JP2005350443A - At1受容体結合阻害活性及び/又はace阻害活性ペプチド - Google Patents

At1受容体結合阻害活性及び/又はace阻害活性ペプチド Download PDF

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Abstract

【解決手段】 ALPMからなるペプチドを有効成分とするAT1受容体結合阻害剤及び/ACE阻害剤。
【効果】 このペプチドは、安全性に優れ、その上AT1受容体結合阻害活性及び/ACE阻害活性の高いことが確認され、本発明は優れた血圧上昇抑制用の飲食品及び/又は医薬品を提供するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、AT1受容体結合阻害及び/又はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有するペプチドに関するものである。
本発明に係るペプチドは、血圧降下剤として、医薬品用途に使用する他、血圧が高い人用の特別用途食品、栄養食品、機能性食品、特定保健用食品、血圧降下作用を標榜可能な飲食品等として使用し、血圧上昇抑制のほか、高血圧の予防等に広く利用できるものである。
アンジオテンシン変換酵素(Angiotensin Converting Enzyme; ACE)は、肺、血管内皮等に存在し、血圧や体液量調節に重要な役割を果たしているタンパク質分解酵素で、血圧上昇を調節するレニン−アンジオテンシン系でアンジオテンシンIを強い昇圧作用のあるアンジオテンシンII(以下、「AngII」ともいう)に変換する作用を有する。当該酵素の阻害剤は、血圧を低下させる作用があり、種々の薬剤が市販されている。また、カゼイン、ゼラチン、イワシ、およびカツオ等の様々な食品からACE阻害活性ペプチドが見出されている。例えば、カゼイン由来のペプチドVPP(Val-Pro-Pro, IC50値 9μM)、IPP(Ile-Pro-Pro, IC50値 5μM)、VAP(Val-Ala-Pro、IC50値 2μM)、トウモロコシタンパク質、α−カゼイン由来LQP(Leu-Gln-Pro、IC50値 2μM)などが知られている(例えば非特許文献1〜3などを参照)。しかし、他の配列からなる阻害剤が求められていた。
さらに、アンジオテンシンIIに対する受容体には2種類のサブタイプのAT1とAT2があり、AT1受容体は血管収縮に作用し、AT2受容体はその反対の血管拡張作用が主体となる。したがって、アンジオテンシンIIのAT1受容体への結合を阻害すれば、血圧が降下すると考えられることから、AT1結合阻害剤は血圧降下剤として有用である。これらのことから、AT1受容体結合阻害とACE阻害の両活性を有する血圧降下剤が求められていた。
Yasunori Nakamura, Naoyuki Yamamoto, Kumi Sakai, Akira Okubo, Sunao Yamazaki, Toshiaki Takano. Purification and Characterization of Angiotensin I-Converting Enzyme Inhibitors from Sour Milk. Journal of Dairy Science Vol. 78 Page 777-783 (1995) Shinsuke Miyoshi, Hiromi Ishikawa, Toshiyuki Kaneko, Fumio Fukui, Hideoki Tanaka, Susumu Maruyama. Structures and Activity of Angiotensin-converting Enzyme Inhibitors in an α-Zein Hydrolysate. Agricultural and Biological Chemistry Vol. 55 (5) Page 1313-1318 (1991) Susumu Maruyama, Hajime Mitachi, Hideaki Tanaka, Noboru Tomizawa, Hideo Suzuki. Studies on the Active Site and Antihypertensive Activity of Angiotensin I-Converting Enzyme Inhibitors Derived from Casein. Agricultural and Biological Chemistry Vol. 51 (6) Page 1581-1586 (1987)
上記のように、AT1受容体結合阻害剤及び/又はACE阻害剤の研究、開発が盛んに行われている技術の現状に鑑み、本発明者らは、従来にない全く新規にして高い効果を有するAT1受容体結合阻害剤及び/又はACE阻害剤の開発を行うこととした。
本発明者らは、上記課題を解決するために各方面から検討の結果、ペプチド、特にオリゴペプチドに着目して数多くのペプチド素材から単離し、得られたペプチドについてスクリーニングを行った。その結果、AT1受容体結合阻害活性及び/又はACE阻害活性に優れたテトラペプチドALPMを発見し、in vitroおよびin vivo試験を行った結果、本ペプチドが血圧降下剤として使用できることを確認して、本発明を完成した。
本発明は、
(1)配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示されるペプチド、
(2)配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示されるペプチドを有効成分とするAT1受容体結合阻害剤及び/又はACE阻害剤、に係るものである。
本発明によれば、高いAT1受容体結合阻害活性及び/又はACE阻害活性を有するので、少ない用量で血圧上昇抑制効果を発揮することができる。
本発明に係るペプチドALPMは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列から成り、下記に示され、通常塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、りん酸塩、および酒石酸塩等の工業上使用される塩を付加したペプチドであっても良い。
テトラペプチドALPM:(一文字表記の場合);Ala-Leu-Pro-Met(三文字表記の場合)
このペプチドは、単独若しくは他の血圧降下剤との混合物で使用することができる。
本発明のペプチドを調製するには、公知のペプチド合成法により製造出来るほか、カゼイン等の乳タンパク質を酵素的若しくは化学的加水分解することによっても製造できる。
本発明のペプチドは、医薬品又は飲食品いずれの形態でも利用することができる。例えば、医薬品として直接投与することにより、又は特定保健用食品等の特別用途食品や栄養機能食品として直接摂取することにより各種の高血圧治療及び/又は予防することが期待される。また、各種食品(牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト等)に添加し、これを摂取してもよい。
本発明のペプチドを含有する食品には、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ―カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳性ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などが挙げられる。糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができ、合成品及び/又はこれらを多く含む食品を用いてもよい。
本発明のペプチドを医薬品として使用する場合には、種々の形態で投与することができる。その形態として、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与を挙げることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主剤に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用し得る既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
すなわち本発明のAT1受容体結合阻害剤及びACE阻害剤は、前記特定のペプチドを含んでいれば良く、例えば医薬上許容される賦形剤等の添加物や食品用の添加物を添加して用いることが出来、その剤型は、固体状、液状であっても良い。投与経路が経口摂取の場合、その使用量は症状、年令、体重、投与方法および剤形等によって異なるが、通常は、成人に対して1日約0.1mgから1,500mgまでを投与することができる。
本発明に係る有効成分は、毒性は全くないか又は極めて低く、卓越した安全性を示し、マウスに対して1日当り500mg経口投与したが急性毒性は全く認められなかった。したがって飲食品として使用する場合は、予防用、保健用、飲食品として使用する場合のいずれにおいても有効成分の使用量に格別の限定はなく、医薬として使用する場合でも、患者に応じて上記範囲内で適宜使用すればよい。また、本有効成分は多量に服用しても格別の急性毒性を示さないので、必要があれば上記範囲よりも多量に使用しても差し支えない。
以下、本発明の実施例について述べる。
市販のカゼインの酵素的加水分解ペプチド素材であるWE80BG(DMV Japan、大阪)中に含まれる降圧活性ペプチドの単離精製を、各種クロマトグラフィーにより行った。
まずWE80BGをWakogel LP-40C18(粒子径20-40μm;;和光純薬工業、大阪)によって逆相モード精製した。1gのWE80BGを200gの蒸留水に溶解し、100gのWakogel LP-40C18と共に撹拌した。こうしてWakogel LP-40C18に吸着した疎水性ペプチドを、200mlの水−エタノール混合溶液(容量比10:90)にて溶出させ、次のクロマトグラフィーに用いた。
次にSephadex G-15(φ2.6cm×90cm;Amarsham Pharmacia Biotech, Co., Ltd, Uppsala, Sweden)によるゲル濾過精製を行った。移動相に0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液、検出に214nmにおける吸光度を用いてペプチド画分を溶出させ、次のクロマトグラフィーに用いた。
更にWakosil-II 5C18(φ4.6mm×150mm;和光純薬工業、大阪) を用いてHPLCによる逆相モード精製を行った。移動相にアセトニトリル−水溶媒系(TFAを0.05%含む)を用い、0分〜15分でアセトニトリル10%〜40%のリニアグラジェント溶出を行った。この時の流速は0.5ml/ml、検出は214nmにおける吸光度を用いた。以上の精製で最終的に得られたd画分は最も強いACE阻害活性を示した(図1)。
このd画分のペプチドの構造解析を行い、アミノ酸配列がAla-Leu-Pro-Met(ALPM)であり、β―ラクトグロブリンのf142-145由来であると同定した。
次に、雄性10週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)にALPMを経口投与したところ(n=5、投与量:ALPM 1mg/個体(ALPM 1mg/1ml蒸留水))、40℃10分予備加温後の収縮期血圧(SBP)を指標とした降圧活性は、投与8時間後に投与前の-21.4±7.8mmHgと最も高い値を示した(図2)。
ペプチド自動合成機を用いて配列番号1のテトラペプチドALPMを化学合成した。得られたペプチドの純度は、逆相HPLCで95%以上であることが、確認された。
ペプチドのACEの阻害活性は、試験液(Blank、Control、ペプチド試料)にACE(EC 3.4.15.1、ウシ肺由来;和光純薬工業、大阪)溶液および基質(Hippuryl-His-Leu(HHL);Sigma Chemical Co., Ltd.(St. Louis, Missouri, U.S.A))溶液を添加し、37℃にて一定時間インキュベートした後、ACEによって遊離した馬尿酸(Hippuric acid)を228nmの紫外部吸光度にて測定し、得られた吸光度を基に算出することで求められる。
例えば、ペプチド試料溶液(水溶液として150μl),BlankおよびControl(各々蒸留水を150μl)にACE溶液(0.5mU/μl in 50%(v/v)グリセロール水溶液)10μl,基質溶液(12.5mM HHL in 1.0M NaClを含む0.2Mホウ酸緩衝液(pH8.3))100μlを加えた。Blankには直ちに0.5N HClを250μl加えて反応を停止した。Controlおよびペプチド試料については,37℃で45分間インキュベートし,0.5N HClを250μl加えて反応を停止させた。ついで,酢酸エチルを1.5ml添加し,15秒間振とう抽出後,試験管遠心分離機を用いて1,000×g,5分間遠心分離を行った。2層に分離した上層部の1mlを正確に小試験管に移し取り,ヒーティングブロックにて80℃,5分間加熱しながら窒素気流下酢酸エチルを蒸発させた。さらに,加熱乾固の条件を一定にするため,最後に全試料を80℃で10分間加熱した。常温にまで冷却後,0.9%(w/v) NaCl水溶液を3.0ml加えて15秒間撹拌溶解し,直ちに分光光度計Model UV-1200(島津製作所,東京)を用いて、遊離した馬尿酸に由来する228nmの紫外部吸光度を測定した。Controlの阻害活性を0%として,以下の式1により試料のACE阻害活性(%)を求めた。なお,各試料についてACE阻害活性測定を2回ずつ行い,その平均値を「%値」で示した。
更にALPMについては、各種濃度(0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6mg/ml)の水溶液を試料溶液として用いた時の各ACE阻害活性(%)を用いて作成した検量線に基づいてIC50値を求めた。
Figure 2005350443
ここで、式中Ab,AcおよびAsはそれぞれBlank,Controlおよび試料(Sample)の228nmでの各吸光度を示す。
[結果]
IC50
Ala-Leu-Pro-Met・・・928μM
AT1受容体結合阻害活性試験
1)肺膜画分の調製
Wistarラット(n=3)の肺を摘出し、生理食塩水中で洗浄した。これ以降の操作は4℃で行った。組織を細切後、組織重量の5倍量のTris-HCl緩衝液(pH 7.2)を添加し、ポリトロンPT1200を用いてホモジナイズした。1,200 x g 、 10分間遠心分離後、上清を回収し、ついで20,000 x g、20分間遠心分離した。得られたペレットにTris-HCl緩衝液(pH 7.2)5mlを添加し洗浄後、20,200 x g、20分間遠心分離した。洗浄後のペレットはHepes緩衝液中にホモジナイズによって懸濁させ、ビシンコニン酸(BCA)法によりタンパク質含量を測定し、-80℃で凍結保存した。
2)バインディングアッセイ
膜画分を必要量解凍し、20,200 x g、20分間遠心分離し、ぺレットに0.1%BSAを含むHepes緩衝液を加え、最終濃度が10mg/mlになるように調整した。96 wellプレートに、ラット肺膜画分100μlおよび試料溶液(10-11〜10-3Mの非標識AngIIもしくはペプチド試料)100μlを加えた。0.18nMの[125I]-AngII100μlを加え攪拌後、25℃、60分間インキュベートした。セルハーベスターを用いて吸引ろ過し、ワットマンガラス維濾紙GF/B上に膜画分を回収した。生理食塩水200μlで3回洗浄後、濾紙をプラスチックチューブに回収し、膜画分に結合した放射性同位体の放射活性をγ―カウンタで測定した。過剰量の非標識AngIIを加えた場合の[125I]-AngIIの結合量(cpm)を非特異的結合とし、各濃度での特異的結合量を求めた。試料溶液を添加しないときの[125I]-AngIIの特異的結合量を100%として標準曲線を描いた(図3)。
この効果、[125I]-AngIIのAT1受容体への結合を50%阻害するときの濃度は、非標識AngIIで10-7程度、ALPMでは10-3程度となった。また、WE80BGでは阻害活性が見られなかった。このことから、ALPMはAT1受容体結合阻害活性を有し、この阻害活性が降圧活性に寄与していることが確認された。
上記結果から明らかなように、ALPMは、高いAT1受容体結合阻害活性及び/又はACE阻害活性を発現することが世界に先駆けて確認された。
本発明によれば、AT1受容体結合阻害活性及びACE阻害活性の両方を有する、血圧上昇抑制のための予防ないし治療剤として有用であるだけでなく、強い苦味等不快な風味も認められず、血圧上昇抑制用の予防ないし治療用飲食品としても利用することができる。
逆相モードのHPLCによるWE80BG中の降圧ペプチドの精製時の溶出を示す図である。( )内の数値は、ACE阻害活性値を示す。 合成ペプチドALPM投与/非投与によるSHRの収縮期血圧降下度を示す図である。◆はコントロール群(1ml蒸留水/個体)、■はALPM投与群(ALPM 1mg/体(ALPM 1mg/1ml蒸留水))を示す。*:コントロール群に対して有意差あり(P < 0.05:Studentのt-検定)、(n = 3) ラット肺膜画分を用いたAT1受容体バインディングアッセイの標準曲線:非標識AngIIおよびペプチド試料による[125I]-AngIIのAT1受容体への結合阻害を示す図である。

Claims (2)

  1. 配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示されるペプチド。
  2. 配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示されるペプチドを有効成分とするAT1受容体結合阻害剤及び/又はACE阻害剤。
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