以下、本発明による蒸気調理器の一実施形態を図1〜7に基づき説明する。図1は外観斜視図、図2は加熱室の扉を開いた状態の外観斜視図、図3は内部機構の基本構造図、図4は加熱室の上面図、図5は蒸気発生装置の垂直断面図、図6は蒸気発生装置の水平断面図、図7は制御ブロック図である。
蒸気調理器1は直方体形状のキャビネット10を備える。キャビネット10の正面には、上部に操作パネル11、その下に扉12が設けられる。扉12は下端を中心に垂直面内で回動するものであり、上部のハンドル13を握って手前に引くことにより、図1に示す垂直な閉鎖状態から図2に示す水平な開放状態へと90゜姿勢変換させることができる。扉12の大部分は耐熱ガラスをはめ込んだ窓14となっている。
扉12を開くと、図2に見られるように二つの区画が露出する。左側の大きな区画は加熱室20、右側の小さな区画は水タンク室70である。加熱室20と水タンク室70の構造、及びこれらに付属する構成要素について、図3以下の図を参照しつつ説明する。
加熱室20は直方体形状で、扉12に面する正面側は全面的に開口部となっている。加熱室20の残りの面及び扉12の内面はステンレス鋼板で形成される。加熱室20の周囲及び扉12の内側にはそれぞれ断熱対策が施される。加熱室20の床面にはステンレス鋼板製の受皿21が置かれ、受皿21の上には被加熱物90を載置するステンレス鋼線製のラック22が置かれる。
加熱室20の中の気体(通常の場合、加熱室20の内部の気体は空気であるが、蒸気調理を始めると空気が蒸気で置き換えられて行く。従って本明細書では「空気」でなく「気体」と表現する)は外部循環路30を通って循環する。加熱室20の側壁には、これと平行する形で天井面から床面近くまで垂下する気流制御板23(これもステンレス鋼板製である)が配置されている。この気流制御板23の下端と奥の側壁との間の隙間が、外部循環路30に気体を導く下向きの気体吸込口24となる。
気体吸込口24から吸い込まれた気体は気流制御板23の裏を通って加熱室20の外側上部に設けられた送風装置25へと向かう。送風装置25は遠心ファン26及びこれを収容するファンケーシング27と、遠心ファン26を回転させるモータ(図示せず)を備える。遠心ファン26としてはシロッコファンを用いる。遠心ファン26を回転させるモータには高速回転が可能な直流モータを使用する。
ファンケーシング27の吐出口に接続された外部循環路30は断面円形のパイプを組み合わせて構成される。ファンケーシング27からは第1パイプ31が水平方向に突き出す。第1パイプ31の端には排気口32が設けられる。第1パイプ31の排気口32より少し上流にはエルボ形の第2パイプ33が接続される。第2パイプ33の水平部分は蒸気発生装置50(詳細は後述する)の上部に入り込み、蒸気吸引エジェクタ34を形成する。第2パイプ33の吐出端は絞り成形され、蒸気吸引エジェクタ34のインナーノズルとなる。蒸気発生装置50の側面からは蒸気吸引エジェクタ34のアウターノズル35が下流に向かって突出し、その吐出端はノズル形状に絞り成形されている。
外部循環路30の第3パイプ36が蒸気吸引エジェクタ34の下流でアウターノズル35のノズル形状吐出端を受け入れる。第3パイプ36の一端はアウターノズル35を包むように膨らんでおり、ここに後段エジェクタ37が形成される。蒸気吸引エジェクタ34のアウターノズル35のノズル形状吐出端は、後段エジェクタ37においてはインナーノズルの役割を果たす。後段エジェクタ37には、第1パイプ31から分岐したバイパス路38が接続される。バイパス路38も断面円形のパイプにより形成される。図4に見られるようにバイパス路38は2本設けられ、後段エジェクタ37に左右対称的に気体が流入する。
第3パイプ36の他端は加熱室20に気体を戻す気体戻し口39となるサブキャビティ40に接続される。サブキャビティ40は加熱室20の天井部の上で、天井部の中央部にあたる箇所に設けられる。サブキャビティ40は平面形状円形で、その内側には気体の加熱手段である蒸気加熱ヒータ41が配置されている。蒸気加熱ヒータ41はシーズヒータにより構成される。サブキャビティ40の底面は加熱室20の天井壁となる金属パネル(加熱室20の天板と兼用可)で形成され、この底面パネル42には複数の噴気孔43がほぼパネル全面にわたり二次元的に或いは三次元的に分散配置されている。底面パネル42は上下両面とも塗装などの表面処理により暗色に仕上げられている。底面パネル42は使用を重ねることにより暗色に変色する金属素材で成形してもよく、暗色のセラミック成型品であってもよい。
加熱室20の上部の一隅には気体放出口44が形成されている。また第1パイプ31の端には電動式のダンパ45が配置される。ダンパ45は排気口32と第2パイプ33の入口とを選択的に閉ざす。
続いて蒸気発生装置50の構造を、図5、6を参照しつつ説明する。蒸気発生装置50は中心線を垂直にして配置された筒型(円筒形)のポット51を備える。ポット51の上部は閉じており、前述のように蒸気吸引エジェクタ34が形成されている。
ポット51の底部は漏斗状に成形され、そこから排水パイプ52が垂下する。排水パイプ52の下端は水平に対しやや勾配をなす形で配置された排水パイプ53に接続される。排水パイプ53の端は加熱室20の側壁を通じ受皿21に向かって開口する。排水パイプ52の途中には排水バルブ54及び水位センサ55が設けられている。
ポット51内の水を熱するのはポット51の外面に密着するように設けられた蒸気発生ヒータ56である。蒸気発生ヒータ56は環状のシーズヒータからなる。蒸気発生ヒータ56とほぼ同じ高さになるように、ポット51の内部に伝熱ユニット60が配置される。
伝熱ユニット60は、ポット51の側壁内面に密着するリング61と、このリング61の内部に放射状に配置される複数のフィン62を備える。リング61とフィン62は押出成形、溶接、ろう付けなどの手法により一体化されている。リング61及びフィン62はポット51の軸線方向に所定の長さを有する。
ポット51には給水パイプ63を通じて給水する。給水パイプ63はポット51の底部近くからポット51の中に入り込んだ後、下から上へとフィン62の間を通って延びる。給水パイプ63の上端はフィン62の上縁より少し上に突き出している。図6に見られるように、フィン62を車輪のスポークに見立てた場合、ハブとなる位置に給水パイプ63が配置されている。給水パイプ63の外面には各フィン62の端面を接触させ、フィン62を通じて給水パイプ63に熱を伝える。
ポット51、伝熱ユニット60、及び給水パイプ63は熱の良導体である金属で形成する。金属としては熱伝導率の良い銅やアルミニウムが適する。但し銅や銅合金の場合、緑青が発生するので、熱伝導率は少し劣るものの、緑青を懸念せずに済むステンレス鋼を用いることとしてもよい。
給水パイプ63の端には漏斗状の受入口64が形成される。受入口64から少し下流の位置に洗浄パイプ65が接続される。洗浄パイプ65は洗浄バルブ66を介して排水パイプ53に接続する。
給水パイプ63には、洗浄パイプ65の他、逆J字形の落差形成パイプ67も接続される。落差形成パイプ67の他端は排水パイプ53に接続される。
水タンク室70には横幅の狭い直方体形状の水タンク71が挿入される。この水タンク71から延び出すエルボ形の給水パイプ72が給水パイプ63の受入口64に接続される。ポンプ73が水タンク71内の水を給水パイプ72を通じて圧送する。ポンプ73は、給水パイプ72の根元部に形成されたポンプケーシング74と、ポンプケーシング74に収容されたインペラ75と、インペラ75に動力を伝えるモータ76とにより構成される。モータ76はキャビネット10の側に固定されており、水タンク71を所定位置にセットするとインペラ75に電磁的に結合する。
水タンク室70の床面には水タンク71を支えるトラフ形のレール77が固定されている(図2参照)。レール77のタンク載置面は水平に開いた扉12の内面と同じ高さにある。そのため使用者は、水平になった扉12の上に水タンク71を置き、レール77に向かって押し込んで行くことにより、水タンク71をスムーズに水タンク室70内の所定位置にセットすることができる。逆に、扉12を水平に開いておいて水タンク71を引き出せば、水タンク室70から出た水タンク71はそのまま扉12で支えられる。従って水タンク71を手で支えつつ引き出す必要がない。
蒸気調理器1の動作制御を行うのは図7に示す制御装置80である。制御装置80はマイクロプロセッサ及びメモリを含み、所定のプログラムに従って蒸気調理器1を制御する。制御状況は操作パネル11の中の表示部に表示される。制御装置80には操作パネル11に配置した各種操作キーを通じて動作指令の入力を行う。操作パネル11には各種の音を出す音発生装置も配置されている。
制御部80には、操作パネル11の他、送風装置25、蒸気加熱ヒータ41、ダンパ45、排水バルブ54、水位センサ55、蒸気発生ヒータ56、洗浄バルブ66、及びポンプ73が接続される。この他、水タンク71の中の水量を測定する水量センサ81、加熱室20内の温度を測定する温度センサ82、及び加熱室20内の湿度を測定する湿度センサ83が接続されている。
蒸気調理器1の動作は次の通りである。まず水タンク71を水タンク室70から引き出し、図示しない給水口よりタンク内に水を入れる。満水状態にした水タンク71を水タンク室70に押し込み、所定位置にセットする。給水パイプ72の先端が給水パイプ63の受入口64にしっかりと接続されたことを確認したうえで、操作パネル11の中の電源キーを押して電源ONにする。するとポンプ73のモータ76が回転し、蒸気発生装置50への給水が始まる。この時、排水バルブ54と洗浄バルブ66は閉じている。
水は給水パイプ63の先端から噴水のように溢れ出し、伝熱ユニット60のフィン62を濡らしつつポット51の底に落ちる。そしてポット51の底の方から溜まって行く。水位が伝熱ユニット60の長さの半ばまで達したことを水位センサ55が検知したら、そこで一旦給水は中止される。落差形成パイプ67の入口側のパイプの中の水位もポット51と同レベルに達する。
このように所定量の水がポット51に入れられた後、蒸気発生ヒータ56への通電が開始される。蒸気発生ヒータ56はポット51の側壁を介してポット51の中の水を加熱する。ポット51の側壁が熱せられると、その熱は伝熱ユニット60に伝わり、伝熱ユニット60から水へと伝えられる。蒸気発生ヒータ56の置かれた高さと伝熱ユニット60の置かれた高さはほぼ一致しているので、蒸気発生ヒータ56から伝熱ユニット60へとストレートに熱が伝わり、伝熱効率が良い。
複数のフィン62が放射状に配置された伝熱ユニット60は広い伝熱面積を有し、ポット51内の水は速やかに熱せられる。また、放射状に配置されたフィン62は車輪のスポークのようにポット51を内側から支えるので、蒸気発生装置50の強度が増す。
蒸気発生ヒータ56への通電と同時に、送風装置25及び蒸気加熱ヒータ41への通電も開始される。送風装置25は気体吸込口24から加熱室20の中の気体を吸い込み、外部循環路30に気体を送り出す。気体を送り出すのに用いるのが遠心ファン26なので、プロペラファンに比べて気流の流速が速い。そのうえ、遠心ファン26を直流モータで高速回転させるので、気流の流速はきわめて速い。このため、外部循環路30を形成するパイプを断面円形でしかも小径のものとすることができる。これにより、断面矩形のダクトで外部循環路30を形成する場合に比べ、外部循環路30の表面積が小さくなる。従って内部を熱い気体が通るにもかかわらず、外部循環路30からの熱放散が少なくなり、加熱調理に利用されることなく放散する熱量の割合が低くなって、蒸気調理器1のエネルギー効率が向上する。外部循環路30を断熱材で巻く場合も、その断熱材の量が少なくて済む。
この時ダンパ45は外部循環路30の第2パイプ33の入口を開き、排気口32を閉ざしている。気体は第1パイプ31から第2パイプ33に入り、さらに第3パイプ36を経て気体戻し口39であるサブキャビティ40に入る。そしてサブキャビティ40内で蒸気加熱ヒータ41により熱せられた後、噴気孔43から下向きに噴出する。
ポット51の中の水が沸騰すると、100゜C、1気圧の飽和蒸気が発生する。飽和蒸気は蒸気吸引エジェクタ34のところで外部循環路30を通る循環気流に吸引される。エジェクタ構造を用いているので、飽和蒸気は速やかに吸い上げられ、吸い出される。エジェクタ構造のため蒸気発生装置50に圧力がかからず、飽和蒸気の放出が妨げられない。
後段エジェクタ37においては、蒸気吸引エジェクタ34のアウターノズル35から吹き出す気流にバイパス路38から気体が吸い込まれる。蒸気吸引エジェクタ34をバイパスして気体が流入するバイパス路38の存在によって循環系の圧損が小さくなり、遠心ファン26を効率良く駆動できる。後段エジェクタ37を出た飽和蒸気混じりの気体は高速でサブキャビティ40に突入する。
サブキャビティ40に入った飽和蒸気混じりの気体は蒸気加熱ヒータ41により300゜Cにまで熱せられる。この時点で気体は過熱蒸気となる。蒸気は温度上昇により膨脹し、噴気孔43より勢い良く噴出する。
加熱室20の中央部(被加熱物載置部)に吹き下ろしの気流を形成した気体はその外側で上昇し、加熱室20内に対流を形成する。そして再び気体吸込口24から吸い込まれ、外部循環路30を経てサブキャビティ40に還流する。このようにして加熱室20内の気体は外部循環路30に出ては加熱室20に戻るという循環を繰り返す。
時間が経過するにつれ、気体中の蒸気の割合が増して行く。量的に余剰となった気体は気体放出口44から加熱室20の外に放出される。蒸気を含んだ気体をそのままキャビネット10内に放出すると、キャビネット10内に結露が生じ、錆の発生や漏電といった好ましくない結果を招く。キャビネット10の外にそのまま放出すれば、台所の壁面に結露してカビが発生する。そこで、キャビネット10内に設けた迷路状の結露通路(図示せず)を通して蒸気を結露させてから気体をキャビネット10外に放出することとし、上述の問題を回避する。結露通路から流れ落ちる水は受皿21に導き、調理終了後、他の原因で発生する水と共に処理する。
過熱蒸気を含む気体の噴出が始まると、加熱室20の中の温度は急速に上昇する。加熱室20の中の温度が調理可能領域に達したことを温度センサ82が検知すると、制御装置80が操作パネル11にその旨の表示を出し、また合図音を鳴らす。調理可能になったことを音と表示により知った使用者は扉12を開け、加熱室20に被加熱物90を入れる。
扉12を開けかかると、制御装置80はダンパ45の姿勢を切り替え、第2パイプ33の入口を閉じるとともに、排気口32を開く。加熱室20の中の気体は送風装置25により吸い込まれ、排気口32から排出される。第2パイプ33の入口が閉じることにより、噴気孔43からの過熱蒸気の噴出がなくなるので、使用者が顔面や手などに火傷を負うということがない。ダンパ45は、扉12が開いている間中、排気口32を開き、第2パイプ33の入口を閉ざす姿勢を保つ。
停止中の送風装置25を起動して排気口32から排気を行うのであれば、定常の送風状態に達するまでにタイムラグが生じるが、本発明の場合、送風装置25は既に運転中であり、タイムラグはゼロである。また加熱室20と外部循環路30を巡っていた循環気流がそのまま排気口32からの排気流になるので、気流の方向を変えるためのタイムラグもない。これにより、加熱室20の中の蒸気を遅滞なく排出し、扉12の開放が可能になるまでの時間を短縮することができる。
加熱室20から蒸気を排出するときは第2パイプ33が閉ざされて加熱室20への蒸気供給が停止されている。このため加熱室20の内部の蒸気圧あるいは蒸気量は速やかに低下し、扉12の開放が可能となるまでの時間が一層短縮される。
使用者が扉12を開けかかったという状況は、例えば次のようにして制御装置80に伝えることができる。すなわち扉12を閉鎖状態に保つラッチをキャビネット10と扉12の間に設け、このラッチを解錠するラッチレバーをハンドル13から露出するように設ける。ラッチ又はラッチレバーの動きに応答して開閉するスイッチを扉12又はハンドル13の内側に配置し、使用者がハンドル13とラッチレバーを握りしめて解錠操作を行ったとき、スイッチから制御装置80に信号が送られるようにする。
気体放出口44から放出される気体と同様、排気口32から排出される気体も蒸気を大量に含んでおり、そのまま放出するのは問題である。そのため、排気口32から排出される気体もキャビネット10内に設けた迷路状の結露通路を通して水分を除去してからキャビネット10外に放出する。結露通路から流れ落ちる水は受皿21に導き、調理終了後、他の原因で発生する水と共に処理する。
ラック22の上に被加熱物90をセットし、扉12を閉じると、ダンパ45は第2パイプ33への入口を開き、排気口32を閉ざす姿勢に復帰する。これにより噴気孔43からの過熱蒸気の噴出が再開され、被加熱物90の調理が始まる。
約300゜Cに加熱されて噴気孔43から吹き下ろす過熱蒸気は被加熱物90に衝突して被加熱物90に熱を伝える。この過程で蒸気温度は250゜C程度にまで低下する。また被加熱物90の表面に接触した過熱蒸気は、被加熱物90の表面に結露する際潜熱を放出する。これによっても被加熱物90は加熱される。
加熱室20の気体を循環させつつ被加熱物90を加熱するので、蒸気調理器1のエネルギー効率は高い。そして、過熱蒸気を含む気体がサブキャビティ40の底面パネル42にほぼパネル全面にわたり二次元的又は三次元的に分散配置された複数の噴気孔43から下向きに噴出するので、被加熱物90の上面全体に過熱蒸気が衝突する。過熱蒸気が被加熱物90に衝突することと、衝突の面積が広いこととが相まって、過熱蒸気に含まれる熱が素早く効率的に被加熱物90に伝達される。また、サブキャビティ40に入り込んだ気体が蒸気加熱ヒータ41で熱せられて膨脹することにより、噴出の勢いが増し、被加熱物90への衝突速度が速まる。これにより被加熱物90は一層速やかに熱せられる。
遠心ファン26はプロペラファンに比べ高圧を発生させることが可能なので、噴気孔43からの噴射力を高めることができる。その結果過熱蒸気の噴射距離が延び、被加熱物90を強力に加熱できる。遠心ファン26を直流モータで高速回転させ、強力に送風しているので、上記の効果は一層顕著に表れる。送風装置25の送風力が強いことは、扉12を開く際、排気口32から速やかに排気するのにも大いに役立つ。
下向きに吹き出した過熱蒸気は、被加熱物90に衝突した後、上方へと向きを転じる。蒸気、特に過熱蒸気は空気より軽いため、自然な形でこのように方向転換することとなり、これが加熱室20の内部に対流をもたらす。この対流により、加熱室20内の温度を維持しつつ、被加熱物90にはサブキャビティ40で熱せられたばかりの過熱蒸気を衝突させ続けることができ、熱を大量且つ速やかに被加熱物90に与えることができる。
気体吸込口24は加熱室20の側壁の下部(被加熱物90の高さ以下)にあり、噴気孔43から噴出した蒸気は偏向することなく直進して被加熱物90に当たってから気体吸込口24に吸い込まれる。このため、被加熱物90への熱伝達能力は高レベルに維持される。また上から噴出した蒸気が側壁下部に吸い込まれて行くため、扉12を開いたとき、使用者の方に蒸気が押し寄せることが少なく、安全性が高い。
気体吸込口24が下向きなので、噴出する蒸気に横向きの力がさらに作用しにくくなり、蒸気の偏向を一層防止することができる。また被加熱物90の表面から油がはじけたりしても、それが気体吸込口24に吸い込まれにくく、送風装置25や外部循環路30の内面を汚さずに済む。
サブキャビティ40の底面パネル42は、上面が暗色なので蒸気加熱ヒータ41の放つ輻射熱を良く吸収する。底面パネル42に吸収された輻射熱は、同じく暗色となっている底面パネル42の下面から加熱室20に輻射放熱される。このため、サブキャビティ40及びその外面の温度上昇が抑制され、安全性が向上するとともに、蒸気加熱ヒータ41の輻射熱が底面パネル42を通じて加熱室20に伝えられ、加熱室20が一層効率良く熱せられる。底面パネル42の平面形状は円形であってもよく、加熱室20の平面形状と相似の矩形であってもよい。また、加熱室20の天井壁にてサブキャビティ40の底面パネルを形成し、部材の兼用化を図ってもよい。
被加熱物90が肉類の場合、温度が上昇すると脂肪が溶けて液体の油となる。被加熱物90をラック22に載置していれば、油は被加熱物90からラック22の下の受皿21に滴り落ちる。受皿21に入った油はラック22によって被加熱物90から隔てられ、被加熱物90に再付着しない。すなわち被加熱物90から脂肪分を調理が可能となる。
被加熱物90が容器に入れた液体類であると、沸騰して一部がこぼれることがある。こぼれた液体も受皿21に受け止められる。このように被加熱物90から滴り落ちたりこぼれたりしたものはすべて受皿21に受け止められ、調理終了後の処理を待つ。
蒸気発生装置50で蒸気を発生し続けていると、ポット51の中の水位が低下する。水位が所定レベルまで下がったことを水位センサ55が検知すると、制御装置80はポンプ73の運転を再開させる。ポンプ73は水タンク71の中の水を押し上げ、蒸発した分の水を補給する。給水パイプ63の中を通る際、補給水には伝熱ユニット60のフィン62を通じて蒸気発生ヒータ56の熱が伝えられる。これにより補給水は予熱され、沸騰点に達するまでの時間が短縮される。
また給水パイプ63の上端から噴きこぼれる補給水は、フィン62の上部の水面上に露出している部分に注ぎかけられる。フィン62の水面上露出部分は、水中に没している部分より高熱になっているので、フィン62に注がれた水は瞬時に沸騰して蒸発し、ポット51の内部の蒸気圧を高める。このため、アウターノズル35から蒸気が力強く噴出してサブキャビティ40に流れ込み、噴気孔43からの過熱蒸気の噴出を加勢する。従って、給水の度に過熱蒸気の強力噴射が生じる。
ポット51の中の水位が所定レベルまで上昇したことを水位センサ55が検知した時点で、制御装置80はポンプ73の運転を停止させる。このようにしてポンプ73は、調理期間中、間欠的に給水動作を行う。フィン62の水面上露出部分は、水を注がれることにより一旦温度が低下するが、その後水が注がれなくなると温度を回復する。これにより、新たな水が注がれる度にその水は急速蒸発し、過熱蒸気の噴射力を増大させることになる。
以上本発明の一実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することが可能である。