JP2005310834A - プラズマプロセス装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマによるガスの分解及び解離を促進させてプラズマ処理の精度を向上させる。
【解決手段】プラズマプロセス装置は、被処理基板4が内部に配置される処理室5と、処理室5の内部にガスを導入するガス導入口6と、処理室5の内部に設けられ、被処理基板4にプラズマ処理を施すプラズマ放電発生部とを備えている。そして、プラズマ放電発生部は、被処理基板4と平行に配置された平板電極部31を有するカソード電極2aと、カソード電極2aの平板電極部31と被処理基板4との間に配置され、被処理基板4と平行な方向にストライプ状に延びる複数の絶縁部3と、カソード電極2aと分離した状態で各絶縁部3と被処理基板4との間に設けられた複数のアノード電極2bとを備えている。さらに、絶縁部3は、平板電極部31の表面の法線方向の長さHが、平板電極部31とアノード電極2bとの間隔Lを超えないように形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】プラズマプロセス装置は、被処理基板4が内部に配置される処理室5と、処理室5の内部にガスを導入するガス導入口6と、処理室5の内部に設けられ、被処理基板4にプラズマ処理を施すプラズマ放電発生部とを備えている。そして、プラズマ放電発生部は、被処理基板4と平行に配置された平板電極部31を有するカソード電極2aと、カソード電極2aの平板電極部31と被処理基板4との間に配置され、被処理基板4と平行な方向にストライプ状に延びる複数の絶縁部3と、カソード電極2aと分離した状態で各絶縁部3と被処理基板4との間に設けられた複数のアノード電極2bとを備えている。さらに、絶縁部3は、平板電極部31の表面の法線方向の長さHが、平板電極部31とアノード電極2bとの間隔Lを超えないように形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、第1電極及び第2電極の間でプラズマ放電を発生させるプラズマ放電発生部を備えるプラズマプロセス装置に関する。
プラズマを使って半導体膜等を成膜し、集積回路、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス素子、太陽電池などの電子デバイスを製造する方法、いわゆるプラズマ励起化学気相成長(Chemical Vapor Deposition 、CVD)法は、その簡便性や操作性に優れるので、さまざまな電子デバイスを製造するのに使用されている。
プラズマCVD法を用いる装置の形態(プラズマ化学蒸着装置、以下プラズマCVD装置という。)としては、図21及び図22に示すものが一般的である。図21及び図22を参照しながら、プラズマCVD装置を説明する。図21は、従来のプラズマCVD装置の概略図であり、図22は、従来のプラズマCVD装置を模式的に示す断面図である。プラズマCVD装置は、処理室(真空容器)5を用いて構成された閉空間と、その中にお互いに電気的に絶縁され、対向する位置に平行に設置された、2枚の導体板からなる電極2a,2bとを有する。2枚の電極2a,2bの間にプラズマ11を発生させ、そこに材料ガスを流してガスを分解・解離させる。一方の電極2bに取り付けられた、シリコンやガラスなどからなる被処理基板4の上に、半導体膜などを成膜する。
成膜用の材料ガスを分解するためのプラズマ11を発生させる手段としては、周波数が13.56MHzの高周波などの電気的エネルギーが一般に使用される。一方の導体板電極2bは接地電位とし、対向する他方の電極2aに電圧を印加して、両電極2a,2b間に電界を発生させ、その絶縁破壊現象によりグロー放電現象としてプラズマ11を生成する。電圧が印加される側の電極2a、すなわち電気的エネルギーが印加される電極2aをカソード電極あるいは放電電極と呼ぶ。カソード電極2a近傍に大きな電界が形成されるので、その電界で加速されるプラズマ11中の電子が材料ガスの解離を促しラジカルを生成する。図22中の12はラジカルの流れを示している。
カソード電極2a近傍の大きな電界が形成される放電11の部分を、カソードシース部と呼ぶ。カソードシース部あるいはその近傍で生成されたラジカルは、接地電位の電極2b上の被処理基板4まで拡散し、基板4の表面に堆積して膜が成長する。接地電位にある電極2bをアノード電極2bと呼ぶ。アノード電極2b近傍にも、ある程度の大きさの電界が形成され、その部分をアノードシース部と呼ぶ。このように、互いに平行な2つの電極2a,2b間でプラズマを生成し、アノード電極2b上の被処理基板4に成膜する装置を、以下「平行平板型装置」と呼ぶ。
このようなプラズマCVD法は、様々な産業で作製される電子デバイスに対して広く利用されている。例えば、アクティブ駆動型の液晶ディスプレイの製造工程では、TFT(Thin Film Transistor)と呼ばれるスイッチング素子が作製される。TFT内では、その構成部としてアモルファスシリコン膜や窒化シリコン膜等のゲート絶縁膜が重要な役割を果たしている。各々の膜がその役割を果たすためには、高品質な透明絶縁膜を効率よく成膜する技術が不可欠である。また、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製するためには、有機薄膜を成膜した後、大気に曝される表面を保護する保護膜として、高品質な透明絶縁膜を効率よく成膜する技術が不可欠である。さらに、例えば太陽電池を作製するためには、太陽電池層を成膜した後、大気に曝される表面を保護する保護膜として、高品質膜を効率よく成膜する技術が不可欠である。このように作製された電子デバイスは広く使用されている。
材料ガスをエッチングガスに変更して、プラズマCVD装置と同様にプラズマ11を発生させ、薄膜のエッチングを行うドライエッチング装置やレジストの除去を行うアッシャー装置も、総称してプラズマプロセス装置として知られている。プラズマ11の発生の仕方やラジカルの生成などは、プラズマCVD装置の場合と同様のメカニズムであり、被処理基板4へ到達したラジカルが薄膜等の除去を行う。ドライエッチング装置やアッシャー装置がプラズマCVD装置と異なるのは、ラジカルの存在だけでなく、プラズマからのイオン衝撃による物理スパッタリングや被処理基板4へのエネルギー入射をそのエッチング動作に利用している点だけである。
従来から確立されてきたプラズマCVD装置には限界があり、液晶ディスプレイやアモルファス太陽電池などの大面積電子デバイスを作製する場合、被処理基板4へ成膜するときに、材料ガスの解離を十分行い、高品質の薄膜を得るのが困難な場合があった。例えば、従来から知られる平行平板型装置では、材料ガスの解離が不十分な場合がある。窒化シリコン膜を成膜する場合、材料ガスとしてはシラン(SiH4)、アンモニア(NH3)、窒素(N2)、水素(H2)等が使用され、膜への窒素の供給はアンモニアが分解して行われる。ところが、例えば銅配線上に窒化シリコン膜を成膜しようとすると、アンモニアガスは銅を腐食させるおそれがある。
また、アンモニアは化学的活性の強いガスであり、アンモニアを使用せずに、窒素ガスのみで窒化シリコン膜を成膜したい場合がある。このような場合、平行平板型装置では、解離しにくい水素ガスや窒素ガスを十分分解させることができず、絶縁膜性や保護膜性のよい窒化シリコン膜を得ることは困難であった。あるいは、アモルファスシリコン膜を成膜する場合、材料ガスとしてはシラン、水素等が使用されるが、ガスの利用効率は10%程度に留まっていた。この場合も、平行平板型装置では、材料ガスの解離を十分促進することができていなかったといえる。
被処理基板4へ高品質膜を成膜する技術は、特許文献1〜特許文献5等に開示されている。
特開平11−144892号公報(段落[0018]及び[0019]、図1)
特開平1−279761号公報(第3〜4頁の「作用」の欄、図1)
特開2001−338885号公報
特開2002−217111号公報
特開2002−270522号公報
例えば、特許文献1に開示されたプラズマ装置では、ガラス基板に対向する放電電極が複数の電極から構成されており、それぞれの電極は、互いに極性の異なる高周波電圧を印加され横方向の放電を生じるように配置されている。反応ガスは、電極と電極のあいだから放出される。横電界の放電プラズマ中に放出されたガスは、プラズマ反応を生じた後、ガラス基板側の方向に拡散し、ガラス基板に堆積する。これにより、放電ダメージをガラス基板に与えることがなく、高品質の成膜が可能になる。しかし、このプラズマ装置でも、平行平板型装置と同様に、材料ガスの解離を促進することはできない。
材料ガスの解離を促進する技術は、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2に開示されたプラズマ装置では、カソード電極に凹状空間が設けられており、ホローカソード効果によりプラズマ密度が高められる。これにより、材料ガスの解離が促進され、通常の平行平板型装置と比較して、速い成膜速度が得られる。しかし、この装置では、被処理基板の表面がプラズマに晒されるので、成膜面がプラズマダメージを被る。
被処理基板4の設定温度を300℃以上にすることによって、このようなプラズマダメージを熱エネルギーで修復することができる。しかし、被処理基板4を200℃程度あるいはそれ以下の温度に設定したい場合には、良好な膜質が維持できない。すなわち、プラズマCVD装置により、特に低い被処理基板温度において、高品質膜を実現し、高いガス解離効率にて成膜する方法がいまだ確立されていない。
特許文献1に記載されたプラズマ装置の構成をドライエッチング装置やアッシャー装置に応用した場合を想定する。この場合にも、プラズマ発生部とイオン衝撃制御部とを別々にコントロールできる。すなわち、第3の電極を基板4の後ろへ取り付けて、イオン衝撃の制御をプラズマ発生とは独立して行うことが可能であり、パラメータの制御性を上げることができる。
しかし、この場合も、処理ガスの解離を促進することができず、ある一定以上に処理速度を上げることはできない。すなわち、総じて、高性能で高いガス解離効率にて動作するプラズマプロセス装置がいまだ確立されていない。
以上のような技術で成膜された薄膜では、これまでデバイス用として十分な保護膜特性が得られていなかった。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子においては、大気中の水蒸気や酸素の侵入を防止するために、透明な絶縁性の保護膜を素子の外層に設ける必要がある。素子内の有機膜が100℃以上のプロセス温度において特性が大幅に劣化するので、それ以下の温度で保護膜を形成する必要がある。
しかし、従来のプラズマCVD装置では、そのような温度条件では良質な保護膜は形成できなかった。例えば、Applied Physics Letters, volume 65, pages 2229-2231 には、保護膜として窒化シリコン膜を100℃にて形成した場合、膜質が悪いので、大気中の水蒸気が膜内に侵入し、シリコンと酸素の結合を生じてしまうことが報告されている。この報告から、水蒸気や酸素が遂には膜を透過してしまうことが予想される。現状では品質の悪い保護膜しか実現できていないので、大気との隔離のために、キャップ用のガラス基板を窒素雰囲気で封着しているのが実情である。窒化シリコン膜を保護膜として使用しているデバイスとしては、多結晶シリコン太陽電池やガリウム・砒素系電子デバイスがあり、これらデバイスについても、上記に挙げた、品質上の課題がある。
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プラズマによるガスの分解及び解離を促進させてプラズマ処理の精度を向上させることにある。
上記の目的を達成するために、本発明に係るプラズマプロセス装置は、被処理基板が内部に配置される処理室と、前記処理室の内部にガスを導入するガス導入口と、前記処理室の内部に設けられ、前記被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ放電発生部とを備えるプラズマプロセス装置であって、前記プラズマ放電発生部は、前記被処理基板と平行に配置された平板電極部を有する第1電極と、前記第1基板の平板電極部と前記被処理基板との間に配置され、該被処理基板と平行な方向にストライプ状に延びる複数の絶縁部と、前記第1電極と分離した状態で前記各絶縁部と前記被処理基板との間に設けられた複数の第2電極とを備え、前記絶縁部は、前記平板電極部の表面の法線方向の長さHが、前記平板電極部と第2電極との間隔Lを超えないように形成されている。
前記第1電極は、平板電極部の表面と絶縁部の側面とを繋ぐプラズマ放電面を有する隅肉部を備え、前記隅肉部における被処理基板側の先端と平板電極部との距離H1は、平板電極部と第2電極との間隔Lよりも小さいことが好ましい。
前記隅肉部のプラズマ放電面は、凹状の曲面により構成されていてもよい。
前記隅肉部のプラズマ放電面は、平面により構成され、前記隅肉部のプラズマ放電面と平板電極部の表面とが成す角度θは、45°以上且つ90°以下であるようにしてもよい。
前記第2電極の断面形状は、5つ以上の角を有する多角形であることが好ましい。また、前記第2電極の断面は、曲線を含む形状に形成されていてもよい。
前記絶縁部の側面は、平面により構成されていることが好ましい。また、前記絶縁部の側面は、曲面により構成されていてもよい。
本発明によれば、第1電極と第2電極との間で生じるプラズマ放電の経路に沿ってガスを導入できるため、被処理基板から離れた領域でガスを効率よく分解及び解離させることができる。その結果、低い被処理基板温度においても、成膜面のプラズマダメージを抑制してプラズマ処理の精度を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
《発明の実施形態1》
図1及び図2を参照しながら、本発明に係るプラズマプロセス装置の実施形態であるプラズマCVD装置について説明する。図1は、プラズマCVD装置を模式的に示す斜視図であり、図2は、プラズマCVD装置を模式的に示す断面図である。
図1及び図2を参照しながら、本発明に係るプラズマプロセス装置の実施形態であるプラズマCVD装置について説明する。図1は、プラズマCVD装置を模式的に示す斜視図であり、図2は、プラズマCVD装置を模式的に示す断面図である。
プラズマCVD装置は、被処理基板4が内部に配置される処理室(真空容器)5と、この処理室5の内部に材料ガス(以下、単にガスともいう。)を導入するガス導入口6と、処理室5内に設けられたプラズマ放電発生部15とを有する。典型的には、処理室5内に、被処理基板4を保持する基板ホルダ9が設けられており、被処理基板4は基板ホルダ9に装着されるようになっている。
尚、基板ホルダ9の後ろ(被処理基板4の被処理面とは反対側)には、被処理基板4を加熱するためのヒータ(不図示)が設けられている。被処理基板4は、例えば温度が200℃となるように加熱される。
処理室5の外部には、プラズマ放電発生部15に電力(言い換えれば、電気的エネルギー)を供給するための高周波電源1と、ガスを処理室5内に供給するガス供給部13と、処理室5内のガスを排出するガス排出部10とが設けられている。ガス排出部10としては、例えば、メカニカル・ブースター・ポンプ、ドライポンプやロータリーポンプ等が好適に用いられる。高周波電源1は、配線8を介してプラズマ放電発生部15に接続されている。
プラズマ放電発生部15は、被処理基板4から離間した状態で、基板4に対向して配置され、被処理基板4にプラズマ処理を施すように構成されている。すなわち、プラズマ放電発生部15は、第1電極であるカソード電極(陰極)2aと、第2電極であるアノード電極(陽極)2bと、カソード電極2aとアノード電極2bとの間を絶縁する電極間絶縁部3(以下、絶縁部ともいう)とにより構成されている。
上記カソード電極2aは、図2に示すように、被処理基板4と平行に配置された平板電極部31を有している。平板電極部31は、例えばアルミニウム等の導電材料により構成されている。
上記絶縁部3は、カソード電極2aである平板電極部31の被処理基板4側の表面に、複数設けられている。すなわち、絶縁部3は、図1に示すように、絶縁材料の角材により構成されると共に、平板電極部31と被処理基板4との間に配置され、被処理基板4の基板面と平行な方向にストライプ状に延びるように形成されている。各絶縁部3は、平板電極部31の上で等間隔に配置され、これら絶縁部3の間で露出している平板電極部31の表面が、カソード電極2aのプラズマ放電面になっている。また、絶縁部3の側面は、平面により構成されている
尚、絶縁部3は、必ずしも平板電極部31の表面に直接に設ける必要はなく、カソード電極2aを構成する他の電極部材等を介して平板電極部31に設けるようにしてもよい。
尚、絶縁部3は、必ずしも平板電極部31の表面に直接に設ける必要はなく、カソード電極2aを構成する他の電極部材等を介して平板電極部31に設けるようにしてもよい。
上記アノード電極2bは、プラズマ放電発生部15に複数設けられ、各絶縁部3における被処理基板4側の端部にそれぞれ配置されている。アノード電極2bは、絶縁部3によりカソード電極2aと分離された状態で、各絶縁部3と被処理基板4との間に設けられている。つまり、アノード電極2bもまた、ストライプ状に形成されている。アノード電極2bは、例えばアルミニウム等の導電材料の角材により構成されている。図2に示すように、アノード電極2bの側部は、絶縁部3の側面に連続する形状を有している。言い換えれば、アノード電極2b及び絶縁部3は、被処理基板4の基板面に垂直な断面において互いに同じ幅を有している。そして、アノード電極2bは、カソード電極2aよりも被処理基板4に近接して設けられ、それぞれ接地されている。
こうして、カソード電極2aのプラズマ放電面と、アノード電極2bのプラズマ放電面とが、被処理基板4側からみて交互に繰り返して形成されることとなる。また、プラズマ放電発生部15には、カソード電極2aの被処理基板4側の表面と、その表面の両側で向かい合う絶縁部3及びアノード電極2bの側面とにより、溝18が形成されることとなる。つまり、溝18の底面は、平板電極部31の表面により構成される一方、溝18の側面は、絶縁部3及びアノード電極2bの側面により構成されている。
また、カソード電極2aには、平板電極部31を厚み方向に貫通するガス導入口6が設けられている。ガス導入口6は、溝18の底部における溝幅方向の中央位置に設けられている。又、各ガス導入口6は、溝長さ方向に所定の間隔で並んで形成されている。
平板電極部31の背面側(つまり、被処理基板4と反対側)には、ガス貯留部7が設けられている。ガス貯留部7は、ガス供給部13及びガス導入口の双方に連通している。こうして、ガス供給部13から供給されたガスが、ガス滞留部7に一旦滞留した後に、ガス導入口6を通って処理室5内に導入されるようになっている。
上記カソード電極2a及びアノード電極2bには、配線8を介して高周波電源1が接続されている。高周波電源1の周波数は、例えば13.56MHzであることが好ましい。そして、カソード電極2a及びアノード電極2bの間に電圧を印加することにより、これらの各電極2a,2b間にプラズマ放電を発生させるようにしている。
このようにして、プラズマ放電発生部15は、アノード電極2bとカソード電極2aとの間に印加される電圧(電位差)に応じて放電(プラズマ)11を発生させる。プラズマは、図2に示すように、プラズマ放電発生部15の近傍の領域に被処理基板4から離れた状態で形成される。そして、ガス導入口6からプラズマ発生領域にガスを流入させることによって、ガスが分解・解離してラジカルが生成される。ここで、図2中の12はラジカルの流れを示している。生成されたラジカルは、被処理基板4まで拡散し、基板ホルダ9に保持された基板4の表面に付着して堆積する。
生成されたラジカルは、次々に薄膜表面に到達して薄膜の厚さが増していく。設定された膜厚になるまで電圧を印加し続けた後、カソード電極2a及びアノード電極2bの間への電圧の印加(プラズマ放電発生部15への電力の供給)を停止する。このようにして、被処理基板4の表面にプラズマ処理が施され、基板4の表面に膜が成長して薄膜が形成される。その後、基板ホルダ9から被処理基板4を取り外し、処理室5外に取り出すと、薄膜が形成された薄膜形成基板が得られる。
さらに、プラズマ放電発生部15について詳述する。
本実施形態では、図6に拡大して示すように、絶縁部3は、平板電極部31の表面の法線方向の長さHが、平板電極部31とアノード電極2bとの間隔Lを超えないように形成されている。具体的には、図6に示すように、アノード電極2bが絶縁部3の端部に接触して設けられているので、上記絶縁部3の長さHと、上記電極間の距離Lとは等しくなっている。尚、図6において、符号Sは、被処理基板4のホルダ9への設置面と、アノード電極2bの下端との距離である。また、符号Cは、隣接する2つのアノード電極2bの隙間であり、符号Dは、隣接する2つのアノード電極2b同士の間隔(中心間距離)である。
一方、上絶縁部3の記長さHと、上記電極間の距離Lとは、H≦Lなる関係を満たしていればよいため、例えば図7に示すように、アノード電極2bが、絶縁部3の端部から離れて配置されていてもよい。この場合、アノード電極2bは、図示省略の電極保持機構によって静止保持されており、アノード電極2bと絶縁部3との間には、所定の隙間が設けられることとなる。また、上記電極保持機構は、アノード電極2bと絶縁部3との間隔(隙間)を調節できるように、アノード電極2bを可動保持するように構成されていてもよい。
ここで、アノード電極2b同士の間隔Dに対し、被処理基板4とアノード電極2bとの距離Sを小さく規定し過ぎると、アノード電極2bの間隔パターンに依存した波状の膜厚分布が発生してしまう。一方、上記間隔Dに対し、上記距離Sを大きく規定し過ぎると、解離されたラジカルが被処理基板4に到達しにくくなるため、意図していた程度に成膜速度を上げることができなくなってしまう。したがって、上記のような不具合を抑制するためには、被処理基板4又はアノード電極2b(若しくはプラズマ放電発生部15自体)を保持した状態で移動させ、上記間隔Dに対する距離Sの大きさを適正な所定の範囲に調節できようにすることが望ましい。また、上記距離Sを小さく規定し過ぎる必要がある場合であっても、被処理基板4及びホルダ9を、同一平面内において(すなわち上記距離Sを変化させない状態で)連続的に移動させたり、左右に揺動させたり、回転させる等の可動手法により、上記波状の膜厚分布を抑制することもできる。
ところで、上記プラズマ放電発生部15は、図6に示すように、カソード電極2a及びアノード電極2bの各電極面のうち被処理基板4の法線方向から視認できる面(部分)のみがプラズマ放電面として機能することが好ましい。言い換えれば、カソード電極2aもアノード電極2bもその全プラズマ放電面が被処理基板4側から視認できる構造である。ここで、プラズマ放電面とは、電極2a,2bに使用している部材の表面という意味ではなく、プラズマ部と荷電粒子(電荷)をやり取りしている、実質的に放電電極として働いている表面のことである。
すなわち、アノード電極2bのカソード電極2a側の面及びアノード電極2bの形成領域と重畳する領域におけるカソード電極2aの面は、被処理基板4の法線方向から視認できない面である。アノード電極2bのカソード電極2a側の面とアノード電極2bの形成領域と重畳する領域におけるカソード電極2aの面との間には、電極間絶縁部3が存在するので、アノード電極2bのカソード電極2a側の面及びアノード電極2bの形成領域と重畳する領域におけるカソード電極2aの面は、いずれもプラズマ放電面として機能しない。
これに対し、仮りに、上記両電極2a,2b間に電極間絶縁部3が存在しない場合には、アノード電極2bのカソード電極2a側の面及びアノード電極2bの形成領域と重畳する領域におけるカソード電極2aの面もプラズマ放電面として機能する。その状態でカソード電極2aに高周波電力を印加した場合、主な放電は、カソード電極2a表面とアノード電極2bのカソード電極2a側面との間で発生する。しかしながら、その空間内で発生するプラズマで材料ガスが解離されても、解離されたラジカルの多くは、アノード電極2bのカソード電極2a側面に膜として付着してしまう。したがって、意図していた程に成膜速度を上げることができなくなるので、装置としてのスループットに限界が生じる。図6に示す本実施形態のプラズマCVD装置によれば、プラズマ放電面として機能する全電極表面が被処理基板4側から視認できる構造であるので(言い換えれば、カソード電極2aのプラズマ放電面及びアノード電極2bのプラズマ放電面が対向していないので)、解離されたラジカルの大半を有効に被処理基板4へと導くことが可能である。
図6に示すように、プラズマ放電面として機能する全電極表面が被処理基板4側から視認できる構造をとることのもう一つの利点は、ガスの圧力値の範囲を広く設定できることである。図21及び図22に示す平行平板型装置の場合は、電極間の距離が構造上決定されているので、電極間の距離が放電経路の長さそのものとなり、プラズマの発生しやすい材料ガス圧力がある一定範囲に定まってしまう。これは、放電工学でよく知られたパッシェンの法則に支配されているからである。パッシェンの法則とは、放電を開始できる空間電界強度が材料ガス圧力と放電経路の長さとの積で決定され、その積の値がある値のところでは放電を開始できる空間電界強度の極小値をとり、その前後では放電を開始できる空間電界強度が上昇するという法則である。
一方、図1及び図2に示す構造をとると、両電極2a,2bの電極面が向かい合っていないので、その間で発生する放電の経路は、図3及び図4に示すように、材料ガス圧力の高低により短くなったり、あるいは長くなったり変化する。図3及び図4中の11bは、放電の典型的経路を示している。図3の場合は、材料ガス圧力が比較的高い場合であり、放電経路は短くなる。図4の場合は、材料ガス圧力が比較的低い場合であり、放電経路は長くなる。
また、両電極2a,2bが同一平面上にないことによる利点もある。具体的には、両電極2a,2bが略同一平面上にある場合(例えば、特許文献3〜5参照)に比して、概ね電極間絶縁部3の高さ分だけ放電経路が長くなるので、ガスの解離効率が増す。さらに、電極間絶縁部3の高さを調整することによって、放電経路の距離を調整することができるので、材料ガス圧力の調整の自由度が高くなる利点もある。このように放電経路の長さが変化することで、プラズマが発生しやすい材料ガスの圧力範囲が広くなる。
ガス導入口6が設けられる位置としては、図1及び図2に示すように、カソード電極2a側が好ましい。本実施形態の装置では、カソード電極2aがアノード電極2bよりも被処理基板4から離れている。したがって、カソード電極2a側からガスを導入することにより、被処理基板4へ向かってスムーズなガス流れ14が実現する。また、カソード電極2aとアノード電極2bとの間にプラズマ領域があり、材料ガスをプラズマ放電の放電経路に沿って流すことができる。このことにより、材料ガスがプラズマ中を流れる距離を長くすることができるため、ガスの分解及び解離を促進することができる。その結果、プラズマ処理である成膜の精度及び速度を向上させることができる。
また、カソード電極2aのプラズマ放電面の面積は、アノード電極2bのプラズマ放電面の面積よりも大きいことが望ましい。それは以下の理由による。カソードシース部に比べてアノードシース部は、平行平板型装置では電界が小さい。これは、両電極2a,2bの面積がほぼ等しくても、周辺の壁などもアノード電極2bと同じ接地電位にあるので、実質的には接地電位部の合計面積がカソード電極2aの面積よりも大きいことによる。そこで、カソード電極2aのプラズマ放電面の面積をアノード電極2bのプラズマ放電面の面積よりも大きくすることにより、アノードシース部の電界をより大きくすることができる。このような状態では、カソードシース部のみならずアノードシース部でもガスの解離が促進されるので、全体としてのガスの解離量がさらに増加する。
尚、本実施形態の装置では、図5(a)に示すように、複数の棒状アノード電極2bのそれぞれが、端部において配線8を介して高周波電源1に接続されているが、本発明の装置は、これに限定されるものではない。例えば、図5(b)に示すように、複数の棒状アノード電極2bの一方端部を同じ材質の棒で接続し、その接続した棒に電源1からの配線8を接続してもよい。あるいは、図5(c)に示すように、複数の棒状アノード電極2bの両端部を同じ材質の棒で接続し、その接続した棒に電源1からの配線8を接続してもよい。
被処理基板4を保持する処理基板ホルダ9は、図2では被処理基板4の端部を保持しているだけであり、したがって被処理基板4は浮遊電位にある。一方で、例えば基板温度を面内で均一とするために、被処理基板4の背後に導体板を接して設置することがある。この場合、導体板は浮遊電位でもよいし、又は接地電位でもよい。被処理基板4の電位を特に考慮しなくてよい理由は、プラズマ11が被処理基板4から離れて存在するので、電荷的に中性なラジカルのみが被処理基板4に飛散するからである。基板表面に対してある程度のイオン衝撃を必要とするような成膜プロセスの場合は、被処理基板4の背後に、導体板を設置して積極的にその電位を制御することも可能である。その場合は、被処理基板4背後の導体板の電位によって、離れた位置にあるプラズマ11からイオン束を引き出し、被処理基板4の表面にイオンを照射することとなる。
また、本実施形態では、被処理基板4としてガラス基板を用いたが、扱える被処理基板4の種類としては、ガラス基板に限定されるものではない。既に述べたように、基板温度100℃でも良質の成膜が行われるので、有機材料から形成された基板を用いることができる。例えば、ガラス転移点が200℃前後であるプラスチック基板等の樹脂系の基板等を用いることができる。本発明の装置によれば、樹脂系の基板等に窒化シリコン膜やアモルファスシリコン膜を成膜し、TFTデバイスの作製を行うことも可能となる。
本実施形態では、使用する高周波電源1の周波数として、13.56MHzを用いたが、高周波電源1の周波数はこれに限定されるものではない。本実施形態の装置では、基板4表面にはプラズマ11がほとんど存在しないので、13.56MHz以下の低周波で通常は問題とされる、プラズマダメージの増加という悪影響がない。したがって、13.56MHz以下の低周波数も使用可能である。但し、下限周波数としては300KHzが適当である。これは、両電極2a,2b間にイオンが捕捉されて、イオン密度が高まる効果の限界が300kHzであることによる。
また、13.56MHz以上のVHF(Very High Frequency)帯と通常呼ばれる高周波にも適用可能である。平行平板型装置の場合、周波数が高くなり、自由空間波長が短くなるにつれて、大型装置にて定在波が発生することが問題となる。より詳細に説明する。高周波はプラズマ中(詳しくはプラズマ最表面部)に分布をもって存在する。したがって、プラズマの大きさが定在波の存在しうる大きさ程度、例えば1/2波長、周波数100MHzの場合では約1.5mになると、定在波が発生して高周波強度が不均一になる。これにより、高周波強度が強いところの成膜膜厚が厚くなり、高周波強度が弱いところの成膜膜厚が薄くなるという不具合が生じる。
本発明によれば、プラズマ部は個々に小さく独立した形態であり、原理的に定在波は発生しない。より詳細に説明する。本発明の場合、電極パターンに応じた小さなプラズマ、例えばカソード電極2aの法線方向数cm以下のプラズマが多数発生する。図2、図3及び図4では、隣り合っているプラズマ部が互いに接しているように見えるが、実際はアノード電極2b上で分断されている。これにより、隣接するプラズマの隙間の部分で高周波の伝播が分断され、結果として定在波が発生しない。したがって、大型のプラズマCVD装置にも、VHF帯高周波が導入可能となる。但し、上限周波数としては、300MHzが適当である。300MHzは、両電極2a,2b間に電子が捕捉され電子密度が高まる効果が飽和する周波数であるので、それ以上に周波数を上げても電子捕捉の効果は変わらず、逆に高周波電力投入が困難となるからである。
《発明の実施形態2》
図8は、本発明による実施形態2のプラズマCVD装置を模式的に示す斜視図であり、図9は、実施形態2のプラズマCVD装置を模式的に示す断面図である。また、図10は、図9の部分拡大図である。図8〜図10を参照しながら、実施形態2のプラズマCVD装置を説明する。尚、以下の各実施形態では、実施形態1のプラズマCVD装置と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。
図8は、本発明による実施形態2のプラズマCVD装置を模式的に示す斜視図であり、図9は、実施形態2のプラズマCVD装置を模式的に示す断面図である。また、図10は、図9の部分拡大図である。図8〜図10を参照しながら、実施形態2のプラズマCVD装置を説明する。尚、以下の各実施形態では、実施形態1のプラズマCVD装置と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。
本実施形態のプラズマCVD装置は、カソード電極2aのプラズマ放電面が凹面状である点が、カソード電極2aのプラズマ放電面が平板状である実施形態1のプラズマCVD装置と異なる。ここで、凹面状とは、連続する平面及び曲面の少なくとも一方により構成され、全体として凹状に形成された表面のことである。
すなわち、図8に示すように、カソード電極2aは、平板電極部31と、平板電極部31の表面と絶縁部3の側面とを繋ぐプラズマ放電面を有する隅肉部32とを備えている。
隅肉部32は、図10に拡大して示すように、絶縁部3の両側面にそれぞれ設けられている。隅肉部32のプラズマ放電面は、平面により構成され、平板電極部31の表面に対して傾斜する傾斜面になっている。つまり、カソード電極2aは、ガス導入口6の近傍位置から外側に斜め上方へ延びる一対の傾斜面を有している。
こうして、隣り合う2つの絶縁部3の間には、平板電極部31の表面と、その表面の両側に設けられた隅肉部32の各傾斜面とにより、凹面状のプラズマ放電面が形成されることとなる。言い換えれば、カソード電極2aは、隣り合う絶縁部3の間においてプラズマ放電面により構成された溝18を有している。溝18は、ガス導入口6から被処理基板4へ向かって大きくなる断面テーパ状に構成されている。
特に、図10に示すように、隅肉部32における被処理基板4側の先端と平板電極部31との距離H1は、平板電極部31とアノード電極2bとの間隔Lよりも小さい。
また、隅肉部32のプラズマ放電面と平板電極部31の表面とが成す角度θは、45°以上且つ90°以下であることが好ましい。
また、隅肉部32のプラズマ放電面と平板電極部31の表面とが成す角度θは、45°以上且つ90°以下であることが好ましい。
仮に、上記角度θを45°よりも小さくすると、溝18内に形成されるプラズマ領域が小さくなってしまうという問題が生じる。すなわち、プラズマ領域が小さいと、プラズマにより分解及び解離されたガスから生じるラジカルやイオンの数が減少するため、成膜速度が低下すると共にエッチングレートが大きくなり膜質が低下してしまう。また、距離H1が一定の状態で角度θを45°よりも小さくすると、隣り合う隅肉部32同士が接触してしまうという問題もある。一方、仮に、角度θを90°よりも大きくすると、絶縁部3の内側に窪んだ状態でプラズマ放電面が形成されてしまうため好ましくない。したがって、上述のように、45°≦θ≦90°であることが好ましい。
そして、被処理基板4をプラズマ処理して成膜する場合には、上記実施形態1と同様に、高周波電圧を、平板電極部31とアノード電極2bとの間に印加する。このことにより、平板電極部31及び隅肉部32は、カソード電極2aとして働き、接地されたアノード電極2bとの間にプラズマが発生する。その結果、基板4上にプラズマにより分解及び解離したラジカルが堆積し、所望の成膜が行われる。
本実施形態によると、実施形態1の場合と比較して、成膜速度を上昇させることができる。その理由は、以下のように説明できる。
実施形態1の場合は、両電極2a,2b間を絶縁するための絶縁部3の表面がカソード電極2aの表面(つまり、平板電極部31の表面)に対して垂直になっているので、カソード電極2a表面で発生したプラズマ粒子やラジカル粒子が絶縁部3に衝突して消滅し易くなっている。一方、本実施形態の場合は、断面三角形の隅肉部32が存在することによって、絶縁部3の表面と隅肉部32の傾斜面とが成す角度を鈍角に、好ましくは略180°にすることができる。したがって、カソード電極2a表面で発生したプラズマ粒子やラジカル粒子が絶縁部3に衝突して消滅する確率を低くすることができる。さらに、カソード電極2aのプラズマ放電面の断面形状が凹状であるので、ホローカソード効果も生じる。したがって、カソード電極2aのプラズマ放電面を凹面状とすることで、膜質など他の性能を保ったまま、装置としてのスループットを改善することができる。
(実施例)
次に、本発明のプラズマCVD装置を具体的に実施した実施例について説明する。
次に、本発明のプラズマCVD装置を具体的に実施した実施例について説明する。
図10は実施例1を示し、図11は実施例2を示し、図12は実施例3を示している。実施例2及び実施例3は、実施例1に対して隅肉部32の傾斜角θの大きさをそれぞれ変更したものである。
まず、実施例1では、図10に示すように、隅肉部32の傾斜部の角度θが45°であって、アノード電極及び電極間絶縁部の幅(つまり、被処理基板4と平行な方向の長さをいう。以下同じ。)を5mm、アノード電極の高さ(つまり、被処理基板4に垂直な方向の長さをいう。以下同じ。)を2.5mm、絶縁部3の高さH(平板電極部31とアノード電極2bとの間隔L)を11.5mm、絶縁部3の露出部分の高さH2を5mm、隅肉部32の傾斜部の高さH1を6.5mm、隅肉部32の傾斜部の幅を6.5mmとしている。
そして、被処理基板4として、アノード電極2bの底部から上方に距離S=35mm離れた位置に、厚み0.7mmのガラス基板を設置した。ガラス基板は、温度が300℃となるように加熱した。
その後、次の流量の材料ガスを処理室5の内部に導入した。すなわち、モノシラン(SiH4)を60sccm、アンモニア(NH3)を120sccm、窒素(N2)を600sccm、水素(H2)を200sccmの流量でそれぞれ導入した。そして、ガス圧力を200Pa、高周波電力を650Wとし、ガラス基板上に窒化シリコン膜を成膜した。
成膜した窒化シリコン膜の膜特性を表1に示す。窒化シリコンの成膜速度は26.5A(2.65nm)/秒、絶縁耐圧は7.3MV/cm、エッチングレートは589A/分であった。エッチングレートについては、1:10に希釈したBHF(バッファード弗酸)を用いて、Siウエハー上のSiN膜のエッチングレート(常温時)を公知の段差測定装置による測定を行った。成膜速度、膜質ともにデバイスグレードの良好な結果が得られた。
次に、実施例2では、図11に示すように、隅肉部32の傾斜部の角度θを大きくして77°とし、隅肉部32の傾斜部の幅を1.5mm、溝18の底部に露出している平板電極部31の幅を12mmとした。それ以外の寸法は、上記実施例1と同じである。
成膜条件についても実施例1と同じ条件とし、窒化シリコン膜を成膜した。成膜した窒化シリコン膜の特性を表1に示す。窒化シリコンの成膜速度は、29.6A(2.96nm)/秒、絶縁耐圧は7.0MV/cm、エッチングレートは336A/分であった。このことから、実施例1と比べて、成膜速度はおよそ11%向上し、エッチングレートは43%低下し、改善されたことがわかる。また、絶縁耐圧は7MV/cmであり、実施例1と同等に好ましい数値であった。
この結果は、溝18の幅が2mmから12mmに拡大されたため、プラズマ領域が拡がり、プラズマ中のラジカル数とイオン数が増加したことによると考えられる。すなわち、薄膜形成に必要なラジカル数が増えることにより成膜速度が上がり、薄膜成長表面へのイオンアシストにより膜が緻密化しエッチングレートが下がったものと考えられる。
次に、実施例3では、図12に示すように、隅肉部32の傾斜部の角度θをさらに大きくして90°とし(つまり、隅肉部32のプラズマ放電面は、絶縁部3の側面と同じ平面を構成している)、溝18の底部に露出している平板電極部31の幅を15mmとした。それ以外の寸法は、上記実施例1と同じである。
成膜条件についても実施例1と同じ条件とし、窒化シリコン膜を成膜した。成膜した窒化シリコン膜の特性を表1に示す。窒化シリコンの成膜速度は30.8A(3.08nm)/秒、絶縁耐圧は7.1MV/cm、エッチングレートは320A/分であった。実施例1と比べて、成膜速度はおよそ16%向上し、エッチングレートは46%低下し、改善されたことがわかる。また、絶縁耐圧は7.1MV/cmであり、実施例1と同等に好ましい数値であった。
この結果は、溝18の幅が2mmから15mmに拡大されたため、プラズマが領域がさらに拡がり、プラズマ中のラジカル数とイオン数が増えたことによると考えられる。すなわち、実施例2と同様に、薄膜形成に必要なラジカル数が増えることにより成膜速度が上がり、薄膜成長表面へのイオンアシストにより膜が緻密化しエッチングレートが下がったものと考えられる。
図13は実施例4を示し、図14は実施例5を示している。実施例4及び実施例5は、上記実施例2に対し、平板電極部31と被処理基板4との距離を一定に維持した状態で、隅肉部32の高さH1や、絶縁部の露出部分の高さH2を変更したものである。
まず、実施例4では、図13に示すように、絶縁部3の高さHを14.5mmとし、絶縁部3の露出部分の高さH2を8mmとした。このとき、被処理基板4とアノード電極2bの底部との距離Sは、32mmになっている。これ以外の寸法は実施例2と同じである。
成膜条件についても実施例2と同じとし、窒化シリコン膜を成膜した。成膜した窒化シリコン膜の特性を表2に示す。
窒化シリコンの成膜速度は31.1A(3.11nm)/秒、絶縁耐圧は7.1MV/cm、エッチングレートは275A/分であった。実施例2と比べて、成膜速度はおよそ5%向上し、エッチングレートは19%低下し、改善されたことがわかる。また、絶縁耐圧は7.1MV/cmであり、同等であった。また、成膜後にプラズマCVD装置の成膜チャンバーを開けると、電極に付着するパウダー(反応副生成物)が、実施例2よりも減少していることが目視により確認された。
この結果は、絶縁部3の露出部分の高さH2が5mmから8mmになったことに伴う次の2つの効果によるものと考えられる。すなわち、一つ目の効果は、プラズマ領域が基板4に近づいて形成されることにより、ラジカルとイオンが基板へ到達しやすくなることである。すなわち、薄膜形成に必要なラジカルが薄膜成長表面へ到達しやすくなり成膜速度が上がり、またイオンも到達しやすくなり膜が緻密化しエッチングレートが下がったものと考えられる。
二つ目の効果は、アノード電極2bとカソード電極2aとの距離が3mm長くなったことにより、両電極に印加される電界が若干弱めになることである。すなわち、強すぎない(程良い)電界により、材料ガスであるモノシランの過剰解離を抑制し、プラズマ中のSiH2ラジカルが減少した結果、電極に付着するパウダーが減少したものと考えられる。
次に、実施例5では、図14に示すように、絶縁部3の高さHを17.5mmとして高くし、絶縁部3の露出部の高さH2を8mmとし、隅肉部32の傾斜部の高さH1を9.5mmとして高くした。このとき、被処理基板4とアノード電極2bの底部との距離Sは、29mmになっている。これ以外の寸法は実施例2と同じである。
成膜条件についても実施例2と同じとし、窒化シリコン膜を成膜した。成膜した窒化シリコン膜の特性を表2に示す。窒化シリコンの成膜速度は35.5A(3.55nm)/秒、絶縁耐圧は7.2MV/cm、エッチングレートは226A/分であった。実施例2と比べて、成膜速度はおよそ20%向上し、エッチングレートは33%低下し改善された。また、絶縁耐圧は7.2MV/cmであり、同等であった。
この結果は、絶縁部3の露出部の高さが5mmから8mmになったことに加え、傾斜部の高さが6.5mmから9.5mmになったことに伴う次の2つの効果によるものと考えられる。一つ目の効果は、プラズマ領域が基板4に近づくことにより、ラジカルとイオンが基板へ到達しやすくなることである。二つ目の効果は、溝18が深くなってプラズマ領域が拡がることにより、ラジカル数とイオン数が増えたことによると考えられる。
これら二つの効果により、薄膜形成に必要なラジカルの数が増え、かつ薄膜成長表面へ到達しやすくなり成膜速度が上がったものと考えられる。また、イオンの数が増え、かつ薄膜成長表面へ到達しやすくなり、膜が緻密化してエッチングレートが下がったものと考えられる。
《発明の実施形態3》
図15は、本発明の実施形態3を示す拡大断面図である。本実施形態は、隅肉部32のプラズマ放電面が、凹状の曲面により構成されている点で、上記実施形態2と異なっている。
図15は、本発明の実施形態3を示す拡大断面図である。本実施形態は、隅肉部32のプラズマ放電面が、凹状の曲面により構成されている点で、上記実施形態2と異なっている。
すなわち、本実施形態では、実施形態2における隅肉部32の傾斜面が、下方に湾曲する曲面部により形成されている。つまり、カソード電極2aのプラズマ放電面は、凹形状の曲面部を有している。そして、曲面部が、隣り合う絶縁部3の側面同士を繋ぐ円弧面に構成されることにより、溝18は、U字溝に構成されている。
したがって、この実施形態によると、実施形態2の断面テーパ状の隅肉部32を有するものに比べて、溝18の断面積を大きくすることができる。つまり、カソード電極2a近傍におけるプラズマ領域を増大させることができる。その結果、単位ガス流量当たりのガス分解量及びガス分解効率を増大できるため、成膜レート及び膜質の向上を図ることができる。
ところで、ガス導入口6から導入されたガスの流れが淀むと、その淀み領域でパウダーが生じ易くなる。これに対し、本実施形態ではガス導入口6周りのカソード電極2aの表面を凹形状の曲面に形成したので、ガスの流れをスムーズにしてパウダーの発生を抑制できる。その結果、パウダーの膜への混入を抑制できるため、膜質を向上させることができる。
《発明の実施形態4》
図16及び図17は、本発明の実施形態4を示す拡大断面図である。本実施形態は、アノード電極2bの断面形状が多角形又は曲線を含む形状になっている点で、上記実施形態2と異なっている。
図16及び図17は、本発明の実施形態4を示す拡大断面図である。本実施形態は、アノード電極2bの断面形状が多角形又は曲線を含む形状になっている点で、上記実施形態2と異なっている。
すなわち、本実施形態では、例えば図16に示すように、アノード電極2bにおける被処理基板4の法線方向の断面形状は、5つ以上の角を有する多角形に形成されている。また、図17に示すように、アノード電極2bにおける被処理基板4の法線方向の断面は、曲線を含む形状に形成されていてもよい。
アノード電極2bには、成膜処理中に不要な薄膜が付着しやすい。この不要な薄膜は、アノード電極2bの断面が実施形態2のような矩形状であると、その角部から比較的剥離しやすいという問題がある。アノード電極2bから剥離した薄膜は、真空チャンバ(処理室5)の内部でパーティクルの原因となってしまう。これに対して、本実施形態のように、アノード電極2bの断面形状を多角形又は曲線を含む形状とすることによって、電極2bの表面の角度を緩やかできるため、薄膜の剥離を抑制することができる。
《発明の実施形態5》
図18〜図20は、本発明の実施形態5を示す拡大断面図である。本実施形態は、上記実施形態1に対し、絶縁部3の側面形状が異なっている。
図18〜図20は、本発明の実施形態5を示す拡大断面図である。本実施形態は、上記実施形態1に対し、絶縁部3の側面形状が異なっている。
すなわち、本実施形態では、絶縁部3の側面は、傾斜した平面又は曲面により構成されている。例えば、図18に示すものでは、絶縁部3の両側面が傾斜面により構成され、平板電極部31から被処理基板4側へ向かって断面幅が短くなる断面テーパ状に形成されている。そして、平板電極部31側の下端部よりも断面幅が小さくなった上端部には、アノード電極2bが設けられている。アノード電極2bの側面は、絶縁部3の側面に連続した傾斜面になっている。
また、図19に示すものでは、絶縁部3の側面は、外側に膨らんだ凸曲面により構成されている。この絶縁部3も下端部から上端部へ向かって徐々に断面幅が小さくなるように形成されている。さらに、アノード電極2bの側面は、上記絶縁部3の側面に連続する凸曲面に形成されている。
さらに、図20に示すものでは、絶縁部3の側面は、内側に窪んだ凹曲面により構成されている。この絶縁部3も下端部から上端部へ向かって徐々に断面幅が小さくなるように形成されている。さらに、アノード電極2bの側面は、上記絶縁部3の側面に連続する凸曲面に形成されている。
この実施形態によると、カソード電極2aで発生したプラズマ粒子やラジカル粒子が垂直に衝突することを抑制できる。その結果、上記プラズマ粒子及びラジカル粒子の絶縁部3への衝突による消滅を抑制できるため、効率よく且つ高精度に成膜を行うことが可能となる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、本発明のプラズマプロセス装置をプラズマCVD装置に適用した場合について説明したが、本発明のプラズマプロセス装置は、プラズマCVD装置に限定されるものではない。本発明は、プラズマを用いて薄膜の形成・加工等のプラズマ処理を施すプラズマプロセス装置全般に用いることができ、例えば、ドライエッチング装置やアッシャー装置にも好適に用いることができる。
上記各実施形態では、本発明のプラズマプロセス装置をプラズマCVD装置に適用した場合について説明したが、本発明のプラズマプロセス装置は、プラズマCVD装置に限定されるものではない。本発明は、プラズマを用いて薄膜の形成・加工等のプラズマ処理を施すプラズマプロセス装置全般に用いることができ、例えば、ドライエッチング装置やアッシャー装置にも好適に用いることができる。
例えば、ドライエッチング装置に適用する場合は、処理室5内に導入するガスとして、CF4、SF6、Cl2、HCl、BCl3、O2等のエッチングガスを用いる。一般に、ドライエッチング装置では、プラズマ放電により生成されるラジカルだけでなく、被処理基板の被処理面へのイオン衝撃をエッチング動作に利用することもある。例えば、被処理基板4の背面にイオン衝撃制御用の電極を別途取り付け、この電極を電源に接続して所定の電位を与えることによって、イオン衝撃の制御が可能となる。
特に、実施形態2のように、プラズマ放電面を凹面状に構成することにより、ガスを効率よく解離してエッチング速度を上昇させ、解離用のプラズマ部とは別にイオン衝撃を調整できるので、その制御性が向上する。
また、上記各実施形態では、アノード電極2bがカソード電極2aよりも被処理基板4に近接している場合について説明したが、カソード電極2aがアノード電極2bよりも被処理基板4に近接していてもよい。また、アノード電極2bとカソード電極2aとの間における電位の高低関係が経時的に逆転してもよい。
また、上記各実施形態では、ガス導入口6がカソード電極2a側に設けられる場合について説明したが、ガス導入口6の形成位置はこれに限定されない。例えば、プラズマ放電発生部15と被処理基板4との間に位置するように、ガス導入口6を設けてもよい。この場合、ガスは被処理基板4の面方向に沿って、ガス導入口6から処理室5内に導入される。
以上説明したように、本発明は、第1電極及び第2電極の間でプラズマ放電を発生させるプラズマ放電発生部を備えるプラズマプロセス装置について有用であり、特に、プラズマによるガスの分解及び解離を促進させてプラズマ処理の精度を向上させる場合に適している。
2a カソード電極(第1電極)
2b アノード電極(第2電極)
3 絶縁部
4 被処理基板
5 処理室
6 ガス導入口
15 プラズマ放電発生部
31 平板電極部
32 隅肉部
2b アノード電極(第2電極)
3 絶縁部
4 被処理基板
5 処理室
6 ガス導入口
15 プラズマ放電発生部
31 平板電極部
32 隅肉部
Claims (8)
- 被処理基板が内部に配置される処理室と、
前記処理室の内部にガスを導入するガス導入口と、
前記処理室の内部に設けられ、前記被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ放電発生部とを備えるプラズマプロセス装置であって、
前記プラズマ放電発生部は、前記被処理基板と平行に配置された平板電極部を有する第1電極と、前記第1基板の平板電極部と前記被処理基板との間に配置され、該被処理基板と平行な方向にストライプ状に延びる複数の絶縁部と、前記第1電極と分離した状態で前記各絶縁部と前記被処理基板との間に設けられた複数の第2電極とを備え、
前記絶縁部は、前記平板電極部の表面の法線方向の長さHが、前記平板電極部と第2電極との間隔Lを超えないように形成されている
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。 - 請求項1において、
前記第1電極は、平板電極部の表面と絶縁部の側面とを繋ぐプラズマ放電面を有する隅肉部を備え、
前記隅肉部における被処理基板側の先端と平板電極部との距離H1は、平板電極部と第2電極との間隔Lよりも小さい
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。 - 請求項2において、
前記隅肉部のプラズマ放電面は、凹状の曲面により構成されている
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。 - 請求項2において、
前記隅肉部のプラズマ放電面は、平面により構成され、
前記隅肉部のプラズマ放電面と平板電極部の表面とが成す角度θは、45°以上且つ90°以下である
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。 - 請求項1において、
前記第2電極の断面形状は、5つ以上の角を有する多角形である
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。 - 請求項1において、
前記第2電極の断面は、曲線を含む形状に形成されている
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。 - 請求項1において、
前記絶縁部の側面は、平面により構成されている
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。 - 請求項1において、
前記絶縁部の側面は、曲面により構成されている
ことを特徴とするプラズマプロセス装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004121997A JP2005310834A (ja) | 2004-04-16 | 2004-04-16 | プラズマプロセス装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004121997A JP2005310834A (ja) | 2004-04-16 | 2004-04-16 | プラズマプロセス装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
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---|---|---|---|
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Country | Link |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009082986A1 (fr) * | 2008-01-01 | 2009-07-09 | Dongguan Anwell Digital Machinery Ltd. | Procédé de dépôt chimique en phase vapeur assisté par plasma ainsi que système associé |
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JPWO2013136656A1 (ja) * | 2012-03-15 | 2015-08-03 | 東京エレクトロン株式会社 | 成膜装置 |
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-
2004
- 2004-04-16 JP JP2004121997A patent/JP2005310834A/ja active Pending
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