JP2005283137A - 放射性同位元素製造装置および放射性薬剤製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 放射性同位元素製造装置は、イオンビームを加速してターゲット13aに照射する線形加速器12、線形加速器12に同軸管15a、16aを介して高周波を供給する高周波電源15、16、ターゲット13aが収容されるターゲット遮へい体13、線形加速器12を覆う第1放射線遮へい体20、および第1放射線遮へい体20とターゲット遮へい体13との間において、線形加速器12のターゲット遮へい体13側を覆う移動可能な第2放射線遮へい体20を備えている。第1放射線遮へい体20は、線形加速器12に接続される同軸管16aの接続部12dを基点として、線形加速器12の軸方向で相反する方向に分割移動可能である。
【選択図】 図4
Description
18Fの製造は、一般に、高エネルギーの陽子(プロトン)を酸素18(18O)に照射し核反応を利用することにより行われる。18Oは、酸素16(16O)の同位体であり、天然にはわずか0.2%程度しか存在しないため、18Fの収率を上げるために18Oを濃縮することも考えられる。実際には18Fは、18Oを含んだ水(H2 18O)を封入した容器に10MeV程度に加速した陽子を照射して製造されている。従来、その製造には、主として、比較的大がかりな設備を必要とする加速器であるサイクロトロンが用いられていた。
また、ヘリウムイオンを線形加速器により照射して、放射性同位元素を得る技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、前記のように、放射性同位元素の半減期は比較的短いため、PET薬剤を合成してからPET検査を行うまでの工程が短時間で行われることが好ましく、そのような機能を有した医療施設が望まれていた。
好ましくは、第2放射線遮へい体は、線形加速器の軸心と交差する方向で相反する方向に移動可能な複数の第2放射線遮へい部によって構成されていることが望ましい。第2放射線遮へい体がこのように構成されることによって、第1放射線遮へい体の分割移動および線形加速器のメンテナンスがスムーズに行える。
さらに、好ましくは、第2放射線遮へい体が、第1放射線遮へい体の外側および内側のいずれかで、線形加速器の軸方向に移動可能に構成されるとよい。
放射性同位元素製造装置10は、イオン源11、高周波四重極型線形加速器(Radio Frequency Quadrupole、以下、RFQと称す)12a、ドリフトチューブ型線形加速器(Drift Tube Linac、以下、DTLと称す)12bおよびターゲット13aを有する。ターゲット13aはターゲット遮へい体13内に配置される。イオン源11、RFQ12a、DTL12bは、イオンビームの進行方向(イオン源11からターゲット遮へい体13に向かう方向)にこの順に直列に加速器室9内に設置されている。また、これら、RFQ12a、DTL12bの横には、それぞれに別々に高周波電力を供給するための高周波電源15、16が、RFQ12a、DTL12bと間隔を隔てて設置されている。イオン源11の横には、これらに電力を供給するための電源14が、イオン源11と間隔を隔てて設置されている。そして、DTL12bの周囲には、第1放射線遮へい体(以下、第1遮へい体と称する)20が設けられ、またDTL12bとターゲット遮へい体13との間には、図2に示すように、第2放射線遮へい体(以下、第2遮へい体と称する)25が設けられている。
そして、このイオン源11の後段に、RFQ12aが設けられ、図示しないイオンビーム発生部から出射されたイオンビームがRFQ12aにより所定のエネルギーまで加速されるようになっている。
なお、ここで使用されるRFQ12aに代えて、六極以上の偶数の磁極を持つ多重電極型の高周波加速器を用いてもよく、これら以外の高周波加速器を用いることもできる。
このようなRFQ12aおよびDTL12bは、組み合わされて、最終的に10MeV程度の高エネルギービームを生成する線形加速器12として機能する。DTL12bとターゲット遮へい体13との間には、電力の供給によりイオンビームの拡がりを制御するコイル部12cが設けられている。また、コイル部12cの下方には、図示しない計器類が配置されている。
なお、線形加速器12には、熱による容器や電極等の膨張収縮に起因する共振周波数のずれに対処するため、その共振周波数を調整する図示しないチューナを設けても良い。
第1遮へい体20は、前記したように、DTL12bの軸方向で相反する方向に移動可能な分割構造となっている。このため、線形加速器12の運転時には、前部21と後部22を接触させた、DTL12bからの放射線を遮へいする状態(図4(a)参照)、およびDTL12bのメンテナンス時には、前部21と後部22の間隔をあけた状態(図4(b))にすることができる。前部21と後部22との接触面には、同軸管16aの挿通孔を形成する凹部21aと凸部22aが設けられている。放射線遮へい時には、同軸管16aは前部21と後部22、具体的には凹部21aと凸部22aに挟まれる。なお、第1遮へい体20は、DTL12bの軸方向で相反する方向に移動可能な2つの第1放射線遮へい部(前部21および後部22)を含んでいるとも言える。
このような第1遮へい体20、具体的には、前部21および後部22は、例えば、ボロンを含んだポリエチレンで成形した板状体を何層にも重ね合わせて、分厚く形成されている。
レール28は、左部26および右部27の重量に耐え得る強度を有している。レール28は、ステー29で支持されるだけでなく、図3(a)に示すように、一つの端部28aが壁W1に固定されている。また、レール28の他の端部28bは、床面に立設された図示しない支持部材によって支持されている。なお、端部28bも近接する壁W1に固定しても良い。
図示しない作動スイッチを操作すると、RFQ12a、DTL12bに対して、高周波電源15、16から所定の高周波電力がそれぞれ供給され、各RFQ12a、DTL12bに電界が形成される。その後、イオン源11に電源14から電源ケーブル14aを介して所定の電力を供給する。これにより、イオン源11のイオンビーム発生部(図示せず)から出射されたイオンビーム(陽子線)がRFQ12aによって所定のエネルギーまで加速される。加速されたイオンビームは、RFQ12aから出射されて後段のDTL12bに入射され、DTL12bでさらに加速される。
DTL12bで加速されたイオンビームは、コイル部12c内を通過してターゲット13a内の18O濃縮水に照射される。18Oへのイオンビームの照射によって、18Fが生成される。
このような現象が生じても、DTL12bが第1遮へい体20で覆われ、また、コイル部12cが第2遮へい体25で覆われているので、それらから外側に向かって飛び散った中性子は、第1遮へい体20および第2遮へい体25で良好に減衰され、遮へいされる。また、中性子が減衰する過程で放出されるγ線も、第1遮へい体20および第2遮へい体25で良好に減衰し、遮へいされる。
このように、第1遮へい体20および第2遮へい体25は、DTL12bおよびコイル部12cを覆って、中性子を良好に減衰させ、遮へいする役割を果たす。
放射性同位元素製造装置10の停止時などにおけるコイル部12cおよびDTL12b等のメンテナンス時においては、第1,第2遮へい体20,25を、前記したように分割して移動させることにより、コイル部12cやDTL12bを露出させた状態にすることができる。ここで、第1遮へい体20および第2遮へい体25の移動は、以下のように行う。図4(b)に示すように、まず、第2遮へい体25の左部26と右部27との嵌合を解除して、コイル部12cの位置で左部26および右部27を別々に左右に移動させる。その後、第1遮へい体20の前部21および後部22を、前記したように、前後に別々に移動させる。これにより、DTL12bを露出させた状態にすることができる。このとき、後部22のターゲット遮へい体13側への移動は、第2遮へい体25の左部26と右部27とを先に移動させてコイル部12cの部分を露出することによって可能になる。すなわち、後部22がコイル部12cの位置まで移動できる。このため、露出されたDTL12bの保守点検が容易に行える。コイル部12cの部分の保守点検は、後部22を同軸管16aの垂直部の位置まで移動させてコイル部12cを露出させて行う。コイル部12cの部分の保守点検は、後部22をターゲット遮へい体13側へ移動させる前に行うことも可能である。したがって、第1遮へい体20および第2遮へい体25の設置は、コイル部12cやDTL12bから放出された中性子等の放射線を効率よく減衰し、遮へいすることができ、かつコイル部12cおよびDTL12bのメンテナンスを容易に行えるという効果を得ることができる。
ターゲット13aには、配管31が接続されている。生成された18Fを含む水は、前記のように、高圧のアルゴンガスでターゲット13aを加圧することにより、配管31を通して、ホットラボ室30内の放射性薬剤合成装置32に送られる。加速器室9とホットラボ室30との間の壁W1は、コンクリートを基体とする放射線(中性子等)の吸収が可能な壁W1で構成されている。
ホットラボ室30には、配管31によって送られてきた18Fを含む水からPET薬剤を合成する放射性薬剤合成装置32と、PET薬剤を分注する薬剤分注装置33とがある。なお、ホットラボ室30には、図示しない給気ブロアや周知のHEPAフィルタ等が設けられ、このHEPAフィルタを介して内部に給気が送られるように構成されている。
したがって、従来のような、遮へい用の分厚い壁を建屋に設ける必要が無くなり、建屋の構造自体を強固に建造する必要がなくなる。これにより、建屋の建設期間を短縮できるという優れた効果が得られる。
また、既存の施設、例えば、構造上、従来のような分厚い壁を設けることができないような設置場所においても、放射性同位元素製造装置10を設置することができるという利点が得られる。
具体的には、第1遮へい体20は、線形加速器12(DTL12b)に接続される同軸管16aの垂直部を基点として、DTL12bの軸方向に分割移動可能に設けられているので、非稼働時には、第1遮へい体20を前部21と後部22とに分割移動させて、DTL12bを露出させることができる。したがって、中性子等を減衰させ、遮へいできる構造であると同時に、メンテナンスの利便性が高い放射性同位元素製造装置10が得られる。さらに、第2遮へい体25を左右に分割して(左部26、右部27に分けて)移動させることができるので、第1遮へい体20の後部22をターゲット遮へい体13側に移動させることができ、DTL12bを露出させることができる。このため、DTL12bのメンテナンスを良好に行うことができる。
同軸管16aを基点にして第1遮へい体20が分けられていることも重要である。すなわち、同軸管16aよりもターゲット遮へい体13側に移動する後部22、および同軸管16aよりもRFQ12a側に移動する前部21によって第1遮へい体20を構成しているため、後部22および前部21の線形加速器12の軸方向への移動が可能になり、後部22および前部21によってDTL12bを覆うことによる放射線遮へい、および後部22および前部21を前記のそれぞれの方向への移動による、メンテナンスのためのDTL12bの露出が可能になる。仮に、後部22および前部21を一体にして第1遮へい体を構成したとすると、同軸管16aがその第1遮へい体を貫通するため、同軸管16aが邪魔になってその第1遮へい体を線形加速器12の軸方向に移動させることはできない。このため、メンテナンスのためのDTL12bの露出が不可能になる。これに対し、本実施形態では、後部22および前部21が同軸管16aを基点にして前記のように移動可能であるので、放射線の遮へいとメンテナンスとの両方を実現することができる。
第2遮へい体25の左部26および右部27を、第2遮へい体25の上方に配置したレール28に沿って左右に移動させるため、コイル部12cの側に計器類を配置することができる。換言すれば、コイル部12cの側に計器類が配置されていても、そのレール28により左部26および右部27を移動させることができ、コイル部12cを露出できる。
また、従来は減少を考慮して多めに作っていたが、多めに作る量を減らすことができる。
第1遮へい体20の後部22は、第1遮へい体20がターゲット遮へい体13に向かって移動されるとき、第2遮へい体40の内側に入り込む。このため、第1遮へい体20は、図6(a)に示すように、DTL12bを覆った状態、または、図6(b)に示すように、前部21と後部22を離してDTL12bを露出する状態にすることができる。また、第2遮へい体40を第1遮へい体20(後部22)側へ移動させることにより、コイル部12cを露出させることができる。これとは反対に、第2遮へい体40がターゲット遮へい体13に接触しているとき、コイル部12cは第2遮へい体40によって覆われる状態となる。このような、第1遮へい体20および第2遮へい体40の設置によっても、図1に示す実施形態のように、第1遮へい体20および第2遮へい体25を設置したときと同様に、DTL12bおよびコイル部12cから放出される中性子を遮へいすることができ、露出されたDTL12bおよびコイル部12cの保守点検(メンテナンス)を容易に行うことができる。
9 加速器室
10 放射性同位元素製造装置
11 イオン源
12 線形加速器
12a RFQ
12b DTL
12c コイル部
12d 接続部
13 ターゲット遮へい体
13a ターゲット
14 電源
15〜16 高周波電源
14a〜16a 同軸管
17 ドリフトチューブ
20 第1放射線遮へい体
21 前放射線遮へい部
22 後放射線遮へい部
25 第2放射線遮へい体
26 左放射線遮へい部
27 右放射線遮へい部
30 ホットラボ室
31 配管
32 放射性薬剤合成装置
33 薬剤分注装置
T 建屋
W1 壁
W2 壁
Claims (11)
- イオンビームを出射するイオン源と、このイオン源から出射された前記イオンビームを加速してターゲットに照射する線形加速器と、前記線形加速器に高周波伝送路を介して高周波を供給する高周波電源と、前記ターゲットが収容されるターゲット遮へい体と、前記線形加速器を覆う第1放射線遮へい体と、前記第1放射線遮へい体と前記ターゲット遮へい体との間の領域を覆い移動可能な第2放射線遮へい体とを備え、
前記第1放射線遮へい体は、前記線形加速器の軸方向で、前記線形加速器に接続される前記高周波伝送路を基点として相反する方向に分割されて移動可能に構成されていることを特徴とする放射性同位元素製造装置。 - イオンビームを出射するイオン源と、このイオン源から出射された前記イオンビームを加速してターゲットに照射する線形加速器と、前記線形加速器に高周波伝送路を介して高周波を供給する高周波電源と、前記ターゲットが収容されるターゲット遮へい体と、前記線形加速器を覆う第1放射線遮へい体と、前記第1放射線遮へい体と前記ターゲット遮へい体との間の領域を覆い移動可能な第2放射線遮へい体とを備え、
前記第1放射線遮へい体は、前記線形加速器の軸方向で、前記線形加速器に接続される前記高周波伝送路を基点として相反する方向に移動可能な複数の第1放射線遮へい部によって構成されていることを特徴とする放射性同位元素製造装置。 - 前記第2放射線遮へい体は、前記線形加速器と前記ターゲット遮へい体との間に配置され、前記線形加速器から出射されて前記ターゲットに照射されるイオンビームの拡がりを制御するコイル部を覆っている請求項1または請求項2に記載の放射性同位元素製造装置。
- 前記第2放射線遮へい体は、前記線形加速器の軸心と交差する方向で相反する方向に分割されて移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射性同位元素製造装置。
- 前記第2放射線遮へい体は、前記線形加速器の軸心と交差する方向で相反する方向に移動可能な複数の第2放射線遮へい部によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の放射性同位元素製造装置。
- 前記複数の第1放射線遮へい部は、前記線形加速器が設置される床面に設置されたガイド部材上を移動することを特徴とする請求項2に記載の放射性同位元素製造装置。
- 前記複数の第2放射線遮へい部は、前記線形加速器よりも上方に設置されたガイド部材上を移動することを特徴とする請求項5に記載の放射性同位元素製造装置。
- 前記ガイド部材は前記ターゲット遮へい体に支持されていることを特徴とする請求項7に記載の放射性同位元素製造装置。
- イオンビームを出射するイオン源と、このイオン源から出射された前記イオンビームを加速してターゲットに照射する線形加速器と、前記線形加速器に高周波伝送路を介して高周波を供給する高周波電源と、前記ターゲットが収容されるターゲット遮へい体と、前記線形加速器を覆う第1放射線遮へい体と、前記第1放射線遮へい体と前記ターゲット遮へい体との間の領域を覆い移動可能な第2放射線遮へい体とを備え、
前記第1放射線遮へい体は、前記線形加速器の軸方向で、前記線形加速器に接続される前記高周波伝送路を基点として相反する方向に移動可能な複数の第1放射線遮へい部によって構成され、
前記第2放射線遮へい体は、前記第1放射線遮へい体の外側および内側のいずれかで、前記線形加速器の軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする放射性同位元素製造装置。 - 前記第1放射線遮へい体は前記線形加速器が設置される床面に設置された第1ガイド部材上を移動し、前記第2放射線遮へい体は前記第1ガイド部材と並行に前記床面に設置された第2ガイド部材上を移動することを特徴とする請求項9に記載の放射性同位元素製造装置。
- イオンビームを出射するイオン源、このイオン源から出射された前記イオンビームを加速してターゲットに照射する線形加速器、前記線形加速器に高周波伝送路を介して高周波を供給する高周波電源、前記ターゲットが収容されるターゲット遮へい体、前記線形加速器を覆う第1放射線遮へい体、前記第1放射線遮へい体と前記ターゲット遮へい体との間の領域を覆い移動可能な第2放射線遮へい体を有し、前記第1放射線遮へい体が、前記線形加速器の軸方向で、前記線形加速器に接続される前記高周波伝送路を基点として相反する方向に分割されて移動可能に構成されている放射性同位元素製造装置と、
前記ターゲット内で製造された放射性同位元素を用いて放射性薬剤を製造する放射性薬剤合成装置と、
を備えたことを特徴とする放射性薬剤製造装置。
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