JP2005343977A - 色素薄膜、その製造方法、光スイッチ、光分配器及び光変調器 - Google Patents

色素薄膜、その製造方法、光スイッチ、光分配器及び光変調器 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い熱安定性を有するとともに、1.3μmまたは1.55μm付近に強い吸収かつ超高速光学応答特性を有し、厚膜で膜厚均一性に優れた色素薄膜及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明の目的は、前記色素薄膜を用いて形成された光スイッチ、光分配器及び光変調器を提供することである。
【解決手段】 下記一般式(I)で示される色素薄膜である。
【化1】
Figure 2005343977

(一般式(I)中、X1〜X10及びY1〜Y10は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、直鎖アルキル基、分岐化したアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、二置換アミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または置換もしくは未置換のアリールオキシ基、及び置換もしくは未置換のアラルキルオキシのうちのいずれかを表す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、光スイッチング等に有用な新規な化合物からなる色素薄膜及びその製造方法、並びに前記色素薄膜を用いて形成した光スイッチ、光分配器及び光変調器に関する。
色素誘導体、特にシアニンやポルフィリンやスクエアリリウム色素誘導体の中には会合体を形成するものがあることが知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。前記会合体とは、数十〜数百の分子が規則正しく配列して緩く結合し、光学的にあたかも一つの超分子として振る舞うものをいい、特に図8に示すように、その吸収帯(b)が、分子単体の吸収帯(a)に比べ長波長側にシフトし、先鋭化したものをJ−会合体という。
J−会合体は、ストークスシフトの小さな蛍光を発し、吸収ピーク付近の波長の光に対して極めて大きな相互作用を持ち、しかも、3次の非線形光学効果である吸収飽和の回復が非常に速いことが報告されている(例えば、非特許文献3、4参照)。また、実際に固体基板上形成したスクエアリリウム色素会合体薄膜の光に対する応答時間が、300fs(1fs=10-15秒)以下であったことが確認された(例えば、非特許文献5参照)。
さらに、最近、100fsを切る超高速応答特性を有し、80fJ/μm2という低エネルギーで駆動可能なスクエアリリウム色素誘導体の会合体薄膜が実現した(例えば、非特許文献6、7参照)。このような特徴により、スクエアリリウム誘導体の会合体薄膜は、テラビット(1012bit/s)オーダーの光情報通信の際の光スイッチとして使用され得るものであると認められる。
本発明者らは、既にスクエアリリウム色素誘導体が基板上で会合体を形成し、かつフェムト秒オーダーの超高速光学応答特性を示すことを確認した(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、実際の光ファイバー通信ネットワークの信号光の波長が1.3μmまたは1.55μmであるため、その光通信システムに応用できる光スイッチには1.3μmまたは1.55μm付近に強い吸収がある色素膜が必須であるにもかかわらず、前記色素会合体膜の超高速光応答は会合体吸収ピーク(780nm)付近の波長の光に対してしか実現できないため、今の段階では、1μmを超える波長で動作する実用に適した光スイッチへの適用が困難である。
一方、従来、極大吸収波長が1μmを超える近赤外吸収色素が数種類あった(例えば、非特許文献8参照)。しかしながら、それらの長波長吸収色素の特徴は、色素分子が大きいπ−共役系からなったもので、以下に挙げる問題点がある。
1)色素のモル吸光係数が小さい。
2)π−共役系が長すぎて熱安定性が悪い。
3)溶解度が悪くて製膜が困難である。
従って、今までの長波長吸収色素では、実際に光スイッチへの応用が困難である。この課題を解決するために、長波長吸収色素の溶解度の増大や色素の熱安定性・昇華性の向上や膜中色素分子の会合性制御などに工夫をする必要がある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、既に下記一般式(II)で示され、1.1μm付近に極大吸収を有する新規な化合物を見出し、その会合体薄膜が1.3μm付近にフェムト秒オーダーの超高速光学応答特性を示すことを確認している(例えば、特許文献3、4及び特願2003−332957号明細書参照)。
Figure 2005343977
前記一般式(II)中、R1及びR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、直鎖アルキル基または分岐化したアルキル基を示す。
しかし、前記の新規な化合物の溶解性には限界があるため、溶液塗布により作製されたその会合体薄膜(色素薄膜)では、実用的な光スイッチ(厚さ:1μm以上程度)に用いるため色素薄膜としての膜厚や膜厚均一性が不十分であった。
以上の理由により、極大吸収波長が1μmを超え、高い熱安定性に加えより良い高い溶解性を有する近赤外吸収色素からなり、1.3μmまたは1.55μm付近に強い吸収かつ超高速光学応答性を有する色素薄膜が求められている。
The Theory of the Photographic Process,T.H.James,ed.(Macmillan Co.,Inc.,New York,London,1968) The Theory of the Photographic Process,T.H.James,ed.(Macmillan Co.,Inc.,New York,London,1977) M.Furuki,L.S.Pu,F.Sasaki,S.Kobayashi and T.Tani,4th International Workshop on Femtosecond Technology Proceedings(1997)p.135 M.Furuki,L.S.Pu,F.Sasaki,S.Kobayashi and T.Tani,Appl.Phys.Lett.,72,21(1998)p.2648) 平成10年7月13日付け日刊工業新聞第1面 平成11年7月8日付け日経産業新聞第5面 M.Furuki,M.Tian,Y.Sato,L.S.Pu, H.Kawashima,S.Tatsuura and O.Wada,Appl.Phys. Lett.,78,18(2001)p.2634 J.Fabian,H.Nakazumi and M.Matsuoka,Chem.Rev.,92(1992)p.1197 特開平11−282034号公報 特開2000−111967号公報 特開2003−292487号公報 特開2003−315857号公報
本発明は、高い熱安定性を有するとともに、1.3μmまたは1.55μm付近に強い吸収かつ超高速光学応答特性を有し、厚膜で膜厚均一性に優れた色素薄膜及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明の目的は、前記色素薄膜を用いて形成された光スイッチ、光分配器及び光変調器を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、極大吸収波長が1μmを超え、かつ高い熱安定性、有機溶媒に対するより良い溶解性及び優れた成膜性を有する新規な色素化合物を用いることで、該色素化合物の溶液を基板に塗布することにより、熱安定性に優れ、かつ一定以上の膜厚や膜厚均一性を確保できる色素薄膜を容易に作製することができることを見出した。
さらに、形成された色素薄膜の極大吸収波長である1.3μm付近の光による誘導吸収飽和の回復時定数が非常に小さいこと(通信波長帯の光による超高速(フェムト秒領域)光応答特性)を利用して、色素薄膜を超高速光スイッチ、光分配器、及び光変調器の材料として用いることが可能であることを確認し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
<1> 下記一般式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする色素薄膜である。
Figure 2005343977
一般式(I)中、X1〜X10及びY1〜Y10は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、直鎖アルキル基、分岐化したアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、二置換アミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または置換もしくは未置換のアリールオキシ基、及び置換もしくは未置換のアラルキルオキシ基のうちのいずれかを表す。
<2> 前記一般式(I)中、X1〜X10及びY1〜Y10が同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、炭素数1〜20の直鎖アルキル基または分岐化した炭素数3〜20のアルキル基のうちのいずれかであることを特徴とする<1>に記載の色素薄膜である。
<3> 前記一般式(I)で示される化合物が、会合体を形成した状態で含有されていることを特徴とする<1>または<2>に記載の色素薄膜である。
<4> 前記会合体の吸収帯が、前記一般式(I)で示される化合物の分子単体の吸収帯に比べ長波長側にシフトしていることを特徴とする<3>に記載の色素薄膜である。
<5> <1>〜<4>のいずれかに記載の色素薄膜の製造方法であって、
前記一般式(I)で示される化合物を溶媒に溶解し、得られた溶液を基板上に塗布することにより成膜することを特徴とする色素薄膜の製造方法である。
<6> 前記溶媒が、ハロゲン系炭化水素、エーテル類、及びアルコール類のうちの少なくとも1つであることを特徴とする<5>に記載の色素薄膜の製造方法である。
<7> 前記溶液中の前記一般式(I)で示される化合物の濃度が、0.1〜15重量%の範囲であることを特徴とする<5>または<6>に記載の色素薄膜の製造方法である。
<8> <1>〜<4>のいずれかに記載の色素薄膜を用いることを特徴とする光スイッチである。
<9> 色素薄膜を光制御部とし、該色素薄膜の吸収スペクトルにおける極大吸収領域あるいは長波長側の共鳴近傍の領域に信号光及び制御光の波長を設定し、該制御光により前記光制御部の屈折率の実部あるいは虚部、または実部及び虚部を変化させ、前記信号光に位相差を生じさせることにより光スイッチングを行うことを特徴とする<8>に記載の光スイッチである。
<10> 前記一般式(I)で示される化合物が会合体を形成した状態で含有されており、面積が1mm2以上である色素薄膜を用いることを特徴とする<8>または<9>に記載の光スイッチである。
<11> 前記一般式(I)で示される化合物を含有する複数の色素薄膜を、基板上に互いに間隔をおいて配置した光制御部を備えること、あるいは前記一般式(I)で示される化合物を含有する同一の色素薄膜上の互いに間隔を置いた複数の領域に光制御部を備えることを特徴とする<9>または<10>に記載の光スイッチである。
<12> <1>〜<4>のいずれかに記載の色素薄膜を用いることを特徴とする光分配器である。
<13> <1>〜<4>のいずれかに記載の色素薄膜を用いることを特徴とする光変調器である。
本発明の色素薄膜では、特定の化合物を用いたことにより1.3μm付近に強い吸収を有し、媒体として充分な厚さと膜厚均一性を確保することができる。また、この色素薄膜は1.3μm付近の光による誘導吸収飽和の回復時定数が非常に小さい、すなわち、通信波長帯の光による超高速(フェムト秒領域)光学応答特性を有する。したがって、この色素薄膜を用いた光スイッチ、光分配器及び光変調器は通信波長帯の光による超高速応答特性を有する。さらに、本発明の色素薄膜は熱安定性にも優れているため、前記光スイッチ等に用いた場合のスイッチの動作の安定性や繰り返し周波数等の点で優れている。
以下、本発明を詳細に説明する。
<色素薄膜及びその製造方法>
本発明の色素薄膜は、極大吸収波長が1μmを超え、かつより良い溶解性及び高い熱安定性を有する、下記一般式(I)で表される近赤外吸収の化合物(以下、「色素化合物」という場合がある)を含有する。
Figure 2005343977
上記一般式(I)において、X1〜X10及びY1〜Y10は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、直鎖アルキル基、分岐化したアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、二置換アミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または置換もしくは未置換のアリールオキシ基、及び置換もしくは未置換のアラルキルオキシ基のうちのいずれかを表す。
光スイッチの光制御部等に用いる色素薄膜に関しては、薄膜に用いる化合物の実効的な非線形性能や吸収性能を向上させるため、光との相互作用長を大きくする、すなわち膜厚を厚くするのが効果的である。
しかし前述のように、前記一般式(II)で示される化合物は1.1μm付近に吸収極大を有するが、溶剤に対する溶解性が充分でなく溶液塗布により厚膜の色素薄膜を得ることができなかった。また、元々一般式(II)で示される化合物は安定的に合成することが困難な化合物であり、例えば、これの溶解性等を改良するために、R1、R2にフェニル基等を単純に導入しようとしても目的生成物を得ることはできなかった。
本発明者らが鋭意検討した結果、一般式(II)で示される化合物の窒素原子に結合する基としてベンジル基を選択し、さらに前記R1、R2の双方に該ベンジル基を導入することにより、安定的に目的とする前記一般式(I)で示される新規化合物が得られることが見出された。そしてこの溶解性の高い新規化合物を用いることにより、高い熱安定性に加えて厚膜で膜厚均一性に優れた色素薄膜が得られ本発明を完成するに至った。
また、本発明における一般式(I)で示される化合物は、X1〜X10、Y1〜Y10といった置換基の数が多く、これらの組み合わせにより化合物の特性を種々変化させることができるため、前記溶解性、熱安定性等の特性変化を、容易にかつ多様に達成することができるという効果をも奏するものである。したがって、この色素化合物を用いた色素薄膜においては、要求特性に応じて前記化合物の置換基を変化させるだけで容易に種々の特性を得ることができる。
なお、前記アルキル基としては、炭素数が1〜20の範囲の直鎖アルキル基、炭素数が3〜20の範囲の分岐化したアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基としては炭素数が3〜18の範囲、分岐アルキル基としては炭素数が4〜18の範囲のものがより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
前記アルコキシル基としては、炭素数が1〜20の範囲のものが好ましく、炭素数が3〜20の範囲のものがより好ましい。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
また、前記アリール基としては、炭素数が6〜36の範囲のものが好ましく、炭素数が7〜26の範囲のものがより好ましい。具体的には、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
前記アラルキル基としては、炭素数が7〜36の範囲のものが好ましく、炭素数が8〜26の範囲のものがより好ましい。具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
また、前記二置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前記の通りである。
さらに前記アリールオキシ基としては、炭素数が6〜36の範囲のものが好ましく、炭素数が7〜26の範囲のものがより好ましい。具体的には例えば、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基等が挙げられる。
また、前記アラルキルオキシ基としては、炭素数が7〜36の範囲のものが好ましく、炭素数が8〜26の範囲のものがより好ましい。具体的には、例えば、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、3−フェニルプロポキシ基等が挙げられる。
前記各種結合基の中では、合成の容易さ、反応性、収率の良さと、化合物としての溶解性、熱安定性等の特性のバランスの観点から、水素原子、炭素数1〜20の直鎖アルキル基、または分岐化した炭素数3〜20のアルキル基が好ましい。より具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基がより好ましく、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が特に好ましい。
上記一般式(I)で示される化合物は、1.1μm付近に極大吸収を示し、従来の長波長吸収色素のように共役系を過剰に延長することなしに、大きくその吸収波長を長波長化することができる。また、テトラヒドロフランやクロロホルム等の有機溶剤に対する高度な溶解性及び高い熱安定性を有し、さらに昇華性及び成膜性等の点でも優れている。
これは、一般式(I)で示される化合物の基本骨格である、中心部分のジフラノニリウムメタノレートが、これまで知られているスクエアリック酸やクロコン酸に比べてはるかに優れたアクセプター性を有していることに基づくと考えられる。すなわち、この基本骨格構造を利用することにより、比較的短い共役系で極めて長波長領域に吸収を有する色素分子が得られる。
加えて、一般式(I)で示される化合物の構造においては、前記一般式(II)で示される化合物と比較して、分子両側に結合された大きなベンジル系の置換基が色素分子の溶解性や熱安定性等の向上に寄与することができる。このため、この色素分子は、従来の近赤外吸収色素と比べ、長波長吸光性、熱安定性、昇華性、溶解性及び成膜性等が優れているものと推察される。
また、本発明の化合物は、下記の構造式で示されるような構造をとり得る。この構造式で示される化合物は、前記一般式(I)で示される構造式を有する化合物の持つ前述のごとき特性と、同じ特性を有する。
Figure 2005343977
前記一般式(I)で表される化合物は、超高速応答性を有する光スイッチに有用である。さらに、この化合物は溶解性及び成膜性が優れているので、溶液塗布により容易に成膜が可能で、前記光スイッチ分野の他に、電子写真、光記録ディスク及び有機太陽電池など様々な分野に応用が可能である。
本発明の色素薄膜は、前記一般式(I)で示される化合物の溶液を基板に塗布することにより容易に作製することができる。
前記一般式(I)で示される化合物を溶解する溶媒としては、特に限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;プロピルアミン、ジエチルアミン等のアミン類;などを用いることができる。
これらの中でも、ハロゲン化炭化水素、エーテル類またはアルコール類のうちの少なくとも1つであることが好ましく、具体的には、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、モノクロロベンゼン、テトラヒドロフラン及び2−プロパノールが好ましく、ジクロロエタン、ジクロロプロパン及びテトラヒドロフランが特に好ましい。
また、前記一般式(I)で示される化合物の溶液中の濃度は0.1〜15重量%の範囲であることが好ましく、0.3〜10重量%の範囲であることがより好ましい。濃度をこの範囲とすることにより、膜中に良質の会合体を形成することができる。
前記基板としては、ガラス、石英、サファイア及びプラスチック等の材料を用いることができる。なお、基板としてフレキシビリティを有するフィルム状の基材を用いれば、例えばフレキシブルな光スイッチングデバイスを得ることができる。また反射型のデバイス構成にする場合は、金、銀、アルミニウムなどの金属基板、またはそれらを上記基板上に真空蒸着などすることで形成した反射性の基板を使用することができる。
前記のようにして得られた溶液を基板上へ塗布する方法としては、従来より知られた方法を用いることができ、例えば、バーコート法、スピンコート法、キャストコート法、ディップコート法等を挙げることができる。その後、必要により加熱して本発明の色素薄膜を得ることができる。
色素薄膜の厚さは、用途によっても異なるが、前記一般式(I)に示される化合物を用いれば50〜1200nm程度の範囲で制御することができる。本発明の色素薄膜は、有機溶媒に対するより良い溶解性及び優れた成膜性を有する新規な化合物を用いるため、厚さ1.2μm程度の膜を溶液塗布により容易に得ることができる。
本発明の色素薄膜の膜厚としては、200〜1200nmの範囲がより好ましい。膜厚がこの範囲であれば、前記の薄膜を構成する化合物と光との相互作用のため充分な作用長を確保することができ、光スイッチ等のスイッチング効率を高めることができる。また、同一のスイッチング効率を得るための光強度を低くすることができるため、光スイッチの長寿命化を図ることもできる。
また、本発明において得られる色素薄膜は、高濃度の溶液から塗布できるだけでなく、前記一般式(I)で示される化合物自体の成膜性が優れることから、厚膜で成膜した場合でも膜厚均一性が良好な薄膜を得ることができる。該膜厚均一性は、例えばAFM(原子間力顕微鏡)の観察画像から得られる表面粗さにより表すことができる。
本発明の色素薄膜においては、例えば厚さが約1μmの薄膜において、Nanopics(AFM)の観察画像で表面粗さが±30nm以下の範囲とすることができる。表面粗さをこの範囲とすることにより、光照射時における散乱を小さくすることができ、後述する光スイッチのOn/Off比を大きくすることができる。
前記一般式(I)で示される化合物の溶液を基板に塗布することにより形成される色素薄膜においては、色素化合物がJ−会合体に似た会合体、即ち、その吸収帯が色素化合物分子単体の場合の吸収帯に比べ、長波長側にシフトしている会合体を形成する。
したがって、本発明の色素薄膜は、そのままでも用いることができるが、色素薄膜を熱処理することにより、会合体形成をさらに促進させて用いることが好ましい。
上記熱処理における温度は60〜140℃の範囲であることが好ましい。処理温度が60℃未満となると、熱処理による効果が得られず、また、温度が140℃を超えると、色素の分解が顕著になる。処理時間は処理温度によって異なり、処理温度が高くなると処理時間は短くなる。一般的には5秒から60分間程度の範囲が好ましい。例えば、上記色素薄膜を60℃で熱処理する場合は処理時間は60分間程度であることが好ましく、140℃の場合は処理時間は1分間程度であることが好ましい。
本発明の色素薄膜の吸収特性を測定した結果、該色素薄膜が1.3μm付近に強い吸収強度を有することを確認した。また、該色素薄膜の極大吸収波長である1.3μm付近の光による誘導吸収飽和の回復時定数が非常に小さいこと(フェムト秒領域)を確認した。このことは、本発明の色素薄膜が、通信波長帯の光による超高速光学応答特性を有することを示す。
なお、本発明の色素薄膜の吸収特性における極大吸収(λmax)は、前記一般式(II)に示される化合物を用いた色素薄膜のλmaxに比べて低波長側にずれているため、後述する光制御部の屈折率の実部または実部及び虚部の変化を利用した光スイッチにおいて高速かつ高効率のスイッチング特性を得るという観点から好ましい。
さらに、本発明の色素薄膜は、ポリメチン系色素を用いた従来のものに比較して、π−共役系が短い色素化合物を用いるため、光スイッチに要求される熱安定性を十分具えている。
したがって、本発明の色素薄膜は、フェムト秒(10-15秒)領域での超高速光スイッチ、テラビット級光情報通信のための高性能かつ安定な超高速光スイッチ材料として非常に有望である。また、本発明の色素薄膜は、光分配器、光変調器の材料としても使用することができる。
<光スイッチ>
以上説明した本発明の色素薄膜を用いた光スイッチは、半導体を用いた光スイッチに比べて、応答時間が短い他、さらに下記のような利点を有している。
(1)材料が安価で、製造プロセスが簡易であるため、生産性に優れている。
(2)光スイッチの製造、動作ともに、常温、大気中で行なうことができる。
(3)大面積化が容易である。具体的には、これまで半導体材料では作製が不可能であるか極めて困難であった、大面積(直径数cm〜数十cm)の光スイッチを容易に形成することができる。
(4)多様な分子を利用することにより高機能化が容易であり、また、製膜に高温を必要としないため、他種材料とのハイブリット化が容易である。
本発明の光スイッチとしては、色素薄膜を光制御部とし、該色素薄膜の吸収スペクトルにおける極大吸収領域あるいは長波長側の共鳴近傍の領域に信号光及び制御光の波長を設定し、該制御光により前記光制御部の屈折率の実部あるいは虚部、または実部及び虚部を変化させ、前記信号光に位相差を生じさせることにより光スイッチングを行うものであることが好ましい。
ここで、上記屈折率の実部、虚部とは、吸収性の媒質(化合物)におけるいわゆる複素屈折率の実部、虚部をいい、前記屈折率の実部の変化は前記媒質に吸収されない光成分に基づいて起こるものであり、また、前記屈折率の虚部の変化は前記媒質に吸収される光成分に基づいて起こるものである。
この場合、前記屈折率の実部の変化は媒質の吸収に依存せず、変化は制御光の電場の振幅にほぼ追随可能であるため、応答速度が極めて速い。一方、前記屈折率の虚部の変化は媒質の吸収によるため、媒質中の分子の電子の実励起等を伴い、高い非線形性等が得られるものの、応答速度が遅い。
図1を用いて本発明の色素薄膜を用いた光スイッチについて説明する。
図1は、本発明の色素薄膜を用いた光スイッチの一例を示す模式的構造断面図である。なお、本発明において「光スイッチ」とは、図1に示すような光が入射される部分(光制御部)だけでなく、光制御部に入射される信号光や制御光を特定化するための光学系等を含めたものを意味する。そして、本発明の光スイッチにおいて、前記色素薄膜は主に光制御部に用いられる。
図1に示されるように、光スイッチ10における光制御部20は、ガラス基板14(厚さが例えば1000μm)の表面に、誘電体多層膜反射ミラー13(SiO2、TiO2またはAl23)と、本発明の色素薄膜12(膜厚:100〜1200nm)と、Auの薄膜11(膜厚:50nm)と、がこの順に形成されてなる。
本発明の光スイッチの一つの構成は、いわゆる誘導吸収飽和の現象を利用するものであり、制御光により光制御部20の色素薄膜12の屈折率の虚部を変化させ光スイッチングを行うものである。この光スイッチでは、色素薄膜12の極大吸収領域の波長の信号光を色素薄膜12に入射すると、信号光は色素薄膜12により吸収されて透過あるいは反射することはなく信号オフとなる。一方、色素薄膜12の極大吸収領域の波長の光で、強度が信号光より大きな制御光を色素薄膜12に入射すると、色素化合物分子が励起されて極大吸収波長付近の波長の光を吸収しなくなり、その結果信号光が透過あるいは反射され信号オンとなる。また、誘導吸収飽和が回復する時間は極めて短く、応答時間がフェムト秒のスイッチングが可能になる。
つまり、この光スイッチ10は、上述のように、色素薄膜12の極大吸収波長付近の波長の制御光と、同じく色素薄膜12の極大吸収波長付近の波長の信号光との両者を照射することにより、信号オンと信号オフとを切り替えることができる。
なお、前記「色素薄膜の極大吸収領域」とは、色素薄膜の吸収スペクトルにおける吸収極大ピーク近傍の波長領域をいい、具体的には吸収極大λmaxの両側に吸光度が少なくとも0.3以上となる波長領域をいう。
上記構成の光スイッチに、例えばパルス幅100fsの信号光(波長:1310nm、光強度:500nJ/cm2)及び制御光(波長:1310nm、光強度:600μJ/cm2)を用いたところ、制御光の照射時のみ信号光の反射が観測され、光スイッチ動作が確認された。この光スイッチの応答時定数は約110fsであった。
また、後述する方法によって求められるOn/Off比は、2〜10程度の範囲である。
本発明のもう一つの光スイッチの構成は、いわゆる光カー効果を利用するものであり、制御光により光制御部の屈折率の実部、または実部及び虚部を変化させて光スイッチングを行うものである。この光スイッチでは、通信波長帯で最も汎用的な波長である1.55μmには吸収を持たない色素薄膜を光制御部に用いた場合でも、制御光により誘起された屈折率変化により信号光を光スイッチングすることができる。
具体的には、本発明の色素薄膜を光制御部に用い、その薄膜の吸収スペクトルにおける長波長側の共鳴近傍の領域に信号光及び制御光の波長を設定し、該制御光により光制御部の屈折率の実部または実部及び虚部を変化させ、前記信号光に位相差を生じさせることにより光スイッチングを行う。その際、特に信号光及び制御光の波長を、色素薄膜に電子の実励起をほとんど生じさせない波長域、すなわちほとんど吸収のない波長域に設定することで、従来の光スイッチの性能を大幅に向上させることができる。
なお、本発明において、前記「色素薄膜の吸収スペクトルにおける長波長側の共鳴近傍の領域」とは、有機薄膜の吸収スペクトルの長波長側(吸収極大より長波長側)の吸収端近傍の波長領域をいい、具体的には長波長側の吸光度が多くとも0.3以下となる波長領域をいう。
また、前記「屈折率の実部を変化」に関しては、上記波長領域で信号光及び制御光を有機薄膜に照射した場合、屈折率の虚部の変化を完全に0とすることは困難であるため、上記虚部の変化がほとんどなく実質的に実部の変化のみの場合をいう。
図2に、この屈折率変化型の光スイッチの構成の一例を示す。
図2において、まず、信号光21(パルス光)及び制御光25(パルス光)の波長として、光制御部23の色素薄膜での吸収がほとんどない透明領域(吸光度が0.01程度のときの波長)での波長を選んだ場合について、その動作を説明する。
信号光21の光路には、偏光方向を直交させた一対の偏光子22及び24を、前記色素薄膜を介して図における両側に配置し、透過光量を最小にする(クロスニコル配置)。光ファイバなどにより伝送された信号光21(主として波長が1.55μm)は、平行光に変換され、偏光子22により直線偏光にされた状態で光制御部23に照射される。光制御部23は、本発明の色素薄膜(単層膜または多層膜)から構成されている。
制御光25がない状態では、偏光子22に対してクロスニコル配置に設定された検光子24により信号光21はブロックされるため、透過光成分は観測されない(オフ状態)。
この系に、信号光21に対し45°の傾きを持つ直線偏光である制御光25を、信号光21と同期させて光制御部23に照射する。すると制御光25により誘起された非線形光学効果により、光制御部23に、制御光25の偏光方向とそれに直交する方向の間で屈折率の差(屈折率異方性)が生じる。この屈折率異方性により、信号光21は光制御部23を通過する間に楕円偏光に変換される。すなわち、この場合には制御光25により光制御部23の屈折率の実部を変化させ、前記信号光21に位相差を生じさせている。
最終的に、前記楕円偏光中の検光子24と一致した方向成分のみが出力として観測される(オン状態)。こうして形成された光スイッチは、高いOn/Off比、超高速応答、任意の動作波長設定、及び高いスループットと低い駆動エネルギーなどの特徴を有する。
次に、信号光21及び制御光25の波長として、光制御部23(色素薄膜)の吸収領域での波長(吸光度で1程度のときの波長)を用いた場合であるが、この場合でも図2と同じ構成で光スイッチングを行うことが可能である。このときは、前記屈折率異方性に加え、吸収の異方性の効果も利用することになる。すなわち、制御光25により光制御部23の屈折率の実部及び虚部を変化させることとなる。
ただし、制御光25または信号光21の一部が色素薄膜に吸収されるため、光制御部23の膜厚を増すことでスループットが低下したり、非線形性能の向上が制限される恐れがある。また、電子の実励起を伴うことで電子の緩和時間が応答時間に影響を及ぼすようになり、結果的にスイッチング速度が低下する可能性が考えられる。
本発明においては、前記のように、制御光25により光制御部23の屈折率の実部だけでなく、実部及び虚部を変化させる方法を採用することができるが、上記のような光スイッチングデバイスの特性を考慮すると、色素薄膜に含まれる化合物に電子の実励起を生じさせず、主として光制御部23の屈折率の実部の変化を利用した光スイッチが好ましい。
上記構成の光スイッチに、例えばパルス幅100fsの信号光(波長:1550nm、光強度:300nJ/cm2)及び制御光(波長:1630nm、光強度:200μJ/cm2)を用いたところ(制御光波長での色素薄膜の吸光度は約0.05)、制御光の照射時のみ信号光の反射が観測され、光スイッチ動作が確認された。この光スイッチの応答時定数は約200fsであった。
また、後述する方法によって求められるOn/Off比は、5〜1000程度であった。
上記本発明の光スイッチにおいては、前記本発明の色素薄膜を1mm2以上の面積で形成することが好ましく、特に1〜400cm2の範囲、より好ましくは4〜100cm2の範囲の面積で成膜したものであることが好ましい。なお、前記説明した光スイッチの構造、構成要素等は、本発明において特に限定されるものではない。
また本発明の光スイッチにおいては、基板上に複数の色素薄膜を互いに間隔をおいて配置した光制御部を備えること、あるいは同一の色素薄膜上の互いに間隔を置いた複数の領域に光制御部を備えることが好ましい。具体的には、例えば前記本発明の色素薄膜の製造方法により、基板上に色素薄膜をある程度の面積の膜として形成した後、得られた膜を部分的にマスクすることにより、この膜を一列にまたはマトリックス状に分割すれば、極めて容易に1次元または2次元の光スイッチ列を作製することができる。この光スイッチ列は、並列光情報処理等の用途にも極めて有望である。
なお、前記複数の色素薄膜あるいは同一の色素薄膜上の複数の領域を互いに間隔を置いて配置する態様としては、前記のように一定間隔で列状に配置してもよいし、ランダムに配置してもよい。
<光分配器、光変調器>
次に、本発明の色素薄膜を応用した光分配器、光変調器について説明する。
本発明の光変調器は、光路変換素子、レンズ、ミラー、方向性結合器の他、制御光により誘起された屈折率変化により信号光を変調するデバイスすべてを含むものである。また、屈折率変化の要因は特に限定しておらず、吸収飽和の回復現象以外にも、色素薄膜が示す非線形光学効果のすべてを利用することができる。なお、本発明において、光分配器は例えば本発明の光スイッチを組み合わせることにより製造することができる。
図3は、光分配器及び光変調器(DEMUX)として機能する、光スイッチ列を形成した超高速空間変調素子の概略構成図である。
超高速空間光変調素子15は、図3に示すような個々の光スイッチが集合した光スイッチ列により構成される。光スイッチ列は、基板上に色素薄膜を全面に形成した後、その上にマスクを形成して、色素会合体薄膜をたとえば一列にまたはマトリックス状に分割された状態に露出させることにより、容易に作製することができる。
この超高速空間変調素子15の動作原理を説明する。まず、十分に波面の広がった信号光(パルス光)1、2、3、4を超高速空間変調素子15の全面に対して垂直に入射させる。一方、同様に波面を広げた制御光を超高速空間変調素子15に対して傾斜した方向から入射させる。この場合、各々の光スイッチに到達する制御光の光路長が違うため、超高速空間光変調素子15における光スイッチ列中の唯一の光スイッチのみを動作させることが可能である。
即ち、制御光と信号光との双方が照射された光スイッチは信号光を透過させる。そして、透過した信号光は、動作した光スイッチの位置に対応した受光素子アレイ16に到達する。このとき、信号光の強度は制御光により変調される。即ち、テラビット信号光1〜4はギガビット信号光に変換される。従って、超高速空間変調素子15は光変調器として機能する。また、信号光と制御光の交わる位置が各光スイッチに対応するよう信号光と制御光とを同期させることにより、シリアルに送られてきた信号光を各受光素子に割り振ることが可能になる。つまり、超高速空間変調素子15は光分配器としても機能する。
図4に、屈折率変化型の光スイッチを備えた超高速空間変調素子の一例の構成を示す。
共にパルス状の光である信号光31及び制御光35を空間的に展開し、シート状の光とする。これらを前記色素薄膜からなる光制御部33へ入射するが、制御光35を斜めから入射し、かつ部分的に時間遅延を与えることで、制御光35が異なった時間に光制御部33の各位置に到達するようにする。この時、制御光35が光制御部33の各位置に到達する時間と、信号光31の各パルスが光制御部33に到達する時間を一致させることで、シリアル信号である信号光31を単一の制御光により並列複数出力に変換することが可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
<実施例>
(色素薄膜の作製)
前記一般式(I)中、X1〜X10及びY1〜Y10が水素原子である化合物を無水テトラヒドロフラン中に溶解し、テトラヒドロフラン中に1.5重量%の色素化合物を含有する溶液を得た。次いで、この溶液をスピンコート法により、ガラス基板(30mm×30mm)上に塗布し、膜厚が210nm、面積が9cm2の色素薄膜を得た。この色素薄膜のNanopics(AFM)観察画像での表面粗さは約±10nmであった。
得られた色素薄膜の吸収スペクトルを図5に示す。図5中1168nm付近に現われている吸収ピークは会合体に由来している。前記化合物の単分子の溶液状態の吸収ピークは1080nmであるため、この色素薄膜中における会合体由来の吸収帯が、単分子由来の吸収帯より88nm以上も長波長化していることがわかる。
(色素薄膜特性評価)
作製した色素薄膜の超高速光スイッチへの応用の可能性を検証するために、吸収飽和の回復時定数を測定し、検討を行った。具体的には、得られた色素薄膜についてポンプ/プロープ法によって測定した。
波長が1310nm、その光強度が500nJ/cm2.pulse、パルス幅が100fs、パルス間隔が10nsのプローブ光を信号光として、波長が1310nm、光強度が600μJ/cm2.pulse、パルス幅が100fs、パルス間隔が10nsのポンプ光を制御光として用い、各々を前記色素薄膜に照射し、色素薄膜の吸光度変化量を測定した。
測定された吸光度変化量の経時変化を、モデル関数によりフィッティングした結果を図6に示す。この結果から、作製した色素薄膜の光応答は、吸収飽和の回復時定数が約110fsである速い成分を65〜75%、吸収飽和の回復時定数が約3.7psである遅い成分を35〜25%含有していることが判明した。従って、作製された色素薄膜に代表される本発明の色素薄膜は、1THz以上で動作可能な超高速光スイッチに応用することができることがわかった。
(光スイッチ特性評価)
次に、作製した色素薄膜を用いた光スイッチについて、Kerr光スイッチング性能調べた。光スイッチの構成は図2に示すような構成とし、光制御部23に前記色素薄膜を用いた。制御光25、信号光21としては、チタン・サファイアレーザパルスを再生増幅し、Optical parametric amplifierにより波長を通信波長帯の光に変換したもの(信号光の波長:1550nm、制御光の波長:1630nm)を用いた。またこの光のパルス幅は約100fsであった。
上記構成により、前記信号光21及び制御光25の光パルスをレンズにより光制御部23に集光し、信号光21をスイッチングした。なお、このときの集光部分の直径は、約1.7mmであった。
前記光スイッチングシステムの光出力結果(波長に対する光出力強度)を検討した結果、制御光強度が2pJ/μm2のとき、光スイッチのOn/Off比(〔制御光が前記色素薄膜に照射している(On状態)時の信号光強度〕/〔制御光が前記色素薄膜に照射していない(Off状態)時の信号光強度〕)は約10(10dB)であった。なお、この光スイッチの応答速度は200fs程度であった。この結果は、作製した本発明の色素薄膜が、従来の色素薄膜に比べて優れた光スイッチング性能を持つことを示している。また、同時にこの光スイッチでは、実励起を伴わないことから遅い応答成分も存在しないことがわかった。これらの結果から、前記色素薄膜を用いた光スイッチにより、1THz以上の繰り返し速度を持つ信号光を、高いOn/Off比でスイッチングすることが可能なことがわかった。
<参考例>
(色素薄膜の作製)
前記一般式(II)中のR1及びR2がiso−ブチル基の化合物を無水テトラヒドロフラン中に溶解し、テトラヒドロフラン中に1.2重量%の色素化合物を含有する溶液を得た。この際、この溶液は実施例における色素化合物溶液と同じ色素モル濃度を有していた。次いで、この溶液をスピンコート法により、実施例と同様のガラス基板上に塗布し、膜厚が160nmの色素薄膜を得た。なお、この色素薄膜のNanopics(AFM)観察画像における表面粗さは約±15nmであった。
得られた色素薄膜の吸収スペクトルを図7に示す。図7中1192nm付近に現われている吸収ピークは会合体に由来している。前記化合物の単分子の溶液状態の吸収ピークは1081nmであるため、この色素薄膜中における会合体由来の吸収帯が、単分子由来の吸収帯より111nm以上も長波長化していることがわかる。
(光スイッチ特性)
作製した色素薄膜を、実施例と同様に図2に示す構成の光スイッチの光制御部とし、同様な条件でKerr光スイッチング性能を調べた。
その結果、制御光強度が2pJ/μm2のとき、上記色素薄膜を用いた光スイッチの応答速度は200fs程度であったが、On/Off比は約3(5dB)と実施例に比べ劣っていた。
本発明の光スイッチの一例の断面構造を示す模式図である。 本発明の他の光スイッチの構成の一例を示す概略図である。 超高速空間変調素子の一例を示す概略構成図である。 超高速空間変調素子の他の一例を示す概略構成図である。 本発明の色素薄膜の吸収スペクトルである。 本発明の色素薄膜に制御光を照射したときの吸収回復の時間変化を示すグラフである。 参考例の色素薄膜の吸収スペクトルである。 (a)は、色素分子がランダムに分散しているときの吸収スペクトルを示す図であり、(b)は色素分子が会合体を形成しているときの吸収スペクトルを示す図である。
符号の説明
1、2、3、4 テラビット信号光
10 光スイッチ
11 Au薄膜
12 色素薄膜
13 誘電体多層膜反射ミラー
14 ガラス基板(基板)
15 超高速空間変調素子
16 受光素子アレイ
21、31 信号光
22、26、32、34、37 偏光子
20、23、33 光制御部
24 検光子
36 光遅延素子
38 信号検出部

Claims (13)

  1. 下記一般式(I)で示される化合物を含有することを特徴とする色素薄膜。
    Figure 2005343977
    (一般式(I)中、X1〜X10及びY1〜Y10は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、直鎖アルキル基、分岐化したアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、二置換アミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または置換もしくは未置換のアリールオキシ基、及び置換もしくは未置換のアラルキルオキシ基のうちのいずれかを表す。)
  2. 前記一般式(I)中、X1〜X10及びY1〜Y10が同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、炭素数1〜20の直鎖アルキル基または分岐化した炭素数3〜20のアルキル基のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の色素薄膜。
  3. 前記一般式(I)で示される化合物が、会合体を形成した状態で含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載の色素薄膜。
  4. 前記会合体の吸収帯が、前記一般式(I)で示される化合物の分子単体の吸収帯に比べ長波長側にシフトしていることを特徴とする請求項3に記載の色素薄膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の色素薄膜の製造方法であって、
    前記一般式(I)で示される化合物を溶媒に溶解し、得られた溶液を基板上に塗布することにより成膜することを特徴とする色素薄膜の製造方法。
  6. 前記溶媒が、ハロゲン系炭化水素、エーテル類、及びアルコール類のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項5に記載の色素薄膜の製造方法。
  7. 前記溶液中の前記一般式(I)で示される化合物の濃度が、0.1〜15重量%の範囲であることを特徴とする請求項5または6に記載の色素薄膜の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の色素薄膜を用いることを特徴とする光スイッチ。
  9. 色素薄膜を光制御部とし、該色素薄膜の吸収スペクトルにおける極大吸収領域あるいは長波長側の共鳴近傍の領域に信号光及び制御光の波長を設定し、該制御光により前記光制御部の屈折率の実部あるいは虚部、または実部及び虚部を変化させ、前記信号光に位相差を生じさせることにより光スイッチングを行うことを特徴とする請求項8に記載の光スイッチ。
  10. 前記一般式(I)で示される化合物が会合体を形成した状態で含有されており、面積が1mm2以上である色素薄膜を用いることを特徴とする請求項8または9に記載の光スイッチ。
  11. 前記一般式(I)で示される化合物を含有する複数の色素薄膜を、基板上に互いに間隔をおいて配置した光制御部を備えること、あるいは前記一般式(I)で示される化合物を含有する同一の色素薄膜上の互いに間隔を置いた複数の領域に光制御部を備えることを特徴とする請求項9または10に記載の光スイッチ。
  12. 請求項1〜4のいずれかに記載の色素薄膜を用いることを特徴とする光分配器。
  13. 請求項1〜4のいずれかに記載の色素薄膜を用いることを特徴とする光変調器。
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