JP2005343888A - 新規なフェロセン化多環式炭化水素誘導体、その製造方法、標的核酸を検出する方法 - Google Patents

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【課題】二本鎖核酸選択性が高く、二本鎖核酸と安定な複合体を形成するインターカレータとして有用な新規化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される新規なフェロセン化多環式炭化水素誘導体またはその塩若しくはその水和物。
Figure 2005343888

(式中、Aは多環式炭化水素を示し;Xはアルキレン基、−(CH−B−(CH−等を示し;Rは水素、アルキル基等を示し;R〜Rは水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示す。)
【選択図】図15

Description

本発明は、二本鎖核酸に対するインターカレータとして有用な新規化合物に関する。
生物学的または医学的研究や、臨床の場において、特定の塩基配列を有するDNAやRNA等の核酸を検出するために、その塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸をプローブとする方法が用いられている。かかる方法は、2つの核酸が互いに相補的な塩基配列を有している場合にのみ水素結合によって二本鎖を形成するという特異性に基づく。このような方法を用いる場合、標的となる核酸の検出には、標的核酸とプローブ核酸とがハイブリダイゼーションしたかどうかを確認する手段が必要となる。
ハイブリダイゼーションの有無を確認する手段として、標的核酸を蛍光物質等で標識しておく方法が良く知られている。例えば、ある細胞における遺伝子発現解析をするために、その細胞に含まれるRNAを蛍光標識し、固相担体に固定されたプローブcDNAと適当な条件下でハイブリダイゼーションさせた後、固相担体上の蛍光を検出する方法が広く用いられている。蛍光物質を用いる方法では、予め標的核酸に蛍光物質を化学的に結合させておく必要がある。またハイブリダイゼーションの有無は検出できるものの、二本鎖の形成を定量的に測定することができない。
このような問題を解決するものとして、二本鎖核酸に選択的に結合するインターカレータを用いる方法が提案されている。インターカレータとは、核酸の塩基間に縫い込まれるように挿入結合(インターカレーション)する性質を持つ分子をいい、例えばエチジウムブロマイドなどの色素が挙げられる。インターカレータは二本鎖核酸に規則的に縫い込まれるので、二本鎖が形成された量と結合するインターカレータの量に相関関係が得られ、ハイブリダイゼーションを定量的に測定することができる。またインターカレータはハイブリダイゼーション後に添加すればよく、予め標的核酸に結合させておく必要がない。
インターカレータを導電性のあるフェロセン等で修飾し、二本鎖核酸に結合したインターカレータを電気化学的に検出する方法も提案されている(例えば特許文献1および2参照)。電気化学的方法によれば、蛍光色素のように退色することもなく、リアルタイムでより正確な定量的測定を簡易に行うことが可能となる。このようなインターカレータとしては、下記式(8)
Figure 2005343888
や、下記式(9)
Figure 2005343888
で表されるフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体等が利用されている。
特開平9−288080号公報 WO02/053571
これまでにインターカレータとして利用されてきた上記式(8)で表されるピペラジン環含有フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、合成反応後の分離操作および精製操作等が煩雑であり、収率も10%前後と低い。また、二本鎖選択性が不十分であり、静電的相互作用による一本鎖核酸への結合量との間に十分な差が得られにくい傾向がある。さらに、二本鎖核酸−インターカレータ複合体も不安定で、解離反応が進むのも速いという問題があった。
また、上記式(9)で表されるフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、収率は比較的高いが、さらに安定性および二本鎖核酸選択性に優れたインターカレータが求められている。
そこで、本発明の目的は、合成反応後の分離操作および精製操作等が容易で高収率に得られ、二本鎖核酸選択性も高く、二本鎖核酸と安定な複合体を形成するインターカレータとして有用な化合物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み、優れたインターカレータを求めて鋭意研究を行った結果、下記式(1)
Figure 2005343888
(式中、Aは多環式炭化水素若しくはその誘導体を示し;Xは置換基を有していてもよ
い炭素数1〜6のアルキレン基、−(CH2)x−B−(CH2)y−[ここでBは窒素原子を1若しくは2個含む5員若しくは6員脂肪族複素環を示し;xおよびyはそれぞれ独立に0〜3の整数を示す]、または−(CH2a−(NR5)−(CH2b−(NR6)−(CH2c−[ここでa、bおよびcはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、R5およびR6はそれぞれ独立に水素またはメチル基を示す]のいずれかを示し;R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、炭素数7〜9のアリールアルキル基若しくはアリールアルケニル基、または炭素数2若しくは3のアルキルカルボニル基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。1分子中の二つの同一表示基は互いに同一でも異なっていてもよい。)、および下記式(3)
Figure 2005343888
(式中、Aは多環式炭化水素若しくはその誘導体を示し;Yは窒素原子を1または2個含む5員または6員脂肪族複素環であって、カルボニル基に結合する基が窒素原子である環を示し;R4は炭素数1〜6のアルキレン基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。1分子中の二つの同一表示基は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物またはその塩若しくはその水和物、中でも特に、Aがナフタレンジイミド基である化合物は、二本鎖に対する結合定数および選択性が高く、電流応答の再現性も良く、合成時に高収率で得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、

[1]下記式(1)
Figure 2005343888
(式中、Aは多環式炭化水素若しくはその誘導体を示し;Xは置換基を有していてもよ
い炭素数1〜6のアルキレン基、または窒素原子を1または2個含む5員または6員脂肪族複素環を間に挟む2つの炭素数1〜3のアルキレン基を示し;R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、炭素数7〜9のアリールアルキル基若しくはアリールアルケニル基、または炭素数2若しくは3のアルキルカルボニル基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。1分子中の二つの同一表示基は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物またはその塩若しくはその水和物;
[2]Xが下記式(2)
Figure 2005343888
である、前記[1]に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物;
[3]Xが、−C36N(CH3)C36−である、前記[1]に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物;
[4]下記式(3)
Figure 2005343888
(式中、Aは多環式炭化水素若しくはその誘導体を示し;Yは窒素原子を1または2個含む5員または6員脂肪族複素環であって、カルボニル基に結合する基が窒素原子である環を示し;R4は炭素数1〜6のアルキレン基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。1分子中の二つの同一表示基は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物またはその塩若しくはその水和物;
[5]Yがピペリジル基またはピペラジル基である前記[4]に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物;
[6]R4がメチレン基であり、Yがピペリジル基であってその窒素原子がカルボニル基の炭素原子に結合している、前記[4]に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物;
[7]Aがナフタレンジイミド基である前記[1]から[6]のいずれか1項に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物;
[8]m=n=0である前記[7]に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物;
[9]Aがナフタレンジイミド基である請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物を製造する方法であって、下記反応式(I)に示すように、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と式(4)で表される化合物とを反応させて、式(5)で表される化合物を得る第一工程と、下記反応式(II)に示すように、式(5)で表される化合物とフェロセンカルボン酸スクシンイミドエステルとを反応させて、目的物を得る第二工程と、を含む製造方法;
Figure 2005343888
[10]Aがナフタレンジイミド基である前記[3]に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物を製造する方法であって、下記反応式(III)に示すように、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と式(6)で表される化合物とを反応させて、式(7)で表される化合物を得る第一工程と、下記反応式(IV)に示すように、式(7)で表される化合物とフェロセンカルボン酸スクシンイミドエステルとを反応させて、目的物を得る第二工程と、を含む製造方法;
Figure 2005343888
[11]標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブ核酸と、被検試料とをハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させる工程と、
前記[1]から[8]のいずれか1項に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物を添加する工程と、
二本鎖核酸に結合した前記化合物の電気化学応答を測定する工程と、
を含む、被検試料中の標的核酸を検出する方法;
[12]標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブ核酸が固定された電極と、前記[1]から[8]のいずれか1項に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物とを含む、標的核酸検出用キット、に関する。
本発明により、合成反応後の分離操作および精製操作等が容易で高収率に得られ、二本鎖核酸に対する選択性の高いインターカレータとして有用な、新規なフェロセン化多環式炭化水素誘導体および新規なフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体が提供される。本発明に係るフェロセン化多環式炭化水素誘導体およびフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、二本鎖核酸に挿入結合(インターカレーション)した後、二本鎖核酸と安定な複合体を形成するので、検出もしやすい。
本発明に係る新規化合物を用いれば、特定の配列を有するDNA、RNA等の核酸を、リアルタイムで高感度かつハイスループットに検出することが可能となる。
以下、本発明に係る化合物を、その好ましい実施形態に基づいて詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何等限定するものではない。
本発明に係る化合物は、その一実施形態として、下記式(1’)
Figure 2005343888
で表される新規なフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(化合物(1’))を提供する。かかるフェロセン化ナフタレンジイミドは、特に、二本鎖核酸に選択的に結合するインターカレータとして有用なものである。
本発明における化合物(1’)の「塩」としては、無機塩基との塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられ、特に限定されないが、最も好ましくは塩酸塩である。
また本発明に係る化合物(1’)は水和物であっても非水和物であってもよい。
本発明の化合物は、前記式(1’)に示されるように、ナフタレンジイミド部と、フェロセン部と、両部を繋ぐリンカー部分である「−X−NR1−CO−C24−」と
から構成されている。そして、上記ナフタレンジイミド部は、DNA等の二本鎖等の隣り合った塩基対の間に平行に挿入される芳香族板状分子構造の縫い込み型インターカレータ部分として機能する。一方、上記フェロセン部は、酸化還元活性を有するので、その存在を電気化学的に検出することができる。これにより、化合物1’は、電気化学活性縫い込み型インターカレータとして機能することができる。本発明の化合物は、上記リンカー部分を前記式(1’)に示す構造としたことにより、合成反応後の分離操作および精製操作等が容易で、収率も高く、特に二本鎖選択性の高いインターカレータとなっている。
式(1’)中、Xがピペラジル基を含む下記式(2)
Figure 2005343888
であるもの、およびXが−C36N(CH3)C36−であるものは、インターカレータとして用いた場合に、二本鎖核酸への会合反応が速く進む一方で解離反応が抑制され、安定した二本鎖核酸−インターカレータ複合体を形成することができる。
また、式(1’)中、mおよびnが1または2である場合(0でない場合)において、R2およびR3で示される水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基としては、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、ジメチルアミノメチル基およびジメチルアミノエチルアミノカルボニル基等が挙げられる。例えば、ジメチルアミノメチル基の場合には、水溶液中でプロトン化して電子求引基であるジメチルアンモニウムメチル基として機能する。特に、本発明の化合物をインターカレータとして水溶液中で使用する場合には、無置換のフェロセニル基を含む化合物も好ましいが、R2およびR3として上記の水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を含む化合物は、水溶液中での電子供与基または電子求引基によって電流量の測定時の電位が変化し、その利用価値も高いため好ましい。
また式(1’)中、R1で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基およびプロピル基等が挙げられ、アルケニル基としては、2−プロぺニル基等が挙げられ、アルキニル基としては、エチニル基および2−プロピニル基等が挙げられ、アリールアルキル基としては、ベンジル基およびメチルベンジル基等が挙げられ、アリールアルケニル基としては、3−フェニル−2−プロペニル基等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、アセチル基等が挙げられる。特に、本発明の化合物をインターカレータとして使用する場合には、R1は、核酸に対する結合時の障害を回避できる点で、立体的に嵩高くない基、例えば、水素、メチル基等であることが好ましい。
特に本発明の化合物のうち、Xが上記式(2)を示し、R1が水素であり、かつm=n=0(R2およびR3の置換基を有さず無置換;即ち、R2およびR3が水素原子)である化合物、即ち下記式(10)
Figure 2005343888
および、下記式(10’)
Figure 2005343888
で表される化合物は、高収率で得られ、二本鎖核酸選択性が高く、核酸と安定な複合体を形成するインターカレータであり、特に好適である。
本発明に係る化合物(1’)の製造方法は特に限定されないが、以下の製造方法、即ち、下記反応式(I)に示すように、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と式(4)で表される化合物とを反応させて、式(5)で表される化合物を得る第一工程と、下記反応式(II)に示すように、式(5)で表される化合物とフェロセンカルボン酸スクシンイミドエステルとを反応させて、目的物を得る第二工程とを含む製造方法が収率の面等で好ましい。
Figure 2005343888
ここで、上記反応式(I)に係る反応においては、例えばテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中で反応物を加熱還流し、その後、生成物を再結晶等により分離・精製する等通常の合成法で行われる操作を必要に応じて行う。
上記反応式(II)に係る反応においては、例えばまず化合物(5)をトリフルオロ酢酸(TFA)等の溶媒中で撹拌し、ブトキシカルボニル基(Boc)で保護されたアミノ基の脱保護を行い、続いて、クロロホルム、トリエチルアミン等の溶媒中で反応物を撹拌し、減圧での溶媒除去や再結晶等により分離・精製する等の通常の合成法で行われる操作を必要に応じて行う。
また、本発明に係る化合物は、その一実施形態として、下記式(3’)
Figure 2005343888
で表される新規なフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(化合物(3’))を提供する。かかるフェロセン化ナフタレンジイミドは、特に、二本鎖核酸に選択的に結合するインターカレータとして有用なものである。
本発明における化合物(3’)の「塩」としては、無機塩基との塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられ、特に限定されないが、最も好ましくは塩酸塩である。また、本発明に係る化合物(3’)は水和物であっても非水和物であってもよい。
本発明の化合物は、前記式(3’)に示されるように、ナフタレンジイミド部と、フェロセン部と、両部を繋ぐリンカー部分である「−R4−Y−CO−C24−」とから構成されている。そして、上記ナフタレンジイミド部は、DNA等の二本鎖等の隣り合った塩基対の間に平行に挿入される芳香族板状分子構造の縫い込み型インターカレータ部分として機能する。一方、上記フェロセン部は、酸化還元活性を有するので、その存在を電気化学的に検出することができる。これにより、化合物(3’)は、電気化学活性縫い込み型インターカレータとして機能することができる。本発明の化合物は、上記リンカー部分を前記式(3’)に示す構造としたことにより、合成反応後の分離操作および精製操作等が容易で、収率も高く、二本鎖選択性の高いインターカレータとなっている。
式(3’)中、Yが窒素原子を1または2個含む5員または6員脂肪族複素環であるものは、インターカレータとして用いた場合に、二本鎖核酸への会合反応が速く進む一方で解離反応が抑制され、安定した二本鎖核酸−インターカレータ複合体を形成することができ、この点でYは特にピペリジル基またはピペラジル基であることが好ましい。
また式(3’)中、Rがメチレン基であり、Yがピペリジル基であってその窒素原子がカルボニル基の炭素原子に結合しているものは、分離精製操作が容易な点や、二本鎖核酸と安定した複合体を形成する点で特に優れている。
式(3’)において、m、n、R2およびR3の定義については、上記化合物(1’)と同様である。
化合物(3’)の製造方法は特に限定されないが、以下の製造方法、即ち、下記反応式(III)に示すように、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と式(6)で表される化合物とを反応させて、式(7)で表される化合物を得る第一工程と、下記反応式(IV)に示すように、式(7)で表される化合物とフェロセンカルボン酸スクシンイミドエステルとを反応させて、目的物を得る第二工程とを含む製造方法が収率の面等で好ましい。
Figure 2005343888
ここで、上記反応式(III)および(IV)に示される反応は、上記反応式(I)および(II)にそれぞれ準じた操作によって行なうことができる。
本発明に係る化合物(1’)および(3’)は、従来公知のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体に比べて、中でも従来からインターカレータとして用いられている前記ピペラジン環含有フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体に比べて、合成反応後の分離操作および精製操作が容易で、しかも、高い収率で得ることが可能なものである。
本発明の化合物の用途は特に制限されず、種々の用途に応用できるが、前述の通り、二本鎖核酸に対して規則的に挿入結合するインターカレータとして優れている。
本発明に係る化合物の二本鎖核酸に対するインターカレータとしての機能は、例えば、本発明の化合物と二本鎖核酸との混合物において、二本鎖核酸の濃度変化にともなう紫外可視吸収スペクトルの変化を測定することによって評価できる。一般にインターカレータが二本鎖核酸に挿入結合すると、紫外可視吸収スペクトルにおいて、小さな長波長シフトと極大吸収の淡色効果が観察される。スペクトルの変化から算出した結合率に基づいて、スキャッチャードプロット(Scatchard Plot)により結合定数および座位数を算出することにより、結合能の強さを数値化して評価することができる。
ここで、二本鎖核酸とは、相補的な塩基配列を有する2つの一本鎖核酸が、塩基間の水素結合によって比較的安定な二本鎖を形成した状態をいう。核酸としては、例えば、DNAやRNAが挙げられるがこれらに限定されず、また細胞から抽出されたものでも、人工的に合成されたものであってもよい。
本発明に係る化合物をインターカレータとして用いれば、特定の塩基配列を有する標的核酸の検出をすることができる。かかる検出は、例えば、標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブ核酸と、被検試料とをハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させる工程と、本発明に係る化合物を添加する工程と、二本鎖核酸に結合した前記化合物の電気化学応答を測定する工程と、を含む方法により行うことができる。また、標的核酸に相補的な塩基配列を有するプローブ核酸を電極に固定しておくことにより、二本鎖核酸に挿入結合した本発明にかかる化合物の量をサイクリックボルタンメトリーやディファレンシャルパルスボルタンメトリーによって電気化学的に測定することができる。かかる測定方法により、二本鎖の形成を定量的に測定することが可能となり、これを利用して被検試料における標的核酸の定量的測定を、リアルタイムで高感度かつハイスループットに行うことができる。
本発明は、標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブ核酸が固定された電極と、本発明に係る化合物とを含む標的核酸検出用キットも提供する。電極を、ボルタンメトリーでそのまま測定できるチップ状に形成しておくことにより、標的核酸の検出をより簡便に、ハイスループットに行うことができる。
本発明の化合物を用いた標的核酸の検出方法は、遺伝子の発現解析、特定の遺伝子がゲノムに存在するかどうかの検出、変異や多型の検出、ウィルスや細菌の検出に応用して用いることができ、生物学、医学、法医学等の分野において広く利用される。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、種々の変更形態を採用することができる。具体的には、前記式(1’)におけるN,N’−ジ置換ナフタレンジイミド〔前記式(1)におけるAに相当〕を、その他の種々の多環式炭化水素若しくはその誘導体、例えば、芳香属炭化水素、脂肪属複素環、芳香属複素環、脂環式炭化水素等の環を複数有する化合物またはその誘導体、具体的には、1,5−、2,6−、9,10−ジ置換アントラセン、1,5−、2,6−ジ置換アントラキノン、1,5−、2,6−、4,9−ジ置換アクリジン誘導体等に変更することが可能である。
式(1)におけるAを9,10−ジ置換アントラセンとした新規なフェロセン化アントラセン誘導体も同様に好ましく、このような化合物として、例えば、Xが−CH2−NH−C36−N(CH3)−C36−である、下記式(11)が挙げられる。
Figure 2005343888
このフェロセン化アントラセン誘導体は、例えば、下記に示す合成例のように、フェロセンプロピオン酸スクシンイミドエステルを用いて得ることができる。
Figure 2005343888
前記フェロセン化アントラセン誘導体も、前述した前記式(1’)および式(3’)で表されるフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と同様に、合成反応後の分離操作および精製操作等が容易で、しかも単離・精製収率が30%と高く、特にインターカレータとして有用な化合物として提供できる。尚、このフェロセン化アントラセン誘導体に関して特に詳述しない点については、前述のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と同様である。従って、該フェロセン化アントラセン誘導体における各置換基の例や、用途等については、前述のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体について説明した事項が適宜適用される。
以下に、本発明に係る化合物の有利な効果を示すため、実施例、試験例を示すが、これらは例示的なものであって、本発明は如何なる場合も以下の具体例に制限されるものではない。
NFcproの合成
(i)リンカー部の片Boc保護
本発明に係る化合物の例として、上記式(10)で表される新規フェロセン化ナフタレンジイミド(以下「NFcpro」と称することもある)を合成するために、まずリンカー部となる1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンの片Boc保護を、下記スキームにしたがって行った。
Figure 2005343888

1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン51.6ml(0.25mol)を1,4−ジオキサン約20mlに溶解させ、これにS-tert-butyloxycarbonyl-4,6-dimethyl-2-mercaptopyrimidine12.0g(0.05mol)を1,4−ジオキサン約80mlに溶解させた溶液を室温で約5時間かけて滴下した。滴下後しばらく撹拌していると溶液の粘性が高くなったのでさらに1,4−ジオキサンを約200ml加え、その後一晩撹拌を続けた。
生成した白色沈殿を吸引ろ過で取り除き、ろ液を減圧留去した。減圧留去後純水約150mlを加え、それにNaClを加えて塩析を行った後、酢酸エチルで抽出を行った(100ml×4)。有機層を炭酸カリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して黄色油状物質を得た。
得られた化合物の1H−NMR測定を行った。1H−NMRスペクトルデータを表1に示す。
Figure 2005343888
以上の結果より、得られた黄色油状物質は、下記式で表される化合物(12)であると同定された。収量は12.3g、収率は82%であった。
Figure 2005343888
上記構造式中のa〜fは、表1中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
なお、1H−NMR測定結果に酢酸エチルのピークが認められたため、真空ポンプでよく乾燥させた後、次の反応に進んだ。
(ii)ナフタレンテトラカルボン酸二無水物への化合物(12)の結合
続いて、上記反応式(I)に示される反応として、下記スキームに従い、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物にリンカー部となる化合物(12)を結合させた。
Figure 2005343888
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物4.64g(0.017mol)と化合物(12)12.0g(0.040 mol)をTHF150ml中で加熱還流した。約23時間後、溶媒を減圧留去した。得られた茶褐色固体をクロロホルムに溶解させ、不溶成分を吸引ろ過によって取り除き、ろ液を減圧留去して茶褐色固体を得た。これをメタノール約200mlに溶解させ、不溶成分(肌色固体)を吸引ろ過でろ別し、ろ液を水1000mlで再沈殿した。一晩静置したのち結晶を取り出してデシケーターで乾燥させて黄土色固体を得た。
得られた化合物の1H−NMR測定を行った。1H−NMRスペクトルデータを表2に示す。
Figure 2005343888
以上の結果より、得られた黄土色固体は、下記式で表される化合物(13)であると同定された。収量は2.4g、収率は17%であった。
Figure 2005343888
上記構造式中のa〜kは、表2中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
なお、1H−NMR測定結果で、hの積分比があっていないのは、メタノールのヒドロキシル基のピークと水のピークが重なっているためであると考えられる。
(iii)ブトキシカルボニル基(Boc)で保護されたアミノ基の脱保護
次に、下記スキームに従い、化合物(14)を得るために、化合物(13)の脱Boc反応を行った。
Figure 2005343888
化合物(13)2.41g(2.89mmol)にTFA7mlを加え、室温で約7時間撹拌した。撹拌停止後溶媒を減圧留去し、赤色固体を得た。これをメタノールに溶解させた後、クロロホルムで再沈殿を行い薄紫色固体を得た。
得られた固体の1H−NMR測定および元素分析を行った。1H−NMRスペクトルデータを表3に、元素分析の結果を表4に示す。
Figure 2005343888
Figure 2005343888

元素分析の結果より、得られた化合物は6ヶ所がTFAの塩になっていることが確認された。1H−NMRの結果とあわせて、上記薄紫色固体は、下記式で表される化合物(14)であると認められた。収量は3.2g、収率は83%であった。
Figure 2005343888
上記構造式中のa〜jは、表3中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
(iv)NFcproの合成
最後に、下記スキームに従い、目的化合物であるNFcproを得るために、化合物(14)とフェロセンプロピオン酸スクシンイミドエステル(化合物(15))を反応させた。
Figure 2005343888

100mlナス型フラスコに化合物(14)0.53g(0.4mmol)、クロロホルム20ml、トリエチルアミン0.35ml(2.4mmol)を加え完全に溶解させた後、フェロセンプロピオン酸スクシンイミドエステル 0.29g(1.2mmol)を加え室温で撹拌した。シリカゲルTLCで反応追跡を行い、18時間後反応を終了し溶媒を減圧留去し、茶色の油状物質を得た。これをクロロホルム100mlに溶かし、純水100mlで洗浄、抽出し、クロロホルム相を減圧留去した。得られた固体物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:ジエチルアミン=95:5:0.5)Rf値0.15の成分を分取し、溶媒を減圧留去した。さらに12時間減圧乾固して、融点が300℃以上である橙色粉末を得た。
得られた化合物を1H−NMR、MALDI−TOF−MASSを用いて同定し、およびHPLCにより純度チェックを行った。
1H−NMRスペクトルデータを表5に示す。
Figure 2005343888
以上の結果より、得られた橙色粉末は、下記式で表される化合物(10)であると認められた。
Figure 2005343888
上記構造式中のa〜nは、表5中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
また、MALDI−TOF−MASSによる測定結果を図1に示す。マトリックスとしてα-cyano-IV-hydroxycinnamic acid(CHCA)を用い、レーザ強度は1250
とした。最も大きなピークのm/z=1115.8から、得られた化合物が上記化合物(10)であることがさらに確認された。なお、m/z=1049.7、m/z=982.2のピークは、それぞれフェロセン部位のシクロペンタジエンが一つずつ外れたものである。
HPLCの純度測定結果を図2に示す。検出波長は385nmとし、カラムはInertsilODS−3を用い、試料注入溶媒はメタノール、溶離液Aは0.1%TFA水溶液、溶離液Bは0.1%TFAメタノール溶液とした。溶離液のグラジエント条件を表6に示す。
Figure 2005343888
また、リテンションタイムが20分の時のUV−visスペクトルを図3に示す。
上記に示したHPLCによる純度チェックにおいても、目的物由来のピークのみが観測された。この結果から、シリカゲルクロマトグラフィーにより、2つのリンカーの両方にフェロセンが導入された化合物(目的物であるNFcpro)が、2つのリンカーのうち1つだけにフェロセンが導入された化合物から効率よく分離され、純度の高いNFcproを高収率で得られたことが確認された。
FND2の合成
次に、本発明に係る化合物の例として、上記式(10’)で表される新規フェロセン化ナフタレンジイミド(以下「FND2」と称することもある)を、以下のスキームにしたがって合成した。
Figure 2005343888
化合物(A)0.29g(0.3mmol)とフェロセンプロピオン酸スクシンイミドエステル0.31g(0.9mmol)をCHCl3 15ml/TEA0.26ml(1.8mmol)混合溶液に溶解させ、室温で撹拌した。42時間後反応を終了させ、反応溶媒を減圧留去した。溶液にクロロホルム100mlを加え、飽和食塩水200ml(50ml×4回)で洗浄した。クロロホルムを減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH:ジエチルアミン=10:0.2:0.5)にて、Rf値0.2の茶褐色成分を分取した。溶媒を減圧留去した後、MeOHを加えて吸引ろ過したところ、橙黄色粉末が得られた。
得られた固体を1H−NMR、MALDI−TOF−MASSを用いて同定し、およびHPLCにより純度チェックを行った。1H−NMRの結果を表7に示す。
Figure 2005343888
1H−NMRの結果から、上記橙黄色固体は、下記式に示す化合物(10’)であると認められた。収量は0.21g、収率は70%であった。
Figure 2005343888
上記構造式中のa〜nは、表7中のケミカルシフト(δ値)に対応する水素(プロトン)それぞれの位置を示す。
また、MALDI−TOF−MASSによる測定結果を図4に示す。マトリックスとしてα-cyano-IV-hydroxycinnamic acid(CHCA)を用い、レーザ強度は2.2×
104とした。最も大きなピークのm/z=1005.02から、得られた化合物が上記FND2(10’)であることがさらに確認された。
HPLCの純度測定結果を図5に示す。検出波長は384nmとし、カラムはInertsilODS−3を用い、試料注入溶媒は0.1%TFA水溶液、溶離液Aは0.1%TFA水溶液、溶離液Bは70%アセトニトリル/30%−0.1%TFA溶液とした。溶離液のグラジエント条件を表8に示す。
Figure 2005343888
また、リテンションタイムが17.2分の時のUV−visスペクトルを図6に示す。
上記に示したHPLCによる純度チェックにおいても、目的物由来のピークのみが観測された。この結果から、純度の高いFND2を高収率で得られたことが確認された。
NFcproのインターカレータとしての性能評価
実施例1で合成されたNFcpro(上記式(10))の縫い込み型インターカレータとしての性能を評価するために、Calf thymus DNA(CT−DNA)の添加に伴うNFcproの紫外可視吸収スペクトルの変化の測定、およびScatchard解析を行った。一般に、化合物がインターカレータとして二本鎖核酸に結合すると、その化合物の紫外可視吸収スペクトルは、小さな長波長シフトと、大きな淡色効果(Hypochromic effect)を示す。また、インターカレータの濃度を一定に保って、DNAを種々変化させたとき、インターカレータの紫外可視吸収スペクトルが等吸収点を通る二つの状態間で変化すれば、Scatchard解析により結合定数や、結合部位の数を求めることができる。
下記の条件で、NFcproを含む溶液中に、DNA溶液を少量(3μL程度)ずつ滴下し、その都度NFcproの紫外可視吸収を測定した。DNA溶液は全部で300μL滴下し、全測定に6分間要した。滴下終了後4分間撹拌し、さらに1分間放置した。なお、測定温度は25℃とし、NFcproは、塩酸塩として水に溶解して使用した。
・buffer; 2−モルホリノ・エタン・スルホン酸(MES) 10mM、EDTA (pH 6.25) 1mM、NaCl 0.1M
・stock solution; [NFcpro]=1.2mM、[Calf thymus DNA]=3mM (bp)
・セル中の濃度; [NFcpro]=2.4μM
・使用セル; 10cmセル
結果を図7に示す。極大吸収の淡色効果が見られ、CT−DNAに対してインターカレーションしていることが示唆された。
また、紫外可視吸収スペクトルの変化から結合率を算出し、この結合率に基づいて、Scatchard Plotしたものを図8に示す。下記式(α)により、図8に基づく実験データと理論データを最適化(fitting)させることによって、結合定数K、座位数nを算出した。波長は382nmとした。
r/L=K(1−nr)〔(1−nr)/{1−(n−1)r}〕n-1…(α)
結合定数K=57×105[M-1]、座位数n=1.4と算出された。後述する比較例からもわかるように、NFcproは、従来用いられているインターカレータと比較して10〜50倍強い結合定数を有することがわかった。
比較例として、従来からインターカレータとして使用されている、下記式(8)で表されるNFccaおよび式(15)で表されるNFcacについても紫外可視吸収スペクトルの測定およびScatchard Plotを行った。
Figure 2005343888
Figure 2005343888
NFccaおよびNFcacも塩酸塩として水に溶かして用い、bufferおよびstock solutionはNFcproと同様の条件で、セル中濃度は[NFcca]=[NFcac]=22μM、使用セルは1cmセルとした。
NFcacの紫外可視吸収スペクトル変化を図9に、Scatchard Plotを図10に示す。図9においては、極大吸収の淡色効果が見られ、CT−DNAに対してインターカレーションしていることが示唆された。
結合定数K=6.8×105[M-1]、座位数n=2.1と算出された。座位数2.1という数字から、DNA塩基対一つおきにインターカレータが挿入結合していることが示唆された。
本発明に係る化合物であるNFcpro、比較例であるNFcacおよびNFccaについて、Scatchard Plotにより求めた結合定数および座位数を表9に示す。
Figure 2005343888
NFcproは、NFccaと比較して約50倍、NFcacに対しても10倍近い結合定数を有することがわかった。NFcproは、長いリンカー部が有するため、DNAからの解離反応が抑制され、より安定なDNA−インターカレータ複合体を形成したものと考えられる。
ディファレンシャルパルスボルタンメトリ(DPV)を用いたNFcproの二本鎖選択性の評価
表面に一本鎖DNAを固定した電極を用いて、この一本鎖に静電的相互作用によって結合するインターカレータの量、およびこの一本鎖に相補的な配列を有する標的DNAがハイブリダイゼーションした際に生じた二本鎖にインターカレーションするインターカレータの量を、それぞれ電気化学的に測定した。
インターカレータとしては、本発明に係るNFcpro、比較例としてNFccaおよびNFcacを合成し、塩酸塩として用いた。
(i)プローブDNAの電極への固定
10pmol/μlのDNA溶液1μLを金電極表面に滴下し、乾燥しないようにキャップをして、25℃で2時間放置した。その後、1mMの2−メルカプトエタノール1μLを金電極表面に滴下して、25℃で2時間放置し、一本鎖固定化電極を得た。一本鎖DNAは、硫黄原子を介して金電極に固定される。
本実施例では、配列番号:1に記載されるWildtype G71Rの部分配列(24mer)を標的DNAとし、これに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプローブDNAとした。プローブDNAの塩基配列を配列番号:2に示す。これらのオリゴヌクレオチドの調製は、北海道システム・サイエンス株式会社に委託した。G71R配列は、抗癌剤イリノテカンの副作用を引き起こすとされている危険因子の一つである。
(ii)プローブDNAに対するインターカレータの結合量の測定
上述の一本鎖固定化電極を、0.1Mの酢酸緩衝液(pH5.6)、0.1MのKCl水溶液および50μMのインターカレータ溶液からなる溶液(以下「電解溶液」という)に3分間浸し、DPV測定を行った。DPV測定には、ALS Model 610を用い、掃引速度100mV/secとして、指示書に従って通常の測定方法により測定した。DPV測定では、DNAに結合したインターカレータ量を、その末端に導入したフェロセンをシグナルとして検出することにより測定する。
NFcpro、NFcac、NFccaについての測定結果を、それぞれ図11、12、13中に「ssDNA」で示す。
一本鎖DNAに対するインターカレータの結合は、静電的相互作用によるものであると考えられる。
(iii)プローブDNAと標的DNAとのハイブリダイゼーション
(i)で得られた一本鎖固定化電極表面に、Wildtype G71R溶液(10
pmol/μl)溶液1μLを滴下した。乾燥しないようにキャップをし、25℃で30分間放置して、プローブDNAと標的DNAとのハイブリダイゼーションを生じさせた。
(iv)二本鎖DNAに対するインターカレータの結合量の測定
この電極を電解溶液に3分間浸し、DPV測定を行った。
NFcpro、NFcac、NFccaについての測定結果は、それぞれ図11、12、13中に「dsDNA」で示す。
いずれのインターカレータについても、二本鎖DNAへの結合量は、一本鎖DNAへの結合量を上回った。それぞれのピーク電位は、サイクリックボルタンメトリーにより得られた酸化電位に相当するものであった。
二本鎖DNAから得られるDPV測定の結果には、二本鎖に対して挿入結合(インターカレーション)したインターカレータからのシグナルと、静電的相互作用により結合しているインターカレータからのシグナルが含まれると考えられる。そこで、上記(ii
)で得られた一本鎖状態でのピーク応答電流値をi0、(iv)で得られた二本鎖形成後
のピーク応答電流値をiとして、下記式に従って応答電流のピーク電流増加率Δiを求め、この値で二本鎖DNAへの結合能の評価を行った。
Δi=[(i−i0)/i0]×100(%)
それぞれのピーク電流値および、Δiの値を図14に示す。Δi値は、NFcproが最も大きく182%であり、NFccaは123%、NFcacは88%であった。このことから、二本鎖に対する選択性は、NFcproが最も高いことがわかる。NFcproは、ピーク電流値のばらつきも小さく、ベースラインも安定している。
なお、本実施例において二本鎖DNAへの結合能を示すΔi値と、実施例2においてScatchard解析により得られた値とが異なるのは、溶液中と固相担体上での二本鎖DNAへの結合能の違いや、DNA一分子当たりのインターカレータの濃度の違いなどが原因とされる。
競合インターカレーションによる結合能の評価
電解溶液中に2種類のインターカレータを共存させ、競合してインターカレーションさせることにより、両インターカレータの結合能を比較した。
実施例3と同様の方法で、配列番号:2に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを用いて、一本鎖固定化電極を作成した。電極表面に、配列番号:1に記載の塩基配列を有するWildtype G71R(標的DNA)を含む電解溶液を滴下し、ハイブリダイゼーションさせた。
この電極を、NFcproおよびNFccaを含む電解溶液に3分間浸し、DPV測定を行った。測定結果を図15に示す。それぞれのインターカレータに相当するピーク電流値が観測され、二本鎖DNAへのインターカレーションによるピーク電流値の増加も見られる。競合的にインターカレーションが起こったため、それぞれのピーク電流値の増加率に差が現れた。
図16に、ピーク電流値の比較と、実施例3と同様の方法で求めたΔiの値を示す。NFcproのΔiは98%であり、NFcca(Δi=25%)に比較して、約4倍の増加率を示した。これは、Scatchard解析による結合能の評価の結果とも一致し、NFcproの結合能の高さが確認された。
本発明に係る新規化合物NFcproのMALDI−TOF−MASSによる測定結果を示す。 NFcpro合成時のHPLCクロマトグラムを示す。 図2に示すクロマトグラムにおいてリテンションタイム20分のフラクションのUV−visスペクトルを示す。 本発明に係る新規化合物FND2のMALDI−TOF−MASSによる測定結果を示す。 FND2合成時のHPLCクロマトグラムを示す。 図5に示すクロマトグラムにおいてリテンションタイム17.2分のフラクションのUV−visスペクトルを示す。 DNA添加に伴う、NFcproの紫外可視吸収スペクトルの変化を示す。 NFcproについてのスキャッチャードプロットを示す。 DNA添加に伴う、NFcacの紫外可視吸収スペクトルの変化を示す。 NFcacについてのスキャッチャードプロットを示す。 NFcproをインターカレータとして用いた時のDPVボルタモグラムを示す。 NFcacをインターカレータとして用いた時のDPVボルタモグラムを示す。 NFccaをインターカレータとして用いた時のDPVボルタモグラムを示す。 NFcpro、NFcac、NFccaのピーク電流値を示す。 NFcproおよびNFccaを用いた競合インターカレーションにおけるDPVボルタモグラムを示す。 図15に示す競合インターカレーションにおける、ピーク電流値を示す。

Claims (12)

  1. 下記式(1)
    Figure 2005343888
    (式中、Aは多環式炭化水素若しくはその誘導体を示し;Xは置換基を有していてもよ
    い炭素数1〜6のアルキレン基、−(CH2x−B−(CH2y−[ここでBは窒素原子を1若しくは2個含む5員若しくは6員脂肪族複素環を示し;xおよびyはそれぞれ独立に0〜3の整数を示す]、または−(CH2a−(NR5)−(CH2b−(NR6)−(CH2)c−[ここでa、bおよびcはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、R5およびR6はそれぞれ独立に水素またはメチル基を示す]のいずれかを示し;R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、炭素数7〜9のアリールアルキル基若しくはアリールアルケニル基、または炭素数2若しくは3のアルキルカルボニル基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。1分子中の二つの同一表示基は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物またはその塩若しくはその水和物。
  2. Xが下記式(2)
    Figure 2005343888
    である、請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物。
  3. Xが、−C36N(CH3)C36−である、請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物。
  4. 下記式(3)
    Figure 2005343888
    (式中、Aは多環式炭化水素若しくはその誘導体を示し;Yは窒素原子を1または2個含む5員または6員脂肪族複素環であって、カルボニル基に結合する基が窒素原子である環を示し;R4は炭素数1〜6のアルキレン基を示し;R2およびR3はそれぞれ独立に水溶液中で電子供与基または電子求引基となる基を示し;mおよびnはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。1分子中の二つの同一表示基は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物またはその塩若しくはその水和物。
  5. Yがピペリジル基またはピペラジル基である請求項4に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物。
  6. 4がメチレン基であり、Yがピペリジル基であってその窒素原子がカルボニル基の炭素原子に結合している、請求項4に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物。
  7. Aがナフタレンジイミド基である請求項1から6のいずれか1項に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物。
  8. m=n=0である請求項7に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物。
  9. Aがナフタレンジイミド基である請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物を製造する方法であって、下記反応式(I)に示すように、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と式(4)で表される化合物とを反応させて、式(5)で表される化合物を得る第一工程と、下記反応式(II)に示すように、式(5)で表される化合物とフェロセンカルボン酸スクシンイミドエステルとを反応させて、目的物を得る第二工程と、を含む製造方法。
    Figure 2005343888
  10. Aがナフタレンジイミド基である請求項3に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物を製造する方法であって、下記反応式(III)に示すように、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と式(6)で表される化合物とを反応させて、式(7)で表される化合物を得る第一工程と、下記反応式(IV)に示すように、式(7)で表される化合物とフェロセンカルボン酸スクシンイミドエステルとを反応させて、目的物を得る第二工程と、を含む製造方法。
    Figure 2005343888
  11. 標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブ核酸と、被検試料とをハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させる工程と、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物を添加する工程と、
    二本鎖核酸に結合した前記化合物の電気化学応答を測定する工程と、
    を含む、被検試料中の標的核酸を検出する方法。
  12. 標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブ核酸が固定された電極と、請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物とを含む、標的核酸検出用キット。


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