JP2005336605A - 表面処理アルミニウム材及びその製造方法並びにこの表面処理アルミニウム材を用いて形成した精密機器用カバーケース - Google Patents
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Abstract
【課題】 優れた低発塵性及び低コスト性を有する表面処理アルミニウム材を提供する。また、優れた低発塵性を有する表面処理アルミニウム材を低コストで製造することができる表面処理アルミニウム材の製造方法を提供する。
【解決手段】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面にリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液による処理で形成された皮膜を有する表面処理アルミニウム材であり、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面をリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液で処理し、このオキソ酸処理液で処理したアルミニウム材を80〜400℃の加熱温度で加熱処理する表面処理アルミニウム材の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面にリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液による処理で形成された皮膜を有する表面処理アルミニウム材であり、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面をリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液で処理し、このオキソ酸処理液で処理したアルミニウム材を80〜400℃の加熱温度で加熱処理する表面処理アルミニウム材の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
この発明は、アルミニウム材の表面がリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだオキソ酸からなるオキソ酸処理液によって処理された表面処理アルミニウム材及びこの表面処理アルミニウム材の製造方法並びにこのアルミニウム材を用いて形成した精密機器用カバーケースに係り、特に、優れた低発塵性を有する表面処理アルミニウム材及びその製造方法並びに精密機器用カバーケースに関する。
近年、半導体の高集積化や液晶等の高精細化が進むにつれ、塵や埃等の微粒子が及ぼす影響を検討する必要性が高まっている。例えば、これら半導体等の製造や検査等を行うクリーンルーム環境については、微粒子数低減の要求がますます厳しくなっている。しかしながら、半導体製造ライン等で使用される半導体製造装置、半導体計測機器等に用いられているアルミニウム部品については、一般に、その表面は陽極酸化処理等が行われているものの、これらアルミニウム部品の表面からの発塵についてはこれまで十分には検討されていない。
一方、これら半導体等を用いた精密部品を有するようなコンピュータ関連機器をはじめ、電子・電気機器、光学機器、分析機器、医用機器等の精密機器では、大気中の塵や埃によって誤動作や故障を引き起こすことがないようにするため、精密部品の部分はカバーケースによって覆われている。例えば、コンピュータやワープロ等に記憶装置として搭載されるハードディスクのカバーケース等がこの例である。これらのカバーケースは、機器本体の小型化、軽量化の要請を受けて、軽量であると共に機械的強度に優れ、かつ、加工性及び低コスト性等に優れるアルミニウム材を用いて形成される。
そして、これらカバーケースを形成するアルミニウム材については、精密部品の誤動作や故障等を引き起こすことがないように、また、他の周辺機器の故障等を引き起こすことがないようにするため、カバーケース自体が低発塵性であることが要求される。これまでに、例えばハードディスクのカバーケースの外側にあたるアルミニウム材の片面に有機樹脂皮膜を形成したハードディスクドライブケース用樹脂被覆アルミニウム材等が提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
しかしながら、上記樹脂被覆アルミニウム材では、ハードディスク等の精密部品を格納した際、精密部品側にあたる内側のアルミニウム材の表面には樹脂皮膜が形成されていないことから、外部からの衝撃によって樹脂皮膜を有さないアルミニウム材の表面から発塵してしまい、ハードディスク等の精密部品の誤動作等を引き起こす問題がある。また、例えばハードディスク側のアルミニウム材の表面に上記のような樹脂皮膜が形成されていると、ハードディスクの回転駆動等による温度上昇によってこの樹脂皮膜がガスを発生し、このガスがハードディスクの誤動作や故障を引き起こす原因となる等の別の問題が生じる。更には、上記のようにアルミニウム材の表面に樹脂皮膜を形成すると、これがアルミニウム材の片側面のみであったとしても、カバーケースの加工のためにプレス加工を行う際に樹脂皮膜に剥離が生じてしまい、ケースの形や加工が制限されてしまうといった問題も生じる。
ところで、アルミニウム材を塗装する際の下地処理として、例えばアルカリ土類金属、リンのオキソ酸、このオキソ酸塩、MoやW等のオキソ酸、及びこのオキソ酸塩等含んだ化成処理液(特許文献3参照)、ジルコニウム塩、チタニウム塩、リン酸、及びフッ化水素酸等を主成分とする化成処理液、リン酸、亜鉛、フッ化物、ニッケル塩及び硝酸等を主成分とする化成処理液等を用いることが知られている。これらの化成処理液の主成分は、オキソ酸以外にも、アルカリ金属やアルカリ土類金属等を含んだオキソ酸塩等を有するものであり、この化成処理液で処理されたアルミニウム材の表面にはリン酸ジルコニウムやリン酸亜鉛等の皮膜が形成されて、後にアルミニウム材の表面を塗装する際の塗装密着性を高める働きをする。
しかしながら、これらの皮膜は一般的に素地のアルミニウム材との結合力が弱く、アルミニウム材の表面にはリン酸ジルコニウムやリン酸亜鉛等が析出するため、上記化成処理液で処理した表面処理アルミニウム材を用いて精密機器等のカバーケース等を形成すると、リン酸ジルコニウムやリン酸亜鉛等の皮膜自体が発塵源となるおそれがある。
特開平10−249994号公報
特開平11−25653号公報
特開2003−193253号公報
しかしながら、これらの皮膜は一般的に素地のアルミニウム材との結合力が弱く、アルミニウム材の表面にはリン酸ジルコニウムやリン酸亜鉛等が析出するため、上記化成処理液で処理した表面処理アルミニウム材を用いて精密機器等のカバーケース等を形成すると、リン酸ジルコニウムやリン酸亜鉛等の皮膜自体が発塵源となるおそれがある。
そこで、本発明者らは、表面処理を施した種々のアルミニウム材の表面状態について観察を行い、アルミニウム材の表面に存在する第二相化合物が発塵源となり得るという知見を得た。そして、優れた低発塵性を有する表面処理アルミニウム材について鋭意検討した結果、アルミニウム材の表面を特定元素のオキソ酸からなるオキソ酸処理液で処理することによって、その表面の第二相化合物の離脱を防止できると共に、オキソ酸処理液由来の発塵が可及的に防止されることを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、優れた低発塵性及び低コスト性を有する表面処理アルミニウム材を提供することにある。また、本発明の別の目的は、優れた低発塵性を有する表面処理アルミニウム材を低コストで製造することができる表面処理アルミニウム材の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面にリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液による処理で形成された皮膜を有する、表面処理アルミニウム材である。
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面をリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液で処理し、このオキソ酸処理液で処理したアルミニウム材を80〜400℃の加熱温度Tで加熱処理する、表面処理アルミニウム材の製造方法である。
本発明において、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面を処理するオキソ酸処理液については、リン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなる必要がある。このようなオキソ酸処理液としては、具体的には、ホスフィン酸(HPH2O2)、亜リン酸(H3PO3)、ホスホン酸(H2PHO3)、リン酸(H3PO4)、二リン酸(H4P2O7)、メタリン酸〔(HPO3)n〕、次リン酸〔(HO)2OP-PO(OH)2〕、オルトケイ酸(H4SiO4)、メタケイ酸〔(H2SiO3)n〕、クロム酸(H2CrO4)、及び二クロム酸(H2Cr2O7)であるのがよく、好ましくはホスフィン酸、亜リン酸、ホスホン酸、リン酸、二リン酸、及びメタリン酸及び次リン酸である。本発明におけるオキソ酸処理液は、上記オキソ酸から選ばれたいずれか1種からなるものであってもよく、上記オキソ酸から選ばれたいずれか2種以上の混合溶液からなるものであってもよい。
上記オキソ酸処理液によって処理されたアルミニウム材の表面にはオキソ酸がアルミニウム材と反応してオキソ酸アルミニウム皮膜が形成され、この皮膜がアルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱を防止する。
上記オキソ酸処理液によって処理されたアルミニウム材の表面にはオキソ酸がアルミニウム材と反応してオキソ酸アルミニウム皮膜が形成され、この皮膜がアルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱を防止する。
また、本発明におけるオキソ酸処理液については、リン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含むオキソ酸以外には他の物質を実質的に含まないのが好ましい。ここで、リン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含むオキソ酸以外の他の物質として、具体的にはリン、ケイ素及びクロム以外の元素を含むオキソ酸を挙げることができ、また、リン酸亜鉛、リン酸ジルコニウム、リン酸クロム等のオキソ酸塩を挙げることができる。更にまた、フッ化水素アンモニウム、フッ化カリウム等のフッ化物、ジルコニウム、チタン、亜鉛、ニッケル等の3〜12族の金属及びこれらの塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属及びこれらの塩、フッ化水素酸等を挙げることができる。オキソ酸処理液が上記のようなオキソ酸塩を含んでいると、処理するアルミニウム材の表面にリン酸亜鉛やリン酸ジルコニウムの皮膜を形成してしまい、これらの皮膜は素地のアルミニウム材との結合力が弱いため、アルミニウム材の表面に析出して発塵源となると共に、アルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱を防ぐことができない。一方、その他の本発明におけるオキソ酸以外の物質を含んでいると、素地となるアルミニウム材と強い結合を形成することがないため、処理するアルミニウム材の表面に析出して発塵源となってしまう。
尚、オキソ酸処理液がリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含むオキソ酸以外に他の物質を実質的に含まないとは、リンのオキソ酸、ケイ素のオキソ酸、及びクロムのオキソ酸以外には主成分となる物質が添加されていないことを意味するが、ICP発光分析法、原子吸光光度法、又はイオンクロマトグラフ法を用いて金属元素、非金属元素、又は陰イオン物質測定で検出されない1ppm以下の物質については上記オキソ酸処理液中に含まれていてもよいものとする。
尚、オキソ酸処理液がリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含むオキソ酸以外に他の物質を実質的に含まないとは、リンのオキソ酸、ケイ素のオキソ酸、及びクロムのオキソ酸以外には主成分となる物質が添加されていないことを意味するが、ICP発光分析法、原子吸光光度法、又はイオンクロマトグラフ法を用いて金属元素、非金属元素、又は陰イオン物質測定で検出されない1ppm以下の物質については上記オキソ酸処理液中に含まれていてもよいものとする。
また、本発明におけるオキソ酸処理液中のリン、ケイ素、及びクロムの含有量が10ppm〜10000ppm、好ましくは25ppm〜1000ppmであるのがよい。オキソ酸処理液中のリン、ケイ素、及びクロムの含有量が10ppmより少ないとオキソ酸処理液でアルミニウム材の表面を処理した際の皮膜形成が不十分となってアルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱を防止することが難しくなり、反対に10000ppmより多くなると、オキソ酸処理液による処理後に洗浄してもオキソ酸処理液がアルミニウム材の表面に残ってしまうおそれがある。また、上記含有量が25ppm以上であると処理するアルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱をより効果的に防止できる皮膜を形成することができる。尚、オキソ酸処理液中のリン、ケイ素、及びクロムの含有量とは、例えばオキソ酸処理液となるオキソ酸がリン酸(H3PO4)の場合、このオキソ酸処理液中に含まれるリン(P)元素の濃度(ppm)を意味し、また、例えばオキソ酸処理液がリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ2種のオキソ酸からなる場合、2種類のオキソ酸を形成する各元素の合計量を意味する。
アルミニウム材の表面をオキソ酸処理液によって処理する手段については、例えば浸漬処理、スプレー処理等を用いることができるが、好ましくはオキソ酸処理液中にアルミニウム材を浸漬させる浸漬処理であるのがよい。浸漬処理における具体的な処理条件については、15〜100℃、好ましくは25〜80℃のオキソ酸処理液中に1〜30分、好ましくは3〜15分間アルミニウム材を浸漬させて行うのがよい。オキソ酸処理液の温度が15℃より低いとオキソ酸とアルミニウム材との反応が起こり難く、反対に100℃より高くなるとアルミニウム材の溶解量が多くなってしまう。一方、浸漬時間については1分より短いとアルミニウム材の表面の皮膜形成が不十分となって第二相化合物の離脱が起こるおそれがあり、反対に30分より長くなるとアルミニウム材の溶解量が多くなってしまう。
また、本発明においては、オキソ酸処理液による処理後のアルミニウム材が、80〜400℃、好ましくは100〜300℃の加熱温度Tで加熱処理されているのがよい。加熱温度Tが80℃より低いとオキソ酸処理液によって処理したアルミニウム材の表面に皮膜が十分に形成されないおそれがあり、反対に400℃より高くなると基材となるアルミニウム材が軟化して強度が低下するおそれがある。
加熱処理における加熱時間については0.5〜120分、好ましくは3〜60分であるのがよい。加熱処理の時間が0.5分より短いとアルミニウム材の表面の皮膜形成が不十分となって第二相化合物の離脱が起きるおそれがあり、反対に120分より長くなると表面処理アルミニウム材としての材料強度が低下するおそれがある。また、加熱処理の雰囲気については大気中で行うことができる。
また、本発明においては、加熱処理されたアルミニウム材が下記式(1)
V≦0.1T+5 ・・・(1)
(但し、Tは加熱処理における加熱温度(℃)を示す)
で表される降温速度V(℃/分)で冷却処理されているのが好ましく、更に好ましくは加熱温度Tに関わらず0.1〜10(℃/分)の降温速度で冷却処理されているのがよい。上記式(1)は、本発明者らがオキソ酸処理液による処理、加熱処理及び加熱処理後の冷却条件がアルミニウム材の表面に形成した皮膜に与える影響を総当り的に実験を行って得たものである。例えば加熱温度Tが200℃の場合、加熱処理したアルミニウム材を室温で放置すると30〜40(℃/分)程度の降温速度で冷却されていくが、このような速度で冷却されるとアルミニウム材の表面に形成されたオキソ酸アルミニウム皮膜に皺が発生するおそれがある。そこで、上記式(1)で表される降温速度V以下(例えば加熱温度Tが200℃の場合には25℃/分以下)となるように制御した冷却処理を行うことによって皺の発生のおそれを可及的に低減することができ、アルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱をより確実に防止でき、より一層低発塵性の効果を向上させることができる。冷却処理における降温速度が式(1)で表した降温速度Vより速くなると、アルミニウム材の表面に形成されたオキソ酸アルミニウム皮膜に皺が発生するおそれがあり、降温速度が0.1〜10(℃/分)の範囲であれば加熱温度Tに関わらず皺の形成が確認されない。降温速度が0.1(℃/分)より遅い冷却処理であっても皺の発生は確認されないが、必要以上に時間がかかるため実用上の有為性に乏しい。そして、上記のような降温速度によって、加熱処理されたアルミニウム材の温度が少なくとも50℃になるまで冷却処理するようにすれば、上述したような効果を確実に得ることができる。
なお、冷却処理中に降温速度がゼロの状態が含まれてもよい。すなわち、冷却処理中に所定の時間所定の温度で保持したり、段階的に降温速度を切り替えて冷却しても上記効果は得られる。
V≦0.1T+5 ・・・(1)
(但し、Tは加熱処理における加熱温度(℃)を示す)
で表される降温速度V(℃/分)で冷却処理されているのが好ましく、更に好ましくは加熱温度Tに関わらず0.1〜10(℃/分)の降温速度で冷却処理されているのがよい。上記式(1)は、本発明者らがオキソ酸処理液による処理、加熱処理及び加熱処理後の冷却条件がアルミニウム材の表面に形成した皮膜に与える影響を総当り的に実験を行って得たものである。例えば加熱温度Tが200℃の場合、加熱処理したアルミニウム材を室温で放置すると30〜40(℃/分)程度の降温速度で冷却されていくが、このような速度で冷却されるとアルミニウム材の表面に形成されたオキソ酸アルミニウム皮膜に皺が発生するおそれがある。そこで、上記式(1)で表される降温速度V以下(例えば加熱温度Tが200℃の場合には25℃/分以下)となるように制御した冷却処理を行うことによって皺の発生のおそれを可及的に低減することができ、アルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱をより確実に防止でき、より一層低発塵性の効果を向上させることができる。冷却処理における降温速度が式(1)で表した降温速度Vより速くなると、アルミニウム材の表面に形成されたオキソ酸アルミニウム皮膜に皺が発生するおそれがあり、降温速度が0.1〜10(℃/分)の範囲であれば加熱温度Tに関わらず皺の形成が確認されない。降温速度が0.1(℃/分)より遅い冷却処理であっても皺の発生は確認されないが、必要以上に時間がかかるため実用上の有為性に乏しい。そして、上記のような降温速度によって、加熱処理されたアルミニウム材の温度が少なくとも50℃になるまで冷却処理するようにすれば、上述したような効果を確実に得ることができる。
なお、冷却処理中に降温速度がゼロの状態が含まれてもよい。すなわち、冷却処理中に所定の時間所定の温度で保持したり、段階的に降温速度を切り替えて冷却しても上記効果は得られる。
本発明において、基材となるアルミニウム材については、その材質がアルミニウム又はアルミニウム合金からなればよく、例えば、高純度アルミニウム(JIS H4170; 1N99)や、A1100、A5052、A6063等の種々のアルミニウム合金を挙げることができ、また、押出成形により形成された押出型材や、圧延加工あるいは射出成形により形成された厚肉又は薄肉の板材や、これらの板材を適宜折曲加工して得られた曲げ加工材等、その大きさや形状等には特に制限されない。
本発明においては、アルミニウム材の表面を上述したオキソ酸処理液によって処理することによって皮膜を形成し、この皮膜が発塵源と考えられるアルミニウム材の表面に存在する第二相化合物を封じ込めて離脱を防止する働きをするため、素地となるアルミニウム材については特に制限されないが、アルミニウム材自体が低発塵性を有するアルミニウム材を用いることによって、より一層本発明における効果を高めることができる観点から、好ましくはアルミニウム材の表面に観察される長径1.0μm以上の第二相化合物の単位面積あたりの数が20個/mm2以下であるようなアルミニウム材であるのがよく、更に好ましくはアルミニウム材の表面下5μmの深さまでの間に観察される第二相化合物が実質的に存在しないのがよい。
第二相化合物とは、素材金属のアルミニウム(Al)以外の物質(Fe, Si, Cu, Mg, Znその他の不純物)によって相を形成している物質を意味し、例えばAl3Fe、αAlFeSi、Al3Mg2、Mg2Si、Al-Mg-Zn化合物等の化合物を挙げることができる。アルミニウム材の表面に存在するこれらの第二相化合物については、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像を利用してその大きさや分布状態を調べることができ、あるいは、X線回折によって物質を同定することもできる。また、アルミニウム材の第二相化合物が実質的に存在しないとは、1mm2の範囲を1000倍の拡大倍率で顕微鏡観察をした場合に第二相化合物を肉眼で確認できないという意味で、これは、実質的に第二相化合物の長径0.1μmを最低の大きさとし、これ以下の第二相化合物は無視できることを意味する。
本発明における表面処理アルミニウム材を製造する方法としては、上述したように、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面をリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液で処理し、このオキソ酸処理液で処理したアルミニウム材を80〜400℃の加熱温度Tで加熱処理することによって得ることができ、好ましくは加熱処理したアルミニウム材を上記式(1)で表される降温速度V(℃/分)で冷却処理して得ることができる。
本発明においては、素地となるアルミニウム材の表面全面を上記オキソ酸処理液によって処理してもよく、あるいはコスト性を考慮してアルミニウム材の表面を適宜選択して処理してもよい。処理する部分を選択するに際しては、アルミニウム材の表面を観察して、少なくとも第二相化合物が存在する領域をオキソ酸処理液によって処理するようにするのがよい。
本発明においては、素地となるアルミニウム材の表面全面を上記オキソ酸処理液によって処理してもよく、あるいはコスト性を考慮してアルミニウム材の表面を適宜選択して処理してもよい。処理する部分を選択するに際しては、アルミニウム材の表面を観察して、少なくとも第二相化合物が存在する領域をオキソ酸処理液によって処理するようにするのがよい。
また、本発明においては、オキソ酸処理液による処理に先駆けて、前処理として脱脂処理、エッチング処理及びデスマット処理から選ばれたいずれか1種以上の処理を行うのが好ましく、更に好ましくは上記前処理を全て行うのがよい。
脱脂処理については、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、界面活性剤等からなる通常の脱脂浴を用いて行うことができ、処理条件としては、通常、浸漬温度が15〜55℃、好ましくは25〜40℃であって、浸漬時間が1〜10分、好ましくは3〜6分である。
エッチング処理については、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液、又は、硫酸−リン酸混合水溶液等の酸水溶液が用いられる。アルカリ水溶液を用いる場合には、その濃度は20〜200g/L、好ましくは50〜150g/Lであって、処理条件としては、通常、浸漬温度が30〜70℃、好ましくは40〜60℃であって、浸漬時間が0.5〜5分、好ましくは1〜3分である。また、酸水溶液として硫酸−リン酸混合水溶液を用いる場合には、その濃度は硫酸濃度が10〜500g/L、好ましくは30〜300g/Lでリン酸濃度が10〜1200g/L、好ましくは30〜500g/Lであり、処理条件としては、通常、浸漬温度が30〜110℃、好ましくは55〜75℃であって、浸漬時間が0.5〜15分、好ましくは1〜6分である。
デスマット処理については、例えば1〜30%硝酸からなるデスマット浴を用いて行うことができ、処理条件としては、通常、浸漬温度が15〜55℃、好ましくは25〜40℃であって、浸漬時間が1〜10分、好ましくは3〜6分である。
エッチング処理については、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液、又は、硫酸−リン酸混合水溶液等の酸水溶液が用いられる。アルカリ水溶液を用いる場合には、その濃度は20〜200g/L、好ましくは50〜150g/Lであって、処理条件としては、通常、浸漬温度が30〜70℃、好ましくは40〜60℃であって、浸漬時間が0.5〜5分、好ましくは1〜3分である。また、酸水溶液として硫酸−リン酸混合水溶液を用いる場合には、その濃度は硫酸濃度が10〜500g/L、好ましくは30〜300g/Lでリン酸濃度が10〜1200g/L、好ましくは30〜500g/Lであり、処理条件としては、通常、浸漬温度が30〜110℃、好ましくは55〜75℃であって、浸漬時間が0.5〜15分、好ましくは1〜6分である。
デスマット処理については、例えば1〜30%硝酸からなるデスマット浴を用いて行うことができ、処理条件としては、通常、浸漬温度が15〜55℃、好ましくは25〜40℃であって、浸漬時間が1〜10分、好ましくは3〜6分である。
本発明における表面処理アルミニウム材は、リン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液によってアルミニウム材の表面が処理されているため、上記オキソ酸がアルミニウム材と反応してオキソ酸アルミニウム皮膜が形成されており、この皮膜はアルミニウム材との結合力が強いことから、アルミニウム材の表面に存在する第二相化合物の離脱を防止することができると共に、皮膜自体が離脱するおそれがない。そのため、本発明における表面処理アルミニウム材は優れた低発塵性を発揮する。特に、本発明におけるオキソ酸処理液は、リン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含むオキソ酸以外に他の物質を実質的に含まないため、アルミニウム材の表面の第二相化合物を封じ込める働きをする皮膜自体が発塵源となることがない。
また、本発明においては、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面をオキソ酸処理液によって処理し、次いで、加熱処理することによって上記のような優れた低発塵性を有する表面処理アルミニウム材を製造することができるため、処理工程が少なく、コスト性の面においても有利である。
また、本発明においては、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面をオキソ酸処理液によって処理し、次いで、加熱処理することによって上記のような優れた低発塵性を有する表面処理アルミニウム材を製造することができるため、処理工程が少なく、コスト性の面においても有利である。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
[試験用表面処理アルミニウム材の作製]
市販のA5052アルミニウム材(板厚0.5mm)を縦100mm、横70mmに切断した後、水酸化ナトリウム25g/L、炭酸ナトリウム25g/L、リン酸ナトリウム25g/L及び界面活性剤1.5g/Lの組成を有する脱脂浴を用いて脱脂処理を行った。脱脂処理の条件は浸漬温度60℃及び浸漬時間5分である。次いで、水酸化ナトリウム50g/Lの組成を有するエッチング浴中に、浸漬温度50℃及び浸漬時間3分の条件でエッチング処理を行った。更に、このアルミニウム材を硝酸15%の組成を有するデスマット浴中に浸漬させ、浸漬温度25℃及び浸漬時間3分の条件でデスマット処理を行った。
このようにして得たアルミニウム材を25℃のリン酸3g/L(Pの含有量:約950ppm)のオキソ酸処理液中に浸漬させ、浸漬時間5分でオキソ酸処理液による処理を行った。次いで、得られた表面処理アルミニウム材を200℃に保持された電気炉に入れ、大気雰囲気下で5分間加熱保持する加熱処理を行った。その後、このアルミニウム材を電気炉から取り出して大気中で室温まで冷却させて、試験用表面処理アルミニウム材を作製した。なお、加熱処理後に電気炉からアルミニウム材を取り出して大気中で室温まで冷却させた際の降温速度はおよそ35℃/分程度であった。
市販のA5052アルミニウム材(板厚0.5mm)を縦100mm、横70mmに切断した後、水酸化ナトリウム25g/L、炭酸ナトリウム25g/L、リン酸ナトリウム25g/L及び界面活性剤1.5g/Lの組成を有する脱脂浴を用いて脱脂処理を行った。脱脂処理の条件は浸漬温度60℃及び浸漬時間5分である。次いで、水酸化ナトリウム50g/Lの組成を有するエッチング浴中に、浸漬温度50℃及び浸漬時間3分の条件でエッチング処理を行った。更に、このアルミニウム材を硝酸15%の組成を有するデスマット浴中に浸漬させ、浸漬温度25℃及び浸漬時間3分の条件でデスマット処理を行った。
このようにして得たアルミニウム材を25℃のリン酸3g/L(Pの含有量:約950ppm)のオキソ酸処理液中に浸漬させ、浸漬時間5分でオキソ酸処理液による処理を行った。次いで、得られた表面処理アルミニウム材を200℃に保持された電気炉に入れ、大気雰囲気下で5分間加熱保持する加熱処理を行った。その後、このアルミニウム材を電気炉から取り出して大気中で室温まで冷却させて、試験用表面処理アルミニウム材を作製した。なお、加熱処理後に電気炉からアルミニウム材を取り出して大気中で室温まで冷却させた際の降温速度はおよそ35℃/分程度であった。
[発塵性の評価]
試験液として超純水を用い、上記で得た試験用表面処理アルミニウム材を試験液中に浸漬させて、超音波洗浄を3分間行った。その後、試験液中に存在する粒子数について、液中パーティクルカウンターを用いてその増加量を測定した。尚、試験用表面処理アルミニウム材を浸漬する前の試験液中の粒子数について予め液中パーティクルカウンターを用いて測定した。結果を表1に示す。
試験液として超純水を用い、上記で得た試験用表面処理アルミニウム材を試験液中に浸漬させて、超音波洗浄を3分間行った。その後、試験液中に存在する粒子数について、液中パーティクルカウンターを用いてその増加量を測定した。尚、試験用表面処理アルミニウム材を浸漬する前の試験液中の粒子数について予め液中パーティクルカウンターを用いて測定した。結果を表1に示す。
[耐蝕性の評価]
上記試験用表面処理アルミニウム材を温度85℃及び湿度90%の環境下に500時間放置して耐蝕性試験を行い、試験用表面処理アルミニウム材の表面における変色の様子を評価した。評価については、○:変化なし、△:わずかに変化あり、×:著しく変化ありの三段階で行った。結果を表1に示す。
上記試験用表面処理アルミニウム材を温度85℃及び湿度90%の環境下に500時間放置して耐蝕性試験を行い、試験用表面処理アルミニウム材の表面における変色の様子を評価した。評価については、○:変化なし、△:わずかに変化あり、×:著しく変化ありの三段階で行った。結果を表1に示す。
市販のA6061アルミニウム材を用いて試験用表面処理アルミニウム材を作製した以外は実施例1と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてもそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
市販のA1050アルミニウム材を用いて試験用表面処理アルミニウム材を作製した以外は実施例1と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてもそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
オキソ酸処理液による処理として、25℃のメタケイ酸25g/L(Siの含有量:約9000ppm)のオキソ酸処理液を用いて浸漬時間5分の処理を行う以外は実施例1と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてもそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
オキソ酸処理液による処理として、25℃のクロム酸1g/L(Crの含有量:約500ppm)のオキソ酸処理液を用いて浸漬時間5分の処理を行う以外は実施例1と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてもそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
[試験用表面処理アルミニウム材の作製]
先ず、高純度アルミニウム地金(JIS H4170:1N99)を溶解し、添加元素としてマグネシウム(Mg)を添加した後、DC鋳造してアルミニウム鋳塊(スラブ塊)を製造した。次に、このアルミニウム鋳塊を300〜550℃で均熱処理し、熱間圧延した後、更に冷間圧延して板厚0.5mmの1質量%Mg−Al材を得た。
先ず、高純度アルミニウム地金(JIS H4170:1N99)を溶解し、添加元素としてマグネシウム(Mg)を添加した後、DC鋳造してアルミニウム鋳塊(スラブ塊)を製造した。次に、このアルミニウム鋳塊を300〜550℃で均熱処理し、熱間圧延した後、更に冷間圧延して板厚0.5mmの1質量%Mg−Al材を得た。
上記で得た1質量%Mg−Al材について、その表面に観察される長径が1.0μm以上の第二相化合物の単位面積当たりの数と、表面下5μmの深さまでの間に観察される長径が1.0μm以上の第二相化合物の単位面積当たりの数を、それぞれSEMの反射電子像を利用して計測した。その結果、表面が15個/mm2、表面下5μmの深さまでの間が13個/mm2であった。尚、表面下5μmの深さまでの間に観察された数については、表面で観察された数を除いた値である。
この1質量%Mg−Al材(板厚0.5mm)を縦100mm、横70mmに切断した後、実施例1と同様に脱脂処理、エッチング処理及びデスマット処理を行い、更に、実施例1と同様にしてオキソ酸処理液を用いた処理及び加熱処理を行い、加熱処理後は電気炉からアルミニウム材を取り出して大気中で室温まで冷却させて試験用表面処理アルミニウム材を作製した。
[発塵性及び耐蝕性の評価]
このようにして得た試験用表面処理アルミニウム材の発塵性及び耐蝕性の評価について、それぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
このようにして得た試験用表面処理アルミニウム材の発塵性及び耐蝕性の評価について、それぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
上記実施例1と同様に、市販のA5052アルミニウム材を用いて脱脂処理、エッチング処理及びデスマット処理を行った。
上記で得たアルミニウム材を25℃のリン酸3g/L(Pの含有量:約950ppm)のオキソ酸処理液中に浸漬させ、浸漬時間5分でオキソ酸処理液による処理を行った。次いで、得られた表面処理アルミニウム材を200℃に保持された電気炉に入れ、大気雰囲気下で5分間加熱保持する加熱処理を行った。その後、電気炉の温調制御機能を用い、降温速度3℃/分で室温になるまでアルミニウム材を冷却させる冷却処理を行い、試験用表面処理アルミニウム材を作製した。発塵性及び耐蝕性の評価についてはそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
上記で得たアルミニウム材を25℃のリン酸3g/L(Pの含有量:約950ppm)のオキソ酸処理液中に浸漬させ、浸漬時間5分でオキソ酸処理液による処理を行った。次いで、得られた表面処理アルミニウム材を200℃に保持された電気炉に入れ、大気雰囲気下で5分間加熱保持する加熱処理を行った。その後、電気炉の温調制御機能を用い、降温速度3℃/分で室温になるまでアルミニウム材を冷却させる冷却処理を行い、試験用表面処理アルミニウム材を作製した。発塵性及び耐蝕性の評価についてはそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
市販のA6061アルミニウム材を用いて試験用表面処理アルミニウム材を作製した以外は実施例7と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてはそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
市販のA1050アルミニウム材を用いて試験用表面処理アルミニウム材を作製した以外は実施例7と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてはそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
オキソ酸処理液による処理として、25℃のメタケイ酸25g/L(Siの含有量:約9000ppm)のオキソ酸処理液を用いて浸漬時間5分の処理を行う以外は実施例7と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価については、それぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
オキソ酸処理液による処理として、25℃のクロム酸1g/L(Crの含有量:約500ppm)のオキソ酸処理液を用いて浸漬時間5分の処理を行う以外は実施例7と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてはそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
[試験用表面処理アルミニウム材の作製]
先ず、高純度アルミニウム地金(JIS H4170:1N99)を溶解し、添加元素としてマグネシウム(Mg)を添加した後、DC鋳造してアルミニウム鋳塊(スラブ塊)を製造した。次に、このアルミニウム鋳塊を300〜550℃で均熱処理し、熱間圧延した後、更に冷間圧延して板厚0.5mmの1質量%Mg−Al材を得た。
先ず、高純度アルミニウム地金(JIS H4170:1N99)を溶解し、添加元素としてマグネシウム(Mg)を添加した後、DC鋳造してアルミニウム鋳塊(スラブ塊)を製造した。次に、このアルミニウム鋳塊を300〜550℃で均熱処理し、熱間圧延した後、更に冷間圧延して板厚0.5mmの1質量%Mg−Al材を得た。
上記で得た1質量%Mg−Al材について、その表面に観察される長径が1.0μm以上の第二相化合物の単位面積当たりの数と、表面下5μmの深さまでの間に観察される長径が1.0μm以上の第二相化合物の単位面積当たりの数を、それぞれSEMの反射電子像を利用して計測した。その結果、表面が15個/mm2、表面下5μmの深さまでの間が13個/mm2であった。尚、表面下5μmの深さまでの間に観察された数については、表面で観察された数を除いた値である。
この1質量%Mg−Al材(板厚0.5mm)を縦100mm、横70mmに切断したものを用いて、試験用表面処理アルミニウム材を作製した以外は実施例7と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価については、それぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
冷却処理における降温速度を10℃/分にして室温になるまでアルミニウム材を冷却させる以外は実施例7と同様にした。発塵性及び耐蝕性の評価についてはそれぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
実施例7における冷却処理を以下のようにした以外は実施例7と同様にした。
加熱処理後のアルミニウム材を冷却処理する際、先ず、電気炉の温調制御機能を用いて降温速度4℃/分で冷却し、アルミニウム材の温度が150℃に達したところで、アルミニウム材の温度を150℃で10分間保持し、次いで再び降温速度4℃/分で室温になるまでアルミニウム材を冷却させる冷却処理を行った。
発塵性及び耐蝕性の評価については、それぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
加熱処理後のアルミニウム材を冷却処理する際、先ず、電気炉の温調制御機能を用いて降温速度4℃/分で冷却し、アルミニウム材の温度が150℃に達したところで、アルミニウム材の温度を150℃で10分間保持し、次いで再び降温速度4℃/分で室温になるまでアルミニウム材を冷却させる冷却処理を行った。
発塵性及び耐蝕性の評価については、それぞれ実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
市販されているA5052、A6061、及びA1050材(板厚はそれぞれ0.5mm)を縦100mm、横70mmに切断し、オキソ酸処理液を用いた処理と加熱処理についてはいずれも行わずに実施例1と同様の発塵性及び耐蝕性の評価を行った(比較例1〜3)。
また、A5052材の表面に、メルテックス株式会社製メルプレートNI−871からなるめっき浴を使用して温度90度で15分間無電解めっき処理を行い、表面に5μmのNiPめっきを形成したアルミニウム材についても、実施例1と同様の発塵性及び耐蝕性の評価を行った(比較例4)。それぞれ結果を表1に示す。
市販されているA5052、A6061、及びA1050材(板厚はそれぞれ0.5mm)を縦100mm、横70mmに切断し、オキソ酸処理液を用いた処理と加熱処理についてはいずれも行わずに実施例1と同様の発塵性及び耐蝕性の評価を行った(比較例1〜3)。
また、A5052材の表面に、メルテックス株式会社製メルプレートNI−871からなるめっき浴を使用して温度90度で15分間無電解めっき処理を行い、表面に5μmのNiPめっきを形成したアルミニウム材についても、実施例1と同様の発塵性及び耐蝕性の評価を行った(比較例4)。それぞれ結果を表1に示す。
本発明における表面処理アルミニウム材は優れた低発塵性を有するため、例えば、コンピュータやワープロ等に記憶装置として搭載されるハードディスクのカバーケースをはじめ、半導体等を用いた精密部品を有するようなコンピュータ関連機器、電子・電気機器、光学機器、分析機器、医用機器等の精密機器における精密機器用カバーケース等として好適に用いることができる。また、半導体製造ライン等で使用される半導体製造装置、半導体計測機器等において使用されるアルミニウム又はアルミニウム合金製の部品を形成する際にも本発明における表面処理アルミニウム材を好適に用いることができる。更にはクリーンルーム中で使用されるパネル材や構造部材の形成の際にも好適に用いることができ、その他、塵や埃を嫌う環境下で使用される製品や部材等の種々の材料としても好適に用いることができる。
Claims (15)
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面にリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液による処理で形成された皮膜を有することを特徴とする表面処理アルミニウム材。
- オキソ酸処理液が、リン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含むオキソ酸以外に他の物質を実質的に含まない請求項1に記載の表面処理アルミニウム材。
- オキソ酸処理液中のリン、ケイ素、及びクロムの含有量が10ppm〜10000ppmである請求項1又は2に記載の表面処理アルミニウム材。
- オキソ酸処理液が、ホスフィン酸、亜リン酸、ホスホン酸、リン酸、二リン酸、メタリン酸、次リン酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、クロム酸、及び二クロム酸から選ばれたいずれか1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材。
- オキソ酸処理液による処理後のアルミニウム材が、80〜400℃の加熱温度Tで加熱処理されている請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材。
- 加熱処理されたアルミニウム材が、下記式(1)
V≦0.1T+5 ・・・(1)
(但し、Tは加熱処理における加熱温度(℃)を示す)
で表される降温速度V(℃/分)で冷却処理されている請求項5に記載の表面処理アルミニウム材。 - アルミニウム材の表面に観察される長径1.0μm以上の第二相化合物の単位面積あたりの数が20個/mm2以下である請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理アルミニウム材を用いて形成したことを特徴とする精密機器用カバーケース。
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材の表面をリン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含んだ1種又は2種以上のオキソ酸からなるオキソ酸処理液で処理し、このオキソ酸処理液で処理したアルミニウム材を80〜400℃の加熱温度Tで加熱処理することを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
- 加熱処理したアルミニウム材を下記式(1)
V≦0.1T+5 ・・・(1)
(但し、Tは加熱処理における加熱温度(℃)を示す)
で表される降温速度V(℃/分)で冷却処理する請求項9に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。 - オキソ酸処理液が、リン、ケイ素、及びクロムから選ばれたいずれかの元素を含むオキソ酸以外に他の物質を実質的に含まない請求項9に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
- オキソ酸処理液中のリン、ケイ素、及びクロムの含有量が10ppm〜10000ppmである請求項9に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
- オキソ酸処理液が、ホスフィン酸、亜リン酸、ホスホン酸、リン酸、二リン酸、メタリン酸、次リン酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、クロム酸、及び二クロム酸から選ばれたいずれか1種又は2種以上である請求項9に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
- オキソ酸処理液による処理が、15〜100℃のオキソ酸処理液中に1〜30分間アルミニウム材を浸漬させる処理である請求項9に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
- オキソ酸処理液による処理に先駆けて、前処理として脱脂処理、エッチング処理及びデスマット処理から選ばれたいずれか1種以上の処理を行う請求項9に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
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JP2004377342A JP2005336605A (ja) | 2004-04-27 | 2004-12-27 | 表面処理アルミニウム材及びその製造方法並びにこの表面処理アルミニウム材を用いて形成した精密機器用カバーケース |
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JP2004131253 | 2004-04-27 | ||
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JP2008266769A (ja) * | 2006-12-15 | 2008-11-06 | Nippon Light Metal Co Ltd | 表面処理アルミニウム材及びアルミニウム材の表面処理方法 |
JP2009293122A (ja) * | 2008-05-09 | 2009-12-17 | Nippon Light Metal Co Ltd | 表面処理アルミニウム材及びその製造方法並びにアルミニウム材の表面処理方法 |
JP2016211012A (ja) * | 2015-04-28 | 2016-12-15 | 株式会社神戸製鋼所 | 包装容器用アルミニウム合金板 |
-
2004
- 2004-12-27 JP JP2004377342A patent/JP2005336605A/ja active Pending
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