞の応答や、これら因子の産生を表わすことができる。得られた条件により、軟骨マトリックスに関する関連プロセスの正味の効果と、対応する分解速度を明らかにすることができる。一実施態様では、軟骨画分をモデル化するにあたり、軟骨画分が滑膜画分からのメディエータの流入の影響を受け、その結果として滑膜画分が軟骨マトリックスの構成要素とメディエータの流出を通じて影響を受けるようにする。
【0113】
軟骨細胞のライフサイクルは、生きている軟骨細胞とアポトーシス軟骨細胞の密度を追跡することにより、軟骨細胞の増殖と軟骨細胞のアポトーシスの関数としてモデル化することができる。軟骨細胞のメディエータ合成は、それぞれのタンパク質について、生きている軟骨細胞の密度およびタンパク質合成の変化(ベースラインの合成(潜在的にゼロ)や、モデルにおいて表現されるメディエータによる促進と抑制による変化が含まれる)の関数として、別々に実現することができる。合成される複数のメディエータの減少は、軟骨画分におけるこれらメディエータの個々の半減期を通じてモデル化することができる。メディエータ同士の相互作用もモデル化することができる。モデル化が可能な相互作用としては、TNF-αに対する可溶性TNF受容体(p55とp75)の結合、プロテイナーゼに対するTIMPの結合、IL-1RaによるIL-1の効果の抑制などが挙げられる。要するに、軟骨細胞の機能は、オートクライン効果と、他のモデル画分からのメディエータの流入とによる変化を記述することによってモデル化される。
【0114】
一実施態様では、モデルの軟骨画分は、軟骨マトリックスにおけるコラーゲンとプロテオグリカンの代謝回転を含んでおり、コラーゲンIIとアグレカンを対応する代表的なマトリックス構成要素として利用している。軟骨細胞によるこれらマトリックス構成要素の合成は、この実施態様では、それぞれのタンパク質について、生きている軟骨細胞の密度、ベースラインの合成、モデルにおいて表現されるメディエータによる促進と抑制の関数として、別々に実現される。
【0115】
マトリックス構成要素のプロセシングと、これらマトリックス構成要素の軟骨マトリックスへの組み込みもモデル化することができる。コラーゲンIIの場合には、モデル化プロセスは、テロペプチドの開裂と代謝回転、細胞周囲での分解、軟骨マトリックスへの組み込み、組み込まれたコラーゲンの分解を、プロテイナーゼの濃度の関数として含むことができる。アグレカンの場合には、モデル化プロセスは、遊離アグレカンの細胞周囲での分解、細胞の周囲にあるアグレカンの線維マトリックスへの堆積、線維マトリックスからのアグレカンの溶解、遊離グロブリンのG1ドメインの代謝回転を含むことができる。モデルは、アグレカンの欠乏がコラーゲンIIの分解を促進する効果を追跡することができる。すなわち、メディエータによる増加した灌流、物理的不安定化、コラーゲン線維に対するプロテイナーゼのアクセス増加を追跡することができる。
【0116】
滑膜組織と直接接触する表面領域と、軟骨の表面領域と骨の間に位置する非露出深部領域とにおけるコラーゲンIIとアグレカンの代謝回転を追跡することにより、軟骨分解のゾーン状パターンもモデル化することができる。したがって、コラーゲンIIの分解効果とアグレカンの分解効果の違いをモデル化することができる。
【0117】
一実施態様では、移動フレームを実現することにより、軟骨の分解プロセスにおいて関節の幾何学的形状が変化する様子をモデル化する。この移動フレームでは、軟骨が分解するというのは、指定された厚さの軟骨表面領域が軟骨のより深部へと移動することを意味する。したがって、モデルにおいて規定する軟骨の2つの領域は、分解とともに移動するが厚さは一定である表面領域と、指定された表面領域がより深くに移動するにつれて薄くなる深部領域である。この実施態様では、分解が起こっている間の表面領域の体積と幾何学的形状は一定に保たれる。フレーム(軟骨の表面領域)内でのコラーゲンの分解から、どのような速度でフレームがシフトまたは移動するかが決まる。フレームが移動して深部領域が薄くなるにつれ、深部領域におけるコラーゲンとアグレカンの濃度に基づいてフレーム内のマトリックスの組成が更新される。したがって表面領域の組成は、表面領域において起こる分解と、深部領域におけるコラーゲンとプロテオグリカンの濃度の両方に依存する。
【0118】
軟骨が滑膜と接触する軟骨周辺部における軟骨の厚さと、(滑液とだけ接触する軟骨を表わす)中央部における軟骨の厚さをモデル化することができる。軟骨モデルの幾何学的形状と組成を変更して中手指節関節や股関節などの別の関節を表現できるようにすることが可能である。
【0119】
軟骨の構成要素を含む関節モデルを用いると、例えばサイトカインやプロテイナーゼの活性が変化することが、RAにおいて観察される軟骨の正味の分解とどのようにして結びつくかを調べることができる。ユーザーは、軟骨構成要素を利用すると、滑膜サイトカインのプロファイルが軟骨の代謝に及ぼす影響を調べることができるため、例えばRAにおける軟骨の分解にサイトカイン・ブロッキング療法が及ぼす影響を評価することが可能になる。ユーザーは、選択した抗MMP療法や増殖因子療法の効果を評価することもできる。
【0120】
滑膜組織画分
モデルでは、滑膜組織画分は、さまざまなタイプの細胞を含むことができる。一実施態様では、細胞のタイプとして、線維芽組織様滑膜細胞(FLS)、マクロファージ、Tリンパ細胞、Bリンパ細胞、樹状突起細胞などが挙げられる。正味の密度変化と特定のタイプの細胞組織の体積変化は、(滑膜組織の体積と同等な)参照体積に含まれる細胞の合計数の時間変化を追跡することによって明らかにすることができる。正味の密度と組織の体積を用いて組織の増大と収縮を明らかにすることができる。一実施態様では、組織の最初の組成は、均一でない滑膜組織について実験的に決定した組成を均質な組織とみなして計算する。すなわち均一でない組織に含まれるさまざまな画分の細胞の組成と体積を数学的に操作し、平均の細胞組成と正味の体積が均一でない組織と等しい均質な組織であるとする。組織の正味の密度と体積は、滑膜過形成の指標として利用することができる。さらに、組織の血管新生の経時変化は、特定の血管増殖特性から決定することができる。
【0121】
一実施態様では、血管系からの細胞の補充、非血管画分からの流入、細胞の活性化、接触が抑制された増殖または栄養が制限された増殖、モデルに表現されていない画分への細胞の流入、アポトーシスのさまざまなメカニズムなどに関するプロセスを考慮することにより、それぞれのタイプの細胞のポピュレーション・ダイナミクスをモデル化する。これらプロセスのそれぞれは、可溶性因子や滑膜に関する他の影響(例えば細胞接触による調節)によって変化する可能性がある。血管系からの細胞の補充に関するプロセスは、内皮接着分子の発現、ケモカイン/化学誘引物質、組織の血管新生の程度からの寄与も含むことができる。
【0122】
特定のタイプの細胞(例えばマクロファージ、T細胞)の活性化をモデル化することができる。この活性化をモデル化すると、細胞が活性化レベルの異なる複数のサブポピュレーションにはっきりと分かれる可能性がある。活性化には、可溶性因子と細胞接触を媒介とした調節に関係していて、最小限活性化した細胞から高度に活性化した細胞へと変換する生物学的プロセスを含むことができる。この場合、活性化したプールと活性化していないプールをそれぞれ明示的に表現することができる。細胞の活性化を表現する別の手段は、それぞれの時刻における活性化された分画の計算を、ポピュレーションを活性化されたプールと活性化されていないプールに分けることなく行なう操作を含むことができる。この部分的活性化は、抗原のレベル、抗原提示細胞の存在、抗原に対するT細胞の反応性に関するプロセスに加え、可溶性因子と細胞接触を媒介とした調節に関するプロセスによって明らかにすることができる。
【0123】
滑膜のさまざまなタイプの細胞は、滑膜環境による調節に応答して可溶性因子(例えばサイトカイン、ケモカイン、プロテイナーゼ)を合成する。モデルは、それぞれのタイプの細胞における合成活性の調節を含むことができる。この調節は、滑膜組織における可溶性メディエータの正味のレベルに寄与する可能性がある。それぞれのタイプの細胞による各メディエータの合成調節を明示的にモデル化することができる。特定のタイプの細胞については、活性化状態/レベルを明示的にモデル化することによって合成活性のレベルを明らかにすることもできる。合成されたメディエータの減少は、軟骨画分におけるこれらメディエータそれぞれの半減期を通じてモデル化することができる。メディエータ同士の相互作用もモデル化することができる。この相互作用には、TNF-αに対する可溶性TNF受容体(p55とp75)の結合、プロテイナーゼに対するTIMPの結合、IL-1RaによるIL-1の効果抑制が含まれる。
【0124】
細胞接触を媒介とした効果は、細胞のポピュレーション・ダイナミクス(細胞の活性化を含む)と合成活性の調節にも寄与する。細胞が接触する確率は、関係する細胞表面分子の調節された発現と、組織内でのさまざまなタイプの細胞の優勢度と、均一でない組織内で同じ場所に位置しやすいことを表現することによってモデル化することができる。
【0125】
滑膜マクロファージとマクロファージの輸送
マクロファージ要素は、滑膜における健康なマクロファージの存在ならびに肥大したマクロファージの存在を表わすことと、病気になった関節における炎症プロセスへのこれらの寄与を表わすことができる。炎症を起こしている滑膜におけるマクロファージのポピュレーションは、マクロファージの補充に関するプロセスと組織におけるアポトーシスに関するプロセスを表現することによってモデル化することができる。一実施態様では、コンピュータ・モデルは、マクロファージの増殖を含まない。というのもマクロファージの増殖は、マクロファージの蓄積にほんのわずかにしか寄与しないからである。滑膜マクロファージのポピュレーションは、不活性な細胞と活性化された細胞を表わす別々のグループに分けることができる。活性化は、サイトカインや増殖因子への曝露と、細胞-細胞接触とに基づいて計算することができる。するとその活性化状態から、マクロファージが分泌するカギとなるサイトカインと可溶性因子の種類とレベルを決定することができる。
【0126】
マクロファージ要素は、滑膜マクロファージのポピュレーション・ダイナミクスに関する生物学的プロセスを含むことができる。生物学的プロセスとしては、浸潤とアポトーシス;可溶性メディエータへの曝露を通じたマクロファージの活性化;細胞-細胞接触を通じたマクロファージの活性化;マクロファージによるサイトカインと可溶性因子(例えば、炎症促進候補(例えばTNF-α、IL-1)と抗炎症候補(例えばIL-10))の産生が挙げられる。
【0127】
これらプロセスを含めることにより、滑膜の過形成、さまざまな刺激によるマクロファージの活性化、その結果として生じるサイトカインと可溶性因子の産生などの振る舞いをシミュレーションすることができる。マクロファージ要素を含む関節モデルを用いると、以下のことが調べられる。すなわち、(1)マクロファージのポピュレーションを直接にターゲットとすることによる滑膜の過形成およびサイトカイン環境の変化と、(2)サイトカインを阻止することと他の治療法がマクロファージの活性化とメディエータの産生に及ぼす効果、そしてこれらの治療法が最終的に滑膜の過形成と軟骨の分解に及ぼす効果を調べることができる。
【0128】
マクロファージ輸送要素は、滑膜のサイトカインと化学誘引物質の濃度が、循環しているマクロファージが滑膜に補充されることに及ぼす影響を表現することができる。ユーザーは、この表現により、滑膜の過形成におけるマクロファージ輸送の役割を研究することができる。一実施態様では、コンピュータ・モデルは、循環している単球の高レベル表現だけを含む。サイトカインの刺激に応答した内皮接着分子(例えばICAM-1、VCAM-1、E-セレクチン、P-セレクチン)の調節を明示的に表現することができる。コンピュータ・モデルはさらに、関係するタイプの細胞によるケモカイン(例えばMCP-1やMIP-1α)の産生を含むことができる。一実施態様では、循環している単球に関するインテグリンとケモカイン受容体の発現は、明示的にはモデル化されない。その代わり、循環している単球に関するインテグリンとケモカイン受容体の固定された非明示的プロファイルを仮定することにより、サイトカインと化学誘引物質が単球/マクロファージの輸送速度に及ぼす効果を評価することができる。
【0129】
マクロファージ輸送要素は、内皮接着分子の発現に関するプロセス、適切なタイプの細胞によるケモカインの産生に関するプロセス、内皮分子とケモカインが単球の輸送速度に及ぼす効果に関するプロセスを含むことができる。
【0130】
ユーザーは、関与するサイトカインまたはケモカインをブロックすることによって、あるいは単球/マクロファージの輸送速度を直接増減させることによって、これらプロセスをターゲットにすることができる。したがってユーザーは、これらの戦略が滑膜の過形成と軟骨分解を少なくする効果を評価することができる。
【0131】
滑膜線維芽細胞
滑膜線維芽細胞(タイプB滑膜細胞)要素は、正常な関節または病気になった関節におけるこれら細胞の代謝回転と、滑膜マクロファージおよび軟骨との相互作用を表わすことができる。滑膜の過形成に対する線維芽細胞の寄与は、増殖速度とアポトーシス速度のバランスが変化した結果である可能性がある。線維芽細胞は、細胞-細胞相互作用を通じて、また共通のサイトカイン・プールに対する線維芽細胞の寄与と応答を通じて、滑膜マクロファージと相互作用する。線維芽細胞は、軟骨に対し、プロテイナーゼとサイトカインが軟骨内の可溶性因子のプールに対して効果を及ぼすことを通じた直接的なエフェクター機能も有する。
【0132】
線維芽細胞要素は、線維芽細胞の増殖とアポトーシスに関するプロセス、マクロファージとの細胞-細胞相互作用に関するプロセス、増殖因子とサイトカインの産生に関するプロセス、プロテイナーゼの合成に関するプロセスを含むことができる。
【0133】
ユーザーは、線維芽細胞要素を用いると、病気になった関節において滑膜線維芽細胞が滑膜の炎症と過形成の維持および調節に果たす役割を調べることができる。別の可能な用途は、治療法が線維芽細胞の数とタンパク質合成に及ぼす影響を評価することである。ユーザーはさらに、線維芽細胞の機能が軟骨の分解に及ぼす直接的な効果を定量化することができる。
【0134】
T細胞
モデル中のT細胞は、抗原と可溶性因子への応答を通じて関節の炎症に寄与する可能性がある。すると他の滑膜細胞が活性化される。T細胞は、単一の表現型によって表現すること、あるいは不活性な集合と活性化された集合に分離することができる。表現型は、主としてCD4+の記憶についての振る舞いを反映している可能性があるが、炎症促進サイトカインと炎症抑制サイトカインの両方を分泌することができる。抗原の提示により、T細胞の活性化状態と、対応するサイトカインの分泌に影響を与えることができる。ポピュレーション・ダイナミクスは、設定した流入速度と流出速度のほか、サイトカインと治療法によって変えることのできる増殖速度とアポトーシス速度を用いてモデル化することができる。T細胞とマクロファージの相互作用およびT細胞と線維芽細胞の相互作用は、細胞間接触と、サイトカインを媒介としたコミュニケーションの両方を通じてモデル化することができる。
【0135】
この要素は、T細胞のポピュレーション・ダイナミクス(一定の流入/流出;サイトカインによって調節される代謝回転)に関するプロセス、T細胞によるサイトカインと可溶性因子(炎症促進因子(例えばIFN-γ)と抗炎症因子(例えばIL-10)の両方)の分泌に関するプロセス、抗原の提示に対する反応を通じたT細胞の刺激に関するプロセス、サイトカインと可溶性因子によるT細胞の刺激に関するプロセス、マクロファージや線維芽細胞との細胞-細胞接触によるT細胞の刺激に関するプロセスを含むことができる。
【0136】
この要素は、関節内部へのT細胞の蓄積と、これら細胞の活性化の程度と、サイトカイン環境への寄与をシミュレーションすることができる。この要素を組み込んだ関節モデルの潜在的用途としては、T細胞の数と、抗原に対するT細胞の応答とを変えることにより、関節疾患に対するT細胞の寄与を調べることが挙げられる。ユーザーは、ポピュレーション・ダイナミクスを変える(例えばT細胞のアポトーシスを誘導する)ことの結果、T細胞を抗原に対して脱感作することの結果、特定のサイトカインをブロックすることの結果、接触を媒介とした細胞間コミュニケーションを抑制することの結果を調べることもできる。
【0137】
抗原の提示
この要素は、抗原提示細胞プールによるT細胞に対する抗原の提示を高レベルで表現することができる。この表現には、樹上突起細胞(DC)、B細胞、マクロファージが果たす特別な役割を含まれる。抗原提示細胞のポピュレーションにはマクロファージの数のダイナミクスが反映している可能性があるが、このポピュレーションに関して滑膜におけるDCとB細胞の数が固定されていると仮定することもできる。コンピュータ・モデルの一実施態様では、DCおよびB細胞の補充と代謝回転は、明示的にはモデル化されない。組織が破壊される間に生じた軟骨の自己抗原が単一の抗原プールに供給されるようにすることができる。また、この抗原プールにおいて他の自己抗原や外部抗原が一定のレベルになるようにすることもできる。
【0138】
この要素は、軟骨の分解生成物と一定の背景抗原からなる正味の抗原プールの決定に関するプロセスと、抗原を提示する正味の効率とレベルの決定に関するプロセスを含むことができる。
【0139】
この要素は、T細胞に対する抗原の提示を再現することができる。ユーザーは、抗原の取り込みや提示の効率を変化させたり、抗原の提示に対するそれぞれのタイプの細胞の相対的寄与を変化させたりすることにより、この機能をターゲットにすることができる。
【0140】
滑膜-軟骨相互作用
一実施態様では、モデルは、滑膜画分と軟骨画分の相互作用を含んでいる。特に、以下の2つの方法を用いてこの相互作用をモデル化することができる。その方法とは、(1)滑膜組織から軟骨へ(あるいはその逆)の可溶性因子の浸潤に関するプロセスの表現と、(2)軟骨分解生成物による滑膜細胞の機能促進に関するプロセスの表現である。
【0141】
第1の方法は、2つの画分間でのさまざまな分子の流れをモデル化する操作を含んでいる。この計算は、画分間で分子を均等に分配する操作と、所定の画分中で分子を拡散によって再分布させる操作を含んでいる。したがって滑膜の中だけで産生されたIL-13などの因子が軟骨に浸潤し、軟骨における合成活性と異化活性を変化させることができる。
【0142】
第2の方法は、軟骨分解生成物(コラーゲンIIやプロテオグリカンの断片など)による滑膜細胞の機能促進を含んでいる。この方法では、特に、コラーゲンIIやプロテオグリカンの断片や、マクロファージの化学誘引や、マクロファージの活性化によるT細胞における抗原特異的応答の促進に関するプロセスが表現される。
【0143】
滑膜-軟骨相互作用を表現する別の方法は、軟骨表面における滑膜細胞とメディエータの作用に関するプロセス、1つの画分から別の画分へ滑液などの中間画分を介してメディエータが輸送されることに関するプロセスを含んでいる。
【0144】
治療と介入
炎症と軟骨分解に関する標準的な治療的介入の効果は、コンピュータ・モデルにおいてシミュレーションすることができる。これらシミュレーションにより、例えばコンピュータ・モデルの精度を高めることができる。治療的介入を実現するための1つの方法は、モデルにすでに含まれていて、介入によって直接的または間接的に影響を受ける生物学的プロセスを変化させることである。この変化としては、治療的介入を表現するために特に付加されている既存のパラメータまたは生物学的変数を変化させることが挙げられる。例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の主な効果は、モデル中の冒されたタイプの細胞によるPGE-2の合成を特徴づけるパラメータを変化させることによって実現可能である。治療的介入を実現する別の方法は、治療的介入の効果を表わす1つ以上の追加生物学的プロセスを実現するというものである。例えば外因性の可溶性TNF-α受容体の効果は、冒された画分においてTNF-αが外因性受容体に結合するプロセスを明示的にモデル化することによって表現することができる。コンピュータ・モデルは、例えば治療に対する局所的応答に焦点を絞り、全身効果には注目しないようにすることができる。別の実施態様では、コンピュータ・モデルは、治療に対する局所的応答と全身効果の両方に注目することができる。
【0145】
図5は、本発明の一実施態様によるディスプレイ・スクリーンの一例である。このディスプレイ・スクリーンは、フィジオラブ(登録商標)ブラウザ・ウインドウ、チャート・ウインドウ、実験ブラウザ・ウインドウを備えている。この図5に示した具体的なディスプレイ・スクリーンは2つのウインドウを備えており、それぞれのウインドウがチャートを表示している。1つは、滑膜細胞の密度がどう時間変化するかを表わすチャート(中央下部)であり、もう1つはカギとなる滑膜メディエータのレベルがどう時間変化するかを表わすチャート(下部右隅)である。
【0146】
図5には、上方左側にもブラウザ・ウインドウが含まれている。この実験ブラウザ・ウインドウにより、ユーザーは、例えば仮想的患者、較正実験、デモンストレーション実験、開発者のためのテスト、治療法のテストを行なうことができる。これらの実験およびテストは、パラメータ・セットと数値セットを用いて規定することができる。ここでは、ユーザーが、病気になった関節の特徴を示す別の値を用いて関節の生理学を変化させることができる。コンピュータ・モデルの一実施態様では、パラメータ・セットは、「シミュレーション・モデル内のオブジェクト・パラメータにアクセスする方法」という名称のアメリカ合衆国特許第6,069,629号に記載されている方法に基づいている。なおこの特許の内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。ユーザーは、「シミュレーション・モデルにおいて、オブジェクトと、そのオブジェクトに関係するパラメータ値を制御する方法」という名称のアメリカ合衆国特許第6,078,739号に従って別の数値セットを指定することもできる。なおこの特許の内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0147】
さまざまな治療法を含めることにより、治療法を組み合わせた効果を調べることが可能になる。以下に説明する治療法は、RAの患者を治療するための現在標準的な方法であり、コンピュータ・モデルにおいて取り扱うことができる。
【0148】
NSAIDの効果を表現することができる。このタイプの治療法は、炎症を減らすためにシクロオキシゲナーゼの産生を抑制することに基づいている。一実施態様では、NSAIDの効果は、PGE-2の合成を直接抑制することの結果としてモデル化することができる。
【0149】
グルココルチコイドの効果も表現することができる。グルココルチコイドは、RAの標準的な治療法であるが、RAの疾患進行に関してプラスの効果とマイナスの効果の両方をもたらす。グルココルチコイド療法のモデル化では、コンピュータ・モデルは、PGE2産生の調節、メディエータ産生の調節、炎症の減少、軟骨の分解減少という主要な効果を再現することができる。
【0150】
別の実施態様では、メトトレキサートの効果が表現される。RAとガンに対する標準的な治療薬であるメトトレキサートが増殖性の強い細胞をターゲットとする際の役割をモデルに組み込むことができる。細胞増殖の調節と軟骨の分解減少というこの治療法に関して知られている効果を表現することができる。
【0151】
抗TNF-α療法と抗IL-1療法の効果を表現することができる。これら治療法は、活性なサイトカインを治療薬と結合させるメカニズム、受容体アンタゴニストとの競合を通じてサイトカインの効果を減少させるメカニズム、活性なサイトカインの濃度を減らす(競合する受容体アンタゴニストによって活性なサイトカインの効果を減らすことと同等である)メカニズムなどを通じて実現することができる。
【0152】
本発明を利用してこれら治療法を互いに組み合わせたもの、あるいはこれら治療法を従来の治療法と組み合わせたものをテストすることが有効であることがわかるはずである。さらに、コンピュータ・モデルにより、他の標準的でない実験的治療法を調べることができる。コンピュータ・モデルの一実施態様では、これら治療法の一部による治療を含めることができる。これら治療法により得られる結果の確かさは、利用できるデータの質によって異なる可能性がある。
【0153】
本発明を具体的な実施態様を参照して上に説明したきたが、他の実施態様を実現することも可能である。例えば図2を参照して説明した要約ダイヤグラムは可能な1つの実施態様を示しているが、RA疾患の別の側面や健康な関節を考慮した別の要約ダイヤグラムも可能である。例えば図6は、本発明の別の実施態様による、簡略化した機能ビューとRAの画分ビューを備える要約ダイヤグラムである。この図6からわかるように、RAの要約ダイヤグラムでは、図2に示した構成要素とその相互作用以外の構成要素とその相互作用を明らかにすることができる。これら構成要素は、簡略化した機能ビューに示した細胞の見取り図、あるいは画分ビューに示した空間的表現をもとにして判断することができる。
【0154】
本発明のさまざまな実施態様を上に説明したきたが、これらは単なる例示を目的として提示したのであり、本発明がこれら実施態様に限定されることはない。したがって本発明の範囲は、上記実施態様のいずれかに限定されてはならず、添付の特許請求の範囲およびそれと等価な内容に従ってのみ決まるべきである。
【0155】
実施態様に関する上の記述により、当業者であれば誰でも本発明を実施または利用することが可能である。本発明の実施態様を具体的に示し、それについて説明したが、当業者であれば、本発明の精神と範囲をはずれることなく、形態および細部に関してさまざまな変更をなしうることが理解できよう。
【0156】
例えば、コンピュータ・システムのある1つの実施態様を上に説明したが、他の実施態様を実現することも可能である。そのようなコンピュータ・システムは、例えばネットワーク型または分散型のコンピュータ・システムにすることが可能である。さらに、本発明のいくつかの実施態様は、コンピュータ・システムの助けを借りることなく実施することができる。
【0157】
この明細書のどこかで引用されているあらゆる参考文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【0158】
付録A
【0159】
【表1】
Figure 2005501315
【表2】
Figure 2005501315
【表3】
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【表4】
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【表5】
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【表6】
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【表7】
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【表8】
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【表9】
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【表10】
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【表11】
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【表12】
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【表13】
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【表14】
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【表15】
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【表16】
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【表17】
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【表18】
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【表19】
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【表20】
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【表21】
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【表22】
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【表23】
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【表24】
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【表25】
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【表26】
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【表27】
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【表28】
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【表29】
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【表30】
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【表31】
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【表32】
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【表33】
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【表34】
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【表35】
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【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】効果ダイヤグラムの一例であり、RAに冒された関節の生物学的状態についてモデル化した生物学的プロセスのいくつかが示してある。
【図2】図1の効果ダイヤグラムから取り出した要約ダイヤグラムの一例である。
【図3】図2の要約ダイヤグラムに示した解剖学的要素の1つについてのモジュール・ダイヤグラムの一例である。
【図4】図3に示したモジュール・ダイヤグラムの一部に関する別の例である。
【図5】本発明の一実施態様によるディスプレイ・スクリーンの一例である。このディスプレイ・スクリーンは、チャート・ウインドウとブラウザ・ウインドウを備えている。
【図6】本発明の別の実施態様による別の要約ダイヤグラムである。この要約ダイヤグラムは、RAに関する簡略化機能ビューと画分ビューを備えている。
【図7】本発明の方法を実行するためのソフトウエアを収容または実行することのできるコンピュータ・システムの概略図である。
【図8】滑膜内のT細胞のライフサイクルに関するモジュール・ダイヤグラムの一例である。
【図9】動物の関節のコンピュータ・モデルを開発するための本発明の一実施態様による方法のフローチャートである。
【図10】動物の関節のコンピュータ・モデルを開発するための本発明の別の実施態様による方法のフローチャートである。

Claims (48)

  1. 動物の関節のコンピュータ・モデルを開発する方法であって、
    関節の生物学的状態に関するデータを同定するステップと;
    このデータに関係していて、関節の生物学的状態の少なくとも一部を規定する複数の生物学的プロセスを同定するステップと;
    これら複数の生物学的プロセスを組み合わせて関節の生物学的状態のシミュレーションを形成するステップとを含む方法。
  2. 上記動物の関節がヒトの関節である、請求項1に記載の方法。
  3. 上記生物学的状態が正常な関節の状態である、請求項1に記載の方法。
  4. 上記複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスが、1つの生物学的変数である治療薬と関係している、請求項1に記載の方法。
  5. メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、可溶性TNF-α受容体、TNF-α抗体、インターロイキン-1受容体アンタゴニストからなるグループの中から治療薬を選択するステップと;
    選択したこの治療薬を、上記複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスと関係づけるステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  6. 上記生物学的状態が、病気になった関節の状態である、請求項1に記載の方法。
  7. 上記生物学的状態が、慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、反応性関節炎、変形性関節症のいずれかに冒された関節の状態である、請求項6に記載の方法。
  8. 病気になった関節に関するデータであって、この関節の生物学的状態における変化をこの関節の生物学的属性と関係づけるデータを同定するステップと;
    このデータに関係していて、病気になったこの関節の生物学的状態の少なくとも一部を規定する複数の生物学的プロセスを同定するステップと;
    これら複数の生物学的プロセスを組み合わせ、病気になった関節の少なくとも1つの生物学的属性のシミュレーションを形成するステップとを含む、請求項6に記載の方法。
  9. 関節の生物学的状態に関する生物学的属性のシミュレーションを生成するステップと;
    この生物学的属性のシミュレーションを、関節の参照パターンにおける対応する生物学的属性と比較するステップと;
    この生物学的属性のシミュレーションが関節の参照パターンに関する生物学的属性と実質的に整合している場合に、コンピュータ・モデルが動物の関節の有効なコンピュータ・モデルであると認めるステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  10. 上記の複数の生物学的プロセスを組み合わせる操作が、
    複数の生物学的プロセスからの第1の生物学的プロセスに関する生物学的変数相互の間に第1の数学的関係を形成するステップと;
    第1の生物学的プロセスと、複数の生物学的プロセスに関する複数の生物学的変数からの第2の生物学的プロセスとに関する生物学的変数相互の間に第2の数学的関係を形成するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
  11. 第1の数学的関係と第2の数学的関係においてパラメータ変化の集合を生成するステップと;
    パラメータ変化の集合からの少なくとも1つのパラメータ変化に基づき、関節の参照パターンに関する少なくとも1つの生物学的属性と実質的に整合した生物学的属性のシミュレーションを生成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. 第1の数学的関係と第2の数学的関係のうちの少なくとも一方に関係する第1の生物学的変数を、値が時間経過とともに変化する変換された生物学的変数に変換するステップと;
    この変換された生物学的変数に基づき、関節の参照パターンに関する対応する生物学的属性と実質的に整合している一連の生物学的属性のシミュレーションを生成させるステップとをさらに含み、この一連の生物学的属性のシミュレーションが、関節の参照パターンにおける対応する生物学的属性の慢性的な進行を表わしている、請求項10に記載の方法。
  13. 第1の数学的関係と第2の数学的関係のうちの少なくとも一方に関係する1つのパラメータを、値が時間経過とともに変化する変換された生物学的変数に変換するステップと;
    この変換された生物学的変数に基づき、関節の参照パターンに関する生物学的属性と実質的に整合している一連の生物学的属性のシミュレーションを生成させるステップとをさらに含み、この一連の生物学的属性のシミュレーションが、関節の参照パターンにおける対応する生物学的属性の慢性的な進行を表わしている、請求項10に記載の方法。
  14. 動物の関節の生物学的状態に関するコンピュータ・モデルであって、
    関節の生物学的状態に関する生物学的プロセスの集合を規定するコードと;
    生物学的プロセスに関する生物学的変数の間の相互作用に関する数学的関係の集合を規定するコードを含んでおり、生物学的プロセスの集合からの少なくとも2つの生物学的プロセスがこの数学的関係の集合と関係しており、生物学的プロセスの集合を規定するコードと数学的関係の集合を規定するコードが組み合わさって関節の生物学的状態のシミュレーションが規定される、コンピュータ・モデル。
  15. 生物学的プロセスの集合が、軟骨の代謝、組織の炎症、組織の過形成に関するプロセスを含む、請求項14に記載のコンピュータ・モデル。
  16. 複数の生物学的プロセスからの少なくとも1つの生物学的プロセスが、1つの生物学的変数である治療薬と関係している、請求項14に記載のコンピュータ・モデル。
  17. メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、可溶性TNF-α受容体、TNF-α抗体、インターロイキン-1受容体アンタゴニストからなるグループの中から治療薬を選択するステップと;
    選択したこの治療薬を、複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスと関係づけるステップとをさらに含む、請求項14に記載のコンピュータ・モデル。
  18. 滑膜に関する生物学的プロセスを含む第1の画分を規定するコードと;
    軟骨組織に関する生物学的プロセスを含む第2の画分を規定するコードをさらに含む、請求項14に記載のコンピュータ・モデル。
  19. 第1の画分と第2の画分の相互作用に関する生物学的プロセスの集合を規定するコードをさらに含む、請求項18に記載のコンピュータ・モデル。
  20. 生物学的状態が、病気になった関節の状態である、請求項14に記載のコンピュータ・モデル。
  21. 生物学的状態が、慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、反応性関節炎、変形性関節症のいずれかに冒された関節の状態である、請求項20に記載のコンピュータ・モデル。
  22. 上記コードを実行する際に、関節の疾患状態に関し、この関節の疾患状態の参照パターンに関する少なくとも1つの生物学的属性と実質的に整合した生物学的属性のシミュレーションを生成する、請求項20に記載のコンピュータ・モデル。
  23. コンピュータが実行可能なソフトウエア・コードであって、
    動物の関節の生物学的状態に関する複数の生物学的プロセスを規定するコードを含み、このコードは、
    上記複数の生物学的プロセスからの第1の生物学的プロセスと、この第1の生物学的プロセスに関する生物学的変数の間の相互作用とに関する数学的関係の集合を規定するコードと、
    上記複数の生物学的プロセスからの第2の生物学的プロセスと、この第2の生物学的プロセスに関する生物学的変数の間の相互作用とに関する数学的関係の集合を規定するコードを含み、
    上記複数の生物学的プロセスが、動物の関節の生物学的状態と関係づけられている、コンピュータが実行可能なソフトウエア・コード。
  24. 滑膜に関する生物学的プロセスを含む第1の画分を規定するコードと、
    軟骨組織に関する生物学的プロセスを含む第2の画分を規定するコードをさらに含む、請求項23に記載のコンピュータが実行可能なソフトウエア・コード。
  25. 第1の画分と第2の画分の相互作用に関する生物学的プロセスの集合を規定するコードをさらに含む、請求項24に記載のコンピュータが実行可能なソフトウエア・コード。
  26. 動物の病気になった関節に関するコンピュータ・モデルを開発する方法であって、
    病気になった関節の生物学的状態における変化を生物学的属性と関係づけるデータに基づいた個々の生物学的プロセスが集まった複数の生物学的プロセスを規定するため、ユーザーが選択した複数の指示を受け取るステップと;
    組み合わせた複数の生物学的プロセスに基づき、生物学的属性のシミュレーションを生成するステップと;
    生物学的属性のシミュレーションと、病気になった関節の参照パターンに関する対応する生物学的属性の比較結果に基づき、コンピュータ・モデルの有効性を評価するステップを含む方法。
  27. 動物の病気になった関節が、慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、反応性関節炎、変形性関節症のいずれかに冒された関節の状態である、請求項26に記載の方法。
  28. 複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスが、1つの生物学的変数である治療薬と関係している、請求項26に記載の方法。
  29. メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、可溶性TNF-α受容体、TNF-α抗体、インターロイキン-1受容体アンタゴニストからなるグループの中から治療薬を選択するステップと;
    選択したこの治療薬を、複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスと関係づけるステップとをさらに含む、請求項26に記載の方法。
  30. 動物の関節のコンピュータ・モデルであって、
    関節の生物学的状態に関する生物学的プロセスの集合を規定するコードと、生物学的プロセスに関する生物学的変数の間の相互作用に関する数学的関係の集合を規定するコードとを記憶しているコンピュータ可読メモリと;
    このコンピュータ可読メモリに接続されていて上記コードを実行できる構成になったプロセッサとを備え;
    生物学的プロセスの集合からの少なくとも2つの生物学的プロセスが上記数学的関係の集合に関係しており、生物学的プロセスの集合を規定するコードと数学的関係の集合を規定するコードが組み合わさって関節の生物学的状態のシミュレーションが規定される、コンピュータ・モデル。
  31. 上記生物学的プロセスの集合が、軟骨の代謝、組織の炎症、組織の過形成に関するプロセスを含む、請求項30に記載のコンピュータ・モデル。
  32. 上記複数の生物学的プロセスからの少なくとも1つの生物学的プロセスが、1つの生物学的変数である治療薬と関係している、請求項30に記載のコンピュータ・モデル。
  33. メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、可溶性TNF-α受容体、TNF-α抗体、インターロイキン-1受容体アンタゴニストからなるグループの中から治療薬を選択するステップと;
    選択したこの治療薬を、複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスと関係づけるステップとをさらに含む、請求項30に記載のコンピュータ・モデル。
  34. 滑膜に関する生物学的プロセスを含む第1の画分を規定するコードと、
    軟骨組織に関する生物学的プロセスを含む第2の画分を規定するコードをさらに含む、請求項30に記載のコンピュータ・モデル。
  35. 第1の画分と第2の画分の相互作用に関する生物学的プロセスの集合を規定するコードをさらに含む、請求項34に記載のコンピュータ・モデル。
  36. 上記生物学的状態が、病気になった関節の状態である、請求項30に記載のコンピュータ・モデル。
  37. 上記生物学的状態が、慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、反応性関節炎、変形性関節症のいずれかに冒された関節の状態である、請求項36に記載のコンピュータ・モデル。
  38. 上記コードを実行する際に、関節の疾患状態に関し、この関節の疾患状態の参照パターンに関する少なくとも1つの生物学的属性と実質的に整合した生物学的属性のシミュレーションを生成する、請求項36に記載のコンピュータ・モデル。
  39. 動物の関節の解析モデルを開発する方法であって、
    関節の生物学的状態に関するデータを同定するステップと;
    このデータに関係していて、関節の生物学的状態の少なくとも一部を明らかにする複数の生物学的プロセスを同定するステップと;
    これら複数の生物学的プロセスを組み合わせて関節の生物学的状態の解析的表現を形成するステップとを含む方法。
  40. 生物学的状態が、正常な関節の状態である、請求項39に記載の方法。
  41. 複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスが、1つの生物学的変数である治療薬と関係している、請求項39に記載の方法。
  42. メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、可溶性TNF-α受容体、TNF-α抗体、インターロイキン-1受容体アンタゴニストからなるグループの中から治療薬を選択するステップと;
    選択したこの治療薬を、複数の生物学的プロセスのうちの少なくとも1つの生物学的プロセスと関係づけるステップとをさらに含む、請求項39に記載の方法。
  43. 上記生物学的状態が、病気になった関節の状態である、請求項39に記載の方法。
  44. 上記生物学的状態が、慢性関節リューマチ、骨粗鬆症、反応性関節炎、変形性関節症のいずれかに冒された関節の状態である、請求項43に記載の方法。
  45. 病気になった関節に関するデータであって、この関節の生物学的状態における変化をこの関節の生物学的属性と関係づけるデータを同定するステップと;
    このデータに関係していて、病気になったこの関節の生物学的状態の少なくとも一部を明らかにする複数の生物学的プロセスを同定するステップと;
    これら複数の生物学的プロセスを組み合わせ、病気になった関節の少なくとも1つの生物学的属性の解析的表現を形成するステップとを含む、請求項43に記載の方法。
  46. 関節の生物学的状態に関する生物学的属性の解析的表現を生成するステップと;
    生物学的属性のこの解析的表現を、関節の参照パターンにおける対応する生物学的属性と比較するステップと;
    生物学的属性のこの解析的表現が、関節の参照パターンに関する生物学的属性と実質的に整合している場合に、コンピュータ・モデルが動物の関節の有効なコンピュータ・モデルであると認めるステップとをさらに含む、請求項39に記載の方法。
  47. 上記複数の生物学的プロセスを組み合わせる操作が、
    複数の生物学的プロセスからの第1の生物学的プロセスに関する生物学的変数相互の間に第1の数学的関係を形成するステップと;
    第1の生物学的プロセスと、複数の生物学的プロセスに関する複数の生物学的変数からの第2の生物学的プロセスとに関する生物学的変数相互の間に第2の数学的関係を形成するステップとを含む、請求項39に記載の方法。
  48. 動物の関節がヒトの関節である、請求項39に記載の方法。
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