発明の背景
本発明は薬理学に関する。より特定的には、本発明は慢性疼痛などの種々の頑固な障害に対する医薬を製造するのに有用な組成物に関する。
多くの慢性疾患は、非常に治療が難しく、そして安全で習慣性がない非ステロイド薬剤にしばしば反応しないことが知られている症状を有する。頑固な咳などの疾患は通常の医薬に反応せず、コデイン、モルヒネあるいは抗炎症ステロイドプレドニソンなどの薬剤を用いねばならない。これらの薬剤は患者の健康に対する有毒な副作用、長期間による危険、習慣性のおそれのために長期間にわたって使用することはできない。皮膚炎などの他の疾患は、激しいかゆみと同時に生じる皮疹に対し満足な治療法がない。プレドニソンなどの薬剤、三環系抗うつ剤さえも、局所適用と共に試みられてきたが、実質的なかつ一貫した治癒をもたらすとは考えられていない。
脳卒中、癌、外傷などの症状による慢性痛、さらに糖尿症および帯状疱疹(herpes zoster)などの症状から来る神経痛も適切な処置がなし得ない問題である。慢性痛は数百万の人々が苦しんでいるとされている。このタイプの疼痛に対して種々の療法が試みられて来たが、安全で効果的な処置が必要とされている。
化合物デキストロメトルファンすなわち(+)−3−メトキシ−N−メチルモルフィナンはセキシロップにおいて鎮咳成分として用いられて来た。デキストロメトルファンはまた、脳卒中およびパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症などの進行性神経変性疾患に対して可能性ある治療剤としても試みられて来た。しかし、デキストロメトルファンは肝臓で速やかに分解されて、ほとんどの者で排出されてしまうので、いかなる疾患に対しても治療効果は限られたものであった。
発明の詳細な説明
本発明の1つの目的は、以前は頑固で、他の薬剤に反応しない症状を効果的に治療できる医薬の製造に有用な化合物の組み合せを提供することである。また、長期間頑固な症状に悩んでいる患者に対して安全で、習慣性のない比較的副作用の少ない医薬を提供することも本発明の目的である。
本発明の要約
本発明は、頑固な咳、皮膚炎、慢性痛、耳鳴および性的機能障害を含む種々の疾患の治療のための医薬の製造に有用な化合物を提供する。これらの化合物は医療上有効な量のデキストロメトルファン、医療上有効な量の第二薬剤および酵素的デキストロメトルファン酸化の阻害剤である。この化合物の組み合せは、一緒にあるいは個々に投与され得る。望ましい配合はデキストロメトルファンおよび酸化阻止剤のキニジンである。用い得る阻止剤には、キニン、ヨヒンビン、フルオレキチン、ハロペリドール、アジマリン、ロベリンおよびピパムぺロンも含まれる。
望ましい具体化の詳細な説明
定義
用語デキストロメトルファン(以下DM)とは、(+)−3−メトキシ−N−メチルモルフィナンまたは医療上効果的な塩およびその同族体を意味する。
用語“抗酸化剤”または“酸化阻害剤”とは、肝酵素デブリソキンヒドロキシラーゼによるDMの酸化を阻害できる阻害剤を意味する。
用語“頑固な”または“治りにくい”咳とは、習慣性のない非ステロイド系薬剤に適切に反応しない咳を意味する。
用語“皮膚炎”または“湿疹”とは、皮膚のかゆみおよび炎症感を伴うことがある可視的皮膚損傷を含む皮膚症状を意味する。この症状は非処方薬、ローション、軟膏に容易に反応しない。
用語“慢性痛”とは、脳卒中、癌および外傷などの症状による疼痛および帯状疱疹によるポストヘルペス神経痛および長期の糖尿病による糖尿病性ノイロパティなどの神経組織の破壊からくる神経的疼痛を意味する。
用語“耳鳴”とは、耳のうずまき管の外毛細胞の運動性の消失によると考えられている高ピッチの耳鳴を特徴とする症状を意味する。
本発明は、他の治療には反応しない種々の慢性的かつ頑固な疾患に対する効果的な治療のための医薬の製造に使用される組成物を提供する。これらの組成物は、医療上効果的な量のデキストロメトルファン(DM)、またはその薬学的に許容される塩または同族体に医療上効果的な量の肝酵素デブリソキニンヒドロキシラーゼによる酵素的デキストロメトルファン酸化の阻害剤を併用している。デキストロメトルファン/抗酸化剤の組み合わせを含有する医薬に反応する、慢性的で頑固な疾患には、頑固な咳、皮膚炎、慢性痛および耳鳴を含む。比較的強力な抗酸化剤はキニジンおよびキニンである。他の緩和な抗酸化剤には、ヨヒンビン、フルオレキチン、ハロペリドール、アジマリン、ロベリン、ピパムペロンが含まれる。
キニンおよび他の酸化阻止剤は、DMと配合で投与されたとき患者の血液中に循環するDMの量を増大しそして安定する顕著な効果を有することが見出されている。この効果についてSmithの米国特許第5,166,207号、発行1992年11月24日、およびZhang,Y.,Clin.Pharmacol.Ther,51:647−655(1992)に記載されており、ここに参考として合体せしめる。
デキストロメトルファン(以下、DM)は(+)−3−メトキシ−メチルモルフィナンの一般名である。この化合物について詳細にRoddら、Chemistry of Carbon Compounds,Elsevier Publ.,New York(1960)に記載されており、これを参考として合体する。多くのアヘン剤の分子コアを形成するモルフィナン環構造の右施性エナンティオマー(鏡像)を有する非習慣性のオピオイドである。
DMは、一般用のセキシロップにおける鎮咳成分として用いられている。DMの鎮咳成分は、シグマ受容体または高親和デキストロメトルファン受容体として知られるニューロナール受容体類に対するアンタゴニストとしての作用に主として由来していると考えられている。これらの受容体は、時にシグマオピアート受容体とされているが、実際にオピアート受容体かどうかは明確でない。シグマ受容体は阻止的受容体であり、DMまたは他のシグマアンタゴニストによるこれらの受容体の活性化は神経シグナルの何かのタイプの抑制をおこす。デキストロメトルファンはまた、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体として知られる他のタイプの受容体に作用するとも考えられており、これは興奮的アミノ酸(EAA)受容体の1つのタイプである。シグマ受容体に対するアゴニスト活性とは異なり、DMは、NMDA受容体に対するアンタゴニストとして作用し、NMDA受容体を介して調節された神経インパルスの伝導を抑制する。NMDA受容体は興奮的受容体であるので、NMDAアンタゴニストとしてのDMの作用は、神経シグナルの抑制をもたらす。さらに、DMはニューロナールカルシウムチャネルにおける作用を抑制すると報告されている。これは、NMDAにおけるDMのアンタゴニスト活性であり、DM/抗酸化剤を併せて含有する医薬に反応する種々の条件のあるものにおける普通の組み合わせの一つと考えられている。
医薬上用いられたとき、DMはほとんどの患者において血流から迅速に消滅すると、Dayer等、Clin Pharmacol.Ther,45:34−40(1989)、Vetticaden等、Pharmaceut.Res,6:13−19(1989)およびRamachander等、J.Pharm.Sci.,66:1047−1048(1977)は記載しており、これを参考としてここに合体する。DMは肝臓で分解されて、いくつかの代謝体となる。DMはO−デメチル化により酸化されて、メチル基の1つが除かれ、2つの代謝体、デキストロファンおよび3−メトキシモルフィナンが生成する。もし第2メチル基が除かれると、生じる代謝体は5−ヒドロキシモルフィナンである。デキストロファンはDMの多くの生物活性を有していることが知られている。しかし、デキストロファンおよび5−ヒドロキシモルフィナンは肝臓内で他の化合物と共有結合し、一義的にはグルクロン酸またはグルタチオンなどのS−含有化合物と結合して、グルクロニドまたはスルファートコンジュゲイトを形成し、これは血液−脳関門を容易に通過できず、尿中で体から急速に消失する。
DM−酸化の第一義的に原因となる特定の酵素は、デブリソキンヒドロキシラーゼであり、スパルティンモノオキシゲナーゼとしても知られ、また種々の文献ではチトクロームP−450DB、チトクロームP−450 dbl(またはdbl)、チトクロームP−4502D6とも称せられている。ここでは、以下デブリソキンヒドロキシラーゼと称す。デブリソキンヒドロキシラーゼは、“チトクロームP−450”または“チトクロームオキシダーゼ”族の酵素に属している。これらの酵素は典型的に肝細胞、特に肝ミクロソームに高濃度でみられ、種々の他の器管あるいは組織、例えば肺では、より低い濃度で存在する。親油性化合物を酸化することにより、チトクロームオキシダーゼ酵素は体から、毒素として作用するかあるいは望ましくないレベルに蓄積する化合物を消滅せしめる。典型的には、酸化は親油性化合物をより水に溶けやすくし、従ってより容易に尿から消滅せしめるか、あるいは肺から出るエアゾルで消失せしめる。デブリソキンヒドロキシラーゼ酵素は脳組織に明らかに存在するが、(Fonne−Pfister等、Biochem.Biophys.Res.Communic,148:1144−1150(1987)、Niznik等、Arch.Biochem.Biophys,26:424−432(1990)、Tyndale等、Mol.Pharmacol,40:63−68(1991))脳中におけるその機能は完全には分かっていない。
デキストロメトルファンは、セキシロップとして広く使用されている一般薬であり、用量は成人で約120mg/日までである。本発明においてDM用量範域は、約20−200mg/日、望ましくは20−150mg/日であり、患者の体重、疾患の重とく度、DMと併用する抗酸化剤の強さおよび量によって変わってくる。
キニジンはキニンの右施性立体異性体である。キニジンは、心臓不整脈の治療に用いられ、比較的強力な心臓系医薬とされている。キニジンは多くの会社、例えば、A.H.ロビン社、リッチモンド・ヴァージニアから市販されているが、医師の処方箋によってのみ使用される。DMもキニジンも粉末で使用され、望むように特定用量のカプセルが市販会社により製造され得る。多くの患者の血流中でDM濃度を主に増加するためのキニジンの用量は、個々に異なるが150mg/日かまたはそれ以下であった。本発明は、50−300mg/日の用量範囲、望ましくは50−150mg/日を予定する。ある患者においては、約50mg/日で効果的なことが分かった。一方、心臓病患者における抗不整脈の調整に用いられる量は600−1200mg/日である。
キニジン以外の多くの抗酸化剤が、in vivoスクリーニングを用いて文献に示されている。これらの報告には、Inaba等、Drug Metabolism and Disposition13:443−447(1985)、Fonne−Pfister等、Biochem.Pharmacol,37:3829−3835(1988)及びBroly等、Biochem.Pharmacol,39:1045−1053(1990)があり、そのすべてを参照としてここに合体する。Inaba等により報告されているように、K1値(Michaelis−Menton inhibition valus)が50ミクロモルまたはそれ以下のものに、ノルトリプチリン、クロルプロマジン、ドムペリドン、ハロペリドール、ピパムペロン、ラベタロール、メタプロロール、オキプレノロール、プロプラノロール、チモロール、メキシレチン、キニン、ジフェンヒドラミン、アジマリン、ロベリン、パパベリンおよびヨヒンビンがある。特に強い阻害活性を有する望ましい化合物は、ヨヒンビン、ハロペリドール、アジマリン、ロベリンおよびピパムペロンであって、これらのK1値は4−0.33μMの間にある。一方、キニジンのK1値は0.06μMである。これらの阻害剤のうちキニンスルファート、ジスルフィラム、シメチジン、フルロキセチン、プロプラノロールおよびノルトリプチリンは、下記の実施例4に詳細を記載したように、血流中でDM濃度を安定にする効力について試験された。期待されたように、これらの研究の結果は、DMがキニジンと共に投与されたときに認められなかったようなDM濃度の増加を示した。加うるに、各抗酸化剤の効果において個人間に実質的な差異が結果としてあった。
キニジンと同様の骨格を有するキニンは、試験した各人においてDM/DRP比率を増加せしめる効果があった。他の薬剤は各人間のより大きい差異を示した。この差異は、個々の抗酸化剤について患者に使用する前に下記実施例4で記載した用量をあらかじめ試験すべきことを示している。多くの抗酸化剤が、広い変化域があり、処方する医師が考慮を払う医薬効果を有していることにも注目せねばならない。他の抗酸化剤の用量は抗酸化剤毎に異なり、実施例4に記載したプロトコールを用いて決定されねばはらない。
上記に述べた抗酸化剤に加うるに、リリー社のプロザックなる販売名のフルオキセチンが何人かの患者の血中でDM濃度を増加せしめるのに効果的であることも分かった。例えば、フルオキセチン20mgを1日2回服用した1人の患者は、実施例4に示された試験に従ってDMを投与したときにDMの40ng/mlの血中濃度を記録した。
特定の患者に投与すべきデキストロメトルファンおよび抗酸化剤の最適量は、各薬剤の種々の量を投与することにより次のように決定される。(1)循環血液中のDM濃度を決定するため血液サンプルを分析する、(2)目標とする症状を効果的に抑制するのに最もよい結果を提供する用量の組み合わせを決定するために患者の病状の進行を観察する。
多くの要因が特定個人に適するであろうDMおよび抗酸化剤の用量に影響する。一つの非常に重要な要因は各人におけるDMを代謝する能力である。全人口の7−10%がデブリソキンヒドロキシラーゼ酵素をコードするのに適切に機能する遺伝子を有していないことが知られている。これらの人々は、医師または薬理学者により“低代謝者”とされ、一方デブリソキンヒドロキシラーゼをコードする遺伝子を有する者を“多大代謝者”とする。“低代謝者”は、完全なチトクロームP450酵素を有する者には完全に投与できる薬剤のあるものに対して過剰に反応するので、特別の考慮と注意をもって対処しなければならない、高い危険性のある患者である。
デブリソキンヒドロキシラーゼ阻害に加うるに、他のチトクロームP450アイソザイムもキニジンまたは他の阻害剤により、種々のレベルの結合親和性をもって抑制されるようである。これは、Kupfer等、Lancet ii:517−518(1984)およびGuttendorf等、Ther.Drug.Monit.,10:490−498(1988)などの文献に記載され、ここに参照として合体する。さらに、チトクロームP450酵素は、単一アイソザイムが大きく相違する化学構造を有する多数の基質に反応することができ、そして種々のアイソザイムが単一の基質に重複した活性を有するという点で、非特異的である。従って、キニジンがデブリソキンヒドロキシラーゼに対してその最も顕著な作用を発揮しても、他のチトクロームP450酵素を同様に抑制することができ、それによって正常なかつ望ましい肝活性のより大きい損失を患者にもたらす。
DMは、一般薬として市販されている安全な薬剤と考えられているので、患者が多大代謝者か低代謝者かを判定するのに便利な手段すなわち基準薬として用いられる。このような診断的試験は、“低代謝者”である患者を見出し、適切に代謝し得ない種々の薬剤から保護されるように、遂行される。しかし、もし患者がキニジンなどの薬剤を服用していると、酵素レベルが阻害され、“低代謝者”を同定する診断試験が正確でなくなり、阻害剤の存在を反映してしまう。
加えるに、DMは、ある患者において下痢、口渇、ライトヘッディドネス(lightheadedness)、食欲不振、およびある場合には男性患者のインポテンスをおこすことがある。これらの副作用は、抗酸化剤により、その強度に順じた割合でおこりやすくまた重くなる。従って、ここに開示したDM−キニジン配合またはDM−抗酸化剤配合は、適切な治療を決定するであろう医師の監督下でのみ、現在のところ用いられるものと考える。すべての適当な警告は、医師および他の当業者に評価できるように、いかなる抗酸化剤の使用についてもなされねばならない。しかし、血中のDM濃度の実質的な増加をもたらすキニジンの用量は、抗不整脈作用で通常用いられる量の一部分にすぎない。
ある患者にとって、DMとキニジン以外の抗酸化剤の配合が医薬製造に望ましい。ある場合、患者はキニジンまたはキニジン−DM配合に耐性がない、例えば、キニジンにアレルギーであったり、あるいは、長いQT間隔で知られる心臓状態に苦しんだりし、それ故にキニジンに耐性でない。強くない酸化阻害剤もDMとの配合で望まれる。例えば、キニジンの用量を増加しなければならない耐性増大を回避するために、キニジンを第2薬剤に変える。あるいは、咳が他の治療には適切に反応しないが、強力な酵素阻害剤を必要とするほどには重くないような、中程度の症状の患者の場合である。
予期することなく、DMとキニジンとの併用が“感情的不安定”の症状を減少せしめるのに非常に効果的であることが発見された。感情的不安定は、脳卒中、頭部損害、ALSまたはアルツハイマー病などの神経疾患に典型的に由来する両側神経障害の患者における複雑な問題であり、爆発的笑いまたは抑制不能な泣きなどの痙攣的感情激発がある。感情的不安定を導く脳障害の患者において、かかる激発はしばしば不適当な時に前兆なしに生じる。キニジンとの併用によるDMの感情的不安定を調整する効力については米国特許第5,206,248、1993年4月27日発行に記載されており、これを参考としてここに合体する。感情的不安定を調整するDM−キニジンのこの効果は、DMのみを服用した患者では認められていない。
上記した化合物の組み合わせは、他の治療によく反応しない他の慢性疾患の治療で薬剤として非常に効果的である。DM/抗酸化剤の組み合わせは、習慣性のない、非ステロイド系薬剤に適当に反応しない、重いかつ頑固な咳を効果的に治療するために用いることができる。頑固な咳は、呼吸器感染、喘息、気腫および他の呼吸器系疾患の結果である。
ヒト患者における頑固な咳の治療にDM−キニジン配合を用いた試験を下記の実施例5に記載する。すべての試験患者において、DMと抗酸化剤の組み合わせによる治療は、非常に有益な結果を最小の副作用でもたらした。これらの結果は、頑固な咳の治療のための医薬の製造においてDM−抗酸化剤の使用の効果および有益性を明白に確証している。
本発明はまた、皮膚炎の治療のための医薬の製造においてDMと抗酸化剤を組み合わせた使用を開示する。“皮膚炎”または“湿疹”は可視的皮膚損傷および/または皮膚上のかゆみまたは燃えるような感じを特徴とする皮膚症状である。皮膚炎の治療のためのDM−キニジン配合の効果は、最初、重い皮膚炎にたまたま患っていたALS患者の試験中に、予期されない有益な副作用として観察された。これらの最初の結果の後に、皮膚炎の数名の患者にDM−キニジンカプセルを経口投与して追加の試験がなされた。その結果、皮疹とかゆみに顕著な緩解がみられた。DMまたはDM−抗酸化剤を含有する医薬が皮膚炎の患者に局所的に投与され得る。その結果の詳細を実施例6に記載する。
DM単独もある特定の患者の皮膚炎を治療するのに効果的である。これらの患者は、デブリソキンヒドロキシラーセ酵素の機能的複写を発現するための遺伝的能力がないことによる“低代謝者”である。これらの者にとって、DM単独が安全用量で、血中DMレベルを増加させるための抗酸化剤の同時使用を必要とせずに効果的に皮膚炎を治療するのに充分である。
本発明はまた、脳卒中、外傷、癌などの症状による慢性痛、帯状疱疹、糖尿病などのノイロパティーによる痛みの治療に対する医薬にDMおよび抗酸化剤の使用を提供する。
ノイロパティー疼痛は、ポストヘルペス神経痛および糖尿病性ノイロパティーを含む。ポストヘルペス神経痛(PHN)は、帯状疱疹の合併症であり、帯状疱疹の患者の約10%に発症する。糖尿病性ノイロパティーは、疾患の期間と共に増加する糖尿病の普通の合併症である。これらのタイプのノイロパティーの痛みは、次のように、刺すような痛み、ピンまたはキリによるような痛みあるいは歯科痛をしばしば伴う燃えるような痛みである。皮膚は軽い接触または衣ずれに異常感覚を有して敏感である。疼痛は、活動、運動変化、または感情亢進により悪化する。この痛みは重いので日常活動ができなく、睡眠障害または食欲不振をもたらす。これらのタイプの痛みを生じるメカニズムは、よく分かっていないが、髄質神経繊維の変性が関与しているようである。糖尿病性ノイロパティーにおいて小および大神経繊維が破壊されて、やがて温度感覚、疼痛および振動の耐容域値が低下する。大および小繊維の機能障害は、痛みの進行と共に下肢でより重い。ノイロパティ痛のある患者において日常的になすことができる神経の生理的測定の多くは、徐々に神経伝導が遅くなってくることを示している。今日のところ、ノイロパティ痛の治療は成功からほど遠い。
脳卒中、糖尿病および他の原因による慢性痛の患者に対しDM−キニジンを経口投与した。すべての患者でDM−キニジン服用、2〜4週でなんらかの程度の疼痛緩解がみられた。この研究は下記の実施例7に記載する。
実施例7で記載した初期感情研究および皮膚炎研究における男性患者の副作用にインポテンスの発生が含まれていることに注意すべきである。このインポテンスは患者がDM−キニジン含有薬剤療法を中止するまで続いた。従ってDM−抗酸化剤含有医薬は、持続勃起または早漏を含む性的機能障害の治療に用い得ると考えられる。
疼痛試験の患者のうち1人は、高ピッチの耳鳴を特徴とする症状の耳鳴にも悩んでいた。DM/キニジン治療後、この患者は耳鳴が止んだ。従って、この事実およびコクリアー系におけるNMDA受容体の関与に基づき、耳鳴の治療のための医薬の製造においてDM/抗酸化剤の使用が本発明でなされることである。
上記した種々の疾患の治療に用いられる医薬が、DMと適当な抗酸化剤、あるいはDMの塩または同族体と種々の抗酸化剤から製造される。“塩”および“同族体”は通常の製薬上の意味で用いられ、デキストロメトルファンおよび抗酸化剤の薬理学的に許容され、そして医薬上効果のある塩および同族体に限定される。用語“薬理学的に許容される”とは、ヒトに投与するのに適する、実際的な塩または同族体をつくるのに特徴を有するものである。例えば、これらの化合物は適当な貯蔵可能期間を有するために適切な貯蔵条件で充分化学的に安定でなければならないし、経口投与されたときに生理的に許容され、習慣性でなく、あるいは許容できない副作用を有していないものでなければならない。許容される塩には、アルカリ金属塩および遊離酸または遊離塩基の塩が含まれる。
酸付加塩を形成するのに用いられるであろう酸には、スルフェートあるいはクロライド塩など無機酸および有機酸を含む。アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩には、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムの塩を含み得る。これらの塩のすべては通常の方法により製造される。ここに記載した化合物の種々の塩は、広く製薬上で使用されているものであり、当業者によく知られている The Merck Index などの書籍に記載されている。ここで述べた活性薬剤の塩を形成するのに用いられる成分は、非毒性であって、望む効力に実質的に関与しない限り、重要でない。
製薬的同族体とは、もとの化合物に類似した分子であり、もとの分子の1つまたはそれ以上の部分が、塩において生じるように、容易にイオン化または分解をしない他の部分あるいは他の代替基で修飾されている分子を言う。例えば、水素または塩素部分がメチル基で置き換っていると、得られた分子は同族体とみなされるであろう。ここに含まれるように、同族体−生成代替物は、元の化合物の抗咳、抗皮膚炎または他の活性を破壊してはならない。
本発明に記載された化合物から製造される医薬の投与は、血液中に該化合物を導入することができるすべての方法によりなされる。投与は、経口、非経口、静脈注射、皮下注射、局所的または吸入的になされる。特に、ローションまたは軟肓などの局所投与が皮膚炎の治療に用いられる。同様に、吸入エアゾールが頑固な咳の治療に用いられる。注射用、局所用または吸入用の処方は活性化合物に併せて薬学上許容される担体あるいは希釈剤を含有している。経口および注射医薬の種々の他の処方は、スミスの米国特許第5,166,207に記載されており、これを参考としてここに合体する。
実施例
実施例1から3に記載の最初の試験は、筋萎縮性側索硬化症(ALS、またロー・ゲーリング病とも呼ぶ)の患者で行った。その時点で、DMはALSおよび他の神経学的疾患の進行の阻止に効果があるはずであると信じられていた。実施例1から3に記載の研究はALSに罹患している患者(ほとんど、40才以上の成人)で行ったが、ALS患者におけるDMの代謝に、ALSでない成人の知見報告または対照集団として健康なボランティアの一日の試験と比較して、差は見られなかった。
実施例1:尿DM/DR比
ALSに罹患している6名の患者に、単一60mgデキストロメトルファン用量を経口投与した。数時間後、尿サンプルを回収し、デキストロメトルファン(DM)およびデキストロファン(DR)の尿濃度を下記のように測定し、DM/DR比を決定した。低いDM/DR比は、患者体内で、DMが急速にDR代謝物に代謝されることを示唆する。異なる週に、DM60mgおよびキニジン150mgを同じ患者に経口投与し、尿中DMおよびDRレベルおよびDM/DR比を再び測定した。
キニジン無しのDMおよびDR尿中レベルは、テバイン40mgを内部標準として1mLの尿に加えて測定した。これに、酢酸緩衝液(0.1M、pH5.0)1mL中のβ−ガラクトシダーゼ2000単位を添加した。混合物を18時間、37℃でインキュベートし、次いでリン酸緩衝液(pH12、0.10M)1mLおよびn−ブタノール/ヘキサン(10:90 v/v)7mLを添加することにより抽出した。混合および遠心後、有機相を清潔な管に移し、0.01N HCl400μLで酸性化し、および20マイクロリットル(μL)の水性相を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムに注入する。HPLCは、移動相を10mM KHPO4、10mMヘキサンスルホン酸、pH4.0を含むアセトニトリル:水(51:49、v/v)で平衡化したフェニルカラム(流速1.2mL/分)を使用した。テバイン、デキストロメトルファンおよびデキストロファンの検出は、228nmで励起する波長の蛍光(Kratos FS-980 Fluorometer)で、放出遮断フィルターなしで達成した。
ガスクロマトグラフィー/マススペクトル(gc/ms)検定を、キニジン存在下でのデキストロメトルファンおよびデキストロファンの測定に用いた。簡便に、尿素サンプル0.5mlに、ジメタクリン500ナノグラム(ng)を添加した。尿素pHを0.1M酢酸緩衝液(通常約1.0ml)で5.0に調節し、β−グルクロニダーゼを添加した(2000単位/尿ml)。混合物を37℃で18時間、インキュベートおよび振盪した。尿を続いて1.0mLリン酸緩衝液でpH10−11に調節し、尿をジクロロメタン5mLで抽出した。ジクロロメタン抽出物を窒素下抽出し、BSTFA 300μL中に再構築し、SE−30カラムを装着したgc−ms分析器に注入した。ガスクロマトグラフィー条件は:インジェクターおよびトランスファーライン温度250℃、オーブン70℃から260℃で20℃/分および源温度180℃であった。検出は、デキストロメトルファンについてはm/z271、内部標準については294およびデキストロファンについては329で選択イオン追跡により行った。デキストロメトルファンおよびデキストロファンについての典型的標準曲線が提供された。検定感受性は、デキストロメトルファンについては100ng/mlおよびデキストロファンについては400ng/mlであった。
表1の結果は、キニジンがデキストロメトルファン代謝の有効な阻害剤であることを示唆する。すべての試験物質のDM/DR比は、強度範囲で少なくとも2まで、通常3以上増加する。
引き続いての試験を、ALS患者および、1日試験に志願した健康な対照を含む50名以上のヒトで行った。ALS患者は、DMおよびキニジンを一日を基本にして数週間投与され、一方対照者は、各薬一回量のみ投与された。結果は、表1のものと非常に類似した。
実施例2:DMの血漿濃度
5名の患者に、キニジン共投与なしに経口でDM120mgを投与した。10から12時間後、血液を採集し、血漿を遠心して単離し、血漿を分析し、テバイン/HPLC法を使用してDM濃度を測定した。
異なる週の間、同じ患者に経口でDM60mg(対照投与量の半分)およびキニジン150mgを経口投与した。10から12時間後、血液を採集し、血漿をテバイン/HPLCを使用してDMについて分析した。
表2の結果は、キニジンが血漿中のDM濃度の大きな増加をもたらすことを示唆する。
続いて、血漿濃度を、長期間にわたりデキストロメトルファンおよびキニジンを投与されている約15名の他のALS患者について測定した。結果は表2のデータと非常に類似した。
実施例3:用量−応答研究
DMの投与量の範囲を使用して更なる研究を行い、患者に経口投与したDMの量と10から12時間後の血漿濃度(実施例2に記載のように測定)に関する用量−応答曲線を確立した。すべての患者に毎日150mgのキニジンを投与した。これらの研究の結果は図1にグラフとして示し、平均値は白抜き四角および標準分散範囲は垂直棒で示す。平均値を通る上昇線は、ほぼ直線である;より厳密なデータに基づく曲線は、恐らく水平無症状を示す。
上記の実施例の試験結果は、キニジンをDMと共投与した場合、血中のDM循環が重い副作用をもたらすことなく増加および延長することを示す。従って、キニジンのような抗酸化剤のDMとの共投与は、血中に循環するDMの濃度に依存した状況でDMの効果を増加できる。
実施例4:他の抗酸化剤の使用
ある患者がキニジン耐性がないため、種々のヒトにおいてDM酸化を阻害するための幾つかの他の候補抗酸化剤の能力を試験した。これらの試験において、DMをすべて健康なボランティアである種々の個体に一定量投与した。DMを候補抗酸化剤を摂取させる前および後に与え、尿サンプルを適当な時間に採集し分析して、DMおよび尿中のその実質的な代謝物デキストロファン(DRP)の量を測定した。ゼロのDM/DRP比は、実質的にすべてのDMが患者中でDRPに代謝されたことを意味する。ゼロより高い比は、DMが完全に代謝されず、尿中に明白な量のDMが残っていることを示す。
12名の健康なボランティアで試験した。最初の尿サンプルを、抗酸化剤投与前に最初のDM投与後に取り、そのヒトについての基底値を測定し、すべてのボランティアについて、対照を得るために使用したDM/DRP比が1.338の“低代謝者”である一名以外、基底DM/DRP比が0.06またはそれ以下の“多大代謝者”であることを確認した。尿サンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して分析し、DMおよびその実質的酸化代謝物(デキストロファン、DRP)により示されるクロマトグラフィーピークに含まれる領域の定量的評価をした。ゼロより高いDM/DRP比は、DMが完全に代謝されず、患者の尿中に明白な量のDMが残っていることを示唆する;ゼロの比は、実質的にすべてのDMがでDRPに代謝されたことを意味する。
各ボランティアについて基底DM/DRP比を測定した後、候補抗酸化剤を投与した。これらの試薬は、硫酸キニン、ジスルフィラム、シメチジン、フルオキセチン、プロプラノロールおよびノルトリプチリンを含んでいだ。適当な遅延後、第2の尿サンプルを得、分析した。各試薬を2名の患者に投与した。
これらの試験で観察された最も強い結果はキナム(硫酸キニジン)であった。一名の患者において、DM/DRP比は0.02(前−キニン基底)から0.09まで増加した;他の患者において、DM/DRP比は0.00から0.05まで増加した。他の候補試薬を試験した場合、結果は異なる個体で高いレベルの変化を示す。例えば、フルオキセチン摂取した2名の患者において、一名は0.00(前−薬基底)から0.11に増加したが、一方、他のヒトにおいて、0.03から0.00に減少した。プロプラノロールを摂取した2名の患者において、一人についてはDM/DRP比が0.00から0.02に増加し、一方他の一人は0.02から0.00に減少した。ジスルフィラムを摂取した2名の患者において、一名においてDM/DRP比は0.06から0.08に減少したが、他の一人は0.06から0.00に減少した。これらの変化性のレベルは、ヒトが異なると、その酸化酵素において顕著な変化性を有することがよく知られているため、驚くほどではない。
実施例5:頑固な咳の患者における試験
すべて数カ月持続している頑固な咳に罹患している3名の患者を医師の監督下に試験した。一名の患者は、長期に有害な副作用を有する抗炎症ステロイドであるプレドニゾンであらかじめ治療を受けていた。2番目の患者は、呼吸器感染後、8カ月間咳をし、習慣性があり、長期間摂取できないコデインを含む咳止めシロップのみ一時的に反応する。3番目の患者は、幾つかの肋骨を骨折した呼吸器感染後、ひどい咳に罹患している。呼吸器感染のための抗生物質および抗炎症性吸入剤が、喘息症状が疑われたので処方された。
頑固な咳の3名の患者の最初の試験は、非常に有効な結果を示し、実質的に副作用はなかった。
70才の女性患者EARは、数年間、再発するしつこい非湿性咳に罹患していた。この咳は、プレドニゾン投与に反応するが、プレドニゾンが切れた直後に再発し、プレドニゾンの連続投与は、許容できないと思われていた。彼女は、種々の咳止めシロップを試し、少しの効果しかなく、彼女の咳は、両方ともネブライザー型吸入器を使用して投与したアルブテロール(β−アドレナリン性気管支拡張剤)またはイプラトロピウムブロミド(抗コリン気管支拡張剤)に反応しなかった。彼女にキニジン75mgおよびDM60mgを1カプセル/日を投与した場合、彼女の咳は最初は止まるが、数日後に再発した。用量を2カプセル/日に増加した場合、咳は止まり、再発しなかった。彼女から副作用の報告はなかった。
煙草を吸わず、喘息の病歴のない38才の男性の患者SPは、しつこい非湿性咳に約8カ月罹患していた。ペニシリンおよびコデインの咳止めシロップを摂取した場合に一時的に止まるが、コデイン摂取を止めた後再発した。75mgおよびDM60mgの1カプセルを摂取し初めて、数日後、咳はほとんど完全に停止し、一日ほとんど咳をしなかった。彼から副作用の報告はない。
煙草を吸わず、喘息の病歴のない43才の男性の患者RCは、最初に上部呼吸器頸ウイルス感染、続く細菌感染で始まった咳に約5カ月間罹患していた。咳は、肋骨が折れるほどひどかった。彼が最初に症状に注意し始めたとき、咳は黄色い痰を排出した。痰は抗生物質で取れたが、咳はフルニソリド(抗炎症性ステロイド)およびアルブテロールの吸入処置での疑わしい喘息状態の処置にも拘わらず、続いた。咳は、1カプセル/日のみを摂取している時、実質的に改善しなかったが、2カプセル/日を摂取し初めて、ほぼ90%数日内に改善した。彼は時々咳するが、その状態は、時々薬を飲むのを忘れる程に改善した。彼から副作用の報告はない。
すべての場合、患者は結果に喜んだ。組み合わせDM−抗酸化剤処置は、他の医薬では充分に治療できない咳をほとんど完全に除去するのに非常に有効であり、DM−抗酸化剤処置は、副作用がほとんど報告されなかった。結果は明らかに本発明の有効性および実用性を証明する。
実施例6:皮膚炎の処置
最初の実験の間、60才からALSに罹患した白人女性の患者BTは、小さな斑点が現れる障害を含む重い皮膚炎に罹患していた。彼女の状態は、アトピー性皮膚炎と診断された。その病因は不明である。患者は、その障害が非常に痒く、約10年罹患していた。彼女は、痒みを制御するために多くの薬(プレドニゾンのような種々のステロイドを含む)を処方された;最も最近の処方は、三環系抗うつ剤である“Doxepin”である。これらの医薬はほとんど助けにならなかった。
患者は、一週間、キニジン単独(150mg/日)の最初の処置で始めた。彼女に有害な反応がないことが確立した後、彼女にDMも30mg/日で投与を開始し、一月後に120mg/日まで増加した。
DM/キニジン処置を開始後、二カ月目の間に、患者が、彼女の障害の部分的治癒と共に、痒みの感覚の殆ど完全な停止を得たことが判明した。数週間後の追跡実験は、患者の皮膚障害が、殆ど跡もなく、完全に治癒したことを示した。
この結果を見た後、近くの大学で、皮膚の専門家により更なる試験を行った。専門家による最初の試験は、重いが、間欠性の皮膚炎に罹患している白人男性であった。再発は、治療を開始して2週間以内になくなった。患者の皮膚炎の間欠性の性質のため、この結果はDM−抗酸化剤組み合わせに完全に起因するものであると言えない;それにも拘わらず、DM−抗酸化剤処置開始直後に再発が起きないことは、DM−抗酸化剤組み合わせが、恐らく実質的に有効な効果を有することを強く示唆する。
上記の最初の成功の後、皮膚炎の処置のためのDM/キニジンの効果を測定するための更なる研究を以下のように行った。皮膚炎に罹患している患者を、最初に一般的身体状態で評価し、また皮膚炎状態の重症度を、“標準化疾病活性点数付”または“障害点数”を使用して、医者が評価した。標準化疾病活性点数付または障害点数は、患者の体の一定の領域(サイズ1から5)について紅斑および表面障害の両方について試験している医者が1から5の重症度の点数付をしたものである。次いで、全得点を計算した。患者は、皮膚炎による痒みおよび発疹の重症度を主観的可視スケールで示した。DM/キニジンは、カプセル当たりDM30mgおよびキニジン75mgのカプセルの形で摂取された。患者は、通常、2週間、次いで、最初の検査およびDM/キニジンカプセル接種後6週間またはそれ以上後に再び再検査した。
患者#1は、ストレスで激しくなるアトピー性湿疹に生まれた時から罹患している40才の女性であった。患者を最初に、標準化疾病活性点数付を使用して評価し、主観的痒み/発疹分析フォームを埋めた。最初の点数は42であった。患者は、最初の痒み点数を重症、および発疹を重症から中程度と示した。
患者は、吐き気および頭痛を副作用として報告し、投薬を5日後に停止した。次いで、彼女に、減少した量の30mg/25mg DM/キニジン/日にした。続いて、患者は、発疹および痒みが5日以内に殆ど完全になくなったと報告した。2週間目の評価で、患者の標準化疾病活性得点は、劇的に13に減少した。患者の顔は、実際、著しく改善された。2週目に、患者は痒みは中程度から僅かに減少し、発疹は中程度から僅かに減少したと報告した。4週間後、患者は、減少した投与量の時でさえ、頭痛の副作用が続くと報告した。しかしながら、全標準化疾病活性得点付は、全得点24で最初より、低かった。彼女は、痒みが重症から中程度、および発疹を中程度範囲と報告した。
患者#2は、慢性湿疹に20年罹患している55才の男性であった。発疹は主に太ももにあった。最初の全標準化疾病活性得点は12であった。患者は、30mg/75mg量のDM/キニジンを一日一回、5日、次いで当分の間、12時間毎に摂取した。患者は、最初重症の痒みおよび中程度の発疹を報告した。約1カ月後、障害得点は12のままであったが、患者は、痒みが低い中程度の範囲に減少し、発疹が中程度から僅かの範囲に減少したと報告した。投薬は、副作用のため、結局中断した。
患者#3は、湿疹に7、8年前に罹患し始めた54才の男性であった。最初の身体検査で、特に彼の足下部でひどい、かなり普遍的な皮膚剥離湿疹性皮膚炎を示した。発疹は、二次感染の傾向があった。最初の障害得点は112であった。患者は、最初に彼の痒みを中程度および発疹を低い中程度とした。患者は、30mg/75mg量のDM/キニジンを一日一回、5日、次いで当分の間、12時間毎に摂取した。
2カ月半後、患者を再び評価し、障害得点90であった。全体的な見かけは、改善されたと報告され、発疹は赤みが少なくなった。しかしながら、患者は痒みと発疹は同じ割合を報告した。患者は、その殆どが、数日後に消える幾つかの副作用を報告した。しかしながら、患者は、オルガスム到達の遅れを報告し、その副作用は投薬を続ける限り続いた。
数名の患者の副作用の報告のため、局所クリームとしてのDM/キニジン投与が皮膚炎の処置に考えれらる。
実施例7:疼痛の処置
続く疼痛の研究は、デキストロメトルファン/キニジン組成物が慢性疼痛を緩和または阻止するか測定するために行った。処置の効果は、患者問診および研究医師による患者の臨床評価により決定した。
患者の問診は、彼または彼女の現在の疼痛レベルについて、0から10の直線可視アナログスケールによる評価を質問しており、そのスケールは疼痛が10の“恐らく一番痛い”から0の“痛み無し”である。数週間の投薬後、患者に現在の疼痛のレベルおよび疼痛減少の割合を、疼痛軽減なしの10から完全な疼痛軽減の0までの直線可視アナログ疼痛軽減得点を使用して、示すように求めた。
患者へ投与したDMの量は、個人により相違するが全一日量でDM120mgまでであり、キニジンと組み合わせたカプセル形を取った。キニジンは、患者個人で相違するが、DMの一日量の2倍から、全一日量150mgまで投与した。
患者#1は、10年前に糖尿病と診断された73才の女性であった。彼女は二年間、足がひりひり痛く、疼き、去年悩みがひどくなったと報告した。患者は、彼女が歩くかまたは立った時および晩にも特に感じると報告している。患者は、手には同じ感覚を認識しておらず、明白な首または背中の痛みもない。神経学的試験は正常であり、ただ知覚領域の検査で下部末端手足における針刺し、光当ておよび振動感覚の認識の低減を示した。神経学的評価は、感覚と運動双方の多神経病の診断を確認する。
投薬の前に、患者は、4月11日および投薬直前の4月25日に疼痛レベルについて可視アナログスケールを記入した。患者は、最初に彼女の疼痛得点を、10が一番悪いスケールにおいて、3から4と評価した。患者は、服薬をその直後に開始し、一日一回デキストロメトルファン30mgおよびキニジン70mgを摂取した。
追跡試験を約1カ月後の5月9日に行った。患者は、痛みがかなり減り、気分が良くなったと報告した。彼女は、足の疼きおよび右足の痛みがなくなったことを言った。彼女の睡眠パターンは同じであった。彼女は、DM/キニジンの30mg/70mg一日2回の投与の摂取で副作用を報告しなかった。この点から、彼女の量を、デキストロメトルファン60mgおよびキニジン75mg、一日2回に増やした。
2週間後の5月19日、患者は、可視アナログ疼痛軽減得点を記入し、彼女の疼痛のレベルが、実質的に改善され、10が一番悪くて1から2であり、彼女が有意な疼痛軽減を得たことを示した。全体の印象は、彼女の痛みが良くなったことである。彼女は、副作用がなく、気分が良いことを報告した。疼きが、一週間当たり3回から4回起きる場合、過去に比べて軽減した。5月23日、患者は、彼女の疼痛レベルが、0が痛みがなくて0および1であると報告した。次いで、患者にDM/キニジンの摂取を止めさせ、5月27日に再び彼女が痛みの明らかな再発なく良好であると報告した。94年5月31日、彼女は、足および手の疼きが再発し、良く眠れないと報告した。ついて、患者は投薬を繰り返すことを求めた。
患者#2は、彼の右側に痛い感覚がある。53才の男性であった。この患者は、1991年に脳卒中に罹患した。その時のCTスキャンは、左後部大脳梗塞を示した。患者はまた血管動脈疾患も有し、1991年にバイパス手術を受け、また糖尿病および高血圧にも罹患していた。神経学的には、視野および感覚損傷および右側虚弱があった。過去4、5カ月、患者は右側にざわざわした感覚および冷たいまたは暑い感覚を訴え、それは右側の顔、腕、肘および足に及んだ。左側は感じなかった。この不快な感覚は、特に夜に悩まされ、一回に5分間程度続き、一日中起きなかったり起きたりする。ざわざわした感覚は一般に常に存在する。その感覚は不快であり、常に痛いわけではないが、鬱の非常な原因となる。加えて、患者は、頭の後ろを軽くたたいた時にある足下部の疼きを時々、耳に高温の雑音およびライトヘッディドネス(lightheadness)を感じた。加えて、この患者は耳鳴りも報告した。
患者は、試験している医者により、脳卒中の二次的な視床障害に由来する痛みである、典型的デジェリーヌ・ルシー症候群の症状を有すると診断された。
患者は、最初に、彼の痛みを、可視アナログスケールで、10が一番ひどくて、ピーク時には9から10および他の時は5と6と評価した。DM30mg/キニジン75mg、一日二回の投薬を開始後6週間後、患者は可視アナログスケールを使用して、ピーク時には7と8で他の時には3と4と評価した。この時患者は、0が完全な痛みの軽減および10が痛み軽減なしで、2と3のレベルの痛み軽減を示した。投薬停止1週間後、患者は7から8の間の痛みレベルの再発を示した。
患者#3は、25年、糖尿病と診断されている63才の男性であった。彼はまた関節炎および高血圧にも罹患していた。患者は、二年間手の麻痺を訴えている。加えて、患者は、彼の過去3年の足の痛みも訴えていた。疼く痛みは、眠りを妨げ、鎮痛剤を必要とした。彼はまた臀部の先の痛みおよび首の間欠性の痛みを有した。神経学的試験は、足および指末端著しい針刺しの感覚の減少と正常な位置および僅かに減少した振盪感覚を示した。臨床評価は、患者が彼の糖尿病から二次的に主に知覚神経病を有するというものであった。
デキストロメトルファン30mgおよびキニジン75mgの12時間間隔のDM−キニジン処置を始める前に、患者は彼の疼痛レベル2回の可視アナログスケールを、4月11日および投薬開始直前の5月9日に記入した。患者は、10が一番ひどいスケールにおいて、最初が5と6の間、および1カ月後が6と7の間と言った。患者は、DM−キニジンを、デキストロメトルファン30mgおよびキニジン75mgの日の一つの錠剤を一日2回で投薬した。
5月16日、患者は、電話で、ライトヘッディッド(lightheaded)および胃が少し不快であるが、他は良く、投薬を続けると言った。患者は、続いて5月23日に診療所に来て、その時点で、彼の痛みは夜に起きていた痛みが時々に減少し、全体に、以前に経験したより約70−80%減少したと言った。彼は他のタイプの鎮痛剤を飲んでおらず、投薬を開始してから、夜に痛みは一度しか起きないと言った。彼は、ある間欠的な電撃的痛みをまだ有すると報告した。副作用としては、少し吐き気があるが、毎日ではないと報告した。この時点で、彼の痛み軽減は、0が完全な痛み軽減において、1と2の間で、彼の痛みの現在のレベルが、0が痛みなしで1と2の間と報告した。試験した医者は、患者の疼痛のレベルをかなり良好と評価した。
5月31日、患者は、先週の足の痛みを報告した。彼は、30/70 DM/キニジンの一錠を摂取し続けていた。更に2週間後、彼は投薬を停止した。7月19日、患者は、彼の現在の疼痛レベルを記載する他の可視アナログスケールを記入した。彼は、疼痛のレベルを投薬を続けていないにも拘わらず、最初の評価より低い2と3の間と報告した。
実施例8:耳鳴りの処置
実施例7に記載の患者#2はまた耳鳴りとして知られている耳の慢性的響きに、数年罹患していた。疼痛研究の一部として、この患者はDM 30mg/キニジン75mgのカプセルを1日2回摂取しており、3年前の脳卒中に由来する視床の痛みの症候群を軽減した。痛みを軽減するためのDM/キンジンカプセルを摂取約2週間後、患者は、予期しないおよび完全な慢性耳鳴りの除去を報告した。この事象は、耳鳴り疾患の推定部位であるコクレアー(coclear)システムにNMDA受容体を発見した研究と共に、DM/抗酸化剤組み合わせが、耳鳴りの有望な治療であることを示している。
これらの実施例は、デキストロメトルファンとキニジンのような抗酸化剤の組み合わせが、治りにくい咳、慢性疼痛、皮膚炎、耳鳴りおよび性的機能不全を含む治りにくい疾患の処置に有効であることを証明する。これらの発明は、現在における好ましい態様を参照して記載しているが、種々の修飾が本発明の精神から離れることなくできることは理解されよう。したがって、本発明は、以下の請求の範囲によってのみ限定される。
図1は、キニジン150mg/日を経口服用した患者におけるDM経口量とDM血漿濃度との関係を示す。