JP2005271025A - 冷間圧延方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼帯が、圧延時における板厚変動要因を内在する場合であっても、圧延による板厚変動を許容値以内に制御し、圧延機の非常停止や、鋼帯の破断の発生の無い安定した圧延を行うことが可能な冷間圧延方法を提供する。
【解決手段】
複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延機により、圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯を圧延する冷間圧延方法であって、各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御を、いずれかの圧延スタンドにおける板厚、張力または圧延荷重のうちの一つの検出値のみに基づいて行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼板の冷間圧延方法、特に、圧延時における板厚変動要因を内在する冷延鋼板に好適な圧延方法に関する。
冷延鋼板の製造は、一般的には、熱間圧延された熱延鋼板に対して、酸洗−冷間圧延−電解清浄−焼鈍−調質圧延−リコイルの各工程にて処理を施すことにより行われている。また、さらに亜鉛めっき等の表面処理を施して表面処理鋼板の製造も行われている。
前記冷間圧延工程においては、複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延ライン(以下、「TCM」と呼ぶ。)により圧延を行うのが一般的であり、所定の板厚の鋼帯を製造するに際しては、事前に、板厚に合せて各圧延スタンドの圧下率配分、圧延荷重配分、張力配分等のスケジュール計算を行い、それに基づいて各圧延スタンドで圧延を行っている。
しかし、圧延前の鋼帯における板厚や材質のバラツキ、圧延速度の加減速、圧延ロールの摩耗等により、TCM通過後の鋼帯には板厚偏差(バラツキ)が発生する場合がある。
そこで、従来より、TCM通過後の鋼帯の板厚偏差を公差内に抑えるために、AGC(Automatic Gage Control)と呼ばれる自動板厚制御システムを採用し、スケジュール計算で設定した板厚或いは張力が実測値と異なる場合には、設定した値に近づけるように各圧延スタンドの圧下位置及びロール周速度の調整等を行うようにしている。
AGC自動板厚制御システムの例としては、例えば、「板圧延の理論と実際」日本鉄鋼協会、p.295−302(非特許文献1)にその記載があり、そのp.302、図12.12には、TCMのAGCシステム系統図の一例が記載されている。この非特許文献1に記載のAGCシステムは、各圧延スタンドの前後に設けられた板厚計及び張力計の値に基づき、ゲージメータAGC、マスフローAGC、モニターAGCの各種AGCにより、各圧延スタンドの圧下位置及びロール周速度の調整を行い、板厚の微調整を行っている。
また、前記非特許文献1の図12.12に記載のAGCシステムは基本的な例として示されており、実際には、板厚制御をより高精度に行うために、各種AGCを組合せてより複雑なAGCシステムが採用されている。図3に従来技術にかかるTCMのAGCシステム系統図の他の一例を示す。これは、前記非特許文献1に記載のAGCと基本的には同様の制御方法にかかるものであるが、板厚制御をより高精度に行うために、圧延スタンドによっては各圧延スタンドの圧下位置またはロール周速度の調整に複数のAGCを介入させて制御を行うものである。
そして、図3に示すようなAGCシステムによる自動板厚制御方法を用いることにより、TCMにおける鋼帯の板厚制御の精度は飛躍的に向上した。
「板圧延の理論と実際」日本鉄鋼協会、p.295−302
このようにして冷間圧延された鋼帯は、前述のように焼鈍、調質圧延、めっき等の工程を経て冷延鋼板あるいは表面処理鋼板となるが、途中の工程で表面欠陥や形状不良が発生した場合などに、欠陥の消去や形状矯正を目的として再び冷間圧延を施し、板厚の異なる製品へ再生する場合がある(以下、再冷間圧延とよぶ)。また、SC材(機械構造用炭素鋼)やSK材(炭素工具鋼鋼材)のような高炭素鋼の場合などでは、所定の材質を得る目的と圧延時の負荷軽減を目的として、冷間圧延前にバッチ焼鈍炉を用いて焼鈍を行い、しかる後に冷間圧延を行う場合が多い(以下、前焼鈍後の冷間圧延とよぶ)。そして、このような場合であっても、従来は、図3に示すようなAGCシステムにより、冷間圧延を行っていた。
しかし、上記の再冷間圧延や前焼鈍後の冷間圧延を行う際、上記図3に示すようなAGCシステムを用いた場合においても、圧延時に急激な荷重及び張力変動が発生し、上記のAGCシステムでは制御しきれず、板厚変動量が許容値を超えて製品歩留を悪化させ、さらに変動量が大きい場合には圧延機の非常停止や、鋼帯の破断等が発生して、圧延の継続ができなくなる場合すらあった。
このように急激な荷重及び張力変動が発生して板厚変動が大きくなった場合の圧延機入側の鋼帯を調べても、板厚が大きく変動している訳ではなく、入側鋼帯が圧延時における板厚変動の要因を内在しているものと推定された。
そこで、本発明は、鋼帯が、圧延時における板厚変動要因を内在する場合であっても、圧延による板厚変動を許容値以内に制御し、圧延機の非常停止や、鋼帯の破断の発生の無い安定した圧延を行うことが可能な冷間圧延方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、どのような場合に鋼帯が圧延時における板厚変動要因を内在し、また、板厚変動要因を内在する鋼帯を冷間圧延する際になぜ従来のAGCシステムによる板厚制御では板厚変動が発生するのかについて検討した。その結果、以下のような知見を得た。
まず、鋼帯長手方向に硬度変動を有する場合、冷間圧延時の変形抵抗が変動し、荷重変動及び張力変動を引き起こす。また、鋼帯長手方向に鋼帯表面の摩擦係数変動を有する場合、先進率が変動し、荷重変動及び張力変動を引き起こす。そして、これらの変動により鋼帯に板厚変動が生じることとなる。
次に、鋼帯長手方向に硬度変動を有する原因としては、再冷間圧延材や前焼鈍冷間圧延材の場合、冷間圧延前に施される焼鈍時のバラツキが考えられる。特にコイル状で焼鈍を行うバッチ焼鈍の場合、コイル周方向に加熱が不均一であると、コイルの1巻きピッチで鋼帯長手方向に材質変動(硬度変動)を生じることとなる。なお、通常の熱延鋼帯を冷間圧延する場合であっても、熱延鋼帯をコイルに巻取った後の冷却がコイル周方向に不均一であると、同様に鋼帯長手方向に硬度変動を有することとなる。
さらに、鋼帯長手方向に鋼帯表面の摩擦係数変動を有する原因としては、再冷間圧延材が表面に亜鉛めっきを施した表面処理鋼板の場合、再冷間圧延前に鋼帯表面の防錆油を除去するためにアルカリ電解洗浄を行うと、アルカリと鋼帯表面の亜鉛が化学反応を起こして部分的にアルカリ腐食を起こすためと考えられる。
そして、このような鋼帯長手方向に板厚変動要因を内在する鋼帯を従来の図3に示すようなAGCシステムを用いて冷間圧延する場合、一つの圧延スタンドの圧下位置又はロール周速度の調整に複数のAGCが介入しているスタンドにおいて、複数のAGCが互いに干渉し合い、かえって板厚を変動させていることがわかった。図3における第1スタンド(ロール周速度の制御に、#1−2スタンド間板厚の検出値によるFF−AGCと、#2−3スタンド間板厚の検出値によるモニタAGCとが介入)などがこれに該当する。
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものであり、以下のような特徴を有する。
[1]複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延機により、圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯を圧延する冷間圧延方法であって、
各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御を、いずれかの圧延スタンドにおける板厚、張力または圧延荷重のうちの一つの検出値のみに基づいて行うことを特徴とする冷間圧延方法。
[2]上記[1]において、各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御のうち、1以上の圧延スタンドにおいて圧下位置又はロール周速度の一方のみの制御を行うことを特徴とする冷間圧延方法。
[3]上記[1]又は[2]のいずれかにおいて、各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御のうち、前段スタンドでは圧下位置の制御のみを行うことを特徴とする冷間圧延方法。
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかにおいて、前記圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯が、鋼帯長手方向に、硬度変動または鋼帯表面の摩擦係数変動を有する鋼帯であることを特徴とする冷間圧延方法。
[5]上記[1]乃至[3]のいずれかにおいて、前記圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯が、焼鈍処理及び/又は表面処理を施された鋼帯であることを特徴とする冷間圧延方法。
なお、ここで、前記の圧下位置又はロール周速度の制御の一方のみの制御を行うとは、他方については積極的な制御を行わないことを意味する。さらに、積極的な制御を行わないとは、それらの値をある目標値となるように制御することは行わず、それらの値が圧延機停止の条件とならない一定の範囲内に収める程度の制御を行うことを意味する。
本発明によれば、鋼帯が、圧延時における板厚変動要因を内在する場合であっても、圧延による板厚変動を許容値以内に制御し、圧延機の非常停止や、鋼帯の破断の発生の無い安定した圧延を行うことが可能な冷間圧延方法が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
図1は、本発明に係る冷間圧延方法が適用される、複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延機におけるAGCシステム系統図の一例を示した図である。ここで、図1は、5つの圧延スタンド(#1STD〜#5STD)を備えた冷間圧延機を示しているが、本発明方法が適用される冷間圧延機は、圧延スタンドが5つの場合には限られず、通常よく用いられている4乃至6スタンドを備えた冷間圧延機はもちろんのこと、2つ以上の圧延スタンドを備えた連続冷間圧延機に適用できる。
本発明は、圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯を圧延するに際し、各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度を、いずれかの圧延スタンドにおける板厚、張力または圧延荷重のうちの一つの検出値のみに基づいて行うものである。ここで、前記圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯としては、例えば、鋼帯長手方向に硬度変動又は鋼帯表面の摩擦係数変動を有する鋼帯、或いは、焼鈍処理及び/又は表面処理を施された鋼帯等が該当する。
以下、図1により、本発明に係る冷間圧延方法の一実施形態を説明する。
図1に示す実施形態(以下、実施形態1と呼ぶ)では、モニタAGC(MONI AGC)、FF−AGC、張力一定制御(TLC)、荷重一定制御(CPR)などによりAGCシステムが構成されている。なお、これらのAGCの詳細については、非特許文献1等に説明されている公知のものであるので、その説明を省略する。
第1スタンド(#1STD)では、圧下位置調整を#1−2スタンド間に設置された板厚計1aの検出値のみに基づいてモニタAGCにより制御し、ロール周速度を#1−2スタンド間に設置された板厚計1aの検出値のみに基づいてFF−AGCにより制御する。
第2スタンド(#2STD)では、圧下位置調整を#1−2スタンド間に設置された張力計2aの検出値のみに基づいてTLCにより制御し、ロール周速度を#2−3スタンド間に設置された板厚計1bの検出値のみに基づいてFF−AGCにより制御する。
第3スタンド(#3STD)では、圧下位置調整を#2−3スタンド間に設置された張力計2bの検出値のみに基づいてTLCにより制御し、ロール周速度を#4−5スタンド間に設置された板厚計1dの検出値のみに基づいてモニタAGCにより制御する。
第4スタンド(#4STD)では、圧下位置調整を#3−4スタンド間に設置された張力計2cの検出値のみに基づいてTLCにより制御し、ロール周速度を第5スタンド出側に設置された板厚計1eの検出値のみに基づいてモニタAGCにより制御する。
第5スタンド(#5STD)では、圧下位置調整を第5スタンドに設置された荷重計3eの検出値のみに基づいてCPRにより制御し、ロール周速度を#4−5スタンド間に設置された張力計2dの検出値のみに基づいてTLCにより制御する。
以上のように、本実施形態1では、圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯を圧延するに際し、各圧延スタンドの圧下位置を、いずれかの圧延スタンドにおける板厚、張力または圧延荷重のうちの一つの検出値のみに基づいて制御する。また、各圧延スタンドのロール周速度を、いずれかの圧延スタンドにおける板厚、張力または圧延荷重のうちの一つの検出値のみに基づいて制御する。
このようなAGCシステムを用いて圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯を圧延することにより、複数のAGCが互いに干渉して悪影響を及ぼすことがなくなり、板厚変動を抑制することができる。
次に、図2により、本発明に係る冷間圧延方法の他の一実施形態を説明する。
図2は、本発明に係る冷間圧延方法が適用される、複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延機におけるAGCシステム系統図の他の一例を示した図である。ここで、図2では5つの圧延スタンドを備えた冷間圧延機を示しているが、実施形態1と同様に、これに限定されるものではない。
図2に示す実施形態(以下、実施形態2と呼ぶ)は、前記実施形態1において、各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御のうち、前段スタンドでは圧下位置の制御のみを行うものである。ここで、前記前段スタンドとは、例えば4スタンド以上を備えた冷間圧延機の場合には少なくとも第1スタンド及び第2スタンドを指す。
図2では、第1スタンド(#1STD)及び第2スタンド(#2STD)を前段スタンドとし、この第1及び第2スタンドのロール周速度を目標値となるように制御することは行わず、ロール周速度が圧延機停止の条件とならない一定の範囲内に収める程度の制御に止める。なお、第1及び第2スタンドの圧下位置と他の圧延スタンドにおける圧下位置及びロール周速度の制御は、第1の実施形態と同様である。
このようなAGCシステムを用いて圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯を圧延することにより、複数のAGCの干渉に起因する荷重変動、張力変動を低減する事が可能となり、板厚変動をより効果的に抑制することができる。
なお、本実施形態2では、前段スタンドで圧下位置とロール周速度のうちのロール周速度のみを制御しているが、本実施形態はこれに限定されず、各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御のうち、1以上の圧延スタンドにおいて圧下位置又はロール周速度の一方のみの制御を行ようにしてもよい。
本発明例として、上記図1(本発明例1)及び図2(本発明例2)に示すAGCシステムにより、鋼板の冷間圧延を行った。また、比較例として、従来技術に係る図3に示すAGCシステムによる鋼板の冷間圧延を行った。用いた鋼板は、
A:バッチ焼鈍を施した前焼鈍冷間圧延材
B:冷間圧延後に溶融亜鉛めっきを施し、アルカリ電解洗浄を施した再冷間圧延材
の2種類とした。
このような条件で冷間圧延を行った結果、得られた板厚変動量を表1に示す。
比較例においては、板厚変動が大きく、また、急激な板厚変動によるライン停止が発生する場合があった。一方、本発明例では板厚変動は小さく抑えられ、ライン停止が起こることはなく、歩留りも向上し、本発明の効果を確認することができた。
Figure 2005271025
本発明に係る冷間圧延方法が適用される、複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延ラインにおけるAGCシステム系統図の一例を示した図である。 本発明に係る冷間圧延方法が適用される、複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延機におけるAGCシステム系統図の他の一例を示した図である。 従来技術に係る冷間圧延ラインにおけるAGCシステム系統図の一例を示す図である。
符号の説明
1 板厚計
2 張力計
3 荷重計

Claims (5)

  1. 複数の圧延スタンドを備えた冷間圧延機により、圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯を圧延する冷間圧延方法であって、
    各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御を、いずれかの圧延スタンドにおける板厚、張力または圧延荷重のうちの一つの検出値のみに基づいて行うことを特徴とする冷間圧延方法。
  2. 各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御のうち、1以上の圧延スタンドにおいて圧下位置又はロール周速度の一方のみの制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷間圧延方法。
  3. 各圧延スタンドの圧下位置およびロール周速度の制御のうち、前段スタンドでは圧下位置の制御のみを行うことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の冷間圧延方法。
  4. 前記圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯が、鋼帯長手方向に、硬度変動または鋼帯表面の摩擦係数変動を有する鋼帯であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷間圧延方法。
  5. 前記圧延時の板厚変動要因を内在する鋼帯が、焼鈍処理及び/又は表面処理を施された鋼帯であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷間圧延方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103071683A (zh) * 2012-12-24 2013-05-01 李广阔 一种双机架s型四辊冷轧机综合调整轧制技术

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