JP2005314252A - 糖尿病性腎症の予防・治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 新規な糖尿病性腎症の予防・治療剤を提供する。
【解決手段】 糖尿病性腎症の予防・治療剤の有効成分として、マウス、ラット、ヒト等の哺乳動物由来のガレクチン−9を含有させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、糖尿病性腎症の予防・治療剤に関する。
哺乳類の動物レクチンは糖鎖結合蛋白であり、特異的な糖鎖構造を認識する。動物レクチンは、C型レクチン、P型レクチン、pentraxins、ガレクチンの4つのグループに分類されている。糖鎖は多くの細胞膜蛋白と細胞外基質の構成成分として重要であり、レクチンとそのリガンドとの間の相互作用は様々な生物学的機能に関与している。
動物レクチンの一種であるガレクチンは、β−ガラクトシドを特異的に認識し、これに特異的に結合する。現在までに少なくとも10種類のガレクチン (ガレクチン−1〜10) が同定されクローニングされている (Perilo NLら,J.Mol.Med. 76:402-412,1998;Wada Jら,J.Biol.Chem. 272:6078-6086,1997;Wada Jら,J.Clin.Invest. 99:2452-2461,1997)。
各種ガレクチンには構造に相同性があり、リガンドの認識にも共通性があるが、生理学的又は病理学的にはそれぞれ異なった機能に関与している。ガレクチンの機能の多様性は、細胞上のリガンドである糖鎖の多様性と、様々な組織における糖鎖の分布に関係している。
ガレクチンの様々な機能の中でも、アポトーシスの誘導や免疫反応における役割について多くの報告がある。例えば、ガレクチン−1は実験的な自己免疫疾患を改善し(Levi Gら,Eur.J.Immunol. 13:500-507,1983;Offner Hら,Neuroimmnology 28:177-184,1990)、活性化されたヒト末梢T細胞や単離されたヒト胸腺細胞のアポトーシスを誘導すること (Perillo NLら,Nature 378:736-739,1995;Perillo NLら,J.Exp.Med 185:1851-1858,1997)、胸腺で強く発現しているガレクチン−9も胸腺細胞のアポトーシスを誘導すること (Wada Jら,J.Clin.Invest. 99:2452-2461,1997)、逆にガレクチン−3はT細胞を保護するように働き、細胞質でbcl-2とヘテロダイマーを形成することによりアポトーシスを阻止すること (Yang R-Yら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:6737-6742,1996) が報告されている。
また、ガレクチン−1、3及び9については、腎炎の予防・治療効果を有することが知られている (特許文献1参照)。また、ガレクチン−3については、細胞外基質産生細胞からの細胞外基質産生促進効果を有することが知られており(特許文献2参照)、ガレクチン−3の生物活性を阻害することにより、糖尿病性腎症による細胞外基質の過剰産生及び蓄積を抑制する医薬組成物が開発されている(特許文献2参照)。
特開2002−322082号公報 特表2002−522398号公報
本発明は、新規な糖尿病性腎症の予防・治療剤を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の糖尿病性腎症の予防・治療剤は、以下の(a)又は(b)に示すポリペプチドを有効成分として含有する。
(a) 配列番号1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号1記載のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−ガラクトシドに特異的な結合活性を有するポリペプチド
本発明により、糖尿病性腎症の予防・治療剤が提供される。
本発明の糖尿病性腎症の予防・治療剤は、以下の(a)又は(b)に示すポリペプチドを有効成分として含有する。
(a) 配列番号1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド (以下「ポリペプチド(a)」という場合がある。)
(b) 配列番号1記載のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−ガラクトシドに特異的な結合活性を有するポリペプチド (以下「ポリペプチド(b)」という場合がある。)
ポリペプチド(a)及び(b)は、β−ガラクトシドに特異的な結合活性を有するポリペプチドである。「β−ガラクトシドに特異的な結合活性を有する」とは、β−ガラクトシド (例えば、ラクトース(グルコース−β−D−ガラクトシド)) に対する結合活性は有するが、β−ガラクトシド以外の糖鎖構造に対する結合活性は有しないことを意味する。β−ガラクトシド以外の糖鎖構造としては、例えば、グルコース−α1,4−グルコース、グルコース−α1,2−フルクトース等が挙げられる。なお、「ガラクトシド」は、ガラクトースのヘミアセタール水酸基が他の化合物とエーテル結合したものの総称であり、その具体例としては、ラクトースやメリビオース等の少糖類の他、ガラクトースを含む配糖体や糖脂質等が挙げられる。「ガラクトシド」は、その結合配位によってα型とβ型とに分けられ、このうちβ−ガラクトシドはβ型のものである。
ポリペプチド(a)は、マウス由来のガレクチン−9である。「ガレクチン」は、β−ガラクトシドに特異的な結合活性を有するタンパク質及び糖タンパク質の総称である。ガレクチンには、1本のポリペプチド鎖からなる糖鎖結合ドメイン (約14kDのサブユニット) のホモダイマー (プロトタイプ) として存在するガレクチン (ガレクチン−1、ガレクチン−2、ガレクチン−5、ガレクチン−7、ガレクチン−10等)、C末端に1つの糖鎖結合ドメイン及びN末端にhnRNP様ドメインを有するキメラタイプとして存在するガレクチン (ガレクチン−3等) 、同一のペプチド鎖に2つの糖鎖結合ドメインを有するタンデムリピートタイプ(直列反復型)として存在するガレクチン (ガレクチン−9、ガレクチン−4、ガレクチン−6、ガレクチン−8、ガレクチン−9等)がある。ガレクチン−9等のタンデムリピートタイプのガレクチンにおける2つの糖鎖結合ドメインは同一ではなく、アミノ酸レベルで約38%の相同性を有している。ガレクチン−9の糖鎖結合ドメインは、例えば、配列番号1記載のアミノ酸配列のうち、15〜146番目又は192〜322番目のアミノ酸残基からなる部分と考えられている。
ポリペプチド(b)には、ポリペプチド(a)に対して人為的に欠失、置換、付加等の変異を導入したポリペプチドの他、欠失、置換、付加等の変異が導入された状態で天然に存在するポリペプチドや、それに対して人為的に欠失、置換、付加等の変異を導入したポリペプチドも含まれる。欠失、置換、付加等の変異が導入された状態で天然に存在するポリペプチドとしては、例えば、ヒトを含む哺乳動物 (例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット等) 由来のガレクチン−9 (多型によって変異が生じたガレクチン−9を含む) が挙げられる。ヒト由来のガレクチン−9のアミノ酸配列を配列番号2に示し、ラット由来のガレクチン−9のアミノ酸配列を配列番号3に示す。
配列番号1記載のアミノ酸配列において欠失、置換又は付加されるアミノ酸の個数は、ポリペプチド(b)がβ−ガラクトシドに特異的な結合活性を有する限り特に限定されるものではなく、その個数は1又は複数個、好ましくは1又は数個であり、その具体的な範囲は、好ましくは1〜25個、さらに好ましくは1〜10個である。このとき、ポリペプチド(b)のアミノ酸配列は、ポリペプチド(a)のアミノ酸配列と少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有する。
配列番号1記載のアミノ酸配列において欠失、置換又は付加されるアミノ酸の位置は、ポリペプチド(b)がβ−ガラクトシドに特異的な結合活性を有する限り特に限定されるものではない。配列番号1記載のアミノ酸配列において欠失、置換又は付加されるアミノ酸の位置としては、例えば、糖鎖結合ドメイン以外の部分が考えられる。
ポリペプチド(b)は、β−ガラクトシドに特異的な結合活性を有するとともに、ガレクチン−9と同様の構造をとり得ること、すなわち、同一のペプチド鎖に2つの糖鎖結合ドメインを有することが好ましく、ガレクチン−9と同様の生物学的機能を有していることがさらに好ましい。ガレクチン−9の生物学的機能としては、例えば、好酸球走化能、胸腺細胞の分化と胸腺細胞のアポトーシスの誘導、末梢活性化T細胞のアポトーシス誘導等が挙げられる。
ポリペプチド(a)及び(b)には、糖鎖が付加されたポリペプチド及び糖鎖が付加されていないポリペプチドのいずれもが含まれる。ポリペプチドに付加される糖鎖の種類、位置等は、ポリペプチドの製造の際に使用される宿主細胞の種類によって異なるが、糖鎖が付加されたポリペプチドには、いずれの宿主細胞を用いて得られるポリペプチドも含まれる。
ポリペプチド(a)及び(b)には、その医薬的に許容される塩が含まれる。医薬的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム等の無毒性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、上記塩には、ポリペプチドと適当な有機酸又は無機酸との反応による無毒性酸付加塩も含まれる。代表的無毒性酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、硼酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(トシレート)、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、スルホン酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
ポリペプチド(a)又は(b)は、ポリペプチド(a)又は(b)をコードするDNAを用いて常法に従って製造できる。
ポリペプチド(a)をコードするDNAとしては、例えば、配列番号4記載の塩基配列からなるDNA(マウス由来ガレクチン−9をコードするDNA)等が挙げられる。但し、ポリペプチド(a)をコードするDNAは、配列番号4記載の塩基配列からなるDNAに限定されるものではなく、ポリペプチド(a)をコードする限り、その他の塩基配列からなるDNAも含まれる。
ポリペプチド(b)をコードするDNAとしては、例えば、ポリペプチド(a)をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズでき、β−ガラクトシドに特異的な結合活性を有するポリペプチドをコードするDNAが挙げられる。ポリペプチド(a)をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、ポリペプチド(a)をコードするDNAと少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。「ストリンジェントな条件」としては、例えば、42℃、2×SSC及び0.1%SDSの条件、好ましくは65℃、0.1×SSC及び0.1%SDSの条件が挙げられる。
ポリペプチド(a)又は(b)をコードするDNAは、ポリペプチド(a)又は(b)をコードするオープンリーディングフレームとその3'末端に位置する終止コドンとを含む。また、ポリペプチド(a)又は(b)をコードするDNAは、オープンリーディングフレームの5'末端及び/又は3'末端に非翻訳領域(UTR)を含むことができる。
ポリペプチド(a)又は(b)をコードするDNAは、例えば、ヒトを含む哺乳動物の細胞又は組織から抽出したmRNAを用いてcDNAライブラリーを作製し、既知のガレクチン−9のアミノ酸配列 (例えば、配列番号1、2又は3) 又はガレクチン−9をコードする既知のDNAの塩基配列 (例えば、配列番号4) に基づいて合成したプローブを用いて、cDNAライブラリーから目的のDNAを含むクローンをスクリーニングすることにより得られる。以下、cDNAライブラリーの作製、及び目的のDNAを含むクローンのスクリーニングの各工程について説明する。
〔cDNAライブラリーの作製〕
ヒトを含む哺乳動物由来mRNAを常法に従って調製する。例えば、ヒトを含む哺乳動物の腎臓の組織又は細胞を、グアニジン試薬、フェノール試薬等で処理して全RNAを得た後、オリゴdT−セルロースやセファロース2Bを担体とするポリU−セファロース等を用いたアフィニティーカラム法、バッチ法等によりポリ(A+)RNA(mRNA)を得る。得られたmRNAを鋳型として、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する。このようにして得られた二本鎖cDNAを適当なクローニングベクターに組み込んで組換えベクターを作製する。得られた組換えベクターを用いて大腸菌等の宿主細胞を形質転換し、テトラサイクリン耐性、アンピシリン耐性を指標として形質転換体を選択することにより、cDNAのライブラリーを得ることができる。cDNAライブラリーを作製するためのクローニングベクターは、宿主細胞中で自立複製できるものであればよく、例えば、ファージベクター、プラスミドベクター等を使用できる。宿主細胞としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等を使用できる。大腸菌等の宿主細胞の形質転換は、Hanahanの方法 (Hanahan,D., J. Mol. Biol. 166:557-580(1983))、すなわち、塩化カルシウム、塩化マグネシウム又は塩化ルビジウムを共存させて調製したコンピテント細胞に、組換えベクターを加える方法等により行うことができる。なお、ベクターとしてプラスミドを用いる場合は、テトラサイクリン、アンピシリン等の薬剤耐性遺伝子を含有させておくことが好ましい。cDNAライブラリーの作製の際には、市販のキット、例えば、SuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(Gibco BRL社製)、ZAP-cDNA Synthesis Kit(ストラタジーン社製)等を使用できる。
〔目的のDNAを含むクローンのスクリーニング〕
既知のガレクチン−9のアミノ酸配列 (例えば、配列番号1、2又は3) 又はガレクチン−9をコードする既知のDNAの塩基配列 (例えば、配列番号4) に基づいてプライマーを合成し、これを用いてポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) を行ない、PCR増幅断片を得る。PCR増幅断片は、適当なプラスミドベクターを用いてサブクローニングしてもよい。PCRに使用するプライマーとして、配列番号4記載の塩基配列からなるDNAに対しては、例えば、5'-gcattggttcccctgagatag-3'(センスプライマー)、5'-cgttccagagaccggatcc-3'(アンチセンスプライマー)を使用できる。cDNAライブラリーに対して、PCR増幅断片をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーション又はプラークハイブリダイゼーションを行なうことにより、目的のDNAを取得できる。プローブとしては、PCR増幅断片をアイソトープ (例えば32P、35S)、ビオチン、ジゴキシゲニン等で標識したものを使用できる。目的のDNAを含むクローンは、抗体を用いたイムノスクリーニング等の発現スクリーニングによっても取得できる。
〔塩基配列の決定〕
取得されたDNAの塩基配列は、該DNA断片をそのまま又は適当な制限酵素等で切断した後、常法によりベクターに組み込み、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、マキサム−ギルバートの化学修飾法、ジデオキシヌクレオチド鎖終結法を使用して決定できる。塩基配列解析の際には、通常、373A DNAシークエンサー (Perkin Elmer社製) 等の塩基配列分析装置が使用される。
ポリペプチド(a)又は(b)をコードするDNAは、その塩基配列に従って化学合成により取得することもできる。DNAの化学合成は、市販のDNA合成機、例えば、チオホスファイト法を利用したDNA合成機(島津製作所社製)、フォスフォアミダイト法を利用したDNA合成機(パーキン・エルマー社製)を用いて行うことができる。
ポリペプチド(b)をコードするDNAは、ポリペプチド(a)をコードするDNAに、例えば部位特異的変異誘発法によって人為的に変異を導入することにより取得することもできる。変異の導入は、例えば、変異導入用キット、例えば、Mutant-K(TAKARA社製)、Mutant-G(TAKARA社製)、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを使用して行なうことができる。また、塩基配列が既に決定されているDNAについては、化学合成により取得することもできる。
ポリペプチド(a)又は(b)は、例えば、以下の工程に従って、ポリペプチド(a)又は(b)をコードするDNAを宿主細胞中で発現させることにより製造できる。
〔組換えベクター及び形質転換体の作製〕
目的とするポリペプチドのコード領域を含む適当な長さのDNA断片を調製する。このとき、目的とするポリペプチドのコード領域の塩基配列を、宿主細胞における発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することが好ましい。上記DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより組換えベクターを作製し、該組換えベクターを適当な宿主細胞に導入することにより、目的とするポリペプチドを生産し得る形質転換体を取得できる。
宿主細胞としては、目的とする遺伝子を発現し得る限り、原核細胞、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等のいずれを使用してもよい。また、動物個体や植物個体を使用してもよい。
発現ベクターは、宿主細胞において自立複製が可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター等を使用できる。発現ベクターの具体例としては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2 (ベーリンガーマンハイム社製)、pKK233-2 (ファルマシア社製)、pSE280 (Invitrogen社製)、pGEMEX-1 (Promega社製)、pQE-8 (QIAGEN社製)、pBluescript II SK+ (ストラタジーン社製)、pBluescript II SK(-) (ストラタジーン社製)、pGEX (ファルマシア社製)、pETシステム (ノバジェン社製)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pTrxFus (Invitrogen社製)、pMAL-c2 (New England Biolabs社製)、pSTV28 (宝酒造社製)、pUC118 (宝酒造社製) 等が挙げられる。
細菌を宿主細胞とする場合、例えば、エッシェリヒア・コリ (Escherichia coli) 等のエシェリヒア属、バチルス・ズブチリス (Bacillus subtilis) 等のバチルス属、シュードモナス・プチダ (Pseudomonas putida) 等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ (Rhizobium meliloti) 等のリゾビウム属に属する細菌を宿主細胞として使用できる。具体的には、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli K12、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101等の大腸菌や、Bacillus subtilis MI 114、Bacillus subtilis 207-21等の枯草菌を宿主細胞として使用できる。この場合のプロモーターは、大腸菌等の細菌中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の大腸菌やファージ等に由来するプロモーターを使用できる。また、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーターを使用することもできる。
細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入し得る方法であれば特に限定されず、例えば、カルシウムイオンを用いる方法 (Cohen, S.N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110-2114 (1972))、エレクトロポレーション法等を使用できる。
酵母を宿主細胞とする場合、例えば、サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomycescerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ (Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス (Pichia pastoris) 等を宿主細胞として使用できる。この場合のプロモーターは、酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等を使用できる。
酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入し得る方法であれば特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法 (Becker, D.M. et al.,Methods. Enzymol., 194: 182-187 (1990))、スフェロプラスト法 (Hinnen, A.et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929-1933 (1978))、酢酸リチウム法 (Itoh, H., J. Bacteriol., 153:163-168 (1983))等を使用できる。
動物細胞を宿主細胞とする場合、例えば、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞 (CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等を宿主細胞として使用できる。この場合のプロモーターは、動物細胞中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTR (Long Terminal Repeat) プロモーター、CMVプロモーター、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を使用できる。
動物細胞への組換えベクターの導入方法は、動物細胞にDNAを導入し得る方法であれば特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を使用できる。
昆虫細胞を宿主とする場合、例えば、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞、Trichoplusia niの卵巣細胞、カイコ卵巣由来の培養細胞等を宿主細胞として使用できる。Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞としてはSf9、Sf21等、Trichoplusia niの卵巣細胞としてはHigh 5、BTI-TN-5B1-4 (インビトロジェン社製) 等、カイコ卵巣由来の培養細胞としてはBombyx mori N4等を使用できる。
昆虫細胞への組換えベクターの導入方法は、昆虫細胞にDNAを導入し得る限り特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等を使用できる。
〔形質転換体の培養〕
目的とするポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを導入した形質転換体を通常の培養方法に従って培養する。形質転換体の培養は、宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
大腸菌や酵母等の微生物を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行なえる培地であれば天然培地、合成培地のいずれを使用してもよい。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を使用できる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物等を使用できる。無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を使用できる。
形質転換体の培養は、振盪培養又は通気攪拌培養等の好気的条件下で行なう。培養温度は通常37℃、培養時間は通常8〜12時間であり、培養期間中はpHを7.2〜7.4に保持する。pHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を使用して行なうことができる。また、培養の際、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、EagleのMEM培地、DMEM培地又はこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を使用できる。形質転換体の培養は、通常5%CO存在下、37〜42℃で2〜4日間行なう。培養の際、必要に応じてカナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM-FH培地(ファーミンジェン社製)、Sf-900 II SFM培地(Gibco BRL社製)、ExCell400、ExCell405(JRHバイオサイエンシーズ社製)等を使用できる。形質転換体の培養は、通常27℃で12〜24時間行なう。培養の際、必要に応じてゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
目的とするポリペプチドは、分泌タンパク質又は融合タンパク質として発現させることもできる。融合させるタンパク質又はペプチドとしては、例えば、β−ガラクトシダーゼ、プロテインA、プロテインAのIgG結合領域、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ポリ(Arg)、ポリ(Glu)、プロテインG、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン鎖 (His-tag)、Sペプチド、DNA結合タンパク質ドメイン、Tac抗原、チオレドキシン、グリーン・フルオレッセント・プロテイン等が挙げられる。
〔ポリペプチドの単離・精製〕
形質転換体の培養物より目的とするポリペプチドを採取することにより、目的とするポリペプチドを取得できる。「培養物」には、培養上清、培養細胞、培養菌体、細胞又は菌体の破砕物のいずれもが含まれる。
目的とするポリペプチドが形質転換体の細胞内に蓄積される場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、該細胞を洗浄した後に細胞を破砕して、目的とするポリペプチドを抽出する。目的とするポリペプチドが形質転換体の細胞外に分泌される場合には、培養上清をそのまま使用するか、遠心分離等により培養上清から細胞又は菌体を除去する。
取得されたポリペプチド(a)又は(b)は、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、ゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法等により精製できる。
ポリペプチド(a)又は(b)は、そのアミノ酸配列に基づいて、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することもできる。この際、市販のペプチド合成機を利用できる。
本発明の糖尿病性腎症の予防・治療剤は、ポリペプチド(a)及び(b)に含まれる1種類のポリペプチドを有効成分としてもよいし、2種類以上のポリペプチドを有効成分としてもよい。
本発明の糖尿病性腎症の予防・治療剤は、ポリペプチド(a)又は(b)のみから構成されていてもよいが、通常は医薬的に許容され得る1種以上の担体及び/又は添加剤とともに常法に従って製剤化する。製剤化する場合、製剤中の有効成分の量は、通常0.1〜5重量%、好ましくは1〜5重量%程度である。
医薬的に許容される担体としては、例えば、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。
製剤化に際して使用される添加剤としては、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、賦形剤、安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等が挙げられ、これらの添加剤は製剤の投与単位形態等に応じて適宜選択される。これらのうち、通常の蛋白製剤等に使用される成分、例えば、安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等が好ましく選択される。
添加剤の具体例を以下に例示する。
安定化剤:ヒト血清アルブミン;グリシン、システィン、グルタミン酸等のL−アミノ酸;グルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類及びそれらの誘導体等の糖類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体等。
界面活性剤:ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等の界面活性剤。
緩衝剤:ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸及びそれらの塩 (例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)。
等張化剤:塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン等。
キレート剤:エデト酸ナトリウム、クエン酸等。
投与経路及び投与剤形は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましい。投与経路としては、例えば、経口投与、口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内及び静脈内等の非経口投与が挙げられ、投与剤形としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等が挙げられる。
経口投与に適当な製剤としては、例えば、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。乳剤やシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として使用して製造できる。カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として使用して製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、例えば、注射剤、座剤、噴霧剤等が挙げられる。例えば、注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液又はこれらの混合物を担体として使用して製造できる。座剤は、カカオ脂、水素化脂肪又はカルボン酸等を担体として使用して製造できる。噴霧剤は、受容者の口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつを有効成分を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体として、乳糖、グリセリン等を使用して製造でき、エアロゾル、ドライパウダー等に製剤化できる。
投与量及び投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、投与量は、有効成分量に換算して成人1日当たり通常0.01〜1mg/kg体重の範囲から適宜選択でき、投与回数は、1日1回から数回の範囲から適宜選択できる。投与対象動物は特に限定されないが、例えば、ヒトを含む哺乳動物等が挙げられる。
本発明の糖尿病性腎症の予防・治療剤は、糖尿病性腎炎を予防及び/又は治療できる。糖尿病性腎症は糖尿病の合併症であり、糖尿病性腎症の症状としては、例えば、蛋白尿(アルブミン尿)、糸球体内の細胞外基質 (例えば、IV型コラーゲン、I型コラーゲン、III型コラーゲン、フィブロネクチン等) の蓄積、細胞周期のG1期での停止、糸球体肥大、腎肥大、糸球体硬化、間質の線維化、細動脈硬化等が挙げられ、本発明の糖尿病性腎症の予防・治療剤により、これらの症状を予防及び/又は治療することができる。
1.方法
(1) 実験動物
実験動物としては、レプチン受容体を欠損した2型糖尿病モデル動物である雄性db/dbマウス (日本クレア) を使用した。db/dbマウスは、高血糖、高インスリン血症、高レプチン血症等を呈し、4〜7週齢には肥満を呈するようになる。db/dbマウスは8週齡には100%が高血糖を呈するため、8週齢より治療介入を開始した。8週齢のdb/dbマウスに1mmol/L DTTを含有するリン酸緩衝生理食塩水 (PBS-DTT) に溶解したマウスガレクチン−9組換えタンパク質 (1mg/kg体重) を週3回腹腔内投与し、これを8週間継続した (n=20,db/db+G9群)。コントロールとしてdb/dbマウス (n=20,db/db群) 及び非糖尿病モデル動物であるdb/mマウス (日本クレア) (n=20,db/m群) にPBS-DTTを同様に投与した。8週齡及び16週齡の時点で採血を行い、マウス採尿ケージ (夏目製作所) にマウスを入れ、24時間尿を採取し、尿中アルブミン排泄量(mg/day)を測定した。16週齡の時点で屠殺し、腎臓を組織学的検討、ノーザン解析及びウエスタンブロットに供した。
(2) マウスガレクチン−9組換えタンパク質(配列番号1)の作製
マウスガレクチン−9組換えタンパク質 (以下「G9」という。) は、公知の方法 (Wada J.等, J.Biol.Chem. 272:6078-6086, 1997;Wada J.等, J.Clin.Invest 99:2452-2461, 1997) に基づいて、pTrcHis2ベクター (Invitrogen, San Diego, CA, USA) を使用して産生させた。なお、G9は、C末端にc-mycエピトープ及び(His)6を有する融合タンパク質として産生される。
マウスガレクチン−9をコードするDNA (配列番号4) を含むベクター (以下「pTrcHis2/G9」という。) を、TOP10バクテリア宿主 (Invitrogen社製) にトランスフォーメーションした。トランスフォーメーションした細菌コロニーを、Luria-Bertani's培地で培養し、1mmol/Lのisopropyl-β-D-tiogalactopyranoside (IPTG) を加えることによりタンパク質合成を誘導した。1%TritonX-100、10mmol/L benzamidine、10mmol/L ε-amino-n-caproic acid及び2mmol/L phenylmethanesulfonyl fluorideを含むTris-dithiothreitol (Tris-DTT) 緩衝液 (20mmol/L Tris (pH 7.4),5mmol/L ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA),150mmol/L sodium chroride,1mmol/L DTT) で細菌を溶解した。その溶解液を4℃で30分間、20000×gで遠心した。遠心上清を10mLのlactosyl-Sepharoseカラム (Sigma, ST.Louis, MO, USA) に添加した。非結合タンパク質を洗浄した後、融合タンパク質を200mmol/L Lactoseを含むTris-DTTバッファーで溶出した。その溶出画分を1mmol/L DTTを含有するリン酸緩衝液 (PBS) で透析し、-70℃で保存した。サンプルを12.5%のSDS-PAGE (sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis) で解析したところ、単一のバンドが得られ、分子量は39kDaであり、構成アミノ酸数から予測される分子量と一致した。
(3) 組織学的検討
腎臓組織は10% ホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した後、3μm厚の切片を作製した。切片はPAS (periodic acid-Schiff) で染色した。それぞれの動物について50個の糸球体面積及びメサンギウム基質面積をOPTIMAS version 6.5 (Media Cybernetics, Silver Spring, MD, USA) を用いて計測した。
(4) 蛍光抗体法
糸球体内の細胞外基質の定量を行うために、IV型コラーゲンα1鎖抗体を用いた蛍光抗体法を行い、蛍光強度を定量することによりIV型コラーゲン発現量をを定量した。すなわち、凍結切片を氷上でアセトン固定し、これらの切片をRabbit polyclonal anti-collagen human type IV (α1) (Santa Criz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA) と1時間反応させた後、FITC標識抗ウサギIgG (Cappel) と1時間反応させて染色した。Confocal laser fluorescence microscope (LSM-510, Carl Zeiss, Jena, Germany) を用いて撮影した後、画像ファイルをNIH imageのグレイスケールモードで取り込み、濃度を0から256までのスケールに変換し、densityとして [density X positive area] の計算式によってIV型コラーゲンのタンパク質発現の定量を行った。
(5) 酵素抗体法
糸球体内のp21陽性細胞数及びp27陽性細胞数を定量するために、酵素抗体法を実施した。すなわち、腎臓組織のパラフィン切片を10mmol/L クエン酸バッファー (pH 6.0) に浸漬し、マイクロウエイブを用いて500watt、20分間加熱した。冷却し、メタノール (3% H2O2) でブロッキングを行った後、正常血清及びアビジンビオチンブロッキング試薬 (Vector Laboratories, Burlingame, CA, USA) を用いてブロッキングを行った。次いで、一次抗体であるウサギ抗ヒトp21ポリクローナル抗体 (rabbit polyclonal anti-human p21) 及びウサギ抗ヒトp27Kip1ポリクローナル抗体 (rabbit polyclonal anti-human p27Kip1) (Santa Cruz)、二次抗体であるビオチン標識ロバ抗ウサギIgG抗体 (biotin labeled donkey anti-rabbit IgG) (Jackson Immunoresearch Laboratory, West Grove、PA)、三次抗体 (ABC試薬, Vectastain Elite kit, Vector Laboratories, Burlingame, CA, USA) と反応させ、DAB試薬によって発色させた後、1匹の動物あたり50個以上の糸球体について糸球体内のp21陽性細胞数及びp27陽性細胞数をカウントした。
(6) ノーザン解析
腎皮質又は培養細胞からtotal RNAを抽出し、2.2mol/Lホルムアルデヒド含有1%アガロースゲルで電気泳動を行い、さらにHybond N+ nylon (Amersham, Arlington Heights, IL, USA) に転写した。TGFβ (transforming growth factor-β)、IV型コラーゲンα1鎖及びα5鎖、並びにβ-アクチンのcDNAをRediprime II DNA Labelling System (Amersham) により[α-32P] dCTPラベルした。それぞれのcDNA (1x106cpm/mL) をExpress HybTM Hybridization Solution (Clontech, Palo Alto, CA, USA) を用いて、68℃で2時間ハイブリダイゼーションした。ナイロンフィルターを1xSSC (standard sodium citrate)/0.1%SDS (sodium dodecyl sulfate)で4回 (24℃)、0.1xSSC/0.1%SDSで2回 (68℃) 洗浄し、オートラジオグラフィーを実施した (Hyperfilm MP, Amersham)。
(7) ウエスタンブロット
培養細胞をlysis buffer中でホモジナイズし、タンパク質濃度をBradford法で測定した後 (Amersham)、40μgをSDS/12%PAGE (polyacrlamaide gel electrophoresis) にて展開し、Transblot SD Semi-Dry Transfer Cell (Bio-Rad Laboratories, CA, USA) を用いてニトロセルロース膜 (Hybond-ECL, Amersham) に転写した。5%スキムミルクを含むTBS (20mM TrisHCl, pH 7.6, 150mM NaCl) 中で室温にて1時間ブロッキングを行った。TTBS (0.1% Tween20を含むTBS)を用いて、一次抗体であるウサギ抗ヒトp21ポリクローナル抗体 (rabbit polyclonal anti-human p21) 及び ウサギ抗ヒトp27Kip1ポリクローナル抗体 (rabbit polyclonal anti-human p27Kip1) (Santa Cruz)、並びにウサギ抗アクチンポリクローナル抗体 (rabbit polyclonal anti-actin) (Sigma, Saint Louis, MI, USA) を200倍希釈してメンブレンと室温で1時間反応させた。TTBS (0.1% Tween20を含むTBS) で10分間3回以上洗浄した後、0.1%BSAを含むTTBS (0.05% Tween20を含むTBS) を用いて二次抗体 (HRP標識抗ウサギIgG抗体) を20,000倍希釈し、メンブレンと室温で30分間反応させた。TTBS (0.05% Tween20を含むTBS) で10分間3回以上洗浄した後、ECL plus (Amersham) にて化学発光を行うとともに、X線フィルム (Hyperfilm ECL, Amersham) への感光・現像を行なった。
(8) 培養細胞実験
Conditionally immortalized mouse podocyte cell lines (MPC) をDr. Peter Mundelより供与をうけ実験に使用した (Mundel P 等, Exp Cell Res 236:248-258, 1997)。MPC細胞の培養には、10% fetal bovine serum、100 units/ml ペニシリン・ストレプトマイシン及びグルタミン含有RPMI1640培地 (Gibco) を用いた。まず、細胞を増殖させるために、50 U/ml γ-IFN (Gibco) 存在下、33℃で7日間培養した。次いで、分化誘導を行うために、γ-IFN不含有の培地に変更するとともに培養温度を37℃に上昇させ、さらに7日間培養した。分化は、著明な細胞突起の形成及びsynaptopondinの発現により確認した。その後、正常濃度糖添加 (5.5mM グルコース)、高濃度糖添加 (25mM グルコース) 下で6日間培養した。コントロール(高浸透圧)としてマンニトール (25mM) を用いた。高濃度糖添加培養条件においては、1nM及び100nMのG9を48時間ごとに添加した。コントロールとしてvehicleである同量のPBS-DTTを添加した。培養終了時に、ウエスタンブロット、DNA合成量及びタンパク質合成量の定量、並びに細胞周期の解析に供した。
(9) [3H]-チミジン及び[3H]-プロリン取り込み量の測定
12ウェル培養ディッシュ中で3x104/wellのMPC細胞を同期して分化させ、[3H]-チミジン (2μCi/ml) 及び[3H]-プロリン (5μCi/ml) でパルスラベルを行い、[3H]-チミジンは6時間後に、[3H]-プロリンは12時間後に上清を除去し、PBSで洗浄し、氷冷10% trichloroacetic acid (TCA) で沈降させた後、乾燥させた。0.4N NaOHで溶解し、37℃で20分間インキュベーションした後、0.2N acetic acidで中和した。液体シンチレーションカウンターで[3H]-チミジン及び[3H]-プロリン取り込み量を測定し、さらに[3H]-プロリンについてはタンパク質濃度で補正を行った。
(10) 細胞周期の解析
MPC細胞をチャンバースライド (Falcon) 中で培養し、分化誘導した。100%エタノールに15分間浸漬し固定した後、Propidium Iodide (50μg/ml)/RNAseA (200μg/ml) (Sigma) 溶液にて15分間染色を行った。Vecter Shield (Vecter) で封入し、OLYMPUS Laser Scanning Cytometer (LSC) により個々の細胞の細胞周期 (G0期, G1期, S期, G2期, M期) の同定を行った。少なくとも2000細胞について解析を行った。
(11) 統計処理
データは平均±標準誤差で示した。One-way ANOVA検定を用いてp<0.05を有意とした。
2.結果
(1) 糖代謝、脂質代謝及び血圧に対するG9投与の効果
db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における体重(g)、収縮期血圧、拡張期血圧、HbA1c(%)、空腹時血糖(mg/dl)、空腹時IRI(ng/ml)、血清クレアチニン(mg/dl)、血中コレステロール(mg/dl)、血中中性脂肪(mg/dl)、血中遊離脂肪酸(μEQ/l)、左腎重量(g/kg体重)及び右腎重量(g/kg体重)を表1に示す。なお、表1中、「8W」は8週齢、「16W」は16週齢を表す。
表1に示すように、db/db群ではdb/m群と比較して、HbA1c(%)、空腹時血糖(mg/dl)、空腹時IRI(ng/ml)、血中コレステロール(mg/dl)、血中中性脂肪(mg/dl)及び血中遊離脂肪酸(μEQ/l)が有意に増加したことから、db/db群では糖尿病が発症して糖代謝及び脂質代謝に異常が生じていることが示された。また、表1に示すように、糖代謝、脂質代謝及び血圧についてdb/db群及びdb/db+G9群間で有意差が認められなかったことから、G9投与は、糖代謝、脂質代謝及び血圧に影響を及ぼさないことが示された。
(2) 腎障害及び糸球体肥大に対するG9投与の効果
db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における尿中アルブミン排泄量(mg/day)を図1に示す。なお、図1中、「8W」は8週齢、「12W」は12週齢、「16W」は16週齢を表す。
db/m群、db/db群及びdb/db+G9群の糸球体のPAS (periodic acid-Schiff) による染色結果を図2(a)に示し、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体面積(tuft area, μm2)及びメサンギウム基質面積/糸球体面積(メサンギウムインデックス(mesangial index), %)を図2(b)に示す。
図1に示すように、db/db群ではdb/m群と比較して尿中アルブミン排泄量(mg/day)が有意に増加したことから、db/db群では糖尿病性腎症が発症して腎障害が生じていることが示された。また、図2に示すように、db/db群ではdb/m群と比較して糸球体面積(μm2)及びメサンギウムインデックス(%)が有意に上昇したことから、db/db群では糖尿病性腎症が発症して糸球体が肥大していることが示された。
これに対して、図1に示すように、db/db+G9群ではdb/db群と比較して尿中アルブミン排泄量(mg/day)が有意に減少したことから、G9投与により、糖尿病性腎症の一症状である腎障害を改善できることが示された。また、図2に示すように、db/db+G9群ではdb/db群と比較して糸球体面積(μm2)及びメサンギウムインデックス(%)が有意に減少したことから、G9投与により、糖尿病性腎症の一症状である糸球体肥大を抑制できることが示された。
(3) 糸球体内の細胞外基質の蓄積に対するG9投与の効果
db/m群、db/db群及びdb/db+G9群の糸球体の蛍光抗体法による染色結果を図3(a)に示し、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内IV型コラーゲン発現量(相対量)を図3(b)に示す。なお、糸球体内IV型コラーゲン発現量(相対量)は、db/m群の発現量を1としたときの各群の発現量を示す。
db/m群、db/db群及びdb/db+G9群におけるノーザン解析の結果を図4に示す。
図3に示すように、db/db群ではdb/m群と比較して糸球体内IV型コラーゲンのタンパク質発現量が有意に増加したこと、及び、図4に示すように、db/db群ではdb/m群と比較して糸球体内IV型コラーゲンα1鎖及びα5鎖のmRNA発現量が顕著に増加したから、db/db群では糖尿病性腎症が発症して糸球体内にIV型コラーゲン等の細胞外基質が蓄積していることが示された。なお、糸球体内の細胞外基質の蓄積は糸球体硬化を引き起こす原因となる。
これに対して、図3に示すように、db/db+G9群ではdb/db群と比較して糸球体内IV型コラーゲンのタンパク質発現量が有意に減少したこと、及び、図4に示すように、db/db+G9群ではdb/db群と比較して糸球体内IV型コラーゲンα1鎖及びα5鎖のmRNA発現量が顕著に減少したことから、G9投与により、糖尿病性腎症の一症状である糸球体内の細胞外基質の蓄積及びそれにより引き起こされる糸球体硬化を抑制できることが示された。
なお、糸球体内の細胞外基質の蓄積に関する重要なメディエーターであるTGFβのmRNA発現量について、図4に示すように、db/db群ではdb/m群と比較してが顕著に増加したが、db/db+G9群ではdb/db群と比較して顕著な変化が観察されなかったことから、G9投与による上記効果はTGFβを介さない経路で惹起されると推察される。
(4) サイクリン依存性キナーゼ阻害因子の発現に対するG9投与の効果
db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内のp21陽性細胞及びp27陽性細胞の酵素抗体法による染色結果をそれぞれ図5(a)及び図6(a)に示し、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内のp21陽性細胞及びp27陽性細胞の割合(%)をそれぞれ図5(b)及び図6(b)に示す。
図5及び図6に示すように、db/db群ではdb/m群と比較して糸球体内のp21陽性細胞及びp27陽性細胞の割合が有意に増加した。また、図5(a)及び図6(a)に示すように、主として糸球体上皮細胞(podocyte)においてp21陽性細胞及びp27陽性細胞が増加していることが観察された。これらの結果は、糖尿病性腎症において、p21、p27等のサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(cyclin dependent kinase inhibitor(CDK-I))の発現が亢進することにより細胞周期がG1期で停止(arrest)し、細胞周期が停止した状態でタンパク質合成が進行することにより細胞肥大が生じ、これにより糸球体肥大が生じるという従来の知見と合致する。
これに対して、図5及び図6に示すように、db/db+G9群ではdb/db群と比較して糸球体内のp21陽性細胞及びp27陽性細胞の割合が有意に減少したことから、G9投与により、p21、p27等のサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の発現を抑制することにより細胞周期を改善し、糖尿病性腎症の一症状である糸球体肥大を抑制できることが示された。
(5) 細胞周期に対するG9投与の効果
[3H]-チミジン取り込み量(dpm/well)及び[3H]-プロリン取り込み量(dpm/細胞mgタンパク質)の測定結果を図7に示す。なお、図7中、「NG」は正常濃度糖添加 (5.5mM グルコース) 下での培養、「MN」はマンニトール添加 (25mM) 添加下での培養、「HG」は高濃度糖添加 (25mM グルコース) 下での培養、「G9 1nM」は高濃度糖添加 (25mM グルコース) 及び1nM G9添加下での培養、「G9 100nM」は高濃度糖添加 (25mM グルコース) 及び100nM G9添加下での培養を表す。
各種条件で培養したMPC細胞におけるウエスタンブロットの結果を図8に示す。なお、図8中、「NG」、「HG」、「G9 1nM」、「G9 100nM」及び「MN」は上記と同義である。
各種培養条件におけるG0/G1期、S期及びG2/M期の細胞数を図9に示す。なお、図9中、「NG」、「HG」、「G9 1nM」、「G9 100nM」及び「MN」は上記と同義である。
図7に示すように、高濃度糖添加下で培養した場合、正常濃度糖添加下で培養した場合と比較して[3H]-チミジン取り込み量が有意差はないものの減少した。一方、図7に示すように、高濃度糖添加下で培養した場合、正常濃度糖添加下で培養した場合と比較して[3H]-プロリン取り込み量が有意に増加し、タンパク質合成が亢進していることが示された。これに対して、図7に示すように、高濃度糖添加下で培養した場合に観察された[3H]-プロリン取り込み量の増加はG9添加により抑制された。なお、コントロールとして用いたマンニトール添加下で培養した場合にはこのような変化は観察されなかった。
図8に示すように、高濃度糖添加下で培養した場合、db/db群の糸球体上皮細胞で観察されたように、p27及びp21のタンパク質発現量が増加したが、これらの増加はG9添加により抑制された。
図9に示すように、高濃度糖添加下で培養した場合、G0/G1期の細胞の増加及びG2/M期の細胞の減少が観察されたことから、高濃度糖添加下で培養した場合には細胞周期がG1期で停止したことが示された。これに対して、図9に示すように、G9添加により、用量依存的にG0/G1期の細胞が減少するとともにG2/M期の細胞が増加し、正常濃度糖添加下で培養した場合と同レベルまで復帰した。
これらの結果から、G9投与は、p21、p27等のサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の発現を抑制することにより細胞周期を正常化し、タンパク質合成を正常化することにより糖尿病性腎症の一症状である糸球体肥大を抑制できることが示された。
3.考察
糖尿病性腎症ではメサンギウム細胞等の糸球体細胞の細胞周期がG1期で停止することが報告されている。細胞周期の停止に加えて、腎組織では高血糖によってタンパク質合成が亢進することが相俟って尿細管細胞・糸球体細胞の肥大、ひいては糸球体肥大、腎肥大が引き起こされる。この腎肥大は、糖尿病性腎症に特徴的な病態である。その分子機序としてp21、p27等のサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の発現亢進が報告されている。p21、p27等はサイクリンDを抑制することによって腎臓における細胞周期をG1期で停止させていると考えられている(Wolf G 等, Am J Pathol 158:1091-1100, 2001;Wolf G 等, Kidney Int 53:869-879, 1998;Monkawa T 等, J Am Soc Nephrol 13:1172-1178, 2002)。ガレクチン−9投与はdb/db群で観察される糸球体肥大を抑制し、尿中アルブミン排泄量を減少させ、メサンギウム基質の増加及びIV型コラーゲンの産生を抑制した。この作用機序として、p21及びp27の発現を検討したところ、ガレクチン−9投与はそれらの発現を抑制した。さらに詳細なメカニズムを明らかにするために、MPC細胞を用いて検討したが、高濃度糖添加培養条件下で引き起こされるDNA合成の抑制及びタンパク質合成の促進はG9添加によって正常化し、G1期にある細胞数を減少させた。
TGFβは糖尿病性腎症で発現が増加し、細胞外基質の産生増加、細胞増殖の抑制、細胞肥大を誘導すると考えられている(Ziyadeh FN 等Proc Natl Acad Sci U S A 97:8015-8020, 2000)。ガレクチン−9投与は細胞外基質の産生増加、細胞増殖の抑制、細胞肥大のいずれをも改善するが、db/dbマウスを用いた検討では、ガレクチン−9投与はTGFβのmRNA発現を大きく変化させておらず、ガレクチン−9の作用はTGFβを介していなのではないかと推測される。したがって、ガレクチン−9によるp21、p27等の発現抑制もTGFβを介していない可能性がある。
ガレクチン−9は今までの研究から、活性化T細胞、胸腺細胞等の細胞にアポトーシスを誘導することが知られているが、本研究により、ガレクチン−9が糖尿病性腎症で引き起こされるG1期の細胞周期停止を正常化させることが示された。アポトーシスの誘導はS期における細胞周期の停止によって起こることから、ガレクチン−9は細胞周期の調節に重要な分子であると考えられる。細胞周期に介入することは癌の治療戦略において重要であることは周知であるが、本研究により、糖尿病性腎症における細胞周期異常への介入が新しい治療ターゲットであることが示された。ガレクチン−9が腎臓細胞に作用する場合、β-galactosideを有する糖タンパク質と結合してその作用を発揮すると考えられるがそのターゲットは今のところ不明である。今後はこのような作用が膜表面上のどのような分子を介して起こっているのかの検討が必要である。
ガレクチンをめぐる創薬は癌のアポトーシスや増殖抑制といった観点から、癌治療のターゲットとして注目されている。代表的な生活習慣病である糖尿病においては、大血管障害である動脈硬化、細小血管障害である神経障害、網膜症、腎症が重要であるが、これら慢性血管合併症においても細胞周期異常の関与が少なからずあると思われる。例えば、動脈硬化巣における平滑筋増殖、内皮細胞のアポトーシス、網膜血管のpericyteの増殖、腎糸球体細胞の細胞周期の停止と肥大である。ガレクチン−9がその細胞の状態に応じて細胞周期への影響が異なれば、すなわち増殖細胞に対してはその抑制を、細胞周期が停止状態であればそれを解除するのであれば、糖尿病における様々な細胞周期異常を同時に治療できる可能性がある。
db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における尿中アルブミン排泄量(mg/day)を示す図である。 (a)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群の糸球体のPAS (periodic acid-Schiff) による染色結果を示す図であり、(b)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体面積(tuft area, μm2)及びメサンギウム基質面積/糸球体面積(メサンギウムインデックス(mesangial index), %)を示す図である。 (a)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群の糸球体の蛍光抗体法による染色結果を示す図であり、(b)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内IV型コラーゲン発現量(相対量)を示す図である。 db/m群、db/db群及びdb/db+G9群におけるノーザン解析の結果を示す図である。 (a)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内のp21陽性細胞の酵素抗体法による染色結果を示す図であり、(b)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内のp21陽性細胞の割合(%)を示す図である。 (a)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内のp27陽性細胞の酵素抗体法による染色結果を示す図であり、(b)は、db/m群、db/db群及びdb/db+G9群における糸球体内のp27陽性細胞の割合(%)を示す図である。 [3H]-チミジン取り込み量(dpm/well)及び[3H]-プロリン取り込み量(dpm/細胞mgタンパク質)の測定結果を示す図である。 各種条件で培養したMPC細胞におけるウエスタンブロットの結果を示す図である。 各種培養条件におけるG0/G1期、S期及びG2/M期の細胞数を示す図である。

Claims (1)

  1. 以下の(a)又は(b)に示すポリペプチドを有効成分として含有する糖尿病性腎症の予防・治療剤。
    (a) 配列番号1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b) 配列番号1記載のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−ガラクトシドに特異的な結合活性を有するポリペプチド
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